ニート「タロット体現バトルゥ?」(77)

ジョジョの三部を一気読みした日の夜。

バトル系の夢を見た。

ニート「タロット大アルカナ22枚にまつわる能力が人々に授けられぇ?」

ニート「能力を得た者同士戦うとぉ?」

ニート「理由も事情もなく戦う運命ぇ?」

ニート「そして俺のカードは>>2だとぉ?」

魔術師

ニート「始まりとかなんとかを表すカードぉ」

ニート「強い意思、信頼、納得による創造ぉ?」

ニート「全てはタネのある手品。正当さこそパワーだとぉ」


  ヒュオオオオ...

ニート「唐突にデカい橋の上ぇ」

  ザッ...ザッ...

ニート「そして向こうから誰か来てるぅ」

ニート「見たとこ職業は>>4かねぇ?」

警察官

警察官「...............」ザッ

ニート「どうもぉ」

警察官「............あんたが敵か」ギロッ

ニート「そんなかんじぃ」ヘラヘラ

警察官「.........俺は警察官。カードは>>6

警察官「...あんたは?」

ニート「魔術師のニートぉ」

正義

警察官「...正義のカードはバランスを表す」

警察官「安定、公平、均等...正当性」

警察官「...正義の前で努力は報われ、騒乱は落ち着く」

ニート「なるぅ」

警察官「....正義の前にあんたはどう映るかな?ニートの...」

警察官「...........クソ底辺が」

ニート「あちゃぁ」

   『天秤』

警察官「........」

ニート「その手の天秤はぁ?」

警察官「....ひとつ聞いておく。」

警察官「...あんた、俺を殺す気か?」

ニート「まぁ一応ぉ」

警察官「...」ニヤァ

  ググッ

ニート「徐に天秤が傾きぃ」

  カタン

ニート「......んでぇ?」

警察官「...正義の審理は既に始まっている」

警察官「そして裁きも下っている」

ニート「.................」

ニート「................あらぁ?」ピクッ

警察官「...気づいたか?」

 ニートの体は割と普段から動きが重い!

 しかしこの時の重みはいつもと違っていた!

警察官「.....裁きは『重圧』。」

  ガクッ

ニート「いつにも増して重ぇ~よ、ずっしりと重ぇ」ズシィ

警察官「...正義とは個人が持つべきものだ」

警察官「そして...俺の正義において...」

警察官「『殺人』などというものは...」

警察官「...何にも勝る重い罪だ...」

ニート「へぇ」

警察官「...罪には罰だ...あんたには...とりわけ重いやつを...」

ニート「大した罰だぁ。俺の脚じゃもう立てねぇ」

警察官「...あんた、齢はいくつだ」

ニート「いくつでしょぉ~」

警察官「」イラッ

  カタン

ニート「うおぅ」ズシッ

警察官「...あんた、働く気は無いのか」

ニート「親の金が尽きたらねぇ」

警察官「」イラッ

  カタン

ニート「またぁ」ズシッ

ニート「どんどん重くなってくもん、困っちゃうねぇ」

警察官「...口の減らないヤツだ」

ニート「お褒めの言葉をありがとぉ」

 ニートは考えていた。

 あの天秤の傾きを戻せば、この重圧も消えるのではないかと。

ニート「...魔術師の奇術ぅ」

警察官「...アンタみたいな人間のクズは、質問すればしただけボロが出るはずだ」

警察官「...このまま重圧は増え続け...そして天秤の傾きが最大に達した時」

警察官「...あんたはつぶれる」

  ヒョコッ

ニート「怖い怖あぃ」

  ソォーッ

警察官「.........?」

  ソッ

警察官「........」チラッ

   『右手が二つ』

警察官「ハァ!?」ビクッ

 天秤を持つ右手。

 警察官の服の袖口から、新たにもうひとつ右手が覗いていた。

ニート「気づいたぁ」

警察官「なっ...これはっ!」

ニート「しかしもはや遅いぃ」

 二つ目の右手は既に天秤に触れている。

警察官「...天秤の傾きを...無理矢理戻す気か」

ニート「ご名答ぉ」

  カタン

警察官「.....っ」ズシッ

ニート「ほれ見ろぉ。軽くなったぜ」スクッ

警察官「」ニヤァ

  クワン クワン

 天秤が揺れる。

警察官「.....大罪を犯したな」

ニート「えぇ?」

警察官「.......正義に逆らうなど...」

警察官「最も分かりやすい罪じゃないか...?」

  カタン

 天秤が傾く。

 今までで一番大きく。

ニート「まんまと罠にかかった的なぁ?」ズズズ

警察官「くくく...」ムクッ

  ズシィィィィッ

ニート「っ」グシャアッ

警察官「...あんたはもはや...はいずることも出来ん」

ニート「.........キツぅ」ズシィィッ

  ピシッ

 あまりの重みに、コンクリートの地面に亀裂が走る。

警察官「.....魔術師の奇術..」

警察官「ほんのちょっぴり驚いたが...結局自分の首を絞めただけだったな」

ニート「.......くぅ...」

  ザッ

 警察官がニートの方へ近づく。

警察官「....正義の逆...ってなんだと思う..?」ザッザッ

ニート「...............」

警察官「...悪か?ならば悪とは?...悪とはなんだ?」ザッザッ

警察官「...誰もが自分の正義のもとに動いている。悪を志して生きるものなどいない」ザッザッ

警察官「...だから..敗者の持つ正義が悪と呼ばれるんだ...」

ニート「........っ」

 警察官がニートを見下ろす。

警察官「あんたのような....」ザッ

警察官「地面に這いつくばる、敗者が悪なんだよっ!!」

ニート「...ってことはぁ」

   『小爆発』

  ドンドンドンドンドンドン!!!

 二人を挟むように、無数の爆発が地面に二本の線を刻む。

警察官「!?」ギョッ

ニート「つまり悪ってのはぁ...」

  ビキビキビキビキッ

ニート「てめぇの方じゃねぇーかぁ!?」

   『大爆発』ドグォォォォォォォォォォォォォォン

 二人のいる橋の下で起きた大爆発!

 それは橋を支える柱を砕き!

 小爆発で切り抜かれた区画を打ち上げた!!

警察官「うっ...ぬあぁぁぁああっ!!?」グワォォオン

ニート「派手な奇術だろぉ!?」グルンッ

 二人を乗せたまま、橋は空中でひっくり返る!

警察官「こいつっ!お、俺も道連れに!!?」

ニート「」ニヤッ

  カタン

警察官「はっ...っ!」

ニート「俺が動かしたんじゃないしぃ?」

警察官「こ...これは!」ドドドド

警察官「てっ天秤がっ!ひっくり返ってっ!!」

  カタンコ

警察官「俺が下にいぃぃぃぃいいい!!!」

  ズッシィィィィィィィィィィィィィィン

ニート「自分の能力で落ちてけぇ...」

警察官「なっ...」グンッ

ニート「俺が地面を這いつくばるだとぉ?」

警察官「あっ...がぁぁっ」ヒュッ

  ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

ニート「ならてめぇは地の下、海の底だぁ」

警察官「」ドボォンッ

ニート「敗者が悪とか言ったなぁ?ならもう天秤の傾きは変わらんなぁ」

  ブクブクブクブク

 打ち上げられた橋はさらに回転!

 丸ごと一回転してもとの位置に収まった!!

ニート「...........」ドォォォォォォォォォン

ニート「...勝てる!と確信を持った時、魔術師の奇術に不可能はないしぃ?」スクッ

ニート「あんな自己中野郎なんざ敵じゃなかったなぁ」パッパッ

ニート「さっさと次行くかぁ」ザッ

 ニートは勝利を掴み、橋を先へ進む!

 しかし橋の先では次なる敵、>>がそれを迎え撃つ態勢であった!!

間違えた>>26

ニート「勝負を決めるのはタロットの理解度ぉ」テクテク

ニート「自分の授かったカードの意味をどれだけ理解し、体現できるかで勝負が決まるぅ」テクテク

ニート「さっきの独善野郎は『正義』ってもんをさっぱり理解してなかった。雑魚敵もいいとこだぁ」テクテク

ニート「俺も『魔術師』しっかり研究してかねーとなぁ」ザッ

   『巨大な扉』


 ....の向こう。

爺「どうやら来たか...敵が」シィィィィン

爺「扉を開けさせはせんよ...お前はその場で」

爺「私の顔すらも見ない内に...」ドドドド

爺「我が『>>28』のカードがぶち殺す」スォォォォォッ

吊るされた男

ニート「なんだぁこの門...バカでかい二枚の扉ぁ」

ニート「木製。重そうだがぁ...」チラッ

ニート「門自体がこっちに傾いてる。開ける分には力は要らなさそうだなぁ」


爺「...」ゴトッ

爺「覚悟を決めねばならない」ギュゥゥッ

  ブシュッ

爺「勝利にはそれが必要なのだから...な」ブッブシュッ

ニート「んっ...んっ」グッグッ

ニート「開かないなぁ...錠か何かかかってんのか」フゥ

ニート「どーおすっかなぁ...こっちには何も無いし。向こうに誰か...」

      ドガァァンッ!!!!

ニート「....」ビリビリビリ

ニート「....なんだぁー?」チラッ

 ニートが見上げた先には、扉を突き破り飛び出す...

   『槍穂』

爺「高さが足りなかったか」ゴトン

爺「投げる力が足りなかった。すなわちそれは...」グッ

爺「痛みが足りなかった...ということ」ブシュゥッ

爺「今度はしくじらん....」ググッ

爺「ふんぬぅっ!!!」ブンッ

  シュゴォーッ

ニート「これは....まさか新手の敵かぁ」

ニート「ならすぐに次の攻撃がぁ...」

  ヒュッ

ニート「きたぁっ!」バッ

  ズガンッ!!

 ニートが間一髪避けたそれは投槍。

 それも相当重いもののようで、石の地面を砕き刺さっていた。

ニート「向こうから、扉を飛び越えるように投げられたわけかぁ」

ニート「しかしなんつー威力だ...当たってたら今頃ぐちゃみそだなぁ」

   『投槍』

ニート「だがよ、それより気になるのが...なんだこの槍ぃ」

ニート「柄にいくつもトゲがついてて、まるでバラの茎じゃねーかぁ」

  ヒュッ

ニート「また来たぁっ!」バッ

  ズガンッ!!          パタタッ

ニート「ん?今何かぁ...」

 飛んできた槍から地面に飛散した液体。

ニート「こりゃ...血じゃねーのかぁ?」

ニート「見れば槍の柄も血まみれだぁ」

ニート「ってことは...まさか、敵はこの槍を手で力いっぱい握り締めて投げたってのかぁ?」

ニート「バカな!そんなんで投げられるわけぇ....」

  ヒュッ   ヒュッ

  ズガズガンッ!!

爺「手応えがないな」ボタボタ

爺「槍を投げるほど手の傷は増えていく...だがしかし!」ギュッ

爺「この流した血こそ!私を導いてくれる!信じられる確かな証!」ブシュッ

爺「躊躇ってはならない!次こそ仕留めるっ!!」ブンッ


ニート「くそぉっ!!」ズガンッ!!

ニート「このまんまじゃやられる一方だ!こっちから仕掛ける必要があるぅ!!」ザッ

ニート「....魔術師の奇術ぅ」スォォッ

 言うとニートはどこからともなく引き出す。

   『ロープ』

ニート「この槍を使わせてもらうぜぇ」ザッ

ニート「トゲのついた柄じゃ握れねぇ!だから俺は握らねぇ!!」グルッ ギュッ

 ロープを槍の柄へ結びつけた。

ニート「よぉしぃ...」ズゴッ

ニート「それそれそぉれぇ」グルングルン

ニート「ほいっとぉ!!」ブンッ

 ロープを掴み槍を振り回して勢いをつけると、槍を上空へ放り投げた!

  ズガシィッ!!

爺「なんだ?」

ニート「よし...引っかかったぜぇ」グッグッ

 忍者の鉤縄のごとく、槍は扉の上部に引っかかり食い込んだ。

ニート「そしてこうなりゃ...」グンッ

ニート「トゲはロープをしっかり固定してくれてるってわけだぁ!」ダンッ

 ロープを握り扉に足をつけ、ニートは扉を上っていく。

ニート「はぁっ...はぁ...これ、体力ないニートにはキツいぜぇ」ゼェゼェ

ニート「おまけに扉がこっちに傾斜してるから...角度的にもぉっ」グラッ

 うっかり扉から足が離れ、ニートが振り子と揺れた瞬間。

  ズガァンッ!!

 扉を突き破って槍が覗いた。

ニート「...おっとぉ」ヒヤッ

爺「また外れただと?何故だ...」

爺「くっ、扉を越えさせはせんぞっ!!」ブンッ


ニート「あぶねぇっあぶねえぇ!!」ズガンッ!

