慕「紙で作った麻雀牌!」山岡「やれやれ」 (58)
松江こども麻雀大会の前日 自宅
コースケ「あれ…?なんだこりゃ」ガサガサッ
慕「…あっ!」
コースケ「…麻雀牌か?…紙の…?」
慕(見つかっちゃった……おこられちゃう……)
コースケ「おい慕…これって…」
慕「……なくなっちゃったから……紙で作ったの……」
コースケ「!」
慕「私の大事な……鳥さんの友達だよ……」グスン
コースケ「慕……」
山岡「やれやれ、こんな紙切れをありがたがっているようじゃ、本当に麻雀が好きかも怪しいもんだ」
慕「!?」
慕「…誰?」
コースケ「ちょっと!何ひとの家に勝手に入り込んでんだあんた!?」
山岡「この麻雀牌はひどい出来だ、とても見られたもんじゃない」
慕「!」
コースケ「いやおい、うちの姪が頑張って作った物にいきなり何言い出してんだよ」
山岡「フン!ひどいからひどいと言ったまでさ」
コースケ「あ?慕を泣かす気なら出るとこ出るぞ?」
山岡「今夜またここへ来てください、最高の麻雀牌をお見せしますよ」
コースケ「いや、ここオレたちの家なんだが…」
数時間後
ピンポーン
山岡「おじゃましますよ」
栗田「こんにちは」
典子「まあ、いいお住まいね」
絹江「あら、この家具ステキだわー」
富井「おい、山岡!いいものを見せるって、嘘だったらただじゃおかないぞ!」
大原「落ち着きたまえ富井くん、ここは山岡くんに任せようじゃないか」
慕「本当に来た…」
コースケ「いや、帰れよ…。何人連れてきてんだよ…」
山岡「まずはこちらをご覧ください」
富井「何だい?小学生の工作か?」
山岡「この子が作った麻雀牌です」
典子「あらよくできてるじゃないの、可愛らしいわ」
山岡「ああ、一見可愛らしい子供の作品だ。だが細かく見ればひとつひとつに微妙な誤差や粗が目立つ」
慕「がんばってつくったのに…」
コースケ「大丈夫だぞ、あいつの言う事なんか気にするな」ポンポン
大原「しかし、小学生の手作りなら仕方ないんじゃないのかな?」
山岡「そんなことはないんですよ、全くね。今からそれをお見せしましょう」ゴトッ
絹江「あら、大荷物ね山岡さん」
栗田「山岡さん、何を持ってきたんですか?」
山岡「最新のDTPソフトが入ったパソコンとレーザープリンタ、それにペーパークラフト専用の厚紙さ」
富井「ええっ?家庭用プリンタで厚紙に印刷なんてできるのかい?」
典子「最近の機種では可能ですよ副部長。厚紙がだめなんて何十年前の話ですか」
大原「たかが紙細工にそんなものまで…これは驚いた」
山岡「まあ見ていてください、まずはパソコンとプリンタのセットアップです」
コースケ「コンセントなんか貸さねえぞ」
山岡「ご心配なく、バッテリーも持参しています」
山岡「まずペーパークラフトに必要なのは、正確な展開図だ」
山岡「たかが直方体の展開図でも、素人が手書きで線を引けばどうしてもズレが生じるもの」
山岡「垂直に定規を合わせて線を引いたつもりでも、僅かにずれていた…なんて経験、誰しもあるだろう」
典子「わかるわー」
山岡「その点、このDTPソフトで作ってやれば…ほらこの通り」ピッ
絹江「あら綺麗」
山岡「精密作業は機械に任せるに限る。現代文明の利器だ」
栗田「同じものを量産するときには尚更ありがたいわね」
コースケ「いや、だからお前らさ…」
山岡「さらに紙を無駄にしないよう、最適の印刷レイアウトも自動でこの通り」ピッ
大原「よく考えられているな」
山岡「そして牌の図柄だ」
山岡「手書きでは勿論、完璧に同じものを描くのは不可能」
山岡「その点やはりパソコンならば問題ない、さらにサイズの微調整やフォントも思い通りに変更できる」
富井「へえ!大したもんだ!」
典子「手書きで作るよりよっぽど手間もかからず、きれいに揃うわね」
慕「わあすごーい」
コースケ「食いついちゃった!慕食いついちゃったよ!」
プリンタ「ウィーン…ズゴゴゴ…」
栗田「印刷ができてきたわ!」
富井「よーし切るぞー」チョキチョキ
山岡「待ってください副部長、ハサミは使いませんよ」
富井「えっ!?」
山岡「この子が作ったこの牌もおそらくハサミで切っている…、そうだね?」
慕「はい…」
山岡「だがハサミでは一つ一つの切り口に手ブレが生じる。ほら、この辺りとか微妙に曲がっているだろう?」
絹江「あら!気づかなかったわ!」
山岡「均一に切るにはこう、定規を当ててカッターで切る方がいい」スッ
典子「ハサミより作業も簡単ね」
コースケ「ひとんちで紙を切り出すなって!クズが散らかってるだろ!」
山岡「そして折って貼り付け。これも道具を使えば簡単だ」
山岡「定規を当てて均一に折り目をつけてやれば、形がゆがむことも無い」
富井「細かいところまでこだわるもんだなあ」
山岡「さらに接着剤にも気を使いました。普通ののりでは手につくと汚れてしまうし、塗る量も均一にできません」
山岡「それを踏まえて、今回はこちらの端までぴったり貼れる最高級両面テープを用意しました」
大原「なんて用意がいいんだ!」
山岡「これで誰でもすばやく、均一な組み立て処理が可能です。さあ皆で作ってみましょう」
絹江「私でも簡単に作れたわ!ほらこんなにきれい!」
典子「ただの紙がしゃっきりぽんと輝いて見えるわね!」
慕「おじさんも作るー?」
コースケ「いや…オレはいいって…」
山岡「ほうら、完成だ」
栗田「わあ!まるで別物だわ!」
富井「こりゃすごい!私でも違いが分かるよ!」
山岡「手間暇をちゃんとかければ、ペーパークラフトはこんなにもきれいになるんだ」
大原「いやあ、いままでバカにしていたけれど、これは考えを改めねばな」
山岡「叔父に牌を売られたからなんていう感情で作ったって、なにもならない」
典子「本当にそうね」
山岡「だが悲しいことに、これが現実だ」
栗田「現代社会の闇ね、これは…」
コースケ「オレは今のこの状況で闇落ちしそうだよ」
ガチャッ
雄山「フン…素人相手に偉そうにご高説か」
栗田「!」
富井「あっ!」
山岡「雄山…!」
コースケ「いや、アンタも誰だよ!?人の家に勝手に入ってくるなって!!」
雄山「そんなものがきれいな麻雀牌とは笑止千万、片腹大激痛よ」
山岡「何…?」
雄山「まあ、お前のような半端者にはお似合いか」
山岡「何だと!」
コースケ「なんかバトルはじめちゃった!?」
コースケ「スイマセン、誰なんすかあの人は」
栗田「あの人は海原雄山…。山岡さんのお父様です」
コースケ「え、父親?親子してあんななの、あいつら?」
栗田「考え方の違いで、いつも会えば喧嘩といがみ合いばかり…。まさか今日も出会ってしまうなんて…」
コースケ「いや、出会ってしまうっていうか、明らかに後からついてきてるだろ…」
典子「また至高と究極の対決が見られるのね…!」
大原「こいつは面白くなってきたな…!」
コースケ「…もうだめだこいつら」
山岡「根拠もなしにケチをつけるのはよしてもらおうか…。この牌の何が悪い」
雄山「フン…その目で見ないと分からんようだな」
山岡「何?」
雄山「では実際に対局して見るがよかろう、そのご自慢の牌でな」
山岡「!」
コースケ「なんかもういいや、慕、ちょっとお出かけしようか」
慕「でも…あの人たちはいいの?」
コースケ「ほっとけ」
栗田「対局ですって?」
典子「何か問題なのかしら?」
富井「やればいいんだろ?ほら、牌を混ぜて積んで…へっくしっ」
グシャッ
絹江「ああっ!紙が折れて潰れてしまったわ!」
典子「副部長!力を入れすぎです!」
富井「ご、ごめん…」
雄山「それ見たことか」
ブロロロ
慕「どこ行くのー?」
コースケ「知り合いの店だ。きっといいものがある」
雄山「紙はしょせん紙。半荘どころか一局すら実用に耐えん、こんなゴミをよくも自慢げに解説したもんだな」
山岡「ぐっ……!」
雄山「本物の麻雀牌とは…このようなものを言うのだ!中川!」
中川「はっ、こちらに」
スッ
栗田「ああっ!」
山岡「これは!」
大原「ぞ、象牙…?」
コースケ「よう周藤、あれ出してくれ」
周藤「お、やっぱ返す気になったのかリチャードソン」
慕「?」
雄山「そう、希少品の象牙で作った最高級の麻雀牌だ」
絹江「このご時世になんて贅沢なの!」
雄山「勿論正規ルートの輸入品から調達した、紛れも無い純正品だ」
富井「これはすごい!」
雄山「このフォルム、質感、重量感…。紙の牌などとは比較にならん」
山岡「くっ……」
栗田「山岡さん…」
雄山「…どうだ士郎よ、ぐうの音も出まい」
コースケ「ほら、あの麻雀牌だ」
慕「!」
コースケ「売ったって言ったのは嘘だ…。ここで預かってもらってた」
慕「そうだったんだ…よかった…」
山岡「……いいだろう」
雄山「フン、まだ何か言い訳があるのか?」
山岡「だったら打とうじゃないか…。お前の言う通り、打ってみればわかる。その牌を使って、この卓でな」
バッ
雄山「!」
典子「これは!」
栗田「全自動卓!」
雄山「貴様…」
コースケ「嘘ついてこんなことしてすまん…。あんな紙の牌つくるくらいお前が麻雀好きだって…気が付かなかった」
慕「怒ってないよ!鳥さんの友達が帰ってきてくれたんだから、それでいいよ!!」
コースケ「お前…」
慕「ありがとう!おじさん大好き!」
山岡「さあどうした雄山、その牌を使って打とうじゃないか。さぞかし実用に耐える代物なんだろう?」
雄山「小癪な…分かっていてそんな言い草を…」
富井「ん、どうした?何か問題でも??」
栗田「副部長、象牙の牌は自動卓では使えないんです…」
富井「そうなのかい?」
絹江「自動卓用の牌は、自動で並べるために磁石が入っているんです」
典子「磁石が入っていない象牙製じゃ、自動卓では使えないわね」
大原「これはしてやったりだな」
慕「じゃあ、仲直り記念!なにかおいしいもの食べに行こうよ!」
コースケ「そうだな!たまには外食もいいか!よーしおじさん奮発しちゃうぞー」アハハ
慕「わーい!」アハハ
雄山「だが…自動卓で使えないのは貴様の紙切れも同様だ」
山岡「紙切れ?何を言っているんだ…わからないな、雄山」
雄山「何だと…!?」
山岡「牌はちゃんと用意してあるさ、ここにな」バッ
雄山「!」
絹江「ああっ!自動卓用の牌だわ!」
典子「いつの間に!」
慕「あ、ここ最近新しくできたんだよ!さいぜり屋さんっていうレストラン!」
コースケ「ははっ、イタリアンなんてトマトばっかりじゃねーのかー?オレの食えるやつあるかなー?」
慕「大丈夫だよ!トマトあったら私が食べるよ!」
(※実在の島根県にサイゼリヤはありません)
雄山「貴様…最初から謀ったな…」
栗田「凄いわ山岡さん!咄嗟にそんなものを!」
山岡「自動卓を持ってきたんだ、当然牌も用意してある」
山岡「こんなこともあろうかと、な」
絹江「まあ!ペーパークラフト講座が台無しだわ!」
典子「そこまで考えていたなんて!」
大原「なんという機転だ!」
コースケ「じゃあオレは…このハンバーグセットかな…」
慕「私はこのトマトクリームパスタ!」
コースケ「おおう、直球でトマトきたな」
慕「普段あんまり食べないし!」
富井「しかし山岡、よくそんなもの持ってるな?」
山岡「現代人の麻雀に自動卓はもはや欠かせない。持ち歩きくらい普通のことです」
山岡「これがあれば積む手間もかからず、面倒をなくすことで誰でも手軽に対局ができる」
山岡「イカサマを仕込んだ仕込まないでもめることもない、公正さも確保できる」
山岡「時間のない現代人や素人でも幅広く遊べるように考えられているんだ」
雄山「フン、馬鹿馬鹿しい」
山岡「何!?」
慕「おいしい!」モグモグ
コースケ「なあ、一人前でもトマト料理作っていいんだぞ?オレに気遣いすることないからな」
慕「うん!今度これ作ってみる!」
雄山「麻雀は古来から手積みに限る。自動卓など歴史や伝統を無視した下品な代物よ」
山岡「…下品なのはどっちだ」
山岡「手積みなのをいいことに、積み込みだの、すり替えだの…」
山岡「いつまでも古臭いイカサマを有難がっているのが、お前たちの倶楽部だろうが!」
雄山「先人たちの築いた技術と言ってもらおう。下衆な機械のおかげでそれが封じられ、こちらは迷惑千万なのだ」
山岡「なにが技術だ!イカサマはイカサマだろう!」
山岡「自動卓ならそうした要素は排除できる。公正な配牌で、純粋に実力で勝負することができるんだ」
雄山「フン、何が純粋か。ケツの青い若造のたわごとに過ぎん」
山岡「なんだと!」ガタッ
慕「ごちそうさまー!おいしかったー!」
コースケ「ああ。だがやっぱり、オレは慕の料理が一番だな」
慕「もー!うまいこと言ってー!」
アハハウフフ
SSって時間も労力も異常に消費するわりに得るもん少な過ぎるけどよくやって偉いな>>1は
少しでもスレの奴らのお気に召さないと叩かれるから書きたいことってよりもスレの奴らの為におもねって書かないとならんし
少しでも遅いもんなら「もういいよ」「10分に1レスとかレス稼ぎし過ぎ」「まーた投げっぱか」「どうしてこんなにちんたらやってるの?」「レスがねーと続きも書けねーのか構ってちゃん」なんて言われたり
挙句折角完成させてもまとめでも好き勝手言われたりして
本当偉いぞこのまま頑張れ>>1!
雄山「何度でも言おう、そんなものは真の真剣勝負に身を置いたことの無い甘造の戯言よ」
雄山「麻雀で賭けるものは、個人の名誉や財産といったちっぽけなものばかりではない」
雄山「ときにチームの代表者として、仲間からの期待と責任を背負い…」
雄山「あるいは祖国の未来を切り拓くため…、月からの侵略者より母なる地球を守るため…」
雄山「何物にも代えがたいおのれの守るべきものを守るため、多くのものを背負って挑む絶対に負けられない戦いがある」
雄山「どんな手を用いようと、勝ちという結果ただそれだけが必要なときがあるのだ」
雄山「そんな大一番でなんの足掻きもせずただ敗れ…なにもかもを失うことになったとして…」
雄山「お前はそれを運が悪かったで済ませるのか?」
山岡「だからといって…イカサマを使った勝ちに価値などあるものか…!」
慕「それでね、明日麻雀大会があるんだ!出てもいいかな…?」
コースケ「麻雀大会か…」
慕「もしかしたら、お母さんに見てもらえるかも、って…」
コースケ「!」
雄山「よいか士郎、サマとはバレなければサマではないのだ」
雄山「騙し騙され、如何にバレずに仕掛けあい見破りあうか、それが麻雀だ」
雄山「そのために技術を磨き知略を尽くす…。そのたゆまぬ研鑽から美学が生まれ、洗練された文化となり芸術となるのだ」
山岡「イカサマの正当化など卑怯者の詭弁に過ぎん!そんなことを言っているから、胡散臭い世界と思われ素人に敬遠されるんだ」
雄山「フン、機微や趣のわからぬ素人風情などこちらからお断りよ」
山岡「相変わらず頭の固い…。新しいものを歓迎しない世界は先細っていくだけだ」
雄山「ほざけ、伝統や積み重ねを軽んじる新参者こそが、優れた文化を破壊していく元凶なのだ。どこの世界でもな」
山岡「それを言うなら、いつまでも悪習を後生大事に抱える老害の方こそだろうが!」
コースケ「あのさ、どうせ麻雀打つなら、あんまそういうの考えなくていいから楽しく打てよ」
慕「?」
コースケ「姉貴のためもいいけどさ、オレはお前の笑ってる顔のほうが見たいかな…。お前自身が楽しんでる姿をさ」
慕「おじさん……。うん!わかった!」
慕「ただいまー」
栗田「あら、おかえりなさい」
コースケ「まだやってたのかあんたら…」
絹江「帰ったらいなくなってると思ってたなら、それも大概ね。あなたの家よここ」
コースケ「うるせっ」
雄山「ちょうどいい、ならば家主である彼らの前で決着をつけようではないか、麻雀でな」
山岡「ああ、結局は勝負の世界、勝った者が正義だ」
雄山「すまないが一勝負、同卓してもらおう」
コースケ「え、オレたちがっスか?」
慕「麻雀打つの?」
……
「「「「よろしくお願いします」」」」
東家:コースケ 25000
南家:山岡 25000
西家:慕 25000
北家:雄山 25000
数十分後……
……
オーラス 親:雄山
慕「ツモ 3000・6000です」ぺちん
山岡「ぐっ……」
雄山「ぬう……」
1位:慕 +87100
2位:コースケ +19700
3位:山岡 -1200
4位:雄山 -5600
コースケ(弱っ!こいつらオレより弱っ!!)
慕「……おわりですね」
山岡「…………」
雄山「…………」
コースケ「…………」
他「…………」
山岡「……今日はこのくらいにしておいてやるよ」
雄山「フン、わしは忙しいのだ。こんな些事に時間などかけておれん、帰らせてもらおう」
コソコソ
コースケ「なんなんだよこいつら……」
慕「ばいばーい」
カン
おわりです 読んでくれた人ありがとう
またどこかのスレで~
>>39
ありがとうございますー
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