まおう「ゆうしゃがよわい……」 (146)

まおう「フハハハハ!よく来た、ゆうしゃよ!さあ、わが腕の中で息絶えるがよい!」
ゆうしゃ「まおう!世界をお前の好きには絶対させない!」
けんじゃ「人類の明日のために、ここでお前を倒す!」
そうりょ「そうよ、みんなで力を合わせればきっと勝てる!」
せんし「さあ行くぜ、これが最後の戦いだ!」

まおうは しゃくねつのいきをはいた!
ゆうしゃたちは けしずみになった!

まおう「……」
まおう「…………」
まおう「………………はぁ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406175567

側近「まおう様、お疲れ様でございました」
まおう「疲れてなどおらぬ。ただ、一抹の虚しさを感じていただけだ」
側近「それは失礼いたしました。しかし、何に虚しさを感じることがございましょう?」
まおう「18……」
側近「……は?」
まおう「18組だ、18組!今月だけでやってきた、ゆうしゃの数だよ!」
まおう「その誰もが私に一太刀浴びせることすら叶わぬではないか!」
まおう「大体なんだ、さっきのパーティは!?レベル43だと?よくそんなレベルで私に挑戦しようと思ったな!」
まおう「貴様、メタルゴーレムの湧き出る隠し洞窟の噂は、しっかりと流しているのか!?」
側近「そ、それが、隠し洞窟の入り口がわかりづらいようで、諦めてレベル上げをしない冒険者も多く……」
まおう「これだからゆとりは!」

まおう「暇だ」
まおう「暇だ暇だ暇だ暇だヒマだひまだひまだひまだひまだひまだ」
まおう「最近どういうわけか人間どもがケンカ売ってくるから退屈しのぎができると思っていたが」
まおう「噂のゆうしゃとかいうのがこれほどまでに弱いとは」
まおう「そもそも魔界の方がはるかに資源も労働力も豊かだし人間界なんていらないんですけど」
まおう「もうほんとに人間界滅ぼしちゃおっかな」
まおう「……」
まおう「おい、側近!」
側近「はっ!」
まおう「昨日私が冥界の最深部から取ってきた伝説の剣を城の宝箱に入れてこい」
まおう「くれぐれも、できるだけわかりやすいところにな」
側近「……」
まおう「……側近?」
そっきん「……」ドサッ
まおう「……っ!」
ゆうしゃ「」ヒョッコリ

まおう「貴様、いつのまに……」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「……」
まおう「……く、くく」
まおう「微力とはいえ、私に傷をつけた人間は貴様がはじめてだ」
まおう「いいだろう、これは久方ぶりに楽……」

ゆうしゃ
Lv.1

まおう「しめる……」

ゆうしゃ
Eどうのつるぎ
Eたびびとのふく

まおう「きっ…さまァッ!!」ブチブチブチィ?

まおうは じゅもんをとなえた!
てんくうのほしぼしが りゅうせいとなってふりそそぐ!

モクモク…
まおう「ハァ……ハァ……」
まおう「しまった。ついカッとなってやってしまった」
まおう「あんな相手に、わざわざ城を半壊させてまで魔法を使う意味などなかったのに」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「なっ!」
まおう(馬鹿な……あの攻撃をくらって無傷だと?!)
まおう「ふんっ、ならばっ!」

まおうは くうかんをきりさいた!
ミス! ゆうしゃに ダメージをあたえられない!

まおう(な……なんだ、今のは?)

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおうの こうげき!
ミス! ゆうしゃに ダメージをあたえられない!

まおう(こいつの動き……特段速いわけではないのだが)

まおうの こうげき!
ミス! ゆうしゃに ダメージをあたえられない!

まおう(私の動きをまるで手に取るように予測し、回避する)
まおう「なるほどな、そういうことならば」

まおうは しゃくねつのいきをはいた!
じごくのほのおが ゆうしゃにおそいかかる!

まおう「ふふふ、これならば逃げ場はあるまい!」

ゆうしゃは つるぎをかざしほのおをなぎはらった!

まおう「……は?」

ゆうしゃ
Eどうのつるぎ

まおう「あれ?」

ゆうしゃ
Eどうのつるぎ

まおう「きいいいいいいいい!!」

まおう「ならば手数で勝負だ!」

まおうは ひかりのはやさでこうげきをくりだした!
ミス!ゆうしゃに ダメージをあたえられない!
ミス!ゆうしゃに ダメージをあたえられない!
ミス!ゆうしゃに ダメージをあたえられない!
ミス!ゆうしゃに ダメージをあたえられない!

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「ああもう、それめっちゃムカつく!」

~3時間後~
まおう「ぜぇ…ぜぇ…わかった、貴様の力は認めよう」
まおう「だがそれでどうする?」
まおう「私には回復呪文はないが、そのペースでは果たして何か月かかるだろうな」
まおう「対する貴様は、たった一撃でもくらえばひとたまりもないだろう」
まおう「ゆうしゃよ、悪いことは言わぬ。一度ここから立ち去るがよい」
まおう「私とて、貴様のような強者に出会えて嬉しいのだ」
まおう「装備を整えレベルを上げてから、再びここへ来い」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

ゆうしゃ「いいえ」
ピキッ
まおう「……コロス」

~3日後~
ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「zzz…」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「zzz…」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「zzz…」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおうは めをさました!
まおうの ゆびさきからまりょくのねっせんがうたれる!
ミス!ゆうしゃには ダメージをあたえられない!

まおう「チィッ!」

まおう「おいゆうしゃ」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「どうやら本気で私を倒すつもりらしいな」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

ゆうしゃ「はい」
まおう「相変わらずむかつくやつだ」

まおう「だがそれでいいのか?」
まおう「お前は強いが、同時に弱い」
まおう「人間というのは猜疑心の強い生き物と聞く」
まおう「私を倒したという話を、一体どれだけの人間に信用してもらえるだろうか」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「それが返事か……」

~2週間後~
ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「なあゆうしゃよ」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「始めは夢想だと笑ったが、おそらく、私は貴様に敗れるのだろうな」

ゆうしゃの こうげき!
まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「まあよい、ちょうどこの世界にも退屈していたところだ」

ゆうしゃの(ry

まおう「いつの日か、私を打ち倒すほど強いゆうしゃが現れるのを心待ちにしていた」
まおう「お互いの死力の限りを尽くして戦えるような、そんなゆうしゃ」
まおう「まさか貴様のようなものであったことはいささか不満ではあるが」
まおう「敗北というものは、得てしてそういうものかもしれないな」
まおう「しかしゆうしゃよ」
まおう「貴様は、私を倒した世界に何を望む?」

ゆうしゃ「……」
まおう「……」
まおう「……一つ、昔話をしよう」
まおう「私が生まれたのは、魔界の果てにある小さな村だった」
まおう「静かで平穏で、皆が皆幸せそうな笑顔に包まれていた」
まおう「私には弟がいた」
まおう「生まれつき病弱で、その日も体調を崩して床に臥せっていた」

弟『おねえちゃん、どこにいくの……?』
まおう『ある噂を耳にしてな、ここから南東に向かったところにある魔翌霊峰に、万病に効く植物が生えているらしい』
まおう『それさえあれば、きっとお前の病気も治る』
弟『いやだよ。そんなところへいったら、おねえちゃんがあぶないよ』
まおう『はは、何を言う。お前には秘密にしていたが、お姉ちゃんはこの村のどんな男たちより強いんだ』
弟『いやだよ。おねえちゃん、ぼくのそばにいてよ』
まおう『わかってくれ、すべてはお前の為なんだ。心配するな、次の満月の晩までには帰ると約束するから』

弟『……ほんとに?ぜったい、ぜったいかえってきてくれる?』
まおう『ああ、本当だ。私が、一度だって約束を破ったことがあるか?』
弟『ない』
まおう『だろう?しばらく寂しい思いをさせるが、ほんの少しの辛抱だ』
まおう『そうだ、お前のために花を摘んできたんだ』ゴソゴソ
まおう『私と同じ名前の花だ。これを私と思って、そばに置いておくといい』
弟『わぁ~、きれいなおはな!』
まおう『どうだ、気に入ったか?』
弟『まるで、おねえちゃんみたいだ!』
まおう『なっ……ふふ、それは最高の口説き文句だな』
まおう『……じゃあ、行ってくる』

~魔翌霊峰~
まおう『ここか。しかし……山というより、巨大な柱だな』
まおう『万能薬は山頂にしか自生しないんだっけか、もはや嫌がらせだなこれは』
まおう『言っても仕方ないか、そら、よっと』

まおう『ハァ……ハァ……』
まおう『これで一キロくらいは登ったか』
まおう『まだ頂上は遥か雲の上か』
まおう『一旦ここで休憩するか』
???『ギャース!!』
まおう『なっ!あれは……ドラゴン!?』
まおう(しかもデカい……しかしたしかここはやつらの生息地ではなかったはずだが)
まおう『休んでいる暇はなさそうだな、先を急ごう』

訂正
~魔翌霊峰~
まおう『ここか。しかし……山というより、巨大な柱だな』
まおう『万能薬は山頂にしか自生しないんだっけか、もはや嫌がらせだなこれは』
まおう『言っても仕方ないか、そら、よっと』

まおう『ハァ……ハァ……』
まおう『これで一キロくらいは登ったか』
まおう『まだ頂上は遥か雲の上か』
まおう『一旦ここで休憩するか』
???『ギャース!!』
まおう『なっ!あれは……ドラゴン!?』
まおう(しかもデカい……しかしたしかここはやつらの生息地ではなかったはずだが)
まおう『休んでいる暇はなさそうだな、先を急ごう』

あれ、訂正できてない…
まあいいや、先に進めます

ガラガラッ
まおう(あぶなかった、霧が深くて足場が見えていなかった)
まおう(もう三日三晩登り続けているが、さすがに私も体力の限界だ……)
まおう『……む?少し霧が晴れてきた……ぞ!おっと……』
パァァ
まおう『お……』
まおう『おお……』

まおう『ついたぞ、頂上だ!』

まおう『すごい……植生の違う植物がこれだけ一か所に自生しているなんて』
まおう『植物学者なら垂涎ものだろうな』
まおう(なんだ……あちらにぼんやりとした光が)
まおう『これが……』
まおう『これが万能薬か!』
まおう(っと、感傷に浸っている場合ではない。予定よりだいぶ時間がかかっている)

まおう『急いで山を降りよう』

ガラガラッ
まおう(とはいえ、足場の悪さを考えたら、降りる方が登りよりキツイな)
まおう(慎重に、できるだけ早く……)
ガラガラガラガラッ?

まおう『しまった!』

まおう『――――。』
まおう『――――ハッ!?』
まおう『生きて……いる』
まおう(せり出していた出っ張りの部分に、運よく落ちた身体が引っかかったようだな)
まおう(私は一体どれだけの間気を失っていたのか)
まおう『……ぐぅっ!』
まおう(いや、ツいてなどいなかったようだ……)
まおう(右足の感覚が、ない……)
まおう(これでは山を降りることすらできそうもない)
まおう『万事休す、か――――』
まおう(すまない、弟よ)
まおう(どうやら私は、ここで――――)
『ギャース!』
まおう(あれは……行きがけに見かけたドラゴン……)
まおう『いや……まだ手はある!』

まおうは じゅもんをとなえた!
まおうの ゆびさきからほのおのたまがとびだす!
ボンッ
ドラゴン『ギャッ?!』
まおう『偉そうに空でふんぞり返りやがって、目障りだから消えろ!』
ドラゴン『ギィィェェェエエ!』

ドラゴンは はげしいほのおをはいた!
まおうは じゅもんをとなえた!
ひかりのころもが まおうをつつみこむ!

まおう『ぐっ……どうした?そんな生ぬるい炎じゃ、女一人殺せんぞ!』

見ていてくれている人がいたようで何よりです
セリフ行間入れますね

ドラゴン『ギャーッス!!』

ドラゴンが すさまじいはやさでとびこんできた!
するどいキバが まおうにおそいかかる!
まおうは 185のダメージをうけた!

まおう『ふ……うら若き処女の味はどうだ……格別の味が、するだろう……?』

ドラゴン『ギャース!……ギャッ?!』ガクッ

ドラゴン『――――グゥァッ?!』パチッ

まおう『ようやくお目覚めか。そのまま目を覚まさなかったらどうしようかと思案していたところだよ』

ドラゴン『ギャ、ギャス!』

まおう『何単純な話だ、私と一緒に口に入れた、山頂の植物で調合した薬で少し眠ってもらっただけさ』

まおう『普通なら数日眠りこけるような劇薬なんだがな、貴様の体格では3分ほどしか効果はなかったな』

まおう『さて、そうこうしているうちに……まもなく地上だ』

ドラゴン『ッッ?!!』

まおう『はは、そうだ死ぬ気で羽ばたけ!私もお前と一緒にミンチになるのは御免だからな!』

ドラゴン『ギャアアアアアアス!』バサバサバサッ

まおう『ようし、いい子だ……だが、後ろがお留守だよ』ドゴォン

ドラゴン『グェェェェェエエ……』ズシャア

まおう『グゥ……ッ!』ゴロゴロ


まおう(なんとか地上にはたどり着いたが……)

まおう『ゴフッ……』ベシャッ

まおう(これは、内臓もだいぶイったな……)

ズズ……ズズ……
まおう『先を……急ごう……』

魔翌力ってなんでしょう?
なにぶん掲示板に書き込むのもほぼはじめてなもので……

まものA『おい、あんた。なあこれ、やっぱ死んでんのかな、うへぇ』

まものB『いや待て、まだかすかに息があるぞ』

まおう『……ここ……は?』

まものA『おお、目を覚ましたぞ』

まものB『もしかしてあんた、魔王軍に襲われたのか?』

まおう『まおう……ぐん?』

まものB『ここからまっすぐ北に向かった森の中に小さな村があるんだがな。何でも数日前、魔王を名乗る軍勢に襲われて壊滅したって話だ』

まものA『今中央は覇権争いで荒れてるって話だが、こんな辺境までやってくるとはねえ。俺たちも昨日ドラゴンを見たよ』

まおう『まて……何の話だ、それは……?』

まものA『何って、世間は戦争真っ只中って話さ』

まおう『違う!その前だ!』


まおう『北の村は……私の村だ!』

ここではメール欄に
saga
といれないと、魔法力とか書けない。

下げる時は
sage saga
みたいにどちらも入れるといい。

ヒュゥゥゥ…
まものA『北の村ってここかい?って言っても、何にもありゃ……モゴ』

まものB『……』フルフル

まおう『あったはずなんだ……』

まおう『ここに私の村はあったんだ!』

まおう『弟が私の帰りを待って……ッ!』

まおう『こんな……こんな……』

まおう『ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!』

まものB『お前さん、お気の毒だがまず自分の手当てを……』

まおう『……し……やる……』

まものB『ん?』

まおう『……こんなことをしたやつらを、皆殺しにしてやる!』ムシャリ

まものA『なんだァ?その光るコケみたいなのは?』

ゴゴゴゴゴゴ…
まものB『おい、全力で逃げろ。よくわからねえが、なにかやばいぞ!』

まおう『ウ、ウォォォォォオオオオオ!!!!』

魔元帥『魔王様、フェンリルより降伏の使者がやってまいりました』

魔王『切り捨てろ』

魔王『どうせあの狐のことだ、素直に降伏勧告に従うような玉ではあるまい。徹底的に潰せ』

魔元帥『かしこまりました、ではそのように』


魔王『これであらかたの反乱分子は潰し終えたな』

魔王『永きに渡る戦いの時代は終わり、力による絶対的支配の時代がそこまで来ている』

魔王『ククク……フハハハハハ!』

魔将軍『まっ、魔王様、北方より敵襲でございます!』

魔王『何をうろたえておる。ふん、まだ抵抗できる勢力が残っていたとな。被害と敵の数を述べよ』

魔将軍『それが……ドラゴン軍団が……全滅、でございます……』

魔王『なにっ?』

魔将軍『しかも敵の数は…………たったの一人です!』

魔軍曹『うわああああああ!来るなっ、来るな化け物めえええええ!!!』

まおう『化け物?おかしなことを言う、貴様のほうがよほど異形の姿の化け物ではないか』

魔軍曹『ぎゃああああああ!俺のっ、俺の身体がぁっ!!』ギチギチギチ


魔参謀『魔導隊、前へ!やつの動きを止めよ!』

まおうは じゅもんをとなえた!

魔導士『あ、頭がァ……』ブチブチィ

魔参謀『しまった、呪い返しか!……ハッ?!』

まおう「…………」

魔参謀『ま、待て!い、いったいなんだというのだ?望みは?どんな願いでもかなえてみせよう!』

まおう『わたしの望みは……』

魔参謀『なんだ?!金か?国か?名誉か?!……ウポッ』ポコポコ


まおう『これだ』ボンッ

魔将軍『これは戦争なんかじゃない……ッ!ただの……虐殺です!』

魔王『……』

魔将軍『魔王様、いったいあいつは何者なのですか?!』

魔王『将軍、ただちに地下の実験室に向かえ』

魔将軍『魔王様?』

魔王『急げ、ただちにだ!』

>>36
ありがとうございます、さっき変な文字が入ったのはそういうことだったんですね

魔将軍『こんなところに部屋があったとは……』

魔学者『ヒッヒッヒッ、ようこそ我が研究所へ』

魔将軍『うわっ、なんだ貴様は!』

魔学者『お前さんが来た理由はわかっちょる。上にいる敵はそんなに強いのか?』

魔将軍『……ああ、強い。やつ一人で、この魔界が滅ぶほどに』

魔学者『実に興味深い研究対象じゃ。まぁしかし、こいつにはかなわんじゃろうな』スリスリ


魔将軍『なんだ……これは……』

魔衛隊長『ここは一歩も通さ……』グボシュ?

カツ…カツ…
魔王『来たか』

まおう『……』

魔王『外見ではとてもこの国を恐怖のどん底に陥れたとは思えない、美しい女性だ』

まおう『……』スッ

魔王『まあ待て。私を[ピーーー]前に、お前たちの村が襲われた、理由を聞きたくはないか』

まおう『……』

魔王『ふむ、肯定ととらえよう』

魔王『……かつて、この魔界を絶大な力で支配していた王がいた』

魔王『その圧倒的な力を魔物たちは恐れ、王の統治していた数百年間、一度の争いさえなかったという』

魔王『しかし、ある日突然王は自らの廃位を宣言すると、こつ然と姿を消した』

魔王『王を失くした魔界は再び荒れた』

魔王『一度覇権を担う王が現れても、絶えず各地で反乱は起きた』

魔王『力で支配するには、絶対的な力量差がなくてはならない。言ってしまえば王たちには、その器がなかったのだ』

魔王『さて、姿を消した王はどこへ行ったのだろうか?』

魔王『ちょうど一年前、世界を旅する吟遊詩人が、魔界の果ての小さな村で、文字もかすれた小さな墓標を見つけた』

魔王『そこに記されていたのは、かつて絶対的な力で魔界を統治した、あの王の名前だった』

魔王『これだけならば、ただの偶然としか考えない。事実、詩人もそうであった』

魔王『しかし詩人はあるものを見て確信する。ここは間違いなくあの王が暮らした村だと』

魔王『詩人は泊めてもらった宿でひとりの少年に出会う』

魔王『その少年は生まれつき病弱で、外に出ることすらままならない身体ということだった』

魔王『詩人には一つ特殊な能力があった』

魔王『それは、視た相手の魔翌力を推し量る能力』

魔王『突けば倒れてしまいそうなその少年は、今まで視たこともないような膨大な魔翌力に、その身体を蝕まれていたのだ』

魔王『詩人はその魔翌力を視ただけで、ほどなく視力を失った。それほどのものだった』

魔王『街の裏路地で唄っていた吟遊詩人から、もはやお伽噺とまで言われていた王にたどり着くとはな』


魔王『君たちは、世界を支配した王の末裔なのだよ』

魔王『だから私は君たちの村を滅ぼした』

魔王『しかし誤算だった。哨戒のドラゴンが何者かに撃墜された報告はあったが、生き残りがいたとはね』

魔王『大人しくしていても、その気になれば世界を滅ぼせる力など、やはり野放しにはできない』

まおう『違う……私たちは……』

魔王『平和に暮らせていればそれでよかった?この惨状を見給え』

魔王『どんな優れた統治システムだろうと、結局は時の為政者次第だ。道具の価値は、使うものに支配される』

魔王『君は平和を望んだかもしれない。しかしそんなものは、時と場合によって容易に移ろう』

すみません、一度テストしてみます(汗)
魔力

まおう『……』

魔王『まあいい。ところで最後に一つ頼みがある。君のその力を使って、この世界を支配しないか』

まおう『……?』

魔王『私はね、この戦乱の世の中に疲れたんだ。だから強兵政策をとって魔界の統一を試みたんだが、最後の最後で……結局、私も器ではなかったのだな』

魔王『君が真の意味で平和を願うのならば、取るべき手段は一つのはずだ』

まおう『私は……わたしは!』

ゴゴゴゴゴゴ…
まおう『?』

ズズズズズズン?

まおう『?!』

魔王『はーい、タイムアップ!あ、もう時間稼ぎは十分できたから、返事はいいよーん♪』

魔王『平和だとか何だとか、なにそれくっだらない!』

魔王『残虐さこそが、アタシたち魔族のサガでしょーん?』

魔王『実はね、今日はアナタにステキなプレゼントがあるの!』

魔王『一体アナタがどんな表情をするか、想像するだけでゾクゾクしちゃうわ』

魔王『さあ……出でよ!魔神!』

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ??

魔神『グォォォォォォオオオオオオ!』

魔王『これが私が地下でシコシコ作り上げた、1日で世界を7回半征服できる最高傑作よーん☆どう、イカすでしょ?』

まおう『…………』

魔王『あらぁん、リアクションいまいち?じゃあカンの悪いアナタに、もう一つのサプライズをお見せするわねっ♪』ブシュウ、グリグリッ

ズ……ズズ……
魔神『お……おねぇ……ちゃん……』

まおう『?!!』

魔王『どう、おわかり?そう、病気で死にそうだった可愛いカワユイアナタの弟のために、強い肉体を用意してあげましたー!ボクちゃんやっさしィー!』

まおう『貴様ァ!!!!』

魔王『おおっと動くなよ。弟君からは魔力を借りてるだけだからなァ、こいつの生殺与奪は俺サマが握っているんだぜい?』

まおう『くっ……!』

魔王『こんな姿になっちゃっても弟の命のほうが、わが身より大事とはねぇ―。見上げた姉弟愛だよゥ。そんな健気な君に、魔法の詠唱権を1回あげるよゥ』

まおうは じゅもんをとなえた!
ひかりのりゅうが 魔王におそいかかる!

魔王「あら?ホント容赦なくうってくるわね。そういうの好きよ」

魔神の こうそくえいしょう!
ひかりのりゅうは ばらばらにくだけちった!

魔王『どぅーゆーあんだーすたん?力と力のぶつかり合いでも、アナタに勝ち目はないの』

まおう『そんな……』ガクッ

魔王『さあて、メンタルもバッキバキにしたことだし、フィナーレにしましょうか☆』

魔神は じゅもんをとなえた!
ぼうだいなまりょくが エネルギーとなってくうかんにみたされていく!

魔王『ああ、溜まりに溜まった魔力をぶちまけたくてウズウズしちゃう』ウットリ

まおう『……』

魔神『オ……オ……オォ……』

まおう『すまない弟よ……私は、お前を……』

魔王『じゃあ、バイバーイ♪』

魔神は すべてのまりょくをときはなった!

――――。

まおう『……ッ!』

まおう『……』

まおう『……?』

魔王『あ』

魔王『あ……あれ?』ゴパッ

魔王『なァんで、攻撃がアタシにきてんのよぉ……』

魔王『チッ……まったく……不良品……つかませてん、じゃ……ない……わよう』ガクッ

ダダッ!

魔神『おねえ……ちゃん……』

まおう『もういい……しゃべらなくて……だいじょうぶだから……』

魔神『おねえちゃん……やくそくどおりちゃんと……かえってきて……くれたんだね……』

まおう『……!』

まおう『ああそうさ!なんたって、お姉ちゃんは絶対約束を破らないからな!』

魔神『ぼくね……しってるんだ……』

魔神『ぼくのおねえちゃんは……せかいでいちばん……やさし……』サラサラサラサラ…

まおう『……』


スッ
まおう『おい、そこにいる者』

魔将軍『はっ、はいィ?!』ビクゥッ

まおう『只今より、この国は私の指導下に入れる。異論はないな?』

魔将軍『もっ、もちろんでございます!』


まおう『よろしい。今日から、私がこの世界の王だ』

まおう「そうして魔界に平和が訪れた」

まおう「だがそれも、ほんの100年ほどの間だけだ」

まおう「本当のことを言うと私は、人間界にも、魔界の行く末にも興味はないんだ」

まおう「私はただ、ただただ……退屈だった」

まおう「圧倒的力でどんな相手も屈服させ、欲しいものは何でも手に入り、そうした果てにあるのは、虚無感だけだった」

まおう「ゆうしゃよ、貴様はどうだ?何人にも殺されぬその力が、やがて貴様を殺すのだ」

まおう「ふ……私としたことが少し語りすぎたな……もうよい、早くトドメをさせ」

ゆうしゃ「……」スッ

ゆうしゃ「……」

カシャン、カラカラ


ゆうしゃ「いのちをだいじに」

まおう「……ッ!?」

まおう「……初めてまともな口をきいたな。いささかAIくさい喋り方ではあるが」

まおう「だがよい。私はほとほと疲れたのだ」

まおう「多くの犠牲の上に生き延びてきたのだから易々と死ぬわけにもいかないと思っていたが」

まおう「それももはや限界だ。これは頼みだ、とどめをさしてくれ」


ゆうしゃ「僕は……」

ゆうしゃ「僕は、あなたのことが好きです」

まおう「……」





まおう「……は?」

まおう「きゅ、急に何を言って……!」

ゆうしゃ「僕はずっと前から、あなたのことが……」

まおう「ま、まて、まてまてちょっとまて!」

まおう「貴様っ、私を馬鹿にしているのか?!」

まおう「だ、たいたい貴様とは会ってそんなに時間も経っていないわけで」

まおう「違う!そうじゃなくて……いやそうだ、おかしいだろうずっと前からというのは!」

まおう「……」

まおう「私には……貴様の考えていることがさっぱりわからない」

ゆうしゃ「……」

ゆうしゃ「今度は、少し僕の話をしていいですか?」


ゆうしゃ「僕は、どこにでもいる平凡な少年でした」

少し休憩します

ゆうしゃ母『起きなさい、16歳の朝よ!』

ゆうしゃ『う……うぅん、あとちょっとだけ……』ムニャムニャ

ゆうしゃ母『あなた今日で16歳になるんでしょう?!立派な大人は自分で起きる!』

ゆうしゃ『はぁ……大人になんて、なりたくないよぉ』

ゆうしゃ母『何言ってるの。そういえば、王様があなたを呼んでいたわよ?』

ゆうしゃ母『まさか、何か悪さでもしたんじゃないでしょうね?!』

ゆうしゃ『え、えぇ……何もしてないと思うけど……たぶん』

ゆうしゃ母『なんでもいいから、顔を洗ってさっさといってらっしゃい!』

ゆうしゃ『ぼくが……ゆうしゃ、ですか?』

王様『左様。今朝、神官にご神託があったのじゃ。そなたこそが、世界を救うゆうしゃであると』

ゆうしゃ『で……でも、ぼくなんて何の取り柄もないですし』

王様『心配するな。そなたの旅の安全のために、装備も一式用意した』

ゆうしゃは ぬののふくをてにいれた!
ゆうしゅは どうのつるぎをてにいれた!

王様『そなたの旅の仲間となるべきものは、城下町の酒場へ行けば見つかるはずだ』

王様『ではゆうしゃよ、そなたが世界を救うことを信じて、旅の成功を祈る!』


ゆうしゃ『はぁ……』

ゆうしゃ『なんか強引に押し切られちゃったけど』

ゆうしゃ『とりあえず王様の言っていた酒場に向かうか……』

女主人『へぇ、あんたが噂のゆうしゃ様かい。可愛い坊ちゃんじゃないか』

女主人『おら、野郎ども!仕事だよ!』

戦士『おう、ぜひ俺を連れて行ってくれ!』

僧侶『ふうん、ルックスは悪くないじゃない。ちょっと気は弱そうだけど』

魔法使い『わしの孫によう似ちょる、おこづかいやろう』

遊び人『女の子のお尻を触る早さなら、だれにも負けませんぞwww』

武闘家『あと5センチ手を伸ばしたら、貴様の尻が消し飛ぶものと思え』

ワイワイ

ゆうしゃ『わ、わ、わ』

ゆうしゃ『ちょっと待って、いっぺんに来られても何が何だか……』

ゆうしゃ『じゃあみなさん、よろしくお願いします』ペコリ

戦士『よかったぜー、これで今月は食いつなげそうだ』

僧侶『わたしもー。勢いでバッグ買っちゃってピンチだったのよねー』

武闘家『先日はせっかく雇われたのに、混乱してゆうしゃを死なせるとは……不覚』

ゆうしゃ『……?えっと、あの……』



ゆうしゃ『もしかして、ゆうしゃって他にもいるんですか?』



戦士・僧侶・武闘家『……』

戦士『当たり前だろ。うちの酒場だけでも、今月は8人きたぞ』

僧侶『3番目にきたゆうしゃ、すっごいイケメンだったのになー』

武闘家『練度の低い我々は、いつも貧乏くじを引かされる』



ゆうしゃ『あぁ、そう……なんですね』

大臣『しかし、魔王という共通の敵を作り上げることによって各国の同盟のみならず、物流・雇用まで創出されるとは、王様の手腕には心服いたします』

王様『人心を掌握するにはアメのようにムチを感じさせることだ。勇者だと担がれて悪い気がせん人間などおらん。魔族なんぞに、人間が太刀打ちできるわけがなかろうにな』カカカ

大臣『今朝、どうのつるぎとぬののふくを王様がお出しになられた時は笑いをこらえるのに必死でした。今時、子どものお使いだってもう少し良いものを持たせてもらえるでしょうに』ニヤニヤ

王様『あれは傑作だったな。ここまでコストカットができるなら、どうだろう、今度はたけざおでも持たせてみようか?』

大臣『いやいや王様、さすがにそれはなんでも……』



大臣『アリですな』王様『アリだな』

ゆうしゃの こうげき!
ミス! まものにダメージをあたえられない!

戦士『何やってんだ、どきな!』

戦士の こうげき!
まものに 23のダメージをあたえた!

武闘家『これでトドメだ!』

武闘家の こうげき!
かいしんのいちげき!!
まものに 45のダメージをあたえた!
まもののむれを やっつけた!

戦士『ふぅーっ、これでこの一帯のまものはあらかた倒したか?』

武闘家『そうだな、これ以上進むのも危険そうだし、一度街へ戻ろう』チラッ

ゆうしゃ『い……いたた』

僧侶『またケガしたの?ほら、ちょっと見せなさい』

僧侶は かいふくのじゅもんをとなえた!
ゆうしゃの きずがかいふくした!

ゆうしゃ『す、すみません……』

~酒場~
女主人『あら、いらっしゃい』

戦士『やれやれ、今日もまたここで飲むことになるとはな。早く次の町へ行きたいもんだぜ』

武闘家『仕方あるまい。ゆうしゃとて、彼はまだ子どもだ』

僧侶『あー、カワイイ財布見つけたんだけど、なかなかお金貯まりそうにないなぁ』

女主人『私としては、ずっとここにいてくれたほうが商売繁盛して助かるんだけどね』

戦士『この店に来る常連なんて、俺たちくらいしかいないからな』

女主人『冗談ですまないのが痛いところだね。巷じゃ景気が上向いてるって話だけど、儲けているのは一部の商人くらいなもんさ』


僧侶『……あのさ、今のゆうしゃについていって、大丈夫だと思う?』

戦士『……まあ、正直言って、見通しは暗いだろうな』

武闘家『だからと言って我々のようなレベルの低い余り者を雇ってくれる先など、そうそうない』

僧侶『はぁ、結局そうなるのよね~』



ゆうしゃ『……』

ゆうしゃの こうげき!
まもののむれを やっつけた!

ゆうしゃ『ハァ……ハァ……』

戦士『よし、日も暮れてきたし今日はこれくらいにして、街へ戻るか』

ゆうしゃ『いえ、今日は調子もいいので、あと2、3戦して戻りましょう』

戦士『お、そうか。ようし、じゃあもう少しレベル上げしていくか』

ズゥン…ズゥン…

武闘家『む。なんだこの音は?』

ズゥン…ズゥン…

戦士『……地震?いや、砲撃か?』

ズゥン…ズゥゥン…

僧侶『ねえ、この音近づいてきてな……』



まものの こうげき! 僧侶は 89のダメージをうけた!

僧侶『カ……ハァッ!』

ゆうしゃ『僧侶さん?!』

もりのぬし『近頃、この森で我が同胞たちを殺しまわっているという人間は貴様らか?』

武闘家『貴様ァ!!』

武闘家の こうげき! しかしこうげきはかんぜんにふせがれてしまった!
もりのぬしの はんげき! 武闘家は105のダメージをうけた!


武闘家『う……うぅ……』

ゆうしゃ『戦士さん!武闘家さんを連れて逃げて!ぼくは僧侶さんを!』

戦士『う、うわァーーーっ!!』ダダダッ

戦士は にげだした!

ゆうしゃ『戦士……さん……?』

僧侶『馬鹿ね……あんな相手から、人ひとりおぶって逃げられるわけないじゃない……』

ゆうしゃ『そんな……そ、そうだ!』

ゆうしゃは かいふくのじゅもんをとなえた!

僧侶『何してるの……どうみても致命傷でしょ……あんたも、さっさと逃げなさい……』

ゆうしゃ『でも……でも……ッ』

僧侶『そういう甘いとこ……嫌いじゃないわ……でも、心中相手としては……不足かな……』

僧侶『あーあ……いい男見つけて、さっさと冒険なんて終わらせちゃう予定だったんだけどなぁ……』

僧侶『ほら……グズグズしない』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『~~~~~ッ!!』

ゆうしゃ『……』スッ

ゆうしゃの こうげき!
もりのぬしに 1のダメージ!

僧侶『なに……やってるの……?』

ゆうしゃ『僧侶さんも……武闘家さんも、ぼくが守る!』

僧侶『バカじゃないの……あんた……パーティで一番……弱いくせに……』

ゆうしゃ『たしかにぼくは弱いかもしれない……』

ゆうしゃ『どうやったって敵わないかもしれない……』

ゆうしゃ『でも……でもぼくは……ゆうしゃだからッ!!』ガタガタ

僧侶(なによ……名前ばっかのゆうしゃのくせに)

僧侶(ちょっとだけ……カッコイイじゃない)


僧侶『……あ』

グシャア
もりのぬし『フン、威勢のわりにあっけなかったな』

もりのぬし『さあ、お前たちにもとどめを……』ガシッ

ゆうしゃ『ま……て……』グググ

もりのぬし『まだ息があったか。意外にしぶといやつだ』

もりのぬし『どれ、今度こそ息の根をとめてやる』

僧侶『やめてぇっ!』

ズバッ
ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『…………』ドシャッ

もりのぬし『……』

もりのぬし『興もそがれた。お前たちはそこで野垂れ死ぬがいい』

ズゥゥン…ズゥゥン…

僧侶『ゆうしゃ……ゆうしゃあぁ……』

タッタッタッ

戦士『魔物はもういったか……』

戦士『おい、僧侶、武闘家!しっかりしろ!』

賢者『見せてください』

賢者は じゅもんをとなえた!
僧侶と武闘家のきずが みるみるふさがっていく!

僧侶『う…うん……』

戦士『僧侶!気がついたか!』

僧侶『……はっ、ゆうしゃは?ゆうしゃは?!』

戦士『ゆうしゃ?いや、ここにはみ……』

ゆうしゃ「……」

賢者『これは……』

僧侶『ねえあなた、どんな傷でも治せるんでしょう?!ゆうしゃを、ゆうしゃを助けてよ!』

賢者『……』

賢者『たしかに私はどんな傷でも治すことができます』

賢者『ですが』

賢者『失ってしまった命はもう……』

僧侶『そんな……』

僧侶『ゆうしゃぁぁぁぁああああああ!!!』

ゆうしゃ(……)

ゆうしゃ(…………)

ゆうしゃ(………………さむい)

ゆうしゃ(ぼくは、死んだのかな……)

ゆうしゃ(魔王を倒しに冒険に出て、一つ目の森さえ抜けられないなんて……)

ゆうしゃ(……?)

ゆうしゃ(なんだろう……)

ゆうしゃ(向こう側に、かすかな光が……)

ゆうしゃ(なんだか……とても……あたたかい……)

ゆうしゃ『―――――』


ゆうしゃ母『起きなさい、16歳の朝よ!』

ゆうしゃ『あれ?ぼく、死んだはずじゃ……』

ゆうしゃ母『なに寝ぼけたこと言ってんの!王様に呼ばれているからさっさと仕度なさい!』



王様『今朝、神官に~』

ゆうしゃ(やっぱり、前と全く同じだ……)

王様『ゆうしゃよ!ちゃんと聞いておるのか?』

ゆうしゃ『……え?!ああはい、どうのつるぎとぬののふくですよね?』

王様『ギクッ。な、なぜそれを……いや、何でもない。お前にはてつのつるぎとかわのよろいを用意しておる!』

大臣『えっ?!お、王様?!!』

王様(ええい、いいから早く取ってまいれ!)

ゆうしゃ『なんか前より貰った装備はよくなったけど……』

女主人『へぇ、あんたが噂のゆうしゃ様かい。可愛い坊ちゃんじゃないか』

ゆうしゃ(やっぱり一緒なんだよなぁ)

ゆうしゃ(これはもしかして……)



ゆうしゃのこうげき まものに35のダメージ!
まもののむれを やっつけた!

戦士『ほう……見かけによらず、なかなかやるじゃねえか』

武闘家『若いのに、大したものだ』

ゆうしゃ『あ、ありがとうございますっ』

僧侶『ほらみんなみて』


僧侶『次の町よ!』

パチパチ…
ゆうしゃ(もしかしたらあれは予知夢だったんじゃないかと思ってたけど)

ゆうしゃ(僕の考えすぎだったみたいだ)

ゆうしゃ(でも、本当にリアルな夢だったなぁ)

僧侶『あら?ゆうしゃ、まだ起きていたの?』

ゆうしゃ『うん。ちょっと、考え事してて』

僧侶『そう……ねえ。旅に出てまだたった3か月なのに、色んなことがあったね』

ゆうしゃ『そうだね。本当に、色々なことがあった』

僧侶『ゆうしゃには何度助けられたかわからないね。……おぼえてる?私がトロールたちに捕まった時のこと――』

ゆうしゃ『忘れるわけがないよ。変化の杖でトロールに化けてあいつらと一緒にいたせいで、三日も臭いが落ちなかったんだ』

僧侶『ふふ。たしかにトロールの姿で助けに来たゆうしゃは、思い出すと笑っちゃうわ』クスクス

僧侶『でもね……あの時は、本当にカッコよく見えた』

僧侶『……』


僧侶『ねえ、ゆうしゃ。わたし、ゆうしゃのことが―――』

ゆうしゃ『あぶないっ!』ガバッ

ヒュンッ
まもの『ゲッゲッ、闇夜に紛れる俺様の攻撃を避けるとは大したもんだ』

ゆうしゃ『なんだおまえはっ?!』

まもの『俺か、俺はな、魔王軍第183師団長……待て待て……ふん、貴様ら人間ごときに語る名は無い!うん、こっちの方がかっこいいな!』

ゆうしゃ『なにをごちゃごちゃ!』

ゆうしゃは じゅもんをとなえた!
はげしいいなずまが てきをおそう!
まものは おたけびをあげた!
まものは いなずまをかきけした!

ゆうしゃ『な……』

まもの『最近ここらに威勢のいい勇者がいるってなぁ。まぁ俺らの敵じゃあないが、微に入り細を穿ち、出る杭は全部叩き潰せってのが上の方針だ。悪く思うな、死んでもらうぜ!!』

まものは じゅもんをとなえた!
きょだいなひのたまが そらをつつむ!

ゆうしゃ『マ、マズイ!』

ゆうしゃは じゅもんをとなえた!
僧侶を はるかかなたへはねとばした!

まもの『人の心配より自分の心配だろう?!どのみちてめぇ以外には用はねぇんだからな!』ブン!

きょだいなひのたまが いちめんをやきつくす!

ゆうしゃ『ぐ……ぐぐ……』

まもの『ハッハァーッ!てめぇはここでゲームオーバーだ!』



――――ジュッ

ゆうしゃ母『起きなさい、16歳の朝よ!』


ゆうしゃ(……)

ゆうしゃ(確信した…)

もりのぬし『馬鹿な……この……わたしが……』

ゆうしゃ(ぼくは死ぬたび16歳の朝に戻る)

師団長『この俺様が、敗れるとはァー!!』

ゆうしゃ(これがゆうしゃとしてぼくに課せられた運命かはわからないが)

魔将軍『たかが……たかが人間に……』

ゆうしゃ(いいだろう、何が何でも、世界を救ってみせる!)



戦士『いよいよ、この先が魔王の間か……』

僧侶『魔王……一体どんな相手なのかしら』

武闘家『全てをかけて、戦うのみだ』

ゆうしゃ『ここまで来れた俺たちの力を信じるんだ!さあ、行こう!』

まおう『きたか―――』

ゆうしゃ(……女?)

まおう『貴様たちには少し期待している』

まおう『さあ、私を愉しませておくれ!』

まおうのこうげき 僧侶は999のダメージをうけた!
僧侶は しんでしまった!

ゆうしゃ『え……?』

まおう『どうした?!貴様たちの力はその程度か?!』

まおうのこうげき 武闘家は999のダメージをうけた!
武闘家は しんでしまった!

戦士『クソッ!くらえッ!』

戦士の せいなるじゅうじのざんげきをはなった!
しかしひかりのバリアが こうげきをはねかえした!
戦士は 999のダメージをうけた!
戦士は しんでしまった!

まおう『……』

ゆうしゃ『あ……あ……』

ゆうしゃ(なんて……)

ゆうしゃ(なんて冷たい目で俺を見るんだ)

ゆうしゃ『う、うわぁぁぁぁああああ!!!!』

ゆうしゃの こうげき!
ミス!まおうには ダメージをあたえられない!

まおう『……ふぅ』

まおう『さらばだ、か弱き者よ』

ゆうしゃ母『起きなさい、16さ……』

ゆうしゃ『ああああああああああああ!!!』

ゆうしゃ母『きゃあ?!ゆうしゃ、どうしたの?!悪い夢でも見たの?!!』

ゆうしゃ『はぁ……はぁ……』

ゆうしゃ(悪い夢……)

ゆうしゃ(それで済むならどれだけよかっただろう)

ゆうしゃ(今まではどんな敵でも諦めずに戦ってこれた)

ゆうしゃ(でも……あいつは……)



――――。

ゆうしゃ母『あら?もう帰ってきたの、王様はなんて?』

ゆうしゃ『ううん』

ゆうしゃ『大した用事じゃなかったよ』

ゆうしゃ(そうだ、もう魔王のことは忘れよう)

ゆうしゃ(別に俺が倒す必要なんてないさ)

ゆうしゃ(きっと誰かが)

ゆうしゃ(いつか代わりに倒してくれるさ)



――――。

元僧侶『ねえ、私たち、もう別れましょう』

ゆうしゃ『え……どうして、そんな』

元僧侶『あなたはとても素敵よ。私のことを誰よりもわかってくれてる。でもね、なんて言ったら言いんだろう……あなたには魅力がないの』

元僧侶『何でもうまくソツなくこなしているだけ……あなたといると、なんだか妥協した人生にいるみたいなの』

ゆうしゃ『ちょ、ちょっと待ってくれ!』

元僧侶『さよなら』ガチャ

バタン



ゆうしゃ『妥協した人生―――か』

ゆうしゃ『実際そうなんだから、仕方がないよな』



――――――。

こども『ねぇねぇ。いつもここでなにをしてるの?』

老人『……ん?ああ、私かい。私は、毎日ここで森の景色を眺めているのさ』

こども『もりのけしきみて、なにかたのしいの?』

老人『まぁ、うん……別に楽しくはないかな』

こども『たのしくないのに、そんなことしてるの?へんなのー』

母親『こっ、こら!そのおじいちゃんには話しかけちゃダメだって……あ、すみません!こどもなんで……!』


老人『楽しくもないことをなぜするのか、か……』

老人『私だって、かつては―――』

ゆうしゃ母『起きなさい、16歳の朝よ!』

ゆうしゃ母『……どうしたの?』

ゆうしゃ『なんでもない……』

ゆうしゃ『なんでもないんだ……』ポロポロ

ゆうしゃ母『そ、そう。あ、王様がね、あなたのことを呼んでいたわよ?』



ゆうしゃ『うん』



ゆうしゃ『知ってる』

戦士『おいおい、ゆうしゃ。まだレベル上げすんのかよー』

武闘家『魔王との戦いに備える気持ちはわかるが、もはや我々は魔王軍が全軍で来ようが負けはしないぞ』

僧侶『そうよ、早く故郷に帰りたいわ』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『わかった』

ゆうしゃ『もしも俺を君たちが倒すことができたら、魔王に挑戦しよう』

戦士『おいおい、仲間同士でやり合うのかよ』

ゆうしゃ『安心してくれ、できるだけケガはさせないように手加減する』

武闘家『まるで自分の勝利を疑わない口ぶりだな。いいだろう、受けて立つ』

僧侶『ちょっとみんな……!』

戦士『言っとくけど、こっちは手加減なしでいくぜ』ポキポキ

ゆうしゃ『ああ、いつでも。ころす気できてもらってかまわない』

戦士『抜かせ!』

戦士は だいちをきりさくざんげきをはなった!
ミス! ゆうしゃに ダメージをあたえられない!

武闘家『これならどうだ!』

武闘家は みぎてにとうきをためた!
こうそくのこぶしが あらしとなってゆうしゃをおそう!
ゆうしゃは すべてのこうげきをうけながすかまえをした!
はねかえされたこうげきが ぞうふくされておそいかかる!

武闘家『げっ』

僧侶は じゅもんをとなえた!
ひかりのかべが ふたりをこうげきからまもった!

武闘家『ふぅ。すまない、助かった』

ゆうしゃ『次はこちらからいくぞ』

ゆうしゃは てんにつるぎをかかげ、らいめいをよびおこした!
いなづまが ゆうしゃのつるぎにちくせきされていく!

戦士『……おいおい、マジかよ』

ゆうしゃは つるぎをふりかざした!
はなたれたひかりのりゅうが だいちのすべてをくだく!



武闘家『これのどこが手加減ありなんだ!』

戦士『――――!』武闘家『――――!』僧侶『――――!』

ゆうしゃ『チェックメイトだ』

戦士『まさかあの大技を俺たちを一か所に集めるおとりにするなんて……』

僧侶『私たち三人がかりでも勝てないなんて……』

武闘家『……完敗だ』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『言っておくが、魔王は俺より何倍も強い』

戦士『まるで戦ったことのあるような言い方だな』

ゆうしゃ『わかるんだよ、俺には』

僧侶『?』

ゆうしゃ『まあいいさ。戦う前にはあんなことを言ったが、正直もういくら雑魚を倒しても、これ以上の成長は見込めないだろう』

戦士『?……つまり?』



ゆうしゃ『向かおう。魔王城に』

まおう『……』

まおう『……ぬ?!』

ゆうしゃの こうげき!
しかしこうげきはふせがれてしまった!

まおう『ほぉ、貴様どこから湧いて出た?……ん!』

武闘家の こうげき
まおうに 130のダメージ!
戦士の こうげき
まおうに 270のダメージ!

武闘家『……ッ!』ブシュウ

戦士『な、なんだこりゃあ!まるでダイヤモンドでも斬ってるみてえだ』

ゆうしゃ『正面から戦おうとはするな!数の利を活かせ!』

まおう『ふむ。面白い、実に面白いな。知恵と策略で私に挑むか』

まおう『頼むから私が遊び尽くすまで、壊れないでくれよ?』ゴゴゴゴゴゴ…

ゆうしゃ『ハァ……ハァ……』

まおう『はぁ……はぁ……』

まおう『私が全力で戦うのは初めてだ……血沸き肉躍るとはこういうことか』

まおう『しかしお互いそろそろ限界だろう?さあ、決着をつけようか!』

ゆうしゃ『はぁぁぁあああ!』

ゆうしゃは せいしんをとういつし すべてのちからをけんさきにあつめはじめた!

まおう『そんな大技、通じると思ったかッ!』

まおうは じゅもんをとなえた!
しかし MPがたりなかった!

まおう『なんだとッ?!』

僧侶『ゆうしゃ!』

僧侶は すべてのまりょくをわけあたえた!
ゆうしゃの こうげきりょくが2ばいになった!

武闘家『ゆうしゃ!』

武闘家は すべてのとうきをわけあたえた!
ゆうしゃの こうげきりょくが2ばいになった!

ゆうしゃの こうげき!
はなたれたけんげきが まおうにおそいかかる!

戦士『ゆうしゃ!』

戦士は すべてをこめたけんげきをはなった!
ゆうしゃのけんげきとまじわり ひとつのおおきなざんげきとなる!

ゆうしゃ&戦士&武闘家&僧侶『『『『うおおおおおおおおおお!』』』』

シュウウウウウウ……

―――――。

まおう『……くっ!』ボロッ

僧侶『そんな……あの攻撃でまだ立てるなんて……』ハァハァ…

戦士『こいつは、不死身かよ……』ゼェゼェ…

武闘家『身体が……もう、動かぬ』ガクッ

ゆうしゃ『……』チャキ…


まおう『見事だ……ゆうしゃよ』

まおう『私がここまで追い込まれるのは、後にも先にも、これだけであろう……』

まおう『……』

まおう『……ごふっ』ガクッ

僧侶『……ッ!効いてる?!』

まおう『ひとつ、聞かせてくれ……お前たちは……ゆうしゃ、お前は私を倒した世界に何を望む?』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『何も、望まないよ』

ゆうしゃ『平和とか、そんな大それたもののためにじゃなくて、俺は、俺のためにお前と戦ったんだ』

ゆうしゃ『魔王のいない世界で人々がどう生きるかなんて、俺が考えることじゃないさ』

まおう『……』

まおう『ふん……人間らしい、実に身勝手な答えだ……』

まおう『そんな選択ができれば、私にも違った結末があったのだろうか……』

まおう『ふっ……今となっては、何もかも遅すぎるがな……』シュウウウウウウ…



戦士『終わった……のか?』

僧侶『何か……世界征服を狙っていたわりに、あまり悪役っぽくなかったような……?』

ゴゴゴゴゴゴ…

武闘家『おい!城が崩れているぞ!』

ゆうしゃ『みんな、急いで脱出しよう!』

大変申し訳ないのですが用事があるので、続きは22時頃に書きます

こども『ねぇねぇ、今日もおはなし聞かせてよ』

老人『ああいいよ、そうだな……これは私がゴブリンに服を盗まれた時の話だ』



――――。

老人『おっと、もう日が暮れる。つづきは明日聞かせてあげよう』

こども『えぇー……今いいところなのにぃー。ぜったい、明日もきかせてよ?』

老人『ああ、約束する』

こども『じゃあ、また明日ねー』タタッ

老人『伝説の勇者の冒険譚……か』

老人『思えば、長い旅路だった』

老人『勇者として、何千年の時を生きただろうか……』

老人『だが、もうそれも終わる……』

老人『戦士……武闘家……僧侶……』

老人『私も……ようやく……そちらへ……』





ゆうしゃ母『起きなさい、16歳の朝よ!』

ゆうしゃ『……え?』

ゆうしゃ(どういうことだ?)

まおう『さあ、かかってこいゆうしゃよ!』

ゆうしゃ(なぜループから抜け出せない?!)

まおう『一人で私に挑むとは、とんだ身の程知らずもいたものだ』

ゆうしゃ(なんだ、何が原因なんだ?!)

まおう『馬鹿な……この私が、こうも簡単に……』

ゆうしゃ(魔王を倒すことはループを抜け出す条件じゃないのか?!)

ゆうしゃ「で、現在に至る、と――」

まおう「……」

まおう「え、なんかすごい端折った?」

ゆうしゃ「どうしました、今ので僕の身の上話は終わりですが、何かわかりにくいところありました?」

まおう「そういうことではないが……」

まおう「しかし違う時間軸での話とはいえ、自分がボコボコやられているというのはあまりいい気分ではないな」

ゆうしゃ「一番コケにされたのは、この時間軸のあなたですよ?」

まおう「う、うるさい!」

まおう「と、とにかくだな!その、今の話では私に、ほ、惚れた理由がないではないか!」

ゆうしゃ「あ、すみません。そういえばまだ、その話をしていませんでしたね」

ゆうしゃ『はぁ……退屈だ、実に退屈だ』

大臣『ゆうしゃ様!大変……大変にございます!』

ゆうしゃ『なんだ大臣、騒々しいのは顔だけにしてくれ』

大臣『えっ、私の顔そんな風に思われて……いえ、そんなことより、敵襲でございます!』

ゆうしゃ『敵襲……?この勇者城を襲うとは、いい度胸をしているな。して、相手は?』

大臣『それがなんでも、ま……』

ドゴォォォン?
大臣『ギャッ!』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『おお、これはこれは。魔王様ではございませんか。魔界より遠路はるばる、ようこそお越しくださいました』

まおう『最近人間界で暴政を働き、魔族を奴隷としてさらっていく人間というのは貴様か?』

ゆうしゃ『如何にも』

まおう『下郎が。それだけの言葉が聞ければ十分だ。貴様はここで死ね』

まおう『うう……この私が、手も足も出んとは……』

ゆうしゃ『かつては貴様の途方もない強さに恐れおののいたものだが、月日の流れとは残酷なものだ』

まおう『くっ……私の負けだ、殺せ』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『そうだ、いいことを思いついた』

まおう『?』

ゆうしゃ『魔王よ、私の妻になれ』

まおう『?!』

ゆうしゃ『人類最強の私と、魔族最強のお前なら、世界を牛耳るには最高のカップルだと思わないか?』

ゆうしゃ『お前も、誰とも分かつことのできないその力を持て余していたのだろう?』

ゆうしゃ『私なら、お前のその孤独を満たしてやることができる』

ゆうしゃ『我が妃となった暁には、世界の半分をお前にやろう』



まおう『……』

まおう『私は、強い男が好きだ』

まおう『だが、貴様のような下衆が一番嫌いだ!』


まおうは すべてのまりょくをときはなった!
ぼうそうしたまりょくが ばくはつをおこす!

ゆうしゃ『ふん、全ての魔力を使い切って自爆するとは――』

ゆうしゃ『まあいい、チャンスはいくらでもある。お前を必ず私の女にしてやるぞ!』


バァン!
ゆうしゃ『魔王よ、俺の女になれェ!』

まおう『え……い、いやだ!』


まおう『人間などに屈するくらいなら、名誉ある死を選ぶ!』


まおう『拝啓 魔王様 かねてよりずっと貴女のことをお慕い申し……なんだこれ、キモッ』


ゆうしゃ『俺のことが好きになーる、好きになーれ』

まおう『……なんだこれは、新手の拷問か?』



――――。

ゆうしゃ『何なんだあの女は!一向になびく気配がないではないか!』

ゆうしゃ『またダメだったか……』

ゆうしゃ『たかが女を振り返らせることだけに、何を俺は必死になっているんだろうな』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『不思議なものだ。あの女のことなど、何一つ知らないのに』


まおうのつかい『魔王様の過去だって?お、俺もそんな話知らないよう』

ゆうしゃ『全く知らないわけではないだろう』

まおうのつかい『ある日どこからともなく突然現れてこの魔界を支配したとしか……お願いだ、助けてくれぇ』

ゆうしゃ『ふん、もういい。さっさと消えろ』


ゆうしゃ『結局、本人から直接聞くしかないのか』

まおう『私の過去だと?貴様に語ることなど何もない』

まおう『過去の詮索とは、趣味が悪いな』

まおう『過去など、とうに捨てた』



ゆうしゃ『あ~~~っ、もう、あの脳筋女!』

ゆうしゃ『全然自分のこと話さねーし、一度戦闘になったら死ぬまで戦いやがるし』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『少しでも戦闘時間を伸ばしてみるか……』

ゆうしゃ『レベルを下げて……』

ゆうしゃ『装備も必要ないな……』



――――。



ゆうしゃ『ははっ、数えきれないほど世界を救った勇者ともあろうものが、ずいぶんとみすぼらしい格好になったもんだ』

ゆうしゃ(だけど、どうしてだろう――)

ゆうしゃ『なんだか今までまとわりついていたものが、全部取り払われていくみたいだ』

ゆうしゃ『まおう、こんな戦い、もうやめにしないか?』ハァ…ハァ…

まおう『何を言う?ようやく、楽しくなって……きたところではないか』ハァ…ハァ…

まおうの こうげき! ゆうしゃは ひらりとみをかわした!

ゆうしゃ『……楽しい?』

ゆうしゃの こうげき! しかしゆうしゃは こうげきをちょくぜんでやめてしまった!

ゆうしゃ『だったらなんで……』

ゆうしゃ『なんでお前はそんな辛そうな顔をしているんだ!』

まおう『――――ッ?!』

ゆうしゃ『なあ……俺とお前がこうして戦わずに済む、別の未来もあるんじゃないか?』

まおう『戯言を……魔族と人間が相容れることなど、決してない!』

ゆうしゃ『魔族とか人間とか関係ない!俺は……僕はただあなたが――――ッ!』

まおう『黙れッ!』

まおうの こうげき!

――――。



まおう『……ぐふっ』

ゆうしゃ『まおう……お前今自分から飛び込んで……』

まおう『……』

ゆうしゃ『どうして、こんな……』

まおう『……』

まおう『……これは、私自身への罰なのだ』

ゆうしゃ『……?』

まおう『こうして戦いの中に身を置き続けることが、私のせめてもの償い……』

ゆうしゃ『……』

ゆうしゃ『僕にはよくわからないけど』

ゆうしゃ『でも何度失敗しようと、必ずあなたを助けに行く』

まおう『わからんな……どうしてお前がそこまでする?』

ゆうしゃ『だって僕は……』



ゆうしゃ『ゆうしゃだから』

ゆうしゃ「それが、一つ前のループの話です」

まおう「……え、終わり?」

ゆうしゃ「今度こそ、全部お話しました」

まおう「待て、少し頭の中を整理する」

まおう「じゃあ、何だ?さっきのは、その、最初のやつが理由なのか?」

ゆうしゃ「……あれ、もしかして伝わってません?」

まおう「いやいや、伝わっておるよ!つまりあれだな、二人で世界征服しようってことだろう?」

ゆうしゃ「……まおうさん?」

まおう「よかろう。貴様と私のコンビなら、きっと楽しめそうだ」

ゆうしゃ「まおうさん」

まおう「いや待てよ、そうではなくて最後の話だとただの好奇心から勇者的義憤に……」

ゆうしゃ「まおうさん!」
ビクゥ
まおう「……な、なんだ?」

ゆうしゃ「たしかに、最初の動悸は不純だったかもしれません」

ゆうしゃ「ですが、僕はあなたと何千何万と刃を重ねてきました」

ゆうしゃ「そんなあなたとの幾星霜の戦いの中で、いつしか本当に――」

ゆうしゃ「僕はあなたを」

ゆうしゃ「愛してしまいました」

まおう「――――ッ!!」パクパク

まおう「……ンン!」ゴホッ

まおう「……やはり、そういうことであったか」カァァア////

ゆうしゃ「え……なんか今すごい動揺してたように見えたんですけど」

まおう「き、気のせいだ!なんだか、貴様と話していると、どうも調子がおかしいのだ!」

ゆうしゃ「それってどういう……」

まおう「貴様がこの部屋に来た時からずっと原因不明の……この胸の動悸は何なのだ……」…ギュウ

ゆうしゃ「……」

ゆうしゃ「ハハハハッ!」

まおう「ゆ、ゆうしゃ?」

ゆうしゃ「あはは!そうか、無駄に思えていた僕の時間旅行も、全く無駄ではなかったってことか!」

まおう「な……どうした、何を言っておるのだ?」

ゆうしゃ「つまり、何度も繰り返すループの中で、あなたも少しずつ僕に惹かれていたんだ!」

まおう「…………ッ!?」

まおう「な、何を言って……ち、ちが……っ」

まおう「~~~~~ッ!!」

まおう「……この感情がきっと、そうなのであろうな」プイッ

まおう「きっとどこかで感じていたのだ。貴様と私は、似た者同士だと」

まおう「……」

まおう「ゆうしゃよ、返事を聞かせてやる。少しの間目を瞑れ」

ゆうしゃ「えっ……それは、あの……」

まおう「いいから早く!いいか?開けていいというまで、絶対に開けるなよ?」

ゆうしゃ「……」ドキドキ

ゆうしゃ「……」

ゆうしゃ「……」チュッ



まおう「初めて、攻撃があたったな」

まおう「なんだ、まだ目を瞑っているのか。愚図め、さっさと開けろ」

ゆうしゃ「あの……今の感触は……」

まおう「さて、いったいなんだろうな?」ニヤリ

ゆうしゃ「……」

ゆうしゃ「……ごっ、ゴフッ」ベシャア

ゆうしゃ「?!」

ゆうしゃ「これは……いったい……?」

まおう「神経性の毒だ。数十秒で楽に死ねる」

ゆうしゃ「どう……して……?」



まおう「ふん、理由はたったひとつだ」

まおう「冥土の土産に教えてやろう」

まおう「ゆうしゃよ、私はこう見えてロマンチストなのだ」

ゆうしゃ「……?」

まおう「プロポーズを受けるには、やはり一緒に花束が欲しいな」

まおう「天界へ向かう橋を見てみたいし、飛空艇とやらにも乗ってみたい。そうそう、サンタブルクのパンケーキは絶品らしいな」

まおう「だから『次に』来るときは、その点をしっかり踏まえておけ」

ゆうしゃ「…………」

ゆうしゃ「は……はは……また、やり直しかよ……ほんとに……めんどくせぇ……おんな……」

まおう「そうだ、私はめんどくさい女なのだ。どうだ、攻略しがいがあるだろう?」

ゆうしゃ「はは……まったく……」

まおう「……」ベシャア

ゆうしゃ「お前……まさか」

まおう「そうだ、私自身にも……同じ毒を盛ったよ」

ゆうしゃ「な……んで?」

まおう「ふん、私の心にズケズケと入り込んできて、一人で逝けるなどと思うな」

ゆうしゃ「……こんな美人と心中できるとは……光栄だね……」

まおう「そうだ、大事なことを伝え忘れていた」

まおう「私の名前はお前でもなければ、魔王でもない」

まおう「いいか、私の名前は――――」



ゆうしゃ「ふふ……うつくしい……なまえ、だ……」ガクッ



まおう「……ああ」



まおう「知ってる」

ゆうしゃ母「起きなさい、16歳の朝よ!」

ゆうしゃ「ああ、母さん。おはよう」

ゆうしゃ母「まあ、今日は寝起きがいいわね。……あら、どこかにおでかけ?」

ゆうしゃ「うん。今から待ち合わせの約束があるんだ」

ゆうしゃ母「もしかして、ガールフレンドでもできたんじゃないの~?」

ゆうしゃ「そうだよ、僕の婚約者さ」

ゆうしゃ母「……」

ゆうしゃ母「……?」

ゆうしゃ母「こっ、婚約者?!」

ゆうしゃ母「……なんだか急に、すっかり大人びた感じになっちゃって」

ゆうしゃ母「……」



ゆうしゃ母「やだ、王様の呼び出しを伝えるのをすっかり忘れてたわ!」

――――。


老人「こうして、ゆうしゃ様とまおう様は、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ」

こども「あのね、ぎもんにおもったんだけど、きいていい?」

老人「なんだい?」

こども「ゆうしゃ様はけっきょくまたるーぷしちゃうんだよね?それってはっぴーえんどなのかなあ?」

老人「近頃のこどもは、可愛くないことを聞くなあ」

老人「ゆうしゃ様はね、たぶんもうループはしなかったんじゃないかなあ」

こども「どうして?」

老人「それはね……」

老人「私のカンさ」

こども「なにそれ、ごつごーしゅぎ!『おばあちゃん』のばーか!」

タタタタッ

老人「まあ、たしかに私の願望でしかないんだけどね」

老人「でもね、ゆうしゃの仮説では、一つ一つの時間は連続していた」

老人「だからね、もしループが続いていたら、『ゆうしゃの死んだ世界は存在しない』はずなんだよ」

老人「なぁ……」

老人「あんた、ちゃんとむこうへ行けたんだろう?」

老人「あんたと過ごしたのは、私の人生ではほんの一瞬だったけど」

老人「その時間は、まるで昨日のことのようにありありと思い出せるよ」

老人「ほら、目の前に初めて会った時のあんたの姿が……」



老人「……」

老人「そうかい、そういうことかい」

老人「長く待たせたね……じゃあ、いこうか」




――――。



まおう「もしむこうで浮気なんかしてたら、ただじゃおかないからね」



おしまい

以上です、拙い作品でしたが、最後までお付き合いくださいましてありがとうございました

もっとダメ出しを受けるものと思っていましたが、そんなこともなくてうれしいです
作品の内容については言及しませんが、色々と小ネタもちりばめてあるので、気に入った方は読み返してみても楽しいかもしれません

SS自体はすごく良かったけど、魔翌力変換みたいな掲示板の特性はROMったり調べたりして把握しておくべきだと思うよ
不用意な発言のせいで叩かれるかも知れないし

おーるゆーにーどいずきる?

>>139
そうですね、事前によく下調べしておくべきでした
>>140,141
ループ物は大好きなので、色んな作品のパ…影響はところどころに受けているかと思います

乙。大変面白かった

もしかしてLRとかも読んでないかな?
1000行かずに完結したスレッドは、>>1本人がHTML化依頼スレに依頼出す必要があるよ

■ HTML化依頼スレッド Part21
■ HTML化依頼スレッド Part21 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406155378/)

>>1以外が依頼出すスレもあるけど、自分で依頼出すのが望ましいね

>>144
読んでいませんでした……教えてくださってありがとうございます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom