兄「こっち見て」妹「どっち?」 (100)

妹「おにぃおきてー」
 
兄「んー……あと5分……」
 
妹「遅刻しちゃうよ?」
 
兄「寒い……」モゾモゾ
 
妹「朝ごはん冷めちゃう」ユサユサ
 
兄「うー……」
 
妹「ここなに?」ペシペシ
 
兄「肩」
 
妹「じゃあ頭はここらへんかな?おーきーてー」ワシャワシャワシャワシャ
 
兄「うあー」ガバッ

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妹「おはよ」
 
兄「おはよう。ん……こっちおいで」
 
妹「なぁに?」
 
兄「こんなでっかいホコリのかたまりどこで付けてきたの?ゴミ箱ゴミ箱……」
 
妹「あぇ?どこに付いてた?」
 
兄「お腹のとこ」ポ-イ

妹「落とした洗濯物拾ったときかも。ありがと」
 
兄「呼んでくれればよかったのに」
 
妹「起こしたけど起きなかった人だぁれ?」
 
兄「……ごめん」
 
妹「ごはんにしよ。おみそ汁持ってくるから待ってて」
 
兄「ん」

兄「……」ボ-
 
テレビ「本当に雨は降るんかいなぁ」
 
兄「いもーとー」
 
妹「なーにー?」
 
兄「午後から雨だってー」
 
妹「じゃあ傘もっていかないとね。はいおみそ汁」コト
 
兄「ありがとう。いただきます」パチ
 
妹「いただきます」テチ

兄「んまい」ズズ
 
妹「えへへ。あ、お醤油とって」
 
兄「はい」
 
妹「ありがと。ねぇ知ってる?お豆腐ってすべすべなのは表面だけで、本当の中身はシャリシャリになってるんだって」
 
兄「本当の中身?」
 
妹「うん。でもね、切っても切っても出てくるのは全部表面になっちゃうから、中身は誰も見たことないんだって」
 
兄「ガリガ○君みたいな感じってこと?」
 
妹「ガ○ガリ君食べたことないからわかんない」
 
兄「買ってきたこと無かったっけ?」
 
妹「おにぃが食べてたことはあるけど、わたしにはハーゲン○ッツ買ってくれたから」
 
兄「あーそっか」

妹「暑い時はふたりでアイス食べながら歩いて、おにぃが日陰を作ってくれて」
 
兄「うんうん」
 
妹「おにぃおっきいよね」
 
兄「そうでもないと思うけど」
 
妹「わたしもおっきくなれるかな?」
 
兄「それは、なんて言うか……あれだな」
 
妹「あれとは」
 
兄「この味噌焼きうまいな」パクパク
 
妹「昨日漬けといたの」
 
兄「料理上手な妹を持ってお兄ちゃん幸せだよ」
 
妹「えっへん♪」
 
兄「……」ズズ
 
妹「で、あれとは」
 
兄「……おっきくなるといいですね」
 
妹「……ご飯おかわりしてくる」

兄「ご馳走様」
 
妹「お粗末さまでした」
 
兄「洗い物はしとくから準備してて」
 
妹「うん」

兄「準備できたー?」
 
妹「できたよ。どお?」
 
兄「リボンがちょっと曲がってる。おいで」
 
妹「えへへ。ごめんね?」
 
兄「器用なのにこれだけは上手くならないね」
 
妹「おにぃがやってくれるからいいの♪」

兄「もうちょっとこっち、左向いて」
 
妹「こう?」
 
兄「そうそう……やっぱりおっきくなった?」
 
妹「すけべ?」
 
兄「いやそっちは火曜サスペンスみたいになってる」
 
妹「これからだもん……」

兄「身長がね、伸びたかなって」
 
妹「うーん、自分ではわかんない」
 
兄「気のせいかな?」
 
妹「おててを頭に」
 
兄「ん?こう?」ナデナデ
 
妹「んふふ、もっと強くしていいよぉ♪」
 
兄「はいはい」ナデナデ

妹「んぅぁ♪……は!じゃなくてじゃなくて、おてて置く」
 
兄「はい」ポフ
 
妹「それでこう」ギュ-
 
兄「ほお?」
 
妹「ふぇはほのまま」
 
兄「手はそのまま?」
 
妹「で、離れると、手の場所がわたしの身長」
 
兄「ちょうどみぞおち」
 
妹「おっきくなってる?」
 
兄「むしろ縮んでるような?」
 
妹「えぇ、ほんとに?おにぃがでっかくなったんじゃない?」
 
兄「自分ではわかんない」
 
妹「わたしにもわかんない」
 
兄「だよねー」
 
妹「うんうん」

兄「いくよー」
 
妹「おにぃ、傘忘れてる」
 
兄「おっと。ありがとう」
 
妹「うん。じゃあ……おててください」
 
兄「はいはい。行こっか」ギュ
 
妹「うん」ギュ

兄「学校楽しい?」テクテク
 
妹「普通かな?この前新しく来た先生が野球見せてくれたよ」トテトテ
 
兄「いやそれわかんないでしょ」
 
妹「打ったことしかわかんなかった」クスクス

兄「……」テクテク
 
妹「ふーんふーん♪」トテトテ
 
兄「(相変わらず音痴……)」
 
兄「お前さ」
 
妹「にゃ?」
 
兄「手繋いで歩くの恥ずかしかったりしない?」
 
妹「全然恥ずかしくないよ。なんで?」
 
兄「(周りの視線が多少痛いけど)」
 
妹「おててつないで歩くの、わたしは好きだなぁ」ニコッ
 
兄「(まぁいっか)」

───学校
 
妹「ここまででいいよ」
 
兄「いや教室まで」
 
妹「もー。大丈夫だって」
 
兄「そう?じゃあ危ないことしたり、近寄ったりしないように」
 
妹「はいはい」
 
兄「それと男にも気をつけるように。大体お前の容姿見て近づいてくるやつは……」
 
妹「学校には人を見た目で判断するような人はいませーん」

兄「もっと真剣に。心配なんだよ」
 
妹「もーうー。同じ話昨日も聞きました。一昨日も聞きました。まーしーたー」
 
兄「だって……」
 
妹「あとさっき失礼なこと言わなかった?容姿がどうとか……」
 
兄「それは気のせい。あ、なんかあったら電話かけてね。いつでも出られるようにしとくから」
 
妹「それも毎日言ってる」
 
兄「毎日仕事行くから」

妹「心配してくれるのは嬉しいけど、わたしだってずっと子供じゃないんだよ?」
 
兄「でもずっと妹でしょ」
 
妹「んむぅ」
 
兄「じゃあ行ってくる。終わる時間いつもと同じだよね?迎えいくから教室で待ってて」
 
妹「わかった」
 
兄「ああそれと……」
 
妹「行ってらっしゃい」
 
兄「……行ってきます」

───夕方

ザ-
 
兄「よく降るなあ」
 
兄「明日は休み。休みの日はしっかり休むこれ鉄則」
 
兄「少し遅くなってしまった」
 
兄「そろそろ学校……ん?」

───校門前
 
兄「いもーとー」
 
妹「あ、おにぃおかえり」
 
兄「ただいま。じゃなくて、教室で待っててって言ったでしょ?雨も降ってるし」
 
妹「おにぃ遅かったから待ちきれなくて出てきちゃった」
 
兄「それはごめん。でも歩き回ると転ぶかもしれないし」
 
妹「校内なら目を瞑っても歩けるから大丈夫。雨強くなりそうだし早く帰ろ?」

兄「ん、ほら」
 
妹「んー……」
 
兄「どした?」
 
妹「傘を差したまま手を繋ぐと濡れちゃうね」
 
兄「確かに。どうしようか」
 
妹「提案なのですが」
 
兄「聞きましょう」

妹「相合傘をするといいと思うのです」
 
兄「そのこころは?」
 
妹「一緒の傘なら濡れません。それに今なら傘がもれなくもう1本付いてきます」
 
兄「それはお買い得」
 
妹「ですです」
 
兄「じゃあこっち入って」
 
妹「うん♪」ギュゥ

兄「くっつきすぎじゃない?」
 
妹「濡れちゃうもん」ニコニコ
 
兄「でも……」
 
妹「ん?」
 
兄「……まぁいっか」
 
妹「でわ、れっつごー」
 
兄「ごー」

妹「……」テクテク
 
兄「……」テクテク
 
妹「なんか2人3脚みたいだね」
 
兄「密着度高いからかな?」
 
妹「3脚ロボ発信!前方に注意されたし!」
 
兄「前方に信号あり。赤なので止まりまーす」
 
妹「はーい」

兄「んー?ああ、あそこペットショップになるんだ……」ジ-
 
妹「どこ?」
 
兄「道路挟んで向かいのお店」
 
妹「もともとは何屋さん?」
 
兄「古本屋だったかな?忘れちゃった」
 
妹「ふーん」

兄「お前さ、犬飼いたいって思ったことある?」
 
妹「んー?ないかな。おにぃいるし」
 
兄「俺犬じゃなくない?」
 
妹「結構犬っぽいよ」
 
兄「どのへんが?」
 
妹「呼んだら来てくれるところとか」
 
兄「それ全人類犬になるじゃん。いやそうとは限らないか」

妹「あとはー、かわいいところとか」
 
兄「犬じゃなくても可愛い動物は……ちょっと待って、俺可愛いの?」
 
妹「うん、とっても」
 
兄「そっかー……」
 
妹「いやだった?」
 
兄「嫌じゃないけど、男として複雑な心持ち」
 
妹「もちもち」
 
兄「お、おう」

妹「わたしは猫の方が好き。あとインコとか」
 
兄「そういう話じゃないんだけど」
 
妹「とにかくいいの。犬だと一緒に行けないところもあるけど、おにぃとならないもん」
 
兄「そっか、それもそうだな。よし。明日休みだよね?」
 
妹「え、うん。休みだけど」
 
兄「ふたりでどっか出掛けよっか」
 
妹「ほ、ほんとに!?」バッ
 
兄「ほんとほんと。ほら、濡れるからもっとこっちおいで」
 
妹「んへへぇやったぁ♪」ギュゥ

兄「喜んでもらえて何より」ナテナデ
 
妹「でもほんとにいいの?お仕事おつかれじゃない?」
 
兄「だからこそだよ」
 
妹「ははあ、なるほど?」

妹「それでそれで、どこに連れてってくれるの?」
 
兄「急に思いついたから全然決めてない。行きたいとこある?」
 
妹「んとんと、水族館かな」
 
兄「水族館?水族館でいいの?」
 
妹「うん。海の方にある水族館がリニューアルしたんだって。今日学校で割引券もらったの」
 
兄「なるほどそれで」

妹「というわけで、水族館でどうでしょう」
 
兄「お前がいいならそこにしよう」
 
妹「うん♪」ニコッ
 
兄「でも休み中の宿題今日中に終わらせること」
 
妹「うん……」ショボン

───夜
 
ザ-
 
妹「雨、止まないね」
 
兄「そうだね」
 
妹「雨の音って拍手に似てるよね」
 
兄「そうかもね」
 
妹「きっと雨の中で歌う人は世界で1番たくさんのお客さんに囲まれてるの」
 
兄「妹」
 
妹「なぁに?」
 
兄「宿題やろうね」
 
妹「いーやーだー」ジタバタ

兄「明日出掛けるんだから、今日やらないとダメでしょ?」
 
妹「あのねおにぃ、学生は土曜日だけじゃなくて日曜日もお休みなの」
 
兄「俺は日曜も仕事なの。今日しか見てやれないから」
 
妹「おにぃも日曜お休みならいいのに」
 
兄「ごめん」ナデナデ

妹「んぅ……宿題終わるまではここにいてね」
 
兄「はいはい、じゃあこんな感じで」ギュ
 
妹「にゃ?ここって」ペチペチ
 
兄「俺の膝の間?」
 
妹「だよね」
 
兄「?」
 
妹「ふむふむ」キョロキョロ
 
兄「妹?」
 
妹「決めた」
 
兄「おう?」
 
妹「今日からここに住む」
 
兄「大きくでたね」

妹「終わった……」クタ
 
兄「お疲れ様。お風呂入ってきな」ナデナデ
 
妹「うん」トタトタ
 
兄「さて俺は明日の準備を……うわ雷まで鳴ってきた」

妹「あつー」ホカホカ
 
兄「なんて格好してんの。風邪ひいちゃうから早く服着なさい」
 
妹「寝間着持ってくの忘れたのー。えーっと、あれ?おにぃ、わたしの寝間着どこ?」
 
兄「どこって……ああ、干されてる」
 
妹「乾いて……ないよね?」
 
兄「1日中部屋干しだったからね」
 
妹「じゃあしょうがない。スウェット借りるねー」
 
兄「お前は泊まりに来た妹か」
 
妹「一緒に住んでる妹ですー」

妹「えと、スウェットスウェット……」
 
兄「俺スウェット持ってないよ」
 
妹「いつも着てるのは?」
 
兄「あれジャージ」
 
妹「じゃあそれ着る」
 
兄「俺が着るものなくなるじゃん」
 
妹「もう1着は……今朝干した気がする。半袖は?」
 
兄「寒いわ」
 
妹「わたし結構体温高いよ」
 
兄「俺湯たんぽとかあると寝らんない」
 
妹「わたし抱き枕ないと寝らんない」

ゴロゴロゴロゴロ
 
妹「……」ビクッ
 
兄「あのさ……」
 
妹「なんでしょう?」
 
兄「雷怖いのそろそろ卒業したら?」
 
妹「だ、だってね、おっきい音が鳴るとびっくりなんだよ?」ギュゥゥゥ
 
兄「痛いいだいから離して」ナデナデ
 
妹「やー!」スリスリスリ
 
兄「ぐるしい」
 
妹「おにぃは今日わたしと一緒に寝ます」クンカクンカス-ハ-

兄「分かったから1回離して。俺も風呂入るから」
 
妹「この状況でひとりにするの?」ウルウル
 
兄「一緒に入る?」
 
妹「それはなんかフェアじゃない気がする」
 
兄「言わんとしてることは伝わった」
 
妹「おにぃが目隠しをすれば……」
 
兄「無理やり一緒に入らんでもよろしい」

兄「あづー」ホカホカ
 
妹「おかえりなさいませ」ギュ-
 
兄「ただいま」
 
妹「あついです」ギュ-
 
兄「離れろよ」
 
妹「やだです」ギュ-

兄「電気消すよー」
 
妹「ん」ギュ
 
兄「豆球点けようか?」
 
妹「暗いのは怖くないもん」
 
兄「そーだね」
 
妹「ずっと一緒だからね?夜中に目が覚めたときいなかったら泣くからね?絶対泣くからね?」ギュ-
 
兄「はいはい」ナデナデ

妹「……明日、晴れるかなぁ」
 
兄「大丈夫だよ。だからお休み」ナデナデ
 
妹「……ねぇ1個だけおねがいきいて?」ウトウト
 
兄「俺の力を超える願いは叶えられないからね」
 
妹「なにかお話して。声、聞いてたいから……」
 
兄「わかったよ。これは友人の雪だるまに聞いた話なんだけど……」

兄「雪だるまに人参嫌いの理由を聞いたら、鼻に付くからだってさ」
 
妹「……」ス-ス-
 
兄「寝たか」
 
妹「……」スヤスヤ
 
兄「で、俺は暑くて眠れないと」
 
妹「……」ギュ
 
兄「こいつホントに体温高いな」ナデナデ
 
妹「……ん」
 
兄「ほっぺやわらか」ツンツン
 
妹「んっ……おにぃ……こしょい」
 
兄「あぁ、ごめん」ナデナデ

妹「んっ、んぅぅ……んぅ?」ムクッ
 
兄「起こしちゃった?」
 
妹「……おにぃ、いた」
 
兄「ん?あぁ。ちゃんといるし、ずっといるよ」
 
妹「……こわいゆめみた」
 
兄「どんな夢か聞いてもいい?」
 
妹「爪と指の間にシャーペンの芯がいっぱい突き刺さる夢」
 
兄「なにそれこっわ」

兄「えっと……寝れそう?」
 
妹「……ん」コク
 
兄「俺はさらに寝れなくなったよ」ナデナデ
 
妹「……こしょこしょされるとねれない」
 
兄「もうちょっかい出さないからお休み」ナデナデ
 
妹「……ん、おやすみ」ギュ-

妹「……」スヤスヤ
 
兄「……」スヤスヤ

妹「……んぅ」
 
妹「……んにゃ?」
 
妹「……朝」
 
妹「……おにぃのにおい」スンスン
 
妹「……」ボ-
 
妹「……もうちょっと」ギュ-

今日はこのへんで
読んでくれた人ありがとう

───朝
 
兄「めっちゃ晴れた」
 
妹「雷止んでよかったぁ」
 
兄「音出るもの好きなのになんで雷はダメかねぇ」
 
妹「なんでもいいわけじゃないもん」

妹「おにぃ、どうかな?」クルッ
 
兄「ん、よく似合ってる。せっかくだし髪もいじろうか」
 
妹「よろしくお願いします」
 
兄「はいはい。こっちおいで」
 
妹「お膝のあいだがいい」
 
兄「そんなに気に入ったの?」
 
妹「うん、わたしの別荘」
 
兄「居住を諦めてください」
 
妹「ブラザーハイツ215号室」
 
兄「俺の膝の間、そんな具体的な名前付いてんだ……」

妹「だめ?」コテン
 
兄「ん゛っ」
 
妹「おにぃから聞いたことない音が……」
 
兄「……おいで」
 
妹「やったぁ♪」
 
兄「お客さん今日はどんな感じにしましょうか」
 
妹「かわいくしてください」
 
兄「どうやっても可愛くしかならん」

兄「できた」
 
妹「どお?」
 
兄「いい感じ」
 
妹「おー」
 
兄「準備オッケーかな?」
 
妹「おてて」
 
兄「ほら」ギュ
 
妹「ん♪」ギュ
 
兄「しゅっぱーつ」
 
妹「ぱーつ」

───水族館
 
兄「でかい」
 
妹「人がいっぱい」
 
兄「絶対手離すなよ」
 
妹「うんうん」コクコク

兄「大人1人と子供1人」
 
妹「中学生です」
 
兄「子供は金額同じだから……」
 
妹「中学生です」
 
兄「わかったって」

兄「はいこれ」
 
妹「なにこれ?」
 
兄「音声ガイド」
 
妹「おー。おにぃは?」
 
兄「俺はいいよ」
 
妹「どうせくっついて歩くし、イヤホンはんぶんこしよ?」
 
兄「じゃあ遠慮なく」キュ
 
妹「操作はまかせました」キュ
 
兄「まかされました」

妹「へー、クラゲって目あるんだ」
 
兄「脳はないらしい」
 
妹「ついてるだけ?」
 
兄「明暗を感じ取れます。だって」
 
妹「ふーん」
 
兄「次行く?」
 
妹「もうちょっと」ジ-

妹「半透明なおさかなって弱点丸見えで危なそう」
 
兄「確かに」
 
妹「深海魚って群れとか作るのかな?」
 
兄「あんまりイメージないかな」
 
妹「ひとりぼっちなのかなぁ……」
 
兄「どうだろ」
 
妹「暗いところでひとりぼっちは怖いよね」ギュ

兄「これは、ハコフグ」
 
妹「はこふぐ」
 
兄「四角くてちっちゃいやつ」
 
妹「どのへんにいるの?」
 
兄「どこだろ?ああいた。上の奥の方」
 
妹「ほー」
 
兄「……」
 
妹「ほほー♪」ニコニコ
 
兄「……妹」
 
妹「ほぉ?」クルッ
 
兄「楽しい?」
 
妹「うん!とーっても楽しい♪」ニコッ

兄「そう、そっか。ならよかった。よかったぁ……」
 
妹「!」ギュ
 
兄「ん?」
 
妹「おにぃとだったらどこでも楽しいよ!」フンス!
 
兄「お、おう。ありがとう?」
 
妹「……」ジ-
 
兄「え、なに?」
 
妹「えぅ?あ、そっか」
 
兄「なにが?」

妹「なんで頭なでなでしてくれないのかなーって」
 
兄「ああ、今両手塞がってるからね」
 
妹「おてて3本目生えたり」
 
兄「して欲しいの?」
 
妹「……」ジ-
 
兄「して欲しそうな顔してんね」

兄「しゃあないなぁ」ナデェ
 
妹「み゛っ」ビクッ
 
兄「ごめん、痛かった?」
 
妹「んん、ちょっとびっくりしただけ」フルフル
 
兄「そっか」
 
妹「3本目生えた?」
 
兄「生えてないわ。ガイドをポッケにしまっただけ」ナデナデ
 
妹「んん……おにぃは頭いいねぇ♪」スリスリ
 
兄「お前はこうすると極端にIQ下がるねぇ」ナデナデ

妹「ところでおにぃさんや」
 
兄「なんだい妹さんや」
 
妹「おなかが」
 
兄「痛いの?」
 
妹「すいた」グ-
 
兄「一大事だ」

兄「朝ごはん中途半端だったもんね」
 
妹「それもこれもおにぃの添い寝が気持ちよすぎるのが悪い」
 
兄「じゃあ金輪際やめにしようか」
 
妹「わたしだって怒ると怖いんだからね?」グッ
 
兄「そのクリームパンみたいな握り拳で何するつもりだよ」
 
妹「必殺技」シュッシュッ

兄「ごはん食べれそうな場所探すから待って」
 
妹「1回外出ないとダメかな?」
 
兄「んー、あった。出なくても大丈夫そう」
 
妹「お腹と背中がぺったんこしそう」
 
兄「急ごう。これ以上絶壁感に拍車がかかるると思わず飛び降りたくなる」
 
妹「クリームパンチ」ポスッ

ちょっと休憩
>>63だけid変わっちゃったごめん

兄「んん、ここのカレー美味しかったな」
 
妹「うんうん」パクパク
 
兄「焦んないでいいからね」
 
妹「うん」モグモグ

兄「そのうちまたどっか出掛けようか」
 
妹「うん、今度は動物園とかもいいよねー。おにぃ、あーん」
 
兄「あーんもぐもぐごくん。動物園か……晴れてないとダメだね」
 
妹「うんうん。でも美術館はイヤ。おにぃとおしゃべりできないもん。はいあーん」
 
兄「あーんもぐもぐごくん」
 
妹「あーん」
 
兄「お腹いっぱいなら皿ごとくれれば食べるよ」
 
妹「お願いします」ススッ

───大水槽

兄「ここが1番大きい水槽らしい」
 
妹「人いっぱいだ」
 
兄「すみっこに座れる場所あるみたい。そこ行く?」
 
妹「うん」
 
兄「よっこらせっと」
 
妹「おじいさんみたい」
 
兄「そんなことはない、と思う。まだ若い、はず」

妹「おにぃってやっぱりわたしより先に死んじゃうのかな?」
 
兄「年考えればそうなるかも」
 
妹「わがままを言うと、おにぃより先に死にたい」
 
兄「お前を看取る日が来ると考えると今にも死にそう」
 
妹「じゃあ一緒に死んじゃえば寂しくないね」

兄「……あはは」
 
妹「どうしたの?」
 
兄「いやなんていうか……」
 
妹「?」キョトン
 
兄「まぁいっか」
 
妹「へんなの」

兄「魚いっぱいいるけど音声ガイドどれ選べばいいんだ?」
 
妹「大水槽用のやつとかはないの?」
 
兄「そんな都合のいいもの……あった」
 
妹「聞いてみましょう」
 
兄「そうしましょう」

妹「ふむふむ」
 
兄「……」ジ-
 
妹「ほー」
 
兄「……」ボ-
 
妹「ねぇおにぃ」
 
兄「……ん?」
 
妹「青色ってどんな感じ?」
 
兄「青色?んー、冷たい感じとか悲しい感じとかかな?」
 
妹「うんうん、わたしもそんな感じ」

兄「それがどうかしたの?」
 
妹「あのね、青は青でもわたしとおにぃの青は違うかもしれないんだって」
 
兄「あー、クオリアとかそういうやつ?」
 
妹「詳しいことはわかんないや。えへへ」

兄「それで?」
 
妹「それでね、もしかしたらおにぃが感じてる青は、わたしにとっての赤とかオレンジなのかもなーって思って」
 
兄「ほぅ?」
 
妹「だってね、今わたしの目の前には青がいっぱい広がってるはずなのにとってもあったかいの。わたしね、今とっても幸せなんだぁ」ギュ
 
兄「(妹はそう言うと、眼前の青をまっすぐ見つめた)」
 
兄「(手を握る力を少しだけ強めて、ひとりぼっちにならないように)」
 
兄「(瞳を大きく見開いて、光を目一杯吸い込むように)」

妹「ただいまー」
 
兄「手洗ってうがいしてきなさーい。おやつにするわよー」
 
妹「はーい」トタトタ
 
兄「うぇ!?信じるの?土産の菓子開けるか。それと……」ガサゴソ

妹「さぁおにぃ、おやつをここに」
 
兄「その前に、プレゼントがあるんだ」
 
妹「ぷれぜんと?」
 
兄「そ、ちょっと待ってね。えーっと、はいこれ」
 
妹「これは……箱?」
 
兄「うん。開けてみて」

妹「えとえと……こうかな?」パカッ
 
オルゴール「♫」
 
妹「わぁ!これオルゴール?」
 
兄「好きかなって」
 
妹「うんうん!」ブンブン
 
兄「よかった……」
 
妹「ありがとう」ニコッ
 
兄「(妹が無邪気に笑う)」

妹「綺麗な音……」
 
兄「うん」
 
兄「(俺のプレゼントを喜んでくれた)」
 
妹「この曲なんだろ?」
 
兄「ごめんわかんない」
 
妹「でもいい曲だねー♪」
 
兄「(嬉しそうにオルゴールの音を聴いてくれた)」
 
妹「ふーんふーん♪」
 
兄「……」
 
兄「(下手くそな鼻歌まで歌って)」

妹「んー♪」
 
兄「……」
 
兄「(そんな姿を見ていると、愛おしくなってしまったのかなんなのか)」
 
妹「♪」ニコニコ
 
兄「……」
 
兄「(気づけば俺は……)」

兄「このオルゴール結構すごいんだ」
 
妹「すごい?」
 
兄「ほらここ、クリスタルになってて……」
 
妹「へぇ!」
 
兄「(こんなことになんの意味もない)」

兄「それで、中にイルカが入ってるんだ」
 
妹「おー!」
 
兄「(話すだけ無駄な事だ)」
 
兄「それにここ、小さいカモメがいるんだ」
 
妹「ほー」
 
兄「(そんなこと分かってる)」
 
兄「水しぶきなんかもリアルで」
 
妹「うんうん」
 
兄「(それどころか、傷つけてしまうかもしれない)」

兄「それから、それから……」
 
妹「うん」
 
兄「(だってこの子は……)」
 
兄「……妹」
 
妹「なぁに?」
 
兄「(妹は……)」

兄「こっち見て」
 
妹「どっち?」
 
兄「(全盲なんだから)」

兄「……こっち」ギュ
 
妹「わ、うしろか」ビクッ
 
兄「うん……」スリ
 
妹「おにぃ、悲しいの?」
 
兄「悲しくなんかないよ」
 
妹「でも泣いてる」
 
兄「泣いてなんかない」

妹「んーん、わたし分かるよ。目は見えないけど、おにぃのことなら分かる」
 
兄「……」グスッ
 
妹「ちょっと緩めて、反対向きになる」
 
兄「うん」
 
妹「ぎゅー。えへへあったかい」ギュ-
 
兄「うん」ギュ
 
妹「わたしね、おにぃのこと大好きなの。好きなとこいっぱいあるんだよ」
 
兄「うん」

妹「例えばね、いっぱい心配してくれるの、好き。たまに過保護だなぁって思うけど、心配してくれるのは嬉しい」
 
兄「うん」
 
妹「名前呼んでくれるの、好き。おにぃが呼んでくれると胸のところきゅーってあったかくなるの」
 
兄「うん゛」グスッ
 
妹「優しく頭撫でてくれるの、好き。いつもおっかなびっくりで、もっと強くしてほしいなーって思うけど、大事にしてくれてる感じがするの」
 
兄「う゛ん゛」ギュ

妹「わたしが作ったごはんおいしそうに食べてくれるの、好き。目が見えなくて何にもできないけど、必要だよって言ってもらえる感じがする」ナデナデ
 
兄「……っ」
 
妹「あとね、おにぃの心臓の音、好き。とくんとくんって安心するの」ナデナデ
 
兄「う゛ん゛っ」

妹「おにぃ、大好き」
 
兄「おれも、だいすきだよ」ギュゥゥ
 
妹「んっ、あんまり強くしたら苦しいよ?」
 
兄「ごめん……でも、もうちょっとだけ……」
 
妹「おにぃ甘えんぼだ。いつもと逆だねぇ」ナデナデ

妹「わたしね、今日とーっても楽しかったの。おにぃがお出かけしよって言ってくれて、すごく嬉しかった」
 
妹「また一緒にお出かけしようね?行くならやっぱり動物園かな?」
 
妹「美術館はおにぃとおしゃべりできないけど、行ってみたら楽しいかな?」
 
妹「わたし色んなところに行ってみたいの」
 
妹「色んなものを見て聞いて感じて、普通の人みたいに楽しむんだ」
 
妹「でもね、ひとりじゃ難しいから、おにぃがいてくれたらいいなって。おにぃとだったら、きっとどこだって楽しいから」

兄「う゛ぁっ……」ボロボロ
 
妹「もう、しょうがないなぁ」ナデナデ
 
兄「っ……ごめんっ、おれ……おれ゛」ボロボロ
 
妹「いいんだよ。わたしが寂しいときも怖いときも、いつだっておにぃがこうしてくれたんだもん。だからお返し」ギュ-
 
兄「うんっ……」ギュゥ

兄「……」スンスン
 
妹「落ち着いた?」
 
兄「ん、ありがとう」ズビッ
 
妹「うん」ナデナデ
 
兄「あのさ、妹」
 
妹「うん」

兄「俺もずっとお前といたい」
 
兄「ふたりで色んなところに行きたい」
 
兄「手を繋いでどこだって行こう」
 
兄「他人なんて関係ない、目が見えないのも関係ない」
 
兄「俺たちの歩幅で、ふたりだけで」
 
兄「ずっと一緒に」ギュ

妹「……んふ」
 
兄「妹?」
 
妹「ぐふふふ。どゅへへ……」
 
兄「何その笑い方、ちょっとキモ……」
 
妹「おにぃ大好き」ギュ-
 
兄「どゅへへ……」

妹「ふーんふーん♪」ナデナデ
 
兄「ははっ……へたくそ」
 
妹「えっ?わたし音痴?」
 
兄「そこそこね」
 
妹「ちょっとショック」
 
兄「あはは」クスクス
 
妹「えへへ」クスクス

兄「……妹」
 
妹「なぁに?」
 
兄「こっち見て」
 
妹「うん」ニコッ

おわり

おしまいです
読んでくれた人ありがとう

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 04:51:22   ID: S:W72z_U

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