【ワンパンマン】ヒーローに、なりたい【安価】 (421)




ヒーローに、なりたかった


悪逆の限りを尽くす怪人の前に颯爽と現れ、必殺の一撃で倒してしまえるような

誰にも見返りを求めず、己の強い信念の元に世界を、人々救う無敵のヒーローに


だけどそんなのテレビだけの世界で

現実を思い知らされた自分は、ただただ自分を否定しようとする社会に抗うので精いっぱい

気づいた時には社会への絶望と、見えない未来と、噛み合わない周囲との摩擦によって

心は削れ切ってしまっていた



ヒーローには、なれない



重い現実がのしかかり、子供のころの夢をどこかに落としてしまった

なろうと努力をするわけでもなく、社会に立ち向かおうなんて思いもせず

無気力な生活が、どこまでも、いつまでも、果てしなく続いていく……


はずだった、あの日が来るまでは



主人公、性別
男or女
安価下


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402842381



「うわ、ぁぁぁぁあああ! 怪人だ! 怪人が出たぞ!」


<<Z市に突如として怪人が現れました! 近隣にお住みの住人は――――>>

<<ただいま情報が入りました! ヒーロー協会のB級ヒーローが討伐に向かっている様子で――>>



「おい……まじかよ」

俺は、ただのしがないニートだった。今日までは

高校をいじめがきっかけで中退、それから何もすることなくただぼんやりと天井を見つめているような毎日だったが

今朝、親父に殴られ、お袋に無かれ、居場所がなくなった俺は外に飛び出した

今は俗にいう、ホームレスという奴なんだろう

だけど、そんな矢先にまさか怪人と出くわすとは、誰が想像できただろうか


「最高にツイてねえな……ッ?!」


ドゴォォォン!

壮絶な破壊音、目と鼻の先

高層ビルが一斉に崩れ落ちた

舞い散る砂埃、俺は思わず顔を覆った



「くひ、くひひ、人間、みぃーつけた」




(か、怪人ッ!?)


身の毛のよだつ声が聞こえ、体が硬直してしまう

目を開いたら、俺はきっと、すぐにでも死んでしまうかもしれない

だったら、何もわからないまま、死んでしまえば



タコ「オレ様はタコ焼きを食いすぎて怪人となったオクトパコ! オレ様はタコ焼きにキャベツを入れる人間を許しはしない……くひひ」

(し、知らねえよ!)

タコ「あれはタコ焼きではない! ただの丸いお好み焼きだ!」

(だから知らねえって!)


そこでふと思った、今ならコイツから逃げられるんじゃないか?


タコ「お前はキャベツを入れるのか? ん?」

「い、入れません……みょうがはいれますけど」

タコ「みょうがだとぉぉぉぉぉぉ?!」

タコ「キサマ! 許せん! オレはあのピりっとしたのが嫌いなのだァァァァ!!」

「し、知りませんよ!!」


まずった、完全に




グォッ!

咄嗟に逃げ出そうとする

けど、怪人のタコ足に捕まり、宙ぶらりんになってしまった


「い、いやだ……助けて」

死にたくない

「もうみょうが入れませんから……」


タコ「みんなそういうんだよぉ……キサマはタコ焼きを汚した……」

タコ「やはり人間! 生かしておくわけにはいかんなぁ!! くひひ!」


……死にたくない!
死にたくない

…………あれ、なんでだ?


今朝まで、俺は死にたくってたまらなかった

こんな世界が嫌いだった

俺を排除しようとする社会が憎かった

なんて生きにくい世の中なんだ

どうして誰もわかってくれないんだ

どいつもこいつも自分のことばかり

ヒーロー協会のヒーローだって、自分が有名になるのに必死だ

もううんざりだったんだ。なのに、なんで


<<続報です! 現場に向かっていたヒーローたちが新たな怪人と遭遇――>>

<<Z市への到着が遅れる模様で――>>



「……あ」

タコ「さぁて、キサマの足でタコ焼きを作れば、さぞうまかろうなぁ」


ギチッ

「……や、だ」

タコ「アァン?」

「しにたく、ない」

「俺はぁ! 生きたい! こんなくそッたれな世界に埋まって溜まるかぁーッ!」

タコ「ぎゃ、ぎゃァァァアアアアガ!!??」


俺は無我夢中で、固く握った拳で、怪人の目ん玉をぶん殴った

宙づりで、ちょうど怪人の顔面が目の前にあったので、拳はクリーンヒットした


タコ「よくもッ……よくもォ!!」


ギリッ

「うぁぁ……っ」

生半可な一撃が、怪人を怒らせてしまったようだ

足を締め付ける力がさらに増していく



「ちくしょう……! ちくしょう……ッ! なんだってこんなことになるんだよォ」

「俺が何をしたって言うんだ……! 俺は何も悪くないのにィ!」

タコ「くひひ、恐怖でおかしくなったかぁ……? だがすぐには殺さんぞぉ!」

「……俺が、ヒーローだったら」

タコ「……アァン?」

「俺がヒーローだったら、お前なんて一撃だったんだ」

タコ「くひ、くひひっ! 何を言うかと思ったらぁ! ヒーロー? くひひひ」

タコ「ヒーローなんてなぁ、だぁれもお前のことなんざ気にしちゃいねぇぇぇよぉぉぉ!!」

タコ「怪人に殺されて、蹂躙されて、当たり前の非力な一般ピーポーなのよォォォォ!」


「俺は……生きたい! 生きて、ヒーローになりたいんだァァァ!!」

タコ「くひーひゃっひゃっひゃ! 笑わすんじゃあねェェェェ! ……ェ?」


ドゴォ

鈍い音が響いた

遅れてもう一度

後者のは俺が地面に落ちた音だった

じゃあ最初の"一撃"は……?



「子供の夢を、笑うなよ」

タコ「だれ、だ……キサマ……」

「俺か? 俺は……」





「趣味でヒーローをやっている者だ」



タコ「なんだその適当な設定はぁぁぁあぁあぎゃあああ」

ドゴォォォォン


その"ヒーロー"はたった"一撃"で怪人を倒した

でかい風穴を開けて、怪人は爆発四散した

俺はそのさまを見て、何も言えなかった


「おい、立てるか?」

「え、あ、はい。ありがとうございます」

「俺がたまたま通りがかってよかったな、じゃ!」

「ちょ、ちょっと、待ってください!」

「なんだ? ちょっと急いでるんだが……」

「な、名前を、名前を教えてください!」


「俺か? ――――だよ」

「……あの、ありがとうございました。でもなんで趣味でヒーローなんか」

「馬鹿野郎! 趣味舐めてんじゃねえ! 俺のは本気の趣味だぞ!」

「え、えぇっ?! す、すみません」

「もう終わりか? じゃあ俺はもう行くぞ。今日は特売日なんだ」

「と、特売日?! ヒ、ヒーローが……?」


彼が、行ってしまう

ヒーローらしくないけど、きっと、誰よりも"ヒーロー"なんだ

もっと聞きたいことがある、もっと話したいことがある

けど


「……あ、あと」

「はい?」

「お前、ヒーローになりたいんだってな」

「聞かれてたんですか……ええと、でも、その」

「自信がないのか?」

「は、はい……俺、高校中退してからずっとニートで……」

「あーはいはいいいからそういうの。なりたいのか?」

「……はい! 俺、あなたみたいなヒーローになりたいです!」

「そうか。じゃ、頑張れよ」

「え、えぇっ?! そ、それだけですか……」


「お前ならきっとヒーローになれるぜ」

「俺も、タコ焼きにはキャベツ入れるからな」



思えば、あれから二年

俺はあの人みたいな力がほしくって

あの人みたいなヒーローになりたくって

馬鹿みたいに努力した


世界は相変わらず腐ったままで

俺にはどこにも居場所なんてない

バイト先でも年下にこき使われる程度だ


だけど

いつかを夢見て

努力するんだ

先が見えなくても



「72点……?」


「まずは合格、おめでとう!」


ババババババッ

スネック「俺はA級ランク38位! 蛇咬拳のスネックだ!」



俺のランクはC級

けど、まだ……始まったばかりなんだ

男の特徴>>12

武器>>13

ステータスは安価とった人のコンマで
>>14
素早さ>>15
知能>>16
技量>>17

長身

素手の拳と全身に仕込んだ目潰しやらの嫌がらせあいてむと悪知恵

キック

A

ksk


特徴:長身

武器:素手
隠し武器:妨害アイテム
特殊技能:悪知恵


ステータス(初期)
力:9
素早さ:1
知能:9
技量:7


ステータスはなんかいい感じだったんで一桁とるわ
ヒーローネームはまだ早いか?決めといたほうが表記が楽なんだけど

ほいじゃあ
ヒーローネーム>>30

サタン

ヒーローネーム:サタン

俺的にちょっと短い気がするんだけどかまわん?

今後の行動次第で○○サタンに変化するとかどうだ
ぷりぷりサタンとか

まぁキングもあれだからな、つーわけでサタンで行ってなんかあったら>>36みたいな感じにしよう

じゃあとりあえず今回はこれで、次はC級ヒーロー編からはじめま

C級編

ある程度の話が進むたびに、次にとる行動を安価するよ
行動次第によってはサタンのステータスが上昇したり、ランクが変動することがあるよ
また、交友関係にも影響が出たりするよ

それじゃあ始めるよ


――

サタン「はぁっ……はぁっ!」

俺は今、必死になって引ったくりを追いかけている

C級認定を受けたものの、それだけでヒーローを名乗れるほど甘くはなかった

週に一度のヒーロー活動

これが何よりも辛い


サタン「くそッたれェェェ……! 待てよコノぉ……!」


一か月だ、一か月たった

これまでバイト終わりに街中を走り回り、なんとか週一ノルマを達成してきたが

……とにかく、きつい

こんなに頑張っているのに、順位は最下位の382位から375位にしか上がっていない


サタン「はぁ……なんで俺、こんなことしているんだろう」



これが最近の悩みだった

ふとした瞬間、我に帰ってしまう

引ったくりや下着泥棒、チンピラ共の喧嘩etc……こんなの誰にだって止めることができる

こんなことのために、俺はヒーローになったのか?


タイガー「ヒーロー、タンクトップタイガー! 参上!」

「キャー! タンクトップタイガーよ!」

「うぉっ! マジかよ? 本物だ!」

「タンクトップタイガー! そいつ捕まえてくれーッ!」

引ったくり「タ、タンクトップタイガーだと? そんな奴が引ったくり程度にぶふぉっ?!」


タイガー「観念するんだな! この小悪党め!」

タイガー「……ぐふふ、さすがにC級6位。大した知名度だ、これでもっと有名になったに違いない」


サタン「あぁっ、またか……俺が先に見つけたっていうのに」


俺は周りに比べ、絶望的に足が遅い

小学校の頃から、リレーなんかじゃいつもドベ

背が高いからという理由で勧誘されたバスケ部じゃすぐに蹴りだされた


サタン「第一、重すぎるんだよ、コレ……」

ヒーローといえば、かっこいい衣装

上下は黒で統一し、真っ赤なゴツイベルトとグローブ、目の周りを覆う黒仮面、極め付けは黒赤リバーシブルのマント


そしてその衣装のいたるところに使えそうな道具を隠し持っているのだ

絶望的すぎるスピードの無さから、いっそのこと重装備にするか! なんて思ってたあの頃の自分をダッシュで殴りたい

ヒーロー試験のときもこの性でC級どまりだったし……


「ちょ、あの真っ黒い怪しい奴誰?」

「ヒーロー……? でも聞いたことないな、あんな奴」

「つうかタイガーが倒すのぼーっとみてただけじゃねえか」

「いるいる、ああいうすっとろいの。ウドの大木ってやつだよな」



おいやめろ、俺のことをウドの大木って呼ぶの。トラウマなんだ

結局、ヒーローになっても何も変わらない

使えない奴だと馬鹿にされ、邪魔だと蔑まれ……



サタン「……畜生、言いたい放題言いやがって」

タイガー「おい、お前」

サタン「チッ……まぁいい、次は……そうだな、犯罪件数の多い地域に絞って統計から張り込む方法は駄目だな」

サタン「ほかのヒーローもやってるだろうし、捕まった犯罪者が多いってことは情報も古いって訳だ、それに警戒される恐れもある」

サタン「となればだ……ヒーローの比較的少ないエリアで取り逃がすことの多いエリア……これだな、そうと決まったら情報収集から……」

タイガー「おいッ! 聞いてるのか、お前だよお前!」

サタン「ひっ?! な、なんですか」

タイガー「市民が不安がっているだろ、お前も犯罪者か?」

サタン「ち、違いますって! 俺はこれでもヒーローですよ!」

タイガー「ヒーローだぁ? 見たことねぇな」

サタン「そりゃあ、一か月前にヒーロー登録した、新米ですし、ランクもC級で375位ですし」

タイガー「んなことどうでもいいんだよ。とりあえず、市民が怯えてるからさっさと消えろ」

サタン「なんですかそれ、俺だって犯罪者を捕まえたり……」

タイガー「消えろって言ってるんだよ! 375位の癖にC級6位の俺に楯突こうってのか?」

サタン「……ただ虎っぽいだけの癖に」

タイガー「あぁん?」



「おいあいつタイガーさんに喧嘩売ってるぜ」

「マジかよ、調子こいてんな」

「大して役に立たない上に邪魔するんならヒーローやめればいいのに」


サタン「……っ」

タイガー「な? 分かっただろ、必要とされてないんだよ、お前」

サタン「そ……こと、……ますよ」

タイガー「あぁ?」

サタン「そんなことわかってますよ! すいませんねぇ! お邪魔しました畜生!」


俺は逃げるようにその場を去った

一秒でもあの場所にいたくなかった

……どうしてこうなるんだ、俺はヒーローになりたかったはずなのに

誰からも求められて、誰からも認められて

それがヒーローってもんじゃなかったのか?



サタン「……帰ろう、あっ、そうだ今日スーパーの特売日だったんだ」

サタン「野菜が……安いんだ」



――


<<えー、本日は今度公開される映画の主役にも抜擢された、A級ヒーロー>>

<<イケメン仮面アマイマスクさんに来ていただいてます!>>


<<きゃーきゃー>>


<<どうも>>

<<A級1位というだけでなく、映画の俳優や歌手として大ヒットのイケメン仮面さんですが……>>

<<ヒーローをしながら芸能界で活躍するのは、さぞ大変でしょう>>

<<そうでもありません。ヒーローに求められるのはタフで力強く、そして美しいということですから>>

<<それを向ける方向性が少し違うだけであって、僕にとっては何ら変わりありませんよ>>

<<なるほどー、さすがはイケメン仮面さんといったところでしょうか――>>



ブツン

サタン「なぁにがイケメン仮面だ、お前なんかヒーローじゃねぇ……」

こんなこと、ただのやっかみだってことくらいわかってる

嫉妬してるんだ、知名度にもA級ヒーローとしての強さにも



サタン「……ヒーロー、やめっかな」

周りとの格差、理想とのギャップ、そんなことばっかで悩んでるってことは

実際、自分には向いてないってことなんだろう



"お前ならきっとヒーローになれるぜ"

あの言葉を信じてひたすら努力してきた

けどやっぱこんなもんなんだ、ヒーローだって人間だ、向き不向きがある

誰しもが望んだだけで、努力しただけでなれるってもんじゃあない


サタン「そういえばあの人……見かけないな」

俺の命の恩人、進む道を教えてくれた、黒髪の男

サタン「俺にとっては、本物のヒーローだった」

サタン「あの人が、今の俺を見たらなんていうかな?」


サタン「こんな奴がヒーローだなんて言ったら、きっと笑われちまう、か」

サタン「……まだ、腐るには早いよな」


サタン「っよし!! とりあえず行動だ!」


行動安価

①日課のトレーニングでもして、頭を冷やすか

②まだ週一ノルマを達成してない……パトロールに出かけよう

③行動地域を絞って、明日に備えよう

安価下3




サタン「行動地域を絞って、明日に備えるか」


俺は地図を広げ、思案する

サタン「今日行ったエリアは比較的都市部だ。ここは人が多い分、犯罪件数も割と多めだが……」

サタン「警察機構やヒーローの数も多い。俺の足じゃあ、とてもじゃないが捉えるのは難しい」

サタン「ならどうするか……?」


俺の住むZ市にはいくつかの区域がある

その中でも最も危険だと噂され、何かとんでもない化け物が住むという地域があるんだ


サタン「……確かに、ここなら」

ヒーローでも寄り付かないいわくつきの土地

今じゃ誰も住んでいないとまで聞く

サタン「けど、もし本当に怪人と出くわしたら?」

サタン「俺に……勝てるのか? C級だぜ?」


行動安価

①いくっきゃねぇ、たまには男見せろよ俺!

②いや、常識的に考えて無理だろ……ほか探すか

安価下2





サタン「……いくっきゃねぇ、たまには男見せろよ俺!」

サタン「よし、そうと決まったら装備の見直しと点検……」

サタン「いざってときに動けなきゃ意味ないしな、最小限で怪人相手に有効そうなものを選定しよう」


サタン「……っはぁ、ちょっとブルって来た」

だが、何だろう

この昂揚感は

ヒーローを目指してから一度も怪人なんかと戦ったことはない

自分を磨くことと、小悪党をどうやって捕まえるかしか考えていなかったからだ


そんな俺が、明日怪人と戦うかもしれない

上手く動けるか? 死んでしまったりしないか?


不安と期待で、その日はなかなか寝付けなかった



――


サタン「……やっべぇ、完全に寝過ごした」

ここから目的地まで電車とバスを乗り継いで、あとは徒歩

公共交通機関を使用するとマジで洒落にならんほど周囲の目が痛いので避けていたんだが

今日の俺は一味違った


サタン「ふふ……やってやるぞ、俺だってヒーローなんだ、怪人の一人や二人……!」


「ママー、あの人」

「こら、見ちゃいけません」


サタン「待ってろ悪党ども! この俺、ヒーローサタンが成敗してやる……!」


そんなこんなで


サタン「……着いた、ここか」

高架の下を潜り抜け、ようやくたどり着いた辺境の地

魑魅魍魎が跋扈する魔の土地だ


サタン「とはいえ……突然怪人と出会うなんてこと、そうそうないよなー」

不安を隠すためでもあったのだろうが、妙なハイテンションで俺は誰も住んでいない町を進む

すると、その先に見えてきたのは


粉々に砕け散ったアスファルト、ミサイルでもぶち込まれたんじゃないかと思うようなビル

まだ新しい血痕の数々




サタン「…………」

これ見てビビんなってほうが無理あるだろ

サタン「あわわわわわ……なんだよコレ、俺完全に場違いだろぉぉぉ……」

サタン「やっべーよコレマジで、死んじゃうんじゃね? 俺死んじゃうんじゃね?」

サタン「すみません怪人さん、生言ってすみません。もう二度と来ないんで俺見つけても見逃してください」


ドゴォン!

グシャァ……


サタン「ひっ……?! なななななんの音だよぉ……」

壮絶な破壊音、それが徐々にこちらのほうへと向かってくる

……久しく忘れていた、この、恐怖

あの時と違うのは、住人の悲鳴が聞こえないということ、そして


俺がヒーローだってことくらいだ



『あぁ~、気持ちいいんじゃぁ~』

『しかし悲鳴が聞こえんのがつまらんのぉ~。この町にゃぁ誰もおらんというのは本当じゃったか~』

『例の化けモンとやらもおらんしなぁ~、この麻薬を服用しすぎて怪人となってしまったモンゴル力士、オズモウン様に恐れをなしたかぁぁ~?』


サタン(か、かかかかか、怪人……!)


      怪人
     オズモウン

    推定災害レベル:虎



サタン(ふ、ふぇぇ……体長3メートルはありそうだし、体格がっちりすぎだよぉ……)

サタン(勝てっこないんだよぉ……おうち帰るよぉ……)


まず、一目で諦めた

無理無理、あんなの

ウェイトの違いすぎる相手とは戦いたくありませんよ




オズモウン『仕方ないのぉ~、やはりもっと中心部に行くしかなさそうじゃ~』


ずぅん、ずぅん、と怪人が歩を進めるたびに大地が揺れる

巨体の脂肪か筋肉かもわからない肉も揺れる


サタン(力士ってあれほとんどが筋肉なんだろ? 握手会行ったことあるけど普通のお相撲さんにすら勝てる気しないんだけど?)

サタン(っつーかやべーよ! あいつ都市部に行く気じゃねぇか?! んなことになったら……)



大勢が、死ぬ


サタン(見た感じ災害レベルは虎、A級やB級が数人いるんならまだしも、C級なんかじゃ足止めにもならん!)

サタン(と、とりあえず……落ち着け、無理に戦おうとするんじゃあない。今の俺に何ができるかを考えろ)


サタン「……クールになれよ、俺。次にやることは」


行動安価

①とにかく、ヒーロー協会に連絡して助けを呼ぼう

②んなことより俺の安全が優先だ、ここは逃げるぜ!

③ダメ元だ……当たって砕け散れ!

あ、安価下2で




サタン「そうだ……まずはヒーロー協会に助けを求めよう」

サタン「うまくいけば俺も活躍できてポイントもらえるかもしれないし……そのほうが確実だ」


ピッピピッ

プップッ……プルル


サタン(頼む、早く出てくれ)

ガチャ

サタン(来た!)

『こちらヒーロー協会です』

サタン「あ、ああああの、俺、C級ヒーローのサタンって言います」

『C級ヒーロー、サタン様ですね? 少々お待ちください……』

サタン「はい……」

『………………』

サタン「……………………」

『………………………………』

サタン「…………」


『……………………お待たせしました、C級375位、ヒーローネーム、サタン。確認しました』

サタン(確認に時間取りすぎだろ!!)

『それで、本日はどのようなご用件で?』


サタン「ああ、えっと、Z市にある――町で力士の怪人が現れて」

『――町?! C級のあなたがなぜそんな所に!』

サタン「す、すみません」

『あそこは怪人のホットスポットで、ヒーローでも死傷者の絶えない危険区域なんですよ?』

サタン「でも俺、活躍したくって」

『そういって死んだヒーローが何人もいるんです、すぐにその場から離れてください』

サタン「あ、いや、でも……怪人は都市部に向かってるみたいで」

『何ですって……? あ、少々お待ちください』

『……こちらでも怪人を捉えました。災害レベルは虎と判断されました』

サタン「やっぱり……」

『とにかく、すぐに近場のヒーローを向かわせます、あなたは怪人に気づかれないようその場を去ってください』

サタン「わ、わかりました……では」


『……何? 隣町に子供たちが?』

『はやく避難させろ! なんだと? 通信が届かない? 何やってんだ!』

『このままでは怪人の進行ルートに被るぞ!』


サタン「……っ!?」


通話を切ろうとしたとき、電話の向こう側から怒声が飛び交うのが聞こえた



『……くっ、ではこれで通信を終わります』

サタン「…………」


ドッドッドッドッ

心臓の音が電話越しに伝わるんじゃないかと思うほど、うるさい

額から流れる汗が頬を伝い、地面に染みを作った


『くれぐれも、お気をつけて……』


俺は、逃げていいのか? 俺は……子供たちを見捨てるのか?

俺は――



サタン「……待ってください」

『……なんでしょうか』

サタン「子供たちを逃がす時間を稼げば……いいんですね?」

『聞こえていましたか……。ッ! あなた、もしかして』

サタン「俺がやりますよ」

『馬鹿を言うな! 人の話を聞いていたのか!』

サタン「聞いてましたよ! だからこそ……やるんです!」

『無茶だ! C級が何人束になっても勝てる相手じゃないんだぞ!』

サタン「勝てなくったっていいんです。足止めさえできれば」

『君一人では足止めにすらならないと言っているんだ! ただじゃすまないぞ!』


サタン「だったら、誰がやるんですか? あなたですか? ほかの遅れてくるヒーローですか?」

『ぐっ……』

サタン「なら俺がやるしかないでしょう! 俺だって……ヒーローなんです!」

『………………』

サタン「子供たちのこと、頼みました」


ブツン

そこで俺は、半ば強引に通信を切った

手の震えが止まらん


サタン「……はは、最後くらい、ヒーローらしくなれよな。畜生」

――

「C級375位、サタン」

「己の拳とさまざまな小道具を使って戦う、ヒーローか」

「ヒーロー検定では、知力、腕力共にずば抜けてはいたが……瞬発力の無さと精神分析テストから精神の不安定さが見られ、C級判定」

「……何が不安定だ。彼のようなヒーローは、そうはいないさ」

「誰も応援していなくても、私が応援しているぞ。負けないでくれ、ヒーローサタン……!」

そうだな、区切りいいし今日はこのくらいで
続きはまた明日

0~2  一般人レベル
3~5  C級レベル
6~8  B級レベル
9~12 A級レベル
12~  S級レベル
サイタマ先生?999じゃねぇの(適当)

まぁ、現在のは基本ステなのであしからず
ステータス上昇は得意なものほど伸びやすいが、数値が高いと伸びにくくなる
トレーニングや経験の内容によって成長が左右されるが、経験のほうが伸びやすくはある。ただし狙ったステータスが上がるわけではない
こんな感じで続きはじめま



――


オズモウン『ぶもっぶもっ、ぐっふふ、次の町が見えてきたのぉ~』

オズモウン『ここでは一体何人の悲鳴が聞こえるのやら、たぁのしみじゃぁぁぁ~』


サタン「……おい、待てよ」


オズモウン『なぁぁんじゃぁぁぁ~?』


サタン「待てって言ってんだよ、耳の穴まで脂肪で潰れちまったのか? あぁ?」

オズモウン「……キサマぁ、わしが怪人オズモウン様だと知っての狼藉かぁ~??』

サタン「オズモウンコだかなんだか知らないけどよ、これ以上あんたを進ませるわけにはいかねえんだ」

オズモウン『キッサマァァ!! わしのうんこがデカすぎてトイレで流せなかったことを馬鹿にしてるんかァァァァア?!』

サタン「……いや、それはマジで知らん」


サタン「とにかく、こっから先に行きたいっていうんなら、この俺、ヒーローサタンを倒してからにするんだな!」

オズモウン『ヒーロー……? ヒーローかぁ……なら尚のこと許せんのぉ~……』


サタン(よし、挑発に乗った! さぁそのままこっちに来い! 俺のダークネスフレイムでバランスを崩したところに……!)




バッチィィィィン!

サタン「ごっはぁぁあああああああああああああッ?!」


ドスンッ


オズモウン『どうしたぁ~? ヒーローサタンとやらぁ……』

サタン(や、やっべえ、でっけぇのに想像以上のスピードだ……)

オズモウン『なんじゃぁ~、もう終わりかぁ~つまらんのぉ~』

サタン(コレほんと無理、キッツイ。痛すぎだろ)

サタン(骨折れてんじゃね? すっげー脇腹いてぇわー、殴られたの顔面だけど)

サタン(まぁちょっとくらいは足止めできたんじゃね? そろそろほかのヒーローも来るだろ)


サタン(死んだ振りしとこ)


オズモウン『死んでしもうたかぁ~、なら仕方ないのぉ~』

オズモウン『向こうから美味そうなガキの匂いがぷんぷんするんじゃぁ~』

オズモウン『早くせんと逃げられてしまうわぁ~』



サタン「…………」

やべえ

サタン「……おい、まだ、終わっちゃいねえぞ」

オズモウン『ぬぅん?』

サタン「ヒーローから逃げるってのか? まぁ、怪人には似つかわしいけどよォ……」


オズモウン『……どうやら死にたいらしいなぁ~』

サタン「死ぬのはてめぇだよドサンピン」


グォォォォッ!

怪人の体が膨れ上がる

表面に青い筋がいくつも浮き上がり、筋肉が膨張を始めた

直感で感じた、マズい、と


サタン「おォォォォォッ!」

やられる前に、やれ

俺は意を決して怪人に飛びかかる!


サタン「ブラッディブロー!」

という名のジャンピングダッシュパンチ

その拳は怪人の鳩尾に突き刺さった……がしかし


オズモウン『ぬぅっ?! ……ぅぅぅうううううんッ!』

サタン「ッ!?」

ぼぅんっ!

サタン「がぁっ……?」

奴の表皮は岩のように固く、中にひしめく脂肪の塊が衝撃をすべて吸収している

俺は怪人に有効打を与えられずに、更なる肉の膨張によって吹き飛ばされてしまった

それがあまりの勢いで、反動で背後の塀を突き破り、民家の壁に叩き付けられてしまうほど


パラパラ

粉々に砕け散った破片が俺の頬を叩く、おかげでまだ意識を保っていられた


サタン(これがあいつの、本気って訳か……?)



オズモウン『……これがぁ、わしの戦闘形態……ファイナル横綱モードじゃぁ~』

真っ赤に染まった怪人の肉体、誇張する筋肉

その威圧と、ダメージもあってか、俺の体は指先まで震えていた


サタン(……まだ、何もしてねえぞ)

サタン(策を張り巡らす時間も、余裕も無い。しかも俺の攻撃じゃまるで歯が立たない)

サタン(こんなもんだってのかよ……)


もうマジ無理

鼻っから勝ち目のない戦いだってのは分かってたんだ

でも、俺、ヒーローだから

弱いけど、ヒーローだから

立ち上がらなくちゃ……


サタン「う、ぐ……ぁ」

オズモウン『ほぉう、あの一撃を食らってまだ立つかぁ~?』

サタン「こん、なの……蚊に刺されたようなもんだぜ」


オズモウン『ぐふふふははっ! そう粋がるな、キサマの体はもう限界じゃぁ~』

サタン「そんなこと……っ?!」

ガクリ


足から力が抜けていく

支えきれなくて思わず膝をついた

サタン「おい、なんでだよ……」

オズモウン『先ほどの一撃、効いたぞぉ~。少しなぁ~』

オズモウン『じゃがもう無駄じゃぁ~、キサマではわしには勝てん』

サタン「く……っそ」


サタン(考えろ、考えろ。奴を仕留めるとっておきの策を)


上手く呼吸ができない、腕も上がらない


サタン(ここで逃がすわけにはいかないだろ、どうにかして動きを止めるんだ)


思い通りに体が動かない、何を考えたってもう無駄だ


サタン(俺が負けたら、子供たちは)


あぁ、視界が歪んできた。もう十分頑張っただろ?

ゆっくり休ませてくれよ



サタン(……させない、そんなこと)


「……うわ、うわぁぁっ! 怪人だ!」

「ヒーローが、負けてる……?!」

サタン「な……っ」

オズモウン『おぉっとぉ~。飯が向こうから来よったわぁ~……』

オズモウン『助かったなぁヒーロー? 死なずにすんでぇ……げひひゃひゃひゃっ!!』

サタン「や、やめろ! そいつらには手を出すな!」

オズモウン『それは無理な相談じゃなぁ~!』


「に、にげ」

「いや、いやだ! 死にたくないッ!」

サタン「畜生! 動け、動けよ! なんで動かないんだァッ!」


グォッ

サタン「ヒーローだろ?! 俺は正義のヒーローなんだろ!」


オズモウン『まぁず一匹ぃ~』

サタン「動けェェェェエエエエエエッ!!」



ズキンッ






えっ……?



バッ……ギィィィインッ!


「……あ、れ?」

オズモウン『なん……じゃぁ……?』


サタン「……はぁ、はぁっ」


俺にも、何が起こったかわからなかった

状況が理解できずに困惑したのは、この場にいる全員だったろうが

俺が一番間抜けな顔をしていたと思う、神に誓っていい


「助かった……?」

オズモウン『わしの張り手が……止められた?』

サタン「…………」


だが、すぐに理解できた

俺の何倍もの大きさを持つ怪人の手を、俺の拳が突き破っていた


サタン「……おい、坊主」

「は、はい」

サタン「早く逃げろ」

「でも」

サタン「俺なら大丈夫だ、なんたって」

サタン「ヒーローだからな」


オズモウン『ぐぅぅぅぉぉおおおおおッ! わしの、わしの腕がァァァ?』

サタン「早くッ!」

「はいっ! ありがとうございました!」

オズモウン『キサマァ……! 何をしたァ……!』

サタン「こっちが聞きてえよ」


オズモウン『今までのは、わしをおちょくっていたというわけかぁ……なら』

オズモウン『本気を出させてもらうぞォォォォオオオオオオオ!!!』


グァッ!

サタン(ッ! 速い! ……だが)

怒気迫る張り手の一撃

それは先ほどまで俺の立っていた場所をやすやすと打ち砕く

オズモウン『躱したかぁぁぁあ!! じゃが、まだまだァァア!!』

サタン「……見える」


見えるといったのは、嘘ではない

確かに、筋肉が膨張した結果、スピードは目に見えて遅くなった

それでも並大抵の動体視力では追いつかない

だが、俺には分かった


サタン(一歩踏み込んで右からの薙ぎ)

サタン(そこで踏ん張り、左から張り手)

サタン(……単純すぎる、こいつ、もしかしなくても馬鹿か?)



先読みができるおかげで、俺程度のスピードでも躱せる

頭が、感覚が冴えわたっていくのが分かった

今なら、いける


サタン(仕掛けるか)

勢いよく前転

怪人の股下を潜り抜ける

オズモウン『そこかァァァ!!』

サタン「振り向きざまにストレート」


起き上がり、後ろもみずに前進

そして

サタン「食らえ……ブラッディナイトメア!」

という名のトリモチ

を、怪人の顔面に向けて投擲した



オズモウン『ごぉぉッ! なんじゃぁ~! こりあ~!!』

サタン「……視界を奪う、ここで」

袖口から伸びていた、金属糸を思い切り引っ張る


クンッ!

オズモウン『ぬぁっ?!』

サタン「ただ逃げてただけだと思うなよ?」

すると地面に張り巡らされた超高強度ワイヤーが怪人の脚に、一斉に巻き付く!

そいつらは怪人の両足を束ね、簀巻きのようにしてしまう

必然、視界と脚を取られた怪人は体制を崩し、地に伏せる


オズモウン『ぐぬぁ……よくも、よくもォォォォオ!!』

闇雲に吠え、両腕を振り回しながら怪人が起き上がる

力づくで顔面にへばりついたトリモチを剥ぎ取り、ワイヤーをむしり取った



サタン「……勿体ねえ。せっかくの親父のへそくりで買ったのに、高かったんだぞ」


オズモウン『どこだァァ……! ヒィィィロォォォォオ!!』

サタン「こっちだけど、まさか目まで脂肪に埋もれたか?」

その時にはすでに、俺の姿は怪人の数十メートル先の位置へ

オズモウン『ぶっ……コロス!』

サタン「きゃーこわいわー」


怪人は全身の筋肉を奮い立たせ、力強く大地を蹴る

一直線に、俺をぶち殺すために


グッ

オズモウン『……っ?!』

サタン「トラップに決まってんだろ、ぶわぁーか」

高架の柱に括り付けられた、三本のワイヤー

それらが真っ向から怪人の体を受け止める

もちろん、受けきることなんてできないが


だが

もし、ワイヤーが千切れるより前に、集中応力を受けた柱が崩壊すれば?


ガラッ

答えは

ドッシャァァアアアアアンッ


サタン「生き埋め、だな」

あとでワイヤー回収しないと


パラパラッ……

……ガバッ


オズモウン『……この程度でぇ、わしを倒せると思うなよぉ~ッ!』

瓦礫の下から、怪人が首だけを出す

オズモウン『こんな瓦礫、わしのビルドアップバーストで……』

サタン「……させると思う?」


オズモウン『ぐ、ぐぐぐ……ヒィィィロォォォ……!』

その哀れな肉塊を、俺は見下ろしていた

固く、硬く、拳を握りしめる


サタン「こういう時って、なんていうんだったかな」

サタン「色々決め台詞考えてたはずなのに、忘れちまったよ」

オズモウン『今すぐコロス! 今コロス! すぐにコロォォォォス!!!』








サタン「……覚悟しろよ悪党」

サタン「俺のワンパンは、重いぜ?」



ズッ……ドォォオオオオオオオオオオオオンン!!!!

オズモウン『キッサマァァアアアアアアアギャァアアアアアアアアアアッッ?!?!』


バァァァァンッ!




サタン「……っはぁ、はぁ」


<<――ザザ、ザ、ザァー>>

<<速報です! Z市――町に突如として怪人が現れました! 災害レベルは虎!>>


<<怪人は人間を求めて隣町へと進行を開始しており、救援にヒーローたちが……え?>>

<<えっ?! 撃破した!? やっと回線が繋がったのに……あ、失礼しました>>

<<どうやら偶然居合わせたヒーローにより、怪人は駆除された模様で――>>


<<そのヒーローは……え、えぇぇっ?! C級ヒーロー!? たった一人で!?>>

グッ


怪人の血でさらに真っ赤に染まったグローブを、太陽に掲げてみた

サタン「へ、へへ……やった、んだな」

じんわりと目の奥に熱が伝わっていく

サタン「やりましたよ、――――さん。これで、俺も……」


サタン「ヒーローだ……」

その真っ白い熱が視界を蝕んでいくと同時に、俺の意識はなくなった



――Result

怪人:オズモウン
災害レベル:虎
単体で撃破

ヒーロー:サタン
C級ランク:375位→C級ランク↑:298位(単独による撃破、被害がほぼ0に近いため。高架は使用されていなかったのでお咎めなし)

ステータス上昇
素早さ↑:2 技量↑:8

特殊技能追加
集中戦闘:追い詰められたり、迷いが吹っ切れると、途端に集中力が増す。ただし疲労が激しい

こんな感じで今日は終わり
次にまたちょっと進めてから行動安価とるわ


低い能力が上がりやすいと平均的に強くなって特徴がなくなりやしないかと心配

>>129
すいません、酉つけたまんまでした。
お騒がせ失礼しました。

>>133
その点はうまく調整するからご安心を
>>135
俺も読んでっから早く書いてくれ

今日はちょっとみじけーんだけど投下しま



「「「いらっしゃいませー!」」」


サタン「……らっしゃっせー」

「5番、オーダー入りましたー」

サタン「…………よろこんでー」

「あ、すみません。7番オーダー、全部生クリーム抜きでー」

サタン「………………全部作っちまった」

「ちょっとダサオー、料理まだー? ずっと待ってんだけど」

サタン「すみません、すぐに」

「早くしてよねほんと。あ、あともうすぐピーク終わるからゴミ捨てといて」

「それ終わったら午後の仕込みもね」

サタン「……はい」


「「「ありがとうございましたー!」」」

サタン「…………あざっしたー」



察しの言い方はもうすでにお気づきだろうが、現在この俺

ヒーローサタンはアルバイトの真っ最中である

仕事内容は某チェーン店、ファミリーレストランのキッチンだ


さらに付け加えておくと、俺のこの店でのカーストはほぼ最下位に近いということ

ダサオなんて呼ばれてることから分かるだろうが……

って誰がダサオだ!


ほんとマジでやめてほしい、せっかくできた後輩にからだってダサオ呼ばわりだ

そのおかげで先輩の威厳とか全くない



サタン「ヒーローより疲れる」

そんなこんなでようやくの昼休憩だ

三時上がりの子や、交代で働いている子がいたため、今、控室には俺一人

サタン「……まぁ、まかないが出るのはすごい助かるけど」


ぢゅるる

椅子に深く腰掛け、ジュースをストローで飲み干しながら天井を仰ぐ

サタン「ヒーローだけじゃ、食っていけねえもんなー」


ガチャッ……

「あ、お疲れ様ですー」

サタン「お疲れ様です。今からですか?」

「はいそうなんですよー。ダサオさんは今日ロングでしたっけ?」

サタン「……え、えぇ。はい」

この子は最近新しく入った子だ

確かまだ高校生だったはず、16か17だろう

俺は今年で20になる

だからさ、わかる? 俺年上なのよ? ダサオって何? マジなんなん?

とは言わない



サタン(この子はきっと、悪意を持って言ってる訳じゃないんだよなぁ……)

「……? どうかしました?」

サタン「いいえ、何でもないです」

サタン(……そういや、名前なんだっけ。忘れたな)


地獄の学園生活、ニート生活経て、俺はめっぽう人付き合いに弱くなった

初対面では顔も覚えられない、名前を覚えるのすら困難という始末

サタン(とりあえず後輩ちゃんでいいか)

後輩「あ、ダサオさん」

サタン「はい?」

後輩「さっきヒーローが~、って聞こえたんですけど。もしかしてダサオさんもヒーロー好きなんですか?」

サタン「え、あ、はい。まぁ」

サタン(じゃなきゃヒーローなんてやってねえよ)


別に隠さなきゃいけないって訳じゃないんだが

私生活がこう地味だと、ヒーローとしてまで地味になりそうなんで

親を含め、皆には隠している
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

べ、別に世を忍ぶ仮の姿とかちょっとかっこいいな~とか思ってなんかないんだからね!

後輩「へぇ~! わたしも大好きなんですよっ! 誰が一番好きなんですか?」

サタン「お、俺ですか? えーっと、そうですね」

好きなヒーローって言ったら、あの人しか思い浮かばないんだけど、きっと知らないだろうし

適当に誤魔化すか……


サタン「……S級のキングさんとか、ですね」

後輩「おぉぉっ! キングさんですか、あの人すっごい強いですもんね!」

後輩「こう……ほんとに人類最強って感じですっ!」

サタン「で、ですよね。……それで、あなたは誰が好きなんですか?」

後輩「わたしですか? わたしはですね……」


サタン(どうせアマイマスクとかイケメンヒーローって言うんだろ。もう聞き飽きたっつーの)





後輩「えっと、あの、その……えへへ……サタンさん、が好きです」



サタン「ぶっふぉッ?!」

後輩「きゃあっ?! だ、大丈夫ですか?」

サタン「ご、ごめんなさい。大丈夫です」

後輩「び、びっくりしました~」

サタン「すみません。でも、サタンさん……? ですか」

後輩「あ、知ってます? 結構最近にヒーローデビューした新人さんで」

後輩「今はまだC級なんですけど……この前、うちの弟が助けてもらったらしいんです」

サタン「あぁ……そうなんですか」

サタン(あの時のガキか……)

後輩「サタンさんってばすごいんですよ! C級なのに一人で災害レベル虎の怪人を倒したんですっ!」

サタン「…………」

後輩「それで、お礼が言いたくって色々調べてたら……偶然、その時の戦いの動画が出てきて」

後輩「どきゅーんって。……えへへ、恥ずかしいんですけど、わたし、一目ぼれしちゃったんです」

サタン(……あわわわわわわわわわわ、はわわわ、うわわわわわわ)

後輩「あの衣装もすっごいかっこよくて、ヒーローなのに悪者っぽい戦い方が……)


サタン(やめて! やめて! 顔から火が出ちゃう! 発火しちゃうよぉっ!)

サタン(何この胸の高鳴り! やだっ、こんなの初めてぇっ!)

サタン(でもこんなに褒められたら、俺死んじゃうよぉぉっ!)


行動安価

①もう限界だ! この場から一刻も早く逃げ出さねば!

②は、は? なにサタンって、まじキモイんですけどー

③埋まる


下3

スペース?
改行か?
見づらいなら控えるけど

なるほど、たぶんミスだわ。すまんの



サタン(もう限界だ! この場から一刻も早く逃げ出さねば!)

サタン(いつボロが出るかわからん! こんな俺が憧れのヒーローだったなんてバレたら……)

サタン(子供の夢をぶち壊したくない!)


サタン「あ、すみません。そろそろ休憩終わるんで、俺はこれで」

後輩「いえ、こちらこそすみません。ちょっと熱くなっちゃって」

サタン「大丈夫ですよ。これからも……その、応援してあげてくださいね」

後輩「え……? あっ、はい、もちろんですよっ!」

後輩「それじゃ、お仕事頑張ってくださいね! わたしも着替えてすぐに行きます~」

サタン「はい、じゃあ失礼します」



バタンッ

こうして俺は足早に控室を出ていった

でも、まだ顔が熱を持っているのがわかる

……そして


サタン(やっべえ、マジか。あの子、俺のファンってことになるよな?)

サタン(ということは……俺もようやくヒーローらしくなってきたってことか!)

サタン(うおおおおおおッ! テンション上がってきた!)

異常なまでのテンションの上がり具合

仕事中にニヤニヤを隠せる気がしない


まぁ、バイト終わりまで、先輩にキモいを連呼されたのは言うまでもないだろう



――

サタン(……ふぅ、ようやく一日が終わった)

今日は人生の中で、もっともいい日だったかもしれないな

キモいキモいと言われまくり、軽くへこんだくらいなんだが

それで丁度いい具合のテンションに収まってきた


サタン「ふ、ふふふ……今の俺はまさしく無敵と言えるだろう」

サタン「しかも明日は……なんと給料日!!」

サタン「これは、完全に追い風がきてるな……」


サタン「ヒーロー貯金も少しは溜まった……いよいよ、あの計画を実行するときか!」


行動安価

①金は溜まった……だが、まだ足りない。貯金を続けよう

②闇夜の暗殺者計画(ママチャリ購入)

③灼熱の探究者計画(原付購入、免許有)

④暗黒の執行者計画(対怪人戦用の武器を購入)

下3

で、安価とって今回は終わり

これから童帝とかジュノスの博士とかに伝手を作って専用マシーンとか開発してもらってもええんやで

>>168
ジュノスってだれだよふつうに読んだわ

今日はほんまにくっそ短いけど勘弁やで




サタン「実行するか……闇夜の暗殺者計画を……」

サタン「く、くくくっ! この日をどれほど待ち望んだか……!」

サタン「さぁ、いざ行かん! 深淵よりいでし愚者の元へ!」


――

サタン「……あの、すみません」

「あぁ? っと、兄ちゃんはこないだの!」

サタン「お世話になってます」

「いやぁー、あんときは助かったよ。まさかこんなしみったれた店が強盗にあうなんてなぁ」

サタン「ひどい輩もいるもんですよね」

「偶然兄ちゃんが居合わせてくれてよかった。まさか兄ちゃん、ヒーローとかやってたりすんのか?」

サタン「そ、そんなわけありませんよ。俺はただのフリーターです」

「はっはっは、そういうことにしといてやるよ。でも、あんたみたいな奴なら、きっと大物になるぜ」

「俺が保障してやる」


サタン「はは……ありがとうございます」

「それで今日はどうした?」

サタン「ええ、あの、自転車を買いに来たんです」

「おおそうか! じゃあ好きなの選びな! 安くしてやる」

サタン「すみません。助かります」


この自転車屋に来るのは、今回で二度目になる

最初は来るつもりなどなかったのだが

上手くヒーロー活動ができず、鬱憤が溜まっていたころ

ゴミ箱に投げた空き缶がたまたま強盗犯のこめかみにクリーンヒット

俺は偶然犯人を捕まえ、あえなく御用となったのだ


その時強盗にあった店がこの自転車屋の主人だったと言うわけだ

サタン「さて……どれにしようかな」

恩着せがましくしているつもりはないが、懐の寂しい俺としてはとても助かる

ご厚意に甘えることにした




サタン「こいつかなぁ」

よく手入れされた中古っぽいダークシルバーの自転車、ママチャリにしてはカッコいい部類

前籠と荷台がついているので米買った時や野菜運ぶ時便利そう

ハンドルが少し曲がっているようだが、それも気にならないくらいにちゃんと修理されている

しかし、探しても、どこにも値札がついていない

サタン「あの、これいくらですか?」

「あぁ、そいつな。悪いけど売りモンじゃねえんだ」

サタン「そうなんですか……修理に来た奴ですか?」

「……俺の、息子のだよ」

サタン「へぇ、息子さんがいるんですか、おいくつなんです?」

「死んだよ。怪人に殺されてな、17だった」

サタン「……っ」

「野球部でなぁ、甲子園に出場が決まったっつって張り切りながら練習にいく途中、襲われちまって」

「あっけないもんだよ。戻ってきたのはボロボロに曲がったバットと」

「その自転車だけだったよ」



サタン「……すみません」

「いいんだよ、こっちこそすまねえな。変な話しちまって。こんな話、滅多にしないんだがなぁ」

「……今でもさ、泥まみれになって、ひょっこり帰ってくるんじゃねえかって……思っちまうんだよ」

「馬鹿みたいだよな」

サタン「……そんなこと、ありませんよ」

サタン「気持ちは痛いほど、わかります」

「ははは、若造に慰められるなんざ、俺も老けたなぁ」

サタン「すみません。でも俺、息子さんの気持ちもわかるんです」

サタン「この自転車、結構長く使ってましたよね」

「まぁな。中坊の入学祝いにやったんだ」

サタン「……なのに、あなたがちゃんと手入れしてたんでしょうけど、凄く大事に使われてた」

サタン「それに怪人に襲われたにも関わらず、ハンドルくらいにしか目立った傷がない」

「…………」

サタン「バットよりも、野球よりも……大事なものだったんでしょうね」


「……やめてくれ」

サタン「……すみません、出過ぎたこと言ってしまいました」

サタン「ただ、その自転車がきっかけで、あなたがずっと辛い思いをするの、息子さんはきっと望んじゃいませんよ」

「……そう、かもな」

サタン「それだけは分かってあげてください。……じゃあ、すみません、俺はこれで」

「自転車、いいのかい」

サタン「日を改めさせてもらいます。お仕事頑張ってください」


「……待ちな」

サタン「はい?」

「もってけ」

サタン「え、でも」

「いいんだ。あんたの言う通りだよ、もう俺には、こいつは必要ない」

サタン「……」



「持って行ってくれ、それで、息子みてえな奴を出さないために、こいつを役立ててくれや」

「息子も、それを望んでるだろうよ」

サタン「…………わかりました、そこまでおっしゃるんなら」

「……頼んだぜ、ヒーロー」

「俺にはなんもできねえが、その自転車を直すことくらいなら出来る」

「いつでも、頼ってくんな」


――


サタン「……やっべえ、重い空気に耐えられなくて適当こいてたらすげえプレッシャーかかった」

サタン「こんな悲しみを背負った自転車で、俺、野菜とか運べねえよ……」


サタン「と、とにかく、今日からよろしくな! えーと……」

サタン「名前何にすっかなー」


ヒーロー自転車(ママチャリ)の名称
安価下3

で今回は終わり、明日から家開けるんであいぽんからになるけどごめんやで


サタン「……よし、今日からお前の名前はルシファー号だ!」

サタン「よろしくな!」


佇むその自転車は、呼応するように黒光りしてみせた

ような気がする

サタン「……安心しろよ、今度のご主人様は簡単にゃ死にはしねえ」

サタン「前の主人の仇も、ちゃんととってやる」

サタン「だから……一緒に頑張ろうぜ?」

サタン「って何チャリンコ相手に話掛けてんだ俺!」


サタン「……っよし、足も手に入ったことだし、パトロールにでも出かけるか」


ーー

シャーッ……

サタン「おお、速い速い」

サタン「ふははは、道行く人々をどんどん追い越して行くぞ」

サタン「最っ高に気持ちいいなぁ~! おい!」

サタン「これで誰にも鈍亀とは言わせね~ぜぇ~」


……シャァァ

サタン「…………ん?」

「………………」

そんな感じで気持ち良く走っていると、俺のすぐ側を走り抜けて行った奴がいた

あのなんか競輪選手がつけてそうなカッコいいヘルメット

それに一昔前のヒーローっぽい衣装の男だった

何処かで見覚えがあったんだが、忘れた

しかし今重要なのはそこではない

サタン「あいつ……俺を抜きやがった……!」

サタン「これは……ルシファー号が悪いのではない……!」

サタン「俺の……俺自身の敗北……! だが、ここでやられる俺ではない!!」


サタン「うおォォォォォッ!!」

「……ッ?!」

サタン「……フッ」


少し本気を出しすぎたか?

抜き去る寸前に見えた奴の表情

驚きと悔しさをヘルメットに隠し切れていなかった


サタン「くくく……俺とルシファー号に勝とうなんざ百年はやーーッ?!」

しかし今度は、俺が驚かされる番だった

奴は怒涛の勢いで俺に追いついてきたのだ

サタン「クッ……負けてたまるか……!」


サタン「吠えろ! ルシファー号ッ!」

「唸れ! ジャスティス号ッ!」


ーー

サタン「はぁ……はぁ」

「ふぅ……ふぅ」

結果としては、引き分けだった

長い戦いは熾烈を極め、気づけば俺たちは一時間以上走り続けていた

そして今は、二人して河川敷に四肢をほうりだし寝転んでいる


サタン「や、やりますね……」

「ふ、ふふ……君こそ」

サタン「もしかしてあなた、ヒーローですか?」

「あぁ、君も見たところヒーローなのかい?」

サタン「えぇ、俺はC級ヒーローでサタンって言います」


サタン「まあ、成り立てのペーペーですが」

「サタン君……あの一人で怪人を倒したっていう?」

サタン「知ってるんですか?」

「あぁ知ってるよ、僕は素直に凄いと思う。嫉妬でとやかくいう人も少なくないけどね……」

サタン「そうなんですか……」

確かに、信じがたいことかもしれないな

「だけど、今日確信したよ。君の実力は本物だってね」

「この正義の自転車乗りが言うんだ、間違いない」

サタン「正義の、自転車乗り……? そうか、思い出した、あなたは……」


サタン「無免ライダーさんですね?」


無免「あぁ、名前覚えてくれていて、嬉しいよ」

サタン「そりゃ、そうですよ。C級1位の無免ライダー」

サタン「C級298位の俺じゃ、足元にも及びません」

無免「……そんなこと、ないさ」

サタン「……無免ライダーさん? どうしました」

無免「あ、いや、なんでもないよ」

サタン「そうですか?」

無免「あぁ、それと僕のことは無免でいいよ」

サタン「え、でも」

無免「いいんだ、君とは仲良くなれそうだし」

サタン「……わかりました、無免……さん」


無免「よろしくね、サタン君」

サタン「よろしくお願いーー」

お互いに握手を交わそうとした

その時だった


……ズッ、ドォォォォォォォン!!

遠くから地鳴りと轟音が響いてきたのは


サタン「ッ!?」

無免「……まさか、怪人か?!」

無免「こうしちゃいられない!」

サタン「無免さん!?」

無免「とにかく、僕は現場に向かうことにするよ! また会おう、サタン君!」

サタン「ちょ、無免さん!」

無免「行くぞ! ジャスティス号ッ!」


片手を挙げて、俺に挨拶すると

無免さんは思い切りペダルを踏み込み、騒音のあったほうへと向かっていった

サタン「……さすが、はやいな」

サタン「っと、俺ものんびりしてられない」

サタン「さて、ここはどうするか」


行動安価

①無免さんが行ったんだから大丈夫だろ、帰るか

②妙な胸騒ぎがする……後を追いかけよう

③とにかく情報を集めてから考えよう

安価下3


サタン「妙な胸騒ぎがする……後を追いかけよう」

サタン「……まさか、怪人か? 気のせいだといいが」

サタン「いくぞ、ルシファー号!」


――

「なぜ働かなければいけないのか!」

「なぜ金を払わないと飯が食えないのか!」

「分け合えばいいじゃないか!」

「こんな世の中の何が自由なのだ! みな労働に縛られているではないか!」

「金持ちは肥え、貧乏人は死ぬ!!」


「仕事は楽しいか? 否! そんなわけない!」

「我々は断固働きたくない! だから変えるのだ! このハンマーヘッドが!」

ヘッド「働きたい奴だけ働いて他は養ってもらえる社会に!!」




ヘッド「桃源郷を実現させるのだ!!」

ヘッド「このハンマーヘッド率いる桃源団が!」


ガヤガヤ
   ワイワイ

「ボス! 誰も聞いていません!」

ヘッド「何だと~! くそ~、愚かな大衆どもめ」

ヘッド「行くぞ、まずは町一番の大富豪ゼニールの家を破壊して、本気だとわからせてやる!」


――

「この高層ビル丸ごとゼニールの家です」

ヘッド「……! 悪いことして荒稼ぎしたに違いない、許せんッ!」

ヘッド「よし、破壊しろ!」


「イエッサー!」


……ズッ、ドォォォォォォォン!!


ヘッド「さすがは新開発されたバトルスーツだ、例の組織から命がけで盗んできたかいがあった!」


「……あ、このマンション違った、すいやせんボス、ゼニールの家はもっと先でした」

ヘッド「失敗は誰にでもある、肝心なのは反省し次に生かすことだ!」

ヘッド「行くぞ! ゼニールの元へ!」


キィィィーッ!

「待て! 悪党ども!」

……ガッタン、カチャカチャ

ヘッド「…………」


無免「正義の自転車乗り、無免ライダー、参上!」

「キャーッ、無免ライダーが来てくれたわ!」

「彼が来たならもう安心だ!」

ヘッド「ヒーローか、くだらぬ」

無免「行くぞ!」


ボグッ

「キャアアアッ!」

「医者を呼べぇええ!」

無免「……う、ぐ」



――

「逃げろーッ! ハゲが押し寄せてくるぞぉおおお!」

「こいつら本気でぶっ飛んでやがる!」

「危険すぎるぅぅううううう!」


あちらこちらで上がる悲鳴、俺がルシファー号に乗って無免さんを追いかけてきたらこの様だった

サタン「……なんだ、あいつら」

徒党を組んで暴れまわるのは黒スーツを身にまとったハゲたち

サタン「新手のコスプレ集団……? にしては,、ちとやり過ぎだな……」

サタン「そんなことより無免さんはどうしたんだ……?」


逃げ惑う市民を誘導し、護衛すべきなのだろうが

俺はまっさきに無免さんの姿を探していた

ハゲ集団に見つからないよう移動を続ける

すると崩壊したビルの前で数人の市民が何かを取り囲んでいるのが見えた



「おい! 無免ライダー! しっかりしてくれ!」

「お願い、目を開けて!」

「くっそぉ! あいつら、とんでもないことをしやがる!」


サタン「無免さん……?」

「あ、あんた……! ヒーローなのか?」

サタン「え、えぇ、まぁ」

「頼む、無免ライダーさんを助けてくれ! さっきのハゲにやられたんだ!」

サタン「あいつらに、ですか」

無免「う……あ」

「無免ライダーさん!」

「よかった、目が覚めたんだな!」

サタン「大丈夫ですか、無免さん」


無免「……ぐ、サタン君、か」

サタン「あまり無理しないでください、ひどくやられたみたいですね……」

無免「不甲斐ない……瞬殺だったよ」

「あいつはB級賞金首だったんだ、あんたはよく立ち向かったよ」

サタン「B級賞金首……」

「あんた、見たところC級だろ? 無免さんでも勝てなかったんだ、相手しようなんて思わないほうがいいぜ」

無免「……悔しいが、その通りだよサタン君。ほかのヒーローが来るまで、待とう……」

無免「所詮、C級なんだ……身の程をわきまえるべきだったかな、僕も」

「そうだな、待ったほうがいい。俺たちも手分けして避難誘導をするから、それを手伝って――」


サタン「嫌です」

無免「サタン、くん……?」

「な、何を言ってるんだ、あんた、ヒーローだろ?!」

サタン「C級ヒーローだからって、相手がB級賞金首だからって逃げていいってこと、ないでしょ?」

サタン「現に無免さんは立ち向かった。だから次は俺が行く、例え負けようと」


無免「逃げるんじゃ、ない……市民を守るために……」

サタン「だから市民を守るために戦うって言ってるんですよ」


サタン「ヒーローが逃げたら、誰が悪党に立ち向かうんです?」

サタン「誰が逃げ遅れた人を助けられるんです?」

サタン「ここには、俺とあなたしかヒーローはいないんですよ」

サタン「そのヒーローが、C級だからって何怖気づいてるんです」

無免「……く」

サタン「ランクの性にしていたいんなら、そこで這いつくばっていてください」

サタン「俺は行きますよ」


俺は分かっている、彼が自分の弱さを盾にして逃げるような人じゃないってことを

ほんの短い間しか彼を知らないが、彼は本物のヒーローだってことがわかる

こんなにも市民に思われている人間が、ヒーローじゃない訳がない

だからだろうな、キツいことを言ってしまったのは


……要は、嫉妬しているんだろう

ヒーローとして



――

「ボス見えました」

「この林を抜けた先に見えるのがゼニール邸、通称"金のウンコビル"ですぜ!」

ヘッド「……よし、行くぞ!」


キィィィーッ!

サタン「おい、待てよ」

ガチャ、ガタン


ヘッド「ん……? 何だ、また来たのか」

「似たような登場の仕方ですが、さっきのとは違う奴みたいですぜ」

サタン「……俺はヒーロー、サタン! これ以上の悪事はこの俺が許さん!」

ヘッド「サタン……だとぉ? またヒーローか」

「ほんとにヒーローなのか? どう見てもこちら側の人間じゃねえか」

サタン「一緒にするな、小悪党どもめ」


ヘッド「言うじゃないか」

サタン「ッ!?」


グォッ!

桃源団のリーダー、ハンマーヘッド。B級賞金首

その実力通り、巨体から繰り出される強烈な一撃が俺に襲い掛かった

ヘッド「……何だと?」

サタン「へっ、残念だったな」

しかし、俺は負けていない


「バトルースーツで強化されたボスの一撃を……止めやがった!」

「あいつ……俺知ってるぜ、C級の癖にたった一人で怪人をぶっ倒した奴だ!」

ヘッド「C級……? ふっふっふ、所詮はC級! なんら恐れることはない」

ヘッド「よし、こいつの相手はお前たちに任せた、10人くらいで相手してやればすぐだろう」

ヘッド「俺はゼニール邸に向かう、あとは頼んだぞ」



「へい、ボス!」

サタン「おい! 待て――」


ズォッ!

この場にいた桃源団のメンバー30数人のうち、10人を残してハンマーヘッドは逃げようとする

それを追いかけようとするも、ほかの団員が俺の行く手を遮るように立ちふさがった


サタン「……邪魔だ、どけ」

「そうはいかねーんだよーッ!」

ガッ!

血気盛んな一人の男が、飛びかかってくるも、俺は難なく受け止め

サタン「この……程度で!」

カウンターのワンパンを相手の顔面に叩き込む

「ぼへぇッ!」

サタン「バトルスーツで守られていないところは、さすがに脆いな」

あまりにうまく行き過ぎて、こんなセリフを吐いちゃう


怪人を一人で倒せたという自信は、俺に強さを与えた反面

……弱さも伴わせた


「後ろがガラ空きだぜぇ!」

サタン「――ッ?!」

それは、油断

戦闘の中でも最も忘れてはならず、最大の敵と呼ばれるものだった


サタン「がっ……あぐ!」

いつの間にか背後に回っていたメンバーの一員、その強化された一撃が背中を突き抜け

肺の中からすべての空気を吐き出させた

サタン(や……べ、息ができん)

だが、踏ん張る、倒れたら終わりだ

拳を握り、振り返って背後の敵をぶち抜く

「ぐぉっ?!」

すると今度は左右からだ、反応しようとしたときにはもう遅い

両側頭部を、挟み込むように捉える二つの拳



サタン「ぐ、がぁあああああっ!」

サタン(くっそ……! 一人一人は大して強くねえってのに!)

サタン(集団で来られると……全員は捌けない!)

今の俺なら、ハンマーヘッド相手だろうが、タイマンなら勝てるだろう

しかし、多対一というのは、まだ経験が浅かった

チンピラ集団にぼこられるのとはわけが違う!

俺は為されるがまま、桃源団の猛攻を浴び続けた


サタン(……く、っそ)

「しぶとかったな」

「あぁ、こちらも随分やられてしまったが……」

「あれではもう動けないだろう」

サタン(だっせえな、怪人一匹倒したからって調子に乗って)

サタン(無免さんに偉そうに言っておきながらこの様か)


「だが念のため、とどめをさしておくか」

「そのほうがいい」

サタン(……畜生、そうだよ。無免さんに言った言葉は、自分自身への言葉でもあるんだ)

サタン(だから……もう逃げようだなんて思うな。諦めようなんて思うな!)


サタン「俺は! ヒーローなんだッ!」

「死ねェッ!」

サタン「うォォォオオッ――!」

今回はここまで
安価スレなのに安価すくねーし更新に間あいちゃってすまんかったやで



俺は最後の力を振り絞って、拳を振り上げた

こんな体勢の一撃で受け止めきれるはずがなかったが

それでも


それでもだ


敵の拳を俺の拳がぶつかり合う


ガッ、ギギッ!

サタン「……ぐっ!」

「驚いた、まだこんな力が残ってるなんてなぁ」

サタン「テメェのパンチが貧弱すぎるだけだろうが……!」

「……カチンと来た、お前は全力でぶっ潰す!」

グォッ……!


バトルスーツが膨れ上がる、それと同時に拳にかかる重圧が何倍にも増した

サタン「が……! くっそ!」

サタン(あのスーツは、まだパワーが上がるってのかよ!)

「ははは! どうだ! 最高出力だぞ?」

サタン「……ぎぎ、こ、これで最高かよ……! 大したこと、ねえな!」

受け止めながら、少しづつ立ち上がる

なぜ俺は耐えていられるのか、わからない

今も圧力に耐え切れず、腕の筋肉が悲鳴をあげているのに


「よく言うぜ、そんな体で"俺たち全員"を受け止めきれるとでも?」

サタン「チッ……!」

その通りだ、あいつら全員に全力を出されたら……俺は

――死んでしまうかもしれない



サタン(……どうする、俺。何か考えろ、多対一を挽回できるとっておきの策を)

サタン(考えろ)


「身の程を知れよC級風情がよォォォォ!」

「最初っからお前に勝ち目なんてねえんだよォォ!」

サタン「……C級だから?」

「あ?」

サタン「C級だから楯突くなって?」

サタン「C級だから勝ち目がないだって?」


サタン「……笑わせんなよ」

「こいつ、恐怖で頭がおかしくなってやがる」

「笑わせんのはそっちだろうが!」

サタン「だったら見せてやるよ……C級の底力って奴をな!」


サタン「……ぐ、ォオオオオオッ!」

ガシッ!

そこで俺は、今まで拮抗していた拳を押し返して指を開き

敵の拳を掴んだ


「なッ?!」

メギ、メギメギッ!

「ぐぅ……! こいつ、どこにこんな力を……!」

サタン「ぶっ飛びやがれェェェエエエッ!!!」


そのまま両手で掴み、敵を強引にぶん回す

サタン「メテオストライク!」

そして、放り投げた

横一文字に敵が飛ひ、三人くらいを巻き込んでなぎ倒す




「がぁっ?!」

サタン「……へ、どうだ」

サタン「これからが本番って奴だぜッ!」


「確かに、これからが本番だな」

グググッ

サタン「……!」


先ほどのアレだ

バトルスーツの最大出力による膨張

ふざけた野郎どもの威圧が、洒落にならんほど膨れ上がる

吹き飛ばされた奴らも、何も無かったかのように起き上がった

冷や汗が噴き出る


「我らが理想を良しとしないものには……」


「粛清を」


「考えることを止めた愚民どもには……」


「制裁を」


「……そして、行く手を遮る無能なヒーローには」

「処刑が必要だ」


サタン「……あんたらさ、フリーターの俺が言うのもなんだけど」

サタン「ガキが癇癪起こしてるようにしか見えねえぜ?」

サタン「だったらよ……ここはヒーローとして、あんたたちが正しい道を歩けるように」


サタン「教育が必要だよなァ!!」

拳を固く握りしめる


バトルスーツによって限界まで能力を引き上げた集団に

はたして俺一人で勝てるだろうか?

答えは……いや、違うな


そもそも一人で勝つ気なんて、最初っからなかったんだ


「ジャスティスクラッシュ!!」

俺の後方から、自転車がカラカラと車輪を空転させながら敵集団に突っ込んだ


「な、何だ?!」

サタン「……ふっ。無免さん、遅いですよ」

無免「待たせてすまない!」

無免「とうッ!」


ザッ

無免「正義の自転車乗り、無免ライダー! 再び参上!」

無免「サタン君! 君を……C級ヒーローではなく、一人のヒーローとして」


無免「助けに来た!」


こ こ ま で




「誰かと思ったら、さっきワンパンで沈んだザコヒーローじゃねえか」

「今更なんのようだ? またやられにきたのか」


無免「……なんとでも言うといい」

無免「ザコだろうがなんだろうが、関係ない。強い弱いじゃなく」

無免「俺はヒーローとして、お前たちに立ち向かわなくちゃいけないんだ!」


ゴォッ!

サタン「……!?」

なんだろう、この闘気は

ひしひしと伝わってくるこの気持ち……!

勝てるかもしれない、俺一人ではなく、仲間とともに戦えば!


無免「行くぞッ! "無免ライダー……キィーックッ"!!」



すさまじい勢いで助走をつけ、猛烈な速度で大地を蹴る

そしてなんと! 空中で一回転、フォーム、軌道、どれをとっても申し分ないその華麗な一撃は!


バシンッ

無免「ぐはぁっ?!」

羽虫のように叩き落された

サタン「む、無免サァーンッ!!」


「……おい、茶番を続けるのもいい加減にしろよ」

「そろそろ本気で行かせてもらうからな」


サタン「あんた、無茶しすぎですよ」

無免「……ぐっ、マズイ。サタン君、僕のことはいい、はやく逃げ――」

サタン「まだそんなこと言ってるんですか。立ち向かうって、決めたんでしょ?」

サタン「だったら逃げる必要なんて、どこにもない」


サタン「……勝ちますよ、無免さん」

無免「……! サ、サタン君」

無免(なんだ、急に彼の雰囲気が変わった……最初は不審者かと思っていたけど)

無免(全然違う。彼は今……ヒーローの目をしている。勝利を確信しているッ!!)


無免「あぁ、あぁ! わかった、勝とう! 必ず!」

サタン「……へへ」


「いくぞ」

ゴバッ!

強化された肉体が、大地を砕いて超高速で接近してきた

サタン「速い……だが」


ピンッ

「なに……?!」


俺たちと奴らとの間に張られたワイヤーが、突撃してきた男の脚に引っかかる

グォッ

それと同時に、ワイヤーに繋がれたジャスティス号が凄まじい勢いで奴の後方から飛びかかった!

「なんだとッ!」

サタン「"マリオネットダンス"……あんたは俺の掌の上で踊ってるんだ」

ジャスティス号は奴の後頭部に襲い掛かり、衝突と同時にそのフレームをひん曲げた

無免「あぁっ?! 僕のジャスティス号が!」

サタン「安心してください、いい自転車屋を知ってるんです」

無免「そういう問題じゃ……しかし、いつの間に」

サタン「ジャスティスクラッシュのときに、仕掛けさせてもらいました」

無免「あの一瞬で……? サタン君、君は一体……」

サタン「呆けてる場合じゃありませんよ! あんなんじゃ倒すには至らない!」

サタン「行きますよ無免さん!!」


無免「あぁ! あ、え?!」

サタン「いっけぇ!! "メテオストライク・改"!!」

無免「うわぁぁぁぁっ!?!?」


俺は有無を言わさず、無免さんの体をひっつかみ、回転させつつ

怯んだ敵に放り投げた


無免「くっ……! "無免ライダーシザース"!!」

「くそ……! な、なに?! 追撃だと!」

無免さんは空中で回転しつつ、強烈なチョップを繰り出す

言うなれば回転ノコギり、十二分に勢いをつけたライダーシザースは正確に奴の首を捉えた!

メギィッ!

無免「ぎゃああああっっ?!」

「グォォォォォォアッ!!!」


「な、なんだと?! 強化された肉体をも一撃でねじ伏せる……! なんて技だ」

無免「僕の体もねじ切れそうだけど……」

サタン「さすがです無免さん! 次行きますよ!」

無免「ちょっと、待って」

サタン「"メテオストライク・改"!!」

無免「うわぁぁぁぁっ!?!? "無免ライダーシザース"!!」


「二度も同じ手を」

「食らうと思うな!」

ゴァッ!

俺が倒した分と、無免さんが倒した分とでやっと4人

あと6人もいる

そんな相手に何度も同じ手を使うのはさすがに見通しが甘かった

バトルスーツの怪力、侮るなかれ、奴らのうち2人が真っ向から無免さんの体を受け止め

そして静止させた



サタン「くそッ! 無免さん危ない!」

無免「君の性だよ!」


「このまま挟み撃ちにして、ぺしゃんこにつぶしてやる!」

「お前さえ死ねばさっきの技はもう使えまい!」

無免「く、くぅっ……! 万事休すか……!」

グォッ!

「潰れてしまえッ!」

無免「ッ!?」


バァンッ!

サタン「やらせるかよッ!」

「なにっ?! ぐっ、なんだこれは?!」

俺は両腕で奴らの挟撃を防ぐ

だがそれだけではなかった


サタン「こいつは、俺がもう二度と作れないだろうってくらい色々混ぜた……」

サタン「超強力接着剤……! その名も……なんだっけ」

サタン「"エビルバインド"!! ……よし、これでいいや」


両の手に持っていたのは、強力な接着剤を包み込んだケース

受け止めると同時にケースは破裂し、敵の体を包み込んだ

こいつは空気に触れると同時に粘化しはじめ、ちょっとやそっとの怪力じゃ取れなくなる

何を混ぜたらこうなるのかは、俺にも正直わからん


「エビルバインドだとォ?! く、くそぅ! 体が思うように動かん!」

「このくらい……! バトルスーツの力で! なにぃ! 粘ついて一向に取れん!」

サタン「……ふっ、無駄だ。そうなったら俺でも取れん」

サタン「食らえ……! "ブラッディ・クロス・ブロー"!!」



腰の回転を加えつつ、腕を交叉させて一撃を二人に叩き込む

どう見ても一発はアッパーカットなのだが、格闘技の知識のない俺にはわからん


「ぐっほぉぉぉぉぉぉおぉっ?!」

「がぁぁぁあああああああぁっ!?」

一撃を食らった二人は盛大に吹っ飛び、ノックダウン

これであと……4人


無免「す、すごいな……」

サタン「……はぁ、はぁ、どうだ」


「な、なんて奴だ。あの状況から3人にもやられた」

「だ、だが、まだ数では俺たちのほうが優っている」

「しかし勝てるのか……?」

「ここは、一度撤退してボスの元に行こう」

「そうだな……よし、となれば」

「「「「「逃げるッ!」」」」



無免「何っ! 奴ら逃げる気だぞサタン君!」

サタン「逃がすかよ……ッ!」


バシュッ!

俺は袖口に隠していた、アンカーを発射させる

先ほどの超高強度ワイヤーの先端に取り付けられたフックが、逃げる奴らの一人に絡みついた


「な、なんだとォ?!」

サタン「こっちへ……戻ってくるんだよォォ!!!」

そしてそのワイヤーを、全力で引き寄せる!

サタン「今です! 無免さん!」

無免「え、えぇっ?!」

引き寄せられた敵は、一直線に無免さんの元へと向かってくる

絶好の攻撃チャンス

無免さんがこのチャンスを逃すわけがない


無免「うぅぅぅぅっ! "無免ライダーラリアーット"!!」


勇ましい雄叫びとともに、無免さんがラリアットを放つ!

その見事ともいえる一撃は敵の顔面を捉え


メギメギメギッ!!

無免「ぎゃああああああああああッ!!」

「ぐっほぉぉぉぉおおおあああ!?」

敵を弾き飛ばした!

弾き飛ばされた男は、尚も逃走を続ける一人を巻き込んで地に伏せる

サタン「さすがですね、無免さん」

無免「う、腕が、もう、腕が」


敵を仕留めたあまりの嬉しさから、無免さんのゴーグルの隙間から一滴の涙が流れる

サタン(やっぱり、C級とはいえ1位ってすげぇな。俺も負けてらんねえ)



サタン「おい、あんたら。こんだけ仲間をやられといて、まだ逃げる気か?」

サタン「だっせぇな、男なら仲間の敵くらいとってみろよ」


「ぐ、ぐぐぐぐッ」

「……C級風情が、調子こいてんじゃねえぞォ!」

グォッ!

サタン「……っ!」

腑抜けたことを言っていた奴らとは違う

本気だ、悪人としての本気を呼び起こしてしまった

サタン「無免さん……片方、任せていいですか?」

無免「う、うでが……え?」

サタン「すみませんけど、俺はあっちの弱そうなのをやります」

無免「え、ちょっと、待ってくれ」

サタン「無免さんなら大丈夫だと思いますが……ご無事で!」




サタン「さぁ、かかってこい」

「……いいんだな? お前は俺たちを怒らせた。ただじゃあすまないぞ」

サタン「それでこそ、倒しがいがあるってもんだ」

サタン「いいぜ、お前が悪人らしく、憎しみで戦うってんなら」


サタン「俺はヒーローらしく、小細工なしで真っ向から叩き潰してやる!!」


ズォッ!

俺の倍はありそうな肉体から、強烈なストレートが飛んでくる

しかし


サタン「……見える!」

「避けるなぁぁぁああああ!!」

サタン(また、この感覚だ。だが不思議だな)

サタン(前みたいな極限状態じゃあない。どこかに余裕がある)



無免「ごっはぁッ!?」

「オラオラァ! まだぶっ倒れんのは早いぜェ!」


サタン(これは、仲間がいるっていう心強さからくるものなのか?)


無免(ま、まだま、ほげぁっ?!」

「もういっぱぁぁぁああっっつ!!」


サタン(だとしたら、なんて頼もしいんだ、なんてうれしいんだ)


サタン(俺はもう、一人じゃない!)

サタン(もう、何も怖くない!)

「避けてるばっかじゃ勝負にならねえぞォ!!」

サタン「避けてるばかり? ふ、ははははっ!!」

「な、なに笑ってやがる!」

サタン「おっかしいなぁ、もうお前の負けは決まってるってのに」

「なん、だと……?」


サタン「自分の体、よく見てみろよ。それとも筋肉ばっか強化しすぎて、鈍感になっちまってるのかなァ~~~?」

「……! こ、これは!!」


俺は指をさし、額を抑えてひとしきり笑う

その先には、バトルスーツの内側にうごめく無数の物体が!


カサカサカサ


「ば、馬鹿な! こ、こいつは!! こいつらはァ~~~~~~ッ!!!」

サタン「そうだよゴキブリだよォ!! 地を這う混沌の蟲共に、てっぺんからつま先まで蝕まれる気分はどうだァ~~~?!」

「オォウ!! ノォ~~!! や、やめろォ! 顔に来るんじゃあないッ!!」

「チクショウッ! 何がヒーローだ! 小細工無しだ! 嘘をつきやがってェ!」


サタン「おっと、勘違いしないでもらいたい。確かに俺は"小細工無しで真っ向から叩き潰してやる"といった」

サタン「だが、"嘘をつかない"とは一言も言ってないんだぜェ~~~~ッ!!」


「このクソッ垂れがァァアアア!!!」

サタン「吹き飛びなッ! "ブラッディブロー"!!」



ゴァッシャァァァァアアアアアアンッ!!!


サタン「ヒーローが全員、ヒーローらしいと思ったら、大間違いだぜ?」


「ドッシャラァァアアアアアッ!!」

無免「ぐぼぁぁあああああああああああッッ!!」


サタン「ッ?! む、無免さん!!」

無免「ひゅー……ひゅー……」

サタン「大丈夫ですか! 無免さん!」

無免「だ、だいびょうぶびゃ……な」

サタン「その状態で大丈夫だなんて……、無茶しないでください!」

サタン「……しかし、あなたがタイマンでやられるなんて、あいつはヘッド並の能力があるのかもしれない」

サタン「だとしたら……疲弊した俺に倒せるのか?」

無免「ひゃぶん、らいびょうぶだと、おも……」

サタン「無理するなって?! あなたって人は……人の心配をしている場合じゃないでしょうに」



サタン「でも、大丈夫です。俺は何があっても勝ってみせます」

無免「へ、あ、うん」


「待ちなッ!!」

子供「た、助けてっ!」

サタン「ッ?!」

無免「ッ!!」


「おっと、それ以上動くんじゃあないぞ」

「こいつがスクラップになってほしくなかったらなぁ~~~~~ッ!!」


サタン「人質……! さっきのライダーラリアットで倒し切れてなかったのか!」

無免「なんて、破廉恥な……!」


「さぁ、これで形勢逆転だな」

サタン「くっ……!」

「どうするヒーロー! 子供を犠牲にしてでも戦うか!」

「俺たちに完膚無きまでぶちのめされるか!」


「「選べ!」」


サタン(敵は……残り二人)

サタン(俺のスピードじゃ子供を救出しながら奴を叩き潰すのは不可能だ……)

サタン(だが、無免さんなら? しかし、無免さんは満身創痍)


サタン(どうする……? どうすればいい!!)


行動安価

①……お手上げだ、好きにすればいい

②ここは、無免さんの力に頼るしかない……!

安価下3

でお休み




サタン「くそ……俺にはどうすることもできない」

無免「一体どうすれば……」

サタン「すみません、無免さん。ここは無免さんの力に頼るしかないようです」

無免「えっ?!」

サタン「俺では子供を守りながら敵を倒すのは無理です」

無免「ぼ、僕にも無理……はっ」


無免(無理、なのか? 無理だから、諦めるのか?)

無免(おそらく、サタン君にならできるだろう、だが、僕は?)

無免(僕は非力だ、C級だから。勝てなくても仕方ない。だからずっとB級にはあがらなかった)

無免(誰かに期待されるのが辛かった。何より自分の弱さがわかり過ぎてつらかった)


「ふはは、これでは手も足も出まい!」


サタン「……無免さん? やっぱり、体が」

無免「い、いや、腕以外ならまだ動くよ」



"ランクの性にしていたいんなら、そこで這いつくばっていてください"


無免(……ッ!!)

無免(サタン君、もしかして君は、僕を試しているのか?)

サタン「どうしたんですか、無理なら……俺が」

無免(そうだ、彼とともに戦うことで、僕は這いつくばる虫ではなくなったと思っていた)

無免(ただ闇雲に、立ち向かうだけが勇気なんだと、勘違いしていたんだ)

無免(だけどそれじゃダメなんだ)


"勝ちますよ、無免さん"


無免(勝たなきゃ、いけない)

無免(腕が折れようが、血反吐を吐こうが、みんなを守るために勝たなきゃ)

無免「いつまでも、這いつくばっている虫じゃダメなんだ」


サタン「?」

無免「僕は、高く、羽ばたかなくちゃいけない!!」


「おい、何ごちゃごちゃ言ってんだ!!」

無免「……サタン君、一つ頼み事がある」

サタン「聞きましょう。勝つためなら」



「さぁ、どっちからぶちのめされるか、相談は終わったか?」

無免「……あぁ、殴るなら僕を殴れ。子供には手を出すな」

「ほう、お前からか。よし、やれ」


「おうよ! さっきまでの恨み、晴らさせてもらうぜ!」

バギィッ!!

無免「っがぁ?!」

サタン「くっ……!」

「おらァッ!!」



ドゴォッ!

無免「ぐ、はあっ!!」

無免「……はぁ、はぁ、どうした。この程度、か」

「いい加減、しつけえんだよォ!!」


メギッ!

無免「ぎ、がぁぁぁあああああッ!!!」


サタン「畜生!! 無免さん、やっぱり!」

無免「いいんだ! ……サタン君」

サタン「でもっ!!」


子供「も、もうやめてよ! ぼくはどうなってもいいから! ヒーローさんをいじめるのはやめて!」

「うるせぇガキだな! ちょっと大人しくなってもらおうか」



無免「やめろッ!!!!」


無免「その子には手を出すんじゃない」

「まだ立つのかよッ!!」


ズドォッ!

無免「あぐぅ……」


子供「でも、でも」

無免「いいんだ。大丈夫、僕たちが、きっと君を助けてあげる」

子供「ひっぐ、うぐ」

無免「泣かないでくれ。僕たちヒーローは、負けない。絶対にだ」


「なぁにがヒーローだ~~~ッ? お前らにはもう勝ち目なんてねえんだよォ~~~ッ!!」



無免「……それは、どうかな?」

「あん?」

無免「諦めない限り、負けはない。僕が立ち続ければお前たちはいずれ疲弊する」

無免「それが僕たちの勝ち筋だ」


「ぷっ……あーはっはっはッ! 何を相談してたかと思えば、そんなことか!!」

「んなこと……できるわきゃねェ~~~だろォ~~~ッ!!」


無免「……できる」

「あ?」

無免「できるッ!! ヒーローに不可能はないッッ!!!」

無免「そんなヒーローに憧れて! 僕は今! ここに立っているッッ!!」

「……だったら、やってみろよォ!!!!!」


ズォッ……!


無免「ッ!!」

「これで、トドメだァッ!」

ドッ……グァァァァアアアアンッ!!


サタン「無免さんッ!!」

バトルスーツの性能を最大限に発揮した、全力の一撃

これを真っ向から受けた無免さんは、猛スピードで後方に吹き飛ばされた!

その先は高層ビル、一瞬遅れて中層が瓦礫と化すのが見えた


俺は、無免さんがやられるのを黙って見過ごしていた

強く握りしめすぎた拳が、ギリギリと痛む



「はんっ! これでお終いだ……さぁて、次はお前の番だぜ」

サタン「……」

ギリッ



サタン「誰が、お終いだって決めてんだ?」

「なんだコイツ時間稼ぎのつもりか? 時間稼いだってヒーローは助けちゃくれねえぜ?」

サタン「無免さんが言ってたろ? 諦めない限り、負けはないって」

ギギギッ

「おい、こいつ一匹なら俺たち二人で倒せるだろ。さっさと片しちまおうぜ」

「ッ!! 待てッ! 人質を離すな! こいつ……! いや、こいつら!」


「勝利を確信しているッッ!!」


「なにィ~~~~ッ?!」

サタン「もう、遅いぜッ!!」


手から伸びるワイヤーを、俺は力任せに引き抜いたッ!

そのワイヤーが伸びる先は……高層ビル!


サタン「その油断が命取り、全力で行かせてもらうッ!!」


グォォォォォオオッ!!

空を裂き、音を超え、衝撃波が空間を伝わるッ!


「勝機ッ!!」

どこからか、声がこだまする

無免「行くぞッ! サタン君!」

サタン「あぁッ!! 無免さん!」




無免「……"真・無免ライダー"」

サタン「ゥォォオオオオオオッ!!!」

無免「"キィーッッック"!!!」


ズ……ドォォォオオオオンッ!!





一筋の軌跡が、俺の目の前を走った


「が、ぐァァァァァアアアアアアアアッ!!!」

「ば、馬鹿なッ!!」



無免「……や、やった!!」

無免「やったよ、サタン君!」

サタン「ええ! さすがです、無免さん!」

サタン「……もう大丈夫だ、怪我はないか?」

子供「う、うん……ごめんなさい。ぼくのせいで」

サタン「ばーか、違うだろ? こういう時は……」


サタン「ありがとう、ヒーロー。だ」

子供「うんっ! ありがとう! ヒーローのお兄ちゃんたち!」


サタン「……さて、と」

「ぐ、くそ……」

「ふざけたこと、しやがって……」

サタン「無免さんが言うから、黙ってやられるのを見てたが」

サタン「……さすがに、もう我慢の限界だったぜ」


サタン「無免さん、トドメ、俺がさしてもいいですか?」

無免「あ、あぁ……情けないが、もう体が動きそうにない」

サタン「……ありがとう、ございました」

無免「はは、それは違うよ、サタン君」

無免「君がいなければ、勝つことも、子供を助けることもできなかった。礼を言うのは僕のほうさ」

サタン「無免さん……」


「い、いまのうちににげ……」


サタン「おい」

「ひ、ひぃっ!」

サタン「よくもやりたい放題やってくれたな」

「た、たすけてっ! 俺たちはただ、ボスの言う通りにやっただけで」

サタン「自分で自分を決められないお前らは、這いつくばる虫以下だ」



サタン「覚悟しろよ、俺のワンパンは重いぜ」


「や、やめてくれぇっ!!」


行動安価

トドメを……

①さす

②ささない

あ、安価下3で



無免「み、見るな」

子供「えっ? う、うん」


サタン「……ッ!」


ドスッ、ガスッ!!

「うげぇっ!!」

「ぎゃっ!」


続けざまに響く鈍い音

俺はもうそれ以上見ることはせず、グローブの汚れを払い落した


サタン「終わりました、俺たちの勝ちです」

無免「あぁ……だが」



無免「どうしてトドメをささなかったんだい?」

サタン「……」

さすが、勘が鋭かった

俺は息の根を止めることはせず、バトルスーツのみを粉々に砕いてきたのだ

サタン「悪人と言ったって、相手は人です。犯罪者は法で裁かないと」

サタン「……それに、いくらだって人は変われるものですから。俺みたいに」

無免「サタン君……」


無免「いや、参った! あははははっ!」

サタン「ど、どうしたんです? いきなり」

無免「君は本物のヒーローだ、僕の目に狂いはなかった」

サタン「は、はぁ……どうも」



無免「サタン君、君は一体どうしてC級なんかにいるんだい?」

サタン「え? そりゃ……まだ経験も少ないですし、弱いから……ですかね」

無免「それは違うよ、サタン君は強い。B級……いや、A級にいてもおかしくないくらいにだ」

サタン「そ、それは買いかぶりすぎですよ。俺より強い奴なんて五万といます」

無免「……はは、否定しないでくれ。自分が情けなくなる」

サタン「え?」

無免「いや、なんでもない……サタン君は、どんどん高見を目指してくれ」

無免「途中でさまざまな困難が待ち受けているだろうけど、君ならいける」

サタン「はぁ、ありがとうございます」


無免「さっ、この子を誰かに引き渡したら、逃げたヘッドを追おう」

サタン「その体でですか?」

無免「当り前さ、すでにほかのヒーローが来ているかもしれないが、放っておくわけにはいかないだろう?」

サタン「それもそうですね……行きましょう、肩貸しますよ」

無免「あぁ、ありがとう。すまない」



――


その後、金のウンコビルを目指して歩いた俺たちだったが

道中、大量の桃源団の死骸を発見

全員が全員、首をすっぱりと斬り落とされていた

ヒーローの仕業には見えなかった


無免「ひどいな……これは」

傍らにいた無免さんも苦々し気にそういった

サタン「偶然出た怪人に襲われたか、それとも同業者にやられたか……」

サタン「ともかく、ヘッドの死体がないのが気になります。仲間をやられちまって、逃げたんでしょうけど」





――


結論からいうと、ヘッドの死体は発見できた。何故か全裸だったが

しかし、俺たちが死体処理のため連絡をしているうちに

忽然となくなっていた


サタン「……まさか、生きてたのか?」

無免「まぁ、でもこれで懲りただろうね」

無免「とにかく、一件落着だ」

サタン「そうですね。今日はありがとうございました」

無免「ははは、お礼を言うのはこっちだって」

無免「……さて、肩を貸してくれてありがとう、僕はもう大丈夫だ」

サタン「本当ですか? 一度病院に行ったほうがいいですよ。無理しないでください」

無免「大丈夫、これでも体は頑丈なほうなんだ! ……たぶん」

サタン「……わかりました、そこまで言うなら」


俺はそっと腕を離す

無免さんは少しふらついたが、すぐに両足でしっかりと立った


無免「じゃあ、ね」

サタン「はい、ゆっくり休んでください」


無免さんは俺に背を向け、ゆっくりと歩き出す

さて、俺もさっさと家に帰るか、と思ったところで


無免「そうだ、サタン君」

サタン「はい?」

無免「いい自転車屋を知ってるんだってね。よかったら、今度教えてくれないかい?」

サタン「……ええ、いいですよ!」


そうして、俺たちは電話番号を交換し、別れた

そのハンドルは、違う方向に向かっていたのだろうが

きっと、ヒーローとして進むべき道は同じだ


……俺は初めて友達ができたみたいで、その夜はしばらく電話帳を見てにやついていた




――Result


犯罪集団:桃源団
レベル:B級賞金首(ハンマーヘッド)
C級1位、無免ライダーと共闘し、団員の一部を撃破

ヒーロー:サタン
C級ランク:298位→C級ランク↑:240位(何故かハンマーヘッドも倒したと思われている)

ヒーロー:無免ライダー
C級ランク:1位→1位(変わらず)


特殊技能追加
仲間との絆(笑):友達らしい友達が今までいなかったサタン君、その性か、仲間と共に戦うと妙にテンションとステータスがあがるぞ
         ただし仲間が彼をどう思うかは別だ

ステータス上昇

力↑:10

コンマによるステータス上昇チャンス

00~20 素早さ
21~70 知能
71~99 技量

安価下1




ステータス上昇

素早さ↑:3


ゾロ目ボーナス! 連続上昇チャンスだ!

00~60 知能
61~99 技量


安価下1


ステータス上昇

技量↑:9



隠しステータス

交友関係

無免ライダー:好感度

0→3

好感度早見表

0~2  知り合いレベル
3~5  友人レベル
6~8  親友レベル
9~10 もう結婚すればいいんじゃね? レベル

つーわけで今回は終わり

またせたな
短いけど堪忍や




――

「う、うわぁぁぁぁあああっ!! 怪人だ! 怪人が出たぞ!」

「た、たすけて……!」

「足が! 俺の足が!」

「ぱぱぁ! ままぁ!」

「いやだ! し、しにたくないっ!」



『ぐわっはっはっはっ!! 怯えろ! 竦め! 絶望するグマ!!』

『我らに抗おうなど、微塵も考えられぬようにしてくれるグマ!!』

「いぎッ……!」

『また、一人』

「じ、じぬぅ……」

『二人グマ』

「クマの……化け物」



熊『化け物だと? 都合のいい解釈しかできないのか? だから人間はおろかなのだグマ!』

熊『我は人間どもによる森林伐採によって住処と食糧を奪われ、命を失った大自然の生命たち、その残留思念の集合体グマ!』

熊『貴様らはその恨みを晴らさせるべく、ここで死なねばならんグマ!』

「ひ、ひぃ……!」


『そこまでにしておきなさい、怪人・クマキラー』

熊『グマ?』


熊『お前は……ボスの』

『十分目的は果たせました、これ以上の戦闘は、無用だ』

熊『……ふん、気に食わん奴グマ。せめてその不愛想な仮面を外したらどうグマ?』


『…………二度は言わないよ』

熊『やかましいグマ! 我は貴様の指図は受けんグマ!!』

ズォッ!!

『やれやれ、これだから……』


チャキッ

熊『ッ……?! い、いつの間に背後へ』

『君程度では私の敵にもならない、そのでかい口を、いい加減閉じてもらおうか』

『さすがの私も、同朋の首を刎ねるのは、忍びないのでね』

熊『…………わかった、わかったグマ。いいからそのナイフを収めるグマ』

『わかってもらえたようで、何より』

熊『けっ、グマ』



『再三言っておくが、私の言葉はボスの言葉。それをお忘れなきよう』

熊『それで、次はどこに行けばいいグマ?』

『一度本部へ戻ります、そこからは追って伝えましょう』

熊『……了解グマ、せっかく盛り上がってきたというのに、グマ』

ズシン、ズシン……


『……ふん、品性の欠片もない。これだから下級は』

pr、prrrr

『はい、私です』

『……ボス。ええ、ええ……かしこまりました』

『お任せください。……すべてはボスと』


『我ら"怪人会"のために』




――

<<近頃、いくつかの市で発生した怪人たちについて、どう思われますか?>>

<<ヒーロー協会が発足して以来、怪人による被害件数は減っておりますが、それに比例するように発生数は増えています>>

<<これについて、私たちの研究所ではいくつかの原因を考えており――>>


サタン「また、怪人か」

無免「最近、増えているみたいだね」

サタン「俺としては助かるんですがね、仕事に困らなくて」

無免「……喜ばしいことじゃ、ないけどね」

無免「悪人を倒す正義のヒーローを目指しておいてなんだけど、結局は僕らが暇なほうが世界にとってはいいんだ」

サタン「本当は、必要とされないほうがいいなんて、因果な役ですよ」


ぱん、ぱんっ

俺はグローブについた汚れをはたき落しながら、無免さんにそういった

電機屋の店頭にあるテレビからニュースが流れている、話題はそこから始まっていた



サタン「しかし、また無免さんと一緒に戦えるなんて、光栄です」

無免「や、やめてくれ、僕なんて大したことしてないさ」

サタン「謙遜しないでください、前のライダーシザースは見事でしたよ」

無免「……思い出しただけでも腕が痛くなるよ」

サタン「それより、怪我は大丈夫ですか?」

無免「あ、あぁ、桃源団と戦った時の傷はだいぶ治ったよ。というか、治って以来、随分体が頑丈になった気がするんだ」

サタン「そうなんですか?」

無免「うん、ちょっとやそっとの傷じゃ何も感じなくなってきたよ」


遠くを見つめて無免さんはそういう

無免さんほどの実力があるにも関わらず、さらに成長を続けているんだ

俺も負けてられないな



無免「しかし、サタン君もまた強くなったね」

俺たちの背後に倒れている、怪人を見つつ無免さんはつぶやいた

サタン「そうですか? まだまだ、無免さんの足元にも及びませんよ」

無免「……はは、君の場合、本気で言ってそうだから困るね」

サタン「?」


と、その時だ

prrrrrrr


無免「電話だ」

サタン「あ、すみません。俺です」

ピッ


サタン「はい」

『……もしもし、サタン君?』



この声には聞き覚えがあった

サタン「もしかして、力士の怪人と戦った時の、ヒーロー協会の人ですか?」

『ええ、覚えていてくれたんですね』

サタン「もちろんですよ」


俺に電話をかける人なんていないから、印象的すぎて覚えてしまっていた


『ふふ、なんだか嬉しいですね。……と、それどころじゃないんです』

サタン「……怪人ですか?」

『ええ、あなたのすぐ近くに新しい怪人の反応が……?』

『何っ?! 反応が消えた? 補足できたんじゃなかったのか!』

サタン「どうしたんです?」

『すみません、レーダーから怪人の反応が消え……』


『ッ!! ま、まずい、気を付けてくれサタン君!』

『レーダーが再び怪人を捉えた! 出現位置は……』


『君のすぐ後ろだッッ!!』


ぞわっ

サタン「ッ!!」


ガギィッ!!


??『……ふむ、完全な不意打ちだったのですが、受け止められてしまいましたか』

突如俺の後方から仕掛けられた、ナイフによる一撃

俺は咄嗟に腕を振りぬき、その一撃を受け止めた



無免「サタン君ッ!!」

サタン「無免さん! こっちにきちゃだめだ!!」

無免「なっ……」


運が良かった、そう思える。おそらく奴は本気で攻撃していない

現に、奴には一切の隙がない

動けば


やられる


??『なるほど、これがヒーローとやらの力ですか。少々甘く見過ぎていたかもしれませんね』

サタン「あんた……一体何者だ?」

??『おやおや、人に物を訪ねる時は――』

サタン「サタンだ、ヒーローネーム・サタン。あんたは?』


??『ふふっ、まぁいいでしょう。こちらも無礼を働きましたからね』

??『私の名は――――。また機会があればお会いしましょう』


フッ……


消えた、文字通り

サタン「……っ、はぁ」

助かった、いや、見逃してもらったんだ

無免「サタン君、大丈夫かい? あいつは、一体」

サタン「わかりません、ですが……」

サタン「……何か、とんでもないことが起きようとしている、俺にはそう思えて仕方ありません」


空を見上げる、東方に暗雲が立ち込めていた

それが、未来を予兆しているように思えて……不気味だった

怪人名、安価下3でよろぴこ
んで今回は終わり



奴の名は――ファントム

確かにそういった

今思い出しても身の毛がよだつ

正体がまったくの不明であり、底知れぬ強さを感じる相手だった

だが、一つだけわかるのは……


俺では、まともに戦って奴に勝つことはできない

それだけだ


サタン「1,00!」

サタン「日課のトレーニングも20分くらいで終わるようになっちまった」

サタン「最初のころなんて半日かかってたもんな」

サタン「もっとメニュー増やすべきか……でも筋トレのメニューなんてあんま知らないしなー」



俺も、少しは強くなってるってことか、しかし――

サタン「でも……あいつに勝つには、このままじゃ駄目なんだ」

A級、S級にもなれば超人揃いなんだろう、そういう奴らなら互角に戦えるかもしれん

だがC級の俺では、まともに立ち向かうことすらままならないだろう


サタン「……ランクで考えるのはやめろ、人に任せようとすんな」

サタン「誰もいなかったら、俺が戦うしかないんだ」

桃源団との戦いから数週間が経った

あれからいくつかの怪人と戦い、赤子の手を捻るように仕留めてきた

そんな雑魚ばかりを相手にしてきただけなのに、俺のランクは100位目前にまで上がった

何故かは分からんが


サタン「こんな調子でB級にあがったって、果たして俺はやっていけるのか?」

ファントムと名乗った怪人、ヒーローとしての未来への不安

ここ最近はこればかり考えている


サタン「やめやめ、予想はよそう……なんつって」

prrrrr

サタン「うぉっ?!」

pi

サタン「も、もしもし」

『あ、ダサオ?』

サタン「せ、先輩……ですか?」


『そーそー、あんた今何してんの?』

サタン「筋トレ、してました……」

『筋トレ?! うっそ、ダサオ筋トレとかしてんの? ちょーキモイ! 受ける!』

サタン「別にいいでしょ……ていうかなんで俺の番号知ってるんですか」

『怒んないでよー。番号? ほら店の個人情報ちゃちゃっとね!』

サタン「ちゃちゃっと個人情報盗み見ないでくださいよ」

『男だろ? 細かいこと言うなって』

サタン「……はぁ、それで、何か用ですか? 俺、今日非番なんですけど」

『そーそー、今日あんた来れる?』

サタン「はい?」

『いやぁ、今日――ちゃん風邪ひいちゃったらしくってさ』

サタン「……かゆ、蚊に咬まれた」

サタン(あれ、今先輩なんて言ったんだ)

『あんた先輩でしょ? だったら代わりに来るべきじゃない?』


サタン(あぁ、後輩ちゃん休んだのか)

サタン「だからってなんで俺なんです、ほかにも先輩はいるでしょ」

『グチグチいうなって、あんたあの子と仲いいんでしょ?』

サタン「いえ……? そんなでもないと思いますけど」

『そうなん? だってあの子、あんたの話ばっかしてるけど』

『ダサオさんもヒーロー好きなんですって~! 周りにヒーロー好きな人いないんで、すっごくうれしいんです~』

『って言ってたよ?』

サタン「は、はぁ、まぁ少しだけその話はしましたけど……」

『じゃ、決まりね。17時からだからよろしく~』

ぷつっ

サタン「切れた……分かったとも言ってないのに」

俺は仕方なしに準備を始めた


――


サタン「店長、こんばんは」

店長「ん? あれ、どうして来たの君」

サタン「え、欠員でたらか来てくれって先輩に……」

先輩「あっ、ごっめーんダサオ! 別にいらなかったみたい」

店長「あぁ、今日、あの子トレーニングだったから、シフト厚めにしといたんだよ」

サタン「……えっ」

先輩「めんごめんご! というわけだから帰っていいよ~」

サタン「は?! そんな」

先輩「もううるさいなー、もうすぐピーク始まるからどいたどいた」


茫然と立ち尽くす俺を無視して、みんなは慌ただしく働き始める

俺は言われるがまま、すごすごと引き下がるのだった



――

サタン「はぁ……だからってあの扱いはねえよ」

サタン「俺、これでもヒーローだぜ? 世界の平和を守ってんだぜ?」

サタン「もうちょっと俺に優しくなってくんねえかなぁ……」

サタン「確かにコミュ障はマシになってきたけど、最低限のことしか話せないし」

サタン「流行とか知らねえし、笑顔が凶器って言われるけど……」


あかん、自分で言っておいて悲しくなってきた


サタン「……コンビニでも寄ろ」


「いらっしゃっせー」

ヒーロー生活とバイトにも慣れ、一人暮らしにも適応してきた

ある程度の貯金はできているし、おやつの一つや二つ買うことくらい何でもない


……といっても、今月は割とピンチだが


サタン「……やっぱやめとくかなー、雑誌でも立ち読みして帰――」

踵を返した俺の目に飛び込んできたもの、それは


焼き味噌豆腐抹茶プリン


というゲテモノだった

サタン「……いや、マジかよ。誰が考えたんだこれ」

値段を見る、500円

サタン「……いや、マジかよ。高すぎだろこれ」

しかし目が離せない



次の瞬間、俺の視界にあるものが映った


ゴゴゴゴ……
A T M
ゴゴゴゴゴ……


サタン「……おいやめろ俺、手数料がかかるんだぞ」

サタン「や、やめろ……マジで、おい、くっ……うぉぉぉぉぁっっ!!」



「ありがとうございやしたー」

サタン「…………」


まぁ、人間だれしも過ちはあるし、やらずにする後悔よりやってする後悔のほうがいいって言うし

でも今のところ後悔なんてないわけだから、結果的にはよかったのかもしれない


なんつーか、一皮剥けたっていうの? なんだかまた一歩大人になったって感じだよね


サタン「……よし」

その足を近くの公園へ向ける

そしてベンチに座り、カップの蓋を開けた

中心にそびえ立つ、角のたった焼き味噌

それを取り囲むように敷き詰められたホイップクリーム

下の段には豆腐っぽいものと、綺麗な抹茶色のプリンがぎっしりと詰まっていた

層は数段に分かれており、中層あたりに、ご丁寧に茶色の層が見えた


もう、逃げることはできない

……一口、震える手で持つスプーンですくった

サタン「いざぁ……」



サタン「おぇぇぇええええええッ!!」


知ってた

舌に触れた途端、もうスピードで吐き出していた

もう食べる前から確信してたようなものだよね


サタン「……なにやってんだろ、俺」

ベンチに放り出し、深く背もたれにもたれかかった

と、その時


ぐぅぅぅぅっ……


という軽快な腹の音が鳴った

サタン「……やべ、変なもん食って腹壊したか」



??「う、ううぅぅっ」

サタン「……へっ?」

どこからか聞こえる、うめき声

周囲を見渡す、誰もいない

もしやと思い、ベンチの下をのぞき込むと……


??「し、しぬぅ……」

ボロボロになった、女の子が倒れていた

サタン「お、おいっ! 大丈夫か?!」

慌てて引っ張り出す、するとあることに気づいた

彼女はただの人間ではなかったのだ


動物のようなパーツを持ち、布きれを身にまとった彼女

そう、世間は彼女のようなものを



怪人と呼ぶ


サタン「……っ」

??「なにか……たべもの」

だからといって、俺には始末する気など湧かなかった

初めてみた、限りなく人間に近い怪人だった


サタン「……プリン、食べるか?」

??「食べるっ!!」

がばっ!

サタン「う、お、おい! 急に飛びつくな!」

??「ね、ね、ぷりん、ぷりんどこ?」

サタン「慌てんなって……ほら」

ベンチに置きっぱなしだった食いかけのプリンを差し出す

すると素手で勢いよく口の中に掻き込みだした



サタン「……うぇ」

見てるだけで胃がむかむかしてくる

それほどまでに強烈な味だったのだが……

??「おいし! もっと、ないの?」

サタン「残念だけどねえよ。つうかマジで美味かったのかそれ」

??「うんっ! うまうま! かった!」

サタン「……かわいそうに、まともなものを食べたことがないんだな」

??「うー?」


しかしこの子、怪人? いや、獣人というべきか?

何故こんなところで行き倒れていたのだろうか、育児放棄か?

そもそもあいつらって子供生むの?



……考えてもキリが無さそうなので本人に聞くことにする

サタン「父ちゃんと母ちゃんは? どっからきたんだ?」

??「う……えと、わからん!」

サタン「……まともに育てられなかったんだな」

目頭が熱くなる

育児放棄は俺のすぐそばにやってくるほど深刻化していたのか……

この国を、どげんかせんといかん……


サタン「そうか……つらかったんだな」

なでなで

??「ん……つらかた。たいへんでした!!」

サタン「そうかそうか……でもごめんな、うちのアパート、ペット禁止なんだ」


??「ペットちがう!!」

サタン「あぁそうだったな、そいや名前、なんてーんだ?」

??「なまえ、なまえか! しってるぞ、えーっと」



種族安価下3

①犬or狼

②猫or虎

③自由安価


名前安価下5


安価ばっかですまんけど頼んだやで

アライグマなのに猫なのか(困惑)
再開するやでー



猫「ネコ」

サタン「……は?」

猫「ネコ!」

サタン「名前がか?」

猫「あいっ!」


なんてこった

こいつはどう見ても猫じゃない

茶と黒が混じったような髪、そこからぴょこんと立つ三角の獣耳

両頬から目に向かって描かれた黒模様とぼろきれからはみ出たふさふさのしっぽ


サタン「たぬきじゃないのか?」

猫「ちがう、ネコ」

名前ならラスカにするって書いてあるじゃん(マジレス)


サタン「……確かにたぬきではないなぁ」

返事する度、時たま見える鋭い八重歯

もしかしてこいつ……アライグマの怪人とか?

サタン「お前、アライグマなのか?」

猫「んー? ネコだけど」

サタン「……そうか、自分を猫と偽るほど辛い思いをしたんだな」

サタン「あぁ、お前は猫だ、お前がそう望むのならそれでいい……」

猫「……? おまえむずかしいな! よくわからん!」

サタン「わからなくていいんだ……ところで、こんなとこで何してたんだ?」

猫「……っ!! そう! そうだ、たすけて!」

サタン「……は? 助けて? 保健所のおっさんにでも追いかけられて――」



ファントム『探しましたよ』

サタン「――ッ!!」

猫「こ、こいつ! こいつひどいことする! わるい奴だ!」

ネコは全身の毛を逆立てて威嚇する、こういうところは猫っぽい

……しかし、まったく気づかなかった

あの時、突如として消えたように

突拍子もなくこの場に現れたのだ


怪人、ファントムが


ファントム『おや、今日は仮面をつけていないようですが、わかります』

ファントム『またお会いしましたね……サタン君』

サタン「できれば会いたくなかったな……ファントム!」

ファントム『ふふっ、おやおや、嫌われてしまったようですね』

>>350
安価だからちかたないね


サタン「当り前だろ。今回は何しに来たんだ!」

ファントム『貴方には興味があるんです、再会を祝って……といいたいところですが』

ファントム『今日はそちらのアライグマに用がありましてね』

猫「ネコだ!! わけわからん奴!』

サタン「やっぱアライグマか……しかし意味わかってて否定してんのかね」

ファントム『大人しく引き渡していただければ、貴方に危害は加えません』

ファントム『どうですか? 悪くない条件だと思いますが』

猫「うぅぅっ……」


サタン「…………」

必死に威嚇しているが、その目は怯えていた

怪人とはいえ、まだ年端のいかない子供、無理もない



サタン「嫌だと言ったら?」

ファントム『もちろん』


シャキンッ

ファントム『……貴方には死んでもらう他ありませんねェ』

サタン「……ッ」

まただ、奴の姿が消えた

そしてすぐに現れる、俺の背後に、俺の首筋にナイフを押し当てて

猫「お、おまえ!」

ファントム『貴方には私を捉えることはできない』

ファントム『力の差は歴然、賢明な判断を求む』

サタン「……回りくどい奴だな」

ファントム『……ほう?』



サタン「一つ聞きたい」

ファントム『どうぞ』

サタン「なんでコイツを狙ってるんだ?」

ファントム『……それを説明するには私たちの目的から話さなければいけませんね』

サタン「言えよ、どうせすぐにでも俺を殺せるんだろ? 冥途の土産話に聞かせてくれ」

ファントム『ふふ、いいでしょう』


ファントム『私たちは"怪人会"』

ファントム『怪人の、怪人による、怪人のための世界を作る者たち』

サタン「怪人のための世界……だと?」

ファントム『ええ、増えすぎた人口、のさばるヒーロー、そして迫害される怪人』

ファントム『人類は、己たち以外の種の繁栄をよしとしない、ですから』

ファントム『私たちは地球の征服者たる人類を絶滅させ、新たに怪人の世界を作り上げるのです』


サタン「…………」

猫「わ、わからん」

サタン「それが、あんたらの組織の野望って奴か」

ファントム『野望? 野蛮な言い方ですね。これは怪人の総意による"願い"なのです』

ファントム『差別され、区別され、正義という一方的な暴力によってねじ伏せられる』

ファントム『そんな者たちの"願い"が、貴方たち人類を絶滅させよと告げているのです』

サタン「……随分自分勝手な幻聴だな」

ファントム『はッははは!! 自分勝手なのは貴方たちだ』

ファントム『自分たちに都合のいいようにすべてを塗り替え、奪い、征服する』

ファントム『己の行動を顧みてから非難していただきたいものだ!』

サタン「ま、確かにな。人間ほど傲慢で愚かな生物はいないだろうよ」


サタン「……話は分かった、だがどうしてコイツが必要なんだ?」

ファントム『やれやれ、ここまで言えばわかるでしょう』


サタン「怪人のための世界を作る、それには一人でも多くの同志が必要、てか」

ファントム『ご明察ッ!! というわけで、そろそろ答えをお聞かせ願いますか?』

サタン「……そんなくだらねえ理由か、人間といい勝負してるぜ」

猫「や、やだ、わたしはお前たちとはいかない!」

ファントム『聞き分けの悪い子だ。貴方の居場所はここにはない』

ファントム『私たちとともに来るのが一番いい、わかるかな?』

猫「わ、わからんもんっ! やだったらやだっ!!」

ファントム『……このクソガキ』


ぴくっ

サタン「ッ……!!」

ファントムが、ナイフを握る手に力を込めたのがわかる


おそらくコイツは、嫌がる猫を無理やり暴力で服従させようとしたのだろう

だから猫はこんなに傷ついているし、怖がっている

またコイツはやる気だった

……それを、俺は黙って見過ごすなんて


サタン「できるわきゃねえだろォォォォオオッ!!」

ガシッ!

ファントム『ッ!! こいつ、素手でナイフを!』

ファントム『さけ――ッ!!』


ズ、ドンッ!!

ファントム『――がッ?!』

ズザザァァァ……


猫「お、おまえっ!」

気を取られていたファントムに、腹部への一撃

さすがに躱しきれず、奴は10メートルほど地面を引きずった


サタン「……コイツは、俺に助けてと言った」

サタン「そして俺は、ヒーローで、お前は悪党」

サタン「闘うにはそれで十分! そうだろォ!? ファントムッ!!」


ザッ

ファントム『確かに……確かにそうだ』

ファントム『しかしその前に、私は己を恥じなければいけません』

ファントム『……貴方のような雑魚に、一撃をもらったこと』

ファントム『そしてッ!! これからボスの命令に背き、キサマを屠ってしまうことをォォォオッ!!』


ビリッ……!

やべぇ、本気を出させちまったみたいだ

もう隠す気なんてさらさらない殺気を、馬鹿みたいに噴出させながら奴は俺と向き合った

サタン「……へっ、本性隠しきれてないぜ」

ファントム『隠す必要は、もうない』

サタン「じゃあ、かかって来いよ。ヒーローが幼女誘拐を許すわけにはいかねえからな」

猫「お、おい、おまえ」

サタン「いいから下がってろ、ここは俺に任せ――ッ!?」


ドゴッ!!

サタン「が、はっ……!」

ファントム『よそ見をしている暇があるんですかねェ』


サタン「てめッ!」

鳩尾に一発もらう、対し反撃

が、俺の拳は空を切った

サタン「いッ!」

ファントム『いい反応をする』


次は背中から全身を突き抜けるような掌底

俺は振り向きつつ回し蹴りを放った

だが、またもや空振り

ファントム『それにフィジカルもいい』

ファントム『……しかし』



奴の姿が、見えない

声しか聞こえない

その視覚と聴覚のギャップが、さらに俺の感覚を狂わしていく


サタン「くそ、ったれ!!」

無我夢中で拳を振るう、しかし当たるはずがなかった

蜃気楼のように、現れては消え、現れては消える

いるはずの場所にいない

超スピードだとか、そんなちゃちなもんじゃねえ


ファントム『到底及ばない』


残像、いやこれは――


ファントム『これが私と君との力の差だ』

ファントム『……思い知ったか? "幻影のファントム"の力を』

ファントム『そして君の非力さを』


そう、幻影だ


サタン「……ぷっ」

サタン「あーはッはははッ! 決めポーズ取りやがって、何言うかと思ったら」

サタン「頭痛が痛いみてえなギャグ言ってんじゃねえ~~~~よッ!!」


痛む肩を抑え、かすむ世界を必死で繋ぎ留めながら俺は笑う

これは精いっぱいの強がりだ、おそらく奴にもバレている

装備も万全でない状態で、こんな化け物相手に適うはずなんてないのに

……俺は一体何を言ってるんだ



サタン「見えなくなるくらいしか能のない、中盤で出て来そうなちょい役が」

サタン「粋ってんじゃねえッ!!」


ファントム『…………ぶち、コロス』

猫「も、もうやめろっ! わたしはいいから、にげろ!」

猫「へんな奴もやめろっ! ついてく、ついてくからっ!」


ファントム『黙れ、畜生の分際で私に命令するな』


トスッ

猫「あ、え?」

サタン「――――ッ」

あっけなかった

一瞬だった


瞬きする間も与えられず、ファントムの放った一本のナイフが

猫の胸部に突き刺さった


鮮血が噴き出す

サタン「て、てめェ……てめェッ!!」


サタン「ぶっ殺すッ!!」
ファントム『ぶっ殺すッ!!』


ギィィィンッ!!

奴は真正面から仕掛けてきた

俺も真っ向から拳を振るう

衝突し合う、互いの拳

衝撃波が大地を揺らし、亀裂を生み出した


サタン「ォォォォォオオオオオッ!!」

ファントム『ァァァァァアアアアアッ!!』

逆の手で、ファントムの顔面に叩き込む

しかし

サタン「幻影……ッ!」

また何の手ごたえもなく空を切った

ファントム『そろそろ学習しろよこの脳タリンがァッ!!』

サタン「ぐッ!!」

腹部への強烈な一撃、くの字に折れ曲がる俺の体

追撃、顎を突き上げるアッパーカット


体が宙に浮く、そこへ

ファントム『"ファントムバレット"』

奴の両手に、黒炎が宿る

そして闇の軌跡を描いた、弾丸が


情け容赦なく貫いた


サタン「……ちくしょう、かっけーじゃねえか」

ファントム『何ッ?!』

サタン「だがなァ……いい距離だぜ、これは」

ファントム『私の攻撃を……掴んだ? 二度もッッ!!』

ファントム『いや、違うッ! この感触は、確かに!!』


無傷ではなかった、奴の攻撃は俺の腹部に侵入している

だがそれが狙い


サタン「"シャイニング――」

サタン「――フィンガァァアアアアアアアッ"!!!」



五指を広げ、奴の顔面を掴む

すると奴の仮面は粉々に砕け散り

さらに力を込めると……


ファントム「ぐ、おぉぉぉッ!」

掌の中心に添えた、閃光弾が炸裂した

指の間から溢れだす強烈な光

もしもの時のために隠し持っていた一発が、役に立った

奴は顔面を抑え、身もだえる


サタン「……安い一撃だが、しっかりお返しさせてもらったぜ」


ファントム「貴様……キサマァッ!!!」

ファントム「……ぐ、何故だ。何故追撃してこない」

ファントム「戦え、サタンッ!! どうしたァァッ! 闘えェェ!!」



――

サタン「はっ、はっ……」

猫「……あ、う」

サタン「待ってろ、すぐに助けてやる」


あれはただの時間稼ぎに過ぎない

あの程度では奴を倒すことはできないだろう

だが、そんなことよりも


この命を救うほうが先決だった


サタン「死なせてたまるか……! もう、あんなのは御免だ!」

サタン「そのために、俺はヒーローになったッッ!!」


きりのいいとこで終わり
安価しようと思ったけど次回の途中にやるわ^q^

よっしゃ、10時くらいから始めるで




――

サタン「はぁっ、はぁっ」

俺はファントムに目くらましを食らわせた後

必死で河川敷を走っていた、ネコを背負って

さすがに血にまみれたぼろ布の少女を背負うのは俺が捕まりかけないので

俺のジャージを着せてやった


サタン「血が、血が止まんねぇ」

応急処置はしてやった、完全なものじゃないが

だが背中を通して伝わるネコの血は、一向に止まる気配がない

猫「う、うぅぅ……」

ネコは揺れるたび、苦し気な声を出す

サタン「しっかりしろ! 俺が絶対に助けてやる……!」


そうだ、何に変えても、こいつを守る

それがヒーローであり、俺がヒーローになった理由でも――


サタン「――ッ?! ぐ、なんでだ。俺がヒーローになったのは、あの人に憧れたからで」

サタン「だけど、なんだ、この既視感は……」

サタン「俺は、前にこんな経験を――」

猫「ふ、ぁぁっ!!」

サタン「ッ! ってんなこと考えてる場合じゃねえ……」

サタン「はやく、はやくしないと」

この河川敷を走っているのには訳がある

サタン「……この時間なら、きっと」


サタン「…………ッ! いたッ!」

ある人物を探すためだった


無免「……? あぁ、サタンく……ど、どうしたんだいその子は!」

念のためにと持っていたヒーロー衣装の仮面だけをつけ

河川敷で一休みしていた無免さんの元に走り寄った

サタン「詳しい話は、あとってことにしてもらえませんかね……」

サタン「とにかくこの子を、安静な場所に、そしてちゃんとした手当を……」

無免「話は後って……サタン君、君は今、一体誰と」

無免さんは俺の隠しきれていない擦り傷を見て、心配そうにする

だが

無免「……いや、わかった。任せてくれ」


首を横に振るうと、笑顔でそう答えてくれた


サタン「無免さん……恩に切ります」

無免「困ったときはお互い様だ。それに傷ついた子を見て、ヒーローが放っておけるわけがない」

……やっぱり、無免さんは聖人だった

もしかしたら無免さんも襲われるかもしれないのだ

にも拘わらず、快く引き受けてくれるあたり、本物のヒーローだと言えるだろう

俺は一生、この人には頭が上がらない気がする


サタン「じゃあ、よろしくお願いします」

無免「あぁ。あ、サタン君、一つ言っておくけど」

サタン「はい?」

無免「……死ぬなよ」


サタン「……もちろんです」



――

ファントム『サーターンくーん』

ファントム『……どこにいるのかなぁ?』


きゃー、わー

ファントム『はやくしないとぉ……』

「う、ぐっ!?」

ファントム『善良な一般市民が殺されてしまうよぉ~? く、ははははっ!!』

「な、なんで、かいじんが……こんなとこに」

ファントム『それはねぇ? 私が怪人だからだよォ~~~~??』


ファントム『嵐のごとく現れ、獣のごとく血を求めッ! 殺戮するッ!!』

ファントム『そして――』


サタン「正義の前にひれ伏すんだろ?」


ファントム『サーターンくぅーん……!!』

サタン「悪党にしちゃありきたりすぎる展開だな」

ファントム『どこに行ってたのかなァァァァ!!! おめかしのためかなァァ??』

サタン「ヒーローとして戦うなら、こっちのほうがしっくり来るんでね」

ファントム『ヒーロー?? ヒーローォォォ!! そんなものはもう関係ないッ!!』

ファントム『私を散々コケにしてくれたツケだ。何があろうと、どうなろうと』


ファントム『情け容赦なくッ!! 君を殺すッッ!!!』


サタン「……随分威勢がいいじゃねえか」

ファントム『くくっ、そんな大口を叩いていられるのも今のうちだ……』

サタン「……わかったわかった、だったらさっさと死合おうぜ」

サタン「だがその前に、あんたの敵が俺だっていうんなら、その手を離せ」


ファントム『…………』


「ひ、ひーろー、ヒーローなのか?」

ファントム『ふん、その口ぶりは気に入りませんが、いいでしょう』

ファントム『今回ばかりは、見逃してあげます』

ドサッ

「ひぃ、ひぃ……!」

サタン「……立てますか? ここは危険です、早く逃げてください」

「わ、わかった。あ、あ、ありがとう」

サタン「いえ、当然のことですから」

サタン「それよりも早くッ!」

「あ、あぁッ」


ファントム『ヒーローというのも、大変ですねェ……』

ファントム『己の足かせにしかならないものを、命を懸けて守らねばならない』

ファントム『そこには自己満足以外の何も生まれないというのにッッ!!』

ファントム『君たちのやっていることはすべて無駄! 無駄なんですよォ!!』


サタン「無駄かどうかは、あんたにゃわかんねえよ」

サタン「守るものがあるってのは、いいもんだぜ」

サタン「特に、俺にとってはな」

ファントム『減らず口を……!!』


サタン(駄目だコイツ……最初より頭がぶっ飛んじまってやがる)

サタン(このまま市街で戦うわけにゃいかんな、ここは――)



行動安価

①街はずれの廃ビルに誘導しよう

②河川敷なら広くて戦いやすいはずだ

③このまま市街地の地形を利用して戦おう

安価下3




サタン(街はずれの廃ビルに誘導しよう、あそこなら――)

ファントム『……よそ見をしている暇があるんですかねェ』

サタン「ッ?!」


バッギィィッッ!!

サタン「がッ……!」

ズサァァ……

ファントム『どうしたんです? 死合うのでしょう? だったら……』


ファントム『今ここでッ! 今すぐにッ!! 君を殺してさしあげますよォォォォォオオオオッ!!』

サタン「ぐ、ぎ、クソッ!」

ダッ!

ファントム『おや、鬼ごっこですか?』



またもや背後に瞬間移動したファントムに殴り飛ばされるも

俺はすぐさま起き上がり走り出す、だが

フッ……

ファントム『いいでしょうッ!! ただし!!』


ズドォォッ!!

ファントム『鬼は永遠にこの私だ、君はいつどこから来るともわからない恐怖におびえ』

ファントム『そしてその身朽ち果てるまで! 無様に逃げ続けるのですッ! くっ、ははははっ!!』

サタン「……上等じゃねえか」

サタン「やってみろよ」

ファントム『……君は相当頭が悪いようだ』

サタン「頭のネジがぶっ飛んでる奴に言われたくないね」

ファントム『ッ!!』



サタン「……来るッ!」

幻影

俺の目では捉えることができない

幻を捉えることはできない


サタン「だが、実体は確かに存在する!!」

敵がいるだろうおおよその位置に、勘でワイヤーを射出する

先にかぎづめのついた特別製だ

持ち運びが楽なコイツと、あといくつかの道具しかもってきていないが

あるものでどうにかやるしかない


ファントム『どこを狙っているんですかねェ』

背後に感じる殺気

だが俺は感じ取る前に拳を振るっていた

しかし


ファントム『くっくっ、無意味ですよ』



またもや空振りだ

だがそれでいい

再び背後に回り込むファントムを無視し、俺はそのまま遠ざかるように前転、回避した


ファントム『学習していただきたいものですねェ……ッ!?』

背中越しに、奴の余裕綽々な表情が歪むのを感じた

ファントム『ワイヤー……ッ! 何故……はっ!』

そう、ただ闇雲に狙った訳じゃない

電柱と塀の隙間を通るように撃ったんだ

ワイヤーは塀にはじかれ、電柱を支点に弧を描くように

吸い寄せられるようにファントムの体にまとわりつくッ!



サタン「後ろにまわりゃいいなんて安直な考え、いまどきの小学生にも笑われちまうぜ?」

グイッ!!

宙に浮いたワイヤーを力任せに手繰り寄せる

すると俺とファントムの距離はみるみるうちに広がり

奴の体を塀へと叩き付けた


サタン「どうだ! こいつでちょっとは――」

ファントム『ちょっとは、何ですか?』


ゾクッ!!

恐る恐る振り向く、そこには

ファントム『私の幻影を、超スピードだなんて低俗なものと一緒にしないでもらいたい』

サタン「な、なんでだッ! 確かにとらえたはず……がぁッ!」

鳩尾に一撃、思わず膝をつく



ファントム『決して捉えることができない! 故に幻影! 故に悪霊!』

ファントム『私に取り憑かれた時点で、貴方の敗北、貴方の絶望、貴方の絶対的な死ッッ!!』

ファントム『その定めが、決まっていたッッ!!』


サタン「……ペッ、ほんとにごちゃごちゃうるせえ奴だな」

サタン「いいから続けようぜ」

ファントム『……いいでしょう』

ファントム『その間抜け面が苦痛にゆがみ、助けを懇願するさまを見届けさせていただきます』


フッ……

また来る

俺は道の角を曲がり、遮蔽物の影に飛び込んだ


ファントム『無駄』

ドボォッッ!!

そして吹き飛ばされる


サタン「しょっぺえパンチだなッ!!」

起き上がる

ファントム『さぁ、逃げ惑いなさい!!』


次は線路に差し掛かったところ

遮断機が降りている

サタン「ルールを守ってる場合じゃねえよな……!」

勢いよく飛び越え――


ファントム『本気で逃げようとしているんですか?』

ズ、ドォッ!!



満身創痍ってのはこのことだ

正直もう殴られるのは勘弁

だって、割に合わねえもん

……ここまで傷ついて、ようやく手にしたのは

こいつを存分にぶちのめせる機会だけだ


サタン「わっかんねェ……なぁ」

ファントム『……救いようのない阿保ですね、貴方は』

サタン「こんなにやられちまって、ボロボロで、全身が悲鳴あげてるってのに」

サタン「あんたに負ける気がしないんだ」


ファントム『……ほう』

ファントム『だとすれば私のとんだ見込み違いというわけですね』


サタン「あ?」

ファントム『貴方には力を感じた、そして本来ならばこちら側に来るべき存在だとも』

サタン「こちら側だ? 悪いが、怪人のコスプレなんて興味ないんでね」

ファントム『貴方には影を感じる。それも濃い影だ』

サタン「…………」

ファントム『もしかすれば……と思いましたが』

ファントム『やはり、これ以上邪魔になる前に、消しておいたほうが賢明だ』

サタン「未練と怨念たらたらのB級ホラー野郎に消されるなんて、勘弁だぜ」


ファントム『――その口、二度と開かぬようつぶしてさしあげましょう』

サタン「……ッ!!」


ドッ……ガァァァァアアッ!!


今日一番の威力だった

俺の体はビルの入り口を突き破り、破片をまき散らす


ファントム『……ここが貴方の墓場になるでしょう』


ザリ、ザリ……

破片を踏みしだき、ファントムが遅れてやってきた


ファントム『さぁ、どこですか? 鬼ごっこの次はかくれんぼですかッ!!』


サタン「……そうだな」

俺は姿を見せずに声をあげる

サタン「逃げ続けるのもそろそろ飽きてきた頃だ」

サタン「……今度は、俺が鬼になる番って訳だぜ」

続く
ちなみに②だと無免さんがあとから応援に来る予定やったんや

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom