キョン「土曜日の公園?」 (10)
土曜日の公園にて、ただ何をするわけでもなくぼんやりとベンチに座っている。
世間は夏休みに突入し、公園は小学生で賑わっているかと言えばそうでもなく、数人の小学生がちらほら見えるだけ。
この炎天下の中頭が下がるばかりである。とは言っても、本日はどこぞの団長の笑顔ばりに晴天ではあるが、
湿度は低く日陰に入れば風が涼しい。
「あっついわねー」
どこぞの団長様がそう零す。
しかし、その声は楽しさを含んでいる。何もせずにこうして座っているだけなのだが、それで幾ばくか楽しさを感じているなら幸いである。
このくそ暑い中を連れ回されないだけマシなのだ。
「返事しなさいよ、バカキョン」
ジト目でハルヒがこっちを睨む。
「暑いな」
ハルヒが聞こえるように嘆息する。中身の無い呟きに対してどう返事するのが正解なんだろうね。
「まったくもってダメキョンね。略してダキョンよ、ダキョン」
一文字しか略せてないぞ。
「うっさい、ダキョン」
一体全体、俺にどうしろと言うのか。
風がのんびりとハルヒの髪を揺らす。1年の頃にばっさりと切って以来、伸ばしているようだ。
本日は暑さのせいかポニーテールにしている。
眼福である。
「何見てんのよ?」
「別に」
「エロキョン」
果たしてそこまで言われなければならないだろうか。いや、言い過ぎである。
「ほんと、あっついわねー」
本日2度目となる呟き。
「なら、少し離れたらどうだ?」
俺とハルヒの距離はほぼゼロに近い。というか、ゼロである。互いの肌が密着する程度の距離。
詰めれば4人は座れるベンチで、何故こうもくっついて座らなければならないのだろうか甚だ疑問である。
「少し離れるぞ」
「お好きにどうぞ」
そう言ってハルヒと距離をとる。これでいくらかは涼しくなるだろう。
だというのに。だというのに、だ。ハルヒがその距離をすすっと詰めてくる。
再び肌と肌が密着する距離。ハルヒの体温を直に感じる。
「……おい」
非難の声をあげる。当のハルヒは知らんぷりで、小学生を眺めている。
まったく、やれやれである。
また少し距離をとる。それを詰めるハルヒ。その繰り返し。
とうとうベンチの端に追いやられてしまった。
「ハルヒ、暑いんだが……」
「あたしは別に暑くないわよ!」
抗議の声は一喝にておしまい。
「距離が近いんだが……」
「あたしは別に気にしないわよ!」
まったくもって無茶苦茶である。ハルヒはこっちのことなど微塵も気にしてないのだろうか。
……してないんだろうな。
風がそよそよと吹いている。ハルヒのポニーテールが揺れる。まったく、この熱を帯びた肌を冷ましてくれないものかね。
夏の日差しに負けないようなハルヒの笑顔を横に、そんなことを思うのであった。
終わり
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