祥鳳「ここは、はずれの鎮守府ですから・・・」 (1000)

艦これの二次創作ss

初ssにつき駄文注意

書きダメを小出しにしていくスタイル。尽きたら更新速度落ちる、たぶん・・・

当ssはあまりss他公式2次創作問わずあまりスポットの当たらない艦娘にあえてスポットをあてていくというコンセプトで作っております

デースさんとか正妻空母とかまな板とかのメジャーどころはあまり出てきません

エタり防止のため、書き貯めは小出しにするので一回に読める量は少なくなるかと思われ

以上の事が気にいらない方はそっとじ推奨

始めます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407165075

提督「……やっと着いたか、ちょっと遅れてしまったが」

提督「住所は…ここで合ってる」ピラッ

提督「いやしかし……ここどう見ても学校だよな…」

 男は鎮守府の門の前で思わず首をかしげた。

 真新しい軍服を着た彼が首をかしげる先、その鎮守府らしき建物があるのだが、どう見ても海辺に建てられた古びた学校にしか見えない。しかし、校門のような柱にはちゃんと「端野(ハズレノ)鎮守府」という文字が刻まれている……かなり薄汚くなっているが。

提督「合ってるみたいだし、入るかな」スタスタ

提督「あんまり人の気配がしないんだが、本当に大丈夫なのか?」

提督(前任者がいなくなってどれくらい経つんだろうな、この鎮守府……)

 手入れの行き届いていない敷地内を歩いていくと、玄関らしきところに一人の女性が立っていた。

 細くて華奢な手足に長い黒髪、服装は白と黒のツートンだが落ちついた雰囲気によく似合っていた。左髪をひと房リボンで結ってあるのもワンポイントでよく映えている。

提督「やぁ、君がお出迎えの艦娘かな?」

??「あ! はい! 申し訳ありません門のところでお待ちしておくべきでした!」

提督「いやいい、遅刻したのはこちらだ。さて……」

提督「本日より当鎮守府に着任する提督だ、よろしく頼む」ビシッ

祥鳳「はい、よろしくお願いいたします! 私は軽空母祥鳳型一番艦の祥鳳と申します。ちょっと小柄ですけど、是非提督の機動部隊に加えてくださいね!」ビシッ

提督「では早速執務室へ案内してくれ。あと、確かこの鎮守府には他にも艦娘がいたはずだろう?」

祥鳳「はい、では案内したのち招集しますね」

提督(招集しないと来ないのか……ここでの提督の立場はどうなっているんだろう……)

提督「では頼む」

~執務室~

祥鳳「では呼んでまいります。しばらくお待ちください」ガチャ

提督「よろしく頼む」

提督「さて……」

 カーペット敷きの部屋で、それらしい雰囲気の応接セットと執務机が置いてある。が、

提督「ここ、校長室って書いてあったぞ……やはり学校なのか」

提督(荷物を置いて、私物は……大して無いから良いか)

 提督はカバンから辞令を取り出して今一度じっくりと読む。書かれた事に当然変化はなく、彼へ「端野鎮守府への着任を命じる」という内容が変わらず書かれているばかりであった

提督(端野…はずれの…外れの、とはまた、縁起の悪い)

 着任早々気力の下がる発想を振り払い、持参した仕事道具を取り出していると、扉をノックする控えめな音が

祥鳳「提督、当鎮守府所属の艦娘を招集してきました」

提督「よし、入れ」

艦娘たち「「失礼します」」


(注意:当然ながら、一度に扱える艦娘には限りがあります。もしもエタらず完走できれば、また別なマイナー艦娘を題材に書こうと思いますので、お許しください)

 やってきたのは十名ほどの艦娘たちだった。外見年齢はさまざまだが、皆一様に若く、ほとんどが巡洋艦以下の艦娘たちだった。

古鷹「重巡洋艦、古鷹です」

加古「古鷹型重巡洋艦の2番艦、加古だよぉ」

長良「軽巡、長良です」

名取「名取といいます」

由良「長良型軽巡四番艦の由良です」

初春「わらわが初春じゃ」

子日「子日だよーぅ!」

若葉「三番艦の若葉だ」

初霜「四番艦、初霜です」

提督「ここに祥鳳を加えて全員か。俺は兵学校を卒業したての新米で、経験皆無のひよっこだ、どうかささえてほしい。よろしく頼む」

艦娘たち「「はい」」

提督(…うん?)「とりあえず秘書艦を任命しようと思うが……」チラッ

艦娘たち「「…………」」

提督「祥鳳、頼めるか?」

祥鳳「は、はい! がんばりますね!」

提督「うん、それでは解散。各自別命あるまで自由にしてかまわない。祥鳳は残ってくれ」

艦娘たち「「了解」」

ガチャ ゾロゾロ バタン

提督「……さて、祥鳳」

祥鳳「はい、言いたいことは分かります」

提督「この鎮守府について、いろいろ聞かなくてはいかん事があるようだな」

嫁のSSとか初めて見た・・・

頑張って

 祥鳳の話は少々長くなった。

 端野鎮守府。複数ある鎮守府の中でもとびっきり辺鄙な場所にあり、出撃任務をこなさずとも深海棲艦の脅威のない平和な海にあるため実質的な仕事は遠征以外皆無に等しい。

 そんな鎮守府だ、やってくる提督も艦娘もやはり普通ではなかった。

 前任者は不正がお上に知れ、左遷させられてこの鎮守府にやってきたらしい。ようはろくな人間ではなかった。くわえて艦娘たちの配属順は一番最後、資源補給も少なく仕事も無い。前任者の提督の苛立ちは艦娘たちに向けられた。

 結局1カ月かそこらで憲兵にかぎつけられてその提督は逮捕、艦娘たちは別命あるまで待機を命じられた。そして、待機すること数カ月。

提督「そして、俺がここに来た、と」

祥鳳「…はい、その間に私たちは提督と言う存在、ひいては上司と言う存在に不信感を抱いています」

祥鳳「提督が命じるのなら戦います、それが私たちの役目ですから。何なりとお申し付けください」

提督「ずいぶんとはっきり言うのだな」

祥鳳「私たちは捨てられたも同然の身です、いっそ解体されてしまってもなんともおもいません……」

祥鳳「所詮ここは、外れの鎮守府、ですから」


提督(淡々と言っているが、隠し切れていないな……そういう性格なのか)

提督(それならば)

提督「まぁいい、何にしても今日からここは俺の鎮守府でお前たちは俺の部下だ」

提督「さしあたっては鎮守府の案内を頼みたい、お前たちに指示するにしても鎮守府の構造は把握しておかなければ」

祥鳳「わかりました、ご案内いたします」

とりあえず、軽い現状確認とメイン登場艦娘を出したところで本日は以上とさせていただきたく

案外あんまり書けてないことに愕然とする俺氏・・・ひえぇー

書き忘れましたが、結構地の分多めに使います。あと、更新時間はまちまちなので、見つけたら覗くくらいの気持ちでどうぞ。

次の更新は多分明日の夜。楽しみにしていただければ幸いですの・・・

>>8
さっそく見つけてくれた方がいて感激の至り

そう、このssは祥鳳さんが書きたいがために始めたも同然、がんばります

長良型の中に五十鈴とレア二人がいないのが寂しいな
何か事情がありそうだ

アイエエエエ!? オニオコ!? オニオコナンデ!?

なんでおにおこさん書けてへんのん・・・!?
>>20に指摘されへんかったら何の前触れもなくコロンビアするとこだった・・・感謝

 やってきたのは十名ほどの艦娘たちだった。外見年齢はさまざまだが、皆一様に若く、ほとんどが巡洋艦以下の艦娘たちだった。

古鷹「重巡洋艦、古鷹です」

加古「古鷹型重巡洋艦の2番艦、加古だよぉ」

長良「軽巡、長良です」

名取「名取といいます」

鬼怒「鬼怒だよ」

由良「長良型軽巡四番艦の由良です」

初春「わらわが初春じゃ」

子日「子日だよーぅ!」

若葉「三番艦の若葉だ」

初霜「四番艦、初霜です」

提督「ここに祥鳳を加えて全員か。俺は兵学校を卒業したての新米で、経験皆無のひよっこだ、どうかささえてほしい。よろしく頼む」

艦娘たち「「はい」」

いきなりの大ミスに泣きそう・・・でもがんばるのです

続きは予告通り夜に投下します

名前欄見て思うんだが、もしかして、酉を勘違いしてないか?

今のままだと本人確認にならないぞ

>>1です、>>25ご指摘感謝、急いで書き方確認してきました……

いかんね、こりゃいかん、以後お気づきの点はご指摘くだちい

お詫びに少し投下します・・・

 元学校と言うだけあって、思っていたほど広くはなかった。艦娘たちは教室を思い思いに改装して自分の部屋としている。それを提督が少しうらやましいとか思ったのは内緒だ。

提督(そうだろう? 一度はそんな妄想をした少年も少なくはないはずだ)

 ちなみに彼の部屋は教師用の宿直室だった。カビ臭い畳に手入れされていない部屋の中は非常に居心地が悪い。今は窓を開けて空気を入れ替えることで応急処置としている。ゆくゆくは改装してやろうと心に誓う提督であった。

 もとい、艦娘たちの艤装は体育倉庫らしきものを改装して頑丈そうにしたものだ。鍵の管理は現在祥鳳が行っているとのことで、案内されたときに提督に手渡された。

 そうして訓練に使用する小さなプール、海岸にそれっぽく設置された演習場と船着き場、当番制で使用している食堂に図書室を改装した資料室などを回り、最後にたどりついたのが体育館。

 現在は、妖精たちの働く工廠になっていた。

~旧体育館・工廠~

提督「ふむ、ここが工廠か」

祥鳳「ええ、ここで建造や開発が行えます」

提督「せっかく寄ったのだから何か開発しておこうか」

提督「…と、行きたいところだが……」

 入口の扉には紙切れが一枚貼り付けられてあった。

   ┌―――――――――┐
   |開店休業中:無期限|
   |         |
   |無能な提督死すべし|
   └―――――――――┘ 

提督「……要は、ボイコットか?」

祥鳳「前任の提督がずいぶんとこき使った上、満足のいかない開発を当たり散らしたもので……」

提督「こんなところでも尻拭いをさせられるというわけか」


 開店休業中ということなら開いてはいると判断し、提督は体育館の扉を開けた。

 汚れきった玄関は土やほこりにまみれ、靴を履き替える必要性は皆無そうに見える。土足のまま上がりこむと、中は工作機械と積み上げられた資源と資材、乱雑に散らばる艦娘の艤装がそこここに転がっていた。

提督(特型駆逐艦に陽炎型駆逐艦、これは、金剛型の艤装じゃないか)

提督(作りも丁寧、ずいぶんと腕の立つ妖精がいるらしいな)

 一見ガラクタのようだが、すべて完成度の高い開発品だ。きちんと分類、整備して申請すればすぐにでも立派な艦隊が結成できるに違いない。

提督「でも、それじゃ駄目なんだろうな」

??「あーん? 誰かいるのか?」

 そんな艤装や装備の山の向こうから間延びした声が聞こえてきた。がさごそと音を立てて表れたのは120センチくらいで二頭身の謎の生き物。人間をデフォルメしたような姿に着崩した作業着、間違いなくここの工廠の妖精だ。

提督「あなたがここの妖精か?」

主任妖精「あぁ? その白い制服ぁ、お前さんてーとくかぁ?」

 酒瓶を抱えて顔を赤く染め、千鳥足で呂律の回らない妖精というのは実にシュールな光景であった。しかし、彼女からは明確な敵意と警戒を感じることができた。

提督(初対面でこれだ、よっぽど扱いが悪かったのだろう)

提督「そうだ、装備の開発をたのm「だぁーまれぇええい!!!」ッ!?」

主任妖精「私ゃぁねぇ、もおぜぇったいにてーとくとか言うアホのゆーことはぁ、聞かん!!」

主任妖精「とっととかえんな!! 装備がほしけりゃその辺のガラクタ勝手に持っていきな、くれてやるからよ!」ブンッ

提督「……これはひどい」パシッ

 主任妖精は足元に落ちていた徹甲弾を投げつけるとそのまま山の向こうに帰って行ってしまった。提督はそれを手で受け止めつつ首を振る。

祥鳳「私たちすらろくに相手にしようとしないので、もう、手がつけられない状況なんです」

提督「そうか…とりあえず、執務室に戻る。祥鳳も戻っていいぞ、用があったらまた呼ぶとは思うが」

祥鳳「分かりました、提督はこれから?」

提督「とりあえず宿直室の掃除でもすることにする」

祥鳳「はい、ではまた」

以上です・・・うごご、張り紙ずれたし・・・orz

この世界での建造は1.妖精が艤装を(多少気まぐれに)作る 2.提督がそれに合った人材を中央に申請する

という形を取っています。こう、ちゃんと設定が決まっていないのは妄想がはかどりますねぇ

今度こそ夜に投下しに来ます(じゃないと書き溜めが、書き溜めがががが・・・)

どうも、自転車に乗ってたらこめかみにセミ公がぶつかった>>1です

またちょこっとですが投下します

~宿直室~

提督「くっ、まだカビ臭い…」フキフキサッサッ

提督「やれやれ、どうしてこんなことやってんだろうなぁ…」ハァ

 倉庫から掃除用具一式を取り出して熱心に掃除をする提督。汚れの目立ちやすい白い軍服でやるわけにはいかないので今はラフな私服に着替えていた。思わず自分が本当に提督なのかを疑いながらも彼は思考を巡らせる。

 とりあえずやらなくてはいけないこととしては主任妖精との和解だろう。船渠の管理も任されているらしく、彼女が仕事をしない限り艦娘たちに何かあった時にどうしようもなくなってしまう。

 提督にとって、それだけは避けるべき事態だった。

 環境を整えたら、こんどは艦娘たちの心を開かねばなるまい。

提督「そうなると、もっと彼女たちの事をよく知らないといけないな…」

 ぞうきんを絞ってばさっと広げる。ボロボロに使い古されたそれは洗って尚まだ薄汚れたままだ。思わずげんなりして肩が落ちるが、いやいやと首を振り気を持ち直してぞうきんがけを再開する。

 何事も少しずつ確実に、だ。

提督「まぁ、ここいらには敵も来ることはないらしいし、気長に行こう」

 一度立ち上がって腰を伸ばす。うごご、と唸り声を上げつつ凝りかかった腰を捻ってほぐす。
 丹念に拭いた窓枠は心なしかきれいになった気がした。


~次の日~

提督「さて、と……」

 翌朝、かろうじてカビ臭さを抜ききった部屋で目を覚ました提督はさっそく行動に移ることにした。昨日の食卓はずいぶんと息の詰まるものになった……仲良くとはいかずとも、せめて落ち着いて食事ができる程度にはよい関係を持ちたい。

提督「まずはそこを目指さないとな」

 執務室には祥鳳宛てに、昨日に引き続き待機命令と言う名の自由時間とする旨を記した置手紙を置いてある。あまり誉められたことではないだろうが、今の信頼関係では口頭も置手紙も大した差はないだろうし、そこのケアはこれから行うことだ。

提督(とはいえここにいる艦娘の事は何にも知らない、どうしたものか)

提督(そういう意味でも主任妖精を仲間につけてしまうのが一番早いか……いやしかし……)

提督「ん? あれは…」

~玄関前~

長良「ふぅ、少し休憩…」

提督「やぁ、精が出るな」

長良「ふえっ!? し、司令官!?」

 彼女は長良型軽巡洋艦一番艦の長良。結構な早い時間帯だが、彼女は走りこみをしていたらしい。昨日見た制服に赤いブルマを穿いた姿はよく引き締まった足と活発そうな短い黒髪によく似合っていた。

提督「今日も一日待機で自由にすることにしてたんだが、熱心なんだな」

長良「い、いえ、これは日課のようなものでして」

提督「走るのが好きなんだな」

長良「ええ、まぁ…」

提督(ふむ、それなら…)「なぁ、長良、俺も付き合っていいか?」

長良「…はい?」


~5分後~

提督「兵学校の時の運動着、寝間着代わりだったんだがまぁいいだろう」

長良「えと、本当にやるんですね?」

提督「ああ、言っとくがあんまり舐めてもらったら困るよ」

提督「いろんな意味で、な…」ボソッ

長良「司令官?」

提督「何でもない、ほら、行くぞ」タッタッタッ

長良「え? あっ、ちょっと!」タッタッタッ

~30分後~

 提督のフライングで始まった二人のランニングは、提督の周回遅れで幕を閉じた。それはもう圧倒的なまでに提督の鈍足さを露呈することとなった。

長良「……司令官、あの、その」

提督「ああ、見ての通りの鈍足、兵学校にいた頃のあだ名はカメだったよ」

長良「は、はぁ…その割には息が上がってませんが」

提督「持久力くらいしか取り柄がないんだ」

提督「まだまだ走ろうと思えば走れるぞ……遅いけども」

長良「あ、あはは……」

提督「ああ、そうだ、よかったら走りを教えてくれないか?」

長良「ふぇっ!? わ、私がですか!?」

提督「流石に提督にもなってカメ呼ばわりは流石にちょっとな……」

長良(この提督は……変な人だな)「……はい、長良でよければ」ニコッ

提督「ああ、よろしくたのむよ」

長良「はいっ! 軽巡長良、がんばります!」

長良(なんだろう、悪い人じゃなさそう……たぶん)

今回はここまで……提督並みの亀更新であるorz

艦娘達は若干チョロいですが、一応申し訳程度の理由がございますゆえご容赦いただきたく

別にこれで完全に落ちたわけでもないですので、提督がどう艦娘達の心を開くのかお楽しみいただければ幸いです

おっと、書き忘れ

次回の更新も明日の夜になるかと思います

それと、亀のくせにいちいちキャラに絡ませに行くので少し間延びするかもしれません、ご注意を……

 どうも、近所のファ○マで艦これコラボCRA○Zを見つけ、意気揚々と買って帰った、>>1です
 皆様の近所では販売しておられましたでしょうか? ちなみにおまけのクラフトは長門か千歳で迷った挙句、いつもお世話になってる千歳さんを選びました

 どうでもよかったですね、今夜も少し投下していきます

校舎内廊下~

提督「さて、朝ごはんも食べたしたし……そういえば誰が用意してたんだ?」

提督「後で確認しておこう…さて」

 と、行くあてを足任せに決めようとした提督の耳に、遠くから重い音が聞こえてきた。学生時代の訓練の時とかに度々聞いた音で、記憶の底に残る……

提督「……やめだ、やめ」

提督「砲撃音、小口径砲の……駆逐艦たちか? 方角的には、演習場か」

提督「なんだかんだいって熱心な奴が多いらしいな」

~演習場~

 元が学校であるこんな鎮守府モドキに演習場などと言った立派なものはなく、学校近くの海岸を一部掘り下げて固めたのち、桟橋をかけただけのお粗末なものだ。

 防波堤も無く、舫を掛ける柵も無く、出撃の時にも使われるようなそんな場所。

 ゆえに正しくは演習場ではないのだろうが、演習にしか使われなくなって久しいので、自然とそう言われるようになっていた。

 そんな桟橋から少し離れた場所で、艤装を背負った艦娘たちが演習用標的のブイを狙って砲撃の訓練を行っていた。

 訓練用の砲弾には塗料が混ぜ込んであり、着弾すると色のついた水柱が上がるようになっている。これで、一斉に砲撃しても誰の弾がどのあたりに当たったかを見分けられるようになっているのだ。

 なお、艦娘同士の実践演習にも使用されるので、演習が終われば頭から色とりどりの塗料を垂れ流すひどい格好になったりするが、塗料は妖精お手製の水で簡単に落ちる塗料なので制服や髪にこびりついたりなどの心配はいらないご都合しゅgもとい新設設計である。

初春「ふむ、わらわと若葉が夾叉、子日と初霜が全弾見当違い、と……」

若葉「昨日も同じような結果に終わっていたな…初霜はもう少し手前を狙うべきじゃないか?」

子日「子日、飽きちゃったぁ~」

初霜「訓練用の魚雷もおとといなくなっちゃいましたもんね」

初春「工廠の妖精殿も気まぐれでしか作ってくれぬからのう……」

若葉「今度の司令官は、果たしてまともなのかどうか……」

提督「まともかどうかは知らんが、仕事はきちんとやる方のつもりだがね」

初春型「「うわぁ!?」」

提督「今日も一日休みと伝えたはずだが、熱心だな」

初春「も、申し訳ありませぬ! 勝手をお許しいただきたく!!」ビクビク

初霜「いついかなる時でも戦闘行動がとれるよう自己鍛錬をしておりました!!」ビクビク

提督「感心していたんだ、怒りはせんよ」

提督「どうだ、成果のほどは?」

若葉「い、いつから見ていらっしゃったので?」

提督「さっきの一斉射のあたりだ。ここの艦隊は他鎮守府との演習はあまり組まれていないのか?」

子日「前の提督はおさぼりさんだったし、いなくなってからはお約束する人もいないから全然やってなーい!」

初春(ね、子日! 提督殿にそのような口を!)

提督「楽にしてくれてかまわんよ、自分の自然体が一番戦い安かろう」

若葉「は、はぁ……」

提督「それより、砲撃だが……そうだな」

 と、提督はおもむろに桟橋に腰を下ろすと、ごく自然な動作で海水面に降り立った。

提督「少し貸して見たまえ」

子日「え、えええええぇえぇ!? 子日、びっくりの日!?」ネッノヒー!?

初霜「提督!? え? なんで水面に!?」

提督「それはまぁ、今はいいだろう」

若葉「いやいや、よくないだろう!?」ブンブン!!

提督「ええい気にするなと言うに……若葉、少し連装砲を借りるぞ」スチャ

若葉「え、あ、ちょっと」

提督「ふむ、いいな、ちゃんと手入れされているようだな」

提督「いいか? 見た感じだとまだ砲撃の基礎が身についてなさそうだから、まずは止まったままでの砲撃に慣れるようにしよう。まずは膝を立てて――」


―――――
―――

 提督「と、まぁこんな具合だな。初春は特殊だからまたコツや勝手が変わってくるだろうが、まぁおおむねこんな感じだ」

初春「妾は、狐にでも化かされておるのじゃろうか?」

初霜「でも、おかげで命中弾がかなり増えましたね」

子日「子日、感激の日!」ネッノヒー!!

若葉「提督は随分と上手いんだな、少し感心したぞ」

提督「駆逐艦用の測距儀と魚雷の模擬弾も用意できるように手配しておく、一両日中……は厳しいが」

提督「また時間があれば稽古をつけよう、しっかり復習しておくように」

初春型「「「「了解!」じゃ!」です!」の日!」

 提督は満足そうに頷くと、海から桟橋に上がり、鎮守府の方へと去っていった。初春型の面々はそれを見送ると、誰からともなく顔を見合わせる。

若葉「……随分とまともな人のように見えた」

初霜「い、いえいえ! 海面に立てる人はまともじゃないですって!」

子日「でも、前の提督に比べて、すっごくやさしいよ?」

初春「うむ、実に分かりやすい指導であった、それこそ、提督殿が人であろうが無かろうが気にならぬ程じゃのう」ウンウン

初霜「確かにそうですけど……」

若葉「まだ決めるには早いが、あれは信じるにたる上官かもしれない」

―――――
―――

今夜は以上とさせていただきたく

場面によっては投下量も上下しますな……結構書き溜めを消費してしまいました

キャラの人数の所為ですかね

さて、提督はいったい何者なのか……それは追々明かしていくことになるかと思われます

では、おやすみなさい、次回も明日の夜の投下とさせていただきます。今日よりは量は少なくなるかと思います。

 どうも、大淀さん実装の知らせに興奮冷めやらぬ>>1です。このあと22:00に情報開示だそうですね、楽しみですな

 皆様はイベントの準備はできましたでしょうか。当方、油・弾・鉄が各約5万、ボーキ約4万、バケツ360と若干の不安を残しておりますが、泣いても笑ってももう時間はございません……レア艦ほりは厳しそうな当鎮守府状況であります

 それでは今夜も少し投下していきましょう

提督「さてと、思わず良い運動をしてしまったな」

 昼には少し早い時間、提督はやはり鎮守府内を歩き回っていた。歩き回るとはいっても狭い敷地だ、一周するのにそう時間はかからない。
 ところでもう1周を終えようとしているが、艦娘と一度も出会っていない。みな部屋にいるのだろうか? 初春型は皆演習場にいたが、そのあとどうしたかまでは分からない。少なくとも砲撃音がないということは演習場にはいないのだろう。

提督「やはり前任は碌でもなかったみたいだな……と、ここは」

 足任せに歩いていると、行きついたのは資料室と書かれた部屋の前だった。察するに学校であった頃は図書室だったのだろう。
 理科室やら音楽室には立ち入った形跡がないが、ここはどうやら違うらしい。ドアの取っ手がきれいだ。

提督「誰かいるだろうか」ガラガラ

 扉をあけると本の集まった独特の紙の匂いが流れ出してきた。しかし、図書室や資料室にありがちな埃っぽさはなく、むしろ清潔感すら感じる。こまめに手入れをしている艦娘がいるらしい。

??「あれ、名取? 早かったわね」

 と、ドアを開けた音を聞いてか、本棚の間から誰か出てきた。本の束を抱えた長い髪を頭の横で結わえた艦娘、軽巡の由良だ。

提督「すまない、名取じゃないんだ」

由良「て、提督さん!?」ビクッ!

提督(肩まで跳ねあげて……どれだけここの艦娘は提督が苦手なんだ…)

提督「驚かせてすまないな、ここの資料室の管理は由良がやっているのか?」

由良「いえ、えっと、その……」

??「由良ー? どうしたの?」

提督「ん、古鷹か?」

古鷹「へ? 提督!?」

提督(もう何も言うまい……)

提督「そうか、古鷹と二人でやっているんだな」

由良「えと、はい、勝手ながら、やらせていただいています」

古鷹「それで、提督はどういった御用で?」

提督「本当の事を言うならただこの鎮守府に慣れようと思って歩いていただけだが……そうだな、司書がいるなら丁度いい」

提督「ここの近海の海図と、艦種ごとの簡単な違いが分かる本を持ってきてくれないか?」

古鷹「え? は、はい! 海図と艦種の違いですね!」

由良「少し待っていてください!」

 そう言うと、二人は本棚の間へ走り入っていった。遅くなったら怒られるとでも言わんばかりの様子に、提督は思わずため息をつく。朝に声をかけた長良にしても、演習を指導した初春型達にしても、提督と言う存在に恐れを抱いているようだ。
 もちろん、それは大事だ。しかしこれは行き過ぎている。“提督”というものは畏れを抱かれていても、恐怖の対象であってはならないと、この提督は考えている。

提督(そう、提督は、“あの人”のようにあるべきで……)

由良「お待たせしましたっ!」

 思考が深い所へと潜っていこうとしたその時、少し息を切らせた由良達が戻ってきた。

提督(……いかんいかん)

提督「いや、十分早かったと思うがね」

 沈み込む前に戻ってきてくれたことに心中感謝しつつ、二人が持ってきたものを机に広げる。
 筒状に巻いてあった海図には潮の流れや水深など細かなデータがしかし分かりやすく記録されていた。かなりの部分が手書きで記されているあたり、誰かが加筆修正を加えたのだろう。
 艦種の違いの本は、兵学校時代に読んだ入門書のそれに近く、分かりやすさも申し分ない。

提督「……ふむ、さすが、ここを管理しているだけあって的確な選択だな」

提督「助かった。これからもここを任せてもいいか?」

古鷹「はい! ありがとうございます!」

由良「頑張らせていただきます!」

提督「あまり肩に力を入れすぎないでくれ、こっちも肩が凝る」

提督「また頼む、ありがとう」ニコ

古鷹・由良「「はい!」」

 提督が出て行くと、二人はほっと肩の力を抜いた。

古鷹「……どう思う?」

由良「う、うーん……」

由良「なんか、私たちが知ってる“提督”とは、なんか違うと思う」

古鷹「そうよね、なんか違う……うまく言えないけど」

由良「あえて言うなら……マトモ?」

古鷹「まだ判断するには早いけど……前の提督に比べればかなり普通な部類になるかもしれないね」

――――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。少し少ないですね

 場面ごとに長さが変わるのは仕方のないことですが、やはり読みごたえがないのはよくないですね……精進いたします

 明日以降はイベント期間となりますが、描き溜め投下方式ですのでいつもどおりに投下する予定でございます……あくまで予定ですが。書き溜めは疲労抜きの間にでも書けますし、おそらくちゃんと投下できるかと思われます

 では、明日からは史実のifを勝ち取り暁の水平線に勝利を刻むため、お互い頑張りましょう

 ちなみにですが、コラボグッズを買いにくいという方がいらっしゃいますね……わかります

 >>1に関しては、もうこれは「慣れた」としか言いようがありませんね……参考にならなかったら申し訳ない

 どうも、アップデート作業、難航しているみたいですね。少し運営が心配な>>1です。

 今日の投下は、量が中途半端に短いので二場面の投下になります。書き溜めと確認のため二回に分けて投下しますので、まずはこの時間に一回目を投下していきます。


提督「さて、昼か……そう言えば、今朝の食事は誰が作ってたんだ?」

 執務室に本を置いたころには丁度昼食の時間になろうとしていた。すでにどこからか炊事を行う匂いが漂い始めている。今朝は何ともなしに食べていた昼食だが、一体誰が作っているのだろうか。

提督「普通は鎮守府に出入りしている給食業者とか糧食班、給量艦娘が担当しているんだが……」

提督「そんなのこの鎮守府に手配されているわけないしな……」

 首をひねりつつ給食室と書かれた部屋をのぞいてみると、二人の艦娘がせわしなく動いていた。

鬼怒「そっち、ご飯は炊き終わってる?」

名取「う、うん! いつでも盛り付けできるよ!」

鬼怒「OK! こっちは……」

 危なげなくテキパキと作業をこなしているあたり、基本的には彼女たちが厨房を切り盛りしているのだろう。しっかり息もあっているし、声をかけて邪魔するのもよくない。

提督「大人しく待っていよう」

 食堂で待っていると料理がやってきた。今朝や昨夜は温かい食事がすでに置いてあったので知ることはなかったが、彼女たちが用意していてくれたものらしい。
 この時点で食堂にいる艦娘たちは鬼怒と名取の二人だけで、これが普段通りかは分からないがとにかく今はそういう状況だった。

鬼怒「ふぅ、ちょっと早かったかな?」

名取「でも、遅いよりはいいんじゃない、かな?」

提督「いや、丁度いいぞ」

鬼怒・名取「「うひゃあ!?」」

提督「……もう何回目か知らんが、本当に“提督”が嫌いなんだな」ショボン

鬼怒「い、いえ! そんなことはありませんって!」ビシッ

名取「は、はい! ま、全くそんなことは!!」ビシッ

提督「いやいい、気にしないでくれ……」

提督「それより、いま来たということは出来たてだろう?」

名取「は、はい、そうですけど……あっ、す、すぐ用意します!」

鬼怒「少々お待ちを!」

 そう言って目にもとまらない速さで用意を始めた。

提督「あ、いやだから……はぁ…」

 自分の話を聞いてもらえるにはやはり時間がかかるらしいと再確認、今は我慢することにした。そうこうしているうちに、テキパキと二人が提督の分の食事を持ってくる。食欲のそそる匂いに、思わず唾を呑みそうになった。

鬼怒「えと、今日の昼食は肉じゃが定食…風です!」

提督「うん、うまそうじゃないか、いただきます」

提督「……うまい。うまいぞこれ」モグモグ

 今朝も食べていたわけだが、改めて食べればやはりおいしかった。とくに丁寧な味付けと出汁のよく染みたジャガイモは最高においしい。人参も程よく柔らかく、甘く溶けた玉ねぎも魅力的だ。

提督「……ごちそうさま」

 最初の一言以降、言葉を発するのも惜しいとばかりにものすごい勢いで平らげてしまった。行儀が悪いとは思いながらも出汁も飲み干してしまっている。

提督「こんなにうまい肉じゃがは久しぶりに食ったよ、ありがとう」

鬼怒「え? あ、はい!」

名取「きょ、恐縮です!!」

提督「いつも二人が食堂を仕切っているのか?」

鬼怒「ええ、まぁ、なんか気が付いたらいつの間にか……」

名取「い、一応料理出来なくもないんで、えと、その」

提督「謙遜することはない、肉じゃがは料理の中では基本の物」

提督「それをここまで美味しく作れるんだ、胸を張ってもいいと思うぞ」

名取「あっ、ありがとうございます!」

提督「これからもうまい飯を期待しているよ、それじゃごちそうさま」

鬼怒「は、はい! お粗末さまでした!!」

 提督が食堂を後にするのを確認して、他の艦娘同様二人はどっと肩の力を抜いた。提督が見たらやはり肩を落とすのだろうが、彼女たちとて好きで緊張しているわけではない。

名取「え、えと……誉められ、た?」

鬼怒「うん、誉められたと思うけど……“提督”って、艦娘を誉めるもんなんだ」

名取「わ、私、初めて誉められた……」

名取「あの提督が珍しいの、かな?」

鬼怒「さぁ? でも、少なくとも、あの提督は悪い人っぽくなかったね」

名取「う、うん……」

 その後も、駆逐艦や重巡たちが三々五々とやってくるのに対応しながらも、提督の人となりについてが彼女らの頭から離れることはなかった。

―――――
―――

 一回目は以上となります。少し少ないですね。何でもいいですけど、キャラ付って難しいですよね。特徴的な口調やセリフがある艦娘ならともかく、そう言うのがない子はキャラがかぶってしまいます……そう言うあたりが、ここの登場艦娘の出番を減らしているのでしょうか?

 次の場面はいつも通りの夜に投下していきます。
 運営には早く作業を終わらせてほしい半面、バグが出ないように丁寧に作業をしてもらいたくもありますな。

 では後ほど。

一旦乙です
そういやここには間宮さんも鳳翔さんもいないんだったな。
そして気になるのは食糧の確保はどうしているのか?
だけど、どっかに畑があって自給自足生活しているのは予想できるな

 乙をつけてくれる方々に感謝を言いに参りました、>>1です。要は書き溜め中の気分転換です。

 >>9の祥鳳の説明じゃ少々分かりにくいかと思われますが、物資補給は少ないながらあります。まぁ、必要最低限ですけども。しかし、>>94の案も面白いので組み込むかもしれません(笑)

 しかし、タイトルに祥鳳の名があるのになかなか出させてやれませんね……もう少ししたら出番は増えますので、祥鳳好き同士の方はしばらくお待ちくださいませ……

 どうも、イベントの参加は少し待ってからにしようという決定が鎮守府有識者会議(何)でなされました、>>1です

 ミッドウェー方面から台風がやってきているそうですね、なんというタイミングでしょうか……艦載機が心配ですね

 それでは、少し投下していきます

 昼過ぎ。中庭と思しき場所には大きな木が生えていて、その下には丁度いい木陰ができたいた。今日は天気も良く風も適度にあるすごしやすい気候で、また食後であることも併せて眠気を誘うことこの上ない環境だ。

提督「やはり、こんな時間に本など読むものではないな……」

 あくびをかみ殺しつつ眠気覚まし代わりと散歩をしていた提督も、これには敵わず幹に背を預けて、つい腰をおろしてしまった。
 海からの風が木の葉を揺らし、波の音と混ざって耳に心地いい。どれもこれもが眠気を誘う、昼寝をせずにはいられない場所だった。

提督「どこか場所を変えて読もうかとも思ったが…厳しいな」

提督「……ん?」

すぅ、すぅ、と。
 規則正しい音が聞こえてくる。寝息だろうか、だとすれば実に心地のよさそうな寝息だ。聞いているこちらまで眠くなってきそうな寝息。
 提督は幹の反対側を覗いてみた。

加古「すぅ……ふぅ……」

 果たして寝息の主はそこにいた。今が至福と言わんばかりの幸せそうな顔でよく眠っているのは重巡洋艦の加古。顔合わせの時に一番砕けていた彼女だが、さて、彼女もやはり提督には苦手意識を抱いているのだろうか……

提督「まぁ寝ていては確認もできんが……ふむ」

 古鷹型だと言うことで彼女と同じ制服を着ているわけだが、つまりセーラー服を切り詰めた露出のやや高い衣装なので、要は腹部丸出しの状態で無防備にぐっすり寝ているのである。

提督「きっと前任がいなくなってからの習慣が抜けていないのだろうな」

提督「……はぁ、風邪引かないのか、これ?」

 昨日まで晴れの日はこの調子だったのだとしたら平気なのだろうが、艦娘とて身体的には人間の娘と大して変わりはしないのだ。

提督「ひかせたら俺の監督不行き届きだしな」

 寝ている間――それも提督にこういうことをされるのは、ひょっとしたら嫌がるかもしれないが、そこは根気よく嫌がられなくなるように頑張るしかない。

提督「さて、これで良し、と……」

加古「すぅ…ふぅ……」(提督の上着装備)

 少し土で汚れてしまうだろうか、そうなると白い制服だと目立つか、いやすでに地べたに腰を下ろした時点で同じか……
 何となくどうでもいい思考を巡らせて、提督は幹の反対側に戻ると風に吹かれながら読書を再開した。上着を脱いだ分、少し冷える気もするが、

提督「まぁ、これはこれで目が覚めるかな」

 あくびをかみ殺し目の前の活字に集中し―――

 ――彼が寝息を立てるのにそう時間はかからなかった。

―――――
―――


加古「……ん、んぁ?」

 ふと、目が覚めた。状況を思い出す。
 そう、日課の昼寝をしていた。あんまり寝過ぎると古鷹が怒るのだが、好きなものはしょうがない、これだけはやめられないのだ。
 頬に感じる風は少し冷たい。この様子ではお腹を冷やしたか……艦底を腹とするなら、艦であった頃は常に冷え続けていたはずなのだが、人間の体では冷えると調子を崩す。

加古(まぁ、人間になったおかげで昼寝とかできるんだけど……)

加古「お、おお?」

 と、ここで何やら体が温かいことに気付いた。見れば自分の体に何やら白い布がかけられている。

加古「軍服っぽいなぁ、これ、もしかして提督の上着……?」

 しかし当の提督本人の姿は見えない。かけてそのまま立ち去ったのだろうか? と、少し耳を澄ませてみると、かすかな寝息が聞こえてくる。木の向こう側からだ。
 もしやと思い覗き込んでみれば、すやすやと気持ち良さそうな寝息を立てる提督が、しかしてそこにいた。

加古「ホントにいるし……本なんか抱えちゃってさー」

 資料室の印が押してある、きっと古鷹か由良が選んだんだろう。彼女らも提督にはあまりいい印象を持ってはいなかった。きっとびくびくしながら持って行ったんだろう。

加古「ま、私はあんまり期待されてなかったし? 放置プレイばっかで関わって無かったしなー」

 重巡洋艦と言う扱いにくい艦種に加えて、集中力と繊細さに欠ける性格から艦隊に加わることはほとんどなかったこともあって、提督と関わることすらなかった彼女は提督に忌避感とかそういった感情は抱いていなかった。
 しいて言うなら、隣の他人。

 そこにいるだけで自分とはかかわりのない、電車で乗り合わせた他人のような存在だった。
 それがどうだろう、この新しい提督は。
 いきなり現れて、こうして寝ている。

加古「なんつーか、変な奴だなー」

提督「……ん、んぅ…」ブルッ

 と、苦笑していると、提督が寒そうに身を震わせた。

加古「ありゃ、あたしが寒くないようにってかけたんだろうに、自分が寒くちゃ世話ないよなー」

 彼女や姉の服は確かに涼しそうなデザインだし、新米の提督と言うくらいだから心配したんだろう。

加古「艦娘の心配ができる提督か……」

―――――
―――


督「…ん…う、うぅ…?」

 肌寒さを覚えて、目が覚めた。体か固いのは慣れない姿勢で寝てしまったせいだろう。身じろぎするたびに、何やら関節から軋むような音が聞こえる気がした。

提督「やれやれ、結局寝てしまったか……ンがッ! く、首が……」

 文句を言う関節をなだめすかしていると、何かが掛けられていることに気付いた。

提督「こりゃ、俺の上着か? 加古は?」

 幹の反対側をうかがうが、そこにはもうあの気持ち良さそうな寝顔の主はいない。いったいどれくらい寝てしまったと言うのか。日の傾き加減は大して変わっていなさそうなので大した時間ではないはず。

 その時間の間に何があったかは知らないが、加古が自分に上着を掛け返してくれたのは確かだった。

提督「……うん、少し希望が見えてきたかもしれないな」

 とはいえ、

提督「掛けておいて寝落ちして逆に掛けてもらうなんて、世話のない話だな……」

 苦笑しつつ立ち上がった。冷えて硬直していたのかふくらはぎを攣りかけてあせりつつ、執務室へと足を向ける。
 とりあえず本を置いてくることにした。

―――――
―――


 本日は以上とさせていただきたく。

 公式からはずいぶんと面白い情報が出てきてますね、ますますイベントが待ち遠しくなってきました。

 さて、次回も明日の夜に投下しにまいります。次こそは祥鳳さんのターンですぞ! しかし、彼女は結構……おっと、これ以上は言えませんな。

 では、本日はこれにて。イベント、がんばりましょうね

 どうも、バケツ70近くと溶かしましたがE-1をクリアいたしました、>>1でございます。春雨かわええ……

 失礼、明日はE-2に挑戦であります。少なくとも大淀は入手しておきたいところです。

 では、今日も少し投下します。

提督「ここか……」

 日も傾いてくる夕刻。提督が足を運んだのはプール、体育館が並ぶ中にひっそりとたたずむ一角。簡素な小屋と長い柵に囲まれた空間で、ときおりタァン! と気味の良い音が聞こえてくる。
 弓道場である。
 一日通して鎮守府を回ってみて、最後によらねばならない場所だと気付いた(のは実はついさっきである)。
 引き戸を開けて靴を脱ぎ、中へと足を踏み入れる。
 道場というのはその必要がなくともつい足音をたてないようにしてしまうが、独特の空気感からだろうか。
 中は狭く、ここには弓を扱う空母が一人しかいないことを前提に作られたのか、的も一つしかなかった。
 そのたった一つの的を前に、静かに弓を構えた女性がいた。

提督「………」

 祥鳳である。矢を引く右腕の袖をはだけた、いわゆる肌脱ぎという格好で、じっと的を見据えて立っていた。

祥鳳「……スゥ」

 短く息を吸い、矢を番え、弦をぐっと引く。あの華奢な腕で身の丈近い大弓を表情一つ変えずに扱えるのはやはり艦娘故なのだろうか。
 やがて弓が限界まで引き絞られる。凛と張り詰めた空気をまとった彼女に、提督も自然と背筋が伸びた。

祥鳳「……フッ!」

 一拍を置いて、矢が放たれた。静寂な空気を切り裂くような風を切る高い音、そして緊張をたたき切る的に命中した乾いた音。
 矢は、ちょうど中心を射抜いていた。

提督「……」

祥鳳「……提督、ようこそ弓道場へ」

 どう声をかけようか考えていた提督の先手を打つように祥鳳が提督の方を向く。

提督「上手いもんだな。ここの鎮守府の艦娘は皆、熱心な連中が揃っているようだ」

祥鳳「……提督は、一日みなさんと接してみて、どうでしたか?」

 答えない祥鳳に、提督は肩をすくめて見せた。

提督「それは、祥鳳にも分かっているんじゃないか?」

祥鳳「……気付いてらしたんですね」

 そういう彼女の背後から、小さな影が近付いてくる。エンジン音を立てるそれは小型のレシブロ機だった。それは祥鳳の周りを軽く旋回したのち、光と共に矢に変化して彼女の手にぽとりとおちた。
 空母艦娘が扱う艦載機だ。おそらく今のは零式艦戦21型だろう。

提督「気付いたのはさっき加古と昼寝した時だがな」

提督「現状、彼女らの人間性に問題はないように見える」

提督「……ただ、私の、というより提督への心象はかなりよろしくない。前任はよほどのクズだったのかと、もはや想像もつかん」

祥鳳「基本的に敵意むき出しの方でしたよ……自分が左遷されたのはお前たちの所為だ、と」

提督「やはりクズか……」

提督「分からないのは、何故君らがここへ配属されているのか、だ」

提督「各々の能力は別段低くないように見える。それがなぜこんな場所にいるのか」

 確かに初春型たちの練度は低かったが、皆熱心でそれぞれに出来ることをやっていた……一部は除くが。
 それがなぜ、こんな落ちこぼれだけど捨てるのはもったいないからおいておこうとでもいうような場所に押し込められているのか、提督にはそこが分からなかった。

祥鳳「みなさん、自分ができることしか知らないからですよ」

祥鳳「私も、彼女たちも……艦娘ですから……」

提督「……どういうことだ?」

祥鳳「……私の口からは、ここまでしか言えません」

祥鳳「きっと、提督は理解した時、彼と同じようになるでしょうから……」

 そう告げる祥鳳はどこか淡々として、しかし隠しきれない寂しさをにじませていて、

提督「………」

 提督には、それ以上何も言えなかった。

―――――
―――

提督「一日空気を入れ替えるとずいぶんましになったな」

 夜。名取たちのご飯をまだまだ居心地の悪い食堂で堪能し、そしてまだどこかカビ臭さの残る宿直室で一人胡坐をかいていた。

祥鳳『きっと、提督は理解した時、彼と同じようになるでしょうから……』

 夕暮れの空間と相まって、彼女の言葉は妙に残っていた。

提督「一体どういうことなんだろうか……」

 出来る事しか知らない、艦娘だから…?
 いまいちピンとはこない、しかし何かが引っかかる。曖昧で漠然とした予感が違和感として頭の中にまとわりついていた。

提督「しかし、これを理解したら、前任の提督と同じになる、か」

提督「うーん、わからん。分からんけど分かるような……」

提督「だーっ! 気持ち悪いなぁおい!」

 首を振って無理やり思考を振り払う。分からない以上考えてもしようがないと判断した。それに、

提督「変に意識して距離の取り方とか見失いたくないもんな」

 今はそう納得させることにして、その日は眠りに就いた。

提督「……明日は布団を干そう……」

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。

 皆様のイベント進捗状況はいかがでしょうか? >>1は祥鳳87を旗艦に千歳52、扶桑53、足柄43、古鷹40、神通58にて攻略いたしました。司令部レベルは75です。皆様の攻略の助けになれば幸いです。

 明日も夜に投下しにまいります。今日も攻略の合間に結構書き溜めが出来ました。しばらくエタりの心配はないかと思います。

 では、おやすみなさい。よいイベント期間を過ごしましょう……

 どうも、E-2はボスに一回だけ到達するも残りHP26で落としきれずに頭を抱えた、>>1です。

 下ルートに行くには駆逐艦が二隻いればよいそうですが、そこまで練度の高い駆逐艦がいない当鎮守府なのでした。

 では、今夜も少し投下していきますね。
 

 ~次の日~

 カビ臭い布団の臭いを一杯に嗅ぐというさわやかさあふれる朝を迎えた提督は、布団を干そうにも竿やらなんやらがないことにげんなりしつつも、体操着に着替えて玄関へと向かった。

提督「やぁ、おはよう長良」

長良「は、はい! おはようございます司令官!」

提督(まだ固いな……当然か)

長良「って、司令官、何か顔青いですよ? 大丈夫ですか?」

提督「なに、少々寝起きが清々し過ぎただけだ……むしろ走って風に当たりたい」

長良「は、はぁ……」(やっぱり変な人だ……)

提督「そう言うわけだ、走ろう」タッタッタッ

長良「ちょ、ちょっとまたフライングですか!?」

 無論、この後無茶苦茶周回遅れした。

提督「なぁ、長良よ」

長良「何ですか提督?」

 その後、クールダウンのストレッチをしているときだった。

提督「長良は走るのが好きなんだな」

長良「えと、まぁ、好きですけど」

長良「いきなりどうしたんですか?」

提督「いや、なんだか走っている時の長良は、良い顔をしているな、と」

長良「そ、そうですか? ……なんか恥ずかしいな」

提督「済まないな、私が遅いばかりに長良の時間を削っている」

長良「い、いえ! そんなことありません! 一緒に走る人がいるのは、それはそれで新鮮ですし!」

提督「そうか? こちらとしても鈍足はどうにかしたいんだ、そう言ってもらえると助かる」

長良「えと、ありがとうございます?」

提督「おいおい、それはこちらのセリフだぞ?」

長良「…ふふっ、そうですね」

長良(謝ったりお礼を言ったり……こういう提督もいるんだ……)

―――――
―――

 そして朝食後、桟橋付近では駆逐艦たちが元気に訓練にいそしんでいた。

子日「あ~た~ら~な~い~!」ネッノヒー!!

提督「慣れないうちはもう少し砲撃間隔を広くとるんだ」

提督「ああ、初霜ちょっと来い」

初霜「え? な、何ですか?」

提督「いいから…ああ動くなよ? ……よし、直ったぞ」

初霜「あ……すみません、また魚雷発射管がずれてましたか?」

提督「いくら訓練用の魚雷がないからって飾りじゃないんだから、手を抜いちゃいかんぞ」

若葉「初霜はいつもどこか抜けているからな」

初春「おぬしも人のことは言えんと思うがのう」

子日「寝起きはぽやぽやしててかわいいんだよーぅ!」

若葉「なっ! それは今関係ないだろう!?」/////

初春「顔が赤いのう、愛い奴め」

提督「ほら、騒いでないで訓練に集中したらどうだ?」

初春型「「「「ご、ごめんなさい!!」」」」ビクッ!!

提督「……怒ってないぞ? だが、叱ってはいる」

初霜(どう違うんでしょうか?)

提督「実戦なら怒るが、今は訓練中だ、多少の私語くらいは目をつぶるさ」

提督「ただ……」

提督「それが原因で沈んだとき、悔やんでも悔やみきれん」

初春型「「…………」」

初春「……すまなかったのじゃ」

子日「子日、反省の日……」

提督「分かってもらえたらいい。さぁ、訓練を続けよう」

初霜「はいっ! 全力で取り組みます!!」

若葉「精進する!」

提督「よし、それじゃあ今日は――」

初春(妾達の心配をするような提督が存在するのじゃな……)

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。

 何やら憶測を呼んでおりますな……ここまで考えていただくと設定を見なおしてみたくなるものです。ちょっと不安になってくる>>1でございます。

 のちの展開が、ここまでの投下内容と若干の矛盾を生じるような事態になるやもしれません。最悪、一度設定を練り直して立て直すなんてこともありあえるかもしれません……

 まぁ、最悪の場合ですがね。エタりません、終わるまでは……!

 次回も夜に投下しにまいります。では皆様、よきイベント期間を……

 すっかり忘れてました……明日は予定があるので夜の投下は難しそうです。最悪明日は投下なしということもあります。明後日には投下いたしますのでご容赦いただきたく……

 どうも、袈裟一番の出撃で、キラ付きの扶桑姉さまをル級flagshipの砲撃でワンパン大破、撤退させられて意気消沈の>>1です。まぁ、同伴していた神通がやっと改二可能レベルになったので若干持ち直しましたが。

 昨晩の予告通り、今晩は更新できなさそうなので今のうちに普段よりも少なくはありますが、投下しておこうと思います。

名取「ま、待ってくださあい!」

鬼怒「ギンバイは許さないよッ!?」

加古「うへぇ、そんなに怒んなくても!」

 昼前、中庭を走り回る巡洋艦娘たちである。どうも、昼食を加古がつまみ食いしたらしい。

加古「やべっ、追い込まれた」

名取「はぁ、はぁ……も、もう逃げられませんよ」

鬼怒「まったく……今日という今日は許さないよ?」

 しかも常習犯らしい。

加古「か、勘弁してくれよぉ」

提督「そうだな、その辺で許してやると良い」

一同「うわぁっ!?」

名取「て、てて提督!? いいいいいつからそこにっ!?」

提督「見てたのは追いかけっこを始めたところだが、ここに来たのは追い詰めたあたりだな」

鬼怒「え、ええっと、許せ、というのは?」

提督「つまんだ食料は戻って来はせん。返せというのは無理だ」

名取「で、でも見逃すとまたギンバイしますよ?」

提督「そうだな、そうなったら困るから、次からは…そうだな、古鷹と資料室の整理をしてもらおうか……居眠りしたら…どうなるだろうな?」

加古「ゲッ! よりによって古鷹と、って!」

提督「姉妹ならきっと、容赦はしないだろうと思うが、そのあたりはどうなんだ、鬼怒?」

鬼怒「あー、甘いとこは甘いですけど、基本鬼ですね」

提督「ちょうどいいな……加古、分かったか?」

加古「ハイ、イゴキヲツケマス……」コクコクコクッ!

提督「よし。ところで二人とも、昼食の用意は大丈夫なのか?」

名取「え?」

二人「「……ああああああああッ!?」」

鬼怒「やばいよやばいよ! 時間ないよどうしよう!?」

名取「ええっと、ちゃんと火止めてたっけ!?」

鬼怒「と、とにかく急ごう!」ダッシュ!!

名取「あ、ま、待ってよ鬼怒ちゃぁん!?」ダッシュ!?

加古「……えーっと、」

提督「まぁ、もうするなということだ」

加古「は、はぁ……」

提督「それにほら、せっかくの美味い飯だ、こんな追いかけっこで遅れたり失敗したら私も嫌だからな」

加古「……ごめんなさい」

提督「そう言うことだ、それじゃ」

 提督はそれだけ言い置くとそのまま去っていった。一体何をしていたのか、そしてどこへ行くのかは全く分からない、が。

加古「わざわざやってきて仲裁するなんて……そんな上官もいるんだなぁ」

―――――
―――

 うーん、少ないなぁ……ですが、ここから長いので切りの問題でここまでとさせていただきたく。
 
 色々な憶測をしてらっしゃる方には少々申し訳ない薄い設定になっておりますゆえ、ご容赦いただきたく……というか、祥鳳さんが意味深過ぎましたね。このセリフに見合った設定じゃないと見直しつつ後悔しております……orz

 イベント期間ということもあって書き溜めが不足気味の今日この頃でございます。やっぱりやり直した方が……少なくとも祥鳳さんのセリフを一部変えた方がいい気がしてきました。ひょっとしたら訂正版を投下し直すかもしれません、技量不足が恥ずかしいところです。

 長文失礼いたしました。明日こそは夜にちゃんと投下いたします。ではまた……

はずれの鎮守腐ってさ
街のはずれの方にあるのはずれと当たり外れのはずれを掛けてるのかね

街のハズレって言うより鎮守府の名前の端野とハズレを掛けてるんじゃないか

 どうも、艦これ一番くじを買ってまいりました。10口一気買いいたしまして、見事祥鳳のロックグラスをゲットしました……ここまでは良かったのですが、残りの9口が、E、G、H3つ、I2つ、そしてAとC! ダブル翔鶴をゲットしてしまいました……どうしましょう、これ……
 というか基本的にくじを引けばハズレか一番低いあたりしか引かないことに定評のある>>1です、これは明日死んでしまうのではないかと戦々恐々でございます
 
 以上、報告でした。投下はまた後ほど……

 どうも、何かわりと早めに戻ってまいりました……と行っても夕飯を食べてきただけなんですけどね……>>1です。

 E-2の攻略に結構希望を見出してきました。古鷹さんが夜戦で一撃200以上軽くもっていってくれちゃうんで……古鷹さんマジ重巡! 後は道中を全力で祈るだけです。

 では、今夜も少し投下して行きましょう。

古鷹「提督ならそのあと、わざわざ資料室まで私に話しを通しに来たよ」

由良「ええ、そうね。ちなみに快諾してたよ」

加古「うぇえええ……」

祥鳳「ええと、なんで私の部屋に?」

 昼過ぎ、昼食を食べ終えた艦娘達は祥鳳の部屋に集まっていた。

子日「子日、祥鳳さんのお茶大好きだよーぅ?」

初春「料理は鬼怒殿の右に出るものはないが、お茶に関しては祥鳳殿以上はおらんからの」

祥鳳「うぅん、それで私の部屋って……」

 いまいち納得していない風の祥鳳だが、律儀に人数分のお茶を煎れるあたりに彼女の性格が出ていると感じる他の艦娘達である。
 ちなみにこの部屋には艦娘が全員集まっている。とはいえ、祥鳳の部屋も教室の一つなのでスペースにはかなり余裕があった。祥鳳の趣味なのか机を端にのけて畳を敷いていたので、みな座布団を置いて車座になっている。

祥鳳「はい、お茶が入りましたよ……それで、一体なぜ集まってきたんですか?」

名取「えっと、簡単に言うと提督の事なんですけど……」

鬼怒「そうそう、みんなはどう思うのかなって」

子日「はいはーい! すっごく優しいよーぅ!」ネノヒー!

初霜「はい、指導も分かりやすく丁寧でしたし」

初春「うむ、妾達の身の心配もしておるようじゃったの」

若葉「しかも腕もいい……ん? これは提督の資質に必要なんだろうか?」

 鬼怒の問いかけに最初に答えたのは子日だった。続いて駆逐艦たちも順々に答える。概ね好評価のようだ。

長良「うーん、まだ判断するには早いと思うけど、でも、少なくとも悪い人じゃないと思います」

由良「うん、少なくとも、前任みたいな暴力に任せた一方的な命令、高圧的な態度はとらないんじゃないかな?」

鬼怒「加古のことも怒らずに穏便に済ませたもんね」

名取「お、お料理も、ちゃんとほめてくれました」

 長良型軽巡組も、やはり悪くない評判だ。

古鷹「やってきてすぐなのに加古の扱いが上手いです」

加古「評価するのそこの!?」

祥鳳「あはは……」

 冗談が出てきたということは、評価としては悪くないと見て良いだろう。祥鳳にしてみれば後輩のような存在だ、彼女らが楽しそうなのは祥鳳としては嬉しいことだった。

由良「祥鳳さんは、どう思います? 新しい提督さん」

祥鳳「え、ええと、そうですね……」

 きっと良い人なんだろう。前任に比べたら、という比較対象があるせいか余計にそう見えるんだろう。
 人の良いところを見て評価できる、そんな、ありがたい人なんだろうと思う。でも、

祥鳳「きっと、良い人ですよ」

 祥鳳には、それ以上言うことはできなかった。

初霜「そうですよね! きっと良い人ですよね!」

初春「うむ、祥鳳殿がそう言うのならそうなのじゃろうな」

 その後はとりとめもない話に話題がシフトして行き、提督の話題はどこかへ流れて行った。そのままただのお茶会と化す。
 こういう風な集まりは今までなくはなかったが、このような笑顔の溢れる集まりは久しくなかった。これもあの提督のおかげなのだろうか。
 ……ありがたい人、なんですね。
 しかし、きっと彼は落胆するだろう……その時、彼は、彼女たちはどうなるだろうか……

若葉「……祥鳳さん」

祥鳳「どうかしました? 若葉さん」

若葉「……いや、何でもない。お茶のお代わりを煎れてもらってもいいだろうか」

祥鳳「ああ、はい、少し待ってて下さいね」

 席を立つ
 ……たとえ、どのような結果が待っていようと、

若葉「…………」

 私たちに、出来ることも行く場所も無いのだから、

祥鳳「……はい、どうぞ、若葉さん」

若葉「ああ、感謝する……」 

 ならせめて今この時の笑顔を大切にしよう。
 なぜなら私たちは……

祥鳳「若葉さん」

若葉「なんだ?」

祥鳳「ありがとうございますね」ニコ

若葉「……ああ」

 艦娘でしかないのだから。

若葉「…………」

―――――
―――


 本日は以上とさせていただきたく。

 さて、自分で自分の首を絞める表現をしておりますな……おいおい、大丈夫か? 風呂敷広げ過ぎてないか? 若干心配な>>1であります。

 皆様のレスに励まされて日々書き溜めを続けております。このような駄文を褒めていただけるなんて感激の至りでございます、これからも皆様に満足いただけるよう精進いたします!

 ちなみに、>>158 >>189
 アタリハズレの「ハズレ」と、地理的に辺鄙な「外れ」と、地名としての「端野(はずれの、と読む)」を掛けておりますのでお二方とも正解です。

 次回も明日の夜に投下していくつもりです。次回は私の痛々しい独自設定が顔を出します。読む時はお気を付け下さい。

 ではまた……

189ってだれですかねぇ? >>159の間違いですね、訂正します……ああ、>>1自ら無駄にレスを消費する……

 速報:祝 E-2突破

 やりました、ええ、やはり重要なのはキラ付と前衛支援、お祈り、お祈り&お祈りでした……明日からはMIです。嫁艦はALでがんばってもらいましたのでお留守番、正規空母達にがんばってもらいましょう。

 では、今夜も少し投下して行きましょう……

 夜。提督は一人で工廠に来ていた。鍵は開いている。閉めれば良い物をと

思わなくもないが、鍵を持っているのは提督なのだからと諦めているのか、

もしくは、

提督「彼女の想い故、か……」

 重い音を立てて扉が開く。中は暗く、特に音もしない。そう言えば主任妖

精はどこで寝泊まりしてるのだろうか。

提督「まぁ、仮に起こすことになっても、その時はその時か」

 提督は照明をつけてから足を踏み入れた。相変わらず乱雑に艤装や装備が

とっちらかっている。げんなりするがやるしかない。

提督「……よし」

 まずは艤装と装備を分けることにした。艤装は重いので台車に力づくで載

せて運ぶ。ガラガラと派手な音が静まり返った元体育館内に響き渡る。
 そうして小一時間ほど経てば鋼の大平原は、艤装の小山と装備の丘へと姿

を変えた。そして大変なのはここからである。

提督「工作艦の艤装でもあれば楽なんだがな……」

 型や種類ごとに艤装や装備を分けていく。ひとまずは装備からだ。砲、魚

雷、対空砲など、装備の分類ごとに山を分けていく。

提督「12cm単装砲と、21号対空電探、これは……烈風じゃないか、4機目だ

ぞ……」

 ごく一般的な装備も多いが、ところどころに強力な装備が転がっている。

先ほども開発は基本的に出来ないと言われている甲標的まであった。どうい

う腕をしているというのか……
 驚嘆しつつ、先ほどよりは比較的早く作業が終了。丘は並んだ地蔵程度に

なった。

提督「ふぅ、装備の仕分けはこれで良いか。次は艤装だが……」

 言いつつ、先ほど出来た艤装の小山を見る。

提督「……えっと」

 小山とはいえ、山である。

提督「……先に装備の選別しようそうしよう」

 目を逸らした。

提督「工作艦の艤装もないしな、うん。仕方ない、仕方ない」

 誰にするでもない言い訳がましいつぶやきを吐きつつ、地蔵を一つずつわ

け始めた。
 よくある装備やあまり使いそうにない装備はまとめて破棄することにした

のだ。

提督「12cm単装砲、7.7mm機銃、61cm三連装魚雷……うーん、46cm三連装砲は

……………もったいないな、さすがに」

 多少の欲は見せつつ少しずつそれぞれ地蔵が小さくなっていく。しばらく

すれば、必要な物だけ並んだすっきりとした光景に生まれ変わった。除外し

た装備は解体装置に掛けて資源に戻す。それぞれは微々たる量だが、数が数

だ、駆逐艦の一隻二隻建造できるくらいの資源にはなる。

主任妖精「んあー……うるせぇっつの……」

 そうこうしていると、体育館のステージ裏からよたよたと現れたのは主任妖精だ。どうやら彼女はここに住み込んでいるらしい。顔は赤くないが少々気分が悪そうだ、寝る前まで呑んでいたのだろう。

主任妖精「あ? おめぇ……勝手に何してやがんだ、ああ?」

提督「好きに持って行けと言ったから従ったまでだ」

主任妖精「あ"あ"!? いつ誰がそんなこと! ……あー、待て、言った気がする」

主任妖精「まぁ、どうでもいいさね、んなこたぁ。それより、さっきからうっせぇんだよガタガタかんからかんから」

提督「それは謝る。済まない」

 軽く頭を下げる提督に、主任妖精はおもわず戸惑った。

主任妖精「お、おおう、わかりゃいいんだ? おお?」

提督「すぐ終わるから、もう少し我慢してほしい」

 言うと、今度は開発用デスクへと向かう。少々多めの鋼材を持ってデスクの上に置くと、妖精用の工具を手に取り作業を始めた。

主任妖精「お、おいおい! 何やってんだおまえ……人間に装備を作れるわきゃねーだとっつーか勝手にさわ、ん…な……」

 妖精の声がしりすぼみに消える。見る間に提督は装備を一つ作り上げてしまっていた。
 通常、装備の開発は妖精の協力の下で艦娘が行う物だが、妖精一人で作ることも、艦娘一人で作ることも可能だ。だが、どう頑張っても人間が作れるものではない。

提督「ふぅ、こんなものか……実際に使ってもらわなければわからんが」

主任妖精「お、お前……何者なんだ?」

提督「何者、か……多分、妖精であるあなたには目を凝らせばわかるのではないかな」

 言いながら主任妖精を見る提督は、どこか困ったような目をしていた。怪訝に思いながらも好奇心には勝てなかったか、妖精はじっと目を細めて提督の体を見まわす。

主任妖精「別に変ったところなんざ……お、おぉ、おおぉお?」

主任妖精「な、お前っ、どういう……!」

提督「どうもこうもない、見たままだ」

 ごく当たり前のように言う提督に対して、妖精は激しく首を振った。

主任妖精「いや、だって、あり得ないさねそんなこと、それじゃあお前は!」

提督「まぁ、そういうことだ」

主任妖精「そう言うことだって、お前、そんな体じゃ怪我したときとかどうすんだい?」

提督「今のところ大きなけがはしてないから安心していい。だが、これからどうなるかわからん」

 ここで妖精は眉をひそめた。

主任妖精「……だから、協力しろ、と?」

提督「俺に何かあってもどうせその内後任が来るだろうが、艦娘達が困るだろ」

主任妖精「ふんっ、自分は艦娘の子とよくわかってますー、って面かよ?」

 提督の言葉に、主任妖精は憎々しげに吐き捨てるように言う。

主任妖精「ただでさえ艦娘は人間と違うんだ、あの子らがここにいるという意味をちゃんと考えてんのか?」

提督「……まだそこが分かってない。何故なんだ?」

主任妖精「……じゃあ、演習でもやらせてみることさね、すぐに理解できるだろうさ」

 渋い顔で首を振る提督に、主任妖精は静かに言い放った。
 演習? どういうことだ?

提督「なぜ、演習なんだ」

主任妖精「すぐ理解するって言っただろうさ、それとあんた」

主任妖精「本当に、あの子らを見捨てたり嫌ったりしないんだな?」

提督「ああ、彼女らがどんな艦娘であれ嫌ったり見捨てるような理由は、どこにもない」

主任妖精「……ふーん」

 妖精の問いに躊躇なく答える提督に、彼女はやはり胡散臭そうに目を細めるだけだった。

主任妖精「その言葉、忘れんじゃないよ」

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。

 三回に一回逸れ、五回に一回大破撤退という実際やると辛い戦いでした、もう行きたくないです(苦笑)
 最終編成は祥鳳89、千歳56、不知火40、吹雪34、古鷹44、足柄47でした。空母ズは彩雲を一つずつ一番下のスロットに、駆逐ズに13号対空電探と改良型艦本式タービンを、重巡ズに水上偵察機と三式弾をそれぞれ装備させています。参考までにどうぞ。
 前衛支援と合わせれば事故率はかなり下がります。MIまで攻略をお考えの皆様は、是非使ってみるべきかと。

 さて、次回ですが、なんと書き溜めがほぼ追い付いてしまいました。イベントに少し力入れ過ぎましたね……反省です。

 明日の投下はどうにかなりそうですが、明後日は厳しいやもしれません、書き溜めのために一日二日お休みするかもしれません。エタりはないんで安心してください、妙に筆が乗っているので。

 設定が出ると言いながらずいぶんとボケた文章を書きました……反省です。提督は本当に何者なんでしょうね?

 では皆様、おやすみなさい・・・

続きが気になる。明日も楽しみにしてます^^

 どうも、E-3まででドロップが鈴谷、浦風、谷風、浜風、長波、陸奥、赤城などなどと一生の運をゴリゴリ削る陣容となっております、>>1です。赤城さんは良いから瑞鶴ください(←欲張り)

 E-3はバケツの消費が半端ないです、いやホント、鬼のように減って行きます。お気を付け下さい。あと、そろそろ母港が苦しいので、魔法のカードで少し母港を拡張しようかいやしかし……と葛藤の毎日であります。うごご。

 では今夜も少し投下して行きましょう……

~次の日~

 提督執務室に集まった艦娘達の間に、その一言で一瞬戦慄が走ったのを提督は感じた。

古鷹「演習、ですか?」

提督「ああ、ヒトマルサンマル演習場に集合だ」

名取「えと、理由を聞いても、いいですか?」

提督(ふむ?)「敵が来ないうえに遠征任務もろくに無い鎮守府とはいえ鎮守府は鎮守府、戦いに備えて君らがどれくらいの練度で、何ができて何ができんのかを把握するのは提督の務めだからな」

提督「それに、知っておかねば、君らを沈めてしまうことになる……それは、何よりも避けねばならん」

若葉「そう、そうか……」

長良「長良たちを、沈めない……」

 答える提督に、しかし艦娘達の反応はいまいちよくない。戸惑うような、というよりは、

提督(これは……何を嫌がっているのだろうか)

 だが、その理由を確認するには考えるより実行してもらうほかない。

提督「演習相手の艦隊がいない以上、当演習はここにいる君らを二つの艦隊に分けての砲雷撃戦を行ってもらう。では、指定時刻まで解散、祥鳳には艤装倉庫の鍵を預ける」

祥鳳「……ぁ、あ! はい!」

 一方的に言い渡された艦娘達はそのままの流れで執務室を後にする。

祥鳳「…………」

 祥鳳だけが、ただ提督を見つめて出て行った。

―――――
―――

提督「さて、これが吉と出るかあるいは……」

 艦娘達のいなくなった執務室でひとり、提督は考える。
 考えても仕方のないことだというのは分かっていても、思考は勝手に回ってしまう物だ。自分で止めようがない。

祥鳳『出来ることしか知らないからですよ』

主任妖精『その言葉、忘れんじゃないよ』

 二人の言葉はただひたすらに不穏だ。事情のわからぬこちらにとって、それは立ちはだかる大きな壁にすら思える。
 しかし、

提督「それでも、知らなくちゃいけないんだ」

 なぜなら、

提督「俺は、提督だから」

 そうだろう?

提督「……姉さん」

―――――
―――

~演習場~

提督「では、編成を発表する」

 指定時刻、艦娘達は桟橋前にちゃんと集合していた。艤装もきちんとつけてはいるが、表情はどうにも浮かない雰囲気だ。

提督「赤艦隊、旗艦古鷹、以下由良、鬼怒、初春、子日」

古由鬼初子「はい!」

提督「続いて青艦隊、旗艦長良、以下加古、名取、初霜、若葉」

長加名初若「はい!」

提督「通常なら遭遇戦や攻防戦などの状況を再現した演習を行うのだが、設備も何も足らないうえに、これは私が君らの能力を知るための演習でもある」

提督「よって、今回は指定位置についてからの砲雷撃戦とする。各艦隊は旗艦に従い指定位置まで移動、演習開始の合図を待て」

提督「なお、この演習では各艦隊の戦力の均衡を保つべく、祥鳳には審判として艦載機からの監視を行ってもらう」

提督「通達は以上、艦隊出撃せよ」

艦娘達「了解!」

 きちんと整列した艦娘達が次々に桟橋から海へと降りていく……が、

名取「ふわわわわっ!?」

長良「名取!? しっかり!」

古鷹「加古、大丈夫?」

加古「お、おお、だ、だいじょぶだいじょぶ……」

 言いつつ、加古は機関を始動させずに海面を足を上げて地面のように踏んで歩いていた。

提督「……いや、今は言うまい」

 彼女らの言う言葉の片鱗を、提督は感じ始めた。頭の片すみに燻っていた予感がひょっとしなくても、くらいの大きさに変わっていく。
 だが止めてはいけない。予感が正しいとすれば、それらすべてを見届けねばなるまい。
 考えている間にも状況は進んでいく。紆余曲折を経つつもどうにか艦隊は指定位置に着いたようだ。加古はそのまま歩くように移動している。

長良「青艦隊、配置につきました!」

古鷹「あ、赤艦隊、配置につきましたっ!」

提督「よし、それでは、演習開始!」

 提督の号令で一斉に動き始めた両艦隊だが、まずは陣形構築からして滅茶苦茶だった。

古鷹「えっと、各艦単縦陣にて航行します! 並び順は、えっとえっと!」

由良「古鷹、おちついて!」

長良「複縦陣で敵艦隊の攻撃に備えます!」

加古「ふくじゅう……?」

若葉「しっかりしてくれ加古さん!」

 陣形を構築するのにかなりの時間を要した。移動がなってない加古は言うまでもなく、巡洋艦娘達は体がなまってでもいたのかふらついてばかりいる。何度も駆逐艦娘に支えてもらいながらの陣形構築になった。

 そしてそこから先は、目も当てられない状況になった。

長良「砲雷撃戦、始めっ!」

 長良の号令で一斉射を行う中、

名取「ひあああああ!?」

 名取が砲音におびえ、一射も撃つことなくその場にうずくまり、

加古「お、おおおおわああああ!?」

由良「きゃっ!」

古鷹「きゃあ!?」

 砲撃の反動を制御できずに後ろにすっ転ぶ。

子日「うりゃあ~!」

初春「止まって撃つなら、妾にだって!」

初霜「撃ちます!」

若葉「バカっ、射程距離くらい考えろ!」

 訓練をしていた駆逐艦たちはかろうじて砲雷撃戦をこなしていたが、距離や照準の取り方はさっぱりだ。
 そうして各艦隊が動くこともできずにじたばたとして、お互いの弾が尽きたころ。

提督「そこまで。全員帰ってこい」

 呼ばれて帰ってきた艦娘達は海水で頭からつま先までぬれ鼠だった。そして皆、一様にばつの悪そうな顔をしている。

提督「全員、体を拭いてきなさい」

長良「あ、あの、司令官……」

提督「風邪をひく、早くしろ。終わったら各自休憩を取って、ヒトフタマルマル全員執務室に来るように」

提督「鬼怒と名取は食事に関しては気にするな、何とかする。以上、解散」

 提督は静かに告げるとその場を足早に去って行った。後に残されたのは、落胆した表情の艦娘達と、

祥鳳「………」

 飛ばしていた艦載機を回収した、ただただ淋しげな表情を浮かべて提督を見送る祥鳳だった。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。難しいですね、ダメダメっぷりを書くのは……もう少し分かりやすく書ければいいのですが……ともかく、戦闘が全くできない艦娘たちなのでした。誰がどうできないかはまた追々……

 さて、書き溜めが9割方尽きましたので、明日はお休みになるかと思われ。艦これの方も、明日は終戦記念日ということで、遠征のお出迎え以外は基本的にプレイしない方向で行こうと思います……終戦の日くらい、鎮守府でゆっくりしてもらいたいですので。
 その間に、私は書き溜めを進めていこうと思っております。がんばって面白い物書くから、見捨てないでぇえええ!(比叡並感)

 失礼、では今夜はこの辺で……

どうでもいい追記:せっかくリプレイも発売されたので、TRPGやりたいです……(>>1はTRPG好き)

 どうも、なんとなくあきつを秘書艦にしてつつきながら書き溜めを作っておりました、>>1です。2日分は書けたかと思います。
 今日は終戦記念日、隼鷹さんの命日も近かったはずなので、このあと隼鷹さんのおつまみをいただきながら一杯やる所存です。ゲームの方も宣言通り、デイリー建造等以外は演習も遠征もしていません。あんな時代が来ないことを切に願います。

 さて、今夜も少し投下して行きましょう。

~工廠~

 当の提督は、半ば駆け足で旧体育館へやってきていた。扉を開けると、すぐ目の前に立っている一人の妖精。

主任妖精「よう、来ると思っていたさね」

提督「……昨日行ってたのは、そう言うことなのか?」

主任妖精「さぁ、よくわからんね?」

 とぼける妖精に、提督は静かに話を続ける。

提督「彼女らは普通の艦娘じゃない、そうだろ?」

主任妖精「……あんたは艦娘がどうやって作られているか、知っているかい?」

提督「……いや、詳しいことは、何も」

主任妖精「ふん、だろうね、提督連中には何にも知らされちゃいないから」

主任妖精「ま、あんたに教える義理なんか無いんだけどな……資料室にはたぶんあるんじゃないかね、その秘密を解くカギが、さ」

 挑発的な笑みを浮かべているのは、彼を試しているからであろうか。静かに見返す提督との、暫し無言の応酬が続いた。
 が、やがて提督は踵を返して工廠を後にしようとする。

主任妖精「おい」

提督「……なんだ」

主任妖精「あんたの言葉、忘れちゃいねーよな?」

提督「無論だ。だからこそ、調べに行くんだ」

 言うと、彼は妖精の返答を聞く前に去っていった。

主任妖精「……そうかい」

―――――
―――

 提督は執務室に集まった艦娘たちに、やはり待機を命じた。

提督「今回の結果で、色々と考えねばならんことができた。私はしばらく資料室にこもるつもりだ。その間私に用がある場合は祥鳳に伝えてくれ」

鬼怒「あ、あの……質問、良いですか?」

提督「何かな」

鬼怒「考えることって、たとえばどういう……?」

 恐る恐る聞いてくる鬼怒。皆同じような顔をしている。ここで発言した鬼怒を褒めてやりたいところではあるが、今はそういう場合ではない。

提督「君たちの実力は分かった。ならそれをどうするかとか、それに伴う資材のやりくりなど……主なところはそんな感じだ」

 ここの艦娘達は、自分たちが普通と違うということを何処まで理解しているか分からないうえ、どう普通じゃないのかこちらが把握していない以上下手な事は言えない。

若葉「どう、とは?」

提督「それをこれから考えるんだ……」

 と、ふと気付くと、皆不安そうな顔をしている……無理もない。前任がどれほど彼女らと接していたかはわからないが、少なくとも恐怖を抱いているのは確かだ。提督は「恐怖」の対象である以上、あんな醜態をさらせばどんな罵倒が飛んで来るかもと不安になるのも当然か
 ……少し、言葉が足らなかったか。

提督「大丈夫だ」

 少しあわててしまっていたらしい。

提督「安心していい、悪いようにはしないから」

子日「ほわわわ!?」

初霜「ふわっ!?」

 ちょうど正面に立っていた初霜と子日の頭をなでてやる。出来る限り声音は柔らかくしたつもりだ……あまり得意ではないので自信はないが。

提督「まぁ、そう言うことだ、解散」

提督「ああ、由良、古鷹、すまないが資料室はしばらく借りさせてもらうぞ」

古鷹「は、はい!!」

提督「おっと、昼食だが……」

鬼怒「やっぱり私たちが作ります!」

名取「か、簡単なものしかできませんけど!」

提督「そうか? では頼む」

 そのまま艦娘たちは執務室を後にした。一人になった提督は、しばらくしてから応接ソファに座りこみ、深く息をついた。
 うまく恐怖を与えないようにできただろうか。そうでなくても彼女らは提督を恐れているのだ、どうにか怖がらせないように信頼を得なくてはいけない。

提督「……厳しいなぁ」

 そういうのはあまり得意ではなかった。と言うより、経験がなかった。士官学校で習ってきたことは戦術と鎮守府運営の基礎、艦娘の運用方法くらいだ。育て導くともなるとそれは個人の資質になってくる。
 しかし、士官学校の卒業生全員が提督になれるわけではない。成績上位をキープできる実力と、そう言った諸々の資質を兼ね備えていると判断された生徒のみが卒業後すぐに提督に着任できるのだ。

 ちなみに他の卒業生は提督就任可能な予備要員として記録され、鎮守府運営の補佐を行う職員になるのが普通だ。中には技官として妖精の補佐をするような生徒もいる。あくまで噂だが、そんな生徒がそのうち妖精になってしまうなどと言う話もまことしやかに語られているが、事実かどうかは定かではない。
 しかし、

提督「そんな資質があるとも思えないんだがな……いや、だからこの鎮守府に配属になったのか……?」
 
 座学の成績なら上位をキープしていた。そういう意味では提督になる資格はあるのだが、そういった資質は無い。しかし提督にしないのは惜しいから適当に飛ばされたのだろうか。

提督「なんて、考えたも仕方ないな……今は艦娘の事だ」

 提督は学生時代の座学演習の記憶をひも解く。
 艦娘と言うのは艦の魂を宿した人間の娘で、資質があれば艤装と呼ばれる兵装を装備して海面を滑るように移動しながら戦闘を行うことができる、現状、深海棲艦に対抗できる唯一の手段となっている。
 しかし思い返してみれば、その開発ルーツや艦娘になる方法、着任した艦娘がすぐに戦闘を行える理由などはきちんと習った覚えがない。

提督「つまり、ここを知る必要があるわけだな……」

 そうと決まれば、

提督「資料室に籠ってみるか」

 果たして士官学校で習うことのない――提督に知らされないようなことが鎮守府の資料室にあるかは分からない。分からないが、主任妖精はあるといったのだ、今はそれを信じるしかない。

提督「さしあたっては、腹ごしらえだな……」

 すぐに動きたいところではあるが、ここは大人しく名取達お手製の昼食を待つことにした。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。最近文章が荒れてますね、集中力欠如中ですかなorz もっと読みやすく書ければよいのですが……皆様にはご苦労をおかけします、申し訳ない。

 イベントですが、明日はE-3をさくっと終わらせてE-4に挑みたいと思います。E-6に行けるほどの戦力は無いので、E-5まで行って雲龍さんをお迎えしたいと思います。空母好きとして、逃すわけにはいきませんから。

 明日の更新は……がんばってみます。が、書き溜め的にお休みしたいところではあります。来なかったら、「ああ、書き溜め書いてるな」と思って明後日までお待ちください、申し訳ない。

 ではまた……

 どうも、E-3のバケツ消費に恐怖しております、>>1です。

 結構まとまった量の書き溜めが出来ましたので、今夜も少し投下していこうと思います。

 と言っても、少々短めです。次の場面が無駄に長いので、わけ無いと(書き溜め的に)厳しいので、ご容赦いただきたく。

 では、少しだけですが投下します。

 その後、提督は昼食もそこそこに資料室にこもり始めた。しばらく出て来る気

配はなく、艦娘達はやることもなく待機するしかなかった。由良や古鷹は仕事場

がないので手持無沙汰である。

古鷹「………」

 しかし、古鷹が資料室の前で佇むのはただ手持無沙汰だからというわけではな

さそうだ。

祥鳳「提督にご用ですか?」

古鷹「あ…祥鳳さん」

 古鷹はいたずらが見たかったようなばつの悪い顔をするが、祥鳳は軽く笑みを

見せ、

祥鳳「別に怒りに来たわけじゃないですよ」

古鷹「あ、あはは……」

祥鳳「それで、こんな所でどうしたんですか?」

 恥ずかしそうに頭を掻きながら、古鷹は言う。

古鷹「えと、なんだかじっとしてられなくて」

祥鳳「じっとしてられない?」

古鷹「はい、だって……」

名取「あ、祥鳳さん、古鷹さん……」

 古鷹が何か言いかけたところに、今度は名取が現れた。やはり夏の悪そうな顔をしている。これには祥鳳は少し苦笑する。

祥鳳「あなたも、提督にご用ですか?」

名取「あ、あの、用というわけではないんですけど……なんだか、じっとてしてるのが、なんだか悪いというか……」

古鷹「そう! なんだか悪いような気がして……」

祥鳳「提督に、ですか?」

若葉「なんだ、皆考えることは一緒なのか」

初霜「こうなると、なんだか出遅れた感じがしますね」

 言っている間にも、今度は若葉と初霜がやってきた。遅れて、初春と子日もやって来る。

初春「ほれ、妾の言うたとおりじゃろ? みな考えることは同じということじゃ」

子日「子日、遅刻の日ぃ?」ネノネノ?

加古「やっぱ皆来るんだなぁ、ま、あたしも来てるくらいだもんな」

鬼怒「よかった、鬼怒だけじゃなくて」

由良「ふふ、じっとしてられないのはみんな同じなのね」

長良「なんか、気持ち悪いもんね」

 続々とやってきて、全員が資料室の前に集合してしまった。生徒数はあまり多くなかったのかこの鎮守府の廊下はあまり広くないので、少々手狭だ。

祥鳳「皆……提督の事を?」

加古「あー、ほら、あたしら落ちこぼれも同然じゃん?」

鬼怒「あんなヒドイ演習したのに、提督ったらすごく一生懸命になってくれてるみたいだしさ」

長良「長良たちも、なんだかがんばらなくっちゃ、って思って」

初霜「そしたら、なんだかいてもたってもいられなくなっちゃって」

 そう言う艦娘達は、嬉しそうな、恥ずかしそうな笑みを浮かべて並んでいる。

祥鳳「……どうして…?」

 問う祥鳳に答えたのは、名取だった。

名取「私達、みたいな、お、落ちこぼれに……まっすぐ、向き合ってくれ、ました……」

 自信のない声で、臆病な彼女は必死に声を紡いだ。

名取「私達、何にも、で、できないけど、それでもっ! こんな私たちのため、に! がんばってくれてる人に、何か、したいんですっ!」

祥鳳「名取さん……」

 見回せば、皆が笑って頷いていた。
 皆が、提督に心を開いているのだ。この、短時間に。提督という存在への恐怖を払しょくして、その人に何かをしてあげたいと、そう思わせたのだ、彼が。
 ……本当に、ありがたい人、なんですね。

祥鳳「……わかりました」

祥鳳「皆さんの気持ち、私が伝えてきますね」

若葉「祥鳳さん……」

祥鳳「でも、ここに大勢つめかけたら少し騒がしいですから……私の部屋でゆっくり考えましょう?」

初春「そうじゃな、あまり騒がしくては提督殿に迷惑じゃしのう」

祥鳳「先に行っててくださいね、私は提督に話をしてきますので」

 そういうと、少しはしゃぎ気味の艦娘達を見送って、祥鳳は資料室へと足を踏み入れた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。次回は祥鳳さんが……まぁ、ようやくスタート地点に立つといいますか、長々しく時間かけ過ぎですな……反省です。

 案外、E-3って厳しいですね、あと一回がなかなか届かない……対空稼ぎに連れていってるあきつがよく中間さんにワンパン大破くらうので。良く見たらまだ改装が済んでませんでした……反省

 次回も明日の夜になるかと思います。ではまた……

 どうも、例のコンビニで「まだ瑞鶴残ってたりするかなー」と、寄ってみたら物の見事に完売しておりました。横にあるP3の一番くじはずっと残ってるのにこの差は……と、割とペルソナも好きだったりします、>>1です。と言っても4のアニメを見ただけのにわかですが。

 無課金と課金の間で揺れておりますが、今夜も投下していきます……

督「しかし、結構な量があるな……」

 机の上に山と積んだ本の間に埋もれるように提督はいた。開けては積み、積んでは開いて、何事かをノートに書いては消して、頭を抱えてまた書いて……そんなことをずっと続けていた。
 こんなに勉強じみた事をするのは士官学校の定期考査以来だろうか、ペンを持つ手が少し痛い。

提督「……ふむ、少しはまとまったか……」

 ずっと艦娘について調べていた。運用とか戦術とかではなく、もっと根本的な艦娘という存在についてをもっと深く掘り下げる。
 学校で習った範囲では、艦娘は着任した時点で基本的な艤装の扱いや戦闘方法を一通り身に付けているのが常識だった。その後、艦隊運用していくうちに練度が上がり強力な艦娘へと成長するのが普通なのだ……教科書上は。
 しかしここの艦娘の大半はその基本的な部分が身についていない。ただただ常識はずれなだけなのか、いやそもそも、

提督「艦娘達はどこで艤装の扱いを学ぶんだ?」

 魂を宿したとは言う物の何故そんなことが分かるのか、艤装ができた開発経緯は、年齢に差が生じるのは? わからないことだらけだ。

提督「そこに、答えがあるのか…?」

提督「あー、ダメだ、考えが煮詰まってきたぞ…」

祥鳳「では、お茶でも淹れましょう」

提督「うわっ! しょ、祥鳳……いたのか」

祥鳳「ちゃんと一声かけてから入ったのですが……」

提督「すまん、全然聞いて無かったよ……」

 苦笑する祥鳳は奥へ引っ込むと、しばらくしてからお盆を持って出てきた。上には湯気の立つ湯のみが載せられている。

祥鳳「本当はちゃんと葉っぱから入れた物の方が美味しいんですけど」

提督「いや、構わないよ」

 湯呑を受け取り一口口に含む。茶葉の香りがすっと抜けて頭が少しすっきりする。インスタントとはいえ、誰かに入れてもらった茶は美味いというのは本当らしい。

提督「落ちつくな……ありがとう。それで、何か用かな」

祥鳳「あ、はい、他のみなさんについてなのですが」

祥鳳「自分たちに、何か出来ることはないか、と」

提督「ああ、そうか……やることがないのか……」

祥鳳「というより、提督の力になりたい、と」

提督「俺の?」

祥鳳「自分たちみたいな落ちこぼれと真っすぐ向き合ってくれる提督に、答えたい……そう言っていました」

提督「そんな、ことを……」

祥鳳「………提督、私からも、良いですか?」

提督「何だ?」

 祥鳳は、視線をさまよわせ、ためらうようにしばらく口ごもり、

祥鳳「なぜ、提督はそこまで一生懸命なのですか?」

祥鳳「なぜ、私たちみたいな落ちこぼれのためにがんばるのですか?」

 問うた。

提督「なぜ、か……俺にとっての最初の部下だから、じゃダメなのか?」

祥鳳「だからって……私たちは、欠陥品なんですよ?」

提督「……欠陥品?」

祥鳳「提督が今、調べようとしていることを、私はお教えできます」

 欠陥品。何とも不穏な響きに聞こえた。そしてそれが、彼女らの秘密なのだろう。
 が、

提督「いや、もう少しがんばってみるよ。答えを聞いたんじゃ意味がないしな」

祥鳳「ッ……何故ですかッ!?」

提督「祥鳳?」

 何かが決壊したかのように、祥鳳は吐き出すように言う。

祥鳳「だって……だって、艦娘なのに……知っていること、できること、全部知ってて、知っているからこそ艦娘なのに……ッ」 

 お盆を抱きしめ、こらえるように身をまげて、

祥鳳「それがない私たちなんて、艦娘じゃ無い! 人でも、艦でもない艦娘の、その艦娘ですらない私たちは……一体何なんですかッ!!」

 溢れる涙を拭きもせず、提督に言葉をたたきつける、

祥鳳「艦娘にもなれないなら、せめて何にも期待せずに消えてしまおうと思っていたのに……なんで! なんであなたはそんなに、まっすぐなんですかッ!?」

提督「…………」

 その姿が、あまりにも痛々しかったからだろうか。

祥鳳「諦めてたのに、期待しちゃうじゃないですか!!」

提督「……そうか」

 だから、思わず抱きしめていた。

祥鳳「ッ!?」

提督「…前に、君が言ったこと、憶えてるか?」

 問う提督は答えを待たない。

提督「『出来ることしか知らない』、そう、艦娘ってのは艦でもなく人でもない何かで、所詮はただの兵器なのかもしれない」

 だから、兵器としての役割を果たすための知識を持たない『欠陥品』は、兵器でもないただのがらくたなのかもしれない。
 それでも、

提督「『出来ることしか知らない』なんて、そんなの人間だって一緒じゃないか」

 人も、できるコト、知っているコト、それ以上の事を知りえないのだ。が、しかし人間と兵器は違う。

提督「ここにきて大した時間は経ってないけど、艦娘達と触れ合って分かった。君たちは兵器である以前に、一人の人間だよ」

 泣いて、笑って、怒って、失敗だってする。だが艦娘は"艦"であり"娘"なのだ。唯の兵器にはあり得ない要素を、艦娘達は持っているのだから、

提督「学べばいいんだ。知らないことを学んで自分の物に出来るのは、兵器にはできないことさ。でも、君たちにはきっとできるはずなんだ」

祥鳳「私なんて……最初に沈んだ空母なのに……」

提督「それは艦娘の「艦」の部分、の、過去だ。今の君は沈んじゃいない」

祥鳳「運用できる艦載機だって少ないですし」

提督「練度を上げればどうにでもなるさ」

祥鳳「妹に比べて運も無いですし」

提督「実力でひっくり返せばいい」

祥鳳「………もう、どうして全部否定しちゃうんですか」

 泣き笑いの声で祥鳳は言う。

祥鳳「なんだか、どうにかなってくる気がしてくるじゃないですか」

提督「なぁ、今祥鳳は一つ学んだんだ、分かるか?」

祥鳳「え?」

 抱きしめられている今、祥鳳は提督を見上げる形になる。提督も祥鳳の顔を見て言う。

提督「世の中、こんな提督もいるってことさ」

 何のことはない。祥鳳だって艦娘なのだから、知らないことは知らないのだ。しかし、今、知った。一歩前に進んだのだ。

提督「それにな、ここはもともと学校だったんだろ? なら学ぶには最適の場所だとは思わないか?」

祥鳳「……ふふっ、言ってる事かなり滅茶苦茶ですよ?」

提督「ついでにもう一個学べ、物は考えようってことだよ」

祥鳳「ふ、ふふふっ……そうですね!」

 提督から離れて一歩下がり、祥鳳は笑う。

祥鳳「ありがとうございます、提督。私、嬉しい!」

提督「うん、そっちが祥鳳の素なんだな」

 さっきまでとは打って変わった、愁いの晴れたきれいな笑顔に、提督の顔もほころぶ。

祥鳳「提督こそ、そっちの口調が素なんですね?」

提督「え? ……あ」

 いたずらっぽく笑う祥鳳に、はっとなって提督は口を押さえた。
 祥鳳がやってきた時に驚いて気を抜いてしまったようだ。艦娘達の前では少しだけ作った話し方をしていたのだが、失念していたらしい。

祥鳳「本当は"俺"なんですね、提督」

提督「ぐ………………秘密だぞ?」

祥鳳「ふ、ふふふ、あははは! はい、秘密ですね!」

提督「元気になったとたん良く笑うようになりやがって……」

 ばつの悪そうな提督をみて、また少し笑う祥鳳。そしてさらにふてくされる提督に、やっぱり笑ってしまう祥鳳。そんなコントみたいなやり取りをしばらく続けた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。この辺無駄に筆が走ってましたwww 少々展開早い気がしなくもないですが、物語としてはこれくらいの方が間延びしないで良いかと思う>>1であります。

 あと……あと5点だったのに……何故外した! 金剛ッ!? キラ付けだってタダじゃないんだからな!? 第2艦隊に配属した戦艦&重巡が仕事しない件。やはり軽巡駆逐じゃないと行かんのか……悩ましいところです。

 次回の投下もまた明日の夜ということになりそうです、ではまた……

最初から俺って一人称で使ってるぇ……

>>6
>提督「ここに祥鳳を加えて全員か。俺は兵学校を卒業したての新米で、経験皆無のひよっこだ、どうかささえてほしい。よろしく頼む」

俺だな

>>254 >>255そう、最初は「俺」にしてたんですよ……すっかり訂正するのを忘れてました。
最初は口調作って無かったんだけど途中から作り始めた的な脳内補完をお願いしますorz(書いてる途中に思いついたとか言えない……)

名取由良古鷹加古初春など
たしかに開戦一年未満で沈んだ艦たちだ
全然気付かなかったわ

でも長良や初霜、鬼怒に若葉は戦歴長いからなあ

 >>260 >>261 申し訳ない、全然意識せずに書いております。選考基準はあくまであまり二次創作等でスポットが当たってないと>>1が感じた艦娘ですので……

 それはそうと、鶴翼の絆2巻に祥鳳さんが挿絵で出てましたね。瑞鳳とのツーショットで、セリフは何と1行程度のシーンでしたが、嫁艦が出て来るというのは嬉しいものですな。

 それでは今夜も少し投下していきましょう。ホントに少しですが

主任妖精「風呂だぁ?」

 訝しげに問い返す妖精に、祥鳳は押し返す。

祥鳳「お風呂です」

 それが、提督と話し、艦娘達と相談した結果だった。

祥鳳「ここの鎮守府には、部活用だったであろうシャワーはありますけど、足を延ばして入れるお風呂がありません」

主任妖精「んで、しばらく出来ることはないし、皆で造りましょー……と」

祥鳳「ダメでしょうか?」

主任妖精「いや、ダメじゃねぇしあたしもゆっくり入れる風呂とかほしいとこではあるさね」

 しかし……と、妖精は思う。
 話を聞くに、どうもあの提督はここの艦娘の心を開いたように見える。彼女らが自発的に動こうというのだ、そう言うことなんだろう。
 恐怖心を克服させたのか、あるいは……

主任妖精「新しい視点を示した、か……」

主任妖精「風呂だぁ?」

 訝しげに問い返す妖精に、祥鳳は押し返す。

祥鳳「お風呂です」

 それが、提督と話し、艦娘達と相談した結果だった。

祥鳳「ここの鎮守府には、部活用だったであろうシャワーはありますけど、足を延ばして入れるお風呂がありません」

主任妖精「んで、しばらく出来ることはないし、皆で造りましょー……と」

祥鳳「ダメでしょうか?」

主任妖精「いや、ダメじゃねぇしあたしもゆっくり入れる風呂とかほしいとこではあるさね」

 しかし……と、妖精は思う。
 話を聞くに、どうもあの提督はここの艦娘の心を開いたように見える。彼女らが自発的に動こうというのだ、そう言うことなんだろう。
 恐怖心を克服させたのか、あるいは……

主任妖精「新しい視点を示した、か……」

祥鳳「はい?」

主任妖精「いや、何でもないさね」

 いずれにせよ、あの若造は艦娘達に慕われる第一歩を踏み出したということだ。前任の提督のころを考えれば随分と進歩したというもの、喜ばしいことである。
 ならば、応えてみるのも悪くないと考えた。

主任妖精「まぁ、たまにはそう言ったもんを造るのも悪か無いさね、あんたらにもきっちり働いてもらうから覚悟しとくんだよ?」

祥鳳「はい! 頑張りますね」

 おうおう、良い顔しちゃってまぁ、この前までのこの子じゃ想像もつかない表情だよほんと、昨日のこの子に見せてやりたいねぇ。

主任妖精「そうと決まりゃこうしちゃいられねぇな。立地とかも考えなくちゃいけねぇし、あんたの飛行機の目を借りることもあるかもだ。しっかり頼むよ?」

祥鳳「はい!」

―――――
―――

 そこからの数日は瞬く間に過ぎて行った。提督が資料室にこもりきりで艦娘についてを調べている中、艦娘たちもまた、浴場を造るという目標に向けて日々汗を流していた。
 艦娘は艤装を扱い海上で戦う都合上、人間よりも身体能力が高いため、駆逐艦といえども土木工事などは軽くこなせる。

初霜「とはいえ、結構体力、使いますね……」

若葉「これ、くらい、いい、トレーニング……だ……」

由良「いや、そんなに息上げていわれても説得力無いよ」

鬼怒「おーい、補給だよー」

 とはいえ疲れるものは疲れる。苦笑する由良の膝で休む若葉と初霜。そこに鬼怒たちが食事を持ってやってきた。

初春「だらしないのぅ」

名取「あ、あの、大丈夫ですか?」

加古「んお? ご飯の時間?」

古鷹「もう、加古はご飯と寝ることに敏感過ぎ」

加古「いいじゃん、好きなもんは好きでさ」

 真っ先に飛びつく加古とたしなめる古鷹。初春は配膳の手伝いだ。艤装についているアームを器用に使っている。

長良「まぁまぁ、とにかくみんな一先ずお疲れ様!」

祥鳳「ちゃんと手を拭いてから食べてくださいね」

 三々五々にありつく艦娘達に手ぬぐいを配る祥鳳。

主任妖精「なんとまぁ、この子らがこんなふうになるとはねぇ」

 皆の表情を見る主任妖精も心なしか柔らかである。これでも作業中は全く容赦なく艦娘に指示を出しているのだが、ずっと泥酔状態だったころを知っている艦娘達としては可愛いものなのである。

長良「司令官の様子はどうでした?」

祥鳳「まだまだ満足がいかないようですよ。だいぶん形にはなってるはずなんですけどね」

子日「提督、がんばり屋さん!」

古鷹「整理を頼まれて見に行ってみたらもうすごい資料の山で」

由良「休憩も兼ねて本の内容について質問したらすごく的確に答えてきて……あんな量をちゃんと読んで把握してるのもすごいよね」

初春「そうするとわからんのが、なぜにそのような優秀な提督がこんな所に配属になったのかということじゃ」

若葉「言われてみれば、確かに……」

初霜「指摘されるまで忘れてましたけど、ここの鎮守府って問題ありな人材が集まるんですよね?」

加古「あたしらの矯正のためにわざわざ派遣したとか?」

古鷹「でも提督士官学校卒業したてでしょ?」

由良「たしか卒業後すぐに提督に着任できるのってかなり限られてくるから、どこの鎮守府でも引っ張りダコって話よ?」

子日「実はせんせーだったりとか?」

長良「それこそ引っ張りだこなんじゃ?」

艦娘's「「「うぅ~ん?」」」

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。E-4は案外楽なのでついキラ付けなどに夢中になって書き溜めが出来てません……反省であります(あきつ並感)

 E-4では赤城、加賀、飛龍、あきつ丸がドロップしました。どうせなら天津風とかほしかったですね(←やはり欲張り)

 次回は明後日の夜あたりになるかと思われます。書き溜め量的にも厳しいですし、ちょっと用事もできましたので。ご容赦いただきたく。

 早くE-5で雲龍さんをお迎えしたいところです。では、また……

 そして酉を変え忘れる体たらくorz 恥ずかしい限りです

 どうも、ゆったりまったり雲龍さん他、イベントで手に入れたレア艦を3-2-1で育成しております、>>1です。しっかり中破絵も回収してうはうはです。谷風とかアウト感半端ないです。

 イベント後に来るという軽空母の改二が気になるところですが、今夜も少し投下していきましょう

 艦娘たちが提督の正体について頭を捻っている一方、とうの提督は資料室で同じく頭を抱えていた。
 士官学校で習わないというだけあって、やはり艦娘の成り立ちや建造方法などの資料はやはり少なかった。ほとんど無いに近いと言っていいかもしれない。

提督「ひょっとして、開けちゃいけない箱に手をかけようとしてるんじゃないだろうな……」

 探ってはいけない秘密に近づこうとしている、映画では真っ先に死にそうなポジションを全力疾走しているような錯覚を覚えて思わず身震いする。

提督「だめだだめだ、思考がブレまくりだな……」

 休憩も兼ねて、先ほど祥鳳が持ってきてくれた昼食を摂ることにした。外で作業してる艦娘もここで調べ物をしている提督にも食べやすいおにぎりや、唐揚げなどの一口で食べられるものが中心のメニューで、彼女らの気遣いを感じる。

 食事をもってきた祥鳳にしても、たまに出し過ぎた資料の整理を手伝ってもらう古鷹や由良にしても、随分と提督に対する態度は丸くなった。ふと手を止めて外の音に耳を澄ませば聞こえてくる艦娘たちの楽しげな声を聞くと、自然とやる気も湧いて来ようと言うものだ。

提督「……ングッ、ふぅ、ご馳走さん。ここまでの情報を整理するか」

 パラパラとノートをめくる。走り書きをまとめて集めたものを最初から見返してみた。まとめたとはいえこちらもほとんど走り書きに近いものだ、自分で書いておきながら読みにくいことこの上ない。

提督「えっと、艦娘とは、艦の魂を宿した少女であり、それぞれに合った艤装を装着することで海上を航行し、砲雷撃戦を行うことができる半分人間の人型兵器である、と」

 ここまでは調べなくても分かることだ。

提督「この艦の魂ってのがよくわからんな。とりあえず霊的な何かであって科学はあまり関係なさそうなんだよな……」

 深海棲艦が出没し始めたのが20年前で、艦娘の登場がその2年後。その2年間の間にいかにしてそんなものを開発したのかはわからなかったが、

提督「国民は幼児期に艦娘の適性検査を受けるのが義務付けられている、と」

 艤装との適合率や艦の魂云々に関しての試験と考えられるがここもよくわかっていない。いや、一応国民向けの説明は用意されているが、ここまで調べてわからないとそれもどこまで本当かわかったもんじゃない。

提督「で、肝心の欠陥品についてだが……」

 これに関しては論文の片隅にあった文章のつぎはぎだが、おそらくこれが正解と思われる。

提督「艦の魂を宿してるとはいえ、生まれてから宿しているわけじゃないらしい……のは当たり前だから、その艦の魂とやらを少女に埋め込むことで艦娘とするならば、その魂がうまく元の魂と折り合いがつかないなどの不具合が生じた場合、機能欠陥を生じる場合がある、と」

 艦娘の建造の秘密に若干ふれ書けている気もするが、おそらく彼女らのヒミツの答えで大きな間違いはないだろう。

提督「加古は航行の仕方、古鷹・由良・鬼怒が砲雷撃戦についての知識が欠落。名取はおそらくもとの臆病が残っているだけ……これは欠陥品なのか?」

提督「駆逐艦たちは、あれはただ単に練度が低いだけに見える。そうなると……長良と祥鳳は一体何なんだ……?」

 先日の演習を見るに長良の艦隊行動には全く問題は見受けられなかった。祥鳳は航行できないのかもしれないが、艦載機は少なくとも問題なく運用していた。

提督「……おいおい、みていくことにしようか」

提督「さて、原因が分かれば後は対策だ……」

 提督はまた机に向かう。休憩で少し気力も戻ってきたし手の疲れも抜けてきた、艦娘達ががんばっているのに、自分一人ここでゆっくりしている場合じゃない。

提督「がんばろう……」

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。ちょっと短いですが、次のシーンとの兼ね合いもあるのでご勘弁いただきたく。

 浜風、浦風、谷風、初風に夕雲姉妹、鈴谷、そしてイベント報酬艦。なかなかの収穫でした。無駄にドロップした正規空母達は対空上げ用の餌として、艦娘達の血肉となって生きてもらいましょう……

 次回は明日の晩になりそうですが、明後日からしばらく家を空けることになるので更新ができません。28日には更新再開できるかと思いますので、少々お待ち下さい……ではまた

 どうも、赤木や綾波、敷波などなど、今ではちょっと笑ってしまうフレーズになりました、>>1です。三週連続エヴァだそうですね。一応、序は録画しました。時間がある時にでも見ようかと思います。さて、艦これ実装艦の名前はいくつあるんでしょうか、気になるところです。

 まぁ、とにかく今夜も少し投下していきましょう

由良「配管のチェック、OK!」

名取「ボイラーチェック、だ、大丈夫です!」

初春「照明関係も問題なさそうじゃ」

祥鳳「外観にも問題は見受けられません」

主任妖精「おーし、んじゃあ稼働すんぞー」

 さらに数日がたった。夕刻、鎮守府の一角に出来た小屋の中で、エンジンの低い駆動音が響き始める。

子日『まだぁ?』

初霜『そろそろだと思うんですが……』

鬼怒『あ、聞こえてきた……』

子日『出てきたぁー!』ネッノヒィー!!

古鷹「ふふ、成功ですね!」

 中から歓声と低い水の流れる音が聞こえてきた。
 艦娘と主任妖精による浴場が遂に完成したのだ。土やほこりにまみれて、加古が笑う。

加古「いやー、まさか田舎なのがここにきて生かされるとはなー」

 深海棲艦の出現から今日に至るまで人口は減少の一途をたどっており、端野のような田舎から人が消え始めているのだ。端野は海沿いなのでなおさらだ。20年の間に近海の制海権の大半は確保しているとはいえ、軍の警護もまともに無い海沿いの土地は基本的に誰も寄り付かないのだ。

祥鳳「提督は?」

由良「長良が迎えに行ってますよ、そろそろ来るんじゃないですか?」

長良「司令官! 早く早く!」

提督「こ、こら、そんなに引っ張るな」

古鷹「言ってる間に来ましたね」

 長良に引きずられるようにして提督がやってきた。長良は実に楽しそうな顔をしている。一週間も前には考えられない光景だ。

提督「全く……落ち着けというのに」

祥鳳「やっと完成したんですから、大目に見てください」

提督「やれやれ……しかし、よくもまぁ重機もなしに作ったもんだな」

主任妖精「あたしがいるんだから当たり前じゃないのさ。そもそも重機なんか使わなくたってこのくらい昔の人間は作ってんだ、あたしらに出来ない道理はないさね」

提督「もっともだな」

 浴場はちょっとした小屋の中に作られている。直方体の簡素な本体に三角屋根、はみ出すようにボイラー室とポンプ室が併設されている。地下水を引き上げてそれを沸かす形をとっているらしい。
 人が住まなくなってそれなりの時間がたっているので水質も問題無いらしい。土地の所有権もあいまいになっていて誰も文句を言う人間もいないので、そのうち近所の川から引いてくるような改装も予定しているとか。
 扉は一つ、艦娘用だから当たり前ではある。

祥鳳「さ、行きましょう」

 と、観察していると今度は祥鳳に引っ張られた。

提督「え?」

古鷹「提督も最近詰めっぱなしでお疲れでしょ? ゆっくりお湯につかって体を休めて下さい」

提督「いやいや、一番風呂は君たちがいただくべきだろう? がんばったのは君たちなんだから」

由良「そう言わず、一緒に入りましょう?」

>>293
わかる範囲でなら

赤城:赤木リツコ
敷波、蒼龍:敷波(惣流)・アスカ・ラングレー
綾波:綾波レイ
摩耶:伊吹マヤ
日向、青葉:オペレーターの二人

葛城と冬月は、まだ実装されてない

こんな感じですよ

提督「え?」

長良「え?」

 提督はしばらく固まる。
 何? え? 一緒? えぇ?

提督「……一緒に?」

初春「そのためにわざわざ作ったのじゃが?」

提督「いや、しかしだな……」

長良「ほらほら、早く行きましょうよ、司令官!」

提督「おいおい、こら、ちょっと!」

 祥鳳と長良に両腕を、初春に背中を押されてそのまま風呂小屋に押し込まれた。

―――――
―――


 かぽーん、という擬音がよく似合う内装だ。鎮守府正面すぐそこは山になっているので、木材はそこから調達した。土地関係は前述の通りだ、問題ない。

初春「ふぅ、こうしてのんびり風呂に入るのも久々じゃのう」

子日「気持ちいいよーぅ!」

加古「うーん、腰をおろして体洗えるのってこんなに気持ち良いとはなぁ」

 きっちりカランやシャワーも完備していてちょっとした銭湯の様相を呈している。これの設計を瞬時にこなし、一週間余りで完成させてしまった主任妖精の手腕たるや、本当にただの妖精なのか疑わしくなって来る。

名取「このシャンプーとか、どこから調達したんでしょうか……?」

由良「何でもずいぶん前に大きな鎮守府の酒保で主任さんが譲ってもらったとか何とか」

古鷹「まだ使えるあたりが何とも……」

長良「というか、やっぱりあの人何者……」

若葉「全員で入って、少し手狭くらいの広さか」

初霜「主任さんの設計は絶妙ですね」

主任妖精「流石に湯船に全員は無理だから交代でなー」

 今は駆逐艦と主任妖精が入ってまだ余裕があるが、全員ともなると流石に厳しい。一度に5~6人が限度といったところか。

祥鳳「提督、お湯加減はどうですか?」

提督『ああ――』

―――――
―――

提督「ああ、いい感じだ……」

 ゆったりとした湯船で力を抜くと、全身から疲れがにじみ出ていくようだった。艦娘と同じく部活用のシャワーで済ませていたことを考えると、こうして手足を伸ばして湯に浸かれるというのはこの上なく気持ちの良いことだ。

提督「まさか、男湯までちゃんと作ってあるとはな……」

 少し見せてもらった艦娘用の女湯に比べればかなり手狭ではあるが、2~3人が余裕を持って風呂を楽しめるくらいのスペースがあった。自分一人で使うことを考えれば艦娘達より贅沢させてもらっている気がして少し罪悪感を感じないでもない。
 いきなり「一緒に入ろう」と連れ込まれた時は少し焦ったが、玄関できちんと別れるように作ってあった。まさしく銭湯のような構造をしている。
 ちなみにこの風呂は校庭の隅に建てられている。賞味のところ、校庭はあまり使われていないので大きな問題にはならなさそうだ。

提督「ありがたい、ということか……」

 だれの発案なのか、それとも皆で決めたことか、そこは分からないが。
 
 ――彼女らが、俺のために行動してくれたということ

 それだけは確かな事だと信じたい。

提督「心、開いてくれたということなのだろうか……」

 だとすれば、それはとても喜ばしいことだから……

子日「てっいっとっくーっ!」

 ガラガラと音を立てて扉が開いたかと思うと子日が飛び込んできた。

祥鳳「こら、子日さん!」

 そして、祥鳳が追いかけてきた。

提督「……え?」

子日「お背中流すよーぅ!」

祥鳳「いきなり入っちゃ迷惑でしょう!?」

提督「いやそこじゃない、そこじゃないから!」

 タオルもなしに飛び込んできた子日を(流石にタオルを巻いた)祥鳳が後ろからとがめる。しかしずれている。何かがずれている。

祥鳳「すみません、提督……」

提督「そこじゃないと言ってるだろうがッ!?」

 あわてて自分に背を向ける提督を見、少し考えて、

祥鳳「……きゃあっ!?」

 悲鳴を上げる祥鳳。その場に自分の体を抱いて座り込んでしまった。

提督「いいから、なんも見てないから、早く子日を連れて行ってくれ」

祥鳳「は、はいぃ……/////」

 ――開いていいところと悪いところがある

子日「祥鳳さーん?」

祥鳳「い、いいから戻りますよっ」

子日「顔赤いよーぅ?」

祥鳳「き、気にしないで下さいッ!」

 背後の声がぺたぺたという足音と共にドアの向こうに消えたころ、

提督「……はぁッ!」

 ようやく提督は型から力を抜いた。思わず大きく息を吐く。
 男女比は12:1だ、こういうトラブルもこれから少なくないだろう。今までは双方の距離が遠かったため怒ることはなかったが……
 肌脱ぎの祥鳳を見たときにも思ったことではあるが、白くきめ細かい肌と華奢でなめらかな曲線を描いた腰と、けっして凹凸が大きいというわけではないが、しかし晒で巻かれていない分あの時見た記憶と比べても

提督「いやいやいやダメだろ!?」

 頭を振りあわてて煩悩を散らす。湯で血行が多くなった頭だ、軽くめまいを起こすが逆に頭が冷えるとこらえた。
 こんな調子で、やっていけるのだろうか……?

提督「はぁ……」

 結局、前途多難は相変わらず。先が思いやられるばかりであった。
―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。祥鳳に桶の一つでも投げさせてやろうかとも思いましたが、キャラに合わなさそうなのでこんな感じになりました。少し急いだのでちょっと文章乱れがちですが、お許しください……

 >>297ざっと調べてみますと、ゲーム版を含めれば(文字りなしで)

 綾波、蒼龍、敷波、赤城、日向、青葉、高雄、長良、多摩、北上、霧島、武蔵、阿賀野、大井、最上、剣崎(のちの祥鳳)、加賀、加古

 以上が、エヴァに登場するキャラで艦これ実装艦の艦艇の名前ですね。ちなみに霧島より左は劇場版に登場しているようですよ。書き始めるとキリが無いので、ご自身で「エヴァ キャラ」とでもググってwikiみて下さい。前の名前とはいえ祥鳳さんがいてちょっぴり嬉しい>>1でした。

 先にも書きましたが、明日からしばらく投下ができません。書き溜め時間含めて、次に投下できるのは夏イベ終了後になりそうです。どうにか切りのいいところまで投下したつもりですので、ご容赦いただきたく……

 では月末にまた来ます。それでは……

297の"こんな感じですよ"に対して298で提督と長良が反応してるように見えて笑った

>>302誤字訂正
  「遠かったため怒ることはなかった」→「遠かったため起こることはなかった」

 流石にわけがわからんところは修正入れます……

>>306言われてみてみたら本当で少し笑いましたw

>剣崎
http://i.imgur.com/nVBWKSq.jpg

>>308ナジェミテルンディス!?(来るだろうと思ってスタンバってたとか言えない)

 どうも、久々に何となく大型でビス子を狙いに行ったらまさかの5時間。期待して高速建造材使ったら、長門さんでした。MNBを回避したら、レーベにつられてホイホイやってきたながもんに当たったようですorz

 現在書き溜め作成中ですが、筆鈍り気味につき、少し気分転換に即興で何か書きたいと思います。どなたかいらっしゃったら、下三つ分までネタを募集しますので、みたい艦娘とシチュエーションでも書いてください。本編に関係なくてもかまいません。

 なお、ネタは複合されたり、独立した小話になるかもしれませんが、ご了承ください……(誰も居なかったらどうしよう……)

由良と古鷹の女子会?的な感じでお願いします

 は、早っ!? 予想外の早さに驚きを隠せない>>1です。
 ともかくネタ提供感謝です。ひとつずつ書いていくことになりますので、少々お待ちを……

書きあがりましたので、投下します……

祥鳳さんとのえっちぃハプニング

(前提:現在、提督考案の訓練メニューで艦娘達は日々訓練に励んでいます。すでに投下した本編の少しあとの時系列です)

提督「ふぅ」

 ペンを置いて一息入れる。机に並ぶのは艦娘達の成績表だ。始めたばかりなので当然ではあるが、まだまだ成績は低い。

提督「さて、効果があってくれると良いんだがな……」

祥鳳「大丈夫ですよ、きっと」

 そばに控えてくれていた祥鳳が静かに湯呑を机に置く。自身の訓練もあるだろうに、こうして秘書艦の仕事をこなしてくれている。ありがたいことだ。
 しかし、祥鳳はあの資料室での一件以来、腰を入れて仕事を始めるときにいちいち片袖を脱ぐようになっていた。癖なのだろうか?

祥鳳「今のところ皆さんも、効果のあるなし以前に、明確にやることがあるということを楽しんでいる風でしたし」

 本人が気にしないならそれでいいだろう。

提督「そうか、楽しんでくれているのなら何よりだ」

 お茶を一口飲みつつ、もう一度資料に目を通す。今のところ必要はなさそうだが、"アレ"の用意もしておいた方がいいだろう。そうなると準備が必要だ。さて、連絡がつくかどうか……
 と、思考を巡らせていると、外から雨音が聞こえ始めた。

提督「ふむ、降ってきたか……」

祥鳳「少し曇り気味でしたもんね」

提督(風があるな、すこし窓は閉めておこうか)

 考え事をしつつ資料から目も離さずに窓へ手をかけようとして手を伸ばす。

祥鳳「あ……」

 気を利かせて窓を閉めようとしていた祥鳳に気付きもせずに。

提督「お?」

 手を伸ばしてあたった物に指を掛けて下へ引っ張ると、予想に反した柔らかな感触と反応。提督の動きが止まる。

提督(はて?)

 窓はこんな柔らかかっただろうか。それに窓枠というより、何か布のようなものをひっかけたような……

祥鳳「あ、あの、あの……」

提督「…………」

 ここで提督は、ゆっくりと手を伸ばした方を向いた。
 祥鳳が着物の下に付けているさらしのようなものに指をひっかけ、あまつさえ引き下ろそうとしている自分の指が見えた。

提督「………」

 結構引っ張ってしまっていたらしい。片方の山が少し見えかけd

提督「うわわああああ!?」

祥鳳「うぅ……///////」

 手を外してあわてて飛び退る。椅子を蹴倒すが今はどうでもいい。
 祥鳳は黙ってさらしを直している。顔はこっちに向いて無いが、耳も首筋も真っ赤だ。またやってしまった。

提督「す、すまん! わざとじゃないんだわざとじゃ!」

祥鳳「は、はい……」

 気まずい沈黙が流れる。しばらくして落ちついてからもとの位置に戻ったが、心なしか祥鳳の立ち位置が遠くなり、袖も元に戻していた。

提督(や、やっちまったぁああああ……)

 それからしばらく、

祥鳳「艦載機発艦よう、ぃ……あ」

鬼怒「祥鳳さん?」

子日「顔赤いよーぅ?」

祥鳳「な、なんてもないですよッ!?」

 肌脱ぎになろうとすると思いだすのか、顔を赤くするようになってしまった。

(元ネタ:http://imgur.com/H2BsiEF.jpg)
―――――
―――


 このなんともえっちぃ()な展開……すまぬ……そしてさらりと次への伏線を張るというww 「暗くなってから~」は、まだ高感度が高くないので、今回は無しということで一つ。
 次は子日、観察日記の日ですね。しばらくお待ち……

子日、提督観察の日


子日「ん、んぅ~ん……」

 お布団をのけて体を起こす。お外はまだちょっぴり暗いし、眠い。

子日「でも、起きるの!」ネッノヒー!

 静かにお着替えをして、部屋をそっと出る。お部屋のみんなはまだ寝ている。こんな時間に起きたのには理由があった。
 そう、何を隠そう、今日は子日、提督観察の日なのだ!
 話は少し前、みんなで提督の正体について考えた時にさかのぼる。

子日「子日、提督を観察しちゃうよーぅ!」

初霜「えっと、やめておいた方が……」

若葉「そうしようと思ったら、まず長良さんの早朝ランニングに合わせて起きなくてはいけないぞ」

初春「まぁ、子日はねぼすけじゃからのう」

子日「なにおーぅ!?」ネノヒーッ!

 そんなやりとりがあったのだ。バカにされてちゃ全国2000人の子日ふぁん(!?)に申し訳が立たない。

子日「子日、提督観察の日ー!」

―――――
―――


~早朝・玄関前~

子日「まずは、長良おねえちゃんのランニング」

 こっそり校舎の影から様子を見る。雰囲気が出るからサングラスとかがほしいところだが、無い物ねだりはしないでおこう。

子日「むむむ、提督と仲よさそう」

 準備運動中、楽しそうに話をしている。何を話しているかまではよくわからないが。

子日「メモの日ー!」ゴマノヒー!

その1・提督は早起きで、長良おねえちゃんと仲がいい

子日「あ、走り始めた!」

 提督が先に走り始めて、長良おねえちゃんがあわてて追いかけている。提督、ちょっとずるい?

子日「あ、追い付かれて……追い抜かれちゃったよーぅ?」

 そしてそのまま何回も何回も追い抜かれて、しばらくしたら休憩に入った。

その2・提督はちょっぴりズルするけど、すごく足がおそい

子日「提督、ちょっとカッコわるい日……」

―――――
―――


提督「へっくょい!」

長良「うわ! びっくりした! 風邪ですか?」

提督「はて、冷やしたかな……」

―――――
―――

 この子日、提督観察の日は、小出しにすると面白そうなので、おまけとしてシリーズ化しようかと思います。不定期に空気を読まずに出没することになる予定ですw
 あと、提督のくしゃみが変な事になってますが、面白いので提督のくしゃみは変だということで。

 >>1の眠気が限界来てるので今日はこの辺で終わらせてもらいます、>>326には申し訳ない。しかしこのネタ、実は前々から書きたいなと思ってたシーンなので、ぜひ書かせていただきます。

 本編も明日には再開できそうです。合わせて投下しますので、今夜はこの辺で……

 小ネタ仕上がったので、こっちだけ先に投下しますね

『由良と古鷹のお茶会at資料室』

由良「古鷹ー、そっち終わった?」

古鷹「あと、2冊ー……よし、終わったー」

由良「おつかれー」

 資料室のあっちとこっちで声が行き交う。今日は天気がいいので虫干しをしていたのだ。流石に全部とはいかないが、棚一つ分くらいは終わらせただろうか。狭くて古い割にどの部屋にも窓からつながるベランダがあるのは非常に便利だ。

古鷹「じゃ、お茶にしよっか」

由良「今日は私が煎れるね」

 隣にある準備室には給湯設備が整っていて、ちょうどいい机といすもあるため、資料室を管理している彼女らの良い休憩場所になっていた。
 もっとも、提督もいなくて出撃や任務もないこの鎮守府に、資料室の出番なんかは全くと言っていいほどないのだが。

由良「はい、どうぞ」

 やることといえば虫干しや掃除くらいなものだ。こうしてお茶を飲んでいる時間の方が長いのが現状である。

古鷹「ありがとー……ん、おいしいね」

由良「ティーパックで煎れてるから、やっぱり祥鳳さんのお茶にはかなわないわね」

古鷹「そりゃ、一から入れてる方がおいしいに決まってるよー」

 そうは言う物の、古鷹はおいしそうに飲んでいる。実際、祥鳳に頼んで入れさせてもらった時の味を知っているからだろう。それはもう、お茶の色をした白湯としか言いようがない代物になった。苦くもなかった、すこし苦い思い出だ。

由良「……そういえば、これってね?」

 と、由良がカップに沈む布袋を指差し言う。

由良「ティーパック? それとも、ティーバッグ?」

古鷹「……あー、言われてみれば……」

 少々意表をついた問いに古鷹も少し考えこむ。

古鷹「パックじゃない? ほら、閉じてあるし」

由良「でも紐で釣れるし、バッグじゃない?」

由良・古鷹「……う~ん?」

 頭を抱える二人。何でも無いことだが、一度考え始めるとつい頭から離れないことはよくあることだ。

由良「パック、バッグ……バック?」

古鷹「う、う~ん、ティーバックは下着じゃない?」

由良「……古鷹、そう言うの興味あったりするの?」

古鷹「え、えぇ!? 無い無い! 無いよ!? というか、そんなところおしゃれしたって誰に見られるわけじゃないし!」

由良「えっ、じゃあ見せる相手がいたら、穿いちゃったり……?」

古鷹「は、穿かないよッ!? あの島風じゃないんだし!」

由良「島風かぁ……すごいよねぇ、駆逐艦なのに」

古鷹「確かアレ、Z旗らしいよ?」

由良「Z旗!? 謝って! 今すぐ東郷司令に謝って!?」

古鷹「それはともかく、やっぱりワンオフの艦だけあってやっぱり有名だよねー」

由良「ワンオフといえばねー……」

 こうして、二人の時間はゆっくり過ぎていく。提督が着任する、少し前のお話であった。

―――――
―――


 ちょっと短いですが以上です。いやー、楽しい! めっちゃ楽しく書けました。
 こう、脱線していく女の子の会話って良いですよねー、無限に書けそう(だからここで止めたわけですが)。しかしあんまり日常系アニメは見ないという。機会があればこちらも第2回書きたいなぁ。書くかもw

Tバックはむしろ(下着の線を)見せない為に履くんだけどな(特に和装)

 書き忘れたので……
 一応、紐で釣られてるのがティーバッグ、四方がノリで固まっている密閉型がパックなのでは? ということです。
 下着の方はTバックということで、アルファベットを使って住み分けしているのだとか何とか。

 普通に考えて、Tバックは「後ろがT」なのだからbackで「バック」でしょうね。

 >>340なるほど、そうなのですか……無知で申し訳ない

ちなみにTバックの発祥はブラジルの先住民族衣装で、河にいるアンモニアに異常興奮する(=陰部や*に突撃してくる、最悪死ぬ)カンディルという魚から身を守る為という結構マジな理由で生まれたんかやで
んで、リオのカーニバルとかで使われて>>340の理由で世界に広まった
結構女性アスリート(ゴルファーとか)は履いてる人が多いそうな

 イベント終了お疲れさまでした! 改二は隼鷹でしたね、うちの隼鷹は40ですので少々遠き道のりです……家具も色々増えましたね。現状一個しかない家具職人を秋刀魚に使うかジュークボックスに使うか悩ましい>>1です。

 さて、今夜は本編再開です、投下していきましょう。

提督「よし、全員集まっているな」

 次の日、艦娘たちは執務室に集合していた。状況としては初日の着任挨拶と同じだが、彼女たちの表情は一様に明るい。
 ここからが本当の始まりになるのだ、提督はある種の感慨を覚えていた。

提督「諸君らもよくわかっている事と思うが、現在のままでは諸君らに艦娘としての本分を果たすことは不可能だ」

 あえて突き放すように言う。艦娘らも悔しげな表情こそすれ、そこに以前のような悲壮感やあきらめは感じられない。

提督「しかし、私の仮説が正しいとするならば、これは訓練で克服できるものであると考える」

 少女と艦の魂を何らかの方法で結合させ、その時に艦としての知識や艤装の扱いを学ぶのだとすれば、おそらくそれらの知識は艦娘の元になった人間の記憶領域に依存しているはずだ。
 艦娘も人間同様の身体構造を持ち、その生態も人間と同じであるのなら学習する能力だって人間そのままのはずだ。艦娘は艦の要素を持っているとはいえその存在自体は人間とほとんど変わることはないのだから、ある意味当然ともいえるか。

提督「実習に座学と、かなりのハードメニューになるかもしれないが、どうかついてきてほしい」

提督「さしあたっては……」

 そう言って提督はどこからともなく紙の束をとりだし、机に置いた。

若葉「それは……?」

提督「君たちがどのくらい艦娘としての知識があるのか、テストしようと思ってな」

子日「て、てすと……」

 試験が嫌なのは艦娘になっても同じらしい。心なしか祥鳳の表情も強張った気がする。

提督「その後は、一人一人演習場で実践演習をしてもらう。航行方法、戦闘における命中率、反動制御、その他諸々の能力を測定する。改めて自身の能力を見せ付けられることになるが、堪えてくれ」

名取「が、がんばります……」

古鷹「データ取りは大事ですもんね」

提督(データ収集か……)

祥鳳「提督?」

提督「何か?」

祥鳳「いえ……」(今、なんか……?)

提督「それでは、まずは筆記試験だ。確か2階の端に使ってない教室があったな、そこに集合だ」

一同「「はい!」」

 どこか乗り気じゃなさそうな気もしたが、この際無視することにした。

―――――
―――

提督「制限時間は一応1時間に設定しているが、早くできて見直しも終わったものは提出してくれて構わない。もちろん、わからないなら空欄も認めよう。ただし、真面目に解くこと」

提督「特に加古、寝るなよ?」

加古「名指し!? ひっでー」

古鷹「日ごろの行いね」

加古「古鷹までぇ!」

提督「静かに、始めるぞ」

加古「振ってきたのそっちだろ!?」

提督「では始め」

加古「く、くそぅ……」

 紙をめくる音、鉛筆が机をたたく音が響く。ちなみに問題はほとんどが四択や図に書き込むタイプの物を用意し、どれも基本的な問題だ。
 たとえば、陣形の簡略図を出してこれは何と言う陣形か、とか、「図の地点から方○○に距離××、方□□に距離△△、方~に距離――進んだ時到達する地点を図に書き込め」とか、艦種ごとに装備できる武装などなど。
 他にも艦種ごとに問題も用意した。駆逐艦に艦載機について答えさせるのは難しいはずだし、逆に魚雷を積めない空母に雷撃戦を問うのもまた難しいことだろう。

提督(さて、どのくらいの知識を持っているのかこれで多少は把握できるだろうか)

 だんだん鉛筆の音が減っていくのを感じながら、提督は教卓の前に立っていた。

―――――
―――

提督「……ふむ、それまで」

 提督の一言に、教室の空気が弛緩する。何となくおかしくて笑いそうになるがこらえた。

子日「ね、子日……むり~ぃ」

若葉「こ、これほどまでにできないなんて……」

加古「あ~、マジで死ぬ……死ぬほど寝かせて……」

名取「か、加古さ~ん!?」

古鷹「う、うん、何とかなった、かな?」

由良「一杯本読んだし、何とか……」

 それぞれの反応をする彼女らだが、提督は引き締めるように一拍する。

提督「昼食を採った後、ヒトフタマルマル演習場に艤装を装備して集合。実技の試験を行う」

提督「鬼怒、名取には苦労をかけるが、よろしく頼む」

鬼怒「はい!」

名取「が、がんばります!」

初霜「あ、じゃあお手伝いします」

長良「私も!」

名取「お、お姉ちゃんは、ちょっと……」

長良「ちょっとぉ!?」

祥鳳「まぁまぁ……」

 口々にしゃべりながら出ていく艦娘らを見送ると、提督は解答用紙に目を落とした。ざっと見たところだと、流石に満点はいなさそうだ。しかし、鉛筆のペースから考えても祥鳳、古鷹、長良、由良はよく解けているようだ。
 古鷹や由良は資料室で過ごす時間が多く、その手の本もよく呼んでいたのだろう。
 祥鳳や長良はよくわからないが、座学に関しては心配なさそうだ。事によっては彼女らに手伝ってもらうことにもなるだろう。

提督「さて、詳しい採点は後回しだ」

 実技の用意をすべく、倉庫へ向かった。

―――――
―――

sagaじゃなくてsagaやぞー

 本日は以上とさせていただきたく。イベントも終わったので、うちの鎮守府は資材自然回復を待ちつつまったり育成モードに入っております。育成しつつ書き溜め、日がな一日艦これ漬け……良いですねぇ。

 本編はここから訓練モードに入るので、今まで以上に盛り上がりに欠けて来るかと思われますが、どうかご勘弁を……出来るだけがんばります。

 次回の投下も明日の夜ということで、今夜はこの辺で……

 おふ……全角になっとったんか……>>353ご指摘感謝です、お恥ずかしい……

 どうも、リアルが忙しくて今日の分の書き溜めがほとんどない>>1です。いやホントに、申し訳ない……

 少しだけ書いたので、投下します。

~演習場~

 海は静かで風も穏やか、試験結果に大きな影響を及ぼしそうにない良い天候だった。艦娘達は桟橋で艤装を装備した状態で整列している。

提督「それでは実技試験だ。コースを回りつつ砲撃、雷撃をこなしてもらう。とはいえ、艦種ごとに射程距離も違ってくるので、艦種ごとのコースをブイを用いて設営してあるので、そこを回るように」

提督「空母はさらに特殊となる。コースを海図に示したのでこれを見て回ってくれ」

提督「何か質問は?」

加古「はーい」

提督「言ってみろ」

加古「ほら、あたしってさ、航行できないじゃん?」

提督「地上では雷撃は無理だが砲撃は出来る。今回はそれで行く」

初春「一つ良いかの?」

提督「何だ?」

初春「訓練用の魚雷は回収するのが普通だろう、それは誰が回収するのじゃ?」

提督「私が採点のために同行する。回収は私が行おう」

初霜(そういえばこの方は艦娘同様航行できましたもんね)

若葉(一体何者なんだろう)

提督「以上か? では、駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、軽空母の順で試験を行う。まずは初春だ、準備は良いな?」

初春「心得たのじゃ!」

 返事と共に海に降り立つ初春。続いて提督も海面に静かに降り立った。危なげなく立つ姿に驚きを隠せないのは、駆逐艦以外の艦娘達だ。

古鷹「初春達から聞いてはいたけど……」

鬼怒「ほんとに浮いてる……」

長良「冗談じゃなかった……」

子日「すっごいよねーぇ」

提督「では試験を始める。初春、ついて来い」

初春「うむ、皆の手本というわけじゃな」

 並走しつつ、二人はコースへと向かった。

―――――
―――

 本編は以上……くぅ、少ない……次回以降、忙しくなってくるので更新頻度は週に2~3日になりそうです。ネタは尽きてないのでエタる事はないですが、流石に毎日であの量を維持するのは厳しいです。

 そしてこういう時の小ネタ。子日の観察日記を一つ投下して、今夜は終了とさせていただきたく……

『子日、提督観察の日』

~朝食・食堂~

一同「「いただきます」」

 お風呂ができてから、皆でご飯を食べるようになった。みんなで食べる方がおいしくて楽しいから、子日はこっちが大好き!

提督「ふむ、今日もうまいな」

鬼怒「えへへ、ありがと!」

名取「あ、あの……ありがとうございます……」

 提督はいつも美味しそうに名取おねえちゃんと鬼怒おねえちゃんの料理を食べている。実際おいしいから子日も大好きだ。

若葉「子日、今朝はどこ行ってたんだ? 珍しくいなかったが」

子日「ちょっと早起きのだったんだよーぅ」

若葉「そうか……」

 何やら怪しんでいるようだが、これは子日の極秘みっしょん、誰にも知られちゃいけないのだ。

古鷹「提督はきれいにご飯を食べますよね」

提督「美味い飯をきれいに食べるのは当然の礼儀だ」

 提督にはこだわりがあるらしい

その3・提督は食べるこだわり

初春(なんじゃ、あのメモ……)

―――――
―――

 ネタとしては艦娘の成り立ちや、スレの1/3を過ぎても出てこない深海棲艦の正体や、彼らとの戦い、世界滅亡の危機くらいまで用意しています。各キャラのストーリーは結構ありますが、さて、受けるかどうかは……

 ご指摘や豆知識をくださる方々や乙をくださる皆様には感謝を。一人で書くよりもモチベーションが違いますね。より一層精進しますので、これからも宜しくお願いします……

 どうも、なんとなしに瑞鶴50%レシピとか言う胡散臭いレシピを回したら、赤城加賀蒼龍翔鶴その他軽空母などという結果に終わりました。ええ、分かってましたとも……誰ですか50%とか言いやがりましたのは。

 まぁ、それはいいです。今夜も少し投下していきましょう。

 最初の試験は航行だ。ブイとロープが張られたコースを速度を上げて操艦の腕を図る。駆逐艦用のコースは駆逐艦の小回りを試すために複雑なコースになっていた。

提督「では先に行って待つ。号砲を鳴らすので、鳴ったらスタート、ゴールまでの時間を計測する。良いな?」

初春「なるほど、たいむあたっく、ということじゃな」

提督「用意ができたら手を振れ。こちらも用意でき次第手を振る」

 そう言い残して提督はスムーズにコースの外周を回ってゴールまで向かった。おそらく、この鎮守府にいる駆逐艦よりは綺麗な航行をしている。

初春「まったく、提督は何者なのじゃろうか……」

 あの提督がやってきて2週間足らず、まだまだ出会ったばかりと言える時期ではあるが、彼にはなかなかに謎が多い。
 分かっている事は艦娘同様の艦隊運動や戦闘行動ができるということ、足が遅いということ、食事好き、わりとお茶目、そして何より……

初春「妾達を大切に思うてくれておる、ということじゃの」

 目立った性能を持たない初春型の駆逐艦たちは自然と艦隊からあぶれ、使われることもなくこうしてこの端野鎮守府にやってきた。こうして海上に出て誰かに指示を出してもらうということを教えてくれたのは、実はこの提督だったりする。そのことを、彼は知らないだろう。

初春「何も知らぬのはお互いさま、ということじゃな」

 苦笑する初春の視界、向こうの方で提督が手を振っている。用意ができたらしい。
 知らぬことはこれから知ればよい……それも提督が教えてくれたことだ。それが本当かはまだわからないが、これから考えればいいことだ。
 艤装を軽く再チェック、問題なしと判断し、初春は手を振り返して号砲を待った。

―――――
―――

 その後の砲撃、雷撃をこなした初春が戻ると、子日、若葉、初霜の順にそれぞれ試験をこなした。朝の練習に付き合っているということもあり、だいたい把握している通りの結果となった。
 続いての長良だが、

提督「……速い」

 元になった艦はかなりの快速だったのか、提督が全力を出しても追い付くことはかなわず少々難航した。

長良「海の上でも遅いんですね」

提督「傷つくからあまり言わないでほしい……」

 そんなハプニングを交えつつだが、結果自体はかなり良好、むしろ優秀とさえ言っていい結果だった。筆記試験と言い、なぜ長良がこの鎮守府にいるのかいまいちわからない。

提督「次、名取」

名取「が、がんばります……」

 長良の姉妹艦と言うだけあって速度は速い。しかし、持ち前の臆病さからか、長良のような走りとはいかなかった。

提督「さて、次は砲撃なわけだが……」

名取「あの、やっぱりやらなくちゃいけませんかね……」

 ブイに固定した的を狙って演習用のペイント弾を撃つ試験だ。錨である程度固定してある物や、モーターで動いている物など、いくつかの的を指定した弾数打ち込むのが主な内容である。

提督「いつかはちゃんと戦ってもらわねばならないからな、克服してもらいたいよ」

名取「あうぅ……」

 やはり

提督「なにが一番怖い? やはり音か?」

名取「はい、分かっててもあの音は、怖いです……」

提督「そうか、ならこれをつけよう」

 そう言って提督が取りだしたのは大ぶりなヘッドホンだった。重厚な造りで、持ってみると見た目通りの重量がある。

提督「これを無線機につなげば艦隊行動は一応可能だ。砲撃音もかなりかき消すことができるはずだ、試してみたまえ」

名取「こ、これで……?」

 恐る恐るヘッドホンを頭に付ける。少し調整して耳に当たるようにすると、

提督「どうだ、きこえるか?」

名取「え? なんですか?」

提督『この距離の会話も聞こえないなら、砲音もほとんど聞こえまいよ』

名取「わっ、無線機の音はきれいです」

提督『さ、やってみたまえ』

名取「は、はい!」

 そういって、名取は砲を構えた。長良の物とよく似た自動小銃のようなそれを腰だめにかまえて撃つ。
 肩はかなり強張っているし、一発一発がおっかなびっくりなので精度は見るに堪えないが、先日の演習で一発も撃てていないことを考えればかなり進歩したと言えるだろう。
 結局、そのまま雷撃の試験もこなして帰ってきた名取だが、砲撃を出来たという進歩よりスコアの低さに落ち込み気味のまま桟橋に戻って行った。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。腰だめじゃ当たらんだろうなぁとは思いますが、提督が指摘することはありません、これから指導することですから。というか、あの手の銃(?)の構え方ってどう表現していいのかよくわからなかったり。ちょっと調べてみます。

 次回は、おそらく明日の夜いけるかと思われますが、期待はしないでください。遅ければ明々後日ですかね。ではまた……

 どうも、育成したい艦が増えに増え、どれから手をつけたものかと迷うばかりの>>1です。とりあえず雲龍さんを改造するのが目標で、ついでに大北雷巡コンビをハイパーズへ、大淀さんの新グラ回収、浜風浦風の改造を目標に3-2-1を回す日々です。もうひとつ艦隊を作り、こちらでも育成を行う2艦隊3-2-1ローテも計画したり。

 そんな合間に書き溜めたものを、今夜も少し投下していきましょう。

 続いての由良、鬼怒、古鷹は砲撃の反動で転ぶため、初霜や若葉に協力してもらい、背中を支えてもらう形で砲撃試験を行った。ほとんど前線に出たことがないながらも、古鷹と由良は本からの知識でかなりの部分を補えていた。やはり艦娘は学習することでその性能を補えるのだ。
 そして次は加古の番だ。

提督「加古には地上で砲撃の試験だけをやってもらう。航行に関しては先日の演習でわかっている」

加古「うん、なんかごめん」

提督「これから克服していくことだ」

 艤装をがちゃがちゃと鳴らして歩く加古。砂浜におかれた的の前で砲を構えた。

加古「あれを撃ちゃいいんだよな?」

提督「そうだ」

加古「よっしゃ、がんばっちゃうよ!」

 加古、古鷹は腕部に艤装が集中した独特の形をしている。加古は右腕をまっすぐ伸ばして左手を添え、ぐっと腰を落とした構えを取っている。

加古「そらっ!」

 轟音とともに放たれた砲弾は緩やかな弧を描いて飛び、そして、

提督「初弾、命中……だと……?」

加古「へっへ~、次々!」

 驚く提督をよそに、次々と砲撃をしていく加古。初弾命中と行かずとも、即挟叉は当たり前とばかりの命中精度をたたきだした。

提督「波がないから狙いやすいとはいえ、これは驚いたな……」

加古「あたしゃね、やるときゃやるんだよ! 古鷹ー! 見ててくれたー!?」

 重厚な艤装をものともせず元気に手を振る加古、見学していた艦娘達も驚きの表情だ。

鬼怒「ギンバイしたり寝てばっかりだけど、加古さんってすごいんだ」

古鷹「す、すっかり忘れてたけど、加古って砲撃得意だったっけ」

若葉「普段の様子からは想像もつかない腕だな……見習いたい」

加古「お前らねぇッ!?」

提督「ほら、次にいくぞ。祥鳳、準備だ」

祥鳳「はい!」

―――――
―――

 空母は祥鳳しかいないので、実質彼女専用のコースだった。他の艦娘とは戦術が全く違うので、これも特殊な仕様だ。

提督「距離が距離だ、艦載機用の模擬弾もまだ揃ってないこともある。艦攻の雷撃は実弾で行うことを留意してくれ」

祥鳳「はい!」

 航行試験は難なくこなした祥鳳が、大弓に矢を番える。最初は艦爆による急降下爆撃だ。ブイの周りに広げたロープの輪を狙って落とすものだ。

祥鳳「艦爆隊、発艦!」

 キリリと引いた弓から矢が放たれ、光を伴い10数機の艦載機に変化した。いつ見ても不思議な光景だが、これが弓兵式空母の普通なのだ。
 矢は九九式艦爆に姿を変え、しばらく滞空したのち編隊を組んで高度を上げていった。

祥鳳「しかし、提督……まさか水上機まで扱えるとは……」

 艦載機のよる攻撃は目視できない距離での攻撃、第一次攻撃を試すものなので、必然的に着弾を目視で観測することはできないため、提督は水上偵察機を飛ばしていた、自力で。
 軽巡洋艦用の水上機用カタパルトを腕に付けて。これも見事に飛ばしていた。

提督「まぁ、気にするな」

祥鳳「は、はぁ……」(本当に何者なんでしょう……)

 と、ここで艦爆隊が目標を発見した。ブイの周りにロープが展開してある。あれが的だろう。
 空母の艦載機はほとんどは妖精による操作だが、ある程度は艦娘の指示で動くようになっている。この場合の妖精は、いわゆる工廠に働く妖精とは毛色が異なる存在で、人間との意思疎通も不可能な全くの謎の存在であった。

祥鳳「急降下爆撃……開始!」

 高度を稼ぎ、ほぼ的の直上で艦爆が逆落としの体勢を取る。そのまま一気に加速し、海水面へ向けてまっしぐらに突っ込んだ。そして、かなりの速度が出たあたりで、艦爆は腹に抱えた爆弾(の代わりに積んだおもり)を切り離す。かなり高い高度だ。

提督「……これは」

 空中で体勢を立て直す艦爆、その後方で水面に激突したおもりが高々と水柱を上げた。着弾点は、ブイ付近にきっちりおさまっている。かなり高度があったはずだが、止まっている的に当てるとはいえかなりの精度を誇っている。
 艦載機の操作が妖精にゆだねられているとはいえ、その練度は放った艦娘の練度によって変わってくる。つまりは、祥鳳の練度はかなり高いと言える。

祥鳳「ふぅ……次の目標に向かわせます」

 そうして次々と高精度な爆撃を見せた祥鳳は、続く艦攻による雷撃も高い練度を見せ付ける結果となった。長良と言い祥鳳と言い、何故この鎮守府にいるのか本気で分からなくなる提督であった。

―――――
―――


 本日は以上とさせていただきたく。まだまだ単調な展開が続くかと思われますがご容赦ください……どうしてもだめな部分を出していかなくちゃいけないので、間延びする影響をもろに受ける省略組。正直すまん……

 やはり人数とキャラの特徴って大きいですね。天龍田や金剛型がよくつかわれるのか書いてみると良くわかります。しかしめげては失礼にあたるという物、がんばります。

 次回の投下は、おそらく明々後日になります。では、今夜はこの辺で……

 どうも、祥鳳さんねんぷち化に喜びつつも、髪型が間違ってる事に気付き素直に喜べない>>1です。公式ェ…
 影が薄いからって、こんな仕打ち、あんまりです……orz

 まぁいいでしょう、今夜も少し投下しましょう……

提督「ご苦労だった。今日の結果をもとに訓練や授業の内容を決めることになるだろう」

艦娘達「「ありがとうございました!」」

提督「うむ、ゆっくり休んでくれ。鬼怒も名取も、今日の夕食は遅めでいいからゆっくりしてくれ」

鬼怒「いやいや、そう言うわけにはいかないって!」

名取「みんな一杯動いて大変だったし……がんばります!」

提督「そうか、でも無理はするなよ」

鬼怒「はい! がんばっちゃいますよ!」

初春「では今度は妾が手を貸すとするかの」

若葉「なら私も手を貸そう」

加古「あー、んじゃあたしが……」

古鷹「無理するもんじゃないよ?」

加古「またか!? またあたしがオチ要因か!?」

 口々にしゃべる艦娘達は楽しそうに校舎へと帰っていく。片づけは自分でやると言ったが、彼女らも手伝うと言ってきかなかった。その上で食事も料理すると言い出す。
 きっと今まで何も出来なかった反動だろう。出来ることがあって、それが認めてもらえたのだ、張り切りもするだろう。
 ありがたい、そう思う。が、

提督「無理をさせるのは、よくないな」

 無理はしていないだろうが、何だかんだ言っても体に負担がかかるのは事実だ。
 本来、鎮守府でそう言った裏方の仕事はその鎮守府に所属する職員が行うこと。だからこそ艦娘達は戦闘に集中できるのだ。
 それがこの鎮守府は、職員や給量艦娘はおろか、整備員も門の守衛すらいないという最早軍事施設の面影がかけらも残っていない有様である。わかってはいたことだが、このあたりも改善していかねばならない。

祥鳳「提督? どうしました?」

由良「また考え事ですか?」

提督「ああ、まぁ……難しいな、と」

由良「?」

提督「気にするな」

提督「さ、帰ろう。主任妖精が風呂の用意をしてくれているはずだ」

祥鳳「お風呂ですか? やった!」

由良「汗を流すだけならシャワーでもいい気もしますけどね」

 良く笑うようになった祥鳳らについていきつつ、やはり考え事をする提督であった。

―――――
―――

~二階奥・教室~

提督「では、授業を開始する」

 次の日、提督は教鞭をとっていた。昨日のテストの結果を踏まえてはいるが、一応基本的な部分はテストの結果関係なくおさらいという形で授業内容に組み込むことにして、授業内容を構築してきた。
 正直寝不足な上、資料室であれこれあさりながらの作業だったため、古鷹と由良は内容の大部分を把握しているが、我慢してもらうほかない。

提督「今日は基本的なところ、艦娘がなぜ生まれたのかから始めようと思う。この授業で君らの存在意義を再確認してもらえるとありがたい。では、手元のプリントを見てくれ」

 今朝、倉庫の奥に眠っていた輪転機を主任妖精に頼んで修理してもらい印刷したものだ。彼女がいなかったらこの鎮守府は色々と終わっていたかもしれない。心の中で感謝をささげつつ、提督は授業を続けた。

提督「今から20年前、何者かによって貿易船が破壊された」

 当時はテロか某国の陰謀など様々な説がささやかれていたが、それが一遍に覆る事件が起きた。

提督「その数ヶ月後の事だ、大陸の大国の艦隊が謎の生物たちに壊滅させられたのは」

 当時最高の軍事力を誇っていた海軍の艦隊がたった一日で壊滅させられたというニュースは、瞬く間に世界に広がり、全人類を震撼させた。
 これを受けて様々な軍事作戦が展開された。国籍、宗教、人種。それらを飛び越えての戦いになった。
 が、

提督「彼らに通常兵器はほぼ無力、おまけに神出鬼没な上にその小柄さから攻撃を当てるのも一苦労。人類はその版図をみるみるうちに縮めていった」

 彼らを深海棲艦と呼称し、多くの犠牲を払いながらもその成果はあまりにも小さかった。

提督「深海棲艦は陸地を削り取り、海を拡大するという能力を持ち、その力でさらに勢力を拡大していった」

 そしてわずか数年で、人類は陸地の3割以上、人口の4割を失うこととなった。天候や生態系の変化、それによってひき起こされる食料事情の悪化、加えて制海権をほぼ失ったため輸出入もままならず、日本のような島国は貧困の一途をたどった。

提督「これにより、日本から大陸への移住を決めるものも多かった。何せ、陸路は比較的安全ということもあって物流が少し安定していたからな」

 もちろん海を渡る危険は伴うし、言語の壁も厚かったが、それでも大陸に渡る人間は少なくなかった。しかし、その一方で取り残される住民も多かった。現在日本に残っている住民のほとんどはそう言った類の人間だった。

提督「日本は島国だが、深海棲艦は脅威を感じなかったのか太平洋を挟んだ向こうの大陸への攻勢を優先したらしく、そこまでの被害は被っていなかった。その分、深海棲艦の研究をする余裕があったということだ」

 そして、艦娘が登場する。

提督「かつての大戦で沈んだ海軍艦艇の魂を宿した少女が、艤装と呼ばれる艦船兵装を装備し、水上を駆け巡って戦う……そんな当時にしてみれば素っ頓狂な新兵器だった」

 当初、出所不明の兵器なうえ、年若い少女を前線に送りだすということでかなり風当たりの悪いスタートだったが、彼女らは着々と戦果を上げていった。

提督「艦娘の登場により人類側は徐々に反撃を開始していった」

 日本を中心にシーレーンが徐々に徐々に回復していった。メンテナンス出来ずに朽ちていく衛生通信でその技術を世界に発信するも、それを受け取った国があったかどうかは、通信網がほとんど機能しない今となっては確認するすべはない。
 が、後になって大陸伝いや遠征に出る艦娘達の証言により海外製の艦娘の存在が確認されていた。

提督「現在は確保した数少ないシーレーンを死守しつつ、深海棲艦との小競り合いを続けている……という状況だ」

提督「以上が、深海棲艦と艦娘の大まかな歴史だ。これらはまぁ、一般常識程度だと思う」

提督「ここまで、何か質問あるか?」

初春「一ついいかの?」

提督「なんだ」

初春「妾達は何気なくここにおるわけじゃが、艦娘はどのようにして生まれたのじゃろうか?」

初霜「そういえば、私は自分が浮いたり連装砲とか扱える理由って……しらないですね」

由良「ええと、なんか艦の魂が人の魂と結びついて、肉体に影響がどうとか、えーっと……」

提督「ふむ……鬼怒、電子レンジの使い方は分かるな?」

鬼怒「ふぇ? うん、いっつもつかってるからね」

提督「ではその電子レンジがいつどこでだれに作られ、なぜ温度を上げることができるかを説明できるか?」

鬼怒「……ちょっと、分かんないかな……」

提督「そういうことだ」

加古「ど、どいういことだ?」

提督「原理やその原点を知らずともそれを使いこなしているということは多いと言うわけだ。ちなみに電子レンジは温める物の含んでいる水分子を振動させることで温度を上げている……だったかな。誰がいつ作ったかは知らん」

提督「まぁ、そういうもんだ。ただ違うのは、調べたら分かる電子レンジに比べて、艦娘に関しては調べてもわからない、いや、調べようがないというべきか」

由良「ど、どういうことですか?」

提督「それに関してはまたにしよう。では、これから配るプリントで文章の穴埋めをやってもらう――」

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。しかし、なんですかねこの超☆設定大放出はww 授業という形で>>1の妄想を大放出する形となりました。読みにくいかと思われますが、ご容赦ください……

 電子レンジの下りはあえて調べずに>>1のうろ覚え知識で書きました。うろ覚え感を出したいがための演出ですので、間違ってたらごめんなさい。

 しかし全員集合のシーンはやはり配役が難しいですね。今回は祥鳳さんと名取、子日、若葉が犠牲になってます。そして加古のオチ要因としての使いやすさ……難しい……

 さて、次回の更新はおそらく月曜日になるでしょう。筆が走れば、もしかしたら明日の夜になるやもしれません。

 では、今夜はこの辺で……

 エヴァQ見てたら遅くなりました、>>1です。相っ変わらず良くわかりません。録画したのでもう一回ゆっくり見ます。(ついに艦これの話題じゃなくなるこのww)
 
 今回は設定垂れ流しは無しですので、艦娘達の姿を眺めてお楽しみください。では、投下しましょう

~演習場・桟橋~

 昼食をはさんで、午後。座学を午後に回すと確実に眠るのが約一名いるのと、午

前に体力を使うとやはり座学で寝るのが約一名いるので、実技は午後に回すのが妥

当だと判断していた。

加古「……何だろう、どこかですごく馬鹿にされた気がする」

由良「あり得ない話じゃないわね。ここ、落ちこぼれしかいないし」

 苦い表情で由良が言う。それを受けて提督もうなずいた。

提督「せめて一人前の一歩手前までにはなってもらうつもりだ。さて、その第一歩

だが、まずは航行の練習ということになる」

祥鳳「まず海上を移動できないことには、艦娘の本分は果たせない、というわけで

すね」

提督「そういうことだ。加古は特別プログラムを用意してある。覚悟しろよ?」

加古「うえぇ……」

提督「他のみなは、午前の座学で教えた航法をまとめたプリントをラミネート加工

したものを配るのでそれを参考に練習してもらう」

若葉「一体どこからそんなものを……」

主任妖精「倉庫の奥にあったのを、またあたしが直したんだよ……ったく、妖精使

いの荒いことで」

 元は学校ということで、やはりその辺りの道具の揃えは良かった。なぜ打ち捨て

られたままだったのかは不明だが、あるならありがたく使わせてもらうということ

だ。

提督「彼女らが怪我なり何なりで忙しいより遥かに良いだろう?」

主任妖精「……まぁ、そうさね」

提督「では、班に分かれて練習してもらう。班長は古鷹、長良、由良で、この表の通りに集まって祥鳳の指示に従いながら練習してくれ。艤装や自分自身の調子が悪い場合は祥鳳、もしくは主任妖精に申し出るように」

艦娘たち「はい!」

提督「では開始だ。加古はこっちだ」

加古「う、はーい……」

―――


 明らかにテンションの低い加古を連れて、班ごとに分かれていく祥鳳たちと少し離れた場所に出る。

提督「さて、まぁそう気を落とすな。練習すればどうにかなる……多分」

加古「た、多分て……」

提督「午前にも言ったが、君らの成り立ちや構造は謎に包まれている工廠の整備妖精すら完全に把握していないんだ、憶測でやるしかないのだよ」

加古「お、おう……」

提督「まずは水面に浮くところからだ。私に続いて降りてきなさい」

 そう言って、提督はまた軽やかに水面に着水した。いつ見ても謎な光景だと、加古は内心首をかしげる。

加古「う、うっし」

 気合を入れつつ、桟橋に腰掛けて恐る恐る水面に足を付けた。何とも形容しがたい感覚があって、そのまま体重をかけると、

加古「よっしゃ、浮いた」

提督「うむ、やはり浮くことはできるか」

加古「な、なんとかな……足、プルプルするけど……」

提督「そうだな、まずは水面を滑る感覚を身につけようか」

 そう言うと、提督は加古の両手を取った。いきなりの事についあわてる加古。

加古「ふぇいッ!?」

提督「ど、どうした?」

加古「い、いや、いきなりでびっくりしただけ、うん、大丈夫」

提督「あ、すまん」

加古「いいって、気にしない気にしない」

 い、いきなり異性の手握るか普通……まったく、柄にもなくどきっとしちまったじゃねぇか……
 すぐに落ち着いたものの、流石に焦った。手に汗がにじんでいないだろうか。そう言うことを気にするようなことは今までなかったが、この提督には妙に調子を崩される。気をつけねば……

提督「そうか? ではこのまま私が引っ張るので、しっかり握っておけよ」

加古「おう、曳航ってやつだな」

 そう言って、提督は器用に後ろ向きで水面を進み始めた。艦なら当然できることではあるが、やはり普通の人間にしか見えない提督がやると何か違和感しかない。
 まぁ、あたしらも見た目はただの人間なんだけどさ。

提督「大丈夫か?」

加古「今んとこ問題ないぞ」

提督「では少しスピードを上げるぞ」

加古「す、少しだけな?」

提督「分かった分かった」

 苦笑する提督。よくよく考えたらこの格好、傍から見ればスケートを教わっているような光景だ。なんとも間抜けな光景だろう。腰は引けてないだろうか、足は震えてないだろうか、考え始めると妙に恥ずかしくなってくる。
 あっれぇ? あたしってこんな乙女だったっけ? そう言うのってどちらかって言うと古鷹の領分じゃない?

提督「おい? おい、加古? 大丈夫か?」

加古「お、おおう! だいじょぶ! 大ジョブだから!!」

提督「あ、こらあんまり乱すな!」

 動揺したせいか提督の舵がブれ、つられて加古も蛇行を始めた。提督の動きに振られる形なので、そのまま加古が振りまわされる。

加古「うおわあああああ!?」

提督「ええい、このっ、止まれっての! ちょ、うわあああ!?」

 耐えきれなくなった加古がバランスを崩して倒れる。引っ張られるようにしてそのまま提督も倒れた。
 派手な水音を立てて二人が水面に体をたたきつける。どういうわけか、艦娘達はその力を失い轟沈するまで海水面の上に浮くことができるので、沈むことはない。

加古「い、いててて……」

提督「だ、大丈夫か?」

 加古に引っ張られるようにこけた提督はそのまま彼女に覆いかぶさるような体勢で倒れていた。

加古「お、おう。艦娘は轟沈しねぇと海に沈めないからな」

提督「それは分かっている、が……」

 加古の様子を確かめようとした提督の動きが止まる。
 艦娘は轟沈しないと海水には沈まない……沈まない、が、

加古「どうした、ていと、く……」

 服は、濡れる。

提督「あ、えっと、その……悪い」

 ぎこちない動作で加古から離れる提督。加古も身を起こした。


加古「あ、あッ……」

 普段の加古なら気にすることもなく「事故」だと一笑に付したかもしれない。が、今回は少々色々と重なり過ぎた。
 加古の顔はみるみるうちに赤くなり、そして、

加古「ぴぃやあああああああああああああッ!?」

 悲鳴を上げ、艤装の限界を超えんばかりの勢いで沖に向けて全力航行していった。

提督「…………」

 他の艦娘達も何事かとこちらを見ている。取り残されるは水面にぺたんと座りこむ提督だけだった。
 なお、この後自力で戻れなくなった加古が沖合まで古鷹たちに迎えに来てもらうのはまた別の話である。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。赤面して奇声を上げちゃう加古とか、ありそうでなかった感じを出してみましたが、いかがでしょうか? >>1が書く地の文は心の声とナレーションが入り混じるので読みにくいかと思われますが、私の癖なので我慢してくださると幸いです。

 そう言えばむっちゃんのアニメデザイン出ましたね。むっちり太ももにエロスを感じたのは私だけではないかと思われます。

 あと、昨日言ったきゅんきゃらですが、加古鷹もいるのでちょっと狙っていこうかと思います。祥鳳さんは、まぁ、別バージョンということで心の折り合いをつけました。

 さて次回ですが、おそらく月曜日になります。忙しいと時間が撮りにくいですね、辛いところです。では今夜はこの辺で……

火曜なんだが

 申し訳ない、遅くなりまして>>1です。昨日はつい寝落ちしまして……ともかく、書いたので投下していきましょう。

>>422
いやはや申し訳ない

加古「へぇあっくしょんッ!!」ズビッ

主任妖精「あー、うん、風邪だなこりゃ」

 翌日、加古は風邪で寝込んでいた。
 ずぶぬれのまま猛スピードでかなりの距離を走り、沖で風にさらされて立ちっぱなしだったのに加えて、艤装で水上を走ったことがないのにいきなりあんな速度を出したものだから体調を崩した……というのが主任妖精の診察結果だ。

主任妖精「安静にしてりゃ明日には治るだろうさね」

古鷹「妹が迷惑をかけます」

加古「う"ぅ、ずまねぇ」

 加古は申し訳なさそうに布団に顔を埋める。誰にも話していないが、暴走の原因はあくまで恥ずかしかったからだ。余計に恥ずかしい。顔が赤いのが熱でごまかせるのが幸いだ。

主任妖精「提督にゃあたしから言っといてやるからゆっくりしてな」

 そう言い残すと主任妖精はさっさと部屋を立ち去った。

古鷹「もう、艦娘が海水にぬれて風邪ひいたなんて洒落にならないじゃない」

加古「うー、だから済まないって言ってるだろぉ」

古鷹「……なんか、弱気な加古ってのもめずらしいね」

加古「うるさいなぁ」

古鷹「で、結局何があったの? いきなりあんなスピードで飛んでっちゃったけど」

加古「な、何でもないんだよぉ……」

 さらに布団に埋まる加古。
 なんだろう、加古がいつになくかわいく見える……こんな加古は初めて見た。これはいわゆる、

古鷹「乙女モード?」

加古「ばッ!? そ、そなんじゃなッげほっげほっ!」

古鷹「わわ! 大丈夫?」

加古「ったく、変なこと言うなよなぁ……」

 せき込む加古をなだめつつ、古鷹は内心意外な気持ちだった。
 あの加古が乙女モードとは、一体何をしたというのかあの提督は……考え出すと気になって仕方がない。

古鷹「ね、加古。何があったのか教えてよ」

加古「…………恥ずかしいからヤダ」

 恥ずかしいからヤダ!? 加古が? 女の子らしい恥じらいなんかほとんどなかった加古が、恥ずかしい! これはますます聞かねば!

古鷹「提督と何かあったんでしょ? これからのこともあるしお姉ちゃんに相談してよ」

加古「こういう時に姉面は卑怯だろ……」

古鷹「艦としても人間としても私の方がお姉ちゃんじゃない」

加古「そーだけどさー……」

 あー、とかうー、とか言いながら言い渋っていた加古だがしばらくすると、

加古「マジで恥ずかしいから内緒だぞ?」

古鷹「うん、お姉ちゃん嘘つかない」

加古「本当だろうなぁ……」

 疑わしげに眼を細めつつ、加古はポツリポツリと状況を話し始めた。

―――

加古「……と、まぁ、そんな感じだよ。うー、思い出すだに恥ずかしいぞ……」

古鷹「…………」

 古鷹は、驚愕した
 そ、そんな……加古が、手をいきなり握られて押し倒されて透けた下着を見られて、それが恥ずかしくて暴走しちゃうとか……
 加古が……加古が……

古鷹「かわいいー!」

加古「ふぁ!?」

 がばっと古鷹が加古に抱きついた。あまりにいきなりな展開に目を白黒させる加古。

古鷹「そっかそっかー、加古がねー」

加古「おい馬鹿離せよ! あー、もう話すんじゃなかったー……」

 諦めたようにぐったりする加古にくっついて古鷹は思う。
 艦娘になると、なる前の記憶は曖昧になってしまうこともあってか、艦娘は一般的に男慣れしていない。
 そして加古のようなもとの性格がサバサバした艦娘が放置されて異性と交流が無いとそのあたりを意識しない、恥じらいも何もない娘となり果てるといううわさもあって姉としてはそれを危惧していたのだが。

 あの提督はそんなものも変えていってしまうんだ。意識的ではないのだろうけども、だからこそきっといい人なんだろう。それは彼の技術ではなく持ち味だ。
 だから、きっと信頼できる。

古鷹「うん、よかったよかった」

加古「何がだよ、ったくー」

古鷹「だから、よかったの」

加古「わけがわからん・・・」

 そうやって、加古が寝るまで古鷹はずっと加古にくっついていたのだった。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。そして加古鷹無双、流行れ。

 そして遅れたわりに投下量の少ないというこの……うむ、がんばりたいと思います。

 次回は明日か明後日になるかと思います。順調に艦娘達の高感度を上げていく形になりそうですな。さて、次は誰にしようかなー

 どうも、雲龍改装出来ました、>>1です。機種転換しようと思って調べてみれば五航戦編成任務の後との事。瑞鶴ェ……とにかく今度は飛龍71を改二にすべくがんばります。浜風も改装出来ましたし、ちょっとずつです。

 では、今夜も少し投下してきましょう

提督「加古は感冒で事故か……」

 一方その頃、提督たちは午前の授業を始めようとしていた。

提督「今回の内容は由良、悪いが二人の分のメモとかも取っておいてくれ」

由良「任せて下さい」

提督「よし、それでは授業を始める。今回はまず、鎮守府の歴史について話そうと思う」

提督「鎮守府というのはもともと旧大戦中、海軍の根拠地として艦隊の統括のために置いた機関だ。まぁ、そのあたりは私より君らの方が詳しいかもしれんな」

 敗戦と同時に政府や軍は解体され、鎮守府もその役を終えて姿を消した。しかし深海棲艦の出現と艦娘運用にあたって、その名前をもう一度歴史に刻むことになる。

提督「港としての立地も良かったこともあって、鎮守府はかつての旧海軍ゆかりの地に作られるのが普通だ。横須賀、呉、舞鶴、佐世保なんかが有名なところだろう」

 制海権がもう少し安定してくれば国外にもその規模を拡大するという計画もあり、ラバウルやリンガなどがその候補として挙がっている。

提督「その一方で、まぁここのような鎮守府もあるわけだが……まぁ、例外だ」

 補給物資を届けるにも砂浜には補給船は近付けないので、旧陸軍の使用していた大発動艇を借りて搬入を行うという面倒極まりない方法をとっているという。数日後には到着するとのことだから、また大変になるのだろう。

提督「そう言った土地に鎮守府が設置されたのは、君らの中にある艦の魂が落ちつくからとか何とか……よくわからん。その理論で言うならここは何なんだという話になるからな」

若葉「落ちこぼれは扱いが悪いという典型例だな」

提督「……一応言っとくが、自分らの事落ちこぼれとか言った奴は次から一回ごとに校舎周り10周だからな、艤装に重量級武装ガン積みで」

名取「ええっ!?」

提督「確かに君らは落ちこぼれで、まともに艦隊運用に組み込まれないような艦娘だ、残念ながらな」

 目を伏せる提督。自覚している事ではあるのだろうが、やはり他人の口から聞くのは答えるようだ。空気がまた重くなる。

祥鳳「………」

提督「だが、落ちこぼれで終わらせないために、今私はここにいる。なぜ私がここへ配属されたかはわからないが、今はそう思っている」

 艦娘達を見まわして、提督は続ける。
 
提督「私がいる限り、君らがいるこの鎮守府を、このどうしようもないちゃちな鎮守府を、ただの落ちこぼれ収容所などと思わせたくない、だから君らも思わないでくれ」

鬼怒「提督……」

提督「まぁ、そう言うことだ。さ、授業を続けよう。今度は――」

―――――
―――


古鷹「へぇ、提督がそんなことを……」

 午後、艦娘達は実技演習のために艤装倉庫で装備を付けていた。加古が眠ったのを見計らって古鷹も合流している。曰く、一度寝たら基本的に起こすまで起きないとのことだ。

子日「提督、かっこよかったよーぅ!」ネッノヒーィ!↑↑↑

由良「ちょっとドキッと来ちゃった……ちょっとね?」

鬼怒「ああいうこと大真面目に言えちゃうのがまずすごいよねぇ」

 がちゃがちゃと騒がしいのが、目に見えてテンションが高いのと相まって余計ににぎやかだ。もっとも、それを悪く思う艦娘はいないのだが。

初霜「私たちのいる鎮守府を、タダの落ちこぼれ収容所だと思わせたくない、か……」

若葉「何回目だ……まったく、そんなに嬉しかったのか」

初霜「若葉だって、顔がゆるんでますよ」

若葉「んなッ!? そ、そんなわけあるかッ!」

初春「真っ赤にしよってからに、愛い奴よのう」

若葉「うぬぬ……お前らなぁ!」

祥鳳「わーわー! 艤装倉庫で暴れちゃ危ないですよ!?」

 あわてて止めに入る祥鳳も、やはり笑っている。いつもどこか愁いのある顔をしていた祥鳳もこうなんだから、加古がああなるのも無理はない、そう思う古鷹だった。

名取「あ、あの……早くしないと遅刻しちゃいますよ……?」

長良「あ! いけない!」

古鷹「急がないと重装備ランニングかもよ!?」

子日「それはやだぁー!」

 あわただしく出ていく艦娘達。今日もまた訓練だ。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただく。日に日に投下量が減ってる気がする……まずいですねぇ、早いこと深海棲艦出してやりたいんですが、何しろまだまだ訓練ができてませんからねぇ。まぁ、どうにかなるでしょう。

 瑞鶴は一体いつになったら来てくれるのやら……今日も色々回したら加賀さんやらづほが出ました。いや、瑞加賀好きだけどあなたじゃないの……瑞は瑞でもあなたじゃないの……瑞々……おっと、これは薄い御本でしたか、失礼失礼……

 次回は、多分日曜日ですかね。うー、ネタはあるのにそこにたどり着くまでが存外長いぞ

 どうも、最近3-2-1にしか行ってない気がします、>>1です。3-5実装も、キス島越してないのでまだ見ぬ世界ですorz 駆逐艦まだちゃんと育ってないんや……あとタービン。電探はレア艦たちが改装で持ってくるのでそれなりに揃ってるんですがねぇ

 さて、今夜も少し投下していきましょう

提督「艦隊運動、始めッ!」

 桟橋から飛んだ提督の号令で、一斉に動き出す艦娘たち。古鷹を先頭として、由良、名取、子日、若葉、初霜の6人の標準的な人数の艦隊だ。

提督「両舷前進原速」

 艦隊がゆっくりと動き出す。滑り出しは順調そうだ。このあたりは座学の成果が出ているところだろう。しかし、ここからが本番だ。

提督「両舷前進原速、黒15」

 主機の回転数を上げて加速させる。艦娘達はちゃんと反応して合わせてきた。互いの距離もちゃんと一定を保って進めている。

提督「両舷前進原速、赤5」

 続いて、減速させる。

提督「両舷前進強速!」

 一気に加速させる。急なスピード調整にも今のところ順調についてきていた。

提督「第一戦速! 方三!」

 そして戦闘速度まで上げ、続いて方向を変える。連続の指示に少し乱れが出るが、まだまだ許容範囲内だ。

提督「Q方、続いて方一、方三、二方、斉130!」

 細かく指示を連続して出す。意図して少し意地の悪い指示を出したが果たして……

古鷹「うっ、くぅッ!」

若葉「三、Q、一、三……」

名取「えっと、えっと、ふわわわわあああ!?」

子日「うぇえ!? きゃあああああああ!」

初霜「子日ちゃん!?」

若葉「おい馬鹿ッ、うわあああ!?」

 バランスを崩した名取がその場で転倒、後続の子日と若葉が巻き込まれ、最後尾にいた初霜はどうにかこれを回避したが、

子日「いったーぁい」

若葉「くっ、水が……」

名取「ご、ごめんなさいぃ……」

 こけた三人は全員ぬれ鼠になってしまった。流石に難しい指示をし過ぎたかと反省しつつ助け起こそうかと桟橋から足をおろそうとした時だった。

初霜「だ、大丈夫ですか!?」

 呆けていた初霜がいきなり名取に駆け寄り、あっという間に立たせてしまった。

名取「ふぇっ? あ、あれ、いつの間に立ったんだろう?」

 言っている間にも初霜は子日と若葉も立たせてしまう。目にもとまらない、素晴らしい手際だ。

子日「あれれぇ?」

若葉「お、おお、痛くない?」

初霜「ふぅ……皆さん怪我もなくてよかったです」

提督「なかなか素早いな」

 ここでようやく提督が到着した。初霜は心底安心したような顔をしている。普段のおっとりした雰囲気からは想像もつかない素早さと手際に提督もただ感嘆するのみだ。

初霜「えへへ……つい、体が動いちゃいました」

古鷹「そういえば、初霜は人を助けずにいられない体質だったね」

提督「ああ、そう言うことか」

 大戦中の艦としての初霜はさまざまな海戦に参加してなおかつ生き残り続け、その戦いの中で様々な人や艦を助けて行った経歴がある。その艦歴と戦歴だけなら、かの幸運艦として名高い雪風をしのぐ歴戦の駆逐艦だ。
 艦娘の性質や性格、趣味、思考はその艦の持つ経歴や特徴を少なからず反映するといわれており、今のもおそらくそれだろう。

初霜「私はいっぱい戦うよりも、一人でも一隻でも多くの船を助けたいって……そう思うんです」

 照れくさそうに言う初霜。そうか、とうなづいた提督は彼女の頭に手を置く。

初霜「わわっ」

提督「いいことだ。だが無理はするな。それで君が沈んでも悲しむ者がいることを常に忘れず、自分の身を守れるようになりなさい」

初霜「は、はいっ! がんばります!!」

提督「うむ、がんばりなさい。さて、一度戻ろうか。交代の時間だ」

 しきりに頷く初霜にほほえましい気持ちになりつつ、手を離すと桟橋へ帰っていった。

若葉「あの提督は、言うだけ言ってどこか行くよな」

初霜「そうですね……でも、何かカッコイイです」

子日「おとこはせなかでガナル?」

古鷹「がなってどうするの……語る、だよ?」

子日「ほぇ~?」ネノヒィ?

名取「と、とにかく戻りましょうよ」

子日「はーい!」

―――――
―――

提督「……ふぅ」

 夜。広い風呂で手足を伸ばしてゆっくりするのは至福の一言に尽きる極上の瞬間の一つだ。疲れが全身の毛穴から吸い出されていくような錯覚にしばし浸る。
 今日も午前は座学で教鞭をとり、午後は実技で航行練習だ。風邪を治して復帰した加古は相変わらずまともに航行できないが、あの暴走の一件以来何か掴んだのか浮かぶだけならもうよろけたり力んだりすることはなくなったし、全員航法の基礎はだいぶ定着してきた。来週には戦闘訓練に移っても問題はなさそうだ。

提督「やれやれ、やることは山積みかぁ……」

 改めて自分のやっている事の大変さを自覚する。これは本来提督の仕事ではなく、ゆえに今まで士官学校で学んできたことのほとんどはあまり役に立たない。艦娘とは提督の元についた時にはすでに戦い方を覚えているのが常識なのだから、当然といえば当然である。
 練度が低いだけの駆逐艦たちはともかく、そうもいかないのもいる。実戦に出したらたちどころにやられてしまうに違いな、そんな危なっかしい艦娘達だ、ここが辺境の敵が来ない海域で本当に良かった。
 何とはなしに上を向く。少し高い天井と、隣の女湯との仕切りが見えた。屋根付近は仕切りがないので向こうでにぎやかに入浴を楽しむ艦娘達の声が聞こえてくる。みな元気なようで一安心。

提督「さて、と……うっ」

 湯船を出ようと立ちあがったところで立ちくらみが来た。風呂上り特有のものだろうか、しばらくするとおさまり、問題なく平衡感覚が戻ってくる。

提督「いかんいかん、これでこけたらえらい目にあう」

 つるっと滑って前にこけ、そのままモノが床と体に挟まって死にかけたというトラウマモノの記憶が思わず背筋を冷やした。

提督「まったく、目の覚める話だな……」

 脱衣所に出て体をふき、寝巻代わりの運動着を着て外へ出る。これもあまり数が無いので着回しが大変だ。そういえば艦娘たちはそのあたりをどうしているんだろうか。そこも考えないと……

提督「あ、そうだ、あれもたのま、ない…と……」

 ふっ、と。
 唐突に意識が遠のく。あ、マズイと思った時にはもう体は倒れ伏していた。とっさに手が出たので体や頭が打ち付けられることはなかったが、それ以上体が動く気配はない。
 これは、どうしたものか……少し、がんばり過ぎ、た、か……

??「あれ、提督? 提督!?」

 誰かが呼んでいる気がするが、もう提督にはそれが誰だか分らなかった。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。この辺筆が乗ってたのでかなりスピードあげた書いたため、誤字脱字やらが心配です……確認しろというこの

 育成したい艦が多くて困りますなぁ。とりあえず蒼龍飛龍改二を目指しつつサブ育成にここでの登場艦娘を育てていくことにします。しかし、鬼怒が捕まらない。うむぅ、これ書こうと思うずいぶん前に図鑑登録できたので満足して改装に回して以来、出てこないんですよねぇ

 次回は明日の夜になる予定です。このあたり一気に書いたんで連日投下もできますよ! ではまた……

 どうも、鬼怒狙いでレア艦レシピ回しました、阿武隈でした……お前じゃないんだよ……>>1です。艦の狙い撃ちは難しい、はっきりわかんだね。

 今夜も少し投下していきましょう。と言っても大した展開にはなりませんが

提督「……ん、おぉ?」

 次に感じたのは柔らかな布の感触だった。察するに布団に寝かされているようだ。若干カビ臭いこの布団は、多分いつもの自分が使っているあの布団だ。ということはここは宿直室だろうか……

祥鳳「あ、気がつきましたか?」

 声を聞いて首を横へ向けると、祥鳳が安心したような顔でこちらを見ていた。

提督「祥鳳……俺は?」

祥鳳「過労だそうです。最近、全然寝てなかったんじゃないか、とは主任妖精さんの談ですが?」

提督「それは……正直すまん」

 このところ連日の授業のために寝不足の日が続いていた。加えて授業のために前に立ち、海に出てしていれば疲れはおのずとたまるという物だ。

祥鳳「ホントですよ」

提督「う……そ、それで俺はどれだけ寝ていたんだ?」

祥鳳「そうですね……ざっと、12時間くらいですか」

 頭の中で計算する。風呂に入ったのが18時だったから、今はもう朝の6時ということになる。

提督「まさか、ずっとここに?」

祥鳳「秘書艦ですから、当然です」

提督「そんな無理をするなと」

祥鳳「言えた義理ですか?」ニッコリ

 笑顔で言う祥鳳は少し怖い。心なしか言葉の端々にとげを感じる。恐る恐る、聞いてみた

提督「……怒ってる?」

祥鳳「はい、それはもう」

 きっぱりとした返事が返ってきて思わず肩をすくめる。

祥鳳「……ですけど、もっと怒りたそうな人がいるので私は我慢します」

提督「え、それはどういう……」

 聞こうとしたところで、部屋の扉が控えめにノックされた。

祥鳳「ふふ、来ましたね。どうぞ」

初霜「あの、失礼します……あ」

 静かに扉を開いて入ってきた初霜は、目を開いて自分の方を見ている提督を見つけてしばしかたまり、

初霜「あ……提督……!」

 じわっと、目に涙をためて駆け寄り、

初霜「て、提督ー!」

 そのまま飛び込んできた。

提督「ごふぁっ!?」

 小柄とはいえ人一人だ、思いっきり腹に体重が掛かってまた意識が飛びかける。

提督「は、はつし、も……か?」

初霜「もう、提督のバカバカバカバカバカバカバカバカバカぁああああ!」

提督「お"ぅっ!?」

 普段の初霜からは考えられない様子に面喰う提督。初霜はそんな提督にかまうことなく両こぶしでポカポカと力なく提督をたたく。

初霜「人を助けても自分が無事じゃなきゃ意味無いって、自分で言ったんじゃないですかぁ!」

提督「あ……」

 それも、つい数時間前だ。

初霜「なのに、なのにっ、じっ、自分がぁ……じっせんできでな"ぐでぇ……ひっく、ふえええええ……!」

 泣きじゃくりながら、両手の動きは次第に小さくなっていく。布団越しでは全く痛くないが、芯に響く痛みが体に抜けて来る。

初霜「ひっく、お、お風呂がら出て、提督、たっ、倒れ"ででぇ……す、ずっごくじんばいじたんですがらぁああああああああ!」

提督「そうか、君が助けてくれたんだな」

 最後に聞いたのは初霜の声だったらしい。

祥鳳「初霜さんの声を聞いて出てきた時、提督を必死に担いで、どこに連れて行けば分からないのにとにかく助けないと、って、もう泣きそうになりながら、でも泣かずにがんばってたんですよ?」

提督「……そうか」

 申し訳なさとばつの悪さで今すぐ消え入りたい気分だ。偉そうなことを散々言っておいてこの様、恥ずかしいことこの上ない。取りすがって泣く初霜に声の一つかけられそうもなかった。が、

祥鳳「……提督」

 祥鳳が頷くので、提督は初霜に手を伸ばした。

提督「初霜、ありがとうな」

初霜「でーどぐぅ……」

 よく寝たおかげか体は軽く、むしろ良好だった。だから上半身を起こして、くしゃくしゃになった顔を向ける初霜の頭をなでて言う。

提督「ごめんな、心配掛けた」

初霜「っ! うわあああああああああああ!」

 かじりつかん勢いで飛びついて来た初霜を今度こそ受け止めて、頭をなでてやった。彼女の泣き声が、自分の中でとことん叩いてくるのを甘んじて受け止めて、泣きやむまでずっとそうしていた。

 そして、泣きやむ頃には、泣き疲れたのかそのまま眠ってしまった。

提督「……やれやれ」

祥鳳「あなたがいえた口ですか?」

提督「い、いや、自分がだよ、自分が!」

 ジト目にあわてる提督に、祥鳳はくすりと笑って

祥鳳「ふふ、冗談です。十分に反省してくださいね」

提督「うん、すまん……この調子じゃ、今日明日は授業何かさせてもらえそうにないな」

祥鳳「あたりまえです」

 語調も強くぴしゃりと却下されて思わずへこむ。

提督「ぬぅ……と、とにかく初霜を寝かさないとな」

 ぎゅっと提督の服を握った初霜を離そうとしたが、

提督「ん、これは」

初霜「ゃ、やぁ……」

 離そうとすればするほど強く握って離す気配はない。これには困ったように頭を掻くしかない提督だ。

祥鳳「ふふ、起きるまで初霜さんのこと、よろしくお願いしますね」

提督「はぁ……罰だと思って甘んじてうけよう」

 幸いあまり暑くない季節だ、くっついていてもあまり差支えはないし、どうせ今日は布団の上から動かしてもらえそうにもないのだからと頷いた。が、

提督「あ、でもトイレ……」

祥鳳「…………」

提督「…………」

祥鳳「……がんばってくださいね?」

提督「あ、こら祥鳳! 待て! おい、おいていくなぁ! あ、言っている間に尿意が……尿意がぁ!!」

初霜「んぅ……てぇとくぅ……」

 大騒ぎする提督をよそに、初霜は幸せそうな寝顔でギュッと提督を離そうとしなかった。
 その後、尿意をこらえる提督と幸せそうな初霜を見てそのギャップで見舞いに来た艦娘達が笑い転げ、のちにそれを聞かされた初霜が真っ赤になるのも、さらにその後、我慢しすぎて別の意味で体を壊しかけ、初霜が提督に泣きながら謝り倒すことになるのも、それらはまた別の話である。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。取りすがって泣きじゃくる初霜なでなでしたいんじゃ~(^ω^)

 初霜って戦歴だけ見たら立派な主人公ですよね。何ともレスキュー魂燃えたぎるセリフがカッコイイですよねー……なんでこんなに地味なんだorz

 さて次回の投下は明日の夜ですかね。皆様も隊長にお気を付け下さいね。当方、秋の花粉症で目がアレな事になっておりますが、元気ですww ではまた……


最近飲んだくれの工廠妖精が(圭)に思えてきた

 どうも、提督の裸人気に驚きを隠せない>>1です。そんなに……提督の裸を見たいのか……あと>>472宇宙最強のエンジニアは石村にお帰り下さい、攻具(誤字ではない)で深海棲艦を切り刻む様とか見たくないですww

 本日も少し投下していきましょう

提督「ん、朝か……」

 提督が倒れた次の日。目が覚めたのは、いつもの癖で長良の早朝ランニングの時間だ。とはいえ昨日の今日だ、走りに出れば可愛い鬼が捕まえに来るだろう。また泣きじゃくられても困るので、今日もおとなしくしておくことにした。

提督「…………」

 コチコチコチコチ…――
 古い時計が時間を刻む音だけが宿直室に響く。静かすぎて耳鳴りがしてきそうだ、いやそんなことより、

提督「眠れん」

 布団をのけて上体を起こした。昨日はそれなりに大騒ぎだったがほとんど布団の上だったため、全く眠たくない。しかも提督は体内時計がはっきりしている方なので、一度起きると満腹になるか夜になるまで基本的に眠たくならないから余計だ。

提督「……本を読むくらいは、構わないよな……」

 誰に言い訳しているかはともかく、提督は布団を抜け出すと制服に着替えて適度に着崩し、宿直室に持ち込んだ資料に目を通し始めた。が、

提督「……なんだろう、頭に入らん」

 すぐに閉じてしまった。今日は調子が悪いらしく集中力も持たない。なんとも面倒な調子だ、提督は思わずげんなりする。しかし起きているのはせいぜい長良くらいだろうが、ランニングの邪魔をするのもよくないから声をかけに行くのも気が引ける。

提督「あ"ー、暇だぁー」

 私物は最低限しか持ち込んでいないので、暇をつぶせる娯楽もこれと言ってない。
 こうなったら怒られるのを覚悟で外に出るしかないのか……

提督「流石に寝たきりじゃ逆に疲れるもんな、うん。それにちゃんと適度に運動しなくちゃ、うん、適度な運動……」

 少々多すぎる独り言を残して提督はこっそり宿直室を後にする。左右を確認、艦娘の姿も気配もない。そっと胸をなでおろして廊下を静かに進んだ。
 とりあえず校舎の外は長良に見つかるかもしれないので校舎内と中庭くらいしか行く場所がない。隙を見れば工廠にくらいは行けるだろうが、あの妖精はいつ起きてるのかもよくわからない。

提督「さて、どうしたものか……」

 と、行き先を悩んでいると、どこからともなくいいにおいが漂ってきた。これは鬼怒と名取が作る朝食のにおいだろうか。
 ひょっとしたらあの二人なら抜け出しても怒らないかもしれない、少し行ってみることにした。

―――――
―――


鬼怒「ふぅ、さて次は……」

提督「おや、名取はいないのか?」

鬼怒「うひゃあ!?」

 提督が食堂につくと、厨房に立っていたのは鬼怒だけだった。声をかけると鬼怒はいつぞやのように肩をすくませて驚く。

鬼怒「もー、提督! いきなり声掛けちゃ危ないでしょ!」

提督「ははは、すまんすまん」

鬼怒「まったく……って、提督起きてていいんですか?」

提督「目が覚めてしまってな。それに動かないと体が痛くなってしまう」

鬼怒「ははっ、分かる気がします」

提督「まぁ、適度な運動も必要ということで……」

鬼怒「ふふふ、初霜ちゃんには黙っとくよ」

提督「助かる……それで、名取はどこへ?」

鬼怒「あー、それが何だか寝坊しちゃってるみたいで……起こしてみたんだけど起きなくって」

提督「ふむ……」

 やはり日々の訓練が響いているのかもしれない。例の件は早く進めておいた方がいいかもしれない。

提督「それじゃあ、今日は私が手伝おう」

鬼怒「え?」

 やることが多かったとかそういうのを言い訳に対応が遅れたのは自分の落ち度だ。たとえ彼女の寝坊がそのせいではないとしても、今は彼女を手伝いたいような気分だった。

鬼怒「で、できるの……料理?」

提督「鬼怒のような味付けは難しいが、少なくとも具材を切ったり火加減を調節するくらいは出来るさ……それで足手まといと言われたら大人しく引き下がるが」

鬼怒「……それじゃ、お願いしちゃおっかな!」

 にかっと笑う彼女に少し救われたような気がして、少しほっとする提督だ。初霜にしても鬼怒にしても、彼女たちを助けているようで助けられているのは自分なのかもしれないと、そんなふうに感じる。

提督「何でも言ってくれ、厨房の中じゃ私は君の下になるからな」

鬼怒「もうっ、何言ってるのかなこの人は」

 けらけら笑って厨房へ引っ込む鬼怒を追って提督も中へ入って行った。外から見た通り、中はきちんと整理と掃除が行きとどいて綺麗なものだ。しかし二人で使うには少し広そうだ。

提督「で、私は何をすればいいかな?」

鬼怒「そうですねぇ、それじゃあみそ汁に入れる大根を短冊切りにしてほしいな」

提督「短冊切り……ああ、分かった」

 しっかり手を洗って消毒し、まな板の前に立つ。木製のまな板はよく使いこまれてはいるがその分手入れが丁寧らしく、綺麗なものだ。
 大根を置いて包丁を手に取った。4cm程度の輪切りにして皮を剥いていく。悪くない手ごたえだ。

鬼怒「はえー、うまいもんだねぇ」

提督「まぁ、これくらいはな」

 断面から包丁を入れて、今度は5mmくらいの間隔で切ると長方形になる。それを重ねてまた5mmくらいの間隔で切っていけば短冊切りの完成だ。

提督「よし」

鬼怒「おまけに手早い……これは驚いたなぁ」

 感心する鬼怒に見守られながら、さっさか作業をこなす提督。すると鬼怒の方を向きつつ、

提督「手伝っているのにそっちの手が止まってはあまり意味はなさそうなんだが?」

鬼怒「おっと! いけないいけない」

 うっかりしてたとばかりに鍋の前に戻る鬼怒。だしを入れた鍋に味噌を溶かしているらしい、空腹をくすぐるにおいが届いてくる。

提督「これは楽しみだな」

鬼怒「えへへっ、慣れてますから」

 面映ゆそうにしつつおどけてみせる鬼怒はその傍らで薄揚げをザクザクと切って鍋に入れている。薄揚げと大根の味噌汁。想像するだけで胃が騒ぎ出すようだ。

提督「鬼怒は、料理が好きなのか?」

鬼怒「うーん、たぶんね。戦ったりするよりは好きかも。あ、でも体動かすのはもっと好きだよ!」

提督「鬼怒は元気だな。毎日訓練とかもあるのに大変だろう」

 尋ねる提督に、鬼怒は苦笑しながら答えた。

鬼怒「でも、私らがやんなきゃ皆が困っちゃうしさ、だから頑張んないとなー、って」

提督「そうか……辛くないか?」

鬼怒「好きなことやって疲れるのは苦じゃないかなぁ……でも、やっぱたまにシンドイと思うときはあるよ、誰か代わってくれー、って」

 みんな手伝ってくれたりするけどね、と付け足すも、大変なことには変わりないらしい。
 やはり、やるべきなんだろう。

提督「そうか、わかった。少し何か考えてみるよ」

 大根をさしだしつつ提督は頷いた。

提督「その内戦闘訓練もするし、座学も実技に変わる日だってくる。そうなると今のようにいかないこともあるだろうから」

鬼怒「え、でも……どうするの?」

 受け取って形を確かめつつ、鬼怒は首をかしげる。

鬼怒「ここ、人材派遣一番後回しって言うか、基本的に人来ないじゃん」

提督「まぁ、どうにかしてみるさ」

 さっとお玉を取ってみそ汁を一掬いしてつまみ食い。うん、今日も美味しい。

鬼怒「あー! 提督ったらもー!」

提督「はは、まぁ、手伝った報酬と言うことで」

鬼怒「んもー、タダでやってくれるんじゃないのー?」

提督「一言もタダでとは言ってないぞ、と……さて、次はどうすればいい」

鬼怒「調子いいんだから……」

 膨れてみせる鬼怒だが、笑って次の指示を出した。
 楽しんで、それを自分の仕事だと言い張る彼女には少し失礼なのかもしれないが、やはり負担は減らさねばならない。ひょっとしたら怒られるかもしれないが、やはりやらねばならないと心に決める提督だった。

名取「すみませぇえん! おくれましたぁ!」

 やがて寝癖もそのままに慌てて名取が厨房に飛び込んでくる頃には、

提督「おう、おはよう」

鬼怒「もうできてるよー」

名取「ふぇえ!? て、提督!?」

 きちんとした朝食が完成していた。食堂にはもう食欲の湧く匂いで一杯になっている。

提督「ほら、寝癖がすごいぞ」

名取「へ? ふわあああ!?」

鬼怒「ほら、暖かいぬれタオル」

 鬼怒がパタパタと駆けていってタオルを掛けてやる。熱かったらしい、名取がもがいている。何とも言えない光景だ。笑いそうになるのを必死にこらえていると、

初霜『てーとくー!?』

提督「やべッ!?」

名取・鬼怒(提督でもそういう言葉使うんだ)

 初霜の声が聞こえてきた。目が覚めて真っ先に自分を確認しに行ったらしい彼女の必死なというか最早怒号のような声が聞こえてくる。しまった、長居し過ぎた。

鬼怒「て、提督……」

提督「あ、あははは……怒られてくるわ」

 その後、正座でたっぷりお説教をされたという。すっかり縮こまっていた提督だった。

 本日は以上とさせていただきたく。泣く子と地頭には勝てぬとはよく言ったものです。でも、この艦娘に怒られる提督という光景が見られるようになったのは、>>1的にはいいことだと考えるのです。しかし今回、結構な量になったなぁ

 あと飛龍改二になりました。カッコイイけど、せっかくの改二なのにボイスの追加が一切なしとはこれいかに……正規空母って何気に扱い悪いですよね? キャラソンまで出した赤城と翔鶴も未だ何もなしですもんね。まぁ、イベントボイスはありましたが、それでもこう、せめて補給ボイスくらいはほしいですよね、飛龍改二

 書き溜めはもう切れましたので、次回の更新はたぶん明後日でしょう。筆が走れば明日になるかもですね。ではまた……

 どうも、書き溜め難航中です、>>1です。どうにもうまく展開がつながらない。物語的には些細な事なので全体が崩壊するようなことは無いのですが、こう、次の場面に移るにあたっての繋ぎが難しいというか……ぐぬぬ。

 今日は小ネタ一個投下してお茶を濁します……申し訳ない。あと、もうすぐ500行きますね。ここまで一つの話を続けたのは割と初めてなので新鮮な気分です。せっかくなのでまた小ネタを募集したいと思います。
 いつ投下するかは>>1の気まぐれですが、それでも読みたい小ネタがあれば>>500くらいまで受け付けます。条件は以前と同じで結構です。

 次回の投下は、少し空いて来週の初めごろですね。火曜日になる予定です。では、子日、提督観察の日をどうぞ……

子日、提督観察の日3

~訓練中~

提督「よし、今日は隊列を組んでみよう」

 午後の訓練。古鷹おねえちゃんとか初春ちゃんが出ていて、今は見学の日。今は隊列を組む練習中だ。単縦陣から単横陣、輪形陣……みたいに隊列を組み直したり変えたりする練習なんだよ。

提督「旗艦古鷹として、単縦陣!」

 さーっと、打ち合わせた艦順に一列になる。とっても速い! 提督も頷いて次の指示を出す。

提督「次、単横陣!」

 すぐに反応して動く。初春ちゃんがんばれ!

提督「輪形陣へ」

 出た輪形陣! 配置が複雑で難しいんだよーぅ!
 だから、少しもたついちゃった。ふらふらしたりぶつかったりしそうでちょっとヒヤヒヤしちゃう。
 でも、それは提督も一緒みたい。ぶつかりそうになったりするたびに、提督の右手がぴくりぴくりって震えちゃってるの! ちょっと可愛い!

提督「続いて複縦陣から梯形陣へ!」

 最後に少し難しい意地悪な指示を出すのがいつもの提督だ。今日もなんだか難しいことを言っている。

古鷹「複縦から、梯形……」

初春「お、おお?」

由良「あ、あれ、えっとうわわ!」

初霜「わわわわわわあああああ!?」

 もつれにもつれて、あーあ、倒れちゃった……子日、ちょっと心配の日……

提督「……またやっちまった……」

子日「んん?」

 ぼそって、なんか提督が言ったのが聞こえた。子日、可愛いだけじゃなくって耳もいいんだよ? 意地悪なのはついやっちゃうのかな?

提督「大丈夫か? 自力じゃなくてもいいから帰ってこい」

 でも誰も気づかない。やっぱり提督は心配性だ。

その4・提督は意地悪だけど心配性

名取(なんなんだろう、あのメモ……)

―――――
―――

乙っぽい
小ネタは古鷹との休日で

乙です
しばらく来れなかったらリクで出した観察の日がシリーズ化していて驚いた
多謝

 埋まるの早すぎぃ!? 下げたのに!? とにかく皆さんありがとうございます。ちょいちょいはさんでいこうと思いますのでお待ちください。特に>>499とかだと、まだ次の休日が本編で来てないのでしばらく掛かりますね。

 そして速報。瑞鶴きました→ http://imgur.com/dLfGxNZ.jpg
 顔は見せてくれませんでした、結構な資材を投入したのですが……

それ多分cgiのバグで勝手についてた奴やで

荒巻がcgi更新した時にバグった奴だって言ってたな
安定するまで暫くは気にしない方向で

そんなの知らなかった…すまない

 どうも、本当に書く時間がなかなかとれません、>>1です。隙を見てメールで書いている次第です。たまにどこまで書いたかわからなくなって「うごご」となるのはご愛敬。

 >>513ご安心ください>>1も知りませんでした・・・とにかく気にしない方向で行こうと思います。

 では、今夜も少し投下していきましょう

 その日一日は休日と言うことで、皆でまったり過ごした。朝の一件以来、初霜が腕をなかなか離してくれなかったことを除けば良い休日を過ごせたと言える。
 そして相談の結果、週に1日はちゃんと休みを入れるという取り決めになった。士官学校にも自由行動日があったのだ、今の鎮守府にもそれくらいあってしかるべきだろうということだ。
 ちなみに他の鎮守府はと言うと、複数の艦隊が所属しているのでローテーションを組んで休暇を取っているらしい。もっとも、そんなふうになったのは艦娘がその活躍をとどろかせた後なのでここ4~5年程度の事というのが学校で習った歴史だ。
 とにもかくにも、そのあたりのスケジュールも上手く組み込んでいかなければならない。懸案事項が増えるばかりだが、取りあえず提督は電話を手に取った。
 慣れた手つきでボタンを押し、しばらく待つと相手が出た。

??『もしもし? 提督かよ!?』

 男の声だ。びっくりしたような口調に、提督は少しにやりとする。

提督「よう友提督、久しぶりだな」

 士官学校時代の同期で、数少ない提督の友人だ。変わらない様子で提督も自然と気が抜けるのを感じる。感じて、いまだ完全にはここになじめていないのだと気付き、少し気落ちする。

友提督(以下、友督)『久しぶりだな、じゃねーよ。今どこにいるんだよ?』

提督「端野鎮守府っていう、艦隊が一つしかない僻地だよ。敵も来ない、気楽な場所さ」

友督『はぁー……卒業した後、配属先も教えずにいなくなったから皆心配してたってのによ?』

提督「そいつはすまなかったな、友督はどこだったっけか? 呉?」

友督『呉鎮守府第4艦隊司令だよ。他の奴と連絡は……取ってないわな』

提督「まぁな、そんな暇はなかった」

友督『僻地で何があったんだよ?』

提督「まぁ、それはそのうちな。それより頼みたいことがあるんだが」

友督「あんまり無理はできないからな? お前さん、たまに無茶ぶりするからよ」

提督「そうか? まぁ、今回は少しばかり無茶を言うかもしれん」

友督「ほれみろよ……んで、何頼むんだよ?」

提督「ああ、実はな……」

―――――
―――


提督「雨か……」

 いつもの時間に起きると、雨が窓を叩いていた。今日はランニングをするのか長良に確認せねば。
 あと、今日の午後の実習はどうしようか。雨天における航行訓練はいつかしなければいけないことではあるが、まだその段階に達しているかどうかは微妙だ。様子を見るという意味でも一度経験してもらうのもいいかもしれない。
 など、予定を立てつつ頭を起こす。二日も休んだ上、朝からこの天気では気だるさが付きまとう、司令官としてしっかりせねば示しがつかない。特に教師も兼ねているため尚更だ。

提督「とは言え、テンションは下がるなぁ」

 取り合えず鬼怒名取の朝食を気力のもととして部屋を出た。
 じめっとした空気のお出迎えを受けつつ廊下を行く。朝から雨というのはこの鎮守府に来てからはじめてだと気づいて、改めて着任からまだまだ日が浅いと思い知らされる。

 色々と偉そうな講釈を垂れていても、まだここの艦娘たちのことをほとんど知らないのだ。長良と祥鳳なんかはなぜここにいるのかすら知らない。

提督「これも今後の課題か……」

考えすぎるとまた倒れて迷惑をかけると思い直し気を楽にして玄関に行くと、すでに長良はそこにいた。レインコートを脇に置き、玄関先の狭いスペースで柔軟体操をしている。熱心なものだ。

提督「やはり走るのか」

長良「あ、司令官、おはようございます!」

提督「おはよう。雨の日もちゃんと走るんだな」

長良「ええ、毎日しないと気が入らないっていうか、なんかなまっちゃいますし」

提督「なるほどな、しかし・・・・・・」

 うなずく提督だが、外を見、長良を見て言う。

提督「私の分が無いんだな」

長良「はい・・・」

 長いこと着古しているらしく彼女のレインコートはだいぶぼろぼろになっている。加えて、レインコートなんて使う人間が長らくいなかったため劣化して着れるものがほとんど無く、補給もされぬまま今に至るらしい。艦娘たちもわざわざレインコートを着てまでする用事が無かったの上、着るのも長良だけだった故困らなかったのも当然ではあった。

提督「それなら仕方あるまい、今日は私は遠慮しておこう」

長良「そ、そんな! それじゃあ私がやめておきます!」

提督「いやいい、私のわがままで君の楽しみを奪うのは気が引けるというものだ」

 加えて気力維持の一つになっているのだからなおさらである。

提督「私はここで見ているよ、だから行きなさい」

長良「でも・・・」

 申し訳なさそうな長良。つくづくまじめな艦娘だ。

提督「私は長良が走っているのを見ているだけで十分楽しいぞ?」

長良「へ、変な事いわないでください!」

提督「はははっ、まぁ、半分くらい冗談だが、見ているだけでも勉強になるんだ、走ってくれるとこちらもありがたいんだ」

長良「半分は本気なんですね・・・それに、そんな言い方はずるいですよ、もう・・・」

 ため息をつくと、あきらめたように長良はレインコートを身に着けた。

長良「じゃあ、司令官のために、仕方なく、し か た な く! 走っちゃいますよ」

提督「ああ、私の頼みだからな」

長良「まったく、さっき言ってたこととなんか食い違ってない気がするんですけど・・・調子良いんだから、もう・・・」

 口を尖らせてぶつぶつ言いつつ、長良は雨に打たれながら日課のランニングを始めた。

―――

 さて、そんな走る長良を一人眺めている提督のその後ろ、壁からひょっこりと首だけ覗かせている人影が合った。

若葉「…………」

 若葉である。じっと、どこか楽しげな雰囲気すらあるその背中から視線そうとしない。
 若葉はずっと考えていた。たとえばそう、祥鳳。ある日を境に笑顔が増えた。提督の秘書官としての仕事も以前より意欲的に取り組むようにもなった。最新なら初霜だ。初霜が人や艦の怪我や損傷に敏感なのは前からだが、あそこまで過敏に反応し、取り乱したところは見たころがない。
 すべてはあの提督がこの鎮守府にやってきたから変わった。つまり、これらの変化はみんな提督が何らかの原因になっているに違いない。

若葉「私が突き止めなければ……」

 姉妹たちはもちろん、重巡・軽巡の艦娘たちはあてにならない。あの様子ならすでに陥落(?)しているはずだ。そして祥鳳も。

若葉「私がしっかりせねば……私が、ここのみなを守るのだ……!」

 こうして若葉の、たった一人の戦いが始まるのであった。


―――――
―――

本日は以上とさせていただきたく。提督観察の日と内容がかぶりそうな感じですが、こちらは少々シリアスに行く予定です。……シリアルになっても怒らないでくださいね?

 祥鳳さんがなかなか出せません。こう、出すとシナリオが進み過ぎそうと言うか、シナリオの都合上止むを得ないので、祥鳳好きの同志諸兄の方々におかれましては少々お待ちいただきたく存じます。ええ、タイトルに掲げているのですから。

 次回はちょっとわかりませんが、おそらく来週でしょうか。遅くとも週一のペースを保ちたいと思います。では、今夜はこの辺で・・・

 おっと、そう言えば若干とこぞの魔女入ってる口調の友督さんですが、もちろん艦隊を指揮しています。彼の艦隊を出すとしたらやはりマイナー艦娘がいいでしょうか? 少し意見聴かせてもらえるとありがたいです。

 どうも、出先で書いてyahooメールに送り、自宅PCで書き溜めに加えて調整するというスタイルでしたが、なんかyahooメール使えなくなってるやん……書き溜め滞ってる>>1です。わざわざスマホ用のキーボードも買ったし、今日も結構書いたんだけどなぁ……

 自宅の書き溜め見たら一応投下するに足る量はあるっぽいので投下していきます

 結局、長良が帰ってきてから彼女のダウンと整理体操を手伝って提督は走らなかった。部活棟のシャワーで汗を流すという長良と別れて提督は今度は食堂へと向かう。そしてこっそりとその後を付ける若葉。
 この時間だと、鬼怒や名取が朝食の準備を終えるか終えないかと言ったところだろう。食堂の前に差し掛かればいいにおいが漂ってくるが、気を抜いてはけない。

提督「やぁ、精が出るな」

名取「あ、提督さん!?」

鬼怒「お、来たねー、相変わらず早いなぁ」

 ごく自然に食堂へと入る提督。鬼怒たちも普通に受け入れているあたり、いつもこの調子なのだろう(名取はともかく)。朝食の用意もほとんど済んでいるらしく、そのまま談笑を始めた。

鬼怒「あれ、そう言えば今日はいつもより早いね」

名取「あ、長良お姉ちゃんもいないですね」

提督「ああ、今日雨だろう? レインコートがさ――」

鬼怒「ああ、それは――」

名取「次の補給でですね――」

 ごく自然だ。鬼怒も名取も提督を受け入れているように見える……甘いことだ。本当にいい提督なのかなど分からないのだから。

長良「あれ、若葉。何してるの?」

 どうもシャワーを終えたらしい長良がやってきた。扉の前に立っているようにしか見えてないであろう、特に気にするようなことは無かったらしい。

若葉「いや、なんでもない。名取さんはもう食堂で待つのか?」

長良「うん、ゆっくりお茶でも飲んでおしゃべりするんだ」

若葉「そうか、私は姉妹たちを起こしてこようと思う」

長良「そっか、行ってらっしゃい」

 そう言うと長良も食堂に入って行った。普通に楽しそうだ。

若葉「…………」

 何をやっているんだろう、私は……
 ふっと、胸中に寂しさが去来する。ガラスを隔てて自分は一人こんな所で何をしているのだろうか……

若葉「いやいや、しっかりしろ」

 私がしっかりせねば、そう、私が皆を守るのだ……
 ぐっと拳を握りしめて、若葉は姉妹たちの眠る自室へと向かった。

―――――
―――

 午前の授業はつつがなく終わった。若葉の目からはこれといって怪しげな挙動は見てとれない。
 もちろん、何もないに越したことは無いのだが……

提督「由良、ちょっといいか」

由良「はい、なんですか?」

 と、提督が由良と連れ立って教室を出て行った。授業後にはたまにある話だ。それが古鷹だったり祥鳳だったりすることもある。
 いや、少し待て、

若葉「もし、提督が何か強要していたら……?」

 そんなことは無いだろうが、今朝見た提督談笑している中に彼女らはいない。ひょっとしたら、もしかしたら……普通なら笑い飛ばすところではあるが、今は気を抜くわけにはいかない。
 なにせ、みんなを守らなくてはいけない。

若葉「……よし」

 楽しく談笑する姉妹艦たちを背に、若葉はこっそりその後を追って教室を出た。

祥鳳(あら……?)

―――――
―――

 提督と由良は体育館――工廠へと入って行った。こんな所に何の用だろうか、そもそも工廠にはあの主任妖精だっている、やはり気にすることは無かったのだろうか……
 さっそく揺らぎつつある心をなんとか立て直しつつ、若葉は工廠を覗き込んだ。
 提督と由良は装備の整理棚の前に並んで立っている。こちらからは由良の背中と、それに向かいあう提督の正面が見えていた。
 と、提督が何かをさし出すような行動をとる。何をかは由良の体で隠れて見えないが、由良が一歩引いてあわてたように首と手をしきりに振っているのは分かった。

若葉「くっ、見えないぞ……」

 体を隠して覗き込む姿勢の若葉からではどう頑張っても見えないし、少し遠いので上手く声も聞きとれない。もどかしい。
 もしその場にあった単装砲か何かを突き付けていたとしたら、何が目的化は知らないが由良が危険かもしれない。もっと、もっとよく見えないと……
 と、身を乗り出していると、足元がおろそかになっていたのか足を扉にぶつけてしまった。無視できない大きな音が響く。

若葉(しまッ……!)

提督「誰かいるのか?」

 慌てて身を隠すが当然気付かれている。誰かはまでは気付かれていないだろうが、もし懸念していたことが当たってるのなら自分一人ではどうしようもない。きっと目撃者がいることで提督は行動を控えるかもしれないからつまりここは一度撤退して……
 完全に混乱して支離滅裂な思考になっている事には気付きもしないで、若葉はその場から走り去った。

―――

提督「……なんだったんだ?」

由良「さぁ……? 誰かいたんでしょうけど」

 二人して玄関の方を見つめて首をかしげていた。こっそり後をつけられるようなことをしただろうか。記憶を手繰ってもこれと言った心当たりはここ2.3日はちょっとない。初霜や加古、祥鳳達との一件は事故だったり今さらの感が否めない事件なので除外してもいいだろうし……

提督「……すこし考えてみるか。そんなことより由良、少し試してみればいいじゃないか」

由良「え、いや、でも……私に扱えるでしょうか……?」

提督「艦としての歴史では軽巡の中で君が初めて装備運用したんだぞ」

由良「それはそうですけど……使ったことないですよ?」

提督「私がちゃんと教えよう。古鷹も協力してくれるだろうと思う」

由良「そんなに言うなら、今度の訓練で試してみますね……零式水偵」

―――

 本日は以上とさせていただきたく。うーん、何とも支離滅裂だなぁ……>>1の技量不足が露呈してますね、反省……

 ビス子改三に第6海域に401の建造落ち、伊良湖実装とまぁ盛り沢山のアプデでしたが皆様どうでしたか? こちら、さっそく伊401狙いで回して潜水艇ひきました、ちくせう。それに4-4越せてないので6なんか夢のまた夢です。道中大破率はイベント以上ですわ……そして伊良湖の使い方分からないマン

 雲龍は一応出す予定があります。出しやすいですからね、あの感じは。いつになるかは未定ですが……

 さて、次回はやはり来週になります。うーん、亀ですねぇ……それでも読んでいただけるなら嬉しい限りです。では今夜はこの辺で……

 どうも、台風による警報は朝のうちに解除されました。失意にまみれる>>1は学生です……気象台ェ……

 やはり時間はあまりないのです、週一回がやっとの亀更新で申し訳ない。頑張って書いてます。

 とにかく、今夜も投下していきましょう……

 その後、何くわぬ顔(何もなかったのだから当然ではあるが)で戻ってきた提督と由良。提督は雨天のため訓練は無しと告げて再び教室を去った。これから昼の用意がある鬼怒と名取は食堂へ、由良と古鷹は資料室へ、その他長良や加古たちもどこかへ行った。祥鳳は提督のところだろうか、姉妹たちは部屋に帰って行った。
 若葉は、どうすればいいのか分からずに教室で一人座っていた。
 教室を出ていく由良はごく普通に古鷹と談笑していた。新装備がどうのと言っていたから、ひょっとしたらさっきはその話をしていたのかもしれない。

若葉「……何をしているんだろう、私は……」

 虚しさでいっぱいだった。なんで自分一人でこんなことしているんだろう。談笑の輪にも入らず、疑心暗鬼にさいなまれている。
 そう、疑心暗鬼だろうということは薄々わかってはいた。しかし、

若葉「もし本当だった時、私は……」

祥鳳「私は、どうしますか?」

 はっと、後ろを振り向くと、

若葉「祥鳳さん……」

 穏やかな笑みを浮かべた祥鳳が立っていた。以前のような愁いを帯びた淋しげな雰囲気はやはりどこにもなくて、それはきっとあの提督がもたらしたもので――

若葉「独り言だ、気にしないでほしい」

 思わずとげのある声で言ってしまいすぐに後悔、しかし言ってしまった言葉はどうにもならないから、若葉は顔を伏せてその場を去ろうとした。

祥鳳「若葉さん、すこし付き合ってもらえますか?」

 が、祥鳳は穏やかな笑みのまま、若葉に告げた。

―――――
―――

 ~弓道場~

若葉「…………」

祥鳳「………フッ!」

 放たれた矢は雨の中でもまっすぐに的の中央を射止めた。
 そしてそれを、若葉はなんとも居心地悪く眺めていた。正座している足がむずむずする。座布団を敷いてもらっているし正座は苦にならないが、そういう意味ではなく、むずむずする。

若葉「…………」

 しかし、弓に集中している祥鳳には話しかけにくく、自分の下にある座布団がだんだん針の筵のように思えてきたころ。

祥鳳「……ふぅ」

 ようやく祥鳳は弓を下ろして若葉の方を向き直った。肌脱ぎにしていた着物を戻して若葉の正面に向き合う形で腰を下ろす。

若葉「あの、祥鳳さん……」

祥鳳「若葉さんの目から見て、提督はどう見えますか?」

若葉「!」

 いきなり核心を突いてきた。祥鳳にはすべてお見通しなのだろうか……? 不意打ちに言葉を詰まらせながら若葉は答える。

若葉「て、提督は、その…こんな鎮守府にいる艦娘のことも丁寧に、えっと、毎日授業もわかりやすく砲撃も優秀でそれでえっとその」

祥鳳「そうですね、そういう点に関しては士官学校出たてなのに優秀ですよね」

 頷く祥鳳に、若葉もしきりに首を縦に振る。

若葉「そう、そうなんだ…提督というものに猜疑心をもっていた私たちとももう打ち解けている、きっといい人なんだろうと思う……」

 しかし、

若葉「それでも、ふと思うんだ……もし、それがあの男の本性で無かったとしたら…私たちのことを裏切って、姉妹たちや、由良さん、それに祥鳳さんを傷つけるような人間だったとしたら……」

祥鳳「だから、監視していたんですね」

若葉「皆提督の事をもう信じ切ってて、だけどもしって思うと居てもたっても居られなかったんだ!」

 膝の上で拳を握り、吐き出すように言葉を続けた。

若葉「だから、皆を守ろうって、思ったのに……」

 一人の自分を淋しいと思ってしまった。

祥鳳「……そうですか」

若葉「分からない、分からないんだ……」

若葉「きっとあの提督は本当にいい人なんだろうが、疑い始めるともう、どうにも止まらないんだ……!」

膝の上で拳を握りしめて吐き出すように言葉が出た。

若葉「みんなもう信用しきっていて、だとしたら私がしっかりしてみんなを守らなければと思うのに、一人になって、空しくなって、でも!」

若葉「だけど、私は弱かった……一人になって、食堂でガラス越しにみる談笑と自分を比べて、ひどくむなしくて惨めに思えてきて、それでもっ! もしかしたらって思うと……そんな堂々巡りで……もうわからないんだ……」

祥鳳「若葉さん」

拳に手を置いて、祥鳳は語りかけた。

祥鳳「私たちが不甲斐ないばっかりに、苦労を掛けてごめんなさいね」

若葉「子日も、初霜も、そそっかしいから……! 私がしっかりしなくてはって!」

祥鳳「そうですね、だからこそ私がもっとしっかりすべきでした」

拳を置いた手で優しく包み、もう片方で若葉の頭を撫でながら祥鳳は言う。

祥鳳「守ろうとしてくれて、そのためにつらい思いをさせてしまって、ごめんなさい、ありがとう……」

若葉「わ、私はッ…つ、強く…あれただろうか……ッ?」

声をつまらせる若葉に、祥鳳はうなずき答える。

祥鳳「とても立派で勇敢でしたよ、私なんかよりもずっと、です」

若葉「そう、か……ありがとう、祥鳳さん……!」

若葉はぎゅっと身をすくめて、そして力を抜き、祥鳳の手の感覚に身を委ねた。柔らかくて優しい感触が、自分の行動を許してくれているようで心地良い。自分が「間違っていなかった」のだと、あの空しさと寂しさは無駄ではなかったのだといってくれているように感じたのだった。

―――――
―――

若葉「……ところで」

ひとしきり撫でてもらった後、若葉は祥鳳に問うた。

若葉「結局あの提督が本当に信頼するに足るのかまだ見極めがついていないんだが」

祥鳳「うーん、そうですねぇ」

祥鳳は少し考えて、

祥鳳「それじゃあ、彼を信じる私を信じてくれますか?」

若葉「へ……?」

祥鳳「提督のことが信じられなくても、私のことなら信じられますか?」

若葉「そ、それはもちろん、祥鳳さんのことは心から信頼しているが……」

祥鳳「ありがとうございます。じゃあ、私のことを信じてください、その私が提督を信じますから」

それは確かに間接的に提督を信じることになるが、

若葉「そ、それはちょっと、あまりにむちゃくちゃ過ぎるんじゃ……?」

難しい顔をする若葉に、祥鳳はいたずらっぽく笑うと、

祥鳳「ものは考え様、ってことですよっ♪」

若葉「……そうか」

そんな祥鳳を見て、苦笑してうなずいた。あの提督がどんな人間であれ、祥鳳をこんなに明るくしたのは他ならぬあの男なのだ。姉妹たちにも笑顔が増えた、それもたしかな事実なのだ。

若葉「それもそうかもしれないな」

そもそも、思い返せば信用に足るかもしれないといったのは自分ではないか、ひどい矛盾があったものだ。

若葉(信じよう……姉妹たちと祥鳳さんの笑顔にかけて)

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。執筆も割と飛び飛びなので不自然な点があるかもしれませんがご容赦ください。

 次なる改二は初春さんだそうですね。「駆逐艦初の魚雷再装填装置」と「ネームシップ」とくれば初春さん以外ないとか何とか。しかし、かなり予想外のところに来ましたね。これで少しでも初春型にスポットが向けば嬉しい限りです。

 次回の投下も、おそらく来週中ですね。質も量も向上できるよう努力せねばということで本日はこの辺で……

 どうも、風邪ひいて寝込んでました、書き溜め全然できてないです……>>1です。体調管理の難しい季節、皆様いかがお過ごしでしょうか。初春育てることもろくに出来ず改二実装されてしまいました。先は長そうです。

 来週の投下が難しくなっているので、一足先に小ネタを投下しておこうと思います。本編は金曜くらいに上げられたらいいな。

 では、『加古、異性への目覚め』を、どうぞ

提督「では、食べようか……いただきます」

艦娘たち「「いただきます!」」

 いつからか、食事は揃ってこうするのが習慣になっていた。提督からすれば初等部みたいで何やら気恥ずかしい気もしたが、艦娘達も楽しんでいるようなのでこれはこれでと慣れることにしている。

提督「うん、うまい」

長良「提督がご飯を食べてるときって何か雰囲気違うね」

由良「なんか、すごく楽しんでる感じがするわね」

若葉「子日、今朝はどこ行ってたんだ? 珍しくいなかったが」

子日「ちょっと早起きのだったんだよーぅ」

若葉「そうか……」

 思い思いの会話を楽しんで和気あいあいと食事ができる環境とは素晴らしいことだと感じるのは最初の頃の空気があまりにも悪かった証拠だろう。
 と、

提督「っと、醤油醤油……加古、醤油を取ってくれるか」

加古「お? おお、ほら」

 気軽に頼めるようになったことに少し感動を覚えつつ、過去の差し出す醤油に手を伸ばし、軽く手が触れた。

加古「ひゃッ!?」

提督「うわっと!」

 慌てたように加古が手を引っ込めたので醤油瓶が宙を舞う。とっさに提督が掴んだため事なきを得たが、予測された惨事に、一瞬場に緊張が走った。

提督「ふぅ……大丈夫か? 何かあったか?」

加古「え? あ……あはは、ごめんごめん、ちょっと驚いちった」

提督「お、おお? そうか? なにやら可愛らしい悲鳴g「わーわーわー!」!?」

加古「だ、大丈夫! ホント、驚いただけだから!」フガフガガツガツ!

 一同が怪訝な表情で固まる仲、若干挙動不審入った加古は何かをごまかすように叫んでご飯を勢いよくかき込んだ。

古鷹「…………」ジー

―――――
―――

提督「ふぅ、さっぱりした」

加古「ふぃー、さっぱりしたぞー」

加古・提督「あ」「お?」

 夜。提督が浴場から外へ出ると、ちょうど加古も出てきたところだった。お互いラフな薄着にタオルを掛けた楽な格好である。

提督「加古か、ゆっくりできたか?」

加古「え? あ、お、おおおう、やっぱ風呂はいいよな、うん」

 さっと、加古が自分の身をチェックしたのは暗くて気付かれなかった。このまま寝ることが前提の服装なわけだからブラなどは付けていない。そう考えると余計に顔が熱くなってくる。

提督「足腰しっかり解しておけよ、まだ航行は不慣れなんだろ?」

加古「う、うん……」

 わが身を浅く抱く。恥ずかしい。普段だって十分薄着だがそれとこれとは話が何だか違う。

提督「なんだったらそのあたりは長良にでも教わると良い」

加古「…う、ん……」

 この恥ずかしさは何なんだろう。今まで気にしたことも無いようなことが気になって仕方ない。あの時――航行訓練初日のあの時以来ずっと……

加古「……ッ」//////

 ああダメだ、思い出してしまった。一度思い出すと昼寝すらできなくなるのに……

提督「おい、加古? 大丈夫か?」

 と、すっかり身を縮めてしまっている加古に気付いた提督が彼女の顔を覗き込んだ。突然視界に入ってきた提督の顔に、一気に顔の熱が臨界点を突破する。

加古「な、なななっ、何でもないってばああああああ!!!」

 限界だった。加古は叫んでそのまま寮まで全速力で走って行ってしまった。またも取り残される提督は何やらデジャブのようなものを感じながら、ただただ首をかしげていた。

古鷹「…………」ジー

―――――
―――

加古「はぁぁぁああぁぁぁ……」

 部屋に帰るなり枕に顔をうずめた。妙に疲れた。
 一体何だというのだろう。自分に何が起こったのだろう。考えても分からないのに、頭の中が混乱していて余計に分からない。

加古「何なのかなぁ、これ……」

古鷹「ふふふ……悩んでるねー」

加古「……古鷹ぁ」

 何とも情けない声が出る。古鷹は少し笑ってうつぶせの加古の背中に頭を預けた。

古鷹「ちょーっと、乙女入っちゃったねー」

加古「うるさい……乙女とか言うなよー……」

古鷹「うんうん、そのうち慣れるから安心して良いよ」

加古「……本当にか?」

古鷹「うん、それまでちょっと我慢かな」

 本来その恥ずかしさはすでに持っている物なのだ、それを今加古はやっと手に入れようとしている。そしてそれは、教えてもらう物じゃなくて自然に知るものだから。
 だから古鷹は何も言わない。ただ黙って、姉として見守ることに徹するのだ。

古鷹「…………」

 だから決して、見ていて楽しいとか加古の行動がいちいち面白いとかそんなヨコシマな理由から何かでは全くない。
 そう、そんなことはない。
 断じてない。
 無いったら無い。
 この後、加古が提督との距離感をつかむまで四苦八苦する様をニヤニヤしながら眺め、それを子日に見咎められて純粋な瞳に説明を求められ、四苦八苦することになるのだが、それはまた別のお話である。

―――――
―――

 以上です。終わり方がワンパターン過ぎて辛い。

 終わりと言えば、side金剛終了ですってね。単行本買って、これは引き続き買いかなと思っていただけに残念です。編集さんが何やら雑な事をしたとからしいですが、仕事はちゃんとしてほしいものですね。

 皆さん艦これ関連書籍はどれくらい買ってますかね? >>1はノベル全巻と公式4コマといつ静は買うことにしてます。ノベルなんかは特にssの参考にもなりますしね。表現とかそういった面ではなおさら。

 では来週中に投下を目標にせっせと書き溜めしますので、少々お待ち下され。ではこの辺で……

 どうも、初春に続き扶桑姉さま、そして潮まで改二が出るという噂で、改二ラッシュに乗じて密かに祥鳳改二が来るのを期待する>>1です。まぁあり得ない話ですけどね(血涙)

 次のシーンが中途半端に長くなりそうなので、バランスをとるために本編をほんの少しだけ投下しておきます。1レス程度の投下です、申し訳ないので下げておきますね。続きは来週の半ばくらいに投下しに来ます。亀更新にお付き合いくだされば幸いです……

 海原を行くのは一隻の船だった。現代からすれば長い一本の煙突が目を引く現代からすれば少々古めかしい設計の船で、クレーンなどが付いている。この深海棲艦の跋扈する時代に足の遅い船は格好の獲物となるため基本的に建造すらされないのだが、これに関してはこれでなくてはいけないのだ。

??「天気明朗かつ波穏やか……元の通りとはいきませんね、なかなか」

 甲板にて風に髪をなびかせて微笑むのは割烹着姿の女性だ。母性的な体の背中には大きな金属でできた機械……艦娘の艤装らしきものを背負っている。数こそ少ないが単装砲も装備した立派な軍艦のようだ。

??「できればあんまり波は高くない方がやり易いんですけど・・・・・・」

 そう後ろから声をかけたのは、やはり艤装を背負った艦娘だった。頬に絆創膏を貼ったセーラー服の駆逐艦だ。

??「ふふ、それもそうですね」

??「そうよ、あんまり風もきついと髪が傷んじゃうもの・・・・・・」

??「だからってサボって良い理由にはならないんだからね?」

??「あぁん、もうっ、満潮ちゃんのイ・ケ・ズっ」

??「アンタ・・・よっぽど殴られたいらしいわねぇ・・・?」

 続いて長くて艶やかな髪のを気にする少女と、意思の強そうな目のお団子髪な少女がやって来る。こちらもやはり艦娘のようだ。

??「あら、皆さん装備もしっかりでお揃いで。そろそろ警戒の必要な海域ですか?」

??「そうよ、一応制海権はこっちにあるけどい万全じゃないってだけなんだけどね」

 そしてその後ろ、どこか自信そうな声と共にもう一人やって来た。
 赤い制服に長いツインテールの彼女は割烹着の彼女の問いに答えつつ胸を張る。

??「私たちがいるからには、間宮さんには指一本触れさせないわ」

??「ええ、お願いしますね」

 間宮と呼ばれた割烹着姿の艦娘が優しく微笑むのに、ツインテールの艦娘は満足そうにうなずく。

??「ふふっ、五十鈴たちにお任せよ!」

―――――
―――


 海原を行くのは一隻の船だった。長い一本の煙突が目を引く現代からすれば少々古めかしい設計で、クレーンなどが付いている、随分と足の遅い船だ。この深海棲艦の跋扈する時代に足の遅い船は格好の獲物となるため基本的に建造すらされないのだが、これに関してはこれでなくてはいけないのだ。

??「天気明朗かつ波穏やか……元の通りとはいきませんね、なかなか」

 甲板にて風に髪をなびかせて微笑むのは割烹着姿の女性だ。母性的な体の背中には大きな金属でできた機械……艦娘の艤装らしきものを背負っている。数こそ少ないが単装砲も装備した立派な軍艦のようだ。

??「できればあんまり波は高くない方がやり易いんですけど・・・・・・」

 そう後ろから声をかけたのは、やはり艤装を背負った艦娘だった。頬に絆創膏を貼ったセーラー服の駆逐艦だ。

??「ふふ、それもそうですね」

??「そうよ、あんまり風もきついと髪が傷んじゃうもの・・・・・・」

??「だからってサボって良い理由にはならないんだからね?」

??「あぁん、もうっ、満潮ちゃんのイ・ケ・ズっ」

??「アンタ・・・よっぽど殴られたいらしいわねぇ・・・?」

 続いて長くて艶やかな髪のを気にする少女と、意思の強そうな目のお団子髪な少女がやって来る。こちらもやはり艦娘のようだ。

??「あら、皆さん装備もしっかりでお揃いで。そろそろ警戒の必要な海域ですか?」

??「そうよ、一応制海権はこっちにあるけど万全じゃない、ってだけなんだけどね」

 そしてその後ろ、どこか自信そうな声と共にもう一人やって来た。
 赤い制服に長いツインテールの彼女は割烹着の彼女の問いに答えつつ胸を張る。

??「私たちがいるからには、間宮さんには指一本触れさせないわ」

??「ええ、お願いしますね」

 間宮と呼ばれた割烹着姿の艦娘が優しく微笑むのに、ツインテールの艦娘は満足そうにうなずく。

??「ふふっ、五十鈴たちにお任せよ!」

―――――
―――

 どうも、投下間隔が広がりつつある今日この頃、リアルまじ忙しす……少々焦り入ってる>>1です。SS書きたいんや……レポートなんか、書きとうないんや……

 ようやっと投下に足る量が書きあがったので投下していきます。

その日、端野鎮守府の面々は演習場の海岸に集合していた。
 今日は本営からの補給が届く日で、まともな港を持たないこの鎮守府では物資を海上から大発動艇でピストン輸送するという非効率きわまりない方法をとっていた。
 ただでさえ職員もいないということもあり、補給のある日は艦娘もふくめて鎮守府総出で物資の受け取りを行うことになっている。

提督「総出と言っても、私と艦娘、そして主任妖精くらいしかいないがね」

祥鳳「以前は提督がいらっしゃらなかったので、人出が増えた分少し楽になるかもしれませんよ」

由良「とはいえ、補給艦の乗組員の方にかなり助けてもらっているわけなんですけどね」

名取「私たちだけじゃ、時間かかりすぎちゃいますから……」

子日「あ、見えてきたー!」

 そういう子日の視線の先、水平線の向こうに艦らしき影が見えてきた。深海棲艦から奪還したシーレーンを通ってやって来る補給艦は艦娘ではなくさすがに通常艦船なため、結構な距離があってもよく見えるのだ。
 徐々に近づくにつれて子日は嬉しそうに手を振っている。

古鷹「偵察機飛ばして誘導しますね」

 沖合いに停泊してもらうため、座礁などしないように補給艦をうまく誘導するのだ。資料室の海図が妙に精密だったのはこれが理由のひとつらしい。

長良「レインコートとか、無いですよね」

提督「それは次回に申請しておこう」

なんか酉変なんだが

古鷹「えーっと、いつもと同じ規模だから・・・・・・ん? なんか見慣れない船が」

加古「どしたの?」

古鷹「うん、普段より一隻多いんだよ補給艦が。でも、この一本煙突・・・・・・まさか!?」

由良「一本煙突って、確か給糧艦じゃ・・・・・・もしかして間宮!?」

 由良の一言に艦娘たちの間に戦慄が走る。
 間宮とは、艦娘の中でも特殊中の特殊、給糧艦娘という特殊な艦娘で、基本的に各鎮守府に一人は必ずいる鎮守府の台所を任されている艦娘であり、彼女の作る食事やお菓子は皆絶品とされ艦娘の士気向上に欠かせない存在なのだ。

祥鳳「提督、これは・・・?」

提督「これからは戦闘訓練も行うことになる。そうすれば今以上に体力を食うことになるのだから、皆の負担、とくに三食を支えてくれている名取と鬼怒にの負担を減らすために少し上に掛け合った」

 正しくは友人に掛け合ってもらったのだが、細かいことはこの際気にしない方向でいきたい。

鬼怒「そんな! そんなことしてもらわなくてもちゃんとできます!」

名取「そ、そうですよ! 頑張ります!」

提督「二足のわらじでどちらかがおろそかになるのも、苦労をかけるのも困るし申し訳ないんだ、分かってくれ」

名取「で、でも……」

??「あら、珍しく名取が食い下がるじゃない? いいことね」

 と、そうこう言っているうちに聞きなれない声がかけられる。見ると、砂浜に4人の艦娘が上陸するところだった。軽巡が1人、駆逐が3人の水雷戦隊で、補給艦の護衛をしていたのだろうと分かる。

提督「護衛の艦娘達か。私がこの端野鎮守府の司令官だ。護衛任務ご苦労だった、感謝する」

 さっと敬礼する提督に、旗艦であろう軽巡が、続いて駆逐艦たちが答えて敬礼する。

五十鈴「護衛艦隊旗艦の五十鈴よ。補給と、姉妹たちとの再会を許可できるかしら?」

提督「五十鈴……ああ、そうか。長良型軽巡の2番艦か」

五十鈴「そういうこと。と言うわけで、長良、名取、久しぶり!」

長良「五十鈴! 久しぶり!」

名取「五十鈴お姉ちゃんが来るなんて、ビックリだよ」

五十鈴「私は友提督から聞いてたから知ってたけどね。ふふっ、みんな元気そうで安心したわ」

提督「三人はどういう関係なんだ?」

長良「私たちは三人とも実の姉妹なんです」

 艦娘の姉妹艦と言うのは往々にして赤の他人であることが多い。
 というより同じ名前で異なる外見の艦娘が普通にいるので、姉妹艦に出会っても全く似てない事も多いのだが、このように姉妹艦が艦娘になる前の実の姉妹であるというパターンも少なくない。この場合、長良型の上三番がそうだったようだ。

提督「互いの壮健を祝うのもいいが、一応仕事はこなしてもらえるかな」

五十鈴「あら、五十鈴としたことが失礼したわね」

 姉妹と取り合っていた手を離し、僚艦と整列して表情をただす。

五十鈴「それじゃあ改めて。呉第四艦隊所属五十鈴以下三名、端野鎮守府への補給艦護衛として立ち寄らせてもらったわ。補給と整備を許可してもらえるかしら」

提督「端野鎮守府司令官が貴艦らの上陸を許可し、十分な補給と整備を約束しよう」

 敬礼する提督だが、少し力を抜いて苦笑すると、

提督「とはいえ、見ての通りの小規模な鎮守府だ、堅苦しいのは最低限で構わない。ひとまず補給物資の搬入と僚艦の紹介、あと例の件なんだが」

五十鈴「不真面目なのは感心しないけど、適度に緩いのは歓迎よ。取り合えず自己紹介からしていくわね。朧、あんたから」

朧「あ、はい」

 肩を叩かれて生真面目そうに背筋を伸ばしたのは、頬に絆創膏を貼ったセーラー服の艦娘だ。制服からして特型駆逐艦の一人だろうと推測した。

朧「綾波型駆逐艦、朧、です」

如月「ふふ、次は私ね。睦月型駆逐艦の二番艦如月よ」

満潮「朝潮型の三番艦、満潮よ」

 生真面目そうな朧とどこか掴み所が見えない如月、そして意思の強そうな満潮。ずいぶんとアクの強そうな艦娘を寄越したのは、友提督のささやかな仕返しといったところだろうか。

提督「提督だ、よろしく頼む。うちの艦娘たちとは追々で頼む」

五十鈴「それじゃあ、例の件だけど」

 と、海を振り返る五十鈴。視線をおうと、もう一人艦娘が海上をこちらへ向かってきていた。

五十鈴「彼女に関しては友提督から手紙を預かってるわ」

提督「ふむ、あいつからか」

友督『一番良い間宮を用意してやったからありがたく思うんだぜ。まぁ、良いとは言っても実践配備外も含めての一番だから何が起こっても知らん。要求に答えてやったんだから文句は言うなよ』

 短い内容に、提督は少し首をかしげた。確かに少し無理をいったとは思うが、果たして一体どんな代物を送りつけてきたというのか。

五十鈴「友提督はなんて?」

提督「感謝しろとのことだ。で、そちらの艦娘が?」

五十鈴「ええ、そうよ」

 五十鈴達の背後、砂浜に上がってきたのは割烹着姿の艦娘だ。普通の艦娘同様艤装を背負っているが非戦闘艦仕様の物で、砲塔の類よりも横に伸びるクレーンが目立つ。

間宮「本営より派遣されてまいりました、間宮と申します。これからこの鎮守府で働かせていただきます、よろしくおねがいしますね」

 実にしとやかなしぐさで一礼する様に、一同少し見とれる。
 間宮と言う名を冠するには相当な訓練を要するという。間宮専用の訓練施設が大本営のどこかにあるというのがもっぱらの噂だ。

提督「この鎮守府を預かる提督だ、以後よろしく頼む」

間宮「はい、こちらこそ、です」

提督「すまんが、この鎮守府にはどういうわけか港がない。君の停泊場所なんだが……」

間宮「ああ、それなら心配に及びません」

 そういう間宮は微笑むと踵を返して海へと戻っていく。

間宮「よろしければ、本艦にいらして御覧になってください」

 そう言って、振り返り微笑んだ。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。間宮さんは全くセリフの設定が無いので完全に自分でキャラを考えねばなりません……いやまぁ、それはそれで楽しいんですけどね。皆さんのイメージと合わない描写もあるかもですが、予めご了承ください。

 >>582
 >>511 >>512と言う事らしいのでお気になさらず流して下さい。>>1はこういうのは全く分からないので答えられませんが。

 さて、次回は一週間以内に上げたいところですがリアルがそれを許してくれるかは分かりません。遅くても気長に待っていただければ幸いです。では今夜はこの辺で……

 どうも、時間がないときほど筆がはかどるという現象を身をもって体感しました、>>1です。

 連休があったのにぜんぜん書き溜め作らず、忙しくなってからどたばた書いたらめっちゃ書けたという……これがライターズハイか()

 それでは今夜も少し投下していきます

 通された艦内は様々な機械で埋め尽くされていた。そのほとんどは食品製造用の物で、他にも見かけたものなら艦内農園や屠畜施設などもあってさながら移動食品工場だ。
 そしてそれらを運用しているのは全て妖精だ。この場合は艦娘の装備品に憑く妖精で、ちょこまかと機械の間を走り回っていた。これだけの数の装備を一度に制御しているというから間宮と言う艦娘は規格外である。無論、全員と言うわけではないのだが。
 そんな艦内施設に圧倒されるその後ろ、

満潮「……ねぇ、人間って海面に浮けたっけ?」

朧「無理……だったはず……だと思う」

五十鈴「間違えちゃだめよ二人とも……普通は無理」

如月「ふふ、五十鈴さんそれ遠回しにあの提督さんが普通じゃないっていってるわ」

 何やらひそひそと良く聞こえる会話に提督は思わず苦笑する。

祥鳳「普通はこういう反応ですよね」

加古「慣れって怖いよなぁ……」

 そうこう言っているうちに間宮の先導で一行は船の前方甲板に到着した。船に船が乗っているというなんとも不思議な光景だが、昨今では珍しくもなくなっていることだ。

子日「うわぁ、おっきいよーぅ!」

初霜「うわぁ、海が遠いです!」

由良「こうして船の上に乗るのはいつぶりかな」

間宮「それでは動きますので、足元にお気をつけくださいね」

 はしゃぐ駆逐艦たちに微笑むと、間宮は表情を改める。先程までの柔らかな表情は成りを潜め、集中している真剣な顔になった。

間宮「機関始動、両限微速進路そのまま」

 足元から重厚な音が響き、ゆっくりと動き出す。進路は鎮守府からすこし離れた岩場付近だ。

加古「お、おい、このまま行くとぶつかるんじゃないのか?」

名取「あ、あのあの、進路大丈夫ですか!?」

五十鈴「ふふふ、大丈夫よ。まぁみてなさい」

満潮「なんでアンタが偉そうなのよ・・・・・・」

 心配して騒ぐ端野の艦娘たちをよそに、間宮は岩場へ真っ正面から接近していく。

提督「そろそろ海底が浅くなる。このままだと座礁するが・・・・・・」

間宮「大丈夫ですよ。・・・・・・深海式掘削機構起動します」

 一度目を閉じ、集中してカッと開く。重厚なエンジン音にキィィイと甲高い音が混ざり始めた。皆が何事かと周囲を伺う中、

長良「光?」

 気づいたのは長良だった。
 舳先の方、海面から光の粒子のような粒が散っている。淡い青の光は陸に近づくにつれ増えて行くようだ。

提督「この光は・・・・・・まさか」

五十鈴「そうよ」

五十鈴「これが深海棲艦を研究して開発された深海式掘削機構。この間宮さんにだけ搭載された新技術よ」

 言っている間に船体は岩場へ到達した。覗き込めば、船体の表面に力場のようなものが発生しており、そこに陸地が触れることで光になっているのが見える。

提督「実践配備外も含めた一番良い間宮……こういうことか」

 曰く、今後艦娘勢力が海外進出を果たした際、港の無い場所に補給物資を届ける必要があるかもしれない。
 もちろん揚陸艇等を使えば良いのだが、長期的な運用を行う拠点を築くのには不便だ。そこで注目されたのが敵である深海棲艦のもつ「陸を削り取る」能力だった。
 通常サイズの艦艇に積んで陸地に突っ込ませれば、船一隻がちょうど収まる入り江が出来る。そこに軽く施設を整えれば簡易の港が完成、そこからさらに整えていけば泊地の完成という寸法……らしい。

間宮「少し狭いので、広げておきましょうか」

 奥まで削りきって、どう動いているのか横へ滑るように移動して入り江を拡張する間宮。
 そうして、瞬く間に船二隻が停泊できる入り江が出来てしまったのだ。

―――――
―――


 入り江から鎮守府までは少し歩かねばならなかったが、大発を使ってのピストン輸送に比べれば圧倒的に効率よく補給を済ませることが出来た。補給艦は次の鎮守府を目指して出港、五十鈴たちは護衛を他鎮守府の艦娘たちに引き継いで端野に戻ってきた。
 艤装の点検も兼ねて少しの間停泊したいとのことだ。
 そして、もろもろの作業が終わり、食事の時間となった。

間宮「はい、どうぞ」

初春「おお、これは」

古鷹「すごい・・・」

 食堂に満ちる香辛料の香り。誰でなくともそれだけで涎が出るであろうその香りのもとが各々の前に並べられていた。

間宮「間宮秘伝の特製カレーです。お口に会うとよいのですが」

提督「・・・・・・いただこうか」

一同「「いただきます」」

 スプーンをとって、一口食べる。

鬼怒「こ、これは・・・・・・!」

長良「おいしい!」

提督「これは魂消たな・・・」

 口に入れた途端、カレー独特の風味が一杯に広がった。しかしそこで終わらずジワッと舌に広がるコク、染み出した具の旨味がご飯によく絡む。そして具もルーが染み込んだよく煮込まれた大振りなものだ。

由良「これ、すごく美味しい!」

加古「ああ! 鬼怒や名取にも負けてないな! おかわり!!」

古鷹「はやっ!?」

若葉「むっ、わたしも負けてはいられないな」

初春「なぜそこで張り合うのかのう」

初霜「でもこれ、本当に美味しいです!」

子日「子日、感激の日ー!」ネッノヒー!!

祥鳳「味が芯までしみ込んだジャガイモがまた……おいしいです」

名取「うぅ……おいしい、です……」

 皆が納得するおいしさに、名取と鬼怒も認めざるを得なかったようだ。本当においしいカレーだった。

間宮「誰もが納得する、自分だけのカレーができて始めて間宮としての第一歩なんですよ、お口に合ったようで安心しました」

長良「お、オリジナル……」

鬼怒「これが、給量艦の実力……!」

提督「…………」

 舌鼓を打ちつつもスプーンを握り締める鬼怒と名取に不穏なものを感じながらフォローの方法を考えていた提督だったが、しかし火種は予想だにしないところから飛び出したのだった。

―――――
―――

 ちと少ないですが、引きがいいので今回は以上とさせていただきたく。ダメ間宮さんも悪くないですが、この間宮さんには鬼怒名取の代わりに働いてもらわねばならないのでまともな艦娘として出させていただきました。期待していた方には申し訳ない

 皆様秋イベの準備は進んでおられますでしょうか? こちらは現在各資材3万程度、できればもう1~2万ずつためたいところですね。今度の海域突破報酬は何が来るのか楽しみな>>1です。もっとも、この>>1は史実ぜんぜん知らない無学なので何がこられてもよくわからないんですけどね

この間宮は環境破壊特化艦として世間一般からは嫌われるな。
サンゴ礁のある海域に近づきでもしようものなら環境保護団体が出張ってきて
反対運動繰り広げること間違いなし。

 どうも、先日艦これ缶バッジのガチャをまわしたら中身間違ってました、>>1です。第2弾をまわしたはずが、中身が第1弾だったんですねー。近くの店員に報告して返金してもらい、改めて別のものをまわしたら長良が出ました。やったね。

 では今夜も少し投下していきませう

 全てを見ていてなおかつ一番冷静だった初春の話を纏めると、ことの発端は満潮

の発言によるものらしい。
 曰く、満潮がこの鎮守府がボロいだの何だのとこぼし、それを聞いた若葉が我が

家を馬鹿にするなと怒ったらしい。
 それを止めに入った初霜も提督についての発言に怒りを覚え、なぜか子日に飛び

火し、何事かとやって来た加古にも延焼したらしい。
 そして、この事情を聴いた五十鈴が演習で決着をつければ良いと言い出すに至っ

て、事は穏便な収集の着かない所にまでやって来てしまったということだ。

提督「はぁ……」

 初春の冷静な報告に思わず頭を撫でてまで誉めてしまうくらいには参っていた提

督は執務室の机に突っ伏していた。ちなみに初春には気安く撫でるなと怒られた。

顔が赤くなってたのには気づいていない。

祥鳳「大丈夫ですか?」

提督「まったく、まさかこんなことになるなんて……」

 祥鳳の差し出すお茶を一口のんで落ち着きを求めた。冷えた緑茶が頭の芯を冷や

してくれる気がする。

祥鳳「確かに、勝手に話を進めたことに鬼怒さんたちが怒るのは予測してたんです

が」

提督「う……やっぱまずかったよなぁ」

 彼としては少しサプライズで労ってやりたいくらいのつもりでいたのだが、裏目

に出てしまった。極論を言ってしまえば提督が変な気さえ起こさなければこんな騒

動にはならなっかということだ。

提督「はぁぁぁぁ……」

祥鳳「気を落としすぎてる気がしますよ」

 軽く頭を抱える提督に、少し考えて祥鳳は、

祥鳳「……いっそ提督公認の演習として実施してしまえば良いんじゃないでしょう

か」

提督「え?」

 怪訝な顔をする提督だったが、話を聞くにつれ表情を改めていった。

提督「そうか……そういう落とし方があるな」

祥鳳「どうでしょう?」

提督「フォローの必要もあるだろうが、このままにしておくよりはずっと良い。そ

れでいこう」

祥鳳「ふふ、お役に立てたなら何よりです」

提督「ああ、感謝するよ祥鳳。ありがとう」

 そう言って提督が何やら書類を用意し始めるのを見て、祥鳳は何も言わずにそっ

と机を離れるとお茶の準備をしに執務室をあとにした。
 今夜は少し長くなりそうだった。

―――――
―――

 そして迎えた次の日。演習場には友提督の遠征艦隊と端野の有志で編成した艦隊

が向かい合っていた。

提督「本当にやるんだな?」

若葉「当たり前だ。ここは我が家のようなものだ、それを愚弄されて黙って引くこ

とはできん」

初霜「私も、提督をバカにされて平気でなんていられません!」

子日「子日だって怒るんだよーぅ!」

加古「あたしも、ちょっと引けないんだよね」

 提督の問いに、四者四様の答えで迷いなく答える。分かってはいたが梃子でも動

くつもりはないらしい。

五十鈴「ふふっ、愛されてるのね」

 対して、五十鈴は愉快そうに笑って立っていた。

朧「やっぱり流石にあれは言い過ぎだよ満潮……謝った方が良い、と思う」

満潮「ここの提督がどうかはともかくここがボロっちぃのは事実よ、そこは撤回し

ないわ」

朧「ああもう……曙といい満潮といいどうしてこうなのかなぁ」

如月「そうよぉ、潮風はお肌にも髪にも悪いのに、いやねぇ」

朧「如月も如月でこの調子……うぅ、今日ほど漣が恋しくなったことはないよぉ…

…」

 友提督側の方も、端野の艦娘たちほど闘志に満ちている様子ではなかったが概ね

やる気のようだ。
 取り合えず準備よしと判断して、提督は声を張った。

提督「それではこれより、呉第四艦隊所属遠征隊と端野鎮守府臨時編成艦隊による

演習を行う。制限時間内に砲雷撃戦を行い、演習規定に従って勝敗を決定する。実

戦に則って轟沈判定の下されたものはその場でリタイアとし、引き下がること。ま

た、簡易の演習であるので夜戦は行わないとする。なお、判定は祥鳳、由良、長良

、そして私の艦載機による観測のもとで行うものとする。では双方開始地点へ移動

せよ」

 号令に従って双方の艦隊が海へ出た。練習の甲斐あってか加古も両の足で波を立

てて航行している。密かに感慨を覚えつつ、両艦隊が位置についたのを確認すると

、提督は後ろに控える祥鳳たちに目配せして観測機を発進させた。
 そして、艦載機も配置についたところで、

提督「演習始めッ!」

 火蓋がきって落とされた。

―――

 まず動いたのは呉艦隊の方だ。素早く陣形を組み攻撃に備える。この場合は単横

陣のようだ。
 対して端野側もごたつきながらも陣形を組んだ。旗艦である加古を先頭に置いた

単縦陣だ。

五十鈴「バカね! 撃ってくれってことかしら?」

 長良や名取と同じく肩から提げた単装砲を構えて照準を合わせようと腰だめにグ

リップを握り直す。それにならって、朧たちも各々連装砲や単装砲を構えた。
 状況的には端野側がT字不利ということになる。このままでは先頭の艦から順番

に各個撃破されるだろう。
 が、しかし。

如月「え? きゃあ!?」

朧「如月!?」

 砲音一つ、如月の顔面を砲弾が直撃した。上半身が塗料でぐちゃぐちゃになる。

如月「うぅ、髪が傷んじゃう」

五十鈴「相手は重巡洋艦だったわね……でも、いくら射程が長いといったって一発

で当ててくるなんて」

―――


提督「加古を全面に押し出して射程距離ギリギリから砲撃を叩き込んだか」

 航行がまだ下手な加古を後ろから押してやることで機動力も多少ではあるが確保

してある。彼女らなりに考えたようだ。

祥鳳「如月さん、不意を突かれて大破ですね」

長良「駆逐艦じゃ重巡の砲撃をもろに食らえば即大破も仕方ないね」

由良「むしろ轟沈判定もらわなかっただけ幸運ね」

祥鳳「先手はこちらの有利ですね」

提督「ああ、そうだな。しかし……」

 そううまくことが進むかな?
 提督は黙って戦闘に目を向けていた。

―――

 本日は以上とさせていただきたく。戦闘描写とかあまり書いたことないのでこれまで以上の駄文注意です。ご容赦くださいませ……

 >>616 祥鳳さん珊瑚嫌いなんでありかなーとか思いましたけど、まぁよくないですよね、ええ

 憶測を呼んでいるようですが決して過度な期待はなさらぬよう、プレッシャーで>>1が氏にますので……では、今夜はこの辺で。次回も一週間以内にできればと思っております

 どうも、2週間以上も空いた割に大した量がかけてないことに絶望を感じないでもない>>1です、皆さまお久しぶりです。

 制作意欲の低下とは恐ろしいですな……行き詰るととことん書けなくなる。いただいた小ネタはかなりかけたんですけどね……残念ながらまだ投下のタイミングに至っていないのでお見せできませんが。

 今回は少し満潮が嫌な子として描写されております。満潮ファンには申し訳ない。でもいい子ですから! いい子ですから!! 

 さて、そろそろ投下しますね

加古「よっしゃぁ! 見たか加古スペシャル!」

 会心の砲撃に思わずガッツポーズを決める加古。海上での砲撃はあまりやったことはなかったが、なかなかどうして行けるものだ。

子日「やっちゃえーぃ!」

若葉「まだ油断はできん、向こうの反撃が来るぞ」

 加古の後ろで背中を押す子日もテンションが上がっているようだ。若葉も口ではそういいながらも少し嬉しそうな顔をしている。

初霜「混乱してるところに、一気に攻め入る……うまくいってくれるといいんですけど」

 初霜は不安げだが、足並みに迷いはない。このまま押しきれると践んだ加古は、

加古「このまま一気に接近して、魚雷を叩き込むよ!」

子若初「「「了解!」だよーぅ!」」

 全員で主機の回転をあげてスピードに乗る。巡洋艦や駆逐艦の武装は砲よりも魚雷の方が威力が高い。故に確実に仕留めるなら魚雷の方が効果的なのは授業できっちり習ったところだ。
 ーー提督教わったことをいかさなくちゃ!
 思って両足の魚雷を意識する。提督と子の鎮守府をバカにした付けはきっちり払ってもらうんだから!
 きっ、と。正面に意識を戻した加古の視界の真正面に何かの影が見え、一瞬。

加古「へ?」

 と思ったときにはベチャッという水音と衝撃が顔面を強打した。

子日「うわわわわ!?」

若葉「か、加古さん!?」

 衝撃でくらっとのけ反る加古を必死に支える子日と若葉。突然の衝撃に加古も目を白黒させるばかりだ。
 加古の砲撃をあてにするなら付かず離れずの距離を保つべきだ。上手くすれば正確な砲撃でアウトレンジで圧倒する事も出来ただろう。
 が、如何せん加古の航行は不安定な上、子日と若葉に支えられている状態だ。そこまで細かい動きは難しかった。

五十鈴「一気に囲んで叩き潰すわよ!」

朧「了解、です。負けないんだから!」

満潮「…了解」

 ごたついて動きの鈍っているの横目に素早く単縦陣に切り替えた五十鈴たちが、回り込むように加古たちの側面に展開する。

若葉「くっ、この!」

 気付いた若葉が連装砲で牽制を仕掛けるも、加古を支えながらと言うこともあってあまり効果はなさそうだ。

子日「負けないんだよーぅ!」

加古「くっそぉー、この!」

初霜「当たってください!」

 至近弾こそあれど、命中させることができない。飛び跳ねる塗料に気を止めることも無く走る五十鈴たちは、陣形をきっちり維持して側面に展開、

五十鈴「一斉砲撃! 畳みこんじゃいなさい!」

 一部の迷いもない号令がくだされ、

朧「いけっ!」

 朧が気合を入れて叩き込み、

如月「やり返しちゃうんだから!」

 如月が少々の恨みを込め、

満潮「…………」

 そして満潮は、なんともつまらないという顔をして打ち込んだ。

―――

提督「……勝負あり」

 勝負はあっという間に決着がついた。
 全身塗料まみれにした加古たちは、未だ水面に浮いている。対して、五十鈴たちも一並びでその場に立っている。

提督「呉第四艦隊所属遠征隊の勝利だ。両艦隊とも速やかに帰還せよ」

満潮「……ふん、口だけってことを証明しちゃったわね」

 提督の通信を聞いて、満潮が至極面白くなさそうに鼻を鳴らした。

満潮「あーあ、時間の無駄だったわ、帰りましょ」

朧「あ、み、満潮……はぁ、またそういうこと言う……」

満潮「何よ、こんなボロ鎮の艦娘なんかロクなもんじゃないんだから気なんか使うこと無いわよ」

 文句でもあるのかといわんばかりの視線を飛ばして踵を返す満潮。

若葉「…まれ……」

如月「あら?」

 まだ顔面が塗料で染まっている如月がそれに気づく。

若葉「黙れぇぇぇぇえええ!!」

 膝をついていた若葉が、連装砲を振りかざして飛び出した。完全に不意を突かれた形になった満潮は、しかしどうにか反応して魚雷発射管を盾のように構えてそれを受け止めた。

満潮「いきなり何すんのよ!」

若葉「うるさい! 口を開けばロクでもないだのぼろいだの……よくも知らない奴が勝手を言うなぁぁぁあ!!」

満潮「……ッ!」

 満潮が気圧されたことでバランスが崩れる。連装砲が振り抜かれて満潮の魚雷発射管がはじかれた。がら空きになった彼女の体に、勢い余って連装砲がすっぽ抜けたのもお構いなしに若葉が拳をたたき込んだ。

満潮「ぐッ!?」

若葉「」

朧「満潮!」

五十鈴「ほっときなさい」

朧「五十鈴さん!?」

 飛び出そうとした朧を五十鈴が止める。

五十鈴「あれでいいのよ。全く、満潮も不器用よね」

朧「そんな……き、如月」

如月「んもぅ、髪に影響があんまりないとはいえ塗料まみれのままは嫌よねぇ」

朧「……はぁ」

満潮「ッ! 調子にのってんじゃないわよ!」

 朧が人知れず肩を落とす中、ここで防戦一方だった満潮が一発殴り返した。攻撃優先でがら空きの左ほほへモロに入る。

若葉「ッぐぅ!」

 よろけて後ろへ下がる若葉。自然と距離が出来、お互いに手を止めてにらみ合いになる。

若葉「はぁ、はぁ…ッ」

満潮「はぁ、はぁ……いい? よく聞きなさい」

若葉「……何だ」

 さすがに疲れたのか若葉も素直に応じた。満潮は少し息を整えると、

満潮「……弱いやつが何吠えたって意味無いのよ! わかる!?」

 キッと真っ直ぐ若葉を見据えて言い放った。

若葉「この期に及んで、まだそうやって!」

満潮「弱いとなんにも出来ないのよ!!」

 若葉の言葉を遮って満潮は叫ぶ。

満潮「アンタはさっき確実に沈んだわ、なすすべもなくね! わかる!? 沈んだの! 死んだの!!」

五十鈴「…………」

満潮「アンタが沈めばアンタの後ろに居る人たち全員がどう思うかわかってんの? あとに残される人たちのこと、考えたことある!?」

朧「満潮……」

満潮「残されることが、どんなに辛いことか……!」

 ぎゅっと胸で手を握って、さらに言う。

満潮「だから私たちは強くならないといけない、誰よりも」

提督「…………」

 満潮がゆっくりと若葉に歩み寄る。若葉は何も言わない。無言のままお互いの距離が縮まり、満潮がぐいっと若葉の胸ぐらをつかんだ。

満潮「それくらいの覚悟で、死ぬ気で強くなりなさい」

 言って、満潮は若葉を無造作に突き放すと、そのまま砂浜へ勝手に帰って行った。

五十鈴「やれやれね」

朧「もう、満潮は……」

 残されたのは肩をすくめる五十鈴や呆れる朧と、

若葉「…………」

初霜「若葉ちゃん……」

 気遣わしげな初霜やうつむいたまま動かない若葉たちだった。

―――――
―――


 本日は以上とさせていただきたく。クオリティ低くてマジでスンマセン……戦闘シーンの練習せねばと思い知るこの2週間でした。

 次々改二が増えますね。扶桑姉妹もいいですが、まさか端野のメンバーからさらに改二が来るとは思いませんでした……少々興奮抑えられない>>1です。
 秋イベもE-3まで無事クリアして、夏に引き続きラストダンスは見送りの方向で……イベント中始めて舞風を手に入れたのでぜひ野分もお迎えしたかったんですけどね……秋月可愛いです(^q^)

 次回の投下のめどは立ってませんが、今回ほど遅くならない予定です。気長に待ってもらえるとうれしい>>1です。
 では、今夜はこの辺で……

 どうも、宣言通り投下しにまいりました>>1です。書き溜めたといっても、大概その8割は1日で書いてたりします。時間があってなおかつ『降りて』来た時が狙い目なんですよねー
 それでは今夜も投下していきましょう

 加古たちは五十鈴たちに遅れる形で浜辺に戻り、そのまま一言もしゃべることもなく鎮守府へ引っ込んでいった。話は聞いていたらしく、ちゃんとシャワーで塗料や海水を流して艤装は妖精に預け、各々の自室へと引っ込んでいったようだ。
 分かってはいたが、完膚なきまでに叩きのめされていた。それはそうだろう、相手は実戦経験豊富な前線で戦う艦娘だ。実戦にも出られず、いまだ訓練の必要がある端野の艦娘達が対抗できる道理は最初からなかった。
 その事を実感したのか、観戦していた他の艦娘達も沈みこみ気味だ。みな押し黙ったまま鎮守府へ引き返していく。

長良「これで、よかったんでしょうか?」

 すっかりお通夜ムードな加古たちを見送った、長良がぽつりと漏らした。

提督「ああ、想定通りだよ」

由良「想定通りって……」

提督「それはもちろんうちの艦隊を心の中で応援してたさ。だが、今回は負けることに意味がある」

古鷹「負けることに、意味がある……?」

初春「提督殿は、彼女らが負けることを期待しておった、ということかの?


提督「まぁ、そういうことになるな」

 頷き、鎮守府へ帰っていった塗料まみれの艦娘たちの方を見遣る。

提督「負けた後どうするか、そこも期待しているんだがね」

―――――
―――

~初春姉妹の部屋~

 初春が部屋に戻ると、妹たちは先に部屋に戻っており、案の定の重苦しい空気が充満していた。
 ムリもない、あれだけ手酷くやられればショックも受けると言うものだ。極めつけに満潮の言葉だ、落ち込むなと言う方が酷である。

初春「……あー」

 取り合えずなにか話そうにも掛ける言葉が見つからない。満潮の言葉は自分とも無関係ではない。駆逐艦である以上、そしてそれ以上に戦う艦娘であるなら誰もが無関係ではない。
 自分達は実戦と言うものを経験したことはない。それゆえに提督がやって来て訓練を付けて貰えるようになって、強くなった気がしていた。しかし結果はどうだろう、実戦を経験している艦娘の足元にも及ばない結果だ。

初春(ああ、そうか……)

―――


~古鷹型の部屋~

 古鷹が部屋に戻ると、加古は布団に丸まって部屋の片隅に転がっていた。傍目から見て、誰でも解るくらいに落ち込んでいる。

古鷹「加古ー?」

 呼び掛けても、加古はピクリとも動かない。あれだけ大口叩いてあの結果では仕方のないことだろう。
 ただ、それだけが理由ではなさそうだが。

古鷹「ほーら、そんなことしてるとキノコが生えてくるよ」

 ぐいぐいと引っ張って布団をひっぺがすと、

加古「ふるたかぁ……」

 目を真っ赤に腫らして顔をグシャグシャにしていると言う、ウルトラレア級に珍しい加古が転がり出てきた。

古鷹「うわぁ、ひどい顔」

加古「うるさいなぁ、別に良いよそんなの……」

 言いながら、加古はあきれる古鷹の胸に顔を埋めた。しばらくすると、小刻みに肩が震え出す。古鷹は黙って両腕を加古の背中に回して叩いてやる。

加古「ふるたかぁ……」

古鷹「うん」

 頷く古鷹。加古はぎゅっと彼女の服を握る。

加古「くやしいよぉ……」

古鷹「うん、うん」

 ただただ頷いて、背中をさすってやった。あんなやられ方をすれば古鷹だって悔しい、それに彼女にとってはなおさらだ。

加古「提督、馬鹿にされたのに……勝てなかったよぉ…!」

 くぐもった嗚咽が漏れ、古鷹の服がぬれる。個人的に負けるわけにはいかない戦いだったはずだ。その理由が何なのかもわからないまま、戦って、そして負けた。

古鷹「悔しいよね、悲しいよね」

加古「うっ、ふっる、たかぁ……っく、うあぁ……あぁ!」

 苦しくて、悲しくて、つらいはずだ。それが悔しいということだ。

古鷹「ね、加古……?」

―――


初春「なにをウジウジしておるんじゃお主らは!」

 張り上げた声が室内に響いた。子日たちは今、初春の存在に気づいたようにびくりと肩を跳ね上げた。

初霜「初春ちゃん……?」

初春「お主らは負けた! 完膚なきまでにの!」

子日「う……」

 はっきり言われて子日も顔をしかめる。

若葉「そんなことを、わざわざ言いに来たのか……?」

 満潮を相手に疲れ果てたのか若葉も緩慢な動きでこちらを見遣るだけだ。
 やれやれ完全にたたき折られているようだ。内心首を振る初春はあえて声を張り上げた。

初春「情けない奴等じゃのう、お主らは負けはしたがまだ沈んではおらん。つまりまだまだ強くなることができるじゃろうて!」

初霜「強く、なれる……?」

―――

加古「あたし、が……?」

古鷹「ちゃんと言ってたじゃない、『強くなりなさい』って。だから、強くなって見返してやればいいじゃない?」

 加古が顔を上げる。古鷹はじっと、優しい顔で加古を見ていた。

加古「あたし、強くなれるかな……?」

古鷹「もちろん」

加古「提督のこと馬鹿にされても、ちゃんと否定できる?」

古鷹「きっとね」

加古「誰にも負けないくらい……?」

古鷹「そのためには、もっとがんばらないとね」

―――


若葉「そうか……そうだな、私たちはまだ未熟だったんだな」

初霜「ふふっ、提督が来て、毎日訓練して……それで強くなった気がしてただけなんですね」

 徐々に明るさが戻ってくる。

子日「子日たちは、弱いんだよーぅ……」

初春「だからこそ、もっと強くならねばならん」

 うなだれていた姉妹艦たちの顔が前を向いて晴れやかな表情が浮かんでいた。

初春(提督殿の言っていたことは、こういうことかの……)

―――

 発案は祥鳳だった。

祥鳳「実戦経験を積んでらっしゃる方たちと真正面からぶつかって、どういう結果になるのかということを知ってもらうんです」

 結果は火を見るより明らかだ。勝てるわけもないし、まともに相手になるかどうかすら怪しい。だが、

提督「一度くじけさせることでそれをばねにする、と」

祥鳳「どうせ喧嘩するならおもいっきりやってすっきりさせたほうがいいというのが一番ですけど、そういう風に持っていけば訓練の一環として処理することもできますし」

提督「……祥鳳、何気に腹黒いな?」

祥鳳「物は考えよう、ですよ♪」

 そういう会話がなされて、今回の艦隊戦演習が執り行われたのであった。
―――


~食堂~

加古「はふはふっ、ガツガツ!!」

若葉「あぐんぐっ、んぐんぐ……!」

長良「うわぁ……」

鬼怒「すごい……」

 その日の夕食。 傍目から見てあきれるほど食事を掻きこむ敗北組の姿があった。

子日「んぐっ、んぐ! 間宮さんおかわり!」

初霜「私もです!」

間宮「はい、あわてなくてもちゃんとありますよ」

 流石の間宮はニコニコ平然としてご飯をよそっている。鎮守府の一般職員や整備士たちの対応もしていた分、慣れているのだろう。

提督「これは、なんだ?」

 問う提督に、答えるのは苦笑する古鷹だ。

古鷹「ええ、提督の言った通り悔しさをばねに復活はしたんですが」

初春「まずはしっかり食べるのじゃとかのたもうて、このざまじゃ」

 何やらやけ食いの様相を呈している四人に、遠征艦隊組も少々引き気味だった。

五十鈴「まぁ、いいんじゃない? しっかりした体作りは重要よ」

長良「体、作りねぇ……」

名取「え、えっと、なに……?」

 何やら議論を醸しそうな空気が一部で流れる中、押し黙って黙々と食事を口に運ぶだけの満潮に、

若葉「みひひお!!」

満潮「……しゃべるか食べるかどっちかにしなさいよ汚いわね」

 力強く箸を突き付ける若葉と、あくまで冷静に突っ込む満潮。しばし考えた若葉はむぐむぐと口の中のものを呑みこんで一息、

若葉「満潮、お前にだけは絶対負けないから覚えておけよ」

満潮「勝手に言ってなさい」

朧「とか言って、あれから散々『きつい事言ったかしら』とか頭抱えてt満潮「わあああああああああああああ!!!」」

如月「ちょっとぉ、食事中に大声出すもんじゃないわよぉ?」

祥鳳「ふふっ、人が増えるとにぎやかですね」

 4人はもうすぐ元の鎮守府に帰っていくとはいえ今この瞬間は同じ釜の飯を食べているという、この鎮守府の風景だ。

由良「こういうのもいいわね。ね、鬼怒? ……鬼怒?」

 由良が声をかけているのに、鬼怒は反応が無い。みれば、じっと料理の盛られた皿を見つめて何かを考え込んでいるようだ。そして、何かを決心したように顔を上げると、

鬼怒「提督、ひとつお願いがあるんだけど、良いかな?」

提督「鬼怒? どうした」

名取「鬼怒ちゃん?」

 鬼怒は一度名取を見、そして間宮を見、一息置いて、言った。

鬼怒「間宮さんと、勝負させてくれませんか」

提督「…………え?」

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。一回は挫折してもらわないとなー、とか思いつつ書いてみました。

 クリスマスアプデ来ましたね。那珂ちゃんもクリスマス続投とのことで嬉しい限りですが、相変わらず祥鳳さんには何にもないですねー瑞鳳にはあるのに……くっ
 それは置いておいて(は良くないけどとりあえず脇にのけて)何やら去年に比べて特殊ボイスがいっぱいある模様、まだ艦これ開けてないの早く楽しみたいところですなぁ……

 さて、次回は鬼怒と間宮さんまさかの対決です。来週のこの時間くらいに上げられればと思っておりますが、予定はあくまで未定なのでお許し下さると幸いです。
 では、今夜はこの辺で……

 どうも、メリークリスマス(遅刻)な>>1です。こちらはホワイトクリスマスなんてものもなく(雨が降りました……)結局1日うだうだレベリングして終わりましたが皆様いかがお過ごしでしたでしょうか?
 何やら行き詰まりが長引く予感ですので取りあえず軽く1~2レス分ほど投下しておきます。料理の描写は、普段からやってても存外難しいものです……
 では、ちょっぴり投下していきましょう

 ぶつかって、それで無理なら踏ん切りが着く。
 加古たちの演習を見て触発されたらしく、そんなことを鬼怒は言っていた。熱血の気がある彼女らしい言葉だが、名取は少し乗り気ではなかった。

名取「あ、あの、私からもお願いします!」

 なかったと思っていた。

名取「私も、なんか納得のいく結果が欲しい、といいますか、その……」

提督「納得のいく、結果か」

 騒がしかった夕食後の執務室、提督は祥鳳と顔を見合わせていた。長くなりそうだったので、食後のこの時間に執務室に呼んだのだ。
 余談だが、あの後食べに食べた4人は食べ過ぎで膨れ上がった腹を抱えて唸りながら軽巡組に部屋まで搬送されていた。満潮も心底呆れた顔で見送っていたが、あとで隅っこでぷるぷる肩を震わせていたのを提督を含めた数人が目撃している。

祥鳳「どうしましょう?」

提督「そうだな……」

 考えるそぶりを見せつつ、提督は承諾するつもりだった。
 これはもうそういう流れが来ているということだろう。これは落ちこぼれとして腐っていくだけだった彼女らの間に風が来ている。

提督「いいだろう。ただ、まずは間宮に確認を取ってからだがな」

鬼怒「わぁ……! ありがとうございます!」

名取「あ、ありがとうございます!」

 きっとチャンスが巡ってきていると、そう思うことにした。

提督「さしあたっては食材との兼ね合いに、日程や審査方法だな……」

鬼怒「私、間宮さんに聞いてくる!」

名取「ま、まってよ鬼怒ちゃ~ん!」

 きっと多少の手間を取られるのだろうが、それで彼女たちの成長が促せるなら悪くは無いだろう。

祥鳳「私も、お二人と一緒に行ってきますね」

提督「ああ、頼んだよ」

 提督はさっそく書類の作成に取り掛かった。もちろん報告すべき上官がいるのかどうかすら怪しい(強いてあげるなら大本営だが、まだ一度も届いた事は無い)ので形だけの話だが、やらないよりはましだ。
 手書きなのでフォーマットも何もあったもんじゃないからやはり手間だ。

提督(だが、惜しむまいよ)

 ただ、主任妖精にワープロの開発くらいは依頼しても罰は当たるまい、そう思わなくもない提督であった。

―――――
―――

 ~次の日・中庭~

若葉「と言うわけで始まったぞ、第一回端野鎮守府料理対決だ」

祥鳳「次回があるのでしょうか……」

 その後、手続きはトントン拍子に進み、結局次の日に開催の運びとなった。思い立ったが吉日、というより善は急げということだろうか。
 中庭にはどこから持ってきたかガスボンベとガスコンロ、屋外用のシンク等の調理スペースが設営され、運動会用のテントの下に長机とパイプいすが並び、審査員として艦娘たちが座っている。ちなみにテントは体育倉庫の奥に眠っていたもので、「端野臨海学校」と書かれているものだ。そう考えれば、こうした屋外調理設備があってもおかしくはなさそうだ。
 その横にもうひとつテントが並び、四人分の席が用意してあった。

若葉「気にしてはいけない。とにもかくにも始まった料理対決、実況は私、若葉が務めさせてもらう」

 ご丁寧にマイクスタンドを立て、「実況」と書かれた三角柱の紙が貼られている。

若葉「解説には、提督の秘書艦で鎮守府のまとめ役でもある祥鳳さんと、縁の下の力持ちな主任妖精さんに頼むことにした」

祥鳳「わ、私そんなにえらくなってるんですか?」

主任妖精「縁の下ねぇ……セリフでの登場は>>425以来だから、よっぽど縁の下の底なんだろうね」

若葉「気にしてはいけない」

 さらにその隣には審査員長と書かれた紙が張り付けてあり、

若葉「そして審査員長として提督にもこちらに座ってもらっている」

提督「気合入ってるな、若葉?」

若葉「気にしてはいけない」

 どこまでそれで通すつもりだろうか?

若葉「ルールは簡単だ、料理を作って食べてもらい、多数決で勝敗を争う。審査員は端野鎮守府の艦娘達と、遠征でやってきてる呉の4人、そして私たちの全員だ」

朧「えっと、私たちまでいいんでしょうか」

満潮「というか、長居し過ぎな気がしないでもないわ」

五十鈴「楽しめるものは楽しんでおくのも仕事のうちよ」

如月「食べ過ぎは肥満のもと何だから気をつけないとだめよ?」

若葉「では、本大会の対戦者を紹介しよう、まずは赤コーナー」

 ちなみに二つの調理場に赤青の区別はされていない。

若葉「端野鎮守府の台所番、私たちの胃袋を支え続けた頼りある料理人たち。鬼怒さんと名取さんだ」

鬼怒「よっし、気合入ってきた!」

名取「ちょ、ちょっとはずかしい、です……」

 いつもの制服の上に、これもまたいつも付けていたエプロンを装着。まだ一月と経っていないのに妙に頼もしく見えるのはなぜだろうか。

若葉「対して青コーナー。呉からやってきた正真正銘の専門家、あらゆる鎮守府の胃袋の番人が一人。間宮さんだ」

間宮「本日は宜しくお願いしますね」

 割烹着を身に付け淑やかに礼をする。どこにも余計な力は入っておらず、まさしく平常心の彼女だ。

若葉「食材は冷蔵庫に入っている物、食器は要望があれば何でも用意する、時間も無制限で造り終わったら終了。ただし終了宣言を出した時点で調理は温め直し以外は禁止とする」

提督「なお、食材は間宮が持ってきた食材を使用させてもらっている。無駄にはしないように」

若葉「それでは、スタートだ!」

―――

 本日は以上とさせていただきたく。短い……わかってはいましたが短い……

 今回はコメディテイストでお送りいたしております。とはいえギャグセンス皆無の>>1に果たしてどこまで面白いコメディが書けるか……我ながら無謀な事をしているのではないかとorzな>>1です

 次回はおそらく年明けです。年内に投下に足る分は書けなさそうなので……と言うわけで皆様よいお年を。来年もうだうだ書いておりますがどうぞよろしく
 では、今夜はこの辺で……

 遅刻申し訳ない、>>1です。そんなに長くは無いですが、キリがある程度良いので投下しにまいりました
 料理の描写って戦闘以上に難しいですね、どうしても単調な文章になってしまいます。なにか資料になる本でもないものでしょうか?

 ともかく、少し投下していきましょう……

 まず双方は冷蔵庫へ急いだ。中には備蓄されていた食料がまんべんなく詰めてある。そして双方が手に取ったのは

若葉「両者ともに玉ねぎを取ったぞ」

提督「それに肉だな。鬼怒名取組は豚肉、間宮は牛肉だ」

 備え付けのコンロは双方二つずつ、鬼怒たちは豚肉を炒め始めつつ玉ねぎを細切りにしていった。
 対して間宮は少し多めに取った玉ねぎをみじん切りと細切りに分け、コンロの一つでみじん切りの方をとろ火でいため、もう片方のコンロに牛肉と細切りの方を入れてこれも炒め始めた。

若葉「両方とも肉料理の様だな」

祥鳳「ええ、しかもこれは両方とも煮込み系の料理でしょうね」

提督「なるほどな……」

若葉「どういうことだ?」

提督「二人とも、真剣だということさ」

―――


 鬼怒、名取は真剣だった。
 もちろん真剣勝負を挑んだのだから当然だ。ただ、肝心の料理を何にするかは最後まで迷った。もちろん得意料理で挑めばいいのだが、自分たちの得意料理が一体何なのかと聞かれると首をかしげざるを得ない。
 そんなこと、一度も意識なんかしたこと無かったからだ。
 そこで思い出したのは、提督の事。
 着任してすぐの頃、ひょっこり彼が食堂を訪れた時の事である。

鬼怒「ここの艦娘達以外で初めて褒めてくれたんだ」

 肉、玉ねぎに続いて取りだしたニンジンを洗って乱切りにしながら鬼怒は言った。

名取「じゃあそれが得意料理で、いいよ、ね?」

 肉と玉ねぎをごま油で炒めながら名取が引き継いだ。
 言っている間にも鬼怒は手際よくジャガイモの皮を剥いて一口大に切っていく。そして炒めていた肉の色が変わってきたところでニンジンとジャガイモを投入、これをよく炒めた。

鬼怒「今のうちに、と……」

 鬼怒は別の器でしょうゆ、酒、みりん等を混ぜ合わせておき、計量カップに水を用意している。良く息のあった動きだ。
 ここにきてずっと二人でやってきた。ずっとというには少し短いかもしれないが、それでも何だかんだで二人でやってきたのだ。最初は当番で一緒になっただけだったけれど、気付けばこうしてみんなの胃袋を守った来たのは自分たちだ。
 そんな自負を抱くくらいには今の仕事を楽しみ、誇りのようなものを持っていた。
 そう、艦娘の本分から考えればとんでもない話だが、彼女らは自分の仕事にやりがいを持っていた。
 だからこそ

鬼怒「この勝負」

名取「負けられない……!」

―――


 対する間宮も、似たような行程で料理していた。玉ねぎと肉に火を入れつつ、ニンジンやジャガイモを切っていく。こちらは少し小さめだ。
 手を動かしつつ、提督の指示を思い出す。

提督『遠慮はいらん、全力で戦ってやってほしい。それが彼女らのためになる』

間宮「全力、ですか……」

 本来競うために腕を磨いたわけではないし、そんな使い方をするだなんて思ってもみなかった。だから全力と言われてもいまいちピンときていない所がある。

間宮「要は、自分の十八番を作れという事でしょうか……」

 そういう事なら話は早い。自分の十八番と言えばカレーだ。間宮ひとりひとり違うカレー粉を使って作りだされるそれは、もう失敗のしようのない料理だし誰にも負けない自信がある。
 ――勝ちたいですね
 そう思うと不思議と胸の奥に湧いてくるものがあった。これは、闘志……? 自然と手に力が入る。炒めていた牛肉と玉ねぎが少し跳ねた。

間宮「わわっ! 危ない」

 フライパンで慌てて迎えに行く。初心者みたいなミスに思わず苦笑する間宮。だが調子は掴んだ。すると戸惑う自分はなりを潜めて、不思議な高揚感が身を包むのを感じた。久しく感じていない感覚だ、ひたすら訓練をして同期と高め合った養成学校時代を思い出す。普段とは違う充実感に自然と笑顔が浮かんでいた。

間宮(勝負に熱くなる、やはり曲りなりにも艦娘なんですね、私も)

 肉に火が通ったあたりで一度皿に移し、代わりにジャガイモとニンジンを投入して炒める。肉から出た脂を絡めるようにしばらく火を入れたら肉と玉ねぎを戻して混ぜ、赤ワインを入れた。

―――

提督「二人とも、気合が入っているな」

若葉「うぐ……実況が追いつかない」

祥鳳「無理に実況する必要は無いと思うんですが……」

 審査員席にも両組の熱気が伝わっていた。気合のこもった空気に、観戦している艦娘達も思わず手に汗握るほどだ。

加古「料理してるのを眺めるだけって何か暇しそうだなー、って思ってたけど」

由良「なんだろうね、なんかわくわくしてきた」

主任妖精「というか腹の減る時間だねぇ、目の前で着々と出来上がっていくさまってのはそれだけでわくわくするもんさ」

 盛り上がってきている。実に楽しそうだ。
 そしてそうこう言っている間に二組とも調理が佳境を迎えようとしている。本格的に胃袋を刺激するにおいに審査員達のテンションもつられてどんどん上がっていく。

若葉「両者とも、煮込みに入ったようだぞ」

提督「見ているこっちは生殺しだな」

主任妖精「匂いだけが充満して、それでもこっちは手を出せないからね。料理を見せ付けるだけって拷問、ありだと思い始めたさね」

子日「うー、お腹空いたー! 空腹の日ーッ!」

初春「騒ぐでない子日、妾も空腹でひもじいのじゃ」

 完成までは今少し時間がかかるようだった。

―――

 本日は以上とさせていただきたく。次回、決着です

 足柄さんと吹雪に続き、今度は那智さんと初霜に改二が来るようですね。端野鎮守府に3人目の改二ですかー、流れ来てますよね? ね!?
 そしてついに始まりました艦これのTVアニメです。つっこみどころや違和感が多少残るものの>>1は悪くないのではないかと思っておりますが皆様はいかがでしょうか。弓道がどうとかおっしゃる方もいますが、まぁ、肩肘張らずに楽しみたい所存です

 さて、次回の投下ですが、また忙しくなり始めたので少し間が空きそうです。今月中には出来ると思いますので、少々お待ちいただきたく
 では今夜はこの辺で…

 今月中……今月中って何だっけ? 遅刻が基本になってまいりました、いけない傾向に背筋が寒くなる>>1でございます、毎度毎度申し訳ない……
 ようやく料理対決の決着シーンが書きあがったので投下に来ました。正直gdgd感半端無いのですが、これ以上は厳しそうなのでそのまま上げることとします。精進が足りませんねぇ……

 では、今夜も少し投下していきましょう

若葉「両者、料理が出揃ったようだぞ」

提督「そうらしいな」

祥鳳「もうお腹と背中がくっついてしまいそうですね」

主任妖精「まったく地獄のような時間だったさね」

 料理の仕上げと言うのは一番食欲をそそる匂いを発する行程だ、待っている艦娘は皆一様にどこか異様な視線を料理に向けていた。

如月「空腹は栄養が足りてない証拠、続くと脂肪の吸収が多くなって太っちゃうのよ?」

満潮「や、そういう蘊蓄いいから」

朧「早く、食べたいな」

若葉「審査員も皆お待ちかねだ、まずは間宮の料理から審査しようか」

 なお、配膳するのは手間なので、直接もらいにいくという形式だ。何ともしまらない絵だが、そこはきにしてはいけない。

間宮「間宮特製カレー、炒め風です」

 皿に盛られているのは水分少な目のカレーライスだった。

若葉「では、全員揃っていただきます」

全員「「「いただきます」」」

 スパイスの香りが空腹の胃袋に突き刺さる。みんなスプーンを手に取る間も惜しいとばかりに食いついた。

加古「ん、お、お!? これは!?」

長良「美味しい!」

朧「前に食べたのに比べると、ちょっと辛いかも……でもおいしい!」

主任妖精「マサラカレーの類いか」

間宮「はい、そんな感じです」

 間宮カレーと言えばきっちり煮込んで作るためこの場で作るには時間がかかりすぎる。

提督「味付けを濃いめにして炒めでさっと味を通したか」

祥鳳「味が染み込んでない分、具の味が引き立っててまた違う味わいになってますね」

子日「おかわりー!」

初霜「子日ちゃん! まだ鬼怒さんたちの料理があるから我慢だよ!」

 空腹にお預けということもあったからか、ずいぶんと好評のようだ。
 その様子に鬼怒と名取は、

鬼怒「うーん、さすが間宮さんだなぁ」

名取「さすがのプロですね……」

 感心こそすれ焦りの色は見えない。名取もどこか落ち着いた様子だ。それが自分の料理に対する自信なのかそれとも別の何かなのかは定かではないが、

提督(楽しめているようだな)

 少なくとも、自分で挑んだ勝負であるとはいえ、今のこの状況を楽しんではいるらしい。きっとそれは彼女たちにとっていい刺激になるはずだ。

提督「ふむ、堪能した……では、次は鬼怒名取組だな」

 そんな思考は水と一緒に一度飲みこんで、今は審査員としての役目を果たすこととした。

鬼怒「はい! 私たちのは肉じゃが定食……」

名取「……風ですっ」

 どこかで聞いたことあるフレーズと共に出てきたのは、見た目もシンプルな肉じゃがと白いご飯、漬物のセットだ。まさしく、定食風。

提督「ふむ、では行きわたったところで」

全員「「いただきます」」

 さっきまでとは違ってお預け状態ではなかったという事もあってか、間宮カレーほどのがっつきは無かったが、

祥鳳「あ……これは」

主任妖精「ああ、これは美味い」

古鷹「うーん、落ち付く……」

若葉「よく味が染みてて、これはいいな」

満潮「あ、おいし……じゃなくてッ、まっ、まあまあね?」

 歓声が上がるわけではない。しかし、染みわたるような充足感が艦娘達の間に満ちているようだった。

祥鳳「よく、味が染みていますね」

若葉「この短時間に、良くできたな」

名取「本当は、もう少し時間がほしかったんですけど……」

提督「いや、この短い時間でここまでできたという事が称賛に値するよ」

鬼怒「あ、あはは、やだなぁ、照れちゃうなぁ」

 大絶賛の空気だが、間宮も混ざってニコニコしている。むしろ味見しつつ「なるほど……」と何かしきりにうなずいている。

若葉「うむ、堪能したな……さて、それではそろそろ決着と行こうか」

 空腹からの解放に満足感溢れる空気が充満していてすっかり忘れていたらしく、その言葉に反応するのに少しタイムラグが発生していた。

初春「お、おお、そうであった」

主任妖精「あー、満腹で満足してすっかり忘れてたねぇ」

提督「で、では採決をとろうか」

若葉「方法はいたって単純、挙手するだけだ。これには私や提督も投票権があるのだが、集計は私たちが合同で行い、不正の無いようにする」

 鬼怒名取、間宮。両者の間に微かな緊張が流れる。まぎれもなくこれは勝負であり、両者は対戦者同士だ。この勝負の勝敗によって明確に何かが変わるというわけでは無いが、真剣勝負であることに変わりは無い。

提督「では、採を取ろうと思う」

如月「迷うわねぇ」

五十鈴「心に従うまでよ、迷う余地は無いわ」

初霜「うー……うーん!!」

 頭を悩ませている者もいるが、提督は進めることとした。

提督「では、挙手してもらおうか――」

―――――
―――

鬼怒「あー、終わっちゃったねー」

名取「うん、そうだね……」

 かちゃかちゃと。
 食器を片づける音が厨房に響く。日も暮れかけていて、照明が落としてある食堂はどこか物悲しい。
 終わってみればなかなかの接戦だった。票はかなり割れ、実際に数えてみるまではっきりしなかったが、

鬼怒「やっぱプロには勝てないね」

 最終的に勝利を手にしたのは間宮だった。

間宮「いえ、お二人の腕には正直感服しましたよ。私もまだまだだなー、って身が引き締まる思いでした」

 鬼怒と名取が皿を洗う横で、間宮は夕食の準備をしつつそう笑う。

間宮「実は、内心焦ってたんですよ?」

鬼怒「またまた~」

名取「やっぱり、私たちは修行不足でした……」

 悲しそうに言う名取だが、その顔はどこか晴れ晴れとしていて、言葉ほどの暗い雰囲気は無い。

提督「やぁ、今日はお疲れ様だったな」

鬼怒「あ、提督」

間宮「夕食にはまだ早いですよ?」

 厨房をのぞきこんでいるのは提督だ。間宮の指摘に苦笑しながら首を振ると、

提督「いやいや、今日の事をねぎらいに来たのと……」

 鬼怒と名取を見遣り、

提督「二人に提案を持ってきた」

鬼怒「私たちに」

名取「提案?」

 顔を見合わせる二人に、提督となぜか間宮は少し楽しそうな顔をしていた。


―――

 提督の話を纏めればこうだ。
 鬼怒と名取の二人がちゃんと訓練を維持できるというのなら、間宮と相談して当番制で食事の用意をしてほしいというものだ。

鬼怒「え、あの、いいの!?」

提督「ちゃんと両立するならな」

名取「えと、あのっ、がんばります!!」

鬼怒「でも、間宮さんはいいの?」

 そう問う鬼怒に、間宮はいたずらっぽい笑顔で答えた

間宮「ふふっ、提督ったら人が悪いんですよ? 先に私の方には話を通してあったんですよ」

提督「まぁ、あれだ。知らない方が余計な事を考えずに勝負に集中できるだろう?」

名取「まぁ、そうなんですけど……」

鬼怒「提督ー、まーた勝手に話を進めてるー」

提督「うっ、その、なんだ……すまん」

 ばつが悪そうに肩をすぼめる提督が変におかしくて、鬼怒も名取も、そして間宮も堪え切れずに吹き出した。

提督「あー、えー……コホン! と、とにかく! 当番のシフトは三人で相談して決めて、こちらに提出するようにっ、以上だ!」

 せくようにまくし立てて足早に去る提督の背中を、三人分の笑い声が叩いた。

―――――
―――

 暗く冷たい場所だった。
 光届かぬ場所に、一つ二つと。浮かび上がるように仄かなしかし妖しい光がともる。

――コッチ、カ……?

 声は無い。しかし何かが語らうそんな気配。

――タブン、ソウダ……タシカ、ニ、キコエ…タ

 こぽりこぽりと、泡が昇って行き、闇の中に消える。光はそこここから湧きあがってきて、群れを成し、どこかを目指した。

――イ、コウ……ヨンデ、イルカラ

 光たちは、そのまま闇へと消えて行った。
 後に残るのは静寂と、微かな泡だけだった。

―――――
―――

 次回以降への展開をにおわせつつ、本日は以上とさせていただきたく。自分から首を絞めて行くスタンス、>>1でございます。

 那珂那珂に今回は難産でした。うまく状況が脳裏に浮かんでこないといいますか、プロットは基本最低限の感覚で書くからこうなるんですよねー……しかしプロットを固め過ぎると逆に書けないという、我がままorz

 さて、次回の更新……の前に、時系列が小ネタに追い付いたので一つ投下する事にします。ちなみにこちら、書きあがったのは去年の11月だったり。これを投下するためにこの難産を乗り切ったといっても過言ではありませんw

 では投下しましょう、『提督、お菓子を作る』です

 間宮が来たことで鬼怒と名取が厨房に立つことは少なくなった。とはいえ、当番制ということで今でも美味しいご飯をつくってもらっているし、暇さえあれば間宮の調理補助として手伝いにいそしんでいる。

提督「というわけで、労いの意味も込めてなにかごちそうでもしようと思うわけだが」

間宮「なるほど、優しいですね提督」

 夜、執務や雑用を終わらせたあと、提督は間宮にこっそり相談を持ちかけていた。

提督「とはいえ、私もこれと言って得意な料理があるわけでもないし、あの二人に敵う味を出す自信はない。なにかいい案はないだろうか?」

 二人の腕前は身を以て実感している。日々世話になっているのだから当然だが、贈り物をしようにも買い物ができるような場所があるのかどうか、そういった地理的な知識は残念ながらない。そうなると労いとして贈れる一番簡単な物が料理なのだ。

――その辺りのリサーチもそのうちせねばなるまいな

間宮「それでしたら、簡単な物がありますよ」

 間宮は考えるまでもなくすぐに答えてくれた。

提督「本当か?」

間宮「ええ、有り合わせの材料で簡単に作れますよ」

提督「ぜひ教えてれ」

間宮「ふふ、かしこまりました♪」

 実に楽しそうな笑みを浮かべる間宮。元来こういうことは好きらしい。

提督「すまないな、君も忙しいだろうに」

間宮「いいえ、これも仕事のうちですよ」

 そう言うと、うきうきした様子で食材倉庫へと入っていった。

――――――
―――

 (>>723酉変わってますが、ちゃんと>>1ですよー)

名取「私に呼び出しがかかるなんて……」

鬼怒「いや、あたしもだけど」

鬼怒「しかし、なんで食堂?」

 次の日。昼の訓練のあとに二人は食堂へと足を運んでいた。提督に呼び出されたためだ。何やら大事な用事があるといっていたが、いったい何だというのだろうか。皆目見当のつかぬまま二人は食堂へと入っていった。

名取「し、失礼します」

鬼怒「提督? 来たよー」

提督「おお、来たか。すまないがもう少し待ってくれないか?」

 声はすれども姿は見えず。見回していると、厨房から音がしているのに気づいた。

鬼怒「提督? 厨房ですか?」

提督「ああ、すぐ出来るから座って待っててくれ」

名取「すぐ、出来る……?」

 思わず顔を見合わせる二人。まさか、提督が料理をしているのだろうか。確かに以前手伝いをしてくれたときは慣れた手つきでこなしていたが、まさか料理を振る舞うつもりとは。

鬼怒「座ろ、名取。覗くのは失礼だよ」

 他人が料理してるのをじろじろ見るのは失礼だと考えた二人は、黙って待つことにした。
 そして待つこと数分。

提督「すまない、待たせたな」

 そう言って厨房から出てきた提督は、どこから持ってきたのかエプロン姿で、両手に皿を持っていた。

鬼怒「ううん、全然」

名取「えと、はい、全然待ってないです」

提督「はは、ありがとう。それでは、どうぞ」

 ことり、と、皿がおかれる。ふわりと甘い匂いが飛んできた。

鬼怒「え、これって……」

名取「ホットケーキ?」

 クリーム色の生地にきれいな焼き色のついた丸く平べったいそれは、まさしくホットケーキだ。四角いバターが焼き立てであろうそれの熱でとろけているのがまたなんとも食欲をそそる見た目だ。

提督「まぁ、食べてみてくれ。シロップはここに置いておくぞ」

 飴色のシロップで満たされた容器がおかれる。

名取・鬼怒「い、いただきます」

 二人は少し呆然とした様子でナイフとフォークを手に取り、シロップをかけて口に運ぶ。

鬼怒「お、これは……」

名取「甘くて、美味しい……!」

 口一杯に広がる甘味に二人の顔も思わず綻んだ。二人ともこういうお菓子は久しぶりで、夢中で一枚平らげた。

鬼怒「すっごく美味しいよ!」

名取「ちょっと感激です……!」

 気弱な名取も思わずトーンが上がる。それを見た提督も安堵の表情だ。

提督「喜んでもらえたようで何よりだ」

鬼怒「でも、急にどうしたの?」

提督「いやなに、当番制になったとはいえ二人には毎日美味しい料理をごちそうになってたからな。そのお礼とでも言おうか」

名取「提督……」

提督「勝手な真似をして君たちに嫌な思いもさせてしまったし、先日の料理勝負も頑張ってもらった。とにかくそういった諸々の意味を込めて作ってみた」

提督「いつもありがとう、二人とも。今後ともよろしく頼む」

 ペコリと頭を提げる提督に暫し呆然とし、

鬼怒「そんな、提督……」

名取「ちょ、ちょっと、胸一杯です……」

 不意に目頭が熱くなる。提督は自分達をちゃんと大切に思ってくれている。その事が改めて実感できると、胸に来るものがあった。

鬼怒「こっちこそ、意地張ったり我が儘言っちゃったりで」

名取「その、ごめんなさい」

提督「いいんだ。こっちも悪かった。まだまだ至らない点もあるだろうが、よろしく頼むな」

鬼怒・名取「「はいっ!」」

 満面の笑みに、提督も思わず笑顔になる。

提督「さぁ、種はまだあるんだ、じゃんじゃん食べてくれ」

鬼怒「それいいんだけど、私たちだけってのはちょっと」

名取「気が引けちゃいますね」

提督「そういうと思って、もう手配してあるさ」

 言うが早いか、食堂の扉が勢い良く開いた。

子日「子日、お呼ばれの日ー!」ネッノヒー!!

初春「これ子日、行儀が悪いぞ」

加古「ん~、いい匂いだぁ!」

古鷹「ふふ、楽しみだな」

朧「ホットケーキなんて、久しぶりかも」

 子日を先頭にぞろぞろとみんなが入ってくる。友提督のところの艦娘も一緒だ。

間宮「連れてきましたよ、提督」

提督「ああ、ありがとう。さぁ諸君、席についてくれ。精一杯ご馳走させてもらうからな」

艦娘たち「「おおー!」」

 大盛り上がりである。内心さばききれるか心配ではあるが、やるからには全力だ。

提督「それでは、じゃんじゃん焼くので残すんじゃないぞ」

 歓声を背に受けて厨房へと入る。
 忙しくなりそうだった。

―――――
―――


 ひとしきり騒いで、みんなで楽しんだらしく満足そうな顔で帰っていった。
 疲れはてた提督だが、間宮にも手伝ってもらってなんとかさばききった。今は残ると言って聞かなかった間宮、名取、鬼怒と後片付けをしている。

鬼怒「今日は本当に楽しかったなぁ」

名取「もう、お腹一杯です」

提督「楽しんでもらえたようで何よりだ」

名取「あ、あの、シロップとかホットケーキミックスなんて、どこから調達したんですか?」

提督「ああ、間宮から教えてもらった自作品だ。案外作れるものだな」

鬼怒「え? あれって自作できるの!?」

間宮「よろしければ、今度お教えしますよ」

名取「ぜ、ぜひお願いします!」

間宮「ふふっ、喜んで」

 提督は、やいのやいのいい始める三人の声を聞きながらもくもくと皿を洗っていた。
 自分のせいとはいえ一時はどうなるかと思ったが、うまく回りそうだ。自分もよりいっそう精進せねばなるまい。なんのためかは良くわからないが、提督してここにいるのだから、当然のことだろうと思っておくことにした。
 この後、食堂では度々ホットケーキが並ぶようになり、艦娘たちの士気を大いに盛り上げることとなる。間宮と鬼怒、名取も日々甘味の研究にいそしむようになるのだが、それもまた、やはり別のお話なのである。

 以上、です。何と言うか、本編の更新より長くないですか……?

 残りの古鷹との休日はもう少し後になります。出してくれた方にはもう少しお待ちいただきたく。

 さて次回ですが、できれば2週間以内に上げたいつもりです。しかし降りてこなかった場合もう少しかかることになります……大目に見ていただけると幸いです。

 では、今夜はこの辺で……

 ハッピーバレンタイン(遅)、>>1です。皆様バレンタインはいかがでしたか? >>1はアイテム欄のチョコが二つになっただけで大したことはありませんでしたね、ええ、ホント……
 大した量ではありませんが、キリのいいところまで書けたので、少し投下していこうと思います。そろそろ次のお話にシフトしていきますよ……

 エンジンの回転する音と風を切る高い音が合わさり、そしてそれらがいくつも重なって周囲を旋回している。重い音、高い音、そこにひっきりなしに音を立てる対空電探の音が木霊して頭が痛い。

五十鈴「くっ、五十鈴をなめないで!」

如月「もうっ、耳が痛いわぁ……!」

 対空機銃をばらまくが一向に当たる気配は無く、隙を的確について艦戦が機銃を撃ちかけてくる。

朧「っく! 負けないから!」

 本来艦上戦闘機は艦船に直接損傷を与えるためのものではないが、艦娘の戦闘に置いてはその限りではない。有効打を与えることはもちろん無理だが、その艦上戦闘機本体の速度とそこから放たれる機銃の速度と威力はそれなりの物があり、けん制には十分すぎる効果を発揮するようになっていた。

満潮「ブンブン……鬱陶しいのよっ!」

五十鈴「満潮! 直上よっ、避けなさい!!」

満潮「えっ、あっ!?」

 零式艦戦21型に交じってひらりと舞い降りてきた九九式艦爆が満潮の真上から腹に抱えた爆弾を手放す。艦爆の下降速度と自由落下の速度が乗った爆弾は正確に見上げた満潮の眉間に突き刺さった。

満潮「きゃあっ!?」

 水音と共に塗料がぶちまけられて満潮が全身赤色に染まる。

朧「満潮っ!」

如月「朧ちゃんいけない!」

 満潮に気を逸らした朧のその死角、水面ギリギリをすべるように飛んできた九七式艦攻が魚雷を放った。

五十鈴「させないわ!」

 機銃を向ける五十鈴だが、それを阻止するように艦戦が視界を遮り機銃で体勢を崩しにかかる。

五十鈴「ああもうっ、ちょこまかと!!」

 振り払うように機銃をばらまくも、一瞬遅かった。

朧「くっ、きゃあ!!」

 朧の足元から爆音とともに青色の塗料の水柱が上がる。一瞬朧の姿が見えなくり、

朧「うぅ…やられた……」

 出てきたのは全身塗料まみれの哀れな駆逐艦だった。

如月「いやぁん、ちょっとかかったぁ」

五十鈴「くぅっ! 五十鈴がここまでやられるなんて!!」

 けん制の機銃もペイント弾なので、叫ぶ五十鈴も当然そこここ緑色の塗料で汚れている。
 そして数分後、奮戦むなしく如月ともども頭から塗料を被ることになった。

―――


~大浴場~

朧「うぅ、悔しい……」

 湯船につかる朧がぶくぶくと泡を立てて膝を抱えている。如月はその横でのんびりとお湯をすくっては落としして入浴を楽しんでいた。

五十鈴「しかしまぁ、こんな辺境にえらい手練がいたもんね」

 手で肩に湯をかけながら、肩越しに五十鈴は石けんで体を洗う祥鳳に言った。

祥鳳「手練だなんてそんな……条件が良かっただけですよ」

 今回の訓練は敵機動部隊の包囲を受けたという想定で、最初から艦載機に囲まれた状態での戦闘開始だった。つまり、祥鳳の圧倒的有利だったというわけだ。

五十鈴「だからって軽空母一隻の航空隊で仮にも水雷戦隊一つを完全に手玉に取っといて良く言うわ」

朧「彗星とか使われてたら、もっと危なかった、と思います」

満潮「はんっ、手加減してたっていうの?」

祥鳳「い、いえ、そういうわけでは……」

五十鈴「…………」

 困った顔をする祥鳳をじっと見る五十鈴。祥鳳は隠れるように身を縮みこませた。

五十鈴「あんたもしかして――」

―――――
―――

 ~桟橋~

提督「じゃあ友督には長い事拘束して済まなかったと伝えてくれ」

 海上は風こそ強いが概ね天気は良好、悪くない航海日和だ。

五十鈴「なかなか楽しかったし、またきてもいいのよ?」

満潮「ふんっ、私はごめんだけどね」

 五十鈴達が元の鎮守府に帰ることになった。遠征としてやってきたのだ、むしろ数日も滞在してた事は異常と言える。
 任務としては間宮を送り届けたうえでしばらく運用の観察などを行うという物だったから仕方は無いのだが、小規模の部隊を数日も鎮守府から出すとなるとそれなりの手続きや準備が必要だ。礼に一度まいらねばならんなと思いつつ提督は既に海面に並ぶ4人を見渡した。

若葉「それは困る。次は負けないといったはずだぞ」

 端野の艦娘総出での見送りとあって、桟橋は少しばかり手狭だ。

満潮「うるさいわね、遠いのよここ。それにボロいし、良いのは風呂だけじゃない」

古鷹「あ、風呂は認めるんだ」

満潮「だから、ほら、その……今度はそっちが出向いてきなさい!」

 言い放つと満潮は腕を組んでプイッと背中を向けてしまった。ちらりとのぞく耳たぶが赤くなっているように見える。難儀な性格のようだ、思わず顔を見合わせて笑う提督たぢた。

五十鈴「祥鳳?」

祥鳳「あ、はい」

五十鈴「ちゃんとやるのよ?」

祥鳳「……はい」

提督「……?」

 祥鳳と五十鈴の間で交わされる無言の会話にただ首をかしげる提督。この短時間に二人に通じる事があったんだろうか。
 そんな疑問も挟む余地もなく、その空気はどこかへ流れてゆき、

五十鈴「それじゃ、五十鈴たちは行くわね。友提督に伝言ある?」

提督「苦労をかけた、と」

五十鈴「きっと『だったら飯の一つでも奢れってんだぜ!』って言うと思うわ。」

提督「ははっ、違いない」

 軽口の応酬もそこそこに、五十鈴はさっと敬礼をして海へとこぎ出していった。続く駆逐艦たちも、朧などはたまに振り返っては手を振り、子日や初霜が手を振り返していた。何だかんだ言って、いい刺激になったようだ。

由良「淋しくなるね……」

古鷹「4人だと流石にね」

提督「まぁ、友提督の艦娘ならまた会う機会もあるだろう」

加古「提督の同級生だっけ? 士官学校時代の」

提督「そんなところだ。さぁ、水平線に見えなくなったら戻って授業だ」

子日「はーいっ!」ネノヒー!

提督「五十鈴たちがいる間は何だかんだあって授業が進まなかったからな、軽いおさらいの後テストをする」

名取「えっ、テスト!?」

提督「ちゃんと復習できていれば満点も難しくないぞ」

若葉「と、当然できているとも」

初春「目が泳いでおるぞ」

 4人減ったとはいえにぎやかはにぎやかだ。以前よりも笑顔が増え、元気が良くなったような気がするのはきっと気のせいではないだろう。あれもこれも友提督さまさまだ、本当に食事くらいおごらねばなるまい。

祥鳳「……提督」

提督「祥鳳、どうした」

 そんななかで、一人唇を真一文字に引き結んだ祥鳳が、まっすぐに提督を見ていた。

提督「……わかった、あとで執務室まで」

祥鳳「ありがとう、ございます……」

提督「……さぁ、授業をするぞ。校舎に戻ろう」

 よく晴れた空。吹く風の音は少し低く唸りをはらんでいた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。ゆっくりシリアスさんが顔を出し始めるころです、お付き合いいただければ幸いです。

 さて皆さん、イベント進捗はどうでしょう? 当鎮守府では甲乙丙丙ときて、現在E-5丙を攻略中でございます。ゆーちゃんや香取先生の育成は後回しで、少し資材回復しております。難易度低いとドロップが少々しょっぱいですが、初風、清霜、山雲のドロップを確認しました。このまま天城もきっちりお迎えする方針ですが、はてさて……

 それでは次回ですが、2週間以内の予定とさせていただきます。降りてくればすぐなんですがね……では今夜はこの辺で

 ぬああああああ!! 大変ながらくお待たせしてしまいました!!! >>1でございます!

 時間があると逆に書かなくなるアレでございます、いやはや情けない……同じ艦これでも全く別な作品書いて悦にいったりしておりましたここ何週間かの>>1を誰ぞ爆撃して下され……

 さて、自己嫌悪などはこの辺にしておいて、そろそろ投下していきましょう。またぞろ大した量ではありませんが、お楽しみいただければと思います

――コンコン

 授業が終わり、夕刻少し前。
 執務室の扉が控えめにノックされた。

提督「どうぞ」

 提督の返事を待って、ドアが開かれる。祥鳳だ。基本的にこの時間に執務室を訪れるのは提督の執務を手伝っている祥鳳ぐらいなものなのでいちいち確認することは無い。

祥鳳「失礼します、提督」

 扉をくぐってやって来る祥鳳は最近の柔らかな雰囲気ではなく、以前のような緊張を身にまとった固い空気を背負ってやってきた。最早懐かしくすら感じるが、対して時間はたっていないという事に若干の驚きを感じなくもない。

祥鳳「提督、あの……」

提督「待てって、まずはお茶を煎れよう。頼めるか?」

 努めて優しく言い、提督はふかふかの応接ソファーに座った。

祥鳳「あ、は、はい」

 びくりと肩を震わせて、がちがちに緊張しながら給湯スペースへと向かう祥鳳。何とも先が思いやられる光景だ。
 さて、何が飛び出してくるやら。
 緊張のあまり湯のみを取り落としそうになり慌ててお手玉状態になる彼女の背中を見つつ、提督も腹をくくり直した。

―――

提督「……さて」

 煎れられたお茶を一口、提督は向かいに座る祥鳳を見据える。

提督「聞かせてもらおう」

祥鳳「はい……」

 返事はするものの、なかなか祥鳳は切り出そうとはしなかった。それほどまでに迷う事らしい。
 取りあえず、待つことにした。そういう事は問い詰めたところで良い事にはならないだろうし、そんなことはしたくもない。
 そうして、茶をすする音と時計の音だけが執務室に淋しく漂い続けて。

祥鳳「あの、提督……?」

提督「うん」

祥鳳「わ、私の……私についての話なんです」

提督「うん」

 あえて何も言わず、ただ頷くだけで促す事もしない。促せば慌てるだろうしさりとて無言はしゃべりにくいだろう。

祥鳳「提督は、私たちの欠陥をあえて聞きませんでしたよね?」

提督「ああ、自己申告させるのが早いだろうけど、主観で自身を判断しているのと傍から見ているのとでは違うからな。先入観を持たないためにあえて聞かなかった」

 結果として長良や祥鳳の欠陥とやらはみつからなかったわけだが。

祥鳳「あの、私の欠陥を自己申告しても、いいですか?」

提督「ふむ」

 手を前で組み、顔を伏せた上目遣いで窺うようにおずおずと訊いて来た。きっと精一杯の勇気をひり絞ったいるのだろう、両手は痛ましいほど固く握られている。

提督「……いいだろう」

 むげにはできない、初めて来た頃の彼女を思えばこそ。

提督「聞かせてくれ、君の秘密を」

 答えた提督に、祥鳳は頷き立ち上がった。

祥鳳「では、ついてきてもらっていいですか? 弓道場まで」

―――――
―――

 夕暮れ時の弓道場に、提督は祥鳳と来ていた。前もこんな時間だったなとかふと思いながら、提督は祥鳳の行動を黙ってみている。
 彼女は射場に立つと、傍らに矢を置いた。
 練習用の矢ではない。実戦で使用する艦載機だ。祥鳳に近い順から、九九式艦爆、九七式艦攻、九十六式艦戦、零式艦戦21型、彗星、流星、零式艦戦52型の七本。
 一体何をしようというのだろうか。

祥鳳「提督、よく見ていてくださいね」

提督「……分かった」

 黙って見守ることにした。彼女がやるというのだから、口を出すのは意味がない。提督は頷いて見せ、祥鳳もそれを確認すると、いつものように右そでから腕を抜いた片肌脱ぎとなり。

祥鳳「……行きます」

 一息。祥鳳の顔から憂いが消え、戦いの顔になる。道場の空気が彼女を中心に研ぎ澄まされてゆき、提督も自然と背筋が伸びていた。
 最初に手に取ったのは、九九式艦爆。
 洗練された滑らかな動きで矢を番え、きりりと引き絞り、ひゆぅと放つ。
 放たれた矢は微かな燐光を放ち、分かれ、再び集まると小さな航空機の形を取って空へと昇って行った。エンジン音を響かせて大空を舞う九九式艦爆が夕日に当たって赤く輝いている。

祥鳳「…次です」

 祥鳳は九七式艦攻を手に取ると、全くぶれない動作で空へと打ち上げる。立て続けに九十六式艦戦、零式艦戦21型を素晴らしい動作で打ち上げた祥鳳の手が、彗星を手に取ったところで、

祥鳳「……っ、いきます」

 一度だけ、止まった。

 それも一瞬、流れるような動作で矢を番え、弦を引き絞り、そして。

提督「あ……」

 弦だけが空を切り、矢は、その場に乾いた音を立てて落ちた。

祥鳳「……次、です」

 彼女はそれを拾うことなく今度は流星を手に取って同じように放とうとするが、彗星同様弦が空を切り、矢だけがむなしくその場に落ちるだけだった。紫電も落ちた。

提督「祥鳳、君は…」

 ただ無言で空を舞う艦載機を見つめ、祥鳳は言う。

祥鳳「見ての通りです、提督」

 後ろから見ている提督に、彼女の表情は分からない。

祥鳳「私の欠陥、それは……」

提督「かつて見た事のない艦載機を、扱えない…か」

 かつての空母祥鳳の戦歴ははっきり言って短い。かの戦争において、空母初の損失艦として連合国側では大々的に取り上げられたこともある。そういう事もあって、どの空母よりも戦闘経験も艦としての生命も短かったのだ。
 とまり、原因はそこにあるのだろう。
 以前より彼女の自身の無い所作は気になっていた。元の艦にどのような歴史があろうとも、今後の鍛え方次第でいか様にも強くなる事が出来るはずなのだが、妙に彼女は自分を卑下したがる帰来があるなと感じていたが。

祥鳳「知識は知っていても……どうしても、イメージが出てこないんです。私が、私なんかが新鋭機を使いこなしているっていうその光景が……」

 言いながら、祥鳳は手早く飛ばしていた艦載機を呼び戻すと、足元に転がったものも拾い集めて、

祥鳳「……これが、私の欠陥です」

 足早に道場から去ろうとした。

提督「おい、祥鳳?」

祥鳳「……何も言わずに見てくれて、ありがとうございました」

提督「……っ」

 最後に一度だけ、提督を振り向いて、祥鳳はそのまま立ち去った。
 笑っていた。それも、初日の――自分たちを"はずれ"と言い捨てたあの時と同じ空気をまとわせて。
 提督は動けず、日が沈みきるまで立っているしかできなかった。


―――――
―――

間宮「昨夜は、どうしたのでしょうか……」

 次の日、間宮は朝食の支度をしながら首をかしげていた。
 昨日の夕食は焼き魚と天ぷらうどんだ。間宮本体で掘削した入り江は魚が集まりやすいようで、よい漁場になっているために良い魚が手に入りやすい。その日はそんな入り江で妖精たちが釣ってきた魚をそのまま焼いてふるまってみたのだ。
 全員喜んで食べてくれて間宮も満足だったのだが、どうも提督と祥鳳はどこか元気がなさそうに見えた。なんとなくそれが小骨のように引っかかって変に気がかりなのだ。

間宮「何事も、なければよいのですが……」

 他の艦娘達も気付いているとは思うが、あの二人は何だか雰囲気が違う。お互い少し許し合っている部分があるように見える。親愛や情愛というわけではなさそうだが、何かほかの艦娘達とは違うつながりがあるのかもしれない。

間宮「まぁ、わざわざ詮索する事でもないのですけどね」

 手際良くネギを小口切りにして、風呂吹き大根の上に散らす。料理において彩は大事だ。淡白な色合いの大根に、青の色彩を添えるだけで見た目のおいしさは格段に上がる。そういう意味で青ネギは重宝する。

間宮「さて、次は――」

 と、次の行程に取りかかろうとした間宮の足に、

間宮「……ッ!? っきゃあああああああああああああ!!!」

 激痛が走った。
 同時。
 まだ明けきらんとする薄明るい空を、爆炎が赤々と照らしていた。


―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。途中なんか酉おかしくなってますが、どこかでミスった模様です。IDから>>1だと察してくだされば幸いです……

 さて、皆さま菱餅は集まりましたか? 我が鎮守府ではイベント後の大型建造祭りで使いこんだ資源回復に努めておりますので全く集めておりません。こうしている今も、長距離航行などを回してバケツを改修していますしね……資源のご利用は計画的に

 次回ですが、ちょっとわかりません。こちら以外にも書かねばならない作品ができたので、同時進行で執筆となります。故、更新は遅れるものと思って下さい。うっかりここが落ちてもちゃんと立て直しますしね。気長に待っていただければ>>1も喜びます
 さてさて、激痛に倒れる間宮さん、明けの空を照らす爆炎……鎮守府の明日は、どっちだ!?
 
 などとほざいて、今夜はこの辺で……

 どうも、新年度始まりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか、>>1でございます

 かなり時間が空いてしまいまして大変申し訳ない! 月始めには投下の予定でしたが、風邪で寝込んでしまい本日投下とあいなりました

 またぞろ大した量でもないのですが少し投下していきましょう……

 海上を行くのは黒い影。クジラを小さくしたような体に、青く怪しく光る目のような器官が目立つ。深海棲艦、駆逐艦イ級だ。口のあたりから白い雷跡が伸びて、まっすぐに間宮の停泊する入り江へのびていた。
 間宮の体はこの船体とリンクしている、ゆえに船体が傷つけばそれに見合った痛みが間宮へ届くことになる。

――ココ、カ……?

 チカチカと明滅して、何かと会話するような気配がした。

――アア、マチガイ、ナイ……

 答えたのは、下半身を機械に呑まれたような異形の生物、軽巡ホ級だ。軋むような音を上げて砲塔が動く。呼応して、次々と姿を現す深海棲艦達。
 その数、10。
 皆一様に間宮を目指して海上を進んでいる。傍にある廃校舎の方には目もくれないようだ。

ホ級「!?」

 ゆえに、頂上から来るその翼に気付かなかった。急降下してきた艦爆の腹から黒い爆弾が切り離され、ホ級の脳天に突き刺さる。爆発。
 反応して、深海棲艦達がざわつく。すっかり油断していたらしく、軽空母ヌ級がいたにもかかわらず先制の航空攻撃が完全な形で通った。直掩機を慌てて上げ始めるが、既に死角から九七式艦攻が滑るように飛来して魚雷をまいた跡だった。

ヌ級「!?!?」

 機関部にもろに刺さったらしく、およそ人間には発音のできない奇声を放って炎上する。が、その間にも数機の艦戦が飛びあがった。
 そして、そこから見えた。
 気にも留めなかった廃墟のその方向、自分たちの憎むべき敵の姿が……

―――――
―――

子日「やったぁ! 上手くささったよーぅ!」

 飛びあがって喜ぶ子日を中心に、一同の間に安堵の空気が流れる。数にしてみればこちらが有利だったが、練度という意味においては完全にこちらが不利だ。先制攻撃によって少しでも相手に損傷を与えておけば多少は有利に傾くだろう……
 結果として作戦は功を奏し、軽空母一隻大破炎上という悪くない成果も付いて来た。が、

提督「気を抜くなよ、まだ勝ったわけではないのだからな」

 桟橋前に展開する艦隊に、提督は緊張を引き直す。

提督「祥鳳、敵の構成は?」

祥鳳「はい、駆逐イ級3、ロ級3、軽巡ホ級2、重巡リ級1、軽空母ヌ級1です。」

由良「……多いね」

古鷹「でも、ヌ級は大破で戦闘不能だから……まだ勝機はありますよ!」

提督「うむ、敵の混乱に乗じて敵の数を減らすのが先決だ」

 提督は艦娘達を見まわす。

提督「では行こう。第一分隊旗艦古鷹、以下由良、初春、子日。第二分隊旗艦長良、以下鬼怒、若葉、初霜。第三分隊旗艦祥鳳、以下加古、名取」

 名前を呼べばその通りに整列していく。初めての演習の時に比べてどうだろう、この動き。まだまだ褒めるには早いが、随分と様になってきたように見える。

――だからこそ、勝たなくては

 提督は頷いて見せると、敵を見据える。

提督「第一第二分隊は左右に展開、敵を囲むように砲撃だ。第三分隊はここで祥鳳の援護に当たれ」

艦娘一同「「「了解!」」」

提督「よし、端野鎮守府全艦隊、出撃!!」

 隊を分断するのは気が引けたが、皆快速の小~中型の艦娘だ。うまくいけばこちらの損傷を最低限に出来るかもしれない。

提督「……頼んだぞ」

―――――
―――

古鷹「よし、みんな行くよ!」

 第一第二分隊はそれぞれ並走して敵艦隊を目指した。一定まで近づいたら散開して左右からの砲撃を行う算段だ。それに合わせて古鷹の装備も20.3cm連装砲から15.5cm三連装砲や牽制用の25mm三連装機銃などに装備を換装している。
 練度が足りていない以上、乱暴な言い方ではあるが「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」で行くしかないという方針だ。艦戦の機銃でもそれなりの損傷を与えられるのと同様に、艦載機銃でも十分な威力を持つ。

初春「実戦……実戦か。随分と唐突にやってきたのう」

由良「うん……ちゃんと訓練はしてきたけど、いきなりあの量の敵は、ね……」

 勢いよく出てきたは良い物の、一同不安げだ。隣を走る第二分隊も似たようなものだ。

提督『心配することは無い』

 と、そこに無線が入ってきた。提督からだ。
 同時、彼女たちの頭上を艦載機が追い抜いて行った。祥鳳が飛ばした航空隊だ。背後に鎮守府があるので、航空機の補充がいくらでも利くということもあってか、ほとんどは艦戦のようだ。

提督『制空権は獲った。上空からの援護があるのだ、君たちはただ敵に弾を当てることだけ考えればいい』

古鷹「提督……」

子日「やっぱり頼もしいんだよーぅ!」

鬼怒「さすが、かな?」

 先ほどまでの空気はどこへやら、暗い気持ちに闘志が勝り始める。

長良「もうそろそろ射程圏内だよ!」

 長良の言葉に、皆の表情が引き締まった。そこに悲壮は無く、ただ勝利を求める決意がある。そして、

古鷹「面舵! 左舷砲雷撃戦用意!」

長良「取舵! 右舷砲雷撃戦用意!」

 左右に分かれる二つの分隊。視線で互いを励まして、敵に向き直った。
 敵もこちらに気付いたか、統率の無い動きでのろのろと砲をこちらに向け始めるが、絶妙なタイミングで祥鳳の艦戦がその攻撃を阻む。
 そして、両艦隊がその射程にとらえた。

古鷹・長良「「全門斉射ッ、てーッ!!」」

 号令と共に、無数の砲弾が敵艦隊に降り注ぐ。

初春「ふふっ、わらわにも見えるぞ!」

子日「うりゃあ~!」

由良「まけないからっ」

鬼怒「敵艦、もらっちゃえっ!」

 狙いは半ば適当、数打てば当たる状態なわけだが、訓練のたまものか命中率はそこまで悪くは無かった。もっともほぼ動かない的を狙うだけだ、そう、

初霜「訓練通りにッ」

若葉「撃てば、当たる……!」

 この集中砲火では駆逐艦の砲撃も重巡には重い一撃だ、そうして二艦隊が半円を描いてもう一度出会う時、

古鷹「魚雷用意!」

長良「てーっ!!」

 水雷戦隊の最大火力、魚雷が一斉にばらまかれ網の目を描くような雷跡が黒煙を上げる敵艦隊に吸い込まれてゆき、轟音と水柱を撒き散らし……

 後に残ったのは粉微塵に吹き飛んだ敵艦の残骸だけだった。

―――

 実感は無かった。
 ただ撃って、当てて、撃って、当てて……それを繰り返しただけだった。
 終わってみれば目の前の光景は何よりも雄弁に語っていた、そう、

 自分たちは、勝利したのだと。

古鷹「……終わった、の?」

鬼怒「…勝った…?」

若葉「あ、あぁ、勝ったようだ……」

 あっけない幕引きにみな困惑しているようだが、

提督『敵艦隊殲滅、よくやった』

 提督の事実を告げるその声に、

由良「やった、やったのよね! ね!!」

初霜「私たち、実戦で勝てたんですね!」

 張りつめていた空気がわっと散り、口々に笑いあった。

鬼怒「鬼怒たちでもやればできるんだ!」

長良「やった! やったよ!!」

 肩をたたき合い、抱き合い笑う光景に無線越しにも伝わったのか提督の空気も柔らかくなったような気がする。

子日「ガイセンなんだよーぅ!」

初春「ふふっ、なんぞ、めでたいのう」

 そうしてはしゃいで鎮守府へ帰る艦隊達、その背後、

子日「ねっのひーだよーぅ!!」

 はしゃいで手日上がる子日の姿が、


 轟音と共に天を突いた水柱の中に消えた。


―――――
―――

 本日は異常とさせていただきたく。風邪の所為で1週間ろくすっぽ艦これに触れてなくて半ば禁断症状出てました、ええ、祥鳳さんの声がいやし過ぎてもう、ね?
 祥鳳さんと言えばホワイトデーボイスですよ、ホワイトデーボイス! 情報見て家に帰った後、聞こえてきたセリフに涙ぐみながら今世紀最大のキモ顔を画面前でさらす>>1がそこにいました……あぁ、運営ありがとう、ありがとう……向こう10年は戦えます

 後はアニメ艦これ、終わりましたねぇ、続編ですってねぇ……祥鳳さんはどうせ出ません、はい
 どうせ運命のくびきとやらに沈められてしまったのです……映っただけマシと思いましょう、ええ

 さて、次回なのですが、このような引きをしておきながら大変申し訳ないと思いつつかなり、かなーり遅くなります
 というのも、別に書かねばならない物ができまして、そちらの方に専念せねばならなくなるかもしれないのです。こちら遅れると各所に迷惑がかかる代物なので……出来る限り落とさないうちにこちらに戻ってくる予定ですが、落ちてしまったらその時はまた立てます。それでもいいというならどうか、気長にすごく気長に待って下さると幸いです

了解
>>1はRomaと高波は手に入れましたか

 どうも、ちょっと同人活動に手を出していました、>>1でございます。どこかの艦これオンリーに一筆書いたものが出るのでよかったら探してみて下さい。まぁ、祥鳳さんが題材なのでひょっとしたらすぐ見つかってしまうかもしれませんね? 
 詳細は明かしません、さすがにここでは……

 さて、また大した量ではありませんが少し投下していきましょうか……

 一瞬の静寂。誰もが突然の事態に声も出せないでいた。水柱が消えたとき、そこには海面にうつ伏せになりぐったりと動かない子日の姿があった。

初霜「ね、のひ……ちゃん?」

 よろよろと隣にいた初霜が彼女を抱き起こす。衝撃で紐がちぎれたのか、海面に広がった彼女の長い髪が痛々しい。

初霜「子日ちゃん…子日ちゃん子日ちゃん!」

初春「子日ィッ!!」

 初霜の声に割れに帰った初春がつられて叫びだす。すると、恐怖に似たなにかが伝播していくのが提督には見えた気がした。

鬼怒「子日ちゃん!」

長良「い、いったいどこから!?」

提督「落ち着け! 狼狽えるんじゃあないっ!!」

加古「て、てーとく……」

提督「落ち着け、子日はまだ浮いてる、つまりまだ死んじゃいない……初霜、子日を浜まで連れて帰るんだ。君の得意分野だろう?」

初霜「っ…はい!」

提督「初春、主任妖精に言って対潜装備を用意させてくれ、潜水艦による攻撃の可能性もある」

初春「りょ、了解なのじゃ!」

提督「祥鳳は艦戦を収容後速やかに艦攻を発艦、対潜警戒に当たれ」

祥鳳「はいっ」

提督「他のものは陣形を整えろ、輪形陣だ、やれるな?」

古鷹「は、はい!」

名取「はいぃっ!」

 提督の声に艦隊の誰もがてきぱきと動き始める。動揺は消しきれていないがパニックは防げた形と言えるだろう。
 が、提督の内心はパニック寸前であった。

――どこで判断を誤った!?

 顔に動揺を出さぬようにするのが精一杯だった。思ったように頭が回らない。潜水艦という可能性に行き着いたことさえ偶然だった。
 だが、ここで自分が取り乱しては艦隊の命に関わる。必死に自分を落ち着かせて状況を確認した。

―――――
―――


主任妖精「えぇい、どうなってんのさ!?」

 初霜に運ばれてきた子日を船渠にいれては要求された装備を一式揃えて台車に載せて走る。ついでに多少の弾薬も一緒だ。
 はっきり言って異常だった。
 こんな辺境にこんな物量の艦隊が押し寄せる何て聞いたこともない。しかも沖合の警戒網を抜けてまでだ。
 棲地を作るにしてもこんな本島に作ってはすぐに各鎮守府からの集中砲火を受けることになる、合理的ではないだろう。
 そうなると、最初の攻撃だ。鎮守府を素通りして間宮に攻撃を入れていた。あまりにボロだから鎮守府を見逃したのかも知れないが、しかしだとすると、連中の目的は最初から……

主任妖精「どうせ気付いてるんだろうねぇあのお利口さんはさぁ!」

 毒づくと振り返り叫んだ。

主任妖精「ほら行くよアンタたち! 遅れたらゆるさないさね!!」

 彼女の後ろに続くのは主任妖精よりも一回り小さい妖精たちだ。意思をほとんど持たない使役される妖精、艦娘の装備妖精と同じ原理で存在しているとされるが真相は定かではない。とにかく、工厰に住まう整備に特化した妖精たちなのだ。

主任妖精「さんざん休んだんだ、ヘマしたら鱶の餌にするかんね!!」

 前を向く、自分達の戦場はそこにあった。

―――――
―――

提督「由良、長良、若葉は主任妖精から対潜装備を受け取って換装、使用方法はその場でレクチャーしてもらえ」

若葉「よ、よし、ぶっつけ本番でも大丈夫だ」

由良「まかせて、使い方ならしっかり覚えてるからね!」

提督「祥鳳、敵潜水艦は?」

祥鳳「み、見当たりません!」

提督「引き続き頼む。加古、偵察機は使えそうか?」

加古「う、うん、なんか感覚はつかんだよ!」

提督「お前の場合はそれで良い。古鷹も頼んだ」

古鷹「了解!」

提督「よし。鬼怒、名取、初春、初霜で分隊を再編成だ。旗艦は鬼怒、任せたぞ」

鬼怒「がってん! 名取、頑張ろうね!」

名取「き、鬼怒ちゃんがいるなら……うんっ」

提督「ただ敵が見つかるまでは待機だ。すこし休むと良い。私は一度下がって主任妖精と話してくる」

 ひとしきり指示を出すと提督は、浜でせわしなく動いている妖精を指揮する主任妖精に歩み寄った。

提督「主任妖精、子日の様子は?」

主任妖精「あ? あぁ、完全に大破しとったさね……大破ならなんとかなる、安心すると良さね」

 手を止めず提督の方も見ず、事もなげに言い放った。

主任妖精「そんなことより、どうするんだい? なかなか大変な状況じゃないか?」

提督「あぁ、そうだな……私も少し、覚悟を決めなくてはならないかもしれん」

主任妖精「……あんた、何する気だい?」

提督「出来る事をする、それだけだ」

 言うと、提督は主任妖精が持ってきた装備の山から鞄状の物を取り出すと肩から提げた。

主任妖精「……本気なんだね? どうなっても知らないよ?」

提督「部下のために傷つくなら本望だよ」

 いつの間にかこちらを見ていた主任妖精を見遣って、にっ、と笑って見せた。

主任妖精「……轟沈さえしなけりゃ治してやれるんだからな、帰ってきな、絶対な」

提督「あぁ、全員でな」

 親指を立ててみせると提督は再び海へと足を向けた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。待たせた割には短いですね、申し訳ない。

 皆様イベントはいかがでしたでしょうか? >>804にお答えすると高波はポロっと落ちましたが、Romaは無理でした。いつかご縁がある事を期待しましょう……ちなみにクリア難易度は甲乙甲乙乙丙でした
 そして梅雨ボイス、祥鳳さん来ましたね。あの強がってる感じがもう抱きしめて頭なでなでしてうわーってしたい可愛いボイスで>>1は悶えておりました……はぁ、祥鳳さんマジ愛してる

 こほん、失礼。さて、次回は第二ラウンドです。果たして端野鎮守府の命運やいかに、そして提督の覚悟とは……!?
 少し落ちついたので今回よりは早く続きをお送りできるかと思われます。そろそろ梅雨も近づいておりますが、皆さま体調など崩されませんよう……では今夜はこの辺で

 どうも、毎度毎度遅くて申し訳ない、>>1でございます
 梅雨グラにpixivを始め祥鳳さんの絵や作品が増えて嬉しく思っていたらここにきて新グラですね。もうね、もう、歓喜の踊りが停まりませんわ……初夏限定ボイスもくるそうで、祥鳳さんの波が来ているようです、このまま改二まで来ないでしょうかね……

 さて、ようやく良い量が出来そうなので今夜か明日には投下しに来ます。端野の艦娘に続々改二が来て嬉しい限りですね、どう反映しましょう……想定していなかったのでちょっと頭抱え気味の>>1でした

 ではまた……

 どうも、予告通り参りました、>>1でございます
 改グラ、来ましたね! 凛々しい祥鳳さんイイですわぁ……あの自信無さげだったあの祥鳳さんがまぁ立派になって……感激の>>1です

 一月経ってしまいましたね、申し訳ない。その分、多いというわけでもございませんが、少し投下していきましょうか

 水面を滑るような低空を艦上攻撃機がゆく。対潜哨戒は本分ではないが、艦攻でもないとこの役目は負えない。軽巡・駆逐組が対潜装備を整えるまでは祥鳳の役目である。
 祥鳳は提督を思う。
 秘書艦として(着任してから大した時間こそたっていないものの)、それなりに近くで彼を見てきた。だからこそ、隠しきったつもりであろう彼の動揺は何となく感じとれた。これが歴戦の提督であるのなら気付くことは難しかったかもしれないが、あの提督は士官学校を出て間もない新人だ……ともすれば忘れてしまいそうになるが。
 とはいえ、祥鳳とてベテランといいわけではない。実戦もほとんど経験したことがないし練度もそんなに自信がない。

祥鳳(でも、私は秘書艦だから……!)

 きっ、と前を見据える。ここで自分が慌てては艦隊の皆に示しが付かないし、なにより提督が懸命に抑えたパニックをまた引き起こしかねない。
 と、祥鳳が腹をくくったその時、

祥鳳「! 偵察隊より入電、敵潜水艦を発見しました!」

提督「追い込むことはできるか!?」

祥鳳「や、やってみます!」

 言うと、集中するように目を閉じる。祥鳳の視界が閉じられるとすっと向こうから見えてくるのは空と海。偵察機として出した艦攻から見える景色だ。確かに海のなかに黒い影が見える。
 近い。
 魚雷を放つべく浮上してきたところだろう。こちらが気づいているということは向こうもこちらに気付いているはずだ。

祥鳳(逃しません)

 艦攻が海面ギリギリを滑るように行く。黒い影は海にとけるように消えていく。潜航するつもりだろうか。
 だが、遅い。
 艦攻の腹から航空魚雷が落とされる。潜航状態の潜水艦は足が遅い。だが、魚雷は(一般的には遅いとはいえ)それよりも速い。
 一拍間をおいて、艦攻が通りすぎた後からくぐもった爆音と共に水柱が立った。
 爆発こそしたが恐らく直撃はしてない。だが、爆圧だけでも潜水艦には十分な驚異だ。
 そして、祥鳳は追い討ちをかけるように連続で艦攻を差し向けた。

祥鳳「潜水艦、来ます!」

 目を開く。艦攻たちに追いたてられてやって来るのは子日の仇だろうか。

提督「対潜戦闘用意!」

由良「了解!」

若葉「子日の分、しっかり返させてもらうぞ」

 祥鳳の航空隊が離れて対潜攻撃隊が進む。聴音機を使うのに、航空魚雷の爆発はうるさすぎる。
 由良を先頭にした単縦陣で背後をとると、そのまま単横陣で責め立てた。網に隙はない。

長良「……感あり、そこ!」

若葉「いっけ!」

 長良の指差す先、若葉が突撃し爆雷をばら蒔いた。次々に上がる爆音と水柱のカーテンが収まって、

由良「浮遊物を確認、撃破成功!」

提督「よし、いいぞ」

初霜「やりました!」

初春「子日の仇はとれたのう」

提督「だが油断はできない、一隻だけという保証はない。祥鳳、引き続き警戒を……」

祥鳳「待ってください!」

 安堵の空気が流れるなかに、緊迫した声が上がる。

祥鳳「偵察隊からの通信が途絶しました……」

 潜水艦に対空攻撃を行うことはできない。つまりそれは、

提督「第二派が、来ているというのか……!?」

古鷹「じゃ、じゃあ……さっきの潜水艦は…」

提督「陽動、だったのかもしれない」

 提督が歯軋りしている。彼のミスというわけではないのだが。祥鳳が言おうとしたその時、

加古「あ、あっ! 偵察機から入電したよ! 敵部隊を発見……敵は、正規空母二隻を含む、六隻の艦隊、だって……」

鬼怒「せ、正規空母が……」

名取「にせき……?」

 一同の顔が青ざめるのが見えた。祥鳳自身も血の気が引いていくのがわかる。
 さっきの攻撃は隙を突いて混乱させてから、それに乗じての攻撃だったからなんの苦もなく倒せた。が、今度はそうじゃない。
 正面から。空母二隻を相手にしなくてはならない。空母が如何に驚異であるかは艦としての記憶にこれでもかというほど刻み込まれている。

提督「落ち着け。加古、他の艦の艦種はわかるか?」

加古「ちょ、ちょっと待って見つかった! えと、ええと、重巡と、駆逐とぉ……ああっ、やられた……」

提督「戦艦はいたか?」

加古「う、ううん! 戦艦はいなかった、うん、たぶん」

提督「それはならまだ救いがあるな」

 いうと、提督は艦隊の皆を見回していった。

提督「いいか、これはまさに背水の陣だ。ここを引いても行く場所はない。なにせ、私たちは戦力外通告を受けてここにいるからな、どこへ行こうと居場所はない」

 肩をすくめて見せる。一同も何となくその仕草に苦笑してしまう。

提督「だがなにより、ここは私たちの家も同然だ、そうだろう?」

鬼怒「うん……お料理もいっぱいしたしね」

加古「前の提督はあんなだったけど、今は、さ?」

初霜「お風呂も作りましたもんね!」

由良「資料室の本も、いっぱいお手入れしたしね」

 問えば、口々に聞こえてくるのは思い出。提督がここに来てまだ一月程度というのに。それまでのことまでが今は懐かしく、そして楽しいもののように思える。提督はその様子に大きくうなずく。

提督「我が家を不当に荒らす不届き者共は、許しておくわけにはいかないだろう?」

古鷹「うん、うん……そう、そうだね!」

名取「お、お家は守らないと!」

初春「古今東西、悪が栄えたためしはないのじゃ!」

由良「頑張って守らないとね、ね!」

 なにか沸き上がってみなぎって来る。これは、闘志? 祥鳳は胸が暑くなるのを感じていた。

若葉「主任妖精もいる、子日も寝てるんだ……絶対、通すわけにはいかない」

 強く拳を握る若葉の声に、引き締まる何かを感じて全員が静かになる。だが、満ちているのは悲壮感ではなかった。

提督「そうだ、私たちにはできる。私たちなら守り通せる。それに、まだ諸君に教えなければならない事がたくさんある……そのために、私たちは負けられないし、死ぬことなどもってのほかだ」

 拳を握り、自分の言葉をかみしめるように目を閉じる提督。祥鳳には、それが何かの覚悟と決意をしているように見えて、しかし声がかけられないでいた。

提督「行こう。勝ってここに帰ってこよう……そして、子日に笑っておはようと言うんだ」

 目を開ける。柔らかな笑みを浮かべる提督に、一同の肩から力が抜けた。誰もが落ちついた笑みで提督を見ている。提督は満足げにうなずき、

提督「それでは、作戦を伝える。皆、心してかかるように」

一同「「了解っ!」」

―――――
―――


祥鳳「あの、提督……」

提督「ん?」

 作戦説明を終えて艦隊編成が行われる中、祥鳳がそっと近づいて来た。両眉を下げて、どうしたというのだろうか。

提督「どうした、祥鳳。作戦に不備でもあったか?」

祥鳳「いえ、そうではなくて、あの……」

 言いにくそうに顔をそむけてはちらりちらりとこちらをうかがう様は、さしずめ想いを告白する少女のようだ。
 ………何か、へまをしただろうか。

提督「さぁ、時間はあまりない……大丈夫、君ならやれる」

祥鳳「あの、提督…!」

提督「俺が保証する、信じろ」

 乱暴に頭を撫でると、提督は彼女を背後に進んだ。
 そんなに長い時間ではないが、秘書艦として傍に置いていたせいで何かしら見透かされたのかもしれない。やはりまだまだ甘いということだろうか。
 見えないように苦笑する。
 提督たるもの、そこだけは悟られるわけにはいかないのだ。
 密かな決意を胸に、提督は戦場となる海を見据えた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。牛歩の歩みですね……いやはや始めたころの勢いがもう一度ほしいです

 さて、改二の扱いについて少しお話ししましたが、迷っているのは基本設定の落ちこぼれ設定なんですよね、落ちこぼれが高練度になって改二になるまでこのペースだといつになるやら……という
 どうにか変えてしまってもいいのですが、そこは少し考え中の>>1であります

 さて、次回はついに戦闘開始です。鎮守府の存亡をかけた防衛戦を前に、提督は一体何を決意したのでしょうか? どうかお付き合いいただければ幸いです
 では、本日はこの辺で……

遅れ馳せながら、1周年おめでとうございます

ほんまじゃ
一周年(と2日)おめでとうございます

 どうも、一周年に遅刻してきました、>>1でございます
 やりましたよ皆さん、ニューマシンです。艦これも再開でき、原稿データもしっかり残っててくれました。こんなにうれしいことはない……

 さて、たいへん長らくお待たせしてしまいました。今回は(たぶん)増量してお届けしたいと思います。
 では、少し投下していきましょう……

 再度放った水偵を見送って、提督は腕からカタパルトを外した。限られた戦力でいかに損害を出さずに切り抜けるか……今回はそこに集約される。肝はいかに航空攻撃をしのぐかにあるだろう。

提督「古鷹、加古。砲弾切り替えの方は慣れたか?」

古鷹「はい、なんとか!」

加古「うん、装填する時にちょっと考えれば何とかなるよ」

提督「切り替えのタイミングは前もって指示するからそこは気にしなくていい。それよりも三式弾は角度と炸裂タイミングが非常に難しい弾だ。そこのところの練習はまださせてないのに、すまないな」

古鷹「と、とんでもない!」

加古「うちがどうにかなるかならないかの瀬戸際だよ? がんばるって!」

提督「うむ、頼もしいな……さて、祥鳳。敵航空隊の動きはどうだ?」

祥鳳「はい、依然大きな動きは……いえ、まってください!」

 じっと集中すると少し青ざめた顔で報告を始めた。

祥鳳「敵の第一次攻撃隊は、艦爆を軸に構成された爆撃隊です……数、60機超!」

長良「さ、さすが正規空母……」

提督「一隻80前後とみて、3分の1を出してきたか……」

 少し考えて提督はさっと見回して指示を出し始める。

提督「祥鳳は艦戦で応戦の準備を、艦爆隊なら上から来る…古鷹と加古は三式弾装填後仰角最大で待機、軽巡隊は艦攻隊を警戒して機銃を、駆逐艦は高角砲の用意を!」

 重巡組の砲頭がスムーズに回頭し、ぴたりと止まる。ギアの回る音ともに砲身が上を向く。これも迅速かつ正確な動きだ。よく整備が行き届いているようだ、帰ったら主任妖精にしっかり礼をしなくてならないと思いつつ指示を飛ばした。

提督「弾種三式弾用意!」

古鷹「加古、時限信管の設定任せるよ?」

加古「おーし、んじゃあね……うん、3秒ともう少しくらい!」

古鷹「もう少し、と……うん、オッケーだよ!」

提督「射撃タイミングも加古が決めてくれ」

加古「へへっ…任せといてぇ!」

 嬉しそうな加古の様子にうなずくと、提督はさらに指示を飛ばす。

提督「数は少ない上小型だが魚雷は魚雷だ、当たれば大きなダメージになる。軽巡隊もしっかり頼むぞ」

名取「う、機銃ですかぁ……」

鬼怒「主砲よりは音小っちゃいからどうにかなるよ!」

由良「うーん、単装砲……」

長良「由良は単装砲好きだね……」

提督「初春、初霜、若葉……ここが正念場だ、いいな?」

初春「心得ておる、子日には指一本触れさせはせんぞ?」

初霜「傷ついても、私が助けます!」

若葉「大丈夫……誰もやらせはしない」

提督「祥鳳……航空戦の要は君だ。第一波はわからないが君の力が必要になる……頼むぞ」

祥鳳「…………はい」

 各々の反応をかみしめ、前を見据える。不安がないとは言い難い。だが、やるしかない。
 敵機の群れが見えた。青い空に点々と浮かぶ黒点がこちらに向かってくる。二手に分かれ始めればもう猶予はない。提督はじっと見据え、命じた。

提督「総員、対空戦闘用意!」

 緊張と闘志と覚悟と恐怖が織り混ざった冴えた空気が満たされる。徐々に近づいてくる低いエンジン音。異形の戦闘機たちが獲物を見つけたとばかりにまっすぐ向かってくる。
 す、と。衣擦れの音を残して提督が腕を掲げ、そして、

提督「撃ちかた、始めッ!!」

 号令と共に、振り下ろした。

加古「古鷹っ!」

古鷹「うんっ、三式弾射ぇっ!!」

 20.3cm砲の轟音が開戦を告げる号砲だった。真っ直ぐに上空へと弾き出された赤い砲弾が高速で敵機の編隊に迫る。風を切り、敵が反応して散開するその直前。
 パッ、と奴等の鼻先で弾けた。飛び散る閃光と炎が敵機を飲み込む。3基6門が2隻分で都合12発の花火が綺麗に編隊を包み込んだ。
 花火の後の黒煙の中から断続的に響く爆発音。その黒煙を突き抜けてくるのはどれも自らが抱える爆弾によって吹き飛んだ敵機の残骸だった。辛うじて炎を免れた他の敵機もバランスを崩してふらふらと起動を乱している。

鬼怒「いっくよぉ!」

名取「当たってくださあああああい!!」

 そこに襲いかかる弾幕。機銃や高角砲の弾丸の雨が次々と残りの敵を蹴散らしていく。さすがに突入は無理だと判断したのか爆弾を離して逃げていく機体もあった。
 一方の艦攻隊は高度を下げて迫り来る。が、そこはすでに弾幕の嵐の中だった。背面に鎮守府を置き海はなく、背後からの攻撃を警戒する必要はない。初春型たちと軽巡たちの鬼の集中砲火が艦攻隊を次々と叩き落としていく。

若葉「子日がいなくとも、大丈夫」

初霜「1機たりとも、通したりしません!」

 敵の戦闘機隊も黙ってはいなかった。が、こちらの航空戦力を知ってか直掩はすくない。

祥鳳「私だって、航空母艦です!」

 祥鳳の零戦の前にあえなく蹴散らされていた。
 一か八かで魚雷を落としてく艦攻もいたが、如何せん距離が遠かった。

提督「魚雷は知っての通り直進しか出来ん、冷静に回避だ」

由良「よく知ってるもんね!」

 す、と最低限の動きでやり過ごし陣形は乱さない。
 こうして、いくつかの幸運に守られていたものの最初の航空攻撃はほぼ損傷なしに凌ぎきった。せいぜい戦闘機たちが放った破れかぶれの機関銃が少し掠めたくらいだろうか。

初春「ふむ、帰っていくようじゃ」

提督「よくやった。最初の攻防はこちらに軍配が上がったらしい」

加古「いよっしゃぁ! あたしらだって、やるときゃやるんだよ!」

長良「すごい……ほとんど落としちゃった」

提督「だが気を抜くのは早い。第二波がくるか、もしくは砲撃戦を仕掛けてくるかもしれん。軽巡は機銃から主砲への換装がすぐ出来るよう留意しろ」

名取「は、はいぃ!」

提督「祥鳳、敵の動きは?」

祥鳳「まだ何も……いえ、待ってください」

 じっと偵察機の情報に耳を傾けている。

祥鳳「敵艦隊の接近を確認しました。砲撃戦に出るようです」

提督「来たか……」

祥鳳「空母を後方に残しつつ重巡、軽巡、駆逐2隻が接近しています」

由良「それは、後方からの航空支援が飛んでくるね……」

古鷹「さっきの航空隊、戦闘機少なかったから……たくさん飛んでくるよね、今度は」

若葉「だ、大丈夫だ、問題ない……」

初春「それはダメな〝ふらぐ″じゃの」

提督「ともかく長良と由良は機銃を単装砲に切り替えだ。名取と鬼怒はそのまま」

長良「了解!」

由良「うふふ、単装砲♪」

提督「初霜、若葉は機銃を減らして魚雷を増設だ」

初霜「ぎょ、魚雷ですか?」

若葉「策が、あるのか?」

提督「ああ……初春は逆に装備に機銃を増やすんだ」

初春「こ、心得たのじゃ」

提督「よし……それでは、陣形を変えようか……」

 祥鳳を中心にして両翼に名取と鬼怒、前方に初春、後方に初霜と若葉を配置。その前方、加古、古鷹、由良、長良を前衛として配置した。

古鷹「あれ?」

 と、ここで古鷹が気づく。

加古「どしたの、古鷹?」

古鷹「この前衛の陣形……真ん中空いてない?」

 左翼から長良、加古、古鷹、由良の順番に並んでいるわけだが、真ん中は1隻分ほどのスペースが空いている。

提督「あぁ、そうだ。それは……」

由良「そ、それは……?」

提督「私が出る」

加古「…………へ?」

―――――
―――

 背中に背負った機関部から左右に伸びた土台が可動式のアームのように動く。土台の上には主砲を4基乗せ、足元には魚雷発射管が装備されている。アームについた操作用の操縦桿を握り感触を確かめるように動かす艤装の主は、提督その人であった。

提督「よし、動く……さすがは主任妖精だ、使われてなかった艤装も問題なく動かせる」

 満足げにうなずく提督に、さすがの艦娘たちも唖然とせざるを得なかった。
 水に浮けて、艦娘の兵装を使いこなせるうえ、まさか艤装まで装着できたとは……祥鳳もこれにはただただ驚くばかりだ。

鬼怒「あ、あの……大丈夫なの、それ」

提督「あぁ、問題ない」

初霜「て、提督さんは艦娘なのですか……?」

提督「いや、れっきとした人間だ」

加古「……人間は、艤装は装着できないと思うんだけど」

提督「気にするな」

古鷹「いえ、あの……」

提督「今は気にするな、い・ま・は」

名取「は、はい……」

提督「ほら、持ち場に戻れ」

長良「……気になる」

 宥めすかして納得させられるのは人徳なのかそれとも今までのとんでもない行動の積み重ねなのか、ふと祥鳳は考えた。

提督「では、作戦を確認する」

 後者だと判断した。

提督「今回は本格的な砲雷撃戦だ。つまり、正面きっての殴り合いになる。ただ、敵の後方には正規空母が構えている。先の第一次攻撃で約3分の1を損失させたため打撃力は下がっているもののその戦力は侮れない――」

 しかし、敵の前衛を退けなければ、こちらの航空戦力が不足している以上空母へダメージを与えることは難しいだろう。ならば素直に前衛を叩くしかない。

提督「私が率いる前衛艦隊が敵の前衛をたたく。その間やってくるであろう敵航空隊を祥鳳が足止めすんだ。直掩は最低限とする」

 そうなると祥鳳の守りが手薄になる。敵が祥鳳を叩きに来るのは目に見えているのだから、それはまずい。

提督「そこで、祥鳳の守りとして初春、名取、鬼怒を対空戦闘装備で展開させる。そしてさらにその後方に初霜と若葉だ」

 祥鳳の後方警戒を担当するとともに最後の切り札として温存する。

提督「万が一前衛を仕留めきれない場合は撤退しておびき寄せる。十分距離を詰めたところで後方から飛び出し、一気に雷撃で片付ける」

 なお前衛艦隊を撃破できた場合は、空母に対しての止めを担当することになる

提督「さて、これで本当に最後ならいいが……だが、我々に後を気にする余裕はないだろう。ゆえに、この一戦に掛けて戦い抜く」

 提督は艦隊の面々を振り返る。
 みな、どこか覚悟を決めたような顔だ。不安はあれど少なくとも怯え竦む様子は見られない。提督はそれを見てゆっくりうなずいた。

提督「端野鎮守府全艦隊、これより敵艦隊の撃破を行う。総員、砲雷撃戦用意――出撃!!」

艦娘たち「「「了解!!」」」

 前衛艦隊がゆっくり波の軌跡を残して前進する。形としては単横陣だ。艦隊は足並みをそろえてまっすぐ進む。
 と、後方の祥鳳たちがだいぶん小さくなったあたりで古鷹が気づいた。

古鷹「上空、敵航空隊です!」

 雲の合間を大量の黒点が移動している。その数はおよそ80、前方斜め上をきれいな編隊を組んで飛行していた。うち何機がこちらに飛んでくるかはわからない。が、

提督「敵艦載機は祥鳳に任せる。が、降りかかる火の粉は自分で払わなければならないことを忘れるなよ」

由良「うん、大事だもんね!」

 由良がぐっとこぶしを握る。どちらかといえば温厚な部類の彼女も、戦いを前に興奮が入っているのかもしれない。

提督「ああそうだ……、と。我、敵艦見ゆ――お出ましだ」

 水平線の上、ぽつりぽつりと小さく見える4つの影。
 報告にあった前衛艦隊だろう。

提督「しつこいようだが、数で勝るとはいえ相手の頭上には航空隊がいる。気を抜くな?」

加古「わかってるって! よーしやるよぉ!」

 敵艦隊とぐんぐん距離が詰まる。そして、ついに20.3cm連装砲の射程に入った。

提督「撃ちかた始めッ」

 遠く、敵の重巡も砲を構えたように動く。いかな艦船が艦娘となって艦隊戦の様相が変わったからと言ってその基本は射程内に近づきながらの撃ち合いであることに変わりはない。違うことといえば、

長良「っ、撃ってきた!」

 さっと、素早い反応で横にずれる長良。そう、人型であるがゆえに回避方法が艦船のそれとは全く異なるのだ。
 長良の後方で水柱が立つ。敵の少し見込みが甘かったようだ。

加古「へへっ、それじゃああたしが……うわわっ!」

 加古が応戦するとばかりに砲を構えるも、慌てて身をひねる。そこを通り過ぎる、ぱぱぱ、と連続した小さな水柱。その後ろから飛んでいったのは敵の黒い艦載機。あとから祥鳳の零戦が追いすがり機銃で叩き落とした。
 頭上を確認すればおよそ30を超える艦載機が飛び回り、祥鳳の艦載機が対応に追われている。祥鳳の搭載機数は30、うち24機をこちらの防空に回しているから数の上では若干の不利と言える。しかし艦戦の数だけ見れば上回っているようにも見える。

提督「長良、由良は加古、古鷹の後方について上空の警戒を」

由良「任せて!」

長良「古鷹さん敵機接近!!」

古鷹「くっ、まともに狙いが……」

 古鷹のすぐ横を艦爆の爆弾が掠めて炸裂する。いかな艦戦が多くとも性能と数の不利には勝てないらしい。提督も側面からの航空魚雷を回避した。

提督「ひるむな、上空のことは祥鳳と長良、由良に任せて砲撃を続けるんだ!」

加古「そろそろ軽巡の射程に入るよ!」

提督「よし、では私も」

 手元の操縦桿を操作する。答えるように動くのは主砲として積んできた15.2cm連装砲。まばらに飛んでくる砲弾の軌道は見えている。構わず提督はトリガーを引いた。
 腹に響く爆発音とともに撃ちだされた砲弾が弧を描いて敵重巡に向かい、そして、

提督「近、か……」

 手前に着弾した。さ、と艦爆の爆撃を避けつつ角度を修正しつつ砲撃を続ける。が、

由良「痛った!」

長良「由良!」

由良「大丈夫! ちょっと機銃がかすっただけ」

加古「あーうっとおしい!!」

提督「くっ、思った以上に航空隊が厄介だな……」

 祥鳳の零戦を掻い潜った敵艦載機の猛攻の前に前衛艦隊の足が鈍る。

加古「て、提督……どうすんだよぉ」

提督「回避に専念する、総員輪形陣をとれ!」

古鷹「りょ、了解!」

 敵前衛の攻撃がまばらなのを幸いに守りに入った。この調子で後衛はどうなっているだろうか……

―――――
―――

 一方そのころ、祥鳳たちは前衛艦隊と同様、航空隊の猛攻にさらされていた。

初春「そ、空が黒いのじゃ……!」

名取「ふぇぇええ!! こ、来ないでくださああい!!」

 周囲の空を取り囲む無数の艦載機に機銃を撃ち掛けてはどうにかしのいでいる状態だ。

祥鳳「く、前衛艦隊が突破するまでの辛抱ですよ!」

 6機の零戦をやりくりしては敵機に食らいつくもけん制程度にしかなっていない。艦攻を防ぐので手一杯なのが正直なところであった。

祥鳳「艦攻は私が押えます、皆さんは艦爆に注意してください!」

 頭上で爆発、寸でのところで若葉が艦爆を落としたようだ。

初霜「敵が多すぎですよぅ!」

鬼怒「でも、向こうが突破すれば!」

初春「突破できるとは誰も言っておらん! 退却してくる場合もありうるのじゃぞ!」

 初春の機銃さばきが目覚ましく敵機を追い払う。

名取「そ、その場合どうなるんですか……?」

祥鳳「……敵艦載機が集中して襲い掛かってきます」

 どの程度の数かはわからないが、おそらく80は行くであろうその数を想像し、祥鳳は思わず身震いした。敵正規空母の集中砲火を受けるのは……"あの時"とよく似ている。

初春「……なれば、ここでできる限り落とすのが得策…というわけじゃな!」

 暗い記憶を知ってか知らずか、初春が声を張り上げた。

若葉「そうだ……落とせば落とすほど楽になる……いいぞ」

 鼓舞されるように若葉も高角砲を構えなおす。

鬼怒「よぉし! そうとなったらやるよっ!!」

名取「ふぇえ、も、もうやだようぅ!」

 鬼怒も、何だかんだ言っても名取も空を見上げて機銃を構えた。

祥鳳「そう……そうね、えぇ。やりましょう、みんな!!」

艦娘たち「「おおお!!」」

 一斉に砲火が空に舞う。合間を縫うように零戦が巧みに身を躍らせ食らいつく。飲まれた敵機が炎に包まれて煙を引きながら落ちていく。着実にその数を減らしていく、が、

鬼怒「きゃぁっ!」

名取「鬼怒ちゃん!!」

 いかんせん数が多すぎた。艦爆の爆撃を受け鬼怒がよろける。

鬼怒「く、くぅ……まだまだぁ!」

初霜「サポートします! っくぅ…」

 カバーに入った初霜に機銃が命中する。痛みに涙を浮かべながらも懸命に高角砲を撃ち続けた。
 そうして、少しずつ傷が増えていく。一発撃てば三発帰ってくる機銃掃射、合間を縫って襲ってくる艦爆の爆撃。艦攻を抑えてくれているのがせめてもの救いだが、その零戦たちも徐々にその数を減らしていき、今ではもう4機だ。

名取「ふぇえっ、機銃がぁ!」

初春「この、このっ、しつこいぞおぬしら!!」

 傷は増える一方で、艤装のところどころから黒煙が立っている。

祥鳳「く、前衛艦隊は……?」

鬼怒「連絡なんかないよぉ……!」

 相変わらずやかましい艦載機のエンジン音に混ざって前衛艦隊たちの砲音が聞こえていた。健在らしいが戦闘も終わっていないということだ。

名取「うぅ、もうやだよぅ……」

初霜「くっ、ま、まだです…っ」

 目に見えて士気が下がっている、祥鳳は感じるもどうしようもなかった。

――やはり、落ちこぼれには無理だったのだろうか?

 寄せ集めで、少し頑張って普通に追いつくか追いつかないようなそんな自分たちには、どうにもできないのだろうか…? 自分たちよりも規模の小さな艦隊にすら勝てない、そんな情けないままなのだろうか……
 目の前が暗くなる。
 いけない、そう思っても止まらない。
 寒気が、恐怖が、あきらめが、背筋を這って飲み込もうとしてくる。
 身を任せたっていいじゃないか、艦娘が戦いの中で死ぬのは当然、むしろ落ちこぼれが闘って死ねるのなら本望じゃないか……
 祥鳳の手から力が抜け、弓が滑り落ちようとする、その時。

鬼怒「っ!? な、なに!?」

若葉「光……?」

 提督たちが闘っているであろうその水平線、そこから青い色の閃光が走った。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。お待たせした分大盤振る舞いさせてもらったつもりですがどうでしょうか……?
 改めまして一周年ですね、>>850>>851にはありがとうございます。しかし、一年ですか、早いですね……こんな亀SSにお付き合いいただいてありがとうございます。着地点をどこに置こうか迷い気味ですが、これからも見守っていただければ幸いです。

 さて、みなさんもうすぐイベントでございます。七海域ですってね、MIと同等規模ですか……資材各5万前後の当鎮守府、乗り切れるか不安でいっぱいです。乙、丙おりまぜて頑張っていこうかと思います。

 では、次回ですね。早めにお届けできればよいのですが、そこは予定は未定ですし……ともかく、頑張っていこうと思います。

 書いてて思うんですよね、ああ、もう少し伏線捲いておくんだった、と…急展開気味になりそうですが、よろしければ待っていてください。
 では、本日はこの辺で……

トリックオアトリートォォォォ!!()
お久しぶりでございます! >>1です! 私が>>1でございます!
保守していただいて本当にありがとうございます…ようやっと、ようやっと! 続きが書けたので投下していこうかと思います
戦闘描写なんかほぼ初めてなのでグダる部分も多いかと思いますが、読んでやってもらえるとありがたいです


(あと、かなり超展開です、本当に申し訳ない)

 前衛艦隊たちも追いつめられていた。
 後衛ほどではないとはいえ大量の艦載機に追い立てられ、加えて砲撃が飛んでくる。気を回すものが多い分、厄介だった。

加古「くっそぉ、上がいなけりゃ一撃でやれるのに!!」

古鷹「加古、三式弾は!?」

提督「この距離では気休めにもならん!」

 砲撃は躱し、空を見上げて撃ち続けるが。

由良「こ、のっ…きゃっ!」

長良「し、しっかりっ」

 すでに由良が機関部に若干の損傷を受け長良の肩を借りている状況だ。いや、それで済んでいるだけまだ運がいいかもしれない。
 しかし、退路はすでになく、撤退する術はなかった。今後退すれば、後衛に攻撃をかける航空戦力と合流されて一気に袋叩きにあう羽目になる。まさに前門の虎後門の狼だ。

提督「くそ、さすがに厳しいか…っ」

 じりじりと後退し続けるしかない状況に、提督は思わず舌を打つ。と、ここで出撃前に提げてきたカバンが目につく。

――やはり、やるしかないのだろうか

 迷う。これは本当に最後の手段だ、あらゆる意味で。使えば後には引けないし、それ以上に身が持つかわからない。そうなった場合、艦娘たちはどうなる? 主任妖精は? 間宮は? カバンに手を添え一瞬止まる。が、

加古「っあああっ!?」

古鷹「加古ぉっ!!」

 敵の艦爆が加古の艤装を吹き飛ばした。膝をつく彼女に古鷹が悲鳴を上げて寄り添う。
 もはや、迷っている時間はなかった。

提督「……ッ!!」

 意を決して、提督はカバンを開けた。中にあるのは何やら長い紙を丸めたものだ。迷わず引き抜く。
 途端、青い光が周囲に迸った。

長良「なっ、何!?」

古鷹「きゃっ!?」

由良「まぶし…っ」

 思わず艦娘たちが顔を反らす。そして、もう一度目を向けたときに見えたのは、

加古「て、いとく…?」

 左手に長い巻物を携えた提督だった。先ほどまで装着していた艤装が傍らに半ば沈んでいる。じっと目を閉じた彼は右手を前へ伸ばした。

提督「…行クゾッ」

 エコーのかかったような声とともに目を開く。その左目からあふれるのは、鬼火のような青い光。提督の右手に同じ色の光が宿り、火の玉のようになった。中には「勅命」の文字が見える。

提督「艦載機、発艦!!」

??『艦載機ノミンナ、オ仕事オ仕事!!』

 提督の声に重ねるように何者かの声が響く。その右手で巻物を一撫ですれば、次々と飛び立っていくのは小さな紙片。それらは燐光を散らして飛行機へと姿を変えた。

古鷹「て、提督…空母の艤装まで…」

 呆気にとられる艦娘たちをよそに、提督の艦載機が編隊を組んで周囲を飛び回る敵機に襲い掛かる。祥鳳の艦戦とは違い、暗緑色の目立つ艦載機だ。20数機のそれらは敵機の渦を食い破るように突き抜けその外からさらに仕掛けていった。
 最初は戸惑っていた祥鳳の航空隊もそれに追随するように態勢を立て直すと、次々に敵機を落としていく。予想外の攻撃に敵機の攻撃は止まり、その動きも鈍り次々と叩き落とされていった。

提督「ヨシ、全艦攻撃用意! 混乱ニ乗ジテ前衛艦隊ヲ叩ク!」

古鷹「あっ、は、はいっ!」

加古「そ、そうだった…古鷹、肩貸して?」

 瞬く間に敵艦載機を蹴散らすと前衛艦隊はすぐそこだ。いかな損傷しているとはいえ完全に火力はこちらが上だ、敵艦隊も航空隊のやられように形勢の逆転を感じたのか転進を始めている。
 が、それは加古にとっては的以外の何物でもなかった。

加古「そう、古鷹そのまま…いっけぇ!!」

 狙いは一瞬、砲音が響き砲弾が弧を描いて飛び、そして――

古鷹「よし! 駆逐艦撃破!!」

由良「やっぱりすごいな…長良、私たちも負けられないね!」

長良「うん、やるよ、由良! 撃てぇ!」

 腰だめに構えた長良の単装砲と腕に付けた由良の単装砲が一斉に火を噴く。加古のように一発必中とはいかないが、転進する敵艦を追い立てるように水柱が立つ。任せてよしと判断、提督は背後を振り向いた。

提督「ヨシ…祥鳳!!」

―――――
―――

初春「ぬ、敵機の様子が…」

 最初に気づいたのは初春だった。泡を食った風に包囲網を形成していた敵機が連携を乱して離れていこうとしている。

初霜「何が、あったんでしょうか…?」

名取「さっきの光と、何か関係が…?」

 困惑気味に見送る一同の前で、敵機が端から火を噴いて落ちていく。切り裂くように飛んでいくのは暗緑色の機体。

祥鳳「あれは?」

 引き返していく散り散りの敵機を置き去りにして編隊を組んで飛んでくるそれは、

鬼怒「味方の、艦載機……?」

若葉「祥鳳さんの艦載機もいるぞ」

 後方に祥鳳の零戦を引き連れたそれらは祥鳳の周りをぐるぐると旋回し始めた。

祥鳳「着艦を求めているのでしょうか…?」

 飛んでいるのはおそらく零式艦戦52型だ、祥鳳の扱える艦載機ではない。発艦できないものを着艦させるのは……させるのは?

提督『祥鳳、聞コエルカ?』

祥鳳「提督? ど、どうされたのですか声がなんだか…」

 無線越しに聞こえてくる提督の声は、どこかエコーのかかったような暗い声だ。

提督『ソンナコトハ今ハ気ニスルナ……イイカ、ソノ艦載機ヲ使エ』

祥鳳「え…いや、あの…私は…」

提督『着艦ハ試シタ事ガ無イダロウ? 何カガ掴メルカモシレナイ』

祥鳳「た、確かにそうですけど…」

 戸惑う祥鳳に提督はさらに重ねる。

提督『君ハ私ノ前デ正確性ノ高イ爆撃、コノ敵機ノ嵐ノ中デ落チナイ艦戦ノ運用ヲ見セテクレタ……君ナラヤレル』

 52型の後方にぴったりくっついて飛び続ける祥鳳の21型、性能の差を感じさせない飛行はその熟練ゆえだとでもいうのだろうか。

提督『私ハ君ヲ信ジル、私ハ君ノ腕ヲ……』

祥鳳「私の、腕…」

 迷うように着艦の手はずを整える。本当に自分の腕が良いのだろうか、私は役に立てるのだろうか。
 と、横から彼女の腕にそっと手を添えられる。若葉だ。

若葉「大丈夫だ」

祥鳳「若葉、さん…?」

 じっと祥鳳を見上げて、表情変化の少ない顔で小さく笑って見せた。

若葉「祥鳳さんは、私たちの信頼する秘書艦だから」

祥鳳「…若葉さん…」

 目を上げて周りを見回す。初霜が、鬼怒が、名取が。うなずいて見ていた。

祥鳳「私、なら…」

 恐る恐る艦載機に手を伸ばそうとして、止める。
 駄目だ、このままじゃ一緒だ。

祥鳳「…提督、私は…お役に立てますか…?」

 無線機のマイクに、そう問いかける。
 自分一人では覚悟もできない、そんな弱い艦娘だけれど。
 大した能力のない艦娘だけれど。
 それでも、

提督『アア、モチロンダ。役ニ立ッテイル…』

祥鳳「これからも、お役に立てますか…?」

 提督が、背中を押してくれるのなら。

提督『ソコハ君次第ダナ』

祥鳳「ふふ……じゃあ、もっとお役に立てるように頑張りますっ!」

 ちょっと意地悪な答えに笑みがこぼれる。でも、おかげで力が抜けた気がする。
 き、と顔を上げて手を伸ばす。
 正規空母のような立派な飛行甲板もなければ巻物の飛行甲板もない。だから祥鳳の着艦は手づかみだ。矢一本一小隊としてまとまり、矢の形となって減速、それをつかんで矢筒へしまうという方式だ。
 高度を下ろして矢の形をとる零式艦戦52型。微かな燐光を纏って飛んでくるそれに、祥鳳は手を伸ばす。
 いつも通りの新しい艦載機を扱えない彼女ならおそらくつかんでも落ちるだけだろう。だが、今は…

祥鳳(でも、今なら、きっと……!)

 見極めて、矢を掴む。勢いを殺すように腕を引いて弧を描くように動かすと矢筒に納めた。
 そっと手を離す。からん、という乾いた音を立てて矢が落ち着く。

祥鳳「……とれ、た…」

 少し呆然としたような声で言葉が漏れる。手さえ震えてくるが、今は感動に震えている場合ではない。
 次々と降りてくる艦載機を矢に変えて矢筒に収める。くるりくるりと、舞うように収めていくさまを、鬼怒たちはじっと見入っていた。

 そして、自分の零式艦戦21型も収めきって。

祥鳳「提督…私っ」

提督『ヤッタンダナ、祥鳳』

祥鳳「はいっ、私…嬉しい…っ!」

 涙のにじんだ声に、無線越しに提督の笑う気配が伝わってくる。しかし、その気配はすぐに引き締められる。

提督『悪イガ、今ハ祝ッテヤル時間ハナイ』

祥鳳「……はいっ」

 左袖で顔をぬぐうと、祥鳳も表情を引き締める。

提督『コチラノ追撃デ前衛艦隊ハ始末デキソウダガ、後方ノ空母ハ厳シソウダ』

祥鳳「わかりました…全力で排除しますっ」

若葉「祥鳳さん、これを」

 若葉が矢筒を差し出す。予備の矢筒で、それぞれこの作戦のために艦攻と艦爆を分けて入れてあった。

祥鳳「ふふ、ありがとうございますね」

 微笑んで矢を選ぶ。艦爆の矢を漁り、今なら飛ばせる気がするが貴重で強力な艦載機だ、こんなぶっつけ本番で使うわけにはいかない――彗星一二型甲は避けて、彗星。
 艦攻も、流星を避けて天山を選び取る。合わせてさっきの零式艦戦52型を減らす。と、ここでふと目に留まったのは、

祥鳳(九九式艦爆…九七式艦攻…)

 古ぼけた矢だった。きっちり整備もしているが、実戦の機会がなく落ちることもないので使い古すだけ古した、そんな矢たち。自分の矢筒に残る零式艦戦21型にふと触れる。
 そして、迷った挙句に一本ずつを自分の矢筒に収めた。これで満タンだ。

祥鳳「では、軽空母祥鳳…空母艦隊の殲滅を行います」

初霜「……あっ、み、みなさん輪形陣を!」」

 初霜の号令で、若葉たちがさっと位置につく。機関から煙が上がっていても、良い動きだった。これも提督の訓練のたまものなのか、それとも。

祥鳳「……航空隊、全機発艦してください!!」

 きり、と弦を引き絞り、一瞬の溜めののち一息に放つ。彗星の矢だ、それは燐光を放つと姿を変えエンジン音高々響かせ飛び立った。聞き慣れぬ、しかし心地よいエンジン音に高鳴る鼓動を抑えて、文字通り矢継ぎ早に艦載機を発刊させていく。
 そして、すべての艦載機が空へと解き放たれた。

祥鳳「あ……」

 衝動に駆られて混ぜた旧型たちが遅れを見せている。仕方ない、どうあがいても新型にはかなうわけがない、そう思っていた。
 が、

初春「なんぞ…?」

 初春が目を細めて見つめる先、遅れ気味の艦載機たちが一瞬の光を放った。
 機を操る祥鳳の視線の先、遅れていた艦載機たちは速力を上げて先頭に回り、ほかの新型たちがそれに追従する形で編隊を組み始める。
 目を凝らせば、零式艦戦21型の機体には水色の二本線が描かれている。同様に九七式艦攻や九九式艦爆にも似たようなマーキングが見える。あんなものはなかったはずだ。姿を変えた旧型たちは新型を率いて敵へと向かっていった。

祥鳳「あれは、いったい……」


提督『聞イタコトガアル』

 主たる祥鳳すら困惑する中、無線越しに提督がつぶやく。

提督『旧型ノ艦載機ノ中ニハ、一定ノ練度ヲ越エタ隊長機トモ言エル存在ガ、ママ現レルトイウ……オソラク、祥鳳ガ使イ続ケタ結果トイウコトダロウ』

祥鳳「私が…?」

提督『ソウダ、祥鳳ノ腕ト想イニ艦載機達ガ答エタノカモシレナイナ』

祥鳳「そんな…」

 装備に宿る妖精という存在は謎に包まれており、艦娘すらコミュニケーションの術を明確に説明することはできない。感情の有無すらわかっていないが、もしも艦載機に宿る妖精が主たる空母の願いに答えたとしたら。

祥鳳「そんなことって…」

 目頭が熱くなるのを感じて、祥鳳は飛び行く艦載機達を見送った。

―――

 前衛艦隊との通信が途絶えた。二隻の空母は迷った。
 最初は押していたはずだ…どうしたというのか……
 艦載機の反応が途絶えていったあたりでおかしいとは感じていた、だが優勢なのは変わらないと思っていた……それが、どうしたというのか。
 二隻の空母ヲ級は敵機の接近を感じて空を見上げた。急いで残存の艦載機を上げていく。しかし、艦戦でもなければ直掩はこなせない。もはやその艦戦も残り少ない……
 背筋がじれるような感覚。それが恐怖であると彼ら――それとも、彼女ら――は知っているのだろうか。
 敵の艦戦が、自分たちの航空隊に猛禽のごとく襲い掛かる。数と性能で押していた状況が一変、性能も数も圧倒的に押されていた。艦戦を率いる、淡青の燐光に包まれた機体が完全に部隊を統率しきっている……
 火の玉になって落ちていく航空隊を見上げるしかなかった。
 そして、完全に自分たちの敗北を悟ったその直上、重い爆弾を抱えた艦爆が真っ逆さまに落ちてくる。追いつめるように艦攻が水面すれすれを飛んでくる。それはもう、抵抗するのもバカらしくなるほどの状況。
 二隻のヲ級は、死を悟ったのか何もせず水柱の中に消えていった。

――

祥鳳「航空隊より入電……二隻の空母の撃破を確認、全機帰投する…です」

 祥鳳の報告に、若葉たちが沸く。

初霜「やった、やりましたよ!」

初春「あぁ! 勝ちを拾ったようじゃのう!」

若葉「ふふ…この感覚、悪くない」

 歓声を上げる中、通信が入る。

加古『こちら前衛艦隊の加古だよぉ! 敵前衛艦隊の全滅を確認!』

長良『全員無傷……じゃないけど、無事だよ!』

鬼怒「やった、やったよ!」

名取「うん、うん! 私たちやったんだよ!」

 物静かな名取も鬼怒と抱き合って喜びをあらわにしている。それもそうだろう、初の実戦で完勝とは言えないが格上であろう相手に大金星を上げたのだ。祥鳳だって、胸に来るものがある。
 もうすぐ航空隊も帰ってくる…犠牲もなく、勝利できた。
 満足感と高揚感が湧き出る、その時、

古鷹『あれ、提督…?』

由良『古鷹、どうしたの……え、提督?』

加古『おい…どうしちゃったんだよ提督…返事しなよ…提督、提督ッ!?』

 無線機の向こうから、悲痛な叫び声が飛んできた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。
 これを持ちまして鎮守府防衛戦は終了となります。次回以降がどうなるのか、できればまた追いかけていただけると幸いです。

 はい、今回かなり時間が開いてしまいましたね、三か月近くでしょうか? 保守していただいた方々には感謝の念に堪えません…はい、すごく忙しかったのです。サンマなんか捕獲する暇もないくらいでした。一匹つれましたっけ…そんな感じです。
 そして、かなり難産したというのも一つですね。難しいですね、面白く戦闘を書くというのは…まだまだ修行の足りない>>1であります。

 さて、次回ですけども……保守していただかなくても大丈夫なくらいには投下しに来たいと思います。もう900もこえましたしね。どうかお付き合いいただきたく……

 では、本日はこの辺で……

 イベント進捗どうですか? >>1です
 12月に入りましたね、皆さま堀の方は順調ですか? >>1はまぁ…あはは

 そんなことより本編です、少ないですが少し投下していきましょう。さぁ提督はどうなってしまったのか

 その後の処理は、あの激戦が嘘のようにあっさりとしたものになった。
 まず間宮は、食堂で倒れているのを戦闘中整備妖精が発見、子日修復の傍らで艤装との接続をカットすることで難を逃れた。しばらくは足のしびれが残るそうだが、その後の業務に問題は残らないとのことだった。
 間宮の船体は損傷が激しく、しかも間宮からのコントロールをカットしてしまったために一部の機能が停止、それらを一時的に外へ移動させることとなった。今後は、間宮の指導のもと艦娘たちの手によって運営されていくことになるらしい。
 そして、その艤装の修理については、提督が裏で手を回していたらしい。戦闘終了後間もなくやってきた遠征艦隊が、呉の友提督に連絡をつけてくれた。

五十鈴「まったく、びっくりしたわよ。遠征航路を走っていたら、急に水偵が向かってくるんだもの」

 戦闘前に放った水偵は、偵察用ではなく連絡用だったらしい。よその鎮守府の遠征航路まで把握してるというのはどういうことなのか……
 ともかく、修復用の資材の都合をつけてくれるとのことだ。余談だが、主任妖精は久々の大仕事にずいぶんと気合を入れていた。
 大破した子日は入渠ドックへ移送後、翌日には何事もなかったかのように回復した。主任妖精の手腕によるところか艦娘の治癒力によるものかはわからないが、とにかく大破による重傷を感じさせない元気さを発揮している。
 幸い鎮守府の方には大きな被害はなく、特別の修復や掃除は必要なかった。が、こうして敵が攻めてきた以上、絶対の安全があるというわけではなくなった。よって遠征隊がしばらくのあいだ警護についてくれるということである。
 そして、提督は。

提督「…………」

祥鳳「提督…」

 自室の布団に横たわったまま、提督は動かない。呼吸はしている、死んではいないのだろう。祥鳳は、その傍らでじっと手を握る。
 あの後、提督は加古と古鷹に担がれて帰ってきた。すでに意識はなくぐったりとして、口や耳から血を流した血みどろの状態だ。後から聞いた話だが、あの時の提督は青い炎を体から発していたということだ。彼のことだからなにか相当な無茶をしたに違いない。
 思えば、通信機から聞こえてきた彼の声はどこかおかしかった。きっとその無茶をしたせいに違いない……

祥鳳「だというのに、私は……っ」

 気づく方が難しい状況だったと、頭ではわかっているのだろうが心がそれを納得しない。自己嫌悪にオ一色かというときに、寝室のドアが控えめにノックされた。

祥鳳「……どうぞ?」

加古「ん、失礼するね」

 静かにドアを開けて入ってきたのは加古だった。提督を支えて戻ってきてからというものの覇気がなく、昼寝もしていないという話だ。

祥鳳「あぁ、加古さん…」

加古「うん…提督、起きないな」

 毎日足を運んでは、こうして一緒に枕もとで見守る日々である。

祥鳳「えぇ…悪化したりしてるわけではないので、悪くなってるわけではないのでしょうけど…」

加古「うん……まったくさ、寝坊助は私の十八番なのにな」

 くす、と笑うも元気はない。あっけらかんとした彼女の性格からは考えられない様子だ。

祥鳳「ふふ…そうですね、起きてきたらしっかり怒らないといけませんね?」

加古「あ、でも、提督あんまり私の寝坊助怒らないし、ほどほどだよ?」

 他愛ない話を振るが、弱弱しい笑みだ。

祥鳳「……加古さん、ちゃんと寝てますか?」

加古「ん……うん、寝てる」

祥鳳「……加古さんは、悪くないですよ?」

加古「……うん、そだけどさ」

 それでも、と言う。

加古「提督に、あの力を使わせたのは……私らが弱いからじゃない…?」

祥鳳「……そうね」

 答えて祥鳳も手を握る。

 いや、わかってはいた。相手には正規空母がいた、二隻もだ。かつての戦争でそうであったように、今でも航空戦力は強力だ。数がそのまま戦力になると言っても過言ではない。
 正規空母二隻に対して、こちらは軽空母が一隻。分が悪いのは誰の目にも明らかだろう…
 それでも。

祥鳳「何か、やりようがあったのではないかって…思うと」

加古「……悔しい、よなぁ」

 重苦しい沈黙が二人の間を流れる。後悔、自責…そんな感情がにじみ出て方が落ちる。
 そんな空気を断ち切る者が、一つ。

??「ふーん、偉い慕われてるんやな」

加古祥鳳「「!?!?!?」」

 うなだれる二人の頭上、不意に声が降りてきた。
 びくりと肩を跳ね上げて、慌てて立ち上がり身構える。

加古「だ、誰ッ!?」

祥鳳「いったいどこから…?」

??「あー、そんなに警戒せんといて? 敵ではないから」

 提督の眠るその上、半透明に透き通った少女がいた。重力を感じさせぬ動きで二人を見回して手を広げている。

加古「…幽霊?」

??「うん、まぁ…そうなるんかな」

祥鳳「……一体、何者なんですか」

 未だに警戒を解こうともしない祥鳳に、少女は困ったと言う風に肩をすくめて、

??「そこの重巡の子が言うように、私は幽霊や。それも、艦娘の幽霊やから…敵やない、むしろ仲間かな」

祥鳳「……艦娘の、幽霊…?」

 呆気に取られる二人を前に、彼女はふわりと提督の枕元に座って

龍驤「うちは軽空母龍驤や、元やけど…な」

 座りぃや、と促されるままに再び腰を下ろす加古と祥鳳に龍驤は笑いかける。

龍驤「この若造によく付いてきてくれてるみたいやな、ありがとう」

加古「えぇと、若造って……龍驤、さん…? は、どうしてここにいるの?」

 おずおずと尋ねる加古に、彼女は頷き答えた。

龍驤「そうやなぁ…簡単に言うとうちはこの提督に『取り憑いている』ってところかな」

祥鳳「とり…っ!?」

龍驤「もう、10年近くなるんじゃないんかなぁ」

加古「そんなにっ!?」

龍驤「うん、あれは大変な事件やった…」

 遠い目をして、苦みを帯びた表情で提督を見つめている。

祥鳳「事件…? それは一体、」

 祥鳳が訪ねようとしたその時、

提督「…そこからは、私が説明しよう」

加古「提督ッ!?」

 ゆっくり目を開けて、提督が三人を見回していた。

提督「加古、祥鳳……こうして寝ていると言うことは、きっと苦労を掛けたのだろうな」

加古「て、てーとくぅ…」

祥鳳「全くですよ、もうっ…いきなり倒れるなんて、どうせまた無茶したんでしょう」

提督「耳が痛いな…龍驤も、久しぶりだな」

龍驤「うちはずっと見とったからそんな気分じゃないんやけど、久しぶりや。おっきくなったなぁ」

 涙ぐむ加古と、ツンと澄ました祥鳳、優しく笑う龍驤。提督は上体を起こした。

提督「さて、まずは二人とも、よく頑張ってくれた。」

 その言葉に、澄ました風の祥鳳もつい表情が緩む。加古もまんざらではなさそうな顔をしていた。

提督「とりあえず状況を確認したい。あれからどうなった…?」

祥鳳「まず、二日間ずっと寝込んでいました……」

 加古と祥鳳がかいつまんで状況を説明した。そして聞き終わると微笑み一言。

提督「ん、つまり大事には至らなかったということだな、良かった」

祥鳳加古「「一大事ですよ!!」だよ!!」

 即座に怒られてしまった。

提督「う…そ、そんな大声出さなくても」

祥鳳「鎮守府の長が昏倒しておいてよくそんなことが言えるわね、もうっ」

 びく、と肩を竦めて縮こまる提督に、敬語も忘れて祥鳳が叱り、

加古「こっちはどんだけ心配したと思ってんだよぉ…」

 ひっく、としゃくりあげながらぽろぽろと加古は涙をこぼした。

提督「う……す、すまん…」

 言い返す余地もなく、申し訳なさそうに肩を落とした提督を見て龍驤はからからと笑った。

龍驤「はははっ、やっぱりまだまだ青いなぁボン?」

提督「……ボンっていうな、龍ねぇ」

 恥ずかしそうに顔を背ける彼に、ふと怒りをひそめて祥鳳が問う。

祥鳳「……龍驤さんと提督って、いったいどういうご関係で…?」

加古「お、おう…わたしも、ズビッ…きになる」

 洟をすすりながら加古もうなずいた。
 それに龍驤は少し困ったように苦笑した。

龍驤「そうやなぁ…言うていいのかな、これ?」

 提督の方を伺うと、彼はゆっくり頷き言った。

提督「龍ねぇを前にここまで落ち着いているんだ、まぁいいんじゃないかな」

加古「いや、驚いてるけどなんか一周回って落ち着いてるだけだし…」

 加古のつぶやきに苦笑しつつも提督は改めて三人を見回して言った。

提督「簡単にいうと俺の体は、艦娘に近い構造をしているんだ」

 夜更けの鎮守府提督寝室、彼はゆっくりと語り始めた……

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。幽霊まで出てきて大丈夫でしょうかこの話()お付き合いいただければ幸いです
 さて、イベントはE5は行かずグラーフ掘りに専念することが決定した我が鎮守府ですが、まぁ一日2回が限度の出撃じゃあ出るものも出ず…やっぱりE-5行けばよかったかなぁと優柔不断な>>1提督であります。祥鳳さん叱ってください

 イベントが終わればクリスマス仕様にアップデートだそうで、祥鳳さんにボイスはあるのでしょうか…ちょっぴりワクワクの>>1であります。それよりも、まずは育成にかかる予定ですが…はてさて

 では次回です。今夜は歴史ヒストリアで間宮さんが出演したそうですね、そんな間宮さんにももう少しスポットを当てたいところですが、提督の昔話になります。さぁ、艦娘のに近い体とは……? 年内の更新を目指しつつ、今夜はこの辺で……
 

提督は憑依合体ができるシャーマンだったのか

 うおおおおおおぎりぎりじゃあああああ!! どうも、>>1でございます。
 皆様あけましておめでとうございます、本年も祥鳳たち端野の愉快仲間たちをよろしくお願いいたします。年末年始の繁忙期ですっかり更新滞ってましたね、申し訳ない。とりあえず投下にたる量が書けたので更新していこうと思います

 それは、今から10年以上は前の話だ。
 今の提督がまだ幼く、深海との戦いが確立しておらず、今以上に苦しい戦況だったころの話である。
 その頃は艦娘が軍に浸透し始めたばかりで、艦娘の数も指揮官も少なく、また理解もあまりなされていなかった。そんな中、提督として艦娘の指揮を執っていた一人が今の提督の父である。

父提督「…ふむ」

??「提督、どうかしました?」

父提督「あぁ…夕張か。いや、もうすぐ観艦式だな、と」

 執務室で物憂げに窓の外を眺める父提督に、横から声をかけたのは当時秘書艦を務めていた軽巡洋艦夕張だった。父提督は少し笑うと一瞥するとまた外へ視線を戻す。

夕張「観艦式…あんまり見せびらかしたりっていうのはちょっと…」

父提督「まぁそういわないでくれ、こういうイベントで君ら艦娘への理解を深めなくちゃいけないんだ」

夕張「……提督、また無茶しましたね?」

父提督「無茶でもしないと、私らはずっと無理な戦いを強いられる……命を懸ける君らに比べれば、私の無茶など安いものさ」

 そういって肩を竦めて見せる父提督に、夕張は呆れたようなため息とともに、しかし苦笑気味に

夕張「本当にもう、何を言っても聞かないんですから」

 苦笑気味に言いながら、父提督の隣に立つ夕張。彼女の頭に、父提督はぽん、と頭を置いた。

父提督「苦労を掛けるな、夕張」

夕張「うんん…提督を助けるのが秘書艦の役目で…お父さんを助けるのが娘の役目よ?」

 心地よさげに目を細めながら微笑み夕張は提督を見上げた。
 そう、父提督と夕張は実の親子であった。艦娘適性のあった夕張とともに艦娘指揮に選抜されて、こうして辺境ながらも基地を任されるまでになった……が、しかし。

父提督「艦娘の立場はいまだに不確かだ…息子にもまだまだ胸が張れないんじゃあ親父の名が泣くってもんだろう?」

夕張「もう、男の意地ってやつですか?」

父提督「ははは、まぁな!」

 わしわしと頭を撫でて大きな声で笑う父提督。呆れた顔の夕張も思わず笑いだす。

夕張「ふふっ…元気かなぁ、提督」

父提督「嫌われてないと良いなぁ」

―――――
―――

ていとく「おーい、とーうーさーんーっ!」

 数日後、観艦式当日。
 運営スタッフ席には来賓の名札を下げた幼い提督が訪れていた。駆逐艦たちよりも幾分か幼い少年の登場に、周囲の雰囲気が少し丸くなる。

父提督「おぉ、よーしよしよく来たなぁ」

 正式な式典のためか用意してもらったのであろうきちんとした礼装を着ていて、それを見た父提督も普段の眉間の皺もすっかり目じりへと移動していた。

ていとく「えへへぇ、とうさんとうさん、にあう!?」

 屈んで視線を合わせる父提督に見よう見まねの敬礼をする提督。ほぅ・・・と艦娘たちのそこここからため息がもれて、父提督もうんうんと頷く。

夕張「いらっしゃい、提督。疲れたでしょ?」

ていとく「あ、ねーちゃん!」

 横からやってきた夕張に飛びついてはぎゅっと抱きついた。今度はきゃーきゃー黄色い歓声が上がる。辺鄙な立地の鎮守府ではこういうイベントには疎い。さらに女性ばかりの組織とあってはこんな風景もうれしくて仕方ないのだろう。
 夕張も相好を崩してぐりぐり頭を押し付けてくる彼の頭をなでていた。

龍驤「おうおう、よく来たなぁボン」

 遠巻きに家族団らんを眺めていた艦娘たちの中から出てきたのは背の低い赤い服に身を包んだ艦娘。銀色のサンバイザーをつけたツインテールの少女の声に、提督の肩がびくりとはねる。

ていとく「でたなリュウねぇ!」

 ばっと夕張から離れ身構えながらキッとにらみ付けた。

龍驤「なんやウチは悪役怪人じゃないで?」

ていとく「うるせー! 毎度毎度ガキ扱いしやがって!」

龍驤「にししっ、お父ちゃんに甘えてるようじゃあまだまだお子様やでぇ?」

 にやにやと目を細めて笑う龍驤に、提督は顔を真っ赤にして叫ぶ。

ていとく「くっそぉ、このチビ!」

龍驤「ふっふーん、がきんちょに言われても気にしないもんなー」

ていとく「洗濯板! まな板! フルフラット!!」

龍驤「おうちょっと待ちぃやその言葉誰に聞いたん?」

 余裕の笑みを浮かべていた龍驤の額に青筋が走る。気づいているのかいないのか提督は反応が変わったことにご満悦のようだ。

ていとく「ふっふーん、チビに教えるギリはないね!」

 にやにやと笑う提督に、龍驤からはぷっつーんという擬音が聞こえた。

龍驤「おうおうおう大口叩くやないかえぇ?」

ていとく「んだよやんのか!?」

 ずんずん詰め寄る龍驤を正面から迎え撃つ。額を押し合う勢いでにらみ合いを始めるのを、夕張と父提督は微笑ましそうに眺めていた。

夕張「おとうs……父提督、気づいてます?」

父提督「あぁ……背、抜いたな」

 ついにつかみ合いをはじめた二人を見ながら、彼は感慨深そうに頷く。
 幼くして母親をなくし、父も姉も軍の仕事で家に帰らず祖父母の家で過ごすしかない提督だ、こうしてたまの触れ合いが息子の成長を知る数少ない機会なのだ。
 エスカレートしていく二人の取っ組み合いに駆逐艦たちが止めに入るに至って父提督も軍帽をかぶり直して表情を改める。

父提督「さぁ、そろそろ時間だ諸君」

 特に大きな声を出したわけでもないのに周囲に響く声、ヒートアップしていた龍驤と提督もついぴたりと止まって視線を向けた。

父提督「こんな辺鄙な場所での観艦式だ、観客は少なく来賓くらいしかいない詰まらん式典だ。だがこの式典は大きな意味を持っている、納得いかないがな」

 自然と艦娘たちが集まって彼の言葉に耳を傾けている。龍驤ですら服を調え静かに聴いている。

――格好いいなぁ…

 言っている言葉の意味はさっぱりであったが、そうやって自然と部下が耳を傾け信頼しているのは子供心に肌で感じられた。それが、提督にはたまらなく格好良くて、めったに会えないにしても心の底から尊敬する父の姿であったのだ。
 

 だが

 彼の姿を見た最後の時になるとは、彼は知る由もなかった……

 そこから先は混乱していてよくわかっていない。作戦記録も戦闘詳報も残っていないため検証することもできない。わかっているのは深海棲艦の艦隊が、観艦式用に武装をほとんど非戦闘用にしていた父提督の艦隊を強襲、混乱の最中に指揮所に砲弾が命中……父提督含め、秘書艦などが死傷することになった…ということだけだ。
 結果として艦隊は壊滅、多くの艦娘が犠牲となった。
 そして…

ていとく「…ぅ、うう……っ」

 提督が目を覚ましたのはかなり経ってからである。轟音とともに吹き飛ばされたのは何となく覚えていたが状況はさっぱりだ。

ていとく「い、いったいなにが…」

 もぞもぞと動こうとすると、自分を何かが包み込んでいるのがわかった。おかげで目を開けても周りが見えない。どうにかソレから逃れて、視界が開けた。

ていとく「…え?」

 外は黄昏時、血のように赤い夕日に照らされた指揮所はまさに地獄絵図だった。
 機材や壁は破壊され、何かが燃えていたのか煤がそこら中についている。床にはがれきに交じって赤い液体をにじませた『なにか』が転がっていて、動くものは自分一人だった。

ていとく「なに、これ…と、とうさん…?」

 気が飛ぶその前まですぐそばにいた父の姿を探した。震える声でか細くその名を呼ぶが、答えるものはなく…そして思い出す、あの一瞬に父が自分を抱きかかえたことを。

ていとく「…………」

 おそるおそる、じぶんをつつんでいた『それ』をみた。
 うつぶせになっているが、まちがいない…ちち『だったもの』だった。

ていとく「ひっ…」

 つめたくうごかなくなったそれからおもわずはなれた。いやだ、いやだ…さといかれには、それがもううごかないことはすぐにわかってしまった……へたりこんであとずさりするそのてに、またなにかがあたった。

ていとく「ッ……」

 おそるおそるめをむければ。
 おおきながれきにかはんしんをうめられたあね『だったもの』だった。

ていとく「あ…ぁ…っ」

 くちからちをながし、うつろなめでこくうをみていた。からだじゅうが、がくがくとふるえだした。
 ひがゆっくりしずむ、あかいひかりがどんどんやみへとかわっていった。ひざをかかえてただなみだがとまらないていとくを、くらやみがつつんでいった。

―――

 どれくらいそうしていただろうか、提督は気配を感じてふと顔を上げた。
 月の青い光とはちがう、何か別の光源が近くにあるらしい…うすぼんやりと明るいくなっている。のろのろとした動きで周囲を見渡すと、そこにあったのは…

ていとく「……なに?」

 蒼い光の玉だった。ゆらゆらと炎のように揺れるそれは、ふわふわと提督へと近づいてくる。深い海の底のような蒼をたたえたそれに、提督は見入ってしまう。そして思わず手を伸ばして、気づいた。
 仄暗い何かがその中にあった。見通せない何か、しかしそれが何なのか提督は本能で理解した。

 それは、無念。
 それは、怨嗟。

 何も出来ぬままに沈んで命を落とした艦娘の、その艦の魂たちの残滓。
 行き場のない怒りをたたえたそれは、気づけば無数に彼の周りに集まっていた。通常、人の身には見えぬそれらが、提督には見えていたのだ。
 無数の錨と憎しみの光に包まれ、提督は、ただただ震えるしかできなかった。
 そして、

ていとく「う、うわあああっ!!」

 一斉に、光が提督へと飛び込んだ。
 生まれつき霊媒体質の提督を、それらが宿主に選んだのだ。彼らの怒りが、憎しみが、無念が……一気に彼の体へと流れていった。

ていとく「あぁっ、ア"ア"ぁぁア"アァァァ"ア"ア"ッ!!??!?」

 そのマイナスの感情たちが身を焼くように、提督の体は青い炎に包まれた。両目を見開き涙をだらだらと垂れ流しながら、喉の奥からおよそ人間のものではないような苦悶の叫びを上げてのたうち回る。
 提督という人間の魂が、それらに食い荒らされるような感覚にさいなまれ、半ば意識を手放しかけていた。
 そんな声に、答えるかのように何かが動いた。

龍驤「……ぅ、ぁ…っ」

 指揮所の片隅、がれきに半分埋もれる形で横たわっていた龍驤である。もうろうとする意識を手繰り寄せ、がれきを振り落として彼女は身を起こす。

龍驤「…はっ、ボン…ッ」

 龍驤にもはっきりと見えた、その炎。それはまるで、深海に住まう連中のまとうそれによく似ていて。

龍驤「ッ…ぼ、ぼん…っ!」

 いうことを聞かぬ体に鞭を打ち、必死に提督へ這いよりそして、

龍驤「ぅあああ! あぁああっ!!」

 包み込むように抱きしめた。ガクガクと暴れまわる提督の体を必死に抑え込む彼女に、邪魔をするなとばかりに炎が燃え移る。しかし、龍驤はあきらめない。

ていとく「ア"ア"ア"ッ!! ああああぁああっ!!!??」

龍驤「しっかりしぃ、ボン!! うちがついとる! ボンっ!!」

 身を焼く感覚に必死に耐えては頭を胸に抱くようにして抑え込もうとする。しかし、彼の叫びは、炎は弱まる気配もない。

龍驤(しっかりしぃウチ! なんか、なんかあるはずなんや…!)

龍驤「ぅぁ…くっ……? あ、あれは…」


 指揮所を見回す彼女の眼に映りこんだのは、彼の姉の姿であった。
 息絶えた虚ろな目が、確かにこちらを見ていた。動かぬ体に見えない叫びを上げながら、必死に手を伸ばそうともがくのが、確かにわかった。

龍驤「ゆ、ゆうばりはん…っ、わかったで…」

 提督を抱えて、最後の力を振り絞った。半ば引きずる形で夕張の手が届く範囲まで彼を引っ張り上げる。龍驤は夕張の手を掴み、抱きかかえる提督へと触れさせた。
 炎はすぐに夕張にも燃え移る。三人で炎に焼かれながら、龍驤は全身全霊で祈った。

龍驤「お願いや…お願いや! ボンを…この子だけでも連れて行かん取ってくれ…! この子はなんもしてへんやろうッ!!」

 意識が刈り取られていく。薄れる意識の中、提督と夕張の手の感覚だけが最後まで残っていた……

―――――
―――


 そこからはしばらく伝聞になる。
 この後、提督は龍驤と夕張の亡骸に包まれて発見された。この事件において、確認されている限り唯一の生存者であったという。
 発見当初は打ち身や打撲といった軽症でやけどなどはしていなかった。いわゆる幻肢痛のようなものだと後から知ることになる。
 当然、蒼い光の事も話したが、誰一人信じる者はなかった。むしろ精神を病んだと判断され田舎の方で養生することになった。
 そして、落ち着いてきたころ、提督は再びその事件と向き合うこととなる。

―――――
―――

提督「そこから先は、長くなるから少し割愛するが……まぁ、りゅうね、龍驤が見えるようになり、水に浮くことができることがわかりと……いろいろあった」

龍驤『ホンマに人のおらん田舎で良かったよねぇ、神様の神隠しくらいあっても驚かんような場所だったし』

 長い話を終えて頷き合う二人(?)を前に、加古と祥鳳はただ黙って聞いているだけであった。
 いやむしろ、

祥鳳「と、突拍子もないと言いますか…」

加古「なんかこう、とてつもないなぁ…」

 話が突飛でついていけていない、というべきであろう。
 自分たちが充分メルヘンチックなのは重々承知であるが、それ以上のメルヘンがそこにあった。

祥鳳「と、とりあえず提督が規格外と言いますかいろいろとおかしいのはよくわかりました」

提督「お、おかっ……いやいい…それで?」

加古「結局、提督には何ができて何ができないの?」

提督「そうだなぁ、口で説明するのは面倒なんだが……」

 そういって提督が語ったことを簡単にまとめれば――

1.軽巡夕張の血縁であり、身を焼かれるその時までともにあったためか、軽巡が装備できる装備なら普通に使いこなせる。夕張につかえない水偵を扱えるのは1のため
2.龍驤の力を借りての艦載機の運用が可能
3.ただし、提督の魂に取り憑いた艦の怨嗟の影響を強く受けるので大きな負担となる
4.理論上なら、すべての艦の艤装が扱えるが体に負担がかかり肉体が耐えられない

提督「とまぁ、こんな感じか」

加古「一言で頼む」

提督「軽巡艦娘とほぼ同じ能力を持っている」

祥鳳「……訳が分かりません」

提督「現にそうなんだ…そう理解してくれ」

 苦笑する提督も、それ以外言いようがないとばかりに首を振っている。

主任妖精「そういうわけで、ちょっと失礼するさね」

加古「うわぁ、主任妖精…いたんだ…」

主任妖精「誰が出番少ない影うすだって?」

加古「そんなこと言ってないよな? な!?」

 いつの間にか戸口のところに立っていたらしい主任妖精がやってきて、

主任妖精「ふんっ」

提督「あらぁっ!?」

 提督の肩をその短い腕で叩き、布団へ寝かせた。荒い。

主任妖精「絶対安静だよ、長話しよってからにまったくもう」

祥鳳「しゅ、主任妖精さんそんな乱暴に…」

主任妖精「じゃーっかしぃ! 文句言う愚図は海に叩き込むかんね!?」

祥鳳「ひゃいッ!?」

 一喝して祥鳳を震え上がらせると提督を見、

主任妖精「軽巡なみの力がある男が軽く押しただけでこれなんだ、そこに長話じゃあやすまらんだろう、察しな」

加古「あ……」

提督「はは、あなたはごまかせないな」

主任妖精「あたしを誰だと思ってるさね」

龍驤「あぁ、私が出てるのも原因やな…」

主任妖精「やっぱ体力使ってるさね…」

 呆れたようなため息を吐く主任妖精に、龍驤も苦笑した。

龍驤「ほな、ボン。わたしはまた眠るよ…しっかりな」

提督「あぁ、またな」

 すぅ、っと。空気に溶け込むうように龍驤が消える。それを見届けた提督は横になったまま周りを見回した。

提督「改めて、皆お疲れだった。私を含め、皆ここにいられるのは他でもない皆の力だ。良く成長したものだ」

 微笑む提督に、加古や祥鳳も表情が緩む。

提督「私のことは、回復したら皆に話そうと思う。だがその前に、一眠りしておきたい……祥鳳、すまないが後を任せる」

祥鳳「は、はいっ」

提督「加古、初撃の三式は見事だった。今後も頑張ってくれ」

加古「え? お、おぉっ! あたしだってやる時ゃやるからね!!」

提督「ふふ……それ、じゃあ…すまないが…」

 ふぅ、と瞼が落ちてくる。やはり体力が戻り切っていないようだ。

祥鳳「それでは、あとのことはお任せください」

加古「あたしもやるよ! うん!」

提督「ん…たのむ、な…」

 少し笑って、提督は目を閉じた。
 すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。加古と祥鳳もほっと安堵の息を吐いた。

―――――
―――

 本日は以上とさせていただきたく。設定放出&過去話となりましたがいかがでしたでしょうか。霊媒体質の提督が艦の怨念に取り憑かれているのを龍驤と夕張のおかげで闇堕ちしなかったっというのが簡単なまとめになります。
 描写の雰囲気は>>928の言う通りかもしれませんね、言われるまで気づきませんでしたが、まぁおおむね間違ってないような気もします。
 正直、話の落としどころを見つけられず中途半端に話をぶった切った感は否めませんね、申し訳ない。次回からはもっときれいに終わらせたいと思います。うむ

 最近祥鳳さんボイスが良く付くようになりましたね、クリスマス・正月ときて節分まで……目測誤る祥鳳さんかわいい。そのほか、イベントがもうすぐだったり艦これ改が発売にこぎつけたり……いろいろありますね、えぇ

 さて、次回からはまた端野の日常へ戻っていきたいと思いますが……そう簡単には戻れません、ハイ。今度こそ、こ、今月中の更新を…! などと思いつつ、次回の更新で次スレ建てたいなぁと思いつつ、予定は未定です。毎日更新だったころが懐かしい……
 では、本日はこの辺で……

 

キタ━━━(゚∀゚)━━━!!

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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月10日 (金) 22:12:06   ID: A6mAcvlO

期待してます!
ガンバ!

2 :  SS好きの774さん   2014年12月19日 (金) 08:19:09   ID: cxRn-mES

たまに更新きてると嬉しいねー

3 :  SS好きの774さん   2014年12月21日 (日) 12:16:13   ID: bHzh5jXL

好きだわ
頑張れ

4 :  SS好きの774さん   2015年01月04日 (日) 10:20:48   ID: 4kRQrL8G

久久に面白かった
期待してます

5 :  SS好きの774さん   2015年01月06日 (火) 10:27:24   ID: 6mM1Skth

祥鳳、古鷹、由良、鬼怒と大好きなのにあまり陽の目が当たらない娘がいっぱいで嬉しかったです(小並感)

6 :  SS好きの775さん   2015年01月13日 (火) 16:46:14   ID: QLoRyWq-

投稿まってます!
がんばってください!

7 :  SS好きの774さん   2015年01月14日 (水) 03:02:57   ID: MNRZBkS3

投稿待ってました!!!
これからも楽しみに待ってます!

8 :  SS好きの774さん   2015年01月17日 (土) 19:33:51   ID: 9CqUCkMR

また更新待ってます。頑張ってください

9 :  SS好きの774さん   2015年04月13日 (月) 09:56:34   ID: ROczu6Q8

いつもこのSSを読むのを楽しみにしています。
気長に投稿をお待ちしています。

10 :  SS好きの774さん   2015年04月26日 (日) 02:23:08   ID: HSJajOQt

良かった突然の終了だと思ってた
次の投下首を長くして待ってます!

11 :  SS好きの774さん   2015年05月24日 (日) 13:16:31   ID: n2K9jDTd

キタコレ!次の投稿を楽しみにしております!

12 :  SS好きの774さん   2015年06月21日 (日) 00:55:33   ID: wkVSeNJr

遂に消えてしまわれたか

13 :  SS好きの774さん   2015年07月01日 (水) 21:21:29   ID: liq8JF7H

いや、まだだよ。きっと来てくれる。

14 :  SS好きの774さん   2015年08月10日 (月) 04:17:12   ID: hddiu_yr

今になってみれば改二になったり新規グラになったりしてるメンツも多いが、開始当時は割とマイナー寄りだったんだろうな…今後も期待してます

15 :  SS好きの774さん   2015年08月11日 (火) 02:06:53   ID: APQW2JEZ

気がつきゃ一周年か…。待った甲斐があったね。嬉しいわw ID: liq8JF7H

16 :  SS好きの774さん   2015年08月30日 (日) 21:29:08   ID: UFTcikpK

煮詰まるって意味間違ってるよ
語感が良いって理由でよくわからない単語を使いたがるのはわかるんだけど
調べれば出るんだからさ

17 :  SS好きの774さん   2015年10月12日 (月) 01:22:58   ID: hiN5oPEw

いつ更新がきてもいいように何回も読み返してるゾ

18 :  SS好きの774さん   2015年11月05日 (木) 00:13:02   ID: mvqzPmGV

うおおおおおおきてたあああああ

19 :  SS好きの774さん   2015年11月08日 (日) 17:45:05   ID: DbNuKB0W

※16
「煮詰まる」って単語自体意味を正しくわかっているかは別にして日常的に使われる単語だろうに、それを「よくわからない単語」なんて言ってるあたり、書き込みをする少し前に「煮詰まる」って単語と、それが誤用されやすいってことを知ったばかりで、「難しい単語知ってる俺すごい」的な顔をしたい中学生なのかな?

20 :  SS好きの774さん   2015年11月27日 (金) 00:48:58   ID: 3zPUAwLt

※19
「筆者が言葉の響きだけでよくわからずに単語を使ってる」って言ってるんじゃ?
※16の文脈からわかるだろうに、それも理解できずに「中学生かな?」とか言っちゃうと逆に※19の読解力が中学生以下と露呈するよ

21 :  SS好きの774さん   2015年12月19日 (土) 00:20:17   ID: hxcnGTrN

久々に来てみたら、だいぶ更新されていて嬉しいです。
提督の正体もついに明かされますね(^^)

22 :  SS好きの774さん   2016年02月06日 (土) 02:06:12   ID: dqbqiePC

更新きたああああああああ\(^o^)/
執筆者さんお疲れさまです。長良さんの欠陥(←不快な表現すみませぬ)を見ることができるのを楽しみにしています。
 300番あたりまでの文章の表現の仕方好きですね。
 新年の楽しみが増えました

23 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 22:05:10   ID: 34z1UR3U

ほわあァァァ!!!更新来てたァァァ!!!

24 :  SS好きの774さん   2016年02月08日 (月) 20:40:07   ID: 33kwluZe

がんばって!

25 :  SS好きの774さん   2016年04月05日 (火) 15:06:40   ID: OyNx2XTF

次の更新楽しみに待ってます(>.<)y-~

批判に負けず頑張って下さい(≧▽≦)

26 :  SS好きの774さん   2017年02月24日 (金) 00:38:47   ID: s9PyDg-3

続きはもう読めないのか

27 :  SS好きの774さん   2017年03月23日 (木) 13:09:43   ID: Fm3uXo3p

続きを探してここに来たけど行方不明のままなんですね(・ω・`)残念です

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