ニート「早いとこ上らないとねぇ!力振り絞ってくぜぇ」ダッダッダッ

  ズガンズガンッ!!

            ダッダッダッダッ      ...ガシッ!

 ついに扉の上部へたどり着き、ニートが顔を覗かせる...

  ズガァァンッ!!!

爺「仕留めた...」

ニート「ダミーだよぉ」ダンッ

 ニートは扉を越え、下へ降りていた。

ニート「扉には木の閂か...しかしぃ」

ニート「相手がこんな杖ついた爺だとはなぁ?」

爺「ふん...相手がこんなフヌケ面だとはな」

ニート「無職同士、仲良くしようやぁ」

爺「ふざけるな、出来損ないの屑め」

ニート「あちゃぁ」

爺「私は貴様の年の頃...仕事に燃えていた」

爺「それからの人生!私は社会のため家族のため働き続けた!!」

爺「その苦労、貴様にはわかるまい?そう、貴様は何もしていないのだから...」

ニート「ぐぅの音も出ませんねぇ」

爺「私のカードは『吊された男』」

爺「それが表すものは修行、忍耐、試練...犠牲」

爺「自ら払った犠牲は報われ、正当な結果が得られる」

爺「犠牲だ。犠牲こそがパワー!!」

ニート「...それであの槍のトゲってわけかぁ。」

ニート「血を流し痛みを得ることで力が出るってわけだなぁ?」

爺「その通り。傷つくことへの覚悟を決めれば...」

爺「...私は無敵だ」

爺「いくぞっ!」ブンッ

ニート「おわぁっ!」ズガンッ

爺「まだまだ...まだ!」ブシュッ

ニート「(マジかあの爺...あそこまで躊躇わずに血を流せるもんかぁ?)」ダッダッ

爺「貴様はもう疲労困憊のはずっ!仕留めるのも時間の問題だっ!!」ブンッ

ニート「.....おいおい、俺を誰だと思ってんだぁ?」ニヤッ

ニート「魔術師ってのはな、普通に走ったりはしないんだよ...そう、もっと軽やかにぃ!」タッカタッ

ニート「ステップ刻んでよぉ!ハハッ、楽しいねぇ!?」タタッカータッタカッ

爺「避けるなっ!」ブンッブンッ

ニート「アハハッハッハハハーハッ!」タカターカカッタッカー

爺「この!このぉ!!」ブシュッブンッ

ニート「見ろよこのステップ♪アハハーハッハー!!」カタカタカタッカ

 笑いながら、ニートは爺の周囲を踊り回る。

爺「ぜぇ...ぜぇ...」

ニート「おやおやおやおやぁ?爺さんはもうバテバテかなぁ!?」タタカタカッタッ

爺「....はっ...この、『吊された男』を舐めるなよ...」ギンッ

爺「『犠牲』が私を勝利へ導く!」バッ

爺「私の払った『犠牲』は一寸たりとも無駄にはならん!それに等しい結果を生み出してくれる!!」

爺「すなわち!」グワッ

  ドスッ!!

ニート「!?」ギョッ

 爺が槍で自らの右足を突き刺した。

ニート「いっ....」ブッ

ニート「いだぁぁぁああぁあぁあああぁあっ!!!」ブシュウウーッ

爺「くっ....これが『吊された男』だ」

爺「私が自ら足を刺せば!そっくりそのまま貴様も足に傷を負うのだっ!」

ニート「なん...だとぉ...」ガクッ

爺「そして体制を崩したな...今が好機!!」ブシュッ

ニート「くぅ!?」ゾクッ

爺「死ねっ!!」ブンッ

ニート「がぁっ」ゴロンッ

 ニートは地面を転がり危うく避ける。

  ドガンッ!!

ニート「くそぉっ!!」ゴロゴロ

爺「お得意のステップとやらはどうした!え?魔術師よ!?」ブンッブンッ

ニート「がぃっ」ドシンッ

 扉の元まで戻ってきたニートが扉にぶつかった。

爺「これでトドメぇぇっ!!!」ブンッ

ニート「ノォォォォォッ!!!」シュゴォォーッ

 扉に背をつけるニートに槍が迫る。

  ドガァァァンッ!!!


ニート「......」ガクッ

 槍はニートの腹部を貫いた。

爺「フン...魔術師なぞ、所詮ただのつまらんハッタリ屋よ」

ニート「なぁんてねぇ?」クイッ

爺「!?」

 破れたシャツの向こうに、ニートの腹は見えない。

ニート「串刺しマジックなんてね...定番中の定番じゃないのぉ?」

爺「な...こいつっ」

ニート「俺ぁ魔術師だぜぇ?でかい箱なんぞ無くとも...このシャツで隠れるだけで十分よぉ」ニヤァッ

爺「はっ...だがしかし!」

爺「その槍は貴様の動きを止める!次の一撃で最後、もう避けられはせんぞ!!」グワッ

ニート「やいボケ爺。お前はもう負けているぅ」ビシッ

  ギギッ

爺「は...?」

      ギギギギギッ

 木のきしむ音が響く。

ニート「今の一撃、確かに貫き砕いたなぁ」

ニート「俺の腹でなく、この扉の閂をぉ!!」ギギギギッ

  ギギギィィーーーーッ

 扉が開いてゆく。

爺「はん....それがどうしたと」

ニート「まだ気づかんの?だからお前はボケ爺だというんだよぉ」

爺「なにを」グンッ

爺「いっ!?」ズルゥッ

  ドシィン

 突然足をとられた爺が尻餅をつく。

爺「なっ....これ、これはっ!!」

   『ロープ』

 ロープが爺の右足を絡め、引き倒していた。

爺「い、いつの間にっ!」

ニート「マジックってのは難しくてなぁ...仕込みがバレたら台無しなんだぁ」

ニート「だから用意の間、別の所に注意を引いておくのが大切なんだなぁ」

爺「なん...」

ニート「そしてもうひとつぅ!!」ビシッ

ニート「今あんたが倒れたのはロープが引っ張られたからだ!ではロープを誰が引いたのかぁ?」

爺「そ....そんな、これは...」ズゴォォォォォ

   『扉』

ニート「ロープの両端は、扉の上部に刺さる二本の槍に繋がっているんだぜぇ!!」

爺「ぬっ、くっ...ひ、引っ張られる!!」ズルズルズル

ニート「あのデカい扉だぜぇ?あんたみたいな爺の踏ん張れるもんじゃないなぁ」

爺「放せ...放せ!放すんだぁぁあ!!」ズルズルズルズル

ニート「もう終わりなんだぜ...あんたは終わり。」

爺「ぬわぁぁぁあぁあああ!!!」フオッ

 ロープに吊られ、爺の体が浮き上がる。

ニート「そして完成かな!『吊された男』ぉ」

  ギギギギギィィィィーーーー

爺「」プラーン

      ドォーーー--------ン

 二枚の扉の間に張られたロープに右足を固定され、爺は逆さに吊された。

爺「ぬっ、くっ...ひ、引っ張られる!!」ズルズルズル

ニート「あのデカい扉だぜぇ?あんたみたいな爺の踏ん張れるもんじゃないなぁ」

爺「放せ...放せ!放すんだぁぁあ!!」ズルズルズルズル

ニート「もう終わりなんだぜ...あんたは終わり。」

爺「ぬわぁぁぁあぁあああ!!!」フオッ

 ロープに吊られ、爺の体が浮き上がる。

ニート「そして完成かな!『吊された男』ぉ」

  ギギギギギィィィィーーーー

爺「」プラーン

      ドォーーー--------ン

 二枚の扉の間に張られたロープに右足を固定され、爺は逆さに吊された。

ニート「勝利ぃ!ま、あの覚悟と威力にはちょっぴり驚いたがぁ...」ザッ

ニート「結局は衰えたジジイに過ぎなかったってことだぁ。楽勝楽勝ぉ」スタスタ

    ポタッ     ポタッ

爺「.......」プラーン

        ポタッ         ポタッ

爺「....覚悟なくして勝利なし」

爺「今こそ痛みが必要だ...犠牲が道を切り開く」グッ


              ブヅンッ


ニート「...」ブシュッ

ニート「がっ」ドテッ

爺「」ドサッ

ニート「いつぅっ....な、なん...?」チラッ

   『右足』

ニート「....は」

   『千切れた右足』

ニート「お....おい...おいおいおいおいおい」

   『千切れたニートの右足』

ニート「なんだよこれはぁぁぁあぁああああぁああぁぁぁあぁああぁ!!!!」

ニート「俺の、俺の足がっ!!俺の足がぁぁぁあぁああぁ!!!」ブッシュゥゥー

 ニートの足首から血が噴き出す。

爺「....うろたえている場合ではないのだ」ズルッ

爺「真の覚悟はここからだ」

 爺もまた右足首から先が無い。

 ロープから逃れるため、槍で自ら切断したためだった。

爺「私の傷は...直接貴様に向かう」ガチャッ

爺「貴様と私と我慢比べだ...最後の最後、生き残るのはどちらか」グッ

爺「付き合ってもらおう」ブンッ

    グサァッ!!

 爺が左手の中心を槍で貫く。

ニート「いっぎっひぁああぁああぁぁぁ!!!」ブシュゥゥーッ

 ニートの左手にも同じように穴が開く。

爺「お前は今までどれだけの苦痛を経験してきた?」ドガンッ!!

 爺が左腕を槍で打つ。

ニート「あっ...くぐぅぅぅぅっ...」ボギンッ

爺「軟弱に腑抜けた若い者めが...そんなものに私がっ!」ドガンッ!!

ニート「がっぐ...ぐぅぁぁああっ」ベギッ

爺「負けることなど!!あってはならない事だろうがっ!!!」ドガンッ!!ドガンッ!!

ニート「あぁぁぁぁああああっ!!!」バギボギッ

ニート「(なんてやつだ...こいつマジだ...勝利のためなら全てを差し出す覚悟がある...)」

爺「我々の対決は...どうなれば決着かな?意識を失った時か?命を失った時か?」ドガンッ!!

ニート「犠牲が道を切り開く。そう、そうだ...失ったものを無駄にしてはいけねぇ」ググッ

ニート「俺の失ったこの『右足』はぁ...」チラッ

ニート「勝利のために活用しなければならねぇっ!!」ガシッ

爺「もはや左腕の感覚は無いか?なら足を打ってやろうか!!」

ニート「魔術師の奇術ぅ」スォォッ

   『操り人形』

ニート「操り人形の奇術!すなわちこのニートの動きに爺の体は同期するぅ!」

ニート「力のいる奇術だぜぇ...だがな、そぉ。特定の一部分だけならぁ...」

ニート「俺のこの千切れた『右足』!!そして未だロープに絡められたままの『爺の右足』ぃ!!」

ニート「この二つの部分の動きを同期させるんだぜぇ!!」

     ギギギ...

爺「どうだ!まだか!これでもかっ!!」ドガンドガンッ

ニート「くっ...うぅぅっ...」ビクンッビクン

爺「食らえ!折れろ!果ててしまえ!!!」ドガドガ

ニート「もう少し...あとちょっとだけ耐えろ...それで終わるんだからよぉ...」ググッ

    ギギギ...

爺「はぁ...はぁ...く、くそがぁ...」ゼェゼェ

       ギギギ...

爺「...?」チラッ

爺「この...音は...」

扉「」ギギギッ

爺「なに!?と、扉が...閉じていくぞ!!」

ニート「ふぅっ...ふぅ...」グッグッ

爺「貴様の仕業かっ!!何をしたのだ!?」

ニート「ひひひ...知りたいかぁ...」ググッ

ニート「あんたの真上を見なぁ!」

爺「なにぃ...?」チラッ

   ギギギ...

右足「」ギギ...ギギギ...

爺「あれは...私の千切れた右足...」

右足「」ギギギ...

爺「それが...ひ、ひとりでに!?回転しているのか!!」

爺「そしてロープを巻き取り、両の扉を引っ張り...閉めていっているというのか!!」

ニート「そのとぉーりっ!!『操り人形』俺がこの右足を回せば、あんたの右足も回転するんだぜぇ!!」

ニート「あんたの這いつくばるその位置!!丁度そこが扉の合わさる部分ピッタリなんだよなぁ...」

ニート「このまま扉で挟み潰し、やっぱり俺の勝利確定ってわけだぁ!!」

爺「ふん....だがな、貴様も体力は使い果たし...左腕は利かず」

爺「その右足を扱うのにも苦労してるんじゃないのか...?」

ニート「ぎくりぃ」

爺「扉が閉まるまでには余裕があるくらいだが...まず早速その右腕も」グッ

爺「潰させてもらうっ!!」グサァッ!!

ニート「うっ...ぐぅぅ...ふっ」ブシュゥゥーッ

爺「...」ボタッボタッ

ニート「ふぅーっ...ふぅー...」ボタボタ

爺「...耐える気か...貴様...」

ニート「あと少しなんだぁ...すぐに扉は閉まるぅ」ググッ

ニート「こらえるんだ...耐えるんだ...勝利はすぐそこだぜぇ」グッグッ

爺「貴様ぁぁーーっ!!!」グオオッ

ニート「右腕、も...いてぇー...力が入らねぇ...」

ニート「さらに...フィードバック」

ニート「あの右足で巻き取ってできたロープの塊...!それが大きくなるにつれてぇ...」

ニート「この右足の回転も重くなってきてるぅ...っ」

   ギギギ...

爺「勝利のためなら...全てを!」グッ

爺「犠牲をためらってはならないのだぁぁぁ!!!」ブンッ

    ドグサァッ!!!

ニート「ぶっ...げぇぇーっ!!!」ブシャァァーッ

 爺がついに自らの腹を突き刺した。

爺「やめろ...扉を閉めるんじゃない...!」ボタボタ

爺「諦めろ!!敗北を認めろ!!そうすれば終わるのに!!」

ニート「....」ググッ

  ギギギ...

爺「き...貴様...」ギリッ

  ギギギ...

 扉は爺のすぐ横まで迫っていた。

爺「いいかよく聞け...やめるなら今だぞ」

ニート「.....」

爺「次に私は自らを突き刺す...『左胸』だ...分かるな?」

ニート「...」ギリッ

爺「死ぬぞ...貴様は...『心臓』を貫かれて生きられる者などいるものか...」

ニート「あそぉ...あんたも死ぬけどなぁ...」

爺「いいとも!『勝利』が得られるならばよ....私は満足よ...この命も差し出そう」

ニート「.....」

爺「貴様はどうかな...?その覚悟があるのか?」

爺「いやあるわけが無い!!ここまで見せた覚悟は大したものだったが...」

爺「貴様は今まで死にそうな目に遭ったことが、一度でもあるか!?」

爺「みっつ数える。そして胸を突き刺す...」

ニート「...よせよぉ」

爺「ひとつ...」グッ

ニート「くっ...ダメだこいつはっ!扉を...早くぅっ」ググッ

爺「ふたつ...」ギリッ

ニート「あぁーもぉぉぉぉ!!!」スクッ

ニート「うぉぉぉぉぉおおおおおっ!!!」グググッ

 ニートが立ち上がる。

爺「みっつ!!」ブンッ

ニート「おおおぉぉぉぉぉぉぉおおっ!!」グラリ

 立ち上がろうとも、片足では体を支えることはできない。

 立ったのもつかの間、ニートの体は傾き倒れていく。

ニート「だがしかしこれでいいぃっ!!」グオオッ

ニート「」ドサァッ

爺「死ぬっ!!」ゴォォォーッ

ニート「」ゴロッ

 ニートはただ倒れたわけでは無かった!

 右足を抱え込むと、体を丸めっ!!

 倒れる勢いそのままに、地面を大きく転がった!!

   『でんぐり返し』


               バダムッ

ニート「....」ゼェッゼェッ

ニート「....ギリっギリ...最後の一押し...」ゼェゼェ

ニート「」ズルッ

 ニートが扉の方へ這い寄る。

ニート「閂...をなぁ...また開いちゃたまらんもんよぉ...」ガシャン

ニート「...」チラリ

   『千切れた両腕』

ニート「...扉の向こうの様子は...見たくねーからなぁ...」

 『吊された男』 再起不能

ニート「ひでぇー...傷だわ...こりゃ」ゼェゼェ

ニート「この足も...なんとかしねーとな...困ったもんだぜぇ...」グッ

ニート「...しばらく...おとなしくせざるを得ないかぁ...」ズルッ

 ニートは落ちていた棒を支えに歩きだす。

 振り返った先に見えたのは建物の並ぶ街であった。

警察官「.....」ブルブル...

 落ち着いたかい

警察官「...」コクン

 飲みなさい。温まるよ

警察官「...」ズズッ

 安心して休みなさい

警察官「.......あんたは...?」

警察官「何故俺を助けたのか...あんたは誰だ...?」

 >>76だよ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom