勇者「最強は俺」 (14)
魔物が都市と都市との間に生息し、人々が安寧秩序を忘れかけていたここ300年。
そんな時代に終わりを告げようかという神様の気まぐれか、そのタイミングで俺は産まれた。
戦士「勇者か? あいつは……そうだな。化け物だな。片手ってハンデをもらっても私には勝てん」
俺という存在の誕生に、魔王軍はいち早く気付いたらしく、十数年かけて軍備を拡張してきた。まぁ、それも俺の手にかかればゴミ同然なわけだが。
魔法使い「勇者? あぁ、うん。強いよ。闘いのために産まれてきたって感じ? まあその分他のことはなーんにも出来ないけどねぇ」
闘い以外に必要性を感じたことはあまりない。皆は文明の利器ってやつに快楽を見出してるらしいが、俺には分からん。
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情報屋「勇者ね。ぼ、僕には到底追いつけない存在だけど……、彼には出来ないことが出来るからね。それだけが、僕の誇りかな?」
情報屋は……ネットとかいうのが出来る。このネットとかいうやつは上流階級くらいしか扱えない(そもそもその技術の存在が中流階級以下には浸透していない)。俺は最底辺の生まれだから……詳しいことは分からん。
俺たち4人は、半年ほど前に魔王軍殲滅へと乗り出した。
魔王軍……もとい魔王城へは大陸の最北端から行けるのだが、ゲートが設置されていてこちらからは侵入出来ない。逆にあちらからは入りたい放題だ。
ゲートをぶっ壊すには、大陸各地、総計五ヶ所の支部のトップが持つ魔具が必要だ。
要するに、俺らはその魔具を集めてる最中なわけだ。
で、なんでこんな話をしているかというと……
男「うおぉ!?!? これやべぇ!! スライムみてえwww」
一ヶ月かけて到着した第一支部の最上階で、なんの装備もしてない少年が支部長をぶっ殺して魔具で遊んでたからだ。
男「ほえぇ~。これって自由に形を変えられるのかぁ。形も硬さも自由自在かよ! まじチートwww」
呆気に取られたのは、人生で初めてだった。
受けた衝撃で言うと、俺を「なんか態度デカイのがキモい。あんたは無理だわ」と初対面で魔法使いに言われたこと以上だった。俺は魔法使いに一言も言っていなかったのにも関わらずだ。理不尽としか言いようがない。
戦士「え、えっと……君? その……君の下で血だらけになってるのは…」
男「あ? あんたら誰?」
戦士「勇者一行だ!!」
男「知らん」
戦士「し、知らない……」ガクッ
男「こいつは……あれだ。多分一番偉いやつ。一番強かったし」
情報屋「君がそいつをやったのかい?」
男「俺以外に誰がやったって言うんだよw ここで意識あるの俺とあんたらだけだぜ?」
魔法使い「あんたみたいに装備もなんにもないやつがそいつ殺せるわけないじゃない! 嘘も大概にしなさいよ!」
男「はぁ? 誰も殺してねえよバカかお前www」
訂正しよう。確かにここの魔物達は死んでなどいなかった。半殺しではあるが。
男「魔物殺して、そんなんで手を汚したくはないんだよ。俺はな」
その一言だけ、そいつの雰囲気が重くなった。
勇者「魔物に……恨みでもあんのか?」
男「いんや、恨みなんてこれっぽっちもない」
勇者「じゃあ、なんで殺してまで手を汚したくはない、なんてこと言うんだ?」
戦士達が変な顔してこっちを見てくる。俺が人に質問するのがそんなに珍しいかよ。
男「喧嘩は楽しいし、理不尽を続けようとするやつらをぶん殴るってのはある意味スカッとする」
男「でも、命を奪うことに何の魅力も価値も見出せないんだよ」
この時俺は、こいつに共感していたんだ。
それが何故か無性に腹立たしくて仕方なかったんだ。
俺達は、支部が壊滅していた……というよりこいつに殲滅させられてたこともあって、ここを離れることに決めた。
情報屋「ね、ねぇ。えっと……」
男「男、俺の名前だ」
情報屋「男、君が持ってるその魔具をくれないかい?」
男「やだ」
情報屋「やっぱり……。お金ならいくらでもあげれるけど」
男「やだ」
即答かよ。
目の前の1000万Gを無視して魔具を弄り続けることに意味があるのか?
戦士「その……我々にはどうしてもその魔具が必要なんだ」
勇者「わけを説明させろ。俺の話を聞いてからそいつを渡すんだな」
また戦士達が俺を驚愕の眼差しで見つめてきた。いや、確かに俺が自分で説明なんてすることは殆どないけれど。だからといってそこまで驚かれるとそれはそれでシャクなんだが。
男「いーぜ、話聞くだけならタダだしな!!」
そう言いながらも魔具を手から離さず、ついには身体中に絡みつかせている。
こいつ……バカなんだな
本編はここまでです。一応キャラ紹介を載せておきます
勇者:魔王軍を滅ぼすために産まれた(と言われている)。 武術魔法など、戦闘に関する技術は既に世界最高峰である。存在がチート。その代償か、顔はいいのに女の子に全くといっていいほどモテない。姉と妹だけには好かれているため、姉と妹に対してはキャラが変わる。
戦士:元々は故郷の都市の知事直属のSP。剣術に長けている。美人だか胸が残念。本当に悲しくなるくらいに残念。酒を飲むと更に残念になる。
魔法使い:この世界で魔物以外で魔法を使える貴重な存在。ただ、彼女に出来て勇者に出来ない魔法がほぼないため、日々勇者を跪かせようと魔法の鍛錬に勤しんでいる。現在は重力魔法の強化に励んでいる。あと、胸が戦士以上に残念。戦士が多少掴めるレベル、魔法使いは掴めるか掴めないかギリギリのレベル。
情報屋:元は皇族。自由のない生活に嫌気がさして逃亡。偶然街で見かけた勇者の強さに憧れて彼と行動を共にした。いつでもノートパソコンを弄っている。顔も良く、育ちが良いため仕草に気品があるせいかやたらとモテる。勇者が近くにいるせいかそれが際立っている。
キャラ紹介に悪意が…。とりま期待
~近隣の街~
で、だ。
勇者「なんでお前がついてくるんだ?」
男「コレいるんだろ? なら仕方ないじゃんwww」
つくづくムカつくやつだ。
あの後、こいつは魔具を手放したくないと駄々をこねやがった。しまいには「じゃあ俺が一緒に行きゃいいんじゃね? その代わりに飯はそっち持ちなwww」とか言い出しやがった。
情報屋「え!? このゲーム知ってるの!?」
男「俺はほぼ全てのネトゲを究めた男だからなw」
しかし、こいつやけにすんなりと情報屋と打ち解けたな。あいつけっこうな人見知りなんだが。
魔法使い「ん? なになに? 取られたみたいで悔しいの?」
勇者「うるさい黙れ喋るな」
腹立つ女だ。これだから女というのは……
戦士「まあ、ひと仕事終えた後ですしそろそろ宿を取って休息しませんか?」
俺以外で唯一合理的かつ知的なやつは、やはり戦士しかいない。
こいつが俺たちのメンバーじゃなかった場合を考えると……今より面倒なのは間違いない。
魔法使い「今日こそ一人一部屋確保しなさいよ情報屋」
情報屋「う、うん。まかせて」
そう言うなり情報屋はパソコンで何やら調べ始めた。アレでどんな宿があるか分かるらしい。俺には到底理解出来んが。
やばいよノリで書いたキャラ設定に苦しめられることになるなんで思ってもなかった……
結局、近くにいい宿屋があったからそこに泊まることにした。
料金はそれなりにしたが、俺たちには資金がうなるほどあるから金の心配はない。
それより、今心配すべきなのは……
勇者「次の支部の場所、だな……」
場所自体はもう分かってる。ここから歩きで3日のところだ。
問題は、立地。支部のある場所は森の中。そこには幻覚を見せる類の魔物がうじゃうじゃいるらしい。
勿論俺には幻覚なんて効かない。だが、他のやつはその影響をモロに受ける。情報屋などなんの抵抗も出来ないだろう。
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