二宮飛鳥「一面の銀世界」 (26)




光「はー…あったかい……」

蘭子「深淵より出ずる魔の凍気…忌まわしき太陽でさえ力を潜ませる…」

光「朝は冷え込むよね…あってよかったな」


光「晶葉の即興ストーブ」

晶葉「専門はロボット工学のつもりだったが、やってみれば出来るものだ」

晶葉「全く自分の才能が恐ろしいな!」

蘭子「夢の残骸も、寄り集まりて希望足り得るか」

光「…随分と都合良くスクラップがあったもんだね」

晶葉「何に使ったんだか自分でも思い出せん」

蘭子「アカシックレコードの中身に興味は無いわ、瞳に写るのはその結晶のみ」





飛鳥「…………」





光「窓際で何やってるんだろう」

晶葉「気取りたいんじゃないのか」

蘭子「友より伝わる思惟が瞳から私を蝕む…」


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光「飛鳥もこっちきなよー、蘭子が見てるだけで寒いっていってるぞー」


飛鳥「……ねぇ光」

光「うん?」

飛鳥「こういうのを銀世界っていうんだね」


飛鳥「雑多に塗り込められた世界も、ノイズみたいな音達も、この瞬間だけはまっさらな白に染まるんだね」

飛鳥「ただ其処に在るだけと言うに、ひたすらに静寂を振り撒いて、人々を巻き込んでいく」

飛鳥「……いや、人だけじゃない、世界だ」

飛鳥「境界の無くなったフラット、…成る程騒がしいのが好みのボクだけれど、流石にこれを見たら押し黙らざるを得ないね」

飛鳥「凄く非日常、って感じだ」


飛鳥「そう思わないかい?」


光「……うん、そうだな!」

蘭子「凄まじき言霊…!…障壁が破られんほどの…」

晶葉「目がものすごく輝いているんだが…」



飛鳥「…………」マジマジ





光「寒くないのかなぁ……」

蘭子「せめて防御術式くらい…」



飛鳥「………」ガタッ



晶葉「今度はなんだ?」



飛鳥「……」ガサガサ



防寒具一式『』


飛鳥「……………」

飛鳥「………よし」



 バタバタバタバタ


 ガチャ

 バタン



光「速い」

蘭子「出てっちゃった…」





晶葉「………わかったぞ」

光「何が?」

晶葉「はしゃいでるんだ、あれは」


晶葉「……ほら、飛鳥の出身って、静岡だっただろう」

晶葉「おそろしい程雪が降らないんだ、あそこ」

光「へぇ、晶葉は物知りだな」

晶葉「ふふん♪……ま、これぐらいはな」

蘭子「…この地に召喚されて間もないが故、真なる瞳に氷雪を捉えたのはこれが初めてか」

光「…………」





光「意外と子供っぽいんだなぁ」

晶葉「お茶が苦手だっていうのも、実の所ただの子供舌なんじゃないか」




蘭子「私の気は、この結界を抜け出すには至らずよ…」

光「寒いったらもう、最近トレーニング休みがちだよ、アタシ」

晶葉「まったく、この頃は手がかじかんで細かい作業がやりにくくてな」

蘭子「掌に装具を纏うなどは……」

晶葉「試したさ、……結局やりにくい事に変わりは無かったな」
 


光「…やる前にわかんないか?それ」

晶葉「ええい、実践主義なんだ、私は」




    『あっははははは!』

    『ぎにゃあっ!?何するにゃ!?』




蘭子「こ、好奇故の高揚は闇の冷気でさえはね退けるか」

晶葉「そういう次元か?」

光「なんだか縮こまってるのが情けなくなってくるなぁ…」





 ガチャリ


みく「…コート着ててよかった…」


晶葉「斑点が付いてるぞ」

光「…流石に乾くよね」

みく「乾かなかったら一時間説教にゃ」


みく「…それにしても見たこと無い瞳してたね…みくがいつか忘れてしまった物を湛えていたにゃ」



みく「ていうか良さそうな物使ってるにゃあ、みくも入れてよ」

蘭子「…残念だが、光の恩恵に全てが与れるとは限らないのだ…」

晶葉「所詮は急増品、所詮はその場しのぎだな」

光「す、すいません」

みく「…まあ、他に心当たりが無い訳じゃないし、仕方ないにゃ」


みく「またねー」


 ガチャリ



蘭子「……心当たりとは」

光「こたつとか?」

晶葉「安直だな」



晶葉「…こうして暖に当たっている私達が猫なら、外ではしゃいでる飛鳥は犬か?」

蘭子「懐かしき旋律ね」

光「庭ってよりは表だし、こたつは無いけどね」

蘭子「しかし、灼熱の匣へ身を投げるなど、血が沸き上がってしまいそう」

光「足を突っ込んでおくぐらいがちょうどいいね」


文香「なるほど……皆さんはネコでしたか…」ヌゥ

蘭子「ひゃあ!?」ビクッ

文香「そして飛鳥さんがタチと…」

晶葉「待て、何の話をしている」

光「あ、アタシは何も知らないからな!」

文香「ちょっとした…ジョークです……」



文香「……そういうこと……でしたか…」

文香「その歌は…よく覚えています……」

蘭子「汝の魂は如何様に?」

文香「私の地元は…よく、雪が……」

文香「……それこそ、街が埋まってしまうほど…降りましたが…」


文香「………」チラリ



   『このレイナサマに向かっ…へぶっ!』

   『ははっ!ボクを前に喋る暇なんて!』

   『やったわねぇ!?』



文香「………さっきの話に準えるなら、…ネコ…でしょうね……」

光「エンジョイしてるなぁ…」


文香「…それ、暖かい…ですか……?」

晶葉「無論だ!何せ私が作ったんだからな!……ロボにする時間がなかったのが残念だが」

光(ロボにしなくても十分完成してると思うけどな……)

蘭子「むむ…時に文香よ…その身を凍の波動に蝕まれはせぬのか?」

文香「長野は……0度を下回ることも…珍しく、ありませんでしたから…」

文香「…それに比べたら……東京の冬は……」


文香「冬は……………」





文香「…………へくちっ」


蘭子「…………」

晶葉「…………」

光「…………」




光「文香さんって、Pが愛媛の帰りに連れてきてた気が……」

文香「すみません…ちょっと…見栄張りたかったんです……」

文香「長野に住んでいたのは…昔です……」



文香「……こたつが…出してあった筈なので……大人しく…入ってきます……」

蘭子「また会おうぞ!」



 ガチャ


 バタン


光「……ほら、やっぱりこたつなんだよ」

晶葉「何の話……ああ、さっきのか」



 ガチャリ



飛鳥「………………」


 バタン


光「ん、おかえり」


飛鳥「……………」キョロキョロ

蘭子「何を求める?」


飛鳥「……財布、ボクの財布はどこかな」

晶葉「そこだが、何か買うのか?」

飛鳥「いやね……」




飛鳥「イチゴシロップでも買ってこようかと」

光「先に言うけど、雪は食べちゃダメだからね?」



飛鳥「……………」シュン

光「そ、そんな目に見えて落ち込まないでよ……」

蘭子(………かわいい)

晶葉「雪なんて何が混じってるか解ったものじゃないぞ」

飛鳥「えっ」

蘭子「えっ」

晶葉「都会なんかだと基本的に埃だの排気ガスだの……」




飛鳥「………………」

晶葉「…そんな目で見ないでくれ」



蘭子「……真か」

光「うん…知ってた」

晶葉「ていうか、びしょびしょじゃないか」

飛鳥「うん?…、…ああ、そうだね」

蘭子「濡れた衣は、忌々しき呪いを宿すわ!」

飛鳥「その心配は要らないさ、上着が濡れたって……」

光「…それを言いたいなら、髪を拭くべきだと思うな、アタシは」

飛鳥「………いいじゃないか、今日はエクステだって外してるんだ」

晶葉「その心配はしてないぞ……」


蘭子「…それにしても、随分と氷雪にその身を委ねたようね」

光「雪に飛び込んだりしたんじゃないか?」ハハハ

飛鳥「よく理解ったね」

光「えっ」

飛鳥「まぁ、それどけじゃあないけれども」

晶葉「ほう?」

飛鳥「いやね、麗奈と雪玉を投げ合ってたんだけれども」

蘭子「うむ」

飛鳥「そしたらさ、不意に誰もいない筈の背中に雪玉が飛んできたんだ」

飛鳥「誰だろうと思って見たらね、友紀さんが居たんだよ」

飛鳥「野球好きなだけあるんだね、すごいコントロールだったよ」

飛鳥「でもそっちばかり気にしていられないんだ、麗奈がバズーカに雪玉を詰め始めるものだから」

飛鳥「おかげでこのざまさ、挟撃なんてされたらひとたまりもないね」

飛鳥「まあ、ボクとしてもただで転ぶつもりはなかったけれど」

飛鳥「ビギナーズラックって言うのかな、ダメもとで投げつけてみたらさ───………」




飛鳥「……………」



飛鳥「…………はっ、…」


光「うん、楽しんできたんだな!」

飛鳥「あ、いや……」

晶葉「流石に、言い訳は利かないな」



飛鳥「………………」


蘭子「我は汝の魂に輝きを求まん…」

晶葉「自爆したんじゃないか…」




飛鳥「………か……だ……」

光「うん?」




飛鳥「そこでぬくぬくしてるからそんな事が言えるんだ」ガシッ ガシッ

蘭子「んむっ!?」
光「おうっ!?」


飛鳥「外に出さえすればさぁ、キミ達だって!!」グイグイ

蘭子「お、おお、」ズリズリズリズリ……

光「晶葉ぁー……」ズリズリズリズリ……




  ガチャ


  バタン



晶葉「……………」



晶葉「……、………」



蘭子「さささむいぃ……」ガチガチガチガチガチ

光「外に連れ出すならせめてうわぎくらいぃ…」ガチガチガチガチガチ

飛鳥「だったらこれでボクも同じ条件だ」バッ



上着『サヨナラ!』



蘭子「そのような問題じゃないい…」


飛鳥「…………」‥‥‥‥ガチガチガチガチ

光「寒いんじゃないかぁ……」


蘭子「あ、あき、晶葉ちゃんは………?」

蘭子「…へっくし!」


飛鳥「……く、来るさ………」

飛鳥「ボクの晶……………」


飛鳥「………ボクの知ってる晶葉ならね…」

光(これは恥ずかしい言い間違い)





『飛鳥あ!!』



 ドドドドドドドドド



蘭子「何!?」

飛鳥「来た」




晶葉『そんなに雪遊びがしたいなら、私の全自動雪玉投擲ロボが相手になってやる!』


 ドドドドドドドドド



光「ノリノリじゃないか!」

飛鳥「多分、倉庫で眠ってたのが灯の目を見る機会ができて嬉しいんだろう」

蘭子「ゆきだまとか浴びたくない……」


飛鳥「ボク一人じゃどうしうもない相手だね」

飛鳥「…でも、ここには」ガッシリ

光「せめて!せめて上着ぐらい!」

飛鳥「運動をしていればさ」

蘭子「雪玉が中ったら冷たいよぉ!」


晶葉「装填完了!投擲よーい!」


光「晶葉は何のスイッチが入ったんだぁ!?」

飛鳥「多分、取り残された寂しさと、作ったっきりのロボを運用したいっていう科学者魂が」
蘭子「へっくしょいっ!!」

蘭子「んんっ」ズビーッ


蘭子「誰か助けて……」





『そこまでだ、お前等』



飛鳥「だ、誰だ!?」




モバP「…………」

拓海「…………」

真奈美「…………」

きらり「………」ニョワー

のあ「…………」




晶葉「な、何を……」


モバP「………………」



モバP「雪かきの、時間だ………」





─────…………

───………



光「───はーっくしょいっ!!」

光「ぅ……」ズビー


蘭子「む、闇の呪縛か?」

光「風邪……じゃないといいけど」

晶葉「昨日無理矢理連れ出されたからか?」

光「もしそうだったら飛鳥のことちょっと恨んじゃうぞ……」

蘭子「氷の遊戯も、破壊者により阻まれたわね」

光「骨折り損のくたびれ儲け……は、ちょっと違うかな?」


晶葉「そういえば、当の飛鳥はどうしたんだ?」


 ガチャ


モバP「おはようございます」


蘭子「煩わしい太陽ね!」

光「おはよう!」

蘭子「我が友よ!やはり我らの魂は惹かれ合うようね!」

モバP「ん、なんだ」

光「いやさ、今、飛鳥が見当たらないって話をしていたんだ」

光「何か知ってないか?」

モバP「……ああ、それか……」





モバP「なんか、腹壊したんだそうなんだが……」

晶葉「あの馬鹿……!」

終わり

ssを書く度に投下間隔と長さが劣化していく不具合を治す薬が欲しい

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