魔法使い「……」
魔法使い「……!」
魔法使い「…何?このすごい魔力は…!」
魔法使い「…!…あの人からね…」
魔法使いがある人物を観察し始めようとしたそれと同時に、後ろに何者かの気配が現れる―
魔法使い「誰!?」
戦士「うおっ!?」
魔法使い「…なんだ戦士じゃないの。急に背後をとらないでくれるかしら」
戦士「遠目で人を観察しようとしてた奴にゃあ言われたくねぇな」
魔法使い「…まぁいいわ。それよりも戦士、あれは何者なの?」
戦士「…おいおい、まさかと思って声を掛けてみたけど…本当に知らないのか?」
魔法使い「魔法の研究で忙しいのよ」
戦士「…全く。相変わらずだな。しかしな、今回ばかりは常識として知っていて欲しいぜ。お前があれ呼ばわりしたのはな…」
魔法使い「うん」
戦士「勇者様だぜ?」
魔法使い「……。えっ」
戦士「いや、本当に」
魔法使い「嘘!?」
戦士「だから本」
魔法使い「私の研究の成果を見せる時が来たわね!」
戦士「えっ…あっ!おい」
仕事してるので、ちょくちょくまったりと
すすめます
―勇者を中心に、新たな勇者を祝う人たちの輪に向かって、大量の魔法道具を抱えた少女が走り行き―
その異様な姿に町人の一人が気付き、そこからその周囲の人間が一目彼女の姿を見て悲鳴をあげる。彼女はこの町でも有名な実験が大好きな魔法研究者。人々は恐怖に満ちた顔で彼女をこう例える―
"地雷を人に踏ませて、違う場所に踏ませた何倍もの地雷を作り置き直すような奴"と―
魔法使い「あなたが勇者ね!」
しかし、閉ざされた場所で今まで生きてきた勇者は、彼女の素性を知らない。
勇者「勇者…。うん、そうだね。確かに僕は勇者という役を承った者だよ」
魔法使い「…なら、勝負よ!」
勇者「勝負?」
魔法使い「そう、勝負―いえ、"実験"と呼ぶのが―」
「いいかしらねっ!」
言葉を紬ながら、魔法使いは魔力の込められた杖を勇者に向ける。
杖からは大きな火の玉が放出され、しかし何事もなかったかのようにその魔法の火は勇者の目前で消失した。
魔法使い「失敗…?なら次はこれよ!」
そう言うと魔法使いは、持っている杖を捨てて、次の杖を手に取った。彼女の背中にはまだ3本の杖が残っている。彼女が自作した杖差しの穴に突き刺さったまま。
勇者「……」
勇者は動かない。―否、動く必要がない。
魔法使い「これでどうかしら!」
魔法使いは新しい杖を再び勇者に向ける。杖からは直径40cm程の水の丸い塊が弾丸のように発射されたが、それもまた勇者の目前で消失した。
魔法使い「…なにかしてるわね?」
勇者は首を振る。魔法使いは勇者を警戒するが、勇者はそれでも動かない。なぜなら“彼女は魔法しか使っていなくて、勇者にとってそれは攻撃ですらないからだ。”
魔法使い「……」
勇者「……」
両者の静かなにらみ合いが続く。
魔法使い「……ッ」
それに発破を切らした魔法使いが新たな杖を掲げて勇者へと向ける。勇者の頭上へ大きな氷柱が出来上がり落下した瞬間―また消失した。
魔法使い「…っ!まだよ!!」
残り2本の杖のその一本は、杖の先端部分を中心に大きな空気の渦が出来上がり、竜巻となって勇者に放たれる―がやはりそれもまた消失した。
魔法使い「なんでっ!あたらないのよ!」
勇者「…やめなよ。僕に魔法は当たらない」
また明日書く
魔法使いが毎日、何年も掛けて研究を重ね、より強い魔法を実現するために魔力を溜めた杖。より強く、そして何よりも魔法を使えるまでの早さが重要であるため、彼女は無詠唱でも魔法を放出できる杖を制作した。それと同時に、呪文を詠唱することでより強い魔法を発動できるようにした。そして、それは本来、成功していたはずのものである。今現在、彼女の前に立つ実験台の相手が勇者でさえなければ。
魔法使い「……」
彼女は今も闘志を燃やしたまま、しかし静かに最後の1本の杖を背中から取り出した。
魔法使い「…精霊よ、杖に一つの力を」
勇者「……」
勇者(…あれは呪文…?)
魔法使い「空より落とせし光の力となり」
勇者(僕に魔法が効かないのは理解したはずだ。なのに何で今更…)
魔法使い「遅れ聞こゆる雷鳴の響き」
勇者(…!雷魔法!まさかそれは)
魔法使い「降り注ぐは聖なる雷の如き」
魔法使いが最後の詠唱に入る寸前、勇者は駆けだしていた。
勇者「待て!!それは危険だ!」
魔法使い「稲妻となりて―」
勇者(間に合えっ!)
魔法使い「実現せよ!」
―魔法使いが唱え終わったその瞬間、勇者は彼女が持つその杖を握りしめていた。
魔法使い「…へ?」
勇者「…ま、間に合った…」
魔法使い「あ、ああああなた何時の間にここに!?」
勇者「え?…いや、君、詠唱中ずっと上を向いていたじゃない」
魔法使い「…そうだっけ?」
勇者「…まぁ、とりあえず何も起きなくてよかったよ」
魔法使い「…よかった?何が?」
勇者(自覚なし、か…う~ん…)
勇者「…うん。君さ、全体雷魔法を発動させようとしてたでしょ?」
魔法使い「え?そうなの?」
勇者(これも自覚なしか…これは)
勇者「そうなの…っていうか、あのままなら間違いなくこの町を破壊しつくしてしまいそうだったんだけど…」
魔法使い「ふ~ん…でも発動しなかったわよね?」
勇者「それはまぁ僕が止めたか」
魔法使い「それよ!!」
勇者「!」ビクッ
魔法使い「…あなたは一体何者なの?」
勇者「それは…」
魔法使い「言えないって言うの?魔法を使う動作も見せずに魔法を消しているのに?」
勇者「……」
魔法使い「それに」
勇者「…?」
魔法使い「その体に溜めている異常な魔力量は何なのよ」
勇者「!」
魔法使い「これも言えないって言うの?それとも、その異常な魔力の器は勇者様の特権かしら?」
勇者「…それは違う」
魔法使い「あくまでも言わないわけね。それなら…そうね…。…!そういえばあなた」
勇者「なに?」
魔法使い「勇者様だったわよね?」
勇者「…それが?」
魔法使い「私、あなたの仲間になるわ」
勇者「…え?!」
魔法使い「なに、聞こえなかったのならもう一度言わせてもらうわ。私を、あなたの仲間にして頂戴と言ったのよ」
勇者「あ、うん。はい…えっと…?」
魔法使い「正直に言わせて貰うわ。あなたの体に興味があるの」
勇者「ぶふっ!?」
魔法使い「…なにを想像してるのよ。私はあなたのその異常な魔力を溜めている体が気になるのよ。研究者として、魔法使いとして、ね」
勇者「…そう。うん…なるほど。言いたいことは理解したよ」
勇者「君はつまり、僕がこの体の秘密、強いては魔法を消した秘密を解き明かす、或いは僕が暴露するまで着いてくる、ということでいいのかな?」
魔法使い「概ねその通りね。私は強いし…良い話だと思わないかしら?」
勇者「…お断りさせて頂きます」
魔法使い「…へぇ。そうね、理由を一応聞いておいてあげるわ」
勇者「僕が求める仲間は、最後まで共にいることの出来る者です。なので…」
魔法使い「あら、それなら何も問題ないわね」
勇者「え?」
魔法使い「概ね合っている、と言ったはずよ。私はあなたに最後まで着いていくつもりよ」
勇者「でも、それは」
魔法使い「何があろうと 構わないわ。最初にあなたに勝負をしかけた時から、いえ違うわ。この町に勇者様が現れることを願っていた3年前から、私は勇者になり得る存在を待っていたの。私の興味をひく様な、私よりも強い勇者様を」
また明日( ^ω^)ノシ
乙
投下するときはageた方が皆に見てもらえるぞ
>>15
完成してからageるほうがプレッシャーにならないので…
勇者「そう。…でも、僕は君が思うより強くはないよ?」
魔法使い「それでも、私のこの魔法を止めたのはあなたが初めてよ。魔物を基準に考えれば、どこまでの強さかはわからないけど…私の中では、間違いなくあなたは私より強いとそう認識したわ」
勇者「…そう言われたら断れない…けど、考える時間が欲しい。今からだと…そうだね、明日の朝、日が昇った少し後くらいまでの時間が欲しい」
魔法使い「ええ。問題ないわ」
勇者「それともう一つお願いがある、というか…」
勇者は目線を魔法使いの後ろへと変える。
勇者「…あれは君の仲間かな?」
勇者がそう言うと、魔法使いの後ろ、ある建物の側面に背中を預けるようにしていた一人の青年が姿を現した。
戦士「…ばれてたか」
少し残念そうに顔を歪めてそう言った青年は、戦士と呼ばれる者であった。
魔法使い「あら。戦士じゃない。盗み聞きなんていやね」
戦士「お前の実験よりはマシだ」
魔法使い「そうかしら?私の研究した魔法は一般人には当たらないし、この町の建物が全部壊れるくらいよ?大したことないじゃない」
勇者(魔法の威力は自覚があるのか…)
戦士「大問題だよ!…っと、話がズレたな。勇者様、だっけ。」
勇者「…そうだね」
戦士「俺を仲間にしてくれ!」
勇者「…聞いていたとは思うけれど」
戦士「ああ」
勇者「考える時間が僕は欲しい。だから2人共、明日の朝、日が昇って少しした時間になるまで、待っていて欲しい。時間が分かり難いのは、僕の心に悩みがあるかもしれないのを」
戦士「待った」
勇者「?」
戦士「そういう長ったらしいのはいらねえ。俺や魔法使いは勇者という存在を待ち続け、仲間になるのを望み修行や…そうだな、研究を重ねてきた。お前が俺たちを断るのなら、俺たちは次の勇者を待つまでだ」
勇者「……」
戦士「勇者様、でなければ他の町や国で旅の援助をされないこの世の中じゃあ、魔王を倒しに旅に出かけることも出来やしない。なら俺たちは、勇者に断られて次の勇者を待つか、勇者と共に旅をするかの2択なんだ。だからそれ以外の答えなんていらねえんだ。もしも勇者ってやつが魔王を討ち取った、ってんなら話は別だがな」
勇者「…そんなに言われちゃ断れない、と言いたいけれど、試したいことがあるからね」
戦士「…試したいこと?」
勇者「…明日になれば分かるよ」
短くてすみません。
また明日、です(´-ω-`)zzz…
―翌日―
勇者「…待っていたよ」
戦士「へえ…答えを聞かせてもらおうか?」
魔法使い「まさか決まっていない、だなんて言わせないわよ」
勇者「…そうだね。魔法使い、君に関しては問題ないよ」
魔法使い「当然ね」
戦士「ほお…?」
勇者「ところで戦士―」
そう言いかけたところで、勇者は背中に掲げた剣を手に握りしめた。
戦士「……!そういうことかよ!」
勇者「―僕と戦ってくれるかい?」
勇者は、戦士が自分と同じように剣を握ったのを確認したと同時に駆けだしていた。またその駆け出しの次の瞬間には、戦士は剣を振り落とす力を溜める準備を終えていた。
勇者「……!」
戦士まであと3mといったところで、戦士の大剣が振り落とされた。それに反応した勇者が横に避け、後ろに下がって距離を置く。
戦士「おらぁ!!」
戦士は後ろに下がった勇者に対して大きく一歩、二歩と足を踏みだし、一回転して大剣を振り回す。それを大剣の上へととび跳ねて勇者が空中に移動したその時―
魔法使い「危ないっ!」
―勇者の頭上から極大の火炎魔法が落とされた。
戦士「!」
戦士は瞬時に反応し避けたため、魔法に巻き込まれることはなかった。
勇者に当たることのなかった魔法が地面へと当たり砂埃が起きた。その中で聞き覚えのない声が聞こえてくる。
「けけけっ!今回の勇者もこれで終わりだな!あーひゃっひゃっひゃ!全世界に勇者の情報を流すだなんてここの王は馬鹿に違いねえ!ひひ」
そんな言葉の後、魔法使いと戦士は聞き覚えのある少年の声を聞いた。
『―言いたいことは、それだくか』
「なっ…まさか!」
砂煙があがるなか、翼の生えた知らない声の主の姿がそこにはあった。
魔法使い「あれは…!」
戦士「魔王の使い!」
そして砂煙が無くなり、魔王の使いにとって辺りが見渡せる状態になった頃、すでに勇者は目に見える範囲の何処にもいなかった。
…はっ!?寝落ちしてた…
まったり進めますので
適当にピーしててくださいね
× それだく
〇 それだけ
(´;ω;`)ぶわっ
魔法使いと戦士にとっての数秒の出来事。魔王の使いの姿が見えたその後の1、2秒で、勇者はその者の後ろに現れて、そのさらに数瞬の煙が晴れ出した際に魔王の使いの体を真っ二つにしていた。
勇者「例え、どんなに威力があっても僕に魔法は届かないよ…」
魔法使い「…流石ね」
戦士「……」
勇者「…そんなことはないさ。ただ、これは由々しき事態だ。」
魔王の使いの死体を見て、勇者は呟く。
勇者「今はただ、警戒しよう。魔法使い、それに戦士。共に来てほしい―僕の仲間として」
戦士「…!おうっ」
魔法使い「ええ、もちろんよ。だってこんな楽しい事、今までになかったもの…うふふ」
魔法使い「まずは…これね」
そう言うと、魔法使いは内ポケットから小さな紙を取り出した。そこには魔法陣が描かれている。彼女は人差し指を口に含めて、唾液が指についたことを確認すると、その指を紙に当てて魔力を込め始めた。
魔法使い「―収縮されし魔法陣よ。我との契約においてその力を展開せよ」
彼女が呪文を唱えると、たちまち紙は硬度を増して地面に突き刺さり、そこに書かれていたものと同じ魔法陣が展開された。
勇者「…それも魔法なのかな?初めて見るよ、そんな方法は」
魔法使い「そうね。一般的には地面に書いたり、頭で描いたものを使うのでしょうけど…ま、これも研究の結果ってところかしら」
戦士「相変わらずだな…で、それの効果は何だ?今ここで使ったからには理由があるんだろ?」
魔法使い「そうね、これを使うと嗅覚が鋭くなったり…ま、野生の勘が良い方向に増幅する、みたいなものよ」
勇者「…なるほど」
魔法使い「――。―うん。まぁこの付近にもう魔物はいないみたい。」
戦士「狙いは勇者だけ、か」
魔法使い「…やっぱり噂通りなのかしら」
勇者「噂?」
魔法使い「ええ。魔王に伝わる話なんだけど―」
―魔王が真に恐れるは勇者。ただそれ一つ。そして世界を落とさんがために魔力を溜めるに百年の時を要する。そして、それは残り―
魔法使い「―3年で訪れる。って話」
戦士「嘘か本当か。いつからあるのか。しかし、この町には確かにそういう伝承があるんだ。勇者様の誕生さえ知らない魔法使いが知るぐらいのレベルで当たり前のように全員が知っているんだ」
魔法使い「そして不思議なことに残り何年かということだけは、私たちが子どもの頃からしっかりと数えられているのよ」
勇者「つまり、それが噂通りだとすれば…残り3年ということか」
戦士「ま、噂だ噂。誰も信じちゃいねぇ。言葉遊びみてえなもんさ。」
勇者「…その言葉遊びってのは、子どもの頃からずっと言われ続けているのか?」
戦士「あぁ?…ああ、そういやそうだな。ま、こんな世の中だ。頭のおかしくなった奴がどこかで言いふらしてんだろーよ」
魔法使い「来ない勇者への皮肉なのかしらね…」
勇者「ん?何か言った?」
魔法使い「いいえ。何も言っていないわよ」
勇者「…そっか」
戦士「考えすぎてもしゃーない!今日はゆっくり休んでおいてくれよ!明日から旅の準備しなきゃいけねーんだからよ!」
勇者「…うん、そうだね。ありがとう戦士」
明日があるさ~明日がある♪
スカート]ω・`)ノシ
少しですが書きためとかしてるので
たまに一気に投稿したりしなかったり…
まったり(*´ω`)うふふ♪
明日は終わらないっさ!
―さらに翌日―
勇者「さて、さっそく旅に…と言いたいところだけど、中々そう上手くいかなくてね。恐らく、この町を出るのは一週間…いや、下手をすれば一ヶ月かかるかもしれない」
戦士「…どういうことだ」
勇者「簡単な話だよ。たとえ僕だけが狙われているのだとしても、昨日のように魔物の侵入を軽く許してしまっているこの町を誰が守れる?」
戦士「なるほど…それもそうだな」
魔法使い「ふふふ…それなら心配ないわよ、勇者様」
勇者「まさか…もうできたの?」
魔法使い「私を誰だと思ってるのかしら?」
勇者「…天才だね」
魔法使い「ほめてもなにも出ないわよ?」
戦士「おい」
勇者「…?あ、うん。実は昨日―」
戦士「―つまり、この町…じゃなくて、この国を囲うほどの結界が張れる魔法陣の研究を魔法使いに頼んでいたと?」
勇者「ま、そういうことだね。…流石に一晩で完成させるとは思わなかったけど」
魔法使い「んー…前から少しは研究してた頃だったからね。あとはあれね、勇者様の情報のおかげね」
戦士「情報?」
魔法使い「そ。この国に仕える前線兵士と魔法兵士の数が一番大きな情報ね」
戦士「ってか最初は町の話だったのに国って…あと“魔法”なのに魔法の使えない前線兵士の情報は必要なのか?」
魔法使い「国の中に町があるし、それに国って言っても町が数個集まったものだから大したことないわよ」
勇者「国規模なのは流石に僕も予想外だったけど」
魔法使い「…あら?」
魔法使い「―こほん。でね、前線兵士が必要なのはこの魔法陣はとにかく魔力が必要なの。だから、魔法は使えなくても人は少なくとも魔力を持っているから、それを活用して動力源にした魔法陣なのよ。そして、その兵士の総人数をもとに5年は保つものを創ったの」
戦士「…5年?」
魔法使い「それ以降なら、きっと新しい魔法陣が出来るんじゃないかと思ったのよ。魔法使い、それに魔法研究者は私だけでは無いからね」
戦士「へぇ…」
勇者「…それじゃあ、僕は王様に話を通しておくよ。そして、また明日の同じ時間に―あそこに見える丘に来て欲しい」
戦士「…俺ぁ少し遅れるぜ。用事が出来た」
勇者「……。…程々にね?」
戦士「…わかってるよ」
―翌日、明朝―
【戦士の部屋】
戦士「……」
戦士「…勇者は何も言わなかったが、あいつの背負っていたあの剣…」
戦士(どこかで見た覚えが…)
戦士(……)
戦士「……!」
戦士(…思い出した…いや…でも、まさかそんな…)
戦士「……」
戦士「…試してみる価値はあるかもな」
―同時刻、王様と魔法使い―
魔法使い「――!―~―…―!」
魔法使い「…というわけよ」
王様「ふむ…これは確かに…むむむ。わしも魔法に関する知識があるが…これは見事じゃ。どれ、褒美を受け取るがよい」
魔法使い「結構です」
王様「なんと」
魔法使い「私が求めるのは新たな魔法のみですから」
王様「むむ…お、おお、そうじゃ!そなたは勇者の仲間であったな?」
魔法使い「?はい」
王様「ならば魔王を倒した後でも、その前でも良い。この魔法陣に間違いはないじゃろうが、効果がそなたの言うとおりであれば、いつでも褒美を取りにくるが良いぞ!」
魔法使い「…考えておきます」
―とある丘―
勇者「……」
勇者(…僕のこの力は、触れた魔法を魔力に変換して吸収する力。生まれもって得た力ではあるけれど、僕は魔力を魔法に変換できない、つまり魔法を使えない)
勇者「……」
勇者(…たった一つの魔法を除いて)
勇者「……!…戦士?」
戦士「!…意外と鋭いんだな。気配は完全に消してたつもりなんがだな」
勇者「…魔法使いが言ってた人に流れる魔力、っていうので気付いただけだよ。気配、は消えてたんじゃないかな…?」
戦士「うわー…すごい疑問形。説得力ねぇぜそりゃ」
勇者「…ところで、僕に何の用事かな?」
戦士「!」
忙しくてこんだけなんや…!
すまん、すまぬ(´;ω;`)
( ゚д゚)彡ゆっくり!まったり!
勇者「…それとも、用事があるのは僕じゃなくて…この剣かな?」
戦士「…!気付いて…」
勇者「……」
戦士「…ははっ。それなら話は早いな」
戦士は、背負っていた大剣を取り出し、その剣の先を地面に突き刺した。
勇者「……?……!」
戦士「…気付いたか。この剣はおまえの剣と対に値する―」
勇者「その剣をどこで手に入れたっ!!」
戦士「!?」
―瞬間、勇者の纏うものの空気が変わり、その背後にはおぞましい影の魔物が戦士の瞳に映った。
戦士「勇者。お前は何か勘違いをしている」
勇者「…何だと?」
戦士「…この剣、そしてお前の持つその剣。それはこの世に二つずつ存在する」
勇者「……!?」
戦士「その剣を持つ相手がお前の何なのかは知らない。だから、その物騒なものをしまいな」
勇者「……」
影は何かを察したのか、その場からいなかったかのように突然消えて、どこかへいってしまった。
勇者「…この剣の前の持ち主は、僕の父だった」
戦士「だった?」
勇者「父は、戦士の持つその剣と同じものを持つ持ち主に殺された」
戦士「!」
―父は、強かった。
ありとあらゆる魔物を一振りで滅してしまう程に。
そこに現れたのは、魔王の側近を名乗る者。
―勇者であった父が崩した魔物と人間の均衡。
―それをまた新たに覆してきた魔王の側近。
父の手には、勇者の持つかの剣が。
側近の手には、戦士の持つものと瓜二つな剣が。
勇者がその剣を知っている理由。
それは、勇者が勇者であるために行われる儀式のため、勇者の強さを保つため。
勇者は、引き継がれていく。
剣の技を、力の使い方を。
魔法の練る術を、使い時を。
勇者の在り方を。
魔物の知識を。
そして―全ての記憶を。
勇者が勇者であるために、強くあるために、引き継がれる儀式。
だから勇者は、その剣を知っている。
父を殺したその剣の姿を。
そして、その儀式によって生まれ変わったのが今の勇者。
ただ、元より生まれた時の体質で魔法を使えないことを除き、勇者は確かに勇者を引き継いでいる。
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