新しい家、新しい学校、新しい家族。
何もかも真新しい環境でも、私は動じない。
「……」
けれど、そんな中で一つ…
ううん、たった一人だけ私を掻き乱す人がいる。
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「なーに読んどるん? ん、これプルーストやろ?」
「…はい、知ってるんですか?」
こうして勝手に部屋に入ってきて、
「囓る程度やけどな? あ、折角やし読ましたって? これ、まだ読んだことないんよ」
「…いいですけど、自分の部屋で読んで下さいね?」
こうして無駄に絡んでくる。
「ええー… なんや最近つめたいなぁ、もしかして反抗期なん?」
「違います」
それは…
美しくて、優しくて、それでいて気取らない理想のお義姉ちゃん。
「どうして私の部屋を占領するんですか…」
「竜華さん」
戯けた感じで接してくる、私の新しい…
お義姉ちゃん。
「もおー、お姉ちゃん、そう呼んでって言ったやん!」
「竜華さん」
「むっ… やっぱり反抗期や」
「…そんなに、お姉ちゃん、って呼んで欲しいんですか?」
「そんなん当たり前やん? だってウチら姉妹なんやし」
「……」
「それに咲ちゃんに、お姉ちゃん、そう呼ばれると、なんかキュンってするんよー」
「……」
「ひい、そんな目で見んといてー、お姉ちゃんカタカタしてまうわ」
どこか戯けた感じで接してくる。
それでも遠慮なしに距離を縮めようとするこの人をお義姉ちゃんと呼べず、もう半年が過ぎた。
竜華さんと呼ぶことで、これ以上この気持ちが大きくならないように蓋をしているのかもしれない。
「んー、せやけど、そんな咲ちゃんも悪くないわなー」
「引っつかないで下さい」
「もしかして照れとるん? かわえーなぁー ほら、よしよし」
「…子ども扱いしないで下さいよ」
「ちゃうちゃう、子ども扱いやなくて… 可愛い妹扱いやでー! ぎゅー」
「…暑い」
髪が撫でられる、そして堅く抱き締められる。
子ども扱いのような、それとも違うようなに、その行為に閉じかけていた蓋が開きそうになる。
そんなことをされても私は…
「…ウチな、咲ちゃんが家に来てくれた時、本当に嬉しかったんや」
こっちに訴えかける、この声。
それで語りかけられると、胸が締めつけられるんだ。
「ほらウチ一人っ子やろ? しかもママは働いとるし、学校では怜やセーラがおるからええんやけど… やっぱり家では寂しかったんや」
「……」
「そこに来てくれたんが、愛嬌があって気立てよくて、それでいて見返りを求めない… そんな可愛らしい咲で良かったって」
「…ます」
こっちを見る、この瞳。
それで見つめられると、涙が出そうになるんだ。
「咲?」
「…違います、私は違います。私は違う場所で、違う時間に、違う関係で…」
「え、え? ど、どないしたん…」
お父さんが再婚したから出来たお義姉ちゃん、血の繋がりはない。
「…なんでもないです」
「…やっぱりウチが嫌いなんやね、咲ちゃん」
「……」
そんな声で問いかけないで下さい。
「それでも、それでもウチは… ごめんな… 夕飯できたら呼ぶわ」
そんな目で見つめないで下さい。
「……」
自分で望んだことなのに竜華さんが出て行った途端、あの声が聞きたくなる、あの瞳に写りたくなる。
私は我儘だ。
竜華さんが欲しいのに自分が傷つきたくないから、受け入れたり突き放したりを繰り返している。
それが相手を傷つけていると自覚しながら。
あの寂しそうな笑顔が忘れられない、部屋を出て行く時にみせたあの微笑みが。
ごめんなさい、竜華さん。
あと少し、あと少しだけで良いですから、この胸の痛みに私も耐えてみせますから…
だからどうか… どうか、見捨てないで下さい。
私の、お姉ちゃん。
お し ま い
竜華誕生日に間に合わせようと書いたが間に合わない上にしょぼいという…
すまなかったがこれで終わりだ、許せ
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