俺「は?」 (10)

※実話

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その日はある晴れた日のことだった。

ちょうど梅雨の時期が終わり、からからとした気持ちのいい風を俺は窓を開けて感じていた。

 ピンポーン

チャイムの音がした。

俺は暫く放っておいたが、他の家族が出ないことを察すると渋々来客を確かめた。

俺はインターホンを手に取り喋りかけた。この時代はまだ映像付きインターホンが普及していなかったため、音声だけである。

俺「ぁっ……もしもし……」

俺は久々に声を出したので、少々裏声になってしまった。かれこれ3日は声を出していなかったのだ。

?「あの……すいませんが、どちら様でしょうか?」

声はやや高い男の声で、若干枯れていた。

俺「は?」

訳がわからなった。それは本来俺が言うべき言葉ではなかろうか? こいつは何を言っているんだ?

?「名前を教えてもらえませんか?」

男は少し言葉を強めて言った。

俺「……佐藤ですが」

名前を言っても、何か悪いことが起きるわけがないと俺は知っていた。
それにありふれた苗字であるし、そもそも表札にそう書いてあるのに。

?「……開けてくれませんか?」

男が言った。

冗談じゃない。なぜこんな得体の知れない男を家に上げなければならないのだ。

俺「あの…‥ご用件はなんでしょうか?」

?「…‥渡したいものがあるのです。これを貴方に、渡さなければならない」

はっきりとした使命感に満ちた声をあげながら男が言った。

俺「…‥それはなんですか?」

?「あるものとしか言えません」

怪しい、怪しすぎる。
ネットで売っている情報教材が怪しさ100%なら、この男は300%であった。

正直言うと、俺は怯えていた。

何だこいつは? 意味がわからん。泥棒? 詐欺? VIPにスレ立てした方がいいかな…‥。

などと色々な考えが駆け巡った。

当時、典型的ニートであった俺はとにかく他人と接する機会が全くなかった。

俺「…‥いや、ちょっと無理です…‥」

考え抜いた挙句、俺はそう答えた。

?「ふざけんなっ!!」

インターホンから最大出力で声が飛んだ。

俺は驚きのあまり、文字通りひっくり返った。正直ちょっと漏らした。

ガンッ。ガンッ。ガンッ。ガンッ。

ドアの方から凄まじい音がした。なにか道具でドアを叩いているようだ。

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