男「俺が野球を?」野球部「せや!」(117)
男「いやいや……なんで?」
野球部「さっきのバッティング、見とったで」
男「さっきって……ああ、スポッチャのバッティングセンターか?」
野球部「せやせや、お前センスあると思うねん。身長もデカいし手脚長い」
友「おーい!どうしたー?」
男「ああ、すぐ行くー!」
野球部「……お前、その制服ってことは俺と同じ創始学園の生徒やろ?」
男「まあな。もういいか?」
野球部「名前だけ教えてくれや! 高槻章吾や」
男「新見」
高槻「新見やな! また声かけるから考えといてくれ!」
新見「はぁ……」
***
新見「ってなわけだ。どう思うよ、倉敷?」
倉敷「どう、って……言われてもなあ。たしかにお前はバッティングうまいと思うけど」
新見「そうじゃなくて」
倉敷「え?」
新見「俺が聞いてるのは俺が野球に向いてるかとかそういうことじゃなくて、あの高槻とか言うバカをどう思うってことだよ」
倉敷「あはは、確かにまあ失礼だとは思うけど……」
新見「ったく。俺は帰宅部としてのんびり3年間を過ごすって決めてんだ。はなから乗るつもりはない」
倉敷「もったいないよなー、運動神経は良いのに」
新見「つか野球はルールも知らないし」
倉敷「あれ、そうだったの?」
新見「どちらかと言うとサッカー派でな」
***
月曜日 終HR
教師「はーい、学校始まって2回目の月曜日だけどなーダレるなよー」
教師「そうだ、昨日のプリント読んだ奴は知ってるだろうけど」
教師「うちの学校は今年から必ずどこかしらの部活には入ってもらう」
新見「…………」
新見「(……は?)」
教師「まあ、帰宅部してバイトでもしたいってやつはいるだろうが決まっちまったものは仕方ないからな」
教師「5月1日までに俺に入部証明持って来い。ちゃんと顧問のハンコを……」
新見「(…………どういうことだ)」
新見「(何かしらの部には入らざるを得ないってことかよ……)」
***
倉敷「で、どうする? 部活」
新見「んなもん、一番楽そうな文化部探すに決まってるだろ」
倉敷「はは、そうかそうか」
新見「お前はどうするんだ?」
倉敷「僕はまだ決めてないや」
新見「ふむ……」
新見「(あの高槻とか言うやつは当然野球部に入るんだろうな……)」
倉敷「野球部のことでも考えてたの?」
新見「んなわけねーだろ。帰ろうぜ」
倉敷「あ、でもちょっと部活見学行こうよ」
新見「え……」
倉敷「いいじゃん、行こうよ」
新見「しゃあねえな……」
***
グラウンド
新見「お前、まさか運動部入るの?」
倉敷「さあ、どうだろ」
?「おーい!」
倉敷「あ」
新見「……」
高槻「よう!新見クンやったな!」
新見「野球部には入らないぞ」
高槻「まあそう言うなや。見学だけでもしてこ、な?」
新見「はぁ……」
倉敷「どうする?」
高槻「俺は今日から練習参加や。俺のボールさばき見てけや!」
倉敷「あれ? 一年生は球拾いじゃないの?」
高槻「……そこを突かれるとなんも言えへんわ」
新見「ちょっと見たら帰るぞ」
高槻「それでええわ、ほらいこか」
高槻「せや、そっちの子も自己紹介しとくな」
***
高槻「大阪から来た高槻言います!今日から、ロシクナーシャス!!」
主将「んまあ、堅くなんないでやってこうぜ」
副主将「…………」
高槻「あ、こっちの二人は見学です」
倉敷「失礼しますー」ペコリ
新見「ども」ペコ
主将「見学? まあ好きにやってくれ」
新見「ま、入る気ねーけど」ボソッ
高槻「ッ! あほっ!お前普通そんなこと言うか!?」ボソ
倉敷「流石にそれはまずいよ……」
主将「……ははっ、言うじゃねーか。でも心配すんな」
主将「うちは層の厚い名門野球部ってやつだ。こちらから来てくれだなんて頼むつもりはねーよ」
新見「そっすか」
高槻「ほんま、すんません。ほんで俺はどこ行ったらいいですか?」
主将「あーわりぃ、なんも決めてなかった」
副主将「他にも一年が来たぞ」
主将「あちゃー……もう今日から来るのかー、そうだな……」
新見「(グダグダじゃねーか)」
主将「んじゃとりあえず球拾いだ」
高槻「ウッス!」
***
新見「……そろそろ帰らねえか?」
倉敷「え? もう?」
新見「見ててもつまらんだろ、キャッチボールだの筋トレだの」
倉敷「まあ、それもそうかな……」
新見「行くぞ」
***
高槻「あれ? あいつらもう帰っとんかいな」
主将「あー一年」
一年『はい!』
主将「お前らはもう解散だ。わりいが邪魔になる。明日はなんか考えておくから」
一年『ありがとうございました!』
***
高槻「なあ、ちょっと先輩らの前でバット振るだけでええから!」
新見「だから、いやだ」
高槻「そこをなんとか!」
新見「しつこいぞ、関西人」
高槻「はっ! 諦めへんで!」
新見「…………」
高槻「さては、運動嫌いとかか?」
新見「いや……運動はよくやってた……」
高槻「?」
新見「…………俺はもうスポーツはやらない」
高槻「…………なんかあったんか」
新見「諦めろ」
高槻「……」
新見「そもそも、お前はなんで俺に対してそこまで言ってくる? お前一人で入ればいいじゃねえか」
新見「主将も言ってただろう、俺一人いなくても部はたくさん人がいるって」
高槻「惚れたんや」
高槻「……お前のスイング、素人の癖にあんな綺麗なんは初めて見た」
新見「……だからって誘うのか」
高槻「俺は、お前と野球できたらほんまに楽しいと思うんや!」
新見「…………」
高槻「……決意は固いか」
新見「……一度だけ」
高槻「!!」
新見「練習、明日限り一緒に出る」
高槻「ほんまか!」
新見「明日の球拾いで俺が野球をしたくならなきゃもう諦めてくれ」
高槻「……わかった」
新見「それじゃあな」
高槻「おう!明日な!」
新見「……『楽しいと思う』か」
***
倉敷「えぇー!?」
新見「まあ今日だけだ」
倉敷「いやあ、意外だなあ。高槻君なにしたの?」
新見「なんもしてねーよ」
倉敷「あ、僕は今日別の部活の体験入部があるから行けないので!」
新見「おう」
高槻「おーい、新見!」
新見「行くか」
高槻「ワクワクするわ!」
高槻「(……まあほんまに球拾いだけやったら絶対に心は動かん)」
高槻「(なんかやらなな)」
***
先輩「いちねーん!そこのカゴもどしとけー!」
新見「うーっす」
新見「(やっぱり球拾いはつまらんな。腰が痛いし)」
新見「(そもそも、あいつと野球をやってることになるのか?)」
新見「(はー……、やっぱ来なきゃよかったな)」
新見「(帰ったらさっさと寝よう)」
***
主将「んじゃま、解散っつーことで」
野球部『ありがとうございました!』
新見「高槻」
高槻「あ、新見。今からな」
新見「悪いけどやっぱり俺は無理だ」
新見「球拾いに1年間、下手すりゃ3年間も費やしたくねえんだ」
新見「まあバッティングセンター以外でバットを握ったこともねえしな」
新見「思えばルールだって知らない」
高槻「お前、バッティングセンターでしかバット振ってないんか?」
新見「え?」
高槻「ルールしらんのやったらゲーム貸したるわ」
高槻「まあまだやめるなんて言うなや」
新見「おい、約束忘れたのか?」
高槻「まあ最後に俺を見て決めてくれ」
新見「?」
高槻「副主将!」
副主将「……」チラ
高槻「お願いがあるんす」
副主将「なんだ」
高槻「副主将はうちのエースですよね。大阪におるときも新聞とかで見てました」
高槻「この層の厚い部の中で2年生の頃、すでにリリーフエース張ってたんも知ってます」
副主将「…………それがなんだ」
高槻「勝負してください」
新見「!?」
副主将「……断る」
高槻「ちょっと失礼言いますけど……逃げるんすか?」
副主将「…………」
高槻「…………」
副主将「3球で終了だ」
高槻「……ありがとうございます」
新見「なんのつもりだ?」
高槻「俺が副主将の球を完璧に打てたら5月の頭までおってくれ」
新見「……なんで5月?」
高槻「5月の最初に1年生対抗紅白試合があるんや。そこでお前と敵でも味方でもええから勝負したいねん」
新見「…………」
高槻「まあさっき言ってたとおり、あの人は相当な選手や。野球わからんお前でもなんとなくわかったやろ。勝率はかなり低い」
新見「無謀だな」
高槻「かもな」
新見「……はっ、わかったよ。完璧に打ち返せたらな」
高槻「おおきに!」
副主将「(……一年相手に本気を出す必要はない)」
副主将「(だが、最低限の礼儀は叩き込ませてもらうぞ)」
高槻「(副主将さん、アンタは寡黙で冷静沈着ポーカーフェイス)」
高槻「(そのくせ売られた喧嘩は買ってまうんや)」
高槻「(それは悪いことやない。ピッチャーはチームを引っ張るもっとも重要なポジションとも言える)」
高槻「(それくらいの自信や誇りは持ってもらわんと困る!)」
高槻「(やから、アンタに喧嘩売れば絶対乗ってくるっておもっとったんや)」
副主将「さっさと始めるぞ、一年」グッ
高槻「高槻です」
新見「…………」
主将「はっ、なんかおっぱじめてんな」
新見「主将……さん」
主将「玉野だ」
新見「……あいつ、副主将さんの球を打ち返すつもりらしいですよ。それってすごいんすか?」
玉野「……ああ、『すごい』ね。もしあいつがそこまでできたのならもう十分……」
副主将「……行くぞ」
副主将が三塁側を向いて投球モーションに入る。太い腕が片脚と共に浮き、
高槻「……!」
右腕を大きく振りかぶる。
玉野「十分……『即戦力』ってやつだ」
白球が放たれる。
高槻「(見え見えやで、副主将)」
高槻「(相手は一年、自分は三年)」
高槻「(舐められた分取り返すためには絶対に直球)」
高槻「(ストレートど真ん中で来るはずや!)」
高槻「(そして、同時に俺が打てるとしたらその一球目の油断してる球だけやろう……ッ!)」
白球はストライクゾーンど真ん中に向けて寄り道せずにつっこんでいく。
完全に高槻のシナリオ通りだ。
高槻「(俺、こんなナリしてますけど……)」
高槻の目は鋭く白球を捉える。脳内で瞬時に計算し腕の振るタイミングを感覚で掴む。確実に一球で『完璧に』打ち返すために勝負に出る。
高槻「(『頭脳派』なんスよ!!)」
新見「…………!」
玉野「…………」
ブンッ
結論から言えば、心地良い金属音なんてものは鳴らなかった。
高槻「な……っ……!」
高槻は振り切った形で固まっていた。完璧な計算、読みを打ち砕かれたことのショックか。
副主将「どうした、一年。まだ一球目だが、やめるか?」
高槻「…………ッ」
新見「高槻……」
高槻「……はっ、はははっ!」
高槻「さすがっすわ! ほんまに強い!」
高槻「先輩のストレートは140キロほどの剛速球ってのは知ってました。けど今のは……完全に振り遅れや」
高槻「分かってた速さを……はっ」
高槻「流石エースです。ほんまに」
副主将「…………」
新見「(副主将のプレッシャーもすごい……けど)」
高槻「次、よろしくお願いします!」
新見「(あいつの威圧感、意志もハンパじゃない……! 伝わってくる……!)」
副主将「……ふっ」
ギュッ!
再び、大男の腕から剛速球が繰り出される。
高槻の目は死んでいない。再びその目で球筋を捉えた。
高槻「(同じコース……ストレートかいなッ!)」
カッ!
高槻「あかんかッ!」
しかし白球は後方へと飛んでいく。バットを掠めただけだ。
玉野「はっ、同じコースとはいえ1球しか見てないのに2球目から掠らせるとは……新見か、やるじゃねーの」
新見「(……なんだこの緊迫感は……!)」
新見「(俺は、こいつと野球しようと思ってたのか……?)」
新見「(正直、今の俺は置いてかれてる……確実に)」
新見「(この緊張感に圧倒されてる……!)」
高槻「(次で最後や……でも、まだあきらめてへんで)」
高槻「(正直、一球目スカした時は次元が違うかもしれんと思った)」
高槻「……けど!」
副主将「……最後の球だ」
高槻「はい!」
高槻「(2球目で捉えた!)」
副主将「(次も同じ。ストレート、ど真ん中)」
高槻「(……もし)」
高槻「(同じコースで勝負しようと思ってるんやったら、恥かきますよ)」
高槻「(……副主将!)」
副主将の片脚が上がる。
新見は思わずツバを飲み込んだ。
玉野はだるそうに見る、が目を離そうとはしない。
高槻はバットの感触をしっかりと確認した。
白球が、放たれる。
***
新見「高槻」
高槻「あー?なんや」
新見「ちゃんとさっき言ってたゲーム、明日持って来いよ」
高槻「……って野球部入るんかいな」
新見「ああ、まあお前は打ち取られたが」
高槻「うっさいわ」
新見「……俺、今まで実は色んな競技をやってきたんだがな」
高槻「おう」
新見「正直、どれもつまらなかった」
新見「結局どれも本気になれなかったんだと思う」
新見「俺は、さっきの戦いを見て俺もあそこに立ちたいと思った」
新見「いつも誰かに薦められて始めたスポーツを、自分でやりたいと強く思った」
高槻「新見……」
新見「俺も、野球部に入ればお前やあの人達と戦えるんだよな」
高槻「……まあそうやな」
新見「…………帰り、バッティングセンター寄るか」
高槻「疲れたから今日は帰ろうや……」
新見「うっせえ、行くぞ」
***
白球はさっきと同じコースを走る。
エースの武器は剛速球と評価されがちだが、彼は制球力もまた優れていた。確実に同じ的を射ぬく。
一つの芸術の域。
高槻「……ッ!」
さっきと同じ角度で、フォームで、、動きで、タイミングだけを微調整してバットを振るう。
副主将の性格を正しく読めていれば、確実に真ん中に投げてくる。その予想は実際当たっていた。
一球目ではまったくあたりもしなかった球が、二球目でバットに触れ、そして三球目。
玉野「何ッ!?」
芯に、当たる。
白球は元来た方へと跳ね返る。
確実に『打ち返した』。
トライアングルの音を無理やり手で触れて止めたような金属音。
副主将「……」パシッ
柔らかな弧を描いて文字通り元来たところ―――副主将のグローブへと落ちた。
高槻「……完敗です」
副主将「ふむ」
玉野「はっ、まあそりゃそうか」
新見「……!!」ゾクッ
***
倉敷「ええっ!?!それで……」
新見「……まあ、そういうことになった」
倉敷「まさか……ほんとに野球部に入るとは……」
倉敷「で、高槻君は何したの? お金? やっぱりお金?」
新見「ちげえよ!」
俺達の戦いはこれからだ!~終わり~
続き書く気力が起きたら書きます
ありがとうございました
支援ありがとうございます
更新できるの不定期なのでたまに支援入れといてもらえるとうれしいです
次から始めます
新見「明日で練習始まって2週間になるな」
高槻「ほんまやなー、はやいもんやで」
新見「にしてもやっぱり一年は球拾いが多いな」
高槻「そりゃしゃあないわ」
新見「わかってる」
高槻「それより決めたんか?」
新見「え?」
高槻「守備位置」
新見「ああ……そういえば明日が締め切りだったな」
高槻「せやで。ほんな、おつかれさん」ヒラヒラ
新見「ああ、じゃあまたな」ヒラヒラ
***
晩
新見「さて……どうしたもんか」
妹「どうしたの?」
新見「ああ、桃子(トウコ)か……ちょっとな」
桃子「この前言ってた野球?」
新見「ああ。明日までに自分ができる守備位置を提出しなきゃいけない」
桃子「……普通、そんなこと野球部であるの?」
新見「知らん、俺は野球は初めてだからな。というか初めてなせいで困ってるんだよ」
新見「そもそもやったことがあれば俺は悩むことが無いからこの特殊かもしれない状況だってどうだっていい」
桃子「はーいはい、わかったわかった」
新見「……あっさり流すな」
桃子「私あんまり野球興味ないし」
新見「……」
桃子「一番簡単なところにしたら?」
新見「(一番簡単なところってどこだよ……)」
***
新見「……ということなんだが」
高槻「おいおい、一番簡単言うても向き不向きってもんがあるで」
新見「っせー、わかってるよ!んなことは」
高槻「はは、堪忍堪忍」
新見「お前、誘ったんだから一緒に考えろよ」
高槻「……んー、そうやなあ。守備が苦手な選手とか守備位置が別のええ選手と被ってる人がファーストを守る言うのは良く聞く話やけど」
新見「じゃあファーストでいいや」カキカキ
高槻「はやッ!」
新見「いいんだよこういうのはフィーリングだ」
高槻「結構、やばいことあっさり決めてるって気付いとるんかこいつは?」
新見「ファーストをできるようにすればいいんだろ」
高槻「まあ、そうやけど……」
??「はーっはっは!それがいい!君にはファーストくらいがお似合いだ」
新見「は?」
男「やあ、諸君」
高槻「お前は確か……美作」
美作「はーっはっは!やはり覚えていたか!いや、覚えられないはずがないよなぁ!」
新見「誰だよお前は」
美作「えっ、一年で最もイケメンな男ミマサカだよミマサカ」
新見「で、その美作が何の用だよ」
美作「同じ1年なんだから用が無くても話しかけていいだろ!」
高槻「でもなんかあんねやろ?」
美作「……コホン。僕こそは、創始学園のポスト山岡副主将! 君達のような地味なやつには守れないピッチャーをやっているんだよピッチャーを」
新見「そりゃよかった」
美作「……反応薄いな。怒ってるのか?」
高槻「こいつはこれがテンプレやねん」
美作「……な、なんにせよ君にはファーストがお似合いだ!はーっはっはっは!」スタスタ
・・・
新見「なんだったんだあいつは」
高槻「嵐のように去って行ったな」
◆選手データ
創始学園 3年副主将 山岡
身長183cm 体重68kg
守:投
創始学園のエースピッチャー。
大きな体から放たれるMAX150キロの重いストレートと精密とさえ言えるコントロールが最大の武器。
ゆえに彼の投球を【剛力の狙撃(パワースナイプ)】と呼ぶ者もいる。
口数は少ないポーカーフェイスだが熱い心と誇り、そして自分の実力に相当な自信を持つ
***
昼食
倉敷「うわ……すごい食べるんだね」
新見「最近、飯が足りなくてな」
高槻「はっ、すっかり野球部員やな」
美作「貴様、野球初心者だったのか」
新見「……なんでここにいるんだ」
美作「同じクラスだろ」
倉敷「だね」
新見「知らなかった」
高槻「まあ今年1年生は22人が野球部や。6クラスしかないんやから1クラスに3人は野球部おってもおかしくないんや」
新見「にしても影薄いよな」
美作「なんだと……貴様!」
倉敷「美作君はピッチャーなんだってね」
美作「はーっはっはっは!そうだぞ、僕はピッチャーだ。週末の紅白試合では完封して夏の予選に選出してもらうつもりだ!見ていろ」
新見「切り替え早いな」
高槻「それが嘘やないことを願うわ」
美作「フッ、言ってられるのは今だけだ」
新見「そういや、紅白試合ってどういう基準でチーム分けするんだ?」
高槻「ああ、まあ噂やけど守備位置をできるだけ均等に分けてさらに出身中学の成績も考慮するらしい」
新見「じゃあ俺はオマケって感じでどっかに入れられそうだな」
高槻「はっ、まあ気にすんなや」
美作「僕からすればこの名門野球部に初心者がいることがすでに疑問だがね」
高槻「……(俺の目がホンマに正しかったら新見は相当な逸材や)」
高槻「(一年生歓迎会を兼ねた試合である以上全員に出番は回ってくるはず……そこでおそらく新見の実力かその片鱗が見れる)」
倉敷「新見はめちゃくちゃ自己中心的で空気読めないけどよろしくね」ペコリ
美作「あ、こちらこそご丁寧に」ペコリ
新見「何やってんだ倉敷」
美作「そういえば高槻、だったか」
高槻「なんや?」
美作「お前のクラスに津山、って奴はいなかったか?」
高槻「ああ、そういえばおったな。席が近くて野球部やったし話とるわ」
美作「ふむ、そうか。あいつはどうだ?しっかりやってるか?」
高槻「? まあ別に問題ないんちゃうか?」
美作「そうか。ならいい」
新見「知り合いか?」
美作「中学でバッテリー組んでたんだが、クラスが遠くて部活の時しか話せなくなって少し気になっていた」
新見「バッテリーってなんだ?」
高槻「あー、ピッチャーとキャッチャーのコンビやと思ってればええわな」
新見「ふむ」
倉敷「……その遠いクラスからわざわざうちまで来てる高槻君って一体」
新見「気持ち悪いな」
高槻「なんでや!?なんで気持ち悪いになるんや!?ちょっと待」
***
★選手データ
創始学園 1年 高槻
身長173cm 体重60kg
守:遊
走攻守のそろった期待の一年
大阪の中学野球では全国大会『ジャイアンツカップ』にも出場した
打席に立つときには相手ピッチャーの心理状況や試合の進行具合、自分の実力・調子などを考慮して最良のバッティングで戦う頭脳派
***
玉野「うーす、一年。とりあえず入部ありがとうよ。これから3年間必死でもがいてレギュラー勝ち取れ」
玉野「……で、だ。全員知ってると思うが今日は紅白戦をしてもらう。前、提出を頼んだ守備位置やアピールポイントのプリントはこれのチーム分けのためだ」
玉野「この試合の結果で……あーそうか。いや、じゃあ発表していくぞ」
高槻「(試合の結果によっては今後の新人戦や)」
美作「(練習試合なんかに出るチャンスをもらえるということだろうな)」
高槻・美作「(やってやる)」
玉野「紅2番・ショート高槻」
高槻「はいッ!」
玉野「紅9番・ピッチャー笠岡」
笠岡「はい」
新見「(紅の最初の9人には入らなかったか)」
玉野「続いて、紅ベンチが……」
美作「(俺がベンチはあり得ない。俺は白だな)」
津山「…………」
玉野「……と、新見」
新見「うーっす」
玉野「んじゃ続いて……」
***
高槻「同じチームやで新見!」
新見「まあ俺はベンチだがな」
高槻「心配すな。今日の試合は全員に出番がある」
新見「……まあなんでもいい。応援しててやるから打てよ」
高槻「うお、おう!」
***
津山「やろう」
美作「ああ、津山! 補欠のピッチャーどもに変えられるまで1人もランナーを出さない。完全試合にしてやる」
津山「ああ」
***
山岡「……」
玉野「さあ、始まるぜ。山岡チャンよ」
山岡「ああ」
玉野「ったく、珍しく練習休みだってのに俺達だけ1年の試合に付き合わされてこまるねえ」
山岡「戦力になりそうなものを見つける必要がある」
??「そういうこったな」
玉野「……おっと、今日は休みなのに来たのか?吉備」
吉備「おうよ、単純に観戦が楽しそうだからな」
玉野「ッケ、物好きだねえ」
***
1回表 紅の攻撃
高槻「1番は三振、さっそくやけど俺の出番やな」
高槻「対するは―――」
美作「はーっはっはっは!高槻ィ!さっそく勝負ができるというやつだな!」
高槻「少なくとも先発させてもらえるくらいのピッチャーではあるみたいやなァ、美作」
つづく
また来ます
コメありがとうございます
投下します
1回表 紅の攻撃
2ストライク2ボール
高槻「(整理し直すか。美作の投球スタイルは……)」
高槻「(変化球中心の技巧派ピッチャーでコントロールも申し分ない)」
高槻「(ただ体力がネックやったんか中学の頃はリリーフが多かったみたいやな)」
高槻「(球種は少なくともムービングファストとスライダーはある)」
高槻「(正直、山岡さんと違って情報が少なすぎてぶっつけ本番なところがある)」
高槻「(まあ、情報が無いよりはよっぽどマシなんやけどな)」
美作「(高槻は中学野球じゃ名の知れた遊撃手。負けるとは思ってないが手は抜けないな)」
美作「(むしろ、津山以外に俺の球を打てるとしたらこいつくらいだ)」
美作「(さー、見ててくださいよ。主将、副主将!)」
美作「(1年生最強は俺です)」
津山「…………」
美作「行くぞ!」
高槻「来いやッ!」
美作「(まだ俺はキメ球の『スライダー』を見せてないッ!)」ビュッ
高槻「……ッ」
カキンッ!
美作「な―――」
ワーワー
新見「レフト前ヒット!」
高槻「ふー、危ない危ない。思ったより曲がるな」
美作「く……っそ。俺のスライダーをいきなり打たれるなんて……」
高槻「お前はちょっと正直すぎや」
美作「なッ!」
高槻「普通の相手ならそれでええんかもしれんけど、俺は場合によっちゃ決め球でも粘らず狙いに行くで」
美作「く……」
高槻「お前はこの試合でアピールして試合に出ることを最優先に考えとる」
美作「……」
高槻「だとしたら、狙うのは奪三振ショー。ほかの野手を活躍なんてさせずに終わらせるくらいの気持ちでおったんやろ」
高槻「最短距離の三振、狙いにくると思っとったわ」
美作「くそお……」
津山「タイム」
主将・玉野「はいよ、タイムだ」
津山「落ち着け、美作」
美作「でも……打たれたよ……俺のスライダー……」
津山「まだ一人だ。他の選手にはお前の球は打てない。もう一度あいつの順番が来たら俺に考えがある」
美作「でもさ……」
津山「……お前は最強だ。一年生最強の投手だ。ポスト山岡だ」
美作「…………」
津山「ここでへばってどうする」
美作「……そうだったな」
美作「はーっはっは!! 僕はもう大丈夫だ! 行くぞ、津山!」
***
2回表 紅の攻撃 終了
高槻「流石に美作、やるな」
新見「だな」
笠岡「……なかなか先発で相手をさせられるのはつらいものがありますね」
高槻「ピッチャーの笠岡(カサオカ)か。頼むで!」
笠岡「ええ、わかってますよ。心配せずとも」サッ
高槻「……行ってもうた」
新見「なんかクールなやつだな」
高槻「あいつと話したことあったか?」
新見「あると思うか?」
高槻「ああ、聞いてからアホなこと聞いたと思った」
新見「にしても、頭良さそうだ」
高槻「投げ方はおもろいけどな」
2回の裏 白の攻撃
笠岡「……」
笠岡「フゥ―――」
笠岡「どぅるぅああああああああああ」ギュンッ
バシッバシッバシッ
玉野「ストライク!アウトだ」
新見「(あの笠岡とか言うの結構やるな)」
新見「(美作は高槻以外全員押さえてること考えりゃ見劣りするけど)」
笠岡「ふッ!」ギュンッ
玉野「アウト!交代だ」
高槻「コントロールはそこまで安定してないけどやっぱ先発させてもらえるだけはあるな」
新見「でも速球なら俺も打てたかもしれないし白だったらよかったかな」
高槻「いや……どうやろな」
新見「え? 舐めてるわけじゃないけど実際、毎回ランナー出してるだろ?」
高槻「お前、バッティングセンターでしか打ったことないんやったな?」
新見「そうだけど」
高槻「あとは練習でちょっとってとこか」
新見「うん」
高槻「……まあ実際に体験してみたらええわ」
新見「そこまで思わせぶりなこと言っておいて言わねえのかよ」
3回表
美作「ふッ!」ギュンッ
玉岡「ストライク!アウト、交代だ」
3回裏
笠岡「どぅるああああああ!!!」バシッ
山岡「アウト!」
吉備「意外と投手戦になってるな」
玉野「ああ、美作は県内でもそこそこのピッチャーだったらしいがあの笠岡ってのもそこそこやるな」
山岡「……」
玉野「山岡としてはあのピッチャー達は不満なのか?」
山岡「いや」
玉野「ハッ、そうかい。5回からピッチャー二人とも変えるか。十分だろ」
吉備「いいんじゃないか?今年は一応ピッチャー志望が4人だっけか」
玉野「うちには山岡っつう絶対的エースはいるがリリーフは充実してるとは言えねえ。2年もそれなりのがいるが……どうだろうな」
4回表
高槻「さて……」
新見「二度目の打席だな」
高槻「おう、1回に結構挑発しとるから割と簡単に打てると思うわ」
新見「ほう」
高槻「でもまあ、そろそろ交代させられるやろうから、おそらく、これが最後の打席」
新見「頑張れよ」
美作「高槻…………」グググ
高槻「…………」
高槻「(結構、簡単に気が荒くなるんやな。プライド高いにしても性格も単純。やりやすいピッチャーや)」
高槻「(にしてはピッチャーとして結構先輩に見られとるみたいやな……)」
高槻「(まあええわ。ここも一発かまして盗塁でもして、なんとか1点もぎとるんや)」
津山「……」チラ
高槻「っしゃ来い!」
美作「……フゥ」
美作「……ッ!」ビュッ
高槻「ッ!?」
パシーン
主将「ストライクだ」
高槻「…………」
高槻「(正確に内角低めを攻めてきた……?)」
高槻「(”当ててもええ”くらいの気持ち……ヤケクソか?)」
高槻「(この手のピッチャーはカウントとりに打ちやすい棒球やと思って初球打ち狙っとったけど……)」
高槻「……」
美作「……フゥ」コク
美作「ッ!」ヒュッ
高槻「……!!」フッ
高槻「(アカンッ!止め)」
カンッ!
パシッ
主将「アウト」
新見「キャッチャーフライ……どうしたんだあいつ」
高槻「くっそ、してやられたわ」
新見「なんだったんだ? お前らしくなかったというか」
高槻「さっき、確かに美作が頷いてるのが見えた」
新見「どういうことだ?」
高槻「俺はてっきり美作が先導してるバッテリーやとおもっとった。けどそれはちゃうかったんや」
新見「初心者にもわかりやすく説明してくれよ」
高槻「あー……そうやな……。バッテリーはこの前説明したよな?」
新見「ああ、ピッチャーとキャッチャーのコンビだろ?」
高槻「んで、多くの場合はキャッチャーがサイン出してそこにピッチャーが投げるねん」
新見「狙ったところに投げるなんてできるのか? 俺は昔遠投もやってたけど狙ったところに投げるのは難しいだろ」
高槻「遠投と一緒にするのもどうかと思うけど……まあ、間違っては無い」
高槻「話戻すけど、俺はあのバッテリーはそういうことはしないで美作が投げる球を決めてると思ってたんや」
高槻「美作の実力や性格もそうやし、津山の無口というか感情表現しなさそうなところからもな」
新見「ふむ」
高槻「でもそんなことは無かった。津山は……策士や」
新見「……策士」
高槻「1回に俺に打たれて落ち着きの無くなった美作を津山が引っ張とる。しかも俺に察されないためかご丁寧に相手が俺の時だけ津山はサイン出しとったみたいや」
4回裏 白の攻撃
ツーアウトランナー無し
笠岡「(7番、キャッチャーの津山ですか)」
笠岡「(彼には2回にヒット撃たれてますね)」
笠岡「(いつも以上に声を出してなんとかします)」
津山「(……美作を援護する)」
笠岡「……」
笠岡「フゥ―――」
笠岡「どぅるぅああああああああああ」ギュンッ
津山「ッ!」パシーン
副主将「ストライクだ」
津山「……」
ザワザワ
高槻「速いな。140は出とる」
新見「うっせえし暑苦しい」
笠岡「……相手が誰でも僕の投球は変わりませんから」ニコッ
津山「……」
笠岡「……ッるぅああああああああああ!!!」ギュンッ
津山「……ぐッ」
カキンッ
笠岡「―――な」
新見「あーあ」
玉野「はっ、ホームランだな」
笠岡「…………」
紅0-1白
高槻「やられたな」
山岡「笠岡交代だ。津山に代走」
笠岡「……くっ、わかりました」
5回裏
新見「え?」
玉野「だから、お前がファーストに入るんだよ」
新見「は、はい」
玉野「紅も白も11人、レギュラー9人のうち高槻・笠岡、津山・美作を交代したら控えの2人……つまりお前が入るしかねえだろ?」
新見「でも俺がファーストに入るとショートが空きませんか?」
玉野「ああ、それはいいんだ。もともとファーストを守ってた1年はもともとショートでな」
新見「(そういえば守備位置が被ったらファーストやほかの場所に入ることもあるとか言ってたな)」
新見「わかりました」
高槻「がんばれや!」
6回裏
カン
セカンド「ゲッツーだ!」シュッ
新見「ほいほい」パシ
玉野「アウト!チェンジだ」
新見「あぶねえな」
高槻「ランナー1,2塁とか焦ったわ。あんまりこの試合の勝ち負けは関係ないとは言ってもやっぱ勝ちたいしな」
新見「次は俺だな」
高槻「初の打席、思いっきり振ってこい」
新見「(素振り素振りっと……)」ブンブン
玉野「……」
吉備「あいつ、綺麗なフォームだな」
玉野「ハッ、1年の練習なんて見ねえから気
付かなかったぜ」
山岡「……」
吉備「まあフォームが良いから強いと言う
ことではないけどな」
新見「(さあ……俺はこれを待ってたんだ)
」
新見「(緊張の中での1対1……!)」
白ピッチャー「ふっ!」
新見「(行くぞッ!)」ブンッ!
パシーン
新見「あ……れ?」
山岡「ストライク!」
新見「……」
新見「(バッティングセンターで似たような
の打ったと思うんだけどな……)」
新見「(なんか……近くまで来て”グイッ”
と来たような……)」
新見「(”伸びてきた”……というか)」
新見「(少し早く振るべきなのか?)」
バシーン
山岡「ストライク!」
新見「な……」
新見「(当たらない……!!!)」
白P「……」ニヤ
新見「(……笑われたな、今)」
新見「…………折ってやる」
白P「おらっ!」シュッ
新見「その鼻ァ!!」ブンッ
***
高槻「ま、まあそう落ち込むなや」
新見「落ち込んでねえよ……」
高槻「初めてやったんやし……」
新見「だから落ち込んでねえよ」
新見「守備に入るから行く」
高槻「(あー……大丈夫やろか)」
1アウトランナー2塁
紅P「うらっ!」シュッ
白バッター「っ!」キン
打った球は三遊間ギリギリへ。
紅ショート「……っと」パシッ
ボールを走者を見ないでファーストへ。
紅ショート「ファースト!」シュッ
新見「(なっ!?2塁のやつ挟めなかったのか!?)」
新見「(ランナー走り始めたッ!)」
新見「(それとも俺がサードに投げろってこ
となのか!?)」パシッ
新見「(くそッ!わかんねえけど……投げる
ぞッ!!)」
新見「おっるぁああ!!」ビュンッ
高槻「はァ!?そこでサード刺せるわけ…
…」
紅サード「!」パシッ
白走者「くっそおおお!?」
紅サード「ッ!」タッチ
玉野「あ……」
新見「どうだッ!?」
玉野「………………ッ」
吉備「ははッ、なんであいつファーストなんかやってんだ?」
高槻「嘘やろ……」
玉野「…………」
玉野「……アウト!」
新見「ッシャ!」
ザワザワ
高槻「やるやんけ……お前肩すごいんやな
」
新見「え?そうなのか?」
高槻「おう、あそこで投げようと思ったの
もすごいけど制球も悪くなかったし球威も
相当やぞ」
新見「肩が良かったら……ファーストは向
かないのか?」
高槻「向かないわけじゃないけど、その肩
はサードやショート、あとは外野とかで使
わなもったいない気するで」
新見「そういうもんかね?」
***
***
高槻「先輩、話ってなんです?」
玉野「ああ、お前たち5人だけ残ってもらっ
たのはー」
美作「もしかしてベンチ候補とかですか!
」
玉野「……間違ってはねえな」
笠岡「……しかし、奪三振9個の美作君やホ
ームランの津山君はわかりますが……」
高槻「俺と笠岡、それに新見は大した成績
やなかった思いますけどね?」
玉野「だから、『間違ってはねえ』と言っ
たんだ」
なんかところどころ改行ミスってる…すみません
山岡「お前たちは特別のびしろの大きそうな5人、というだけだ」
新見「……はあ」
津山「……」
山岡「まず美作」
美作「はい」
山岡「お前は1年の中じゃ抜きんでてるピッチャーではある」
美作「ありがとうございま……」『が』
山岡「お前程度のピッチャーでは高校じゃ"全然"通用しない」
美作「ッ!!!」
高槻「(プライドの高い美作にあそこまではっきりと……ッ!)」
津山「……!」
美作「……それでなんでしょうか」
山岡「体力は無い。一本打たれたくらいで焦る。3回からは制球力も乱れてきた」
美作「…………」
山岡「お前は自信があるみたいだが、はっきり言わせてもらえば……」
山岡「『その他大勢』と同じだ」
美作「…………何が言いたい」
玉野「……お」
美作「……何がッ!」
津山「美作、落ち着け!」
美作「……くそっ!」
山岡「……明日の練習からお前にはリリーフの候補として2年に混ざってもらう」
美作「…………あ」
山岡「笠岡」
笠岡「は、はい」
山岡「お前は球威しかない、という自覚はあるだろうな」
笠岡「……ええ。変化球にも自信は無いですし、コントロールもよく乱れます」
山岡「自覚のある選手の方が俺は成長すると思っている。才能に溺れた選手よりもな」
美作「…………」
笠岡「……そう、ですか……」
山岡「お前は明日から2,3年のバッティングピッチャーをやってもらう」
笠岡「……ありがとうございます」
玉野「津山」
津山「はい」
玉野「2打席2安打打点1、と相手が1年だが打者じゃ一番成績は良かった」
津山「……どうも」
玉野「2年の打撃練習に加わってもらう」
津山「……はい」
玉野「高槻」
高槻「はい!」
玉野「お前は2打席1安打だ。課題は多いな」
高槻「ウッス」
玉野「が……守備には目を見張るものがある」
玉野「まあ、流れからわかるとは思うがお前は守備練習の時に2年に混ざれ」
高槻「ありがとうございますッ!」
玉野「そんで新見」
新見「はい」
玉野「1打席0安打1三振」
新見「はい……」
玉野「……お前も落ち込むことあるんだな」
新見「え?」
玉野「ああ、いや。お前は打撃に関して初心者だな」
新見「そうっすね」
玉野「お前は2年の外野の守備練習に入れ」
新見「外野……っすか?」
玉野「お前の武器は肩だ」
新見「……」
玉野「運動神経の良さでファーストは守れてたみたいだが外野はそうはいかねえ」
玉野「5人の中でお前だけはそこまで期待してねえが、しっかり練習積んでくれ」
新見「その方が楽でいいです」
玉野「ハッ、そうかい」
***
玉野「……新見か」
吉備「うちは守備固めでライトを守らせれるような肩と守備力を持った人間がいないからな」
玉野「……ああ」
吉備「ほんとは一番伸びてほしいってのが本心だろう」
玉野「……まあ俺らの代で使えるレベルになるとは思っちゃいねえが」
SSで野球があんまりないのがよくわかった……
限界感じてます
高槻VS山岡みたいに書きたいけど一人一人にやってたらキリ無いし
こんなのでもレスいただけてありがとうございます
どんなものでもうれしいです
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません