穂乃果「好きって気持ち」 (102)

・視点変更あり(一応表記はしてるのでなんとか分かるかとは思いますが)

・書き溜めあり

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【SIDE:穂乃果】

いつからだろう。

絵里ちゃんのことを目で追うようになったのは。

絵里ちゃんのことばかり考えるようになったのは。

今だってそう。

何してるんだろう、どうしてるんだろうってそればっかり考えてる。

穂乃果「……」

海未「……か……穂乃果!」

穂乃果「わぁっ! な、何? 海未ちゃん」

海未「何? じゃありませんよもう……手が止まってますよ?」

穂乃果「ご、ごめんね?」

いけないいけない、今はちゃんと仕事しなくちゃ。

絵里ちゃんや希ちゃんには迷惑かけたくないもんね、うん。

ことり「穂乃果ちゃん、なんか最近悩んでる?」

ぎくり。

穂乃果「え!?いや!そんなことないよ?」

海未「分かりやすすぎですよ、穂乃果」

呆れたように海未ちゃんは笑う。

ことり「ふふ、珍しいね。穂乃果ちゃんが何かで考え込むなんて」

穂乃果「うう……」

だって。

だってこれは叶わない恋だもん。

いつもみたいに、真っ直ぐ突っ走ってもどうしようもないんだもん。

穂乃果「はあ……」

海未「重症ですね……」

ことり「そうだねえ」

うだうだ悩んで、私らしくないって分かってるけど、気持ちに嘘はつけない。

すき。絵里ちゃんのことが……だいすき。

海未「ところで穂乃果」

穂乃果「ん?」

海未「そろそろ、お店の手伝いの時間ではありませんか?」

穂乃果「ああーっ! そうだ帰らなきゃ!」

海未「まったく……片付けはしておきますから早く帰りなさい」

穂乃果「ご、ごめんね! 海未ちゃん、ことりちゃん」

ことり「いいよ、気にしないで?」

ダメだなあ。こんなんじゃダメ。

うん、気合入れて頑張らないと!

それから。

バタバタと戻って着替えて店番をする。

いつも通り、のんびりした時間。

穂乃果「ありがとうございましたー!」

でも、最近はμ’sの知名度もちょっぴり出てきたのかお客さんも多かったりして。

ただただ嬉しいなーって思う。

いつも元気貰ってますとか、これからも頑張ってくださいとか。

こっちこそ応援してくれるみんなに一人一人お礼言いたいくらい!

穂乃果「~♪」

なんだか嬉しくなってきて、鼻歌まじりにおまんじゅうを補充したりして。

すると、お店のドアが開く。

穂乃果「いらっしゃ―――って絵里ちゃん!?」

絵里「ハロー、頑張ってる?」

いつもと違った私服姿で、髪を下ろした絵里ちゃん。

綺麗な金髪……ブロンドって言うんだっけ?

とっても綺麗……。

穂乃果「どどど、どうしてこんなところに!」

絵里「どうしてって……おかしな子ねえ」

くすっと絵里ちゃんは笑って。

そんな仕草の一つ一つが可愛くて、綺麗でドキドキする。

絵里「お茶菓子、買いに来たのよ?」

穂乃果「そ、そうだよねー、あはは……」

ドキドキして、会話がぎこちなくなっちゃう。

うう、不意打ちすぎるよ……まさかお店で会うなんて。

絵里「とりあえず穂乃果、注文いいかしら?」

穂乃果「は、はい! どれにいたしましょう!」

絵里「何?かしこまっちゃって、ふふ」

だって。だってぇー!

最近は絵里ちゃんと話すだけでドキドキが止まらないだもん。

絵里「とりあえずこれと……」

いつものキリッとした絵里ちゃんもいいけど、私服姿の柔らかい感じの絵里ちゃんもいいなあ……。

ぼーっとしてる間に、絵里ちゃんの注文を受けて。

お仕事だからね、穂乃果だってここはちゃんとやるよ!

穂乃果「はい、1000円ちょうだいしまーす」

絵里「ありがとう、お客様にお出しするお茶菓子切らしてねー」

穂乃果「それでわざわざウチの和菓子?洋菓子の方がおいしいのに……ってあだっ!」

なんて言おうとしたら、雪穂からの鉄拳制裁。

あだだ……。

雪穂「こらお姉ちゃん! お客様になんてこと言うの!」

穂乃果「痛いよ雪穂ぉ……」

絵里「相変わらず仲が良いわねえ……」

くすくす、と笑う絵里ちゃん。

雪穂「あ、絢瀬先輩!これはお見苦しいところを……」

ペコペコ、と頭を下げる雪穂。

これじゃどっちがお姉ちゃんか分からないよ!もう!

絵里「いいのいいの、いつも亜里沙がお世話になってるわ。雪穂さん」

雪穂「いえいえ、こちらこそ……あ、せっかくだし上がっていってくださいよ!」

穂乃果「え、えぇっ!?何言ってるの雪穂!」

雪穂「いいじゃない、せっかく来てくれたんだから」

穂乃果「いやでも、店番あるし……」

雪穂「いいよ、私がやっとくから」

な、なんでこんなときばっかり気が利くの雪穂……。

絵里「あの……ご迷惑ならいいのよ?」

絵里ちゃんがちょっぴり不安そうな顔。

穂乃果「迷惑だなんて、違うよ! 私の部屋片付いてないから……」

あたふた。

雪穂「ほらほら、行った行ったー」

絵里「じゃあお邪魔してもいいかしら?たまには2人でおしゃべりしましょ」

穂乃果「う、うん! じゃあお茶とお菓子持ってくから穂乃果の部屋で待っててね!」

絵里「あ、おかまいなくー」

流されるまま、思いがけずに絵里ちゃんと2人きり。

ううん、不安になることなんてない!むしろ嬉しい!

穂乃果「でも、ドキドキするなあ……」

ちょっとだけいいお茶を淹れて、お菓子をお盆に乗せて。

穂乃果の部屋を開ける。

穂乃果「絵里ちゃん、お待たせ……って、あー!」

絵里「ふふ、可愛い……あら?ありがとう、穂乃果」

見ていたのは穂乃果のアルバム。

絵里「ちょっと見せてもらってたわよー」

なんてまったく悪びれずに。

穂乃果「絵里ちゃんなんてものを!」

絵里「なんてものをって……アルバム?」

小首を傾げる絵里ちゃんも可愛い……ってそうじゃなくて!

穂乃果「ダメー!これはダメー!」

絵里ちゃんの手からアルバムを奪って棚へ戻す。

絵里「あん、可愛かったのに」

穂乃果「もう、絵里ちゃんが家探しするとは思わなかったよ……」

絵里「ふふ、ごめんなさい。あ、おいしい」

持ってきたお菓子を一口食べて。

穂乃果「でしょー?新製品なんだってお父さんが言ってたよ」

そんな他愛無い会話が、嬉しい。

楽しい。

恋なんて縁遠いものだって思ってたけど……。

なんだかあったかいなーって、穂乃果は思うんだ。

そんな風にしばらくおしゃべりをする。

絵里「あら、もうこんな時間なのね」

穂乃果「ホントだね、すっかり夢中になっちゃったよ」

楽しい時間はあっという間で。

絵里「そろそろお暇するわね、亜里沙も待ってるし」

穂乃果「うん、気をつけてねー」

手を振ってお見送り。

これだけでも幸せ。

これでいい。これでいいんだよ。

絵里ちゃんとおしゃべりして、一緒に遊んで。

それだけでも楽しいもんね。

帰っていく絵里ちゃんの後ろ姿を見送りながら、自分に嘘をつく。

きっと叶うことのない想いだから。

穂乃果「ふぅ……」

部屋に戻ってちょっぴりため息。

分かっちゃいるけど、でも好きなんだもん。

できればお付き合い……とか。

穂乃果「~っ」

考えただけで顔が熱いよ。

穂乃果「ダメダメ、もうお風呂入って寝よ……ってあれ?」

部屋に落ちてたのは見慣れない封筒。

穂乃果「なんだろ?絵里ちゃんの忘れ物かな?」

もちろん中は見ないけど、とりあえず裏表を見てみる。

裏を見たとき。

可愛いハートのシール。

穂乃果「これって……」

これって……ラブレター?

聞いたことはある。

女の子ばかりのこの学校でも絵里ちゃんはとってもモテるって。

当然だよね、カッコいい生徒会長だったし。

だけど、胸が痛い。

不安になる。

絵里ちゃんは、告白されたのかな?

返事はどうしたのかな。

ぐるぐるっていろんな思いが渦巻く。

穂乃果「とりあえず、明日渡そう……」

ため息まじりに布団にもぐり込む。

あーもうこんなの穂乃果らしくないよー。

μ’sを辞めるって穂乃果がバカなこと言ってたあのとき。

絵里ちゃんが穂乃果の部屋に来てたくさんの言葉をくれた。

思えば、あれからだったのかなあ。

とっても嬉しくて、気持ちがふわふわして。

あれが、穂乃果の恋の始まりだったのかな。

ぐるぐる。

もうダメ。寝ちゃお。

そしたらきっと明日からまた元気な穂乃果。

おやすみなさい。

【SIDE:絵里】

穂むらからの道を、いつもよりちょっとだけ嬉しい気分で帰る。

穂乃果の部屋でたくさんお話できたし。

……アルバム、見ちゃったし。

絵里「ふふっ、可愛かったわ」

私の知らない穂乃果があそこにはたくさんいて。

見てるだけでウキウキしちゃった。

そう。

私は、穂乃果に惹かれてる。

きっと、私の手を引いてμ’sに入れてくれたあの日から。

女の子同士だけど、そんなの関係なくって。

あの子のパワーに。

太陽みたいな笑顔に。

思い出すだけできゅーって胸が締め付けられる。

だけど、嫌な気持ちじゃなくって。

絵里「ホント、べた惚れよ」

思わず苦笑しちゃう。

穂乃果の一挙手一投足が気になって仕方がないんだもの。

絵里「はあ、でもどうしよう……」

カバンの中の貰ったラブレターを思い出す。

返事は決まってる。

何度か貰ったことはあるし、その度お断りはしてきたけど。

絵里「あの悲しそうな顔、見たくないのよね……」

よく知りもしない人とお付き合いする気はないし、何より私には想い人がいる。

絵里「どうせなら、穂乃果からくれないかしら……」

なんて、あり得ないかな。

穂乃果も私のことが好きだなんて、都合のいいことあるわけない。

両思い。

そうだったらどれだけ幸せだろうかと思う。

ふう、とため息をついて現実に意識を戻す。

とりあえず、お断りの文句を考えなきゃね。

絵里「……あれ?」

カバンの中を探っても、例のラブレターが見つからない。

え、ちょっとまさか。

穂乃果の部屋に……落とした!?

絵里「え、ちょ……うそぉ……」

変な誤解させてないわよね?

いや、誤解も何もないんだけど。

でも好きな人に貰ったラブレター見せるって。

絵里「ああ、なんてこと……」

かしこいかわいいエリーチカの名が泣くわ。

とりあえず明日穂乃果に話さなくちゃ……。

はあ、帰ろ……。

【SIDE:穂乃果】

翌日の昼休み。

ちょっぴり重い足取りで3年生の教室に。

ラブレター、返さなくっちゃね。

穂乃果「絵里ちゃーん!」

絵里「穂乃果!? どうしたの、こんなところまで」

すっと手紙を差し出す。

穂乃果「忘れ物だよ! ダメだよー、大事なものでしょ?」

ちょっぴり無理して笑顔を作って。

だけど、絵里ちゃんの顔がなんだか見られない。

絵里「あ、ありがとう。穂乃果……あの、これはね?」

穂乃果「やっぱり絵里ちゃんはすごいなー、穂乃果、そんなの貰ったことないもん」

なんて、冗談めかして言ってみたりして。

だけどこれ以上この場にいるのがなんだか辛くて。

穂乃果「じ、じゃあ穂乃果はこれで! パン食べなきゃいけないし!」

絵里「あ、ちょっと穂乃果……」

絵里ちゃんの戸惑った声が聞こえたけど。

逃げるようにその場を去って、2年生の教室に戻る。

穂乃果「ふう……」

海未「穂乃果、どこに行ってたのですか?」

ことり「あ、おかえりー」

ダッシュで戻ると、海未ちゃんとことりちゃんがいて。

穂乃果「ごめんごめん、ちょっと用事があってねー」

なんて、適当に誤魔化してみたりして。

ホント、らしくないなあ。

海未「……穂乃果、何か隠してるでしょう?」

穂乃果「えっ!?」

なななななんで!?

ことり「最近変だよ、穂乃果ちゃん」

海未「そうです。どこか上の空だし、ぼーっとしてるし」

そんなに分かりやすかったのかなあ……うう。

ことり「何かあるなら相談して?ことり達で良ければ何でも聞くよ?」

穂乃果「な、何も悩みなんてないよー?」

さすがにこんなこと、相談できないよ!

絵里ちゃんが好き、だなんて。

海未「ふむ……穂乃果、当ててあげましょうか」

海未ちゃんが唐突にそんなことを言う。

いくら海未ちゃんでも、まさか分かるわけない……よね?

海未「穂乃果、絵里のことが好きなんでしょう?」

穂乃果「……へ?」

な、なんで!?どうして!?

エスパー!?海未ちゃんエスパー!?

慌ててことりちゃんの方を見ると、苦笑いして穂乃果を見てる。

穂乃果「な、ななな何言ってるの海未ちゃん!まさかそんにゃっ!?」

舌噛んだ……。

海未「やれやれ……何年幼馴染やってると思ってるんですか」

ことり「あはは……」

幼馴染ってすごい。穂乃果は改めてそう思った。

じゃなくて!

海未「と、言いたいところですが、μ’sのメンバーは絵里以外みんな気づいてますよ」

穂乃果「うそぉっ!?」

ことり「だって穂乃果ちゃん、最近絵里ちゃんのことずーっと見てるんだもん」

海未「あれで気づかない絵里も絵里ですけどね」

苦笑いしながらそんなことを言う幼馴染ーズ。

穂乃果「そ、そんなに……?」

ことり「うん♪見てるこっちが恥ずかしくなるくらいの熱視線で」

海未「そもそも穂乃果が隠し事しようっていうのが無理なんですよ」

穂乃果「ひ、ひどい……」

みんなに筒抜けだったなんて……。

海未「で、どうするんですか?」

ことり「告白するの?」

穂乃果「こここ、告白ぅ!?」

むりむりむり!

そんなの無理だよ!

海未「好き、なんでしょう?」

穂乃果「は、はい……」

かーっと顔が赤くなるのが分かる。

好きって言葉は、やっぱり特別だなーって。

ことり「穂乃果ちゃん、赤くなっちゃって可愛い♪」

穂乃果「ことりちゃぁん……」

告白……告白。

どうすればいいのかな。

ずっと思いを伝えないまま過ごそうって思ってたから。

海未「告白、しないのですか?」

穂乃果「だって……絵里ちゃんに嫌われちゃうよ……」

穂乃果が告白なんてしたって、きっと絵里ちゃんを困らせるだけ。

それで関係が壊れるくらいなら、穂乃果はこのまま……。

海未「穂乃果?」

穂乃果「う、うん?」

海未「無理にしろとは言いません。大事なことですから、慎重になるのも分かります」

海未ちゃんは真っ直ぐに私を見ながら言う。

いつだって海未ちゃんは実直で。

海未「ですが、後悔しませんか?」

ことり「一緒にいられる時間、そんなに長くないんだよ?」

ことりちゃんも、おずおずと。

その言葉が、とても痛かった。

絵里ちゃんは3年生。

どうしたって先に卒業してしまう。

穂乃果「うん……」

だけど、だからこそ。今の関係を壊したくないって。

そう思うのは……変なことかな。

海未「怖いのでしょう?今の関係を壊すのが」

穂乃果「っ……」

なんでもお見通しなんだなあ、海未ちゃんは。

だけど、どうすればいいの?

海未「……穂乃果、胸に手を当ててよく考えてみてください」

海未「あなたの好きな絵里は、告白をされたくらいで人を嫌いになるような人ですか?」

海未「あなたの好きな絵里は、そんなことであなたを拒絶する人ですか?」

あくまで優しく、諭すように。

海未ちゃんは語りかけてくれる。

穂乃果「ううん……」

穂乃果「ううん、違うよ。絵里ちゃんはそんな人じゃない」

誰よりも私が絵里ちゃんを理解してなければいけなかったのに。

好きな人のこと、全然信頼してなかったのかも。

こんなんじゃダメ!

だんだん、落ち込んでた気持ちが燃え上がってくる。

これは、きっといいドキドキ。

海未「……もう、大丈夫みたいですね」

ことり「だね♪」

穂乃果「ありがとう、海未ちゃん、ことりちゃん……穂乃果、頑張ってみる!」

とっても頼りになる幼馴染。

穂乃果はいっつもみんなに助けられてばっかりだ。

海未「まあ、仮にダメだったとしたら……」

海未ちゃんはことりちゃんに目配せをして。

海未「私たちの胸を貸してあげますから」

ことり「いつでもどーぞ♪」

そんな風ににっこり笑って、背中を押してくれる。

穂乃果「あはは、そうならないように努力します……」

スッキリしたらなんだかお腹空いちゃった。

いつものアレを取り出して。

穂乃果「いやー今日もパンがうまいっ!」

そんな昼休みが過ぎて。

思い立ったら即行動の穂乃果だから。

授業中に、とある手紙を書きました。

それは、ラブレターとも言えないような。

差出人は書かないで。

『放課後、屋上に来てください。大事なお話があります。』

たったそれだけの一文を書いて。

絵里ちゃんの下駄箱にそっと入れた。

【SIDE:絵里】

なんだかちょっぴり憂鬱な気分で一日の授業を終える。

昼休みの一件、穂乃果はなんだか元気がなかった。

少しでもお話したいなって思ってたけど、急いで彼女は去ってしまって。

絵里「今日は練習もないし、このまま帰ろうかしらね……」

ふう、と息をつきながら下駄箱を開けると、見慣れない手紙。

『放課後、屋上に来てください。大事なお話があります。』

差出人はなし。

絵里「いたずら……ってわけでもなさそうね」

また、なんて言ったら失礼かもしれないけど。

だけど無下にするわけにもいかない。

これはその人なりの一生懸命が詰まった手紙だから。

告白する勇気なんて、私にはないもの。

だから、素直にすごいと思う。

だから、真正面からちゃんと答えないといけないと思う。

踵を返して、屋上へと向かう。

普段はμ’sのみんなで使ってる屋上へ。

私の大好きな人が、キラキラした笑顔で歌って踊ってる屋上へ。

穂乃果が待ってたりしないかな、なんて。

有りもしない期待をしながら、私はドアを開ける。

【SIDE:穂乃果】

ゆっくりと、屋上のドアが開く音がする。

私は後ろを向いたまま、彼女が近づいてくる足音を聞く。

愛しい人の、足音。

【SIDE:絵里】

後ろを向いたまま待ってる子の姿が見える。

明るい色の髪に、どこかで見たような、サイドテール。

まさか、ね。

心臓がひとつ、大きな音を立てる。

恐る恐る、声をかける。

「あなたが、手紙をくれた人?」

【SIDE:穂乃果】

「あなたが、手紙をくれた人?」

そんな声がして。

私はゆっくりと振り返る。

沈みかけている夕日に照らされた、絵里ちゃんの綺麗な金髪。

「ありがとう、来てくれたんだね」

精一杯の笑顔を作って。精一杯の勇気で。

【SIDE:絵里】

「ありがとう、来てくれたんだね」

私は、どんな顔をしているだろう。

待っていたのは……穂乃果だった。

どういうこと?これは、夢?

【SIDE:穂乃果】

絵里ちゃん、驚いてるなあ。

普段なら絶対見せない顔してる。

「へへ、そうだよ。私が手紙の差出人」

改めて、そう告げる。

「大事な話って……μ’sのことかしら?」

動揺した顔で、絵里ちゃんはそんなことを言う。

もう、ホントは分かってるくせに。

「絵里ちゃん、大事な話があります」

疑問には答えず、私はゆっくりと話しだす。

「は、はい」

絵里ちゃんは緊張と動揺がないまぜになった表情で。

「あのね、穂乃果は……私、高坂穂乃果は」


「1人の女の子として絵里ちゃんのことが、好きです」


「ずっとずっと、もういつからかもハッキリしないけど」

「もうどうしようもないくらいに、絵里ちゃんが好き」

「穂乃果と、お付き合いしてくださいっ!」

言えた。

ハッキリと。自分の想いを、自分の言葉で。

絵里ちゃんの表情は、よく分からないや。

困ってるのかな、やっぱり。

「あのね、穂乃果……」

ゆっくりと絵里ちゃんが話しだす。

聞くのが怖い。でも。

ちゃんと聞かなきゃ。

【SIDE:絵里】

「穂乃果と、お付き合いしてくださいっ!」

穂乃果は、まっすぐ私の目を見たままそう言って。

もうなんだか分からない。

そもそも、穂乃果がここで待ってたことからして。

頭の中がぐるぐるしてる。

でも、だけど。

とにかく、嬉しすぎて。

あ、お返事。お返事しなきゃ。

「あのね、穂乃果……」

「あなたから言われてしまうなんて……ホント、びっくりした」

「私も、あなたが好きよ」

「あなたのことが毎日気になって仕方ないの」

「仕草の一つ一つ、もう全部……大好きよ」

ああ、何言ってるのか分からない。

なんだかすごく恥ずかしいことを言ってる気がする。

そんなことを考えていた次の瞬間。

穂乃果が私の腕の中に飛び込んできていた。

【SIDE:穂乃果】

「仕草の一つ一つ、もう全部……大好きよ」

絵里ちゃんの言葉が嬉しくて。嬉しすぎて。

「絵里ちゃーんっ!」

次の瞬間、絵里ちゃんに抱きついてた。

「ちょ、穂乃果!いきなり大胆すぎやしないかしら!」

「えへへ、嬉しいんだもん……」

絵里ちゃんの柔らかい胸にぐりぐりと頭をこすりつける。

「もう、甘えん坊さんね……」

ゆっくり撫でてくれる。

あったかくて、気持ちいい。

「穂乃果、泣いてるの……?」

「絵里ちゃん、絵里ちゃん……」

これは、嬉し涙。

不安だった。

ただただ不安だったけど。

絵里ちゃんが受け入れてくれて。

もう、嬉しすぎて。

「もう穂乃果ってば……顔を上げなさい」

「うん……?」

急に言われて、顔を上げる。

絵里ちゃんの指がそっと私の顎に触れて。

「可愛い顔が、台無しよ?」

ドキドキする。

こんなに近くで絵里ちゃんの顔を見るなんて。

まつ毛、長いなあとか。

「え、絵里ちゃん……?」

「なあに?」

「あの、もうちょっと離れても……」

「いやよ?もう離してあげないんだから♪」

う、嬉しいけど!

でも、こんなのドキドキしすぎて穂乃果死んじゃうよ!

「ねえ、穂乃果?」

「ひゃ、ひゃいっ!」

「穂乃果は、もう私のものよね」

「そ、そうです」

「証を、貰うわ」

証?

「証って?……んぅっ……?」

気づいたら、唇がふさがれてて。

絵里ちゃんの柔らかい唇が。

ぎゅーって絵里ちゃんから抱きしめられて。

くらくら、する。

甘くて、なんだか、ふわふわして。

「んっ……」

「え、ええええ絵里ちゃん!?」

「もらったわ、証」

絵里ちゃんはにっこり笑って。

いや、その……キスが証ってどういうこと!?

「だ、大胆すぎるよ絵里ちゃん……」

「ごめんなさい、つい♪」

「は、初めてだったのにぃ……」

何がなんだか分からないまま、奪われたファーストキス。

「あら、私も初めてよ?」

「嬉しいけどなんか納得いかないー!」

「じゃあ穂乃果からもして?それでおあいこ」

なんて言って絵里ちゃんは目を閉じるけど。

「あう……」

恥ずかしいよ……どうすればいいの?

しばらくもじもじしてると。

「んんーっ!?」

また唇を奪われた。

「もう、待たせないでよ」

え、絵里ちゃんってこんなキャラだったっけ?

ああもう……いいや、嬉しいから。

「ね、絵里ちゃん?」

「なあに?」

「好き」

「私も、好きよ」

そんな言葉だけで、胸が暖かくなる。

はじめての告白。

はじめてのキス。

なんだかいろいろ急だけど。

全部嬉しい。楽しい。

「そろそろ、帰る?」

「うん、帰ろ」

夕暮れが私たちの影を写しだして。

言葉少なだけど、胸はずっとドキドキしてて。

きゅっと手を繋いで、私たちは歩き出した。

どんな風にみんなに説明しようか、なんて話しながら。

そんな風に、私たちの関係は歩みだした。

好きって気持ちを、大事に抱えながら。

長くなりましたが、以上です。

いろいろ詰め込みすぎて冗長になっている部分は多々あるかとは思いますが……

次はただ2人がいちゃいちゃするだけのもっと軽いやつ書くつもりです。

そして私はこんな攻めーチカを書くつもりではなかった。

それでは、最後まで見てくださった方、ありがとうございました。

おつ

攻めーチカいいよ…素晴らしいよ

続き楽しみにしてる、乙!

ええ書き方や……乙


こういう書き方好きだよ

おつ
いいほのえりだった

おつチカ
ハラショー…

乙です
簡単じゃない書き方だろうに綺麗にまとまっててよかった
次作も期待してます

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