希「な……なんやこれ!?」
希「朝一にチャイムで叩き起こされたと思ったら……クール宅急便って」
希「しかも中身はお肉がぎっしり……なに? まつさか、うし? えっ、ちょ、もしかしてめちゃくちゃいいお肉やないの!?」
希「差出人は――両親やね。そういえば今はそっちの方で働いてるんやったっけ?」
希「ほぇー、それにしたってなんでいきなり……」ピラッ
希「ん? 手紙?」
希「なになに? 希へ……誕生日おめでとう……友達と一緒に食べてください……?」
希「――あぁ、今日ってウチの誕生日、やったんやね?」
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希「高三にもなると自分の誕生日なんていちいち覚えてへんものなんやなぁ……」シミジミ
希「去年も両親からのプレゼントはあったけど、こんな豪華なもんやなかったし」
希「えりちもそういうイベントには興味なかったし……そもそも誕生日教え合ってすらないんよね」
希「まあウチは名簿見て知ってはいるけど……」
希「そっか……今年はμ'sのみんながおるんか……」
希「よっしゃ、せっかくやしみんな呼んで焼き肉パーティーでもしよか!」
希(とは言ったものの……)
絵里「おはよう希、今日もいい天気ね」
希(自分から自分の誕生日パーティーに誘うのって結構恥ずかしい……)
希「お、おはよーさん。まあ、なんや、こんな日やし、やっぱり晴れてた方がええな?」
絵里「そっ――そうね! は、晴れててよかったわぁ……」
希(ん? これは……)
絵里「そ、それでね希、今日の練習はお休みみたいで……」
希(露骨な話題そらし。これはもしかして? もしかすると?)
希「なあえりち、ウチに隠してることとかあるん?」
絵里「な――ないわよ!? 私が希に隠し事なんてするわけないじゃない!」ワタワタ
希(ははーん?)
希(早とちりってのも格好悪いし、一応他の人にも鎌かけてみよか?)
海未「おや? どうしたのです希、こんな朝から二年生の教室になど」
希「いやちょっとね、今日の練習がお休みって聞いたから、なんでやろなぁと」
海未「そろそろ中間試験の時期ですから、テスト勉強のための休暇ということで絵里には伝えていたのですが……」
希「あ、そうなんや」
希(もっともらしい理由はあらかじめ考えているはず。でもアドリブに弱い海未ちゃんなら――)
希「でもえりちは個別練習のためって言ってたんよ?」
海未「えっ!? あ、あれ? 上手く伝わって……」オロオロ
希「……しかもな、えりちってばウチに隠し事してるみたいなんよ」
海未「え、絵里――? さすがにそれはまず――っあ」シマッタ
希「……ま、テスト勉強なら任しといてーな。それにえりちの方だってウチの思い過ごしかもしれないし、心配かけてごめんな?」
海未「あ、はぁ……」
希「そろそろ授業やね、またな、海未ちゃん」
海未「あっ、はい!」アブナカッタ
希(海未ちゃんも表情が素直でかわええなぁ……)
希(えりちと海未ちゃんのあの感じ……これは決まりやろ!)
希(ずばり! サプライズ誕生日パーティー!)
希(μ'sのみんなも粋なことするやん!)
希(これは気付かないフリして引っかかってやらんとな?)
希(焼き肉パーティーは保留にしておいて、今日はみんなに楽しませてもらおっと♪)
希(それにしても……)
希(友達に誕生日祝ってもらえるのなんて、何年ぶりやろなぁ……)
希「いやー今日も購買で買ったただの菓子パンがうまい!」モグモグ
にこ「なによ、えらくご機嫌ね?」
希「まぁねー♪」
希(にこっちはこう見えて悪知恵は働くし、ボロを出すことはないんかな?)
絵里「久しぶりに練習はお休みだし……希の機嫌がよくなるのもわからなくはないわね」
希「あ、そのことなんやけど海未ちゃんはテスト勉強しろって言ってたで?」
絵里「あ゛」
希(やっぱりえりちは嘘が下手やなぁ)
にこ「てっ、テストぉ!?」ガタッ
希「お? どしたんにこっち」
にこ「て、テスト勉強って――」チラッ
希(あ、えりちのフォローに入ったんね。にこっちも頭は回るんやから、もっと勉強も頑張ったらええのにな?)
絵里「そ、そうだったわ! 私と希でにこの勉強を見てあげましょう?」
にこ「え゛」
希(普通に嫌そうな顔してるやん……)
希「にこっち、もしかしてまったく中間の勉強してないん?」
にこ「そんなことあるわけ……ないわけ……ある……うぅ」
絵里「……あのねぇ、赤点取ったらまずいの、わかるでしょ?」
にこ「に、にっこにっこにー」
絵里「ふざけないの! 今日はみっちり詰め込んであげるから覚悟しなさい!」
にこ「ひいぃ! どうにかしてよ希!」
希(こういうのは大抵ターゲットを引き離す役がいた方が成功しやすいんよね……)
希(でもえりちとにこっちを連れてっちゃったら準備の人手が足らないかも?)
希(ん~でもやっぱりこっちの方が楽しそうやし!)
希「ウチとえりちでみっちりしごいてあげよか!」
にこ「」
絵里「じゃあ放課後はお勉強会ね!」
希「ん? 真姫ちゃんに凛ちゃんに花陽ちゃんやん」
真姫「希じゃない、三年生組もこれからお勉強?」
絵里「そうね。といっても勉強するのはほとんどにこだけど……」
にこ「にっこにっこにー……」
花陽「あはは……こっちも似たようなもの、かな……?」
凛「ひどいにゃぁ~あんまりにゃぁ~」
真姫「仕方ないでしょ、赤点なんて取ったらラブライブ出場取り消しだってありえるんだから」
凛「にゃぁ~……」
にこ「にっこにっこにー……」
真姫「私たちは部室で勉強するつもりだったんだけど、そっちは外?」
希「せやね、部室だと気が散っちゃいそうやし」
希(みんな準備もあるやろうし?)
花陽「じゃあまたね、希ちゃんたち」
凛「にこちゃん……元気でね……」
にこ「凛ちゃんもね……」
希「じゃ、行こっかにこっち」
にこ「あぁー……」
希(で……お店に入って、ウチはトイレに行って、戻ってきたと思ったら……)
絵里「――で、ここの数が同じでしょ? だからそこに代入して……」
にこ「代入して……?」
絵里「代入した後はどうするの? さっき教えたじゃない」
にこ「にっこにっこ――」
絵里「真面目にやりなさい!」
にこ「ひぎぃ……」
希(ここでウチまで入ると完全にいじめやな……)ポテトモグモグ
にこ「ちょ、ちょっと休憩! もう1時間はやったでしょ!?」
希「もうそんな? あ、ほんまや」
絵里「範囲は全然進んでないんだけどね……じゃあちょっとだけよ」
にこ「やったぁ!」
希「にこっちもポテト食べる?」
にこ「えっ……と、いいの?」
希「ええよ、ウチの分けてあげる。一人で食べてもつまらんからね」
希(さすがに友達がジュースしかないのにウチだけガツガツ食べてるのはね)
絵里「希も、夕飯があるんだからそんなに食べちゃダメよ」
希「またまたお母さんみたいなこと言って」
希(たしかにこの後パーティーやるならあんまり食べるのも……)
希「とか言ってえりちもハンバーガー買ってるやん」
絵里「こっ、これは……まあ、少しぐらいなら平気よ」
にこ「今時のファーストフードって舌が肥えててもおいしく感じちゃうものねえ?」
絵里「う、うるさいわね、おいしいものはおいしいんだから仕方ないじゃない」
希「そんなえりちに、はいポテト、あーん?」
絵里「希!?」
希「ほらほら」アーン
にこ「ほほう」ニヤニヤ
絵里「なにやってるのよ……公共の場で……」
絵里「うぅ……あ、あーん///」パクリ
希「おいし?」
絵里「まあまあね……」モグモグ
にこ「のっぞみーん、にこもにこもー」
希「お? はい、あーん」
にこ「はむっ……うん、なんだかんだでここのポテトはおいしいわよね!」
希「うんうん」
希(なんだか……)
希(楽しい、な)
希「よく考えたら、この三人だけでこうやって遊ぶことってそんななかったやんな?」
絵里「そもそも勉強会であって遊びではないのだけど……」
にこ「まあそこは置いといて……たしかに希の言う通りね」
希「にこっちと教室以外で会うときはだいたいμ'sのみんなと一緒やし」
希「えりちともあんまり遊ぶってことはしてこなかったしな?」
絵里「そうね、生徒会の活動もあったし、なんていうか、私の柄じゃなかったわよね」
にこ「お堅い感じだったもんねぇ~、昔の絵里ちゃん」
絵里「……今思い出すとちょっと、ねえ?」
希「ウチはあの頃の頑固なえりちも好きやったよ?」
にこ「その辺りでちょっと疑問に思ってたんだけど」
希「ん?」
にこ「希と絵里ってあんまり仲良くなる要素が見当たらないのよね、絵里はよくこんなお調子者と友達になれたなあっていう」
絵里「あぁ、まあ、たしかに?」
希「ちょ、あからさまに仲の良さを否定する返しをしないで欲しいんやけど」
絵里「だって、私もよく思ってたもの。希がこんな私を友達に選んだのは不思議だなって」
にこ「へえ?」
絵里「ちなみにね、先に声をかけてきたのは希だったのよ」
希「なんやこれ、ウチらの馴れ初めの話でもする流れなん?」
にこ「聞きたい聞きたい!」
希「ん、まあ……しゃーないな。したげるけど、あんま面白くないよ?」
にこ「いいのいいの」
希(昔の話、あんまり得意やないんけどな……)
希「……高校入る前の話にさかのぼるんやけどな」
絵里「うん」
希「ウチの親が転勤族で、小中と転校ばっかりやったってのは知っとるやろ?」
にこ「そうね」
希「当然、友達とか全然できなくてな。やっとのところで友達できてもすぐに転校やった」
希「当時は結構両親を恨んでね。ラッキーガールとか言っときながら、生まれた瞬間にとんだ貧乏くじ引かされてるやん! って」
にこ「……私は昔からずっと同じところに住んでるから共感はできないけど、考えると厳しいものがあるわよね、それ」
希「にこっちは転校しなくてもあれやしな」
にこ「そこでそういうの入れる必要ある!? っていうかあれってなによあれって!?」
希「そんなわけでな、まあこんな感じに口調を変えてみたり、女子が好きそうな占いを武器にしてみたり、いろいろと友達作る術を身につけてきたんや」
希「人の顔色ばっかり伺って、みんなの輪に入れてもらうためにはどうすればいいかって、ずっと考えてた」
希「そしたら、高校一年の入学直後、えりちの自己紹介にびっくりさせられたんよ」
絵里「えっと、私なにかした?」
にこ「私はクラスが別だったから知らないのよね」
希「たぶん他の人からしたら大したことない自己紹介かもしれんよ」
希「でもウチから見たら……金髪でめっちゃスタイルのいい美少女がした、誰も寄せ付けない、媚びない自己紹介って、衝撃的だったんよ」
絵里「美少女って」
希「だって明らかに注目集めてたよ? あのときのえりち」
絵里「初耳だわ……」
にこ「それで、希はその自己紹介に惹きつけられちゃったわけ?」
希「そんな感じやね。どうにかして友達作ろうと頑張ってたウチを真っ向から否定するような存在やったから」
希「器用に友達作るのを目標にしてたのに、気付いたら、不器用でも自分らしく生きようとしてるえりちに声かけてた」
希「思えば一目惚れだったんかもね」
絵里「ひとめぼ――っぇえ!?」
希「もちろん友達としてやで? なに赤くなっとるん?」
絵里「いや、その……そ、そうよね、びっくりさせないでよー……」
にこ「あんたら普通にカップルとしてもお似合いだと思うわ……」
希「やーん、照れるやん」
絵里「あのねぇ……」
絵里「――でも、その後は私が希に助けられてることの方が多いのよね」
にこ「そうなの」
希「そんなことあった?」
絵里「いくつもあるじゃない。μ'sに入るのだって希が散々手回しをしてたおかげ」
絵里「その前に生徒会長になったのだって、希が一緒に生徒会やるって言ってくれたからなのよ?」
希「はあ、そんなこともあったなぁ」
絵里「そ。だからね、不器用な私を、器用な希がフォローしてくれてたってわけ」
にこ「……なによ、結構いいコンビね」
絵里「そこに今はボケ役のにこが加わってくれて……」
にこ「誰がボケ役よ!?」
希「突っ込み担当やったっけ?」
にこ「そもそも芸人じゃないんですけどぉ!?」
希「ごめんごめん、にこっちも今となっては大切な親友やで?」
にこ「なによ、とってつけたような台詞ね」
絵里「そんなこと言わないで。私も希も、にこのスクールアイドルにかける情熱を尊敬してるのよ」
希「そうやねえ、そもそもにこっちがアイドル研究部をやってなかったら、ウチらがこうやって集まることもなかったんやし」
希「……ウチとえりちが普通に高校生やってる間も、にこっちが頑張ってアイドル目指してたとこ、ちゃんと見てたんよ?」
にこ「べっ……別にそういうの期待してたわけじゃないんだけど?」テレテレ
絵里「いつもは思ってることをガンガン言うのに、こういうときは素直じゃないのね」
にこ「ぅ、うるさいわねぇ……」
希「そういえば、時間大丈夫なん?」
にこ「え?――うわ! もうこんな時間?」
絵里「全然勉強してないじゃない! あーでも時間が!」
希「二人はこの後なにか用事でもあるん?」
にこ「そうなのよぉ~! だから今日のお勉強はここまでで!」
絵里「ぐっ……にこの赤点は残念だけど、仕方ないわね」
にこ「別に赤点が決まったわけでは……」
絵里「それじゃ希! 私は亜里沙との約束があるから!」ダッ
にこ「ごめん! 私もスーパーの特売があるから!」ダダッ
希「じゃあね~」
希「………………」
希「………………あれ?」
希「待って待って、ウチはこのあとどうすればええん?」
希「普通わけもわからなく二人に部室とかその辺りに連れて行かれてドアを開けた瞬間『おめでとうー!』みたいな……」
希「……あれぇ?」
希「にこっちもえりちも行っちゃったし……」
希「残ったのはポテトの残骸ぐらい……」
希「ウチもう帰る以外の選択肢ないやん……」
希「………………あんま考えたくないんやけど」
希「もしかして、全部ウチの勘違いやった?」
希「……はぁ」トボトボ
希「まさかなんもないとはなぁ……いや早とちりしたウチがアホやったんけど」
希「こんなんやったらさっさと焼肉提案してみんなを誘っとけばよかったんや」
希「ほんとアホやわ……恥ずかしいとか言って変に気取って損しとるやん」
希「まあ、ウチらしいっちゃらしいけどな……」
希「器用にみんなからのお祝いを受け取ろうして……失敗して一人で下校って」
希「不器用なん自覚してさっさと自分から『お誕生日です! 祝ってください!』って言えればいいのに」
希「言えんよなぁ……そういうん苦手やし」
希「結局、友達付き合いが苦手なのは昔と変わらんってことやね……」
希「最近は結構変わってこれたと思ってたんやけどな」
希「やっぱり根っこの性格はこのまんまなんやね……」
希「こうやってうじうじしてんのも昔とおんなじやし」
希「ウチも穂乃果ちゃんや凛ちゃんみたいに素直になれたらええんやけど……」
希「……穂乃果ちゃんたちみたいに、かぁ」
希「ウチも生まれたときから音ノ木に住んでたら、あんな感じになってたんかなぁ」
希「えりちとは昔からの幼馴染み。音ノ木には愛着があって、穂乃果ちゃんみたいに素直で元気で……」
希「それじゃなくても、せめて転校続きの小中学校時代とかあれば……」
希「……貧乏くじね」
希「ラッキーガールが聞いて呆れるやんな」
希「はぁ~~~」アタマブンブン
希「あーもう! 愚痴るのはもうやめ!」
希「だいたい誕生日なんて教えてないんやからみんな知らんのが当たり前!」
希「お肉のことは明日みんなに教えて誕生日とか関係なく食べればオッケーや!」
希「そんで!」
希「今日はやけ食いや! 少しぐらい減ってても構わんやろ!」
希「肉や肉!」カバンガサゴソ
希「……あれ?」
希「鍵がない?」
希「あれ? 嘘や、どっかに落とした?」
希「……はぁ、なんやねんもう。アンラッキーにも程があるわ」ガチャ
希「ん? 開いてる?」
希「なんや、鍵閉めないで出てきたってこと?」
希「むしろそっちの方が空き巣の心配があって怖いんやけど……」
希「まあいいわ、とりあえず中入って確認しよ」
希「ちょっと嫌な感じやね……」オソルオソル
希「えいっ」ガチャリ
絵里「せーのっ」
みんな「「「希(ちゃん)、誕生日おめでとーーーっっっ!!!」」」
希「………………へ?」
にこ「希、誕生日おめでとう」
希「え? え? えぇ?」
穂乃果「誕生日おめでとっ、希ちゃん!」
凛「おっめでとーにゃー!」
海未「おめでとうございます、希」
花陽「希ちゃん、誕生日おめでとうっ」
ことり「おめでとうっ、希ちゃん」
真姫「お、おめでとう、希」
希「……あ、あの? えりち……?」
絵里「ふふん、見事に引っかかったでしょ?」
希「引っかかったって……? ど、どこから?」
絵里「希にフェイクの誕生日パーティーを感付かせるところからだと……今朝会ったときから?」
希「ま、まさかみんなして変なそぶりを見せてたのって……」
絵里「どうせ希のことだもの。途中で見抜かれるに決まってるってわかってたから、それを逆手に取らせてもらったわ」
海未「バレることが前提の演技というのも悲しいものはありましたが……」
ことり「えへへ、でも海未ちゃんほとんど台本通りで上手だったよ!」
希「台本!?」
にこ「絵里作のやつね。希の反応までほとんど台本通りで恐ろしかったわよ」
絵里「希とは二年以上も一緒にいるのよ? 手に取るようにわかるわ」
希「つ、つまり、えりちの引き金ってことやね……」
絵里「ちなみに、期待してそわそわしてる希も可愛かったわよ?」
希「うあぁ……///」カアァ
希「って! どうやったウチの家に入ったん?」
絵里「え? 希がトイレに行ってるうちに鞄から鍵を盗んだだけよ?」
希「それ犯罪やから!」
絵里「細かいことは気にしないの」
希「こ、細かくはないような……」
絵里「……細かいことよ、そんなの」
絵里「だって今日は、希の誕生日なのよ?」
絵里「誕生日おめでとう、希」
希「えりち……」
希「ぁ……」ポロポロ
希「あ、れ……?」グスッ
希「なんや、これ……めちゃくちゃ嬉しいやんな……?」ボロボロ
絵里「ふふっ、そんなに泣いちゃ可愛い顔が台無しよ?」
凛「じゃあ希ちゃん!」
希「な、なに?」ゴシゴシ
凛「これね、みんなからのプレゼント! はいどうぞ!」
希「プレゼント……開けて、いい?」
凛「うんっ!」
希「えっと……」ペリペリ、パカッ
希「わ……コルクボード? しかも安っぽいのじゃなくておしゃれなやつ……」
真姫「希、写真立てにμ'sの写真飾ってるでしょ? どうせならもっといっぱい飾れるようなのがあるといいかなって……」
希「わぁ……」
花陽「それで、これからもいっぱい写真をとれるような思い出を作っていけたらなぁ……とか」
希「うんっ……大事にする……いっぱい、写真飾るよ……」ギュッ
穂乃果「よーし、じゃあ焼肉始めるよー!」
海未「あっこら穂乃果! 雰囲気ぶち壊しじゃないですか!」
ことり「あはは……」
希「焼肉? それって今朝の……」
絵里「えっとね、実は……説明するより見せた方が早いかしら」スッ
希「えりちのケータイ? メール? ええと……相手がウチのお母さん!?」
絵里「そうなの。この前ここに来て、ちょうど希の手が空いてないときだったかしら。希のお母様から電話があって、代わりに私が出て……」
絵里「そのときに、もしものことがあったらってメアドを聞かれたの。そしたらつい一週間ぐらい前にメールがきてね」
絵里「娘の大好物を送るから、側にいれてやれない両親の代わりに祝ってやってくれって、ね」
希「じゃ、じゃあこれって……」
絵里「どっちにしろ誕生日パーティーはやる予定だったのだけど、希の家で焼肉パーティーになったのは完全にご両親が黒幕ね」
希「自分の親にまで騙されてたんか……」
絵里「娘想いのいいご両親じゃない」
希「……ほんまに、そうやね」
希(貧乏くじだなんて、ほんまにアホやったな)
希(めっちゃ当たりくじやったのに……なんで今まで気付かなかったんやろ……)
希「あはは……なんやろね」ウルウル
絵里「希?」
希「ウチな、不器用でアホやから、全然気付かなかったんや……」
希「転校しまくって、友達全然作れなくて、昔のことコンプレックスにばっかり思ってたけど」
希「そうやって、たっくさん転校してきて、最後に行き着いたのがこの音ノ木だってこと」
希「昔の辛いことがあったおかげで、今ウチはこうやってみんなと一緒にいれるんやってことを」
にこ「そりゃそうよ、あんた自分で言ってたでしょ」
にこ「私がアイドル研究部を続けてたおかげで、μ'sが活動できてるって」
にこ「……辛かった過去も無駄にならないってこと、でしょ?」
希「そうやね……あはは、にこっちに教えられちゃった」
にこ「でっしょー! だいたいこの計画だって私が体を張って勉強したり勉強したり勉強したり……」
凛「にこちゃんの話はもういいにゃー! 早く焼肉食べようよー焦げちゃうよー!」
花陽「みんなっ! ご飯炊けたよー!」
穂乃果「お肉! ご飯!」
絵里「ちょっとあなたたち……ま、いっか。希も食べましょ?」
希「……うんっ」
希(転勤ばっかりやけど、ちゃんと自分のことを考えてくれる両親の間に生まれて……)
希(こうやって、μ'sのみんなと出会えて、その仲間に入れてもらって……)
希(こんなに賑やかに誕生日を祝ってもらって……)
希(こんなにも、幸せで、楽しい毎日を過ごせてる)
希(アンラッキー? そんな言葉はウチには似合わないやん?)
希「やっぱりウチは、ラッキーガールやんな♪」
~おわり~
ここまで見てくださった方、どうもありがとうございます
μ'sの母親役の希も可愛いですけど、友達と一緒に楽しそうに遊んでる希もすごく好きです
誕生日おめでとうございます
乙乙、よかった
ただ野暮だが>>35の引き金じゃなくて差し金じゃね?
>>55
ほんとだ! 日本語が不自由で申し訳ないです……
このSSまとめへのコメント
あと三話だけどアニメでも三年組だけの絡み見たいな
2人は夫婦なので鍵の件は普通に無罪ですね^ ^
のんたん皆からホント愛されてるね(涙)
μ'sっていいな。