絵里「ザ」海未「エターナル」亜里沙「トライアングル」 (45)

亜里沙「それでね、その時の海未さんが――」

絵里「知ってるわ、その時私も一緒にいたもの」

亜里沙「普段はしっかりしてるのに時々ちょっとお茶目な海未さんも素敵で、ますます好きになっちゃった!」

絵里「本当に亜里沙は海未が好きね」フフ

亜里沙「当たり前だよ! 海未さんってかっこいいし歌も上手だしそれでいて可愛いところもあって……」ユビオリ

絵里「別に海未のいいところをあげなくてもいいわよ」

亜里沙「えー、まだいっぱいあるのに」ムーッ

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絵里「あ、そうだ。ほら、海未の写真」

亜里沙「わぁ! この海未さん素敵! この海未さんも!」パアアアアアアア

亜里沙「お姉ちゃんありがとう」ニコッ

絵里「感謝ならことりにしなさい。ことりが撮ったのを提供してもらってるんだから」

亜里沙「ことりさんが撮ってくれてるんだ、えへへ」ニヤニヤ

絵里「もう、女の子がしちゃいけない顔になってるわよ?」ヤレヤレ

亜里沙「だってどの海未さんも素敵で……。また海未さんコレクションが増えちゃった」ニコニコ

絵里「よかったわね」ナデナデ

亜里沙「うん!」

絵里「さて、明日も私は練習で早いから寝るわね。亜里沙もあまり遅くまで起きてないようにね」

亜里沙「はーい。おやすみなさい、お姉ちゃん」ニコッ

絵里「おやすみなさい」フフ

絵里「…………」

絵里「こんなの、ダメよね」ハァ

絵里「でも亜里沙のあの笑顔が見たくて……。だからって海未を利用して……」

絵里「……まだ部屋に亜里沙の匂いが残ってる」スンスン

絵里「亜里沙……んっ」クチュッ

絵里「こんなことダメってわかってる、けど……っ!」クチュクチュ

絵里「亜里沙……亜里沙ぁっ!」

――――
――


絵里「またやってしまったわ……」ハァ

絵里「妹を想って毎晩慰めるなんて、亜里沙の姉失格ね……」ハァ

絵里「ん、メールが来てる。誰かしら」

海未『今宵の月は満月ですね。いつか絵里と並んで月を眺めてみたいものです』

絵里「海未からね。へぇ、今日は満月なのね」チラッ

絵里「海未に返信しないと、『本当、綺麗ね。今度μ'sのみんなでお月見でもしたいわね』っと」

絵里「……月を見てると心が洗われて、さっきまでしてたことにたいして罪悪感がすごく大きくなるわね」ハァ

絵里「明日も朝練からきっちりあるんだから本当にそろそろ寝ないと」

――――
――


絵里「おはよう、海未、ことり、穂乃果」

穂乃果「絵里ちゃんおっはよー」ブンブン

ことり「おはよう」

海未「おはようございます、絵里」

絵里「今日も穂乃果は元気ね」ナデナデ

穂乃果「えへへ、穂乃果は元気が取り柄だもん!」

絵里「ふふ、そうね。穂乃果にはいつも元気をもらってるわ」

ことり「ほんと、穂乃果ちゃんの元気な姿を見てると今日も頑張ろうって思えるんだよね」ニコニコ

海未「元気すぎてこちらが振り回されることも多いですけど」ヤレヤレ

穂乃果「えー、そんなことないよね? 絵里ちゃん?」

絵里「えっと、それは……ねぇ?」チラッ

ことり「ええっ!? えっとぉ……」メソラシ

穂乃果「絵里ちゃんもことりちゃんもひどいよー!」

海未「来てそうそうで悪いのですが、絵里。相談があるんです」

絵里「相談? 何かしら?」

海未「新曲の歌詞の方向性についてで……」

絵里「あら、海未が歌詞についての相談なんて珍しいわね。スランプ?」

海未「いえ、他の人の意見も取り入れたいと思いまして」

絵里「なるほどね。もう春なわけだし春っぽい曲なんてどうかしら?」

海未「春らしい曲。そうですね、春と言えば出会いと別れの季節。出会いがあれば別れがあり別れがあれば出会いがある。人の縁とは不思議なものですね」

絵里「歌詞を書いているだけあって海未は詩的ね」フフ

海未「絵里と私の縁も、思えば不思議なものです」

絵里「? そうかしら?」

穂乃果「むーっ……」ジーッ

絵里「どうしたの、穂乃果?」

穂乃果「絵里ちゃんと海未ちゃんってこの頃すっごく仲いいよね」

ことり「あ、それことりも思ってたの」

絵里「そんなことないわ。ねぇ、海未?」

海未「はい、私と絵里は元から仲が良い方なのでこの頃仲が良いというのは語弊がありますね」

穂乃果「でもなんだか海未ちゃんがこの頃絵里ちゃんにべったりな気がするんだよね……」

海未「それは絵里が頼れる先輩だから色々と相談に乗ってもらってるんです」

穂乃果「そっかー、絵里ちゃんすっごく頼もしいもんねー」

海未「はい、頼りにしていますよ、絵里」ニコッ

絵里「私も、頼りにしてるわ、海未」フフ

――――
――


放課後、練習後

絵里「ことり、ちょっと」チョイチョイ

ことり「あ、はーい」

海未「ことりも絵里によく呼び出されますよね」

穂乃果「振り付けの相談とかじゃない?」モグモグ

海未「あぁ確かにそうかもしれませんね、って穂乃果。夕ご飯前なのに何を食べてるんですか?」

穂乃果「何、ってパンだけど?」

海未「そんなに食べたらご飯が食べられなくなりますよ?」

穂乃果「パンは別腹だもーん」モグモグ

海未「太りますよ?」ボソッ

穂乃果「れ、練習してるから平気だもん!」

海未「振り付けの相談でしたら私も力になれるかもしれませんし少し見に行ってみますか」

絵里「ことり、いつものよろしく」

ことり「うふふ、はい」スッ

絵里「……いつもありがとう」ペラペラ

ことり「ううん、いいの。大事なμ'sの仲間の頼みだもん。ことりコレクションの1枚や2枚どうってことないよ」

ことり「でも、ほぼ毎日海未ちゃんの写真がほしいなんて、絵里ちゃんは海未ちゃんが好きなの?」

絵里「そういうわけじゃないんだけど」

ことり「じゃあなんで? なんで海未ちゃんの写真がほしいの?」キョトン

絵里「……誰にも言わないって約束できる?」コソコソ

ことり「うん、ことりは口が硬いから」

絵里「亜里沙がね、海未のことが好きなのよ」

ことり「亜里沙ちゃんが?」

絵里「亜里沙の喜ぶ顔が見たくて、ね」フフ

ことり「あ、もしかして絵里ちゃんって亜里沙ちゃんが好きなの?」ニヤニヤ

絵里「そ、そんなことあるわけないでしょ! 大体私と亜里沙は姉妹で……」

ことり「ことりは姉妹でもいいと思うけどなー」

絵里「……に?」ボソッ

ことり「え? なんて?」

絵里「本当にそう思う!?」ガバッ

ことり「ピィッ!? う、うん。愛の形に不正解なんてないと思ってるから……」ビクビク

絵里「そう、そうよね! 愛に不正解はないわ!」

ことり「え? え?」オロオロ

絵里「ことりの言う通り、私は亜里沙が好きなの」

ことり「えぇっ!? 半分冗談のつもりだったのに」

絵里「同性だろうとあまつさえ姉妹であろうと関係ないわよね?」

ことり「う、うん。ことりはいいと思うけど……」

絵里「ことりのその言葉を聞いたらなんだか自信が出てきたわ、ありがとう!」ニギッ

絵里「これからも写真はよろしくね」クルッ

海未「ご、ごきげんよう」

絵里「う、海未!? どうして……?」

海未「絵里とことりが何をしているのかと思って様子を見に……」

絵里「今の話、聞いてた?」ズイッ

海未「い、いえ……」

絵里「本当に?」ズズイッ

海未「…………本当は聞いてしまいました」

絵里「そう……。海未はどう思う?」

海未「私も愛の形は人それぞれでいいと思います」

絵里「そう、良かった。みんな理解力があっt」

海未「――例えば、私が絵里のことを好きでも」

ことり「えぇっ!?」

絵里「そ、それってどういうこと?」

海未「鈍いのですね……」

海未「私は、園田海未は絢瀬絵里のことが好きです」

絵里「うそ……。海未が私のこと……?」

海未「はい。絵里と出会って、話しているうちに私の胸の内の感情は友情から恋慕に変わっていきました」

海未「絵里のその綺麗な金色の髪に触れたい、白く透き通った陶器のような肌に触れたい、蒼く澄んだ瞳をずっと見つめていたい、その声を、そして絵里自身を独り占めしたい」

海未「私の中でそんな感情が大きくなっていきました」

絵里「で、でも私は亜里沙が……」

海未「はい。絵里が亜里沙のことを好きなのは先程聞いていたので分かっています」

海未「しかし、私はこの想いを抑えることはできません」

海未「絵里の心の中に亜里沙がいるのは分かっています、でも、気持ちを伝えることを、絵里を惑わせることを許して下さい!」


絵里「……ことり、ちょっと席を外してもらえる?」

ことり「え? あ、そ、そうだよね。ごめんね、気がつかなくて」タタタッ

絵里「海未、あなたの気持ちは嬉しいわ。私も少なからず海未のことをただの後輩以上に、仲間以上に思っている節があるから」

海未「それでは……!」

絵里「でもダメなの。やっぱり私は亜里沙が好き」

絵里「それで、亜里沙は海未のことが好きなの」

海未「え? あ、亜里沙が私を?」

絵里「つまり私にとって海未、あなたはライバルなのよ」

海未「ちょ、ちょっと整理させて下さいね。私は絵里が好きで絵里は亜里沙が好きで亜里沙は私が好き……?」

海未「全部一方通行の三角関係じゃないですか!」

絵里「海未の言った通り、私たちの縁は不思議なものだったのね」フム

海未「不思議というか複雑というか……。なんだか頭が痛くなってきました……」

絵里「同感ね、私も頭が痛いわ」

絵里「それで、海未はどうしたいの?」

海未「どうしたい、というのは?」

絵里「まさか気持ちを伝えたかっただけじゃないでしょ?」

海未「……はい。私は絵里と健全なお付き合いがしたいです」

絵里「同性同士っていう時点で健全って言えるのかどうか微妙よね」

海未「揚げ足を取らないでください!」

絵里「揚げ足を取ったつもりはないけど」

海未「そういう絵里はどうなんですか?」

絵里「私だってもちろん亜里沙と付き合いたいわ」

絵里「姉妹の枠を超えて、1人の女性として亜里沙に見てほしい」

絵里「きっと亜里沙も海未に対してそう思ってるはずよ」

海未「人を好きという気持ちはそう簡単に消せるものではありませんからね」

海未「私も絵里のことが好きということを自覚して、幾度となく消そうと努力しました」

海未「けれど、結果は……」ハア

絵里「私だってそうよ。毎晩亜里沙で自分を慰めて、姉失格だと思いながらもやめられないんだもの」

海未「ま、毎晩……!」カアアアアアアアアアア

絵里「……今変なこと想像したでしょ?」

海未「し、しし、してませんよ! 断じて!」

絵里「ちょっと今晩亜里沙と話してみるわね」

海未「話すって、すべてをですか?」

絵里「ええ、私が亜里沙を好きだっていうこと、海未が私を好きだっていうこと」

絵里「全部、包み隠さずに話すわ」

海未「なら、私も」

絵里「え?」

海未「私も絵里と一緒に亜里沙に話をします」

絵里「私1人で大丈夫よ」

海未「ダメだとは思っていません。ただ、私が知らないところで話が進んでしまうのが嫌なんです」

海未「だから、これは私のわがままです」

絵里「わがまま、ね……」

海未「ダメでしょうか?」

絵里「いえ、いいわ。可愛い後輩のわがままを聞いてあげるのが先輩っていうものよ」

海未「ありがとうございます、絵里」ニコッ

絵里「それじゃ、行きましょうか」

海未「? 行くとは?」キョトン

絵里「私の家に決まってるじゃない。行かないと亜里沙と話ができないでしょ?」

海未「え、ええ、絵里の家ですか!? 少々心の準備が……」ドキドキ

絵里「どこで話をするつもりだったのよ……」ヤレヤレ

――――
――


あやせけ

絵里「ただいまー」

亜里沙「お姉ちゃんおかえりー……って海未さん!?」

海未「ごきげんよう、亜里沙」ニコッ

亜里沙「ハラショー……」ポーッ

亜里沙「じゃなくて、海未さんがなんでここに!?」

絵里「この3人で少し話がしたくて」

亜里沙「3人で……?」キョトン

海未「はい。亜里沙、何があっても驚かないでくださいね」

亜里沙「はい」ゴクリ

亜里沙「ええええええええええええ!?」

絵里「近所迷惑よ亜里沙」

亜里沙「だ、だって、えっと……?」

亜里沙「私は海未さんが好きで」

海未「私は絵里が好きです」

絵里「それで私は亜里沙が好き」

亜里沙「そんなことって普通あるの!?」

絵里「あるじゃない、ここに」

海未「そうですよ。実際に起こっていることなんですから」

絵里「それで、亜里沙はどうしたい?」

亜里沙「ど、どうしたいっていうのは?」

海未「私は絵里と健全なお付き合いをしたいです」

絵里「私は亜里沙と姉妹の枠を超えた関係になりたいわ」

海未「亜里沙は私と、私たちとどうなりたいですか?」

亜里沙「亜里沙は、その……」

絵里「亜里沙は?」

亜里沙「もちろん海未さんと恋人になれたらいいな、って思う」

亜里沙「でも、やっぱりお姉ちゃんのことも大切で蔑ろにしたくないの」

亜里沙「お姉ちゃんと海未さんは、相手と付き合えればもう一人の気持ちはどうでもいいの……?」

絵里「……私はさっき海未には言ったんだけど海未のことをただの後輩以上に、仲間以上に思っている節があるわ」

絵里「だからできることなら海未のことは蔑ろにしたくない」

海未「私も絵里のことが好きであると同時に絵里の妹である亜里沙のことはとても大切に思っています」

海未「それはもちろん絵里の妹だからというのもありますが、絵里の妹である以前に1人の人間として大切に思っています」

海未「仕草が可愛らしく、笑顔が素敵で、絵里とはまた違った魅力があり、私に好意を寄せてくれている亜里沙を私も蔑ろにはしたくありません」

絵里「でももし2人が結ばれたらもう1人は……」

亜里沙「結ばれるのが2人じゃなければいいんだよ!」

えりうみ「「はい?」」

亜里沙「みんなそれぞれのこと大切に思ってるんでしょ?」

亜里沙「なら3人で結ばれちゃえばいいんだよ!」

絵里「3人で……?」

海未「そ、そんなの許されるはずがありません!」

亜里沙「同性愛も、姉妹愛も一般的にはダメ、ですよね?」

亜里沙「だから逆に大丈夫です!」

絵里「なによそれ……」ハァ

海未「暴論すぎます!」

海未「……でも、私は亜里沙に賛成です」

海未「そうすれば誰も傷付かない」

海未「好きな人と大切な人をどっちも幸せにできるのならば」

絵里「海未は、それでいいのね?」

海未「はい」

絵里「亜里沙も?」

亜里沙「もちろん」

海未「あとは絵里がはいと言えばいい話ですよ」

絵里「……私は」

ありうみ「「」」ゴクリ

絵里「いえ、私も亜里沙の案に乗るわ」

海未「絵里!」パアアアアアアアアア

亜里沙「お姉ちゃん!」パアアアアアアアア

絵里「でも本当に3人で結ばれることなんてできるのかしら」

亜里沙「出来るよ、きっと」

海未「そうですよ、互いに互いを想い合う気持ちがあれば」

海未「というわけで絵里、早速気持ちを確かめ合いましょう」グイッ

絵里「な、いきなり何よ海未」ビクッ

海未「接吻、ですよ」チュッ

絵里「……!」カアアアアアアアアア

亜里沙「あー! お姉ちゃんずるい! 海未さんのファーストキスは私がもらいたかったのに!」

絵里「私だって亜里沙とがよかったわよ!」

海未「想い合う気持ちがあれば……」

亜里沙「海未さんのファーストキスを奪ったお姉ちゃんなんて嫌い!」プイッ

絵里「私は大好きよ亜里沙!」チュッ

亜里沙「あぁっ! 海未さんに取っておいたファーストキス!」

絵里「せめても亜里沙のファーストキスを奪ってあげたわ」ドヤァ

亜里沙「嫌い嫌いお姉ちゃんなんて大嫌い!」

海未「……なんだか不安になってきました」

絵里「亜里沙は私のことが嫌いでも私は大好きだからね、亜里沙」モッギュー

亜里沙「……亜里沙だって、本当にお姉ちゃんが嫌いなわけじゃないもん」

海未「…………大丈夫そうですね」

海未「三角関係は英語で the eternal triangle」

海未「三角を意味するtriangleに永遠を意味するeternalがついて三角関係」

海未「永遠の三角形。なんだか皮肉に感じられます」

海未「でも、私はこの三角形が永遠に続けば、と思います」フフ

亜里沙「だったら亜里沙も海未さんにキスしちゃうもん!」チュッ

海未「ふ、不意打ちとは卑怯な!」

絵里「海未だって最初私に不意打ちして来たじゃない」

亜里沙「お姉ちゃんこそ!」

海未「これはこれで幸せなものですね」フフ

おわり

えっ

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