さやか「能ある鷹は因果を隠す!」 (246)

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


「そんな...こんな馬鹿なことがあってたまるかあああぁぁぁ!」

「...ふふっ。なにもかもおしまいよ」

「あ、あんた...」

「これは罪...私を倒せば全てが終わると思い込んだあなたの罪よ」

「っ!」

「喚きなさい、悔やみなさい。それが、あなたにできる唯一のこと...その様、地獄の底で見させてもらうわ」

ベチャリ



「う、うわあああああああああ!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427128365

"もしも...もしも人生がもう一度あれば、全てにやり直しができれば..."

人はその言葉を幾度となく思い描くと共に、自分の行いを悔やみ嘆く。

だが、彼女は...美樹さやかは違う。

美樹さやかは悔やむことを許されない!

さやか「そうだ...あたしに迷っている暇はない!」

全ての引き金となったのならば、いつかは必ず償いをしなければならない。

彼女にとっては、いまがその時なのだ!

さやか「あいつの、まどかの親友として...あたし一人が諦めるわけにはいかないんだぁぁぁ!!」

さやか「見ろ、師から、友から受け継いだこのチカラ!海を割り、空にそびえる鉄の剣!」

『......』ゴゴゴゴゴ

(そうださやか。命を、怒りを燃やせ!神も悪魔も超える...今がその時だ!)

さやか「うおおおおおおお!!!」


カッ

*****************************


さやか「ビックバァァン...あれっ?」

キョロキョロ

さやか「...ゆめ?」

さやか(よかった...終焉の審判が訪れて暗黒の軍団が押し寄せたわけでも、空が割れて炎が舞って巨大魔神が見参したわけでもないみたいだね)フゥ

さやか「さっ、気をとりなおして今日も一日元気にいきますか!」

ほむら(...もう何度目か分からないループ...さすがにそろそろ限界が近いかも)

ほむら(主に失敗の一番の原因は美樹さやか...)

ほむら(...なんとかならないかしら)

教室

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

ほむら(この自己紹介も何回目かしらね)

まどか(あれ...?どこかで会ったような...)

さやか「うわ、すっげー美人」

ほむら(今度こそ、あなたを救ってみせる...!)キッ

まどか(睨まれた?)ビクッ

ガヤガヤ

仁美「不思議な雰囲気の方ですね、暁美さん」

さやか「まどか知り合い?」

まどか「いやあ...」

まどか(夢で会ったかもなんて言えないよ...)

ほむら「すいません。ちょっと気分が...」

生徒「じゃあ私が連れてくよ」

ほむら「いえ、係の人にお願いします。鹿目まどかさん、あなたが保健係よね?」

まどか「え、あの...」

ほむら「連れてってもらえる?保健室」

さやか「うんうん、このさやかちゃんに任せてくれたまえ」

まどか「保健係はさやかちゃんだよ」

ほむら「」

さやか「ねえねえ、転校生はどうしてまどかが保健係だと思ったの?」

さやか「まどかが可愛いから?」

さやか「うんうん、あたしもまどかみたいなナースになら看病されたいな~とか思ったりするもん。その気持ちも解らんでもない」

さやか「ハッ!まさかあたしの嫁のまどかをたぶらかそうと!?転校そうそうけしから~ん!」

ほむら(うぜえ...)

さやか「それはそうとさ、ほむらって名前ってかっこよくない?」

ほむら(...一応、美樹さやかにも忠告はしておこうかしら)

さやか「なんかこう、燃え上が~れ~♪って感じのさ」

ほむら(この子の行動次第で大きく状況が変わるし)

さやか「お~い、転校生?」

ほむら「美樹さやか」

さやか「お、やっと喋ったか。なに?転校生」

ほむら「あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大切にしてる?」

さやか「あたしは...大切だよ。家族も友達も大好きで、とっても大切な人達だよ」

ほむら「本当に?」

さやか「本当も本当、真実と書いてマジと読め」

ほむら「」イラッ

ほむら「そう...もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうなんて絶対に思わないことね」

ほむら「さもなくば...全てを失うことになる」

さやか「え、どういうこと?」

ほむら「......」スタスタ

さやか「やれやれ、転校生さんのガードは堅いようですな」

――――――――――――――

CDショップ

シャカシャカ

まどか「~♪」

さやか「ワンツースリーフォー!」

『助けて...』

まどか(?)

さやか「~~ふんふんふ~ん♪」

まどか(さやかちゃんかな?)

『早く...!助けにきて...!』

さやか「オゥイエス!」グッ

まどか「多分気のせいだね、うん」

『気のせいじゃないから!HELPME!』

まどか「~♪」シャカシャカ

『もう駄目だぁ...おしまいだぁ...』

――――――――――――――

まどか「気のせいと言いながらやっぱり来ちゃったけど...こっちでいいのかな?」

QB「ぶわっ!」ガタン

まどか「ヒッ!」ビクッ

QB「ハァ...ハァ...」

まどか「あ、あなたが呼んでたの?」

QB「助けて...」

ガシャン

まどか「暁美...さん?」

ほむら「ほむらでいいわ」

まどか「え?」

ほむら(あ、しまった。いつものループの癖で...)

ほむら「鹿目まどか、そいつから離れて」

まどか「で、でもこの子、ケガして...」

ほむら「......」

さやか「まどか!こっち!」ブシュウウウ

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「ま、待ちなさい...くっ、視界が...」

ほむら(早く消火器の煙を払わないと...)

さやか「貰ったぁ!」ガシッ

ほむら「なっ!?」

さやか「消火器で相手の気を散らしてからの背後からの奇襲...仁美から聞きかじった護身術がこんなところで役立つなんてね。CD買ってて出遅れた甲斐があったよ」

ほむら「は、放しなさい!」

さやか「おおっと、もがいても無駄さ。そういう組み方だからね。そして聞かせてもらうよ、あんたがまどかを襲ってた理由を...ってえ?景色が変わって...」

ほむら(!力が緩んだ...今なら)スルッ

さやか「あ、しまった!こうなったら力ずくであんたを...」

ほむら「来なさい。私から決して離れては駄目よ」グイッ

さやか「え、あ、う、うん」

まどか「ほむらさんから逃げてたら、景色が変わってなんか変なヒゲが...」

使い魔「ところで俺のヒゲを見てくれ。こいつをどう思う?」

まどか「す、素敵なんじゃないかな~と」

使い魔「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。それじゃ、俺達がとことん悦ばせてやるからな」ガシャン

まどか「え、身体に茨が絡まって...あの、わたしそういう趣味ないんですけど!」

使い魔「人間は度胸、なんでも試してみるのさ。きっといい気持ちだぜ?」

まどか「いや、むしろ苦しくなって...誰か、助け...」

「ティロ・フィナーレ!」カッ

さやか「なんなのさ、これ!」

ほむら「詳しい説明は後よ。早くまどかを見つけないと...」ジャキッ ダァン

さやか「ヒッ!?本物の拳銃!?なんでそんな物を...」

ほむら「詳しい説明は後よ」

さやか(さっきと同じセリフ...それだけヤバイのかな、今の状況って)

さやか「あ、あれ?また景色が...」

ほむら(間に合わなかった...!?)

マミ「もう安心よ。あなたがQBを助けてくれたのね」

まどか「あなたは...?」

マミ「私は巴マミ。あなたと同じ美滝原中学の三年生よ」

まどか「あ、あの、これって一体...」

マミ「今から説明するわね。でも、その前に...」

ほむら「......」

マミ「あなたね、QBを襲った魔法少女は」

ほむら「......」

マミ「無言は肯定と捉えていいのね?」

さやか「まどか、大丈夫だった!?」

まどか「う、うん。さやかちゃんの方こそ、大丈夫だったの?」

さやか「もちろん。この才色兼備さやかちゃんの辞書にピンチなんて言葉はないよ、多分」


マミ「なら早く消えなさい。いくら穏やかさを信条としている私でも、いささか語気が荒くなるわ」

ほむら「私は...」

マミ「お互い、余計なトラブルには巻き込まれたくないでしょ?」

ほむら「......」クルッ

さやか「ちょ、ちょっと待った二人共!」

マミ「?」

ほむら「...なにかしら」

さやか「いや、ほらさ。あたしは転校生に、まどかはお姉さまに助けられたみたいだからさ、恩人同士でケンカして欲しくないかな~と...そう思うでしょ?まどか」

まどか「う、うん。そうだねさやかちゃん」

マミ「でも、この子はQBを...」

さやか「何かの間違いかもしれないじゃないですか。事情はよくわからないけど、ここは穏便に、ね?」

マミ「...まあいいわ。とりあえず、QBを治させてもらうわよ」

ほむら(今回はやたらと美樹さやかが友好的な気がするわね)

QB「どうもありがとう、僕の名前はキュゥべぇ」

さやか「うわ、喋った!?」

まどか「あなたが私を呼んだの?」

QB「そうだよ、鹿目まどか。それに美樹さやか」

さやか「ん?あたし呼ばれてたっけ?」

QB「ちゃんと呼んだよ。君は音楽に夢中過ぎて気付かなかったけれど」

さやか「あ、そうだったの。ゴメンゴメン」

QB「僕、君たちにお願いがあってきたんだ」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

まどか「ま、魔法少女?」

さやか「なにそれ?」

マミ「私が説明するわね」

ほむら「......」


マミ「私達魔法少女は、魔女と戦う存在よ」

まどか「魔女って...さっきの?」

マミ「あれは、その使い魔だけれどね」

まどか「あの、魔法少女の敵は魔女なんですよね?なら、なんでほむらさんはQBを...?」

ほむら(呼び捨てでいいのに...)

ほむら「それは...」

さやか「う~ん」

マミ「魔法少女を増やしたくないからでしょ?」

まどか「え?味方は多い方がいいんじゃ?」

マミ「そういうワケにもいかないのよ。これを見て」スッ

まどか「わぁ...綺麗ですね、これ」

QB「これはソウルジェムといって、魔法少女の必需品さ。これがないと魔法が使えないからね」

さやか「う~ん」

マミ「これ、今は少し濁ってるでしょ?これに、魔女が落とすグリーフシードを当てると...」シュゥゥゥ

まどか「あ、濁りがとれた」

マミ「魔法少女が増えると、このグリーフシードを取れる機会が減ってしまう...だから、QBを襲ったのでしょう?」

ほむら「...違うと言ってもあなたは信じないでしょうけど」

さやか「う~ん」

まどか「どうしたのさやかちゃん?さっきからずっと唸って」

さやか「いや、な~んかおかしいなぁと思ってさ...」

まどか「なにが?」

さやか「なんで魔法少女が仲間の魔女と戦ってるのかなーと...」

まど・マミ・QB「「「!?」」」

ほむら「ちょ」

さやか「え?魔女って、成長した魔法少女のことをいうんじゃないの?ほら、大人になったらさ、少女じゃなくなるんだし」

マミ「え...?キュ、QB?」

ほむら(なにサラッと爆弾発言してるのよ、この糞青!マズい、このままだと巴マミがあの時みたいに...!)

QB「マミ、君は自分が魔女になると思うかい?」

マミ「そ、それは...ないと思うけれど...」

QB「そういうことだよ。わかったかい、美樹さやか」

さやか「う、うん...」

ほむら(た、助かった...)フゥ

QB(なんて勘のいい子なんだい。危うく契約のチャンスが減るところだったよ)

さやか(あれ?なんか論点ズレてね?)

QB「本題に戻るよ。僕は、君たちに魔法少女になってもらいたいんだ」

ほむら「やめなさい。契約なんてしてもロクなことがないわ」

さやか「う~ん、いきなり戦えっていわれてもねえ...」

QB「大丈夫!その代わりの対価として、なんでも願い事を叶えてあげる」

まどか「なんでも?」

QB「一つだけだけどね。でも、どんな奇跡でも起こしてあげられるよ!」

まどか「奇跡って...例えば、死んだ人を蘇らせたりとか?」

QB「そうだよ。なんでも叶えてあげられるよ!」

さやか「奇跡、ねえ...」

マミ「とりあえず、ここを出ましょうか。いきなり決めるのなんて無理だし」

QB「そうだね、よく考えてから答えを聞かせてもらうよ」

まどか「あ、あの、よかったら魔女退治に連れてってもらえませんか?」

マミほむさや「「「え?」」」

まどか「私、まだ魔法少女のことがよくわかってないので...マミさんと行動すればどういうものかわかるかなあって...」

マミ「...ええ、そういうことなら喜んで」ニコッ

ほむら「あなたは一般人を危険に晒すつもり?」

マミ「彼女が望んでいることよ。それに、なんのリスクも知らないままに契約させる方が危険じゃなくて?」

ほむら「そ、それは...」

ほむら(マズいわ。このままだとまどかが契約コースまっしぐら...かといって納得させれる理由も見当たらないし...)

さやか「あ、だったら、あたし達もお願いします!ね、転校生!」

ほむら「!?」

さやか「あたしもまだよく分かってないから...ね、いいですよね?」

マミ「あなたはともかく...彼女はQBを襲ったのよ?そんな人は信用できないのだけれど...」

さやか「少なくとも、魔女の取り分の心配をしたわけじゃないと思いますよ。だって、使い魔が人を食べて魔女になるんでしょ?だったら、あたしを助けたりなんかしない筈ですから」

さやか「それに、もしかしたらQBになにかされたのかもしれませんし」

マミ「あなた、QBを疑うつもり?」

さやか「い、いや、そういうつもりじゃないんですよ!ただ、こういうのは考えられません?例えば、『友達が魔法少女についてよくわからないままに契約してしまい、命を落とした』とか」

ほむら「!」

マミ「そうなの?」

ほむら「...ええ、だいたいあってるわ。だから、私はこいつを接触させたくなかった」

ほむら「もう、そんな事で命を落とす人は見たくないもの...」

さやか(えっ、当たってたの?)

さやか「...そういうわけで、安易な契約をしそうになったら止めてくれる役として...駄目ですかね?」

マミ「...QBをもう襲わないって約束してくれるなら...」

ほむら「善処はするわ」

マミ「...わかった。ただし、約束を破ったら...わかってるわね?」

ほむら「ええ」

帰り道

まどか「じゃあね、さやかちゃんとほむらちゃん」

さやか「じゃあね~!」

ほむら「...さようなら、鹿目まどか」

さやか「いや~、悪いね、まどか送るのに付き添って貰っちゃって。実はこの前、まどかが痴漢に遭ってね。もっとも、あたしが撃退したんだけど。まあ、それ以降あたしがこうやって送り届けてあげてるわけ」

ほむら「そう...」

ほむら(確認しておくべきね...なぜ美樹さやかがいつもと違うのか)

ほむら「美樹さやか、話があるわ」

さやか「ん、なになに?」

ほむら「あなたは...魔法少女について何を知ってるの?」

さやか「?今日初めて知ったよ」

ほむら「だったら、何故あんな発言を?」

さやか「う~ん、なんつーか...勘ってやつかな?」

ほむら「勘?」

さやか「いや、まどかを探してる時のあんた見てたら、まるで友達を本気で心配してるように見えたからさ。少なくとも、悪い奴とは思えなかったのよ」

さやか「それに...あのQBっての、胡散臭いんだよね」

ほむら「胡散臭い?」

さやか「『奇跡なんてないさ 近寄るのは偽善者の甘い罠』って聞いたことがあるから」

ほむら「そ、そう...」

ほむら(美樹さやかに今までのループの記憶があるわけでは無いみたいね...まさか本当に勘で...?)

さやか「それにさ、ほむらは忠告してくれたじゃん。正直、意味がわからなかったけど」

さやか「そんなほむらと胡散臭い動物だったらどっちの方が信用できる?...って話だよ」

ほむら「え?」

さやか「ん?あたしなにか変なこと言った?」

ほむら「今、呼び方が...」

さやか「いつまでも転校生って呼び方じゃ、堅苦しいでしょ?ひょっとしてあだ名の方がよかった?『ほむほむ』とか『暁美っち』とか『ほーむラン』とか...」

ほむら「ほむらでいいわ」

さやか「え~、『ほむほむ』なんか可愛くていいじゃん」

ほむら「ほむらでいいわ」

さやか「ちぇっ、わかったよ」

ほむら「私は家、こっちだから...」

さやか「うん、じゃあねほむら。また明日!」フリフリ

ほむら「ええ、また明日」

ほむら(また明日、か...思えばいつぶりかしらね、こうやって普通に挨拶を交わすなんて)

********************************

さやか『あのさぁ、QBがそんな嘘ついてなんの得があるわけ?」

ほむら『そ、それは...』

さやか『あたし達に妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?』

さやか『まさかあんた、あの杏子とかいう奴とグルなんじゃないでしょうね』

ほむら『ち、違うわ!』

まどか『さやかちゃん、それこそ仲間割れだよ』

さやか『...どっちにしろ、この子とチーム組むの反対だわ。だって――』

****************************

ジリリリリ バン!

さやか「......」ムクリ


さやか「...なに、あの夢...変な夢だったなあ...つーか、杏子って誰よ?」

今日はここまでです。タイトルと冒頭がアレですが、クロスじゃないです。鉄の城とか戦闘のプロとか変な奴らは出てきませんのであしからず

数日後

マミ「ティロ・フィナーレ!」カッ

ドズン

まどか「やったあ!」

シャルロッテ「いただきます」ニュルン

マミ「え!?」

ほむら(...今だ!時よ止まれ!)

カチリ


ほむら「巴マミを移動させて...あなたはこれでも食べてなさい」ポイッ


カチリ

シャルロッテ「やはりチーズはウマイのです...あれ?」

ボカン

マミ「え...?」キョトン

ほむら「なにしてるの?早く止めをさしなさい」

マミ「え、ええ。今度こそ終わりよ、ティロ・フィナーレ!」カッ

シャルロッテ「キャ―――!!」

マミ「そ、その...ありがとう、暁美さん」

ほむら「礼には及ばないわ」ファサッ

さやか「......」

まどか「どうしたの?」

さやか「な、なんでもないよ」

さやか(...やっぱ、あれってただの夢だよね。ほむらがあんなに大人しそうな子なわけないし。ていうか、眼鏡っ子に三つ編みで控えめ...あたしはどんだけほむらに属性求めてんのさ)ウ-ン

まどか(さやかちゃんが黙って考え込む姿なんて初めて見る...)

―――――――

病院

『不死身のヒロシだー、鋼鉄ジーグ~』

恭介「さやかは僕を虐めてるのかい?」

さやか「......」

恭介「もううんざりなんだよ!弾けもしない音楽を聞かされるのは!こんな歌、万全な状態でも弾けるわけないよ!好きだけどさ!」

さやか「......」

恭介「もう治らないんだよ!奇跡か魔法でもない限り!」

さやか「......」

恭介「うう...うわあああああ!!」

さやか「......」

恭介「......」

ほむら(さて、そろそろ彼女があの男に怒られるはずなんだけど...)

まどか「珍しいね、ほむらちゃんからお誘いなんて」

ほむら「ほら、同じクラスの人なんだから顔くらい合わせておいた方がいいかと思って...」

ほむら(ほんとは、彼か美樹さやかをなだめるのを手伝ってほしいからだけれど)

まどか「うん、そうだね...ふふっ」ニコッ

ほむら「どうしたの?」

まどか「嬉しいんだ。ほむらちゃんが頼ってくれるの」

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃんもマミさんも、魔法少女だからってなんでも自分でやろうとしちゃうんだもん。だから...困ったらどんどん相談してね」

ほむら「...善処するわ。ここね」スッ

『すごくスッキリしたよ。いつもありがとうさやか」

ピタッ

『久しぶりだったからね。随分溜まってたんじゃないの?』

『まあね。一人でやってるところを見られたくないし...』

ほむら(え...ちょ、なにこれ。やだこれ)

まどか「ほむらちゃん?」

『どうする?もう一回いっとく?』

『いや、それは悪いよ』

『心配ないって。今日は(時間が)大丈夫な日だからさ』

ほむら「...私は何も聞いてないわ。帰りましょうまどか」

まどか「まって、もう少し」

ほむら「だ、ダメよ!あなたには早すぎる!」

まどか「大人の世界が見れるんだよ!?これは見るしかないよ!」フンス

ほむら「鼻息が荒いわまどか!ダメなものはダメ!」

まどか「はーなーしーてー!」

ガララ

さやか「なにしてんのさあんたら」

ほむら「ストレス発散?」

さやか「うん。ストレスっていうのは、一気に爆発させるより小出しにした方がいい時もあるって仁美に教わったからね」

上条「弱音を吐こうにも、一人じゃ危ない人だと思われかねないからね。こうしてさやかに聞いてもらって、スッキリしてるわけさ」

まどか「あ、あはは。なんかすごい勘違いしちゃったみたい」

さやか「なぁに言ってんの。あたしらはそんな関係じゃないって」

ほむら「で、この漫画や小説の山は?」

上条「さやかに貸して貰ってるんだ。これがなかなか面白くて」

ほむら(なんというか、いつもより充実してるように見えるわね)

上条「特にこの『極道兵器』ってやつが面白くてね。短いながらもグイグイ引き込まれていくんだ」

ほむら(そしてそのチョイスはどうなのよ)


さやか「んじゃ、またくるからね」

パタン

ほむら「...美樹さん。あなた、彼のことが好きなの?」

さやか「好きだよ」

ほむら(やけにあっさりと認めたわね)

まどか「さやかちゃん、そうじゃなくて...」

さやか「ん?...ああ、そういう意味じゃないからね。あくまでも幼馴染としてってこと」

ほむら「ほんとうに?」

まどか「大丈夫だよ。さやかちゃんは嘘ついたらすぐに顔に出るから」

さやか「ひょっとして、恭介に一目ぼれしちゃったとか?」

ほむら「それはないわね」

さやか「ちぇっ、なーんだ。もしそうだったら、冷かしてやろうかと思ったんだけどなぁ」

ほむら(隠してるだけかもしれないけど、本当に恋心がないのなら、彼絡みで契約する確率も低い...かもしれないわね)

夜 工場

ゾロゾロ

デカイおっさん「ようこそ集まってくださいました」

ちいさいおっさん「我らの共通の目的はただひとつ。魂を肉体から解き放ち、昇華すること!」

デカイおっさん「そう...すなわちそれは魂の進化!」

ちいさいおっさん「進化!」

「「進化は我らとともにあり!」」

変な老人「さて、この液体を混ぜ合わせたらどんな味になるのやら」ドポドポ

三つ編みのおっさん「なにが理想的な戦争よ...わが身を痛めぬ勝利がなにをもたらすというのだ...うおおおっ」

ダンディなおっさん「待っていろ...今すぐお前のもとへいって、今度こそ真の決着を着けてくれようぞ...なぁ、たいそ」

カチリ

ほむら「...今回は、まどかも美樹さやかも、ついでに志筑仁美もいないようね」

ほむら「それにしても、いつになくむさ苦しい集団ね。さっさと気絶させて...」スッ

ほむら「......」

ほむら(やっぱり洗剤だけ捨てておきましょう。なんだかよくわからないけど、時間の壁すら突破してきそうな妙なプレッシャーを感じるわ。こういうのは触れないのが一番よ)

