キョン「火曜日の放課後?」佐々木「火曜日の放課後だね」 (10)

 憂鬱な月曜日を過ごし、なんとなく迎える火曜日。

 まだまだ休日のだるさは抜け切らず、すでに次の休日が待ち遠しく感じる。

 さて、そんな火曜日ではあるのだが、特筆する事もなく1日が終わってしまった。授業はいつもの通り睡眠学習で乗り切り、SOS団の活動へ。
とは言ってもSOS団の活動も、ハルヒが大人しかったせいか、古泉と将棋をしているうちに終了。

 伸びをして凝り固まった身体をほぐす。さて、帰りますか。

 団員はそれぞれ予定があるらしく、校門辺りで解散。

 1人寂しく帰路に着く。

「おや、キョンじゃないか」

 坂を降りたところで懐かしい顔に出会う。親友の佐々木である。

「やあ、親友。昨日ぶりだね」

「そうだな、親友。昨日ぶりだな」

 昨日のことである。憂鬱な月曜日の朝、同じ場所で佐々木に会った。そう思えばまったく懐かしくもなんともないな。

「1人かい?」

「ああ」

「そうか」

 それだけのやりとり。それだけで、俺たちは肩を並べて歩き出す。別に多くの言葉はいらない。

 そんな関係。

 くつくつと佐々木が喉をならす。一体何が面白いのやら。

「いや、いつまで経っても変わらないからさ」

 そりゃあお生憎様。そうそう変わらないもんだ。本人が変わろうと思わない限りは、な。

「おっと、別に貶してるわけじゃないさ。誉めてるんだよ」

「そうかい」

 いつまでと経っても変わらないのは佐々木も同じである。
だからこそ、どんなに時間が経過して、その間連絡を採らなくてもいつも通り。

 そんな関係だからこそ、俺と佐々木は親友なのである。

「嬉しい限りだよ、まったく。キョンがどう思っているかはわからないが、世間というものは常に変化しているからね。
だからこそ、変わらない安心できる場所があるというのはいいことさ」

 自然と合う歩調。速過ぎず、遅過ぎず。ちょうどいい。

 少しだけ佐々木の言いたいことがわかったような気がする。

「いつまでも変わらないでくれよ」

 佐々木がにこりと微笑む。その微笑みは中学生の頃と変わらない。いや、変わってるのかもしれない。
あの頃に比べてみるとお互いに少しだけだが、大人に近づいている。

 容姿に大きな変化は無くとも、どことなく変わっていく。

 時間の流れは誰に対しても平等なのだ。

「こうして歩いていると、中学生の頃が懐かしいよ。キョンと過ごす時間が本当に楽しかった」

 別に今が楽しいわけじゃないと佐々木は付け足す。確かに、当時は平穏というに相応しい毎日であった。
今はというと、どっかの誰かさんのおかげで波乱万丈で刺激的な毎日を送る羽目になっている。

 それが良いとか悪いとかではなく。今は今なのだ。

「別に会えないわけじゃないんだ。たまにはこうやって帰ろうぜ」

 それまでぴったりと合っていた歩調が乱れる。振り向くと佐々木が立ち止まってこっちを見ていた。

「キョンにしてはいい提案だね」

 一言余計だ。

 佐々木が一歩を踏み出す。再び重なる歩調。

 緩やかな空気が二人の間に流れていく。佐々木がくつくつと喉を鳴らす。

 うん、悪くない。

終わり

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