モバP「透明な杓子定規」 (57)

モバマスSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408325206

C86に参加された方お疲れ様でした。

久々にまとまった時間が取れましたので、書いてみました。

古典シリーズです。

古典シリーズかな

事務所

志希「おはよー」

P「おはよう。早いな」

志希「にゃははー寝てないだけなんだけどね」

P「…なにしてたんだ?」

志希「んーと、ちょっとね」

P「そうか。無理するなよ」

志希「心配されるともっと無理したくなるよねー」

P「おいおい…」

志希「にゃはは。冗談だって。ちょっと部屋の整理してたら朝になってたんだよねー」

P「昔の本とか、アルバムでも出てきたか?」

志希「そうそう。懐かしいのが出てきちゃってねー」

P「まぁ、そうなると掃除は捗らないよな」

志希「だねー」

P「そういえば、志希はどんな子供だったんだ?」

志希「それは秘密だねー。ウチに来るなら教えてあげなくもないけど」

P「そうか、残念だ」

志希「来る気がないのねー」

P「まぁ、おいそれとアイドルの家に行くのもアレだろうしな」

志希「堅いねぇ、真面目って言うのかも」

P「それ以外大して取り柄もないからな」

志希「またまたー。そんなこと言われるとアタシ的にも複雑だから撤回して欲しいよ~」

P「複雑?」

志希「だって、自分のプロデュース力に自信がない人にプロデュースされたくないじゃん」

志希「魚屋さんに行ってお肉を買いたくないでしょ?どうせならお肉屋さんで買いたいじゃん」

P「なるほどな。悪い。撤回する」

志希「ま。謙遜だってのは分かってるけどね」

P「どうだかな」

志希「ふふふふふ」

まゆ「…楽しそうですね」

P「お、おはよう」

まゆ「おはようございます」ニコ

志希「おはよー」

まゆ「なんのお話をされてたんですか?」

P「ん?志希が昨日夜更かししたって話だよ」

まゆ「そうでしたか」

志希「それから、プロデューサーが仕事出来る人だって話」

まゆ「お仕事…できますよねぇ」

P「そんなことないと思うけどな」

まゆ「またまた…」

志希「謙遜禁止だってば」

P「うーん…」

まゆ「まゆもPさんはお仕事出来ると思いますよぉ?」

P「お、そうかありがとな」

まゆ「だからまゆも頑張れるんです」

志希「あ、いいこと思いついたよ」

P「いいこと?」

まゆ「なにについてですかぁ?」

志希「さっきね、Pさんはアイドルの家にはほぼ行かないって言ってたんだよ」

まゆ「まぁ…でしょうねぇ」

志希「だったら、逆転の発想でアタシ達が行けばいいんじゃないかなって」

P「おいおい…」

まゆ「何人か行かれてますよね?」

P「まぁ…何人かは来てるな」

志希「にゃは♪ それじゃ、今度行くねー」

まゆ「まゆも行きます」

P「……どうぞ」

事務所


P「うーん…」

ちひろ「どうかされましたか?」

P「今度、まゆと志希が家に来ることになりまして…」

ちひろ「びっくりですね」

P「まぁ、今までも来たことあるアイドルもいるんで特に気にしなくてもいい気もするんですけど」

ちひろ「それもびっくりですけどね」

P「まぁ、立地的に何人か来たことあるんですよね」

ちひろ「あー、そうですよね」

P「周子と、杏子はご近所さんですから」

ちひろ「それに、周子ちゃんの家に遊びに来たついでに寄るアイドルもいそうですね」

P「まぁ…たまには」

ちひろ「凛ちゃん?」

P「とか」

ちひろ「あはは…」

P「あ、いやですね、悩んでるのは折角来るんだったら何かあった方がいいのかなって考えてたんですよ」

ちひろ「真面目ですねぇ…」

P「それくらいしか取り柄がないですから」アハハ

ちひろ「本気で言ってたら怒りますからねー」

P「えっと……」

ちひろ「あ、別に真面目じゃないのに何舐めたこと言ってるんだろう?って意味じゃないですよっ」

ちひろ「ただ、真面目しか、取り柄がないって言うのが間違いですから」

ちひろ「プロデューサーさんはいい所いっぱいありますよっ!」

周子「ひゅーひゅー」

ちひろ「えっ!」ガタッ

P「ん?お、周子か」

周子「あ、気にせず続けていいよ。ちひろさん」

泰葉「……」ドキドキ

ちひろ「な、何を続けろって言うんですか!」

周子「なんだろうね泰葉ちゃん」

泰葉「へ?わ、私に振らないで下さい!」

周子「何考えたか知らないけど、泰葉ちゃんのえっち」

泰葉「なななな…ち、違いますっ!」カァァ

周子「あはは。ごめんごめん」

P「元気だな周子は」

周子「まぁね」

泰葉「なんでこういう時も冷静なんですか…」

ちひろ「ほ、本当ですよ…」

車内
菜々「お疲れ様です」

P「お仕事お疲れ様でした。スタドリ飲みますか?」

菜々「遠慮しておきますー。ありがとうございます」

P「そうですか」

菜々「はい」

P「そう言えば、ふと思ったんですけど」

菜々「なんですか?」

P「菜々さんは子供時代どんな子でしたか?」

菜々「えっ?」ヒクッ

P「どうかしましたか?」

菜々「え、えっと…質問の意図があんまり分からなくて…」

P「いや、ふと思っただけなんです。大した意味はありません。ちなみに俺は草野球とかやってる子供でしたね」

菜々「そういうことですか」

菜々(何か深い意味があるのかと…)

菜々「な、ナナはですね。その時流行ってたアニメの踊りをマネしたり、家で絵を描いてましたね」

P「なるほど、菜々さんらしいですね」

菜々「らしいですか?」

菜々「自分で言っててアレですけど今とあんまり変わってないですね…」

P「中々人間は変わりませんからね」

菜々「なんか、ずっと子供のままな気がして成長してない気がしてきました…」ズーン

P「ウサミン星人ですからしょうがないんじゃないですか?」

菜々「見た目は大人、中身は子供ってのは嫌ですって」

P「まぁ、菜々さんは子供らしさを残しつつ大人になったんじゃないですか?」

菜々「そ、そうですかね…」ポリポリ

P「キャハ☆」

菜々「……」

P「ごめんなさい」

菜々「いえ、大人になるってこういうことなんですね」

菜々「でも、子供の時の自分は大人になってもどこかに残っていますよね」

P「ですね。俺も野球好きですし」

菜々「ナナだって、踊りも絵を描くのも好きです」

P「確かに菜々さんの言う通りかもしれませんね」

P「ちなみに今も絵を描いてるんですか?」

菜々「え?まぁ、たまには…趣味程度に」

P「イラストの方ですか?」

菜々「そうですね。可愛い女の子とか描いてました」

P「今度見せて下さいね」

菜々「き、機会があれば」

P「楽しみにしてますね」

>>3 はい。読んで下さり感謝です。

事務所
泰葉「ちょっとお隣いいですか?」

P「ん?どうした?」

泰葉「さ、さっきの話なんですけど…」

P「ちひろさんとの話か?」

泰葉「そうです。何話してたんですか?」

P「別に大した話じゃないけど」

泰葉「あんなセリフをちひろさんが言ったのに?」

P「うん」

泰葉「お、大人ですね…」

P「うん?」

泰葉「なんか傍から見てると漫画みたいな展開でしたよ」

P「そうだったか?」

泰葉「はい。なんか少女漫画みたいでした」

P「そうか…」

泰葉「あんまり読まないから分かりませんけど、この間貸して貰った漫画に描いてありました」

P「他にはどんなシーンがあったんだ?」

泰葉「え?えっとですね――」

泰葉「こうやって、こう向き合ってですね…」

P「お、おう…」

泰葉「こうズイっと」

P「う、うん…」

P(ち、近い…)

泰葉「それで…あっ! す、すみません!」バッ

P「いや、平気だけど…」

泰葉「うううう…私が平気じゃありません…」カァァ

ちひろ(何してるんでしょうか…。次のお仕事の練習でしょうか)

泰葉「どうもお仕事のスイッチみたいなのが入ってしまって…」

P「なるほどな」

泰葉「…はい。子供の時からの癖みたいなもので…」

P「子役も大変だな」

泰葉「今思うとそうですね」

P「凄いな」

泰葉「両親がサポートしてくれましたから。なんとか出来ました」

P「そうだな」

泰葉「…はい」

P「そう言えば、泰葉が自分は子供っぽいとか思う時てあるか?」

泰葉「私ですか?」

P「そうそう」

泰葉「私って実は意外とわがままなトコがあるんですよね」

P「そうなのか?」

泰葉「そうは言っても最近のことなんですけどね」

P「余裕が出てきてからってことか?」

泰葉「はい」

泰葉「私のドールハウス作るのが趣味じゃないですか」

P「そうだな」

泰葉「その材料とか、家の形とか家具とかこれじゃなきゃって思っちゃうことがあるんですよね」

P「こだわりか」

泰葉「そうとも言うかもしれませんね」

泰葉「だから、そういう所は子供っぽいのかなって」

泰葉「これじゃなきゃやだー。って言ってるみたいじゃないですか」

P「なるほどなぁ。でも、趣味でもこだわりがあるのはいいと思うぞ」

泰葉「そうですかね?」

P「少なくとも俺はそう思う」

泰葉「そうですか。…こだわり」

泰葉「あ。あともう一つエピソードがあるんですよね。趣味の関係じゃないんですけど」

P「どんな話なんだ?」

泰葉「こっちは秘密です。ちょっとだけ言うなら…人間関係の話ですかね。また機会がありましたら」

P「そうか。残念だ」

泰葉「残念そうに見えないのがちょっとだけ癪ですね…」ムー

ちひろ(人間関係でわがまま…?)

ちひろ(プロデュースは、前のプロデューサーさんか、今のプロデューサーさんじゃないと嫌だ。みたいな感じですかね?)

レッスン室

まゆ「~♪」

凛「ご機嫌だね」

まゆ「はい」

加蓮「なにかあったの?」

志希「今度Pさんの家に行くことになったんだよね~」

凛「…ふーん」

加蓮「…なるほどね」

まゆ「そうなんですよぉ。一人ずつ」

志希「あ、そうなんだ」

凛「良かったね」

加蓮「どうしたの凛?」

凛「別になんでもない」

加蓮「明らかに機嫌悪くなったね」

志希「でも、凛ちゃんも行ってるよね」

凛「い、行ったことはあるけど…」

まゆ「そうなんですねぇ」

凛「何もしてないけど」

志希「アタシは何かしようかなぁ…」

凛「迷惑掛けることはしない方がいいと思うけど…」

志希「にゃは。そんなことはしないから安心してよ」

数日後

P「まゆ、志希。帰るぞー」

志希「お、やっとかー」

まゆ「…二人でなんですね」ハァ

P「何か問題があったか?」
まゆ「あ、いえ、特にないですよ」

志希「まぁ、しょうがないよねー」

P「俺もそんなに予定が空いてる訳じゃないからなぁ…」

まゆ「いいですよぉ。それより、今日はごはん作っていいですか?」

P「お願いしようかな」

まゆ「はい♪」

志希「それじゃ、行こっかー」
バタン

頼子「ちひろさん…よろしいですか?」

ちひろ「はい。なんですか?」

頼子「今日はやけにプロデューサーさんが帰るの早いのですが、何かあるのでしょうか?」

ちひろ「あ、確か、まゆちゃんと志希ちゃんと出掛ける用事があるって言ってました」

頼子「お仕事なんですかね?」

ちひろ「さぁ、どうなんでしょうか…」

文香「でも…今ごはん作っていいかとか聞いてましたね」

加蓮「あ、プロデューサーの家に行くんだって」

頼子「そうなんですね…」

ちひろ「あ、折角だから、私たちも誰かの家に行きませんか?」

加蓮「お泊り?」

ちひろ「電車がなければ、私が送りますよ」

加蓮「まぁ、この時間から誰かの家に行ったら泊まりかもね」

ちひろ「幸い今日の仕事は早く終わりそうですので…」

文香「私は…遠慮しておきます。明日が早いので」

頼子「すみません…。私も少し予定が…」

ちひろ「分かりました」

加蓮「凛は誰の家に行きたい?プロデューサーさん以外で」

凛「わざわざ付け加えなくても分かってるって」

ガチャ

菜々「お疲れ様で――って皆さんお寛ぎ中ですか?」

凛「菜々さんの家」

加蓮「アタシも」

ちひろ「それじゃ、聞いてみましょうか」

菜々「え?え?どういうことですか?ちひろさん」

ちひろ「いえですね、これからウサミン星に行こうかなと思いまして」

菜々「…へ?」

凛「一回行ってみたかったんだ」

加蓮「ウサミン星日本支部みたいなぁって」

菜々「あ、あはははは…」

菜々(ど、どうしよう…そんなに入るかな…)

文香「ウサミン星には、月に行く…エレベーターが必要になりそうですね」

頼子「或は、ペンがあれば心は行くことが出来るかもしれませんけども」

車内
まゆ「夜ご飯は何が食べたいですかぁ?」

P「得意料理でいいよ」

まゆ「それじゃあ…肉じゃがでいいですか?」

志希「家庭的ー」

P「それじゃ、お願いしようかな。多分材料ないから、買って帰るか」

まゆ「はい。腕によりをかけて作りますね」

志希「ねぇねぇ、アタシも何かした方がいい?」

P「いや、寛いでくれていいよ」

志希「ふーん。了解。あ、そうそう、これ見て」

P「運転中だからあんまり見えないが…なんだそのカプセル」

志希「ふふふ。趣味の産物なんだけどね」

P「怖いな。効果はなんだ?」

志希「いつも通りだよー」

P「惚れ薬か」

志希「ま。そんな感じだねー。そんな夢みたいな薬じゃないんだけどね」

P「つまりどういうことだ?」

志希「うーん。匂いと記憶の繋がりを強くする薬かなー」

P「前にも言ってたプルースト効果か」

志希「そそ。折角行くんだし、今日の思い出を忘れにくくしようにしようかなって」

P「なるほどな」

まゆ「流石ですねぇ」

志希「でしょ、でしょ。ま、こんなもの使わなくても忘れないと思うし、結局使わないんだけどね」

志希(そもそも、これはそういう設定のただのビタミン剤だしね)

まゆ「その…惚れ薬とかも作ってるんですかぁ?」

志希「まだだねー」

P「作ってたろ」

志希「効かなかったら作ってないと同じでしょ」

まゆ「あ、一之瀬さんちょっと…」チョイチョイ

志希「んー?」

まゆ「あのですね――」ゴニョゴニョ

志希「うんうん。分かった。はい」

まゆ「ありがとうございます」

P宅

P「さ、あまり綺麗じゃないかもしれないがようこそ」

志希「十分綺麗だよー」

まゆ「綺麗ですが…あまり生活感を感じませんね」

P「寝に帰ってるだけの時もあるからな」

志希「うわー、大変だそりゃ」

まゆ「今日はまゆのごはんでゆっくりしてくださいね」

P「あぁ、頼むよ」

志希「あ、コーヒー飲む?」

P「淹れてくれるのか?」

志希「何もしないのもねー。まゆちゃんは後にしとく?」

まゆ「はい。そうしておきます」

志希「ほい。出来た。ブラックでいいんだよね?」

P「ありがとな」

志希「にゃははー。気にしない気にしない」

P「しかし、家に女の子がいると華やいでいいな」

志希「その言葉は事務所で言わない方がいいね」

P「まぁ、皆が来るのはスキャンダルになりかねないしな」

志希「やっぱり、考えてるんだそういうこと」

P「まぁ、俺の管理が悪いせいで志希達が不当な扱いを受けるのは我慢出来ないし」

志希「かっこいいー」ヒュー

まゆ「まゆ達も頑張りますね♪」

まゆ「はい。できました♪ 特製肉じゃがです」

志希「おー、美味しそう。いただきます」

P「いただきます」

まゆ「はい」

P「…美味いな」

志希「おいしー!」

まゆ「それは良かったです♪」

P「料理番組とかにも出れそうだ」

まゆ「料理番組ですか?」

P「うん。これだけ出来るとな」

まゆ「そうなんですねー」

志希「んー、おいしー」

まゆ「あの、一ついいですかぁ?」

P「ん?」

まゆ「勿論、Pさんがそういうお仕事を取ってきて下さるなら出ますけども…」

P「うん」

まゆ「まゆの料理は…その特別な仕掛けがありまして…」

P「どういう意味だ?」

まゆ「えっと…その、は、恥ずかしいんですけど、食べて貰う身近な人に喜んで欲しいって思いを込めてますから…」ボソボソ

P「なるほどな。分かった」

まゆ「…はい」

P「志希」

志希「うん?」

P「まゆの手料理は俺たち事務所の人だけしか食べられないってさ」

志希「キミの事務所にいてよかったー」

まゆ「そ、そんな褒め過ぎです…」カァァ

P「ごちそうさま」

志希「ごちそうさまー」

まゆ「お粗末様でした」

志希「さっ!なにしようか」

P「なにするって…」

志希「あれ?今日泊まっちゃダメな感じだっけ?」

P「……ん?」

志希「あ、いやー、てっきり泊まるのかなって思ってて」ポリポリ

P「流石に朝帰りはマズイだろ…」

まゆ「それじゃ、お昼にでも帰りましょう」

P「そう言う問題じゃなくてだな…」

まゆ「うふふ。分かってますよ」

志希「ありゃ、まゆちゃんはもう帰る?」

まゆ「まさか。まだいますよー」ニコニコ

P(まゆも泊まる気だなこれ…)

まゆ「それじゃ、何しましょうか」

志希「なにかある?」

P「ウチにあるもので時間潰せる物はあんまりないなぁ…」

志希「ここにあるDVDは?えっちな奴はじゃないの?」

まゆ「……」ポッ

P「違う違う。なんなら再生してみるか?」

志希「うん」コク

P「分かった」ジー

志希「あー、こういうのね」

P「そういうこと。まだ、志希のは全然ないんだけどな」

志希「そりゃそうだよねー。テレビとかそこまで出てないし。このDVDが多い人ってその分活躍してるってこと?」

P「まぁ、露出は多いってことだな」

志希「ふーん」

まゆ「あ、まゆのもありますね」

P「あぁ、流石にウチの事務所に入る前のやつは持ってないが」

まゆ「今のを持っていてくれるだけでも嬉しいですよぉ」ニコニコ

P「随分機嫌良さそうだな」

まゆ「はい♪」

志希「さてと…それじゃ、お風呂でも入ろうかにゃー」

P「…もう何も言うまい。ただ、俺はソファで寝るから二人は寝室な」

まゆ「はーい」

志希「しょうがにゃいにゃあ」

P「しょうがないって…」



志希「それじゃ、おやすみなさーい」

まゆ「おやすみなさい」

P「あぁ、おやすみ」

志希「ふふふ。キミの匂いに包まれて眠るよ」

P「勝手にしてくれ」

志希「……なんだかごめんなさい」

P「別に気にしてないさ。明日からも頑張ろう」

志希「流石だねぇ。明日からもよろしくね」

ベランダ

P「ふぅ…」

P「眠れないからって出てくることはなかったかな」

P「でも、星も綺麗だしちょっとだけ時間潰すか」

P「……ん?」チラ

P(周子の奴まだ起きてるのか…杏は爆睡中かな)

P「星が綺麗って言うセリフは聞いたことないなそう言えば」

P「小さかったり、見えたり見えなかったりするからか?」

P「…死兆星は見えてないな」

まゆ「どうかされましたかぁ?」

P「え?」ビク

まゆ「あっ、ごめんなさい…まゆです」

P「あ、あぁ…ごめん。びっくりしただけだ」

まゆ「こっちこそ、ごめんなさい…」

P「いやいや。寝れないのか?」

まゆ「…はい」

まゆ「神経が昂ぶってまして…」

P「そうか」

まゆ「お隣いいですか?」

P「どうぞ」

まゆ「失礼します…」

P「折角だし、小さい椅子でも出すか」

まゆ「あ、お気遣いなく…」

P「気にしなくていいよ」

まゆ「ありがとうございます」

Pの寝室

志希「……にゅ?」

志希「まゆちゃんいない…?」

志希「ま、いっか。あー、幸せにゃー」ハスハス

ベランダ

まゆ「綺麗な夜空ですね」

P「そうだなぁ」

まゆ「こういう空を見てると悩み事がどこかに行きそうです」

P「悩み?」

まゆ「些細なことですから気にしなくていいですよ」

P「そうか。ならいいけど」

まゆ「…はい」

まゆ「あの…、お隣いいですか?」

P「隣?」

まゆ「えっと…もっと近くに行っていいですか?」

P「あぁ、そういうことか。どうぞ」

まゆ「ありがとうございます」

まゆ「まゆは、難しいこととか分からないんですけど…」

P「うん」

まゆ「媚薬…って本当に効果があるんでしょうか?」

P「どうだろうなぁ…分からないなぁ」

まゆ「そうですよね…」

P「俺も専門家じゃないからな。ごめん」

まゆ「さっき、一ノ瀬さんから惚れ薬?みたいなものをを頂いたんですよぉ」

P「あいつ、そんなもの持ってたのか…」

P(まぁ、ビタミン剤とかの可能性も否定出来ないが…)

まゆ「勇気を貰えるように…」

まゆ「その…さっきからですね。心臓の音がやけに大きく聞こえるんです」

まゆ「こうやって隣に入れるだけでこんな気分になれるなんてまゆは幸せ者です」ニコ

P「健気だな」

まゆ「まゆの気持ちに気づいてくれていますか?」

P「気持ち?」

まゆ「…はい。こうして隣にいると気持ちが溢れてしまいそうです」ポフ

P「ま、まゆ?」

まゆ「気持ちいい…です」

まゆ「安心します…」

P(まぁ、ちょっとくらいならいいか…)

まゆ「まゆはですね。いい子でした」

P「いきなりどうした」

まゆ「まゆの昔話ですよ。親にも先生にも褒められるいい子だったんです」

P「まぁ、なんとなく想像はつくな」

まゆ「そうですか?」

P「あぁ、今もそうじゃないか」

まゆ「いい子って表現はあまり好きじゃないんですけどね…」

P「どうしてだ?」

まゆ「だって、いい子にしてるだけじゃ、誰も見てくれないじゃないですか」

まゆ「いつも手のかかる子だけ構って、まゆはいい子だから平気でしょって…時にそう思うことがありました」

P「言われてみればそうかもなぁ…」

まゆ「いい子はどうでもいい子なんですよね」

まゆ「Pさんはまゆをいい子…どうでもいい子なんて考えていますか…?」

P「大事なアイドルだよ」

まゆ「アイドルじゃないまゆは?」

P「どうだろうなぁ…。どうでもいいとは思わないけど」

まゆ「…もし、まゆが悪い子になったらPさんはもっと構ってくれますか?」

まゆ「まゆだけを見てくれますか?」

まゆ「24時間365日まゆのことを考えていてくれますか?」

まゆ「まゆだけを見てくれますか?

P「そんなことして俺が喜ぶとでも?」

まゆ「事務所にいるアイドルAって認識よりはマシですよぉ」

P「どうしたんだまゆ?」

まゆ「分かりません、ただ、ちょっと今日は変に興奮して…」

P「そうか。まぁ、そんなことを言ってもまゆがそんなことをしないってのは分かってるからいいけどな」

まゆ「……」

P「それくらいこれだけ付き合いがあれば分かるよ」

まゆ「まゆはあなたの特別になれればそれでいいですよぉ」

P「特別か…。特別ってなんだろうな。事務所にいる皆は他の人に比べたら特別なのは間違いないんだけどな」

まゆ「そこから更に…もう一歩進みたいです」

P「今日のまゆはなんだか駄々っ子みたいだな」

まゆ「あっ…ごめんなさい」

P「いや、別にいいけど」

まゆ「お母さんから聞いたんですけど、まゆは小さい頃、まれに我儘を言ってたみたいです」

P「そら言うだろう」

まゆ「はい。好きなモノがどうしても欲しい時だけ、悪い子になってたみたいですね」

P「まぁ、誰でも我儘言うさ」

まゆ「Pさんでも?」

P「あぁ」

まゆ「悪い子ですね」クスクス

まゆ「Pさん…」

P「どうした?」

まゆ「手握ってもいいですか?」

P「手か?」

まゆ「…はい」

P「どうぞ」

まゆ「ありがとうございます」

まゆ「手って凄いですよね…その人の生き様が出る気がします」

P「手相とかの意味でか?」

まゆ「それもそうですけど…こうやって手を合わせるとPさんと繋がっている気がします」

P「しわとしわを合わせて幸せ」

まゆ「なんですそれ?」

P「昔のCMだよ」

まゆ「まゆは…幸せです」

まゆ「そう言えば、ここの隣って…」

P「ん?周子だな。あ、電気消えてる」

まゆ「もう、こんな時間ですものね」

P「そんなに遅いか?」

まゆ「そこまでですけど、深夜って時間帯だと思いますよ」

P「そうか。それじゃ、そろそろ寝ろよ」

まゆ「…はい」

ガラッ

P「お先にどうぞ」

まゆ「紳士ですねぇ」

P「そうか?」

まゆ「はい」クルッ

P「ん?どうした?」

まゆ「ここからだと下の景色が見えるなぁと思いまして」

P「あぁ、確かにそうかもな」

まゆ「ですよね…えいっ」

P「ま、まゆ?」

まゆ「今はお月様とお星さましか見てませんから…」

まゆ「ちょっとだけ、まゆだけのPさんでいて下さい…」ギュー

P「まゆ…」

まゆ「悪い子になっていいですか?」

まゆ「ありがとうございました」

P「体は大丈夫か?」

まゆ「はい。スッキリしちゃいました」

P「それじゃ、おやすみ」

まゆ「おやすみなさい。まゆのPさん」ニコ

P(今度は俺が寝れる気がしないんだが…)ハァ

翌日

志希「いやー、昨日は快眠だったよ」ニコニコ

P「そうか。安物の布団で悪かった」

志希「いやいや、キミの匂いはお金で買えない価値があるからね」

まゆ「そうですねぇ…」

P「何だか悪いな。朝食まで作って貰って」

まゆ「いえいえ。なんでしたら毎日作りましょうか?」

志希「あ、それだったら、アタシは毎日キミの為に凄い濃いコーヒー淹れてあげるね」

P「たまにはいいかもな」

まゆ「たまに…ですか」フゥ

志希「そう言えばさー」モグモグ

P「食べながら話さない」

志希「あ、ごめんごめん」

志希「昨日夜起きたらまゆちゃんがいなかったんだけど、どこか行ってたの?」

まゆ「あ、ちょっと夜風に当たりに…」

志希「そうなんだ。アタシはてっきりプロデューサーと何かしてるのかと思ってた」

P「何か?」

志希「んー、そこからは女の子の口から言わせる物じゃないよね」

P「朝から何を言い出すんだ…」

まゆ「それじゃ、今日も頑張りましょうね」

P「あぁ」

志希「いやー、楽しかったな。今日もいいかな?」

P「ダメだ」

志希「ちぇー」

事務所前

P「それじゃ、俺は志希と仕事だから」

まゆ「はい。頑張って下さいね」

志希「ばいばーい」

車内

P「…さて」

志希「ん?」

P「昨日、まゆになに渡したんだ?」

志希「昨日…あー、ビタミン剤」

P「ビタミン剤?」

志希「惚れ薬って言って渡したからプラシーボ効果で効いちゃったんじゃないかな」

P「なるほど」

志希「って、やっぱり何かあったんじゃん」

P「いや、そういう訳じゃないんだけどな。自分で惚れ薬飲んでたし」

志希「あらま」

P「何でも勇気が欲しかったんだと」

志希「そういう使い方もあるね。勉強になるよ」ウンウン

P「参考にしないでくれ…」

P「まぁ、なんだ。これからは誰かにそういう渡さないでくれよ」

志希「分かったにゃ」

P「ありがとな」

志希「しかし、キミの周りには魅力的な子が多いねぇ」

P「自分も含めてか?」

志希「ふふふ。含めても含めなくてもね」

P「それは自覚してるさ」

志希「甲斐甲斐しく世話してくれる子もいるし、心底慕ってくれてる子もいる。キミのことが嫌いの子なんていないんじゃないかな」

志希「凄いねぇ」

P「そうだな」

志希「ま、楽しくやっていこうねー」

P「だな」

志希「例えばさ」

P「うん?」

志希「誰でも誰かにイメージは抱いてるじゃん」

P「そうだな」

志希「例えば…アタシだったらなんだろ…頭良いとか理系とかかな」

P「まぁ、イメージってか事実だよな」

志希「今のはまぁ、実際と合ってるイメージだけどその内自分の中のイメージが勝手に成長しちゃうってこともあり得るよね」

P「ズレてくことはあるかもなぁ」

志希「その内、イメージが現実を先行しちゃって…」

P「こんなのあなたじゃないみたいな?」

志希「そうそう。そうなると怖いよねー」

P「本当のあなたはどこ?ってなりそうだな」

志希「目の前にいる人が本物なのにね」

P「その人の認識からしたらニセモノになっちゃうのか」

志希「そしてニセモノは……って展開だね」

P「…実際に起きたら怖いな」

志希「愛しさが憎しみは紙一重だからねぇ」ウンウン

事務所

文香「古澤さんは…こういうのを見たりしますか?」

頼子「シェイクスピアですか?あまり見ないですね…」

文香「そうですか…」

頼子「それに、何だか聞いたことのないタイトルですね」

頼子「?」

まゆ「終わりよければ全てよし。ですね」

文香「え…?」

まゆ「まゆは知ってますよぉ。たまたまですけど」

文香「どんなお話なんですか?」

まゆ「身分が違いの許されない恋のお話ですよ」

頼子「ロミオとジュリエットみたいな…感じでしょうか?」

まゆ「どうなんでしょうかねぇ…?」

まゆ「まゆはそこまで覚えていませんから…」

文香「そうですか…。一説によると判断が二つに分かれている作品ですね」

頼子「そうなんですね…」

まゆ「きっと、ヒロインの子は悪い子になっちゃったんですね」ニコ

まゆ「誰かの…特別になるために」

終わりです。
読んで下さった方ありがとうございました。

書き終えてから、幸子と莉嘉の話を書こうとしていたのをすっかり忘れてました…。

イベントとか出てみたいですね。

簡単な解説です。

All's Well That Ends Well:邦訳は終わりよければ全てよし。

シェイクスピア作の戯曲です。

簡単に纏めますと、身分の低い女性ヘレナが位の高いバートラムと言う男性を好きになり紆余曲折を経て結婚する話です。

一見、ヘレナのシンデレラストーリーにも聞こえますが、バートラムはヘレナのことは好きではありませんでした。

既成事実を作られて無理矢理結婚させられてしまったバートラムからしたらハッピーエンドには聞こえませんね。

何かあればどうぞ。

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