芳佳「一度でいいから坂本さんが熟睡しているところを見たいです!」 (67)

―夜 501基地 宿舎―

美緒「宮藤、リーネ。消灯時間だ。早く部屋に戻れ」

芳佳「あ、はい」

リーネ「すぐに戻ります」

美緒「明日も厳しい訓練が待っているんだ。早く体を休めろ。いいな」

リーネ「すみません。ちょっと芳佳から扶桑の文化のことを聞いていて」

美緒「ほう。扶桑の話で盛り上がるのは嬉しいが、寝ることも忘れるなよ」

リーネ「はいっ」

美緒「ではな」

芳佳「坂本さんは寝ないんですか?」

美緒「基地内の見回りと夜間飛行組のサポートがあるからな。私はもう少し起きていなければならない」

芳佳「そうですか」

美緒「おやすみ、宮藤、リーネ」

芳佳「おやすみなさい、坂本さん」

リーネ「おやすみない」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405567179

―別の日―

芳佳「あははは。そうなんですか。ルッキーニちゃんらしいですね」

シャーリー「だろ? まぁ、そのときルッキーニがお尻を怪我して、大変だったんだけどな」

芳佳「大丈夫だったんですか?」

シャーリー「丁度、治癒魔法を使えるウィッチが近くにいたからね」

芳佳「へぇー」

美緒「シャーリー、宮藤。まだ起きていたのか」

シャーリー「少佐、おつかれ」

芳佳「お疲れ様です」

美緒「間もなく消灯時間だ。あまり遅くまで起きていると怒られるぞ?」

芳佳「坂本さんにですか?」

美緒「ミーナだ。まぁ、夜更かししても起床できる自信があるのならいいがな」

シャーリー「遅刻は厳禁ってことですよね」

美緒「遅刻をすればミーナとバルクホルンが怒るだろ? 怒られるシャーリーや宮藤はあまり見たくないからな」

シャーリー「なんか恥ずかしいな……」

美緒「はっはっはっは。しっかり休めよ」

シャーリー「りょーかーい」

美緒「ではな」

芳佳「はい。おやすみなさい」

シャーリー「んー。すっかり話し込んじゃったな。寝るかー」

芳佳「あの、シャーリーさん」

シャーリー「どうした?」

芳佳「坂本さんって、いつ寝てるんですか? いつも誰よりも遅くまで起きていて、誰よりも早く起床してますよね?」

シャーリー「あー、そうだな。あまり気にしたことなかったけど。言われてみれば少佐っていつ寝てるんだろうな」

芳佳「シャーリーさんは知らないんですか」

シャーリー「前にサーニャと夜間哨戒したときも、少佐は最後まで通信室にいたしな」

芳佳「それって何時頃ですか?」

シャーリー「えーと……。0330時だったと思う」

芳佳「えぇ!? そんなに遅くまで!? でも坂本さんは5時前には早朝トレーニング始めてるんですよ!?」

シャーリー「そんなに早いのか?」

芳佳「坂本さん、1時間ぐらいしか寝てないことに……」

シャーリー「その1時間で熟睡できるんじゃないか?」

芳佳「人は1時間じゃ熟睡したことになりませんよ。少なくとも3時間か4時間ぐらいは寝ないと」

シャーリー「そうなのか」

芳佳「それに寝てないと体を悪くすることになりますし……」

シャーリー「なら、昼に寝てるとか? 少佐だって常に働いてるわけじゃないから、空いた時間に仮眠をとってるんじゃないか?」

芳佳「それでも熟睡してるのかは疑問ですね……」

シャーリー「少佐はいつも元気だし、心配ないんじゃないか」

芳佳「無理してなければいいんですけど」

シャーリー「大丈夫だって。なんていっても坂本少佐なんだしさ」

芳佳「はい……」

シャーリー「じゃ、おやすみ」

芳佳「おやすみなさい」

芳佳「でも……やっぱり、心配だなぁ……」

芳佳「お昼寝してるならいいんだけど……」

―翌朝 海岸―

美緒「うむ! 今日もいい1日になりそうだな!!」

美緒「鍛錬を始めるか!!」

芳佳「さかもとさーん!!」

美緒「おぉ。宮藤。今日も早いな」

芳佳「はぁ……はぁ……。お、おはようございます!!」

美緒「おはよう。よし、早速訓練だ。はっはっはっは」

芳佳「あの、その前にいいですか?」

美緒「なんだ? 何でも答えてやろう」

芳佳「あの、坂本さん。ちゃんと寝てますか?」

美緒「寝ているぞ?」

芳佳「昨日はいつ寝たんですか?」

美緒「サーニャの定時報告を受けてから寝た」

芳佳「それは何時頃なんですか?」

美緒「……よし。まずは軽く走るか。ついてこい、宮藤!」

芳佳「ちょっと待ってください!!」ギュゥゥ

美緒「どうした。早く始めなければ起床時間になってしまうだろう」

芳佳「何時ごろに寝たんですか?」

美緒「私の就寝時間が気になるのか?」

芳佳「なります。坂本さんがちゃんと寝てないなら、心配になりますよ」

美緒「昨夜は0430時が最終の定時報告だったから、そのあとだな」

芳佳「今、5時ですよ!?」

美緒「それがなんだ?」

芳佳「それだと30分しか……あ、でも、通信室から宿舎まで距離があるから……もっとすくないかも……」

美緒「早く始めるぞ」

芳佳「坂本さん、お昼寝はしているんですか?」

美緒「……ああ。その通りだ。実は昼にぐっすり寝ている。だからこうしていられるわけだ」

芳佳「はぁ……よかったぁ……。それならいいんです」

美緒「納得できたか。では、訓練を始めるぞ!」

芳佳「お願いします!!」

―ブリーフィングルーム―

美緒「全員、集まったか」

バルクホルン「ああ。始めてくれ」

ミーナ「はい。みなさん、おはようございます。ミーティングを始めます。まずは夜間飛行専従班からの報告はありますか?」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

美緒「サーニャからは何もない」

ミーナ「分かりました。他に何か報告しておきたことがある人はいるかしら?」

芳佳「はい!!」

ミーナ「み、宮藤さん? 何かあるの?」

芳佳「シャーリーさん! 坂本さんはちゃんとお昼寝しているそうです!」

シャーリー「おっ。そうか。サンキュー、宮藤」

芳佳「いえ!」

ペリーヌ「宮藤さん!! 関係のないことを発言しないように!!! 少佐のことですからメモしておきますけど!!!」カキカキ

美緒「はっはっはっは。宮藤。個人的な報告はしなくていいぞ」

ミーナ「はぁ……」

ミーナ「――連絡事項は以上です。各自、持ち場についてください。解散」

バルクホルン「行くぞ、ハルトマン」

エーリカ「その前に90分ぐらい寝てもいい?」

バルクホルン「ふざけるな!!! こい!!!」グイッ

エーリカ「あぁぁ……」

芳佳「訓練の時間までどうしよっか?」

リーネ「昼食のメニュー、決めておきたんだけど、いいかな?」

芳佳「うんっ」

ルッキーニ「ねぇねぇ、芳佳ぁ」

芳佳「なに?」

ルッキーニ「さっきの報告なんだったの?」

芳佳「ああ、シャーリーもきっと気になってると思って」

ルッキーニ「少佐がお昼寝してるかどうかを?」

芳佳「そうだよ。昨日、坂本さんの話をしたから」

ルッキーニ「ふぅん。少佐ってお昼寝してるんだぁ。どこで寝てるの?」

>>9
芳佳「ああ、シャーリーもきっと気になってると思って」→芳佳「ああ、シャーリーさんもきっと気になってると思って」

芳佳「どこって、部屋だと思うけど」

ルッキーニ「へぇー」

リーネ「そうなのかな?」

芳佳「どうして?」

リーネ「午前は私たちの訓練があるし、午後は大体ミーナ中佐と一緒にいるような気がするけど……」

芳佳「あれ、そういえば……」

リーネ「坂本少佐が日の高いうちから宿舎に戻るようなところは一度も見たことないよ」

芳佳「だったら、このブリーフィングルームで寝てるとか。サーニャちゃんみたいに」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「サーニャ、可愛いな。サーニャの寝顔は最高だな」

ペリーヌ「それだけは絶対にないですわ!」

芳佳「え!? ど、どうして!?」

ペリーヌ「坂本少佐がそんな行儀の悪いことをするわけないでしょう?」

エイラ「サーニャが行儀悪いっていうのかよぉ」

サーニャ「うぅ……ごめ……んな……さい……」

ルッキーニ「あたしみたいに机の上で寝てるとか?」

ペリーヌ「尚のことあり得ませんわ」

芳佳「でも、ハンガーとか滑走路で寝ていることもないよね?」

リーネ「そこで寝るのはルッキーニちゃんぐらいだから……」

ペリーヌ「ルッキーニさんのように自室以外で眠るようなことはありません。そもそも就寝時間と就寝場所を遵守しない少佐ではありません」

芳佳「そういわれたら、そうだけど……」

ペリーヌ「何か問題でもありまして?」

芳佳「坂本さんはいつ寝てるのか、ペリーヌさんは知ってる?」

ペリーヌ「はい? そんなの消灯から起床にかけてに決まっていますでしょう。その時間以外に寝ているのはルッキーニ少尉とハルトマン中尉ぐらいですもの」

ルッキーニ「ぶぅー。あたしだってサーニャみたいにいつも寝てるわけじゃないのにー」

エイラ「サーニャだっていつもねてねーよ」

サーニャ「うぅ……ごめん……なさい……すぅ……すぅ……」

芳佳「サーニャちゃん、サーニャちゃん」ユサユサ

サーニャ「うん……なぁに……?」

芳佳「ごめんね。サーニャちゃん、夜間哨戒中の定時報告は坂本さんが受けてるんだよね? それっていつも4時ごろまでやってるよね?」

サーニャ「うん……そうだけど……?」

芳佳「ミーナ中佐のときとかバルクホルンさんのときとかはないの?」

サーニャ「うん……最後まで報告を受けてくれるのは……いつも……坂本……少佐……だか、ら……」

芳佳「やっぱりそうなんだ。ありがとう、サーニャちゃん」

サーニャ「どういたしまして……すぅ……すぅ……」

芳佳「ペリーヌさん!!」

ペリーヌ「な、なんですの?」

芳佳「坂本さんが毎朝訓練をしているのは、知っていますよね?」

ペリーヌ「当然ですわ。そしていつもいつも豆狸が一緒にいることも知っています」

芳佳「朝の何時かも知っていますよね?」

ペリーヌ「いつも5時ぐらいだったはず……」

リーネ「そういえば、坂本少佐っていつ寝てるのかわからないね」

芳佳「そうなの!! というか、坂本さんって寝てるの!?」

リーネ「わ、わからないよぉ」

ペリーヌ「少佐はいつも普通にしていますからあまり気になりませんでしたが、確かにいつ就寝されているのか……」

芳佳「エイラさんは知ってますか?」

エイラ「しらねー。少佐が寝てるところなんてないな」

芳佳「ルッキーニちゃんも?」

ルッキーニ「知らない」

芳佳「やっぱり寝てないのかな……」

ペリーヌ「少佐本人に聞いてみればいいでしょう」

芳佳「聞いたけど、坂本さんは寝てるって」

ペリーヌ「なら、寝ているのでしょう。いつ寝ているのかは分かりませんけど」

芳佳「そんなぁ……」

シャーリー「おーい。ルッキーニ、いつまで話してるんだ。そろそろいくぞー」

ルッキーニ「あーい。それじゃ、またあとでね、よしかっ」

芳佳「う、うん」

リーネ「心配になってきちゃった。坂本少佐がもし寝てないなら……」

芳佳「絶対、かなり無理してることになるよ。このままだと、坂本さんが死んじゃうかも……」

ペリーヌ「お、大袈裟なことを言わないでくださいな。全く」

芳佳「大袈裟じゃないよ。しっかり6時間は寝ないと本当はダメなんだから」

ペリーヌ「わたくしたちは常に戦闘待機中です。毎日ハルトマン中尉のように健康的な睡眠など取れませんわよ」

芳佳「私たちでもしっかり取れないんだから、坂本さんなんてもっと取れてないことになるよ。私たちよりも後に寝て、先に起きてるんだし」

ペリーヌ「で、ですが、少佐はもうそういう生活をずっと続けていますのよ」

芳佳「だから、心配なんだけど……」

ペリーヌ「少佐は強い人なの。知った風なことをいわないでくださいな」

芳佳「坂本さんがいくら強くても、まともに寝ない生活をずっと続けていたら体を壊しちゃうよ!!」

ペリーヌ「ですから、少佐はそんなことでは体調を崩すことはないと言っていますの!!」

芳佳「ペリーヌさんは坂本さんじゃないんだから、そんなことわかるはずない!!」

ペリーヌ「なっ……!!」

リーネ「あの……芳佳ちゃん……ペリーヌさん……ケンカは……」

エイラ「おまえら!! 朝からケンカすんな!! ケンカするなら外でやれ!!!」

芳佳「す、すみません、エイラさん……」

ペリーヌ「だ、だって……宮藤さんが……」

エイラ「ったく。そんなに心配ならミーナ中佐にでも聞けよ。少佐のことを1番知ってるのは中佐なんだから」

芳佳「それもそっか……」

エイラ「サーニャ、部屋にいこうな。ほら、支えてやる」ギュッ

サーニャ「う……ん……」

エイラ「じゃあな」

リーネ「あ、ありがとうございました」

芳佳「あの、ペリーヌさん、ごめんなさい。酷いこと言って……」

ペリーヌ「い、いえ。わたくしも言い過ぎましたわ。申し訳ありません」

芳佳「私、ミーナ中佐に聞いてくる」

ペリーヌ「そうですか。まぁ、勝手にしたらいいですわ。わたくしは少佐が強い人であることをきちんと理解していますので」

芳佳「ペリーヌさん、気にならないの?」

ペリーヌ「なりませんわね。それではまたのちほど」

芳佳「うん。本当にごめんね、ペリーヌさん」

ペリーヌ「ふんっ」

芳佳「よし。ちょっと聞きにいって来る。リーネちゃんはどうする?」

リーネ「えーと。私も心配だから一緒に行こうかな」

芳佳「あ、いた! ミーナ中佐ー!!」

リーネ「すみませーん」

ミーナ「宮藤さん、リーネさん。訓練はいいの? 坂本少佐はもう準備しているみたいだけれど」

芳佳「すぐに行きます。でも、ちょっと聞きたいことがあって」

ミーナ「聞きたいこと?」

芳佳「坂本さんって、寝てるんですか?」

ミーナ「え?」

リーネ「あの、坂本少佐はいつも私たちよりも後に寝て、先に起きているので……もしかしたら、寝てないのかなって……」

ミーナ「ああ……。それで心配になったの?」

芳佳「はい。だって、寝ないと体調を崩すことはもありますし、時には取り返しのつかないことにもなりますから」

ミーナ「ありがとう。でも、大丈夫よ。坂本少佐はきちんと寝ているから」

芳佳「本当ですか? やっぱりお昼寝とか?」

ミーナ「いいえ。普段の坂本少佐をよく見ていれば分かると思うわ」

リーネ「どういうことですか?」

ミーナ「それは貴方たちが調べてみて。宿題です」

―格納庫―

芳佳「よく見れば分かるってどういうことかな?」

リーネ「さぁ……」

美緒「来たか。二人とも訓練の時間は守れよ」

芳佳「あ、すみません!! すぐに用意します!!」

リーネ「ごめんなさい!!」

美緒「焦らなくていいぞ。それで怪我をされても困るからな」

芳佳「はい!!」

リーネ「やっぱり元気そうだね」

芳佳「うん。坂本さんは誰よりも寝てないはずなのに……」

リーネ「ペリーヌさんの言うとおり、坂本少佐は特別なのかな」

芳佳「そんなこと……」

美緒「今日は飛行訓練からだ。さっさとユニットを装着してこい」

芳佳・リーネ「「了解!」」

美緒「ふむ……」

リーネ「芳佳ちゃーん。準備できたー?」

芳佳「うん、バッチリ。いこっ」

リーネ「坂本少佐!! 準備できました!!」

美緒「……おお。インカムはつけたか? では、今日は昨日のおさらいからだ」

芳佳「わかりました!!」

美緒「しっかりな」

リーネ「リネット・ビショップ。いきます!!」ブゥゥゥン!!!!

芳佳「宮藤芳佳、発進します!!!」ブゥゥン!!!!

美緒「……聞こえるか?」

リーネ『はい』

芳佳『大丈夫です』

美緒「では、昨日と同じルートで飛行してみろ。リーネは宮藤をリードしろ」

リーネ『了解!』

芳佳『リーネちゃーん!! まってー!!』

美緒「……」

美緒「……よし。降りてこい」

芳佳「はぁー。つかれたぁ」

リーネ「はぁ……はぁ……」

美緒「だらしないな。5分間休憩だ」

芳佳「あ、ありがとうございます」

リーネ「はぁ……ふぅ……」

美緒「全く……」

芳佳「あはは。復習しただけなのに、もうヘトヘト……」

リーネ「うん……」

美緒「……」

芳佳「坂本さん、もしかして呆れてる……?」

リーネ「し、仕方ないよぉ。私たち、まだ新人なんだし……」

美緒「……」

芳佳「ね、ねえ、リーネちゃん。坂本さん、腕を組んで目を閉じてるけど……もしかして……」

リーネ「え……? え? 今、寝てるの? でも、立ったまま眠れるわけ……」

美緒「……」

芳佳「そういえば、坂本さんってよくああいう姿勢でいるよね? 目を閉じて腕を組んで、ただ黙ってるだけかと思ってたけど……」

リーネ「確かによく見るけど……でも……」

美緒「……」

芳佳「さかもとさーん?」

美緒「なんだ?」

芳佳「あ、おきてる」

美緒「なんだ? 質問でもあるのか?」

芳佳「い、いえ、なんでもないです。もしかして寝てるのかぁ、なんて……」

美緒「私が居眠りするわけないだろう。何を言っているんだ」

芳佳「ごめんなさい」

リーネ「ほら、やっぱり違うよ」

芳佳「みたいだね」

リーネ「はぁ、びっくりしちゃった」

美緒「……」

芳佳「うーん……」

美緒「……」

芳佳「でも、なんか、寝ているようにも……」

リーネ「芳佳ちゃん。そんなジロジロみたら失礼だから……」

芳佳「だって……」

美緒「そんなに私が気になるのか、宮藤?」

芳佳「いえ!! そうじゃなくて……!!」

美緒「あと3分だぞ。呼吸を整えておけ」

芳佳「は、はい!!」

美緒「頼むぞ」

リーネ「芳佳ちゃん。いくらなんでも立ったまま寝るなんてできないと思うよ?」

芳佳「私もそう思うんだけど……」

美緒「……」

芳佳「やっぱり、これ寝てるんじゃ……」

リーネ「そんなこと……」

美緒「……」

リーネ「だけど、もし寝ているなら、体が揺れたり、足から崩れそうになったりしないかな?」

芳佳「うん。頭が少しも揺れないないのはおかしいよね」

リーネ「私たちの声にもすぐに反応するから、寝ているとは考えにくいような……」

芳佳「そうだよね……」

美緒「……」

芳佳「……」

美緒「……宮藤?」

芳佳「す、すみません!!」

美緒「あまり見るな」

芳佳「はい」

リーネ「見てることも分かっていたみたいだね」

芳佳「やっぱり勘違いかぁ」

リーネ「いくら坂本少佐でもそんなに器用なことはできないよ」

芳佳「うん。そうだね……」

―通路―

バルクホルン「少佐が寝ている時間か……」

エーリカ「見たことないね」

ペリーヌ「お二人も見たことがないのですか」

バルクホルン「戦闘後でも少佐はいつもそのまま休むことなく宿直をこなすときもあるからな」

ペリーヌ「では、やはり寝ていない……?」

バルクホルン「扶桑の英雄といえど人間だ。どこかで仮眠はとっているはずだが」

エーリカ「そういえば少佐ってよく目を閉じてそのまま瞑想っぽいことしてるけど、そのときに寝てるんじゃない?」

ペリーヌ「あれは坂本少佐の精神統一であって寝ているわけではないですわ」

バルクホルン「同感だ。寝ているにしては反応が早い」

エーリカ「反応って?」

バルクホルン「呼べば即座に応答をするのは当然だが、近づいただけで少佐から話しかけてくることもある」

エーリカ「なんかすごいね」

バルクホルン「ただ、仮に瞑想時に眠っているにしても、熟睡しているとはいえないな。野生の動物のように常に周囲を警戒している状態を維持していることになる」

エーリカ「もしかしたら少佐は熟睡したことがないのかもね。少なくとも501を結成したときからは」

ペリーヌ「そうなのですか?」

バルクホルン「……ありえない話ではないな」

ペリーヌ「どうしてですの?」

バルクホルン「今でこそ統合戦闘航空団は認知されているが、結成時は反発のほうが大きかった。それは知っているだろう」

ペリーヌ「え、ええ。坂本少佐は勿論、ミーナ中佐も苦労されたとか」

バルクホルン「その通りだ。ネウロイとの戦闘もそうだが、それ以上に軍上層部とのいがみ合いや隊員間でのトラブルも酷かったからな」

ペリーヌ「うぅ……反省してますわ……」

バルクホルン「ペリーヌだけではない。私自身もそうだ」

エーリカ「色々あって、あのときのミーナは1日2時間ぐらいしか寝てなかったもんねー」

バルクホルン「ああ。だが、少佐はまだミーナほど忙殺されている様子はなかったと思うが……」

エーリカ「なら、あのときはしっかり寝てたの?」

バルクホルン「分からないが、ミーナよりかは寝る時間に困ることはなかったはずだ」

ペリーヌ「まさか中佐のためを思って現在は睡眠時間を極限まで削っているのでは?」

バルクホルン「少佐ならやりかねないな」

ペリーヌ「やはり少佐は満足に眠っていないことになりますわね……」

バルクホルン「少佐はいつも当たり前のように淡々と仕事をしているだけのように見えたが……」

エーリカ「そーいえば、ネウロイでも出ない限り私たちに夜間の任務はまずまわってこないね」

バルクホルン「……」

ペリーヌ「そうですわ!! どうして疑問に思わなかったのかしら!! 夜間の基地巡回や夜間哨戒の定時報告なんて少佐の仕事ではないはず!!」

エーリカ「寝ないで仕事なんて私は絶対にできないね」

ペリーヌ「こうなったら、わたくしが無理にでも少佐のお手伝いを……!!」

バルクホルン「無理だろうな。隠してはいないにせよ、何故か少佐はそのことを口にしていない。願い出ても拒否されるに決まっている」

ペリーヌ「このままでは少佐の命に関わりますわ!!」

バルクホルン「一声かけてくれたら、いつでも代わるのだが」

エーリカ「何で1人でやっちゃうのかな?」

ペリーヌ「それは少佐がお優しいからでしょう?」

バルクホルン「優しいだけでそこまでするとは思えない」

ペリーヌ「でも、それ以外に理由なんて……」

エーリカ「まぁ、少佐のやってることだし、私たちがあーだこーだ言うのも違うんじゃない? でも、なんかお礼ぐらいはしておいたほうがいいかも」

バルクホルン「礼か……。少佐に対して目に見える形で礼をしたことは……なかったな……」

―滑走路―

美緒「訓練、終了。着実に訓練の成果が出始めているな。だが、驕らずに精進すること」

芳佳「はい。がんばります」

リーネ「ありがとうございます」

美緒「それでは今日はここまで。今日はそのまま待機していろ」

芳佳「了解」

美緒「ではな」

リーネ「坂本少佐、午後からはなにを……?」

美緒「色々だ」

芳佳「お昼寝しないんですか?」

美緒「それもある」

芳佳「よかったぁ。坂本さんもしっかり休んでくださいね」

美緒「そうさせてもらう。あとでな」

リーネ「はいっ」

芳佳「……よし。行こう、リーネちゃん」

―通路―

美緒「……」

リーネ「大丈夫かなぁ……怒られないかな……」

芳佳「それはちょっと不安だけど坂本さんがちゃんと寝ているところを見るまでは安心できないから」

リーネ「う、うん……」

美緒「……」

芳佳「ブリーフィングルームに向かってるのかな?」

リーネ「そうじゃないかな。いつもミーナ中佐と話をしているし」

美緒「……」ガチャ

芳佳「やっぱり、はいっていった。お昼寝はするって言ってたけど……」

リーネ「まさか、ブリーフィングルームでするわけないだろうし」

芳佳「ルッキーニちゃんみたいに机の上で寝る坂本さんも想像すると、可愛いかも」

リーネ「そ、そうかなぁ……」

芳佳「とりあえず、覗いてみないと」

リーネ「よ、芳佳ちゃん。慎重に……」

芳佳「うーん……」ソーッ


美緒「……の……件……」

ミーナ「ええ……私……だから……」


芳佳「何を話してるのかよく聞こえない」

リーネ「きっと隊のこととかじゃないかな? 今後の方針とか予算のこととか」

芳佳「そういうこともするんだ……。やっぱり大変なんだね……。手伝えるなら手伝いたいけど……」

リーネ「まだ知らないことのほうが多い私たちだと、かえって足手まといになっちゃうよね」

芳佳「はぁ……」


ミーナ「それでね……あのこと……だから……」

美緒「……」

ミーナ「あと……資料……軍の……あるから……」


芳佳「あれ? いつの間にかミーナ中佐ばっかり喋ってるような」

リーネ「坂本少佐……? 腕を組んだまま、目をつぶってる……。訓練のときと同じ……」

ミーナ「――以上よ。何か質問はある?」

美緒「……いや。何もない。いつもすまんな、ミーナ」

ミーナ「うふふ。これが私の仕事だもの」

美緒「そうか」


リーネ「……」

芳佳「あ、終わったみたい。坂本さん、いつお昼寝するのかな? ね、リーネちゃん?」

リーネ「うーん……だけど……」

芳佳「リーネちゃん、どうかしたの?」

リーネ「え? あ、うん……。ミーナ中佐が言ってたことが気になって」

芳佳「坂本さんをよく見ればわかるって話?」

リーネ「芳佳ちゃんの言うとおり、坂本少佐は立ったまま眠れるのかも」

芳佳「でも、ミーナ中佐の話はちゃんと聞いてたみたいだよ?」

リーネ「寝ながらでも話を聞けるとか……。ううん、立ったまま眠るだけでもすごいのに、そんなこと……」

芳佳「もう少し観察してみよう。もしかしたらこのあと寝るかもしれないし」

リーネ「そうだね」

―食堂―

ルッキーニ「ごはんー。いただきまーす」

シャーリー「ユニットの調整が上手くいかなかったなぁ」

エイラ「お、シャーリー。昼飯か」

シャーリー「一緒に食うか?」

エイラ「そうする。相変わらずエンジン弄ってたのか」

シャーリー「まぁね。上手くいかなかったけど」

エイラ「なんかあったか?」

シャーリー「ちょっと他のことが気になってて、集中できなかったんだよ」

エイラ「わかった。少佐のことだろ」

シャーリー「当たり。宮藤はああ言ってたけど、実際少佐が寝てるところって見たことないからな。ちゃんと寝てるのか疑問だよ」

エイラ「だよなー。夜間哨戒終わりにはもう訓練始めてるし」

シャーリー「しかもそれ、夜間哨戒の定時報告とか受けたあとだろ? 完全に寝てないよな」

エイラ「そこだけみればなー」

ルッキーニ「やっぱり、少佐って寝てないの?」

シャーリー「やっぱりって、何か心当たりでもあるのか?」

ルッキーニ「うーんとね。少佐は外でお昼寝してるところは見たことないし、夜も外に出てきて寝たことないもん」

エイラ「ルッキーニはずっと外にいるもんな」

ルッキーニ「うん。だから、少佐が寝てるなら絶対屋内なんだけど」

シャーリー「屋内でも寝ている様子はない」

エイラ「マジで寝てないんじゃないか、少佐」

シャーリー「私が501に来たときから少佐の生活スタイルは一緒なんだ。そんなに長い時間寝ない生活なんてできるか?」

エイラ「普通は無理だろうな」

ルッキーニ「少佐だからできるんじゃない?」

シャーリー「人間離れしてるところは確かにあるけど……流石にどうだ……」

エイラ「まぁ、どこかで倒れるよな。でも、少佐が睡眠不足とか過労で倒れた話は聞いたことないし」

シャーリー「私もないな。……少佐、そのうち死ぬんじゃないか?」

エイラ「それ宮藤も言ってた」

ルッキーニ「えぇー!? 少佐、死んじゃうのー!? やだぁー!!」

シャーリー「いや、そこまで自分を痛めつけることはないだろうけど……。心配だな……」

エイラ「なんとかできないか?」

シャーリー「なんとかっていわれてもな……」

ルッキーニ「シャーリー!! 少佐を助けてあげよぉ!!」

シャーリー「そりゃなんとかしたいけど、少佐はそのことをおくびにも出さないんだ。私たちが少佐の手伝いをしようとしても――」

バルクホルン「少佐は確実にはぐらかすだろうな」

エイラ「大尉。いつから居たんだ」

バルクホルン「食事のためにここへ来ただけだ。立ち聞きしていたわけではない」

シャーリー「お前も気になってたのか?」

バルクホルン「少佐が体調不良を訴えたことがなかったために、今まで気にも留めなかったがペリーヌに言われてな」

シャーリー「そうか。で、バルクホルンも私と同じ意見なんだろ? 何か策でもあるのか?」

バルクホルン「ペリーヌの話では宮藤とリーネが少佐がいつ寝ているのか調べているらしい。その報告を待とうと思う」

エイラ「ミーナ中佐に聞きにいってるんだろうな」

シャーリー「大尉はミーナ中佐からきいたことないの?」

バルクホルン「少佐の話はミーナからよく聞いていたつもりだったが、睡眠についてはなにも。今思えば意図的に話さないようにしていたのかもしれない」

シャーリー「中佐がバルクホルンに隠しごとしてるなら、すごい秘密でもありそうだな」

エイラ「501を揺るがすような事実があるのか」

シャーリー「士気に関わるようなことなら、少佐も中佐も話さないんじゃないか?」

バルクホルン「寝ない理由が士気に……? 想像つかないな」

シャーリー「まぁ、例えばの話だ」

バルクホルン「何しても、少佐が自身の体に鞭を打ち続けているのなら色々考えたほうがいい」

ルッキーニ「色々って?」

バルクホルン「場合によっては少佐の体を拘束してでも休んでもらう」

エイラ「実力行使か。少佐にそんなことできるやつなんているか?」

シャーリー「私はしない」

ルッキーニ「あたしもー」

エイラ「あとが怖いよな」

バルクホルン「お前たちなぁ……」

芳佳「はぁ……」

リーネ「芳佳ちゃん。とりあえず、食事にしてから次のことを……」

ルッキーニ「芳佳とリーネだ!! 少佐のこと何かわかったー!?」

芳佳「あ、ルッキーニちゃん」

リーネ「少佐はちゃんと寝てた?」

芳佳「それが……」

バルクホルン「宮藤、リーネ。丁度、お前たちのことを待っていた。少佐の睡眠時間のことを調べたらしいな」

芳佳「は、はい……調べてはみたんですけど……」

エイラ「ミーナ中佐はなんていってたんだ?」

リーネ「それがはっきりしたことは。ただ坂本少佐のことをよく見ていればちゃんと寝ているのがわかるとだけ……」

シャーリー「で、わかったのか?」

芳佳「それが、お昼寝するようなこともなくて。ミーナ中佐と二人でミーティングをしたあとは、書類整理を始めちゃうし」

バルクホルン「つまりこの時間も仕事をしているわけか」

芳佳「はい。休んでいる様子がないんです」

エイラ「まぁ、いつも通りなんだけどな」

シャーリー「今はいつも通りなのが心配になるな。少佐はいつ寝てるんだ……?」

リーネ「あの、芳佳ちゃんとも話したんですけど、坂本少佐は立ったまま寝ているんじゃないかって……思うんですけど……」

ルッキーニ「少佐ってそんなことできるの!? すごーい!!!」

芳佳「まだはっきりしたことはわからないんだけど」

バルクホルン「立ったまま寝ているだと?」

リーネ「坂本少佐は目をつぶってそのまま動かないときが割とあるような気がするんです。だから……」

シャーリー「おいおい。そんなこと……」

芳佳「しかも、寝ながら相手の話もきちんと聞いているみたいなんです!!」

エイラ「嘘だろー?」

芳佳「本当なんです!! ミーナ中佐の話をちゃんと聞いていたんですから!!」

エイラ「それは目を閉じて聞いていただけで、寝てなかったんじゃないのか?」

芳佳「その可能性もありますけど、でもそうでないと坂本さんは一睡もしていないことになるんですよ!?」

エイラ「だからって無理があるだろ」

芳佳「無理があるのはわかってます!!」

バルクホルン「ハルトマンの言っていたことが当たっていたのか……?」

シャーリー「立ったまま寝るのは百歩譲ってもいいけど、話まで聞いているのはなぁ。寝てるっていえるか?」

芳佳「言えないと思います……」

バルクホルン「……一考したほうがいいな。他の者も呼んでこよう」

ペリーヌ「宮藤さん、リーネさん。本気で言っていますの?」

芳佳「そうとしか考えられないの!!!」

ペリーヌ「立ったまま寝ているですって? ありえませんわ」

エーリカ「私の予想が的中してたわけだ」

バルクホルン「まだ明確とはいえないがな」

サーニャ「でも、そういった細かい時間で寝ていないと説明がつかないような……」

エイラ「数分の睡眠を1日に何度もしているって、すごく疲れそうだよなぁ」

シャーリー「それでバルクホルン。みんなを集めて何を考えるんだよ?」

バルクホルン「決まっている。少佐を休ませる方法だ」

ペリーヌ「簡単ですわ。少佐には休んでもらおうよに伝え、少佐の仕事をわたくしたちで分担する。それで解決ですわ」

バルクホルン「それは無理だと言ったはずだ。それに休めと言われて素直に休むような人でもない」

ペリーヌ「ですが、それ以外に方法はないでしょう?」

バルクホルン「ハルトマン、縄を持って来てくれ」

エーリカ「少佐を縛っちゃう気?」

バルクホルン「気は進まないが、もうそうするしか……」

>>44
ペリーヌ「簡単ですわ。少佐には休んでもらおうよに伝え、少佐の仕事をわたくしたちで分担する。それで解決ですわ」

ペリーヌ「簡単ですわ。少佐には休んでもらうように伝え、少佐の仕事をわたくしたちで分担する。それで解決ですわ」

シャーリー「それは最終手段にとっておかないか?」

バルクホルン「一刻の猶予もないのにか?」

エーリカ「トゥルーデ、どうどう」

バルクホルン「ハルトマン!!」

エーリカ「分かってるって。トゥルーデもちょっと前までは殆ど休まずに戦い続けてたから、余計に心配なんだよね?」

バルクホルン「そういうことでは……」

エイラ「大尉のときは分かりやすかったんだけどなー。やつれてたし」

シャーリー「あぁ。あったな。そんな時期も。妹が元気になってからは、余裕が出てきたみたいだったけど」

エーリカ「違うってー。宮藤がきてからだよ」

芳佳「え? 私ですか?」

エーリカ「そうそう。いやー、宮藤には感謝してるよー」

バルクホルン「関係のない話はしなくていい!! 今は少佐のことだろう!!!」

ペリーヌ「バルクホルン大尉は疲れが顔にも出ていましたが、少佐は全くと言っていいほど出ていませんし……。やはり疲れはないのかしら?」

芳佳「坂本さんはよくても、体には絶対によくないよ。だから、ちゃんと寝て欲しい……。でないと……いつか……」

ルッキーニ「少佐、しんじゃうの!? やだぁ!! 少佐、しなないでー!!」

シャーリー「落ち着け。そうならないようにみんなで話してるんだろ」

ルッキーニ「でもぉ……しょうさぁ……」

サーニャ「休んで欲しいって言っても、坂本少佐は大丈夫だからっていいそう」

エイラ「で、そのままいつもと同じように寝ずに訓練して、任務こなして、1日を終えるんだな」

サーニャ「1日を終えたらすぐ次の日が始まっていることになるわ」

エイラ「少佐が一度も自室に戻ってないなら、そうなるな」

エーリカ「それも調べたほうがいいかもね」

バルクホルン「今夜にも調査してみるか」

シャーリー「部屋に戻ってなかったらどうするんだ?」

バルクホルン「縛るしかない」

エーリカ「トゥルーデ、焦りすぎだって」

バルクホルン「だが、悠長に言ってはいられないぞ」

ペリーヌ「大尉、縛る役は是非ともわたくしに……!!」

リーネ「大変なことになってきちゃったね」

芳佳「うん……。私も坂本さんのためにできることを考えなきゃ」

―深夜 宿舎―

バルクホルン「もう4時か。あと1時間ほどでサーニャも帰投するはず」

バルクホルン「予定通りなら最後の定報も終えていることになるが、少佐はまだ通信室から戻ってきていないな」

シャーリー「ふわぁぁ……ねむい……」

バルクホルン「緊張感がないぞ、リベリアン」

シャーリー「なんで私が起こされないといけないんだ……」

バルクホルン「大尉だからだ」

シャーリー「ペリーヌはどうしたんだよ? あいつなら喜んでやりそうだけど」

バルクホルン「0100時頃までは粘っていたが、睡魔には勝てなかったようだ」

シャーリー「私も相当眠いんだけどな」

バルクホルン「少佐はまだ起きている」

シャーリー「少佐と比べないでくれよ。ミーナ中佐は?」

バルクホルン「0時頃、部屋に戻っている」

シャーリー「そうなのか……。ダメだ……ねむい……。ちょっと寝る……」

バルクホルン「おい。……使えないやつだ。やはり宮藤を誘うべきだったか」

―早朝―

シャーリー「すぅ……すぅ……」

バルクホルン「う……しょう……さ……」

ペリーヌ「この二人が肩を寄せ合って寝ているなんて……」

エイラ「珍しいな。写真とりてぇ」

芳佳「何があったんだろう?」

リーネ「この位置だと、坂本少佐の帰りを待ってたんじゃないかな?」

芳佳「坂本さんなら5時ぐらいに外で素振りしてたけど」

リーネ「バルクホルンさんたちが寝ちゃってるのは坂本少佐がいつまでたっても戻ってこなかったからじゃないかな?」

エイラ「サーニャの話では、少佐はいつも通り最後まで通信室にいたってさ」

芳佳「坂本さん、部屋にも戻ってないなんて……」

エイラ「とりあえず少佐がまともに寝ていないっていうのはよーくわかったな」

芳佳「……」

ペリーヌ「ところで寝ている二人はどうします?」

エイラ「このままでいいんじゃないか? まだ起床時間でもないし」

―ブリーフィングルーム―

ミーナ「はい。みなさん、おはようございます」

バルクホルン「最悪の目覚めだ」

シャーリー「お前が勝手に寝るからだろ」

エーリカ「シャーリーはともかく、なんでトゥルーデまで仲良く寝てたの?」

バルクホルン「少佐が5時になっても戻ってこず、流石の私も限界がきてシャーリーに見張りを交代してもらおうと思ったんだ。だが、こいつは起きなかった」

シャーリー「起こし方が悪かったんじゃないか?」

バルクホルン「何を言う。私は何度もお前の体をゆすった。だが、寝言を言うばかりで目覚める気配すらなかった。そのうち私の意識が途切れたんだ。お前の所為だ」

シャーリー「なんでだよ!!」

ミーナ「大尉の二人が騒がしいですね。何かあるなら挙手でお願いします」

バルクホルン「い、いや……なんでもない……」

シャーリー「すみません。バルクホルン大尉がしつこくて」

バルクホルン「貴様!! 私に責任を押し付けるつもりか!?」

シャーリー「だってそうだろ?」

ミーナ「静かにしなさい」

美緒「……」

芳佳「坂本さん、ずっと目を閉じてるね」

リーネ「うん……」

エイラ「あれが寝てる姿ってわけか」

ペリーヌ「よく見る少佐の立ち姿ではありますけど」

ルッキーニ「なんかもう寝てるようにしか見えないけど……」

ミーナ「坂本少佐から何かありますか?」

美緒「……いや、何もない」

ルッキーニ「あ、起きてた」

エイラ「まぁ、どっちにしても殆ど寝てないのは分かってるんだ。なんかしないとな。私は少佐に倒れてほしくなんてないからな」

芳佳「それはきっとみんなが思っていることですよ」

エイラ「それもそうか」

芳佳「今日からは坂本さんにぐっすり寝てもらわなきゃ」

リーネ「でも、どうしたら寝てくれるのかなぁ……」

芳佳「……私、坂本さんが熟睡してくれる方法を昨日の夜一生懸命考えたの。リーネちゃん、ペリーヌさん、ルッキーニちゃん、エイラさん。力を貸してっ」

―通路―

ミーナ「それでね、私としては……」

美緒「……」

ルッキーニ「しょーさっ」

美緒「……どうした?」

ルッキーニ「いま、暇?」

美緒「見れば分かるだろう」

ミーナ「ごめんなさい、ルッキーニさん。今から坂本少佐と話すことがあるから」

ルッキーニ「ちょっとだけ時間ちょーだい」

美緒「何故だ?」

ルッキーニ「お願い!! ちょっと、ほんのちょっとでいいからぁ!!」

美緒「あのな、ルッキーニ」

ミーナ「んー……。仕方ないわね。少しだけよ?」

美緒「ミーナ。何を言っていて――」

ルッキーニ「にゃはっ! ありがとー!! ほら、こっちにきてー!!」グイッ

―滑走路―

ルッキーニ「はぁー。ポカポカしてサイコー」

美緒「ルッキーニ。なんのつもりだ?」

ルッキーニ「気持ちいいでしょ?」

美緒「そうだな」

ルッキーニ「あたし、ここにいるだけで眠くなるんだー」

美緒「確かに。今日のような天気だと瞼が重くなりそうだ」

ルッキーニ「でっしょー?」

美緒「ああ」

ルッキーニ「ちょっとここに寝てみない?」

美緒「遠慮する」

ルッキーニ「えー? なんでぇー?」

美緒「寝る時間ではないからだ」

ルッキーニ「ちょっとぐらいはいいじゃん? ね? ね? 寝るのが嫌なら座るだけでもぉ」

美緒「……座るだけだぞ?」

ルッキーニ「うにゃぁぁ……」

美緒「日の光が温かい……」

ルッキーニ「だよねー」

美緒「……」

ルッキーニ「にひぃ……。少佐っ」

美緒「……なんだ?」

ルッキーニ「あれ? まだ起きてる」

美緒「寝るわけないだろう」

ルッキーニ「ぶぅー。普通な眠くなるのにぃ」

美緒「はっはっはっは。鍛え方が違うからな」

ルッキーニ「そんなに違うの?」

美緒「お前も鍛錬を積んでいけば私のようになれる。だが、ルッキーニにはルッキーニの良さがある。それを殺してまで研鑚を積んで欲しいとも思わない」

美緒「私とは、いや他の誰とも違う1人の優秀なウィッチとしてルッキーニはこれからも……」

ルッキーニ「すぅ……すぅ……」

美緒「……ふむ」

芳佳「ルッキーニちゃん、どうなったかな」

リーネ「一緒に寝るって言ってたけど……」

エイラ「あそこにルッキーニはいるな」

芳佳「本当だ。でも、坂本さんがいないような……」

リーネ「ルッキーニちゃん。ルッキーニちゃん」

ルッキーニ「うにゃあ……」

エイラ「ダメだな。完全に寝てる。少佐はどうしたんだよぉ」

リーネ「あの、ルッキーニちゃんにかけられる軍服って坂本少佐のですよね?」

エイラ「みたいだな」

芳佳「坂本さん、ルッキーニちゃんに服をかけてどこに……」

美緒「何をしている?」

芳佳「さ、坂本さん!?」

リーネ「いえ、ルッキーニちゃんがここで寝ているので、心配になって……」

美緒「そうか。心配はいらんぞ。この陽気に負けて眠っているだけだからな。それよりタオルケットを持ってきた。ルッキーニにかけてやってくれ」

芳佳「わかりましたっ」

ルッキーニ「すぅ……すぅ……」

美緒「これでいいな。30分ほどで起こしてやってくれ。いつまでもここで寝ているとバルクホルンが怒るだろうからな」

芳佳「坂本さん、あの……」

美緒「なんだ?」

芳佳「ルッキーニちゃんと一緒に寝てみてもいいんじゃないですか?」

美緒「そうしたいが私にも任務があるからな。またの機会にする。ではな」

芳佳「あ……」

エイラ「またの機会っていつになるんだ」

リーネ「そうですね……」

エイラ「こらぁ、ルッキーニ。お前が寝てちゃ意味ないだろ」

ルッキーニ「すぅ……すぅ……」

リーネ「あの、ルッキーニちゃんは私が見てますから、エイラさんと芳佳ちゃんはペリーヌさんのところに」

芳佳「そうだね!! エイラさん、行きましょう!!」

エイラ「あいつ、準備するとか言ってたけど、何するんだろうな」

芳佳「まずは部屋の片付けをするって言ってましたよね」

―通路―

美緒「早くミーナのところへ……」

ペリーヌ「さ、ささ、坂本少佐!!!」

美緒「何か用か?」

ペリーヌ「あ、あの……ちょっと……その……あのですね……」

美緒「どうした?」

ペリーヌ「わ、わた……わたくしの……部屋にですね……その……」

美緒「部屋になにかあるのか?」

ペリーヌ「その……み、宮藤さんの……提案で……」

美緒「はっきり言え」

ペリーヌ「少佐に安らぎを!!!」

美緒「何を言っている?」

ペリーヌ「とにかく!! わ、わたくしの部屋に……!!! き、きてください!!」

美緒「……」

ペリーヌ「わたくしの……部屋で……きゅ、きゅうけいを……なさって……それでわたくしが添い寝を……なんて……」

芳佳「ペリーヌさん、大丈夫かなぁ」

エイラ「宮藤の作戦通りにしてるなら問題ないと思うけどな」

芳佳「そうだといいんですけど、でもどうして部屋の片づけをする必要があるんでしょうか?」

エイラ「なんか見られたらマズいもんでもあるんじゃないか?」

芳佳「一体どんなものが……」

ペリーヌ「ふぅ……」

エイラ「お、ペリーヌ。なにしてんだ?」

ペリーヌ「エイラさん……宮藤さん……」

芳佳「坂本さんはどうしたの?」

ペリーヌ「……」

エイラ「宮藤、ダメだったみたいだぞ。どーする?」

芳佳「えぇ!? ペリーヌさん、どうして!? ペリーヌさんなら花とか詳しいからいけると思ったのに!」

ペリーヌ「ふっ……。安眠できる花の香りを感じてもらう以前に、誘うことができませんでした……」

芳佳「あ……その……」

エイラ「論外だな」

ペリーヌ「ええ!! そうよ!! 緊張して何も伝えることができませんでしたわ!!! さぁ、笑いなさい!!!」

芳佳「ペリーヌさん、落ち着いてくださいよぉ」

エイラ「ルッキーニもダメだったし、次は私がいくしかないか」

芳佳「エイラさん。お願いできますか?」

エイラ「任せておけって。どっかのツンツン眼鏡みたいなヘマはしないからな」

芳佳「がんばってください」

エイラ「宮藤の提案通りにやるんだ。失敗したら宮藤の所為だかんな」

芳佳「えぇー!? そうなっちゃうんですか!?」

エイラ「あたりまえだろ」

芳佳「……分かりました。失敗したときは、私を罵ってください!」

エイラ「そうさせてもらう。ま、そんなことにはならないと思うけどな。なんていっても私がやるんだから」

芳佳「はいっ! お願いします!」

ペリーヌ「どうせわたくしは役立たずですわよ」

芳佳「そんなこと言ってませんよぉ」

ペリーヌ「いいんですっ。放っておいてっ」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom