女「……?やけに冷静だな。怖くないのか?」
王子「うん、正直こんな生活うんざりしてたんだ」
女「まあそちらの事情はどうだってかまわない。私は任せられた仕事を遂行するだけ」
王子「大人しくしてるから痛いのはやめてね」
どこかの地下室
女「今日からここがお前の家だ」
王子「えー外見えないのー?」
女「文句は私を雇ったやつに言ってほしいね。私だってここでしばらく生活するんだ」
王子「臭いし」
女「それは私も同感」
王子「一応聞いておくけどなんで僕をさらったの?」
女「知らないわ、革命だとかに興味はないし雇われたから連れ去っただけよ」
王子「ふーん」
ガチャ
男「女、…いるみたいだな」
女「まあ人ひとりさらうくらいどうということもないわ」
王子「お仲間?」
女「一応ね」
男「一応な」
王子「……なんかあんまり仲良くないんだね」
男「この世界の人間なんてみんなこんなもんさ。……にしてもあんたよくしゃべるな」
王子「…………」
王子「僕は小さな時から普通の子供とは隔離されて歴史や数学、経済の勉強ばかり、
いつも同じ人間と話してたから他の人と話せるのはちょっとうれしかったりするんだ」
男「……誘拐でも?」
王子「うん」
男「そいつは可哀想な境遇だねぇ、同情するよ」
女「あんましゃべりすぎない方がいいんじゃない?」
男「…まあそうか、そうだな」
女「とりあえず依頼人から指示があるまでは待機だったわね」
男「ああ」
女「……そういやああなた、何歳だったかしら?」
王子「13」
男「だったよな……にしてはえらく体が小さいんだな」
王子「ずっと外に出なかったからかな?」
数時間後
男「あっ、そうそう」ピコピコ携帯
女「……」ペラペラ読書中
王子「ねえ、誘拐犯の男さん!」
男「ああ、なんだ?」
王子「何やってるの?」
男「これか、これはな『パズル&ワイバーンズ』ってゲームでな……」
王子「パズルとワイバーンを組み合わせるなんてつまらなさそうなゲームだね」
女「……というか、あなた仮にもこの国の象徴なんだしこの国の有名ゲームくらい知らないの?」
王子「ずっと限られた本ばかり読んでたからよく知らないんだ」
女「そう……」
男「やってみるか?」
王子「なんともつまらなさそうだけどやってみようかな」
女「男、そうやすやすと人質にインターネットを利用させるのは避けたほうがいいんじゃない?」
男「その辺はきっちり対策してるから大丈夫」
王子「で、やり方は?」
数時間後
王子「面白いね」
男「なかなか捨てたもんじゃないだろ?」
王子「今まで僕がゲームに触れられなかったことが本当に遺憾だよ」
男「上からの命令が来るまでの間だが色んなゲーム教えてやるよ」
王子「本当!?ありがとう!」
女「なにやってんだか……」
男「そうだな、じゃあまずは世界的にも有名でかなり一般的で色んな層に人気のあるこれなんかどうだ」
王子「これは?」
男「『ポケモン』つってな捕まえたモンスター同士で戦わせるゲームだ」
王子「ふむ」
男「本来、ストーリーを楽しむのが基本だがハイレベルな人間…まあ廃人って呼ばれるレベルになると
ポケモンの育成方法だとかまで考えて始める」
男「まあ今回はもちろん王子さんにはストーリーを楽しんでもらうがね」
王子「嫌だ」
男「え?」
王子「王がぬるま湯で満足できるか、廃人になるぞ」
男「お、いおい、本気か?」
王子「いいから早く教えて!」
男「よ、よし分かったまずはやりながらポケモンのシステムを理解してもらおう…」
*数時間後*
男「ってわけだ」
王子「なるほどなんとなくわかった気がする」
女「たかだかゲームに真剣過ぎじゃない?」
男「まず種族値、これはポケモンが種類ごとにもつ独自のステータスだ。
基準としては85より高いと使えるレベルって感じかな」
王子「このイワークってポケモン防御の種族値はこんなにあるのに攻撃は弱いんだね」
男「(ポケモン界では有名な煽りを自ら見つけるとは…)」
男「努力値、これは経験値と一緒にたまっていく裏ステータスだ。
どのポケモンを倒したかによってもらえる努力値は変わる。『たとえばコイキングを倒すと素早さに1』とかな
ゲーム内では基礎ポイントって呼ばれ方だ。
努力値が入ると入ったステータスが強くなる」
王子「努力値は510までしかたまらないのか…ふむ」
男「努力値は弱点を補う形で振られたり長所を伸ばすために振られたり様々だ」
王子「個体値っていうのは?」
男「種族値はポケモンの種類によって違う数値だったが個体値ってのはその名の通り、個体によって違う
いわば才能みたいなもんで、『このフーディンは普通のフーディンよりも特殊攻撃が強い』とかがわかる
これは0から31まであって特に最強である31はvと呼ばれる」
男「分かるか?」
王子「うん、大丈夫」
男「(これだけの説明で理解するなんてやっぱオツムは天下一品なのか……?)」
王子「ところで女はポケモンをやらないの?」
女「……」
男「ああーポケモンってのは基本的に男が良くやるゲームでなー」
女「『今は』やってないわ」
男「ほら、今はやってないんだって…って、え?」
女「過去にレート1900程度だったくらいかしら」
王子「れーと?ん?」
男「(ホンモノのガチの人だ……)」
男「(さっきゲームに真剣になりすぎって言ってたような…)」
王子「じゃああとでやろうよ!」
女「男と遊んでなさい。私は興味ないから」
王子「( �・•ω•�・ )」
女「……」
王子「( �・•ω•�・ )」
女「一回だけ」
男「(意外とちょろかった…!)」
数時間後
王子「男よわーい」
男「お前…強すぎだろ…!メタグロスにジュエルシャドボを打たれるなんて思ってもみなかった…」
王子「女相手してー!」
女「1回だけ、約束だからね」
男「すごい激戦だった……」
王子「ぬぬぬ、砂ダメで決着なんて納得いかない…」
女「そこまで計算に入れて当然よ?」
男「なんかもう俺の入るところないんですけど」
王子「他のゲームやりたい!」
男「よし、んじゃあ何にしようかねえ……ボードゲームとかカードゲームってのはどうだ?」
王子「楽しいならなんでも!」
男「そうだな、んじゃあカードゲームは少し難しいしボードゲームから」
女「ボードゲームって…もしかして私もやるの?」
男「え、そりゃそうだろ。ボードゲーム二人でやれって鬼畜すぎ」
女「……」
男「よーっし女の了承も得たところで『カタン』をやるか」
王子「わーい」
女「了承したつもりはないのだけれど……」
男「ルールはちょっとややこしいぞー」
男「まずはサイコロを振ってー……」
****
男「よっしゃあー!4軒目の陣地だァ!!」
王子「ぐぬぬ、運が悪すぎる…!」
女「最初に6と8の近辺を男に取られたのはかなり痛手だったか…」
男「ほらほらァどうした?ポケモンごときの育成ゲーで満足してたお二人さん!」
女「この手のゲームは最初で大きな差がつくと追いつくのが難しいゲームなのよね…」
王子「!、そうだ!」
男「どうした?残念だが木材と石材を交換してやることはできんぞ?」
王子「その必要はない!女と共同戦線を組めば女が羊と石材、僕が木材とレンガをそれぞれに提供し合えばいい!もちろん男にはあげないよ!」
女「確かにそれなら実質自分のターンが2ターンあるようなもの、陣地も2倍だしワンチャンスあるかもしれないわね」
男「あれ、あの、」
***
王子「上がりだー!」
女「ここで1ポイントを引けば…はい、わたしもあがり」
男「……」
王子「カタンって世界だね。最初から出てる杭は打たれるんだよ」
女「男って結局運がよかったのか悪かったのか…」
男「つ、つぎ!次のゲームだッッ!」
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