ほむら「まどっち」(27)
まどか「さやかちゃん、さやかちゃん」
さやか「ん? なに?」
まどか「さやかちゃんって語呂がいいなって思ったの」
さやか「ごろ?」
まどか「うん。 とっても言いやすいし声に出すとなんだか楽しくて」
さやか「ふーん……なんだか照れちゃうね」
ほむら「自分の名前……それも発音なんて上辺だけを褒められて」
ほむら「よかったわね。 美樹さやか」
まどか「あ、ほむらちゃん」
さやか「ひどい言い方だね。 うらやましいんだ」
ほむら「そんなことはないわ」
さやか「まどかー、なんか転校生がへそ曲げてるから」
さやか「褒めてやってよ」
まどか「え?」
さやか「ほら、あたしを褒めたみたいに」
さやか「なんか"ほむら"から適当にさ」
まどか「えっと……」
ほむら「まどか、そんなことをする必要はないわよ」
まどか「ほむらちゃん……ほむらちゃん……」
まどか「ほみゅ……」
まどか「あ、あはは……ほむらちゃんってかっこいい素敵な名前だけど」
まどか「ちょっとだけ言いにくいね」
ほむら「!!」
さやか「ほむらほむら……確かに」
さやか「言われてみれば言いづらいかも」
まどか「なんでだろうね」
まどか「"む"の音が言いにくいのかな?」
さやか「ああ、ま行だから?」
まどか「ま行……」
まどか「でもマミさんをいいにくいなって思ったことはないよ?」
さやか「あれ、それもそうだ」
さやか「むしろ言いやすい方だよね、マミさん」
まどか「なんでほむらちゃんだけ……」
ほむら「……」
さやか「あ」
まどか「あ」
まどか「別にほむらちゃんが悪いってことはなくて……えっと」
さやか「そうだよ! 発音なんて上辺だけじゃん!」
ほむら「……私は特に何も感じていないわ」
ほむら「話を続けたらどうかしら?」
さやか(やっばー……転校生なんか機嫌悪いよ……)
まどか(わ、わたしのせいだよね……謝らなきゃ)
まどか「ご、ごめんねほみゅらちゃ……」
さやか「……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「巴マミの名前は、ま行のみで構成されているから
かえって言いやすいのではないかしら」
まどか(話に乗ってきた!)
さやか(攻めてきたよ!)
まどか「そ、そうなんだ……さすがほむらちゃん」
さやか「な、なるほどねー……それで……」
ほむら「それで"ほむら"のようにま行を他のもので挟む言葉は
若干発音しづらくなるようね」
まどか「あぅ……ごめんなさい」
ほむら「まどか、あなたが謝ることは何一つないわ」
ほむら「これは単なる事実よ」
ほむら「さあ、話を続けましょう」
まどか「も、もういいんじゃなかな?」
まどか「ほむらちゃんはちょっとだけ言いにくいけど素敵な名前ってことで」
ほむら「今は発音のみの話なの」
ほむら「文字から連想するイメージは関係ないわ」
さやか(なんか転校生がヤケになってる……)
ほむら「今までの話をまとめるとこういうことね」
・ま行は言いにくい
・ただし連続して発音するなら問題ない
・ま行と他の行を交互に発音するとすごく言いにくい
さやか「ふむふむ……」
さやか「あれ、"ふむふむ"って別に言いにくくないよ?」
ほむら「それは子音が同じだからじゃないかしら」
まどか「そっか、全部"う"の音なんだ」
まどか「あ!」
さやか「な、なに?」
まどか「さやかちゃんって全部"あ"の音なんだ!」
まどか「だから言いやすかったんだね」
さやか「あーほんとだ」
ほむら「子音も全部違う"ほむら"は言いにくいわけね」
まどか「え!? えっと……」
まどか(どうしよう! 今日のほむらちゃんすっごいネガティヴ!)
さやか「た、例えばさ!」
さやか「はむはむって何かを食べてそうなイメージだけど」
さやか「それも言葉が詰まるからそう聞こえるんだね」
まどか(あ、さやかちゃんが話を変えてくれた!)
ほむら「……言われてみればそうね」
まどか「ほ、ほんとだねー」
まどか「子音って大事なんだね」
まどか「へむへむとかほむほむでも、とっても言いにくいもんね」
さやか「!」
ほむら「!」
まどか「え?」
さやか「……」
ほむら「……」
まどか「え?? な、なに???」
さやか「……ぷっ……くくっ……」
ほむら「……私は帰るわね」
まどか「な、なんで? もしかして変なこと言っちゃった……?」
さやか(も…もう駄目……)
さやか「ほ……」
まどか「ほ?」
さやか「ほwwwwwむwwwほwwwむwwwwww」
さやか「あっひゃっひゃっひゃっwwwwwww」
まどか「!?」
さやか「うっわほんとだwwwwww滅茶苦茶言いにくいwwwww」
まどか「さ、さやかちゃん!?」
さやか「やっばwwwwwほむほむやっばwwwww」
ほむら「……」プルプル
まどか(ほ、ほむらちゃんが怒ってプルプルしてる!)
まどか「さ、さやかちゃんやめて!」
さやか「ごめwwwww完全にwwwツボだわwwwww」
まどか「えっと、ただ言いにくい例でほむほむって言っただけで」
まどか「ほむほむとほむらちゃんは関係ないよ!」
さやか「やwwwwwwめwwwwてwwwww」
ほむら「……」プルプル
さやか「あっひゃっひゃっwwwwwww」
まどか(ど……どうしよう……)オロオロ
ほむら「……」プルプル
さやか「ひゃっひゃっwwww」
まどか「……」オロオロ
さやか「あははwwwはは………」
さやか「はー……はー……お腹痛い……」
まどか「さ、さやかちゃん」
まどか(どうするのこの空気……)
ほむら「……」
さやか「いやーごめんごめん」
さやか「純粋に面白かったから我慢できなくて」
ほむら「……」プルプル
まどか(あ! これほむらちゃん怒ってるっていうより……)
まどか(堪えてるんだ!)
ほむら「……す」
さやか「え?」
ほむら「あなたを許すわ。 美樹さやか」
まどか「!!」
ほむら「今回の原因は私が無意味に卑屈になったこと」
さやか(自覚あったんだ)
ほむら「馬鹿にされる言われはないにしても」
ほむら「声を上げて笑われる必要はないにしても」
ほむら「あなただけが悪いというわけじゃない」
まどか(わたしも原因だしね)
ほむら「だから……」
ほむら「私はあなたを咎めない」プルプル
ほむら「でもひとつ覚えておきなさい」
さやか「うん?」
ほむら「私は自分の名前を気に入っているの」
ほむら「語呂だけならともかく
名前の一部分を取り出して執拗に馬鹿にされるというのは
あまりいい気分にならないわ」
さやか「う、うん。 ほんとごめん」
まどか「じゃ、じゃあ……この話は終わり!」
さやか「次はまどかの話だね!」
まどか「……」
まどか「えっ?」
さやか「まどかってそんなに言いやすくないよね」
まどか「えっと……これ話題変わってるのかな?」
さやか「たぶん"ま"の音と"ど"の音が強すぎるから」
さやか「そこで詰まっちゃうんだよ」
まどか「そ、そうなの……?」
さやか「だからさ、まどっか……いやまどっちゃん…‥?」
さやか「とにかく一回区切っちゃえばいいと」
ほむら「いい加減にしなさい」
ほむら「あなたは私だけでなく、まどかまで玩具にするつもりなのかしら」
さやか「いや、馬鹿にするとか笑うとかじゃないよ。ほむ……」
ほむら「……」
さやか「……ら。」
さやか「そ、そう! ほむ…らが考えればいいんだよ!」
さやか「まどかのあだ名を!」
ほむら「あだ名?」
さやか「そう。 まどかの新しい呼び方!」
ほむら「まどかのあだ名……」
まどか「えっと……わたしは別に」
ほむら「そうね。 そんなもの必要ないわ」
ほむら「まどかのままでいいでしょう」
ほむら「それに私は"まどか"を言いにくいと思わないわ」
さやか「それでもお願い!」
ほむら「……私が言うのもなんだけど、もうこの話はいいでしょう」
さやか「だからこそだよ!」
さやか「ここでほむらがビシッと語呂も語感もいい呼び方を考えてくれたら!」
さやか「今日の出来事もいい思い出としてまとまるよ!」
ほむら「まとまりをつかなくしたのは美樹さやか、あなたよ」
さやか「それは悪かったって!」
さやか「ね! お願い!」
ほむら「まどか」
まどか「な、なに?」
ほむら「あなたはどう思うのかしら」
まどか「う……うーん……」
まどか「自分の名前って呼びかけるようには使わないから」
まどか「あんまり分かんないけど……」
まどか「ほむらちゃんがわたしの呼び方を考えてくれること」
まどか「そこだけを見るとまあうれしいかなって」
まどか「そう思う……かな」
ほむら「そう」
ほむら「あなたがそう言うなら……」
ほむら「考えるだけなら……構わないわ」
さやか「おお!」
まどか「ほむらちゃん!」
ほむら「美樹さやかが言っていたことを一応踏まえて……」
ほむら「区切りが良くてかつ最後が弱くならない言葉……」
ほむら「……」
ほむら「こんなのはどうかしら」
おわり
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