灰原「江戸川君が工藤新一よ」蘭「……」 (48)

灰原「彼女に正体を明かさなくていいのかしら」

灰原「彼女、余命わずかなんでしょ」

コナン「ちょっと黙ってろ灰原」


俺たちは元の姿に戻れないまま20歳を迎えた。
少年探偵団は解散したが、腐れ縁は続いている。


灰原「彼女かわいそうね、こんなに近くにいたのに知らないなんて」

コナン「黙ってろって言ってるだろ」


大人になった俺は
なるべく工藤新一に似ないように、まだメガネをかけている。
髭も生やし髪型も変えた。

おっちゃんは探偵を引退した。
毛利探偵事務所は、俺が引き継いで中々の評判だった。
忙しい毎日の中、蘭は一生懸命手伝ってくれた。


工藤新一を待ちながら……。

蘭は寝る間も惜しんで手伝ってくれた。
体調が悪そうなときもあった。


コナン「蘭ねぇちゃん、無理しちゃだめだよ」

蘭「ありがとうコナン君、でも大丈夫よ」

蘭「体だけは丈夫なんだから」


そう言って空手のポーズをとる蘭をみて俺は安心してた。

コナン「蘭……」

コナン「こんなに痩せて……」


蘭は静かに眠っている。
病室には機械の音が静かに響く。





蘭「し……んい……ち……」


春の訪れを待つように
蘭は工藤新一を待っている……。

コナン「なあ灰原、頼みがある」

灰原「なにかしら」


数年前、灰原はAPTX4869と同じものを完成させた。
それから更に歳月がたったが、APTX4869の解毒剤を完成させていた。
しかし、体が縮んでからの歳月がたち過ぎていたからか
俺達には効果がなかった。

動物実験では成功した。
俺も見た。
でも俺達には効かなかった。


コナン「もう一度、解毒剤をくれないか」

コナン「駄目元で試したい」

灰原「いいわよ、彼女に伝える決心はついたようね」

灰原「準備するから数日時間をくれない」

それから、仕事を大急ぎで片付け、蘭の見舞いに行き
限られた時間を蘭と一緒にいることだけに使った。
気づいたらつぼみだった桜が咲き始めている。
時間だけはあっという間に過ぎていく。
正直、体が疲れているが、そんなことを気にしている場合じゃない。

蘭は徐々に口数を減らしていく。
眠ってる時間が長くなる。
そして必ず『しんいち』と呟く。

その言葉を聞くたびに胸が痛む……。

おっちゃんの『あの探偵坊主はなにをやってるんだ』も胸に突き刺さる

灰原「はいこれ」

コナン「ありがとう灰原」

コナン「それじゃ蘭のところに行ってくる」

灰原「待って」

灰原「あなた顔が赤いわよ」

灰原「熱があるんじゃない」

コナン「大丈夫だ」

灰原「あなたは大丈夫かもしれないけど」

灰原「彼女は大丈夫じゃないわ」

コナン「それなら今ここで飲む」

過去にも同じようなことがあった。
熱がある時に解毒剤を飲むと熱が引いていた。




そして、その時は必ず元の姿に戻れた。

メガネをはずし髭もそり
髪型も工藤新一に戻した。


~病室~

新一「蘭、待たせたな」

蘭「し……んい…ち……?」

蘭「新一なの?本当に新一なの?」


蘭は、喜びとも戸惑いともいえる複雑な表情で、俺の名前を何度も何度も呼んだ。
俺は細くなった蘭の体を強く抱きしめた。


そのまま蘭は眠りについた。






俺はまだコナンの正体を言えないままだった。

~翌日~

蘭「新一」

新一「ここにいるよ」

蘭「よかった、夢じゃない」

蘭「最後に新一に会えるなんて思わなかった」

蘭「本当によかった」

蘭「これでいつ死んでもいいや」

新一「バーロー……」


俺は今まで蘭の前に現れなかったことを謝った。
でも側にいたこと、いつでも見てたこと
江戸川コナンとしてずっと一緒にいたこと


全てを話した。

蘭「ありがとう新一」

蘭「でもそんな嘘付かなくてもいいよ」

蘭「最後に新一に会えたんだから」

蘭「私はそれで満足」


そう言って蘭は眠りについた。


新一「バーロー……嘘じゃねーよ」


蘭は信じてくれなかったが
おっちゃんは信じてくれた。
毛利探偵事務所で働き始めてからの
俺の推理を見て『まさかな』とは思っていたようだ。

その根拠は、俺の親父と推理する時の行動が似ていたらしい。

~翌日~

灰原「ちゃんと伝えてきたかしら工藤君」

新一「ああ…ありがとう……灰原」


灰原(彼の様子がおかしい)

灰原(呼吸も荒いし目もうつろ……まさか)


灰原「今日は私も一緒に行っていいかしら」

蘭「新一今日も来てくれたんだ」


―灰原と一緒に蘭の病室についた―


蘭「哀ちゃんも来てくれたのね」


―でも、なんだこれ体が熱い―


蘭「どうしたの新一」


―目が回る―


蘭「大丈夫?ねえ」


―苦しい苦しい苦しい―


蘭「新一、ねえ新一」

彼、工藤新一は江戸川コナンに戻った。
彼女、毛利蘭の前で。

大人から子供に戻るのと違って
今は大人から大人の姿になっただけ
でも20歳の江戸川コナンと30歳の工藤新一ではやはり違う。

恐らく解毒剤は、効果がなかったとしか言えない。
今回は過去の例と同じく、風邪の症状時に飲んだことにより
一時的に元の体に戻った。そうとしか考えられない。

私が作った薬によりこのような結果になってしまった。

蘭「ん……」

灰原「蘭さん」

蘭「哀ちゃん、新一は?」

灰原「江戸川君は隣のベッドで寝てるわ」

蘭「新一は?コナン君じゃなくて新一は?」

灰原「隣の彼がそうよ」

灰原「江戸川君が工藤新一よ」

蘭「……嘘じゃなかったんだ」



蘭「いつも一緒にいたんだ」



蘭「ずっとずっと一緒だったんだ」

蘭「哀ちゃんお願いがあるの」

蘭「私が死んだら新一……コナン君のことよろしくね」

蘭「きっとお似合いよ」

蘭「コナン君のことよろしくね」






彼女は泣きながらそう言った。

灰原「おことわりだわ」

灰原「彼にはあなたがお似合いよ」


そう言って私は薬を渡した。


APTX4869
投与されたものは死亡するが低確率で幼児化する。


灰原「彼も私もこの薬を飲んだの」

灰原「もっとも、彼の場合は飲まされたってのが本当だけど」

灰原「効果は死ぬか幼児化」

灰原「幼児化といっても、私たちが飲んだ年齢から約10歳若返るとあの年齢だったってだけ」

蘭「哀ちゃん……」




蘭「ありがとう」








蘭「明日、また同じ時間に来てくれるかな」


彼女は一方的に話した後、眠ってしまった。
隣の彼は、彼女のお父さんが文句を言いながら運んで行った。

~しばらくして~

灰原「彼女にAPTX4869を渡したわ」

灰原「彼女の最後のチャンスよ」

コナン「まさかおまえ」

灰原「そのまさかよ」

灰原「このまま死ぬのを待つか、あなたと生きていくか」

蘭(この薬を飲むと死ぬか10歳若返るか幼児になる……か)

蘭(幼児になったらお父さんどう思うかな)

蘭(孫の気分かな)

蘭(孫なら私がちゃんと産みたかったな)

蘭(10歳若返ったら……)

~翌日、同時刻~

蘭(もうすぐみんなが来る)

蘭(手紙も書いた)

蘭(覚悟を決めよう)

病室についた俺が見たのは
空手の時のような凛とした蘭だった。




蘭「二人ともありがとう」

蘭「もし若返ったら……」

蘭「新一のお嫁さんにしてください」


そう言うと俺が返事をする前に蘭は薬を飲んだ。


コナン「らああああああああああああん」

一気に病室が騒がしくなる。
医者や看護師が駆けつける中
蘭が苦しんでいる。

何もできない自分が歯痒い
ただ見ているだけ……見てることしかできなかった……。

~満開の桜の季節~

「ランドセル似合ってるな」

「もう、恥ずかしいからジロジロ見ないで」

「いいから写真撮るから、ここに立って」

「おっちゃんも並んで」

「おっ丁度良いタイミングで歩美と元太がきた」

「わりいけど写真撮ってくれないか」

「おう。わかったぜ」

「4人とも笑顔でなー」




「ハイチーズ」




~Fin~

駄文失礼しました。
象速禁止でお願いします。

ありがとうございました。

乙!面白かった
質問が2つあるんだけど

1.最後、蘭は10歳を通り越して幼児化したって事でいいんかな?

2.光彦は……?

>>40
わかりにくかったですね

蘭は10歳若返りました
最後の4人ってのは小五郎とコナンと蘭とその子供です。入学式です。
時間がだいぶ飛んでます

光彦は多分死んでると思います

APTX4869は細胞を後退化するものなので
仮に蘭の病気が癌だったとしたら癌細胞の後退化
病気の原因を排除できたことにより健康になった

と解釈してもらえれば


まあご都合主義です

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