美希「抱き枕ジャンキー」 (27)


美希「……ん」パチリ

伊織「んん……」

美希「あれ、でこちゃん」

伊織「……あつっ」

美希「なんでミキに抱きつかれてるの?」


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伊織「こっちの台詞よ、暑いから離して」

美希「えー」ギュー

伊織「えー、じゃない。そもそも、アンタが私のベッドに入り込んでくるのが悪いわ」

美希「ミキ、そんなことした覚えないよ?」

伊織「でも、事実同じベッドじゃないの」


美希「でこちゃんがミキのベッドに入ってきたんでしょ?」

伊織「違うわよ」ペシッ

美希「あたっ」

伊織「ほら、サイドテーブルが右側にあるでしょ」

美希「ほんとうなの……」


伊織「……ったく、せっかくの地方営業なのに」

美希「え?」

伊織「普段ホテルに泊まらないから、なかなかこういうベッドで寝ないのよ」

美希「でこちゃんのお家、このホテルより数倍豪華だと思うけどな。ミキ」

伊織「そう……かもしれないけど、ワクワク感が違うじゃない」


美希「そういえばでこちゃん、はしゃいでたね」

伊織「べ、別にそんなことは無いけど」

美希「ううん、はしゃいでたの。あからさまにユニットバス見に行ったりとか」

伊織「……め、珍しいもの」

美希「まあ、そうなの。ミキもワクワクしてたし」


伊織「へぇー。アンタ、寝床さえしっかりしてれば他は見ないんだと思ってたわ」

美希「ミキは寝る機械じゃないよ!」

伊織「知ってるわよ」

美希「それに、でこちゃんと二人部屋なんてなかなか無いでしょ?」

伊織「……そういえば、そうね」


美希「同い年なのに、あんまり一緒のお仕事とかも無いし」

伊織「少ないわよね」

美希「だから、ワクワクしてたかな」

伊織「……なるほど、ね」

美希「そういうことなの」


伊織「アンタの気持ちは分かったわ、ありがと」ポンポン

美希「えへへ」

伊織「でもね、美希」

美希「ん、なあに?」

伊織「ずっと抱きしめられてると、そろそろ暑くなってくるのよ」


美希「で、でも離したくないの……」ギュッ

伊織「アンタは暑くならないわけ?」

美希「暑いけど、ミキ抱き枕が無いと寝られないんだ」

伊織「ああ、いつものおにぎり抱き枕? 持ってきてないのね」

美希「事務所のソファに忘れてきちゃった」


伊織「それで無意識のうちに、私のベッドに潜り込んで」

美希「……でこちゃんを抱き枕にしました」

伊織「抱き枕ぐらい無くても眠れるでしょう? ほら、どいたどいた」

美希「無理なの」ギュウ

伊織「でも」


美希「……っ」

伊織「……今日だけだからね」

美希「ありがと、でこちゃん」

伊織「全く、今度からはちゃんと持って来なさいよ」

美希「うん」


伊織「……こうしてると、やよいに起こされた日を思い出すわ」

美希「やよいに?」

伊織「ええ。やよいを家に泊めた時、一人だと怖くて眠れないって泣きつかれちゃって」

美希「あはは、やよいらしいね」

伊織「結局、一緒のベッドで寝たわ」


美希「でこちゃん、困ってる人をほっとけないよね」

伊織「あら、そう?」

美希「うん。例えばやよいだったり、今日のミキみたいな」

伊織「目の前で泣きそうな友達がいたら、なんとかして笑わせたくなるのよ」

美希「カッコイイって思うな、そういうの」


伊織「別に、普通じゃない?」

美希「そう?」

伊織「そうよ」

美希「……そっか」

伊織「ええ」


美希「そういえばね、でこちゃん」

伊織「ん、何よ」

美希「ミキ、一回違う抱き枕で寝ると、もうそれでしか眠れなくなっちゃうの」

伊織「……」

美希「困っちゃうな、もうでこちゃんを抱きしめないと寝られないって思うな」


伊織「アンタ、本当に眠いの?」

美希「うん、ねむいよ」

伊織「その割には、とんちみたいなことを言うわね」

美希「だって困ってるんだもん」

伊織「……家には行かないわよ、一緒にいる時だけ。それで良い?」

美希「うん。ありがとーなの、でこちゃん」


伊織「私、つくづく甘いと思うわ」

美希「優しいのがでこちゃんの魅力なの」

伊織「魅力?」

美希「そうそう」

伊織「……ま、褒められると悪い気はしないわ。ほら、とっとと寝なさい。美希」

美希「えへへ、おやすみなさいなの」ギュ

百合失礼。ありがとうございました。
みきいおわっほい!

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