ほむら「さて。ここの魔女は苦手だから、速攻で終わらせるわよ」


カチリ

ドドドドドド

************************

さやか『いや~、ゴメンゴメン。危機一髪ってとこだったねえ』

まどか『さやかちゃん...その恰好』

さやか『あ、あはは、まぁなに?心境の変化っていうのかなぁ?』

まどか『......』

さやか『大丈夫だって!初めてにしちゃあ結構うまくやったほうでしょ、あたし?』

まどか『でも...』

*************************
ジリリリリ バン

さやか「...また変な夢見た。なんか魔法少女っぽかったなぁ」

さやか「もしあたしが契約したら、あんな感じの恰好になるのかな...?」

さやか「...ちょっとカッコいいかなとか思ったりして」エヘッ

―――――――――――――――――

放課後

マミ「お待たせ。あら、暁美さんは?」

まどか「ほむらちゃんは、武器を調達しに行くってでかけちゃいました」

マミ「そう...美樹さんもいないのね」

まどか「居残りで遅れるから、先に行っててって」

マミ「そういうことなら仕方ないわね」

まどか「今日もよろしくお願いします、マミさん」

――――――――――――――――――――

使い魔の結界

使い魔「ブーンwブーーンww」

マミ「いたわね...」

まどか「がんばってください、マミさん!」

マミ「ええ。すぐに終わらせてあげるわ」フフッ

使い魔「フーーワッww」

マミ「ティロ・ボレー!!」ドドゥ

使い魔「ファーw」

マミ「もらった!」

キィン

まどか「弾が槍に弾かれた!?」

使い魔「ヒャッハーw」

まどか「あっ、使い魔が逃げていく...」

杏子「相変わらず、チョロいことやってんだなあんたは」

マミ「佐倉さん!」

まどか「だれ...?」

QB「彼女は佐倉杏子。かつてマミとコンビを組んでいた魔法少女さ」

杏子「ったく、使い魔なんざ狩ったところでなんの得にもならないって知ってるだろ?」

マミ「...そんなことはないわ。使い魔を倒せば、それだけ街の人たちへの危害も減るわ」

杏子「他人なんざ守る価値ねーよ。...それに、凄い素質があるとはいえ、ただの一般人なんて連れ歩きやがって」

まどか「そ、それはわたしが勝手についてきただけで...」

杏子「...あんたさ、ナメてんの?あんたが付いてまわることが、どれだけ負担になってると思ってるんだよ」

まどか「...!」

杏子「超弩級の素質持ちだかなんだか知らないけどさ、んなこともわからねえようじゃ、おじゃま虫以外の何者でもねえよ」

まどか「うぅ...」

マミ「大丈夫よ鹿目さん。私はあなたをそんな風に思ったことは一度もないから」ナデナデ

まどか「マミさん」

マミ「...佐倉さん。彼女は、確かに高い素質を持っている。だからこそ、この世界がどのようなものかを知ることが必要なのよ」

杏子「チッ...またいらねえお節介焼いてんのか。だからあんたは足元掬われるんだよ!」ブンッ

マミ「!」

ガキィン

ガンガンガン

まどか「た、戦い始めちゃった...」

QB「これはマズイね。初対面ならまだしも、彼女たちは絶賛敵対中。こうなった以上、どちらかが死ぬまで収まらないかもしれない」

まどか「そんな!」

QB「残念ながら、僕にも止めることはできない。でも、ただ一つだけ方法がある」

まどか「それは...」

QB「きみが契約するんだ。そうすれば、全てことが納まる」

まどか「!」

QB「早くするんだ!来るかもわからない助けを待って、二人を犬死させるつもりかい!?」

まどか「う、うぅ...」

QB「手遅れになる前に僕と契約を!」

ザシュッ

マミ「くっ...!」

杏子「...やっぱ、腕が鈍ってんじゃねえか。あんなのを連れまわしてるんじゃねえよ」

マミ「なんの...まだまだ」

杏子「安心しな。あんた倒した後は、あのチビにゃ契約しないようにキッチリとヤキをいれておくからよ!」

ブンッ

マミ「くっ」

QB「まどか!」

まどか「わたし、魔法少女に...」





「どっせぇぇぇい!!」



バシュウウウウ

まどか「ひゃっ!」

マミ「わぶっ!」

杏子「げほっ、煙!?」

ブンッ

杏子「消火器!?あぶねっ」  ゴッ

「隙ありィ!」

バキィ

杏子「がはっ!...のヤロッ!」ブンッ

「おっと、危ない危ない...おうおう、あたしのダチ公に手を出すとは舐めた真似してくれるじゃないの」

まどか「その声に消火器は...さやかちゃ」



さやか「待たせたね」ドクドク

まどか「」

まどか「あの...さやかちゃん。おでこ」

さやか「え?なんのこと?」ゴシゴシ

まどか「いや...だから、おでこから血が...」

さやか「ごめん、ぜんっぜんわかんない」ドバッ

まどか「無理しないで。ほら、絆創膏」ペトリ

さやか「やばいよ。思いっきり槍当たっちゃったよ。完璧に防ぎ切った感を出してたのにめっちゃ恥ずかしいよ。絶対笑われてるよ」コソコソ

まどか「防ぎ切った体にするから恥ずかしいんだよ。ここは、あの娘の攻撃が凄かったことにしておこうよ」コソコソ

杏子「......」



杏子「あたしの槍から身を挺してあいつを庇うなんて、いい肝っ玉してんじゃねえか。何者だい、あんた」

まどか「気を遣ってくれた!いい娘だよ、あの娘すごいイイ娘だよ!」

さやか「知らざあ言って聞かせやしょう。あたしの名前は美樹さやか。マミさん率いる見滝原組の特攻隊長よ!」

まどか「また勝手に変なものをつくって...」

杏子「ふぅん...それで、その魔法少女でもない特攻隊長さんがなんのようだい?」

さやか「決まってるでしょ。マミさんの力になるのよ」

杏子「トーシロ一人が加わったところでなんになるってのさ」

さやか「そいつは見てからのお楽しみさ。マミさん、あたしたちの力を見せてやりましょ。...マミさん?」

マミ「」ドクドクドク

さやか「」

まどか「ま、マミさーん!」

マミ「」ドクドク

まどか「出血がひどい...とにかく絆創膏はらなきゃ...」ペトペト

杏子「お、おい...」

まどか「やめて、マミさんをこれ以上傷つけないで!」

QB「...まどか。マミの怪我は明らかに鈍器のようなものの跡だ」

まどか「え?」

QB「それに、消火器の底を見てごらん」

まどか「血がこびり付いてる...?」



さやか「」ダラダラダラ

まどか「...さやかちゃん?」

さやか「......」

まどか「あの、さやかちゃん?」

さやか「...た」

杏子「?」



さやか「あんた...よくもマミさんを!死ぬ覚悟はできてんだろうねえ!?」

まどか「ごまかした!?怒ってあの娘になすりつけた!」

杏子「あんたもあたしの槍の錆になりな。あんたの大好きなマミさんのところへ送ってやるよ」

まどか「また気を遣ってくれてる!自分がやったことにしてくれてる!いい娘だよ、やっぱりあの娘すごいイイ娘だよ!」

さやか「...ごめん、それ以上優しくしないで。マジで泣きそうになるから」

杏子「気なんて遣ってないよ。そもそもあたしがマミに喧嘩ふっかけたからこうなったんだ。過程はどうあれ原因を作ったのはあたしだ。あたしが殺ったんだ」

さやか「やめてホント。あんたの気持ちは分かったから。あたしが殺ったんだ」

杏子「いや、あたしだ」

さやか「あたしだって」

杏子「あたしだ!」

さやか「あたし...!」


ほむら(どういう状況かしらこれ)

ほむら「えっと...まどか?状況を説明してくれないかしら」

まどか「あっ、ほむらちゃん。大変なの、マミさんの血が絆創膏でも止まらなくて...」

マミ「」ドクドク

ほむら「うわっ、酷いわね...」スッ

パアアァァ

ほむら「治療魔法は苦手だけど...魔力は注いでおいたから、これで大丈夫よ」

まどか「ありがとうほむらちゃん!」

ほむら「それで、教えてくれるかしら」

まどか「えっとね」

カクカクシカジカ

ほむら「つまり、美樹さやかの乱入によって二人の戦いがうやむやになったと」

まどか「うやむやというか、グダグダというか...」

ほむら「それで、その肝心の二人は?」

まどか「あ、あれっ?いつの間にかいなくなってる」


ゲームセンター

ザワザワ

メザメタコーコロハ ハシリダシタ ミライヲエガクタメ ムズカシイミチデタチドマッテモーソラハ

さやか「......」タタタタン

杏子「......」タタタタン

「すげえ!あのウルトラC難度の名曲をミス一つなくこなしてやがる!」

キレイナアオサデ イツモ マッテテクレル ダカラコワクナイ

さやか「もうなーにがあっても」タタタ

杏子「くじーけー」タタタ

さや杏「「ないっ☆」」ビシィ

ワアアアアア

杏子「チッ、また同点か」ハァ ハァ

さやか「おやおや?もう息が上がってるように見えますが?」ゼー ゼー

杏子「あんたほどじゃないよ。ほら、水分とりな」

さやか「ありがと。さ、一休みしたら次の勝負に」

ガシッ

まどか「いく前に、なにをしてるか教えてほしいな」ギリギリギリ

さやか「ま、まどか...さん...?」

さやか「や、違うんですよ。これは遊んでたとかじゃなくて...その、杏子さんとの言い合いが白熱してしまいまして」

まどか「......」

さやか「それで、タイマン勝負を仕掛けたんですけど、杏子さんが『魔法少女じゃないから不公平だろ』って気を利かしてくれて」

まどか「......」

さやか「結果、魔法が関係ないこの種目に」

まどか「」メキメキメキ

さやか「あだだだ、頭が割れる!脳みそ的ななにかが出ちゃう!ヘルプ、ヘルプミー!」

杏子「てめえ、なにしやg」

まどか「ふたりとも」

さや杏「」ビクッ

まどか「正座」

この後、メチャクチャ説教された。

***********************

さやか『こんなところまで連れてきて何なのよ』

杏子『ちょいとばかり長い話になる...食うかい?』ヒョイッ

さやか『...いらない』ポイッ

ガッ

杏子『食いものを粗末にするんじゃねえ。殺すぞ』ギリギリ

さやか『...うっ!』

杏子『......』パッ

さやか『げほっ...』

杏子『...ここはね。あたしの親父の教会だった』

*************************
ジリリリリリ バン

さやか「......」ムクリ

さやか「...!!!?」

今日はここまでです。

―――――――――――――――


杏子「...んで、あたしを呼びつけて何の用だよ。昨日の続きか?」

ほむら「違うわ。あなたと手を組みたいのよ」

杏子「おいおい。そんなの、断固拒否するやつがいるじゃねえか」

マミ「あら、そんなことないわよ?昨日の姿を見てたら、優しいところは思ったより変わってないんだってわかったし」

杏子「バッ、ちげえよ。あれはあいつらに付き合ってやっただけだ!」

マミ「そういうのを人がいいっていうんじゃないかしら」

杏子「~!と、とにかくあたしはあんたらみたいなイイ子ちゃんとは違うんだ」プイッ

マミ「はいはい」

杏子「あっ、信用してないだろ!」

ほむら「...コホン。私の話、いいかしら?」

杏子「ふーん、ワルプルギスの夜ねぇ...確かに興味がないわけじゃない」

マミ「どうしてそのことを?」

ほむら「...統計よ」

杏子「統計だと?記録なんざ残ってないはずだが...」

ほむら「......」

杏子「...いや、あんたの目は嘘は言ってねえな。もっとも、それと信頼できるかは別だけどよ」

ほむら「返答は?」

杏子「とりあえずは一緒に行動する。ほっときゃあたしのとこもヤバそうだしね。あんたが信頼できる奴なら協力してやるよ」

マミ「私は信じるわ。助けてもらった恩があるしね」

杏子「相変わらずお人好しなこった。まあ、あたしの意見は変わらないけどな」

ほむら「そう...まあ、色よい返事を待ってるわ。それじゃあ、私たちは学校だからこのあたりで」

まどか「はぁ~...」

ほむら「おはよう、まどか」

まどか「あっ、おはようほむらちゃん、マミさん」

マミ「うかない顔してどうしたの?」

まどか「今日、さやかちゃんから風邪ひいたから学校休むって連絡きて...」

ほむら「あの美樹さやかが風邪?」

まどか「さやかちゃんが風邪なんてひくわけないから、多分仮病だと思うんだけど...昨日やりすぎちゃったせいかなぁ」

ほむら「大丈夫よ、まどか。あの美樹さやかよ?どうせそのことも一日経ったら忘れてるに決まってるわ」

まどか「そうかな...流石にさやかちゃんでもそんなことはないと思うけど...」


テクテク

さやか「いやー...ないない」

さやか「いくらワケわかんない夢見てもさぁ、流石にコレばかりはないって」

さやか「こうして学校休んでまで夢の通りに歩いたところでね、隣の風見野市に入るだけだし、廃教会なんてあるワケない」

廃教会「」ヒュウウウ

さやか「...うん。廃教会の一つや二つどこにでもあるよね。ほら、表札に佐倉なんて...」

表札「佐倉」

さやか「そうだよね!佐倉さんなんてありふれた苗字だからね!でもここに杏子なんて女の子は住んでないからね!」

杏子「あれ?あんたなんでこんなとこにいんだ?」

さやか「」 orz

杏子「ふーん、夢で見たことを確認しに来た、か...」

さやか「最近、変な夢を見るのよ。最初はほむらと言い争ってる夢。次は、あたしが魔法少女になってる夢。そして今回は」

杏子「あたしがあんたに自分の過去を話してる夢、か」

さやか「聞きたくないけどさ、あたしの見たあんたの夢って...当たってる?」

杏子「9割方な。違うのは、あんたが魔法少女じゃないことと、あたしが話すつもりはなかったこと。ていうか、なんで夢のあたしはこのこと喋ってんのさ」

さやか「わかんない。なんか、あたしが石ころだの抜け殻だのと悩んでて、それを励ましてるような感じだったけど」

杏子「石ころ、抜け殻...悪いが、あたしにゃ心当たりはねえな」

さやか「そっか...」

杏子「...まあ、あんまり悩むこともないんじゃねえか?」

さやか「えっ?」

杏子「ほら、もしも予知夢だとしたら、あんたはある程度未来が見えるってことだろ?なら、そいつを思う存分楽しめばいいじゃん」

さやか「そういうもんかな?」

杏子「そういうもんなの。あたしと違って、悪いことしたわけじゃないんだからさ、変に悩むことはねえって」

さやか「...わかった。うん、なんか少しスッキリしたような気がする」

杏子「そうかい。ほれ、ついでに林檎食うかい?」

さやか「ありがと」

さやか(でも...もし予知夢なら、最初に見たあの地獄のような夢も...)

さやか(ううん、そんなわけない...よね?)

さやか「ハッ。まさかこの林檎...!」

杏子「貰ったやつだから大丈夫だよ」

さやか「ん、そっか」シャクッ

杏子(盗んだやつを食べたら気にするタイプらしいからな。知らぬが仏ってやつだよ)

――――――――――――――

翌日

さやか「おはよー」

まどか「おはようさやかちゃん。風邪はもういいの?」

さやか「へっ?」

まどか「やっぱり仮病だったんだ」

さやか「い、いや?マジでやばかったよ、ウン。熱なんか40℃くらいまで」

まどか「」ジーッ

さやか「...すいません。ピンピンしてました」

まどか「...この前はごめんね、さやかちゃん」

さやか「ああ、違う違う。まどかに絞られたことじゃなくて、ちょっと杏子に用事があっただけ」

ほむら「......」

授業後

キーンコーンカーンコーン

さやか「今日も一日頑張ったぞーっ!」

まどか「さやかちゃんほとんど寝てたよね」

さやか「チッチッチッ。甘いね、あれは睡眠学習というやつの実験なのさ」

まどか「結果は?」

さやか「そ、それは...うぅ...」

さやか「―――なんの成果も得られませんでしたぁ!!」

まどか「はい。ノート」

さやか「ありがとうございますっ!」

仁美「......」

仁美「あの、さやかさん。まどかさん。ちょっと相談が...」

さやか「相談?おしゃべりじゃなくて?」

仁美「はい。ただ、ここでは話し辛いことなので...よろしいですか?」

さやか「あたしはいいよ。まどかは?」

まどか「えっと...」

『いいんじゃないかしら』

まどか「わひゃう!?」ビクッ

仁美「どうかされましたか?」

まどか「な、なんでもないよ」ウェヒヒ

ほむら『驚きすぎでしょう』

まどか『あんまりテレパシーに慣れてなかったから...』

ほむら『巴マミには私から事情を説明しておくから、志筑さんたちと一緒に帰りなさい』

ほむら(私は私で、杏子に聞かなくちゃいけないこともあるしね)

―――――――――――――――――――

マミ「そう。今日は私たちだけなのね。わかったわ」

杏子「じゃ、早速魔女を探しに行くか」

ほむら「その前にひとつ聞いていいかしら」

杏子「なんだよ」

ほむら「昨日、美樹さやかを教会まで連れ込んだようね」

杏子「人聞きの悪いこと言うな。あいつが勝手にあたしの家にきてただけだ」

ほむら「...なら、質問は増えるわ。ひとつ。彼女の用件はなんだったの?」

杏子「なにって言われてもなぁ...まあ、人生相談みたいなやつだよ」

ほむら「人生相談?」

杏子「なんか、最近変な夢を見るらしくてさ。それで悩んでたわけよ」

マミ「変な夢...悪夢ってこと?」

杏子「そう言っていいか微妙だけどな」

ほむら「なら、次の質問よ。なぜ彼女はあなたの教会を知っていたの?」

杏子「そう。それだよ。あいつが悩んでたのもそのことなんだ」

ほむら「えっ?」

杏子「あいつには、誰もあたしの家も過去も教えてなんていないんだ。なのに、夢で見た通りに道を辿ってきたら、教会に着いたんだとさ」

マミ「ちなみに、その夢の内容は?」

杏子「なんでも、自分が石ころだの抜け殻だのを悩んでて、それをあたしが励ますみたいに身の内を語ったらしいよ」

ほむら「...!」

マミ「石ころに抜け殻?」

杏子「あいつもあたしも心当たりはないから、よくわからないんだよ。そう考えると、予知夢ともまた違うような...どうした、変な汗かいてないか?」

ほむら「...美樹さやかは、最近夢を見ると言っていたのよね。なら、他の夢は?」

杏子「えっと、何故か気弱なあんたと言い争ってるのと、魔法少女になってまどかを助けるのって言ってたよ」

ほむら「!」

マミ「暁美さん?」

ほむら「...なんでもないわ。さぁ、魔女を探しにいきましょう」

杏子「なんか知ったような感じじゃねえか。教えなよ」

ほむら「大したことじゃない。あまり個人的なことを詮索しないでちょうだい」

杏子「チッ、ケチだなぁ」

ほむら(間違いない...美樹さやかの見たものは予知夢なんかじゃない)

ほむら(全て、私が繰り返した世界で起きたことだ)

ほむら(でも、何故そんなものを彼女が?)

今日はここまでです。おやすみなさい

――――――――――――――――――

ファーストフード店

さやか「恭介に惚れてたぁ!?」

仁美「はい。実は、大分前から...」

さやか「まどか。あんたは知ってた?」ヒソヒソ

まどか「う、ううん。初めて知ったよ」ヒソヒソ

さやか「全く、こんな別嬪さんを虜にするとは、罪なやつですなぁ」

仁美「それで、その...告白をしたいのですが、どうすればいいのやら...なにかアドバイスをお願いしたいんです」

さやか「そんなこと言われても...」←ラブレター数・恋愛経験共にゼロ

まどか「ねえ...」↑に同じ

仁美「そんなこと言わずに、お願いします!」

さやか「...よし、いいでしょう。日頃お世話になってる感謝の意も含めて、一肌脱いでやりましょう!」

仁美「あ、ありがとうございます!」

さやか「なぁに。このネゴシエーターさやかちゃんにお任せあれってね!」

まどか(うわっ、すごい不安)

病院


恭介「......」

ガララ

さやか「ヤッホー。美少女三人組がお見舞いに来ましたよー」

まどか「おじゃましまーす」

仁美「お、お久しぶりです」ドキドキ

恭介「...さやかと鹿目さんか。いつもありがとう。それに、志筑さんも久しぶり」

さやか「どうしたの?元気ないじゃん」

恭介「...さやか。借りたものは全部返すよ。あと、お見舞いにはもう来なくても大丈夫だ」

さやか「へっ?」

仁美「お見舞いはもういらないって、それでは...!」パァッ

恭介「うん。絶対に治らないみたいだ」

仁美「えっ」

まどか「そんな...」

恭介「そんな哀れむような目で見ないでくれ。さやかが弱音を受け止めてくれていたから、なんとか受け入れる覚悟はできていたんだ」

さやか「恭介...」

恭介「情けないだろう?あんなに励ましてもらったくせに、この様だ。きみが好きだと言ってくれたバイオリンはもう弾けないんだよ」

恭介「だから、もう僕に心配される価値なんか...」

さやか「......」

スッ

さやか「そういうことは冗談でも言っちゃだめだぞ」

恭介「さやか?」

さやか「恭介が弾いてたバイオリンは確かに素敵だった。でもね、バイオリンが恭介の全てじゃないんだよ」

さやか「バイオリンが弾けない恭介に価値が無いなんて、絶対にありえない。少なくとも、あたしたちはそう思ってる。それに...」チラッ

仁美「!」

さやか(言ってやりな、仁美)ニッ

仁美(...わかりましたわ)

仁美「...私が上条くんを初めて見たのは、あるコンクールの時でした」

仁美「あの時の上条くんの演奏に心を奪われてしまいました。あの演奏は、今でも忘れられません」

恭介(...やっぱりバイオリンじゃないか)

仁美「ちなみに、その時の上条くんは賞を貰えませんでした。というか、素人目に見ても他の方に比べて一段と劣っていましたわ」

恭介「えっ」

仁美「私が心奪われたのは、そんな中でも必死に今までの全てをぶつけるような姿勢です。それが無ければ、例え優勝していても心を奪われることはなかったでしょう」

仁美「私がお慕いしているのは、素晴らしいバイオリニストではなく、好きなものに全力で挑めるあなたなんです」

恭介「志筑さん...」

まどか(わたし、完全に空気だね)

恭介「はは...なんだか嬉しいな」

恭介「凄く嬉しいよ。バイオリンじゃなくて、僕を見てくれていたなんて。志筑さんも僕を慕ってくれていたなんて...ん?」

恭介(慕う...?慕うってどういうことだろう)

恭介(慕うっていったら、憧れるって意味だよね。いや、男女間で使う場合はむしろ...)

恭介「......」

恭介「えっ!?」バッ

さやか(気付くのおそいっての)

恭介「え、えっとその、お慕いしてるっていうのはつまり...」

仁美「///」モジモジ

恭介(こ、これは急展開だぞ。励まされたと思ったら、そのまま告白に移ってるだなんて)

恭介(たしかに、志筑さんはとても可愛い。でも、僕は志筑さんについて殆ど知らない。そんな軽はずみな気持ちで付き合ってもいいのか!?)

恭介(どうすれば正解なんだ?ライフラインさやか、プリーズ!)バッ

シーン

恭介(って、もういない!?ぼくはいったいどうすれば...)

テクテク

まどか「最後まで見ていかなくてよかったの?」

さやか「あたしらがいたら気が散るでしょ。結果は明日仁美からきくよ」

まどか「...いいなぁ。わたしも、恋愛の一つもしてみたいなぁ」

さやか「あたしも。...まぁ、当分はあんたがあたしの嫁だけどねー!」ギュッ

まどか「はわわっ、やめてよぉ~」

双眼鏡│ジーッ

ほむら「美樹さやかはいつもと変わりは無し、か...」

ほむら(あれが演技の可能性もあるにはあるけど、彼女があそこまで気取られないようにできるとは考えづらい。素があれと見た方がいいわね)

ほむら(だとしたら、彼女の見た夢はいったい...)

ほむら「なにはともあれ、ことは順調に進んでいる。このままいければ、今度こそは...」



さやか(まさか、仁美が恭介に惚れてたなんてね)

さやか(でも、幼馴染と親友が付き合うなんてめでたいね。仁美にはハンバーガーの一つでも奢ってもらいますか)

さやか「さっ、この上機嫌なまま寝れば、今夜こそいい夢を見れるはずさ!ではお休み」

**************************

仁美「私、もう自分に嘘をつかないと決めたんですの。さやかさん、あなたはどうですか?本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「な...なんの話をしてるのさ」

仁美「あなたは大切なお友達ですわ。私は抜け駆けも横取りするようなこともしたくありません。ですから、一日だけお待ちしようと思いますの」

仁美「私、明日の放課後に上条くんに告白します。それまでに、後悔なさらないように決めてください」

さやか「......」

まどか「さやかちゃん...あんな戦い方ないよ。あれじゃ、さやかちゃんの為になんて...」

さやか「あたしの為ってなによ。こんな身体のあたしに、なにがためになるっていうの?」

まどか「わ、わたしは、どうすればさやかちゃんが幸せになれるか考えて...」

さやか「...ならあんたが戦ってよ」

さやか「あんた、誰よりも才能があるんでしょ?あたしのためになにかしようっていうなら、まずあたしと同じ立場になってみなさいよ!」

さやか「無理だよね、ただの同情で人間止めれるわけないもんね!何でもできる癖になにもしないあんたの代わりにあたしがこんな目にあってるの!知ったようなこと言わないで!」

まどか「ま、まって...」

さやか「ついてこないで」


さやか(馬鹿だよあたし...なんてこと言ってんのよ...救いようがないよ...)グスッ

恭介「志筑さんって家こっちだっけ?」

仁美「いいえ、違いますわ」

恭介「それじゃ、なんで」

仁美「私、上条くんにお話がありますの」

恭介「え?」



さやか「......」ギリッ

ガタタン ガタタン

「いやー、ホント。ショウさんを見習いたいっすわ」

「女ってバカだからさぁ。油断するとすぐに籍とかいれたがるんだよね」

「捨てるときなんか特にウザイっすよねー」

さやか「...ねえ」

「どうした、お嬢ちゃん。こんなところでの夜更かしはよくないよ」

さやか「その女の人、あんたが大事で頑張ってたんでしょ?ありがとうとは言わないの?役に立たなかったら捨てちゃうの?」

さやか「ねえ、この世界に守る価値なんてあるの?あたしなんのために戦ってたの?ねえ、教えてよ。今すぐあんたが教えてよ」

さやか「でないとあたし...」

ズズズ



ガタタン ガタタン

*******************

ジリリリリ バン

さやか「...なんでやねん」

まどか「おはよー...あれっ?どうしたの?」

さやか「なんかね。スッゲー嫌な夢見ちゃったの」

まどか「嫌な夢?」

さやか「うん。説明するのも嫌なくらい嫌な夢」

ほむら「内容を教えなさい」

さやか「うわぉ、いつのまに!?」

ほむら「いいから教えなさい」

さやか「アタシ、アキラメ、ダイバクハツ」

ほむら「...そう。わかったわ」

まどか「うそぉ!?」

仁美「」ニコニコ

まどか「おはよー」

仁美「おはようございます」

さやか「その顔は...いい知らせみたいだね」

仁美「断られました」

まどか「へっ!?」

仁美「『志筑さんのことを何も知らないのに付き合うのは失礼だ』と言って、お友達から始めようと言ってくれました」

まどか「仁美ちゃんはそれでよかったの?」

仁美「はい。まずはひとつお近づきになれたことがとても嬉しいのですわ」

さやか「よかったね、仁美」

仁美「はい。今度、ハンバーガーでもなんでもご馳走しますわ」

さやか「よっしゃあ!約束だからね!」

ほむら「.......」

ほむら「美樹さやか」

さやか「なに?」

ほむら「放課後、一人で屋上に来てくれるかしら」

さやか「なにか大事な用事なの?」

ほむら「ええ」

さやか「オッケー。わかったよ」

ほむら(彼女はおそらく厄介なものを掴んでしまう...その前に釘を刺しておかないと)

―――――――――――――――

放課後 屋上

さやか「で、どうしたのさ」

ほむら「あなた、最近変な夢を見るそうね」

さやか「そうそう。今日なんか、何故かあたしが恭介に惚れ込んでて、仁美から宣戦布告されてめっちゃ荒れて...」

ほむら「その夢で、何故あなたは先に告白に動かなかったかわかる?」

さやか「たしか、自分が石ころだのなんだのと...あれっ、今までと同じっぽい」

ほむら(...やっぱり)

ほむら「美樹さやか。その夢について深入りするのは止めなさい」

さやか「えっ」

ほむら「これは忠告よ」

さやか「んなこと言われても...」

ほむら「」ジーッ

さやか「だぁぁ、わかった。わかりましたよ!あの夢はあたしのメモリーの中に留めておけばいいんでしょ!?」

ほむら「理解してくれたようね。約束、破らない事を信じてるわ」

さやか宅 

さやか「ああいわれると余計に気になるじゃんか~!」

さやか「ていうか、アイツ絶対なにか知ってるよね?あれで無関係ですなんてありえないよね!?」

さやか「...まあでも、ほむらは心配してくれてるんだろうね。これでほむらの忠告無視して探りを入れたら、足手まといになってバッドエンドに直行するパターンだね」

さやか(それに、あんな夢が実際に起こったら嫌だもん。そうよ、今までのは奇跡的に偶然が重なった賜物よ)

さやか「さっ、夜も遅いことだし寝るとしましょう。お休みなさい」

***************************


まどか「さやかちゃん...どうしたの、ねえってば!」

杏子「何がどうなってやがんだ...オイ!」

キュゥべえ「君たち魔法少女が肉体をコントロールできるのはせいぜい百メートルが限度だからね」

杏子「百メートル...?どういう意味だ!」

キュゥべえ「こういう事態はめったに起こることじゃないんだけど」

まどか「何言ってるのキュゥべえ…助けてよ!さやかちゃんを死なせないで!」

キュゥべえ「まどか…そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだってば。さやかは君が投げて捨てちゃったじゃないか」

キュゥべえ「ただの弱い肉体で魔女と戦えなんてとてもお願いできないよ」

キュゥべえ「今の君たちにとって肉体は外付けのハードディスクでしかない」

キュゥべえ「だから君たちの本体としての魂には魔力を効率的に運用できるコンパクトで安全な姿が与えられているんだ」

キュゥべえ「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね、君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなんだ」

杏子「ふざけんじゃねぇ!それじゃあたしたち、ゾンビにされたようなモンじゃないか!」

キュゥべえ「君たちにとっても便利じゃないか、ソウルジェムさえ壊れなければ君たちは無敵なんだよ?」

キュゥべえ「たとえ心臓が破れても、どれだけ骨を砕かれようとも死ぬことはない。弱点だらけの人体よりよっぽど安全じゃないか」

まどか「そんなのひどいよ…こんなのってないよ!」

キュゥべえ「君たち人間はいつもそうだ、事実を伝えるといつもきまって同じ反応をする」

キュゥべえ「わけがわからないよ」

*************************

ジリリリリ バン

さやか(衝撃的な事実が発覚したぁ――!?)

今日はここまでです。どうでもいいけれど、今川監督がまどマギの二期をやったら、QBがあしゅら男爵のポジションをやる気がしてしょうがないです。
耳毛で魔女や魔獣たちを殴り倒すQBさん、あると思います。

放課後 屋上

ほむら「...今度は私を呼び出してなんのつもり?」

さやか「単刀直入に聞くわ。魔法少女のソウルジェムってさ、魂でしょ」

ほむら「!」

さやか「...やっぱりか。ちなみに、あたしは何も探ってなんかないよ。あたしのあの夢が教えやがったのさ。あんた、あたしの夢についてなにか知ってるでしょ」

ほむら「な、なんのことかわからないわね」

さやか「まだしらばっくれる気か...なら、答えてくれるまでここは通さないからね。どちらにしても、あんたが教えなくても勝手に夢が教えてくれるだろうけどさ」

ほむら「...わかったわ。私の家で話しましょう。下手に言いふらされると厄介だもの」ハァ

ほむら「ついでに、食料品を買いたいから荷物を持つのを手伝ってくれるかしら」

まどか(さやかちゃん...急に用事があるなんて言って、どうしたんだろう)

杏子「おい、ほむらの奴はどうした?」

マミ「さあ。用事があるから後で合流すると連絡はあったけど...」

杏子「ったく、気分屋なやつだ」

まどか「ほむらちゃんも...?」

杏子「まっ、あたしとマミならそこらの魔女には負けないだろうが...ん?」

マミ「どうしたの?」

杏子「あそこ歩いてるの、さやかとほむらじゃねえか?」

コソコソ

杏子「あいつら、あたしらほっぽいてなにしてやがんだ?」

マミ「遊んでる...わけでもなさそうね」

まどか「どこかに向かってるみたいだね」

杏子「ん?あいつらの持ってる袋...食いもんだな」

マミ「食べ物ってことは、家に行くつもりかしら」

杏子「まさかあいつら、あたしらに黙って美味いもの作るつもりじゃないだろうな!?」

マミ「このまま追跡しましょう」ワクワク

まどか「マミさん、楽しんでませんか?」

マミ「探偵ごっこって楽しいじゃない」

ホムホーム

お菓子「」ドサドサッ

ほむら「まあ、好きな物をつまんでてちょうだい」

さやか「じゃあ、お言葉に甘えて...って、こんな適当な感じでいいの?」

ほむら「冗談半分に聞いててくれると助かるわ。下手に理解しようとすると混乱するに決まってるもの」

さやか「遠回しにあたしをバカにしてる?」

ほむら「事実よ。私だって、何も知らずにこんな話をされたら疑うに決まってるもの」

ほむら(流石に魔女のことは話せないわね。その辺りだけはごまかしておかないと)

――――――――――――――

マミ「どう?なにか聞こえる?」

ピタァ

杏子「いや、こんだけドアに張り付いてても何言ってるかわかりゃしねえ」

まどか「うーん、素直に頼んだ方がいいんじゃないかなぁ」

杏子「バカヤロウ。わざわざあたしたちに隠して集まってんだぞ?はぐらかされて終わりに決まってらぁ」

マミ「せめて盗聴器でもあれば...」

まどか「それ犯罪ですよ」

「お困りの様だね」

マミ「キュゥべえ。なんだか久しぶりね」

QB「僕はずっと一緒にいたけど...」

杏子「まあいいや。なにか策があるのか?」

QB「きみたちは二人の会話を聞きたいんだろう?僕が協力すれば容易いことだからね」

まどか「なにをするつもりなの?」

QB「簡単なことさ。知っての通り、僕には壁を透過する能力がある」

杏子「なるほど。中に入って盗聴器の代わりになるわけか」

QB「いや、僕を嫌ってるほむらのことだ。すぐに追い出されてしまうだろう。それより、こうやって上半身の方だけ入って...」トプン

マミ「下半身だけこっちに出てるわね。って、これはまさか」

QB「僕の肛門付近に耳を近づけてごらん。中の声が聞こえるはずさ」

杏子「ぶち殺すぞてめえ」

杏子「ふざけんな!なにが悲しくてそんなことやらなきゃならねえんだ!」

QB「...?人間には同じ種族の肛門に興味を持つ個体もいるけれど、異種族である僕の肛門に発情するのかい?わけがわからないよ」

杏子「おい、こいつの尻に槍ぶちこんでやろうぜ。そうすりゃ穴が広がって聞きやすくなるだろ」

まどか「...わかった。わたしが聞くよ」

杏子「まどか!?」

まどか「いつも無力なわたしだけど、こんなことでも力になれるのなら、それはとっても嬉しいなって」

マミ「待ちなさい。可愛い後輩にこんなことを押し付けるつもりはないわ。ここは私が引き受ける」

杏子「ま、マミ...ならあたしが」

まどマミ「「どうぞどうぞ」」

杏子「......」

杏子「このやろおおお!」グググ

まどか「いたい、いたいよ杏子ちゃん!」

マミ「ちょ、三人も尻の穴に密着したら暑苦しいわ」

杏子「うるせえ、こうなりゃてめえらも道連れにしてやらぁ!」

『事実よ。私だって、何も知らずにこんな話をされたら疑うに決まってるもの』

杏子「!なにか聞こえたぞ。静かにしろ」






子供「ママー、あのおねえちゃんたちなにかやってるよ」

母「見ちゃ駄目ッ!何も見なかったフリをするのよ」

ホムホーム

~ソウルジェムについて説明中~

ほむら「...以上が私の話よ」

さやか「えーと、纏めると、契約したら魂抜かれる上に、ワルプルギスってので必ずまどかは死んじゃうから、何度も同じ時間を繰り返してるってことでOK?」

ほむら「OKよ」

さやか「時間を越えて友達を助けるか...なんだかロマンだねぇ」

ほむら「そう易いものじゃないわ。結局、一度も成功してないからここにいるんだもの」

さやか「...あんたの言った通り、受け入れられないのが普通なのかもしれないけど、あたしもあたしで変な体験しちゃってる訳だしね。信じるしかないみたいだわ」

さやか「んで、あたしの夢の心当たりとなると...」

ほむら「ええ。あなたの見た夢は、十中八九私が体験してきたことよ」

さやか「はー...と、なると、なにやらあたしが迷惑をかけてきちゃったみたいで...」

ほむら「...ええ。こうやって、あなたと敵対しない時間軸はとても珍しかったわ」

さやか「なんつーか、その、ごめん」

ほむら「いいのよ。私にだって、悪いところはあったんだから」

さやか「......」

ほむら「......」

さやか(やべえ。すごく空気が重たいんですけど)

さやか(...そりゃそうか。ほむらが繰り返してきた時間ってのは、言い換えればまどかが死んだ時間ってことだからね。そのことを話すのは、すごく辛いことだと思う)

さやか(どうにか励ましてやりたいけど、どうすれば...)

ピンポーン ピンポーン

さやか「?」

ピピピピピピピピ

『押しすぎだよ杏子ちゃん!』

『こうすりゃ嫌でも出てくるだろ』

さやか「まどかに杏子?」

ガチャリ

ほむら「なによ騒々しい」

マミ「話は聞かせてもらったわ。この子の尻の穴を通してね」グイッ

QB「耳毛を掴まないでくれるかな」

ほむら(尻の穴?)

ほむら「話は聞いたって...まさか」

杏子「ああ。あたしらの本体がソウルジェムってことと、あんたが戦う理由ってやつをさ」

ほむら(しまった、QBさえ現れなければ大丈夫と思っていたのに...迂闊だったわ)

ほむら(どうする...このままでは、せっかく組めた同盟も崩壊してしまう)

まどか「...あのとき言ってた、なにも知らずに契約して死んだ友達っていうのは、わたしのことだったんだね」

ほむら「まどか...」

まどか「わたしのせいでほむらちゃんはずっと苦しんで...」

ほむら「違うわまどか。これは、私が勝手にやってきたことなの。あなたのせいなんかじゃない」

まどか「でも、でも!」

ほむら「哀れみなんかいらないわ!あなたが生きていてさえくれればそれでいいの。お願いだから...あなたを私に守らせて」

まどか「ほむらちゃん...」

マミ「大丈夫よ、暁美さん」

ほむら「巴マミ...」

マミ「確かに今まではうまくいかなかったかもしれない。でも、今回は違う。そうでしょ、佐倉さん」

杏子「ん、まあそうだな。ベテラン三人もいれば、どうにかなるだろ」

ほむら「力を貸してくれるの?」

マミ「もちろんよ。たしかにソウルジェムのことはショックだったけど、あなたの背負ってきたものを考えれば大したことじゃないわ」

杏子「それに、このクソヤロウの思い通りになるのも癪だしね」ビタン グリグリ

QB「踏まないでくれるかな」

ほむら「...ありがとう、ふたりとも」ニコリ

まどマミ杏「!」

ほむら「どうしたの?」

杏子「いや、あんたがそんなふうに笑えるなんて思ってなかったからさ」

マミ「とっても素敵だったわよ」

まどか「もういっかい。もういっかい見せて!」

ほむら「なっ...か、からかわないでちょうだい///」プイッ

まどか「今度は照れ顔!」パシャッ

ほむら「撮らないでください!」

マミ「逃げられると思って?」

シュルルル

ほむら「ちょっ」

マミ「ごめんなさいね。こんな暁美さんを見れるなんて、めったにないもの」

杏子「いいじゃねえか。まどかと撮ってやるからさ」

ほむら「どういう意味よ」

まどか「やっぱり、わたしとなんかじゃ嫌だったかな...」シュン

ほむら「そ、そんなことはないわ!むしろ嬉しい!」

マミ「じゃあふたりでくっついて」グイグイ

ほむら「こ、これは近すぎない?」

マミ「いいからいいから」

さやか(余計な心配だったかな)

マミ「満足したわ」ホクホク

杏子「なに生暖かい目で見てんだよ。さやかも一緒に撮るぞ」

さやか「おー」

パシャリ

さやか(...ほむら、いまのあんたは独りじゃない。だから、全部背負い込まなくてもいいんだよ)

さやか宅

さやか「時間を繰り返す、か...」

さやか(今までの夢でのことをほむらは何度も味わってきたなんて、よく耐えれたよあいつは)

さやか(あれ?でも、その出来事をあたしが見るのはおかしくない?)

さやか(それに、最初の夢だとほむらは...。あいつが死んでも、時間を遡ることが出来るってこと?)

さやか「って、いま悩んでても仕方ないか。明日直接ほむらに聞くとしよう」

****************************

杏子「やっと見つけたよ」

さやか「......」

杏子「あんたさあ、いつまで強情張ってるつもりさ」

さやか「...悪いね、手間かけさせちゃって」

杏子「なんだよ、らしくないじゃんか」

さやか「...もう、どうでもよくなっちゃったからね」

さやか「結局、あたしはいったい何が大切で何を守ろうとしてたのか、なにもかもわけわかんなくなっちゃった」

さやか「前に言ってたよね。希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって話。今ならよくわかるよ」

さやか「確かにあたしは、何人か救いもしたけど、そのぶん心には恨みや妬みが溜まって、一番大切な友達さえ傷付けて...」

ソウルジェム「」ゴポリ

杏子「あ、あんた...!」

さやか「誰かの幸せを祈ったぶん、他の誰かを呪わずにはいられない。あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」



さやか「あたしって、ほんとバカ」


パリン

QB「時間遡航者暁美ほむら。きみの存在が、一つの疑問に答えを出してくれた」

ほむら「なんのはなし?」

QB「まどかの素質だよ。なぜ、平凡な彼女の素質があれほど莫大な大きさなのか、ずっと不可解だった」

QB「ねえほむら。ひょっとして、きみが時間を繰り返すたびに、まどかは強力な魔法少女となっていったんじゃないかな」

ほむら「!」

QB「やっぱりね。原因はきみにあったんだ」

ほむら「...どういうことよ」

QB「きみが時間を巻き戻す理由はただ一つ。『まどかの安否』だ」

QB「きみは同じ理由と目的で何度も時間を遡るうちに、彼女の存在を中心軸に幾つもの平行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう」

QB「その結果、絡まる筈のない平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに集中したとすれば、彼女の途方もない魔力係数にも納得がいく」

ほむら「...それって、まさか」

QB「お手柄だよ暁美ほむら。きみが、まどかを最強の魔女に育て上げてくれたんだ」

******************
ジリリリリ バン

さやか「...これマジ?」

今日はここまでです。おやすみなさい

――――――――――――

放課後

さやか「...ねえ、まどか。このあと時間あるかな」

まどか「えっ?」

さやか「お願い」

まどか「...ひょっとして、真面目なお話?」

さやか「凄く真面目な話」

まどか「わかった。わたしはなにをすればいいの?」

さやか「ほむらとあんたに確かめたいことがあるのさ。...できれば、他の人には知られたくないことでね」

まどか「ほむらちゃんに?」

――――――――――――――――――

屋上

ほむら「誰にも知られないようにとのことらしいけど、どうしたの?」

さやか「ひとつ確認させて。あんた、ソウルジェムのことをどこまで知ってるの?」

ほむら「どこまでって、昨日説明した通りのことまでよ」

さやか「本当に?濁りが溜まりきったとき、どうなるかは知らないの?」

ほむら「!」

さやか「...なにもかも知ってるみたいだね」

ほむら「あなた、まさか...!」

さやか「お察しの通りさ。また夢で教えられたのよ」

まどか「え?え?」

ほむら「...お願い。このことは、他の人には...特に巴マミには教えないで」

さやか「わかってる。こんなこと、知らない方がいいに決まってる。でも、まどかは知っておかなくちゃいけないんだ」

ほむら「...なぜ?」

さやか「話してくれなきゃ、まどかはきっと契約しちゃう。もし瀕死のあんたらを見たら、この子がそれを放っておけるほどお利口じゃないことは知ってるでしょ?」

ほむら「......」

ほむら(たしかに、巴マミと杏子との関係は良好だけれど、苦戦は必至なのは間違いない。そこをあいつに付け狙われる危険性を考えれば...)

ほむら「...わかった。まどか、憶えておいて。これから話すことは、ソウルジェムの真実。そして、QBの真の狙いよ」

まどか「そんな...魔法少女が魔女になるなんて、嘘でしょ?」

ほむら「......」

まどか「じゃあ、魔女を倒すってことは、魔法少女を倒すことになるの?」

ほむら「...魔女になってしまった魂は、決して戻ることはない。魔女となった子たちを救うには、倒すしかないのよ」

まどか「...そんなのってないよ。あんまりだよ」

ほむら「...私は、あなたを魔女になんてさせたくない。かつてのあなたとも約束したわ。だから、絶対に契約してほしくないの」

さやか「それだけじゃない。ほむらが時間を繰り返す度に、あんたは強い力を持った魔法少女になる。もし、そのあんたが魔女になれば、誰にも止められない最強の魔女になっちゃうんだよ」

ほむら「え?」

ほむら「美樹さやか...どういうこと?」

さやか「だから、あんたが時間を戻せば戻すほど、因果の糸とかいうのがまどかに絡んで、魔法少女の素質が高くなっちゃうんでしょ。だから、これ以上戻させないためにも...」

ほむら「デタラメ言わないでちょうだい!」

さやか「うおっ、な、なによ」ビクッ

ほむら「知らない...私はそんなことは知らないわ!」

さやか「...えっ?」

ほむら「そうだ、キュゥべえは...キュゥべえはどこ?あいつなら知ってるはずよ」

QB「よんだかい?」

さやか(ほんと、どこから湧いてくるのやら)

ほむら「教えてキュゥべえ!美樹さやかの言ってることは本当なの!?」

QB「僕はいま来たばかりだから、事情がわからないのだけれど」

ほむら「だから、私が時間を繰り返す度に、まどかの素質が高くなるという話よ!」

QB「ふむ?それは思いつかなかったなぁ。...うん。たしかに、その理屈ならまどかの素質が高いことにも頷ける」

ほむら「そんな...私がまどかを苦しめていたというの...?」

まどか「ほ、ほむらちゃん?」

ほむら「いやよ、嘘だと言ってよ、ねえ、キュゥべえ」

QB「僕は嘘はつかないよ」

さやか「......」

ほむら「それじゃあ、私はなんのために...」

さやか「まどかを諦めないためでしょ」

さやか「気をしっかり持って!あんたが時間をやり直さなかったら、まどかはもう生きてないんだよ!ううん、まどかだけじゃない。マミさんだって、ワルプルギスの被害に遭った人だってそうさ!」

ほむら「美樹さやか...」

さやか「まどかが最強の魔女になる?そんなのどうでもいいよ。これ以上繰り返さないためにもここでキッチリ片をつける。それでいいじゃんか」

さやか「そうすれば、あんたが繰り返してきた時間も無駄にはならないでしょ」

ほむら「......」

さやか「......」ジーッ

ほむら「...まさか、あなたに励まされることになるとはね」ハァ

ほむら「...まどか。ごめんなさい」

まどか「えっ?」

ほむら「今まで私の力が足りなかったばかりに、あなたに余計な物を背負わせることになってしまった」

ほむら「でも、それもここで終わらせる。今回こそ、私は勝ってみせる」

ほむら「だから、私たちを信じて。契約だけはしないと約束させて」

まどか「...うん。わかった。信じるよ」

まどか「わたし、みんなを信じる。だから、ほむらちゃんたちも絶対に死んじゃ駄目だよ」

ほむら「ええ、約束するわ」

さやか「...よし。とりあえず一件落着かな」

さやか(いやー焦った。あたしが振った話でほむらが挫折とかシャレにならんからね。平和にすんでよかった)

さやか(...その代わりまた疑問が出ちゃったわけなんですけども、それはこいつと考えることにしようかな)ヒョイ

QB「なんだい?」

さやか「歩くヤフ○知恵袋なあんたなら、あたしの溜まりにたまった疑問に答えてくれるからね」

QB「彼女たちはいいのかい?」

さやか「ほむらはたぶん知らないよ。ていうか、誰も知らないことなんだ。だから、あんたの知識が必要なのさ」

さやか宅


さやか「...んじゃあ、さっそくあたしの疑問に答えてもらおうか」

QB「いいよ」

さやか「一つ目。ほむらの魔法って、他の人も記憶を引き継げるように出来るの?」

QB「それは不可能だね。無意識下のもとに因果の糸は集めることができるけど、記憶が引き継ぐなんてことは無いはずさ。現に、きみだって彼女の記憶を憶えているわけじゃないだろう?」

さやか「それもそうか。じゃあ、次の質問。ほむらの魔法は、あいつ自身が死んじゃっても時間を巻き戻すことはできるの?」

QB「実例が無いから難しいね。でも、僕の予想では、不可能だ」

さやか「やっぱ、本人が死んだら願いも魔法も消えちゃうの?」

QB「自分が対象となる願いは基本的にそうだね。ただ、願いに限っては、金銀財宝のような『物』を生みだした場合や、他人の人体の損傷を治した場合などは、既に『起こってしまったこと』として完結しているから別だけどね」

さやか「なるほどね。じゃあ、最後の質問」

さやか「別の時間軸に、この世界での記憶をとばすことはできる?」

QB「それは、ほむらのように時間を越えて記憶を保持できるようにするということでいいかな?」

さやか「たぶんそれでいいと思う」

QB「現在の僕たちや地球の科学では不可能だね。と、なれば方法はただひとつ」

さやか「契約してその願いで魔法少女になるしかないってわけね」

QB「それしかないね。質問は以上かい?」

さやか「ちょっと待って」

さやか(うーん、なにか忘れてるような...たしかあの夢だと、ドデカイ化け物がいて、ほむらっぽいのが死んじゃって、あたしがデカイ剣で特攻して、変な声が聞こえて...声?)





『そうださやか。命を、怒りを燃やせ!神も悪魔も超える...今がその時だ!』

さやか(そうだ!あの声は、確かに神と悪魔って言ってた。てことは...)

さやか「キュゥべえ。この世界の記憶をとばす方法を思いついたよ」

QB「なんだって?」

さやか「一人じゃできなかったら、誰かの力を借りるのさ。それもとびっきりの力をね」

QB「それはいったい誰の?」

さやか「決まってるじゃん」




さやか「宇宙の統治者、全知全能の神様だよ」

シーン

QB「......」

さやか(あ、あれ、何この空気?)

QB「どうやら質問は終わったようだね」

さやか「スルーした!?」

QB「なら、僕は魔法少女の元へと帰らせてもらうよ。きみの妄言に付き合っているほど僕は暇じゃないんだ」

さやか「なんか急に辛辣になってるし!」

QB「忠告しておくけど、そういうのは今の内に卒業しておいた方がいいよ。でないと、この国では将来痛い目にあうだろうからね」スゥ

さやか「余計な気をまわすな―――ッ!」



マミ宅

マミ「へぶしっ!」

杏子「うわっ、汚ねえな!」

マミ「あー...ごめんなさい。何か急に鼻がむずむずして...」

さやか「...はぁ。結構いい線いってたと思うんだけどなぁ」

さやか(そうだよ。神様じゃなくても、さっき言ったみたいに誰かがあたしがこうなるように願えばいいだけじゃんか)

さやか「あー、気になる気になる。気になるなぁ!」

さやか「...よし。ここまでお膳立てしたんだ。そろそろ答えを出してもらおうじゃない」

さやか「さあ、答えな。あたしに夢を見せる誰かさんよ!」

数時間後

さやか「」スヤスヤ

今日はここまでです。そろそろタイトルが関わってくると思います。

――――――――――――――――――

やあしょくん。とうとうここまで私の話をみてしまいましたねぇ。

私こと美樹さやかが見た地獄、いや、この魔法少女というものに関わった一人の少女に悲しい結末が待ち受けていたようにあなたにも。

そう、彼女たちの幾多もの物語を今まで読んだり見たりしたあなたにも。これから新しい魔法少女まどか☆マギカの結末が待ち受けているのです。

そして私も例外ではなく、誰よりも私自身がその結末を体験するのです。

何故なら、これより辿る結末こそが私の...

***************************







ス ベ テ ハ








ゼ ロ ニ カ エ ル







****************************

チュン チュン

さやか「......」

ムクリ

さやか「そうか...そういうことだったんだ」

さやか(やっとわかったよ。あの夢の意味も、あたしがこうなった理由も、そしてあたしがやらなくちゃいけないことも...)

マミホーム

ピンポーン

マミ「はーい...あら、美樹さん」

さやか「こんにちわー」

マミ「どうしたの?」

さやか「いやー、せっかくの休日なんだし、一緒にお昼でもどうかなと」

マミ「あら、嬉しいお誘いね」

さやか「あと、杏子のやつも呼びたいんだけど、いいですかね」

マミ「ええ。構わないわよ」

教会

ドンドンドン

杏子「ふわぁ~」

さやか「きょーうーこーちゃーん」

杏子『佐倉杏子さんはいまは寝ています。用件は後にしてください』

さやか「一緒にお昼食べにいこうかなって思ってんだけど」

杏子「」ピクッ

さやか「お金はあたしが出すからさ」

杏子「」ピククッ

ファミレス

杏子「スパゲッティとハンバーグとポテトと、あとパフェとプリンと...」

さやか「奢りって聞いたとたん、食らいついちゃってまあ...」

マミ「み、美樹さん。半分は私が出すから」

さやか「大丈夫大丈夫。あたしが誘ったんだから、お代はあたしに任せてくださいよ」

杏子「うめぇ!レストランなんて何年ぶりだ!?」ズルルル

さやか「...ねえ。杏子はさ、ワルプルギスを倒したらどうすんの?」

杏子「そりゃ、風見野に帰るだけさ。用もないからね」

さやか「それって、もうこっちに来ないってこと?」

杏子「そうなるかな。まあ、グリーフシードのこともあるし、魔法少女が二人もいればあたしなんていらないでしょ」

マミ「え...」

さやか「マミさんはどう思う?」

マミ「え、えっと、佐倉さんの言うことも一理あるわね」

さやか「そっか。残念だなぁ。あたしはずっといてもらいたいけどねー」

さやか「そういえば、なんであんたはここに来たの?」

杏子「なんだよいきなり」モグモグ

さやか「だってさ、今まで全く来てなかったのに、わざわざマミさんにちょっかいかけに来たわけじゃん?」

杏子「...なんだっていいだろ」

さやか「気になるじゃんか。もうすぐ決戦なんだし、そこら辺はすっきりさせたいのよ」

杏子「おい、さやか。あんたそんなことを聞くためにあたしらを呼んだのか?」

さやか「......」

杏子「だとしたら、あたしは帰るぞ。ごちそう様」ガタッ

さやか「そうは問屋がおろしませんぜお嬢さん!」ガシッ

杏子「離せコラッ!」グイグイ

バタバタバタ

マミ「ふたりとも、暴れたら他の人に迷惑が」

さやか「マミさんは気にならないの!?」

マミ「え?」

さやか「杏子が何を思ってマミさんのところまで来たのか。何も知らずに一生が終わっても、後悔しないの!?」

マミ「!」

さやか「少なくとも、あたしは後悔するよ。聞いておけばよかったって思う時が絶対に来る。その時がきてからじゃ、遅いんだよ」

マミ「美樹さん...」

杏子「わけのわからねえことを...マミ、あんたもこいつを引きはがすのを手伝ってくれ」

マミ「...佐倉さん。私も気になるわ」

杏子「へっ?」

マミ「なんでこの街に来てくれたのか...聞かせてくれる?」

杏子「う、うぅ...」

さやか「ほらほら、早く吐いちまいなよ。そうすれば楽になりますぜ」

杏子「うるせー!」バシィ

さやか「ふぎゃっ!」

杏子「今日は帰る!メシ、ありがとうよ!」ダッ

マミ「ま、待って...!」

さやか「追いかけて、マミさん」

マミ「え...?」

さやか「この場はあたしに任せて。あの子も、きっとマミさんを待ってるから」

マミ「...ありがとう」ダッ




さやか「いやーお騒がせしちゃってすみません」ペコペコ

店員「いえいえ」

さやか「それじゃ、お会計お願いします」

店員「3万円になります」

さやか「...え?」


ハァ ハァ

杏子「しつこい奴だな」

マミ「どうしても、話してくれないの?」

杏子「話したくないね」

マミ「...なら、私の話を聞いて」

杏子「は?」

マミ「私ね、ずっとわからなかったの。なんであの時、あなたの力になれなかったか...ううん、本当は、あなたが何かを隠していたことはわかってた。だけど、それを見ようとしなかったのよ」

杏子「な、なにを...」

マミ「きっと、あなたに嫌われるのが怖かったのよ。嫌われたら、あなたと一緒にいられないからって、あなたのことなんかちっとも考えちゃいなかった。...こんな臆病な卑怯者だもの。あなたが嫌うのは、当然よね」グスッ

杏子「違う!」

杏子「家族のことは全部あたしの所為なんだ!あたしがあんたに捨てられたくないからって、あんたを信用できなかったあたしの責任なんだ!」

杏子「あんたを本当に嫌いになった日なんかないよ!ここまできたのもそうさ。あんたが心配だったから...!」ハッ

マミ「さ、佐倉さん...」

杏子「~~~!///」カアァァ

マミ「...どうやら、臆病者はお互い様だったみたいね」

杏子「...そうだな」

マミ「佐倉さん。あの時、力になれなくてごめんなさい」

杏子「マミ。あんたを信用しなくて、傷つけてごめんな」

マミ「...ふふっ」

杏子「なんだかおかしいな。あんだけ対立してたのに、仲直りするときはこんなにあっさりといくもんだ」

杏子「それじゃ、本当の仲直りの証として...」ゴソゴソ

スッ

杏子「くうかい?」ニッ

マミ「ええ」ニコッ




コソッ

さやか(...あの二人はもう大丈夫そうだね。そして...)

財布「」カラッ

さやか「さようなら、あたしの諭吉たち...」

翌日

仁美「この前の約束ですか?」

さやか「うん。今日じゃ駄目かな」

仁美「私は構いませんが、まどかさんは?」

まどか「えっ、わたし、なにもしてなかったけど...」

仁美「遠慮しないでください。まどかさんも大切なお友達ですから」

さやか「そうだよまどか。こういう時は素直に甘えるのも優しさだぞ」

まどか「...わかった。ありがとう、仁美ちゃん」

さやか「さぁ~てと」クルッ

トントン

ほむら「?」

さやか「ほむらも一緒に来る?」

ほむら「私は関わってすらいないのだけれど」

さやか「だいじょーぶ。仁美、ほむらもいいかな?」

仁美「はい。ぜひご一緒に」

さやか「ほら。本人がいいって言ってるんだから行こうよ」

ほむら「......」

ファーストフード店

さやか「いただきまーす!うんっ、めちゃうまっ!」

仁美「さあ、どんどん召し上がってくださいな」

さやか「それじゃ、次はコレとコレとコレに...」

まどか「食べ過ぎじゃない?」

さやか「中学生たるもの、これくらい食べれなくてどうするか!そんなんだからいつまで経ってもお胸が」

まどか「あ?」

さやか「すんません」

ほむら(食べれば大きくなれるのかしら)ペタペタ

仁美「ところで暁美さん。さやかさんとは、いつから親しい間柄に?」

ほむら「親しい...?」

さやか「なぜ首を傾げる」

ほむら「...まあ、まどかのことで一緒にいることは多くなったわね」

仁美「まどかさん?」

まどか「えっとね、わたしは憶えてなかったんだけど、昔会ったことがあるらしいの」

仁美「まあ。まさに運命ですわね。嗚呼、素敵ですわ羨ましいですわ」

さやか「もっとも、そのせいでまどかを守る役目は完全に獲られちゃったわけですわ」

さやか「...こいつになら任せれるって思うのも事実だけどね」ボソッ

まどか「?」

さやか「ちなみに仁美。あいつとは最近どうなのさ」

仁美「はい。とても仲良くしていただいていますわ」

さやか「進展は?」

仁美「まだありませんわ。でも、ゆっくりじっくりとでも進めれば...」

さやか「よきかなよきかな。でもね、あの鈍感野郎にゃそのやり方は向いてないかな」

仁美「えっ?」

さやか「たまにはさ、あんたの方からこうグイッといってみなよ。そうすりゃ、あいつも少しは気を向けるでしょ」

仁美「グイッとですか...あまり得意ではありませんわ」

さやか「だいじょうぶ!」ナデナデ

仁美「ひゃっ」

さやか「あんたは、強くて優しいイイ女だよ。だから...もっと自信をもちな」

仁美「...ありがとうございます、さやかさん」ニコリ

まどか「......」

~数時間後~

さやか「でね、これがまどかと二人で撮った写真なわけよ。見てごらん、この初デートの乙女のような顔を」

ほむら「こ、こら!すぐに消しなさい!」

仁美「あらあらまあまあ///」

まどか「ちなみにこれ照れ顔」スッ

ほむら「まどかも!そういうノリは止めなさい!」

仁美「いいんですのよ。性別を超えた愛...素晴らしいと思いますわ」

ほむら「違うから!そういうのじゃないから!」

さやか「はー、もうこんな時間かぁ」

まどか「そろそろ帰らなきゃだね」

仁美「では、この辺りでお開きにしましょうか」

ほむら(...なんだか疲れたわ)

仁美「暁美さん」

ほむら「?」

仁美「今日はとても楽しかったですわ。これからもよろしくお願いします」

ほむら「...ええ」

帰り道

さやか「ほむら。仁美はどうだった?」

ほむら「...思ってたより押しが強い子ね。まさかあそこまでイジられるとは思ってなかったわ」

さやか「これから先はあの子ともやっていけそう?」

ほむら「...そうしていきたいわね」

さやか「よかった。魔法少女に関係ないからって、あんまり蔑ろにするんじゃないぞ」

ほむら「善処するわ」

さやか「うん。それならよし」

まどか「......」

ほむら「じゃあ、私はこの辺りで」

まどか「じゃあね、また明日」

テクテク

まどか「...さやかちゃん、今日はどうしたの?」

さやか「どうしたのとは?」

まどか「上手くいえないけど...なんだか変だったの。なんだか、ほむらちゃんや仁美ちゃんになにかを任せるというか、遺言というか...」

さやか「そういうつもりじゃなかったんだけどなぁ。...まあ、強いて言うなら、不安だったってことかな」

まどか「不安?」

さやか「...もうすぐワルプルギスの夜が来る。そうなるとさ、みんなが無事で済むとは限らないじゃん?」

さやか「ほむらたちを信用してないわけじゃない。でも、万が一ってこともあるでしょ?ああしておけばよかったとか、そういう後悔はしたくなかったわけよ」

まどか「さやかちゃん...」

さやか「...さっ、辛気臭い話はやめやめ!帰ってお祝いパーティの計画でも立てなくちゃ!じゃあね、まどか」

まどか「うん。いつも送ってくれてありがとうね」




さやか(...ほんと、敵わないなぁ。まどかには)



今日はここまでです。次回は最終回『決着!スクワルタトーレ百連撃!』です

ワルプルギス襲来


ワルプルギスの夜「ウフフ...アーッハハハ!!」

マミ「ついに来たわね。思ったより大きいわ」

杏子「まさに終焉の審判は訪れたって感じだな」

ほむら(もう、これ以上繰り返しはしない。必ずここで終わらせてみせる!)

避難所

まどか「......」

さやか「不安なの?」

まどか「...うん」

さやか「ま、仕方ないか。あたしだってビビっちゃってるからね」

まどか「...わたしは信じるよ。ほむらちゃんたちは絶対に帰ってくるって信じる」

さやか「...オーケーオーケー。あいつにホイホイ騙されて契約することはなさそうだね」

まどか(でも、もしも勝てなかったらその時は...)

使い魔「キャハハハハハ!」

ズバァ

使い魔「キャ...!」

ザザザザン

使い魔「...!」

杏子「おとといきやがれ。あたしは戦闘のプロだぜ」

マミ「佐倉さん!」

杏子「おうっ」バッ

マミ「雑魚に用はないわ!ティロ・フィナーレ!」

ドドドドド

杏子「相変わらずすげえ威力だな。使い魔が一掃されてやがる」

ワルプルギス「キャハハハハハ!」

マミ「このまま...いっけええええ!」

ズ ワ ッ

ゴゴゴゴゴ

杏子「やったか?」

ほむら「いいえ。おそらくまだよ」

ゴ ウ ッ

ワルプルギス「キャハハハハハ!」

マミ「殆ど無傷って...ちょっとプライドが傷つくかな」

ほむら「いいえ。表面に出ていないだけで、ダメージはある筈よ」

杏子「そうだとありがたいんだけどね」

ほむら(もしこれでも駄目なら、私たちは...)

避難所

QB「これはマズイね。ほとんど防戦一方だ」

まどか「!」

QB「いまは辛うじて渡り合っているが、直に魔力も消えて形成は一気に傾くだろう」

QB「このままではみんな死んでしまうけど、きみはそれでもいいのかい?」

まどか「......」

まどか(みんな...ごめん)タッ

ガシィ

さやか「どこ行くつもりさ」

まどか「...みんなのところに行かなきゃいけないの」

さやか「行ってどうするの?魔法少女じゃないあんたじゃ、足手まといもいいところだよ」

まどか「みんなを見殺しにすることなんてできないよ」

さやか「わかってるの?あんたが契約したら、本当の終わりなんだよ」

まどか「でも、わたしでないと駄目なの」

さやか「......」

まどか「自分を粗末にしちゃいけないことも、どれだけみんなに大切にしてもらったかもよく解ってる」

まどか「だから、わたしもみんなが大切で絶対に守らなくちゃいけないから...わたしにしかできないことをやらなくちゃいけないの」

さやか「...そいつは、あんたの本心なんだね?」

さやか「QBに騙されたとか、ほむらたちへの安い同情とかじゃないんだね?」

まどか「」コクリ

さやか「...こりゃ、あたしが折れるしかないか。ただし!あたしも一緒についてくよ。あんたの背中を守るのはあたしの役だからね」

まどか「ありがとう、さやかちゃん」

さやか(わるいねみんな。あたしにゃ、やることが決まったまどかを説き伏せることなんてできやしないみたいだわ)

―――――――――――――


ワルプルギス「キャハハハハハ!!」

ほむら「くっ」

ほむら『杏子...マミ、返事をして!』

ボキリ

ほむら「っ!」

使い魔「キャハッ」

バァン

使い魔「ギャッ」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

ビル「」ドオォ

ほむら(しまった、使い魔に気をとられたせいで...避けられない!)




ズ ガ ン



ほむら「う、うぅ...」

ほむら(脚が瓦礫に...時間ももう止められない...)

ワルプルギス「」ブルブルブル

ほむら(もう攻撃体勢に...!)

ほむら『杏子、マミ!返事を...返事をして』

ほむら(二人ももう...でも、諦める訳にはいかない!もう一度時間を巻き戻して)グッ

ほむら(巻き戻して...どうなるの?)

ほむら(繰り返せば、またまどかの因果が増える...)

ソウルジェム「」ズズズ

ほむら(私がやってきたことは結局...!)

ソウルジェム「」ピシッ

ほむら(ごめんなさい...まどか...みんな...)

ソウルジェム「」ピシピシッ

ほむら「私には...なにも変えることができなかった...」








「もういい、もういいんだよほむらちゃん」









ほむら「ッ!まど」

さやか「かだと思った?残念、さやかちゃんでs」

ほむら「オラァ!」ガコォ

さやか「ひでぶっ!」

ほむら「いい度胸ね、美樹さやか。その神経は羨ましいわ(棒)」ゴキッゴキッ

さやか「ちょ、ちょっと待ってプリーズ。その棒読み怖いでス」

ほむら「ほら、こっちに来なさい。今なら10分の9殺しで済ましてあげるから」

さやか「いっそ殺せ!じゃなくて、仮にもあたし恩人だからね!その態度はあんまりじゃないですか!?」

さやか「...ま、そんだけ元気になったなら大丈夫か」

ほむら「美樹さやか?」

ワルプルギス「キャハハハハ!」

ブワッ

ほむら「ビルが...逃げなさい美樹さやか!」

避難所

まどか「う、うぅ...」

詢子「おっ、気が付いた」

まどか「あれっ、ママ...?」

詢子「たく、トイレでバナナの皮で滑って気絶したなんて...無傷だったからよかったものの、気を付けろよな。後でさやかちゃんにお礼を言いなよ」

まどか「えっ?さやかちゃん?」

詢子「おお、そうさ。気絶したあんたを運んでくれたんだよ」

まどか(そうだ、たしかあの時...)

―――――――――――――――――


回想

自衛隊員「こちら異常ありません」

コソコソ

まどか「どうしよう。入口まで来たけど、自衛隊の人がいて出れないよ」

さやか「まあ、そりゃいるでしょうね。でもご安心を」ゴソゴソ

まどか「なにそれ?」

さやか「仁美から貸してもらった、どんな人間でも気絶しちゃう高級スタンガンさ。コイツさえあれば大人の一人や二人イチコロよ」

まどか「なんでそんなものを...じゃあ、わたしがあの人をお話してる隙に...」

さやか「ごめんね、まどか」

バチッ

まどか「きゃっ!」

ドサッ

――――――――――――――――――

まどか(って感じに急に気絶させられて...)

まどか「そうだ、さやかちゃんは?さやかちゃんはどこ!?」

詢子「仁美ちゃんのとこに行くっていってたけど...」

まどか(嘘だ...さやかちゃんはきっと...!)

まどか「さやかちゃん!」ダッ

詢子「まどか!?」

QB「やあ、ようやく目が覚めたようだね」

まどか「キュゥべえ...教えて。さやかちゃんはどこへ行ったの?」

QB「彼女なら、今頃ほむらのもとへ辿りついてるころだろう」

まどか「やっぱり...キュゥべえ。わたしも行くよ」

QB「行っても無駄だよ。全ては終わったも同然なんだ」

まどか「え...?」





QB「美樹さやかは既に契約した。それも、最も愚かな願いでね」



ほむら「......!」

ほむら(あの巨大なビルを叩ききった...?)

さやか「―――ま、そう慌てなさんな。あんたの相手はすぐにしてあげるからさ」

ほむら「あなた、その姿...」

さやか「契約、しちゃいましたね」

ほむら「なんで...」

さやか「...あたしも、やらなくちゃいけないことを見つけたのさ」

使い魔「キャハ」

さやか「うるさい」ザンッ

使い魔「ギャパッ!」

さやか「ほむら。杏子とマミさんを頼むよ」スッ

マミ「」スースー

杏子「う、うぅん...」ムニャムニャ

ほむら(二人とも...よかった。息はあるみたいね)

ほむら「でも、あなたどうやってそんな力を...?」

さやか「...後はあたしに任せて」

ほむら「美樹さやか...あれ?」

ほむら(私のソウルジェムの濁りが消えている...)

さやか「よう、ワルプルギスの夜。あんたとこうして顔を突き合わせるのは何回目だろうね。いや、思ったより少ないかも」

ワルプルギス「キャハハハ」

さやか「悪いね。ここまであんたを待たせちゃって。けど、ようやくわかったんだ。あんたを解放する方法がさ」

ワルプルギス「キャハハハ」

さやか「...本当なら、とっくに辿りついてなきゃいけない答えだったんだけど...これも、嫌なことは後回しにする、あたしの悪い癖の所為かな」

さやか「でも覚悟は決まったよ」

ワルプルギス「」ゴウッ

さやか「」バサッ

シュウウウ

ほむら(マントが炎を吸収した...?)

さやか「...あたしの願いは、ソウルジェムが穢れれば穢れるほど強くなること。つまり、魔女にならずに他人の呪いを吸ってあたしの力に変えること。魔女、魔法少女を問わずにね」

ほむら「!」

ほむら(だから私のソウルジェムが...)

さやか「あんたのお蔭だよ。あんたの魔法で因果の糸が結びついたのは、なにもまどかだけじゃないってこと」

さやか「あたしも、魔女化したぶんだけ呪いへの耐性がついたってわけさ」

ほむら「そんなことが有り得るの?」

さやか「有り得るから願いが叶ったんだよ。だから」

ズララララ

さやか「こんなこともできるんだ」



ほむら「え...?え!?」

ほむら(なによこの剣の量は!?百...千...万!?)

さやか「誰にも知られず、因果を溜めてきたからできることさ!これぞまさしく、能ある鷹は因果を隠す!」

ほむら「馬鹿か!」

さやか「いくぞ!スクワルタトーレ!」

剣「」ズドドドド

さやか「百・連・撃!」

さやか「いっけええええ!」

ズドドド

さやか「腹だ!」

ドドドド

さやか「背中だ!」

ドドドドドド

ワルプルギス「キャ...ハ...」

さやか「頭だぁああああ!!」

ほむら(私たちがあれほど攻撃してもビクともしなかったワルプルギスが...いいえ違う。美樹さやかの剣は、傷口から奴の呪いを吸い取っているんだ)

ドドドドド

さやか(もってくれよ、あたしの魂!)

マミ「う、うぅ...ん...」

杏子「ふわぁ...うわっ、なんだこれ!?剣がめちゃくちゃ飛んでやがる」

さやか「...もうすぐ、全部が終わるんだ」

杏子「さやか!?これ、お前がやってんのか!?」

さやか「杏子、マミさん、ほむら」

ほむら「?」

さやか「...後のことは頼んだよ」ニッ

さやか「出ろ、オクタヴィア!」パチン

ズズズ

オクタヴィア『グルルル...』

杏子「魔女!?」

ほむら「あれは美樹さやかの魔女!」

マミ「え?美樹さんの魔女?え?」

オクタヴィア『ヴオォォォオオオ!!』ガシャン

杏子「お、おい。あの魔女、なんかドデカイサーベルに変わってくぞ」

ほむら(己の魔女ですら自在に操るなんて...これが、因果を束ねた結果だというの!?)

QB「そんなわけがないじゃないか」

QB「ほむらの魔法は、あくまでもまどかを対象としたもの。だから、いくら繰り返そうが因果係数が溜まるのはまどかだけだ」

QB「それに、今まで魔女になってきた回数が一番多いはずのきみさえ、濁りきれば魔女となるんだよ?つまり、因果と魔女化への抵抗力は全く関係ないのさ」

まどか「...!」

QB「ねえ、まどか。どうして僕らが、せっかくの素質がある魂を再利用せずに、魔女という形でみすみす使い捨てているのか疑問に思わなかったのかい?」

まどか「どういう...こと...?」

QB「彼女は本当に愚かだよ。あんな願いを叶えた結果、どうなるかなんてわかっていたのにね」

さやか「いくぞおおおお!」

巨大なサーベル「」ゴオオオ

ザッ

さやか「貫けえええ!」

ドシュ

ワルプルギス「......!」

マミ「やったぁ!」

ワルプルギス「」グルン

杏子「まだだ!あいつ、どんだけしぶといんだよ!?」

さやか「いいやこれでトドメだ!こい、みんな!」

カン カン カカカカカカ

ほむら「さっきの大量の剣が魔女と美樹さやかのもとへと集まって巨大な剣に...」

さやか(あたしがやらなくちゃならないんだ。あたしが...この手で)

さやか「見ろ、幾多の時間軸から答えを得たこの力!海を割り、空にそびえる鉄の剣!」

避難所

まどか「はぁ...はぁ...」タタタ

自衛隊員B「ボス、なんか女の子が走ってくるんですけど」

自衛隊員「おうおうお嬢ちゃん。まだ暴風警報は解除されてないから出ちゃ...」

まどか「どいてください!」ドンッ

自衛隊員「ぐへぇ」

自衛隊員C「ボシュ、あんな女の子にも突破されるって...」

自衛隊員「う、うるせー!不意打ちだったから驚いただけだ!はやく捕まえるぞ!」

「「へ~い」」

まどか「駄目...さやかちゃん。待って!」

『みんなの祈りを絶望なんかで終わらせたりしない。全ての因果はわたしが受け止める』



さやか(まどかは言った。みんなの希望を守れるなら神にすらなれるって)



『まどかと逢いたい。その気持ちを裏切るくらいなら、どんな罪だって背負える。どんな姿に成り果ててもきっと平気だわ』



さやか(ほむらは言った。まどかのためなら悪魔にだってなれるって)




さやか「でもあたしは、友達を独りぼっちの神様なんかにさせたくないし、悪魔にだってさせたくない!」

さやか「だからあたしは戦うんだ!今まで壊してきた全ての世界を無駄にしないために!」





さやか「全ての因果を解き放て!最大級、スパァァァクエ―――ッジ!」





まどか「だめえええええええ!!」




ド ワ ォ

―――――――――――――――――――
回想

QB『美樹さやか。本当にきみは愚かな願いをしたよ』

さやか「あんたから見りゃそうかもね」

QB『ワルプルギスの呪いを吸い取った後、きみの魂は幾多もの絶望と戦い続けることとなる。敗北すれば、押さえつけていた呪いは再び解き放たれ、第2のワルプルギス...いや、最悪それ以上の化け物が産まれてしまう』

QB『仮に勝ったところで、目が覚めた時にはきみの知る人間は消え去っていることだろう。いや、そもそも地球の生命体が残っているかもわからない』

さやか「......」

QB『それを承知の上で、なぜあんな願いを叶えたんだい?』

さやか「...あたしは、あたしの尻拭いをしなきゃいけなかっただけだよ」

―――――――――――――――――――


ワルプルギス「あ...ハハ...」ボロボロ

ズズズ

さやか(...この子の呪いが...絶望が、あたしの中に入ってくる)

さやか「はは...覚悟は決めてきたつもりだけど、やっぱ怖いわ」

さやか(なんだかんだで、あたしっていつも誰かが側に居てくれたみたいだからなぁ。まどかもほむらも、よく耐えれたよホント)

オクタヴィア『......』

さやか「ああ、別に今までのあたしを恨むわけじゃないよ。どこかでこうしなきゃいけなかったんだし」

ズズズ

さやか(...もう、身体の感覚が無くなってきた。そろそろお別れみたいだね)


お父さんにお母さん。それに、仁美に恭介。みんなには、いつも心配かけてごめんね。今まで色々とあったけど、やっぱりあたしはみんなが大好きだったよ。

マミさん...優しくて強くてカッコよくて...いつだってあたしの憧れだった。でも、いくら先輩だからって、全部背負い込もうとしちゃ駄目だよ。あと、消火器ぶつけてごめんなさい。

杏子...あんたにゃ、世話になりっぱなしだったね。あんた、凄く優しくていいやつだよ。でもね、もう少し素直な気持ちを出した方がモテるぞぉ。あたしが言うのもなんだけど。

ほむら...あたしとじゃ、ロクな思い出がないかもしれないね。...まあ、あんたはもっと自分に自信を持ちな。せっかくのイイ女なんだからさ。そんで、まどか以外にも気をかけること。

まどか...あたし、あんたと友達になれてよかったと思ってる。あんたの優しさは、欠点なんかじゃない。だから、その優しさだけは忘れないでね


さやか「...嫌だなぁ。みんなと別れたくないよ」

さやか(じゃあね、みんな)

―――――――――――――――――

数週間後

マミ「...美樹さんは、まだ目を覚まさないのね」

杏子「ああ。ピクリとも動きゃしねえ」

QB「当然さ。僕らが魔法少女の魂の再利用を諦めたのも、それが原因だからね」

杏子「どういうことだよ」

QB「人間の魂は、己の呪いには勝てないようにできているらしい。現に、魔女となった魂が元に戻った例は一度も無い」

QB「ただの一人ですら勝てたことはないんだ。このまま放置すれば、彼女は第二のワルプルギスかそれ以上の魔女に成り得るだろう」

マミ「そんな...」

杏子「どうすれば防げるんだ」

QB「溜め込んだ絶望を彼女が己の中で殺しつくすか、いまのうちに美樹さやかを殺してしまうかだろうね。とりあえず、今の内に殺しておけば、ワルプルギスのような魔女はしばらく出てこないと思うけど」

杏子「...チッ」

杏子(あの馬鹿。後は頼むってのは、そういうことかよ...)

QB「さあ、きみたちはどうするんだい?」

杏子「......」

病室

さやか「」スースー

まどか「......」

ほむら「まったく、腹が立つくらいノンキな寝顔ね」

まどか「...でも、さやかちゃんは、ずっと戦い続けてるんだよね」

ほむら「...ええ。私たちのぶんまで、全ての呪いを引き受けてね」

ほむら「本当に馬鹿よ。いつだって、思い通りに動いてはくれない。...だから、あなたは苦手なのよ」

まどか「ほむらちゃん...」

ほむら「...さあ、そろそろ帰りましょう。親御さんが心配するわ」

まどか「うん」

まどか(ねえ、さやかちゃん。わたし、なんでさやかちゃんがそんな契約をしたのかも、まだ知らないんだよ)

まどか(わたし、待つから。何十年でも何百年でも待つから。だから...絶対に帰ってきてね)

*******************************






これは、かつての世界の話...





美樹さやかは敗北した。

さやか「......」

己の全ての力を出しきった。己の持つ全てで立ち向かった。

だが、歯牙にもかけられず敗北した。

かつての友の暴走を止めることなく、彼女は不様に敗北した。

QB「全ての終わりのようだね」

さやか「......」

QB「悪魔が調整していた円環の力を、きみが破壊してしまったために、異常に溜め込んだ因果の糸は暴走してしまった」

QB「このままあの魔女は、全宇宙の生命を食らいつくし、更には自らと共に宇宙そのものを破壊するだろう」

QB「そうして、歴史はまた繰り返される。溜まっていた因果も全ては零に還る。魔女のいた世界から再びやり直すことになるんだ」

さやか「...まだ、だよ」

QB「これ以上なにをするつもりなんだい?」

さやか「きまっ、てる、でしょ」

ズ オ オ オ

オクタヴィア『......』

QB「魔女...?今さらどうしようと言うんだい」

ドスッ

QB「気でも狂ったかい?己のソウルジェムを刺すなんて、ただの自殺行為だ」

さやか「ただ、しぬわけじゃ、ないよ」

魔女が魂を刺した剣を天へと掲げた時だった。

魔女の、美樹さやかの身体が光輝いた!

やがて、光は剣先へと凝縮されていく。

さやか「これが...あたしの最後の希望だ!」

そして、剣先から放たれるのは、神より授かりし力。

時間軸も因果も超越してきた、円環の神の輝きだ!

光は、天へと高く、高く昇っていく。

何者にも止められることなく、ただひたすらに宇宙へと昇っていく!

...やがて、光はその勢いを失い、虚空へと四散していく。

神より授かりし力が消え去ったとき、美樹さやかの身体も崩れていく。

彼女の命の灯もまた、消え去ろうとしているのだ。

さやかは泣いた。己の犯した罪を。

さやか(あたしにはもう、どうすることもできない...)

さやかは泣いた。大切なものを何一つ護れなかったことを

さやか(だから...頼む!誰でもいい!)

さやかは泣いた。

さやか(助けて...神でも悪魔でもいい!この光を受け取って!)

他人にすがることしかできない、己の無力さを。

そして、こんどこそ美樹さやかは...眠りについた。

>>233 訂正

さやかは泣いた。己の犯した罪を。

さやか(あたしにはもう、どうすることもできない...)

さやかは泣いた。大切なものを何一つ護れなかったことを

さやか(だから...頼む!誰でもいい!)

さやかは泣いた。

さやか(助けて...神でも悪魔でもいい!この光を受け取って!)

他人にすがることしかできない、己の無力さを。

そして、こんどこそ美樹さやかは...眠りについた。




『~~~~~~~!!!』

主を失った魔女は、誰も居なくなった世界で悲痛な雄叫びをあげ、彼女自身もまた、塵へと還っていった。

QB「...さて、もうすぐこの宇宙も終わるようだ」

QB「再構築された宇宙の歴史がどうなるかはわからないけれど、おそらく同じことの繰り返しだろう。そもそも、この時間軸ですら何度目の歴史かはわからないからね」

QB「いまさら無駄なことかもしれないけれど、『次の僕ら』がうまくやってくれることを願うよ。こんな、宇宙の終わりなんていう結果にならないようにね」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

『ウェヒヒヒヒ』

カッ









ド ワ オ









そして歴史は繰り返される。



『まどかと逢いたい。その気持ちを裏切るくらいなら、どんな罪だって背負える。どんな姿に成り果ててもきっと平気だわ』



時には同じ道を辿り



『まどかを助けるためなら、神にも悪魔にもなれる...なってみせる!』



時にはわずかに違う道のりを辿り。


『気を付けなさい、私は少々荒っぽいわ!』



『この巴マミから逃げられると思わない事ね。命を燃やす時がきた...いくわよ!』



『~♪』サーティローヤリー

『変なやつがいるぞ!』



『神に会うては神を斬り』

『悪魔に会うてはその悪魔をも撃つ』

『『あたし(私)たちに大義名分などないのさ!』』



数えるのも気が遠くなる程、幾多の時間軸が再構築され、その度に同じ結末を繰り返してきた。

だがしかし、希望は確かに存在する!

神の遣いが幾度となく残してきた光は、多くは次元の彼方へと消え失せたが、僅かに、着実にその粒子を残していた!

幾多もの雷光が積み重なり、徐々に粒子は記憶へと形を変えていく。

そして、その記憶を見た少女はいま!

―――――――――――――――――

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

暗い、暗い小宇宙の様な空間。

絶望という名の巨大な異形を前に、向き合う少女が一人。

少女は両手に剣を携え、異形へと立ち向かう。

彼女は戦い続ける。

襲いくる暗雲を切り裂き、未来を解き放った彼女は






さやか「うおおおおおっ!!」

―――ただひたすらに、絶望と戦い続ける!


終わりです。真マジンガーリスペクトなのは、感じてknightの二番を聞いてまどマギっぽく思ったからです。今月の4月後半に漫画版の新刊が出るそうなので、ふわっとまどか・見滝原・マテリアルズと一緒にどうぞ。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom