まおう「ゆうしゃ?おまえが?」 (53)

まおう「ひまだ」

まおう「世界征服を宣言してずいぶん経つが」

まおう「勇者がやってくる気配は一向にない」

まおう「というより」

まおう「もうほとんど世界征服しかかっちゃってる」

まおう「なんだよみんな頑張りすぎだろ……私がやることないではないか」

まおう「ていうか人間界とかいらないんですけど。魔界だけですでに持て余してるんですけど」

まおう「はぁ」

~♪

「あ~くをう~つ~、せい~ぎのや~いば~♪」

ゆうしゃ「勇者、参上!」



まおう「なんかへんなのきた」


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ゆうしゃ「とぅおぅううりゃああああ!!」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「……」

ゆうしゃ「あ、もういっちょぅおおおおお!!」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

ゆうしゃ「もひとつおまけにぃぃぃいい!」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「……」


まおうの でこぴん! ゆうしゃに 999のダメージ!

ドガシャァァァン

まおう「おい、側近」

シュンッ

側近「まおう様、お呼びで?」

まおう「なんか今へんなのが入ってきたぞ、警備はどうなっている?」

側近「は、いえあの、たしかに先ほど怪しい人間が侵入していたので撃退したはずですが……」

まおう「?まあよい、下がれ」

側近「も、申し訳ございません」

シュンッ


―――。


ゆうしゃ「やいやい、よくもやってくれたな!」



まおう「……」

まおう「先ほどはせめてもの情けをかけてやったのだ。貴様では私には到底勝てぬ、わかったらさっさと帰れ」

ゆうしゃ「うるせい、問答無用!」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「やれやれ。弱い者いじめは嫌いだが、仕方あるまい」

まおうのこうげき! ゆうしゃは9999のダメージ!

まおう「ふん、大人しく帰っていればいいものを」

シュゥゥゥゥ…

ゆうしゃ「あ、あいたたたた……」

まおう「な……っ!」

まおう「……どうやらタフネスだけは一級品のようだな。まあいい、これで終わりだ!」

まおうのれんぞくこうげき!
ゆうしゃに9999のダメージ!ゆうしゃに9999のダメージ!
ゆうしゃに9999のダメージ!ゆうしゃに9999のダメージ!

まおうは じゅもんをとなえた!
ゆうしゃに 99999のダメージ!

まおう「ふぅ……私としたことがつい熱くなってしま……」

ガラガラ

ゆうしゃ「あー、今のはさすがにダメかと思った」

まおう「なんだこいつは、私の攻撃が効いていないというのか?!」

ゆうしゃ「うりゃああああ!」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「だが弱い……」

まおう「……」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!
ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「…………」

ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!ゆうしゃのこうげき! まおうは 1のダメージをうけた!

まおう「…………気は済んだか?」

ゆうしゃ「……ふっふっふ、僕の気が済むのはお前を倒した時さ!」ゼェゼェ

まおう「……」

まおうは じゅもんをとなえた!
まおうの きずがぜんかいした!

まおう「もう一度聞く。気は済んだか?」




ゆうしゃ「うっそだぁ、それ一番やっちゃだめなやつだぁ……」

カシャン、ゴロン

ゆうしゃ「はぁーあ、もう完全にやる気なくしたっすわー。どーせ僕に世界なんて救えないっすわー」

まおう「……」

ゆうしゃ「やっとここまでたとりついたのになー。がんばったのになー」

まおう「……」

ゆうしゃ「……」チラッ


まおう「どうでもいいから、さっさと帰ってくれないか?」

ゆうしゃ「え、少しくらい戦いの後のピロートークに花咲かせましょうよ」

まおう「気持ち悪い表現やめろ」

ゆうしゃ「魔王さんも、なんで僕が倒せなかったのかとか気になりません?」

まおう「まぁ……それは、少しくらいは……」

ゆうしゃ「『ワタシトシタコトガツイアツクナッテシマッター』うぷぷ、盛大にフラグ立ててやんの、魔王のくせに小者感はんぱ……」

まおうの こうげき! ゆうしゃは9999のダメージをうけた!

まおう「いいから、さっさと喋れ」

ゆうしゃ「まず、僕たちの世界には『勇者システム』というものがあります」

まおう「いきなり何を言っているかわからないのだが……まあ、続けろ」

ゆうしゃ「勇者志望者は天界に志望動機を書いた履歴書を提出して書類選考を通り、他の志望者との集団討論、女神さまとの個別面談を経て、合格者のみが勇者になれます」

まおう「勇者ってそんな就活みたいなノリなのか?」

ゆうしゃ「ですが、僕は書類選考で落とされました」

まおう「お前は言いたいことだけ言うな」

ゆうしゃ「僕は憤りました。おかしい、僕ほど勇者に対する情熱を傾けた人間が他にいるものかと」

まおう「……ちなみに、志望動機は?」

ゆうしゃ「世界を救ってモテモテになって、僕を馬鹿にしてきたやつらを見返してやることです!」

まおう「それで受かるという自信がどこからくるのか聞きたい」

ゆうしゃ「納得のいかなかった僕は、直接天界の女神さまのもとへ直談判にいきました」

ゆうしゃ「門前払いをされても門の前で何日もプラカード片手に居座ってやりました」

まおう「やってることが勇者じゃなくて荒くれ者のそれだよね」

ゆうしゃ「そして二週間目の朝、ついに女神さまとお会いできたのです」

まおう「なんだろう、涙が出てきた」

ゆうしゃ「気がついたら僕は、女神さまの靴を舐めていました」

まおう「なんで?!」

ゆうしゃ「ほら、勇者って自己犠牲の象徴でしょ?相手の靴を舐めるのは絶対的服従を示すっていうじゃないですか。つまり、そういうことですよ」

まおう「どういうことだよ」

ゆうしゃ「あのときの女神様の僕に対する汚物を見るような目……たまらなかったなぁ」ウットリ

まおう「私の知っている自己犠牲と全く違うのだが」

ゆうしゃ「そうして僕は晴れて勇者になりました」

まおう「今の話に全然晴れがましい要素ないよね。とても世間に顔向けできないよね」

ゆうしゃ「勇者と認められた者にはなななナント素晴らしい特典がついているのです!」

まおう「……」

ゆうしゃ「実は勇者に選ばれた者たちは冒険の途中で死んでも、女神さまの加護を受けた教会で復活できるんですよ!」

まおう「ほぉ」

ゆうしゃ「でも僕は教会からも出禁をくらったので、もう死んだその場で復活しちゃえばいいんじゃない?ということになりました」

まおう「……女神のお前に対する職務放棄っぷりが見てとれるな」

まおう「つまり不死の身体を手に入れたということだな。よしわかった、帰れ。さあ帰れ」

ゆうしゃ「え、それだけ?不死ですよ、不死!こんなビックリ人間が目の前いるんですよ?!質問タイム入っていいですよ?!」

まおう「いやまぁ、そんな連中配下にけっこういるし……」

ゆうしゃ「ああ、そう……ですか……」

ゆうしゃ「……」ションボリ

まおう「……」

まおう「……はぁ」

まおう「……好きに話せ」

ゆうしゃ「僕は北のはずれの小さな村の生まれなんですが自慢じゃないですけど昔から運動も勉強も全くダメででも勇者になりたいという思いは人一倍強くそうした思いもあってか何とか勇者になれたんですけどどういうわけか酒場で仲間が一人も集まらず仕方なく単身冒険に出て能力に任せたごり押しプレイで何とかここまでやってきたんですがご存じのとおりそのせいか全然レベルが上がってないみたいでどうしようかまあとりあえず死なないんだし魔王城行っちゃおうかとぶべらっ!」


まおうのこうげき!ゆうしゃに99999のダメージ!


まおう「長い」


ゆうしゃ「さ、さっきは好きに話せって言ったじゃないですか!」

まおう「そうは言ったが空気を読め馬鹿が」

ゆうしゃ「空気は読むものじゃなくて吸うものですぅ」ドヤァ

まおう「……」

ゆうしゃ「空気は」

まおう「聞こえとるわ」

まおう「で、お前は何が望みなの?金、名声、権力何でも好きなものをお前にやろう」

ゆうしゃ「フゥーッ、出ましたね!いかにも魔王らしい取引!でもね、そんなことじゃあ僕は動かせませんよ~?」

まおう「いや殺せないんだったら、純粋にただ帰ってほしいだけなんだが」

まおう「マジで」

まおう「できれば」

まおう「そのまま回れ右してお引き取り願いたい」



ゆうしゃ「……」

ゆうしゃ「……しいていえば、モテモテの人気者になりたいです」

まおう「……空気読んだな」

ゆうしゃ「ちっ、ちがいます!僕は心から、僕のためのハーレムランドを作りたいだけです!」

まおう「何故訂正したのかわからんが、本音ダダ漏れで余計悲惨なことになってるぞ」

ゆうしゃ「だってみんなからチヤホヤされたいじゃないですか!」

まおう「お、おう……」

ゆうしゃ「こちとらゆうしゃなのに仲間できないってどういうこと?!酒場の奥から『えー……あれと一緒に冒険とかマジ無理だわー。絶対覗きとかしそー』って声が丸聞こえなんじゃい!ああもう、こんな世界、救うよりむしろ滅ぼしたい!」

まおう「……こんな人間にはたして協力したものか悩むところだが。まあいい、それならばひとついい方法がある」

ゆうしゃ「ほう、なんです?」

まおう「これから私が人間の町を襲う。そこに駆けつけたお前が私を倒して、めでたくお前は町の英雄だ。女からもモテまくりだ、やったな」

ゆうしゃ「あー、『泣いた赤鬼』的な?今時そんなのに引っかかりますかねえ?」

まおう「的な?じゃねえよぶちころすぞ」

ゆうしゃ「まぁいいでしょう、その案に乗ってあげましょう」

まおう「……お前、私が魔王ということを忘れていないか?」

~とある町~

まおう「うー、オホン。フハハハハ、私は魔王だ!人間どもよ、貴様たちを滅ぼすために直々に来てやったぞ!」

まおうはじゅもんをとなえた!まおうはきょだいなりゅうへとそのすがたをかえた!
まおうははげしいほのおをはいた!じごくのほのおがまちをやきつくす!

まおう「逃げ惑え愚かな人間どもよ!そして煉獄の炎に焼き尽くされるが良い!」

ゆうしゃ「お、やってるやってる。それにしてもあの人嫌々だったくせにノリノリだな」

ゆうしゃ「よし、あとは僕が出て魔王をやっつければ……」





???「そんなことはさせない!」

ゆうしゃ「……え?」

賢者「まさか人間界に魔王が直接やってくるとは予想外でしたね」

戦士「へぇぇ、こいつが敵の親玉ってわけかい」

魔法使い「町の人たちは私が魔法で守るから、勇者、やっちゃってちょうだい!」

勇者「ああ。ここでこいつを倒して、この戦争を終わらせる!」

まおう「ほう、まさか本物の勇者一行が現れるとはな。まあよい、貴様らの旅もここで終わりだ」

勇者「そうさせてもらう、お前を倒してな!」





ゆうしゃ「完全に出るタイミング失った……」

勇者のこうげき!まおうに124のダメージ!

戦士「これでも、喰らえッ!」

戦士はごうかいにオノをふりまわした!しんくうのやいばがまおうにおそいかかる!
まおうに179のダメージ!

まおう「チィッ、ちょこまかと……ならばっ!」

まおうはじゅもんをとなえた!ふかいやみがゆうしゃとせんしにからみつく!

まおう「これで身動きとれまい」

まおうのこうげき!

賢者「あぶない!」

賢者はじゅもんをとなえた!せいなるひかりがやみをうちはらった!

勇者はひらりとこうげきをかわした!

勇者「ふう。賢者、サンキューな」

ゆうしゃ「れ、レベルが高すぎてまるでついていけない……」

ゆうしゃ「僕は一体どうしたらいいんだろ……」ハッ

ゆうしゃ「そうか!ここで魔王さんが勝っちゃえば、なおさら僕の評価はうなぎのぼり!」

ゆうしゃ「ふれー、ふれー、ま・お・う・さーん、それ!」


勇者のこうげき!かいしんのいちげき!
まおうに278のダメージ!

ゆうしゃ「ああっ、なにやっとんねん!もっときばらんかいっ!」


町の住人「あいつ、さっきからブツブツと何言ってるんだ……?」

まおう「ハァ……ハァ……なかなかやるな、勇者よ」

まおう「私をここまで追い詰めたことは褒めてやる……」

まおう「だが、先にお前たちの方が限界だったようだな」

戦士「……クソッ!」ボロボロ

魔法使い「ダメ……もう魔翌力もからっぽよ……」

賢者「回復アイテムも使い果たしてしまいました……」

勇者「くっ、あとすこし、あとすこしだというのに……ッ」

魔王「これで終わりだッ!」

まおう「ハァ……ハァ……なかなかやるな、勇者よ」

まおう「私をここまで追い詰めたことは褒めてやる……」

まおう「だが、先にお前たちの方が限界だったようだな」

戦士「……クソッ!」ボロボロ

魔法使い「ダメ……もう魔力もからっぽよ……」

賢者「回復アイテムも使い果たしてしまいました……」

勇者「くっ、あとすこし、あとすこしだというのに……ッ」

魔王「これで終わりだッ!」

コツンッ


魔王「……なんだ、今のは?」




町の子ども「や、やめろぉっ!魔王め、お前なんか僕がやっつけてやる!」

まおう「ふむ。その意気や良し、だが戦いに水を差した償いは死をもって贖わんとな」ゴゴゴゴゴ

勇者「な、何をやっているんだ?!今の僕たちじゃ君を守れない、いますぐここから逃げるんだ!」

ザッ ザッ ザッ

町の住人「その心配には及びませんぜっ!」

町の住人「勇者様達を見殺しにしちゃあ子供たちに合わせる顔がねえ!野郎ども、俺たちの町は俺たちの手で守るんだ!」

町の住人達「「「「「おおうっ!」」」」」

町の住人Aはじゅもんをとなえた!勇者たちのきずがぜんかいふくした!
町の住人Bはまほうのせいすいをつかった!勇者たちのまりょくがぜんかいふくした!

勇者「よし、これならいける!」





ゆうしゃ「なんだこの盛り上がり……」

町の住人「みんな、かかれーっ!」ワーワー

勇者「よし、一気に押し切るぞ!」

ゆうしゃ「なにをやっているんだ、僕は……」

まおう「くっ、人間風情が調子にのるなぁッ!」

ゆうしゃ「……」

キィン!

しかしこうげきはふせがれてしまった!

勇者「なっ……!」

勇者「何のつもりだ、君はっ!」

ゆうしゃ「え……えーと、なんていうか、話し合えばわかりあえるんじゃないですかね」

勇者「問答無用で襲い掛かってきたのは相手の方だろう?!」

ゆうしゃ「あー……それはそうなんですけど、多数に無勢とか卑怯とは思いません?」

魔法使い「何言ってんの、相手は魔王なのよ?!」

戦士「勇者、こいつもしかして魔王に操られてるんじゃねえか?」

賢者「いえ、どうも魔法で操られている痕跡はありませんね」

町の住人「お…俺は見てたぞ!さっきあいつ物陰で魔王の応援をしてたぞ!」

勇者「……」

勇者「どいてくれ。でなければ、俺は君を斬らなくてはならない」

ゆうしゃ「……」チャキ

勇者「聞く耳はないか……加減できる自信はないから、死んでも恨まないでくれよ」

まおう「貴様……一体どういう風の吹き回しだ」

ゆうしゃ「えー、あのー……自分でもうまく言えないんですけど、勇者として?いえ、人としてここで黙って見ているわけにもいかないかなーって……」

まおう「貴様はつくづく馬鹿だな。見てみろ彼らの目を。英雄になるはずが一転、人類の敵だ」

ゆうしゃ「まぁそういうのは慣れてますからね、はは」

まおう「……」

ゆうしゃ「それになんていうか、魔王さん本当は悪い人じゃないんじゃないかなって」

まおう「……人ではないのだがな」

ゆうしゃ「あはは、そんな天邪鬼なことばっかり言ってるところとかも。案外僕たち似てると思いません?」

まおう「勘弁してくれ、気持ち悪い……まあいい、こちらも猫の手でも借りたい状況だ。ひとまず奴らの注意を引けるか?」

ゆうしゃ「了解!」

ゆうしゃのこうげき!ミス、勇者にダメージをあたえられない!

勇者「やむを得ないか……許せっ!」

勇者のこうげき!ゆうしゃに388のダメージ!

ゆうしゃ「ぐっ……ぐふっ……」ニヤリ

ゆうしゃのこうげき!勇者は38のダメージをうけた!

勇者「なんてやつだ……あそこから反撃してくるとは」

魔法使い「どいて勇者っ、私は手加減なんてしてやらないんだからっ!」

魔法使いはじゅもんをとなえた!ちのそこからマグマのりゅうがあらわれた!

勇者「魔法使い、一応彼も人間なんだぞ?!」

魔法使い「でもここで魔王を逃がしたら、もっと多くの人が犠牲になるじゃない!」

マグマのりゅうはゆうしゃにむかってしっぽをたたきつけた!

シュウウウウウウ…


…ブワッ!


戦士「あぶない、魔法使い!」
戦士は魔法使いをかばった!戦士は25のダメージをうけた!


ゆうしゃ「熱いのは一番苦手なんだよなぁ。まあ燃えた服も元通りになってくれるのは助かるけど」

魔法使い「な……無傷ですって……?」

賢者「勇者さん。どういう理屈かはわかりませんが、彼は一切の攻撃が通じないようです」

勇者「そうみたいだな。ある意味、魔王以上に厄介な相手だ」

賢者「……そうでもありません。攻撃力はさほどありませんし、魔法を使う気配もない。ならば―――」

賢者はじゅもんをとなえた!ひかりのつるぎがゆうしゃのみうごきをふうじる!

賢者「動きさえ止めてしまえば、容易に無力化できます」

ゆうしゃ「ま、まおうさぁ~ん……」

まおう「なるほど、私としたことがそんな簡単な方法も思い浮かばなかったとは」

ゆうしゃ「感心してる場合じゃないですよ!」

まおう「そうだな、しかし時間は十二分に稼げた」

戦士「な、なんだこりゃあ……」


まおうはだいまほうをとなえた!きょだいなまりょくのばくはつが いちめんをふきとばす!

パラパラ……


勇者「み、みんな無事か……?」ボロッ

戦士「い、今のはさすがにやばかったぜ……」ボロッ

勇者「町の人たちは?!」

魔法使い「直撃を受ける前に、私と賢者のバリアが何とか間に合ったわ」

賢者「しかし勇者さん、どうやら魔王には逃げられてしまったようです」

戦士「クソッ!あと一歩だったっていうのに取り逃がしちまうなんて!」

勇者「いや、やつも手負いだ。そう遠くへは行けないはず」

勇者「何としてもここで勝負を決めるぞ!」

勇者はじゅもんをとなえた!勇者たちはそらたかくとびあがった!

ゆうしゃ「あの、まおうさん?さっきは大技決めて一気に倒すチャンスだったんじゃないんですか?」

まおう「だとよかったんだがな。あれでもあいつらには致命傷にはならんだろう。それにこちらにはもう追撃をくわえる体力も魔力もない」

ゆうしゃ「ええっ、じゃあ大ピンチだったんじゃないですか!」

まおう「お前は本当に言いたくないことに突っ込んでくるな。しかしまあ、そういうこと―――」

ゆうしゃ「あの、まおうさん。どうやらあいつら、僕たちを追ってきてます」

まおう「ちっ。全く、気まぐれで貴様のわがままに付き合ったところ、とんだ災難だ」

ゆうしゃ「やだよーぅ、まだ死にたくないよーぅ」

まおう「貴様はどうやっても死なんだろうが」

ゆうしゃ「あ、そういえばそうか」

まおう「全く緊張感のない男だな。まあいい、やつらの狙いは私の命だけだ。今からお前を放り投げるから、英雄になるのは諦めてどこかで適当に暮らすことだな」

ゆうしゃ「えっ、投げるって言いました?ここから?今、投げるって言いませんでした?!」

まおう「いくぞ……むっ、ええい離れんかっ」ブンブン

ゆうしゃ「い……いやですっ」

まおう「なにっ」

ゆうしゃ「だってまおうさんは僕の初めての友達だから、死んじゃうなんていやですっ」

まおう「貴様は何を……」

ゆうしゃ「まおうさんも初めて会った時寂しい目をしていました。ぼっちにはぼっちがわかるんです!それにお互い何度も死線を乗り越えてきた仲じゃないですか!」

まおう「いや一方的に死にまくっていたのは貴様だけ……」

ゆうしゃ「僕はあいつらに勝ちたいです!見た目も性格も良くて、仲間もたくさんいて、おまけに勇者で……そんなやつに世界を救われたくなんかないです!そんな人間を必要とする世界なんてくそくらえです!そんな世の中なんて、日陰者が日陰者として生きなきゃいけない世の中なんて、僕たちがぶっ壊してやりましょうよ!」

まおう「……つくづく英雄には程遠いな、お前は」

ゆうしゃ「そうでしょうそうでしょう」

まおう「別に褒め言葉ではないのだが。だが、言わんとすることはわからんでもない。私も、あいつらに一泡吹かせてやりたくなった」

シュン

勇者「さあ、大人しく観念するんだ魔王!」

まおう「観念?人間風情が偉そうな口を利く。ここが貴様らの墓場だ」

戦士「へっ、ボロボロのくせに偉そうなこと言ってんのはどっちだよ!」

まおう「たわごとをっ!」

まおうははげしいほのおをはいた! じごくのほのおがゆうしゃたちをつつみこむ!

戦士「そんな攻撃何度も―――」

ほのおのなかから ゆうしゃがとびだしてきた!

ゆうしゃ「だから熱いのは苦手って言ってるのに……でやぁぁぁああああ!」


勇者「なにっ?!」

~~

まおう『いいか。今からあいつらに勝つための、たった一つの方法を教える。これはお前にしかできないし、失敗は絶対に許されない』

ゆうしゃ『うひゅー。お前にしかできない、良い響きですねえ』

まおう『……はぁ。いいか、それはな―――』

~~


賢者はじゅもんをとなえた!ひかりのつるぎがゆうしゃのうごきをふうじこめた!

ゆうしゃ「ぎゃあ!」

賢者「残念ですが、先程から申し上げているように何度も同じ手には―――」

まおうはおおきくそらへはばたいた!

魔法使い「逃げたっ?!」

まおう「やれやれ、では見せてもらおうか。貴様の、自己犠牲の精神とやらを」

勇者「何だとっ?!」

ゆうしゃ「……」ニヤリ



ゆうしゃは じこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃのにくたいがぼうだいなまりょくとなってばくはつをおこす!

シュウウウウウウ


魔法使い「あいつ……仲間を犠牲にするなんて……」ボロッ

賢者「皆さん、すぐに回復を……」ボロッ

戦士「ちくしょう……」ボロッ

勇者「マズイ……皆身を守れっ!」




ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!
ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!
ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!
ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!
ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!
ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!

勇者戦士賢者魔法使い「「「「」」」」

ゆうしゃ「はぁ……はぁ……勝った!勝ちましたよ!」

まおう「ふん、やればできるじゃないか」

ゆうしゃ「ふふふ、今ならまおうさんにだって勝てちゃうかも?」

まおう「…………だろうな」バタッ

ゆうしゃ「あ、あれ……まおうさん?」

まおう「そういえば約束していたな……私の骸をもって町に引き返せば、晴れてお前は勇者だ」

ゆうしゃ「な…なに言ってるんですか?」

まおう「もともと、くれてやってもいいと思っていた命だ。部下からは恐れられ、人からは憎まれ、そんな業と共に生まれ落ちた私の命が、誰かの救いになるのならそれでいいと思った。だから貴様のわがままにも付き合ってやった」




まおう「私は疲れた。こんな命の奪い合いも、もう疲れた」

ゆうしゃ「……」



ゆうしゃ「…………」




ゆうしゃはじこぎせいのじゅもんをとなえた!まおうはたいりょくがぜんかいした!

まおう「なっ……!?」

ゆうしゃ「おおおー、やってみるもんですね」

まおう「お、お前は話を聞いていなかったのか?」

ゆうしゃ「聞いてましたよ?要するに『僕は寂しかったんだ、ゆうしゃくんずっと一緒にいてね』ってことでしょ?」

まおう「ち、違う!なんだその曲解は!とっ、鳥肌が……い、今すぐ訂正しろ!」

ゆうしゃ「またまたー。僕らはもう、同じ命を分け合ったソウルブラザーじゃないですか」




まおう「気持ち悪い表現やめろ!」

見てるよ

あるところに、魔族と人間の奇妙な二人組がいたそうな。
これから彼らは何度か世界を救うことになるのだが、それはまた、別のおはなし。



まおう「つ、ついてくるな!私はひとりで静かに暮らしたいんだ!」

ゆうしゃ「どーせそんなこと言ってもホントは寂しいんでしょ?ほら、言ってたじゃないですか、空気は読むものだって」






まおう「吸うものだよ!」


おしまい

意外と面白かった

こんな拙い作品ですが、最後まで読んでくださってありがとうございました。
続きの話も考えていたんですが、描きたかった魔王と勇者の友情が何だかホモホモしい感じになってしまったので一旦打ち切りですww
やる気があればまた書くかもしれません、ではまたどこかで!

>>39
>>41
ありがとうございます、読んでいる方がいるとわかるだけで励みになります!

>>43
ありがとうございます
ここに書くのは2回目なんですけど、前書いた時より短くまとめるように心がけました

ああ、しまった。読み返してみたら文章がレス一つぶん抜けてた…
次回作はもう少し成長できるように頑張ります。。

せっかくだから、抜けたところ貼ってって

>>47
そ、そうですね。せっかくなので貼っておくと、>>25のところが、


町の住人「みんな、かかれーっ!」ワーワー

勇者「よし、一気に押し切るぞ!」

ゆうしゃ「なにをやっているんだ、僕は……」

まおう「くっ、人間風情が調子にのるなぁッ!」



ゆうしゃ「……」



町人C「ざまえねえな、魔王ももはや虫の息だ!」

町人D「見てよあの恐ろしい姿!あんなものがこの世に存在すると思うだけで吐き気がする!」

町人E「さあ勇者様、早くやつにとどめを!」



勇者「はぁ……はぁ……勝負あったな、魔王!でやぁぁぁあああ!」


勇者のこうげき!かいしんのいちげきがまおうにおそいかかる!

というのが本来の文章です。
……けっこう大事な場面なのにww

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