ゾンビ娘「レイ〇されました。死にたいです」(684)



ゾンビ娘「よくも私に蘇生呪文なんてかけてくれましたね。おかげで生き返ってしまったじゃないですか」

賢者「それは悪いことなの?」

ゾンビ娘「私みたいなゾンビにとって、レイズなんてレイプと同じ位酷いことなんですよ?」

賢者「レイ…ッ!?」

ゾンビ娘「出会い頭に即レイズってなんなんですか?出会って即ハメですか?」

賢者「いや…ごめん。僕も襲われそうになったことはあるから、その気持ちはわかるよ?
   でも、普通は旅の途中でモンスターにエンカウントしたら攻撃するでしょ」

ゾンビ娘「だからって開幕レイズは無いでしょう?MP消費【大】なのに…」

賢者「アンデッド系はこれ一撃で消滅するし、産まれつき持ってる得意呪文だからさ」

ゾンビ娘「」


初のssで拙いところも多いとは思いますが、どうかお付き合いください。



賢者「そういえば君は消滅してないね?女の子のゾンビだから?」

ゾンビ娘「産まれてから…?Lv.1でレイズ覚えて使えるって…」ブツブツ

賢者「お~い」テヲフリフリ

ゾンビ娘「どんな魔力量してるんですか…」オッカネェ…

賢者「ざっと魔王7体分だよ」

ゾンビ娘「」

ゾンビ娘「私の苦労は一体…鬱だ死のう」ザクッ

          ――――ドサッ

賢者「えっ!?」

  ゾンビ娘はナイフで自らの心臓を貫き力尽きた▼

賢者「え、ちょっ」オロオロ

  へんじがない ただの しかばね のようだ▼



賢者「レッレイz…ゾンビ娘「やめてください生き返ってしまいます」…う?」

  なんとみるみるうちにゾンビ娘の傷が回復し、身体が青く、ツギハギだらけになっていく!

ゾンビ娘「ふぅ。死に返れて良かったです」

賢者「嘘でしょ…?エンカウント時と同じ姿に…」

ゾンビ娘「あーやっぱり身体が軽いですね」

賢者「【 ア レ イ ズ 】」

ゾンビ娘「」†完全回復†

ゾンビ娘「…なんで蘇生するんですか?」ドヨーン

賢者「逆になんで死んだままでいたいんだい。しかもやっぱり消滅してないしね。」

ゾンビ娘「実験半分で発動しないで下さい」



賢者「それはさて置き」

ゾンビ娘「さて置いていい問題じゃあないでしょう…」

賢者「結局どうして死にたいの?」

ゾンビ娘「ハァ…。魔王が冥界から召喚したオリジナルアンデッドと違って、
     私のような人間ベースのゾンビは知性がある分、しがらみが多いんでsッ」ブッツン

  ゾンビ娘は舌を噛み切った▼

賢者「しがらみって?」【ホイミ】

  しかし治されてしまった▼

ゾンビ娘「人の心を持っているので、人間を喰べたりしません。
     それでも、身体は人ではなく怪物です」つナイフ

賢者(レイズ使うとお腹が空くのが早いなぁ…)ボッシュウ

ゾンビ娘「その身体の本能なのか、そのうちゾンビであることがアイデンティティーになっていくんです」ショボーン



ゾンビ娘「私がゾンビ化してからはや200年。家族もパーティーも死んでいるでしょう。
      今更、人間の世界に未練なんて何一つ無いんですよ」つ毒薬

賢者「もぐもぐ」【キアリー】

ゾンビ娘「人に質問しておいて何を食べてるんですか」つ苦水

賢者「おやつだよ。これでも僕は育ち盛りの15歳だからさ」ゴックン

ゾンビ娘「美人で僕っ子のモデル体型15年物…もっと上だと思ってました」

賢者「君こそ見た目16~7歳なのに、その大きさなの?」

ゾンビ娘「あなたに言われたくないです」ツルペター

賢者「胸でなく身長の話だよ」←165㎝

ゾンビ娘「くっ…」←150㎝


ゾンビ娘「…もういいです。そこらのモンスターに殺されて来ます。さようなr(ぐぅ~)」

ゾンビ娘「んなっ///」キュルルゥ~

賢者「おやおや」

賢者「お腹空いたのかい?それなら、そこの街でお昼ご飯でも一緒にどう?」

ゾンビ娘「そんなお金ありませんよ」クルル~

賢者「勿論ご馳走するよ!」

ゾンビ娘「まぁ、私も餓死だけは嫌ですから…仕方ありませんね」キュウ…

賢者「シチューが有名みたいだよ」テクテク

基本的にDQとFFがごちゃ混ぜになった世界だとお考えください。


 ―――――――
  ~時計塔の街 -大衆食堂‐

店主「いらっしゃいまほー!こっちのカウンター席へどうぞー」

賢者「シチュー2人前お願いします」

<ハーイ!ショウショウオマチヲー

ゾンビ娘 ガジガジ

賢者「お腹が空いたのはわかるから、僕の腕を噛まないで。ていうか地味に鋭いね、歯」イタイイタイ

ゾンビ娘「ゾンビ化の影響ですね。お腹が空くと、何かをかじりたくなります」ガ~ジガ~ジ

賢者「今は生き返ってるでしょ」

ゾンビ娘「+αであなたへの個人的な恨みです」


ゾンビ娘「それに、私は普通のゾンビ化とは誕生に大きな違いがありましたから」ピクッ

賢者「まずゾンビ化自体、数件しか確認されてない珍しい事例だから、普通がよくわからないよ」

ゾンビ娘「まぁ、お昼奢ってもらうわけですし、教えてあげましょう。でもその前に…」クンクン

店主「はいっシチュー2人前!おまちどーさま!」

ゾンビ娘「ご飯を食べましょう」ジュルリ

賢者「君の鼻は犬か何か?」

ゾンビ娘「ゾンビです」<●> <●>ジーー

賢者「獲物を狙うモンスターの眼だ…」


 ―――――――
  ~時計塔の街 ‐時計塔展望台‐

ゾンビ娘「ごちそうさまでした」ケプッ

賢者「あの後、3回もおかわりするとは思わなかったわ…」

ゾンビ娘「200年ぶりのまともな食事でしたからね。
     ゾンビ状態は味覚が麻痺してましたし」

賢者「普段は何を食べてるの?」

ゾンビ娘「野生動物の肉とか、キノコとかです。味はわからないから、腹に押し込んでいただけですけどね」

ゾンビ娘「それを考えれば、レイズされたことには感謝しますよ。ご飯に関して だ け はね」

賢者「君は本当にご飯のことになると性格が変わるね」

   ――――ゴォーン―ーーー ゴォーン―
        賢者「彼から聞いた通り変わってないね」ボソ
             ーーー――ゴォーン――――

ゾンビ娘「何か言いました?」

賢者「3時の鐘だなって」


ゾンビ娘「おやつの時間ですね。さっきの店主がくれたクッキーでも食べましょう」つ クッキー

賢者「ふふっ面白いよね。『お嬢ちゃんらべっぴんさんだから、サービスであげるよ』だもん」つ クッキー

ゾンビ娘 カリカリカリッ

ゾンビ娘 モッキュモッキュ

ゾンビ娘 サクサクサクッ

ゾンビ娘 モッキュモッキュ

賢者(リスみたいでかわいいなぁ…)サクサク

賢者「街の外ではあんなに自殺しようとしてたのに、今はやらないんだね」ノコリハアゲル

ゾンビ娘「それは当たり前です」ドウモ

賢者「どうして?ここから飛び降りれば一発だよ?」

ゾンビ娘「あなたは私を生かしたいのか、殺したいのか…」サク…


ゾンビ娘「まぁ理由としては、ここが街の中心だからですよ」

ゾンビ娘「モンスターになれば、住人は怯えて警備兵を呼ぶ。
     そうなったら、私が街の外に出ることは叶わないでしょう」

賢者「もしかして…ゾンビの状態で死んだりしたら…」

ゾンビ娘「人として死ねない私にとって、本当の『死』になるかもしれません」

ゾンビ娘「私も、死ぬのは怖いですから…」ポリ…

賢者「……………。」

ゾンビ娘「あ…。そ、それで、ゾンビ化についてでしたね」

ゾンビ娘「え~と。普通、ゾンビ化というのは…」

   ――――――――――
 ――――――――――――

  一般的に、人間は死んだ後、少しずつ『魂』が劣化して消えていく。
  そのとき、完全に魂が消える前に、『ネクロマンサー』と呼ばれる者達が呪術によって、
 魂に無理矢理身体を定着させる呪いをかけることで生まれる存在。それこそが『ゾンビ』である。

  術者の奴隷として使役されるが、身体が朽ち果てるまでしか活動できない。
 稀に術者を殺して、使役状態から解放される個体もいる。

  冥界から召喚される【喰鬼(グール)】と呼ばれるアンデッドの違いは大きく2つ。
 1つは、すでに魂が現世から消えていること。
 もう1つは、魂の入れ物たる肉体が、魔力によって創られた偽物であること。

  これにより身体が朽ちることは無いが、本物の「ニク」を求め、喰らおうとする欲求が生まれる。

 ――――――――――――
   ――――――――――



ゾンビ娘「…という感じです」

賢者「なんか凄く渋い声がナレーションした気がする」

賢者「死者使役呪文 か…それは確かに数が少ない訳だね」

ゾンビ娘「いわゆる禁術ですからね」

賢者「それで、君は他のゾンビとは違うと言っていたよね?生前は何の職業だったの?」

ゾンビ娘「私はゾンビになる前…





     かつての勇者のパーティーの1人。巫女、つまり僧侶をやっていました」

賢者「勇者の…」

ゾンビ娘「はい。回復から蘇生呪文まで使える万能ゾンビです」エッヘン

賢者「でも僧侶等の神官職は、その魂に神の加護を受けるから、呪術的な力に耐性があるって聞いたけど?」

ゾンビ娘「私は魂に呪いがかけられた訳じゃないんです」

賢者「それはどういう…」
          ――ゴォーン―――ゴォーン――――ゴォーン―――――ゴォーン―――ーーー

ゾンビ娘「…………すぐに暗くなるでしょう。それでは、さようならっ」タッタッタッ

賢者「あ、ちょっと!」

賢者「行っちゃった…」


 ―――――――
  ~時計塔の街 ‐大衆食堂‐

賢者「宿が取れなくてどうしようかと思っていたけど、食堂の店主が泊めてくれたよ。やったね」

<ギシギシアンアン

賢者(隣室から聞こえる、店主と奥さんの営みの音さえ無ければなぁ)

<ジュモンデドクゼメッ? ァン!

賢者「……【結界呪文】」

      シーーーン

賢者「よし、寝よう」

  テーレレーレ レッテッテン♪
 ―――――――


  ~森 ‐木のウロ‐

ゾンビ娘(…危なかった。あのままペースに乗せられていたら…)つナイフ

ゾンビ娘「くぅっ!」ドスッ

  ゾンビ娘は力尽きてしまった▼

       ポゥ…メキメキ  シュウゥゥ…

 ゾンビ娘はゾンビとなった▼

ゾンビ娘(こんなもの、誰にも見せたくありませんから…)ギチッ

 ――――――――――――――――――

???「夜が明けるまで、彼女は自らの肩を抱いて震えていましたとさ」

 ――――――――――――――――――
 ――――――――――――――
 ――――――――――――――――――――


~時計塔の街 ー門前ー

賢者「わざわざ見送りまで…ありがとうございます」

店主「何の!またいつか店に来てもらえれば!」

店妻「お弁当です。お腹が空いたら、食べてください」ニコッ

賢者「ありがとうございます!大事にいただきますね!」

店妻「《あなたの旅路に、生命の光輝かんことを》」

賢者 ペコリ スタスタ


店主「…あの子は、この旅でどうなる?」

店妻「結界呪文で邪魔されたのもあるけど、真っ暗な景色しか視えなかった………」

店主「また、会えるのかねぇ」

店妻「それも視えなかった。でも、きっと…」

店主「なら大丈夫だ!」ハハハ―――――――


賢者「ん~秋とはいえ、まだ暑いね~ん?」

  モンスターがあらわれた▼

 スライム×3
 クァール×2

賢者「はぁ…【*****】」

モンスター「ピギュエッ!?」グチャッ

賢者「相変わらず、狂った生態だなぁ」

  モンスターをたおした▼
 テレテテーレーテーレッテレー♪


 ―――――――
  ~森 ‐遺跡‐

賢者「さて、ここにあればいいんだけどねぇ」ザッザッザッ

|木|×××「……。」コソッ


賢者「…………」スタスタ

××× コソコソカチャカチャ

賢者「………。」フリムキ

壁|×ミ  カクレッ

壁|×   ドキドキ

賢者(何か尾行されてる…)クルッ

×××「♪」カチャカチャ

賢者「ダ~ルマさんが~」

×××「!」

賢者「こ~ろんだっ!」

壁|×ミ ピタッ

賢者「ダ~ルマさんが~」

×××「♪」カチャカチャ

賢者「バク転からの倒立後転っ!」バッ

×××「!?」

賢者「よし!作戦成功!」

××× アタフタオドオド

賢者「骨の…犬?」

ゾンビ娘「フランケンシュタイニーです」

賢者「あらら~どうしてここに君が?」

ゾンビ娘「こっちの台詞ですよ。ここは私の持つテリトリーですから」

賢者「何か凄くモンスターっぽい」

ゾンビ娘「ゾンビですもの」

賢者「で、その犬(?)は一体?」

ゾンビ娘「フランケンシュタイニー。私の使い魔です」

賢者「名前長すぎるよ。よし、君の名前は…今日から『骨っ子』だ!」

ゾンビ娘「僕っ子が骨っ子とか名付けないでください」

骨っ子「♪」フリフリ

ゾンビ娘「ああっ気に入ってる!」ガーン


ゾンビ娘「前の名前の方が格好良かったよね?ね?」

骨っ子「………!」

ゾンビ娘「{こっちの方が短くて好き!}って?…そう」ショボーン

賢者「ドヤァ」【レイズ】

ゾンビ娘「この状況で更に追い討ちとか、あなたは悪魔ですか」ドヨーン

賢者「僕はあくまで賢者だよ?」【リレイズ】


ゾンビ娘「」

賢者「ごめんね。魔力使って探索するからしばらくそのままで。ゾンビだと、微妙に魔力反応がちょっと…ね」

ゾンビ娘「……っ」ビクッ

賢者「微妙でも、魔力探索の邪魔になるから…本当にごめん」

ゾンビ娘「……いえ」

賢者「じゃあちょっと探させてもらうよ」

賢者「ハッ」【******】


賢者(この奥に…喰鬼が2体。その更に奥の壁…) ポォ―――ンポォ――――ン

                   ザザ…ザ

賢者「! 見つけた!けどごめん!おそらく気付かれた!」


 喰鬼A「にグゥゥぅぅうぅ!!」
 喰鬼B「喰ワせロぉおォォオオ」

賢者「先制杖アタック!」

喰鬼A「アリガとウござイマすっ!」13ダメージ

喰鬼B「巫女サん はァハァ」

ゾンビ娘「こいつ等気持ち悪いです」


ゾンビ娘「早くレイズで消し去ってください」

賢者「もうやってるよ」

喰鬼AB「「ウッひョー気モてぃー」」

賢者「どうやら耐性持ちみたいだ」

ゾンビ娘「気持ち悪くて吐きそうです」


ゾンビ娘「だったら焼き払ってください」

賢者「あいにくと、僕は攻撃呪文を覚えてなくてね」

ゾンビ娘「\(^o^)/」


賢者「だけど…     『再生』呪文なら!!」

             【真・ホイミ】


喰鬼A「エクすタしぃぃィイイ!!」グチャッ

喰鬼B「うグぐ…まだ死ねヌヨ…YESロリータ!let'sタッ…」

  三 >>>―喰鬼B「 」―>
     ブスッ

ゾンビ娘「誰がロリですか」|)

賢者「へぇ弓使いだったんだ」

ゾンビ娘「巫女が持つ破魔矢です。それより、ホイミで殺害って…」

賢者「これは真・ホイミ。魔力さえあれば際限なく再生できる、古に創られし原初の呪文だよ」

賢者「回復自体、魔力に干渉して代謝を促し再生するものだからね。限界を越えた速度の代謝を繰り返せば…」

ゾンビ娘「……{肉体が耐えられなくなって、崩れていく}」

賢者「そういうこと。理解が早くて助かるよ」

ゾンビ娘「今のはこの子の言葉です…」

骨っ子「♪」

賢者「Oh…」


ゾンビ娘「それはそうと、この先行き止まりで何もありませんよ?」

賢者「ん?ああ、用があるのはその行き止まりの壁」

  賢者は指で行き止まりの壁を指し示した。

賢者「そこに刻まれた文字にね」

ゾンビ娘「文字?ただの傷にしか見えませんよ」

賢者「僕の先祖は字が下手だったからね」

ゾンビ娘「先祖…?」


 ―――――――

???「何を隠そう、賢者はかつての勇者の子孫でね」

???「勇者は戦いの後自らの呪文を危険なものとして、各地に封印していたんだ。
    というかゾンビ娘もパーティーの1人だったなら、賢者の顔を見て何か反応してくれればよかったのに」

???「ゾンビ化して頭まで劣化したのかな?ついでに覚えている事はないか聞いてみたら…」


     ――『勇者達との旅が、全て思い出せない』


???「旅をした事実は覚えている。でも、思い出の全てを彼女は失っていたんだよ」

???「本当に、ゾンビ化の影響なのかもしれない」

???「忘れられたのが自分じゃないとしても、なんとなく、寂しい感じがするな」

 ―――――――


賢者「…………。」

  文字が輝き始めた▼

賢者「あっ文字を記さないと…」ゴソゴソ

ゾンビ娘「それは…?」

賢者「勇者の冒険の書だよ」

ゾンビ娘「今となっては国宝級の代物ですよね、それ」

賢者「去年の夏に偶然家の屋根裏で見つけたんだ」


ゾンビ娘「何か私について書かれてませんか?」

賢者「残念だけど、何も書かれていない。これは勇者が魔王を倒した後、独りで旅をした記録なんだ」


ゾンビ娘「勇者さんは平和になった世界で何をしていたのでしょう」

賢者「どういう事情かは分からないけど、彼は女神に喧嘩を売ったらしくてね…
   そこで勇者の存在の理由と、その力の恐ろしさを知ってしまった」

賢者「自らの力を恐れた勇者は、呪文を封印する旅に出たんだよ」


ゾンビ娘「それをどうしてあなたが解放しているんですか?」

賢者「ん~ご先祖様の力が知りたかったからかな?」

ゾンビ娘「好奇心の塊ですね」

賢者「色々あったけど、僕はこれまで、2つの勇者の呪文を覚えてきた」

賢者「さっきの真・ホイミも、その1つだよ」

ゾンビ娘「この壁には何が書かれていますか?」


賢者「え~と【パル…プ…ンテ】…?」

  ティロリロリロ♪


賢者「ん?冒険の書に何か浮かびあがって…
   『この呪文は何が起こるか分からないから気をつけてね★勇者より』
   先に言えよ!」

ゾンビ娘「何にも起こってませんよ?失敗では?」

賢者「いや…僕の魔力量だったら、とんでもない影響がでてもおかしくない」

骨っ子 ナンニモオコッテナイヨ?

賢・ゾ「「!!??」」


 ―――――――

???「いやーあの時はびっくりしたね。まさか喋れるようになるとは」

???「あまりの驚きで、彼女がショック死したしね」ケタケタ

???「まぁリレイズが発動したし、賢者はそこまでのリアクションは見せなかったけどね」

???「でも、彼女がもっと驚くのは、遺跡を出た後だった」

 ―――――――


賢者「一緒に旅をしない?」

骨っ子 オサンポ?

ゾンビ娘「えぇーっ!?」ザクッ

賢者「驚きと同時に自殺しないでよ。
  ほら、ゾンビ化を解く方法もあるかもしれないし」

ゾンビ娘「でも、なんで出会ったばかりの私を?」

賢者「その昔、勇者様は言いました。
   『可愛い女の子と男の子は問答無用で助けなさい』と…

     それに…」









賢者「いじめるのがたのしくって!」【レイズ】

ゾンビ娘「この悪魔ーー!!」

骨っ子 アクマー


 ―――――――

???「こうして、僕らの旅は始まったんだ」


      ゴーン‐―‐―――――ゴーン‐―‐―――――
             ゴーン‐―‐―――――ゴーン‐―‐―――――


???「ん~夕暮れの鐘が鳴り始めたね。はやく帰らないとすぐに暗くなっちゃうよ?」

???「大丈夫、明日もここにいるからさ。今日の話はここまでだよ。また明日ね」ノシ

 ―――――――

ゾンビ娘「なんで私が僕っ子ドSの旅のお供なんかに…」ザクッ

賢者「レイズするのはご飯の時だけって約束したら速攻で手のひら返したじゃん」

ゾンビ娘「ハァ…げんなりします」

骨っ子 オサンポタノシイナ~♪


  ~森 ‐泉‐

賢者「迷った」

ゾンビ娘「困った」

骨っ子 タノシイナ~♪

賢者「この森に住んでたんじゃないの?」

ゾンビ娘「あなたこそ、さっきの魔力探索?で道が分からないんですか?」

賢者「僕の【真・ライブラ】は、魔力とステータスしかわからないんだよ」

賢者「身長150㎝体重○キロバスト…」

ゾンビ娘「なに人のステータス調べているんですか」

賢者「217歳の処…」

ゾンビ娘「てぃっ」-_-)=○☆ )者「ぐはっ」


ゾンビ娘「あなたのステータスを明かすことを要求します」プンスカ

賢者「Lv.13
   HP    77/143
   MP  くぁwsdrftgyふじこlp;@:
   攻撃力   28
   防御力   77
   素早さ   42
   かしこさ  95
   運    999

     持ち物
   E:賢者の杖

       ひのきのぼう
       とがったほね
       こんぼう
       しあわせのぼうし
       のこぎりがたな
       みかわしのふく

       旅道具

   だよ?」

ゾンビ娘「そのステータスじゃないです」


賢者「日が落ちそうだね。仕方ないから今夜は野宿しよう」

ゾンビ娘「食糧でも狩ってきます」ダッシュ

賢者「速っ」

賢者「…戦って汗かいたし、水浴びでもしようかな」ヌギヌギ

骨っ子 ボクモミズアソビスル~

賢者「おっ君も僕っ子かい?」

骨っ子 ボクハオトコノコダヨ


 ―――――――

ゾンビ娘「猪が狩れました」ズルズル

猪「」ズルズル

ゾンビ娘「ただいま~あれ?いませんね」


賢者「骨っ子を洗ってただけだよ」ワキワキ

骨っ子 ///

ゾンビ娘「うちの子に何をしたんですか」


 ―――――――

???「彼女が狩った猪は美味しくてね。全部食べちゃったんだ。彼女がね。
    その後は、賢者が辺りに結界を張って、ぐっすり眠ったんだよ」

???「でも、明け方に彼女が水浴びをしに結界の外に出ちゃってね…」

 ―――――――


          ――――バシャッ

ゾンビ娘「ふぅっ水浴びは気持ちいいですね」

<ガサッ

ゾンビ娘「!?」

オーク「あの女騎士怖い…ん?」

ゾンビ娘「オ、オーク…」

オーク「女ァーー!」

ゾンビ娘「ヒッ!い、嫌っ来ないで下さいっ」

オーク「ふひひ」ルパンダイブ

ゾンビ娘「いやぁぁぁあ!!」


     ザ ラ キ
  「【 殺 羅 鬼 】」

オーク「」死ーん


骨っ子 ゴシュジン!ダイジョウブ?

賢者「よかった間に合った!」

ゾンビ娘「賢者様!骨っ子!」


骨っ子 アノオークマタキタノカ

ゾンビ娘「え?」

賢者「骨っ子を洗ってた時にも、僕を襲いに来たんだ」

骨っ子 カエリウチニシタケドネ


賢者「さぁ、お仕置きといこうか?」にっこり


   【レイズ】!
   【ザラキ】!
   【ザオリク】!
   【デス】!
   【レイズ】!
   【リレイズ】!
   【真・ホイミ】!!


オーク「あがががが」ガクガク

ゾンビ娘「えげつねぇ…」

骨っ子 エゲツネー!


賢者「とりあえず服を着てください」←拷問継続中

ゾンビ娘「女同士で恥ずかしがることもないでしょう」スッパダカ

賢者「え?」

ゾンビ娘「え?」

オーク「え!?」

骨っ子 ケンジャサマハ オトコノコ ダヨー

ゾンビ娘「え?」








ゾンビ娘「………………きゃああ!!」///

 ―――――――
  ~森 ‐出口‐
オーク「ここが森の出口ですゴメンナサイ」

賢者「ご苦労さま」

オーク「ヒィッ!ゴメンナサイ!」

賢者「君の仕事は終わりだよ。森へ帰れ【バシルーラ】」ブワーブワー

賢者「さて、こっちはどうしょう」

ゾンビ娘「……………。」

骨っ子 ゲンキダシテヨ ゴシュジン


賢者「いい加減機嫌を直してよ。次の街でケーキ買ってあげるからさ」

ゾンビ娘「そんなもので釣られませんよ」ツーン

賢者「次の街はイチゴが名産品だから、イチゴのタルトとかかな~」

ゾンビ娘「!ぐぬぬ…」

賢者「ホール丸ごと」

ゾンビ娘「仕方ありませんね」

骨っ子 ゴシュジンゲンチョロイ!


ゾンビ娘「だいたい、あなたは女顔で線が細いし、まだ声変わりしてないから声が高いしで、」

ゾンビ娘「そりゃあ間違えますよ!あなた襲われそうになったとか言ってたじゃないですか!嘘でしょ!」

賢者「それは本当。あの男は、最初から僕が男だと見抜いて襲ってきたからね」

ゾンビ娘「えっ?///」ドキーン

賢者「そんなとこまで腐らないでください。レイ○しますよ?」

ゾンビ娘「何故伏せ字に!?」

賢者「まぁ、女の振りをしている方が何かと得だからね。意図的にやってたことは認めるよ」

ゾンビ娘「クッキーの件もあるから、あんまり怒れません」


ゾンビ娘「それで、次の街まではどのくらいで着きますか?」

賢者「途中で勇者の遺した呪文がある洞窟に寄るから…3日ってとこかな」

ゾンビ娘「あうっ…」シュン

骨っ子「わうっ」フリフリ

賢者「吠えれるんだね…骨なのに」


賢者「そういえば街に入るとき骨っ子はどうしよう」

ゾンビ娘「外に居させるのも可哀想だし…」

骨っ子 ネェネェ!

賢者「ん?何?」

骨っ子 ボク、【モシャス】ツカエルヨ!

   ボワン☆

骨っ子「ね?すごいでしょ!?」ホメテホメテ!

賢者「可愛いショタっ子が出てきた」

ゾンビ娘「骨っ子×僕っ子…」ボソッ

賢者「【レイズ】」


 ―――――――
???「その後一度野宿をして、件の洞窟に行ったんだ」

???「この間に唱えたレイズの回数は23回。遊びすぎだよね」

???「でも、この洞窟の呪文は、開放とセットでとんでもないものになってしまった」

 ―――――――


  ~洞窟 ‐内部‐
ゾンビ娘「じめじめしてて、ゾンビには過ごしやすいです」

骨っ子 ボクモソーオモウ

賢者「そんなこと言ってないで戦ってよ」

  プリン×3

ゾンビ娘「だって物理攻撃がほぼ効かないんですもん」

賢者「こいつホイミ効かないんだよ。ザラキも生きてる奴にしか意味ないし」

骨っ子 【イオラ】チュドーン

  プリン×3「」

賢者「」ゾンビ娘「」

骨っ子 タオセター♪ホメテホメテー

ゾンビ娘「うん。いい子だネ…」ヨシヨシ

賢者「この子強過ぎない?」ヨシヨシ

ゾンビ娘「私の使い魔ですから。この調子で次も頑張ってね」

骨っ子 マカセトケ!
          ――――ドガーンバゴーン


賢者「だいぶ進んだので、そろそろ魔力探索しますか」【真・ライブラ】

賢者(分かれ道にそれぞれに反応がある…右はさっきのモンスターだらけ。僕らじゃきついな)

賢者「見つけた。左側の道」

    ザ…ザザザ
賢者(ん?洞窟の入り口で魔力反応?    消えた…気のせいか?)

ゾンビ娘「早く進みましょう」

賢者「あ、あぁ行こう」


壁《彼の者の勇気の証。その資格無しには、何人も護ることは叶わないだろう》

賢者「《その呪文の名は…」
ゾンビ娘「きゃあ!!」

骨っ子「キャインッ」

賢者「! どうした!?」

氷の巨人《悔い改めよ。手にしてはならない力。その力に見合う力があるならば闇のワルツを我と踊らん》

賢者「何だこいつ…!?文法おかしくない!?」


ゾンビ娘「賢者…さ…」HP38/260

骨っ子 …。HP6/75

賢者「【ベホマズン】!」

ゾンビ娘「ケホッ助かりました」†全回復†

骨っ子「グルルル」†全回復†

賢者「【真・ホイミ】!【ザラキ】!!」


氷の巨人《力無き咎人よ。何ゆえに罪を重ねるのか》

ゾンビ娘「効いてない…!?」

賢者「骨っ子!呪文をお願い!僕らじゃ戦えない!」

骨っ子 ワカッタ!【イオナズ…フシュン

骨っ子 マリョクガタリナイ!

賢者「くっ【バイキルト】!ゾンビ娘!奴を叩いて!」

ゾンビ娘「食らいなさいっ」【ゼロ距離爆弾矢】ズガン

氷の巨人《ぐおぉおおお》158ダメージ


ゾンビ娘「ぐ…っ」ジュウッ…

賢者「ゾンビ娘!手が…!」

ゾンビ娘「問題ありません!」シュオオ

骨っ子 ゴシュジンノテガナオッテイク!

ゾンビ娘「ある程度なら自動回復してくれます!あっ 賢者様!前!」

賢者「え?」

氷の巨人《【津波】》

          ――――ザザザバアァァァァァァァァ


賢者「くっ……………ん?」

ゾンビ娘「」HP5/260

骨っ子 HP2/75

賢者「そんな、僕を庇って!?」


氷の巨人《悔い改めよ…》【津波】

賢者「このままじゃあみんな死…」


 ―――「人として死ねない私にとって、本当の『死』になるかもしれません」

 ―――「私も、死ぬのは怖いですから…」


ザザザザザザァァァァァァァァ
賢者「ああああああああああああああああああああ!!!!」



         ―――ドクンッ

       壁《彼の者の勇気の証。その資格無しには、何人も護ることは叶わないだろう》
        《その呪文の名は【ライデイン】。五行を外れし稲妻の力なり》

              ―――――パチッ


;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;


 ―――――――
  ~洞窟 ‐外‐

ゾンビ娘「んっ…あれ…ここは?」

骨っ子 ドウクツノソトダヨゴシュジン!

賢者「良かった!気がついたんだね」

ゾンビ娘「あの巨人は、どうなりましたか?」

賢者「新しい呪文で蹴散らしたんだ。でも消費魔力が多すぎて、操作しにくくてね。辺り一面を焦がしちゃった…」


           ――――ザリッ


●●●「なかなかに強い勇者の呪文だね 賢 者 様 ?」

ゾンビ娘「!?」

●●●「な~に鳩がイオナズン食らったような顔してんだよ」

賢者「…君は誰だ。どうして僕を知っている?」

●●●「クククッあたしは女騎士。あんたと同じ勇者の呪文を求める者さ」

賢者「勇者の…!?」

女騎士「とは言っても、あんたが覚えてきたような生やさしい守護呪文なんかじゃないがね」

女騎士「あたしが覚えるのは勇者の闇の部分。殲滅呪文さ」

女騎士「こんな風なね」

             【アルテマ】

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;


 ―――――――

???「次の瞬間には、洞窟が跡形も無くなっていたんだ」

???「あの女騎士は、『これがあんたらが探せなかった右側の呪文さ』」

???「『また会う事になるだろう。呪文を奪うのはその時にでも…』そう言い残して行きやがってね」

???「僕らは瀕死のまま、ここで夜を越える事になったんだ」

 ―――――――


(…さま…賢……!)

賢者(あ…れ……?誰……)

ゾンビ娘「賢者様!」

賢者「う、ぐぐ。みんな無事かい?」

骨っ子 ケンジャサマガケッカイヲハラナカッタラアブナカッタヨ

賢者「あいつは…?」

ゾンビ娘「また会うことになるだろうって…」

賢者「僕としてはもう二度と会いたくないね」


賢者「あれ?みんな怪我が治ってる?」

ゾンビ娘「私は回復呪文が使えるって言ったでしょう?」ドヤァ

骨っ子 ゴシュジンカッコイー!

賢者「ありがとう。休みたいだろうけど移動しよう。早く進まないと、今日中に街に着けないよ」

ゾンビ娘「わかりました」

骨っ子 ラジャー

 ―――――――

そして夕暮れ時

  ~朱実の街 ‐門‐


衛兵「じゃあ、ここに名前と性別。それから、滞在日数を記入して。」

賢者「はい。わかりました」

骨っ子「ました~」

衛兵(ロリやショタはともかく、この人かわいいな~)ニヤニヤ

衛兵「えっ男!?」(@_@ ギョッ

賢者「もう街に入ってもいいですか?」

衛兵「あ、はい。ドウゾ」ショボーン


ゾンビ娘「毎回こんなやり取りを繰り返しているんですか?」

賢者「そうだよ。人を見た目で判断するのはよくないのにね」

ゾンビ娘「私達の内、2人がモンスターですからね」

賢者「別に君たちは悪いことしてないし」

骨っ子「でも、もしボクらがモンスターだってバレたら?ボクあんまり長くモシャスしてられないよ」

賢者「その時は、僕がモンスター使いという設定で」


ゾンビ娘「あ!ケーキですよ!買いに行きましょう!」ダッシュ

賢者「待て」ホカク

骨っ子「はいっ」ピシッ

賢者「君じゃないよ。ケーキはまた明日。まずは宿をとらないと」

骨っ子「もうモシャスが消えそうだヨ」ピシッ

賢者「ほら行こう。あと骨っ子、君に言ったわけじゃないからもう楽にしていいよ」

骨っ子「ヤッタ!」


 ―――――――
次の日
 ~朱実の街 ‐カフェ‐


ゾンビ娘「美味しいです」パクパク

骨っ子「です!」モグモグ

賢者「それは良かった」つ紅茶

ゾンビ娘 サクサク パクパク

ゾンビ娘 モッキュモッキュ

ゾンビ娘「むふふ」

骨っ子「ご主人リスみたい」

賢者「相変わらずかわいい食べ方だね」

ゾンビ娘「これも美味しいです」ムシャムシャ

賢者(さようなら僕のショートケーキ…)


女騎士「よう!相席いいかい?」

賢者「ぶっ!?」ブーーーー

女騎士「きったねぇな~」

賢者「けほっ…あまりに早い再開に、驚きを隠せないよ」

骨っ子「う~」

女騎士「それはあたしもだ。まあ邪険にすんなよ犬っころ。その姿で唸っても可愛いだけだぜ」ヨッコイショ

賢者「僕らに何の用だい?」

女騎士「全然警戒してねぇな、あんた。まあ流石にあんだけの大規模魔法だ。しばらくは何もできないしな」

女騎士「あんたも魔力がスッカラカンだろ?」

賢者「いいえ?君のアルテマだったら、何十回と放てると思うよ」

女騎士「はっ!ハッタリかましてんじゃねえよ」ケケケ

骨っ子「事実だよ!」

賢者「僕の魔力は魔王30体分あるよ」Lv.17

女騎士「」

ゾンビ娘「うまうま」ホワーン


女騎士「あんた化け物じみてんな」

賢者「お互い様だよ。勇者の呪文を解放するたびに魔力が増えていってね」

女騎士「あたしも今まで7つの呪文を解放して、そのたびに魔力は増加したけどよ…それでも魔王3体分だ」

骨っ子「ばけもの同士の会話だー」

女騎士「で?お前は一体いくつの呪文を解放したんだ?」

賢者「全部で4つだよ」

女騎士「はぁ?70つの聞き間違いか?」

賢者「4つだよ。多分、潜在能力の違いだろうね。
   僕は賢者。君は騎士。魔力のステータス上昇に、違いがありすぎる」

女騎士「まぁ、騎士はレベルアップで魔力は増加しないもんな。」

骨っ子「魔法音痴ー」

女騎士「黙れ犬っころ。襲うぞ?性的に。」


ゾンビ娘「すみません。ミルフィーユ~オラクルベリーを添えて~を追加で。」


女騎士「んじゃ。そろそろ行くわ。今喧嘩ふっかけられたら負けそうだしな」

女騎士「次会ったら戦闘だ」チャリン


骨っ子「行ったね」

賢者「ふぅ~緊張した~」

ゾンビ娘「ん?誰か居たんですか?」ケプッ

賢者「おぉ…君のスルースキルには脱帽するよ」

骨っ子「食事スキルの間違いだよー」


 ―――――――

  ~朱実の街 ‐カジノ‐

賢者「さて、ここいらで旅の資金でも稼ぎますか」

ゾンビ娘「大丈夫ですか?」

賢者「僕のステータスを覚えてる?」

ゾンビ娘「納得です」

賢者「コインは百枚でいいかな」

 ―――――――

???「まぁ、モンスターバトルとスライムレースを往復するだけだったけど」

???「結局、一万くらいまで稼いで終わったかな」

???「何かスロットの所で騒いでる女がいたけど」

???「なんか女騎士ぽかった気がする。見つからなくてよかったよ」

???「あぁ。その後かい?えーと…」

 ―――――――


その日の夜
  ~朱実の街 ‐宿屋‐

賢者「だから酢豚にパイナップルはムニャムニャ」スピー

骨っ子 ウーンオネエサンッソコハダメッ

ゾンビ娘「………。」ゴソゴソ

       ザクッ
         ポゥ…メキメキッ

ゾンビ娘「…っ!」トテトテ

         キィーパタン

 ―――――――


翌朝

賢者「何で死んでるの?」

ゾンビ娘「ごめんなさい 我 慢 できなくて…」

賢者「まぁいいけどね。朝ご飯食べに行こう」【アレイズ】

ゾンビ娘「骨っ子は起こさないんですか?」

賢者「だって…」   骨っ子 オネエサン!コンドハボクガ!ムニャムニャ

賢者「楽しそうだし」

―――――――

ゾンビ娘「そう言えば、どうやって呪文の場所を探しているんですか?」

賢者「呪文を解放するたびに、冒険の書に文字が浮かび上がるんだ。その使い方と、次の呪文の在処がね」

ゾンビ娘「へ~うまいことできてますn「Hey!」…え?」


チャラ男「Hey!そこのかわいこちゃん達!朝ご飯かい?俺っちも相席していいかい?いいよね!」

ゾンビ娘(うざい…)


チャラ男「いやー君たちここら辺じゃ見ない顔だね~旅の子?」クッチャクッチャ

ゾンビ娘「え、ええ」イラッ☆

チャラ男「うっひょー!君かわウィーねー!」ブバッ

賢者(きたなっ)イラッ☆

チャラ男「そーだ!これからどっか遊びに行かない?」クッチャヌッチャ

賢者「」ブチッ【災いの呪詛】

賢者「お断りします。帰ろう、ゾンビ娘」チャリン

ゾンビ娘「あ、はい」ガタッ


賢者「クチャラーは滅べばいいんです」

ゾンビ娘「さっきは何をしたんですか?」

賢者「ちょっと軽く呪いをね」

ゾンビ娘「どうなるんでしょうね、あの人」

賢者「今頃、EDになってホモに追いかけ回されてるよ」
<アーッ!!

賢者「ほらね」


 ―――――――

旅支度中 ‐商店街‐

ゾンビ娘「わぁ!苺ジャムですね!」

賢者「日持ちするし、少しならいいかな?」


骨っ子「ご主人ー!賢者様ー!」トテトテ

賢者「やあ、おはよ。夢ではお楽しみでしたね」

骨っ子「?」

ゾンビ娘「覚えてないみたいですよ」

賢者「あんなに愉快な寝言だったのに…」

ゾンビ娘(あなたが言うな)

 ―――――――

  ‐門‐

衛兵「少し調査にご協力下さい」

賢者「なんですか?」

衛兵「ナイフのような武器はお持ちではないですか?」

ゾンビ娘「あ、私がダガーと弓矢を持ってます」

衛兵「少し検査をしても?」

賢者「何かあったんですか?」

衛兵「今朝、男が刃物で刺されて殺害されているのが発見されまして」

衛兵「現在調査中なんです」

賢者「出て行く旅人を疑うのは当然だね」

衛兵「ええ。では、検査いたしますね」【検査呪文】ポゥ


衛兵「…!昨夜、このダガーを使用しましたね!?」

ゾンビ娘「あ゛…」ビクッ

賢者(自殺のか…)

衛兵「少々お話を…「それはこの娘の血です」え?」

賢者「いや~昨夜、少し激しいSMを…」

骨っ子「昨夜はおたのしみでしたね、だね!」

ゾンビ娘「ちょっ!??」///

衛兵(あかん。これ関わったらあかん奴や)

衛兵B「お~い。あの事件、酔った旅の騎士がやったってよ!」
衛兵「本当か!?あ、引き止めてしまってすいませんでした。それでは、よい旅路を!」


ゾンビ娘「方法はともかく、助かりました」

賢者「別に気にしないでよ。僕も面倒事が嫌いなだけだからさ」

骨っ子「そろそろ行こうよー」

賢者「ごめんごめん。行こうか」


ゾンビ娘「……………。」

賢者「どうしたの?置いて行くよ?」【リレイズ】

ゾンビ娘「あっすみません!考え事してました」

賢者「…………?」


 ―――――――
  ~草原 ‐小丘‐

ゾンビ娘「草原でサンドイッチ食べるのもなかなかのものですね」

賢者「風が気持ちいいしね」

骨っ子 キョウハカゼガサワガシイナ

ゾンビ娘「それで、次に向かうのはどこですか?」ムシャムシャ

冒険の書《湖だよwww》

骨っ子「くしゅん!」

賢者「秋でも寒いからね。あったかくして行こう」


ゾンビ娘「さて、腹ごしらえも済みましたし、行きましょう!」

ゾンビ娘「くしゅん!」

賢者「なんだ、ちゃんと風邪はひくんだね」

ゾンビ娘「う~生きてる身体は弱っちいです」ブルブル

ゾンビ娘「ちょっと風邪治しますね」ザクッ

賢者「いや、自殺が治療法ってどうなのよ」


 《 リ レ イ ズ 発 動 》

ゾンビ娘「あれ?いつの間にリレイズを!?」

賢者「気付いてなかったんだね」

ゾンビ娘「まったく。酷いですよ」ザクッ

賢者「ていうかよく一撃で自殺出来るようになったね」

ゾンビ娘「あなたのおかげですね」ジトー

骨っ子 ジサツマスターダ!

賢者「そのうち苦しまずに死ねるようになりそうだね」

ゾンビ娘「もう既になってますよ」

賢者「努力の方向が狂っとる」


  ~湖 ‐中心小島‐

ゾンビ娘「大きな湖ですね」

骨っ子 ミズアソビー!
       腹ビターン

賢者「見事な腹打ち」

ゾンビ娘「沈んでいきます」

賢者「骨だからね」

骨っ子 タスケテー


賢者「呪文はどこだろう」つ冒険の書

冒険の書《湖底の神殿に封印したったwww》

ゾンビ娘「この勇者はどんなテンションでこれを記したのか…」

骨っ子 タスケテヨー

賢者「入口らしきものは見えるんだが…」

ゾンビ娘「閉じられていますね」

骨っ子 ネエッテバー


 ―――――――

???「その直後に彼女が誤って湖に落ちたり、笑いながら手を貸した賢者が引きずり込まれたり」

???「湖から上がって、みんな犬みたいに身震いしたり、楽しかったな~」

???「水切りして遊んでいたら、賢者の投げた石が何かに当たって入口が開いちゃったんだよね」

???「さすが運の良さ999は伊達じゃない」クスクス

 ―――――――


  ~湖底の神殿 ‐内部‐

賢者「うーわー。内部も水だらけだ」

ゾンビ娘「もう既に濡れ鼠ですから気にしません」

骨っ子 イロイロスケテルヨ!ゴシュジン!

  ゾンビ娘の薄い服は骨っ子の言うとおり、水に濡れて若干透けていた。


ゾンビ娘「!」バッ

ゾンビ娘「ううぁぁあ///」ダッ

賢者「捕獲」

ゾンビ娘「離して下さいぃぃぃぃぃ!!」///


賢者「待って!僕は何も見てないから!落ち着いて飛び込もうとした水面を見て!」

骨魚「「「「「やぁ」」」」」キシャー

骨っ子 ナカーマ!?

  そこには、骨だけになった魚『喰魚』が、餌に群がる金魚のように集まっていた


賢者「飛び込んだら骨の髄まで喰らい尽くされるよ」

ゾンビ娘「読んで字の如く…ですね」ゾクッ

骨っ子 ガクガグブルブル


ゾンビ娘「でも、一度水に入らないと進めそうにありませんよ?」

賢者「ん~雷撃使ったら僕らまで死んじゃうだろうし、どうしよう」

 潜って入ってきたから、僕らは勿論びしょ濡れだ

賢者「身体が小さくて流れてる魔力も少ないから、真・ホイミじゃあ干渉しにくいしなぁ」

ゾンビ娘「となると、ザラキやデスも駄目ですね」

賢者「レイズは効くだろうけど、効果範囲は一体ずつだ。
   しかも増殖の魔導式が刻まれてる。一度に全部倒さないと増殖しちゃうよ」


賢者「あ…イチかバチか、やってみる?」

ゾンビ娘「あれですか?」チラッ

骨っ子 コワイヨー

賢者「…うん」

ゾンビ娘「やるだけやってみましょうよ」



賢者「じゃあ…【パルプンテ】」




          ――――バチバチバチッ

  雷の玉が現れ、徐々に落下している▼


賢者「どの道結果は同じだったね。骨っ子おいで」【レイズ】

ゾンビ「え、ちょっとなにを…」†蘇生†

賢者「よっと」ピョンッ

  賢者は杖を足場にして、骨っ子を抱えたまま通常より高く飛び上がった。

賢者「ごめんね☆」

ゾンビ「賢者さまあああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」


          ――――チッ  バリバリバリバリッ!!!


骨魚「」プカァ……

ゾンビ娘「」ビクッビクンッ…

賢者「あ~どうしよ、杖が燃え尽きちゃった」

ゾンビ娘「………私の心配をしてくださいよ」シュゥゥ

賢者「てへっ」

ゾンビ娘「はぁ……」



数日書きためたのが一時間ちょっとで消費されるとは……

今日はここまでです。また明日も頑張ります。

 ―――――――

骨っ子 タカラバコガアッタヨ?

賢者「どれどれ…」カチャ

賢者「!」ゴマダレー

ゾンビ娘「黒い鉄の塊?」

賢者「氷の魔導式が刻まれている…砲筒?小さいから『短筒』ってところかな?」

賢者「使い方は分からないけど、持っておいて損はないだろう」


 ―――――――

???「まぁ、今で言うリボルバーってやつだね」

???「使い方は、意外とすぐに判明したんだよ」

???「この神殿の最深部でね」

 ―――――――


  ~湖底の神殿 ‐最深部‐

賢者「何か触手みたいな水を操る赤い玉がいる」

賢者「ついでにゾンビ娘がその触手に捕まってる…と」

骨っ子 ゴシュジーン!!

ゾンビ娘「この水、体中をまさぐってきます。凄く不快です」

水棲核獣「…………。」ウジュウジュ

賢者「またもやライデインの出番は無しですか」


賢者「生物かどうかも怪しい奴だなぁ」

ゾンビ娘「早くなんとかしてください。触手が気持ち悪いです」

賢者「ごめん。僕の呪文じゃあどうにも出来ない」


ゾンビ娘「そんな…ひゃっ」ビクッ

骨っ子 ゴシュジン!【イオ】【イオラ】【イオナズン】

水棲核獣「……?」ノーダメージ


賢者「ん~もしかしたら、こいつに対応出来る呪文が封印されてるかな?」

賢者「先に呪文を解放してくるよ!もうちょっとだけ待ってて!」

ゾンビ娘「えぇ!?待っあっ!ちょっと!触らないで!」

骨っ子 ボクモツカマッチャッタヨ…

水棲核獣「♪」

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

賢者「《大いなる流れから時は生まれる。流れに抗いし愚者よ、汝を時に縛り付けよう》」

賢者「【ストップ】」

  :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

骨っ子 ウゴキガトマッタ?

賢者「ゾンビ娘~無事かい?」

ゾンビ娘「ナントカ…」脱出

賢者「目のハイライトが消える寸前だ。間に合った」

ゾンビ娘「何の基準ですか。何の。それで、今度は何をしたんですか?」


賢者「あいつの時を止めただけだよ」

ゾンビ娘「だけじゃ済まないほどヤバい呪文じゃないですか」

賢者「正確には魔力の流れを止めて、動きを封じただけだよ」

賢者「魔力消費はそんなでもないし、実際に時を止めてるわけじゃないしね」


賢者「それよりも、このまま帰りたいってのが本音」

冒険の書《ボス倒せやwww次の場所教えねぇぞwwwコラwww》

賢者「どうやって倒せというのか」

ゾンビ娘「十中八九あの玉が核なんでしょうけど、ゼリー状の水に包まれていて手が出せません」


賢者「弓で狙撃はどう?」【レイズ】


ゾンビ娘「弾かれますよ」ザクッ


賢者「まぁまぁ、試しに一射」【レイズ】


ゾンビ娘「矢が勿体無いです」ザクッ


賢者「そう言わずに」【レイズ】


ゾンビ娘「チッ一射だけですよ」 三》》―――>

<―――《《三 Σ((●)ポヨーン

ゾンビ娘「デスヨネー」――《《三 サクッ


賢者「あれま痛そう」

ゾンビ娘「そう言えば!もう遠慮なく雷撃使えるでしょう!」

賢者「あ、忘れてた」【ライデイン】

ズガーン パリパリ…

ゾンビ娘「あのゼリーに雷撃が分散されましたね」

賢者「やだ…万能過ぎる…」


    ウジュ…

骨っ子「!」

水棲核獣「…………!」ウジュルッ


賢者「効果切れだね」

骨っ子 ゴシュジン!!

ゾンビ娘「何で私ばっかり狙われるんですか!?」


          ――――ヒュッ

モーファ「!」ズリュンッ

  突然核が引き抜かれる。その先には、いつの間にか人が立っていた


◆◆◆「今日魚がとれなかったのは君のせいか~」ギリリ…

核「…」ガンジガラメ


賢者「ムチ…?」

◆◆◆「ねぇ~そこの君~」

賢者「え、僕?」

◆◆◆「うん~。そうだよ~。でね~その銃でトドメを刺して~?」

賢者「銃?」

◆◆◆「その黒い鉄塊のことだよ~」

賢者「どうやって使えと」


◆◆◆「え~そこから~?じゃ~まず魔導式に魔力を込めて~」


賢者「込めて~?」コォォォ


◆◆◆「後ろのピヨッとした部品を引いて~」


賢者「引いて~?」コッキング


◆◆◆「輪っかの中の引き金を引くの~」




          ――――カチンッ ―【氷結弾】―


核「」カッキーン

◆◆◆「お~お疲れ様~」ヒュンッ

水棲:・.::.・ バラバラ

◆◆◆「さて、よく来たね。賢者君」キリッ

賢者「!あなたは一体…?」


◆◆◆「ウチは勇者パーティーの1人、魔導師の子孫だよ」

◆◆◆「ウィップって呼んでね~」ニヘラ


ゾンビ娘「パーティーの1人…」

賢者「魔導師…」

ウィップ「今じゃあ魔導具使いってのが正しいかな~」

ウィップ「ともかく、君を待っていたよ」キリッ


 ―――――――

  ~湖 ‐湖畔‐

ウィップ「いや~本来は入口を開けるのもウチがやるはずだったんだよ~?」

賢者「てへペロッ」

ウィップ「ん~ ?」ギロッ

賢・ゾ・骨「ゴメンナサイ」ナサイ

ウィップ「代々呪文を守ってきたけど~破られたのは初めてだよ~」ニヘラ


賢者「ザル警備だね」

ウィップ「口のきき方には気を付けろよ?」


賢者「それで、内部にあったこの銃は?」

ウィップ「ウチの弟きゅんがウチのために作ったんだ~失敗作だけどね~」

賢者「これで失敗作?」


ウィップ「ウチの天才弟きゅんでも、失敗はするんだよ~」

ゾンビ娘「具体的にどんな欠点があるんですか?」


ウィップ「威力を上げすぎてね~魔力消費量がレイズ2発分なんだ~君もだいぶ疲れたでしょ~?」

賢者「全く?」

ウィップ「え~?弟きゅんでも何発か撃って倒れたんだよ~?」

賢者「よいしょっと」タタタタタターン

ウィップ「」

ゾンビ娘「この人の魔力、魔王30体分ですから」

賢者「さっきので35体分に増えたよ」

ウィップ「」


賢者「それで、その弟さんはどこに?」

ウィップ「…あっえ~とね~昨日、『風が泣いている…』とか言って、出て行ったんだ~」ショボーン

骨っ子 ナカーマ!

ウィップ「下着盗ったのは謝るから~帰って来てよ~」グスッ

ゾンビ娘(それが原因では)


骨っ子 ナカーマ!ナカーマ!ナカーマ!

賢者「どうしたの骨っ子?」

骨っ子 ダレカガタスケヲヨンデルノ

<タスケテェェェエエ

ウィップ「この声は弟きゅん!?今助けるよ弟きゅん!」キリッ


弟きゅん「クァールめっさ怖ぇぇぇ!」ダッシュ


ウィップ「弟きゅん!今助けるよ!」

弟きゅん「ヒイィィィィ姉さん!?」ズザー

弟きゅん「クァールさん!助けて!」

クァール「喰ったろうかいワレェ」がおー

弟きゅん「誰かぁぁぁぁ!!」


賢者「―【氷結弾】―」ターン

クァール「おぅっふ」ドサ

賢者「【ストップ】」

ウィップ「」ピタッ


賢者「やっと静かになった」

 ――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――

弟きゅん「助かった。見苦しい所を見せたな。礼を言おう」

ゾンビ娘「あれだけ醜態晒した後で、キャラを作れる所に脱帽です」

弟きゅん「うるさいな。武器を忘れたまま出てきちゃったんだよ」

弟きゅん「おかげで一日中走り回る羽目に…」

賢者「災難だったね」

弟きゅん「!」


弟きゅん「おっほ!すげー美人だ!あんたの名前は?」

賢者「僕は男の子だよ」

弟きゅん「」

ゾンビ娘「弟きゅん×賢者」ボソッ

賢者「いい加減にしなさい」【レイズ】


ウィップ「弟きゅーーん!あれ?」

骨っ子 ショウキニモドッタ?

ウィップ「あはは~見苦しい所を見せたね~」

ゾンビ娘「言うことが一緒。流石姉弟です」ザクッ

      ワッハッハッハッハッ



          ――――カサッ


骨っ子 ゴシュジン!ウシロ!

ゾンビ娘「ん?」クルッ

骸骨剣士「オレノ嫁ニナラナイカ?」チャキッ

ゾンビ娘「オコトワリシマス」

賢者「モンスター!?」

賢者(…っ!間に合え…!)

弟きゅん「デッキオープン!呪文発動!」◇

  「「【レイズ】!!」」


骸骨剣士「」死ーン

賢者「ゾンビ娘!怪我はない?」

ゾンビ娘「はい!ありがとうございます」


ウィップ「デッキ渡すのが間に合って良かったよ~」

賢者「今のは?」

弟きゅん「あらかじめ魔導式を刻んで、魔法を込めておいたカードを使ったんだぜ」


弟きゅん「おっと、自己紹介がまだだったな。俺はカード。魔法使いのカードだ」

賢者「カードか。ありがとう、助かったよ」

カード「良いってことよ!ん?お前、それは…」


賢者「あぁ、この銃?ありがとね。使いやすいよ」ターンターンターン

カード「マジかよ…俺の失敗作を使える奴がこんな女男だとは思わなかった」


カード「あ~気に入ったならそれ、やるよ」

賢者「ありがとう。でも若干引き金とかが重いけどね」


ウィップ「それなら今日は家に泊まっていって~」

カード「その間に調整してやるよ」


骨っ子 ヤッター

カード「お前は外な」

骨っ子 ヒドイ!


ゾンビ娘「あなたの悲鳴に気付いたのはこの子なのに…」


 ―――――――

???「犬型のモンスターだからね、耳が良いんだよ、あの子」

???「『どうして骨なのに耳があるんだよ!!』とか叫んでたけど、」

???「耳に見えるだけで、実際は角なんだよ。あの子は純粋なスケルトン族だもん」

???「まあ、何とか中に入れてくれたし、良かったよ」

 ―――――――



カード「涙目ショタとか反則だぜ」

骨っ子「入れてくれてありがとう!」パァァァ

ウ・カ「「ああああああああっもう!!」」キュン


ゾンビ娘「おちましたね」

賢者「あの子、そのうち女騎士すらもおとせるんじゃないかな」


  ~魔法使いの家

カード「あんたらはこの部屋で寝てくれ。同じ部屋だからって、おっぱじめんなよ?」

ゾンビ娘「私の腐った身体に欲情出来る人なんていないでしょうに」

カード「俺は出来る!………冗談だから引くなよ」


骨っ子 オヤスミー

ウ・カ「「お前(キミ)はこっち」」ガシッ

骨っ子 ヤダー!ケンジャサマトネルノー

カード「くっ骨なのに可愛く見えてきた」


賢者「これぞ骨っ子マジック」


 ―――――――

賢者「おやすみなさい」

<オトウトキューン!チョッネエサン!ヤメッアーッ!

賢者「………。」ゾンビ娘「………。」

ゾンビ娘「…襲わないでくださいね」

賢者「僕は賢者だから安心してよ」

ゾンビ娘「賢者(意味深)ですか?時間ですか?」

賢者「名誉にかけて全力で否定するよ。というかキミ、そういう話題ですぐ赤くなるのに結構自分からぶち込むよね」

ゾンビ「ぶち込むだなんてそんな……///」

賢者「いい加減にしなさい」【レイズ】


ゾンビ娘「まぁ、こんなちんちくりんな身体ですし心配なんてしてませんよ」

賢者「…ゾンビ娘はかわいいんだから、あんまり卑下しないように」

ゾンビ娘「男のあなたでさえ綺麗だとか言われているのに、私は一度も言われて無いんですよ?」

ゾンビ娘「私だって女の子なのに…」ションボリーヌ

賢者「僕は綺麗だと思うよ。カードだって、ああ言ってたじゃないか」

ゾンビ娘「冗談だって言ってましたが?」


賢者「あれは本気の顔だった。男なら分かる」



ゾンビ娘「あの人ネクロフィリアだったんですか」ナイワー

賢者「ひねくれてるね」

ゾンビ娘「性根も腐ってますから」

賢者「せっかくかわいいのに。一回ゴスロリ着てみない?たぶん似合うよ(体格的に)」

ゾンビ娘「き、着ませんし、お世辞もやめ、やめてください」

賢者「ゾンビ娘はかわいいよ。すっごくかわいい。僕が女だったら嫉妬するくらいかわいい」

ゾンビ娘「うぅ~///」E:布団

賢者「ご飯食べてる仕草もかわい…し…僕が男だっら惚れる位かわい…い」ウトウト

ゾンビ娘「うぅぅ~あなた男でしょ」///


賢者「かわいい…かわいい…」ウトウト

ゾンビ娘「寝かけてますね」ムクリ


賢者「……………好きだよ」

ゾンビ娘「へ!?」













賢者(…君をいじめるのがね……)スヤァ…

ゾンビ娘「えっちょっと!」

賢者 スヤスヤ

ゾンビ娘「聞き間違い…?うぅ~///」


<モウユルシテー!ダーメッギシギシ


 ――――――
翌朝

賢者「そぼろが、そぼろがぁ……制御…できない…!」ピクピク

賢者「ハッ………朝か……ん?」ムクリ

ゾンビ娘 ポ――

賢者「どうしたの?熱?」オデココツン

ゾンビ娘「! なっ何を!?」

賢者「ん~熱は無いねって言うより、体温自体無いね」

ゾンビ娘(ゾンビですからっ)///



カード「飯できたぞー!!………あ?……あ~昨夜はお楽しみでしたね」ゲッソリ

賢者「それは特大のブーメランだと言っておこう。まぁ、昨晩は大変だったね」


カード「うわあぁぁぁぁん!!」ガシッ

賢者「抱きつかないでよ」


骨っ子「ご主人!ご飯食べよー」トテトテ

ゾンビ娘 ポ――


 ―――――――

賢者「何で骨っ子がショタモードになってるの?」モグモグ

カード「【モシャス】のカードを作ってみたんだ」◇

カード「あと、調整終わったぜ」つ銃

賢者「お!ありがとう」ニコッ

カード「…なんかもう、お前に童貞捧げてもいい気がしてきた」

ウィップ「弟きゅんはもう3年前に卒業したでしょ~?」

カード「ノーカンにしたい…」ズキッ


賢者「あ、イチゴ好きでしょ?あげる」

ゾンビ娘(いつもより優しい気がします…)

賢者(体調が悪いときは、とりあえずビタミンだよね)


 ―――――――

賢者「本当に付いて来るの?」

カード「おうよ!まだ銃は不完全な所も多いからな!完成まで納得出来ねぇ」


カード「護ってきた呪文も無くなったしな。それに、姉さんから…」


ウィップ「弟きゅんあるところに私あり」キリッ

カード「無念」

賢者(逃げられなかったね)


ウィップ「それで~どこに行くの~?」

賢者「砂漠に向かおうかと」


ゾンビ娘「私の身体が傷むじゃないですか」じ~

賢者「そこは人間になろうよ」クルッ

ゾンビ娘「ソウデスネ」ササッ


賢者「どうして目をそらすの」

ゾンビ娘「別に…」

カード(やっぱり何かしただろコイツ)



ウィップ「砂漠は遠いよ~弟きゅん、『馬』を出して~」

カード「馬じゃねぇよ。はぁ…デッキオープン。マナカード×3。召喚」◇◆◆◆


        『オーディン』

オーディン「フシュー」

カード「さ、どこかに乗れ!」


   ――――――――――
 ――――――――――

  この世界における召喚獣は、その構成が喰鬼とよく似ている。
 魔力を用いて肉体を創る事は同じだが、その魔力量に圧倒的な違いがある。

  また、喰鬼が死した人魂を核にするのに対し、召喚獣は使役者が契約した空中を漂う霊的因子、
 『精霊』を核にする。その姿は、人型や竜であったり、中には城砦型の召喚獣も存在する。

  オーディンは馬を駆る人型の戦神的召喚獣である。

 ――――――――――――
   ――――――――

オーディン「理解したか?人の子よ」

賢者「あの説明してるナレーションはあなたか」

ゾンビ娘「声渋いですね」

カード「つーか喋れたのな」


ウィップ「骨っ子~ほねっこ食べる~?」

骨っ子 イラナーイ

馬「ヒwwwヒwwwーwwwンwww」パカラッパカラッ


 ―――――――
  ~砂漠 ―オアシス―

オーディン「到着だ」

ゾンビ娘「馬から落ちそうになると、さり気なく手で支えてくれましたね」

ウィップ「すごく漢らしい~紳士的~」

カード「そういや、俺は容赦なく叩き落としたな。召喚主なのに」


骨っ子 カッコヨクテホレソウダヨ///


賢・ゾ・カ・ウ「「「「うちの子はやらんぞ!!」」」」

オーディン「別に要らん。そもそもその仔犬はオスだろう」


オーディン「フッ…それよりも、お前が美女3人をはべらせるようになるとはな…また会おう。さらばだ」◇


骨っ子 マタマチガエラレタネ

賢者「召喚獣すら僕を女と見るか…」

カード「お前何者だよ」


賢者「でも美女3人ってことは、ゾンビ娘も綺麗だってほめられたね」

ゾンビ娘「………。はい。ソウデスネ」フイッ

賢者「ね。かわいいって言ったでしょ?」

ゾンビ娘「ソウデスネ」フイッ


ウィップ「目をそらしにそらすね~」


ゾンビ娘「あの…それより……身体が傷むのが早くて…自動回復の効果も、どれくらいもつか…」モジモジ

賢者「なんだ、蘇生なら早く言えばいいのに」

カード(!ひらめいた!)


賢者「それじゃあ【レイ…」

カード「待った!」

ゾンビ娘「?」

カード「お願いだったら、きちんと言葉にしなけりゃあ、相手に失礼だぞ」

ゾンビ娘「うっ……もっともな指摘を…」

カード「さぁ!」つ○

賢者「あっ(察し)」

ウィップ「あ~(殺視)」

ゾンビ娘「レ…」











ゾンビ娘「○イプして下さい!」

ゾンビ娘「なっ何で伏せ字!?」///


賢者「待って。驚くのはそこじゃない」

カード「俺も○を置く場所間違ったけどよ…これは予想外だったわ」

ゾンビ娘「ちゃんとズを発音した筈なのに…何でこんな事に…」///

賢者「魔力の反応があったから、この地に掛けられた何かの呪いかもね」【レイズ】

ウィップ「弟きゅん?後で…ね?」ニッコリ

カード「ああ無常(絶望)」

骨っ子 クダラネー



賢者「で、オアシスに来た訳だけど」

ゾンビ娘「街からは遠いですね」つ地図

ウィップ「もっといい場所に行けばよかったのに~」

カード「だって、マナの魔力がそこで尽きたんだもんっ」キャハッ


賢者「かわいくない」

ゾンビ娘「気持ち悪いです」

骨っ子 アザトイー


カード「グスン……」


 ―――――――

???「全員、日陰で骨っ子をいじりまわすこと一時間」

???「行商キャラバンがオアシスにやってきた。話をしたら、街まで同行させてくれることになったんだ」

???「その夜はキャラバンの人達と一緒に、カード「で」遊んだんだよ」

???「そしたら涙目のカードを見たウィップが大興奮してね。鞭を取り出して、カードをシバき始めたんだ」

???「カードは身体だけが完全に調教されているらしくて、軽く引いたよ」ナイワー

 ―――――――


  ~砂漠 ―移動中のキャラバン―

賢者「ぐったりして、ダラダラして、どうしたんだい?」

ゾンビ娘「太陽みたいに暑い。水はどこだい?」

骨っ子「うぉーうぉう」

カード「妙なリズムをつけて会話するなよ」

ウィップ「言葉遊びができるくらい元気なら大丈夫だね~」

賢者「やりたいこと、やった者勝ちって言うじゃんか」

ゾンビ娘「つらいときはいつだって、既に蘇生時」アツイデス

カード「もう止めろ」φ(._.)カキカキ

賢者「今はふざけないと~?」

カード「つまらないがな」

ウィップ「地味に遊びに協力してる~」

骨っ子「へいへい!」


賢者「で、真面目に何をしているんだい?」

カード「魔導符のストック作りだ」カキカキ

カード「モシャスのカードも、マナカードも作らないとな…」

賢者「マナカードって?」

ウィップ「魔力を込めておくだけの符だよ~いわゆる貯蔵タンクみたいなやつだね~」

賢者「僕が魔力を込めようか?」

カード「そうしてくれると助かる」


賢者「ついでに、リレイズの魔導符を作ったら?」

ウィップ「何に使うのそれ~」


賢者「『沈黙』の状態異常にされてもゾンビ娘をいじめるためだよ」

カード「オーケイ。協力しようじゃないか」キリッ

賢者「実は他にも色々考えているのがあってね……」ニヤリ

ウィップ「全力を尽くそう」キリッ


ゾンビ娘「暑いのは苦手です」ボー

骨っ子「そうさ~ひゃくぱーせんと幽鬼~」


        ズズズ…

骨っ子「!」

商人A「うわあ!何だ!?」
商人B「あ、ああ、アリジゴクだぁぁ!!」

蟻地獄「あ、どうも。いらっしゃいませ」ズズズ

商人B「引きずり込まれるぅぅぅ!?」

賢者「ウィップ!救助を!【ストップ】!」

ウィップ「おっけ~【キャッチ】」ジャララ

商人B「うおぁぁぁぁ!?」ヒューン

骨っ子「大丈夫?」ガシッ

商人B「あ、ああ」


カード「おりゃあっ!」ヒュンッ  三◇

蟻地獄「」カキーン ミ◇

カード「甲殻堅いなオイ!」


ウィップ「弟きゅん!【炎符】を!」

カード「あいよ!【ファイラ】のカード!」◇

ウィップ「纏え!【魔導鞭チェイン】!」ジャラ…


ウ・カ「「【エレメントウィップ】!!」」

  炎の鞭が敵を切り裂く!▼


蟻地獄「」バラッ

ゾンビ娘「甲殻が剥がれました!」

骨っ子「でも呪文の効果時間が!」


蟻地獄(ヤダ!ワタシ丸裸!?恥ずかしい~)ズズズ

ゾンビ娘「逃がしません!」ヒュンッ 三 》》―――>


蟻地獄(あ、脚に刺さった!)ザクッ


賢者「…お疲れ様でした。それでは、おやすみなさい」チャキッ




          ー【氷結弾】ー


   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
       :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


夕方

  ~砂漠 ―樹林オアシス―

賢者「昨日のオアシスと比べれば、樹木が多いですね」

商人A「ええ、日陰も多くて過ごしやすい休憩地なんです。商人Bを休ませないといけませんしね」

商人B「いや~あなた達がいて助かりました」

ゾンビ娘「助かって良かったです」

賢者「あれ?ゾンビ娘、ちょっと肌が焼けた?」

ウィップ「前は病的に真っ白だったからね~」

カード「真っ青の間違いだろ」

ゾンビ娘「あんまり日焼けはしたく無いんですがね~」

賢者「日焼けも火傷の一種だから、ホイミで治せるよ?」

ゾンビ娘「お願いしても、いいですか?」フイッ

ウィップ「ウチもお願い~」

賢者(まだ目をそらしてくる…)【真・ホイミ】


 ―――――――


ゾンビ娘「……………干し肉」ゴクリ

賢者「どうしたの?」

ゾンビ娘「いえ!何でも無いですよ!?」

賢者「ならその干し肉をしまいなさい。商人さんたちの荷物だろう?」

ゾンビ娘「はい…」ゴソゴソ

賢者「お腹が空いたのかい?」

ゾンビ娘「…………違います」


賢者「じゃあ何かあった?」

ゾンビ娘「聞いても、後悔しません?」

賢者「しない。僕ら、もう一週間以上一緒にいるんだよ?仲間の悩みなら、解決したい」

ゾンビ娘「…………私……」


 ―――――――

???「彼女は少しだけ逡巡してから、口を開いた」


     ――肉が食べたいんです

???「賢者が不可解な顔をしていると、彼女はさらに続けた」


     ――人間の血肉が…食べたくて仕方ないんです

???「賢者はこれ以上ないほどに驚いてた。それもしかたない、彼女はゾンビであって喰鬼ではないんだから」

???「それでも彼女は食べたいと言った。いつも大食いなのは、その衝動を紛らわす為だとも」


     ――朱実の街で、朝私がゾンビ化していた事がありましたよね

     ――あれ、我慢できなかったのは食欲の方なんです

???「彼女は本当は男を殺していたらしい。思わぬ所で庇ってしまっていた」

???「賢者と彼女の周りに、冷たい風が吹いている。夜は、まだまだ冷えるらしい」

 ―――――――


ゾンビ娘「前に私は、普通のゾンビではないと言いましたね?」

ゾンビ娘「これが、その証拠です」スルッ

賢者「うわわっ何で服を脱いで!?」


ゾンビ娘「背中を…背中を見ててください…」ザクッ

賢者「自殺…?……………っ!」

ゾンビ娘「くぅっ」ポゥ…


賢者「何だよ…これ…前に見た時は無かったじゃないか……」

  ゾンビ娘の背中には、赤く痛々しい色を放つ、魔法陣があった

ゾンビ娘「暗闇の中でのみ、浮かび上がるんです。そしてこれが、私がゾンビになった理由でもあります」

賢者「まるで…まるで焼き印じゃないか……!」


ゾンビ娘「その通り、これは焼き印です。」

ゾンビ娘「200年前、私は魔王に捕まり蘇生呪文で消滅しない喰鬼の開発実験の実験台にされました」

ゾンビ娘「レイズされても生き返り、死ねばゾンビになる。ある意味不老不死の呪いが込められた焼き印です」

賢者「そんな……」

ゾンビ娘「死人の魂が灯した炎『鬼火』を纏った焼き印で背中を焼かれ、喰鬼の魂ごと背中に刻み込まれました」

ゾンビ娘「そのせいか、喰鬼の本能が私の背中で叫ぶんです。血肉が欲しいって」


ゾンビ娘「干し肉じゃあ、ほんの少しだけしか満たされませんけど…」

賢者「………………」

ゾンビ娘「流石に、怖いですよね…」


賢者「……………人の肉を食べなきゃ、そのうち僕らを襲うことも?」

ゾンビ娘「おそらくは…」

賢者「そっか…………」


「「…………………………」」

賢者「だったら、このままには出来ないね…」チャキッ

ゾンビ娘「…っ」ビクッ


           ――――ガシャッ


ゾンビ娘「………………?」チラッ


  目を開くと賢者が銃をそこらに投げているのが見えた。


ゾンビ娘「どうして………? ……っ!!?」




  次の瞬間、ゾンビ娘は思考が停止した。自分が何をされたのか分からなかった。
 賢者の華奢な両腕に抱きしめられていることが理解できなかった。


ゾンビ娘「……………!!?な、何を………!?」///

賢者「ん~なんとなく?あはは、冷たいのに暖かいよ?」

ゾンビ娘「笑ってる場合ですか!」///

ゾンビ娘(こんなに近くで匂いを嗅いだら…我慢が……!)フーッフーッ

  彼女の目の前には、賢者の首筋があった。

賢者「……いいよ」


ゾンビ娘「っ!?」

賢者「僕の血でよければ、あげる。肉も、ちょっとならいい」

賢者「それで、自分を保てるかい?」

ゾンビ娘「どうして!?」

賢者「焼き印は、その魔方陣は複雑すぎてそう簡単には消せない。君を救うことは、今の僕らには不可能だ」

ゾンビ娘「それならなおのこと、私を殺せば全て解決でしょう!?」

賢者「死ぬのが怖くて、200年もさまよっていたんだろう?諦めてないで、最期まで生きてよ」


ゾンビ娘「私は…もう……」

賢者「君が世界を諦めても、僕らはまだ、キミを諦めていないよ。
   それに仲間の女の子を見捨てたら、勇者に顔向けできない。だから…」















賢者「僕らと一緒に、生きてください。最期まで…」


ゾンビ娘「―――――っ!」


カード「…泣いてないで、さっさとしろよ。見てるこっちが恥ずかしい」

ゾンビ娘「カード君!?どうして!?」

カード「いいから早く」

ゾンビ娘「…すみません。頂きます。んっ」ペロ…


  軽く表面を舐めて、その味を確かめるように唾液を嚥下してから、賢者の白い肩に歯をつき立てた。

          ――――ぬちっ

賢者「…っ」ギリッ

          ――――ギチチッブチッ

賢者「――――っ!ぁっ―――っ」

          ――――グチャグチャ…ゴクン

ゾンビ娘「ありがとうございました!早く回復を…」

賢者「ぐぎぎ…【真・ホイミ】」


賢者「ふぅ…」グッタリ

カード「お疲れさん」

ウィップ「大変だったね~」


ゾンビ娘「二人とも…どうして?」

カード「あんだけ騒げば気づくわ!」

ウィップ「これから先、血を貰うときは静かに頼むよ~」


賢者「出来れば肉をかじる頻度は少なめでお願いしたい…」グッタリ


 ―――――――

翌朝

骨っ子「?」トテトテ

ゾンビ娘 ツヤツヤ

賢者 ゲッソリ


骨っ子 サクバンニナニガアッタノカ…

カード「知らなくていい」【モシャス】◇

ウィップ「絵面が子供にはショッキングだからね~」


骨っ子「ボク21歳だよ?」

賢・ウ・カ「「「………は?」」」


ゾンビ娘「当たり前でしょう。20年前から一緒にいますから」

賢者「それでこの口調…?」

骨っ子「会話の相手がご主人だけだったから…」

ウィップ「なるほど~」カード「納得だ」

ゾンビ娘「どういう意味ですか」


骨っ子「そういう意味に取るしかないよ、ご主人」

ゾンビ娘「骨っ子までいじる側に加担!?」ガーン


  ~砂の街 ―門―

賢者「どうもお世話になりました」

商人A「いえいえ、こちらこそ」

商人B「またいつか会いましょう」

骨っ子「ばいばーい」ノシ

          ――――キュンッ

  商人B「今度生まれる子はあんな子に育ったらいいな~」ホンワカ

  商人A「まったくだな。だが、素直な子になるかは、お前さん次第だぞ?」

    ワカッテルヨ ハハハ


        ―――ぐぅ~

ゾンビ娘「はうっ///」キュルル

賢者「食いしん坊はデフォルトなのね…」ゲンナリ


骨っ子「おねえさん!ここら辺で食べ物がおいしいお店を知りませんか?」テクテク

街女「あら、礼儀正しい可愛い坊やね」ヨシヨシ

骨っ子「えへへ~」ナデナデ

カード「うらやましい…」ギリッ

ウィップ「どっちが、かな?」ニッコリ


街女「そうね~あっちの通りにある、中華の店がおいしかったわよ」


  ~砂の街 ―中華の店―

貼り紙《冷やし中華、炒めました》


賢者「もはや冷やし中華の域を越えている」

ウィップ「《冷やし中華、滅びました》程のインパクトは感じないけどね~」

カード「何の話だよ。これはつまり焼きそばなんだろう?」


ゾンビ娘「腹に入ればみな同じです」

賢者「男らしい発言だね」

ゾンビ娘「座右の銘です」

カード「それでいいのかお前は」


<オマチドウサマアル!


ウィップ「なんていうか~」

カード「焦げ目がついて食感がカリカリになった」

賢者「少しぬるい冷やし中華だコレ」

骨っ子「おいし~い」カリカリ

ゾンビ娘「おかわりです!」モッキュモッキュ

カード「何でもうまそうに食うなコイツら」


中華店主「食の大切さを知っている者なら、当然アルヨ」ニュッ

カード「うわっピエロみたいなおっさん!?」

中華店主「これでも女の子アル」

ウィップ「ええっ!?」

中華店主「お嬢ちゃんにプレゼントアルヨ」

ゾンビ娘 モッシャモッシャ?

  カエルのポーチを貰った▼

中華店主「困った時に開くアル」ノシ


 ―――――――

  ~砂の街 ―宿―

ゾンビ娘「何でしょうね、このポーチ」

賢者「困った時にってことは、まだ開けちゃだめなんだろうね」

ゾンビ娘「う~ん…」

          ――――ズダダッガシャーン
ゾンビ娘「何事でしょうか」

    ヒョッコ ヒョッコ

骨っ子 ア!ケンジャサマタスケテー

賢者「……………どうしたの?変な歩き方して」

骨っ子 カイダン  ヘンシン  トケタ

ゾンビ娘「階段を降りている途中でモシャスが解けて足を怪我した…って足とれてるじゃない!どこに置いてきたの!?」


カード「あれじゃないか?」  →犬「……」ガジガジ

「……………………………」     賢者「捕まえろーー!!」
              ワーワー ドタバタ ストップ! キャーキャー


ウィップ「ようやく取り戻したね~」

賢者「まったく…次は気をつけるんだよ?」コキュンッ

骨っ子 キャンッ!

カード「じゃ、俺らも寝るわ」

ウィップ「お休み~」

骨っ子 ウゥ…オヤスミナサイ

ゾンビ娘「お休みなさい」


賢者「じゃあ僕もおやす…ゾンビ娘「待ってください」グイッ

賢者「な、何?」

ゾンビ娘「お願いがあります…」じっ…


 ―――――――

???「その時の彼女の頬はほんのりと朱に染まり、どこか恥ずかしそうにうつむいて、賢者の袖を摘んでいた」

???「一応男の子だからね、ドキドキせざるを得なかったよ」

???「ただ、彼女が発したのはある意味予想通りの言葉で、

     ―ゾンビ娘「血を…貰えませんか…?」

    だったんだよね。流石に賢者も、昨日の今日では貧血になると言って断ろうとした」

???「でも、

     ―ゾンビ娘「賢者様から言ったのに…くれないんですか?」ジワ…

    涙目で上目遣いは反則です」

???「思春期真っ只中の賢者はメダパニよりも混乱したけど、流石にまずいと思ったのか逃げようとしたんだけど」

???「次の瞬間、いつの間にか自殺したゾンビ娘によって、ベッドに組伏せられていたんだ」



???「人間状態の彼女ならいざ知らず、ゾンビの彼女には力でかなわない」


???「首筋をペロリと舐め上げられ、背筋が震える。
    その感覚に身をよじっていると、首にチリッとした鈍い痛みが走った」


???「彼女の鋭い歯が、賢者の首筋に突き立てられて、熱い血が流れる。
    彼女は噛みついたまま、吸血鬼のように血を飲んでいた」


???「賢者が苦悶の声をもらしても、彼女は一心不乱に飲み続ける。
     そして、意識が薄れてきた所で口が離され、傷口をいたわるようにチロチロと舐められた」

???「回復呪文をかけられ一息ついていると、彼女にのしかかられてね。
    どうやら満足して寝ちゃったらしい。寝息が耳にかかってゾクゾクする」


???「身体がダルくて退かせることも出来ず、結局一睡も出来なかったんだ」ヤレヤレ


 ―――――――

翌朝

ゾンビ娘「おはようございます」ツヤツヤ

賢者「…………ます」グッタリ

カード「昨夜はお楽しみでしたね」

ゾンビ娘「えーと」///

賢者「僕が何をしたっていうんだ……」

ウィップ「プロポーズじゃない~?」

賢者「した覚えがありません……」フラフラ

ウィップ「『僕と一緒に、生きてください。結婚しよう…』」キリッ

カード「これをプロポーズと言わずに何と言う」

賢者「改…変しな…で……」フラッ
               ドサッ

ゾンビ娘「賢者様!」


 賢者の貧血で、彼らの出発は数日遅れたという


 ―――――――

数日後  ~砂漠

ゾンビ娘「やっとピラミッドが見えてきましたよ」

賢者「【フバーハ】って偉大」

カード「だろ?」

ウィップ「でも日焼けはするから、早く中に入ろ~」

ゾンビ娘「そうですね」

《待たれよ》

賢者「! 誰だ!!」チャキッ

《我は番人。スフィンクスなり》

カード「どこにいやがる。姿をみせろ!」

《お前の隣だ、ヴァカめ》

カード「!」バッ

岩《フハハハハ》


賢者「僕には少し大きい石にしか見えませんが?」

スフィンクス《これは昔大砲で吹き飛ばされた口の部分だ》


スフィンクス《先に進みたければ、我が問に答えるがいい》

ウィップ「スルーしていい~?」

スフィンクス《ならん。結界を張ったからな、解くまでは進ませぬ》

カード「本当だ…」ドゥンッドゥンッ


賢者「仕方ない。答えましょう」

スフィンクス《フフフ…そうこなくては。では問おう》




《朝は足が4本、昼には2本、そして晩には3本。どのような生物か?》


ストック切れた~

もし見ている人がいたら、考えてみて下さい。その間に続きを書きます


カード「ハッありきたりだな!答えは「人間」だ!」

スフィンクス《違う。お前ら人間は、1日に足が増えたりする事があるか?ん?どうなんだ?ん?んんん?》

ウィップ「凄くウザイ~」

ゾンビ娘「そんな生物がいるわけが…ハッまさか「イルカ」!?」

スフィンクス《違う。ん?寒いダジャレしか言えんのか?ん?これはとんちを利かせるものではないぞ?ん?》

カード「虫唾が走るレベルでウゼェ!!」


スフィンクス(まあ、本当なら我も人間で正解にしたいのだがな。ありきたりすぎてさっきも一人通しちゃったからな。
        申し訳ないが、とんちなど無いマジレスでいかせてもらう。一日に二回も通すと我のプライドが許さぬのでな)

  このスフィンクス、番人の癖にしょぼい奴である。

スフィンクス《もう終わりか?無知な者共よ》


賢者「…そんな生物を、僕は一匹だけ知っている」

スフィンクス《ほう…?(え!?本当にいるの?)》


賢者「それは…

   ――「サクバンナニガアッタノカ」トテトテ

   ――「食べ物がおいしいお店を知りませんか?」テクテク

   ――「ア!ケンジャサマタスケテー」ヒョッコ ヒョッコ

   数日前の骨っ子だ!!」


ウ・カ・ゾ「「「あ!!!」」」

骨っ子 ボクー?

賢者「少し↑に遡って確認してきたらどう?」ゲシッ

スフィンクス《見てくるから我を踏むでない》メメタァ


スフィンクス《…よかろう。通れ(マジであったよチクショウ)》

ゾンビ娘「お手柄だね、骨っ子♪」ナデナデ

骨っ子「♪」

スフィンクス《通すつもりは端から無かったから、答えの無い問を出したというのに…》


賢者「へぇ…」チャキッ

カード「ほほぅ?」スっ◇

ウィップ「ふ~ん」シュル

ゾンビ娘「そうなんですか」チャッ

スフィンクス《あ゛………》


賢者「ゴーレムには水属性が効いたよね」

カード「その辺は抜かりねぇ。お前の銃に属性変換用の魔具を追加しておいた」

賢者「ありがとう」リロード【水】

ゾンビ娘「爆弾矢はどこでしたっけ」ゴソゴソ

ウィップ「弟きゅん~水符~」

カード「どーぞ」【ウォータ】◇

スフィンクス《ちょっちょっと待て!我は動けないんだ。お前らの良心は痛まないのか!?》

ゾンビ娘「身体が傷まなければどうでもいいです」

骨っ子 クタバレエセネコヤロー

賢者「おやすみ」にこぉ

ー【爆弾矢】ー【エレメント・ウィップ】ー【激流弾】ー

        ギャ―――――――


 ―――――――
  ~ピラミッド ―内部―

賢者「中は狭い通路が一本だけか…」

ゾンビ娘「岩が転がってきたらどうしましょう」

賢者「そのときはウィップがどうにかしてくれるさ」

ウィップ「何でウチ~?」

賢者「鞭使いだからだよ」

ウィップ「まるで意味がわからないよ~」


カード「……………………………………」

ゾンビ娘「どうしたんです?カード君がずっと黙っているなんて」

賢者「怖いの?」

カード「んなわけねぇだろ殺すぞ」

賢者「殺すなんて言っちゃいけません。お母さんはそんな子に育てた覚えはありませんよ!」


カード「誰がお母さんだ!まぁいい…さっきから……カサカサっていう音がしないか?」

骨っ子「きゅーん」ビクビク




          ―――カサカサカサカサ


ゾンビ娘「前から何かやって来…」


ハムナプトラ的な蟲 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

カード「ヤッパリィィィィィィィィ!!!」
ゾンビ娘「アハハハハハハハハハハ」
ウィップ「ウフフフフフフフフフフ」

カード「落ち着け!落ち着くんだ!まずは壁に頭をぶつけろ!それで全てを忘れられる!」ガッゴッ


賢者「君が落ち着きなよ」―【激流弾・拡散】―

         バチュチュチュ
蟲「キュエ!?」

賢者「こんなの素早いだけのカブトムシだ!きっとそうなんだ!」

骨っ子 ドッチカッテイウト ゴキ…

賢者「言わせないよ?」パシュッパシュッ



 ハムナプトラ的な蟲 ―残り1/3


虫「……………」ピタッ

賢者「…?」

虫「―――――トランザム」
             ヒュンッksksksksksksksksksksksksksksksksksksksksksksksks


ウ・カ・ゾ「「「これは夢だ…夢なんだ…」」」ガッゴッ

賢者「避けられるっ!」パシュッパシュッ

骨っ子 サッキノ3バイハカソクシテルヨ!

虫 ksksksksksksksksksksksksksksks

マナーモード三人衆「brrrrrrrrrrrrr」




賢者「………………雷撃弾+激流弾×2――」       バースト
                    ――【雷天ノ弾・三点撃】


 ―――――――

賢者「普通気絶するまで頭をぶつけるかな」

ゾ「うーん…ハッむ、虫は!?」

賢者「あ、起きた。大丈夫、掃討したよ」

カード「何があったんだっけ…」ポタポタ

賢者「おはよう。目覚めたてで悪いけど、銃直してくれる?ごめんね、壊しちゃった」

カード「何をどうやったら弾倉が破裂するのか、小一時間程…」ギロッ

賢者「三発分を一度に発射しただけだよ」


ウィップ「弟きゅんはバースト機能なんて付けてないから~無理矢理放ったってとこかな~?」

賢者「テヘぺろっ」キュピーン

ウィップ「あ゛?」

賢者「調子乗った。ごめんなさい」



カード「予備パーツあるから直すのはすぐだが、バースト機能付けるならこれ以上堅い金属が必要だせ?」

賢者「う~ん。とりあえず直してくれるだけで十分だよ」

カード「了解」カチャカチャ


ゾンビ娘「それより、虫の残骸が気持ち悪いです」

骨っ子 ミンナシンデルヨネ?

ゾンビ娘「骨っ子!?そんなこと言ったら…!」


蟲「まだ生き残っているぜ!」バッサァ


ウィップ「通路の!」

カード「中心で!」

賢者「虫が!」

ゾンビ娘「飛んだ!」

骨っ子 キモイ!

ゾンビ娘「だから何で私ばっかりに!?あ痛っ」ドンッ

          ――――カチッ




       ズズンッ



ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


賢者「…何かが転がってくる音がするよ」

ウィップ「あれじゃない~?」チラッ


岩 ゴロゴロゴロ

ゾンビ娘「本当に岩が転がってきました!!!ってだから来ないでー!」

虫「うひひヒヒヒヒ」ブーン

賢者「緊張感ゼロなんですか?」【真・ホイミ】


カード「姉さん!何とかして!」

ウィップ「無理言ったら駄目だよ~?弟きゅん~?」

ウィップ「というか今こそ【壁符】の出番じゃないの~?」

カード「ちょっあんな運動エネルギーの塊、俺のウォールじゃ止められねぇよ!」

ウィップ「できないじゃねぇ。やれ」ギロッ

カード「ウィッス」



カード「【ウォール】発動。同時にマナカード×3でブースト」◇◆◆◆

キィンッ□□□□□

ゾンビ娘「凄い!シールドが展開されましたよ!」

ミ●`,゛パリーン×5


賢者「……何か言うことは?」【ストップ】

岩 ピタッ

カード「いや…あんなエネルギーがバカみてえなやつを止められるわけないだろ…
    そもそも、ストップが効くなら最初から…」

賢者「ダメ元でやってみたら効いたんだよ。正直、このパーティーの中で一番ビビってると思う」

ウィップ「わかり辛いよ」

ゾンビ娘「ま、賢者様は突然予測不可能な行動をするから気にしませんが」

賢者(血に飢えた君の行動の方が予測不可能だよ…)

賢者「まあ、どの道動きを止められるのも少しだけだからね、早く進もう」

骨っ子 ハーイ♪


 ―――――――

  ~ピラミッド ー最深部ー

△△△「『一度滅びしその躯。我の傀儡として再び命を吹き込まん』…ウフフ…」

△△△「蘇れ、ダーリン(はぁと)」

マミーA「あうー」
マミーB「あうー」
マミーC「ヒャッハァー!!」

△△△「ああっ!なんて凛々しい姿なのかしら!さっきから興奮で大洪水だわ!」

マミーA「ああうー」
マミーB「あ…ヒャッハァー!!」
マミーC「イィィィィリヤッホォーーウ!!」


壁|ゾ「…何ですかねあのイカレ女は」
 |
 |賢「あれがきっと本物のネクロフィリアだよ」


マミーA「ん?あそこに誰か隠れてるぜ。魔女さんよ」

魔女「もうっ私のことはハニーって呼んで(はぁと)」


ゾンビ娘「うわっ見つかりましたよ」

カード「というかあいつら、まともに喋れる奴らなんだな」


マミーB「俺達はハニーに忠実な僕。何でも言うことを聞くぜ」

魔女「じゃあ、ダーリン達の愛する人の名前は?」キャハッ

マミーA「エーコ・キャルオルゥゥゥ!!!」
マミーB「ムツキ・チハラノォォォ!!!」
マミーC「ティナ・スプラウトォォォ!!!」

魔女「」

賢者「アンデッド族にロリコン以外はいないの?」


マミーB「ロリコンで何が悪い!可愛いものを愛でる気持ちの何が悪いのだ!」

マミーA「俺達はロリコンであってペドフィリアではない。そこんとこ頼むぜ?」

マミーC「ヒャッハァー!!」


カード「理にかなってて納得しかけた」

ウィップ「弟きゅん~?」ニコォ

カード「い、いやだってよ!俺達が骨っ子を愛でる気持ちと同じって事だぜ!?たぶん!」

ウィップ「納得~」


賢者「駄目だコイツら」


魔女「そんな茶番はどうでもいいわ!私のハーレムを壊そうっていうのね!そうはいかないわよ!行きなさい!」

マミー「マミーA・B・C!ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!!!」


賢者「【レイズ】」
カード「【レイズ】」
ゾンビ娘「【レイズ】」

マミーA・B・C「」死ーん

魔女「」

ウィップ「まあ、アンデッドだもんね~」


魔女「ふぇぇ…ダーリンが死んじゃったよ~ふぇぇ~」

ゾンビ娘「泣いちゃいましたよ?」

カード「見た目80歳のババアにこんな泣かれ方されてもな…」

賢者「つがいを見つけるより、自分が屍になる方が早いと思う」


魔女「ふぇぇ~ふぇぇ~ん!」


 ―――――――

壁《時の流れは止められこそすれ、過ぎし結果を変えることは叶わない》

壁《流れを変える咎を負う覚悟ありし者よ、その先には暗闇が待ち受けるであろう》


賢者「……アポカリプス…」

ゾンビ娘「強そうな呪文ですね」

賢者「……魂ごと消し去りかねない力があるってさ」

カード「ガチでヤバい呪文じゃねえか」

賢者「………………」

骨っ子 ドウシタノ?

賢者「ん…何でも無いよ…」


 ―――――――

???「呪文を解放するたびに流れ込んできていたのは、魔力だけじゃなくてね。
    同時に虫に食われたような断片的な知識も流れてきていたんだ」

???「そして今回の呪文が、重大な部分のピースだったらしくてね、
    賢者はもう、気付き始めていたんだ。自らが知らない、勇者の真実に」

???「その予想は、答え合わせを待つばかり」


     ――賢者「行こう。…次が最後の呪文だ」

???「笑顔でそう言ったときの顔は、恐らく引きつっていただろうね」


     ――賢者「…さあ、答え合わせに行こうか」

 ―――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――

まさかのクイナが出てきた
アポカリプスはFF8のかな?

>>171
アポカリプス以外はほとんどFF9から出そうと考えております


賢者「とか格好良く決めたのが3ヶ月前」

 ~海 ―船内―

            ザザーン  ザザーン

賢者「どうしてこうなった」


ゾンビ娘「最後の呪文との位置関係が、マップの端と端だったからですね」

賢者「まさかマップの端と端をまたげない仕様だなんて…」メメタァ


カード「さあ、答え合わせに行こうか」ニヤニヤ

ウィップ「さあ、答え合わせに行こうか」ニヤニヤ

骨っ子 イコウカー

賢者「~~~~~~っっっ!!!」


ゾンビ娘「もはや顔からメラゾーマが出せそうですね」

ゾンビ娘「………あ」ニヤリ

ゾンビ娘「さあ、答…賢者「やめてください。死んでしまいます」ボッ


ウィップ「あ、メラゾーマ出た~」

カード「今のはメラゾーマではない、メラだ」キリッ


賢者「モウイヤダ…」三角座り


ゾンビ娘「ごめんなさい、やりすぎました。機嫌を直してください」

賢者「【レイズ】」

ゾンビ娘「」

賢者「―【静電弾・拡散】―」パチッ

ウィップ「わっ」

カード「静電気レベルの弱い電撃…だと…?」ピリッ

賢者「―【静電弾・拡散】―」パチッ

ゾンビ娘「ちょっやめてください!髪がモサッてなっちゃう!」パチパチ

賢者「―【静―【静電―【静電弾―【静電弾・拡散】―」バチチチチチ

カード「やめっあだう!ああもうっ地味にウゼェ!」ピリピリ

骨っ子 アワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ


 ―――――――


  ~海 ―船室―

ゾンビ娘「あの…そろそろ機嫌を直して、あの…」

賢者 ツーン

ゾンビ娘「最近ご無沙汰ですし、その、あなたの…貰えませんか…?」

賢者 ツーン

ゾンビ娘「ほらっ私の方は準備万端ですしっ」ザクッ

賢者「【レイズ】」

ゾンビ娘「」


ゾンビ娘(どうしましょう。恥ずかしさのあまり頭がショートしたってウィップさんが言ってましたけど…)

ゾンビ娘「いつまで続くんでしょう…ハァ」



ゾンビ娘「今日は干し肉で保たせましょうか」ザクッモッギュモッギュ

賢者 スヤァ

ゾンビ娘「あれ?寝ちゃいましたか?」

賢者 ススススススヤァ?


ゾンビ娘「…こうして見ると、本当に女の子みたいですね…うなじも綺れ…」

賢者のうなじ キラリン

ゾンビ娘「…ゴクリ」


ゾンビ娘「少しだけなら…いやいやいや、駄目です。我慢するって決めて…」チラッ


ゾンビ娘「ああもう食べたいっ!この欲求なんなの!?」

ゾンビ娘「…なんかうなじが『食べてもええんやで…』って言ってる気がします…」ジュルリ

ゾンビ娘「きっとそうです。もう我慢出来ません、いただきま~」スッ

賢者「言ってないよ。【ストップ】」

ゾンビ娘「」ピタッ

賢者「まったく。君は据え膳前にした童貞かい?君にとってはある意味食料かもしれないけどさ」


賢者「まあ、僕的には別に血をあげてもいいんだけどね。自分から言ったんだし。
   でも、昼間に散々遊ばれたから 少々 いじめておこう」

賢者「ウィップ~縄と目隠し貸して~」スタスタ

<イマツカッテル~
<ソコヲナントカー

ゾンビ娘「」ピタァ…


 ―――――――

ゾンビ娘「~す!」ガチンッ

ゾンビ娘「…あれ?」

賢者「ガチンッて…どんな力で噛もうとしていたのか、考えるとゾッとするね」

ゾンビ娘「その声は…!というかどうして縛られてるんですか!この目隠しは何ですか!」


賢者「~♪」ゴソゴソ

ゾンビ娘「な、何か言ってくださいよ…」

賢者「さて、これはな~んだ?」つ■

ゾンビ娘「この匂いは…!!」スンスン

賢者「そう、僕の血が入った小瓶だよ」



賢者「賢者様の、『3分ゾンビ娘いじめ講座』~」パチパチ~

賢者「用意するのは僕の血だけ! 採血したばかりの新鮮なものを用意することがポイントです!」

賢者「で、これをお皿に注いで、ゾンビ娘が届かないギリギリの所に置きます」


ゾンビ娘「~~~~~っっ!!」ジタバタ

賢者「そして2分間放置します」



ゾンビ娘「この悪魔めぇぇぇぇええ!!!」ギギギ

賢者「それではまた来週~♪」ノシ

ゾンビ娘「見えないけど絶対悪い顔してるでしょう!?」



賢者「じゃあ次は…」スッ

ゾンビ娘「んんっ!?(な、何か柔らかいものが唇にっ)」

ゾンビ娘「…ぷはっ い、一体何を!?」///

賢者「さて、何だろうね?」

ゾンビ娘「ううぅ~」///


賢者(実際は血で湿らせた指だけどね)

ゾンビ娘「あれ?血の味がする…」ペロッ

賢者(流石にこれで騙される程馬鹿じゃないだろうけど…)


ゾンビ娘(まさか唇を血で濡らして…!?)///

賢者(そんなレベルの子だよね、君は)


賢者「舐めちゃったね?血を」

ゾンビ娘「! ま、まさか!?」


賢者「空腹時に中途半端な量のものを食べると、余計にお腹が空くことは無いかい?」ニヤリ

ゾンビ娘「っっ!!」ゾクゾクッ

賢者「フハハハハッ計画通りよ!」

ゾンビ娘「全て計算ずくだったなんて…!」


壁|ウ「楽しそうだね~」
 |
 |カ「シリアスどこ行った」


賢者「さて、『第2回、3分ゾンビ娘いじめ講座』のお時間です。下拵えとして、目隠しを外しましょう」ケタケタ

ゾンビ娘「やっぱりムカつく顔してた!」


賢者「まず、ナイフで指先を少し切ります」

賢者「次に、お皿の上に指を持ってきて、そのまま見せつけます」ポタポターン

賢者「そのまま2分間待てば、この通り」


ゾンビ娘「あなたには血も涙も無いんですか!?」血涙


壁|ウ「涙は無くても血は確実にあるでしょ~」
 |カ「もはや何がしたいのか… あと姉さん、当たってる」
 |ウ「当ててんのよ~」


賢者「フハハハハッどうだい?目の前で血が流れていく光景は!」

ゾンビ娘「うううううっっ!!」ギシギシ

賢者「悪役になりきるのも、なかなか楽しいね。フフッ」


      ブツンッ

ゾンビ娘「……………。」パラッ

賢者「え…………」

ゾンビ娘「んっんっんっ」ゴクッゴクッゴクッ

ゾンビ娘「ぷはー」

賢者「あわわわわわわわわ」ガタガタ

ゾンビ娘「コノトキヲマッテイタ…」ガバッ



    「ゾンビ娘が指を口に含み丁寧に舐めとる。くすぐったいような奇妙な感覚が指先に走り、思わず賢者は呻いた。

     逃げようとしたのもつかの間、それを見抜いたかのように、彼女は傷口を強く吸う。
     その熱い痛みに縛り付けられ、顔をしかめることしか出来ない。

     何故なら、彼は今ベッドの上で、身動き一つ出来ないよう組み伏せられているからだ」


賢者「はは…っもはや意識ぶっ飛んでるね…!」

    「賢者は余裕のふりをして、引きつった笑みを浮かべてみる。その顔を映す瞳は発情した野良猫を思わせた」


ウィップ「弟きゅん、なんで前屈みなの~?」ニヤリ
カード(低めの声で実況してる姉さんのせいだろうが!)


  ざらりとした舌が、首筋から左の肩までを撫でる。ショートヘアの綺麗な黒髪が頬をくすぐり、若干こそばゆい。

  その行為にどのような意味があるのかは分からないが、
 彼女はここ数日の船旅でやや塩気の増した肉の表面をしっかりと味わっている。


賢者「まるで予防接種の消毒みたいだね…本当に消毒だったりして…あぐっ…!」

  軽口をたたいていると、注射針に噛みつかれた。

  出血ではなく、喰すことを目的とした鋭い歯が突き刺さり、脳が焼き切れそうなほどの激痛が走る。


  声にならない叫びを上げ悶える彼と、一心不乱に肩肉を貪る彼女の姿は、
 はたから見ると首に愛撫をしている恋人同士に見えるのかもしれない。


  ――グチッ
  音の無い悲鳴で喉が潰れた頃、遂に肩の肉が喰いちぎられる。

  彼女の口の中で、肩だった肉がグチャグチャと下品な音を立てて、次第に嚥下されていくのが分かった。

  回復呪文をかけられホッと一息つくと、自分の下唇が真っ赤に濡れている事に気がついた。
 痛みを我慢するあまり、噛み切ってしまっていたらしい。

  こういうのはさっさと治してしまうに限る。

  しかし…


賢者「【…ッ…ガァ…」

  喉が潰れて詠唱が出来ない。ゾンビ娘に治してもらうしかないようだ。


ゾンビ娘「…………」フーッフーッ

  彼女の様子がおかしいことに気がついて、不審に思ったのは一瞬。













     ―――ゾンビ娘は賢者の唇を、強く強く吸っていた


賢者「…っ!?ん゛ーん゛ー!?」

     ――チッチュルルッジュル…

  それはあまりに乱暴な『吸血』であり、お世辞にもキスなどとは言えなかった。

     ――ヌリュッ

賢者「………っ!!!」

  傷口に舌を突っ込まれ、その痛みで涙目になる。


カード「うーわっ何やってるかわかんねぇけど痛そう」

ウィップ「教えてあげようか~?」

カード「エンリョサセテクダサイ」



 ――――――

???「賢者のファーストキスは唇の出血が止まるまで続けられてね。終わった頃には唇が真っ青だったんだよ」


???「え?シリアス展開はどこに行ったって?おいおい、何を馬鹿な事を…
    ゲームだって、目的地に辿り着くまでのサブイベントが醍醐味だろう?」

 ―――――――




翌朝  チュンチュン


ゾンビ娘「………………」

賢者「ヒック…えぐ…」メソメソ


ゾンビ娘(何故こんなことに?)



  ゾンビ娘には昨夜の記憶がなかった!▼



ゾンビ娘(今の賢者様を見てると、まるで私が襲ったような罪悪感がこみ上げてきます)


骨っ子(文字通り襲ったからだよご主人…)


ゾンビ娘(…!?脳内に直接…!)


骨っ子(使い魔との意思疎通法があったでしょ!)


ゾンビ娘「そうだったね…」


  ガチャッ

カード「おーい起きろー飯だぞー!」

ウィップ「昨夜はお楽しみでしたね~」

ゾンビ娘「そのフレーズ何回目ですか」


賢者「…おはよ」ニヘラ

カード「おおぅ…なんかもう…賢者がヤリ捨てられた少女みたいで見てられないんだが」

賢者「なぜ捕食の度にMP(メンタルポイント)がごっそり持っていかれるの…」


カード「思ったんだか、動物の生肉じゃあ満たされないのか?」

ゾンビ娘「酷く極端なダイエット中の朝ご飯程度しか満たされませんよ」

ウィップ「そりゃ満足出来ないね~」


 ―――――――
  ~船内 ―食卓―

賢者「結局、ご飯食べてる時が一番生きてる事を実感するよ」ムシャムシャ

ゾンビ娘「ですね」マグマグ

骨っ子「おいしー」

カード「へへへ、そこまで言われたら料理人冥利に尽きるってもんよ!」


賢者「なん…だと…?」

ゾンビ娘「この食事を…カード君が…?」

ウィップ「今日だけじゃなく、今までのもだよ~」

賢者「今までウィップが作ってたと思ってた」

カード「姉さんは料理が壊滅的だからな」

ウィップ「え~ウチだって頑張ればうまくいくよ~今日は玉子焼き上手に焼けたんだからね~」


玉子焼き?「キシャァァァァァァァァァァァ」




カード「普通の玉子焼きはまず奇声を発しない」

賢者「その前に真っ黒じゃん」


カード「とりあえず外でこのモンスターを処分してくる。サラダでも食っててくれ」

骨っ子「行ってらっしゃーい」

ゾンビ娘「いただきま~す」





サラダ「キシャァァァァァァァァァァァ」


ゾンビ娘「」


カード「なんでだよ!」

ウィップ「ドレッシングの酸味が強すぎたかな~?」

賢者「酸味の問題じゃないよこれ」


カード「姉さん野菜切っただけだろ!?」

ウィップ「ありり~?」

ゾンビ娘「流石の私もこれを食べる勇気は無いです」


サラダ「キシャァァァァァァァァァァァ」
玉子焼き?「キシャァァァァァァァァァァァ」


骨っ子「ガルルルル~」


 ―――――――

食後

賢者・ゾンビ娘「「ごちそうさまでした」」人

骨っ子「ましたー」人


カード「お粗末様でした。今日の玉子焼きは強かったな…」

ウィップ「完成度に比例してるのかもね~」

カード「もう料理しないほうがいいんじゃないか?」

ウィップ「花嫁修行だよ~」

カード「……俺が一生作ってやるってのに」ボソッ

ウィップ「?何か言った~?」

カード「別に…」


ゾンビ娘「そういえば、なんかいつもより量が多かったですね?」

カード「ああ、保存できる期限が迫ってたからな。明日には食糧はほぼ無くなるだろうよ」

ゾンビ娘「えぇっ!?」ガビーン


賢者「この世の終わりみたいな顔しないの。次の島には今日中に着くんだから」

ゾンビ娘「それならいいですけども…あれ?目的地の島って、どこなんですか?」


賢者「そういえばゾンビ娘には言ってなかったね。次の目的地は『龍の国』だよ」

ゾンビ娘「え………?」


 ―――――――

  ~龍の国 ―港町―


ワイワイガヤガヤ


カード「おお!活気がかって良いところじゃねぇか!」

ウィップ「みんなあんまり見ない服装だね~」

賢者「着物って言うらしいよ」

ウィップ「なにやらゾンビ娘に似合いそうな服だね~」チラッ

賢者「まあ人間状態のときの服装が巫女装束だからね」チラッ

ゾンビ娘「ゾンビ状態になると服がぼろくなるのはなぜでしょう。というかその目は何ですか。着ませんよ」


<オーイコッチダ!アェーーィ


カード「ん?なんだ?祭りの準備か?」

賢者「毎年冬に行われる祭だってさ」

ウィップ「詳しいね~」

賢者「パンフレット貰ったんだよ。祭目当てで観光客もくるんだって」


骨っ子「出店もたくさんでてるよ!」

ゾンビ娘「賢者様お小遣いください!」ヒュバッ

賢者(来るときは反対してたのに…)「迷子にはならないようにね」チャリン


 ―――――――

一時間後


ゾンビ娘「迷子になりました」

ゾンビ娘「みんなはどこにいるんでしょう…」


        ウォォォ!

ゾンビ娘「何でしょう?型抜き屋…?」




型抜屋「…こいつは最高難易度、制限時間20分の最終ステージだ。お嬢ちゃん、それでもやるかい?」


賢者「もちろん。僕にかかれば楽勝だよ」

型抜屋「言ったな?じゃあとくと味わうがいい!」ドンッ



観客A「おいおい…もはや板ですらねーぞ。ただの立方体だ」

観客B「型抜きじゃねえ!彫刻だ!」



賢者「ふふふっ」

観客A「笑ってやがる…」ゾクッ

型抜屋「それじゃあ【最高難度:リヴァイアサン】スタートだ!」


賢者「はあぁぁあ!」カリカリカリカリ


観客B「は、速い!それでいて繊細な動き…!」

観客A「もう頭を抜きやがった!」

型抜屋「こんな奴は初めてだぜ…!」


ゾンビ娘「…賢者様は何がしたいんだろう…?」


賢者「…ミッション:コンプリート」

観客「「ウォォォォォォォォ!!!」」


型抜屋「ふっ…やるじゃあねえか。お嬢ちゃんなんて言って悪かったな…兄ちゃん」

賢者「…!……また会いましょう」ニコッ

型抜屋「次はもっとやべえ奴を用意しといてやるよ…」

ガシッ


観客A「やっぱり型抜きはこうでなくっちゃな!」

観客B「闘いの後はお互いを讃えて握手。伝説に残るぜ…これは」


ゾンビ娘「何やってるんですか賢者様」

賢者「やあ、ゾンビ娘。探したよ。いやね、途中で型抜きを見つけちゃってね。闘うしかなかったんだよ」

ゾンビ娘「何だかんだ言ってエンジョイしてますね」


カード「おーい。中央広場にいこうぜ!なんかイベントやるってよ!」

賢者「行こうゾンビ娘」

ゾンビ娘「はいっ」トテトテ


骨っ子「助けてご主人ー」

  踊り子「いや~ん!この子か~わ~い~い~」キャッキャッ
  町娘「お菓子あげようか?」ウフフ
  老婆「おやおや、孫が生きてたらこのくらいかね…」ナデナデ
  幼女「わたしのおむこさんになる?」エヘヘ


ウィップ「ウチらの骨っ子がもみくちゃにされてる~」メラッ

カード「ああ…」ゴゴゴゴゴ

賢者「どこに行ってもモテモテだね」


 ―――――――

  ~龍の国 ―港町中央広場―

町長「今年も祭の季節がやって参りました!」

町長「今夜は偉大なるご先祖様をたたえて、盛大に騒ぎましょう!」


ゾンビ娘「あ゛…」ダラダラ

賢者「どうしたの?汗がすごいよ?」


町長「勇者と共に魔王を討った巫女、メイリ様に!」

      「「「メイリ様に!!!!」」」


ゾンビ娘「」

賢者「え?魔王を討った巫女って…え?」

カード「完全にゾンビ娘の事だな」

ウィップ「メイリっていう名前だったんだね~」


賢者「メイリ様」ボソッ

ゾンビ娘「様付けとかやめてください。恥ずかしいんですから」


カード「でも賢者の事を賢者様って呼ぶよな?メイリ様」ニヤニヤ

ウィップ「自分の事を棚にあげるね~メイリ様~」ニヤニヤ

骨っ子「メイリのご主人様ー」


ゾンビ娘「あぁーもうっ!!!このメンバーだと絶対いじられるから来たくなかったんですよ!!!」


賢者「いやまさかね。ゾンビ娘が神格化されてたなんて…」

ゾンビ娘「190年前にゾンビ化してこっそり帰ってきたら、私が相打ちで倒したことにされてるんですよ?」


ゾンビ娘「こっちはそんな記憶は無いというのに…」

ウィップ「伝説ってのはそんなものだよ~」


          ワアァァァァ

カード「何だ?面をかぶった巫女さんが出てきたぞ?」


ゾンビ娘「あれが私らしいですよ。お面には実体のないモノを、人間につなぎ止める力があるとか」

賢者「あれでゾンビ娘の魂を降霊させてるってことか…」


カード「本人の魂ここ。実体持ってうろついてますよー」


賢者「おや?お面を売ってるおっさんがいるよ?」

カード「取って付けたような笑顔が怖いんだが…」

ウィップ「記念に買いに行ってみよ~」


お面屋「おや、これは珍しい。モンスターと旅する賢者様とは…」

賢者「…っ!?」バッ

お面屋「そう警戒しないでもいいんですよ?私は何もする気はありませんから。
    ただ、私はその人に合うお面を選ぶだけ。こちらのお面なんてどうです?」


カード「そんな月でも落としそうな禍々しいお面はいらねぇよ」

お面屋「冗談ですよ…冗談…ウッフッフ…」

賢者「そのいかにも量産品なやつを5つでいいよ」








女騎士「あたしにも同じのを1つだ」


ゾンビ娘「なっ!?女騎士!?」

賢者「…どうしてここに?そのフードの男は誰だ」

女騎士「いたら悪いかよ。旅の中継地として寄っただけさ。こいつは途中で仲間になった召喚士だ」

召喚士「祭を楽しんでたのはどこの誰でしたかな?」

女騎士「うるせぇ!だまりぇ!」

賢者「キミ、こんなキャラだったのかい?」


お面屋「おやおや…楽しそうなお方だ。ですが、あなた達にはこちらのお面がふさわしいかと」

女騎士「おっ!なかなかかっちょいーじゃねえか!うしっ!いくぞ召喚士!最後の呪文を解放しにいくぜ!」ズンズン

召喚士「失礼いたします」ペコリ


カード「…誰だあの女は」

賢者「女騎士。僕と同じ、勇者の呪文を集める者だよ」

ゾンビ娘「少し前、戦ってこてんぱんにやられました」

賢者「一応、人の多いところでは暴れない程度の常識はあるみたいだね」

ゾンビ娘「でも、こっちだって強くなりましたし、戦っても楽勝ですよ!」

ウィップ「いや、あれは強いよ…」

賢者「うん。魔力が格段に上がってた。恐らく僕と同じくらい…」

骨っ子「くぅ~ん…」ビクビク











          ――――ズズズゥン!


         ワァァァァァキャァァァァ!!!

ウィップ「あの光は…!?」

賢者「アル…テマ…?いや、もっと強い何か…?」

カード「行くぞ!多分死人が出てる!!!」

ゾンビ娘「あの女に常識は無いみたいですねっ!」

賢者(何だ?この感覚…胸がざわつく…)


ウィップ「これは…」


 ―――――――

???「そこに広がっていたのは、巨大なクレーターと赤い水溜まりだった…」

???「付近の人は、右脚が吹き飛んだ男性を除いて、誰もいなかった。
    呪文が持つあまりの熱量に蒸発してしまったのだろうね」


???「その近くで、女騎士と召喚士が、笑っていた」

 ―――――――


         ワァァァァァキャァァァァ!!!

ウィップ「あの光は…!?」

賢者「アル…テマ…?いや、もっと強い何か…?」

カード「行くぞ!多分死人が出てる!!!」

ゾンビ娘「あの女に常識は無いみたいですねっ!」

賢者(何だ?この感覚…胸がざわつく…)


ウィップ「これは…」


 ―――――――

???「そこに広がっていたのは、巨大なクレーターと赤い水溜まりだった…」

???「付近の人は、右脚が吹き飛んだ男性を除いて、誰もいなかった。
    呪文が持つあまりの熱量に蒸発してしまったのだろうね」


???「その近くで、女騎士と召喚士が、笑っていた」

 ―――――――


賢者「【真・ホイミ】っ!しっかりしてください!何があったんですか!?」

男性「あぐ…あ、あの女がっお面をかぶった途端に笑いだして…っ次の瞬間には…」

カード「てめぇ…!自分が何をしたか分かってんのか!?」


女騎士《あははははははは!!!勿論だとも!》


ゾンビ娘(何ですか!?このお腹の底に響く声は!?)ゾクッ

ウィップ「さっきのとは別人だね…」ギリッ

















お面屋「おやおや…大変なことになってますねぇ」


カード「お面屋!これはどういうことだ!?どうみてもあのお面が原因じゃねえか!」

お面屋「あれは『矛盾の仮面』。内に隠されし邪悪を外に放出するお面です。決して悪いものではありませんよ」ズイッ

カード「お、おう…そうなのか…?」タジッ

お面屋「信じなさい…信じなさい…ウッフッフ」


賢者「物がどうであれ、結果としてこんな事態になっていますが?」

カード「そ、そうだ!どうするんだ!?ってどこ行った!?」

ウィップ「消えた…?」



   「信じなさい…信じなさい…」



賢者「…逃げたか……で?あなたは『誰』ですか?」


女騎士《くくく、この姿を見てわからないのか?》

ゾンビ娘「賢者様忘れたんですか?あれは女騎士でしょう?」


ウィップ「あれの『中身』は明らかに別物だよ…ゾンビ娘」


女騎士《ふむ、見破られたか…この時代にも聡い者がいるものだな》


女騎士《教えてやろう。我は魔王。200年前に勇者に討たれた魔王だ》


ゾンビ娘「なっ!?」

女騎士《む?お前はあの時のモルモットの小娘ではないか。
    ククク…その様子をだと、『喰鬼の刻印』は機能し続けているようだな》

ゾンビ娘「まさか…本当に…?」ガクガク


賢者「その魔王がどうして復活しているんですか?それも、わざわざ女騎士の躯を器にしてまで…」

女騎士《フハハ!簡単な事よ。もしも我が死んでしまった場合、
    いつか復活出来るようバックアップを用意しておいただけのこと!》


カード「思ったより慎重な魔王だった!」

賢者「おそらくカジノとか手堅くいくタイプだね」


女騎士《やかましい!どういう方法で復活したか知りたくないのか貴様等!?》

賢者「大方、勇者の冒険の書とか嘘書いて、各地に封印しておいた魔力と魂を集めさせたってとこでしょう?」


女騎士《……………まぁその通りだがな……》

ウィップ「一気に威厳が無くなっていくんだけど~」


女騎士《…では呪文を解放しきっていない今、何故復活出来たかわかるか?》ギロッ

ゾンビ娘「ヒッ…」ビク

賢者(ゾンビ娘が怖がってる…焼き印の痛みがトラウマになってるのか…?)

女騎士 《教えてやろう。この仮面の効果だ。かぶっている間だけ我は出てこれるのだ》


賢者「えいっ!」―【風塵弾】― ターン

女騎士《あぶなっ!》ガシッ


カード「ちっ惜しい!」

ウィップ「威厳を潰すことに全力だね~」


女騎士《舐めおって…!殺してやる…!》

賢者「ゾンビ娘!怖くないよ!あいつ器が小さいだけだから!」

ゾンビ娘「嫌だ…嫌だ…嫌だ…」ガタガタ


骨っ子「ご主人を…いじめるなー!!!」【イオナズン】

          ――――カッ


カード「やったか!?」

        シュゥゥゥゥゥゥ
         女騎士《………このクソ犬が…!》


骨っ子「きゃっ…女騎士《失せろ》ベキゴキャッ

骨っ子 ゴシュジ…

†骨っ子


ゾンビ娘「そんな…そんな…!骨っ子!嫌だ…!骨っ子―――!!!」













賢者「【アレイズ】」


骨っ子 アレ?テンゴクニゴシュジンガイル…

ゾンビ娘「骨っ子!よかったぁ!」グスッ


賢者「この僕が、このパーティーの中で死人を出させるとでも?」ゴゴゴゴゴ

カード「ガチギレしてますやん…」

女騎士《どこまでもこけにしおって…!》ワナワナ

ウィップ「こっちもぶちキレてるよ~」


女騎士《蘇生出来ぬよう跡形もなく消し去ってやる!!!》【アルテマ】

賢者「させないよ」【ミナデイン】


  呪文同士が打ち消しあった▼


女騎士《ちっ小癪な!やれ召喚士!》

召喚士「承りました。 来い、【バハムート】」


バハムート「グルオオオオオオオオオオオオ!!!」


カード「何であいつ従ってんだよ!?」

賢者「たぶんあの仮面で操られてると思う」


召喚士「正確には洗脳でございます。やれ、バハムート」

バハムート「グルオオオオ!!!」【メガフレア】


ゾンビ娘「きゃああっ!」


ウィップ「…あれ?何も来ない…?」


カード「間に合ったぜ!」


オーディン「久しいな、人の子よ」フシュー


ゾンビ娘「オーディンさん!」


オーディン「して、我が主よ貴奴が相手か?」

カード「ああ。一丁ド派手にいこうぜ?」


オーディン「魔導使いカードが主、軍神オーディン。押して参る」



         ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


         ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

カード「なんつー大怪獣バトルだ…」


賢者「今の内に魔王を…!」―【風塵弾】―

ウィップ「了解~」【エレメント・ウィップ】

ゾンビ娘「―【連鎖爆弾矢】―!!!」


          ――――ヒュバッドゴーン

  魔王はじっと耐えている▼



賢者(何だか嫌な予感がする…)ゾワッ


  女騎士の周りに魔力が収束する!▼

賢者「………!  この魔力反応はまさか……!!」


女騎士《気づいたか。だがもう遅い》

              【マダンテ】

   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
       :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


賢者「…う……あ…?」ギシッ

女「気がついたかい?おーい、あんた!やっと目覚めたよ!」


賢者「ここ…は?」

女「私と主人が経営してる宿屋さ。散歩中、傷だらけのあんた達を見つけてね。つい助けちまったのさ」


賢者「仲間は無事ですか!?痛っ!」ズキン

女「まだ動かない方がいい。身体中ボロボロだからね。
  それに、あんたとゾンビの女の子以外、まだ意識が無いんだ。ま、命に別状はないから安心しなさいな」

賢者「よかっ…た…」


賢者「挨拶が遅れてすみません。助けてもらってありがとうございます。 僕は賢者と言います」

女「ああ、ゾンビ娘から聞いてる。私の事は……そうだね、女将とでも呼んでくれればいいよ」


賢者「女将さん、ですか?ずいぶんと若いですね」


主人「まだ創業して日も浅いからね」

女将「これでも三十路のおばちゃんなんだけどね。あ、私の主人です」

主人「どうも主人と言います。とりあえず、栄養を取らなきゃ。お粥を作ってきたよ」ニコッ

賢者「ありがとうございます」ニコッ


女将「丸3日も寝たきりだったからね。胃がびっくりするといけないから、重湯からすすりなさいな」

賢者「いただきます」ズズズ


賢者(3日?あの後何がどうなったんだ?)カユ…ウマ…


 ―――――――

食後

賢者「ごちそうさまでした。美味しかったです。それで、1つ聞きたいことが…

            ゾンビ娘「賢者様ぁぁぁ!!」ダイブ

賢者「ごふうっ!?」ズドンッ

ゾンビ娘「目が覚めたんですね!?この3日間…私…私…!」ギュゥウ


  主人「おやおや」女将「まあまあ」

賢者「けほっ…ごめんね、ゾンビ娘…」ナデナデ


ゾンビ娘「ご飯が美味しく食べられなくて死にそうだったんです!!!」

賢者「そっちかい」ペシンッ ゾンビ娘「あうっ」

ゾンビ娘「もちろん賢者様 も 心配しました!」

賢者「僕は、ついで、かい!?」ペチッ ペシンッ ベチンッ


ゾンビ娘「うう…たんこぶができたじゃないですか」ポン

賢者「ミカンを頭に乗せる機転があるなら大丈夫だよ。……それで、他のみんなはどうなってる?」

ゾンビ娘「それが、部屋に入れてもらえなくて…」モグモグ


女将「少なくとも今の状態ではね」

賢者「………あぁ、そういうことか。ゾンビ娘」

ゾンビ娘「何ですか?」キョトン

賢者「【レイズ】」


賢者「これでいいんですよね?…おかみさん?」

女将「…!……正解。今なら入れる。仲間は隣の部屋だよ」

ゾンビ娘「???」


ゾンビ娘「何がどうなっているのかさっぱりです」スタスタ

賢者「『ゾンビ娘が人間状態にある』が、入室の条件だからだよ」キィッバタン

ゾンビ娘「???」ザクッ

ゾンビ娘「扉に近づけません」ドゥンッ

賢者「【レイズ】」

ゾンビ娘「近づけます」

ゾンビ娘「………」ザクッ

   ドゥンッ

賢者「【レイズ】」

ゾンビ娘「近づけますね。なるほど、理解しました」

女将「遊んでんじゃないよ」


女将「…入るなら覚悟しときなさいね」

          ――――ガチャッ

賢者(……っ。真新しい血の匂い…)

ゾンビ娘「…ゾンビ状態で入れないわけですよ…ゾンビ状態だったら正気を失ってました」


賢者「ウィップ…カード…骨っ子…」

女将「…犬は腰を含めて全身7ヶ所の脱臼と骨折。そこの兄ちゃんは背中に酷い火傷。そしてその娘は…」




   ――ウィップの左腕は、肘上10㎝から下が無くなっていた


ゾンビ娘「無くなった腕は!?」

女将「……………」フルフル

ゾンビ娘「そんな…」


 ―――――――

???「実は回復呪文は、あくまで生物が持つ再生機能を後押しするだけでね。
    傷をふさいだり、ちぎれた腕を繋げたりすることしか出来ない」

???「また、腕一本をそのまま生やそうとすれば、
    速すぎる細胞の増殖によって途中でグズグズになってしまい、もっと悲惨な事になるんだ」

???「そうなると、腕まるまる一本というのは大きすぎる損失だよね。
    無くなった腕は消し炭だし、元通りの腕に回復する事は絶望的。
    賢者の力でも、肘までを生やして傷口を塞ぐまでしか出来なかったよ」


???「賢者はウィップの治療の後、カードと骨っ子を順番に治療してまわり、目が覚めた彼らに今の状況を伝えた」

 ―――――――



賢者「…ごめん、守れなかった…」

カード「お前のせいじゃない。あの時お前が結界を張らなかったら、今頃全員仲良く炭になってたさ…」

賢者「…………」

カード「お前だって、俺に謝っても仕方がないって分かってんだろ?」ギリッ

ゾンビ娘「…………」


カード「女将さん…悪いけど、少しだけ2人にしてくれねぇか…?」

女将「…………あぁ」



          ――――キイィ・・・パタン

カード「………………」

カード「起きてんだろ?姉さん」



ウィップ「………弟きゅんの泣きそうな声が聞こえたら、死んでても飛び起きるよ~姉ちゃんは~」


カード「姉さん…俺……約束を………」

ウィップ「いい、大丈夫だよ。右腕じゃなかった事を喜ぼう。
     それにある程度なら、鞭に魔力を注いで意のままに動かせるから、きっと不自由はしないよ~」シュルル

ウィップ「あっ…」シュルッ

          ――――カシャーン

ウィップ「あ、あはは~失敗しちゃった~」


カード(………………。俺は知ってるよ…姉さんは…












       魔力の利き腕は『左』だって…)


カード(魔力を物質に伝える場合、その伝えやすさが右と左で違う)

ウィップ「あはは~参ったねこりゃ~」


カード(魔力の操作は字を書くことと同じ…)

ウィップ「もう一回~」シュルル…カシャン


カード(利き腕でなければ、操作はほぼ出来ない)

ウィップ「は、はっはっは~久しぶりだからかな~?」


カード(字は訓練すれば利き腕じゃなくても上手く書けるが…

ウィップ「ははははは…は、ははっ」ポロポロ


    魔力操作は、先天的要因が重要だ…訓練ではどうにもならない)ギリッ


ウィップ「うっぐすっははは、はは…」ポロポロ


カード(姉さんはもう…魔導具を満足に使えない…)


ウィップ「…………………………………」

カード(あの姉さんがこんな状態なのに、俺にはかける言葉が見つからない…)

ウィップ「……………弟きゅん。頼みがあるの…」


カード「やけに立ち直りが早いな………」

ウィップ「無くなったモノは二度と帰らないって、ウチらは知ってるでしょ?」

カード「…あぁ」


ウィップ「だったら顔を上げなさい。これは命令だよ。逆らったら…」ニコッ

カード「姉の命令に逆らえる弟なんて、この世に存在しないだろ」クスッ


ウィップ「姉ちゃんが何を考えてるか…分かるよね?」

カード「当たり前だろ?俺達“姉弟”だぜ?」


カード「任せとけ!」


          ――――カチャッ

ゾンビ娘「あっカード君。ウィップさんはどうでしたか?」

カード「…少し用事ができた。ちょっと出てくる」

ゾンビ娘「え?」


カード「手伝ってくれるとありがたい」

賢者「…! 何をどうするんだい?」ニヤリ


カード「分かってんだろ、お前?


              姉さんの義手を作る」


 ―――――――

賢者「オリハルコン?」

カード「魔力伝導率が最も高い希少鉱石だ」

ゾンビ娘「どうやって探すんですか?」

カード「ダンジョンや裏市場をしらみ潰しだ」


ゾンビ娘「ずいぶんと時間がかかりそうですね……」

賢者「骨っ子。君が探せたりしないかい?ここ掘れワンワンってさ」

骨っ子「ワンワン!」ホリホリ

          ――――カツン



骨っ子「!」

  5Gを掘り出した▼


カード「まあ、あてにはしてなかった」

骨っ子 Σ(゜□゜;)ガーン


ゾンビ娘「というより、もっと適役なのがいるんじゃあ…」ジー

賢者「え?」 ←運999


 ―――――――

  ~龍の国 ークレーターー


賢者「何、で、僕、1人、で!」ザックザック

     チャリーンチャリーン

カード「とか言って、しっかり金は掘り当てるのな」


賢者「もう疲れたから交代してよ」

ゾンビ娘「『さあ、答えあ…」

賢者「掘ればいいんでしょ!?掘れば!ワンワン!」チャリンチャリン

骨っ子 ワンワン!


カード「同じ所で掘っても、賢者しか金を掘り当てて無いのは何故だ…」

ゾンビ娘「もう金貨を生み出してるんじゃないかと思う程ですね」


ゾンビ娘「もっとキビキビ働いてくださ~い!」ニタァ

カード「日頃の仕返しって顔してるわー」




賢者「…………少しは手伝って下さいよ、メイリ様」


 ―――――――

賢者「…………」ザックザックチャリーン
ゾンビ娘「…………」ザックザック
骨っ子「♪」ホリホリ

カード「金輪際お互いにあのネタでいじるの禁止な?」

骨っ子 ア!ボールデテキタ!

カード「おう。ちょっとあっちに行こうな」  三○

              骨っ子「わうん!」ダダダダダ


賢者「というか鉱山でもないのに掘り当てられるわけ無いでしょうが!!!」

ゾンビ娘「賢者様の運なら、たぶんきっと掘り当てる気がしないでもないですよ」

賢者「すごくフワフワしてるよ~説得力無いよ~」スコップポーイ

          ――――サクッカツーン


カード「………おい」

賢者「まさか本当に…?」

ゾンビ娘「と、とりあえず掘り出しましょう!」


  ザックザックザックザック
  ココホレワンワン!ソレモウイイカラ!



カード「この輝き…硬さ…魔力…本物のオリハルコンだ…!」

ゾンビ娘「すごく…大きいです」


カード「義手のほかに、全員分の武器を新調しても有り余るぜ、これ」


骨っ子「♪」モッカイナゲテー


 ―――――――――

  ~龍の国 ー宿屋ー

ゾンビ娘「カード君が部屋にこもってから3日ですよ?もうこれ以上は…」

賢者「わかってる。魔王が完全に復活したことも、それを世界中の国々に挨拶の品付きで伝えた事も、

   それが原因で世界中の国という国がお返しの品を贈ってパニックになっている事も」


賢者「でも、僕は待つよ。どれだけ世界が危機に瀕していようと、待ってあげたいんだ」

ゾンビ娘「それは…私もですけど…」


          ――――ガチャッ



カード「完成したぜ!待たせて悪かったな!」


賢者「こ、これは…!」

カード「新しい『銃』だ。バースト機能にも対応してるぜ」


ゾンビ娘「………義手は?」

カード「二日前に出来てる」ドヤァ…


ゾンビ娘「まさかこの為に2日も…?」

カード「いんや、違う」


カード「お前のダガーナイフもだ」

ゾンビ娘 (゜□゜ )

カード「あと、骨っ子の首輪も作ってた」

骨っ子 ワーイ

賢者   (゜□゜ )

ゾンビ娘「自殺用の武器を最強ランクにされても…」

賢者「わざわざオリハルコンを使ってまで作る首輪って…」


カード「なんだよ!これでも凄い魔導式刻んでんだぞ!?」


ゾンビ娘「そもそも義手が完成していたなら、どうして早くウィップさんに渡さなかったんですか?」

カード「その時じゃなかっただけだ。やるべき事をやらなきゃ…渡せない…」


女将「へぇ、そいつは聞いてみたいね」

ゾンビ娘「女将さん!」

カード「ちょうどよかった…女将さん、頼みがある」

女将「…言ってみな。話はそれからだ」


カード「××××、×××××××××××。」

 ―――――――
 ――――――――――
 ―――――
 ――――――――



   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

          そして一か月の時が流れた―――――

   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
     ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


  ~魔王城 ー王の間ー


魔王《ふむ…》

召喚師「いかがしました?女騎士様」

魔王《いい加減魔王と呼べ。もうあの女の意識は消えたのだぞ》

召喚師「しかし、その魂は女騎士様のもの。私は女騎士様だけを信じておりますゆえ」

魔王《無駄な希望を持つと申すか…まあ、洗脳も3日で解いたのだ、精神力は強いのだろう。
   それより、世界征服を宣言して一月が経った》


召喚師「お返しの品も、全ての国からきております。『お歳暮』と書かれている物が多いですが…どのような意味でしょうか」

魔王《知らん。だが、そろそろ軍隊が我を討伐に来てもよい頃ではないか?》ウキウキ


召喚師「既に3回ほど襲撃されておりますが、全て召喚獣で一掃いたしたした」

    ∧ ∧
魔王 Σ(゜□゜ )


魔王《我の力を見せつける場が…無いと申すか…?》

召喚師「バハムートを従えていると思われてるでしょうから、力を示すことは出来たのでは?」

魔王《…手間が省けた。ご苦労だったな》(我の見せ場がとことんつぶされとる…)

召喚師(ザマァwwwwwww)

魔王(…何か無礼なことを考えてないか?コイツ)

召喚師「気のせいですよ」

魔王《!?》


リザード兵「魔王様―――!!!召喚士様―――!!!」

召喚士「どうしました?」

リザード兵「はっ!賢者と名乗るパーティーがやってきました!」

魔王《一度負かした相手なんぞに興味はない。追い返せ》


リザード兵「それが…アポを取っていると」

召喚師「あっ本当ですね。入城を許可しましょう」ペラッ

リザード兵「はっ!!」

魔王(この城の権限、ほぼあいつに奪われてないか?)


  ~魔王城 ―門―


リザード兵「入ってもいいそうです!」

賢者「どうもありがとうございます」

リザード兵「いえいえ」


ゾンビ娘「あらかじめ襲撃を伝えるって…」

賢者「礼儀ってのは大事だよ?」

賢者「ここは魔物が建国したとはいえ、立派な国だ。だから正規の手続きさえ取れば、簡単に入れるんだよ」

カード「むしろ、入ってからが問題だがな」


  喰鬼    ×5
  リザード兵 ×3
  スケルトン ×3
  ドラゴン


ゾンビ娘「ひっ!?」

骨っ子 スケルトンノアニキダー

カード「画面におさまらない数だな…」

賢者「まだ襲っては来ないでしょ?僕らは正規の客人だからね。攻撃さえしなければ敵対されないよ」


魔王《その通り。よくぞ来たな、勇者の呪文を持つ賢者よ》


賢者「とりあえず魔王の所まで案内して貰える?」

リザード兵「了解いたしました」


魔王《我の所まで上がってこられるものなら上が…聴いておらんな?》


賢者「たとえ城の最上階から何か言われても、僕らは聞こえるわけないよね~」

ゾンビ娘「完璧に聞こえてますよね、賢者様」


魔王《……………貴様の耳にはスライムでも詰まっておるのか?》ボソッ


賢者「―【毒泡弾】―!!!」ズガンッ


魔王《ぬお!?》状態異常:毒

ゾンビ娘「賢者様!?」

魔王《わざわざ毒を選ぶとは…なんて性格の悪い奴だ…》:毒


賢者「まだ懲りてないのか………よ~し次は麻痺弾でも…」


ゾンビ娘「ちょっと賢者様!?攻撃したらあのモンスター達が…!」


骨っ子 モウセントウハジマッテルヨ!ゴシュジン!


 喰鬼A「うひヒ。俺ハあの巫女ヲやるぜ」

 喰鬼C「あ!てメェ!俺が先に目をツケたんダぞ」

 スケルトンA「このロリコンどもめが。男だったらやっぱりあの美人でモデル体系の女だろ」

 リザード兵C「いやいや、お前ら本当にわかってない。♂だったら迷わずあの男だろウッホ!」

   イヤイヤイヤイヤ ダカラロリータコソシコウ! バッカオマエウシロノアナコソガ アーダコーダ ヤンヤヤンヤ


ドラゴン「もういいからはよ行けや」

モンスター達「グルオァァァァ!!!」


ゾンビ娘「モンスターはロリコンどころか変態しかいませんでした」

賢者「でもスケルトンは普通の感性じゃない?」

ゾンビ娘「賢者様が男であることを加味して、です」

カード「なかなかにヤバい状況じゃねえの(主に俺の尻の穴が)」

骨っ子 ソウ?

賢者「ドラゴンだけは止めとくから。骨っ子、頼んだよ」【ストップ】

骨っ子 カードノオニイサン!

カード「あいよ~

         【オリハルコンの首輪 ――解放】」


          ――――ドンッ

リザード兵B「な、なん―――」


          ――――グシャ

スケルトンB「気をつけろ!攻撃体制をと…」
          ――――ガシャン



喰鬼D「!?何が起こっているんだ!?」


       「グルルルル」
       「ハッハッハッハッ」
       「ルオァァァァ」













スカル・ケルベロス「「「ワオォォォォォォォォォン!!!」」」


リザード兵A「なんだこいつはー!?ギャッ」グシャ

スケルトンA「首が3つ!ケルベロスだ!ガッ」ボキンッ


    ワーギャーウワァァァァァァ


賢者「まさか骨っ子がこんなに強かったなんてね」―【雷撃弾】―

ゾンビ娘「まず骨三頭犬の幼体だったことに驚きです」―【射雨】―

賢者「成体になるまで百年かかるらしいからね」―【雷撃弾・三点撃】―

カード「オリハルコンの魔力増幅効果で一時的に成長しただけだがな」【氷符】◇


ドラゴン「」ズバーンドゴーンズギャーン


骨っ子「お兄さんが」「さいごだよ」「ヨワカッタネ」

スケルトンC「な、な!俺達同じスケルトン族だろ!?見逃してくれよ!な!?」


骨っ子「「「んー嫌だ!!!」」」

     ――ガブッバキッ

骨っ子「身体が小さかったからって」「むれからおいだしたのは」「オマエラダ」

骨っ子「ボクの仲間はご主人達だけだ!」シュゥゥゥ



骨っ子 ネ、ゴシュジン!


ゾンビ娘「骨っ子!怪我はない?」

骨っ子 ダイジョウブ!

賢者「よく頑張ったね」ナデナデ




カード「ほんわかした空気醸してるとこ悪いが…」


ドラゴン「ガァァァァァァァ!!!」

カード「まだドラゴン生きてるからな?」


賢者「後はよろしく」ナデナデ

ゾンビ娘「骨っ子を愛でるのに忙しいんです」ヨシヨシ

カード「俺も参加したい…」


ドラゴン「【フレ…」ボォッ


カード「え~と…今の俺の体力はどのくらい残ってるっけ?」

カード「HP:357か………最近ようやくツキが回ってきたな。【リーチセブン】」




ドラゴン「ガヒュッ」7777ダメージ

†ドラゴン「」



カード「終わったぜ」ヨシヨシ

骨っ子 3ニンデナデルノヤメテヨー


 ―――――――

  ~魔王城 ―王の間―


魔王《アイツ絶対滅ぼす》:毒

召喚士「意外に器が 小さい ですね」

魔王《………所詮はただの猿。許してやってもよいか…》:毒


召喚士(声がオッサンじゃなかったらこの手のひら返しも可愛いのにな…)


魔王《………お前も下らんことを考えてないで迎撃に向かえ》:毒

召喚士「ちっ…御意のままに。女騎士様」

          ――――ガチャン


魔王《…………この毒、いつまで効果続くのだ?》:毒


 ―――――――

  ~魔王城 ―廊下―


賢者「全然敵が出てこないね」

ゾンビ娘「おかげでこんなに早く広間までやって来れましたよ」

カード「だがこの広間…明らかに…」


召喚士「ご明察。中ボスの間でございますよ」


ゾンビ娘「あなたは…!」

賢者「祭の時の!」



賢・ゾ・骨「「誰でしたっけ?」」ケー?

カード「おぉ!これといった特徴のない顔した召喚士じゃねぇか!」


召喚士「あなた達が戦わず来れたのは、私が手引きしたからでございます」


ゾンビ娘「すごい…私たちの挑発に全く乗りません」

賢者「ああ、彼は強敵だね」


召喚士「変な方法で判断するのはやめてもらえませんか?」

カード「流石にツッコんだな」


召喚士「はぁ…馬鹿馬鹿しくてやってられませんね…
    中ボスの位を頂いておりますので、そうも言えないのが辛いところです」

召喚士「『よくぞ来たな、愚かな者共よー。だが、貴様等の旅もここまでだー
     魔王様の右腕である我が、貴様等を塵にしてくれようー』(棒)」つカンペ


カード「やる気無いなオイ!」

召喚士「あの人の命令ですからね。やる気なんて消え失せてますよ。ま、塵にするのは本当ですがね。


     ――【バハムート】【シリオン】【リヴァイアサン】召喚」


カード「三体同時召喚!?どんな魔力量してんだよ…」

骨っ子 アノトキノ氷の巨人マデイル!


召喚士「ふふふ、私にとっては朝飯前ですよ」

賢者「大した魔力量だね」

ゾンビ娘「賢者様が言うと、途端に嫌味っぽくなりますね」


召喚士「黙りなさい。おや?見たところ、1人足りませんね。いかがなさいました?」

カード「…関係ねーだろ。」

 ―――――――
 ―――


 ――――――――――
 ――――――――
一月前

  ~龍の国 ―宿屋―

カード「姉さんを、ここで雇って欲しいんだ。」


ゾンビ娘「カード君!?」

賢者「正気かい?バレたらたぶん殺されるよ?(精神的に)」

カード「俺は至って正気だ」


女将「…それで後悔しないと誓えるのかい?」

カード「誓えるさ。身勝手だってことくらいわかってる。
    でも、姉さんにはこれ以上傷ついてほしくないだけなんだ。後悔なんてするわけないだろう?」



女将「……いいでしょう。責任を持って、あんたの家族を預かろうじゃないか」

ゾンビ娘「女将さん!待ってください!」

賢者「ゾンビ娘!!!」

ゾンビ娘「………っ」ビクッ


賢者「…悲しいかな、これが男の性だ…自己満足でしかないけども、カードは考えを変えないよ」

カード「ありがとよ、賢者。恩に着る」

 ―――――――
 ――――――――――


 ――――
 ――――――

カード「…関係ねーだろ」

召喚士「おやおや、どこぞで死んでしまわれたのかな?」

カード「安い挑発にゃあ乗らねえよ」◇◇◇◆

  ――【オーディン】【シヴァ】【イフリート】召喚

カード「だが、『売られた喧嘩は必ず買え』って、姉に言われてるからな。召喚獣対決と行こうぜ?」


召喚士「いいでしょう!来なさい!」


         ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ


賢者「僕らは何をしたらいいんだろう」

ゾンビ娘「2人共遠距離型ですし、ここから召喚士を狙いますか?」


賢者「なんか今回だけは真面目にやらなきゃいけない気がする…。かと言って召喚獣相手に戦うのもな~」

ゾンビ娘「じゃあおやつでも食べてましょう」


     ――ポリ…


  ゾンビ娘がビスケットをかじる音を合図に、戦闘が開始された。


ゾンビ娘「ゴングみたいに使わないでください」ポリポリ


  バハムートの爪をかいくぐり、イフリートの豪腕が氷の巨人の片翼を砕く。
  ダメージを受け、シリオンの胸の宝玉が妖しく光りはじる。
 同時に海を司る海獣リヴァイアサンが大量の水を生み出し、力を開放する

     ――【津波】

  少年と少女は、かつて体験した津波の数倍もの規模のそれを目の当たりにして、

賢者「おやつ食ってる場合じゃねぇ!」

  目を見開いて回避に移る。


 ―――――――

  視界の端で、目を剥く賢者とゾンビ娘が見える…


カード「止められなきゃ、全滅ってか?わかりやすいねぇ」


  主の言葉を受け、氷の女王シヴァは大口を開けて迫る水の進撃を、自らの世界に引き込んだ。
 そして、氷の壁となった津波を絶剣を振るう騎士の影が覆う。オーディンが切り開いた視界に飛び込んできたのは


――太陽を喰らう龍の口だった


バハムート「【ギガフレア】」ゴォッ

オーディン「ガッ―――」
シヴァ「くうっ―――」


カード「オーディン!シヴァ!」


召喚士「おやおや~?もうそちらの召喚獣は全滅でございますか~?」

カード「イフリート…!」


  炎のたてがみを持つ獣は、リヴァイアサンを前にボロ雑巾のように横たわっていた


召喚士「フフフ。あなたの魔力量では、もう限界でしょう?私の勝ちでございます」


骨っ子「「「グルルルルルルル」」」

ゾンビ娘「ジャマしたら めっ!だよ?」ムグムグ

骨っ子「「「きゅーん…」」」


賢者「この温度差である」ターンターン

ゾンビ娘「そう言えば、さっきから賢者様は何をしているのですか?」


賢者「バハムートの足の指先に向かって【箪角弾】を撃ってる」ズガンズガン


ゾンビ娘「痛そうな名前の弾ですね」バシュッパシュッ

賢者「その名の通り、タンスの角に小指をぶつけたような衝撃を与える弾だよ」ターンターン


ゾンビ娘「な、なんて陰湿な攻撃…!」シュンシュン

賢者「君だってリヴァイアサンの背中めがけて矢を弱く放ってるじゃん」

ゾンビ娘「きっと枕からはみ出た羽毛にチクチクされるような感覚でしょうね」


骨っ子「さっきから」「邪魔しか」「シテナイネ」


召喚士「真面目に戦ってる横でふざけるのは何なんですか。腹立たしいです」

バハムート「【メガフレ…」


カード「おっと!リア充が羨ましくなったら、こいつらの出番だぜ?」◇◇◇◆

オーディン×3「「「壁殴り代行始めました」」」


  再び呼び出された三体の軍神が、バハムートを殴り殺した。





ゾンビ娘「壁殴ってませんね」

賢者「壁ならゾンビ娘のむnあべしっ!!」ゴスッ

ゾンビ娘「流石にキレますよ?」


シリオン「オロオロ」リヴァイアサン「オロオロ」

召喚士「そこ!オロオロしない!」


召喚士「くそっ…3体も召喚しておいてまだ魔力があるなんて…!」

カード「まあ、ひと月前の俺だったら魔力切れだっただろうな。だが、一か月も何もしないでいたわけじゃねぇ。
    魔力がここまで上昇したのは、そこの骨っ子と同じ理由だ」ニヤリ


骨っ子「つまり!」「オリハルコンの!」

召喚士「魔力増幅効果………っ!」

骨っ子「セリフ」「取られた~」「ションボリーヌ」



カード「その通り。この【増幅】の式を刻み込んだオリハルコンのカードで、極限まで魔力を上昇させてたんだ」


カード「今の俺は、賢者1/5人分の魔力量だ」













賢者「つまり魔王十体分…と」

ゾンビ娘「今の魔王は魔力量が増えてますよ?」

賢者「そう言えばこの単位は何なんだろう…」ウーン


召喚士「フフフ。面白い、面白いですよあなた達!あなた達なら彼を倒せるでしょう!
    私個人としてはこのまま先に通したいところですよ!」

カード「魔王に従いたくないなら、そうしてくれた方が助かるんだがな」

召喚士「しかし彼の命令は同時に彼女の命令でもある。そして私は彼女に逆らいたくないのです。
     どうか最期までお付き合い下さいませ」ニコッ


  2体の召喚獣を生贄に
       召喚 ――オーディン×イフリート


召喚士「フフフ。面白い、面白いですよあなた達!あなた達なら彼を倒せるでしょう!
    私個人としてはこのまま先に通したいところですよ!」

カード「魔王に従いたくないなら、そうしてくれた方が助かるんだがな」

召喚士「しかし彼の命令は同時に彼女の命令でもある。そして私は彼女に逆らいたくないのです。
     どうか最期までお付き合い下さいませ」ニコッ


  2体の召喚獣を生贄に
       召喚 ――オーディン×イフリート

ミスった


  赤と黒の光を放つ二つの小さな御霊が、交差しながら召喚の魔法陣を描く

 そこから生み出されたのは、召喚獣の規格を外れた炎を背負う魔神だった




オーディン:炎「グルォォォオオオオオオオオオ!!!」


カード「召喚獣同士の合成…!?そんなのって…!」


賢者(進化ボルテックス…)ボソッ

ゾンビ娘(超進化ボルテックス…)ボソッ


カード「デュ○マとか懐かしいなオイ!」


骨っ子(ゴッドリンク…)ボソッ

カード「いい加減カードゲームから離れろ!」


賢者「そういえばシールドを展開できるわ、召喚も出来るわ、カードが一番デュエ○っぽいよね」

カード「やかましい!とにかくだ、これは召喚者として最上位の術だって事!そうだろ!?」


召喚士「ええ。なにせこれはジョグレス進化ですから」

カード「違う!どっちかって言うとオメガモンに近いわ!」


カード「ぜぇ…ぜぇ…」


賢者「満足した?」チラッ

ゾンビ娘「しました?」チラッ

召喚士「どうなんです?」チラッ

オーディンA「主殿」チラッ
オーディンB「主殿?」チラッ
オーディンC「主殿!」


カード「うるせぇ!何で奇跡的な連携を発揮してんだ!」

ゾンビ娘「それが私達の持ち味でしょうに。というか楽しいですね。賢者様がイジメ好きな理由が分かりました」

賢者「でしょう?でも僕はゾンビ娘(をからかって遊ぶこと)のほうが好きだけどね」

ゾンビ娘「んな…っ!そんなこと言ってると、またかじりますよ!?」


召喚士「本当に面白い人達だ。ですが、腹が立つのでイチャつくのはそこまでです」

オーディン:炎「ヌン!!」ゴォッ

  炎を纏った一撃が、イフリートの豪力で振り下ろされる


ゾンビ娘「あわわっ」ヒョイッ

        ――ズドンッ

賢者「掛け合いの隙を突かれるとはね…」

ゾンビ娘「相手の油断を誘うためにやってきた戦法があだになるなんて…!」

カード「今までのやりとりにそんな意図が!?」

骨っ子 アタリマエデショー


 ―――――――

 …………!

 …………!!

???「ああ、ごめんごめん。その拳を下ろしてよ。ちょっと黄昏てた。え?ふざけ過ぎだって?
    たしかに

  召喚士「ふざけてると話が進みませんよ?」

          って、突っ込まれちゃうほどだったからね」

???「でもその後すぐに戦闘再開したんだよ?
    炎の戦馬が縦横無尽に駆け回ってね、さながらギャロッ…ペガサスのようだったよ」

???「オーディン達はその動きに翻弄され、防戦一方。やがてそれも限界がきてね…」

 ―――――――


オーディン:炎「ぬうん!!!」バキンッ

オーディンA「グオオ!?」

カード「くそっ!ガードが崩された!」


ゾンビ娘「動きが速過ぎてこっちの攻撃が当たりません!何か手立ては…!」


賢者「あっ…一つ思い付いた…」

ゾンビ娘「じゃあそれで!」

賢者「いいの?」

ゾンビ娘「自分で決めて下さい!」


賢者「ということだから、カード、オーディン達、ゴメンね?」チャキッ



「「「「え……?」」」」


賢者「―【箪角弾・乱れ撃ち】―」

  ズバババババババババババババババババババババババババババババババババババ


  膨大な魔力量にものをいわせた乱射。その場にいたカードを含む全員に命中する。
 なお、それぞれ最低でも5発は足の小指にヒットしていた。

       ――ズズズン…


ゾンビ娘「全員こけたぁ!?」

骨っ子 イタソー

  その通り、凄く痛いのである


カード「………っ」プルプル
オーディンABC「「「………っ」」」プルプル
召喚士「………っ」プルプル
オーディン:炎「………っ」プルプル

  痛みを堪える男達。

馬「ヒwwwヒwwwーwwwンwww」ブルルー

  嘲笑う馬。

賢者 タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ

  撃ち続ける男。

ゾンビ娘「やめたげてー!!!」

  叫び声が虚しく響く少女。


賢者「トドメだ!!!」―【箪角弾・三点撃】―

オーディン:炎「させぬわ!!」ガギンッ


骨っ子 キドウヲカエタ!

ゾンビ娘「あれ?弾いた方向にカード君が…」


賢者「!」
召喚士「!」



カード(ああ…何か銃弾が飛んできたな~ゆったりと近付いて来るのがわかる…)

カード(命の危機に瀕した時、景色がスローになると聞くが…これがそうか…)

カード(でも箪角弾って、衝撃だけを与える攻撃だし…死にはしないよな…
    何で召喚士と賢者がこっち見て青ざめてんだ?)


  彼はもう一度弾丸を目で追う。箪笥の角に指をぶつけた時の三倍の衝撃を有する弾丸が………











         ――自らの股間に飛んで来るのを…

カード(死んだ。俺死んだ)

カード(さようなら…我が息子よ…)ギュッ








カード(……………あれ?)チラッ


◆◆◆「やあやあ~危なかったね~」


賢者「あなたは…!」

ゾンビ娘「予想がつきますけど、言っちゃ駄目なんですよね…」


鼻眼鏡「私だ」キリッ

カード「いや誰だよ」スパーン

ウィップ「おっと~」ポロッ


ゾンビ娘「ウィップさん!」

骨っ子 オネエチャン!

賢者「どうして…」


カード「姉さん!どうしてここに…!」

ウィップ「弟きゅんある所に私あり、と言いたいんだけど~弟きゅんが姉離れしたからね~
     ウチも弟きゅん離れしない訳にはいかない。そうでしょ?カード」

カード「いや、女将さんはどうしたってこと!逃げないように見張っておいてくれるんじゃなかったのか!?」

ウィップ「カード、姉ちゃんはね~あんたを助けにきたんじゃないよ~?」

カード「じゃあ何で…」

ウィップ「女将さんに言われて『はじめてのおつかい』だよ~」

ゾンビ娘「ああっ!手提げ鞄からネギが飛び出てる!」


カード「何でたかがおつかいで魔王城まで来てんだよ!」

ウィップ「このメモの通りに来たんだよ~」ピラッ


  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
  |  馬鈴薯    |
  |  人参     |
  |  玉ねぎ    |
  |  ネギ     |
  |  カレールー  |
  |  マンドラゴラ |
  |         |
  |  魔王の首肉  |
  |_________|


カード「」


ゾンビ娘「カレーにネギを入れるんですか!?」

賢者「ちょっと待て驚く所そこじゃない」


ウィップ「きっと美味しいカレーができる筈だよ~」


召喚士「絶対美味しくないて思うのですが…」

ウィップ「ウチの天才的な料理の腕を知らないね~?」

カード「…壊滅的な腕だよな」


ウィップ「失礼な!これでも女将さんの所で練習したんだからね~」

賢者「モンスターのせいで旅館つぶれてないよね?」

ウィップ「もう!仕方ない。このジャガイモを使って今から証明してあげよう~」つ馬鈴薯


ウィップ「第1回ウィップ流お料理教室~」テレレッテテテテ



ウィップ「まずはこのジャガイモを、そこのオーディンの炎を使って火を通して~
     義手の力を使って潰します~」グシャァ


賢者「義手洗った?」

ウィップ「ついでにネギを細かく切って、ジャガイモと混ぜます~」コネコネ


ゾンビ娘「芋団子…?」

ウィップ「出来たこの塊を~4つに分けて~」



ウィップ「床に叩きつけて完成~」ズパァン!!!


カード「最後で台無しに!!!というか何を作った!?」

ウィップ「ネギを混ぜたハッシュドポテトもどきだよ~」


賢者「床にスマッシュされてますが!?ついでに言うと工程に足りないところ多くない!?」


ゾンビ娘「……………三秒ルール…」ユラ…

骨っ子 モウスギテルヨゴシュジン!


召喚士「あの…戦闘中だということを忘れておりませんか?」


オーディン:炎「グルォォォオオ!!!」ムカ着火ファイヤー

  待たされすぎた召喚獣が怒り狂い、炎の塊を振り下ろす

ゾンビ娘「あ…」ジュッ

ポテト ジュ~


  一瞬で焼き尽くされるゾンビ娘と、程よく焼かれ香ばしい匂いを放つポテト

賢・カ・骨「「ポ、ポテイトゥゥ―――!!!」」トゥー



ゾンビ娘「発音よくポテトの心配する前に、私の心配をしてくださいよ!」プスプス

賢者「ぶっちゃけゾンビになるだ、だけだからあ、あんまり心配してないよ」
     【レイズ】【ベホマ】【リレイズ】


召喚士「…そういう割に過保護過ぎではありませんか?」

賢者「べ、別に普通の事なんだからねっ!勘違いしないでよねっ!」


カード「気を抜くな!今まで原型を留めていなかった姉さんの料理が、はじめてそれらしい形をしているんだぞ…!」

賢者「ひどい言われよう。でも賛成する」



          ――メキメキッ

カード「……後ろを振り返るのが怖くなってきた」


    キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

召喚士「      」パクパク

ゾンビ娘「オーディン達より禍々しくて格好いいんですが…」

  芋(?)は膨張しその形を変える。細く引き締まった筋肉質の体に、四本の足。早い話がケンタウルスの姿になった

骨っ子 カッコイー

ポテト「キッシャッシャッシャッシャッ!」ケタケタ


 ―――――――

???「ん?ウィップの料理がどうしてこんなになっちゃうか、だって?」

???「僕も後から知ったんだけどね、どうやら魔力の波長が関係してるんだって」

  ………………?

???「そういうこと。みんなそれぞれ違う波長をしているんだよ」

???「賢者とゾンビ娘は
           ~~~~~~~~~~こういう正弦波。
    カードは
           wwwwwwwwwwこんな風なジグザグなんだよ」


???「ウィップの波長は、中でも珍しい心臓の鼓動の形でね、擬似的に生命を創れるんだ」

???「その能力の発動スイッチが何故か料理だっただけで、本人も苦労してたんだって」

 ―――――――


ウィップ「繋げ!【魔導鞭・チェイン】!」ジャラッ

召喚士「おや?」∞∞∞∞∞∝オーディン:炎「ぬ?」
        ジャララッ


ウィップ「さあ~やっちゃえポテト~」


ポテト「キシャァァァァァァ!」ボディブロー

オーディン:炎「ゴブゥ!?」ドムッ
 §
召喚士「ガッ…!?」ドッ


召喚士「っ!何故攻撃を受けていない私にダメージが!?」

ウィップ「へへへ~さあね~?」


賢者「あの鞭って、魔法を纏うだけじゃなかったの?」

カード「あれは能力の一部でしかねぇよ。あの鎖鞭は俺の祖先の作品で、
    【結合】と【連鎖】が能力の武器だ。【結合】で対象を掴み、鎖で繋いだもの同士を同調させることができる」

     ――つまり

ウィップ「片方に与えるダメージと同じ割合でもう片方にダメージを与える!」


ポテト「キシャッ」ポテロングゥ



オーディン:炎「調子に…………乗るな!!!」
              ――ボボボボボボボボボボンッ

  炎の赤が、ニ体の全身を染め上げる


カード「あの野郎全身から炎を吹き出しやがった!」

ゾンビ娘「このままでは炭になって食べられなくなりますよ!?」アタフタ

賢者「まだ食べる気だったの!?」


ウィップ「そこは安心して~」ブンッ 三□

ゾンビ娘「そ、それはまさか…!」


  一般的なそれの一箱分の大きさを持つ物体が飛んでいく。




召喚士「なっ!?バターですって?」ゴクリ



  完璧な軌跡を描いてポテトの頭の上に乗った、巨大なバターは…


 □
ポテト「キシャァァァァァァァァァァァァ」

 □ トロッ…
ポテト「!」

  炎の熱で融け始めた!


カード「これは最強の組み合わせだわ…」

賢者「……クロスギア…」ボソッ

カード「懐かしくなって大変だからネタを掘り返すな」

骨っ子 オイシソー


          ドクンッ―


ジャガ=バター「ギシャァァァァァァァァァァァァァァ」


カード「もう何がなんだか…」

賢者「僕もよくわからない」

召喚士「私もでございます」グッタリ

ゾンビ娘「【美味しいもの+美味しいもの=すっごく美味しいもの】ってことですよ!」キラキラ


     バタープラチナ
ウィップ「芋の白銀!な~んてね~」


ジャガ=バター「ジャーガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガ ジャガァ!」ドドドドド

オーディン:炎「オーデオデオデオデオデオデオデオデオデオデオデオデオデ オデンッ!」ドドドドド


 ――――――――――

魔王《階下から旨そうな匂いがする》:毒

   グゥ~

魔王《………………》:毒 キュルル~

魔王《腹減ってきたな…》:毒


魔王《誰か食い物を持って来い》:毒

    シ―――――ン


魔王《…そういえば皆迎撃に向かわせておったな…》:毒

    きゅるるる~

    ∧ ∧
魔王 (´;ω;`):毒


―――――――
―――――――――
――――

オーディン:炎「 」ピクピク HP:100

召喚士「………切断し…ても…すぐ繋がるなんて…反則でしょう…」 HP:1


ウィップ「言い残すことはある?」

ゾンビ娘「ウィップさん!?ここまでやったならもう…!」


召喚士「…女騎士様に、どうかよろしくお願いいたします。私は一足先に失礼いたします、と」

カード「おい!何も死ぬこと無いだろ!なのに…!」


召喚士「どの道死ぬしか残っていませんよ」

ゾンビ娘「どういう…」


賢者「魔王の下についた人間は、言ってみれば人類の裏切り者ってことだよ」

召喚士「そういうことです。今を生き延びたとしても、その内見つかって殺されますよ。
    ただでさえ女騎士様に代わって顔出しが多かったんですから」


召喚士「さ、どうかとどめを。…出来るならカードさん、あなたの手で…」

カード「何で俺が…!」

召喚士「食材に殺されたとなったら、地獄で笑い物になってしまいますよ。
    それに、どうせならあなたのような召喚士に殺されたい」


召喚士「だってあなた…―――――――まだ正規契約の召喚をしてないでしょう?」

カード「ぐ………」


召喚士「非正規の略式召喚であそこまでやられた。もはや畏敬の念を覚えるほどに。
    あなたと私は、どこか似ている気もしますしね。だからこそどうか…どうか…」

賢者「カード…」

カード「わかってる。俺の全力で送ってやるさ……」◆

             ――召喚




――――――
―――――
―――――――――――

  後のことは…頼みます…

―――――――――
――――
――――――




ゾンビ娘「むぅ……」スタスタ

賢者「この階部屋が多すぎやしないかい?」ガチャッ

ゾンビ娘「むむむぅ……」

カード「行き止まりばっかりだしな」バタン

ウィップ「宝箱が無駄にあるし、いいんじゃない~?」

ゾンビ娘「むむむむむ!」

賢者「何唸ってるの」



ゾンビ娘「いえ、もうお腹がいっぱいでこれ以上食べられなくて…」ケプー

芋の欠片「」

賢者「あれからずっと食べてたのね…」

ゾンビ娘「おいしかった、です!」ヒッヒッフー

ウィップ「それは何よりだよ~」

カード「いつの間にこんな食いしん坊キャラに…」

賢者「はじめからだよ。ん?」ガチャッ


骨っ子 ココハ…

カード「休憩所…か…?」

賢者「それにしては無駄に生活感があるね」


骨っ子 サッキノオニイサンノニオイガスル!

ウィップ「召喚士の部屋だったのかな~」


ゾンビ娘「ちょうどいいです。少し休ませてもらいましょうっ」トテテ


賢者「僕も魔力を回復させ…」

     三●カサッ

賢者「敵襲!?」チャキッ

 人
( ? )「待って撃たないで!」

賢者「え、何このスライム」

 人
(>‐<)「プルプル、ボクはくろいスライムじゃないよ!」

賢者「いや、現に黒いじゃない」


 人
(・A・)「あ、間違えた。ボクはわるいスライムじゃないよ!」

賢者「………そうだね」

 人
(・∀・)「黒いのはさっきコーヒーを飲んだからだよ!」

賢者「突然出てきて自己紹介されても、マスコットなら骨っ子で間に合ってるよ」

 人
(-_-)「ん~僕は忠告をしに来たんだよ」

賢者「忠告?」

 人
(´∀`)「まあ、ここじゃあなんだから、隣の部屋にでも行こうよ」



          ――ガチャッ

賢者「ひぃ…っ!?」

  その部屋の壁には、女騎士の絵が一面に貼られていた。

賢者「ここは何!?」ゾワァ…

 人
(-∀-)「召喚士のプライベートルームだよ。見かけによらず、とんでもない闇をお持ちで…
    普段はこの闇を抱えて、時々この部屋で吐き出していたってことだよ!」

賢者「…きっと今頃、死後に秘蔵のエロ本を公開される男子の気持ちを味わっているかもね」

 人
(>Α<)「恥ずか死レベルは自慰を誰かに目撃されたレベルに匹敵するね!」

賢者「うわ…自作の抱き枕まである…」ゾワァ…

 人
(・3・)「そろそろ本題に入りたいんだよ…」


賢者「それで、何を言いたいの?」

 人
(・∀・)「まあまあ、まずは座ろうよ」

賢者(良かった…クッションは普通だ…)

 人
(・Α・)「話というのは、これから先の展開についてなんだよ」

賢者(ん?クッションの下に何か…)ゴソゴソ

 人
(・Α・)「すぐそこが魔王のいるラスボスの間なわけだけど」

賢者(鞭!?彼はどこまで登り詰めてるんだ!?カードと同類じゃないか!あ、よく似ているってそういう!?)アタフタ



 人
(-o-)「話聞いてる?」

賢者「き、聞いてるよ。それで?」

 人
(-_-)「うん。君達、魔王戦も真面目に戦う気ないでしょ?」

賢者「いや、それが僕達の作戦でだね…」

 人
(~Α~)「本心は?」

賢者「シリアスやると背中が痒くなるんです(切実)」


賢者「読むのはなんともないんだけどさ、自分がするとむず痒くて」

 人
(-∀-)「この物語も、日々のストレスで極限状態の心で書き殴ったものだしね。
    はたしてこの先に予定しているシリアス展開に心が耐えられるか…」

賢者「本当にやるの?背中大丈夫?」

 人
(・∀・)「気にしないで。ストレスで乾燥肌が悪化しているだけな気もするし、
    それにもう決めたんだよ。まだ先は長いけど、ちゃんとシリアス70%で頑張るから安心してほしいんだよ」


賢者「残り30%は?」

 人
(・ω<)☆「期待してるよ?」

賢者「ええー僕ら頼みなの?」


 人
(・Α・)「そうそう、ここでのことは本編にあんまり関係ないから、『みんなにはないしょだよ』?」

賢者「そのセリフが言いたかっただけでしょ」

 人
(>∀<)「あはは!それじゃあもう時間なんだよ。起きるんだよ!バイバイなんだよ!」

賢者「え…?」

――――――――
―――――



賢者「んっ………」ビクッ

カード「お!起きたみたいだな」

ゾンビ娘「おはようございます」


賢者「…………何で僕はゾンビ娘に膝枕されてるの?」

ゾンビ娘「逃がさないようにするためですよ」ニッコリ

賢者「え゛…?」ガシッ



ウィップ「突然『眠い』って言って倒れたの覚えてないの~?」

賢者「そうなの?」

カード「ゾンビ娘を押し倒す形で倒れたことも?」

賢者「えっ…」

ゾンビ娘「そのまま私を抱き枕にして『壁…堅い…』って寝言をこぼしたことも?」ゴゴゴゴゴゴ

          ――ミシミシ

賢者「おぅふっそこを潰すのはおやめください!」

ゾンビ娘「えへへへへ~」ベキャッ

賢者「」


  その後、ケーキを奢るという約束でなんとかなだめ、部屋を出ることにした。

賢者「よ、よし、出発す…」フラフラ

  賢者の視界の端に、少しだけ開いた扉が映る。一抹の不安を胸に抱きながら、覗き込ん…

          ――――ズバメキャアッ

      …ドアを歪める勢いで閉めた。

ゾンビ娘「?…中になにか…」テクテク

賢者「―【爆裂弾・三点撃】―」カッ

   ゾンビ娘「ミギャッ!?」ズドーン


ゾンビ娘「何するんですか!」†リレイズ発動†

カード「あ~あ、こりゃあ部屋の中全部吹き飛んだな」


      。 。
骨っ子 (((( д ;))))

ウィップ「何を見たの~?」

骨っ子 ボクハナニモミテナイヨ ガクガクブルブル


賢者(ユメダケドユメジャナカッタ…)スタスタ


~魔王城 ー最上階ー

賢者「この扉の向こうに魔王がいる。みんな、準備はいい?」

ゾンビ娘「絶対に倒してケーキを食べてやりますよ!そして年一回パーティーをやるのです!」

カード「アハハハハ!そりゃあいい。そん時には俺も腕を振るおうじゃねえか」

骨っ子 タノシミー

ウィップ「ならウチも手料理を…」

全員「「「それはダメ」」」メー

ウィップ「え~」

  全員肩の力を抜いて、笑っていた。
                               人
             「人はそれを死亡フラグと呼ぶ」三( ・∀・)ヒュッ

賢者「!?」バッ

賢者「気のせいか……」

          ――ギギギィ…



~魔王城 ー玉座の間ー

  部屋の中に入ると、オルガンの音が腹の底を震わせた。


魔王《随分と遅かったではないか。待ちくたびれたぞ》:毒

カード「背を見せての演奏とは、随分と余裕のようだな」◇◆

オーディン「【グングニル】!!!」ゴッ


魔王《いや何、魔王の登場シーンはこうあるべきと聞いたのでな》:毒 ガシッ

ウィップ「召喚獣の一撃を止めちゃったよ~」

魔王《この程度、造作もない》:毒

ゾンビ娘「顔が紫に変色していなければ絶望してましたね」

賢者「まだ毒が解けてなかったのかい…」


賢者(もっとも、そんな状態でグングニル受けて無傷ってのが一番恐ろしいんだけどね…)



魔王《フン…貴様も毒に侵されてみるか?》

賢者「遠慮させてもらうよ」

魔王《そう言うでない。我が9つの呪文が1つ、その身を持って味わえ》


魔王《食らうがいい、【言いたいことも言えないこんな世の中】を!》

カード「名前長!」


賢者「! ゴフッ」:猛毒

ゾンビ娘「賢者様!」


魔王《フハハハハ!通常のポイズンの三倍の毒性を持つ我の呪いの味はいかがかな?》

賢者「…毒だけじゃなく、解毒の呪文を受け付けない呪いもミックスされてるあたりが最高かな…ゲホッ」:猛毒


魔王《200年前は、魔導師が抗毒の陣を発動したせいで使えなかったが…先手必勝とはよく言ったものよ!》


ゾンビ娘「【キアリー】!【キアリー】!!!」

賢者「本格的に結構やばいねー」:猛毒


魔王《今、楽にしてやろうではないか!フハハハハ!》【メラミ】

  灼熱の炎が賢者に襲いかかる▼


 ――――――――――――

  あたり一面に赤色が渦巻いている。

魔王《他愛もない。今のはメラゾーマではない、メラだ!フハハハハ……》

          ――――ヒュッ

魔王《ほう…我のメラを食らってまだ生きておるか》

カード「やかましい!どこがメラだ!!行け、オーディン:炎!!」

オーディン:炎「【斬鋼剣】」ヒュオッ


魔王《む…それは召喚士の…。ククク、一度見ただけで覚えたか。なかなかのセンスよ。
   だが、その蝋燭のような頼りない火で何が出来る?》【アルテマ】

ウィップ「あ゛?メラとか言いつつメラミ使ってたテメェが言えたことじゃねぇぞ?纏いやがれ、魔導鞭チェイン!」ヒュッ

                  ――【アルテマ・ウィップ】

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


カード「やったか!?」

ウィップ「いや~避けられたね~」


          ――――ピシッ
ウィップ(アルテマはちょっと流しきれなかったかな~?たった一回でヒビはいっちゃった~)


ウィップ「次にまたアルテマ来たら厳しいかな~」

カード「そっか……賢者達は無事かねぇ…」

ウィップ「大丈夫~覚醒した骨っ子が庇ってるよ~」


骨っ子「ゴシュジン」「大丈夫?」

ゾンビ娘「う…うん…何と………か………」


  ゾンビ娘は骨っ子を見て絶句した。首の先に三つあるはずの頭が、二つしか無かったから。

ゾンビ娘「骨っ子!頭が………」

骨っ子「マダ2ツアル」「問題ない」


賢者「…みんな生きてるみたいだね…ケフッ」:猛毒

カード「お前が一番重傷だバカ」

ゾンビ娘「とは言え、全員それなりのダメージは負ってますけどね」

賢者「魔王は…?ゴハッ」:猛毒

ウィップ「避けられたけど、衝撃で屋根やら壁やら吹っ飛んだからね~一緒に外に飛んだかもしれない~」

賢者「そっか…みんな集まって」:猛毒

ゾンビ娘「? どうしました?」


        【レーゼの風】

  あたりに虹色の風が渦巻く▼

骨っ子「タイリョクガ」「徐々に回復してる!」

カード「味方全体にリジェネの効果…」

賢者「動けないのは変わらないけど、毒で死ぬことは無くなったね。コホコホ」:毒




ゾンビ娘「いつの間にこんな強力な呪文を…」

賢者「さっき下の階でゾンビ娘を爆殺した時にレベルアップしちゃって」:毒

ゾンビ娘「仲間倒してLevel upしないでください!」


魔王《無駄に発音いいな、貴様》ヌッ

ゾンビ娘「100年ほど世界中をさまよってましたから。まぁ、言葉を覚えるのは楽しかったですけど……え?」



魔王《フハハハハ!我に感謝せよ。それができたのも刻印の恩恵なのだからな!》ツ ツ ツ…

ゾンビ娘「ひぅ…っ!?」ゾワワ ワ ワ ワッ

賢者「ゾンビ娘から…離れろ!」ー【雷撃弾】ー


魔王《おっとそう熱くなるでない》ヒョイッ

賢者「避けるな!………ゴフッ」ボタボタ

魔王《ククク、だから言ったのだ。激しく動けば、それだけ早く毒が回るぞ?》

賢者「く………っ!!」:猛毒

魔王《自慢の魔力も、これでは使いようがないなぁ……フハハハハ!》


 ―――――――

???「これまで話したことからも予想がつくと思うけど、魔力っていうのは身体の中を血と一緒に流れているんだ」

???「魔法を使えば、その分流れは速くなるし、血の巡りも比例して速くなる」

  …………………?

???「そう、だから魔法を使いすぎると息切れもするっていうわけだよ」

???「でも、魔力の流れが血流に比例するなら、その逆もまた可能。
    だからマラソンなんかで体力をつけさえすれば、その分魔力消費も抑えたりできるんだよ」

???「僕も修行中は、相当走らされたなぁ…」シミジミ

???「まあ、毒は誰であろうと危ないってこと。君も気をつけるんだよ」

  ………!

???「ん!いい返事だ!」

 ―――――――
 ――――――
 ―――――――――
 ―――――――――――


カード「魔王だったら避けずに全てを正々堂々と受けて、叩き潰すくらいはしてほしいものだ、な!」【水符】

魔王《正々堂々と言うなら、1対1で来てほしいものだかな》ヒョイッ

賢者「それはそうなんだけど、ケホッ…魔王の様式美なんだから、そのくらいこなしてよ」【ストップ】

魔王《ぐ………!?》ギシッ


ゾンビ娘「完全に止められないあたり、流石は魔王ですね」ススス

骨っ子「ボクノウシロニ」「隠れるのやめてよご主人!」

ウィップ「まあ~背中を撫でられて気持ちが悪いのはわかるけどね~」

ゾンビ娘「うぅ~セクハラ だめ絶対!」ー【爆弾矢】ー


魔王《あの程度でセクハラ扱いか……》ギギギ

カード「姿だけならまだ百合に近いから許せる」キリッ

魔王《お主、気持ち悪いな》

カード「あ゛ぁん!?もう一回言ってみろ!」


魔王《気持ち悪いと言ったのだ。それより、我に構ってていいのか?》

オーディン:炎「……!!! 主殿!!上を!」

カード「んぁ?………!!」


  暗い色をした空に、赤い光がポツポツと光っている

魔王《【 メ テ オ 】》

ウィップ「な……!?」

魔王《普段なら城を壊さないように、絶対に使わない呪文なのだが…。
   もうすでに天井も壁も無くなっておるからな。遠慮なく使わせてもらうぞ》

カード「オー炎!!グングニルだ!」

オー炎「オーエン!?それは何だ主殿!?」

カード「お前の名前長いんだよ!これで十分だろ!」

オーエン「今更なにをいっておるのか…」【グングニル】

  炎の槍が夜空に広がる隕石の一角を消滅させる


ゾンビ娘「駄目です!数が多すぎます!」―【爆弾矢】―

  そう言うゾンビ娘の矢は、遙か上空にある火の玉には届かず地面に落ちて爆発する。

魔王《これで詰みだ。なに、なかなか楽しませてもらったぞ。冥土の土産に褒めてやろうか?ククク》




  黒い空は急速に赤い光で埋め尽くされる。

骨っ子「【イオナズン】!」「【イオナズン】!」


 爆発により、隕石はその姿を減らしていく。しかし、それを越すおびただしい数の隕石が降り注ぐ。

賢者「くそ……っこうなったらアポカリプスで…!カフッ」:毒

ゾンビ娘「そんな莫大な魔力を使ったら本当に死にますよ!?」




賢者「ここで命はらなきゃ、勇者の呪文が泣くよ」グググ

賢者「【アポカリ……】」

















カード「召喚――【バハムート零式】」


  カードの足下に魔力が渦巻き、正式召喚の証である魔法陣が展開していく。


カード「来い!!バハムート零式!!!」


  魔法陣から巨大な魔力の塊が放たれれ、鈍い銀色に輝く魔力が上空のメテオの横をかすめるように飛び回る。

 そして再びカードの側へと舞い戻り、ようやくその姿が輪郭を持った。


零式「ギャオォォォォォォォォオオ!!!」


  零式の叫びに呼応するかのように、目の前に迫っていた隕石が破砕する。


ゾンビ娘「あれはさっき召喚士にとどめを刺した……!」

賢者「僕の決死の覚悟は何だったのか…」:毒


カード「さあ、行くぜ!零式!!!」


魔王《零式…原初の召喚獣…失われていたとばかり思っていたのだかな…》

カード「生まれつき、何故か契約してたんでな」


魔王《ククク、面白い!そうでなくては!》

  魔王の足下にどこか不安定でどす黒い印象を与える魔法陣が広がる。


    キンググール
魔王《【喰鬼ノ王】―――召喚》



  肥大化し、人型を留めていない肉の塊が魔法陣から生み出される。

喰鬼ノ王「コルるルるるるるるるルるる」


カード「王だかなんだか知らねえが、レイズで瞬殺してやらあ!」【蘇符・レイズ】

喰鬼ノ王「ギャるルォおァ!?」バチュッ


  しかし喰鬼ノ王はレイズを食らい、なおもその場に君臨し続けている。

賢者「レイズが効かない喰鬼…!?それって…」:毒

ゾンビ娘「……っ」ズキッ


魔王《これが我の研究の成果。喰鬼の紋章とは違うベクトルの理論に基づいた喰鬼だ》

カード「くそっ!オーエン!焼き払え!」バッ

オーエン「オオオ!!」【斬鋼剣】



  全てを断つ剣が、喰鬼ノ王の身体を切り裂く………はずだった。

          ――――ズババババ…ギチッ



オーエン「ぬ……っ!?」ギギギ


  切り裂かれず、その身を持って剣を受け止める喰鬼ノ王。

喰鬼ノ王「ウルルぁあルァ!!」ズオッ


ウィップ「何あれ~?まさか……腕?」

オーエン「グォッ………」ガシッ

カード「捕まった……!」


喰鬼ノ王「くるルるルル」ニヤァ


ゾンビ娘「触れられたらいけません!!離れてください!!」ゾクッ

オーエン「…ぬ!?」ビクッ

オーエン「あル…ジど…ノ…」ガクガク


賢者「様子がおかしい…ケホコホ」:毒

          ――――メキメキッ

カード「! まさか…!」

  喰鬼ノ王が触れた所から肉が同化し、オーエンが取り込まれる。
 一回り巨大化し、存在感を増した死人の王が落ち窪んだ目でこちらをじっと見ていた。


魔王《ククク、驚いたか?これが喰鬼ノ王の能力。これは…》


賢者「ケホコホ…『細胞融和能力』。触れただけで他の生き物の細胞を取り込み、自分の物にする…そうだね?」

魔王《………ククク、なかなかに切れるようだな(またセリフとられた…)》


喰鬼ノ王「くルるァルォオ!」ズオッ

零式「グルオオオオ!!!」ヒョイッ

  喰鬼ノ王の腕を間一髪回避するバハムート。

カード「攻撃受けたらアウト…!だったら、遠距離からならどうだ!」

零式「【メガフレア】」


喰鬼ノ王「クゥるんルァあ!!」ジュオッ



ウィップ「さすがアンデッド族~よく燃えるね~」


賢者「火属性の攻撃を食らってパワーアップするアンデッド系モンスターも別の世界にいるけどね」:毒

骨っ子「何の」「ハナシー?」

賢者「何でもないよ」:毒


喰鬼ノ王「るァあああ!!ルるるァァああああ!!!」ブンッブンッ


カード「ハッ!いくら腕を振り回そうと、上空にいる零式には届かねぇだろ?ここからチマチマ削ってやる!」

零式「グルァァァァァァァアアアアアアア!!!」

          ――――ズガガガガガガガガガ

喰鬼ノ王「ルっ!あ゙!あ゙あ゙ッ!!グラぁぁァア゙あ゙ア゙ア゙!!!」ボッ バチュッ ジュオッ

カード「とどめだ!!」◆

零式「コォォォォォォオオオオオオオオオ」
              ――――【メガフレア】
               ――――【ギガフレア】
                ――――【テ…………


魔王《武器を持っただけの若造が……調子に乗るなよ》ズズズ


魔王《【エアロガ】》

零式「グオッ!?」ガクンッ

  強風で態勢を崩したバハムートの身体が空中で深く沈み、空の支配者は地面へと叩きつけられ苦悶の声を上げる。
 さらに、手の届く範囲へと堕ちてきた竜の肉を喰らおうと、屍の王は暴徒のごとく手を伸ばす。

  しかし、その願望は自らの腕を丸ごと炭に換えられる結果になっただけにとどまった。

喰鬼ノ王「ぐラぁぁァア゙あ゙ア゙ア゙ルっ!あ゙!あ゙あ゙ッ!!!」ジュゥウ……

  悲痛な叫びを上げ肉を欲する王は、本能のままに最も近くにあったニクに手を伸ばした。

喰鬼ノ王「ルっあ゙ あ゙あ゙ッ」ズリュリュッ


    「え…………?」

          ――――ガシッ


喰鬼ノ王「コルルあぁッハっっはッハ!!」ニヤァ

    「……………………。」 


喰鬼ノ王「あぁッハっっはッハ…………るォ?」

  おかしい……少しも満たされない。ニクを侵食するこの腕が、満たされない。何故だ?

魔王《どうした………?何故喰わぬ……》


  違う。自分は食べたくて仕方ないのに、この身体が喰うことを拒否している。何故だ?



    「どうしたの……?よ~く味わって喰べなさい?」
















ウィップ「オリハルコンの腕が喰えるものならなぁ!!」ギロッ


          ――――ビキビキビキッ

喰鬼ノ王「ルオぉ……!?」

  信じられない。すでに熱を失った自分の身体が、さらに熱を奪われている。
 この人間の左腕がとんでもない冷気を発して、氷の刃を精製している。そして我の腕を貫いている。


ウィップ「カードが義手に刻んでくれた【属性開放】の魔導式……
     ……家族が……ウチに授けてくれた守護属性の力の味はいかが~?」


魔王《【氷】の守護属性……勇者の【雷】に次いで希少な属性ではないか……》


賢者「そっか………この銃がはじめ氷属性の弾だったのは、そういうことだったのか…ケホッ」:毒


喰鬼ノ王「コルオぉ……!」ズオッ

  ニクを諦めきれない身体が、執念の一撃を繰り出す。が……

    ――――背後に感じる殺気が王の身体を縫いつけた。


カード「……………………………。」

  チリチリとした痛みさえも感じるほどの鋭い眼光に、彼の何倍もある巨体が、そして魔王がたじろぐ。

ゾンビ娘「カード君……?」ゾクッ


魔王(この我が気圧された?そんな馬鹿な……)

魔王《よくは分からぬが我の本能が告げている…!コイツはマズイ……と!!》


カード「…………の……に…………んじゃねぇ……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王《消えろォォオオ!!!》【アルテマ】







カード「俺の女に………手を出すんじゃねぇぇええええ!!!」◆

          ――――零式【 テ ラ フ レ ア 】

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カニバリズムの部分増えないかな?チラッ

>>374
本編ではもう無理かもしれませんが、後日談ではいくつか入れる予定です


  :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

  符と鞭。かつて世界を救った勇者の仲間、魔導師の血縁である俺達は本物の姉弟じゃない。

 それどころか、俺にいたっては魔導師の血すら引いていない。


  俺は生まれつき最強の召喚獣と契約していた。その未知の力のために、俺は捨てられた。

 幼く身体が弱かった俺は遠くまで歩くこともできず、虚ろな眼で霧のかかった湖を見ていた。

  そんな俺を拾ってくれたのが、魔導師一族の女の子。俺より3つ上のウィップ姉さんだった。



幼ウィップ「どうしてこんなとこにいるの~?ウチらのかぞくしか入っちゃいけないとこなのに~」

幼カード「…………すてられたんだ。おかあさんに」

ウィップ「どうして~?こんなにお人形さんみたいにかわいいじゃない~」

カード「こいつの………せいだよ」ブツッ

  親指を歯で切って、血を一滴地面に垂らす。すると、そこから魔方陣が展開され召喚獣の姿だけが現れる。
 これで、自らの血に眠る守護獣の姿だけを呼び出すことができる。これこそ、動きもしないただの人形だ。

零式「……………………」

  大人たちはみんなこれを見て怖がった。子供達は泣いて逃げた。どうせこの子も………

ウィップ「かっこい~」

カード「……………?こわくないの?」


ウィップ「ウチの作った泥団子のほうがこわいよ~」

  そう言って彼女はおもむろに地面の土をこね始めた。何度もこねては崩れて、こねては崩れて。
 最後に小さな両手で包んでから手を開くと………


泥団子「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

カード「うわっ!?」

  そこには小さなモンスターがいた。その見た目は確かに怖い。

 エイリアンが漢江で、貞子から着信アリというようなグロさだ。
  それを持っている女の子の満面の笑みが、この視界にシュールさを醸し出している。

ウィップ「ね~?」にひひ

  このときは、びっくりするくらいマイペースな子だな、としか思ってなかった。


  それから時間を空けず、すぐさま俺は魔導師の家に養子として迎えられた。
 姉さんは俺が家族になるまで父親と二人暮らしだった。
 母親は産後の経過がよくなかったらしく、姉さんを産んですぐに死んでしまったそうだ。

  生前の姿を描いた絵を見ると姉さんによく似た顔つきをしている。一度でいいから本人に挨拶をしたかった。

  それからの生活は楽しかった。

 お義父さんに魔導式の構造や刻み方を教えてもらい、ご飯のたびに姉さんの料理と格闘。


 数年後にはマスターした術式を使ってウィップと馬鹿なことをやって父さんに怒られたり。


 7年前、ついに姉さんの料理によって親父が大怪我を負う事件が発生。台所は俺の管轄になった。


カード「この頃になるとウィップに対して特別な感情を持つようになった。
    少なくとも俺は、この感情が家族の証なんだと信じて疑わなかったし、今でも少なからず思ってる」


  結局、それが家族に対して持つことのない感情だと知るのは、今から3年前のことだ。
 それは親父が病に倒れ息を引き取ってから半年後に起こった出来事が原因だ。


  魔導師の一族は、代々勇者が遺した呪文を守るために神殿を作り、その管理を行ってきた。
 もちろん俺達も、親父の死とともにこの役目も受け継ぐことになった。


  管理とは、どこから湧いているのかわからないモンスターが、
 呪文に悪影響を与えないように保護、処理することを意味している。


  姉さんとともに神殿内のモンスターを倒し続け、役目がただの作業になった頃。

 神殿の奥底から一体のモンスターが這い出てきた。そいつはどこか見覚えがあるオレンジ色をしていた。


カード「何だコイツ?見たこともないモンスターだな」

ウィップ「ん~わかんない~。でも殺しちゃえば関係ないよね~」

カード「同感だ」◇


  レベルも上がり召喚獣を多数操れるようになった俺と、
 鞭による戦闘術を親父から叩き込まれた姉さんにかかれば、赤子の手をひねるように簡単だった。

カード「さあてとどめを……」

謎の怪物「ぐうぅ………強い…強すぎる………」

ウィップ「しゃべれるんかい~」


謎の怪物「くそっせめてカードォ!貴様だけでも……!!」グオッ

          ――――ギシッ

ウィップ「ウチのかわいい弟きゅんに何をするつもりだったのかな~?」【キャッチ】

カード「俺のことを知っていることも気になるな。てめえは何者だ?」


謎の怪物「貴様……覚えていないと申すのか……?俺は貴様を倒すために六年の修行を耐えたというのに…」


カード「既視感はすげーあるんだよ。でも思い出せねえ」

ウィップ「ウチも既視感バリバリ~」

謎の怪物「俺は……俺様は………ッ












        六年前に貴様が食べずに残したニンジン様だ――――ッ!!!」ドンッ



カード「」

ウィップ「弟きゅんウチの手料理残しちゃったことあったの~?」

ニンジン「ええい!元はといえば貴様もだ!俺様をこんな化け物に産み落としやがって!この飯マズ女が!」

ウィップ「あ゙~?」ギロンヌ


ニンジン「何でもございません」

カード「えっと……そのことについては謝る。何かもうわけがわからなすぎて………どうしたらいいんだ?」

ニンジン「俺を食べて(意味深)くれればそれでいい」

カード「(意味深)つけんなコラ」


ウィップ「マヨネーズ持って来たよ~」

カード「マヨネーズで野菜スティックかよ。別にいいけど」

ニンジン「何、ケチャップは用意してるぞ。貴様はケチャップ派だっただろう?」

カード「何で知ってんだ」

ニンジン「俺様は何でも知っている。貴様がベッドの下に隠した親父から受け継いだエロ本のジャンルもな。
     あ、ウィップさん皮は剥かずにカットしてください」

カード「だからなんで………ハッ!?」ゾクッ


ウィップ「後で私にも見せてね~?」ニッコリ  トントントン

カード(ごめん親父………秘蔵の本は今日無くなると思う)


ニンジン「さあ!俺様を食らうがいい!!間を取ってオーロラソースでご賞味あれ!」


カード「俺マヨケチャ苦手なんだが……まあいいや。あの時は食ってやれなくて悪かったな」

カード「いただきます」ポリッ







ニンジン(クククッ!食べたな………俺様がたったこれだけで満足すると思うなよ…
     後で存分に後悔するがいい……なにせ、俺様は長年の修行の末に………

     とある毒の特性を手にいれたんだからなァ!!!)


カード「ご馳走様でした」人

ウィップ「お粗末さまでした~」


    ―――ニンジン お残しは…ゆるしまへんで………へんで……へんで…へんで………

ウィップ「なんか幻聴が聞こえる~」

カード「さすがにここまで強引な『お残しは許しまへんで』は体験したこと無かったわ……」


          ――――ドクンッ


カード「ぐ………っ!?」

ウィップ「弟きゅん~?どうしたの~?」

カード「い、いや………何でもない……帰ろう……」


カード(あのやろう………何か仕込みやがったな………!)

ウィップ「何で苦しそうなの~?怪我でもした~?」

カード「何でもないから気にすんな……」ハァハァ

ウィップ「………?」


カード(次会ったら殺す……!あ…もう死んでたわ)


 ―――――――
  ~魔法使いの家


ウィップ「それでね~ウチは言ってやったのよ~『おいおい、それはキミのワイフだろう?』ってね~」

カード「へ、へぇ………」

ウィップ「やっぱり変だよ~?いつもなら『何でもかんでもワイフにするんじゃねぇ!』ってつっこむのに~」

カード「そのジョークいつも最後のネタを変えて…るだけじゃねえか」


カード(くそっ…!だんだん身体が動かしにくくなってきた…)


カード「ん?」スッ

      右手「ぴーす」V

ウィップ「どうしたの~?ピースなんかして~」

カード「い、いや。これは俺の意思じゃ…ハッ!」


カード(まさか……!)

    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



  ~体内


人参毒「けけけ!ようやく体内に毒が回り始めたようだな。これでカードの身体を好きに動かせるぜ!」


白血球「てめぇ……見ねぇ顔だな」

人参毒「げっ!白血球がやってきやがった!」

白血球「今、俺達の身体で好き勝手してる輩がいるらしい。お前、怪しいから攻撃対象にリストアップされてるぞ」

人参毒「まじか!」


白血球「で、どうなんだ?お前は何者だ?返答次第では……」

   白血球達  ズラッ


人参毒「俺は乳酸菌だ」シレッ


白血球「なら安心だ。疑って悪かったな」

人参毒「いや、いいってことよ。こっちこそ手を煩わせて悪かったな」

白血球「それが俺達の仕事だ。気にしないさ。おーし!お前ら、撤収!」

   何だよ人騒がせな  ヘモグロビンちゃんと遊びに行くぜ~  あっ!てめえいつの間に赤血球女子高の…!


人参毒「……大丈夫かコイツの免疫系。そういやコイツ昔は身体弱かったな。だから俺を食って精をつけろと……」


人参毒「まあいい、それも過ぎた事だ。失ったものは二度とかえらない。俺の姿のようにな……
    さて、カードの身体を操って………復讐を始めるとしよう」


 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カード「な…っ!?」グググ◇

ウィップ「氷符なんて取り出してどうしたの~?熱でもあるの~?」

カード「違……っ逃げろ姉さん!!身体が操られて……」


            【ブリザラ】

  魔力で生み出された氷の柱が、ウィップの腕を掠め部屋中に赤い飛沫が飛ぶ

ウィップ「……っ!??!!?」ブシュッ


カード「くそっ!止まれ…!止まってくれ……!!」ヒュンヒュン  三◇ 三◇

ウィップ「あぐっ…!!」ブシュッ シュッ


  彼の意思に関係なく動く体は、少しずつ姉の四肢の自由を奪っていく


カード「お願いだ!止まってくれ――――――!!」

  その叫びが届くことは無い。自分の意思ではないにせよ、姉を傷つけているのは紛れも無い自らの身体なのだから



  ウィップが動けなくなったところで、何者かが操る身体が攻撃をやめた

カード「終わった……のか…?なら…姉さんを治療しないと……」フラッ…


  血だらけで横たわる姉の傷を、治療薬『ポーション』で泣きながら治療していく。


ウィップ「大丈夫だよ~泣かないで~」

カード「でもっ!俺……!」

ウィップ「大丈夫だから……ね?」スッ

             ――――ガッ
  弟の頭を撫でようと伸ばした左手を、彼の右手が乱暴に掴んだ


カード「………!?また…!」グオッ

ウィップ「きゃ……っ」

  再び身体の主導権を奪われ、彼は姉の上に覆いかぶさるように伏せることとなった
 
カード「何を……!?」

  彼の手は指をゴキリと鳴らしながらウィップの服に手をかける。カードの頭に連想されたのは、最悪の未来だった。


カード「くそ……ッ!!!やめ――――――――」








  ―――――――彼は泣きながら自らの手が赤く染めた床の上に、最愛の家族の純潔の血を散らした


  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



  俺は泣きながら嫌だ。ごめん。などという言葉を吐きながらも、その快楽に身を任せていた。
 腰を打ち付けるその度に、電撃が走ったような快感が身体を支配する。
 だが、同時に自分が家族ではなくなっていく感覚が心を満たして、ひどく不快だった。


  それもそのはずだ。俺は家族として禁断の行為を行ったのだから……
 自分には弟である資格なんて無くなったのだ。あるいは、もとからなかったのかもしれない。


  それからの俺は、彼女に対して償いきれないその罪に、この命を捧げることを決意した。

 
 自分を襲い傷つけた存在を、彼女がずっと『おとうと』と呼び続けるのならば、俺はひたすら『弟』を演じよう。

 けがれてしまったこの存在を、家族として変わらず愛し続けるのならば、俺は『家族』であり続けよう。

 彼女の身体に傷がつくことがあるのならば、俺が代わりに傷つこう。傷つけられよう。


  それで彼女を守れるなら、それを約束しよう


  俺はそれを今日まで続け、かつてと変わらない姿でいるよう努めた。

 もう俺自身の手で、ウィップを傷つけたくなかった。あれ以来、身体を重ねることは無かった。


  代わりに、あの日から俺を鞭でしばくことが始まった。もちろん俺はそれを受け入れた。
 普段あの日のことを気にする素振りを見せない姉さんの恨みや怒りをぶつけられている気がして、
 身体の痛みと引き換えに心が救われていくような気がしたからだ。


  これは俺への罰だ。生きることが俺の罰だ。交わることも触れることも許されない。そう決めた。

  だが、俺は今でもウィップを愛しているし、抱きたいと思うことさえある。
 そして、自分の物だと支配欲が暴れまわることも………


 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      カード「ほんと、死ねばいいのに…………」

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::




 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      ウィップ「ほんと、消えればいいのに…………」

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


  ウチはあの日、家を飛び出していただけだった。魔導師の一族として一生を捧げるのが怖くなってしまった。
 どうして過去の人間が遺したもののために、ウチ等の人生を使われなくてはいけないのか。

  幼い心でも、その意味を理解していたのだろう。だからこそ家から逃げ出したのだ。


  ただ、幸か不幸か逃げた先で自分より幼い男の子に出会ってしまった。

 男の子は女の子のようにかわいらしい顔つきをしていて、お人形さんのようだった。


  少しだけ言葉を交わすと、男の子は大きな竜をその場に出現させた。そしてその瞬間、ウチは思いついた。


ウィップ(こんなにおおきなモンスターをやどしているなら、魔力はウチより多いかもしれない)

ウィップ(こいつに、押し付けてしまおう……)


  母親がいないからか、少し歪んでしまったウチの心は成熟が早かった。
 だからこそ、目的に向かってプロセスを組み立てるのは簡単なことだった。


  この子が捨てられていたのも好都合。無駄に慈悲深い父親は、すぐさま養子にした。

 ウチは父親と、息子が、弟ができたことを喜んだ。
 家の役目を継ぐのは代々男だけだったため、父親はそれも含めて喜んでいたことだろう。

  ウチ?
 もちろんウチが喜んだのは本心だ。だって、これでようやく家の呪縛から開放されたのだから。



  しかし、一緒に暮らしてみると、義弟に様々な感情を持つようになった。


  男のくせに料理がうまいことに腹が立つ。

  ウチより背が低いのに、足を挫いたとき軽々と背負われたことが悔しい。

  この子の前で本性を隠しておっとりした少女を演じて、自分をあざむいていることに苛立ちを覚える。

  そしてなにより、本気で自分のことを家族として愛してくれていることに、感謝している。


  長い間同じ時を共有すると、本当に情が湧いてきた。
 彼と同じように、『愛情』というものを持ってしまったらしい。



  歪んでしまった心は冷徹な性格を映し出していたが、歪んでいても純粋な心をしていたのだ。

  気づけば、ウチの愛情は家族の枠を飛び越えていた。
 最初から家族としてみていなかったからだろうか?一人の男性として、情を持ってしまっていた。


  いつしか、弟を溺愛する自分を演じなければ、顔もまともに見れないほどに惚れていた。


  この日からずっと、カードの笑顔が頭に焼きついて離れなかった。
 いたいけな少年を利用しようとした自分に向けられた、屈託の無い笑顔が突き刺さる。
 無垢な心を利用した自分がいまさら誰かに愛されたいなど考えるないように、笑顔がチクチクと突き刺さる。


  カードはウチを実の姉のように慕っている。なら、それでいい。そのままで十分だった。



              あの日までは――――――――


    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ニンジン「六年前に貴様が食べずに残したニンジン様だ――――ッ!!!」ドンッ


カード「」

ウィップ「弟きゅんウチの手料理残しちゃったことあったの~?」


  それはちょっと聞き逃せない。料理が下手な自覚はあるが、さすがにショックだ。


ニンジン「ええい!元はといえば貴様もだ!俺様をこんな化け物に産み落としやがって!この飯マズ女が!」

ウィップ「あ゙~?」ギロンヌ

  思わず本性が出てしまったが、今にして思えばこれこそがこの事態を引き起こしていたのは明白だった。


  ――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――
   ―――――――――――――――――――――――――――


カード「ごめん………姉さん……ごめんなさい………」

ウィップ「あ゙……ひぐっ!……あ゙……あ゙っ……」


  弟が、いや、弟の身体がウチの純潔を散らし、ひたすら腰を振っている。
 相手のことを一切考えていない無遠慮さで身体の中をかき回され、肉を引き裂かれる痛みが走る。


カード「ごめんなさい………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

  自分の意思ではないにせよ、姉を貫いたのだ。カードは壊れたように謝り続けている。
 激しく身体を動かしているというのに、彼の身体から落ちてくるのは汗よりも涙のほうが多かった。


ウィップ(どうして泣いているの……?こんな形になってしまったけど、ウチは満たされているよ?)


  彼女の思いに反して、弟は拒絶するかのように大粒の涙をこぼしながら姉を抱いている。

  弟は家族でいられなくなることを拒み、姉は逆に快く受け入れた。
 その違いが、姉弟の関係を歪なものにしてしまった要因であろう。





  事件の二日後、ウィップはそれを十分に感じ取っていた。

ウィップ「おはよ~」

カード「おはよ。もう朝ごはんできてるぞ」ニコッ

ウィップ「………ありがと~」


  何も変哲のない朝の会話にきこえただろう。むしろ、二日でここまで自然に会話ができることのほうが異常だ。



ウィップ「カード~」

カード「何だ?姉さん」

ウィップ「無理はしないでね~」

カード「何のことやら………」


  だが彼女には、カードの笑顔がかつてのように笑えていないように見えた。
 長年同じ時を過ごしたから分かる、苦しいことを我慢している顔だ。




  それを打ち明けてくれない苛立ちが、彼女に鞭を握らせた。
 『弟きゅん』を演じ続ける弟に、憎しみをこめて鞭を振るった。


ウィップ「そして弟を愛し、その分弟きゅんを憎む。狂った関係になってしまったよ~」


  結局、ウチはあれ以来カードの『笑顔』を見ていない。

ウィップ「自分をさらけ出せず、挙句の果てに弟にまで同じ道を辿らせてしまったしね~」


ウィップ「本当に馬鹿だと思うよ~」



 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      ウィップ「ほんと、ウチなんて消えればいいのに…………」

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::






































  突然視界が真っ白になった


  気が狂いそうなほどの白色の中で、唯一竜の背中と四角い札を構える男の背中だけが黒色を背負っていた


  その姿もやがて、白色にじわりじわりと侵食されていく。
 その白色がバハムート零式の放った焔であることに賢者が気づいたのは、光がおさまってからだった




賢者「どうなったんだ……?」:毒

  あまりに強すぎる光を目の当たりにして、賢者の視界はいまだに真っ白。光が眼に焼きついていた。
 零式の攻撃の後その光景をはじめに目撃したのは、刻印の力で回復したゾンビ娘とそもそも目が無い骨っ子だけだった。


ゾンビ娘「賢者様!ウィップさん!見てください!」【ベホマラー】

賢者「………!!」:毒

ウィップ「カード!!」ダッ


  喰鬼ノ王はその存在ごと蒸発し、魔力の供給が止まったバハムート零式も一枚の札に戻り、床に落ちている。


 そのすぐそばで、カードが体中から血を吹き出しながら立ち尽くしていた。



賢者「カード!!しっかりし……ゲホッ」:毒

ゾンビ娘「どうしてカード君がこんなことに!?」

賢者「僕が今無理やりアポカリプスを使ったら、同じようになると思うよ……」:毒

賢者「オリハルコンを使ってドーピングしたうえ、自分の限界以上の魔力を放出したせいだ。
   魔力が体中を高速で廻って、同時に血液も高速で流れたんだ!全身の血管が破裂してる……!」:毒


ゾンビ娘「賢者様の魔力がチートすぎて今まで回復アイテムを持っていなかったのが痛いですね…!」【ケアル】

ウィップ「駄目だ!カードのデッキも、レイズや回復の魔法どころか、カードが全部尽きてる……!」


  テラフレアを放つ直前で激昂し、血液が沸騰したことも大きく関係しただろう。
 普通なら持ちこたえることができた身体も、限界を超えてしまった。


  カードは……立ったまま死んでいた


 ―――――――――――――

???「レイズ等の蘇生呪文の消費MPが莫大なのには、対象の死因になった傷が関係しててね」

???「肉体を離れようとする魂を魔力によって繋ぎとめ、同時に傷の回復を行うからなんだ」

???「そのまま魂を元に戻しても、すぐさま死んじゃうからね。
    アンデッド族が蘇生魔法で死ぬのもこれが原因だよ。ゾンビ娘が無事なのは、刻印の回復能力があるからだろうね」

  ………………?

???「そう。死体に回復魔法は効かない。でも、魂を肉体に少しだけ繋いで仮死状態にすれば可能だよね?」

???「だから蘇生呪文は高度な術なんだよ。僕も使い方を覚えるのが大変だったよ」


  ………………………?

???「カードはどうなったって?もちろん蘇生を試みたよ」

 ―――――――――――――


ゾンビ娘「【レイズ】!」キィン

  カードの身体が光り輝き、その傷が徐々に閉じていく。



   しかし――――――

            ――――フシュウ………

ゾンビ娘「………っ!……ハァ!ハァ!」

  MPが足りない!▼

ウィップ「そんな……!」



  賢者の無力化によって、回復はすべてゾンビ娘が請け負っていた。それゆえに、現時点で彼女の魔力は0に等しい


魔王《くくく……自らの命と引き換えに、相打ちか………見事だ。カード使いよ》


賢者「魔王……っ!!!」:毒

魔王《さすがにあれほどの攻撃は初めてだったぞ。左腕が吹き飛んでしまった!》


賢者「うれしそうにしてんじゃないよ!ガフッ」:毒

魔王《何度も忠告しておるだろう。あまりはしゃぐと死ぬぞ?》

賢者「うるさい!あなたには関係ない!」



魔王《くくく、我が構想した喰鬼の理論は全部で3つあってな……》

魔王《ひとつはそこの娘。もうひとつは喰鬼の集合体であるキンググール。そして最後に………》スッ

魔王《魂を物質化し、他の生物の身体に埋め込むというものだ》


賢者「まさかその手に持っているのが……」:毒

魔王《仲間同士で殺しあうのも面白いだろうな》ニタァ…




魔王《さあ、実験をはじめよう……》


 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


賢者(何を迷っている…!?カードを救う方法はあるだろう!?)

賢者(ここまできて、死ぬのが怖いのか……?)


賢者(迷うな……!!僕は勇者の子孫だ!!一度くらい……死んでみせろ!!)

賢者(誰かになさけないと罵られようとも、本当の意味でなさけない男にはなりたくない!!)


賢者(だから……!『生命を司る精霊よ、失われゆく魂に、今一度命を与えたまえ!』!)


  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ストック切れた上、しばらく忙しくなるので更新は滞るかもしれません。

お待たせしました
それでは再開します


      【 ア レ イ ズ 】

魔王《何……!?》


カード「ぐ…ここは……?」†蘇生†

ウィップ「カード…!」ダキッ

カード「うわっ!姉さん!?」


ウィップ「よかったよぉ~うぇぇぇぇ……」ギュゥゥ

カード「ちょっ…苦し…っ」ミシミシ


魔王《まさか本当に呪文を唱えたのか……!》


ゾンビ娘「賢者様………?」


  二人の目が骨っ子の下にいるはずの賢者を見やるも、土埃が舞い、その姿が見えない。

骨っ子「賢者様ー」「だいじょうぶー?」











賢者「大丈夫。むしろ清清しいくらいだよ」ニコッ     †完全回復†


魔王《何故だ…!何故ぴんぴんしているのだ!?》

ゾンビ娘「あの毒は解毒を受け付けないはずじゃ……?」


賢者「ゾンビ娘、君が風邪を治したときと同じだよ。一度、死んだんだ」

魔王《何だと……!?》

賢者「いったん死ねば、状態異常はすべて無くなる。だから自分から死んだんだ」



賢者「一回でも魔法を使えば、毒が回って死んじゃうことはわかってたからね。
   リレイズを自分にかけてから死んでみたんだ♪」

ゾンビ娘「無事でよかったです…」ホッ


賢者「いつもゾンビ娘に唱えて遊んでたけど、自分で体験するのはさすがにちょっと怖かったよ。うん」

ゾンビ娘「だから面白半分で私にかけないでくださいよ!!」


賢者「それはさておき」

ゾンビ娘「さておいていい問題じゃないでしょう!?前にも言いませんでしたっけ!?」ムキー

賢者「あははははははは」

ゾンビ娘「笑うなーーー!!!」ズビシッ


魔王《おのれ…ならばもう一度食らえ!【言いたいことも言えないこんな世の中】!》



ゾンビ娘 ポカ ポカ ポカ ポカ
賢者「痛い痛い」


魔王《効いておらぬ……だと……?》


カード「用意させてもらったぜ、【抗毒の陣】。……あの、そろそろ離してくれない?……あ゙」ミシミシミシ ボキッ

魔王《貴様!魔力が尽きたのではなかったのか…!?》

カード「陣を俺が書いててててて」ミシミシ

ウィップ「ウチが魔力を注いで発動させたの~はじめての共同作業だよ~」ギュゥゥゥゥゥゥ ゴキメキャァ


賢者「そろそろ離してあげなよ。ウィップ」

骨っ子「はやくしないと」「死んじゃうよー」

ゾンビ娘「骨折はあまり死にませんけど、苦しいんですからね」ポコポコ

賢者「君は殴るのをやめなさい」【リレイズ】


カード「俺が何をしたって言うんだ……」ミシミシ

ゾンビ娘「プロポーズですね」

賢者「僕のときみたいに言い逃れはできないよ?」

ウィップ「カード~」スリスリ


魔王《なにやら勝ちが確定したかのような余裕をしておるが…ダメージらしいダメージは、
   賢者の放った毒による微々たるものと、左腕が吹き飛ばされただけだぞ?》


ウィップ「普通の人間だったらなかなかの重症だよ~」

賢者「まあ身体は女騎士のものだし、頑丈だろうからね」


ゾンビ娘「でも一応女性ですよ?」

賢者「物理防御と体力がほぼカンストしてる人間にどうやって手加減しろと」【真・ライブラ】じ~

カード「運のよさがカンストしてるやつに言われたくないだろうな……」


賢者「まあダメージなんて、これからいくらでも重ねられるしね」チャキッ

魔王《ほう……ならばその銃で我の身体に傷をつけれるというのか?》

賢者「まあね」【蓄雷弾】ターン


魔王《………………。特にダメージを受けていないが……?》

ゾンビ娘「賢者様、どうして三点撃にしなかったんですか?」


賢者「こっちが本命だから♪」↑

  賢者が空を指差す。

ウィップ「上~?」チラッ


カード「雷の玉みたいなのが5つ浮いてるな。うん」

骨っ子「わー」「綺麗ー」

ゾンビ娘「賢者様、あれは何ですか?」


賢者「撃った後、空中に留まって、周囲の魔力を吸収して雷に変換する弾だよ」


  なお、時間経過で落ちてくる模様。


カード「……いつ準備した?」

賢者「カードの蘇生と同時に!」


賢者「いつの時代も魔王には雷。これ鉄則。さあ、落ちろ【落雷弾・三点撃】」


  球体がはじけ、五つの落雷が魔王を襲う▼

魔王《ふん。女神の雷撃など、あたらなければどうということはない》スッ


  魔王は余裕たっぷりに雷を回避しようと身体を動かし







魔王《ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!??》バリリリリリリリリリリ

  見事全弾命中した。


魔王《何故だ!?途中で軌道が変わりおった!》プスプス


賢者「さっき食らった弾があるだろう?」にっこり


ゾンビ娘「雷蓄弾でしたっけ?」

ウィップ「建築弾じゃない~?」

カード「畜産弾だった気もする」



賢者「 蓄・雷・弾!だからね!」


魔王《どうやら…その……チコリータ弾は対象に電気を帯びさせ、雷を誘導する特性を与えるようだな》

賢者「 蓄 雷 弾 !」


賢者「ちなみに、雷属性の威力アップもしてくれるよ」

魔王《なんと忌々しい!》

ゾンビ娘「すごいです!」


魔王《だが、この程度では我を倒すことなど出来ぬぞ?》







賢者「あ、そこは大丈夫。最初から倒すつもりじゃないから」アハハハハ


魔王《え?》

ウィップ「え?」


ゾンビ娘「ええ、そうですよ?」

カード「それがどうかしたか?」


魔王《なら貴様は何をしにここまで来たというのだ》

賢者「ピンポンダッシュに失敗した」

ゾンビ娘「どんだけ壮大なイタズラですか!まじめにやってくださいよ!」


賢者「僕らはね…最後の勇者の呪文を解放しに来たんだよ」ヤレヤレ


魔王《それでなぜ我の部屋まで来ておる》

賢者「呪文の場所がそこなんだよ………」スッ


  賢者が指差したのは、魔王の玉座だった。


魔王《なんだと…?そんなばかな……あれのどこに……》

賢者「背もたれ。まあこれだけ暴れたってのに玉座だけ無傷だから、何かの力が働いてるのがバレバレだよね」


魔王《あのクソ勇者……わざわざ我を馬鹿にする位置に……》ワナワナ

賢者「ちなみに、冒険の書にはこんなことが書かれてるよ」


冒険の書《魔王さんこんちゃーっすwww自分の玉座(笑)に呪文が隠されたのはどうでしたかwww
     ねえねえどんな気持ちwww?ねえねえ今どんな気持ちwwwwwwwww?》

魔王《殺す!!!!》

賢者「もう死んでるよ」




冒険の書《あ、ちなみにwwwとんでもない呪文封印してるんでwww使い方によっては魔王完封できるよwww》

魔王《何!!?》ガタッ


賢者「というわけで開放してきます」ダッシュ



魔王《あ!待てゴルァ!!》【アルテマ】


ウィップ「あ、よいしょ~」【アルテマ・ウィップ】

               ――――ズガァァァァァァァァン


               ――――パキィィィン

ウィップ「今度は当たったけど、これで完全に壊れたね~」



魔王《このゴミ共が……!!》【薙ぎ払い】


ウィップ「ぐぅ……っ」

カード「………っげほっ」

骨っ子  キャンッ


魔王《くそ…っ開放させてなるものか……!》


              ――――ザッ

ゾンビ娘「行かせませんよ!」

魔王《チッ……どけぇ!!》


ゾンビ娘「私はこのパーティーの壁役。通しませんよ!」


 <胸も壁だもんねー!!

ゾンビ娘「やかましいです!!さっさと解読しなさい!!」ウガー


魔王《その程度の壁で……》チラッ
  《我を止められるとでも?》ハァ…

ゾンビ娘「今どこ見て言いました!?そしてそのため息は!?」


魔王《すぐに貴様を潰すのに、10秒とかからぬぞ!》

ゾンビ娘「それでも、時間は稼げます!!」


魔王《さっさと消えろ!》【エアロガ】

            ――――ザシュッ

ゾンビ娘「」ドサッ


魔王《10秒どころか、3秒ともたなかったな》ザッザッザ


  ゾンビ娘を蹴散らし、歩みを進める魔王。
 これまで散々ネタにされ遊び倒されてきたが、本来は世界を滅ぼせる力を持っているのだ

            ――――ガシッ

  その足をつかむ命知らずの愚かな女がいた。

ゾンビ娘「リレイズかけられていたの、忘れてましたか?まあ、死んでもゾンビ化するだけですけどね」


魔王《ならばまた、何度でも殺すまでよ》【メラ】

  メラゾーマ級の焔がゾンビ娘を焼き焦がす▼


魔王《今のはメラゾーマではない、メラだ!》

ゾンビ娘「そうですね」†リレイズ†


魔王《!?  何故リレイズが発動している……!?》

ゾンビ娘「はて、なぜでしょうか?私にもさっぱりなんです」ニタニタ



魔王《とりあえずもう一度殺してみよう》【アルテマ】

             ――――カッ

ゾンビ娘(リレイズ後のHPは1になるので、あまり強い呪文なしでも殺せるんですがね……)†リレイズ†

ゾンビ娘「(魔力の)無駄ですよ」


魔王《本当にどうなっているのだ。我はこんな不死身の奴なんぞ作っておらんぞ》


カード「まあ、俺のしわざだけど」ニュッ

魔王《貴様のせいか》


カード「原理は簡単なことで。リレイズの魔導符を大量に持たせているだけだ」

カード「発動条件はリレイズが発動したとき。リレイズ中の魔力に反応して発動するってわけだ」

ウィップ「符には【順列】の魔導式を組んだから、札に書かれた番号通りに発動するよ~」


魔王《なんという人非道的な方法だろうか……》

ゾンビ娘「たしかに何回も死ぬのは痛いし、苦しいですけどね。でも、これで賢者様を守れるなら……安いものです!」


魔王《まさに『肉の壁』といったところだな》じ~

ゾンビ娘「だからどこを見てるんですか」


魔王《よくこんな方法を思いつき、それに応えられるものだな》

ゾンビ娘「でしょう?」フフン


魔王《だが、それなら殺さず、動けなくしてしまえばいいだけのことだ》


              ――――ブチ…ッ ブチィ

ゾンビ娘「あぐっ……がっ!~~~~~~~~っ!!」


  魔王はゾンビ娘の片足を掴み、そのまま力任せに引き千切った。

魔王《これで追ってこれまい……》ポイッ  スタスタ


              ――――ガシッ

魔王《何……ッ!!?》ガクン


  彼女はまたしても、魔王の足を止めた。今度は足ではなく肩を掴んでいる。
 少し下に目線を下げれば、床を踏みしめて立つ彼女の細い2本の足が見えた。

魔王《何故だ!ちぎったはずだろう!?》


ゾンビ娘「何故って……自殺して回復しただけですよ?あなたがこんな風に私を作ったんでしょう?」

  彼女の手には、オリハルコン製のダガーナイフが握られていた。


カード「攻撃力は最強レベルだからな。どんなに弱い力で刺しても死ねるぜ」

骨っ子 ガンバルトコロガチガウヨ


ゾンビ娘「さあ、私は何度でもよみがえってあなたの前に立ちはだかります。それこそゾンビのように」


魔王《ぬうぅ………》ゾワ

  魔王は王に君臨してから初めて、得体の知れない恐怖というものに出会った

 しかし、

魔王《この魔王をなめるなよ。すべての敵を、完膚なきまでに叩き潰してこその魔王!》


魔王《死ぬまで殺してやろう……!》チャキッ

  魔王は女騎士の持っていた業物のサーベルを握り、ゾンビ娘に突進した


ゾンビ娘(リレイズがあるといっても、残り26枚……!できれば節約……っていうか多くないですか?)

  札の用意とリレイズの式を刻んだのがカード。順列の式を考えたのがウィップ。
 そして、魔力をこめたのが賢者。これらは3人による合作だった。品質は最高レベルのものだ。


ゾンビ娘「私で遊ぶために作ったっ!ものを流用さえしていなければっ!ですがねっ!」ガキンッキンキン


魔王《なかなか粘るではないか》ヒュヒュヒュッ

ゾンビ娘「けっこうっ必死ですけどねっ!あ……っ!!」ガキンッ

  ダガーが上に向かってはじかれ、胴ががら空きの状態になってしまった。

              ――――ザクッ


ゾンビ娘(――――あと25枚…)


魔王《しぶといな……》

ゾンビ娘(強い…!けどこれなら時間を十分に稼げます……!)

魔王《このままでは間に合わぬ……》




魔王《少々本気を出すか……》

ゾンビ娘「え……」

魔王《【ピオリム】》:素早さ上昇


               ――――ヒュドッ

   残り枚数―――24/30


ゾンビ娘「は、早っ…!あ……!」ザシュッ

魔王《だらしないな!200年前の戦士はこの動きに余裕でついてきたぞ?》【はやぶさ斬り】

          ――――キキキンッ ザシュッ ガキンッ グチャッ


ゾンビ娘「くあっ……ぐうぅ……後方支援の僧侶職に無理を言わないでください!そもそも私は弓使いです!」

ゾンビ娘(残り22枚……若干不安になってきました)


  ナイフを構えつつ札を隠している胸元に手を当て、緊張した顔つきで魔王と対峙する。


魔王《ふむ………貴様、魔導符は残り何枚だ?》

ゾンビ娘「教えるわけがないでしょう!でも、足止めには十分な枚数とだけ言っておきましょう!」

・ 
魔王《そうか、では聞き直そう。『今、何枚だ?』》


  魔王がサーベルを鞘に収めながら言い放つと


          ――――パララッ
ゾンビ娘「え………」


  ゾンビ娘の足元に、模様の消えた札が数枚零れ落ちた。


ゾンビ娘(6、7、8…9枚………!?)

魔王《これで…………10回だ》キンッ

          ――――ブシュ……ッ
ゾンビ娘「あ………?」

  サーベルを完全に鞘に収めた瞬間、また1枚蘇生の札が落ちた。
 同時にゾンビ娘の右肩から腹まで、幼児がクレヨンで思いっきり書きなぐったような赤い直線が走った。


魔王《これは技などではない。『疾く斬る』あたりまえの動作の極みだ》

ゾンビ娘(そんな……気づかないうちに10回も斬殺されていたなんて……)ギリッ



魔王《ではもう一度問おう。残りは、何枚だ?》


ゾンビ娘「……………ッ!!」ゾクッ


魔王《だんまりか……》


魔王《ならば、あと30回ほど殺してみようか…?》スッ

  魔王が剣の柄を掴み、ゾンビ娘は守りの体勢に入る


魔王《遅い!!》キンッ

ゾンビ娘「くっ……!?」プシッ

  後方に跳び、なんとか致命傷を避けるも、腹に浅い傷を負った


  ふらつく足で必死に地面に立ち、身体のあちこちに切り傷を増やしながら魔王の攻撃を受け止め続ける。
 しかし、お腹から響く鋭い痛みに涙がにじみ、攻撃が見えづらくなる。

魔王《その程度の傷ならば、痛みを無視することもできるだろうに》ヒュン


  魔王の剣が首を薙ぐ。首が跳ね飛ばされる前に回復し、また1枚札を消費してしまった。


ゾンビ娘「歴戦の傭兵みたいな無茶言わないでください!私はただの女の子なんですよ!?」

魔王《知ったことか!》【ピオリム】

ゾンビ娘「がっ………!!」ドスッ


  もう一段階加速した魔王の刺突がゾンビ娘のわき腹にきまった


           ――――グリュッ

ゾンビ娘「ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!」


  根元まで深々と埋まったままの剣を内臓を掻き回すように捻りながら引き抜くと、断末魔のような絶叫が上がる
 痛みで満足に動けなくなったゾンビ娘は、蘇生符を1枚消費し痛みを0に戻した。


ゾンビ娘「うあ゙あ゙ッ………ああッ……!」ガクガク

  短時間に何度も殺される痛みを味わい続けた彼女の顔は精神的な疲労で歪み、
 脂汗や涙、さらにはヒューヒューと荒い呼吸をする口から零れた唾液でぐちゃぐちゃになっている。



   残り枚数―――10/30


  右手、左手、右足、左足、そして首の順で切り落とされる。

  魔王はだんだんと痛みを与えながら殺すようになってきた。
 ゾンビ娘の苦しそうな顔を見て、目的を忘れ魔王本来の惨忍さが顔を覗かせているのだろうか


魔王《くくく、次はどこを攻撃しようかなぁ……》

  ゾンビ娘の前に突き出された剣が、駄菓子屋で子供が指をさして『どれにしようかな』、
 とお菓子を選ぶような軽さで切っ先をフラフラさせている


魔王《そうだな…膝にしよう……》ザクッ

ゾンビ娘「あ………っ!」ズシャッ


魔王《フハハハ!我の前で片膝をつく気分はどうだ?》クイッ

  サーベルの切っ先でゾンビ娘の頤を押し上げ、上を向かせて目線を合わせた


ゾンビ娘「最っ悪の気分です!!」ガキンッヒュッ

魔王《フッ…それはそうだ………!》ヒョイッ


  のど元に突きつけられていた刃をはじきながら左手に持ったナイフを突き出すも、ひらりと身をかわされてしまった


魔王《次は……肺だな》ズブッ

ゾンビ娘「………!ゴフッ…!」


魔王《右の肺を潰した。呼吸をするたび苦しいだろうが、刻印のせいでしばらくは死ねないだろう?》

ゾンビ娘「ゴホッコホッ…!ゲェッ!!」ビチャビチャ

魔王《くくく、どうやら自分の吐く血で溺れかけておるようだな……》


ゾンビ娘「……ひゅー…………ひっ…ひゅー………」キッ

  ガクガクと震える両手でダガーを掴み、魔王に向けて構え、精一杯睨みつける。


魔王《まだ我に挑むとは……驚嘆に値するが、震えている身体と涙でボロボロの顔で台無しだな………》ハァ…


ゾンビ娘「………ッ!!!」ヒュオッ

  血を吹き出しながらナイフを振るうが、軽く受け流され今度は鳩尾に剣を刺された。

ゾンビ娘「あ゙……っ!あ゙あ゙あ゙………!!」


魔王《肝臓…》ザクッ

魔王《子宮……》ズシュッ

魔王《そして、心臓………》


  とっくの昔に、蘇生符の枚数は10枚を下回り、8枚になっている。


  そこからは意識が朦朧としてはっきりと知覚できなかった。


  剣の峰で何度も殴られ、撲殺。
            ――――7枚

  倒れたところを踏まれ、殴られ、全身に骨折。最後には足で首をへし折られた。
            ――――6枚

  肩と床を剣で縫いつけ、動けないところを毒殺。
            ――――5枚

  腹を掻っ切り、口に出すのもはばかられるほど残酷な方法で
            ――――4枚
            ――――3枚
            ―――

           淡々と数を減らしていった


  そして………これでどれ位の時間を作れただろうか……残りの枚数は、1枚まで減少した


ゾンビ娘「はぁっ……!!はあぁっ………!!!」ガクガクガク

  ゾンビ娘は全身が痙攣し、力の入らない両膝をついたまま魔王の足にしがみついている


魔王《離せ!!汚らしい血を我につけるな!!!》ブンッ


ゾンビ娘「ぐぅ…ッ!うぅ……っ!!」ガッゴッ

今日はここまでです
何でしょう……ゾンビ娘を泣かせたりいじめたりするところは面白いくらい筆が進む
そして書いてる時に愉しいと思ってしまった。疲れてるのかな…

祭りって生殺しのイベントだったっけと打ちのめされて夏


  魔王はサーベルの柄でゾンビ娘の顔を何度も殴り、足や背中を掻っ切り、様々な所を血で染め上げた。
 血を失い、身体の自由が奪われていくゾンビ娘。しかし、その眼はまだ光を失っていなかった

魔王《………それだ…その眼だ……200年前と変わらぬ眼をしている………それが気に食わぬ………!》

ゾンビ娘「痛………っ!」

  魔王はゾンビ娘の血で汚れた黒髪を掴み、無理やり立ち上がらせる


魔王《あの時も、圧倒的な死の恐怖や痛みを前にして、貴様はその眼に強い光を宿していた。
   何故だ………何がそこまで貴様の瞳を輝かせる……?》


ゾンビ娘「はっ……………はっ…………………。」


ゾンビ娘「あなたには………何百年経っても……理解できないでしょうね……」グググ…


ゾンビ娘「これは……………」

  彼女は魔王の足に刃を突き立てながら叫ぶ











ゾンビ娘「これはッ!『信頼』って言うんですよ!!!」ヒュッ




魔王《ぐああぁあ!!!》ガクンッ

  魔王はこの戦闘で初めて苦悶の声を上げ、膝をついた。


魔王《この虫けらが……ッ!!!》

  サーベルを逆手に持ち替え、ゾンビ娘の脳天に振り下ろそうとした

 しかし………



            ――――ヒュガッ ギシッ

魔王《!?   貴様ら………!!》


ウィップ「いやはや、SM用の鞭が残っててよかったよ~」ギシッ

カード「こんなんで今までしばかれてたとか考えたくないな」ギリリ


  魔王とゾンビ娘の間に、棘の生えた鞭で魔王の腕を絡めているウィップと、
 見たことも無い鉄杖でサーベルの切っ先を逸らしているカードが割り込んできた

カード「悪い。ちょっと失神してたわ」


ゾンビ娘「その……杖は……?」

カード「骨っ子が城の中を走り回って探してきてくれた。よくわかんねえけど、すげー手に馴染む……」

骨っ子「ヘッヘッヘッ……」グテー


魔王《それは……『魔導師の杖』………!なぜ我が城の中に…!?》

カード「へぇ…これがウィップの………いや、俺達の先祖の杖か……」


ウィップ「道理で~」

カード「力が湧いてくる……!!!」







     《 ト ラ ン ス 》!!





  二人の体からまばゆい光が溢れだす!!

魔王《これは……この光は…あの時の……!!》


      ザザ…―――ザ…ザザ――――

    「女神の神託とか関係ない……
       自分勝手な理由からの行動でしかない。
         だけど………お前を倒す理由には十分だ!!」

    ――――…ザザザ………―――――


  魔王は玉座を睨み、怒りに震える声で叫んだ

魔王《死してなお我の邪魔をするか!勇者よッ!!!》


ウィップ「こっちを向きなよ魔王~」

カード「今の俺達なら、お前を圧倒できる!!」


魔王《やってみろ!!その忌々しい勇者の光ごと消し去ってくれる!!!》【ピオリム】


  血が足りなくなり視界が霞むゾンビ娘の目に視認できなくなるほど魔王が加速し、ウィップに向けて突きを……

            ――――ガシッ

ウィップ「まあ~止められるけどね~」

  隻腕の鞭使いは、義手で魔王の剣を受け止めていた


魔王《馬鹿な……!?戦士でも3段階加速した我には対応できなかったのだぞ………!》


ウィップ「戦士基準でいつまでも考えていられると思わない方がいいよ~」ヒュッ

魔王《なっ速………ッ!?》

  彼女は魔王の目をもってしても、残像を捉えるので精一杯な速さで、魔王の身体を拘束した。


ウィップ「さっきから、尋常じゃないほどよく見えるし、聞こえるんだよね~」

魔王《【身体能力強化】…いや、【感覚超化】といったところか…》

魔王(この鞭……棘が全身に食い込んで身動きが取れぬ……くそっ操り人形にでもなった気分だ)


カード「いやいや。ウィップの本領はそれじゃないぜ」【零式解放】

零式「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


魔王《貴様……!魔力が切れたのではなかったのか……!?》ギギギ


カード「ああそうさ。魔力はスッカラカンだ」


魔王《では何故……ッ!召喚を………ッ!!》

カード「別に召喚したわけじゃねえ、解放しただけだ。俺の身体からな」


ゾンビ娘「カード君。私にも分かるように説明してください」ザクッ

  出血多量でこれ以上戦えないと判断したゾンビ娘は、仕方なく自殺し、戦闘に参加した。
 これで残りの枚数は0枚となった


カード「零式は、俺の血の中にその身体ごと封印されている。

    普段は魔力を使って魂だけ召喚、という形で無理やり外に出していたんだが、
    今回はこのトランスのエネルギーが零式を完全な生命として身体ごと解放させたんだろうな」


魔王《完全な……生命………?》

カード「そう、今のあいつは魔力で動く人形じゃなくなった。命ある生き物だ」


カード「この一時だけ、俺という呪縛から解放する。それが俺のトランス効果みたいだな」

零式「グゥゥゥゥウウウウウ………」ノビ~

ゾンビ娘「あ、なんか気持ちよさそうに伸びしてます」


魔王《たしかに零式は脅威だが、召喚獣でないなら殺せるということだ!》【アルテマ】


カード「無駄だって……」

零式「ガァアアアア!!!」【ギガフレア】


  二つの光が打ち消しあい、消滅した▼

魔王《反応が早い……!?》


零式「当たり前じゃろう。これでも最強の召喚獣じゃけぇ、こんくらいは朝飯前じゃ」

ゾ・魔「《!!!???》」


カード「おま…しゃべんなって言ったろ」

零式「見た目と性格が一致しないけぇ喋るなって、理不尽すぎん?」


ウィップ「たしかに~広島弁を使うバハムートとか、あんまり見たくないよね~」

零式「グルオォォ………」シュン


ウィップ「あ、そうだ~ちょっとこの松明に火をつけてもらっていい~?」

零式「………ペッ」ボッ

ウィップ「ありがと~」


ウィップ「さ~て!第2回、ウィップのお料理教室~」


ウィップ「まずはこのニンジンをへし折ります~」ペキッ

ウィップ「そして二つになったニンジンを~火の中に入れて~」

ウィップ「完成~!!」


  ニンジン「あれ?ここどこ?」

  ジャガ=バター「ギシャァァァァァァァァァァァァ!!!」


魔王《 》


カード「ウィップのトランス効果は、過去に作った料理をどんな材料からでも作る【反芻】だ!!」


    人間離れした身体能力と感覚は、あくまでそれを行うための副産物のようだ


魔王《貴様ら頭狂ってるんじゃないのか!!?》

ゾンビ娘「よく言われます」ヒュヒュヒュ


魔王《チッ…この人数の相手は初めてだな……!》キキキンッ


  近距離ではゾンビ娘、芋、人参の攻撃を三方向から受け、中距離からはいばらの鞭が飛んでくる。

 魔王を4人に集中させ、作り出した意識の隙を、炎と氷の刃が切り裂く。


魔王《氷の刃……!この攻撃は見覚えがある。カード、貴様か!!》

カード「あり?やっぱ分かった?」

  カードは杖を振りかぶり、遠くから魔王を斬りつける様に振り下ろした。

             ――――バシュッ

  すると、鋭い刃となった氷柱が魔王めがけて飛んでいく。

魔王《200年前も魔導師が魔力切れになった時に使った方法だから…な!》キンッ


カード「ご先祖様も魔力切れになったのかよ!!」ブンッ


  この鉄杖。天空の剣とか、いのちの杖などと同じ系統。
 アイテムとして使うことで、魔力を消費せず、魔法のような効果を発揮できる数少ない武器である

  スライム2匹と、はぐれメタル1匹だけでDQ5の世界を冒険していた頃、すごくお世話になった記憶がある。


ゾンビ娘「なんの話ですか!!!」バッ

  ゾンビ娘が少し後方に跳躍し、爆弾矢を放つ


魔王《ふ………っ!!!》カンッ

  魔王は剣の鍔ではじき、カードの放った氷柱に衝突させ爆発した


魔王《ぐっ………くっ………》キンッガキンッ

魔王《流石に片腕一本でこの数はきついか………!!》

  芋の白金ことジャガ=バターのラッシュと、その隙間を縫って刺してくるゾンビ娘だけで手一杯になっていた


ニンジン「人参は身体にアレがアレして健…アレにいいんだぜ!!!」

魔王《健康くらいはちゃんと言え!!》【はやぶさ斬り】

ニンジン「」バラッ


  ニンジンをスティック状に切り裂いたと同時に、背後から膨大な熱量を感じた


零式「【テラフレア】」

  魔王に一番のダメージを与えている技だ。このまま直に食らうのはまずい
 しかし、怒涛の連打を繰り出す芋のせいでまともに動けない。まさに前門の芋、後門のバハムートである


魔王《全く………面倒だ………》


  そう言うと同時に、魔王の周囲に魔力が収束し始める。

 龍の国でみせた、すべての魔力を攻撃エネルギーへと昇華させる魔王の九つ呪文のうち、最強最大の呪文。


魔王《 【 マ ダ ン テ 】 》

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ウィップ「う……ん……?」

ゾンビ娘「ぐ……うぅ………」ジュゥゥゥゥ

ウィップ「ゾンビ娘ちゃん!?まさかウチをかばって!?」


ゾンビ娘「私は死んでもリレイズしますから」†蘇生†

ウィップ「でも……もう蘇生符は………」


  正真正銘、これが最後のリレイズである。


カード「ぐ……ぉ………」

ウィップ「カード!?」


零式「グオオォォォォゥゥゥゥ………」

カード「零式………かばってくれたのか……?」

零式「グゥゥゥ…」シュゥゥゥ……


  零式が消えていくと同時に、ウィップとカードの身体の光も消えていった


魔王《有言実行。これで忌々しい勇者の光も消えたな》


ゾンビ娘「く……っ!ですが、あなたは魔力を使い果たしました!これでもう呪文は…」

魔王《それがどうした》

カード「何!?」

魔王《それが何だというのだ?》

ウィップ「何って~」

魔王《貴様らは、単純な肉弾戦でも我に手も足も出ないだろう?》


ゾンビ娘「あ゙………」


魔王《賢者が呪文を解放するまでの時間稼ぎだったな。その解放はまだ終わっていないようだぞ?》チラッ

カード「くそ…っ! 賢者は何をやってる!」

ゾンビ娘「こんなに時間がかかるなんて聞いてませんよ!」


ゾンビ娘「………!!」

  彼は玉座の前で足を立てた正座で座っており、首と両手を力なく弛緩させていた。意識があるようには見えない

ゾンビ娘「賢者様!!」

  もちろん、反応することは無い。

ウィップ「どうなってるの~?」


カード「骨っ子!賢者のところに行け!」

骨っ子 ワカッタ!!  ダッ


魔王《待て!!》

            ――――ヒュパッ

ウィップ「こっちが待て~だよ~!!」【キャッチ】ギギギ

  魔王の右手に、再びいばらが絡まる。

ウィップ「ふふふ~つかまえた~」


魔王《………それはこちらのセリフだ》ダンッ

ウィップ「!!」


  魔王は怪我のしていない方の足で床を蹴り、一息にウィップとの距離をつめた。
 その右手には、魔力が渦巻いている。


カード「この野郎!!」ブォンッ

ウィップ「くっ………」バッ

  それに反応したカードは、高速で氷柱を飛ばし……ウィップは鞭を手放し、回避に移る。

 しかし……


魔王《【アルテマ】》


          ――――カッ

  氷柱は魔王の放った魔法によって蒸発し、ウィップは至近距離で直撃を受けた



  吹き飛ばされたウィップは床を何度も転がり、そのまま動かなくなった。

カード「ウィップ!」

  弟が姉に駆け寄り、そのまま抱き上げて魔王と距離をとる


カード「おい!しっかりしろ!」

  何度も揺さぶるが反応は返ってこない。呼吸を確認するとまだ生きている。気を失っただけのようだ
 ホッと息をつくと ガシャン という音が姉の左腕からした。
  オリハルコンの義手がズタズタに砕けているのが見えた。ところどころ融解している部分もある


魔王《とっさに左手でアルテマを覆ったか………この魔力量ではこれが限界か……》

ゾンビ娘「どうして魔法を……! 魔力を使い果たしたのでは………!?」

魔王《魔力が無いなら、創ればいいではないか》


魔王《命を削り、削った体力を素に魔力を創りだす秘術……これこそが【コンバート】だ》

ゾンビ娘「命を削る……!?」

魔王《左様。少々削りすぎたが、かつての我10人分の魔力は手に入った》


魔王《さて、あの動けない賢者の首でも刈りに行こうか……》ザッ

ゾンビ娘「 ! だめですっ!」ダッ

  魔王の言葉を受け、ゾンビ娘は駆け出した。


魔王《だから遅いと言っておるだろう?》ヒュンッ

  しかし回り込まれてしまった▼


ゾンビ娘「な………っ!?」バッ

  彼女は後ろを振り向く軸にするために、踏み出した右足を地面に足を下ろした。


            ――――ガクンッ
ゾンビ娘「………ッ!?」ヨロッ

  しかし、階段がもう一段あると思ったら、実際は無かったときのように彼女は前のめりにこけた。

 床が消えてしまったのかと思ったが、右足から上る強烈な痛みがその考えを吹き飛ばした。


ゾンビ娘「~~~~ッ!!」

  右足の膝から下を、切断されていた。


カード「てめぇ!!」ヒュンッ

  これまでで一番の速度で氷の剣を飛ばすが、氷柱は残像を掠めただけにとどまる。
 それどころか、次の瞬間にはカードの目の前に素手で氷剣を掴んだ魔王の顔が現れた。


魔王《トランスの境地に至っていない貴様らなど、恐れるに値せぬわ》

            ――――ドシュ

カード「ぐああ……!!!」

  片膝をつきウィップを抱いていたカードの腿を氷柱で突き刺し、ふくらはぎを貫通させて床に縫い付けた
 氷柱から手を離し、魔王は賢者のところに歩いていく


魔王「そこでじっと見ているがいい………」



 ――――――――――――――――――――――――


  痛い。痛い。痛い。痛い。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。イタイ。イタイ。イタイ。イタイ。

  賢者様に近づいていく魔王を、私は止めることができずにいる。

  右足から発せられるその信号に、私は顔を歪め、息を荒らげて喘ぐことしかできない。
 立ち上がる事も出来ず、地面を這って魔王を追うが、間はどんどん離れていく。
 それどころか、床に擦れる断面の縁から焼け付くような痛みが伝わり、脳を焦がす。


ゾンビ娘「はぁっ……!!はあぁっ………!!!」ズ…ズズ……

  この身体になってから、散々こんな痛みを味わってきたが、慣れることは一切無かった。
 右手でダガーを握り締め、進み続ける



  自殺すれば、私はゾンビの身体になってこの痛みも消える。
 もっと言うならば、身体能力も格段に上がり、少しでも魔王の進撃を止められるでしょう。

  ほとんどの攻撃が一撃必殺の魔王相手に、私は戦えるでしょうか……
 次に死ねば、本当に死んでしまう。冷たくなった身体が、さらに死んだらどうなってしまうのか。

  魂が肉体を離れるんじゃなく、その存在ごと消えてしまうのでしょうか。

  黄泉帰りの方法がなくなった今、それだけが気になります。




ゾンビ娘「死ぬのは……っ!怖いです………!」ギュゥゥ


  でも……賢者様が死んじゃうって考えたら……

 今まで受けたどの傷よりも、どんな痛みよりも、胸が張り裂けそうで苦しいです……!


ゾンビ娘「賢者様が聞いたら…っ 無い胸がどうやって張り裂けるほど膨らむのかって…言いそうですね……ハハハ」


  この痛みは、ずいぶん昔に感じた……私が、ゾンビになった瞬間に味わった痛みです

  あの時死んだのは、私自身。
 仲間と、人間と一線を引いたのを、あの瞬間に嫌になるくらい実感しました。

  仲間と、勇者様と会えなくなるのがひどく怖かったし、胸を掻き毟りたくなるほど苦しかった。
 身体と一緒に、顔も思い出せないくらい記憶が腐りきったというのに、寂しさと悲しさは覚えていたみたいです。


  私はもう、あの痛みを抱えたくない。賢者様を失って、また数百年彷徨うくらいなら………




ゾンビ娘「死ぬことなんて……っ!お米一粒分も怖くないです!!」





  ――――彼女は泣きながら吼え、何度もそうしてきたように、渾身の力を込めた右手で左胸を叩いた


 ―――――――――――――――――――――――――――――


骨っ子 ケンジャサマオキテ!オキテヨ!!

賢者「………………………。」

骨っ子「ウ~……ワン!ワンッ!!」


魔王《どけ。クソ犬が》ゲシッ

骨っ子「キャンッ!?」ガチャン


魔王《本当に生きておるのか………?どれ……》スッ



          ――――ガブッ

  脈をとろうと手を伸ばした魔王の腕に飛びつき、噛み付く犬がいた。

魔王《ぬう………っ!?》ブシュッ

骨っ子 ケンジャサマニ……サワルナ………!!


  その犬はいくら振り回されようとも、噛み付いた腕を離そうとはしなかった。

魔王《その汚い口を離せ……!》
            ――――ゴシャッ

骨っ子「キャ……ッ」

  しかし、床に叩き付けられた瞬間に牙が砕け、骨っ子は床を滑りながら離れていく。


  その一撃で意識を失った骨っ子は、その速度のまま城の外に放り出された。

 数秒の後、城の外、それも一番下の階層からカシャンという乾いた音が小さく聞こえた………

魔王《………我に楯突くからそうなるのだ…………》


  階下を覗き込んで確認した後、魔王は玉座に向き直り、その背もたれをまじまじと見つめた。


魔王《勇者め………我の背を預ける所に封印したのは……あの時背後を取られた腹いせか?》


賢者「………………………。」

魔王《何があったかは知らんが……最後の呪文とやらが原因なのであろうな》チラッ


  硬い大理石でできた玉座の背もたれには、ただの模様にしか見えない傷がいくつかある

魔王《これが文字なのか……?石を彫って書いたとはいえ汚すぎるだろう…全く読めぬ………》



魔王《………【エアロガ】》
             ――――ヒュゴッ

魔王《無傷……か………。あれだけの魔法の中、無傷でいるなら当然か》


魔王《となると、賢者よ。呪文の解放を阻止するには貴様を殺すほか無い様だ》

賢者「………………………。」


魔王《くくく、何も反応は無しか………》

魔王《このまま首をへし折るだけで………全てかたがつく……》スッ



  魔王は女騎士の細い指をゴキリと鳴らしながら手を広げ、賢者の白い首に触れる。


魔王《どうせ聞こえておらぬだろうが、これだけは言っておく。

    貴様の仲間達はかつての勇者一行にも負けず劣らず、強かったぞ………》


  見た目ほどダメージは無いが、傷だらけになった自身の身体を見る。

  龍の炎で吹き飛ばされた左手や、足に残った刺し傷、いばらが食い込んだ皮膚の痕に、噛み傷………
 そして雷撃による全身の火傷………



魔王《我をここまで追い詰めたことを誇りに思うがいい………》

  ゆっくりと指に力を込め、賢者の首がミシリという音を上げ始める。


魔王《さらばだ……》








ゾンビ娘「賢者様から……離れろぉぉおおお!!!」

                 ――――ヒュドッ


魔王《ぐふ……ぅっ!?》ドサッ

ゾンビ娘「このうなじは私のものです!!」フンス!

  突然の横からの衝撃に、魔王は尻餅をついた。
 ゾンビ娘が左足を軸にして右足を中段に伸ばしていることから、蹴り飛ばされたと推測する


  だが、不意を突かれたとはいえゾンビ化しただけの少女に
 この魔王たる我が尻餅をつかされるなど、ありえるのだろうか?

魔王《………! それは……!?》

  魔王が驚き、目を見開いたのは、少女の薄い胸にオリハルコンの刃が突き刺さったままだったからだ。


魔王《なぜ刺したままなのだ………!?》

ゾンビ娘「これがこの武器の、もう1つの使い方だからですよ!!!」ヒュッ


  瞬間、少女の姿が霞むほど加速し、魔王の顔面に拳を叩き込んだ。
 この速さ、3段階加速した魔王に匹敵する速さにまで達している。

魔王《ぐぉ……ぁっ!   ………この威力……ゾンビの筋力をも超えている……?》

ゾンビ娘「貰ってからしばらくは、この力の必要性がわかりませんでしたけどね……!」


ゾンビ娘「今、この時のためにあったんです……!!!」ダッ



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

半月前


ゾンビ娘「はぁ………」

賢者「どうしたの?ため息なんてついて。まだウィップを置いて行ったことを気にしてるのかい?」

ゾンビ娘「いえ、そのことはもういいんです………カード君の言い分も十分理解しましたし……」

賢者「じゃあ何か?」


ゾンビ娘「このダガーのせいですよ!!」

カード「【オリハルコン製 六拾四式小剣】のどこが気に入らないんだ?」

ゾンビ娘「無駄に中二なネーミングもそうですけど!その性能が…
     ……ていうかこの64って私のアンダーバストじゃないですか!どこから知ったんですか!」

賢者「バストもたいして変わらないじゃない………」

ゾンビ娘「そぉい!!」ゴスッ

賢者「☆■▲◎◆@*!?」


カード「き、金的……!?」ゾクッ

骨っ子 イタソー



ゾンビ娘「次は……」コーホー

カード「ま、待ってくれ!64ってのは俺の作った魔道具ナンバーってだけで……!」アタフタ

ゾンビ娘「ただの偶然だと……?」

カード「そういうことだ!だから……な?」

ゾンビ娘「まぁいいでしょう……」

カード「助かった……」ホッ



ゾンビ娘「とでも言うと思ったか!!」ゴスッ

カード「☆■▲◎◆@*!?」


賢者「それで……まじめな話、何が気に入らないんだい……?」ヒューヒュー

ゾンビ娘「攻撃力ですよ。いままで使ってたダガーは初期装備もいいとこですよ?
     それが突然最強クラスの武器になってるんですから!攻撃力何倍されてると思ってるんですか!?」

賢者「別にいいんじゃ……」

ゾンビ娘「よくないですよ!今まで絶妙な力加減で自殺して無痛だったのに、これになってからすごく痛いんですよ!」


カード「自殺しなけりゃ……」ガクガク

ゾンビ娘「シャラップ!定期的にゾンビ化しないと、スレタイ詐欺になるでしょう!」

骨っ子 エェー


カード「その分新しい能力も追加したからそれでチャラにしてくれよ」

ゾンビ娘「新しい能力?刀身に刻まれてるこの模様がそうですか?」

カード「おうよ。お前、普通自殺した後すぐにナイフを抜くよな?」

ゾンビ娘「そりゃまあ、ゾンビ状態は弓矢よりダガーを武器にした方が強いですから」


カード「そこでだ………心臓にダガーを刺したままにしてみな」

賢者「死んじゃうじゃないか」

カード「刺した瞬間多少のダメージは食らうが、血中の魔力で【延命】の魔術式が発動するからすぐには死なないさ」


ゾンビ娘「刺したらどうなるんですか?」

カード「【延命】と同時に【加速】の魔術式も起動して、血流が半端ない速度になる。
     その結果、ステータスを異常なくらい上昇させることが可能になるんだ」

ゾンビ娘「身体能力……強化……」


カード「だが、その性質上、毎秒1~2ずつHPが減っていく。
    一応安全装置として、HPが1になったら止まるようにしたが、ゾンビ状態ではあんまり使わない方がいい」

カード「どうしても戦闘から逃げたいって時だけにしな」



カード「使った後は、刻印に干渉したせいでたぶん血が欲しくなるだろうしな!」ハハハ


ゾンビ娘「そういえば、最近血を貰ってませんでしたね……」ユラ……

賢者「え゙………」

骨っ子 ケンジャサマニゲテー

ゾンビ娘「逃がしません!」


   ちょっやめっ……!    ギャ――――――!!!

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



魔王《そんな力がそのダガーに……?》

ゾンビ娘「ええ。【人為トランス】とでも呼びましょうか……
     血中魔力の多い心臓に刺さないと発動しないのが痛いですがね………」

ゾンビ娘「しかもこの性質上時間も無いので………」

  またゾンビ娘の姿が霞んだ。


ゾンビ娘「短期決戦を強いられるんです!」ゴッ

魔王《ぐぅ………っ》パシッ




  魔王は拳を足のみで受け止め、右手をサーベルの柄に添えながら言った。

魔王《短期決戦がお望みなら、すぐさま終わらせてやろう………》スラッ

    【はやぶさ斬り】

  上げていた右足を床におろし、強く踏み込みながら居合い抜きの要領で抜刀。
 魔王の背中側を除く、三方向全てに斬撃を放つ。

  しかし、少女は少し前にしたように後ろに跳躍し回避していた。今度は完全に間合いの外まで逃げている

 魔王は舌打ちし、ゾンビ娘を追った。



魔王《ふっ……!》ヒュッ

  下から上へ斜めに斬り上げる。回避され、拳を右のわき腹に叩き込まれる。
 ボキリという音が身体の内側から響いたが、気にせず剣を逆手に持ち替え追撃。

  少女は地を蹴り、賢者のいる方向に逃げた。

魔王《賢者を守りながら戦うつもりか!……愚かな!》ダッ

  ゾンビ娘が玉座の前15メートルの位置で急停止する。振り返ると同時に追いついた魔王は、刺突を繰り出した。

ゾンビ娘「無駄ですよ!」ヒョイッ

魔王《小癪な……!》


  魔王らしい発言を繰り返してはいるが、魔王の顔は楽しそうな笑みを浮かべている。



魔王《思う存分物理攻撃だけで戦えるとは、なんと愉快なことか!》

ゾンビ娘「わけの分からないことを言うんじゃないです!」ヒュオッ

魔王《これは我の本心だ!グオッ…!》ドムッ


  強力な魔法を主体に戦う魔王は、近接戦闘を行う機会が極端に少ない。
 それは魔力量が膨大であるために、魔力切れになる前に戦闘が終わってしまうからである。
 200年前の勇者との戦闘では魔力切れにはなったものの、肉弾戦においては話にならなかった。

  『本気を出せる』ただそれだけのことが、魔王が唯一願った事なのだ。

魔王《この状態を名づけるならば、第二形態といったところであろうか……な…っ!》ヒュオンッ



  魔王の猛攻は続き、ゾンビ娘は次第に後退しつつあった。

ゾンビ娘(やっぱり近接戦闘は慣れません……)

  長年弓兵としての立ち回りを意識してきたせいか、その動きにはぎこちなさが残る。

ゾンビ娘(これを、経験の差……って言うんですかね………)

ゾンビ娘「でも……やるしかないんですけどねっ!!」ヒョイッ


             ――――ガッ

ゾンビ娘「え………」グラッ

  彼女は、床にできた段差に足を引っ掛け、意識をそちらに移してしまった。


魔王《捉えた…っ!》

  実力が伯仲している場合、一瞬の油断が命取りになる。


             ――――ザシュッ

ゾンビ娘「あ………?」

  彼女は踏みとどまろうとしたが、足がうまく動かなかった。足の痛みが、その理由を告げている


ゾンビ娘(両足の腱を……やられました……!!)


魔王《くくく、ここら辺の床は先の戦闘でボロボロになっているからな。簡単に誘導できてうれしいぞ》

ゾンビ娘「くそっ……!!」ブンッ

魔王《おっと!フハハハ、人為トランス状態では石を投げるだけでも相当な威力になるようだな》ヒョイ


ゾンビ娘「そうですね!」ヒュヒュヒュンッ

魔王《かわすことは容易いが、少々目障りだ。潰しておこう》


  魔王は投石をかわしながら、剣を握る腕に力を込める――――

       ――――【クライムハザード】



ゾンビ娘「かは………っ」

  ゾンビ娘の胸からダガーが抜け落ち、身体を満たしていた力が急速に失われていった。


魔王《HPが1になれば停止する……貴様はそう言ったな》

ゾンビ娘「くっ……なぜ手加減を……!」

魔王《くくく、貴様の絶望する顔が見たくなってな。痛みに苦しむ顔を見て、我の血は滾った。
   絶望の表情ならば、いったいどれほど甘美な興奮を与えてくれるのか………》


魔王《考えるだけでゾクゾクじないか?》


ゾンビ娘「やっぱり魔族はド変態しかいないんじゃないですか!?」



魔王《安心するがいい。賢者の後に貴様も送ってやる。もちろん魔導師の二人もな》ザッ

ゾンビ娘「待てぇ!」ズ……


  また這って追おうとするが、間に合わないことは分かりきっている。
 だからこそ彼女は、逆転の手立てが無いか必死に考えた。腐った脳を限界まで酷使し考えた。


ゾンビ娘(投石……はトランスの力無しでは避けられて終いですし、
      弓矢はさっきの斬撃で弦がブッツンしてます………)


ゾンビ娘(もう本当に何も手が………!)




             ――――ボスッ
ゾンビ娘「ふぎゅっ!?」

  ゾンビ娘の頭に、何かが乗せられた。

カード「諦めてんじゃ……ねぇよ………!」

ゾンビ娘「カード…君……?」

  つららを無理やり引っこ抜き、杖に体重を預けながら歩いてきたのだろうか。
 カードの右足のズボンは血で真っ赤に染まり、床に太い線が引かれている。

カード「絶対にまだ……手があるはずなんだ………!!」

  少女の頭に乗せられていたのは、荷物を入れていた袋。詰め込みすぎてかなりの重さになっている




カード「おらっ!」グイッ

  袋をひっくり返し、中身を床にぶちまける。
 しかし、中身はビン、銃、砂、お面、今まで集めた各地のお土産と、この城で手に入れたガラクタばかりだ


カード「何か……!」ガサガサ

ゾンビ娘「お願い!」ガチャガチャ



ゾンビ娘「あ…………」

  ゾンビ娘の瞳に、ガラクタの中に埋もれていた緑色が飛び込んだ。

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      ――――「困った時に開くアル」

  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ゾンビ娘「カエルの……ポーチ………!!」


  ゾンビ娘がポーチを引っ張り出すと、デフォルメされた可愛らしいカエルがゲコリと鳴いて、勝手に口を開いた

カード「これは……?」

ゾンビ娘「青い…飴玉……」


  飴玉を視認したとき、二人に中華店主の声が聞こえた。
 それは、瀕死の二人が聞いた幻聴かもしれないが、幻聴ははっきりと告げた。



   『食べることは生きることアル。食への探究心が、ときに絶体絶命のピンチを救うアルよ!』


ゾンビ娘「……っ!」ガリッ


ゾンビ娘「人間、おいしいものを食べてるときが一番生きてるって実感しますよね……」

  ラムネの味がする飴玉を噛み砕きながら、彼女はこの旅で口にしてきた味を思い出していた


        ――― 200年ぶりに食べたシチューとクッキー
        ――― 大好物のイチゴをふんだんに使ったケーキ
        ――― 炒められた冷やし中華
        ――― 旅の間私達の胃袋を支えたカード君の料理
        ――― ウィップさんの召喚した芋の白金

ゾンビ娘「どれもおいしかったです……」ガリボリ

  できるなら、もう一度食べたいものばかり。でも一番欲しいのは―――――――








ゾンビ娘「賢者様の血です!!!」





           ――――ゴクンッ

  飴玉を飲み込んだ瞬間、身体の中から力が湧いてくる。
 身体の中だけでは抑え切れないエネルギーを、少女は大好物に近づく邪魔者に向けて解き放った



    ゾンビ娘「 【 リミットグローブ 】 !!!」


  魔王は、膨大な魔力の奔流に巻き込まれた



 ―――――――――――――――――――


???「リミットグローブ。これはHPが1になっているときにのみ真価を発揮する呪文なんだ」

???「9999という固定ダメージを敵に与える強力な呪文だよ」


???「魔王みたいに防御力がイカれてる相手なんかには一番有効な技だと思うよ」

  …………………。

???「え?中華店主が話に出てきた時点でやりそうな気はしてた?ナンノコトカナー」

  ………………!

???「そんなことよりさっさと続きを話せって?まぁまぁ、僕も疲れたし、今日はこの辺で」ノシ

 ―――――――――――――――――――


            ――――バキバキバキバキバキバキバキバキバキ

魔王《ぐぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!?》


魔王(何だこれは!!?身体がッ!潰れるッ!?破裂するッ!?)


  球体状の形を持った魔力の中で、魔王は形容し難い衝撃と痛みの嵐の中にいた

魔王(重力すらも分からない!我は今落ちているのか!飛んでいるのか!?)


  重力でさえ捻じ曲げてしまう程の魔力の密度の中で、上下左右全ての方向を見失ってしまった。
 体感する威力自体は、零式のテラフレアよりも遥かに劣ることは分かる。
 だがこの魔法は、方向感覚を狂わせるせいで、精神的にそれを超えたような錯覚に陥る。

  コンバートによって体力を著しく減らしてしまった体力は数値にすれば8000を下回っている。

魔王(このままでは………!!)



  魔王の痛覚が麻痺し始めた頃

魔王(我の身体が………崩れて………!!)

  魔王の魂を収めていた女騎士の体が、ゆっくりと魔力の波に溶けていく……
 このままでは身体ごと消滅してしまうだろう。その結末に抗おうと右手を動かすも、その感覚が無い。

魔王(右手が……無い………)

  目を開き、それだけを視認すると、二つの碧い目は同じように魔力の中に溶けていった。

魔王(見えなかっただけで、すでに両脚も消えているのだろう……)


  何も見えなくなった視界の中で、魔王の意識も次第に溶けていった。


ゾンビ娘「ケホケホっ!……やったのですか……?」


              ――――グチャァ…

ゾンビ娘「ひっ!?」ビクッ

カード「こいつは……」


魔王《ああ゙ア゙ぁァァああああ゙………》


カード「身体が……グズグズに……!?」

ゾンビ娘「まるで……ゾンビ………!」


魔王《アあ゙ああ゙あ゙ァァァ………?》ズル…グチャ…


  正気があるようには見えない。よく分からない体液を滴らせながら私達に近づいてくる。


 あるはずの無い『左腕』に、折れてボロボロになったサーベルを握りながら………ゆったりと………


ゾンビ娘「そんな………」

カード「絶望してる暇なんかねぇぞ!早く離れねぇと……!ぐあ…ッ」グ…

  彼は足に力を込めるが、傷のせいで言うことを聞かない。それは足の腱を切られた私も同じだ


魔王《…………………ああ゙》ズチュ…


  いつの間にか二人の目の前まで迫っていた魔王が、左腕をガクガクと揺らしながら振り上げた。
 床に落ちた体液から、気絶しそうなほどの腐臭が発している。

カード「くそっ!!」ヒュ…

ゾンビ娘「! 駄目です!!」
             ――――ドンッ


  氷の杖を振り回そうとしていたカードを、ゾンビ娘は突き飛ばした。


  ゾンビの筋力で突き飛ばされたカードは、2メートルほど離れた場所に転がった。

カード「痛……ッ!」


ゾンビ娘(ごめんなさいカード君!こんなにボロボロの見た目でも、この魔王の一撃は……!)

魔王《あア゙ぁアア!!!》ヒュオッ


  必殺の一撃が、彼女の強張った身体に振り下ろされた――――――

ゾンビ娘「………っっ!!」




               ――――グチャッ



               ――――ビチャチャッ
ゾンビ娘「……!?」

  突然、目を強く瞑り身構えていた彼女の顔に、どこかべたつく液体が降りかかった。

ゾンビ娘「ぷはっ!………?これは……なんかネバネバします……」ヌルッ


   「ひゃひゃひゃ!それだけ聞くと顔射されたみてえに聞こえるな!なかなかエロい顔してるぜぇ?」


ゾンビ娘「その声は……!」

女騎士「よお!おひさ~」

  自ら腹に剣を刺した魔王の姿があった


ゾンビ娘「どうして……!」

女騎士「まずはあたしの体液を拭けよ。なんかもう…いい感じに顔にかかってっから……」

ゾンビ娘「あ、はい」フキフキ


カード「お前……女騎士だったな………消えたはずじゃ…」

女騎士「このあたしが消えるかよ!まあ結構きつかったけどよ……
    魔王の意識が弱くなってな。ようやく主導権乗っ取って出てこられたんだ」


ゾンビ娘「うぷ…口に入りました……苦……」ウエー

カード「ぶふ……っ!!」

女騎士「お前……狙ってやってない?」


ゾンビ娘「失礼しました。それで………刺さってますけど、いいんですか?」

女騎士「ん。まあな。さっきの呪文で痛覚が爆発したし、もう何も感じねえさ」


カード「何はともあれ、お前がゾンビ娘を助けてくれたんだよな……?」

ゾンビ娘「えっと、本当にありがとうございました」ペコリ

女騎士「痒いからやめてくれ。……元を辿れば、あたしが魔王の罠にはまったせいだ。頭を下げるのはこっちの方だ」


ゾンビ娘「その体は……?」

女騎士「魔王が無意識のうちにやったみたいだな。喰鬼の腕と脚を部分的に召喚してる。ああ、あと眼球もか」


カード「部分召喚?脚や手から流れてる体液は分かるけどよ、腹からもその白く濁った体液が出るのは何故だ?」

女騎士「ん~そうだな……胴体と頭は自前なんだが、魔王と長いこと一体化してたせいでそんな感じになったんだと思う」

ゾンビ娘「じゃあなんで粘つくんですか」

女騎士「魔族の血っぽいだろ?」


ゾンビ娘「血に飢えてる私も、これは飲みたくないですね……きな粉の時みたいにのどに絡みそうですし」

女騎士「お前さっきちょっとだけ舐めたじゃんかよ」

ゾンビ娘「やっぱり賢者様の血が一番さらさらでおいしいです」

カード「まず血を飲み物にしてるのもそうだが、きな粉を飲み物として飲んだことがあるのか………」


女騎士《なかなかいけるぞ?きな粉ジュース》

カード「そんな馬鹿な……え?」

女騎士「やっべぇ………もう意識取り戻しやがっ……まだ生き残っておったとは驚きだ》魔王


女騎士「はっ!このあたしがお前なんかに消されるかよ」

魔王《そうは言っても、もうすでに身体の支配権が奪われつつあるぞ?》ギギギ

女騎士「もともとあたしの腕じゃないからな……!」

魔王《くくく、このグールの身体を召喚しておいて正解だったようだな》

女騎士「ひゃはは!あたしはこんな腐った四肢なんざご免だがな!」


ゾンビ娘「これ端からみると、一人芝居にしか見えないんですが」

カード「しーっ!それ言っちゃあかんやつ!」


魔王《ほれ、一人芝居とか言われてしまっておるぞ?はやく我に身体を空け渡さんか》

女騎士「ぐあぁぁぁ!!?」

魔王《やれやれ………手を煩わせおって》


ゾンビ娘「女騎士さん!」

魔王《ふむ……思えば、貴様の絶望が見たいなどと言わず、さっさと殺しておけばよかったな……》ズリュ…


魔王《【アルテ……っ…させねぇ!!」女騎士

  魔法を放とうとした右腕を左腕が掴み上げ、空に向かせた。


              ――――カッ

魔王《ゴキブリのようにしぶとい奴め……!邪魔をするな!》

女騎士「ぐ……っがぁ!…………嫌だね。これはあたしの身体だ!!」ズボッ


  彼女は、自らの腹部からサーベルを引き抜き、心臓に突き刺した。

魔王《ぐぉおお!?心臓を……!?だが、これしきのことで我は………》

              ――――キィィィィィィィィン

魔王《………?》

女騎士「気づいたか?さっきから魔力が増えてることに」


魔王《貴様……まさか………!!》

女騎士「そのまさかさ…!」


        【  コ ン バ ー ト  】!!!


魔王《ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!》


カード「これは一体……」


女騎士「コンバートは命を削る術!命とは魂!詰まる話が!」

魔王《我もろとも消し去るつもりか……!》

女騎士「ご明察!ちょいと地獄まで……付き合ってもらうぜ………!!」


魔王《がぁぁぁぁああああああ!!貴様…!正気か!?》

女騎士「正気さ。こんな姿になっちまったんじゃ、どの道長くないだろうからな。捨て身にもなるさ」グジュ…

魔王《………!》


女騎士「それに……あたしは今まで、誰かに利用され続けてきた……」

女騎士「貴族に王子、ついでに親もか……あたしを利用するだけ利用して、アイツを…アイツ等を奪った」

魔王《そ、それは我も知っている……!》

女騎士「そりゃそうさ。魔王の呪文とは、この頃からの付き合いだからなぁ?」


女騎士「だが、あたしの心の中までは知らねぇだろ……」


女騎士「あたしはな………もう二度と……


         誰かに利用されたくねぇんだよ!!!」


ゾンビ娘「………!?」


女騎士「あたしが利用されたがために!アイツ等は死んだ!」

女騎士「てめえみたいな奴のくだらねえ陰謀のせいで……誰かが傷つくのは!もうご免なんだよ!!!」

女騎士「これはあたしの身体だ!!あたしだけの身体だ!!!」

女騎士「誰にも自由にされない!あたしだけの身体だ!!!」


女騎士「だからとっとと……………






        くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!」


              ――――パァン………

  濡羽色に染まった空に、何かが破裂する音がこだました。

女騎士「あぁ…まあいいや…後は………まかせたぜ……  …」ドサッ


カード「何が……起こったんだ………?」

  その答えは、人一倍命に敏感なゾンビ娘だけが知っている

ゾンビ娘「はは、ははは……」

ゾンビ娘「生成した魔力量が多すぎて………魂が……その重さに潰されました……」


カード「………っっ!!」

カード「でも!魔王はこれで……!」


ゾンビ娘「いいえ……」


ゾンビ娘「まだ………」

魔王《おのれ……最後の最期に……!!!》ズオッ

カード「なっ!?」


魔王《こうなったら……ッ貴様の身体に我の魔力を注ぎこんで、新しい器にしてくれる!》ガシッ

ゾンビ娘「あっ……!」

              ――――ガッ ゴッ ガンッガンッガンッ

  魔王はゾンビ娘の髪の毛をちぎれるほど掴み、何度も顔面を床に叩きつけた

ゾンビ娘「う…………ぁ……………」

  彼女の顔は、鼻血を吹き出し、青い顔が紫色に変色するほど激しく叩きつけられた


カード「このっ!ゾンビ娘を離しやがれ!!!」ビュンッ

  カードは杖を振り、氷の剣をいくつも投げつけた

魔王《ふん……》グイッ

カード「 ! 」

             ――――ドスドスドス
ゾンビ娘「うぁ゙……ぁ………!!」

  魔王はゾンビ娘を盾にして、氷の刃から身を守った


魔王《これだけやっても、まだHPが1から下がっていないとは、なかなかおもしろいな……》

カード「てめぇえ!!!」


魔王《くくく、いい顔だ。憎悪。憤怒。どれも我に向けられるためにある感情だ。心地よい………》

魔王《さあ、この素晴らしい感情の中で、今ここに新しい魔王を誕生させよう……》ズズズ…

  ゾンビ娘の首を掴んで持ち上げ、右手に魔力を集中させる。


ゾンビ娘(賢…者様……………)ツゥ…

  彼女の目から、一筋の涙が零れ落ちた………

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ゾンビ娘をズタボロにするの楽しい
いや、ゾンビだからズタボロなのが正しい姿なのか……



   「…後は………まかせたぜ……賢者…」


  「うん……」

  夜空を切り裂き、神鳴りの龍角が魔王を撃ち抜く▼

                ―【雷角ノ神弾・発動限界】―




賢者「まかされた」


              ――――リィィィィィィィン

  鈴を鳴らしたような神々しい音が響き渡る


魔王《がは……っ》ズシャッ

魔王《この光は…この雷は……!》


カード「ったく……いいとこ持っていきやがって……」

ゾンビ娘「……賢……者…様……?」ケホ…





賢者「ごめん。遅くなった」【真・ホイミ】


  全員の体力が全回復!▼


魔王《貴様!》グオッ

賢者「―【雷縛弾】―」

魔王《ぐ……っ!?》ジャララ

  魔王の身体に、光の鎖が絡みついた


賢者「これでも僕は怒ってるんだよ?」

魔王《う、動けぬ……!?》ギシギシ

賢者「女神の雷で編んだ鎖だからね。しばらくは無理だよ。そこでじっと見てなよ」



賢者「あ、ゾンビ娘ちょっとこっち来て」

ゾンビ娘「?」トテトテ


             ――――ビリィ!!
  賢者はゾンビ娘の服の背中部分を引き裂いた。青色の背中が見える

ゾンビ娘「!!?!??!!?」///

ゾンビ娘「な、何をするんですか―――!!!///」バッ

賢者「捕獲」ガシッ



賢者「よいしょっと」グイッ

  そのままゾンビ娘の首根っこを掴み、猫を捕定するように床に押さえつけた。

ゾンビ娘「むぎゅっ!?」


賢者「【レイズ】かけて一丁上がり」フゥ…

ゾンビ娘「絶対今 一仕事終えたみたいな顔してるでしょう!?何するんですか!」†蘇生†

カード「相変わらず仲間でも容赦ねぇ……」


カード(あと1つ言うと、賢者が絶対しちゃいけないような黒い笑みを浮かべてるし……)


賢者「……………。」ツツツ…

ゾンビ娘「ひぅ……!?///」ゾゾゾクッ

  ゾンビ娘の白い背中に、賢者のやわらかい指先をかすらせるように這わせる

ゾンビ娘「ちょっちょっと、賢者さまっ!?あっ…こんなところでナニを……ひゃんっ!///」


ゾンビ娘「私は別に構いませんけど…ぁっこんな所で…///  ハッ――」カァァ

ゾンビ娘「そうじゃなくて!!!何か言ってくださいよ賢者様!!!」///


カード「何度も言うけど、見た目だけなら百合なんだよな……」<●><●>じ~

魔王《同感だ……》<●><●>じ~



ゾンビ娘「意見の一致を見せてんじゃないですよ!!!この変態共!!!」

カード「それを言うなら、お前の上で背中を撫でている奴が一番の変態だと思うんだが」

魔王《我がやった時とは反応がえらい違いだ……》ギシギシ


カード「なんと奥さん!あの二人、同じベッドで夜を明かしたことがあるそうよ」コソコソ

魔王《おやまぁ…そうだったの? これだから最近の若い子は!》コソコソ


ゾンビ娘「誤解を生む言い方しないでください!!!血を貰っただけですよ!!!あぅっ!///」ビクッ



賢者「ん。見つけた」

ゾンビ娘「え……?」ゼェハァ

賢者「痛いかもしれないけど、我慢してね」スッ


ゾンビ娘「え!?///ちょっと!?私まだ心の準備が…!!///」

賢者「いくよ……」

ゾンビ娘「~~~~っっ///」







賢者「【真・ホイミ】」コォッ


ゾンビ娘「…………はれ?」

ゾンビ娘「ただの回復呪文……?」


賢者「ん~?どうしたんだい?ナニと勘違いしたんだい?」ケタケタ

ゾンビ娘「あぅ………///」プシュー


カード「なんだよ~」

魔王《……! まさか!!》


賢者「そろそろ来るから気をつけて」

ゾンビ娘「え…?」


              ――――ジュゥゥゥゥゥゥゥ

ゾンビ娘「うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

  突然、彼女の背中に刻印が現れ、赤く燃えるように光っている


ゾンビ娘「ああぁあぁあっぁ!!!あ゙あ゙あ゙っ!!?ああああああああああああああああああ!!!」


ゾンビ娘(何ですか……!?これ…っ背中が……あの時みたいに焼かれ…て………!!)


賢者「もう少しだけがんばって」ポォォォ

ゾンビ娘「あぐ……っは……む、りぃ………ッ」ジュゥゥゥゥ


カード「背中に一点集中でホイミ?何で……あっ……!」

魔王《背中の刻印を…消そうというのか!!》


賢者「そういうこと。だからもう少しだけ頑張って、メイリ」

ゾンビ娘「ぅぅぅぅ…!メ…イリって呼ぶなぁ……!!」



  ゾンビ娘の身体をゾンビ化させていた刻印の魔方陣には、【再生】と【死人】を意味する二つの式が刻まれている

 そのどちらも、焼印で背中に刻み込んだ魔方陣を彼女の発する魔力で起動させている。

  焼印はつまるところ火傷であるため、回復呪文で消すことが理論上可能である。
 しかし【再生】の式は、この焼印がある状態を健全と認識させる式を混ぜ込んであるため、
 回復をかけても刻印が消えないようになっている。


賢者「だから【死人】と、【再生】の認識部分だけをホイミで消してるんだよ」


魔王《だが、【再生】の式の再生力はどの回復呪文の回復量を上回る!消せるわけが無い!》

賢者「昔勇者が使わなかった?魔力さえあれば際限なく再生できる呪文を。
   それが真・ホイミ。加えて僕のこの無尽蔵の魔力」


賢者「これなら………刻印の力を凌駕できる……!」キリッ


ゾンビ娘「キリッ…じゃないですよ………ッ私の皮膚がグズグズになるじゃないですか……っ!」

賢者「グズグズになった細胞は、【再生】の式にまかせてるよ」


賢者「それじゃあ、一気に行くよ……」


             ――――ゴォォォォォ!!!

ゾンビ娘「~~~~~~っっ!!!」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


  ~少し前

賢者「というわけで開放してきます」ダッシュ


魔王《あ!待てゴルァ!!》【アルテマ】


ウィップ「あ、よいしょ~」【アルテマ・ウィップ】

               ――――ズガァァァァァァァァン


賢者「おお怖っ!!」タッタッタッ



  ~玉座


賢者「さて、どう見てもこれだよね」

冒険の書《その通りっすwww》

賢者「見たところ全部大理石で出来てるけど………お尻痛くならないのかなこれ…」

冒険の書《実際に座ってみたらwww三十分で痛くなったwww僧侶の胸みたいに綺麗な平らwww》


賢者「胸も壁だもんねー」

  <やかましいです!!さっさと解読しなさい!!


賢者「怒られちゃった…さ、解放しようか………」ソ…

          ――――リィィィィィィィン

  光り始めた玉座の傷に触れると、賢者の触れた文字が鎖に具現し、鈴の音と共に首に絡みついた

賢者「ちょっ待っ!聞いてないよ!?………あ…っ」グイッ


  鎖が文字に戻ると、賢者の身体が弛緩し、そのまま膝から崩れ落ちて動かなくなった


ゾンビ娘「ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!」

  音が小さくなっていく賢者の耳に、ゾンビ娘の悲鳴だけがしっかりと張り付いた………


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
   ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


賢者「…………………………」スゥ

  目を開くとそこは、何も無い真っ白な空間だけが広がっていた。
 そしてフードの付いた黒いローブを着る男が一人、空間の白さを際立たせるように立っている


  ~壱の狭間


黒い男「久しぶりだな………」

賢者「………だね。真・ホイミ以来かな? 案内人」



案内人「案内人ねぇ……ははっ間違いじゃないな」

賢者「初めに会った時に、呪文を集める道を指し示してくれたのがキミだったからね」


案内人「最初の助言だけでここまで来れたのはお前だけだぞ」

賢者「この旅に出たのも、僕が最初の一人じゃん」

案内人「まあ少しくらい誇張してもいいじゃねぇか」


賢者「うん。その見栄っ張りなところのおかげで、僕は旅に出ることに決めたからね。だから正解だよ」


案内人「そりゃあありがたい。ついでに今回も俺の思い通りになってくれれば嬉しいんだけどな」

賢者「………………思い通りの結果に導くのが案内人でしょ?」

案内人「実際は道を示すだけしかできないけどな。進むかどうかはお前次第。期待してもいいか?」

賢者「魅力的な道を案内してくれるならね」


案内人「いいだろう。だが俺は責任を一切取りませんよ、お客様」




案内人「たとえその道が、破滅に伸びていようとも………………」


賢者「……経験者が言うと重みが違うね」

案内人「この先を知ってるのか?」

賢者「想像の域を出ないけど、ある程度は。というか、その為に記憶と魔力を与えたんだろ?」


賢者「 勇者様 」


勇者「まあ……な」


賢者「最初にキミの記憶が入ってきたときは、気にも止めなかったよ」

勇者「魔王討伐後の旅の記憶だからな。どっちかって言うと、初めてここに来た時の方が印象に残ってるんじゃないか?」


賢者「突然白色しかない空間に連れて来られたらそりゃあね。
   キミの第一声が『よく来たな。俺の血族の娘よ』だったことにもビビったけど」

勇者「あれはしょうがない。女にしか見えないお前が悪い」


賢者「そんなこと言われ……っ!?」ミシリ…

  賢者の首に指の形をした模様が浮き上がり、少し首にめり込んだ


賢者「かは………っ  ハァ…ッ!ハァ……ッ!」

賢者「今のは一体……っ?」


勇者「お前の身体が攻撃を受けたんだろうな。ここには意識しか来れない。身体は向こうにあるままなんだ」

賢者「一瞬で離れたあたり、なんとかしてくれたんだろうね………」


賢者「でもたぶん時間が無い。今回僕を呼んだ理由を教えて」


勇者「僧侶を人間に戻す方法を教える為だ」

賢者「ゾンビ娘を娘にする方法……?」

勇者「ややこしいからゾンビ娘で統一しとけ」


勇者「知ってると思うが、俺が魔王討伐の後に旅に出た理由は僧侶を助けるためだ」

賢者「死んだと思ってたんじゃないの?」

勇者「初めは俺もそう思ってた」


勇者「だが、裏ボスでもいないかと思って、後日魔王城を探索してたら魔王の研究室を見つけた」

賢者「意外なきっかけで発見してた!」

勇者「そこには、ゾンビ娘についての実験結果が書かれていて、ゾンビとして今も生きていることを知った」

勇者「このゾンビ娘の背中に刻まれているらしい魔方陣と一緒にな」


勇者「魔導師にこの陣を見せたら、どこを潰せば人間に戻るかをあっさりと解いてくれたよ」

勇者「それがこの部分だ」

  勇者は空中に陣を浮かび上がらせ、該当の部分に色を付けた。


賢者「便利だね」

勇者「俺の空間だからな」


勇者「ゾンビ娘を人間化する方法は簡単。この部分だけに集中して真・ホイミをかけるだけだ」

賢者「どうやってその部分だけを見つければいい?あの刻印は暗闇の中でしか出てこない」

  記憶が正しければ、あの部屋はメラミやフレアのせいで明るくなっているはずだ


勇者「それは……あれだよ………触診で。刻印から微量の魔力が出てるから、直に触れば分かるはずだ」

賢者「変態のレッテルを貼られそうな方法なんだけど………」


勇者「大いなる偉業には、大いなる犠牲が付き物だ」キリッ


賢者「………時間も無さそうだし、甘んじて受け入れることにするよ…………」


勇者「そうそう、刻印の再生力との戦いになって魔力を相当消費すると思うから気をつけろよ」

賢者「………どのくらい?」


勇者「おそらく魔王40体分」

賢者「」


勇者「がんばれ。あとこれは呪文解放のボーナスだ。魔力と記憶。いくらかマシになるだろ」

  勇者の両手から光る玉を渡される。

賢者「うん………がんばるよ………」


          ――――ザァァァァァァァァ

  白い空間がはらはらと崩れ始めた。ようやく戻れるらしい。賢者は光る玉を抱えたまま勇者に問う

賢者「あ、そういえば。どうしてキミは自分でゾンビ娘を助けずに、わざわざ僕に彼女を探させたんだい?」


勇者「それもその記憶を見ればわかる。俺が女神に喧嘩を売った理由もな」

賢者(それ本当だったんだ………)


勇者「…………賢者」

賢者「何だい?」


勇者「…………後はまかせたぜ!」ニッ

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
   ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


  ~魔王城 ―玉座―


賢者「《時の流れは遡れない。抗う危険も代償も、何も知らぬ純心だったからこそ、私は突き進めた》」

賢者「《待ち受ける現実を知らずに……【    】…………》」


賢者「あの馬鹿………………」

  勇者の顔を思い浮かべながら、銃を持つ手に力を込めた


  目の前では、女騎士の魂が消えていく…

「「…後は………まかせたぜ……賢者…」」


賢者「うん……」


  彼はありったけの魔力と覚悟を込めて引き金を引いた


               ―【雷角ノ神弾・発動限界】―



  閃光が魔王を貫き、絶望を映し出す夜空を照らした。

 銃口から魔力の残滓が漂う暁の空の下、朝日が彼らの影を伸ばし、ゾンビ娘の涙を輝かせた




賢者「まかされた……!」


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


賢者「ふぅ…っ!」

カード「……どうなったんだ………?」

  賢者の下には、ぐったりしたゾンビ娘がうつ伏せで倒れている。その背中の刻印は………


    「……ぅ……ん………」ピクッ

賢者「気分はどうだい?ゾンビ娘………いや、メイリ♪」

ゾンビ娘「………重いので私のおしりからどいてください」


  ゾンビ娘のゾンビ化の呪いが解けた!▼


カード「いや、名前そのままかよ」

賢者「一応今の名前だからね。このままで通すよ」


ゾンビ娘「だからどいてくださいよ!!重いんですってば!!」ジタバタ

賢者「小さいから安定感は無いけど、やわらかいからなかなか座り心地いいんだよね」ツンツンムニムニ


ゾンビ娘「……………」つダガー チャキッ

賢者「大丈夫かい?立てる?」ヒュバッ

ゾンビ娘「…ハァ……」


ゾンビ娘「レイズでいじれなくなったら、今度はセクハラですか……」


賢者「ゾンビ娘にとってはセクハラなんだ~?」

ゾンビ娘「………別に賢者様なら……ゴニョゴニョ」


カード「はいはい、ご馳走様」


              ――――パキィィィン

魔王《……………。》ゴゴゴゴゴゴ……


  自力で鎖を解いた魔王に、銃口を向けながら問いかける

賢者「まだ何か?」チャッ

魔王《……あの魔方陣は解読ができないように古代文字を使って組み立て、二つの式を複雑に絡み合わせた……》


魔王《どうやって【死人】と認識の魔術式だけを見つけた………?》ゴォォォォ

  魔王の右手には、魔力が渦巻いている


賢者「教えてもらったんだよ」クッ

  賢者はトリガーに指をかけ、力を込める……


魔王《誰にだ……》ズオォォォォ



賢者「かつてキミを倒した者に」


魔王《【アルテマ】!!》

賢者「―【雷角ノ神弾】―!!」


           ――――ジジ…ッリィン

  賢者の放った銃弾は凶球を打ち抜き、魔王の掲げた右腕を貫いた

魔王《ぐぅぅ……!》

賢者「まあ余裕で打ち抜けるけどね」フッ


魔王《この威力は一体………!?》

賢者「ライデインとアポカリプス。2つの呪文を1つの弾丸にまとめただけだよ」


魔王《女神の雷と勇者の破壊呪文………通りで魂まで響く一撃だった訳だ》

賢者「キミは女神の雷でしか魂を滅せないって勇者から聞いたからね………」



賢者「今度はバックアップも残せないくらい、存在ごと消し去ってあげるよ」ニコォ…


カード「あかん。どっちが魔王か分からないような顔してる!」

ゾンビ娘「絶対賢者様が魔王です……ってそんなこと言ってる場合じゃありません!」


ゾンビ娘「賢者様!今加勢しま……っ!?」ガクン

カード「ゾンビ娘!?」

ゾンビ娘「あれ……?力が入りません………」グググ…

賢者「【再生】の式がほとんどの血中魔力を吸っちゃったからね。しばらくは貧血気味だと思うよ」


ゾンビ娘「そんな……」

カード「なら俺が……!」

賢者「魔力すっからかんなんだからじっとしときなよ」

ゾンビ娘「でも……っ!」

賢者「もうコイツのHPはほとんど残ってないから大丈夫。勇者と女騎士からも頼まれたし……それに…」






賢者「主人公なのに置き物なんて言われてたら悔しいもん!」

ゾンビ娘「それが本音ですか」



賢者「というわけで、ここからは僕一人が相手だよ♪」チャキッ

  声色は明るいままだが、賢者の顔にはドス黒い影が張り付いたままである

魔王《……あの娘を解呪したせいで貴様も魔力をほとんど失っておるだろう
    いくら貴様の銃弾が強大であろうとも、残り少ない弾数でどうにかできるのか?
    それに貴様の身体能力は圧倒的に低い。それでもやるというのか?》


賢者「まあ、試してみなよ…………僕は一発も食らわないからさ」

魔王《ほざくな……!!》【エアロガ】【はやぶさ斬り】

  刀身が半分になったサーベルで、賢者に攻撃をしかける。
 万が一逃げられないよう、全方位に風の刃を配置しながら………


             ――――トゥルンッ
  MISS!ダメージを与えられない!▼

魔王《避けた……だと……?》

賢者「食らわないっていったじゃん?」

魔王《………っ!!》【アルテマ】

  賢者に魔力を放ち、広範囲に爆発させる。あの身体能力なら、逃げることは出来ないはずだ……


賢者「当たらないってば……」ヒョイッ

魔王《!?もはやどうやって避けているのだ!?》


賢者「回避中の無敵判定を利用しております」

魔王《もう人間やめろ!貴様!!》


賢者「まあまあ。意識不明の状態から復活した主人公は無敵ってことだよ」

魔王《言い返せないのは何故だろうか……!》


賢者「それにね………僕は怒ってるって言っただろう……?」ギロ…

魔王《………っ》ゾクッ


ゾンビ娘「………ガチギレしてる顔ですよね……あれ」

カード「ああ…一昨日お前が『さあ、答(ry』を蒸し返したときになった顔だな……」

ゾンビ娘「あの時は地獄でしたね………」

カード「誰であろうと無差別で攻撃対象にしたからな」


ゾンビ娘「今にして思えば魔王に殺された時よりも、あの時の賢者様のねちっこい拷問の方が苦しかったですね」

カード「参戦しなくて正解だわ………加勢したら巻き添えを食らってたかも……」

ゾンビ娘「あの仕打ちを一人で受ける魔王がかわいそうになってきました」


賢者「―【静電弾・三点撃】―」バンッ


ゾンビ娘「に゙ゃっ!!?」バチッ

ゾンビ娘「なんで!?」


賢者「ゾンビ娘を泣かしていいのは僕だけだ………!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王《ぬぅぅ……!?》ゾワァァ…


カード「怒ってるのはそこなのか!?」

トリの付け方教えてもらったので変わりましたが>>1です


             ――――チュンチュン

  いつのまにか太陽は完全に姿を現し、空の闇を祓っていた

賢者「ふ……っ!」ダッ

  賢者は駆け出し、二回続けて撃った

魔王《向かってくるか……!》ボォッ

魔王《【メラ】!!!》

  並外れた身体能力を持った魔王には、不意打ちでしか当たらないのだろうか。
 魔王は前進しながら雷撃をかわし、火炎を横薙ぎに広げながら放った。



賢者「やると思った……!」ズザザザ

魔王《何……っ!?》

  賢者はスライディングでこれをかわし、魔王の懐へと潜り込む。
 至近距離で打ち出した銃弾を、魔王は賢者ごと飛び越え、ギリギリで回避することに成功する


賢者「白のリボン付き……あの大雑把な性格の女騎士にしてはなかなか………」

魔王《何を見ておる!》バッ


賢者「一応女の身体なんだから慎みを持ちな……よっ!!」ズガンッ

  魔王がノリで下半身を押さえた隙に飛び起き、身体を反転させながら撃ち出した




ゾンビ娘「………………チッ」

カード「こっちも何故かキレたんだけど!?どこにいてもとばっちり食らいそう!俺もう帰りたい!!」


賢者「ふ……っ」ズガガンッ

  刀を抜刀するように銃を水平に振りながら二発撃ち出す。片方はカードの前髪を掠めた

カード「俺……何かしましたっけ……?」チリチリ



  しかし、もう一方の銃弾は大きくそれ、魔王のはるか頭上を通過した

魔王《くくく、どこを狙っておる!!!》ダッ

賢者「結構頑張ってるつもりなんだけどねっ!!」

魔王《我に毒を与えたあの腕前はどこに行った!!》【アルテマ】【アルテマ】


賢者「……!」

  連続で放った熱エネルギーの塊が、時間差で炸裂した!
              ――――ガカッ


魔王《時間差で発動させれば、貴様の無敵時間も……!!》


              ――――リィィィィィィン
賢者「その呪文なら打ち抜けるってこと忘れてない?」

  銃口から揺らめく煙を吹き消しながら、賢者は続ける


賢者「まあここでもし食らってたら、また新しいネタにされちゃうだろうからね……」チラッ

ゾンビ娘「ギクッ」

カード「あれだけやられといてまだからかうつもりだったのか……」




賢者「んー。避けれるのはいいけど、こっちの攻撃が当たらないのはちょっと面倒だな……」


賢者「あ、そうそう。これは龍の国で知った言葉なんだけどね……」



賢者「『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる♪』」ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


  魔王の視界を黄色い弾幕が埋め尽くした



魔王《くっ……【ピオリム】!》:素早さ上昇

              ――――ヒュバババババ

  呪文で素早さを上げ、弾丸の間を縫うようにして賢者に近づく。
 そして弾幕が一番薄い左側に回り、渾身の力で賢者を斬りつける

魔王《【クライムハザード】》ゴッ


  しかし、賢者は剣の軌跡の上にはいない。
 横薙ぎに放つ斬撃をしゃがんで回避し、銃を魔王の腹部に押し付けている

賢者「チェックメイト」ゴリッ



魔王《き、貴様……!貴様の身体能力では、避けることはおろか視認することすら出来ないはずだ!!》

  何回も余裕で回避を続けてきたことが、信じられないというような顔をしている
 いや、どちらかというと賢者は攻撃を繰り出す前から回避行動を取っていた。それが意味するところとは……


魔王《未来予知……!》

賢者「う~ん……若干違うけど、完封できるってあたり似たようなものかな……」


賢者「どの道勇者の呪文だし」カチンッ

  賢者は引き金を引いた。



賢者「―【蓄雷弾・発動限界】―」バチンッ


魔王《ぐ……っ!こ、これは………!》

  まずい……!この状態で雷角ノ神弾を撃たれたら……!!

 魔王はすぐさま距離を取った


賢者「ふふん♪」クルクル

  賢者は追撃をせず、銃をクルクルと回して遊んでいる。その笑顔は相変わらずどす黒い。



魔王《貴様……なぜ追撃をしない…?》ジリ…


賢者「だって………」クルクル…



賢者「もう詰んでるし」パシッ

  賢者が銃を構えた瞬間、魔王は互いの影がそれぞれの真下に移動していることに気がついた

魔王《………!!》バッ



  見上げた空は、光で埋め尽くされていた。

魔王《落……雷弾………!!》


  その数は以前の5を超え、30ほど

賢者「言ったでしょ?チェックメイトだって」

魔王《いつの間に……!》

賢者「キミが避けた弾全部が落雷弾だよ」

魔王《な……っ!?》


賢者「撃った弾の音が、ズガンだったことに気がついた?」



ゾンビ娘「そう言えば神弾の音は鈴っぽいリィィンでしたね」

カード「遠くから見てた俺達はよくわかったけどな」


魔王《ま、待て!!》

賢者「ん~?」:チャージ中

魔王《もう二度と魔王として君臨しないことを誓おう!》


賢者「それは命乞いってことかい?」:80%

魔王《ぐぬ……ああそうだ!!》



賢者「どうせ大魔王とか竜王とか肩書きを変えてやって来そうだから却下♪」:96%

魔王《ぬぅぅ!?》ギクゥッ

魔王《ならば世界の半分を貴様にやろう!それでどうだ!?》

賢者「別にいらない♪」:120%





賢者「ゾンビ娘に手を上げた時点で、お前は終わってたんだよ」

  賢者は魔王の頭上へと銃弾を放った




       ――――リィィィィン……リィィィィィン……リィィィィィィィィィィィン

  雷角ノ神弾が雷の球体にぶつかり、鈴の音が伝播していく

 やがて全ての落雷が共鳴を始めた


賢者「落ちろ………」



賢者「―【 雷 神 弾 】―!!!」



  数十の落雷が一振りの剣となり、硝子が爆ぜるような甲高い音と共に魔王城を貫いた




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::





ゾンビ娘「………ん……ぁ…」

  閃光で白くなっていた視界に、色が付き始めた

ゾンビ娘「賢者……様……?」

  床に開いた大きな穴の前で立っていたのは、賢者ただ一人

カード「やった……のか……?」


賢者「うん………終わったよ」



ゾンビ娘「本当に……?」

  その問いに、賢者はやさしく微笑んで答える

賢者「本当に」ニコッ


カード「本当の本当に?」

賢者「そんなに言うなら自分の目で確かめなよ」ツーン

カード「あれ!?俺には冷たい!」



  落雷で開けた大きな穴は全ての階層を貫き、岩盤まで抉っていた
 賢者の魔力の残滓が最下層を照らし、闇に隠れるもの全てを暴いているが、そこに魔王の姿は無い

カード「本当に……やったんだな………」

賢者「うん………」


ゾンビ娘「賢者様―――!!!」ダキッ

賢者「うわっ!?」フラッ

カード「あ!おい!!」


  ゾンビ娘が背中から抱きついたせいで体勢を崩した賢者は、そのまま二人仲良く穴に落ちた




カード「馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ

賢者「く………っ!」ガシッ

  咄嗟に伸ばしたカードの腕を掴み、なんとか落ちなかった


ゾンビ娘「やりましたね賢者様……!」ギュゥゥゥ

賢者「下を見なよ食いしん坊のカニバ娘………」

ゾンビ娘「え………?」チラッ


ゾンビ娘「はわわわわわわわわわ……」ガクブル



ゾンビ娘「絶対に離さないでくださいね!?賢者様!!」

賢者「…………」プルプル……

カード「おいどうした………?」

賢者「ごめん……」



賢者「もう魔力ほとんど無くて……力が入らない……」ズルッ

  カードの手から、賢者の手が滑り落ちた



ゾンビ娘「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

カード「賢者――――!!!」


賢者「マジで……?せっかく魔王倒したのにこんなんで死ぬの?」

ゾンビ娘「結構冷静ですねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

賢者「元はといえば君のせいだからね!!?」


  言い合いをしている間にも、4F、3Fと階を落としていく


賢者「絶対あの世でいじめまくるからね!?」

ゾンビ娘「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



              ――――ウワアアアアアアアアアアアア



    「  お手  」

   「わうっ!!」

              ――――カチャン

ゾンビ娘「むぎゅっ!?」
賢者「うわっ!?」

  二人は突然出てきた大きな手にキャッチされた



賢者「いててて……ん?」


  その手の持ち主は……

骨っ子「アブナカッタネ!」「賢者様!」「ごしゅじん!」

ゾンビ娘「骨っ子!?」


ウィップ「ギリギリセ~フってやつだね~」

賢者「ウィップ!」



ゾンビ娘「無事だったんだね!よかったぁ~」ダキッ

骨っ子 キュ~ン


賢者「いつの間に一階に……僕が目を覚ました時はまだ気絶してたよね……」

ウィップ「いや~賢者が魔王と戦ってた時に起きたんだけどね~
      何か処刑用BGMが聞こえた気がしたから~骨っ子を助けに行ったんだ~」

賢者「それは幻聴だよ……頭から血を出しすぎたみたいだね……」

ウィップ「ありぃ~?」ダラダラ



 <お~い!賢者~!!何があったー!無事かー?

賢者「うん!みんな無事だよ!!カードも降りてきなよー!!」


 <えー?何だっ…… ガラッ てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?



              え」
            え
          え
 lll      え
カード「ぇえ


ウィップ「そりゃ~」【キャッチ】

カード「ぐえっ」



カード「ちょ…っ!?ウィップいつの間に!?ていうかいばらの鞭はあだだだだだだだだ!!!」ギシギシ


賢者「とりあえずみんな無事……」


             ――――ゴゴゴゴゴゴ……

  突然城が震え始めた。

ゾンビ娘「な、なんですかこれ!?」

カード「あ~中心の地盤を抉ったからな……そりゃ崩れるわ……」

ウィップ「てことは~」

骨っ子 ツマリー?


賢者「 脱 出 開 始 !!!」ダッ



骨っ子「みんな!」「ボクノ」「背中に乗って!!」

賢者「骨っ子!頼んだよ!」

骨っ子「「まかせとけ!!」」ダダッダダッダダッ


  <ギャオオオオオオオオオオオ!!!

ゾンビ娘「 ! 後続から魔物の残党が来ます!」

カード「おらぁ!!」ブンッ

ウィップ「おら~」ヒュッ



  後ろから追ってくるモンスターを氷柱や鞭で退けつつ出口を目指す
 そこかしこに落下してくる天井の破片を避けながら、骨っ子は最速を保って走った

  召喚士の亡骸を通り過ぎ、迷路のように入り組んだ廊下を抜け、ドラゴンや骨の残骸が残る庭園までやってきた。


ウィップ「見えた~」

カード「あの橋を渡れば……!!」

骨っ子「わうううう!!!」ダダダダダ

                ――――ビキッ



  橋に踏み込んだ瞬間橋に亀裂が入り、崩れ始めた

骨っ子「わう!?」ガクンッ


ゾンビ娘「あ………」

賢者「ゾンビ娘!!」バッ


  咄嗟に骨っ子が崩れていく橋の破片を蹴って、飛び越えようとしたためにゾンビ娘が振り落とされてしまった
 助けようとして手を伸ばした賢者も振り落とされた。



カード「賢者!!」

賢者「そのまま行って!!」

  賢者は空中でゾンビ娘を抱きかかえながら叫んだ。


ゾンビ娘「くぅ…っ」
賢者「ぐっ……!」ゴッ

  二人は橋の手前に落下し、抱き合ったまま転がった。



ゾンビ娘「う…ぁ………」フラ…

賢者「大丈夫かい?」

ゾンビ娘「はい……っでも……!」

  橋を渡りきったカードたちは、対岸でこちらを助けようと慌てている


ゾンビ娘「ごめんなさい……!私が落ちたばっかりに……!」

賢者「言っても仕方ないよ。どうにかして渡らないと……」ツ…



ゾンビ娘「賢者様!血が……」ソ…

賢者「ん?ああ…さっき頭打っちゃったからかな……心配いらないよ」

ゾンビ娘(でも…こんなにべったりと血が……)

  反射的に賢者の頬に添えた彼女の右手は、血でべったりと汚れている


ゾンビ娘(はやく血を止めないと……!)


                ――――ゴゴゴゴゴゴ


  そうこうしている内に城が本格的に崩れ始めた。

                ――――ガラッ

ゾンビ娘「 ! 」

  二人の頭上に、巨大な最上階の破片が降ってきている。


ゾンビ娘「このままじゃ二人とも………!」


  彼女は助かる方法を考え、そして導き出した。

ゾンビ娘(このダガーで人為トランスして、賢者様を抱えて向こう岸に跳ぶ……!)ギリッ

  それは自己犠牲の上に成り立つ方法だった。



ゾンビ娘(さっきの人為トランスのせいで私の魔力はほぼ0です……
      トランスできても、おそらく一瞬しか維持できない………!)

ゾンビ娘(そして、魔力を使い切って……死ぬ………)




  彼女はこの一瞬で覚悟を決め、ダガーを握り締めた






ゾンビ娘「賢者様……大好きですよ……」ヒュッ


               ――――ガシュ……ッ!!



賢者「へぇ……そうなんだ……」



ゾンビ娘「え……」

  賢者はダガーの刀身を掴んで止め、


ゾンビ娘「賢者様!!離してくださ……んむ!?」




  うるさい口を、唇で塞いだ


ゾンビ娘「はっ  なっ何を……!!///」


賢者「【レイズ】」

  ゾンビ娘には効果が無いようだ……▼

ゾンビ娘「何で……」

賢者「…………またね」グイッ

ゾンビ娘「え………!?」グンッ


  賢者はゾンビ娘を谷に投げた



  谷の半ばほどまで飛ばされたゾンビ娘をウィップの鞭が絡め取る

ゾンビ娘「賢者様……!!」

  いばらが刺さった痛みなど無視して、彼女は大好きな人の名を叫んだ
 対岸にいるその人は、笑顔で手を振っている


ゾンビ娘「賢……」

  彼女の目の前で、賢者は巨大な瓦礫に押しつぶされた

ゾンビ娘「賢者様――――――――!!!」

  その慟哭は、崩落する魔王城の断末魔にかき消され、誰にも届くことは無かった……


ゾンビ娘「あああっ!!」

カード「待て!城が完全に崩れた時の衝撃を舐めるな!いいから離れるぞ!!」

ゾンビ娘「でも…っ!賢者様が………!!」

カード「もう無理だ!!早く逃げるぞ!!」ギリッ


ゾンビ娘「嫌です!!あの人が死ぬはずが……!」

ウィップ「ふ…っ!」トン…

ゾンビ娘「あ………」ドサッ

ウィップ「さ、行こう。翼持ちのモンスターがたくさん出てきてる」

カード「ああ……」


  彼女は骨っ子に乗せられ、無理やり魔王城を後にすることになった

カード「賢者………ッ」ダッ



  ――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


  すべてが静まった満月の静寂に、ガラガラと何かが崩れる音がする

賢者「ぅ……あ………」カラ…

  瓦礫の中から、賢者が這い出てきた

賢者「はぁ……なかなかしぶといね…僕も……」



賢者「運よく瓦礫を避けて、運よく瓦礫の隙間に入り込み、運よく潰されずに生きてる………」

賢者「運のよさ999ってどんなステータスだよ……」


  すべてが無くなった城跡に、答える者はいない

賢者「この世界に、勇者の血は……もう必要ないだろう?」

賢者「勇者、キミも本当はそれを望んでいるだろう?まだ何か……僕に背負わせるのか…?」




            ――――ギャォォォォォォォォォォ

  音を立てるのもはばかられるほどの静寂を、容赦なく破壊する竜の咆哮。
 カラカラパキパキと瓦礫を踏み潰し、賢者の後ろ側から近づいてくる足音。

賢者「…………僕も大概だけど、キミもしぶといね」


賢者「魔王」


  満月を覆い隠すほど巨大な黒竜が、そこにはいた



 グルルルルルルルルル……

賢者「魂ごと消し去ったはずなのにな~」

  魔王は黒い竜の姿をしているが、どこか不安定にゆらめき、若干満月の光を透過しているようにも見える


 グルルルルルルルゥァア

賢者「そっか……魔力だけの存在か………しし神様的なあれかと思ったよ」

 ルオォォォォォォォォォォ!!!

賢者「そんなに女神が憎いの……」



賢者「まだ魔王が暴れてるってことを、世界中の誰も知らないだろうね。まさに臥竜ってやつだ」

 グルァア!!!

賢者「キミは放っておいてもそのうち魔力を使い切って消えるだろう……
    それでも、国の一つや二つは滅ぼせる力を残しているみたいだけど」

             ――――ゴトンッ

賢者「僕が生きていたわけはそういうことか………」

             ――――ガチャチャッ
賢者「今度こそキミを……その憎悪ごと消し去ってあげる」

  賢者は銃のシリンダーを捨て、予備のシリンダーと交換した



 グルァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

  黒竜は輪郭の曖昧な口を裂きながら突進するも、賢者は照準を合わせたまま動かない。
 銃を構えた左腕全てを口に中に突っ込ませるほど引き付け、引き金を引いた。


 ギャァァァァァァァァァァァァ

  ゴプッという音と共に竜の背中が打ち抜かれ、闇色の魔力を吹き出した。黒竜は痛みに悶え、のけぞるように後退する。

賢者「魔力なのに痛みはあるのかい?女神の雷が持つ退魔の力がそうさせるのかな」


 ギャオォォォォォォォォォォ!!!

  黒竜は怒りの咆哮によって、それに答えた



賢者(僕の魔力はもうスッカラカンだ。残った攻撃手段は、予備弾倉に込めておいた雷角ノ神弾12発分)

賢者(残りの弾数は………この弾倉に5発と、もう一つの弾倉に6…)


賢者「実際心もとない……。頼みの綱は勇者の最後の呪文だけど、あれはあんまり使いたくない……」


  これは互いに限りある力を消費しながらの戦いだ。相手を弱めれば弱めるほど、自らも『死』に近づく。
 先の戦いで死を経験した彼は、その恐怖で足を震わせている。

  こんなとき、戦場に赴く兵なら煙草の煙と一緒に家族の顔を浮かべながら覚悟を決めるのだろうか。
 そんなことを考えながら、彼は臆病な足を叩いて激励する。

  さあ―――


賢者「さっさと倒して、ゾンビみたいな顔で呆けている彼女をレイズしに行こう!」



 グォォォォォォォォ!!

  重量の違いすぎる化け物の突進を食らえば、馬車に轢かれた子猫のような無残な死体が転がることだろう。
 しかし、賢者は逆に駆け寄り、メラをかわしたようにその足元に滑り込んで、土手腹に打ち込んだ。

  黒竜は痛みを無視し、足元を通り過ぎた賢者に太く長い尻尾を叩きつける。賢者はこれも横に転がって回避。


 グオァ…?

  だが、ここでひとつ不可解なことがある。
 賢者は呪文解放後、魔王の攻撃を全て回避または相殺していた。それも、攻撃の予備動作に入る前に。



賢者「気になるかい?攻撃がことごとくかわされる理由が」


  魔王が未来予知と予想し、賢者は勇者の呪文だと言ったこの現象。

賢者「勇者の遺した最期の呪文。いや、呪文って言うとおかしいかな。魔力を使わず、僕が死んだら勝手に発動するし」


賢者「この呪文は……」

                ――――ガシュッ
  賢者が言い切る前に、黒竜は彼を飲み込んだ。つもりでいた。



賢者「最後まで言わせてよ」

  賢者は何故か黒竜の眉間に足を乗せ、偉そうに魔王を見下ろしていた。

 魔王はその巨体を転がし、賢者を振り落とそうとするも、彼はまたもや先に飛び降りている。


賢者「この世は選択肢、分岐点の連続で成り立っている。時間という川が枝のように分かれていると考えるのがいいかな」

賢者「この呪文は自分が選んだ最期の分岐点に戻り、自分が進んだ流れを止め、別のルートに進む。未来を変える呪文だ」



賢者「勇者はこれを、【リセット】と呼んでいた」


賢者「勇者はこれを、【リセット】と呼んでいた」




賢者「僕が望まない方法で死ぬと、自動で死んだ要因の分岐点まで戻される」

賢者「生き返れるとはいっても、一度は死ぬ。それが怖いんだ。それに、未来を変える代償も払わなきゃいけない」


賢者「代償は消えた未来の時間の分、自らの魂の寿命を減らすことだ」チャキッ



            ――――リリリィィィィィィィン

  賢者は起き上がろうとしていた黒竜に連続で撃ち込み、脚、尾、片目を吹き飛ばす。
 魔力の塊であるためにすぐに形だけは修復されるが、少しずつ魔力を失い、身体は小さくなってきている。

賢者「ここで、魔王と勇者の戦いを終わらせよう」


  魔物すら逃げ去り、魂ある生き物は賢者だけになったこの地に響くのは、
 冷たい叫びと鈴の福音、そして役目を終えた城を破壊する乾いた音だけだった……




賢者「はぁ……はぁ……っ!」

  どれ位の時が経っただろうか。どれほどの代償を払っただろうか。
 数え切れない死の分岐を越え、彼は立ち尽くす。ふと振り返れば朝日がのぞいている。

  黒竜はつい先ほど霧散して、賢者の光り輝く魔力の残滓と共に辺りに黒白の霧を作り出し、
 彼の右手に握られた銃は、残り一発を残して熱気を放っていた。



賢者「ははは……朝日二回目……」

  朝日が目に沁みて、涙が景色を滲ませた。


          ――――ブチッ

  滲んだ視界の左側に、黒い何かが映り込んだ。
 痛みに顔をしかめた為に涙が零れ、視界が少しクリアになる。

  その視界に映ったものは、賢者の左腕を食いちぎった黒竜の首だった。



  黒竜は今度こそ霧散し、黒い霧すら残さず消え去った………
 
賢者「しし神じゃなくて山犬のほうなのね……」

  いつもの軽口も、どこか力ない印象を受ける。


賢者「………この傷じゃああんまり長くは持たないかな……ははは」

  食いちぎられた左肩の傷口からボタボタと血を垂れ流しにしながら、賢者は笑う


賢者「まあいっか……僕もう眠いし………」フラッ


                ――――チリィン

  どこからか澄んだ音がする。鈴というよりはむしろ、風鈴のような音。

賢者「…………?」

  音の出所を探し、賢者は辺りを見回した。そして見つけた……


賢者「玉座…………」

  何かを伝えるように、玉座の傷から音が鳴る。

賢者「そっか……ここで僕の役目も終わりか………」



  賢者は玉座に腰掛け、オレンジ色の空を仰いだ。

賢者「本当に硬い……ゾンビ娘のお尻の方が座りやすいな………」

  玉座が赤に染まっていき、反対に賢者の意識は白くなり始めている。


賢者「ははっ……玉座に座って最期を迎えるってのも、悪くないね…」ゴリ…

  銃口をこめかみに押し付け、彼は笑う



  震える指で撃鉄を引き、弾倉を回転させる。
 冷たく、感覚がなくなってきた指で引き金に力を込める。どのくらい押し込んだかさえ分からない。

 ただ、カチカチと銃口が震えていることは分かった。


  永遠にも思える時間の中で、彼は東をじっと見ていた。その方向に、みんながいる気がして…


           ――――リィィィィィン……

  賢者の意識は女神の福音と共に消えた

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  ――――――――――――――――――――――――――――



 ――――――――――――――――――――――――――――

  ~時計塔の街 ―時計塔展望台―


少年「それで、その後はどうなったの?」

???「うん。魔王を倒したってことは瞬く間に広まってね。世界中でお祭り騒ぎさ」


少年「違うよ!そっちじゃなくて、その……人間になったゾンビのお姉ちゃんはどうなったの?」

???「………ええっとね……彼女はしばらくの間、放心状態だったんだ」

???「何も話さず、何も食べないで、ずっと西を見つめ続けたんだ。1年間ずっと」


少年「一年間!?」

???「そう。彼女は人間になったけど、【再生】だけになってパワーアップした刻印のせいで、死ななかったんだ」

???「それどころか……歳も取らなかった」

少年「そ、それで…?」ゴクリ…

???「城跡からは、賢者の遺体は発見されなかった」

???「だからだろうかね?彼女が賢者を探し始めたのは」


???「彼女は1年後に、突然旅を始めたんだよ。これまでの旅を辿ってね」

???「ずっとずっと歩いて、3年後に彼女はこの街にやってきた。
     そして、シチューのあの店に行ったんだ」

少年「それってもしかして……」

???「うん。キミのひいおじいさんのお店だよ」


???「彼女は店主達となんてことはない普通の会話をして、ご飯をご馳走になったんだ。
     あ、でも、旅の間に赤ん坊が生まれてたみたいでね。かわいい女の子だったって」

???「そして彼女は、また歩いて旅を続けたんだ。森を越え、朱実の街へ。砂漠を越え、港街へ。
     ここまでの道のりでまた1年。なにせ、ゾンビですらない女の子の足だし、路銀も稼がないといけないからね」



???「ある日、風の噂でカードとウィップが国を建てたことを知ったんだ」

少年「え?それって……」

???「正確には乗っ取ったってところなんだけどね。
     どうやら故郷の国の王子がとんでもないチンカス野郎だったらしくて、国民がキレたんだって」

少年「その時にリーダーとして国民を率いたのが、その二人だったんだね」


???「そうだよ。よく知ってるね」

少年「自分の国のことくらい知ってるよ!」


???「その結果、彼らはようやく家族になって、国の為に尽くしているらしい」



少年「ゾンビの子はどうしたの?二人に会いに行ったの?そういえばわんちゃんは?」

???「ううん、行かなかった。相棒の骨っ子は、二人が預かってくれて大事に育ててくれているよ」

???「彼女は二人に会いに行くことよりも、賢者の面影を探して旅をすることを優先したんだ」


少年「どうして?」

???「さあ?彼女自身に聞いてみないと分からないよ」クスクス



???「そしてゾンビ娘は、港町に住むおじいさんから小さな手漕ぎボートを譲り受け、いざ大海原へ」

少年「手漕ぎボートで……?」

???「手漕ぎボートで」コクン


???「案の定時化は酷いわ揺れが半端無くて酔うわ、おまけにオールを失くして大変な目に……」

少年「馬鹿じゃないの?」

???「僕もそう思う」



???「彼女は賢者と旅したときと同じ航路で進んで、生まれ故郷の龍の国へ」

???「ちょうどお祭りをしていてね。今度は賢者を祀ってたんだってさ。設定は僧侶の子孫らしいよ」クスクス


???「形抜きの出店もあったからチャレンジしてみたけど、彼女には難しかったみたい。
     林檎の形抜きを何度もやっても、何故かバハムートの形にしかならなかったらしい」

???「形抜屋のおじさんは、どこか寂しそうな顔をしていたよ………」



???「魔王の作ったクレーターは湖になって、カップル達の憩いの場になっていていた反吐が出るね☆」


???「女将さんの旅館は盛況で、お二人も元気にしていたよ。ウィップがおつかいから帰って来ないのを心配してたけど」

少年「まだおつかい終わってなかったんだ……」

???「魔王の首は消し炭どころか、消し去ったもんね」


少年「でもそのカレーを食べてみたかった」

???「僕も



???「………そして、数々の賢者との思い出の地を巡り、彼女は魔王城跡地にたどり着いた」


???「魔王城は瓦礫一つ残さず消え去っていて、代わりにリコリスの花が一面に咲き誇っていた」

???「『悲しい思い出』、『遠い思い出』………リコリスの花言葉だよ」


???「過去に何事も無かったかのような平和な花畑を見て、彼女は初めて涙を零したんだ。


  ――ゾンビ娘「私を泣かせていいのは……賢者様だけでしたね………」

     ただそれだけをつぶやいて、彼女はその場を後にした」


???「それからの彼女は、亡霊のように世界中を彷徨い、賢者の面影を探し続け……」


???「気がつけば、既に人生が一度終わるほどの時間が流れていた」

???「彼女がゾンビになったあの日から、ちょうど280年」


???「彼女はまだ彷徨い続けているかもしれない。僕のように語り歩く吟遊詩人としてどこかの街にいるのかも……」



???「もしかしたら、物知りな僕でも聞いたことが無い、彼のストーリーも………」



???「はい。これでゾンビの女の子のお話はお終いだよ」スクッ

少年「え~ハッピーエンドじゃないの~?」

???「こんなお話もあるから、ハッピーエンドがもっと幸せになるんだよ」パンパン

少年「ふ~ん……」スクッ

???「あ、ちゃんとお尻の砂を落としなよ?」

少年「うん」パンパン



???「今は僕がいるからいいけど、小さい子は柵をくぐれちゃうから危ないってことで、
     本当はキミ一人でここに来るのは駄目なんだよ?」ギシッ

少年「それを言うなら、大人だって柵に腰をかけるのは駄目なんだよ?」

???「あはは、まあいいじゃない。これ結構楽なんだ」

少年「むぅ………」



???「………実はね、話してなかったことが、もうちょっとあるんだ」


少年「?」

???「彼女は魔王を倒した一人として、世界的な有名人だったんだけど、
     その旅を口伝書にしようとカード、ウィップ、骨っ子、そしてゾンビ娘から話を聞いた吟遊詩人がいたんだ」

???「彼は決まって賢者との思い出を中心に話を聞いたんだけど、彼女は初めに何て答えたと思う?」

少年「んーん。分かんない」


???「彼女は………私は、こう答えたんです…………」フラッ

少年「旅人のおねえちゃん!?」





    ゴーン‐―‐―――――ゴーン‐―‐―――――

      ゾンビ娘「レイズされました。死にたいです。ってね………」

              ゴーン‐―‐―――――ゴーン‐―‐―――――



  鐘が鳴り響く時計塔から落ちながら、私は目を閉じました。
 ふと香ったリコリスの香りは、きっとお花屋さんからするのでしょう……


  リコリスの花言葉は『悲しい思い出』、『遠い思い出』、そして……『再会』………

  もう一度あなたに会えるのなら、またいつか………


ゾンビ娘「レイズでもかけて……くださいね………」


     賢者様……




  これにて、私の永い永い人生という演目はお終いです。
                          アンコールはまたの機会に――――――



                          ゾンビ娘「レイ〇されました。死にたいです」
                                               終幕

これで本編はお終いです。ここまで見てくださってありがとうございました。

残り300ちょっとでは心もとないので、後日談は別スレを立てさせてもらいます


ゾンビ娘「レイ○されました」賢者「人聞きの悪いこと言わないで」
ゾンビ娘「レイ○されました」賢者「人聞きの悪いこと言わないで」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1408541310/)

立てました。でもまだ全然できてません

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom