兄「じゃ俺とドライブに行かないか？」

妹「いいけど。でもお兄ちゃん車持ってたっけ？」

兄「友達から借りたんだよ。いい車だから思いっきりお洒落してくれよ」

妹「そんなにいい車なの？」

兄「まぁな」

兄「おー、上出来上出来、よく似合ってるよ」

妹「そんなこと言ったって何も出ないから」

兄「さ、行こうぜ」

妹「」

兄「どうした？　早く乗りなよ」

妹「何この空飛ぶ円盤みたいな車！」

兄「ムルシエラゴって言うイタリアの車なんだ」

妹「イタリア・・・」

妹「どうやってドア開けるのこれ？」

兄「ここをこうするとね・・・」ｶﾁｬ

妹「わ、わ、上に跳ねあがるのね」

兄「シートベルトした？」

妹「したよ」

兄「どこか行きたい所ある？」

妹「そうねぇ・・・、海に行きたいな」

兄「海ね、バッチコイ」

妹「その友達ってお金持なの？」

兄「ああ、一流企業の御曹司なんだ」

妹「よく貸してくれたね」

兄「セカンドカーだからな」

妹「セカンドカーなのこれが！？　普段は何乗ってるの？」

兄「ウラカンって言う車なんだ」

妹「何それ？　聞いたこと無いけど凄い車なんでしょ？」

兄「まぁな」

妹「海水浴してる人少ないね。もう夏も終わりね」

兄「暦の上では秋だからな」

妹「そこに座ろっ」

兄「ああ」

妹「向こうはどう？　もう慣れた？」

兄「楽しいような寂しいような、何とも言えない所だよ」

兄「まあでも居心地は悪くないな」

妹「私も行こうかな・・・」

兄「ダメだよおまえは。まだ早すぎる」

妹「そんなおっかない顔しなくてもいいでしょう？」

兄「あ、すまん」

兄「お前今彼氏いるのか？」

妹「いたらお兄ちゃんとドライブなんか行かないよ」

兄「いい彼氏が見つかるといいな」

妹「そうなんだけどね・・・。今はそんな気分になれなくて」

兄「・・・ごめんな」

妹「ううん、お兄ちゃんが悪いんじゃないもん・・・」

１時間後

兄「そろそろ帰ろうか」

妹「もう？」

兄「イタリア料理のレストランを予約してあるんだ。そろそろ行かないと間に合わないから」

兄「もちろん俺のおごりだからな」

妹「へぇ、楽しみ」

妹（うわぁー・・・、敷居も値段も高そー・・・）

兄「ほら、ボケッとしてないで入るぞ」



係員「いらっしゃいませ」

兄「予約した兄と申します」

係員「兄様ですね、ようこそお越しくださいました。お席へご案内いたします」

係員「こちら、お飲物のリストになります」

係員「予めご注文いただきましたコース料理で変更ございませんか？」

兄「はい」

係員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

妹「ねぇ、お金あるの？」

兄「無ければこんな所来ないよ。心配するな」

妹（こんなレストランにはどんな人たちが来るんだろう）

妹（あ、妹友ちゃんだ！　また例の彼氏とデートね）

妹「ねぇ、頼みがあるんだけど」

兄「何？」

妹「レストラン出るまで彼氏のふりしてくれない？」

兄「へ？　どうして？」

妹「あそこに友達がいるんだけどちょっと嫌な奴でさ、彼氏の事とかもらったプレゼントとかを私に自慢してくるのよ」

妹「だから見返してやろうと思って」

兄「まぁ別にいいけど」

兄「ごちそうさまでした」

係員「本日はありがとうございます。お会計、＊＊＊円になります」

妹友「あら、妹ちゃんじゃない」

妹「あ、妹友ちゃん、元気にしてた？」

妹友「一緒に居るのは彼氏？」

妹「そうよ」

妹友「中々のイケメンね」

妹「ううん、妹友ちゃんの彼氏に比べたら」

妹友「ふふ、そうよね」

妹（全くこいつは・・・）

妹友「ここへは何で来たの？　まさか電車じゃないよね？」

妹「彼の車よ」

妹友「彼どんな車乗ってるの？」

妹「えーっとね・・・、何だったかな、ちょっとド忘れしちゃって」

妹友「あ、じゃ見せてよ」

妹友「」

妹「思い出した。ムルシエラゴって言うんだわ」

妹友「凄い車に乗ってるのね・・・」

妹「彼、御曹司だから。じゃ、またね」

妹友「」

妹「きゃははー、ねぇ見たあの妹友ちゃんの顔」

兄「見たよ。悲壮感と敗北感が入り混じったような顔してたな」

兄「だけどこんなことするのは最後にしとけよ。あの女と同じになっちゃうぞ」

妹「わかってるわ」

ここから先は切ない展開になります

妹「ただいまーって、お父さんとお母さんまだ帰って来てないや。今日は残業か」

兄「妹、今日はドライブに付き合ってくれてありがとな。楽しかったよ」

妹「私も楽しかったわ」

兄「さて・・・、そろそろ戻る時間だな・・・」

妹「やっぱり帰っちゃうの？　天国に・・・」ｼﾞﾜ

兄「ん、まぁな。神様との約束だから」

妹「帰っちゃやだ、帰らないでよぉ・・・」ﾎﾟﾛ

兄「俺だって帰りたくないけどな。こればっかりはどうにもならないんだよ」

兄「ほら、俺の手を握ってごらん」

ｷﾞｭ

妹（冷たい・・・、やっぱりお兄ちゃん死んじゃったんだね）ﾎﾟﾛ

兄「俺はこの世からいなくなったけど、お前の心の中にはいつまでもいるから」

兄「俺はいつまでもお前のお兄ちゃんだ」

妹「うん・・・」

兄「俺の分までしっかり生きてくれよな。せめてお前はお父さんとお母さんを悲しませる様はしないでくれよ」

妹「わかってる」

兄「うっ、時間だ！　妹！　元気ｄ」ﾌｯ

妹「お兄ちゃん！　お兄ちゃん・・・」ﾎﾟﾛ

妹（私、お兄ちゃんの分までしっかり生きていくから。だから、天国から見守っててね）

妹（生まれ変わったら今度も私のお兄ちゃんになってね、大好きだよ）

終

御覧下さいましてありがとうございました

このSSは兄の急死後に見た夢を元にして書いたものです
このSSを、兄、両親、このスレを御覧になった方、兄と親交があった方々へ捧げます

ちなみにムルシエラゴは兄のあこがれの車です