幽霊「幽霊ですよー」 (5)

とある夏の放課後。
帰ろうとして席を立った男は、友人の男友に呼びとめられた。

男友「なあ、久しぶりに今日おまえんち泊まってもいいか?」

男「おまえ部活は?」

男友「ばーか。休みだからおまえんちに暇つぶしに行くんだよ」

男「ま、いいけどさ」

男友は野球部のエースだ。
だから顧問の先生もそう簡単には休ませてはくれないらしい。
ご苦労なことだ。

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男「来てもいいけど、うちはPS2ぐらいしかねーぞ」

しかも、男友はほとんどのソフトをやりつくしているはずだ。

男友「安心しろ。暇つぶしの道具はこっちで用意した。おまえんちってビデオデッキあったよな?」

男「使ってないから押入れに片付けたけど」

男友「捨ててはないんだな?まだあるんだな?」

やけに念を押して聞いてくる。
アニメか映画でもレンタルしてきたんだろうか。
でも――

男「なんでビデオ?DVDでいいじゃん。PS2あるんだし」

PS2では一応DVDも再生できる。
まあ、再生できるDVDとできないDVDがあるらしいけど。

男友「今回は事情が事情でさあ」

男「事情?」

男友「そう、事情だ」

それから男友はわざとらしく咳払いをして、男の目をジッとのぞきこんだ。
気のせいか、いつもより真剣な表情をしているように見えた。

男友「男、おまえ呪いのビデオって知ってるか?」

男「知らん。なんだよそれ」

男友「再生すると画面から黒い髪の女が飛び出してくるっていう、ほら、あのよくあるやつだよ」

男「んな気味の悪いもんを再生すんのかよ!おれは絶対にいやだぞ」

男友「ま、待て!待てって!な!?」

学生鞄をつかんで教室を出ようとした男だったが、男友の必死の抵抗によってそれは敵わなかった。

男友「おれだってこんなもん見たくねーよ。だけど、しかたがなかったんだよ。どうすることもできなかったんだよ」

男友の話によると、先週の日曜に練習を見学に来たOBの先輩が、なにやら怪しいビデオを持ってきた。
野球部ではいじられキャラの男友が、最初の標的にされてしまったという。

男友「家で見てきて感想を聞かせろだとよ。あーくそ!あいつの顔今すぐぶん殴ってやりてえ!」

男「殴ればいいだろ。それですべてが解決するんなら」

男友「あいつの恐ろしさを知らないから、そんな無責任なことが言えんだよっ!」

男友は涙目で肩を震わせていた。
男友にとって、その先輩は幽霊以上に怖いのだろうか。

というかそんなに見るのが嫌なら、感想なんて適当に誤魔化せばいいのに。
男友は変なところで真面目だ。

男「ビデオデッキ貸してやるから自分ちで見ろ。おれまで巻き込むな」

男友「怖いのか?」

男「なんだと?」

男友「ビビってんのか?」

男「そういうおまえはどうなんだよ?」

本当は怖かったが、直接怖いと言うのは男のちっぽけなプライドが邪魔をした。

男友「もちろん怖いぜ。一人で見るのはな」

男「なにが言いたい?」

男友「二人なら大丈夫だ」

男「ざけんな」

もちろん男はきっぱりと断るつもりだったが、気がつけば男友といっしょに自宅の玄関の先まで帰ってきてしまっていた。

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