やよい「扉の先の異次元で」 (42)
P「やよい!聞いてくれ!」
やよい「どうしたんですかプロデューサー?」
P「映画だぞ!映画の主演が決まったんだ!」
やよい「私に、ですか?」
P「もちろんだ!」
やよい「あ、ありがとうございます!」
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やよい「それで…どんな映画なんですか?」
P「うーんと…この小説知ってるか?」
やよい「あ、知ってます!伊織ちゃんも面白いって言ってました!」
P「これが映画になるんだよ。とりあえず読んでおいてくれ」
やよい「はい!」
やよい「うーん…」
伊織「あら、やよいもそれ読み始めたのね?」
やよい「うん…。今度これが映画になって、その主役に私が選ばれたから読んでおけってプロデューサーが…」
伊織「よかったじゃない!おめでとう、やよい!」
やよい「えへへ、ありがとう!でも漢字が難しくて…」
伊織「私が教えてあげるわ」
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やよい「もうこんなに読み終わっちゃったね!ありがとう伊織ちゃん!」
伊織「別にいいのよ。その量だと今日中に読み終われそうね」
やよい「うん!家に帰ったら続き読むね!」
伊織「勢いでどんどん読み進めちゃったけど内容とかちゃんと覚えられてるの?」
やよい「大丈夫!すっごく共感できたから覚えられるよ!」
伊織「確かに。主人公はやよいに似てるかもね」
やよい「そうかなぁ?」
伊織「似てるわよ。頑張り屋なところとか」
やよい「うーん…」
伊織「そこまで疑うなら会いに行ってみましょう」
やよい「へ?誰に?」
伊織「主人公にモデルがいるらしいの」
やよい「そうなんだぁ!会ってみたいなぁ」
P「はい、はい、では明日の午後3時ですね。はい、ありがとうございます」
ガチャン
P「やよい!アポ取れたぞ」
やよい「本当ですか!?」
伊織「私に感謝しなさいよね!モデルのお店を突き止めたんだから!」
やよい「ありがとう伊織ちゃん!」
P「それじゃ明日の12時に事務所出発するからそれまでに来るんだぞー」
――――――
――――――
――――――
シャロ「アイドルの人が私に会いに来るの!?」
千夜「昨日ウチに電話があって、今日いらっしゃるんですって」
シャロ「昨日の内に言っておきなさいよ!」
千夜「驚かそうと思ったの」
シャロ「確かに驚いたけど…。ってそうじゃないでしょ!もう!」
――――――
――――――
――――――
P「よし、そろそろ出発するか」
やよい「はい!楽しみですねー!」
P「なんで伊織も来るんだ?」
やよい「伊織ちゃんもこの本大好きだから、モデルの人に会うのが楽しみなんですよー!」
伊織「わ、和菓子が食べたいだけよ!」
キッ
P「着いたな。ここが甘兎庵か」
伊織「結構大きいお店ね」
やよい「あの字“いおり”って読むんですよね!」
伊織「まあお店の大きさで味が分かる訳じゃないし…早く入ってみましょう」
P「伊織…イキイキしてるな」
やよい「きっとモデルの人も和菓子も楽しみなんですよ」
ガチャ
千夜「いらっしゃいませ?!」
P「こんにちは。昨日連絡させていただいた765プロのPと申しますが…」
千夜「あ、そうでしたか?。まず席にご案内しますね」
P「どうも」
千夜「こちらの席にどうぞ?」
千夜「シャロちゃーん!アイドルの方たちがお見えになってるわよー!」
シャロ「ちょっと待ってよ!まだ準備が…」
千夜「あんまり待たせちゃダメよー」
シャロ「千夜のせいでしょ!」
千夜「ごめんなさい…。もう少し遅れるみたいです」
伊織「それはいいわ…それよりこのメニューがさっぱり分からないんだけど…」
P「おすすめは?」
千夜「こちらの『兵どもが夢の跡』です」
伊織「じゃあそれを1つお願い」
やよい「私は『花の都三つ子の宝石』でお願いします!」
P「じゃ、俺は団子」
千夜「『兵どもが夢の跡』を一つ、『花の都三つ子の宝石』が一つ、『煌めく三宝珠』が一つですね」
P「俺が頼んだのと違う!」
ガチャ
シャロ「千夜!やよいさんはどこに!?」
千夜「あらシャロちゃん。あっちのテーブルよ」
シャロ「分かったわ!」
千夜「あ、ちょっと待って」
シャロ「何よ」
千夜「運ぶの手伝って?」
シャロ「私は客よ!」
千夜「お待たせしました。こちら『兵どもが夢の跡』です」
伊織「お、重そうね…」
千夜「こちらは『花の都三つ子の宝石』です」
やよい「美味しそうですー!」
千夜「そして今シャロちゃんが持ってるのが『煌めく三宝珠』です」
P「こっちに寄越さないの!?」
伊織「『肉じゃが作りすぎたけど全部食べました』みたいなニュアンスでいいのかしら?」
やよい「でもシャロさんがお皿持ってる姿がイメージ通りですー!」
シャロ「あ、ありがとうございます…」
千夜「よかったわね?」
シャロ「い…いつまで持たせてるのよ!」
P「い…いつまで持たせてるんだよ」
千夜「シャロちゃん、お出しして?」
シャロ「千夜の仕事でしょ!」
千夜「それではごゆっくり?」
P「団子うまいな」
伊織「これ何か足りないわね」
やよい「お団子美味しいですー!」
シャロ「あの…お話は…」
P「あ、やよいのに刺さってる団子と同じじゃないのか」
やよい「本当ですねー!」
伊織「甘味が、甘味がちょこっと足りないのかしら」
シャロ「もう帰っていい!?」
P・やよい「あ…」
伊織「キウイにあんこって意外に美味しいかも」
P「失礼しました。私、こういう者です」
シャロ「はぁ…」
P「本日はお時間を割いていただきありがとうございます」
シャロ(時間……うぅ…私も遅れたからお互い様ね)
P「ウチの高槻が今度出演する映画の主人公のモデルがシャロさんということで、参考にお話を伺いたく…」
シャロ「あの…堅苦しいの無しにしませんか?」
P「え…?」
「シャロさんはただでさえ緊張してるのに堅苦しい挨拶をされて気が休まらないんですよ?」
P「あなたは?」
シャロ「青山さん!」
P「誰?」
シャロ「『カフェインファイター』の作者です!」
伊織「この人が青山ブルーマウンテンなの!?」
やよい「作者さんですか!」
青山「私もお話に混ぜていただいてもよろしいでしょうか?」
やよい「お願いします!」
青山「お願いされてしまいました…」
伊織「それで、シャロは堅苦しいの抜きで話したいみたいよ」
やよい「それならしょうがないですね!春香さんたちと話すときみたいに話します!」
やよい「シャロさん、今日はいっぱいお話ししましょう!」
シャロ「ええ!」
青山「やよいさんとシャロさんは似ています」
やよい「私も、小説を読んで主人公にすっごい共感しました!」
シャロ「なんだか他人のような気がしなくなってきたわね」
青山「お二人とも懸命で、日々の生活でも苦労されてるのに疲れた様子も見せずに頑張っていますから」
シャロ(私は普通に疲れた顔しちゃってると思うけど…)
やよい「私がシュンとしたら周りのみんなまで辛くなっちゃうと思うから…我慢です!」
シャロ「やよいちゃんはすごいわねー…」
青山「でも、そのまま我慢し続けていれば…いずれもっと辛くなってしまいますよ」
やよい「う…」
伊織「確かにやよいは頑張り過ぎね。少しは甘えなさい」
やよい「ごめんなさい…」
シャロ「でも頑張らなきゃ…明日の生活がかかってるんだから!」
やよい「私も…頑張らないと家族の支えになれません!」
やよい「これから映画の撮影もあるし…もっと頑張らないと…」
青山「しかしもしも頑張り過ぎて体を悪くしたりしたら、家族に迷惑をかけることになるのでは?」
やよい「……」
伊織「さっきから聞いてれば、アンタ何が言いたいのよ!」
やよい「伊織ちゃん!」
伊織「止めないでやよい」
青山「私は心配しているだけです」
伊織「心配!?何の!?」
青山「やよいさんのこれから、です」
伊織「これからやよいがどうなるって言うのよ」
青山「それは分かりませんが…もちろんシャロさんも、これから大変なことになってしまうかもしれません」
伊織「やよいは私が守るわよ!」
青山「ずっと、ですか…?」
伊織「そうよ」
青山「伊織さんはずっとやよいさんの傍にいられると思っているのですか?」
伊織「思ってるわよ。ずっとやよいの傍にいるわ」
やよい「伊織ちゃん…」
青山「この先何が訪れるかも分からないのに…ですか?」
伊織「な、なによ…」
シャロ「もうやめてよ!」
やよい「シャロさん…?」
シャロ「千夜が言ってくれたの!私たちは大人になってもずっと一緒って!なのに…どうしてそういうこと言うのよぉ!」
千夜「シャロちゃん…」
シャロ「う…千夜ぁ…」
千夜「シャロちゃん…あのね…」
千夜「これはテストだったのよ」
シャロ「テスト?」
伊織「はぁ?」
青山「実は今回主役にやよいさんを推薦したのは私なのですが…」
やよい「そうなんですか!?」
青山「はい…。しかしあの子の役のイメージに合う人が見つからずずっと決められなくて…」
伊織「というと…主人公の幼馴染の…」
青山「はい、幼いころから付き合ってきて、目が合えば自然に寄り添いあえる存在…伊織さんに任せてもいいですか?」
伊織「私に…?や、やるわ!」
青山「安心しました。それでは伊織さんには甘味処の看板うさぎの役をお願いします。声の出演のみですが…」
伊織「そっち!?」
シャロ「はぁ…」
やよい「うぅ…」
P「伊織、俺たち外そうか」
伊織「まだ食べてるんだけど」
P「席移動すればいいだろ。やよい達がゆっくり話せないじゃないか」
伊織「そ、それなら仕方ないわね…」
P「ほら、青ブルマさんも行きましょう」
青山「そ、その名前で呼ばないでください~」
伊織(そういえばこの先生の声聞き覚えがあるわね)
やよい「プロデューサー、ありがとうございます!」
シャロ「ありがとうございます」
シャロ「青山さんも千夜もああいう人だから、悪く思わないであげてね」
やよい「いえ…それは全然平気なんですけど…」
シャロ「他に何かあった?」
やよい「シャロさんは大人だなーって…」
シャロ「だとしたらカッコ悪いとこ見せちゃったわね」
やよい「そんなことないです!シャロさんと千夜さんがとっても仲良しで羨ましいなって思いましたし…」
シャロ「それならいいんだけどね…。さっきの聞いたでしょ?千夜はね、優しい言葉をかけて私を支えてくれてるの」
やよい「私も…」
シャロ「やよいちゃんだって支えられてるじゃない。伊織ちゃんはきっと何があってもやよいちゃんの味方よ」
やよい「シャロさんは本当にすごいです…!私の心配をすぐに失くしてくれました」
シャロ「私も同じだったから。友達がいなくなるかもしれないなんて言われたら、引っかかっちゃうわよ」
やよい「はい。でもそういう事も考えなきゃいけないなって…」
シャロ「考えなくていいんじゃない?私は千夜の言葉を信じてるから、そういう事は考えないことにしたわ」
やよい「私も伊織ちゃんの言葉を…」
シャロ「信じてあげないの?」
やよい「も、もちろん信じます!伊織ちゃんだけじゃなくて、私の仲間みーんな信じます!」
シャロ「そう。素敵な仲間がいるのね」
やよい「はい!」
シャロ「また何かあったらいつでも話に来ていいわよ。今度は私の友達を紹介するわ」
やよい「私も、今度はみんなを連れてきます!」
シャロ「アイドルがいっぱい来たら緊張して息ができなくなっちゃうかもね」
千夜「話は終わった?」
シャロ「千夜…まだ話してるわよ」
千夜「そう…ならこれを飲みながらゆっくりお話ししてね」
やよい「いい匂いがします!」
千夜「それじゃ、ごゆっくり~」
やよい「これ美味しいです!甘くて飲みやすいかも!」
シャロ「ホント?どれどれ…」
シャロ(あれ?なんだかいい気分…)
シャロ「イッエエエーーーイ!今日は私に会いに来てくれてあるぃがとぬぇー!」
やよい「シャロさん!?」
シャロ「んんんうううう!やよいちゃんかぅわうぃいっふぃいふぅわふわぁん」
やよい「どうしたんですかシャロさん!お酒に酔った人みたいです!」
シャロ「やよいちゃんとぉ私はぁ~お・と・も・だ・ちぃい~。あ、今度やよいちゃんが来たら紹介しちゃうぉうきゃしら~」
伊織「ちょっとアンタ!何やよいに抱きついてんのよ!」
青山「小説を読んでいただければ分かるのですが、シャロさんはカフェインを摂るとああなるんです」
P「なるほど」
千夜(間違えて今度ココアちゃんに出す用に練習してた抹茶コーヒー出しちゃったわ~)
やよい「誰か止めてくださいー!」
P「やよい、役作りの為によく見ておくんだぞ!」
伊織「そっか…こういうのもやらなきゃいけないのね…」
やよい「わ、分かりました!」
やよい「い、い…いい…」
やよい「いっおるぃぃぃぃぃぃちゅゎあぁぁぁん!大好きどぅうぇっすよー!」
伊織「不思議!あんまり嬉しくないわ!」
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――――――
伊織「まったく…散々だったわ…ウサギにも噛まれるし」
やよい「でもあのウサちゃん可愛かったねー」
伊織「そう?全然動かないし不気味だったけど」
やよい「確かに動かないと変だね?」
伊織「わからぬか…不動こそが王者の姿だという事を」
やよい「さっそく役作りだね!」
伊織「なんで私がウサギなのよぉ…」
P「ま、いつも持ってるし。ウサギの呪いとかじゃないか?来世はウサギだな」
伊織「変な事言わないでよね!」
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――――――
シャロ「千夜、あのメニューはちょっと改良が必要ね」
千夜「どれのこと?」
シャロ「『兵どもが夢の跡』よ」
千夜「もう一回言って?」
シャロ「『兵どもが夢の跡』!」
千夜「お願い、もっと大きい声で」
シャロ「『兵どもが夢の跡』!!」
千夜「もっと、上から見下すような感じで」
シャロ「何なのよ…。何企んでるの?」
千夜「お願い、言ってみて」
シャロ「よく分からないけどなんかやだ!」
千夜「言いなさい?」
シャロ「てゅわものどぅぉもが夢のあとぉ!!」
千夜(覚醒魔王が生まれちゃった…)
シャロ「もう!伊織ちゃんが食べきれてなかったから少し減らしなさいって言おうとしたのに!」
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――――――
やよい「うぅ…緊張します…」
伊織「大丈夫よ。私が付いてるわ」
やよい「そうだね!伊織ちゃんがいれば安心かなーって」
伊織「この伊織ちゃんに任せなさい」
やよい「うん!私は伊織ちゃんを信じてるから!」
伊織「ちょ…照れるじゃない…」
「高槻さーん、スタンバイお願いしまーす」
やよい「はーい!」
やよい「行ってくるね。伊織ちゃん」
伊織「ええ、行ってらっしゃい」
やよい(シャロさん…映画が完成したら一緒に観に行きましょうね!)
「撮影開始しまーす。5、4…」
やよい「シャロさん、ありがとうございました!」
終わり
終わりです。
全二部作の予定で、今回の話は微妙でしたが次回作へのステップと思っていただければ幸いです。
やよいとシャロちゃんは貧乏でちっちゃいけど頑張り屋でいろいろと共通点が見えますね。
伊織と千夜ちゃんも、性格は違えど誰かを思いやってるのは同じなので今回重ねてみました。
もう一つはごちうさのアニメ放送が終わる前には書き上げたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました
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