男「行商人」(6)
私はしがない行商人。
重い行李を背中に背負って、
村から村へと売り歩く。
男「よってらっしゃい見てらっしゃい。 更紗もあれば錦もあるよ!」
男「ああいっぱいだ、いっぱいだ。 私の行李にゃなんでもあるよ!」
声を上げれば皆人来たりて次から次へと売れてゆく。
ふと見上ぐれば、一人の娘、黒い瞳の村娘。
売れに売れてもなお余りある、行李の荷物は辛くはないが
ああ今だけは労ってくれ、この勇ましき男の肩を。
ああ今だけは労ってくれ、黒い瞳の愛しき人よ。
娘「ねえその箱の中身はなあに?」
若い男に娘は言った。
男「ここに入るは秘蔵の品々、高く茂ったライ麦畑で夜になるまでお待ちしましょう。」
男「そしうて今宵に黒い瞳を見つけたならば、箱の中身をお見せしましょう。」
さて日は落ちて、霧の立ちたる夜が来たりぬ。
血気盛んな若者は待つ、彼の愛しき娘が来るのを。
娘「さあ来ましたわ、行商人さん。 箱の中身をお見せくださる?」
カーチャと名乗る娘は言った。
値段を少し負けてと言った。
用心深く値段を決める。
男「私もこれを高く買ったんだ、そんなに負けてと言わんでおくれ。」
男は娘と口付け交わし、値段を少し上げてと頼む。
男「さあ可愛い人、こちらに御出、その紅の唇寄せて、私のそばに座っておくれ。」
そうしてこうして若い二人がどうして値段をきめ終えたのか、
それを知るのはただ一つだけ。深い夜のみそれを知りたる。
夜風に吹かれ、背高く伸びた、ライ麦畑がゆらゆら揺れる。
私は彼女にたくさんあげた。
赤いリボンに更紗を一巻き、真白いシャツを留めるベルトときれいな指輪はトルコ石。
愛しい娘は指輪を除いて、総て仕舞った。総て仕舞った行李の中に。
娘「ごめんなさいね、お洒落はしないの、私には親しい人がいないから!」
ああいっぱいだ、いっぱいだ。
私の行李にゃなんでもあるよ。
更紗もあれば錦もあるよ。
ああ労ってくれ、私の肩を。
ああ今だけは労ってくれ、黒い瞳の愛しき人よ。
Конец.
おしまい。
深夜のテンションで書いたから気持ち悪い文章だとおもうw
後悔はしていない。
元ネタはロシア民謡の「コロベイニキ」の歌詞。
良かったら聴いてみてね。
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