承太郎「彼女ができたとしての相談なんだが」 (35)

花京院「なんだい、承太郎」

承太郎「例えばボーリングデートに行ったときのボールの選び方なんだが」

花京院「ええ」

承太郎「どんなボールを選べばいいんだ?」

花京院「……重さが合うボールがいいんじゃないのか?」

承太郎「だが俺が赤紫の14ポンドのボールを選んだとしてだ」

花京院「ええ」

承太郎「彼女が前の男を思い出したらどうする?」

花京院「……13ポンドにすればいいじゃないか」

承太郎「それだと俺が前の男より力がないみたいじゃねえか」

花京院「……じゃあ、15ポンドにしたらどうだ?」

承太郎「俺は自分に嘘をついてまで付き合いたくねえんだ!」

花京院「面倒だな」

花京院「じゃあ自分専用のマイボールを買えばいい。色もサイズも選べるだろう」

承太郎「なんでも買え買え言うんじゃねぇよ!」

承太郎「大体買うとなったら決めなきゃならんことがたくさんあるぞ」

花京院「なんですか?」

承太郎「指を入れる穴が大きめの方がいいかもしれねえだろ」

花京院「穴を大きめって……何の為に?」

承太郎「成長した時のためだろうが」

花京院「……中学生が制服買うのとは違うんですよ」

承太郎「もしくはピチTが流行ったみたいにピチピチの穴のボールを買った方がいいかもしれねえ」

花京院「そんなボール指が抜けないでしょう」

承太郎「そこまでピチピチの話はしてねえよ!」

承太郎「それなら指が抜けただけで嬉しいだろうが。一本も倒せなくてもいいぜ。抜けた!やったー!だ」

花京院「それならマイグローブも買えばいいでしょう」

承太郎「買う方向で話を進めるんじゃねえよ」

承太郎「てめえは村上ファンドか……」

花京院「そんなに大きなものを買うわけではないでしょう」

承太郎「大体ボールなんかどうやって持ち運ぶんだ」

花京院「……スーパーの袋にでも入れればいいでしょう」

承太郎「あんなサイズの丸いものをスーパーの袋に入れてたら、『あ、あの学生さん、暑くなったとたんスイカまるごと買ってはる』とか思われるだろ」

花京院「……考えすぎですよ」

承太郎「大体あんな重いものをスーパーの袋なんかに入れてたら、どうなる?」

花京院「まぁ、破れますね」

承太郎「俺の家は自由ヶ丘って東京の坂の上だぞ。あんなものが転がったら八王子まで行くだろ」

花京院「考えすぎですよ。そこまでは行きませんよ」

花京院「それなら、原付のヘルメット入れに入れておけばいいでしょう」

承太郎「てめえは危機管理シミュレーション能力ゼロか」ゴゴゴゴゴ

花京院(僕は何で怒られているんだ……)

承太郎「俺が原付にボールを入れている。事故を起こしたときに本来5メートル吹っ飛ぶはずが、あんな重いものを入れている為に全然飛ばない。それを見たおばさんが、『あぁ、あんまり飛んでないから大丈夫だなぁ』って救急車を呼んでくれなかったらどうする!?」

花京院「……それなら原付に『ボウリングのボールを積んでいるため、実際よりも5メートル多く飛んでいるとお考えください』とでも書けばいいでしょう」

承太郎「そんなに字をいっぱい書いてある原付見たことあるのか」

花京院「助けてほしいんですから仕方ないでしょう」

承太郎「字を書いてる方が下向いて倒れたらどうする」

花京院「反対側にも『プラス5メートル』って書きなさい。それを見た人は不思議に思って反対側もみてくれますよ」

承太郎「それなら『ひっくり返してください』って書いた方がいいだろう」

承太郎「もういい。お前に相談したのが間違いだった。もうお前には相談しねえよ」

花京院「じゃあ誰に相談するんですか」

承太郎「いつも行ってる保健室の先生に相談することにする」

花京院「なんでもかんでもは無理でしょう。やめさせてもらいますよ」

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