女神「それとも銀の斧ですか?」
男「お弁当です」
女神「もしかして・・・あれかな?胴の斧とかいっちゃう?」
男「お弁当」
女神「・・・・・・」
男「・・・・・・」
男「食べたんですね?」
女神「いや・・・」
男「お弁当は?」
女神「そんなものおちてきませんでしたよ」
男「口の周りに食べカスがついてますよ」
女神「・・・!!」ゴシゴシ
男「嘘ですよ」
女神「・・・」
男「・・・食べたんですよね?」
女神「・・・」
男「ちなみに、何が美味しかったですか?」
女神「からあげです」
男「卵焼きはどうでしたか」
女神「最高です。甘くてフワフワしておいしかったです」
男「そうですか」
女神「はい!」
女神「タコの赤いウィンナーのアレもおいしかったです」
男「いや、僕はお腹が空いてるんですけどね」
女神「・・・」
男「まぁ、どうせ湖に落とした時点で諦めてましたけどね」
女神「すいません」
男「いいですよ。今日は昼飯抜きということで」
男「僕は薪取りの仕事に戻りますから」
女神「あ・・・あの・・・」
男「はい」
女神「あなたは、毎日この森で仕事をしているんですよね」
男「そうですね」
女神「また明日もきますか?」
男「はい、おそらく」
女神「・・・」
男「・・・」
女神「お弁当、すごくおいしかったです」
男「はい」
女神「本当においしかったです」
女神「この湖の精霊になってから、人間の食べ物なんて食べてきませんでしたから」
男「・・・」
女神「・・・」
男「・・・食べたいんですか?」
女神「・・・」
男「お弁当が」
女神 モジモジ...
男(・・・)
男「貧乏な僕にとっては、貴重な一食なんです」
女神「はい・・・」
男
男「・・・まぁ、また手をすべらせてしまうかもしれませんけどね」
女神「ほんとですか!」
男「さぁ・・・」
女神「・・・」
男「じゃあ、僕は仕事があるので、これで」
女神「はい。それではさようなら。人間よ・・・」ブクブク
男(沈んでった・・・)
木こりの男は、薪割りをして家に帰りました。
女神「申し訳ありません…」シュン…
男「本当にそう思ってるの?」
女神「はい…とても悪いことをしてしまったと…」シクシク
男「じゃあさ、わかってるよね?」
女神「うぅ…わたしを…わたしを……」プルプル
男「私を?」
男神「わたしを、わたしをたべてくださいっ!!」
翌日
男 キョロキョロ
男 ミ□ ポチャン
男(・・・)
数十分後
ズゴゴゴゴ
女神「貴方が落としたのは、金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」ビチャビチャ
男「お弁当です」
男「また食べてましたよね」
女神「・・・」
男「すぐ出て来ないのは食べてたからですよね。ちょっと一服くらいの間をとってますよね」
女神「はい」
男「どうでしたか」
女神「すごく・・・おいしいです」
女神「お肉の入ったおにぎり・・・よかった・・・ポテトサラダも最高でした!」
男「そうですか」
女神「あ・・・」
女神「ごめんなさい・・・貴方のごはんを」
男「いや・・・今日は、予備のお弁当を持ってきてるんです」
男「力仕事ですから、すぐにお腹が減りますから」
女神「そうなんですか!」
男「一食失った事には変わりありませんけどね」
女神「・・・」
男「・・・」
男「じゃあ・・・とりあえず僕は仕事に」
女神「それではさようなら・・・人間よ・・・」ブクブク
女神「ぶくぶく・・・」
男「・・・」
男 スタスタ
それから男は、毎日お弁当を湖におっことしつづけました。
ズゴゴゴゴ
女神「あなたが落としたのは
男「お弁当です」
女神「はい。一口カツと、シューマイが絶品でした」
男「もはや悪びれる様子も皆無になりましたね」
女神「すいません・・・」
男「いえ、落とした僕が悪いんですけどね」
女神「ですよね!」
男「まぁ、十分気をつければ絶対に落としませんけどね」
女神「すいません」
女神「あ、あの」
男「はい」
女神「このあいだの、カレー味の肉団子、美味しかったです」
男「そうですか」
女神「はい」
男「・・・」
女神「・・・」
男「・・・まぁ、またお弁当に入ってるかもしれません」
女神「やったー!」
女神「あ・・・」
男「?」
女神「美味しいお弁当ですが・・・もしかしてお嫁さんとかが、つくってるんですか?」
男「ああ」
男「いえ、独り身ですから。自分でつくってますよ」
女神「・・・そうなんですか!料理うまいですね!」
男「ありがとうございます」
女神「すごいです、男さん・・・!いや人間よ・・・」
男「神っぽい威厳はとうに失われていますからそういうのいいですよ」
男「そういえば以前、この湖の精霊になったといってましたが」
女神「はい」
男「もとは、精霊じゃなかったんですか?」
女神「はい、もとは人間でした」
男「そうなんですか。どうして、精霊に?」
女神「・・・身投げ、したんです。この湖に」
男「!」
女神「人間の頃の悲恋を嘆いて・・・この湖に命を落としました」
男「・・・」
女神「そのままなら彷徨える魂になるはずでしたが」
女神「私の心が清らかな事を他の神に買われて、この湖の守り神にしてもらったのです」
男「自分で清らかとかいっちゃいますか」
女神「メガ純粋ですよ!」
男「そうですか」
女神「・・・」
女神「男さんは・・・人間の頃に愛していた男性に、似ている様な気がします」
男「そうですか」
女神「・・・でも、身投げの事はもう別にいいんです」
女神「そういう俗世とは切り離された神聖な存在に昇華しましたから!」
男「食欲に関しては俗心を捨て切れていないようですが」
女神「・・・」
男「・・・」
男「・・・また、明日来ます。じゃあ、これで」
女神「おお、人間よ、人間よ・・・」ブクブク
男
それから男は、毎日お弁当を湖におとしました。
来る日も来る日も、おいしいお弁当を。
男と女神は、いつも顔を合わせました。
そしてわりかし淡白な会話をしたあと、
男は森へ。
女神は湖へかえってゆくのでした。
数日後
ズゴゴゴゴ
女神「貴方が落としたのは、お弁当ですね・・・」
男「はい」
女神「あ・・・あれはなんですか!なにかトロッとしたの!」
男「多分かにクリームコロッケだと思います」
女神「ああ、もう幸せです。最高の美味しさです!」
男「よかったですね」
女神「はい・・・良い、良いです」
女神「おお・・・人間よ・・・私は明日が楽しみです・・・」
男「だからそういうのいいですよ」
女神「そういえば、木こりの仕事はどうですか?調子は」
男「まったく稼げませんね」
女神「そうですか・・・」
男「なので、木こりの仕事はやめることにしました」
女神
女神「え」
女神「や、やめる・・・?」
男「はい」
女神「・・・そ、そうなると、この森にくることは・・・」
男「・・・」
女神「・・・」
女神「や、やめてどうするんですか・・・」
女神「最近は再就職とか厳しいし・・・そう簡単に仕事変えるとか溜めた方がいいのでは・・・」
男「そういう現実的な話はちょっとSSにはやめたほうが」
女神「・・・・・・」
女神「そう、なんですか・・・」
男「はい」
女神「・・・」
男
女神「・・・これから、何をするつもりなんですか」
男「はい。料理屋をやろうかと」
女神「料理屋・・・?」
男「昔から、木こりは向いてないと思っていました。華奢だし」
男「家業をついでみたものの、どうもしっくりきませんでした」
男「それより好きな事がありました」
女神「それが・・・料理・・・」
男「はい」
男「でも、村や町では料理なんて女のする仕事・・・と割り切られています」
男「いくらか自信もありませんでしたけが」
男「でもある日、僕のつくったものを美味しいといってくれる人が現れて」
男「いや、人じゃなかったかな」
女神
男「あなたに、おいしいといってもらえて、自信がつきました」
男「自分を信じて、料理人になろうと思います」
女神「・・・そうですか」
男「・・・」
女神「・・・」
男「ところで・・・店を出す場所なんですが」
男「この湖畔の、すぐそばにしようかと」
女神
女神「えっ」
男「他の人に湖に女神が出ると言ってみたものの、誰も信用しませんでしたが」
男「女神の出る湖の店、なんて集客効果抜群だと思うんです」
女神「え。えっ人間よ、人間よ・・・」
男「どう思います?」
女神
女神「・・・――――――いいと思います!!」
男「・・・そう、ですかね」
男「なので、今日はこの辺りにお店をつくるために」
男「木こりとしての、最後の木材取りの仕事に来ました」
女神「そう、そうなんですか!」
男「ええ」
女神「・・・おおお、人間よよ!!」ポロポロ
男「ははは・・・」
女神は泣きました。涙の粒が湖に落ちて、またそれが湖の一部となりました。
それから森に、一つのお店が出来ました。
お客が窓から料理をひとつ落とすと、女神が現れるという事で。
女神の湖の店は、大繁盛しました。
お客は奇跡を目の当たりして、なおかつ素晴らしい料理に舌鼓をうって、満足してかえっていきます。
そして、おいしい料理を食べ続けた女神は、少しばかりふくよかになりましたが。
それでも湖と、その店の守り神として。
人々と、そして店の主人に深く愛され続ける事になりました。
ズゴゴゴゴゴ
女神「おお、人間よ人間よ・・・」
男「やぁ。今日の料理は?」
女神「――――――最高です!!」
めでたし
てきとうすぎてごめんなさい
しょうどうにかられてやってしまいました
おわりです
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