とある美食家子息の本気取材 (17)

山岡「ここが福島第一原発……」

山岡「なんてひどい光景なんだろう……本当に、ここは日本なのか」

『……かさんっやまお……んっ!』ザーッザーッ

山岡「お、トランシーバーか」

ザーッザーッ

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山岡「ん? 随分とノイズが入るな。あーあー、聞こえますか。こちら山岡、聞こえますか」

『は……で……だ……』プツッ

山岡「なんだこりゃ……さては、記者には不良品のトランシーバーを渡して取材をしづらくさせようってんだな。そうは行かないぞ」ポチッ

山岡「おい! 聞こえるか! あんたらがどんな汚い真似をしたって無駄だ! おれは福島の真実をすべて暴く! ジャーナリストをなめるなよ!」

シーン

山岡「けっ。もしかしたら、こう言う大事な通信機器を作業員たちが雑に扱ってるから壊れたのかもしれないな。俺の邪魔してるつもりかもしれないが記事のネタになるだけだってんだ」

山岡「しかし、あれだな。テレビで見るのと実際に眼にするのではだいぶ違う。ここなんて作業通路すら確保できてない。がれきだらけじゃないか」

山岡「こんな足元も整理していない状態で効率的な作業ができるもんか。いいところばっかりテレビに映しやがって」

山岡「……やはり国は『なにか』を隠している。福島県民に言えないなにかを」ポタッ


山岡「おっと、なんだ? 上からなにか垂れてきたぞ! まさか……汚染水!?」

山岡「ふざけやがって! 記者の安全も守れねえで作業員たちの安全を守れるわけがない! なんてずさんな対策してるんだ!」ポタッ

山岡「……え? これは……俺の鼻血?」

山岡「こんな短時間で……被曝した? 健康を害するほどの……?」

山岡「なんか身体までだるくなってきたぞ。くそっなんて最低な国なんだ日本は!」

山岡「事態は収束しているだと? そんなんうそっぱちだ。福島県民を、国民を馬鹿にしやがって!」

山岡「でも、ここまできたんだ。俺は諦めないぞ! 絶対に目当ての『あれ』をみつけだし、白日のもとに晒してやる!」

山岡「こうなりゃヤケだ。取材時間を過ぎても探ってやる。壊れかけのトランシーバー渡したほうがわるいんだからな」



作業員「山岡さん! 山岡さん!」

職長「まだ連絡はつかんのか!」

作業員「ダメです。おそらく原子炉建屋内に入ったのではないかと」

職長「防護服なしでか!?」

作業員「はい……着用の説明をしてる途中でうるさくて……」

職長「ああ、たしかに誰か騒いでいるなと思ったがあの記者だったのか」

作業員「ええ。それでどうやっても説明を聞いてくれなくて往生してたところ、突然、理解できないほど無線機に興味を示したので、黙らせるために新品の無線機を与えました」

職長「ふむ、それで?」

作業員「それが……『象の足があるところまで無線で誘導してくれ』と」

職長「はっ!?」


作業員「そんな危険なところには入れません。と言ったのですが、隠すのか、そうはいかない、と激昂した後に走り去りました」

職長「ばかな」

作業員「本当なんです」

職長「それじゃあ……あいつは」

作業員「どこまで行ったのかわかりませんが。相当奥に行ったと思われます……」

職長「記者なんだよな、あいつは……」

作業員「身分証もアポも確認したので間違いないです」

職長「……あの新聞社、美食なんたらなんてやっていたが、舌は肥えてても一般教養はないのか……」

作業員「象の足なんてあるかどうかもわからないのに。あったとしても人間が見れるわけないのに……山岡さん……仕事増やしやがってクソ野郎……」

山岡「俺は絶対に象の足を見るぞ!」ポタッポタッ


美味し○ぼ 完 (長年ご愛読いただきましてありがとうございました!)

おしまい

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