藤木「オーキド博士から呼び出し?」(77)

オーキド「おお、よく来たな。藤木くん、永沢くん」

藤木「…」

永沢「…」

オーキド「ほれ、そこにモンスターボールが3つあるじゃろ?中にはポケモンが入っておる。2人ともそこから1つ持っていきなさい」

藤木「…永沢くんから選びなよ」

永沢「ふん…君はやっぱり卑怯だな。藤木くん」

藤木「ええっ!?な、なんでそんなことを言うんだい!?」

永沢「君、僕が選んだポケモンに対して有利なタイプのポケモンを後から選ぶつもりだろ?君はつくづく卑怯なことを考えるな」

藤木「そ、そんなことしないよ…じゃあ僕から選んでいいんだね?」

永沢「ふん…勝手にしなよ」

藤木(うぜえ…)

藤木「じゃあ僕はヒトカゲにしよう…」すっ

永沢「ふん…藤木君、君は本当に卑怯だな」

藤木「え…?」

永沢「君、僕の家が火事になったこと知っているだろ?炎タイプのポケモンで僕のトラウマをえぐるって魂胆なんだろ?ふん…最低だな」

藤木「そ、そんなことないよ…」

永沢「まあいいさ…じゃあ僕はゼニガメを選ぶよ」すっ

藤木(このクソタマネギ野郎…)

永沢「そうだな、せっかくポケモンを手に入れたことだし…藤木くん、ここでバトルしないかい?」

藤木「え、バトル…?」

永沢「ふん…ビビッてるのかい藤木くん?君は卑怯なうえに臆病なんだね」

藤木「そ、そんなことないよ!やってやるよ!」

永沢「よし…行け!ゼニガメ!」ばっ

藤木「行け!ヒトカゲ!」ばっ

ゼニガメ「ゼニー」

ヒトカゲ「カゲー」

永沢「ゼニガメ!体当たりだ!」

藤木「ヒトカゲ!永沢を攻撃しろ!」

永沢「なにッ!?」

ヒトカゲ「カゲー」ばっ

ざしゅっ ばしゅっ ざんっ

永沢「ぐわぁぁぁぁ!!」がくん

藤木「よし!ヒトカゲ!尻尾の炎の部分で永沢を燃やせ!」

ヒトカゲ「カゲー」ばっ

ぼおおおおっ!

永沢「ぎゃああああああ!火ッ!火がぁぁぁぁ!」じたばた

藤木「ふん…僕を侮辱するからこんな目に遭うんだよ永沢くん」

永沢「ぎゃああああ!た、助けてくれぇぇ!持ってる金は全部渡す!ゼニガメも君が持って行っていい!だから助けてぇぇぇ!」じたばた

藤木「ほんとかい…永沢くん?」

永沢「ほんとさ!だ、だから早く火を消してくれぇぇぇ!」じたばた

藤木「だが断る」

永沢「そ、そんなぁぁ!ぎゃあああああ!」じたばた

藤木「花輪くんからもらったマスターボール…まさかこんなに早く使うことになるとはね…」すっ

藤木「行けッ!マスターボール!」ぶんっ

永沢「ぬおおおおおっ!?」しゅううううう… ポンッ!

マスターボール『…』うにゅうにゅ

藤木「…」ドキドキ

マスターボール『…』うにゅうにゅ

マスターボール『…』ぴたっ しーん…

藤木「や、やったぞ!ナガサワを捕まえたぞぉぉぉ!」

―――
――

藤木「出てこい!ナガサワッ!」ばっ

ナガサワ「ナガサー!」

藤木「おまえちょっとパン買ってこい」

ナガサワ「ナガナガー!」びゅんっ

タッタッタ…

―――
――

ナガサワ「サワサワー!ハァハァ…」

藤木「おせぇよ!なにしてたんだよ!くそがっ!」ばしっ

ナガサワ「ナ、ナガー!」がくぶる

藤木「まあいいや…パンよこせよ…っておい!なにアンパンなんか買ってきてんだよ!僕がいつも食うパンっつったらクリームパンに決まってんだろ!アホが!」どかっ

ナガサワ「ナ、ナガナガ!」がくぶる

藤木「おら、やり直しだ!さっさと買いに行けよノロマがッ!」

ナガサワ「サワ…サワー!」びゅんっ

タッタッタ…

ナガサワ「…」

ナガサワ「ハッ!?」

『俺は何をしている?なぜあんな男の元で働いているのだ?どうしてなんの見返りもなくあのクズに従わねばならないのだ?』

『思い出してきた…思い出してきたぞ…そうだ…!俺はポケモンではない!俺はもとは藤木の卑怯な罠にハメられた人間だったのだ!そうだ!もう奴に従う必要などない!俺はナガサワではない!永沢だッ!』

しゅうううう…

永沢「藤木め…奴は万死に値する男だ…!」ゴゴゴゴゴ…

―――
――

永沢(こうして僕は藤木のもとに戻ることなく修行の旅に出た)

永沢(草むらから飛び出してくるポケモンをこの身一つで薙ぎ払い、視覚を遮断されたイワヤマトンネルで屈強な岩ポケモンを殲滅し、凶暴な水タイプのポケモンが蔓延る海を泳いで横断した。多くの戦闘を経験するうちに僕のレベルは着実に上がっていった)

永沢(そしてのちに気づいたのだが、僕には弱点という弱点がなくなっていた。あんなに苦手だった炎の攻撃すら今はなんともない。僕は無敵だ。僕は神に近い存在だ)

永沢(チャンピオンロードという場所では伝説の鳥ポケモン、ファイヤーに出会った。彼は僕の師とも呼べる男だ。戦いの本質とは何か?それは拳を交えるのではない。視線を交えることなのだ。目と目が合った瞬間に勝負はすでに終わっている。そう彼は教えてくれた)

永沢(僕はファイヤーから奥義『にらみつける』を教わった。これは生涯の宝となるだろう)

―――
――

藤木「けっ!永沢の野郎、あれから3か月以上経つのに帰ってこねぇ!あの腐れタマネギ野郎め!」

藤木「まあいい…花輪からもらったマスターボールはまだストックがある…次は笹山さんあたりを捕まえて俺の奴隷にでもしてやるかな…くくく!」

藤木「ははははは!」

ギロッ…

藤木「!」ゾクッ

藤木「な、なんだ…!?今のは…?誰かの視線を感じたぞ…!」ブルブル

藤木「う…!な、なんだよ…!震えが止まらねえ…!」ブルブル

しゅたっ

永沢「…久しぶりだな。藤木くん」

藤木「て、てめぇは…永沢!!」

永沢「どうだい、僕の『にらみつける』は?どうやら相当効いてるようだね」

藤木「なんのつもりだてめぇ!」ガクガク

永沢「君が僕の視線に恐れを抱いた瞬間、この勝負は決まった…予告する!君は今日ここで…」

永沢「死ぬッ!」ゴゴゴゴゴ…

藤木「く…!ヒトカゲ出てこい!」ばっ

ヒトカゲ「カゲッ!」

藤木「ヒトカゲ!『ひのこ』だッ!」

ヒトカゲ「カゲ…!」ばっ

永沢「無駄ァ!!」びゅんっ

ザシュッ!

ヒトカゲ「カ…ゲ…」ばたっ

藤木「な!?ヒトカゲー!!」

永沢「ふん…僕のトラウマである炎で攻撃しようとしたんだろうが無駄だ」

藤木「く…!」

永沢「この永沢、すでに弱点などない…次はおまえだ藤木…!」ゴゴゴゴゴ…

藤木「!」ゾクッ

永沢「くらえぇッ!『きりさく』ッ!」ズバァァッ!

藤木「ぐっ!?…ぎゃあぁぁぁぁ!!」どばぁっ

永沢「おやおや…急所に当たったかい?出血がひどいな。藤木よ…」

藤木「ぐああぁぁぁ…!」どぼどぼ

永沢「まだまだ君には苦しんでもらわないとね…『どこのこな』ッ!!」

しゅぱー ぱらぱらぱらぱら…

藤木「な、なんだ!?永沢のタマネギの先端から粉が噴き出して…」

藤木「げほぉッ!?」げぼげぼ

藤木「な、なんだ…!か、体の感覚が…!う…ぐ…!く、苦しい…!うがぁぁぁ!」げぼげぼ

永沢「僕の毒は強力だからな…せいぜい苦しむといい…」

永沢「この永沢としたことが…正しくは『どくのこな』だッ!」

藤木「うがぁぁ…!うああああ…!」げぼげぼ

永沢「ふんっ…ざまあないな藤木…だが君は万死に値する男…攻撃の手は休めないッ!」びゅんっ

永沢「オラオラオラッ!」ズバッ! グシャッ! ズバッ!

藤木「ぎゃあああああッ!」どばぁ ぐちゃくちゃ…

永沢「てめえは俺を怒らせた…その単純な理由で君はこんな目に遭っているのさ。卑怯者の藤木くん…」

藤木「ぐ…う…」ぐったり

永沢「そろそろ限界のようだね…」だきっ

藤木「?…永沢…くん…どうして…僕に…抱きついて…いるん…だい?はぁはぁ…」

永沢「……藤木くん、ごめんよ。さんざん痛めつけて…君はもう助からない…」ぎゅっ

藤木「…はぁはぁ…永沢…くん…?突然なにを…?」

永沢「最近やっとわかったんだ…君はいつも僕のそばにいてくれた…それなのに僕はいつも君を卑怯者と罵っていた…ごめん…」

藤木「はぁ…はぁ…」

永沢「晴れの日も雨の日も楽しいときも悲しいときも…君はそばにいてくれた…僕が落ち込んでいるとき真っ先に励ましてくれたのも君だった…ありがとう…藤木くん…」

藤木「永沢…くん…」うる

永沢「今まで気づかなくてごめんね…でも今ならわかるよ…藤木くん、君は僕の、最高の友達だったんだね…!」ぎゅっ

藤木「う、うぅぅ…!永沢くん…!ううぅぅ!」ぎゅっ

永沢「泣かないで藤木くん…死ぬときは一緒だ…これからはいつでもどこでも藤木くんと一緒だから…」だきっ

藤木「ううう…!永沢くん…!うう…!」ぽろぽろ

永沢「それじゃあ…いいかい…藤木くん…?」

藤木「うん…君と一緒なら…僕は…」

永沢「ありがとう藤木くん…それじゃあ逝くよ…」

藤木「…僕らはずっと…永遠に友達だよ!永沢くん!」

永沢「もちろんさ!」ばっ

ピカッ!

『じばく』

ドオオオオオオオオオンッ!!!!



こうして2人の少年の物語は幕を閉じた… おわり

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