P「美希、土瓶蒸し食べるか?」 (45)

美希「どびんむし? 食べるの!」

P「じゃあ、はい」コトッ

美希「わーい」

P「熱いから火傷しないようにな」

美希「…………」

P「ん? どうした、美希?」

美希「……これ、どうやって食べたらいいの?」

P「ああ、やっぱ知らなかったか」

P「そうだな、とりあえず土瓶の蓋を取ってごらん」

美希「はいなの」パカッ

P「中に入ってる具が見えるか?」

美希「うん。なんか色々入ってるの。えーっと、えびにきのこに……ぎんなんかな?」

P「そうだ。正確には、松茸、白身魚、えび、鶏肉、みつば、ぎんなんだな」

美希「ま、松茸!? 松茸が入ってるの?」

P「ああ。土瓶蒸しは松茸が定番なんだ」

美希「す、すごいことになってしまったの……ミキは今史上かつてない運命の岐路に立たされているの」

P「んな大袈裟な」

美希「えっと、それでどうしたらいいの? とりあえずこの具達を食べたらいいの? っていうか、そもそも具は食べてもいいの?」

P「ああ、もちろん具も食べていいぞ。だがまずはこのままの状態で汁を飲んでみてくれ」

美希「お汁を?」

P「ああ。この沢山の具が出汁となって、すごくコクのある旨味が出てるからな」

美希「確かに……この香りだけでも美味しさが伝わってくるの」

P「じゃあ早速飲んでみるか。これに注いでな」スッ

美希「あっ、おちょこなの!」

P「熱いから気を付けろよ」

美希「はいなの」

P「こぼさないように注いで、っと……」トクトク

美希「ミキ、おちょこで何か飲むのって初めてなの」トクトク

P「はは、まあ美希の年ならそうかもな」

美希「むぅ……またそうやって、ハニーはミキのことを子ども扱いするの」

P「そうすねるなって。美希もすぐにおちょこの似合う年になるよ」

美希「それはそれでフクザツな気分なの」

P「我が儘だな……よし、注いだか?」

美希「うん」

P「それでは手を合わせて……頂きます」

美希「いただきますなの」

P「ん……」コクコク

美希「んっ……」コクコク

P「……ふぅ。ウマい」

美希「……めっ……」

P「めっ?」

美希「……めっちゃくちゃ、美味しいの!」

P「はは、そうだろ?」

美希「ミキ、こんなに美味しいお吸い物って初めて飲んだの! もっと飲もう」トクトク

P「この凝縮された旨味がたまらないんだよなあ」トクトク

美希「それに、身体もすっごくポカポカしてくるの! 最近寒くなってきてたからちょうどいいの!」

P「体の芯に染み渡るよなあ」

美希「んっ……んっ……はふぅ……最高なの……」

P「それは何より。あ、ちなみにすだちを絞って入れても美味しいぞ」

美希「すだち? 入れてみるの!」

P「はい」スッ

美希「わーい」

P「入れ過ぎると風味を損なうから、二、三滴な」

美希「はいなの」キュッ

P「俺も入れよう」

美希「はい、ハニー」スッ

P「おう、サンキュー」キュッ

美希「では早速、すだち入りのお汁を……んっ……」コクコク

P「ん……」コクコク

美希「……はふぅ……」

P「どうだ? 美希」

美希「うん。これはこれで、ほどよい柑橘系の香りが濃厚なお汁にマッチしてて、すごくすっごく美味しいの!」

P「はは、それは良かった。さ、そろそろ具の方も食べていくか」

美希「もう食べちゃっていいの?」

P「ああ、もう十分出汁は出てるからな。あとは具を食べつつ、汁を飲みつつしていけばいい」

美希「わかったの」

美希「じゃあ早速、松茸からいっちゃうの」

P「いきなりメインからか。流石美希」

美希「えへへ……ミキは美味しいものから先にいっちゃう派なの。あーん、っと……」パクッ

P「どうだ?」

美希「ん~っ……松茸の香りがお口の中いっぱいに拡がっていくの……」モグモグ

P「はは、美希、すっごく締まりのない顔になってるぞ」

美希「今はそんなことどうでもいいの~。う~ん……しあわせ~」モグモグ

P「はは、そこまで喜んでもらえて何よりだよ」

美希「あふぅ……ミキ的には、もう死んでもいいってカンジなの」

P「こらこら。縁起でもないこと言うんじゃありません」

美希「だってぇ……あ、でもまだ他の具もあるの。せめてこの具達を全部胃の中に収めるまでは死ねないの」

P「だから死ぬなって」

美希「じゃあ次は……えびちゃんにするの。あーん」パクッ

P「えびはどうだ? 美希」

美希「ん~っ。すっごくプリプリしてるの! ミキ、生まれ変わったらえびちゃんになってもいいな」

P「だからなんでそんなすぐ現世を去ろうとするんだ」

美希「ぎんなんも甘くておいしいの」モグモグ

P「みつばとの相性も良いしな」

美希「そしてまた、ここらあたりでお汁を飲むの……」コクコク

P「汁も結構あるからな」

美希「はふぅ……美味しすぎるの……これならいくらでも飲めちゃうの」

P「ああ。飲めば飲むほど、舌がさらなる旨味を求めるって感じだな」

美希「飲んでよし、食べてよしの至高の一品なの……はふぅ」

美希「あふぅ……あんなにあったお汁も、遂に全部飲んでしまったの」

P「具も全部食べたしな。よく食べました」ナデナデ

美希「えへへ……ごちそうさまでしたなの」

P「……で、どうだった? 美希。初めて土瓶蒸しを食べた感想は」

美希「……もう何度も言ったけど……最高! ってカンジなの!」

P「はは、そうか。それはよかった」

美希「うん。ミキね、こんなにも旨味が効いたお吸い物があったなんて、今まで知らなかったの」

P「ああ。一見バラバラな感じに見える具が、一緒に蒸されることで素晴らしい旨味を生み出しているんだな」

美希「……ねぇ、ハニー」

P「ん?」

美希「……土瓶蒸しって、なんかミキ達みたいだね」

P「え? どういうことだ?」

美希「だってね、一見バラバラに見えるミキや他の皆が一緒にいることで……『765プロ』としての旨味が出てきてるって思わない?」

P「あー、それは……そうかもしれないな」

美希「でしょ?」

P「ああ。美希に春香、千早に貴音、真に雪歩、響にやよい、伊織にあずささん、そして亜美と真美……」

美希「それに律子……さんと小鳥、社長……そして……」

P「……ん?」

美希「ハニーという最高の具があって……『765プロ』っていう土瓶蒸しになるの!」

P「おいおい……俺はそんなたいしたもんじゃないだろ」

美希「そんなことないの! ハニーがいなかったら765プロの旨味は半減、どころか90%減なの!」

P「ははは……まあ、そこまで言ってもらえるのは嬉しいけど……でも、やっぱりうちの事務所はミキ達アイドルあってのもんだからな。土瓶蒸しで言うと、アイドルの皆は松茸やえび、俺や社長はぎんなんやみつばってとこだ」

美希「……何気に社長まで自分と同格にしちゃうあたりが流石だね、ハニー」

P「あっ! い、いや、今のは言葉のあやっていうか……しゃ、社長には内緒だぞ?」

美希「あはは。わかってるの」

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