千早「利き手をケガしてしまったわ」 (30)


小鳥「あら、本当。痛そうだけど、大丈夫?」

千早「ええ。レッスン中に突き指してしまっただけですから」

律子「人差し指と中指かー……。このテーピングは自分でやったの?」

千早「いえ、トレーナーがやってくれたわ。大したことないから、すぐ治るでしょうって」

律子「それは良かったわね。今日のスケジュールは終わってるんでしょ? 今日は帰ってゆっくり休んだらどう?」

千早「ええ、そうさせてもら……」


ドタドタドタ バンッ


P「千早――ッ!」

千早「!?」

律子「!?」

小鳥「!?」


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P「千早、トレーナーさんから聞いたぞ、お前ケガしたんだって!?」

千早「お、落ち着いてください。ケガといっても大したことないです。ほら」

P「ああああああああ!」

千早「!?」

P「おま……、これ、おまえ、はぁ――! おまえ、これ、これ……、はぁ――! はぁ――! こ、こんな包帯だらけの痛ましい姿になってしまって……」

千早「これはテーピングです……。大袈裟です、プロデューサー」

P「痛くないか? 擦ってやろうか?」

千早「……骨の異常なんで、擦っちゃダメです。そもそも、擦ってなんか欲しくありません。子供じゃないんですから」

P「あぁそう……。大丈夫なのか? 痛くないんだな? 無理してるわけじゃないよな? 熱とか出てないか? 大丈夫か? 今欲しいもんとかある?」



小鳥「…………千早ちゃん、突き指なんですよね?」

律子「突き指ですね。ただの」

P「はぁー………………………………」

千早「…………?」

P「えーとな、千早。お前はアイドルなんだからさ、ケガのひとつで仕事が出来なくなることだってあるわけだよ。今日は小さなケガだからいいものの、これが大怪我だったらどうするよ。仕事休まなきゃいけないだろ? そうなったら文字通り、アイドル生命の致命傷になるんだよ。だから、気の緩みからのケガなんてものは、絶対に避けなきゃいけない」


小鳥「急にまともなことを言い始めましたね」

律子「さっきまで、おまえこれはぁ――、しか言えなかったのに、急に真面目なのはやめてほしいですね」


千早「………………」ムス


小鳥「……あ、千早ちゃん不満そうな顔してる」

律子「突き指くらいで、なんでこんなに言われなきゃいけないんだ、って顔してますね。正論なんで言い返しはしないですけど」



P「………………」

千早「………………」

P「………………」ナデナデ

千早「!? な、なにするんですか、急に!」パッ

P「いや、なんか不貞腐れてる千早が可愛かったから」


律子「そこは怒れよ」


千早「~~~~! 不貞腐れてなんかいません! もういいです、今日はこれで失礼します!」


小鳥「不貞腐れてる」

P「あぁ待て待て。悪いけど、帰るのはこれ書いてからにしてくれ。この前の番組のアンケート。明日出さないといけないから」

千早「……わかりました。すぐ書きますから、貸してください」

千早「……………………」


千早「………………あ」

P「利き手ケガしてるなら書きづらいだろ。いいよ、口で言ってくれたら俺が書くから」

千早「ありがとうございます……」

P「ええと、最初の質問はこれか。問一、あなたにとって、歌とはどういうものですか」

千早「それはですね……」


――


千早「――――、と言ったところでしょうか」

P「はいはい……」カキカキ

千早「ふぅ……」


千早(話しすぎて喉が渇いたわ……、鞄の中にミネラルウォーターのペットボトルがあったはず……)」ゴソゴソ

千早「(あった……)ん、んん、ん……(開け辛い……)」」

P「ん。ほら、貸しな」カチャ

千早「あ……、どうも……」


小鳥「おお……、飲み物を代わりに開けてくれる男性……。これは胸キュンポイントですね!」

律子「…………………………まぁ……」


P「つーか、片手だとペットボトルも難儀だな。ちょっと待って、コップ取ってくるわ」

千早「え……、いや、いいです、そこまでしてもらわなくても……」

P「いいから」


小鳥(やさしい)

律子(やさしい)

P「ほい」

千早「あ、ありがとうござい……?(さっきまで向かいに座っていたのに、なんで隣に……?)」

P「しかし、利き手が使えないと色々と不便だよなぁ」トクトクトク

千早「まぁそうですけど、そこまででは……」

P「はい、お待たせ。飲みな」スッ

千早「あ、ありがとうござ……、え、あ、ちょ、なんで、近っ……!?」


小鳥「!?」

律子「!?」


千早「ん、んん~~~!?」

P「え、なに、どうしたの。持っててやるから、早く飲みな」


小鳥「コップを口元まで運んで、飲ましてあげてますよ……」

律子「甘やかしすぎでしょ……」


千早「……ッ!」キッ

P「なんで睨むんだよ……。ほら、さっさと飲めって。もう口付けちゃってるんだから」

千早「……………………」ゴク コクコク

P「もういいなら、手叩けよー」

千早「………………」ポンポン

P「はい。お粗末さま」

千早「……プロデューサー。あの、わたし子供じゃないんですから、こんなことして頂かなくても……、むぐっ!?」

P「はーい、ちょっと水こぼれちゃったから拭くぞー」フキフキ

千早「ん……、ふ、んぅ……」

P「はい。悪いな、こぼしちゃって。で、さっき何か言い掛けたけど、なに?」

千早「もういいです………………」

P「律子、小鳥さん。俺もう仕事ないんで、千早送って帰りますね」

小鳥「あ、はい。お疲れ様です」

律子「お疲れ様です。……ほどほどにしてくださいね」

P「? ほら、千早帰るぞー。お前んちにちょっとお邪魔するけど、大丈夫?」

千早「え、えぇ? な、なんでプロデューサーがわたしの家に来るんですか……」

P「心配だから、今日くらいは身の回りの世話やらせてもらうよ。メシはカレーでもいい?」

千早「え、は、え、へぇ!? え、なんで、そんな、ちょ、え!?」 

P「帰りスーパー寄るからなー。はい、帰ろう」

千早「ちょっと、ちょっと待って下さい、あ、いやいいです、手は繋いでもらわなくていいですから!」



小鳥「ちょ、ちょっと律子さん、なんだかとんでもないことになってますよ!?」

律子「なってますねぇ……」

小鳥「いくらケガしてるからと言っても、アイドルの部屋に男の人を入れるのはまずいのでは!?」

律子「……ま、大丈夫でしょう。あの人、わたしたちのことなんて歳の離れた妹か、娘くらいにしか思ってませんから」

小鳥「ま、まぁそんな感じはしますけど……」

律子「わたしが熱出して休んだときも看病しに来てくれましたし。あのときは随分甘えさせてもらいました」

小鳥「はぁ……、そうなんですか……。って、え、看病って、家に来てくれたんですか!?」

律子「それでは、わたしも仕事終わったんで帰ります。戸締りよろしくお願いしまーす」

小鳥「え、ちょっと待って下さい、律子さん! 律子さーん!?」

近所のスーパー

千早「やっぱりまずいですよ、プロデューサーがウチに来るなんて……」

P「あん? なにがまずいんだよ。そりゃ千早の家に行くのは初めてだけどさ。やよいの家なんて俺しょっちゅう行ってるよ」

千早「高槻さんの家は家族いるじゃないですか……」

P「まぁ本当にまずかったら律子が止めただろうから大丈夫だろ。あー、千早の明日の朝ご飯も買わなきゃな。片手で喰えるものだと、菓子パンとかバナナとか……、なにがいい?」

千早「え? いえ、朝食は摂らないので……、あ」

P「…………………………………………」

千早「……………………………………」

P「はぁ~~~~あ、は、はぁ~~~~~~あ。お前、はぁ~~~~。朝ご飯はなんでもいいからきちんと食べろってさぁ、はぁ~~~~~、言ったはずなのになぁあ~~~~~」

千早「はい……、すみません……」

P「こんな簡単なことも守ってくれないなんてなぁ~~~~、寂しいなぁ、俺~~~~。あんだけ言ったのにさぁ~~~~~、なんか家にも来てほしくないみたいだし~~~~~、こういうことあると、信頼っつーかさぁ~~」

千早「わ、わたしの家で良ければ是非お越しください!」

P「言われなくても行くけど。ほれ、パン買うぞ」

千早「くっ……………………」

千早の家



千早「どうぞ……」

P「お邪魔しまーす。うわ、ぜんぜん散らかってないな。綺麗にしてんじゃん」

千早「あまりじろじろ見ないで下さい」

P「はいはい。じゃあ早速メシ作るぞー。俺ハラ減っちまったよ」

千早「……プロデューサーって料理できるんですか?」

P「一人暮らし歴が長いおっさんナメんじゃねーぞ。まぁ見てなって。台所借りるぞー」


ジャー トントントントン ジャー ガサゴソガサゴソ チハヤー、ボウルドコー


千早(……なんか、こういうの、ちょっといいな……。落ち着くっていうか……)

千早(帰ってきて、だれかがこんな風にいてくれれば、ほっとできるんだろうな……)

千早(わたしが仕事で疲れて帰ってきても……、プロデューサーがご飯作ってくれていて……、おかえり、って言われたら、なんとなく疲れも忘れて……)

千早(…………………………)

千早(……これ完全に夢見る方としては逆だわ)

P「はい、お待たせ。簡単で悪いけど」 コト コト

千早「すごいじゃないですか、プロデューサー……」

P「いや、すごくねーだろ……、カレーとサラダだけだぞ……、どんな食生活してんだ……。よいしょっと」

千早「え……」

P「ん?」

千早「座る場所、近くないですか……?」

P「こんなもんだろ。はい、いただきます」

千早「い、いただきます」

P「……………………」

千早「………………………」

P「……………………」

千早「あの、プロデューサー。それ、わたしのお皿では……」

P「そうだけど」

千早「えっ」

P「はい、あーん」スッ

千早「!? な、なにしてるんですかっ!」

P「いや、食べさせてやろうかと。左じゃ食べ辛いだろ?」

千早「スプーン使うんですから、左手で平気です! ひとりで食べられます!」

P「いくらスプーンでも左手じゃ喰い辛いぞー? いいじゃん、今日くらい。なにがいやなんだよ」

千早「は、恥ずかしいんですよ! そんな、あーんだなんて……」

P「なーに恥ずかしがってんだよ、だれも見てないっていうのに。意識しすぎじゃないか?」

千早「……ッ! 意識なんてしていません!」

P「じゃあいいじゃん。何も問題ないだろ」

千早「……わかりました、口に運んでください。何も問題ないです」

P「はいはい。それじゃ、あーん」スッ

千早「あ、あーん」パク

P「……………………」

千早「………………」モグモグ

P「どう?」

千早「お、おいしいです。ちょっと、驚きました」

P「だろー? ほれ、もっとお食べ」スッ

千早「あ、あーん……。ん……、本当においしいです。意外……」モグモグ

P「よしよし。サラダもお食べ」スッ

千早「あーん……。ん……」シャキシャキ

P「お茶も飲んでおこうか。はい」スッ

千早「あ、ありがとうございます」コクコク

P「それじゃ、今度はまたカレーで……、はい、あーん」

千早「あーん。んん。プロデューサーって料理上手いんですね」モグモグ

P「それほどでもないけどな。ま、隠し味は愛情ってやつだな」

千早「ぶっ!」

P「うわ、どうしたんだ、急に吹き出して……」

千早「げほっげほっ……、ぷ、プロデューサーが変なこと言うからでしょう!?」

P「変なことは一切言ってないだろう……」

P「ご飯食べ終わったら歯磨きしようなー」

千早「あ、はい。では、ちょっと磨いてきます」

P「もう用意しておいたよ」

千早「え、あ、あぁ、ありがとうございます……」

千早(何から何までね、ほんと……)

千早「……? プロデューサー。その歯ブラシを貸してください」

P「いや、いいよ。俺が磨いてやるから」

千早「えっ」

P「えっ」

千早「プロデューサー。わたしは歯磨きをするって言ったんですが」

P「俺は磨いてやるって言ったんだけど」

千早(聞き間違いじゃなかった)

千早「……はぁ。わかりました。ではどうぞ、磨いてください」

P「なんだ、急に物分かりが良くなったな。楽でいいけどさ」

千早「わたしが何言っても聞いてくれないでしょう」

P「そんなことないけど……。まぁいいや、ほら、口開けろ」

千早「あ、あー……ん」

P「はーい、じゃあ歯ブラシ入れるからなー。噛むなよー」

千早「あむ」

P「しっかり磨かないと、虫歯になっちゃうからなー。綺麗にするぞー」シャコシャコ

千早(……顔近い……。それに、プロデューサー、すごく真剣な顔してる……)

P「芸能人は歯が命って言ってな……、いや、お前らは知らんかもだけど」シャコシャコ

千早「は……ふ……」

千早(人に歯を磨いてもらうって、なんだか変な感じ……。力が抜ける……)

P「歯の裏側もしっかり磨こうな」シャコシャコシャコ

千早(ちょっと……、気持ち、いい、かもしれない……)

P「あ、千早、ちょっといーってやって。いーって」

千早「い、いーっ?」

P「歯を閉じて、ってこと。はい、いいこ。そのまま我慢してなー」シャコシャコ

千早「……………………」

P「んー……」

千早「ほうか、したんへすか」

P「いや、ちょっと正面からだと磨きにくくてな……。ちょっと後ろに回ってもいい?」

千早「へ?」

P「よいしょっと、失礼」

千早「ぷ、プロデューサー! こ、こんな後ろから抱きしめるみたいな姿勢なんて……!」

P「え?」

千早「んぅ!?」ズボッ

P「ごめん、喋ってる途中で歯ブラシ口に突っ込んじゃった……。あ、やっぱりこっちのがしっかり磨ける」シャコシャコシャコ

千早「ん、んむぅ、ふ、うう……っ」

千早(力が入らない……っ)

P「おー、そうやって大人しくしててくれなー。はは、もたれかかってくるなんて、随分リラックスしてくれてるんだな」シャコシャコ

千早(近い、近い、近い近い近い近い……っ! でも動けない……っ!)

千早「はーっ、はーっ……」

P「……歯磨きしただけなのに、なんでそんな息切らしてるの?」

千早「……なんでもありません……。もう、わたし、今日はお風呂入って早く寝ます……。お風呂沸かしてきますね」

P「あ、沸かしておいたぞ。いつでも入れるよ」

千早「………………。では、入ってきますから。プロデューサーはもう、どうぞお帰りに」

P「そうだな。もう後片付けも終わったことだし……。でも、ちょっと心配だなぁ。利き手ケガしてるけど、ちゃんとお風呂入れるか?」

千早「さすがに、お風呂場までついてくるなんて言いませんよね?」

P「そりゃさすがにな。……でも、ちゃんと背中流せる? 髪の毛洗える?」

千早「それは……、まぁ。少しは難儀するかもしれないですけど」

P「俺が洗ったげようか」

千早「なっ! やっぱりついてこようとしてるじゃないですか! セクハラですよ、プロデューサー!」

P「まてまて、落ち着けって。俺はいっしょにお風呂入ろう、とか言っているわけじゃないんだぞ。ただ背中を流してやろう、その長い髪を洗うのを手伝ってやろうって言っているんだ」

千早「い、いっしょでしょう! いやですよ、裸を見られるなんて!」

P「だから落ち着けって。前は自分で洗えるんだから、露出するのは背中だけでいいの。背中だけだぞ? 普段、グラビア撮影で千早の水着とか近くで見てるんだぞ。それに比べたら、むしろ露出は少ないだろ」

千早「え? え、そ、そう、ですか……?」

P「背中以外はバスタオルでしっかり隠してくれりゃあいいから。背中と髪を洗ったら、さっさと出ていくしさ」

千早「そ、そうですか。……いや、いやいや、でもやっぱり、おかしい、ですよ。おかしい、ですよね? 男の人に身体を洗ってもらうなんて……」

P「そうかな……。律子が熱出したとき、俺、タオルで身体拭いてやったぞ?」

千早「!? えっ、え、えぇ!? り、律子がですか? プロデューサーが、律子の身体を拭いたんですか!?」

P「あぁ。すごく汗かいてたしな。……あ、やばい。これ律子に「絶対言わないで下さいね!」ってすげー釘刺されてたやつだ。悪い、千早、今のオフレコで頼む」

千早「り、律子が……、身体を……、ぷ、プロデューサーに、身体を……?」グルグルグル

P「で、どうする? 千早がいやだって言うのなら、無理にとは言わないけど」

千早「へ……? え、あ、ええと、お、お願いします……?」

お風呂場


千早「なんでこんなことに……」チャポン

千早「プロデューサーは、身体を洗うタイミングになったら、呼んでくれ、って言っていたけれど……」

千早「やっぱり、おかしいわよね。プロデューサーに身体を洗ってもらうだなんて。ええ、やっぱりおかしい……!」


P「千早ー、そろそろかー?」

千早「へっ!? あ、え、ええと、そ、そうですね、丁度身体を洗おうかと思ってたところです……?」

P「うーい。入って大丈夫? ちゃんとバスタオル巻いた?」

千早「あ! ちょ、ちょっと待って下さい、すぐに……」アセアセ

千早「ど、どうぞ」

P「はい、お邪魔します。あぁ、ほら、椅子に座ってていいから。はは、なんか変な感じだな」

千早「……………………」

P「それじゃ、髪から洗っていこうか。シャンプーってこれ?」

千早「は、はい……」

千早(入ってきてる……、プロデューサーが、わたしのお風呂場に……)ドキドキドキ

P「じゃあ一回、シャワーで頭濡らすよ。目瞑っててなー」シャー

千早「ん………………」

P「で、シャンプーを適量……、千早の髪の量だと適量わかんないな……、まぁいいや。それを泡立てて、しゃわしゃわしていくと。……んー、力加減わかんないけど、こんなもんかな?」シャカシャカシャカ

千早「ん……っ、ふ……。ぷ、プロデューサー、それでは優しすぎます。くすぐったいです」

P「ん、そっか。千早の髪って綺麗だから乱暴には扱えなくてなぁ。もうちょっと力入れてみるわ」シャカシャカ

千早「あ……、ちょうど、いいです。多分」

P「それは良かった。なんか美容師さんみたいだな、これ。どこかかゆい所はないですかー」シャカシャカ

千早「……うなじのところが、すこしかゆいです」

P「ここかな」カリカリ

千早「あっ、そこです。あぁ……、ありがとうございます」

P「あいよ」シャカシャカシャカ

P「さて、髪は洗い終わったから、次は背中な」

千早「え? あ、あぁ、はい……」

P「ん。どうしたの、千早。眠い?」

千早「いえ、すみません……、少し心地良かったので、つい……」

P「人に髪洗ってもらうのって気持ちいいよな。結構長い間、洗ってたし。でも、寝るのは風呂あがってからにしてなー。ほら、悪いけど背中ちょっとはだけてくれる?」

千早「はい……」スルスル

P「はい、おっけー。……あ」

千早「? どうか、したんですか」

P「いや、なんでも……」

P(寝ぼけてるな、千早。はだけろって言ったのに、背中全開じゃないか。尻が丸見えなんだけど……)

千早「プロデューサー?」

P「あ、あぁ。ボディソープはこれでいいのかな。ええと、ボディタオルは……」

P(気付かないなら言わない方がいいんだろうけど……、目に悪いなぁ。いくら子供の身体とはいえ……)ゴシゴシ

千早「あっ……」

P「わ、ごめん。痛かった?」

千早「いえ、逆です。ちょっとくすぐったいです……」

P「あぁ、そうか。もう少し力入れるな……」ゴシゴシ

P(千早の身体、本当細いな……。肉付きすごい悪いのに、なんだろうな、この妙な色気。細い背中がいやに艶っぽい。尻は控えめなのに、こうやって見るとやっぱ……)

P「……………………」ゴシゴシ

P「はい、終わり。あとは自分で洗ってくれなー」

千早「あ、はい……、ありがとうございました」

P「ごめんなぁ、千早」

千早「え……? 何がですか?」

P「いや、なんでも。じゃあリビングで待ってるから」

千早「はい……?」

P「……………………」ブオオオオオ

千早「当然のように、髪も乾かしてくれるんですね……」

P「そりゃお前、ちゃんと乾かさないと風邪引くしな。でも、千早の髪長いから、時間掛かるかも」ブオオオ

千早「もうどうにでもしてください……」



千早「………………」ウツラウツラ

P「また寝てる……。こうやって見ると、千早も歳相応の女の子なんだけどな……」プニ

千早「んっ…………」

P「こうやって寝顔を見せてくれるってことは、少しは信頼してもらえてるのかな。ほら、千早、起きて。寝るならベッドで眠りな。髪は乾かし終わったから」トントン

千早「あ……、はい……」

P「じゃあ俺もう行くからさ。ちゃんと鍵は閉めてな」ヨイショ

千早「………………あ、あの」

P「ん?」

千早「今日は……その……ありがとう、ございました……」

P「おう。どういたしまして」ナデナデ

千早「……………………」

P「ん、なんだ、今回は抵抗しないんだな」ナデナデ

千早「ばか……」

P「はは。それじゃ、また明日、事務所でな。おやすみ」

千早「お……、おやすみ、なさい」

事務所


律子「あ、おはよう、千早。ケガの具合はどう?」

千早「おはよう。どうもなにも、元々大したケガじゃないわ」

律子「そうよねぇ、突き指だし。でも、昨日はプロデューサーに色々やってもらったんでしょ? どうだった?」

千早「なんていうのかしら……。至れり尽くせり、の凄い版……?」

律子「あぁ……、想像つくわ。ま、大変だろうけど、あんまり邪険にしないで相手してやってね。心配してるのは本当だろうから」

千早「えぇ。………………ところで、律子?」

律子「なに?」

千早「ひとつ、訊きたいことがあるのだけれど。――この前、風邪で休んでいたわよね?」




おわり

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