まゆ「なら性転換します!」 (118)
まゆ(私、佐久間まゆは今恋をしています)
まゆ(お相手は、私のプロデューサーであるモバPさん)
まゆ(アイドルである私とプロデューサーであるモバPさん、二人は本来そうあってはいけない関係)
まゆ(想いが互いに通じることはもってのほか、片方が想うことも許されない。それはきっと、アイドルとプロデューサーの理想的な関係を崩してしまう)
まゆ(いつだか、プロデューサーとその担当アイドルとのスキャンダル記事を見てモバPさんが言っていた言葉)
まゆ(でも、どうしても、たとえモバPさんにそう言われても、もはや引けなくなっているところまで来てしまった)
まゆ(だって、この恋は私が人生で、たった一度しか出来ない恋だから)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410800038
一応、少し前に書いた
P「時子、おっぱい揉んでもいいか?」時子「ぶち[ピーーー]わよ」
P「時子、おっぱい揉んでもいいか?」時子「ぶち殺すわよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410558272/#footer)
の続きというか、CuPまゆルートです
前回の反省を踏まえた上で色々考えて書いていきますので、まあ、興味がある方はゆっくりしていってください
(以下『モバP』を『P』と省略させていただきます)
まゆ「Pさんって、変わった目をしてますよね」
P「え? そうか?」
まゆ「ええ、変わってます」
P「そうかなあ? 別にハーフでもクォーターでもない、典型的な日本人の目だよ」
まゆ「瞳の色を言っているんじゃないんです」
P「え、どういうこと?」
まゆ「視線が違うんですよ」
まゆ「別に男の人がスケベとかいやらしいとかそういうわけじゃないんです。でも、女性の魅力的な部分に男性は目移りしてしまうものでしょう?」
まゆ「それは胸やお尻だけじゃなくて、例えば長いまつ毛とか唇とか、大きく言えばスタイルが良くて美人な人を思わず見てしまったりとか」
まゆ「でも、Pさんにはそんな視線を感じないんです。それはもちろんまゆも例外じゃなくて」
まゆ「前提条件として聞いておきたいんですが、まゆはそんなに魅力の無い女の子ですか?」
P「いや? むしろ、魅力の塊だよ」
まゆ「あ、ありがとうございます…」///
まゆ「で、ですね、だからと言って、Pさんがまゆに興味がないわけじゃないのも視線を見ると分かるんです」
P「もちろん」
まゆ「Pさんは…なんというか、その、上手く言えないんですけども…」
まゆ「常に、まゆの本当の部分を見てくれている気がするんです」
P「なるほどねえ、まゆの本当の部分、か」
まゆ「その目が、まゆはとても好きで。だから、Pさんと話す時はすごく楽しくて、ポカポカした気持ちになります」
P「まゆがそう思ってくれているなら、それ以上嬉しいことは無いよ」
まゆ「あ、あの、Pさん、残念ながらまゆにはPさんの本当の部分がまだ見えないんです」
まゆ「どうしたら、見えますか?」
P「うーん? どうだろうなぁ、俺も意識してるわけじゃないから分からないが」
P「まゆにもそのうち見えるようになるさ」
まゆ「…そうですか。わかりました、まゆもすぐに本当のPさんを見れるようになるよう頑張りますね」
P「おう、その意気だ。じゃ、俺外周りがあるから、そろそろ行くな」
まゆ「はい、頑張ってください」
まゆ「……」
まゆ「…はあ」
まゆ「Pさんの本当の部分…か」
まゆ(正直、Pさんのことをこんなに愛しているのに、私はPさんのことは何も知らない)
まゆ(趣味、好き嫌い、その程度のことは全て頭の中に入ってるけど)
まゆ(そこから、肝心のものを得ることは出来ないから、そんなものは何の役にも立たない)
まゆ(まゆが知りたいのはPさんが普段何を考え、どんな人のなのかということだから)
ちひろ「悩んでるわねえ」
まゆ「わかります?」
ちひろ「ええ、一目で」
まゆ「はあ…そうですよね」
まゆ「ちひろさんは…Pさんがどういう人か知ってます?」
ちひろ「Pさんは難しいわねえ…知ってるとしたらPaPさんと旧知の仲、てことかしら」
まゆ「あ、それはまゆも知ってます。あまりにも仲が良いもんだから、一度聞いてみました」
ちひろ「Pさんのことを知りたいなら、PaPさんに当たってみるのもいいかもね」
まゆ「そうですか、正直PaPさんは苦手なんですけど、頑張ってみます」
PaP「ってわけで、俺のところに来たってわけか」
PaP「ってわけで、俺のところに来たってわけか」
まゆ「はい、突然すみません」
PaP「チッヒめ、丸投げしやがったな」
まゆ「あ、あの、すみません…」
PaP「あー、いいんだよ。そんなこと言われたらいやでも気になっちゃうからな。しょうがないさ」
PaP「で、Pのことだっけ? あいつの何が知りたいんだ?」
まゆ「私…Pさんの考えてることが分からないんです。あの人がどういう考えを持って生きているのか、どういう気持ちでまゆを見てくれているのかが見当もつかない、というか」
PaP「なるほど、なるほど。つまりPの本心が全くと言っていいほど見えないってことだな」
まゆ「はい、まゆのことは全て見通してくれているのに、まゆはPさんのことを何もわかって上げられないのが心苦しくて…」
PaP「贅沢ものだな、あいつは」
まゆ「PaPさんはPさんの考えが分かるんですか?」
PaP「うーん、そうだなあ、悩ましいところだけど…」
PaP「そろそろ…俺もついていけなくなるかなあ」
まゆ「? どういうことですか?」
PaP「もうすぐ、俺の物差しでもあいつの考えは理解できなくなるかもって意味さ」
まゆ「もうすぐ? 今はPaPさんがどういう人かはわかるんですか?」
PaP「うん、もう知り合ってからしばらく経つからなあ」
まゆ「それがどうして理解できなくなってしまうんですか?」
PaP「あいつの見てる世界は段々俺の範疇を越えてきてるからさ」
まゆ「Pさんの見てる世界、というのは…具体的に言うと」
PaP「それは俺が言っていいことじゃないよ。あいつのプライバシーにかかわる話さ」
まゆ「そ、そうですか…」
まゆ「でも、人が見てる世界なんて人によって違う、そう思いますけど」
PaP「もちろん、そうさ。でも、その世界を理解することは出来るだろ? まゆが、例えば同じ事務所の茜とか正反対に近いアイドルの考え方が理解できるように」
まゆ「はい、その通りだと思います。だからこそ、人と人との間に信頼や愛が生まれるものだと思ってます」
PaP「逆に言うと、サイコパスの殺人鬼が見ている世界を理解出来ると思うか?」
まゆ「それは…無理です」
PaP「それと同じさ。今のは極論だが、どうしても理解できない相手だっているわけだ」
PaP「あいつの見ている世界は、常人には段々理解できない領域に入っているんだよ」
まゆ「そんな…まゆにはPさんの考えは理解出来ないってことですか?」
PaP「それはわからない。ただ、今のままいったらいずれそうなってもおかしくないかもなあ…」
まゆ「い、いやです! Pさんのことを理解できないままなんて!」
PaP「まったく、本当にあいつは幸せ者だな。まゆちゃん、そんなにあいつのことが好きなのか?」
まゆ「はい、大好きです」
PaP「……そうか。生半可な気持ちではないことはその目を見ればわかるよ」
PaP「つらい思いをするかもしれないが、構わないか?」
まゆ「Pさんの本心を見ること、私の大好きな人を知ることができないほど辛いことはありません」
PaP「…わかったよ」
P「さ、今日も頑張っていこうか」
まゆ「はい」
P「今日は雑誌のグラビア撮影だ。グラビアっていっても水着に着替えるわけじゃなくて、秋のトレンドを集めた服を着るらしい」
P「読モの経験があるまゆなら軽くこなせる仕事だろ?」
まゆ「はい、まゆの得意分野です」
まゆ「思えば、まゆとPさんが出会ったのも読モの撮影中でしたねえ」
P「懐かしいな」
まゆ「あの時のまゆは本当にダメな子でした。少し趣味が違う服で撮ることを嫌がってましたね、それが仕事なのに」
P「でも、確かにあの服装ではまゆの魅力が薄れてしまう、まゆはそう思っていたんだろう?」
まゆ「はい、そうです」
P「それだけ、自分の仕事にこだわりがあるってことさ。言いなりになるより全然いい」
まゆ「そうですかね、でも、Pさんがそんなまゆを変えてくれました」
まゆ「関係者として見に来ていたPさんが言ってくれたこと、まゆは今でも覚えています」
~~~
~~~
まゆ『思わず休憩をもらってしまったけど、この後の撮影どうしよう…。ますます、行きづらくなっちゃった』
P『どうしたんだい? 浮かない顔をして』
まゆ『え、あなたは…確か、撮影の時にもいましたよね?』
P『ああ、知り合いに頼んでね。職場見学に来ているんだ』
まゆ『そうですか…あの、今、休憩中なんで一人に…』
P『趣味じゃない服を着させられて気分が乗らないんだろう?』
まゆ『! わ、分かるんですか!?』
P『うん、だって俺もそう思うもん。君に似合うのはああいう際どい服装ではなく、もっと柔らかい印象の服が似合うはずだ』
まゆ『ま、まゆもそう思うんです。だから、今日の仕事はどうしても…』
P『でも、それは違うと思うんだ』
まゆ『え?…』
P『君のイメージとは違う服を着せている、それはスタイリストさんも分かっている事だよ。だって、彼らもその道のプロだ』
P『ついでに言うと、君の撮影意欲も見抜いてるはずさ。俺が気付いてるほどだからね』
まゆ『……』
P『それなのに、どうして撮影をやめたり服のイメージを変えたりしないのか分かるかい?』
P『それは君なら、そういう服装でさえも着こなせると信じているからだ』
まゆ『!…』
P『この世に理不尽だと思う仕事はいっぱいある、でもそれが全て相手の都合に合わせた仕事とは限らない』
P『相手に信じられているからこそ、理不尽に感じる仕事もあるってことだよ』
まゆ『…はい』
P『でも、さすがに今の服装は君らしさを引き立たせるものが見当たらないな、せめてワンポイントでも』
P『…今日の撮影はアクセサリーまで全てスタイリストさんに決められているのかい?』
まゆ『アクセサリーは特に、でも、今のイメージで撮影するならアクセは抑えて服装で勝負した方がいいかなと思って…』
P『だから、数少ないアクセサリーもセクシーさを意識した配色なんだね』
P『そうだね…でも、意外とこうゆうのもいいかもしれない』
~~~
まゆ「あの時、Pさんが右手の小指に結んでくれた赤いリボン。まゆは今でも大事に取ってあります」
まゆ「あの時Pさんに出会っていなかったら、きっと今のまゆはいません」
まゆ「だから、Pさんはまゆの恩人なんですよお」
P「そうだったんだ、だから、その後俺がアイドルのプロデューサーだとわかって」
まゆ「はい、ついて行くことにしたんです。この人ならまゆを新しい世界に連れて行ってくれるって」
まゆ「Pさんが快諾してくれた時、まゆ、とっても嬉しかった」
P「まあ、俺としては、まゆみたいな女の子がアイドルになってくれるなんて願ったり叶ったりだったからな。断る理由なんかなかったよ」
まゆ「そして、今現在のまゆもPさんについてきてよかったと心から思っています」
まゆ「アイドルとしての日々、それはまゆの人生に大きな意味を見出してくれました」
まゆ「読者モデルをやっていた時もそれに近い感覚は持ってました。でも、それは今ほど大きいものではありません」
まゆ「今、まゆを支えているのは、私自身の為にアイドルをしているのと」
まゆ「Pさんの為にアイドルをしているということ、それが結びあってまゆの人生の大きな糧になってるんです」
P「…そっか」
まゆ「きっとPさんは気付いてるでしょう。でも、言葉に出さないといけないと思うから言います」
まゆ「まゆは、Pさんが大好きなんです」
P「……」
まゆ「いつか言っていましたね、アイドルとプロデューサーの間にはどちらかの一方的な片想いであっても存在してはならないと」
まゆ「それは理想的な関係を壊してしまう、って」
まゆ「でも、まゆはアイドルとプロデューサーの理想的な関係じゃ辛いんです」
まゆ「それが届かぬ想いでも、アイドルとプロデューサーの関係ですら途切れてしまったとしても」
まゆ「まゆは…Pさんとの間に壁を作りたくないんです。『アイドルとプロデューサーの関係』という壁を」
P「……」
まゆ「Pさん、どうか答えてください」
まゆ「Pさんは、まゆがその壁を越えてしまうことを許してくれますか」
P「……」
P「…この前、さ、言ってくれたよな」
P「俺は変わった目をしているって」
P「俺も思うんだ。まゆも変わった目をしているって」
P「まゆは、本当にいい子で、すごく大人っぽくて、落ち着いてるのに」
P「目だけは無垢な子供みたいだ」
P「きっと、まゆはずっと本当の俺を見つけたかったんだろう。だから、俺のことを真っすぐ見てくれていた」
P「その目はとても透き通っていて、すごく綺麗で、まるで宝石みたいだと思う」
P「俺は何度その目に救われたことか。俺がどんなに苦しんでいても、どんなに悩んでいても、まゆの目を見ればいつしか救われていた」
P「だから、俺はまゆのプロデュースを出来たことを誇りに思っているし、これ以上ない幸福だと思っている」
P「だから、まゆにそう思われていることはとても嬉しい」
まゆ「! じゃあっ…」
P「だから、まゆには本当のことを言うよ」
P「俺は女性を愛することが出来ないんだ」
とりあえずここまで
ここからはゆっくり投下していきます
まゆ「……」
まゆ(もう、何度泣いただろう…泣き過ぎて涙が枯れるんじゃないかと思うほど泣いた気がする)
まゆ(でも、そんなことは全然なくて、Pさんのことを思うたびに胸が締め付けられて、また涙を流してしまう)
まゆ「きっと、PaPさんはこうなることを知ってたんだなぁ…」
~~~
P「俺は少し前、このCGプロに入る前婚約を約束した女性が居た」
P「でも、その話はなくなった。俺の浮気が原因で」
まゆ「Pさんが浮気をするわけなんてっ…!」
P「ありがとう、まゆ。でも、事実なんだ。現に俺は慰謝料を払い、顔を見たこともいない我が子の養育費を払い続けてる」
P「会社もやめた、実家からも勘当された。失うものがないところまで落ちた」
P「その先に待っていたのは女性恐怖症。おかしいだろ? 自分が原因なのに俺は女性に近づくことさえできなくなった」
まゆ「…Pさん、まゆ怒りますよ? そんなことでまゆがPさんに幻滅するとでも思ってるんですか?」
P「……」
まゆ「今のPさんはまゆを馬鹿にしてます」
まゆ「拒まれたらどうしよう、今の関係さえも、Pさんと話すことさえできなくなるかもしれない、考えたらキリがありませんでした」
まゆ「ずっと…ずっと…悩んで、悩みぬいて、やっと振り絞ったまゆの勇気を…今のPさんは馬鹿にしてます!」
まゆ「あなたは…まゆの大好きだったPさんじゃない…!」
P「……まあ、いいさ。それから、いろいろあってこの職場を紹介してもらい、アイドルの子達と過ごしてきた」
P「こんな俺にも、皆は優しくしてくれた。その甲斐もあって俺の女性恐怖症は段々収まってきた」
P「いつしか、女の子である皆と共に笑い、信頼が生まれ、触れ合えるようになるまでになった時、俺は一つのことに気付いた」
P「俺は、女性を愛せなくなっているんだと」
P「特に理屈があるわけでもないし、確証といえることではないが」
P「俺が今まで感じてきた女、という感触が微妙にずれているんだ」
P「上手くは言えないが、今まで女性と感じてきた部分に気付けなくなっていると思う」
P「だから、俺は女性の魅力的である、女性らしさである部分に目が移らなくなった」
P「きっと、まゆが言っていたのはそういうことなんだろう」
まゆ(…あの部分は、きっと本当。Pさんの目がいつもの優しい目に戻ってたから)
まゆ(女性らしさを感じられないPさんには、まゆは女性として見てもらうことが出来ない)
まゆ(だから、Pさんはまゆの女の子として見ることは無く、佐久間まゆという存在として見ていた)
まゆ「…だから、佐久間まゆとしての本当の部分を見ることが出来ていた」
まゆ「そこしか見ることが出来なかったから…」
~~~
PaP「不器用なやつだ」
P「お前だけには言われたくないさ」
P「…まゆは、いい子だ。何より強い。あんなことがあっても、その後の撮影ではいつも通りの姿を見せてくれたからな」
P「だからこそ…俺なんかにかまってる暇なんか無いんだよ」
PaP「言い訳してんじゃねーよ、バカ」
PaP「お前にかまう暇がない? でも、それがあの子にとっての全てだったんだろ」
P「……」
PaP「お前はただ、自分の弱さを隠して逃げてるだけさ」
PaP「相手の為を思って幻滅させる? 馬鹿言ってんじゃねえよ、幻滅させてお前がその場から逃れたいだけだろうが」
P「じゃあ、どうしろっていうんだよ!」
PaP「……」
P「俺は女を愛せなくなった…それでも、俺が望めばまゆは俺に寄り添ってくれるだろう」
P「でも、そのまゆに心を許してしまったら俺はっ…!」
P「……また、あの女を思い出してしまうんだ」
P「重ねたくもないのに重ねてしまって」
P「憎みたくもないのに憎しみが蘇ってしまって」
P「きっと、まゆを傷つけてしまう…」
P「それだけは、嫌なんだよ…」
PaP「…ちゃんと、わかってんじゃねえか。自分の気持ち」
P「……」
PaP「下手な言い訳で自分を守るのはやめろ、そんなもんは自分の首を絞めるだけさ。俺みたいに」
P「…ああ」
PaP「やることは決まっただろう? だったら、覚悟を決めろ」
P「……」
P「なに、心配ねえよ、あの子は強い。時子には勝てないけどな」
文章の進みが遅いんでリフレッシュさせてから再スタートします
予定は未定ですが、なるべく早く戻ってこれるよう善処します
~~~
まゆ「自分の好きな相手に女性として見られていなかったらどうします?」
ちひろ「どう…かしら、さすがに経験はないわね」
まゆ「まゆは…これから、どうすればいいのかわかりません」
ちひろ「そうね、それは恋愛対象として見られることがないから、どうしようもないってことよね?」
まゆ「…はい、他にも色々とありますけど」
ちひろ「でもPさんのことは好き。だから、諦めきれない」
まゆ「諦めないと思います」
ちひろ「なら、私が言えることはないわね。まゆちゃんの根気次第だもの」
まゆ「…ちひろさんはPaPさんのこと好きですよね?」
ちひろ「ん~、どうかしら? 嫌いではないけど」
ちひろ「一番最初にこの事務所に入ってきて、創設初期からずっと仕事してるからね。色々思うことはあるのかもしれない」
ちひろ「まあ、PaPさんのことが好き、ということで話を進めてもらってもかまわないわ。別に悪い気はしないし」
まゆ「そのPaPさんが恋愛をすることが出来ない体質、とわかったらちひろさんはどうします?」
ちひろ「ん~、それはさすがに無理があるわね。あの人はそんなことまったくないし、いくらなんでもイメージがわかないわ」
まゆ「……でしたら、他の誰かを愛していて、自分の入り込む余地がないと分かった時には」
ちひろ「……」
ちひろ「多分…その二人にこれでもかってくらいちょっかいを出すわね」
まゆ「…ひどいですね」
ちひろ「それで、自分の気が済むまで出し終えたらきっと」
ちひろ「身を引くんじゃないかな」
まゆ「引くんですか…?」
ちひろ「ええ、だって、入り込む余地がないんでしょ? 不毛な争いほど無駄なものは無いわ」
まゆ「……」
まゆ(やっぱり、まゆに残された道は…)
ちひろ「でも、それは架空の話」
ちひろ「人の心は変わってゆくものよ、まゆちゃん」
まゆ「え…」
ちひろ「入り込む余地がない、現実ではそう言い切れるわけではないわ。時間が経って、二人の愛が薄れてきてしまう場合もあるだろうし」
ちひろ「いつか、自分のことを好きになってくれるかもしれない」
ちひろ「可能性が残されてるのなら、信じるべきだと思うわ。どんなものをかなぐり捨ててもね」
まゆ「かなぐり捨てる…」
ちひろ「果たして、Pさんは本当にあなたを恋愛対象として見ることは一生できないのかしら?」
ちひろ「本当にもう二度と女性を愛することが出来ないままなのかしら?」
まゆ「!…知ってたんですか」
ちひろ「ちょっと、気になって調べただけよ」
ちひろ「それに、もし、本当に二度と女性を愛することは出来なくても、それでも道はあるわ。まゆちゃんが本当にあの人のことが好きなら」
ちひろ「女を捨てることだって、ね」
まゆ「……!」
ちひろ「でも、保障する。そんなことしなくてもPさんはきっとまゆちゃんを見てくれる。それは私の勘」
まゆ「…ちひろさんの勘だったら、なんだか信用できそうです」
ちひろ「Pさんは今屋上にいるはず。いってらっしゃい」
まゆ「はい!」
ちひろ「……」
ちひろ「ふふっ、健気だなぁ」
ちひろ「時子ちゃん、ごめんなさいね。私も一切譲る気は無いわよ」
まゆ「Pさん!」
P「…まゆ」
まゆ「Pさん、まゆ話したいことがあって…」
P「奇遇だな、俺もなんだ」
まゆ「私、無理です、Pさんのことを…「まゆ、俺はな」
P「俺は昔、女性に裏切られたことがあるんだ」
まゆ「…!」
P「結婚の約束をして、お腹に子供もいて、広い家に引っ越そうかって話してたなあ」
P「ずっと、この幸せが続くと思ってた」
まゆ「……」
P「でも、ある日その女性の浮気現場を目撃してしまった」
P「泣いて謝ってたよ、彼女。二度としないから、お願い許して、出来心だったの」
P「どこかで聞いたことのあるセリフばかり並べていた。俺は混乱から距離を置きたいと彼女に言う」
P「それが、彼女を焦らせたんだろうな。しばらく経った後、相手の両親に呼び出された」
P「なんと、被害者は彼女になっていたのさ」
P「そこから先はよく覚えていないし、思い出したくもない。まゆに言った通り、失うものがないところまで落ちたさ」
まゆ「……」
P「まゆを見てるとな、心がすごく和らいで、すごく頼りたくなって、そばにいたくなる」
P「でも、それはできない。もし、俺がまゆに心を許してしまったら、きっとまゆを傷つけてしまう」
P「俺は、まゆを傷つけたくないんだよ」
まゆ「……」
P「まゆに対する気持ち、それが恋なのかはわかんないけど、これ以上まゆと近づいてしまったら、あの女を重ねてしまう。というか、重なってきてるんだよ、今も」
P「昔の俺は目に見える全ての女性がそうなってた。だから、近づくことさえできなかった」
P「それがやっと治まってきたんだ。それなのに、まゆのそばにいることで台無しにしてしまう」
P「まゆを傷つけるのと同時に、俺も傷ついちまう」
P「これ以上は…無理なんだよ」
まゆ「……」
P「もう終りにしよう。まゆには悪いが、俺が女を好きになることはない」
まゆ「……なら、男だったらいいんですか?」
P「…どうだろうな。考えたことはあったけど、いまだに答えは出てないや」
P「でも、もしかしたら、女を好きになるよりは可能性があるかもな」
まゆ「なら性転換します!」
P「おいおい、何言って…っておい!」
まゆ「……っ!」
ジョキッ!!
P「やめろ! ハサミを捨てろ、まゆ! どこに隠してたんだ!」
まゆ「放して!」
P「落ち着けって!」
まゆ「こんなものいらない! Pさんにとって何の意味もないんだったら」
まゆ「毎日手入れしてた髪の毛だって! 胸だって! 肌だって、お洒落だって!」
まゆ「こんなものいらない!!!」
P「……」
まゆ「Pさんが女性を愛せない、それがわかってたなら…」
まゆ「女の子になんて、生まれたくなかった…!」
まゆ「フッ…フゥゥ…ウウ!」
P「……」
まゆ「グスッ!…ヒック!」
P「……っ!」
『ごめんなさい、許して…愛してるのはあなただけなの』
P(俺は…)
『はあ? 何しらばっくれてるの!? 浮気してたのはあんたでしょ!?』
P(俺はもう二度と女なんて…)
『分かってるよな? 娘を泣かせたんだ。きっちりケジメはとってもらう』
P(やめろ…俺はまた同じ過ちを…)
『ふざけないで! あんたのおかげで私達は笑い者よ! 二度と顔を見せないで!』
P(繰り返すつもりか…)
『……Pさん』
P(…!)
まゆ『どうしたんですか? 元気がないですよ?』
P(…まゆ)
まゆ『Pさんの為に事務所も読モもやめたんです、うふふ』
まゆ『Pさんとまゆが出会ったのは運命だったんですよ』
まゆ『まゆはPさんが喜んでくれるなら、なんでもするの』
P(……)
まゆ『まゆはいつだって一緒ですよ♪』
まゆ『まゆをずっと見ててくださいね?』
まゆ『Pさんと…このまま…時が止まればいいのに…』
まゆ『まゆとPさんはいつだって繋がってますからね♪』
P(俺は…俺はまゆを…)
まゆ『だから、Pさんはまゆの恩人なんですよお』
まゆ『まゆは…Pさんとの間に壁を作りたくないんです。『アイドルとプロデューサーの関係』という壁を』
まゆ『まゆは、Pさんが大好きなんです』
まゆ『Pさんが女性を愛せない、それがわかってたなら…』
まゆ『女の子になんて、生まれたくなかった…!』
P(愛してはいけないのか…? 愛せないのか?)
P(彼女が女だから?)
P(いや…)
P「違う…」
まゆ「え……あっ」ダキッ!
P「違う…違うんだ…!」
まゆ「何が…ですか…?」
P「女とか男とか、俺はこだわり過ぎてた。そんなの関係ない」
まゆ「……」
P「俺がまゆに惹かれてたのは、まゆの女らしさだったのか?」
P「好きになるとかそういう以前に、女だからまゆとはもうこれ以上近づけないのか?」
P「違う」
P「俺は佐久間まゆという存在に惹かれて、佐久間まゆという存在に近づきたいんだ」
まゆ「……っ!」
P「まゆ、俺は…」
P「もっと、近くでお前を見たい、一緒にいたいんだ」
まゆ「……ウゥ!」
P「これからは…もっと近くで一緒にいてくれるか?」
まゆ「グスッ…はい!」
~~~
まゆ「結局、まゆはPさんと愛し合ってることになったんですかね?」
P「いや、違うんじゃないかな」
まゆ「え~! そんなぁ!」
P「俺の感情はまゆを愛してる、ってものとは別物だろうからなぁ」
まゆ「じゃあ、どういうものなんでしょう…」
P「さあな、それはこれからゆっくり考えていけばいいさ。俺とまゆは」
まゆ「はい、これからもずっと一緒ですから」
P「…髪、ごめんな」
まゆ「いいんです、髪はすぐ伸びますし。エクステ使えば見た目の違和感もなくなります」
P「いや、毎日手入れしてたんだろ? それをこんな…」
まゆ「確かに少し残念な気はします。けど、いいんです。Pさんに見てもら為だけにしてたことですから」
P「……わからないさ」
まゆ「え?」
P「もしかしたら、いつか…いや、明日にでも俺はまゆの女らしさが見えてくるかもしれない」
P「その時こそ、きっと、俺は本当の意味でまゆのことを好きになれる。そんな予感がするんだ」
まゆ「……」
P「まゆ、今はお前を愛することは無理だけど、きっといつか、気付いてあげてみせるから」
P「それまで、待っててくれないか?」
まゆ「…もちろんです。まゆはPさんのことだったらいつまでも待てますから!」
まゆ「だから、それまでまゆはもっともっと綺麗になりますね!」
~エピローグ的な何か~
P「まゆー、いるかー?」
まゆ「はあい、どうしましたー?」
P「いや、仕事の話なんだけどさ、まゆは普段何色の口紅を使ってるんだ?」
まゆ「そうですねぇ、いつもは薄いピンクでナチュラルなものを使ってます」
P「そうかー、じゃあ、やめておこうか。もしかしたら、もうちょっと大きい仕事が入りそうだし」
まゆ「? なんでですかあ?」
P「まゆに新しい口紅のモデルになって欲しいんだって。でも、セクシー系統の色だから」
まゆ「新色、ですか。ちなみにその色は…」
P「やや、深い紅色って感じかな。えーっと、確か、名前は『red silk ribbon』だったはず」
まゆ「……」
P「他のアイドルを紹介する方向でいこうかな。レイナに頼むか、それともCoPさんに頼んで…」
まゆ「まゆ、受けます!」
P「え?」
まゆ「商品はありますか?」
P「あ、あるよ。ちょっと待っててくれ、確か鞄に…」
P「あった、あった。つけてみるか?」
まゆ「Pさんがつけて下さい!」
P「え、ええ?」
P「べ、別にいいけど、塗ったことないから、変になるかもよ?」
まゆ「構いませんよ」
P「わ、わかった、塗るからちょっとじっとしててくれ」
まゆ「ん……」
P「……」
まゆ(目を閉じてると…まるで、Pさんがキスしてくれてるみたい)
P「……よし! 出来たぞ!」
まゆ「はあい」
P「鏡、持ってこよう」
まゆ「あ、その前に、Pさん」
まゆ「その…似合ってますか?」
P「……」
まゆ「Pさん?」
P「…ああ、綺麗だよ。とても綺麗だ」
まゆ「……Pさん、今」
P「え、あ…」
まゆ「…ふふっ、Pさん!」
P「え! んっ…」
チュッ!
P「…ま、まゆ」
まゆ「…Pさんがまゆの小指に結んでくれたリボンは」
まゆ「こーんな、ところにつながってたんですね!」
おしまい
ままゆの愛が重いという風潮、一理ない
一途なままゆ可愛いと思います
読み返して気付いた…>>105のレイナは兵藤レナさんのことです…
やってもうたー
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