「終わったな」「ああ」(8)

「終わった……終わったんだ」

男は優しく微笑みながら、膝枕で眠っている女に語りかけた。
静寂の中、彼女の寝息だけが響く。

彼らの結末を祝福するかのように、朝日が彼らを照らした。

「全て、終わったぞ」

墓石を前にして、中年の彼は呟いた。
手に持っていた日本酒の酒瓶の蓋をあけると、とくとくと墓石に浴びせた。
酒瓶の中身がなくなると、彼は懐からタバコを取り出しライターで火をつけた。

しばらく墓石を無言で見つめた後、男は墓場を去った。
酒とタバコの臭いだけが残った。

「終わってしまったわね」
彼女はひとりため息をつく。その声だけが誰もいない生徒会室に響いた。

静寂に耐えられなくなった彼女は、窓の外を見た。
彼女が欲してやまない彼が、憎かったはずのあの女と笑い合っていた。
何を考えるでもなくしばらくその光景を見ていると、彼がこちらに気づいたようだ。
彼が手を振ってきた。

心の中にわだかまりは残っていた。
それでも、彼女は笑って手を振り返した。

太陽が失われ、辺りが暗くなる。

「終わったんだな」
彼は呟いた。そして前のめりに倒れた。全ての力を使い切ったのだ。

同時に、周りを囲んでいた敵が全て砂となって崩れた。

「終わったよ!」

彼女は、いつものように笑って言った。

「終わりか」

地球が爆発した。宇宙は滅んだ。

「終われ」

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