まどか「わたしはインキュベーター (98)
見滝原市内・鹿目家のベランダ
QB(本日、史上最高の『素質』保持者を発見)
QB(個体名『鹿目まどか』)
QB(これより彼女の自宅にて接触を…むぎゅっぷい!?)
ほむら「まどか、あなたに奇跡を約束して取り入ろうとする輩が現れても、決して言いなりになってはいけない、良いわね」
まどか「アッハイ 。……ええっと、ところでウチのベランダに立ってるあなたは誰なのかな?」
ほむら「私は暁美ほむら。見滝原中学に転校してくる予定の者よ。ほむらで良いわ」
まどか「同じ学校だ……。じゃ、じゃあよろしく……」
ほむら「ええ、よろしくお願いするわ」
まどか「それで、今あなたが掴んでいるのは何?ぬいぐるみ?」
QB「ボクはキュゥべえ!」
まどか「しゃ、喋った!?」
ほむら「コイツを決して信用しては駄目よ。それじゃ(CLOCK UP)」
ほむら「消えちゃった……」
まどか(ほむらちゃんにキュゥべえか……)
まどか(そんな悪い人?達には見えなかったかな……)
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数日後、放課後
まどか「あ……ありのままに起こったことを話すよ!」
まどか「私は親友のさやかちゃんとショッピングモールにいたと思ったら、気がついたらさやかちゃんやキュゥべえと一緒にオバケみたいなヒゲおじさんに囲まれてる!」
まどか「何を言ってるのかわからないと思うけど、私も何をされたか分からなかったよ!」
さやか「まどか、なぜか分からないけどその台詞は別の時にとっとくべきだった気がする……。って言うかわたしたちSAN値もといピンチじゃない!?」
(ブワ!)
マミ「危ない所だったわね。でも、もう大丈夫」
まどか「あなたは!?……ってわたしこればっかり」
マミ「私は巴マミ。あなたと同じ見滝原中の3年生よ。……あら、キュゥべえを助けてくれたのね?ありがとう。キュゥべえは私の大切なお友達なの」
まどか「は、はい(言えない……気が付いたら一緒にいたけど、放っておけなかっただけとか言えない)」
マミ「詳しい話の前に、ちょっと一仕事、片づけちゃっていいかしら!」
( カ!)
まどか「マミさんの姿が変わった!?」
さやか「すごい!昔テレビで観た魔法少女みたい!」
QB「そう、彼女は魔法少女。魔女を狩る者さ」
マミ「無限の魔弾(パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ)!!」
(どっかーん!)
マミ「ふぃ~」
まどか「空間が元に……って、ほむらちゃん!?」
ほむら「まどか……」
マミ「魔女は逃げたわ。仕止めたいならすぐに追いかけなさい」
ほむら「私が用があるのは……」
マミ「飲み込みが悪いわね。見逃してあげるって言ってるの」
ほむら「……( バ!)」
まどか「あの、マミさんはほむらちゃんとケンカしてるんですか?」
マミ「そう言う訳でも無いのだけど、ね」
まどか(それから、私たちはマミさんの家で魔女と魔法少女について説明された)
まどか(魔女とその使い魔と言う、普通の人には見えない存在が、私たちを影から脅かしていること)
まどか(そして、キュゥべえと契約した魔法少女はその魔女と戦う定めを背負うことになること。たった1つの願い事と引き換えに)
まどか(キュゥべえによると、わたしとさやかちゃんにも魔法少女の資質があるらしい)
まどか(そして……)
Adelbert(薔薇園の魔女の手下)
マミ「ティーロ!!」
(どかーん!)
まどか(わたしたちはマミさんの仕事ぶりを見学させてもらうことになった。マミさん曰く『魔法少女体験コース』だそうだ。ちょっとおかしい。ウェヒヒヒ)
Gertrud(薔薇園の魔女)
マミ「ティロ・ドッピエッタ!!」
(どかーん!)
まどか(マミさんは優雅に、格好良く、次々と魔女を倒していった。ううん、倒すだけじゃ無い。魔女に襲われそうになったたくさんの人たちを助けていった)
ULLA(暗闇の魔女の手下)
マミ「ティロ・ボレー!!」
(どかーん!)
まどか(得意な学科も特技も無い。そんなわたしがマミさんみたいになれたら、それはとっても嬉しいなって思う)
Suleika(暗闇の魔女)
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
(どかーん!)
まどか(でも、マミさんとほむらちゃんが険悪な雰囲気なのも気になる。そんなある日……)
病院
まどか「あれ、恭介くんに会えなかったの?」
まどか(恭介くんは、この病院に入院しているわたしたちの昔からの友達の1人だ。特に、さやかちゃんとは幼馴染と言っても良くて、実はさやかちゃんが恭介くんに恋をしていることをわたしは知っている)
さやか「何か今日は都合悪いみたいでさ。せっかく会いに来てあげたのに、シツレーな奴だ。……ってまどか、あれ!?」
QB「(ヒョコ)グリーフシードだね。孵化しそうだ」
さやか「まどか、マミさんの連絡先聞いてる?」
まどか「う、ううん。聞いてない」
QB「マミは携帯電話を持っていないからね」
さやか「じゃあ、まどかはマミさん呼んできて!あたしはこのグリーフシードがどうにかならないように見張ってる!」
まどか「分かった。無茶しないでね!(ダ!」
まどか(幸い、キュゥべえのお陰もあって、すぐにマミさんと合流できた。そして、結界の中……)
ほむら「……」
マミ「暁美さん」
ほむら「この獲物は、私が狩る。あなたたちは手を引いて」
マミ「そうはいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」
ほむら「2人の安全は保証するわ」
マミ「信用すると思って?……束縛(レガーレ)!」
まどか「リボンが!?」
ほむら「ば、馬鹿。そんなことしてる場合じゃない!今度の魔女は今までとは訳が違うわ!」
まどか「マミさん、ほむらちゃんを……」
マミ「大丈夫よ。怪我させるつもりもないし、おとなしくしてればちゃんと解放してあげるから。さ、行きましょう、鹿目さん(グイ)」
ほむら「待って、クッ!」
まどか「ほむらちゃ~ん (ズルズル)」
魔女の結界・最深部
マミ「ここがあの魔女のハウスね」
まどか「あの……、マミさん。こんなこと聞いたら怒られるかもしれないんですけど」
マミ「なに?」
まどか「マミさんはほむらちゃんのこと、嫌いなんですか?」
マミ「ああ。別に嫌いってわけじゃないけど、キュゥべえを襲ったって言うし……」
まどか(あー)
マミ「それに、魔法少女同士は命がけでグリーフシードの取りあうこともあるの。油断して後ろからズドン!なんて良くあることよ……よくされたものよ」
まどか「わたし、ほむらちゃんが悪い子には思えないんです。学校だと普通にお友達だし……。だから……」
マミ「鹿目さん。厳しいことを言うようだけど、そんな風に考えられるのはあなたが魔法少女じゃないからだと思うわ」
まどか「違う……間違ってますよ、マミさん」
まどか「考えてたんですけど、わたし、魔法少女になります!」
マミ「……本気?願い事、キチンと考えたの?」
まどか「こんなこと言ったら、マミさんに甘いって言われるかもしれないんですけど……わたし、マミさんみたいな魔法少女になりたいんです!」
まどか「わたし、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて、きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって。それが嫌でしょうがなかったんです。 マミさんみたいに人の役に立てるのなら、それはとっても嬉しいことで。だから、私、魔法少女になれたらそれで願いごとは叶っちゃうんです」
マミ「……大変だよ。ケガもするし、普通に恋したり、遊んだりしてる暇も無くなっちゃうよ?」
まどか「でも、それでも頑張ってるマミさんに、わたし、憧れてるんです」
マミ「……憧れるほどのモノじゃないわよ、私」
マミ「無理して格好つけてるだけで、怖くても辛くても、誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり。いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」
まどか「マミさんは、一人ぼっちなんかじゃないです。わたしも、さやかちゃんも、それにほむらちゃんだっています」
マミ「そうね、そうなんだよね……。ありがとう、鹿目さん。もし魔法少女になっても今の気持ちを忘れないでいられるなら、あなたは魔法少女達の希望になるかもしれないわ。……魔法少女はみんな、一人ぼっちだから」
まどか「え?」
マミ「でも、キュゥべえにする願い事はキチンと考えておいた方が良いわよ。でないと、『お祝いの大きなケーキ』とかになっちゃうわよ~(フフ)」
まどか「ウェヒヒ。さすがにそれは……」
マミ「キュゥべえ、グリーフシードは?」
QB「今動き出したよ!孵化がはじまる。急いで!」
マミ「オーケー、分かったわ。今日と言う今日は速攻で片付けるわよ!(バッ!)」
さやか「マミさん!まどか!」
マミ「無茶しすぎ。間に会ってよかったわ。魔女は!?」
QB「あそこだよ!」
charlotte(お菓子の魔女)
マミ「魔弾の舞踏(ダンサ・デル・マジックブレッド)!」
マミ(身体が軽い。こんな気持ちで戦うのははじめて。でも、こんな時だからこそ、慎重に、確実に倒すわ。まずは使い魔を一掃!)
マミ「ハァ!」
マミ(小型の魔女でも油断は禁物。銃で殴り倒して距離を取った上で束縛。念入りにトドメを……)
お菓子の魔女「(シュルン)」
ケーゼ、ケーゼ、ヴォーイストケーゼ
マミ「……え?」
お菓子の魔女「ムシリ」
QB「ギャグパート、終了」
本日はとりあえずここまで。
続きはまた後日。
続きの投稿行きます。
皆様のご指摘の通り、テキトーと言うか『端折れる所はガッツリ省略』でやってます(苦笑)
とはいえ、今回からシリアスパート。
ギャグもネタもゆるい展開も、控えめで行きます。
QB(個体名『巴マミ』消失)
QB("戦闘中に"彼女を失ったのは、ちょっとした痛手ではあった)
QB(けれども、ボクたちのスケジュールに寸分の狂いも無い)
QB(むしろ、これが『鹿目まどか』からのエネルギー収拾に向けて大きな一歩になるかもしれない―――)
まどか(マミさんが死んだ)
まどか(さよならも言う暇も無く、一瞬で魔女に殺されてしまった)
まどか(わたしたちは、そのすぐ後に駆け付けてくれたほむらちゃんに助けられた。……助けられてしまった、わたしたちだけ)
まどか(あれから、わたしは魔法少女になれずにいる。「魔法少女になります」って、マミさんにいったのに……。けれども、マミさんが死んだ時の恐怖を思うと、とても契約できない)
まどか(「魔法少女の希望になれるかもしれない」そんなことを言ってもらったのに、ごめんなさい、マミさん……)
まどか(そんなわたしへの罰なのかな。もう1人の親友の仁美ちゃんと、こうして魔女の事件に巻き込まれたのは)
工場→魔女の結界
H.N.Elly(Kirsten) (箱の魔女)
まどか「ごめんなさい、マミさん。弱いわたしで……。ズルいわたしで……」
使い魔Daniyyel+Jennifer「enattakihsonatin……」
まどか「このままゴムみたいに引っ張られて殺されちゃうのが、わたしの当然の末路なのかな……」
さやか「ンなわけ無いでしょうが!(ザン!)」
使い魔「!?」
まどか(綺麗な青……楽譜みたいな軌跡……魔法の色?)
さやか「百鬼夜行をぶったぎる!(ジャキン)」
まどか「魔法……少女?」
さやか「これでトドメだああああああ!」
箱の魔女「!?」
(ドゥ!グシャ!!)
まどか「……ってさやかちゃん!?」
さやか「いやー、初めてにしちゃ、なかなかのモンでしょ」
まどか「さやかちゃん、契約したの!?」
さやか「ま、心境の変化ってヤツですかね?まどかも仁美も……こっちは救急車呼ばなきゃだけど、無事で何よりだ」
まどか「でも……」
さやか「大丈夫だって。皆を守れて、それにあたしが心から叶えたい願いも叶った。これ以上のことなんて無いよ」
まどか「でも……」
???「アンタかい。巴マミの後釜。他人のために願い事を使った、バカな新人魔法少女ってヤツは?(シャク)」
まどか(リンゴを持った、槍使いの赤い魔法少女?見たことの無い娘だ)
さやか「誰!?」
杏子「あたしは佐倉杏子。アンタみたいなひよっ子に、こんな美味しい縄張り任せておけないからねぇ。このシマはいずれあたしがもらうよ」
まどか「あの……わたしは1つの町にたくさん魔法少女がいても良いと思うんですけど……」
杏子「(ギロリ)魔法少女でも無い奴が口を出すんじゃないよ」
まどか「あう……」
さやか「あたしはまどかと同感だよ。お互い町を守るために戦うなら、って言う前置きがつくけどね」
杏子「『町を守る』だぁ?ハッ!甘ちゃん共が笑わせてくれるねぇ。魔法は徹頭徹尾自分のために使う物!他人のために、ましてや町を守るために使っても、ロクなことにはなりゃしねぇ。巴マミはくたばる前に色々教えそこなったみたいだねぇ」
さやか「……さんを」
杏子「ウン?」
さやか「マミさんを、馬鹿にするなぁ!」
(ガキィン!)
杏子「なるほど。良い突きだ。ニュービーにしちゃスジは悪くないが……それだけだ!(ブン!)」
さやか「がは!?」
まどか「さやかちゃん!?」
QB「(ヒョコ)佐倉杏子はベテランの魔法少女だ。さやかでは分が悪い」
さやか「う……く……」
杏子「へぇ、まだ立つんだ?あばら骨が軽く2、3本イっちゃう位はカマしてやったと思ったんだけどねぇ」
まどか「さやかちゃん、平気なの……?」
QB「彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね。ダメージの回復力は人一倍だ」
まどか(やっぱり、さやかちゃんは恭介くんのケガを治すために……)
さやか「だぁぁぁぁ!」
まどか「キュゥべえ、止めさせて!魔女じゃ無いのに!!味方同士が争うなんて、そんなのって無いよ!!」
QB「ボクにはどうしようもない。……けれど、キミが契約して魔法少女になれば、今すぐにでも止められるだろうね」
まどか(そうだ。契約して、魔法少女になれば2人を止められる。それに、願い事でマミさんを生き返らせることだって……)
ほむら「それには及ばないわ(カチ)」
まどか「ほむらちゃん!?」
さやか「……(ガク)」
ほむら「(ファサ…)まさか、あなたが来るのがこんなに早いとは思わなかったわ、佐倉杏子」
杏子「テメェ……。どこかで会ったか?」
ほむら「さぁ、どうかしら?」
杏子「なるほど。あんたがキュゥべえの言ってたイレギュラーか。で、そのルーキーに味方する気かい?」
ほむら「私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵。あなたはどっちなの?」
杏子「……オーケー。今日のところは降りさせてもらうよ。アンタのその妙な技、タネがまるで見えないしね(バ!)」
まどか「助けてくれて……ありがとう」
ほむら「(ファサ…)何度も忠告させないで、鹿目まどか。あなたはこちら側に関わり合いを持つべきじゃないわ(バ!)」
まどか(あの後、救急車が来て、魔女に巻き込まれた人は皆助け出された)
まどか(さやかちゃんは気絶していただけで、わたしもさやかちゃんも病院に運び込まれたのはまた別の話)
まどか(さやかちゃんに聞いてみたら、やっぱり魔法少女になる願い事は恭介くんの腕を治すこと。恭介くんがまた得意なヴァイオリンが弾けるように)
まどか(好きな人のために、そんなことを願えるさやかちゃんはすごいなと思う。でも、それ以上に心配。さやかちゃんは優しくて勇気があって良い子だけど、思い込みが激しいところもあるから)
まどか(それに、もうこれ以上大切な人がいなくなるのは見たくない。……マミさんみたいに)
まどか(だから、次の日わたしはほむらちゃんにお願いしてみることにした)
見滝原中学校・屋上
ほむら「美樹さやかを助けてあげて欲しい?」
まどか「うん。魔女をやっつける時もみんなで協力して戦えば、ずっと安全なはずだよね?」
ほむら「私は嘘をつきたくないし、出来もしない約束もしたくない。……だから、美樹さやかのことは諦めて」
まどか「そんな?どうしてなの……?」
ほむら「あの子は契約すべきじゃなかった。これは私のミスよ。あなただけでなく彼女もきちんと監視しておくべきだった」
まどか「なら……」
ほむら「でも、責任を認めた上で言わせて貰うわ。今となっては、どうやっても償いきれないミスなの」
ほむら「死んでしまった人がかえって来ないのと同じこと」
まどか「!?」
ほむら「一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんてない」
ほむら「あの契約は、たった一つの希望と引き換えに全てを諦めるってことだから」
まどか「だから、ほむらちゃんも諦めちゃってるの?自分のことも?他の子のことも全部?」
ほむら「ええ。罪滅ぼしなんて言い訳はしないわ。私はどんな罪を背負おうと、私の戦いを続けなきゃならない(ファサ…)」
まどか「そんな……」
ほむら「時間を無駄にさせたわね。ごめんなさい」
まどか「ほ、ほむらちゃん!?」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃんの『私の戦い』って何!?やっぱり、願い事と関係のあることなの!?」
ほむら「鹿目まどか、昨日も言ったわよね。あなたは関わり合いになるべきではない、と。もしあなたが忠告を聞かない愚か者なら、私は手段を選ばないわ」
まどか(ほむらちゃんだけじゃない。さやかちゃんも、杏子ちゃんも、お互い譲るつもりは無いみたいだった)
まどか(杏子ちゃんは『グリーフシードのために、使い魔は人間を襲って魔女になるまで見逃す』と言う。そんな杏子ちゃんとさやかちゃんは遠からず酷いことになりそう)
まどか(わたしは、どうすれば良いんだろう……?)
夜・鹿目家
絢子「どうかしたのかい、まどか?こんな時間に」
まどか「友達がね、正しいことを思ってて、正しいことをやってる筈なのに、頑張れば頑張るほど、どんどん酷いことになっていくの……」
絢子「良くあることさ」
まどか「良く……あるんだ」
絢子「悔しいけど、ね。良いことを積み重ねればハッピーエンドが手に入るって訳じゃない。むしろ、みんながみんな、自分の正しさに意固地になればなるほど、幸せからは遠ざかるものなのさ」
まどか「正しいことをしても幸せになれないなんて……。だったら、どうすればいいんだろう、わたし……」
絢子「どうにかしたいのかい?」
まどか「うん」
絢子「ソイツばかりは、他人が口を突っ込んでもキレイな解決はいかないね。それでも、解決したいかい?」
まどか「うん」
絢子「なら、間違えれば良い。正しすぎるその子の分までさ」
まどか「間違える……ってそれで良いの?」
絢子「ああ。それが後になってみたら正解だったって分かる時もある。ホントに他にどうしようも無いくらいドン詰まりになったら、いっそ思いきって間違えちゃうのも手なんだよ」
絢子「まどか、お前は良い子に育った。嘘もつかないし悪いこともしない。いつだって正しくあろうとして頑張ってる。子どもとしては合格だよ。だからさ、大人になる前に……今度は間違え方もちゃんと勉強しときな」
まどか(思いっきり間違えちゃうのも手……)
QB「まどか、急いで!さやかが危ない!」
歩道橋
杏子「ココなら遠慮はいらないよねェ。いっちょハデに行こうじゃない!(カ!)」
まどか(赤い魔力の火!杏子ちゃんが変身したんだ!)
さやか「言われなくても……」
ほむら「佐倉杏子、話が違うわ。美樹さやかには手を出さないよう言ったはず」
杏子「ンなこと言って、向こうはやる気だよ?」
さやか「そっちから絡んできて良く言うわ(パァ……)」
まどか「(さやかちゃんの指輪からソウルジェムが!)待って、さやかちゃん!止めて!」
さやか「まどか。邪魔しないで!魔法少女じゃないまどかは関係ないんだから!」
まどか「(バッ!)ダメだよ!こんなの!!」
さやか「まどか!」
まどか「さやかちゃん、ゴメン!わたし、『間違える』!!(バッ!)」
さやか「ソウルジェムを!?まどか、あんたなんてことを……(ゴトリ)」
まどか「さやかちゃん!?」
ほむら「!?(カチ)」
杏子「どう言うことだオイ……。こいつ死んでんじゃねぇか!?」
QB「今のは本当に間違いだったよ、まどか。よりによって友達を投げるなんて、どうかしてるよ」
杏子「……は?」
QB「君たち魔法少女が身体をコントロールできるのは、せいぜい100メートル圏内が限度だからね」
杏子「100メートル?何のことだ、どういう意味だ!?」
キュゥべえ「普段は当然、肌身離さず持ち歩いてるんだから、こう言う事故は滅多にあることじゃないんだけど」
まどか「何言ってるのキュゥべえ!助けて!!さやかちゃんを死なせないで!!」
QB「ハァ……。まどか、そっちはさやかじゃなくて」
QB「只の抜け殻なんだって」
まどか「……え?」
QB「さやかはさっき、キミが投げて捨てちゃったじゃないか」
まどか(そして、キュゥべえは説明しました)
まどか(魔法少女の『契約』とは、魂を身体からくり抜いて、加工して、ソウルジェムにすること。そうすることが、戦いに便利だからだと)
まどか「ひどいよ……そんなのってあんまりだよ……!」
QB「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」
QB「訳が分からないよ。どうして人間はそんなに、魂の在処にこだわるんだい?」
ほむら「少なくとも、魂の在処が分からないと困る人が、ここに1人いるわね(ファサ…)」
まどか「ほむらちゃん!?それ、さやかちゃんのソウルジェム?」
ほむら「ええ」
まどか(ほむらちゃんのお陰で、さやかちゃんは息を吹き返した。そして、さやかちゃんも自分の身に起こったことを知った)
まどか(その翌日。さやかちゃんはとんでもない事実を突き付けられた。仁美ちゃんが、恭介くんに告白するのだそう。わたしはとても驚いた。仁美ちゃんとは3人、親友同士なのに今までそんな素振りに全く気付かなかったから……)
さやか「恭介に仁美を取られちゃうよ……」
さやか「でも、わたしゾンビだもん!キスしてなんて言えないよ!」
まどか(涙ながらにそう言うさやかちゃんを、わたしは抱きしめることしかできなかった。さやかちゃんはひとしきり泣いたら落ち着いたように見えた。けれど、その夜の魔女との戦いで……)
魔女の結界
グシャ!
グシャ!
Elsaグシャ!mariaグシャ!(影の魔女)グシャ!
グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!
さやか「アハハハハ!本当だぁ!!その気になれば痛みなんて簡単に消せちゃうんだ!!!」
まどか「さやかちゃん止めて!そんな戦い方、さやかちゃんのためにならないよ!」
さやか「あたしの、ため?こんな姿にされた後に、何がわたしのためになるって言うのよ……?」
さやか「それとも何?あんたがわたしの代わりに戦ってくれるって言うの?」
まどか「!?」
さやか「キュゥべえから聞いたよ。あんた、誰よりも才能あるんでしょ?あたしみたいな苦労しなくても、カンタンに魔女やっつけられるんでしょ?」
さやか「あたしのために何かしようって言うんならまずわたしと同じ立場になってみなさいよ。……それじゃ」
まどか「待って、さやかちゃん……」
さやか「着いてこないで!」
まどか(その時、わたしは追いかけることができませんでした。追いかけなくちゃいけなかったのに……)
公園
まどか「さやかちゃん、あれから家にも帰って無いなんて……。携帯も繋がらないし……。さやかちゃん、どこ?」
QB「(ヒョコ)まどか、キミもボクのことを恨んでいるのかい?」
まどか(どうしてそんな言い方……。!?そっか、大切な友達をあんな風にされて、わたし、キュゥべえのこと『恨んで』るんだ。でも……)
まどか「あなたを恨めば、さやかちゃんをもとに戻してくれるの?」
QB「それは無理だ。ボクの力の及ぶところじゃない」
まどか「わたしたちを魔法少女にすることはできるのに、その逆はできないんだ」
QB「一度割った卵は、元には戻せない。それと同じさ」
まどか「なら……わたしが契約したら?契約して、『さやかちゃんを元に戻して』って願ったら?」
QB「そんなことを叶えるくらい、造作も無いさ。キミにはそれだけ大きな資質があるからね」
まどか「最初は、マミさんを戻してもらおうと思ってたんだけど……」
QB「ボクにもルールがあるからね。2つの願いを叶えることはできない。けれど、『2人を元に戻す』と言う1つの願いにすることはできるよ。キミの資質ならそれくらい造作も無い」
まどか(同じ『元に戻す』でも全然違うことなのに、簡単に言えちゃうんだ。でも……)
QB「まどか、その願いはキミの魂を差し出すに足るものかい?」
まどか「当たり前だよ……。さやかちゃんと、マミさんのためなら、わたし、魔法少女に……」
BLAM!BLAM!BLAM!
まどか「ほむらちゃん!?ひどいよ!なにも殺さなくたって」
ほむら「あ、あなたは!!なんであなたは!!い、いつだって!!そうやって!!!自分を犠牲にして!!か、!勝手に自分を粗末にしないで!!!!」
ほむら「い、いい加減にしてよ!!!!あなたを失えば、それを悲しむ人がいるって!どうしてそれに気づかないの!?あ、あ、あなたを守ろうとしてた人はどうなるのよぉ!!!!(ポロポロ…)」
まどか「ほむらちゃん……(泣いてる……。会って少ししか経ってないわたしのためにそこまで……。アレ、わたしたち夢の中で会ったような……?)」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん。わたしのために……」
まどか(その後、ほむらちゃんが泣き止むまで、わたしは一緒にいた)
ほむら「み、見苦しい所を見せたわね。ごめんなさい……」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん。わたし、そろそろ行かないと」
ほむら「……美樹さやかを探すの?」
まどか「うん。ほむらちゃんには諦めて、って言われたけど諦めきれないよ。だって、さやかちゃんはずっと一緒にいた、大事な友達だもん。それじゃぁ……」
ほむら「待って」
まどか「え?」
ほむら「お願い、待って。私も手伝う(ファサ…)」
まどか「あ、ありがとう(ほむらちゃんが手伝ってくれると思わなかった……)」
ほむら「あなたのことだから、止めても行くんでしょう?だから、私も行くわ」
ほむら「ただし、約束して。いざという時は下がってて。そして……最悪の可能性を覚悟しておいて」
まどか「う……うん」
まどか(そして、ほむらちゃんはさやかちゃんの魔力を辿って、さやかちゃんの居場所を探した)
まどか(まるで、マミさんやさやかちゃんが魔女を探す時みたいだ、なんて場違いなことを考えてしまった)
まどか(それがイヤになるくらい的を得ていたことを、わたしはすぐに知ることになる……)
深夜・駅前
ほむら「佐倉杏子。なぜあなたがここに?」
杏子「それはコッチの……。ああ、そこの奴はさやかの仲間だっけ(ポキ)。なるほど、そいつの頼みってワケか。意外だねぇ、あんたがそういうことするなんて」
ほむら「(ファサ…)緊急措置よ」
まどか「あの……」
杏子「ああ、安心しなよ。そこのイレギュラーとは共同戦線の約束をしてるんだ。ちょっとした利害の一致でさ。だから、ドンパチなんかやらかしたりしないよ」
ほむら「そう言うことよ。だから鹿目まどか、あなたは安心してここで待ってて」
まどか「え……?」
杏子「ァン?なんでわざわざンなことすんだよ?」
まどか「そうだよ、わたしもさやかちゃんを迎えに……」
ほむら「いい?おそらく美樹さやかはこの駅の中にいる。けれど今の彼女は通常の状態では無い。万一のことがあった時にあなたを守りきれるかどうかも分からない。だからここにいて。良いわね」
杏子(まるでまくしたてるみてーに……。コイツがこんなに話すのなんざ始めてだ。……一体何があるってンだ?)
まどか「う……うん(でも、放っておけない。ゴメン。後ろからこっそり着いていくね!)」
駅構内・ホーム
杏子「さやか!」
さやか「杏子か……。悪いね、手間かけさせちゃって」
ほむら「美樹さやか……」
さやか「転校生も……。まさか、あんたまで来るなんてね」
ほむら「私の望みでは無いわ。頼まれたの。言わなくても分かるわよね、誰のことか」
さやか「さぁ、分かんないや。なーんにも分からない」
ほむら「……」
さやか「結局……わたしは一体何が大切で、何を守ろうとしていたのか……。もう何もかも分からなくなっちゃったんだ」
杏子「さやか……」
さやか「わたしは確かに何人か救いはしたけどさ、その分恨みや妬みも溜まっていって。挙句、大切な友達さえ傷つけて……」
まどか「(バッ!)そんなこと、全然気にして無い!!」
ほむら「まどか!?」
まどか「恨みとか!妬みとか!誰だってあるよ!わたしだって、今恨んでる相手いるもん!!だから……」
さやか「ハハ……。まどかは優しいなぁ、さすがわたしの嫁だぁ……。でも、ゴメンね。あたし、もうダメみたい(ス……)」
杏子「ッ!?ソウルジェムがあんなに濁ってやがる!!」
ほむら「いけない!まどか、逃げてえええええ!!!!!」
さやか「あたしって、ほんとバカ……」
(ピキピキ……パリーン!!)
まどか「さやかちゃあああああああああああん!」
杏子「さやかあああああああああああああああ!」
ほむら「まどかああああああああああああああ!」
(グォォォ……)
QB(個体名『美樹さやか』消失)
QB(希望と絶望の相転移、確認)
QB(見滝原に残る魔法少女は、あと2人)
今回はここまで。
お付き合いいただきありがとうございました。
あと、杏さや派の皆様にはごめんなさい。
まどか中心に進めていたらさやか周りの展開がゴッソリ無くなってました。
それでも、せめてまどかとさやかをきちんと『お別れ』させてあげたくてこういう展開になりました。
>さやか「あたしって、ほんとバカ……」 (ピキピキ……パリーン!!)
まどか「さやかちゃあああああああああああん!」
杏子「さやかあああああああああああああああ!」
ほむら「まどかああああああああああああああ!」
ここワロタ、これがシリアスな笑いというやつか
続きの投稿行きます。
なんだか毎回キュゥべえの見せ場が端折られてる感がありますが、このSSの半分はキュゥべえへの愛で出来ています!!
駅構内・ホーム→魔女の結界
Oktavia von Seckendorff(人魚の魔女)
杏子「オイ……。なんだよアレ?何だよテメェ?さやかに何しやがった!?」
まどか「さやかちゃん!!さやかちゃああああん!!」
ほむら「佐倉杏子!一端引くわよ!!」
杏子「何を?」
ほむら「行くわよ!(カチ)」
線路上
まどか「ハ!?……何!?どうしたの!?さやかちゃんは!?」
杏子「……」
ほむら「私の魔法、時間停止を使ってあの結界から脱出したの。美樹さやかの遺体だけは、佐倉杏子が回収してくれたわ」
まどか「遺体って……。さやかちゃんは、死んじゃったって言うの……?嘘でしょ……?」
ほむら「約束したはずよ。待っててって。そして、最悪の事態を覚悟してって」
まどか「……ごめんなさい」
杏子「それより、ありゃどう言うことだ!アイツのソウルジェムはどうなったンだ!?知ってること全部教えろ!」
ほむら「美樹さやかのソウルジェムはグリーフシードに変化して、魔女を生み出して消滅したわ」
杏子「な!?」
まどか「本当……なの?」
ほむら「事実よ。それがソウルジェムの最後の秘密」
ほむら「これが濁りきって黒く染まる時、ソウルジェム(私たち)はグリーフシードになり、魔女として生まれ変わる。それが、魔法少女になったモノの、逃れられない運命」
まどか「さやかちゃんは、マミさんみたいな正義の味方になりたいって、そう思って魔法少女になったんだよ?なのに……(ジワ…)」
ほむら「その祈りに見合うだけの呪いを背負い込んだまでのこと。あの子は誰かを救った分だけ、これからは誰かを祟りながら生きていく。鹿目まどか、今度こそ理解できたでしょう?あなたが憧れていたモノがどういうモノなのか」
まどか「さやかちゃん……うぁ、あああああん!!(ポロポロ)」
杏子「テメェ、全部知ってたのかよ!!だったらなんでソレ最初から全部言わなかった!?」
ほむら「魔法少女の身体のことと同じよ。言ったところで誰も信じない。誰も受け止められない。あなただって、この目で見なければ信じなかったでしょう?」
杏子「……クソ!」
ほむら「その遺体の処理は一考しなくてはならないわね。うかつな場所に置き去りにすると、後々厄介なことになるから」
杏子「!?テメェ、それでも人間かよ!?」
ほむら「もちろん違うわ。……あなたもね」
鹿目家・まどかの自室
QB「入っても良いかい?」
まどか「……」
QB「(ヒョコ)話があるんだ」
まどか「(勝手に入って……)ほむらちゃんが言ったこと、本当なの?」
QB「訂正するほど間違ってはいないね」
まどか「じゃぁ、あなたはみんなを魔女にするために、魔法少女に?」
QB「勘違いしないで欲しいんだが、ボクたちはなにも人類に悪意を持っている訳じゃぁない」
QB「すべては宇宙の寿命を延ばすためなんだ。まどか、キミはエントロピーと言う言葉を知っているかい?」
まどか(そして、キュゥべえは勝手に説明しはじめた)
まどか(キュゥべえによると、今、この宇宙は『熱力学的な死』に向かっているだって。宇宙に存在するエネルギーと言うものは、使えば使うほど目減りしていくしか無いからだから……)
まどか(そんな宇宙の寿命を伸ばすために、『熱力学の法則に縛られないエネルギー』を探していたキュゥべえが目を付けたのがわたしたち―――地球に住む第二次成長期の少女の、感情のちから。希望と絶望の相転移)
まどか(わたしたちの心が、希望から絶望へと堕ちる瞬間、キュゥべえたちにとって膨大なエネルギーが発生する)
まどか(それを回収するのがキュゥべえ―――宇宙からの来訪者、インキュベーターの役割、目的)
まどか「それじゃぁわたしたち……あなたたちの消耗品なの?あなたたちのために死ねって言うの?」
QB「この宇宙にどれだけの文明がひしめき合い、一瞬ごとにどれ程のエネルギーを消耗しているのか分かるかい?」
QB「君たち人類だって、いずれはこの星を離れて僕たちの仲間入りをするだろう。その時になって、枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね?」
QB「長い目で見れば、これはキミたちにとっても、得になる取引のはずだよ?」
まどか「バカ言わないで……。そんな理由でマミさんが死んで……!さやかちゃんがあんな目に遭って!あんまりだよ……ひど過ぎるよ……!」
QB「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?それだけでも十分に良心的なはずなんだが……」
まどか「みんなだまされてただけじゃない!!」
QB「だますという行為自体、僕たちには理解できない。認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は他者を憎悪するんだよね」
まどか「都合の悪いことは隠して!!人の心を弄んで!!そんなの契約でも何でもないじゃない!!!」
QB「君たち人類の価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ。今現在で69億人、しかも、4秒に10人づつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死にに、そこまで大騒ぎするんだい?」
まどか「どうせ理解する気が無いなら、そんなこと聞かないでよ……」
QB「これでも弁解に来たつもりだったんだよ。キミたちの犠牲がどれだけ素晴らしい物をもたらすか理解して貰いたかったんだが、どうやら無理みたいだね」
まどか「当たり前でしょ。わたしたちをメチャクチャにして得たものなんて……どんなものでも素晴らしいなんて思えないよ」
QB「まどか。いつか君は、最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう。その時僕らは、かつて無い程大量のエネルギーを手に入れるはずだ。この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて。待ってるからね」
まどか「そんな風に簡単に言えるなら、やっぱりあなた私たちの敵なんだね」
翌朝 ほむホーム
(ピンポーン)
ほむら「まどか?」
まどか「ほむらちゃん、ちょっと良いかな?平日だし、こんな時間に悪いとは思うんだけど……」
ほむら「まさか、美樹さやかのこと?」
杏子「(ヒョイ)オ、あんたかい?」
まどか「杏子ちゃん!なんでほむらちゃんのお家に?」
杏子「言ったろ?こいつとは共同戦線。もうすぐこの町に来る、ワルプルギスの夜って言う超弩級の魔女を倒すためのね」
まどか「そんなものまで……」
杏子「それよか、良いトコロに来てくれたね。入んなよ」
ほむら「……仕方ないわね」
まどか「お、おじゃまします(ガチャ)」
まどか(さやかちゃん……の身体だ。死んでるなんて、嘘みたい)
まどか「ほむらちゃん、魔法少女のことに詳しいみたいだから聞きたいことがあって……」
ほむら「何かしら?」
まどか「さやかちゃん、本当に助けられないのかな?」
ほむら「……」
まどか「無理なら無理って、はっきり言ってくれて良い。でも、少しでも可能性があるなら、わたし……」
まどか「諦めたくない」
ほむら「まどか……」
杏子「(ニ!)」
杏子「昨日来やがったキュゥべえのアホが言うところじゃ、『ボクの知る限り前例は無い』が、『条理を覆す魔法少女がどれほどの不条理を成し遂げたとしても驚くに値しない』、だとさ」
まどか「本当!?」
ほむら「期待しない方が良いわ。あいつは嘘は言わないけれど、それ以外ならどんな汚い真似もする。信用できない。それに、私も魔女から魔法少女に戻ったケースなんて見たことも無い」
杏子「あたしも、あのボンクラの言葉を真に受けるつもりは無ぇよ。でも、さ。本当に助けられるかすら、まだわかんないじゃん。何もせずに諦めるなんざ、それこそキュゥべえに負けを認めたようなモンだろ」
まどか「杏子ちゃん……。ありがとう……。さやかちゃんのために(ボロボロ)」
杏子「あー、もう。泣くな泣くな。涙は全部ケリが着いた時のために取っとけ(フキフキ)」
杏子「で、だ。考えたんだよ。さやかの奴、魔女に変わっちまったけど、友達の声ぐらいは覚えてるかもしれない。呼びかけたら人間の記憶が呼び起こされるかもしれないって。もしそれが出来るとしたら、親友のあんただけだ」
まどか「え……(グシグシ)」
杏子「そう言うモンだろ?最後に愛と勇気が勝つストーリーってヤツは」
ほむら「危険すぎる賭けだわ。失敗すればみんな犬死よ」
杏子「承知の上だ。一般人のコイツをトンでも無くヤバい目に合わせるってこともな。正直、コイツを絶対何があっても守れるなんて約束できない」
ほむら「それを分かっていながら……」
まどか「……やるよ」
ほむら「え?」
まどか「わたし、やる。やらせて欲しい。杏子ちゃんも言ってたけど、何もしないで諦めて、後悔したくない。キュゥべえにだって、負けたくない」
杏子「良い面構えになってきたじゃねぇか、あんた」
ほむら(まどかがいつになく積極的。これは美樹さんへの友情?いや、それだけでなく……)
まどか「自己紹介、まだだったね。わたし、鹿目まどか」
杏子「へへ……。佐倉杏子だ」
ほむら「あらためて、暁美ほむらよ。『ほむら』でも『暁美』でも、好きな方で呼ぶと良いわ」
まどか「(パ!)ほむらちゃん!!」
ほむら「勘違いしないで。私は、美樹さやかを助けられる確率は0だと思っている」
ほむら「けれど、発端は私のミス。美樹さやかのことをきちんと監視しておかなかった私のミス。もし助けられないと分かったら、その時は私がこの手であの魔女を……殺すわ」
杏子「それがアンタなりのスジの通し方ってことかい。アンタにもそう言うトコあるんだ。」
ほむら「私はいつだって、私の戦いをする。それだけよ(ファサ…)」
杏子「おっし!それじゃぁアイツを探しに出発!……の前に」
杏子「食うかい?朝メシ(ニ!)」
路地裏
まどか「そう言えば学校、サボっちゃったんだよね。子どもとして、不合格まっしぐらだなぁ(ハハ…)」
杏子「ハ!昨日の今日で、のうのうと学校生活エンジョイ出来たら、そりゃ子どもとしちゃ合格でも、人間としちゃ不合格だろ(モグモグ)」
ほむら「佐倉杏子。あなたたちの『行動』の間、私はまどかを守るのに専念するわ。だから後ろは気にしなくて良い」
杏子「やれやれ。まだフルネームかい。さっきはあんなこと言ったのに、余所余所しいモンだねぇ(アグ)。でもま、お言葉に甘えて遠慮せずにやらせてもらうよ」
ほむら「その代わり、失敗と見ればすぐにでもあの魔女を殺すわ。これも、さっき言った通り」
まどか「ほむらちゃん……」
杏子「ふぅん……」
ほむら「なによ」
杏子「いや、あたしにさやかを殺させないためにそんなこと言ってんじゃないかなー、なんて」
ほむら「……」
杏子「(ニヤニヤ)」
まどか「杏子ちゃんは、どうしてさやかちゃんのためにそこまでしてくれるの?」
杏子「逆に聞くけどさ、今朝ほむらの家にあたしがいるって分かった時あんた、殺されるとか思わなかったワケ?あたしはあんたの親友と何度も事を構えた、こわ~い魔法少女なんだよ?」
まどか「あの時の杏子ちゃんは、わたしを殺すような人にはとても見えなかったから」
杏子「……」
まどか「それに、それでも、もしさやかちゃんが助かるなら、それでも良いかなって」
ほむら「まどか!?」
杏子「あは!ホントお人よしだねぇ、あんたも、さやかも。……だからだよ」
まどか「え?」
杏子「あんたの質問の答えさ。さやかのヤツも、どんなヒドい目に会ったって、お人好しな正義の味方の道を突っ走った。真っ直ぐにね。あたしが懇切丁寧に忠告してやったってのにさ」
まどか「さやかちゃんと、ちゃんとお話してたんだ……」
杏子「一方的に話して聞かせただけだよ。とあるバカな魔法少女が、他人のための願いで、どんなロクでもない目に会ったか、さ」
まどか(そう言って、杏子ちゃんは哀しげにわらった。……きっと、その『バカな魔法少女』は杏子ちゃんのことなんだろうな)
杏子「そのお人好しっぷりをどこまでも貫くアンタたちを見たらさ、思い出したんだ。正義の魔法少女に憧れていた、昔の自分を。そしてあたしの師匠……マミさんのことを」
まどか「え!?」
ほむら「じゃあ佐倉杏子。あなたが巴マミの死んですぐに見滝原に来たのは……」
杏子「ハハ……。お察しの通り。恥ずかしながらあの人の守った町がどうなったのか、気になっちまってね。ケンカ別れした弟子の分際でって、マミさんが聞いたら怒られそうだけどさ」
まどか(杏子ちゃん、マミさんの弟子だったんだ……。そうだ!)
(マミ「……魔法少女はみんな、一人ぼっちだから」)
まどか(杏子ちゃんも最初、一人ぼっちだった。だから、あの言葉はきっとそう言うことなんだ)
まどか「杏子ちゃん」
杏子「ウン?」
まどか「マミさんは最期まで、杏子ちゃんのことを気にかけてたよ。わたしはそう思う」
杏子「……ありがとな、まどか」
ほむら「2人共。話をしている暇は無くなったわ。―――結界よ。美樹さやかの魔女の」
魔女の結界
まどか「この結界……なんだか昔、恭介くんが演奏したコンサートホールみたい……」
使い魔Holger「♪~♪~」
杏子「良いか、まどか、ほむら。打ち合わせ通りに!(カ!)」
ほむら「周りは気にしないで。……あなたは私が守るから(カ!)」
まどか「分かった。……さやかちゃん、わたしだよ。まどかだよ」
人魚の魔女「……」
まどか「辛いよね?苦しいよね?大変だよね?正義の味方であり続けるのって。マミさんだって、ずっと一人で苦しんできたんだもの……」
杏子「うおおおおお!」
ほむら「……(ダダダダダダ!)」
まどか「でも、こんなこと止めようよ。さやかちゃんだってイヤだったはずだよ。そんな風に誰かを呪ったり、祟ったりなんてしても、さやかちゃんが苦しいだけだよ」
まどか「なんて、他の人に戦わせてばっかりのわたしが言っても、説得力無いかな?」
杏子「ハ!そいつは中途半端な気持ちで首突っ込むよか、ずっとマシさ。なにせ、命を晒すってのは他にそうするしか他に仕方ないバカだけがやることだからね!(バ!) 」
杏子「戦うとかそう言うことは、あんたが否が応でも命懸けでやらなきゃならない時が来たら、そン時に考えれば良いンだよ!(ガ!)だから今は呼び続けろ!言葉を届けろ!思いを通せ!!」
車輪(ギュイイイイン!)
杏子「がは!」
まどか「杏子ちゃん!?」
ほむら「杏子!?」
杏子「あたしは大丈夫だ!あんたは呼び続けろ!!(コイツら、あたしのスピードに着いて来やがった!?)」
杏子「聞きわけが無いのにも程があるぜ、さやか」
まどか「辛さも、苦しさも、必要ならみんなわたしが受け止める!恨むのも妬むのも、そんな役はわたしが引き受ける!だから、お願い!!元に戻って!!!帰ってきて!!!さやかちゃん!!!!」
人魚の魔女「Storend……」
ほむら「車輪が!?きゃあ!」
まどか「ほむらちゃん!?……え!?」
人魚の魔女「(ズオオオ……ガシ!)」
ほむら「まどか!?」
まどか「さやか……ちゃん……(さやかちゃんの魔女の手に掴まれて苦しい……。目の前が、真っ暗に……)」
杏子「親友の声も分からなくなっちまったのかよ、さやか!!」
杏子(あれを使うしかない!!今まで封印していたから上手く使えるか分からないけど、無理やりにでも!!!)
杏子「ロッソ・ファンタズマぁぁぁぁぁ!!!!!」
ほむら「ぶ、分身を囮にして車輪の攻撃を掻い潜った!?杏子にあんな魔法が!?」
杏子「ハァ!(斬!)」
まどか「(ガク)」
ほむら「まどか!?」
杏子「(クソ!やっぱ魔力の消費がハンパ無い!!)大丈夫、気絶してるだけだ」
杏子「ほむら。結局、あんたの言う通りだったみたいだ。あいつは、何もかもすっかり分からなくなっちまってる」
ほむら「……そうね」
杏子「ソイツを頼む。あたしの馬鹿に突き合わせちまった。あんたも……」
ほむら「それこそ馬鹿を言わないで。私は自分の言葉を反故にするつもりは無いわ」
杏子「あたしは、さやかがまださやかのまま……この魔女が誰かを襲う前に、眠らせてやりたいって思う」
ほむら「あなたの戦力は、ワルプルギスの夜と戦うために必要なの。だから……」
ほむら「2人でやりましょう」
杏子「おうさ!」
数時間経過
杏子「とは言った物の、やっぱキツいな……(ゼェ…ゼェ…)」
ほむら「ええ。車輪だけでなく、楽団の使い魔まで戦いに参加するなんて、今までは無かったケース(ハァ…ハァ…)」
杏子「そんだけまどかの言葉があいつの心を震わしたってことかもな。バイオリンの坊やのモドキだけは、相変わらずシカトかましてるけどね。……って今まで?」
ほむら「何でも無いわ。それよりも、『ロッソ・ファンタズマ』と言ったかしら。あなたが分身魔法を仕えるなんて、知らなかったわ。随分と魔力の消費が激しいみたいだけど」
杏子「『分身』じゃねぇ、幻惑の魔法だ。昔、色々あって封印した魔法でね。それを無理筋で使ってるから、どうにも魔力がキツいみたいだ」
ほむら「お陰でこっちは、随分と楽をさせてもらっているけどね。あなた、グリーフシードのストックは?」
杏子「ヨユー……と言いたいトコだけど、正直あんたに分けられるほどの量はもう無さそうだ」
ほむら「そうね。こっちも、あまりストックがあるとは言えないわ」
杏子「お互いジリ貧ってことか。このカッコ悪い姿を、魔法で守ってるそこのお姫様に見られてないのが幸運なのか、不幸なのか……」
ほむら「幸運よ。実を言うと、まどかには魔法で眠ってもらっているの」
杏子「だろうと思ったぜ。……悪ィな」
ほむら「何?」
杏子「ワルプルギスの夜の前に、あんたにこんな寄り道させちまって」
ほむら「(ファサ…)私が自分で選んだことよ。気にしないで」
杏子「なら遠慮はいらねぇか。ほむら、頼みがある」
ほむら「何?」
杏子「今一番厄介なのは、車輪と使い魔のガードだ。アンタの武器と魔法で、魔女(さやか)までの道を作って欲しい」
杏子「そこにあたしが、あいつに向かって残ったありったけの魔力を込めた攻撃をブチ込む」
ほむら「そう言うことなら私が……」
杏子「オイオイ。時間停止なんてチート使える割に、さっきからあんた魔女に致命傷与えられて無いじゃん。つまり、あんたじゃパワーが足りないってことだろ?」
杏子「それに、あたしの幻惑魔法じゃ、さすがにこの数は止めらんない。でも、あんたならどうにかできる。適材適所ってやつさ」
ほむら「……」
杏子「『あたしが自分で選んだこと』だ。あんたの気遣いを無下にして悪いとは思うが、後悔は無いし、覚悟も出来てる。だから……頼む」
ほむら「分かったわ(ジャキン!)」
杏子「あたしは魔力を集中する。その間に(ス……)」
ほむら(魔法でまどかは守られている。だから、私は使い魔のガードを崩すことに専念すればいい)
BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!
杏子(頼むよ、神様。あたしは人の心を惑わす魔女だけど、あいつらには、あたしの仲間たちにはせめて……)
杏子(祝福を!)
車輪(ギュルルル!)
使い魔(♪~♪~)
杏子「が!ぐは!」
杏子「大丈夫だ!おおおおおおおおおおおおお!」
ドン!
ほむら「ガードが崩れた!杏子!!(カチ)」
杏子「(時が止まった!)ああ。こっちもイケる。あとはこのデカい槍を、あいつにブチ込むだけで良い」
ほむら「知っての通り、私の魔法は時間停止。その槍も離れれば止まってしまう。だから……」
杏子「ああ、大丈夫。直接やらなきゃダメってことでしょ?」
ほむら「ええ」
杏子「それじゃ、ほむら。いっちょハデに行こうじゃない!」
ほむら「そうね」
杏ほむ「「はああああああああああああああ!!」」
(カ!ドオオオオオオオォォォォ!)
路地裏
まどか(大きな音で、気がついた)
まどか(いつの間にか、そこは魔女の結界じゃなくて……)
ほむら「まどか……」
まどか「ほむら……ちゃん」
ほむら「ごめんなさい。結局美樹さやかを救えなかった……」
まどか「!?そん、な……」
ほむら「ごめんなさい……ごめんなさい……」
まどか「ほむらちゃんのせいじゃ、無いよ……」
ほむら「それに、佐倉杏子のことも……」
杏子「あたしのことが何だって?(ヨロ)」
まどか「杏子ちゃん!?」
杏子「いやぁ、さすがに歯ごたえあったわ。今回ばかりはヤバかったな。ハハ……」
ほむら「佐倉……杏子」
ほむら(そんなボロボロの体で……)
まどか(杏子ちゃんのソウルジェム……)
杏子「グリーフシードのストック込みで、こんなにあたしに魔力使わせた奴は久しぶりだ。……誇って良いぜ、さやか。あんたはあたしが戦った中で一番強い魔法少女の一人だった(ボソ)」
ほむら「あなた……」
杏子「ああ、そうそう。コレ、頼むわ(ス…)」
ほむら「あの魔女の、グリーフシード……」
杏子「あんたの好きにしても良いけどさ。できれば、さやかの身体と一緒に弔ってやってくれねぇか。魂を身体から切り離されて、それに一番苦しんだのはあいつだからさ。せめて死ぬ時くらいは、一緒にさせてやりたいんだ。……つまんない感傷かもしんないけどさ」
ほむら「……分かった、わ」
杏子「ああ、そうそう。それとワルプルギスの夜の件、悪いんだけどキャンセルで頼むわ。……どうしてもハズせない用事ができちまってさ。健闘を祈るぜ」
まどか「杏子ちゃん……」
杏子「じゃあな、まどか、ほむら(ヒラヒラ)」
ほむら「杏子……」
教会跡
杏子「(ハァ…ハァ…)」
杏子「ギリギリの体だけど、どーにかここまでは来れたな。でも、ここらで限界か(ス…)」
杏子「ここまで真っ黒になると、ほむらの奴のストックを全部使っても浄化は無理だったろうな。……それに、あいつにはあいつの大事な戦いがある。足手まといを置いて戦わせるわけにはいかない」
杏子「マミさんや……さやかも、待たせちまってるし」
杏子「あいつら……。1人ぼっちは寂しいもんなぁ」
杏子「だから……」
杏子「そろそろ、死ぬか」
(パリィン)
QB(個体名『佐倉杏子』消失)
QB(この町に残る魔法少女は、あと1人)
今回はここまでになります
お付き合いいただきありがとうございました。
Special Thanks
『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』
毎回お読みいただきありがとうございます。
続きの投稿をさせていただきます。
あ!
遅ればせながら(キュゥべえ並みに遅ればせながら)忠告させていただきます。
物語も終盤戦。
ここから、最悪の結末に向けて駆けだす予定です。
今ならまだ間に合います。
「つくづく人間の好奇心というものは、理不尽だね」とキュゥべえに言われないうちにそっとスレを閉じて物語から目をそらすと言う選択肢もあります。
それでも良いなら……どうぞ、お読みください。
まどか(さやかちゃんのお葬式が執り行われた)
まどか(ほむらちゃんが、上手くさやかちゃんのお父さんとお母さんに教えてくれたみたい)
まどか(死因については、ほむらちゃんも説明できなかったみたいで、警察の人は「家出の末の衰弱死だろう」と言っていた)
まどか(棺には、杏子ちゃんの望み通り、ほむらちゃんがさやかちゃんのグリーフシードを収めた)
まどか(お葬式の時には、たくさんのお友達が来てくれた。さやかちゃんは、本当に良い子だから)
まどか(意外だったのは、仁美ちゃんが今まで見たことの無いくらいに取り乱したこと)
まどか(あのしっかりした仁美ちゃんが、「私が死んでしまえば良かったのに!」なんて、言うなんて……)
まどか(泣き叫ぶ仁美ちゃんに、わたしは何も言えなかった。わたしが何か言ってしまえば、壊れてしまいそうで)
まどか(それと同時に、自分の中にとても冷たい想いが芽生えたのが分かって……)
まどか(「恋敵が死んで良かったじゃない」なんて言葉を、一瞬でも言いかけたわたしは、本当に……)
鹿目家
絢子「そっか……。あたしはお葬式に行けなかったけど、そんなことがあったのか……」
まどか「それだけじゃないの。わたし、恭介くんにもこう思った。『自分を好きになってくれた人が死んだのに、冷静なんだね』って」
まどか「子どもとして、不合格すぎだよ……」
絢子「さやかちゃんは、本当にまどかと仲良くしてくれたからね。正直あたしもまだ、さやかちゃんが死んだなんて信じられないくらいだ」
絢子「まどかにとってさ、本当に掛け替えの無い子だって、あたしの目から見ても思うよ。だから、当り前だよ。そんな相手が死んで、想いが裏返っちゃうのはさ」
まどか「裏返る?」
絢子「ああ。悪い想いが良い想いから生まれてくることなんて、良くあることさ。悲しいから嬉しさも倍になって、嬉しかったから悲しさが倍になる。大切だから不安になることもあるし、好きだから妬むこともある。そして、好きだから怒る。そんなのみんな当たり前のことさ」
まどか「当たり前……?」
絢子「そう、当り前。それで良いんだよ。それに、本当に言った訳じゃ無いんだろう?まどかだって本当は、分かってたから。仁美ちゃんも、恭介くんも、さやかちゃんに対してこれっぽっちも悪意を持って無いんだって」
まどか「悪意……。そうだよね、ありがとう、ママ」
その夜
まどか「ねぇ、キュゥべえ。さやかちゃんが死んだよ。それに、たぶん杏子ちゃんも……」
QB「そうだね。これでこの町の魔法少女は、暁美ほむら1人になった」
まどか「やっぱり……」
QB「意外な結末じゃないよ。予兆は前からあった」
まどか「簡単に言うんだね。……元々はみんなあなたのせいで死んだみたいなものなのに」
QB「ハァ……。たとえばキミは、家畜に対して引け目を感じたりするかい?彼らがどういうプロセスでキミたちの食卓に並ぶのかを考えれば―――」
(牛、豚、鶏の断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔断末魔)
まどか「(バ!)やめてよ!!こんな時に!!」
QB「その反応は理不尽だ。この光景を残酷と思うならキミには本質が全く見えていない」
まどか「分かってる……つもりだよ。ウチのパパもお庭で野菜を育ててるから……。生きることは食べることで、食べることは育てた命を殺すことだって。そう言うことは、分かってる……」
QB「それだけじゃ足りないね。彼らは人間の糧になることを前提として、生存競争から保護され、淘汰されること無く繁殖している。牛も、豚も、鶏も、もちろん食用植物も、種としての繁殖ぶりは圧倒的だ。キミたちは皆、理想的な共栄関係にあるじゃないか」
まどか「……同じだって言いたいの?」
QB「むしろ、ボクらは人類が家畜を扱うよりも、ずっとキミたちに対して譲歩しているよ?」
まどか(思い出す。家庭菜園をしているパパの姿。「トマトは愛情をこめて育てれば、それにこたえてくれるんだよ」と言ってパパがお野菜に向けるまなざしはとても温かくて。キュゥべえはそれよりも『良い』って言うの?その冷たい眼で)
QB「だって、曲がりになりも知的生命体と認めたうえで交渉しているんだ」
まどか「……」
QB「信じられないのかい?それなら見せてあげようか。ボクたちインキュベーターとキミたち人類が、共に歩んできた歴史を」
まどか(インキュベーターが見せたのは、ずっと昔から存在し続けてきた、たくさんの魔法少女たち)
QB「ボクたちはね、有史以前からキミたちの文明に干渉してきた。数え切れないほど大勢の少女がインキュベーターと契約し、希望を叶え、そして絶望に身をゆだねていった」
まどか(わたしは、彼女たちの人生を垣間見た。希望を、幸せを願っても、最期には絶望的で、悲劇的な結末に終わる。そんなことが何度も、何度も。何人も、何人も……)
QB「これが、これまで数多の魔法少女たちが繰り返してきたサイクルだ」
まどか(大きな争い。平和で幸せな暮らしを望んで魔法少女になり、けれどもそれが果たされること無く死んでいった子たちもいた)
QB「中には歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージへと導いた子もいた」
まどか「みんな、みんな信じてたの……?信じてたのに裏切られたの……?」
QB「彼女たちを裏切ったのは、ボクたちではなく、むしろ自分自身の祈りだよ。どんな希望もソレが条理にそぐわないものであるかぎり、必ず何らかの歪みを生み出すことになる。やがてソコから災厄が生まれるのは当然の摂理さ。そんな当たり前の結末を裏切りだと言うのなら、そもそも願い事なんてすること自体間違いなのさ」
まどか(間違い……)
QB「でも、愚かとは言わないよ。彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたことも、また事実だし。 そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ?それを正しく認識するなら、どうして今更たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?」
まどか「歪みが生まれるって分かってて、間違いだって思ってて、あなたはみんなの願いを『叶えて』きたんだね……」
QB「宇宙の寿命を伸ばすためだからね」
まどか「それで、長い間ずっとあの子達を見守りながら、あなたは何も感じなかったの?みんながどんなに辛かったか、分からなかったの?」
QB「ソレがボクたちに理解できたなら、態々こんな星まで来なくても済んだんだけどね」
まどか(こんな星……)
QB「ボクたちには基本的に感情と言うモノが無い。極めて稀な精神疾患でしか無いんだ。だからキミたち人類を発見した時は驚いたよ。全ての個体が別個に感情を持ちながら共存してる世界なんて、予想だにしていなかったからね」
まどか「もしも……あなたたちがこの星に来てなかったら……」
QB「キミたちは今でも、裸で洞穴に住んでたんじゃないかな」
まどか(そして、少なくともこんな悲しいことにはならなかった……)
まどか(でも、なんなんだろう。わたしたちって……)
まどか(どんな願い事をしても、悲劇に終わって)
まどか(わたしたちの願いも、わたしたちの積み上げてきたものも、みんなインキュベーターに吸い上げられるためのもので……)
まどか(わたしたちの大切なものって、なんだったのかな……?)
ほむホーム
ほむら(今日は連戦……。確実に魔女が増えている。これも、ワルプルギスの夜の影響なのかしら)
ほむら(でもお陰で、以前ほどでは無いにせよ、グリーフシードのストックは間に合ったわ。これで何とか、ワルプルギスの夜と戦える)
(ピンポーン)
ほむら(まどかだ!落ち着いて、冷静に……)
ほむら「鹿目まどか、あなたなの(ファサ…)」
まどか「入って……良いかな」
ほむら「どうぞ」
まどか「キュゥべえ……インキュベーターに聞いたの。インキュベーターと魔法少女はずっと昔からこの星にいて、わたしたち人間が奇跡の恩恵と引き換えに、魔法少女はずっと昔からキュゥべえのために絶望して魔女になっていったんだって」
ほむら「……そう。奴らは、そんな昔からこの星にいたのね。それこそ、人類史の裏側に」
まどか「うん。そんなことを聞いて、わたしたちの大切なものって何だったのか、ちょっと分からなくなっちゃって……。それでほむらちゃんなら、って思って……」
ほむら「期待に添えなくて悪いけど、私は何でも分かる訳じゃ無いわ(ファサ…)」
ほむら「けれど、ただ一つ言えることがあるなら、私達の存在がどれほど奴らの掌の上で弄ばれたとしても、想いだけは私達のものだった、ということかしら」
まどか「わたしたちの、想い」
ほむら「ええ。私は長い間、魔法少女として戦ってきた。それは、インキュベーターに利用された私の歴史だったと言えるわ。けれど、願った私の想いは、運命を変えようとした私の想いだけは、奴らの物では無い」
まどか「ほむらちゃんの、願い、想いは、ほむらちゃんのもの……」
ほむら「ええ。正直、長い長い戦いの中で、何度後悔したか分からないし、何度大切なものを失って泣いたか分からないけれど、それも全て私の想いで、私が自分で掴んだ物。それだけは奴らのものじゃない。少なくとも、私はそう思いたい」
ほむら「今までの魔法少女達も、そうだったんじゃないかしら。結果としてインキュベーターに利用されたけれど、彼女たちの一番大切な物を守ろうとして、貫こうとして、死んでいった。その想いだけは、奴らとは関係の無い、本当のこと」
まどか「……ほむらちゃんは、強いんだね」
ほむら「そんなことは無いわ。最後に残った道しるべ、それだけが私を支えていた。それが無かったら、私はとうの昔に終わっていたでしょうね」
まどか「最後に残った道しるべ?」
ほむら「と、言っても、正直今の私には自分のやって来たことが正しかったとは断言できなくなっているのだけれど……」
まどか「ねぇ、良かったら、聞かせてくれる?ほむらちゃんのこと。ほむらちゃんを支えてくれた人のこと」
ほむら「どうせ、聞いても信じられない話よ」
まどか「それでも聞きたいかな。完全にわたしのわがままなんだけど……。ほむらちゃんの話を聞けば、少しはわたしも答えに近づけそうな気がして。それに、わたしのためにあんなに泣いてくれた女の子が何で泣いてくれたのか、わたし知らないままなんだよ?」
ほむら「そ、そう言えば、そんなこともあったわね……」
まどか「それを知らないままでいるのも、無責任な気がして」
ほむら「……昔話をしましょう。昔、あるところに1人の女の子がいたわ。昔から身体が弱くて、周りに迷惑ばかり。その上得意な学科も特技も無くて、そんな自分が大嫌い。そんな、女の子」
ほむら「その子が、ある魔法少女に出会ったことから、物語は始まるわ」
まどか(その魔法少女は、女の子―――ほむらちゃんにとって、あこがれだった)
まどか(自分のことを肯定してくれた、強くて、優しくて、希望をもたらす魔法少女)
まどか(けれど、その少女は死んでしまった)
まどか(見滝原に訪れた最悪の魔女、災厄の魔女、ワルプルギスの夜に立ち向かい、敗れて)
まどか(すべてを失ったほむらちゃんは願った。彼女との出会いをやり直したいと。彼女を守れる自分になりたいと)
まどか(片方の願いは叶った。出会いをやり直す魔法、時間遡行を手に入れたことで)
まどか(けれど、もう片方の願い―――彼女を守ることはどうしても出来なかった)
まどか(何度も、何度も、出会いを繰り返しても)
まどか(ある時はワルプルギスの夜に敗れ)
まどか(またある時は、戦いの中で知った魔法少女の運命に翻弄され)
まどか(そしてまたある時は、その少女がワルプルギスの夜を超える、すべてを滅ぼす魔女になると言う最悪の結末を迎えて)
まどか(出会いを繰り返すうちに、ほむらちゃんは本当のことを誰にも言えなくなってた。本当のことを話しても、誰もそれを信じてくれないし、受け止められないから。そして、出会いを繰り返すたびに、彼女との『時間』はどんどん離れて行ったから)
まどか(ほむらちゃんは「もう誰にも頼らないと決意した」と言ったけれど、そう語る顔はどこか寂しげで……)
まどか(挙句の果てに、出会いの繰り返しは、彼女の背負う魔法少女―――魔女としての資質を増大させていることが分かった)
ほむら「これが全てよ」
まどか(すごいお話だ。でも、魔法の力なら不思議なことじゃない。それにわたしの見た夢……)
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何?」
まどか「多分、なんだけど。こんなこと言ったら、自意識過剰って怒られるかもしれないんだけど……」
まどか「ほむらちゃんが守りたい子、最後に残った道しるべってもしかして……」
まどか「わた、し……?」
ほむら「……(コクリ)」
まどか「じゃあ、ほむらちゃんはわたしのせいで!?」
ほむら「まどかのせいなんかじゃない!!」
まどか「でも……!」
ほむら「これは全部私の責任!私の勝手な願いで、まどかを何度も死なせて!挙句の果てにとんでも無い因果まで背負わせて!!!(ジワ…)」
ほむら「迷惑だよね?気持ち悪いよね?あなたの知らない所で、勝手にそんなことして。だって、あなたにとって私は、会って一カ月の転校生なんだもの……(ポロポロ)」
まどか「そんなこと全然、思って無いよ。だって最初から、ほむらちゃんが悪い子だなんて思って無かったから……」
まどか「初めて会った時だって、わたしを心配して、忠告しに来てくれて」
まどか「さやかちゃんの時も、わたしのワガママに付き合ってくれて」
まどか「『悪い』と思ってることがあるとすれば、もっと早くにこうしてちゃんとお話しようとしてなかったこと。こんなに『わたし』のことを想ってくれる子がいるって知らずにいたってこと」
ほむら「まどか……ありがとう……」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん。もっと教えて欲しいな。今までほむらちゃんが会ってきた時間の、わたしのこと。それに、みんなのこと」
「え、これが昔のほむらちゃん!?かわい~!!」「そ、そうかしら……?」「ねぇ、やってみてよ、眼鏡と三つ編み。髪はわたしが結んであげるから」「で、でも……」「良いから良いから!ウェヒヒヒヒ」
まどか(それから、わたしたちはずっと語り合いました)
「わたしと魔法少女のまどかにとって、巴さんは魔法の師匠だったわ……」「ふんふん……」「その時間軸では美樹さんと杏子が仲良くなりすぎてまどかが……」「え~、うっそー!」
まどか(ほむらちゃんが教えてくれた、違う時間のお話の中には嬉しいことや楽しいこと、それにびっくりするようなこともあったりして)
「それで……私が……まどかを……」「そんなのって無いよ……あんまりだよ(ポロポロ…)」
まどか(けれども、やっぱり最後は悲しくて)
まどか(そんな話をして、時に笑い、時に泣きました)
まどか(ほむらちゃんと、2人で)
まどか「随分と話しこんじゃったね」
ほむら「ええ。こんなこと、初めての経験だったわ。ありがとう、まどか」
まどか「え?」
ほむら「自分の想いを、誰かにこんなに話して、こんなに共有して。私はずっと、皆と違う時間を生きていると思っていたから」
まどか「でも、こんなにお話して、お互いのことがこんなに分かったね(ニコ)」
ほむら「ええ(ニコリ)」
まどか「やっぱり、ほむらちゃんは笑うとかわいいね。ウェヒヒヒ」
ほむら「え、私、笑っていたの……?(ペタペタ)」
まどか「そうだよ、気付かなかった?」
ほむら「……め、眼鏡と三つ編みのせいかしら」
まどか「もう、照れなくても……(コトリ)。あれ、これって……魔女?夢の中に出てきたような……?」
(舞台装置の魔女 ???)
ほむら「……」
まどか「これにかいてある、結界の無い所にいる大きな魔女、もしかしてこれがワルプルギスの夜?」
ほむら「……そうよ。超弩級の大型魔女。結界に隠れる必要が無く、ただ一度具現しただけでも、何千人という人が犠牲になる。もっとも、相変わらず普通の人には見えないから、その被害は地震とか、竜巻とか、そう言った大災害として誤認されるだけ」
まどか「そんな危い魔女に、ほむらちゃんはたった1人で戦うつもりなの?だって、杏子ちゃんはもう……」
ほむら「あなたも、気付いていたのね」
まどか(コクリ)
ほむら「大丈夫。こんな事態は今までも珍しくも無かった。それに準備は十分にしている。私1人でやれるわ」
まどか「でも、1人より2人の方が……」
ほむら「あなたは契約しないで!!!!」
まどか「!?」
ほむら「話したでしょう?契約したあなたが、どうなってしまったのか。仮にワルプルギスの夜を倒せたとしても、それはあなたの魔女、この星を滅ぼす最悪の魔女の誕生を意味するだけ」
まどか「その前にソウルジェムを砕けば!」
ほむら「そんなこと言わないで!!!」
まどか「……ごめんなさい」
ほむら「前の時間軸では、魔女になるのを止める間もなくあなたは最悪の魔女に生まれ変わったわ。今度もそうなると考えた方が良い。この星を滅ぼすなんて、そんなことあなたが一番嫌でしょう?」
まどか「……うん」
ほむら「それに、ね。私の願い事は、インキュベーターなんかとは何の関係も無い、私自身の願い事は『あなたを守る私になること』なの……。だから、お願い……。私の願い、叶えさせて……」
まどか「……分かった。ごめんね、ほむらちゃん。困らせるようなこと言って」
まどか「でも、何かわたしにできることは無いかな。やっぱりイヤなの。これ以上大切な人を、何もできずに、何もせずに失うのなんて」
まどか「友達が傷ついているのに、自分が何もできないなんて辛いよ」
ほむら「……あるわ」
まどか「なに?」
ほむら「祈って。私の勝利を」
まどか「祈る?それだけで良いの?」
ほむら「ええ。奇跡も魔法も関係ない。あなたが祈ってくれる。その事実ほど頼もしいことは無いわ」
ほむら「もう誰にも頼らない、そう決めていた私だけど。でも、こうして誰かと想いを通じ合わせることが今、私の中でとても大きな力になっているの。この力を教えてくれたのは、まどか、『今』のあなたなのよ」
まどか「……うん、そうだね。でも、約束して?生きて帰って来るって。『今』の、ここに」
ほむら「勿論よ。最初から死ぬつもりは無いわ(ピョコ)あら?」
まどか「ウェヒヒヒ。三つ編みで髪を流そうとしても格好付かないね」
ほむら「////そ、それより長居させてしまったわね。そろそろ帰らないと、ご家族が心配するんじゃない?」
まどか「そうだね。もうちょっとほむらちゃんと一緒にいたかったけど、そろそろお暇させてもらうね」
まどか「あ、あと、やっぱりほかにちょっとでも手伝えることがあったら教えて?魔法少女でなくても、誰かを守りたいって想いは同じなんだよ?ウェヒヒヒ」
ほむら「ありがとう(ボソ)。家まで送って行こうかしら?」
まどか「大丈夫、1人で帰れるから。それに、家に着く前にインキュベーターと話をしちゃいたいし。一対一で。」
ほむら「インキュベーターと?危険ではないかしら」
まどか「大丈夫だよ、契約しないから。それに、わたしの中で答えが出たから、それをインキュベーターにぶつけたいの」
ほむら「来た時に言っていた、『わたしの大切なもの』ね」
まどか「うん、ほむらちゃんが教えてくれた」
ほむら「お互い、大切なものを見つけられたみたいね」
まどか「うん。それじゃぁ、また明日」
ほむら「ええ、また」
キィ……バタン
ほむら(まどかが帰ると、私は三つ編みをほどき、眼鏡を外す)
ほむら(やっぱり、私は変わってない。どれだけ見た目を変えても、あの時の弱いわたしのままだ)
ほむら(それに比べて、この時間軸のまどかは、強い。いや、強くなった)
ほむら(彼女の中で大きな原動力となっているのは、おそらくは怒り。インキュベーターによって大切な人たちの運命を狂わされたことへの怒り)
ほむら(それは、義憤と呼んでも良いだろうし、誰かを想う優しさから生まれたものだろう。しかし、それを『怒り』として、自分の暗い感情を受け入れたことが、彼女をより強くした)
ほむら(いや、彼女は最初から強かった。『最初』に私を助けてくれた、その時から。誰よりも強く、誰よりも優しい)
ほむら(彼女ときちんと話せて良かった。改めて思えたから)
ほむら(私は彼女を、鹿目まどかを守りたい。たとえどんなことになったとしても……)
公園
まどか「すぅ…はー…」
まどか(さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃん、そしてわたしと分かりあえたみんな……わたしに、勇気を)
まどか『キュゥべえ、いる?少し良いかな?』
QB「(ピョコ)やぁ、まどか。契約する気になったのかい?」
まどか「それを決める前に少し、お話したいことがあって」
まどか「ねぇ、キュゥべえ」
まどか「キュゥべえには、友達、っている?」
QB「ボクたちインキュベーターには感情も無いし、それに個の概念が無い。全ての個体が同じ思考を共有してるからね。だから、感情と個の概念に由来する『友達』と言う概念もまた持ち合わせてはいない」
まどか「……マミさんは、キュゥべえのことを『大切なお友達』って言ってたよね?」
QB「そうだね。マミはボクのことをそう思っていた。けれど、それはただそれだけのことだ。まどか、『友達』と言う概念はボクたちにとって理解しづらいものだけど、『友達』とは一方の個体だけがそう認識しているだけでは『友達では無い』と言うことになるのかい?」
まどか「それが分からないのに、そんなズルい言い方はできるんだね」
QB「話はそれだけかい?」
まどか「ううん。さっきキュゥべえは牛さんや豚さん、鶏さんやお野菜のことをたとえに出したけど、それが理想的な共栄関係って言ったけど、彼らにとってはそれは本当に『理想的』なのかな?」
QB「食用生物にとっては理想的は関係では無い。そう言いたいのかい、まどか?」
まどか「違うよ。そう言うことじゃない。それはわたしが決めて良いことじゃないと思う。他の誰が決めて良いことでも無いと思う。だって牛さんや豚さん、鶏さんやお野菜にとって何が一番『理想的なこと』なのか、何が一番大切なことなのことなのかは、彼らにしか分からないと思うから。彼らの心の中にしかないと思うから」
QB「ボクにはそうは思えないけどね」
まどか「……ねぇ、キュゥべえ。わたしの大切なこと、聞いてくれる?」
QB「構わないよ」
まどか「大切なこと。大切なお友達。大切なお友達と分かりあえたって思った時は、それはお星様が1つ生まれるくらいに嬉しくて、大切なお友達とお別れすることになったら、それはお星様が1つ、消えてしまう位に悲しいことなんだ」
まどか「だって、お互い違うから。違うもの同士が通じ合うことはとても嬉しくて、そんな相手と離れ離れになることはとても悲しい」
まどか「キュゥべえも言ってたよね?みんなが別々に感情を持ちながら共存してるこの星を見つけて、驚いたって。それはそうだよ。だって、違う誰かと分かりあえるってことは簡単じゃ無い。こんなにも奇跡的なことなんだから」
まどか「そう言う想いが、わたしにとって、キュゥべえが宇宙の寿命を大切に思うのと同じか、それ以上に大切なこと」
QB「ボクには理解できな「そんなこと言わないで」
まどか「キュゥべえには、わたしの言ってること、すごく分かりづらいと思う。だって、わたしは感情で話してるけど、キュゥべえには感情が無いから。でも、すぐに『理解できない』なんて片付けないで。これは、わたしにとって宇宙の寿命と同じくらい大切なことなんだから」
QB「まどか、それは人間の言う『誇張』と言うものかい?」
まどか「ううん。大げさでも何でもない。わたしにとってはそれくらい大切なものなの。だから、キュゥべえには考えて欲しいの。分かってくれなんて言わない。共感して欲しいなんて言わない。ただ、それがわたしにとって何より大切なこと。だから、それと同じくらい、考えて、考えて、考え抜いて欲しいの。すぐに『わけが分からないよ』なんて切り捨てないで欲しい」
まどか「その上で、『わたしたちと契約すること』って言うのがどういうことなのか、希望から生まれる絶望を運んで、さいごには別れを呼ぶ契約をすることが、わたしたちにとってどれだけ『重い』のか、きちんと考えて欲しい」
まどか「感情は無くても、考えることはできるんでしょう?」
まどか「もし仮に契約するにしても、キュゥべえにそれをちゃんとしてもらわないと、わたしは契約なんてできない」
QB「……まどか。正直ボクは今、キミの言っていることが半分も理解できない」
QB「けれども、キミの言う通り『考える』ことはさせてもらうよ。それがキミが契約するために必要な前提条件だと言うのなら、条件を呑もう」
まどか「うん。……ありがとう」
本日はここまでとなります。
次回が最終回、最悪の結末となる予定です。(オマケとして考えているネタはありますが)
ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後に、色々細かいネタの説明(言い訳)をさせていただきます
>技名を叫びまくるマミさん
「ティロ・フィナーレ」以外にゲーム版とかからも色々技名を拾わせていただきました。
これは完全にサクシャの都合です。
自分のやっていることを自分から一言で説明してくれるマミさんは大変便利。
マミさんもそうですが、魔女関係も厳密さよりも分かりやすさ重視でお送りしています。
他に、ギャグパートでのネタ満載の空気感を出すためもあったり。
……マミさんも決して、魔法少女の後輩候補の登場にハシャイジャッテ新しい必殺技名を考えたとかそんな裏設定はありません、ええ。
>箱の魔女の使い魔の発言
ネットで見た、「箱の魔女の使い魔は逆再生を言ってる」と言うのを文字で再現。
実際、打ちづらい。
>人魚の魔女「Storend……」
うるさい、邪魔、を意味するドイツ語。
その解釈は自由。
人魚の魔女の公式設定を踏まえるのが望ましい。
魔女は、意味のある言葉を発することは無いらしいので、実際は周囲に魔女文字で表現された感じでしょうか。
ここも分かりやすさ重点。
>>22
暁美ほむらがまどか☆マニアなら、ああ言うしか無いじゃない!あなたも!私も!
最終回の投稿をさせていただきます。
今回で物語は結末を迎えます。
「意外な結末では無いよ。予兆は以前からあった」
病院
ホストA「男でも女でも、絶対に敵に回しちゃいけないタイプっているよね。それも、テメーみてーな、って奴に限って一番ヤバい。そう言うヤツとは関わり合いになっちゃダメよ。ったく、ちょっと目を合わせただけでもアウトなんだから」
ホストB「立ち回るのもさぁ、本当ムズイっすよね。そこら辺、ショウさん上手いから羨ましいッスよ。俺も見習わないと」
ホストA「バカヤロウ」
ホストB「へ?」
ホストA「……そこら辺上手くやれてたら、こんな所にいるわけねーだろが、俺ら」
ホストB「……そっすね」
ほむら(あれから……)
まどか(わたしは、ほむらちゃんに無理を言って、ワルプルギスの夜を倒すためのお手伝いをさせてもらった。やっぱり何もせずにじっとしていることはできなかったから)
ほむら(美樹さんや杏子が死んだ哀しみを、何かに打ち込むことで紛らわせたかったと言うのもあったのだろう。邪推するようだけれど)
まどか(正直、仁美ちゃんや上条くんとはきちんと会いづらかったと言うのも本音。あんなことがあって、まともにお話できる自信が無かった。それにほむらちゃんを利用するようなのは、気が引けたけれど)
ほむら(正直、まどかに不法侵入をさせてしまうのは気が引けたけれど……)
まどか(『私も最初にやった時は、ショックでしばらく引き籠ったわ』と言う言葉を聞いて、ああやっぱりほむらちゃんも普通の女の子なんだな、と思った。本当は戦いなんか似合わない、普通の女の子)
ほむら(そして、奴を倒すため)
まどか(町を守るため)
ほむら(限られた時間の中、2人でできることは全てやりつくし)
まどか(後は待つだけになった)
ほむら(インキュベーターに対して怒りの感情を持つ今のまどかなら、間違っても契約することは無いだろう。私は戦いに専念できる)
⑤
ほむら(そして……)
④
まどか(その日は)
③
ほむら(遂に)
②
ほむら・まどか(やって来た)
①
Walpurgis nacht
舞台装置の魔女(???)
舞台装置の魔女「アハハハハハ……」
ほむら(ガ!ドドドドドド!)
ほむら「今度こそ……決着をつけてやる!!」
避難所(ミタキハラ・スーパーアリーナ)
タツヤ「今日はお泊い~?キャンプなの~?」
知久「ああ、そうだよ、キャンプだよ~」
タツヤ「わ~い、キャンプ~。お肉焼くの~?」
絢子「ハハ、タツヤ。ここじゃお肉は焼けないよ。なぁ、まどか?」
絢子「あれ……?」
知久「まどかは……?」
タツヤ「まろか、どこ~?キャンプしないの~?」
まどか「……」
QB「(ヒョイ)何をしているんだい、まどか?」
まどか「お祈り。……って、言ってもちゃんとした形式なのかは分かんないけど」
QB「暁美ほむらの勝利を祈っているのかい?」
まどか「分かってて聞いてるでしょ」
QB「まぁね。けれども残念ながら、彼女の資質では運命を覆すことは不可能に近いだろう」
QB「不確かな祈りに頼るよりも、キミには彼女の勝利に貢献する確実な手段を持っているはずだろう?」
まどか「契約はしないよ、少なくとも今は」
QB「良いのかい?こうしている間にも、暁美ほむらは死の運命に向かっているんだよ?」
まどか「キュゥべえが言ったんだよ?わたしが最悪の魔女になるって。ワルプルギスの夜を倒せても、わたしという最悪の魔女がその役目を引き継ぐだけ。この星を滅ぼすなんてこと、わたしは望まない。だから、長い目で見たら、わたしには損にしかならない取引のはずだよ?」
まどか(それに、わたしが今考えている願い事……あんな恐ろしいこと、願っちゃいけないよ)
QB「やれやれ……それに関しては反論をしても無駄なようだね。こんな状況になればキミも契約するかと思ったけれど、当てが外れたようだ」
まどか「そのために、杏子ちゃんに希望を持たせるようなことを言ったの?さやかちゃんが最初から助からないって、分かってたの?」
QB「そうだよ。一度魔女になった者を元に戻すなんて不可能だ。一度割った卵は、元には戻せない。以前そう言ったはずだよ?」
戦場
ほむら(BOOM!!BOOM!!BOOM!!)
ほむら「危険物大四類(タンクローリー)!!」
タンクローリー(ゲセヌ)
対艦ミサイル・トマホーク(ドドドドドドド!!!)
舞台装置の魔女「アハハハハ……」
ほむら「これで倒せるなんて思って無いわ。でも、あそこに追い込めば……!」
爆弾(チカチカ……カ!ゴォォォォ!)
ほむら(やったか……)
舞台装置の魔女「アハハハハ……」
???「キャハハ「ハハハ「ハハハハハ……」
ほむら「なに……あれ……?」
使い魔・影魔法少女「キャハハ「ハアハハ「ハハハ……」
ほむら「あんなに大量の……使い魔……?」
舞台装置の魔女&使い魔「「「「アハハハハハハハ……」」」
ほむら「負けるわけにはいかない……。お前がどれほど強大だろうと!」
(rat-a-tat!!rat-a-tat!!rat-a-tat!!rat-a-tat!!)
ほむら(残された『時間』は少ない……。時間停止の魔法はもうあまり使えない!でも!!)
ほむら「ここで退く訳には行かない!!」
BLAM!BLAMBLAM!
使い魔「キャハハハハハ……(シュル)」
ほむら「させない!(斬!)」
ほむら(リボンはアーミーナイフで切り払う!次は!?)
2体の使い魔「「キャハハハハハ……(ブン!ズバァ!)」」
ほむら「ハ!(BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!)」
3体の使い魔「アハハハハハ……(ボロボロ…)」
ほむら(もしも、この場にあの3人がいてくれたら……いや、そんなことを考えても仕方ない!(キ!)
使い魔「キャハハハ「ハハハハハ「ハハハ……」
ほむら「邪魔を、するな!」
ほむら(あの3人の分まで生きて、戦う!!)
BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!BRATATAT!!
舞台装置の魔女「アハハハハハハハハ……」
ほむら「このままだとキリがない……」
ロケットランチャー(BOOOOOOOOOOOOM!!)
舞台装置の魔女「アハハハハハハハハ……(ギューン!)」
ほむら「けれど、『ここ』まで来れば!(カ!)」
BOOM!BOOOM!BTOOOOOOOOOOOOM!!!
ほむら「予備のミサイル!予備の爆弾!2人だから準備できた……これが私とまどかの力!!」
舞台装置の魔女「アハハハハハハハ……(ユラユラ)」
ほむら「効いてる……あと、あと少し!!」
舞台装置の魔女「アハハハハハハハ……」
ほむら「あの方向……避難所が!?」
避難所
QB「そう。この1ヶ月間の出来事はすべて、キミに契約してもらうための布石だったと言っても過言じゃない。巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子……。彼女達は、意味のある犠牲になってくれると思ったのだけれどね」
まどか「……みんなの意味を決めるのは、あなたじゃない」
QB「残念だよ、まどか。ボクの意志を分かってくれなくて」
まどか「キュゥべえは、わたしの意志を分かってくれるのかな?」
ゴゴゴゴゴゴ……
まどか「きゃ!?」
QB「やれやれ。ここもそろそろ危険なようだね。暁美ほむら、キミの行いはやはり無意味に終わるようだ。せめて、もう一度時間遡行をして鹿目まどかの因果を増やすくらいの貢献は―――」
ほむら「(カチ)」
ほむら「ワルプルギスの夜……」
ほむら「私の願いを成し遂げるため、私に残された時間……全てお前にくれてやる!!」
BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLAM!!BLA……
???「……むらちゃん、ほむらちゃん(ティヒヒヒヒ)」
ほむら「まど……か?」
まどか「そうだよ?どうしたの、ほむらちゃん。ボーっとして」
ほむら「なんだか、悪い夢を見ていた気がして。長い長い悪夢を」
まどか「もぅ、ダメだよほむらちゃん。通学路で寝ちゃ」
マミ「そうよ、暁美さん。そんなことをしていると、遅刻しちゃうわ」
ほむら「巴……マミ?」
マミ「もう。何、よそよそしい言い方してるの。私達、お友達じゃない。そんなこと言ってるとスネちゃうんだから(プクー)」
杏子「ったく。マミさんはいつまで経っても子どもだなぁ。後輩として心配だぜ(モグモグ)」
マミ「佐倉さん、もう!佐倉さんこそ、朝からそんなに食べてたら太るわよ!」
さやか「そうそう。体重計に乗ってから後悔したって遅いんだから」
杏子「こんなの序の口だよ。まだまだこんなにあるんだからさ(ガバ!)」
マミ「佐倉さん……カバンの中」
さやか「全部、リンゴ?」
杏子「もちろん!」
さやか「じゃ、なくて教科書は?ノートは?」
杏子「そんなん、さやかのがあるだろ?」
さやか「ナチュラルにあたしに見せてもらうこと前提でトークするなー!」
マミ「佐倉さん、あなたって子は……」
ほむら「同情するわ、巴さん」
マミ「ありがとう、暁美さん」
まどか「でも、さやかちゃんたち楽しそう(ウェヒヒヒ)」
ほむら「それは……否定しないわ」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「なに、まどか?」
まどか「こんな日が、いつまでも続くと良いね?」
ほむら「ええ、こんな日が……」
廃墟
ほむら(こんな日が、迎えられれば良かったのに……)
まどか「ほむらちゃん、しっかりして!!ほむらちゃん!!」
ほむら「ごめ…んなさい。最後に左手をやられて……。盾が壊れて……時間も戻せないし、ソウルジェムにも……(ピシピシ…)」
まどか「大丈夫だよ!!まだ大丈夫だよ!!ワルプルギスの夜ももういなくなったんだから!!ねぇ!!(ポロポロ……)」
ほむら「ねぇ、まどか……。私…あなたとの約束…守れたかな……」
まどか「あ……う……(コクリ)」
ほむら「あり…がとう。あな…たは、私の最…高の…とも…だ……」
(パキィン!)
まどか「……」
QB(個体名『暁美ほむら』の消失を確認)
QB(これより、個体名『鹿目まどか』への接触を開始)
QB「(ヒョコ)やぁ、まどか。無事だったんだね」
まどか「わたしだけ生き残っても……みんないなくなっちゃったらしょうがないよ……」
まどか「ねぇ、キュゥべえ、インキュベーター……。あなた達の行くところはみんな、こんな悲しいことになるんだね?」
QB「これでも良い方なんだよ?ワルプルギスは以前、文明を1つ滅ぼしたことのある魔女だ。それを考えると、被害がこの見滝原市内に留まったのは幸いと言えるだろう。過去のデータと比較すると、被害は極めて小規模だと言える。やれやれ、今回ばかりはボクも、暁美ほむらの能力を見誤っていたと言わざるを得ない」
まどか「でも…ほむらちゃんは死んだんだよ」
まどか「ほむらちゃんだけじゃない。たくさんの人が死んで、たくさんの人が悲しむ」
まどか「ワルプルギスの夜だけじゃない。今まで魔女に殺された人たち。マミさんやさやかちゃん、杏子ちゃんたち魔法少女のみんな。そしてその家族、友達、恋人、知り合い……みんなみんな悲しいんだよ」
まどか「あなたのせいで」
QB「その責任をボクに求められても困るな」
QB「ボクがしたことは契約にすぎない。願いを叶え、魔法の力を与える。ボクたちの目的、感情エネルギーの収集に協力してもらう代わりにね。それをどう使うか、その結果どうなるか、それはキミたちの問題だ」
まどか「あなたは悪くないって言うの?」
QB「そうなるね」
まどか「でも、始まり作ったのは、あなたでしょう?」
QB「さっきも言ったように、ボクがしたことはただの契約だ。その結果までは責任を持てない。それに、ボクたちはキミたちにきちんとお願いしたハズだよ?『魔法少女になって欲しい』って」
まどか「そっか……そう言うんだ」
まどか「ねぇ、インキュベーター。わたし、契約したいんだけど」
QB「本当かい?それは良かった」
まどか「その前に、聞きたいんだけど……あのこと、考えてくれた?」
QB「ああ、この間話していた、『大切なモノ』の話だね」
QB「考えさせてもらったよ」
QB「考えた結果―――『考える必要が無い』と言う結論に落ち着いた」
まどか「……」
QB「だって、考えた所で仕方ないじゃないか」
QB「ボクたちはキミたちに契約を求める。キミたちは契約するかどうか決める、それこそ自分の『想い』でね」
QB「その関係性に何ら変化は生じない。たとえキミたちの『大切なモノ』について考えを巡らせたとしても」
QB「もちろん、ボクたちに魔法少女の契約を止めると言う選択肢は無い。魔女はまだ世界中にたくさんいるし、それに何より、コレほど効率的なエネルギー収集システムは他に無い」
QB「ねぇ、まどか。結果が変わらないと分かっているのに、どうして余計なプロセスを加えなければならないんだい?非効率じゃないか」
まどか「そう……」
まどか「そう言えばわたし、契約の仕組みとかについて詳しく聞いてなかったけど、どうやるんだっけ?インキュベーターは何をやるんだっけ……?」
QB「ボクの前で願い事を言ってくれるだけで良い。魔法少女になる、と思ってくれるとなお望ましい。そしたら、ボクはキミの魂をソウルジェムに加工する。『加工』と言っても安心して欲しい。痛みも無いし、一瞬で終わる」
まどか「言っちゃダメな願い事とかって、ある?」
QB「魔法少女の資質次第では叶えられない願い事もあるけれど、安心してくれ。キミの資質ならどんな奇跡だって遂げられる。ワルプルギスの夜を消すのも、見滝原を元に戻すのも、全ては思いのままさ」
まどか「叶えられる願いなら、何でもいいの?言ってから、あなたが叶えることがイヤ、とかいうことは無いの?」
QB「契約は自動的に行われる。ボクの意思でキミの願い事が阻害されることは無いよ。知っての通り、元々感情なんて無いしね」
まどか「まるで機械だね」
QB「こと契約に関して言えば、そう考えてくれて良い。ボクは契約を履行するための自動機械みたいなものだ」
まどか「……良かった」
まどか「わたしの願いはね、キュゥべえにも影響があることだから、ダメって言われたらどうしようかと思って」
まどか「でも安心して?長い目で見たら、キュゥべえにも得になる取引のハズだから(ウェヒヒヒ)」
QB(個体名『鹿目まどか』の契約の意思を確認。これより契約に入る)
QB「大丈夫、キミの祈りは間違い無く遂げられる」
QB「まどか、キミはどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるんだい?」
まどか「わたしはね、キュゥべえ」
まどか「全ての場所、全ての宇宙、全ての時間、過去と今と未来の全ての―――インキュベーター、キュゥべえと言う種、身体、意志、魂のすべてを、すべて絶滅(ころ)したい。その命のエネルギーで、宇宙の寿命を延ばしたい」
まどか「この手で」
QB「契約は成立だ。キミの願いはエントロピーを凌駕し……た……!?」
(パァァァァ……)
QB「その祈りは不合理だ!?どうしてそんなことを願うんだい!?分かっているはずだ。そんなことをしても何も変わらない!?いや、この星は、この宇宙は、もっと悪いことになるかもしれないんだよ!?」
QB(生まれる……まどかの中から生まれる……真っ白な呪いを孕んだソウルジェムが。いや、生まれながらにして呪いを孕んだコレを、ソウルジェムと呼んでいいのか?)
QB「キミの資質なら、全てを元に戻すことだってできるんだよ?」
まどか「ウェヒヒヒ。元に戻ってもどうせ最後には絶望が待っているんでしょう?ダメだよ、わたしの呪いと絶望に、みんなを巻き込んじゃ」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「それに、どんなことを願っても、悪くなるのは変わらないんでしょう?『条理にそぐわない願いである限り、必ず何らかの歪みが生まれる』。そう教えてくれたのはインキュベーター、あなたなんだよ?」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
QB「だからと言って、ボクたちを絶滅させて何が変わると言うんだい!?時間干渉なんてレベルじゃない、そんなとんでも無いことを願ってまで!?まどか、キミは神か悪魔にでもなるつもりかい!?」
まどか「ウェヒヒヒヒ。悪魔でも何でもいいよ」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「わたしはね、インキュベーター。あなたたちが許せないの」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「契約?あそこまで都合の悪いことばかりを隠したら、もうただの詐欺じゃない。」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「人類の発展に貢献?ただ人の有様を弄んできただけなんじゃない?それもそもそも、魔法少女たちの願いが無ければ無かったことなんだよ?それを自分のお手柄みたいに言って……」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「わたしたちに譲歩してる?わたしたちの大切なものを考えないで、譲歩も何もないんじゃないかな……」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「わたしは、ちゃんと言ったはずだよ?『わたしの大切なことを考えて』って。なのに……」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「挙句の果てに『ボクは悪くない』の一点張り。せめて全てを始めた責任くらい認めるのが、『正しく理解する』って言うことなんじゃない?この言い方もあなたが教えてくれたの、覚えてる?」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「わたしたちにキチンと向き合おうともしない。言って聞かせても分からない、訴えても分からない。それでもまだ、こんな風に契約を続けるって言うなら……」
ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……
まどか「絶滅(ころ)しちゃうしか、無いよね」
ウェヒ!
QB「だからって、こんな……こんなことがキミの魂を差し出すに足る願いだと言うのかい!?こんな、こんなことが!?」
ブチン!
QB(『どこか』でインキュベーター端末の消失を確認)
まどか「この願いを不合理だと言うのなら、インキュベーター、あなたは人間と言うものの本質が全く見えていないよ。だって、こんなことはわたしたちの歴史の中で何度も繰り返されたはずのことなんだよ?」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチフブチブヂチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
QB(この一瞬で、地球全土のインキュベーターの消失?いや、地球外の端末も?本星にも、被害が?)
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「これは、人間の歴史の中で何度も繰り返された、一番悲しくて、一番シンプルな罪。名前は……」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「復讐」
ブチブチブチ……
まどか「大切な先輩、ずっと一緒だった親友、出会えたばかりの友達、そして―――わたしの最高の友達。そんなみんなの運命を狂わされ、奪われた。そのクセ、全てを始めた当の本人はのうのうと素知らぬ顔」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「復讐劇の設定としては、ありふれているくらいじゃない?」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
QB「復、讐……」
ブチブチブチブチ……
まどか「ウェヒヒヒヒ。そう、あなたの真似をして色々理屈っぽいことは言ってみたけど、わたしはただ、あなたのことを恨んで、憎んで、殺してしまいたい。ただそれだけなんだぁ……」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブヂチブチブチブチブチ……
QB「ボクたちが絶滅(し)んだら、キミたちにだって影響が出るんだよ?残った魔女は?宇宙の寿命は?とてもボクたちの命なんかじゃとても賄いきれるものじゃないんだよ?」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「そうだねぇ……。それは大変だね。それは大変で、大事だな、って。だけど……」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「それをするのが『あなたたち』である必要は、無い!!!!!」
ブチン!
まどか「すべてが絶滅(お)わったら、ね?取り返しのつかない罪(まちがい)を犯した罰として、大それた呪いを願った歪みの結果として……」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ淵ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「わたしが『あなたたち』―――インキュベーターの役割を引き継いであげても良いよ?」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブヂチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ……
まどか「だ、か、らぁ(スゥ…)」
まどか「安心して、絶滅(し)んで、『キュゥべえ』?」
QB「ボクは……」
QB「ボクと言う種族は……」
QB「まだ絶滅(し)にたくなブチン
「ねぇ、あなた」
こうして、『かつてインキュベーターと呼ばれた存在』は消滅した
「その願い、何を引き換えても叶えたい?魂を、人生を、ありとあらゆる希望を、差し出してでも、叶えたい?」
しかし
「うん、分かった」
少女たちの間でこんな噂話が流れるようになった
「なら、叶えてあげる」
奇跡でも、魔法でも無い限り叶えられない願い事を、それでもその胸に抱いた時
「あなたに奇跡と、魔法の力をあげる」
その願い事を叶えてくれる存在が現れると
「でも本当に良いの?その代わり、あなたは絶対に幸せになれないんだよ?」
ただし、その願いと引き換えに、破滅が訪れる
「あなたはこれから、かつてニンゲンだったモノと戦って、戦って、戦い続けて、最期には絶望して終わる。もちろん、ソレを倒せるあなただってもう人間じゃない。目には目を、歯には歯を。バケモノにはバケモノを。当然だよね?」
そんな破滅的な悪魔の取引
「そう、これはたった一つの奇跡と引き換えに、全てを諦める契約」
それを全て明かした上で望むモノがいると
「わたし?わたしはインキュベーター。奇跡を売り歩く代わりに絶望を撒き散らす、セカイで最悪の悪者」
その残酷な契約と言う苦い毒を喰らったモノたちが、戦い続けていると
「それでも良いなら……」
因果は巡り、
「わたしと契約して、魔法少女になってよ!」
悲劇は終わらない
THE END
KONEC
劇終
ENDE
完
FIN
「オシマイ」
物語はこれで以上になります。
ほかにオマケとして考えているネタはありますが、本当にオマケでしかないので、本筋としてはこれで終わりとなります。
お付き合いいただきありがとうございました。
結末に関しては、何の言い訳も申しません。
みなさま、ありがとうございました。
(閉幕)
久々に投下行きます。
前に書いたオマケの話。
書いている途中でハッピーエンド症候群に罹患した結果、こんな蛇足を考えてました。(あんまりハッピーでも無いけれど)
物語的はこんなハナシ無い方が良いのでしょうし、こんなご都合主義なんてアリエナイかもしれません。
だからこれは、あの後ありえるかもしれない『IF』のお話です。
IF STORY ~「いつかあり得るかもしれないミライで」~YROTS FI
さて、お立会い。
昔々……からある所に、魔法少女と言うモノがおりました。
彼女たちは、希望を願い、戦い続け、そして最期には絶望に堕ちるさだめを負っていました。
ソレをホイホイと生み出すのが、インキュベーター。
魔法少女がどうなろうと、インキュベーターは何とも思いません。
彼らには感情が無く、その上彼らにとって魔法少女とは消耗品ですらないのですから。
さて、そんなインキュベーターに強い怒りを覚えた女の子がおりました。
名前は鹿目まどか。
誰よりも強い、魔法少女の資質を備えた女の子。
しかし、彼女は願いではなく呪いを望み、インキュベーターを一匹残らず、あらゆる場所、宇宙、時間から絶滅させました。
ただ、役割だけを遺して。
そして、インキュベーターの役割(あとしまつ)は、他ならぬまどかが請け負うことになったのでした。
めでたしめでたし。
さて。
話は変わりまして、別の時間軸。
その時間軸のまどかは、別のエンディングを望みました。
絶望へ堕ちるさだめ、すなわち『魔女』から、すべての場所、宇宙、時間にいる魔法少女を救済するルール、概念の誕生。
円環の理。
その願いと引き換えに、まどかはその概念そのものになりました。
やっぱり、めでたしめでたし。
違う2つの時間軸。
願いと呪い。
その源は同じ思い。
ねぇ、あんた?
ちがう『めでたしめでたし』を迎えた2つの時間軸が関わり合うことって、あると思う?無いと思う?
それはあたしにも分からない。
でも、もしもソレがありえたとしたら―――
「アルティメットまどかかと思った?残念、さやかちゃんでした!」
廃墟
(パァァァ……)
(まるで何もない所から、1つの『概念』があらわれる)
(ヒトの目には見えないソレに、敢えてビジュアルを設定するなら、快活そうな面立ちに左右非対称のショートカット、青を基調とした衣装に白いマントを羽織った少女)
(それは、かつてこの時間軸に存在した『美樹さやか』と呼ばれる魔法少女に良く似ていた)
(ただし、頭に音楽記号のff、フォルテシモのような髪飾りが無いのが唯一の違い)
(彼女は円環の理の一部……)
美樹さやかfrom円環の理(以下『円環さやか』)「円~環の理にみ~ちびか~れ~、何~度も、巡りあう~……っと、着いた」
円環さやか「ココがまどかが新しく『観測』した時間軸か。円環の理とあろう者が今の今までその存在を見落としてたなんて、困ったモンだ。……って言っても、あたしらに時間の概念なんてあって無いようなものなんだけどね」
円環さやか「お、あそこにソウルジェムの濁りきりそうな魔法少女発見!まどかに代わって、この円環の理の代打?お使い?カバン持ち?う~ん、とにかくさやかちゃんが頑張っちゃうぞ~!」
魔法少女A「ハハ……下手打ったなぁ。グリーフシードのストックがヤバめだったのに、こんなに魔力使っちゃうなんて……(マックロ)」
魔法少女A「でも、こうやって1人で死ねば、どんな魔女になってもみんな私だって気付かない。仲間達がすぐ、全力で倒してくれる。これで全部……だい、じょうぶ……(ジワ…)」
魔法少女A「嫌だよう……祟りたくないよう……呪いたくないよう……仲間を、大切な友達を傷つけたりなんかしたくないよう……」
円環さやか「大丈夫。安心しなよ(パァァァ……)」
魔法少女A「アンタは……?」
円環さやか「あたしはあんたを迎えに来たの。あんたはもうココにはいられないけど、もう誰かを呪ったり、祟ったりしなくていい。さ、行こう?」
魔法少女A「何だかわからないけど、アンタに賭けてみる価値はありそうだね……(スゥ…)」
(魔法少女A、生前の未練を解消中)
魔法少女A「お父さんもお母さんも、みんな元気そう……。アタシがいなくても、もう大丈夫みたい」
円環さやか「あなたも、もう大丈夫みたいだね」
魔法少女A「誰だか知らないけど、ありがとう。インキュベーターに契約と契約した時から、アタシはあのコ……インキュベーターが言った通り、最期には絶望して魔女になるか戦って死ぬしか無いって思ったけど、案外悪くないモンだね(ニコ)」
円環さやか「お礼は向こうでまどか―――円環の理に言いなよ。……って魔女?魔獣じゃなくて?ソレ知っててあんた契約したの?」
魔法少女A「当たり前でしょ?フフ……おかしなコト言うね、アンタ。でも、本当に感謝してる……ありがとう、天使サマ……(パァァァ)」
円環さやか「逝っちゃったか、円環の理に導かれて……」
円環さやか「それにしても天使サマ、か(ニマ-)」
円環さやか「ってそんなことより。この時間軸じゃ、敵はまだ魔女のまま。なのにキュゥべえのヤツがそれを全部教えた上で契約したっての?」
円環さやか「『あの』キュゥべえが?」
円環さやか「クーリングオフ無し、後出し上等の悪徳セールスマンのキュゥべえが?」
円環さやか「おかしい。おかしすぎる」
円環さやか「……うーん、このまま放っておいても、この時間軸は円環の理に『観測』された訳だから、まどかの願いの、『世界の再編』の影響を受けるとは思うけど……」
円環さやか「ピ、ポ、パっと。あー、まどか、まどか?こちらさやかちゃんです」
(以下、超次元的概念会話を常人レベルに翻訳)
円環の理(まどか)『さやかちゃん?今こっち、円環の理に、その時間軸から最初の魔法少女が来れたよ。ありがとう』
円環さやか「どういたしまして。ってか、ホントはあたしが無理言ってあんたの仕事やらせてもらったワケだし」
円環さやか「それでなんだけどさ、この時間軸のこと、ちょっと調べさせてもらっても良い?今のコの話を聞いた感じだと、あたしたちの知ってる時間軸とはかーなーり違う感じみたいだし」
円環の理『うん、今わたしもあの子に話を聞いてるけど、不思議な感じだね』
円環さやか「多分、その『不思議な感じ』のせいで、この時間軸の『観測』が遅れたんだと思うんだけど……それだけだと思うんだけど……」
円環の理『気になるんだね、この時間軸のこと』
円環さやか「うん。どうも引っかかってさ」
円環の理『分かった。ちょっと待ってね(ポワポワポワ……)』
円環さやか「おお、今までスケスケだったさやかちゃんの身体が、なんか実体チックに!?」
円環の理『スケスケって……。さやかちゃんに持っててもらったわたしの力の一部を使って、こっちの世界の人に見えるようにしたの。あ、でも本当に実体がある訳じゃないから、何かに触ったり、戦ったりはできないけど」
円環さやか「おー、ホントだ(スカスカ)」
円環の理『それで、ちょっとその時間軸の魔法少女たちにお話を聞いてみてくれないかな?』
円環さやか「おっけ。ありがと、まどか」
円環の理『ううん。わたしも、この不思議な時間軸のことは気になるから』
円環さやか「それじゃ、親友のためにもこの時間軸について調べに行きますか!」
円環さやか「と、言っている間に目の前に魔法少女の一団が」
魔法少女B「あ、魔法少女だ!ねぇねぇあなた、もしかして1人?」
魔法少女C「ダメだよ~、こんなヤバい場所でソロ狩りなんて~。ちゃんと~インキュベーターに~チームメイトを紹介してもらわないと~」
魔法少女D「いくらベテランでもやられるときはやられちゃうんだから……って、コレ受け売りだけどね」
円環さやか「あ~、あたし、なんて言うか、ここら辺初めてで……。ってかそんなにヤバいの、ココ?」
魔法少女B「ヤバいヤバい、超ヤバい!なんでもさ、前にココ、ワルプルギスの夜って言う超サイコーにヤバい魔女が暴れた影響で、呪いとか負の感情とかが溜まり易くなってるんだって!」
魔法少女C「そのせいで~、魔女もいっぱい~、使い魔もいっぱい~」
魔法少女D「だから、ただでさえチームワークが大切な魔法少女も、ココでは特にキチンとチーム組まなきゃやられちゃうんだから……ってコレも受け売りなんだけど」
円環さやか「ありがとう。……って、受け売り?誰の?」
魔法少女D「そりゃ、もちろんインキュベーターだよ」
円環さやか「キュゥべえの?」
魔法少女C「キュゥべえ~?なにそれ~?」
円環さやか「いや、インキュベーターのこと。あの丸くて白くてちっこいの」
魔法少女B「アレ!それ超ヘンなあだ名!」
魔法少女C「それじゃ~、男の子みた~い」
魔法少女D「そうそう。白くてかわいくてちっこいけど、あんなにかわいい女の子なのに」
円環さやか「女の……子?え?え?」
魔法少女C「あなた~、大丈夫~?もしかして~、良く分からないで契約しちゃった~とか~?」
魔法少女B「うわ!それ超ヤバいって、魔女の事とかソウルジェムの事とか色々大丈夫?ゼツボーしたりしない?魔女になんない?」
円環さやか「いや、大丈夫。そこら辺は知ってるから。ただ、インキュベーターが『女の子』って言うのが、あたしのイメージと違って……。ねぇ、ヘンなこと聞くようだけど、そのインキュベーターってどんな女の子?」
魔法少女B「白くて!」
魔法少女C「赤くて~」
魔法少女D「天使みたいな子」
円環さやか「天、使……?(キャラカブリ…?)」
魔法少女B「ま、やってることは悪魔みたいなんだけどさ!」
魔法少女C「でも~、それに乗っかった私達も~私達だもんね~?」
魔法少女D「魔法少女だけど、ホントは小悪魔、みたいな?」
円環さやか「それじゃぁ、みんな本当に知ってて契約したんだ。ソウルジェムのこととか、魔女の正体とか」
魔法少女B「もち!ソウルジェムが今のアタシらそのもので、コレが濁りきるのとゼツボーで魔女になっちゃう。だから、ゼツボーしないようにしながら魔女を退治して、グリーフシードをゲットする!」
魔法少女C「でも~、1人だと大変だから~、魔力の消費を抑えるためにも~チームで戦って~、グリーフシードを分け合うの~」
魔法少女D「それだけじゃないでしょ!助けあいが、魔法少女に希望をくれるんだよ」
円環さやか「え?インキュベーターって魔法少女が魔女になって欲しいんじゃぁ……?」
魔法少女B「アレ、詳しいんだね!」
魔法少女C「そうなんだって~。私達も~、最初にそう聞いたよ~」
魔法少女D「だけどだけど、契約してからはあたしたちのことすっごい助けてくれるの!すっごいいろんなこと教えてくれたの!」
魔法少女B「アタシらがこうしてチーム組めるのもインキュベーターが紹介してくれたお陰、あのコは『仕事』って言ってたけどね!」
円環さやか「絶望して欲しいのに、魔法少女の斡旋や援助もやってる……?」
魔法少女C「そうなの~。良い子だよね~」
魔法少女D「あたし、インキュベーター大好き!」
魔法少女B「アンタはインキュベーターとは超お友達だもんね!」
魔法少女C「って~、インキュベーターは~、そんな感じのコなんだけど~、分かった~?」
円環さやか「う、うん……少しは……」
円環さやか(キュゥべえを知ってると訳が分からなくなってくる……)
魔法少女B「でさ!アナタどうする?ココで魔女退治する?アタシらと組んで、ってのも大歓迎だよ!?」
魔法少女C「やっぱり~にぎやかな方が楽しいものね~」
魔法少女D「楽しい気持ちはソウルジェムを濁らせない、ってこれも受け売りだけど」
円環さやか「いや、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、とりあえずココのインキュベーターに会ってみるわ。どこに行けば会えるか、知ってる?」
魔法少女B「オッケ!それならそれなら……」
円環さやか(『インキュベーター』の居場所を聞いたあたしは、人の良い魔法少女チームと別れた)
円環さやか(その場所は、あたしにとっても意外な場所だった)
廃墟(旧・公立見滝原中学校公舎)
円環さやか「すっごいボロボロ……。って言うかココ、本当に見滝原なんだ」
円環さやか「他の時間軸とはいえ、自分の生まれ故郷を見て、それにすぐに気付けなかったとは、あたしってホントばか、なんて……笑えないなぁ」
円環さやか「歩きなれてたはずの廊下……。ワルプルギスの被害ですごく動きづらい」
円環さやか「あの子たちの話だと、あの教室のはずなんだけど」
円環さやか「あたしが間違えるはずがない、あの教室」
円環さやか「あたしたちのクラスの、教室(ス…)」
インキュベーター「ほむらちゃん……、さやかちゃん……、また魔法少女が死んじゃった」
円環さやか(教室の中から声……。やっぱりいるんだ、『インキュベーター』)
インキュベーター「その子はね、チームの中でも勇気があって、明るくて、本当はすごく優しくて。願い事だって、家族を助けるために使った、良い子なんだよ?杏子ちゃん辺りは、最初反発するかもね……」
円環さやか(ここからだと、後ろ姿しか見えない。『インキュベーター』は小柄な女の子だ。白い服に、赤い手袋……)
インキュベーター「そんな子が死んじゃうなんて、やっぱり悲しいね。でも、魔女にならなかったのは良かったのかな。ずっと『魔女になんかならない』って言ってたし。魔女になりたくないって意味だよね、あれ?」
円環さやか(良く見えないけど、黒いカチューシャをしてるみたい。あれ、あのカチューシャって転校生、ほむらの……(ゴトリ)
円環さやか(コトリ…)
インキュベーター「(バ!)だれ!?」
円環さやか「まど……か?」
インキュベーター=まどか「さやか……ちゃ……(ハ!)」
まどか「ティヒヒヒ。ふぃにとら・ふれてぃあー(バシュン!)」
円環さやか「うおおおおお!?撃ってきた!?」
まどか「ふぃにとら、ふぃにとら、も一回ふぃにとらー(バシュン!バシュン!バシュン!)」
円環さやか「え、ちょ、ま!?タンマタンマ!!」
まどか「ティヒヒヒヒ?あなたがどこの魔法少女なのか魔女なのか知らないけど、よりにもよってさやかちゃんの格好でわたしの前に現れるなんて、すごいことするんだね?(バシュン!)」
円環さやか「え、いや、だから待ってってまどか!?」
まどか「さやかちゃんはね、頑固で思い込みが激しくて頑張りすぎちゃうところがあるけど、正義感が強くて、一途で、わたしのことを何度も守ってくれた大切な親友なんだよ?そんな子の真似っこなんてする悪い子にはお仕置きなんだよ?ティヒヒヒヒ(バシュン!)」
円環さやか「いや、だからね?あたしはさやかなんだけどさやかじゃないって言うか……。ってあんたあたしのことそんな風に思ってたわけ!?」
まどか「あ、良く見ると魔法少女の姿なのに髪飾りが着いてない。パチモンだ~」
円環さやか「テレビシリーズからのファンに謝れ!(ズビシ!スカ!)」
まどか「あれ、すり抜けた?……このカンジ、魔法少女でも魔女でも無い?何?」
円環さやか「だ~か~ら~、誤解なんだって。別にあんたに嫌がらせしようって話じゃ無いんだよ」
まどか「そう、見たいだね。わたしの弓矢が飾りだって知らなかったみたいだし」
円環さやか「飾りなの!?」
まどか「飾りって言うか……。インキュベーターになった時に、戦う力は全部無くなっちゃったから。この弓矢も、光ってうなるだけ。あ、でも便利なんだよ?周りを照らしたり、照明弾?の代わりになったり」
円環さやか「いや、そこはテレパシーで良いような……。ま、とりあえずさ、こっちの話を聞いてくれる?」
まどか「つまんない言い訳じゃ無いみたいだから聞かないこともないかなって」
円環さやか「言い訳なんてしてないって……。あたしはさ、美樹さやかではあるんだけど、あんたの知ってる美樹さやかとは違う」
円環さやか「別の時間軸から来たんだ。あ、時間軸って言って分かる?」
まどか「うん、何となく。ほむらちゃんが教えてくれたから」
円環さやか「そっか。あたしたちの時間軸ではね、まどかが全ての時間軸から魔女と言う存在を消す概念『円環の理』になった」
円環さやか「んで、元々魔女になって死んじゃってたあたしは、そのまま円環の理に導かれた」
円環さやか「今はちょっと、向こうのまどかに頼んで『円環の理』から切り離してもらって、この新しく『観測』した時間軸がどんななのか、調べてるって訳」
まどか「そうなんだ……。そっちのあたしの方が、良い子だなぁ」
円環さやか「それで、まどかはさ、何でインキュベーターなんてやってるの?キュゥべえって言うインキュベーター、いなかった?それに……」
まどか「そんな一辺に聞かないでよ、そう言うところはおんなじだなぁ、さやかちゃん」
まどか「まずね、『キュゥべえ』って呼ばれた前のインキュベーターは、わたしがぜーんぶ殺しちゃったの。絶滅だよ?」
円環さやか「インキュベーターを絶滅……ってそんなことできるの!?」
まどか「できるよ。だってお願いしたんだもん。「キュゥべえ、死んで?」って。そしたらみーんな死んじゃった」
円環さやか「お願い―――魔法少女としての願いだね。でも、それが何であんたがヤツらの代わりをすることに繋がるの?」
まどか「『どんな希望もソレが条理にそぐわないものであるかぎり、必ず何らかの歪みを生み出すことになる』……インキュベーターの言葉」
まどか「わたしのお願いは叶ったけど、その分歪みは生まれたの。インキュベーターって言う『種』、生命は無くなっても、代わりにインキュベーターって言う役割が残った。誰かがその空席を埋めなきゃいけないってことになってね」
まどか「希望の結果の歪みとして、罪に対する罰として――――気が付いたら、わたしが最初からインキュベーターってことになってたんだ。わたしの自業自得ってことかな?」
円環さやか(キュゥべえを殺したくなる気持ちは、理解できないことも無い。半分以上あいつのせいで、あたしらは散々酷い目にあったんだから……)
円環さやか「でも、なにも殺さなくったって……」
まどか「……『なにも殺さなくったって』かぁ。さやかちゃんは優しいなぁ、さすがわたしの嫁だね」
円環さやか「その言葉をまどかの方から言われる日が来るなんてなぁ(タハハ…)」
まどか「さやかちゃんはやっぱり、優しくて、正しいね。そうだよね、間違いを犯したのはわたしの方なんだから、さやかちゃんが正しいよ。当然だよ」
円環さやか(罪、間違い、そして罰、か……)
円環さやか「ねぇ、まどか。あんた、やっぱ後悔してる?」
まどか「え~。後悔なんてあるわけないよ、さやかちゃん。この手袋、見て?(ス…)」
まどか「この赤い手袋はね、キュゥべえの血の色。わたしが何をしたか忘れないための、誓いの色。これがある限り、後悔なんてある訳、無い」
円環さやか「答えになってないよ、ソレ?」
まどか「さやかちゃんは頑固だなぁ」
まどか「んー、でもやっぱり後悔してないかな。恨んだ相手を殺したんだし」
まどか「わたしもね、頑張ったんだよ?自分に色々言い訳して、殺さないように、殺さないように」
まどか「それを全部台無しにしたのはキュゥべえの方。言ったんだよ?『わたしたちの大切なことを考えて』って……。なのに……(ギリィ)」
円環さやか(ビク!?)
まどか「「考える必要が無い」ってなに!!マミさんも!さやかちゃんも!杏子ちゃんも!ほむらちゃんも!死んだのに!わたしの目の前で!それを!踏みつけにして!平気で!!」
円環さやか「ま、まどか!?」
まどか「平気で……平気で……。そんなのって無いよ……ひどすぎるよ……。みんな何のために死んだのか、もう分からないよ……(ポロポロ…)」
円環さやか(まどか……時間軸が変わっても、やっぱり)
円環さやか「まどかの方が優しいなぁ。さすがあたしの嫁だ……」
まどか「優しいなんて言わないで(キッパリ)」
まどか「ウソでもそんなことを言のは、貶めることと同じだよ?そっちの世界のわたしを、キュゥべえを、そしてさやかちゃん自身を」
まどか「さやかちゃんはそんな子じゃ無い筈だよ?誰かを殺すなんて、そんな『悪』を許せない子のはずだよ?そんなさやかちゃんが、わたしを、『悪い子』を庇おうとするのは、いけないことだよ」
円環さやか「でもさ、あんた」
円環さやか「魔法少女を幸せにするために、願ったんでしょ?」
まどか「……え?」
円環さやか「ココの魔法少女達から聞いたよ。あんた、全部教えた上で契約させてるんだって?それに、仲間を作らせたりしてフォローしてる」
円環さやか「他にも、あの子たちに色々と助言したりしてさ」
まどか「そ、それは……お仕事だし……」
円環さやか「魔法少女の絶望を集めるのが仕事のインキュベーターなら、それにキュゥべえの奴なら、絶対しないでしょ」
まどか「……」
円環さやか「ほら、やっぱり優しい」
円環さやか「あんたはさ、本当はキュゥべえにそうあって欲しかったんじゃない?さいごには絶望に落とすしかないさだめでも、せめて何も知らない、何にも頼れない、そんな魔法少女を減らして欲しかった。せめて小さな救いをくれてやって欲しかった。まるで流れ作業みたいに絶望を、魔女を、増やして欲しく無かった」
円環さやか「あたしもさ、何も知らずに契約したことがきっかけで、自縄自縛みたいに苦しんで、誰にも頼ろうとしなくて、それで魔女になって、すごいキツかった。でも、円環の理ができて、すべてを受け入れた上で契約した世界ができて、それで希望を忘れずに導いてもらうことができた」
円環さやか「正直、まどかには感謝してもしきれないや」
まどか「それは『そっち』の鹿目まどかの話だよ」
まどか「『わたし』とは何の関係も無い。それに、わたしと『さやかちゃん』は今日はじめて会ったようなものなんだよ?初対面だよ?」
円環さやか「寂しいこと言わないでよ、まどか。わたしたちの友情は、時間軸が違うくらいで壊れるような安いモンじゃないでしょ?」
まどか「だったら、だからこそ優しくしちゃいけないよ。魔女になっちゃうまで正義を貫こうとして、貫けない自分も、正しくない世界も許せなかった。それがさやかちゃんでしょ?」
まどか「わたしのことだからって、さやかちゃんの大事な正義を鈍らせたらダメだよ」
まどか「確かにわたしはさやかちゃんの友達だったこともあったけれど、今は稀代の殺戮者なんだよ?」
まどか「魔法少女のみんなに色々やってるのも、罪悪感から逃げようとしてるだけだよ。臆病なだけなんだよ」
まどか「ちょっと考えれば分かるもの。もしも魔女を狩り尽くすようなことがあれば、魔法少女はみんなソウルジェムを濁らせるしかない。だから、わたしのしてることは結局無駄なんだって。罪滅ぼしにすらなってないんだって」
円環さやか「……まどか、あんた」
円環さやか「やっぱり許せないんだね」
円環さやか「自分で自分が」
まどか「(ス……)」
まどか「って言うか、許される必要が無くなった、かな」
まどか「キュゥべえが最初からいなかったことになって、わたしがインキュベーターってことになって、わたしの罪そのものがあるのか無いのか分からなくなったし」
まどか「でも、わたしがしたことは、わたしが一番よく覚えてる」
まどか「わたしが魔法少女のみんなを犠牲にしてることも分かってる」
まどか「だから、許される必要も無いし、許す必要も無いの」
まどか「ねぇ、さやかちゃん。わたしの罪を誰が赦せるのかな?赦されて良いような罪なのかな?」
まどか「……なんて、答えは聞くまでもないよね」
まどか「だから、さやかちゃんはわたしのことなんて気にしないで良いんだよ?むしろ、わたしを遠慮なく軽蔑して、罵倒して、断罪して良いんだよ?」
まどか「さやかちゃんは正義の味方の魔法少女なんでしょ?」
円環さやか(ま、確かにまどかの言うことは正しいんだろうね)
円環さやか(わたしは、こっちのまどかがどんな人生を送って、どんな思いを持っていたか知らない。お互い昔の知り合いのそっくりさんみたいなモンだ)
円環さやか(この子がとんでもないことをしたことも確か)
円環さやか(だから今、あたしがこの子に抱いてる感情は、感傷でしか無いんだろう)
円環さやか(でも)
円環さやか(それでも、思わずにはいられないや)
円環さやか(『もういいよ』って)
円環さやか(この子は自分のしたことに十分すぎるくらい苦しんだ)
円環さやか(だから、もういいんだって)
まどか「いきなり黙り込んでどうしたの、さやかちゃん?ううん、今日初めてお会いした『円環の理』の天使さま?」
円環さやか「……天使、か。さっき導いたコもそう言ってたっけ」
まどか「わたしの立場からはそうとしか見えないよ。正しいルールに、正しい神さまに仕える天使さま」
円環さやか「あたしは天使、か」
円環さやか「なら、天使としてまどかに言うことがある(コホン)」
まどか「なに、かな?」
円環さやか「あたし、美樹さやかは、『円環の理』の名の下に……」
まどか(ギュ…)
円環さやか「鹿目まどか、あなたを赦します」
まどか「え?ゆる……す?」
円環さやか「そう、あなたが罪と呼ぶものも、あなたの行いも、全部赦します」
まどか「でも、わたしキュゥべえにとってもひどいことして……」
円環さやか「赦します!」
まどか「今はキュゥべえと同じことしてて……」
円環さやか「赦します!」
まどか「でも……でも……」
円環さやか「ええい!!とにかく赦しますったら赦しますー!世界中の誰が何と言おうと赦します!!円環の理に……ううん、まどかの親友、美樹さやか、あたし自身に誓って。だから……」
円環さやか「そんな泣きそうな顔するの、もう止してよ」
まどか「え……?」
円環さやか「まどかはさ、笑ってるつもりかもしれないけど、さっきからずーっと目が泣きそうになってる。ずっと辛そうな顔してる」
円環さやか「魔法少女のコも導かれちゃったし。あんたのやったこと、やってることを考えると仕方ないってこともあるかもしれないけど……」
円環さやか「それでも、もう全部自分が悪いみたいに考えること無いって」
まどか「でも……わたしのしたことは……」
円環さやか「だから、それはもう赦したって」
円環さやか「少なくとも、さ。あんたのことを好いてる魔法少女や、助けられてる魔法少女はいるんだよ?『魔法の使者』、キュゥべえよりもよくやれてんじゃん」
円環さやか「あたしは今のあんた、結構尊敬してんのよ?」
まどか「良いの、かな?赦されても、良いのかな?わたしのやったことは消えないのに」
円環さやか「そうだね、何をどう言ったところで、なにもかもが消えて無くなるわけじゃない」
円環さやか「だから、『赦す』の。事実を受け入れて、でももうそれに苦しむ必要は無いんだよって」
円環さやか「ただの感傷と思うかもしれない。正義の味方失格だって思うかもしれない」
円環さやか「それでもあたしは、心からあんたにそう言いたいんだ」
円環さやか「もうあんたは自分を責めなくて良いんだ、って」
まどか「さや……か、ちゃん(ポロポロ…)」
円環さやか「もう、まどかは泣き虫だなぁ」
まどか「ティヒヒ。昔みたいなこと言わないでよう(ポロポロ…)」
円環さやか「あはは。こっちのあたしのそんな感じだったかー」
(ゴーン……ゴーン……ゴーン……)
まどか「なに、これ?下校のチャイムじゃないよね?それに、世界が変わって……」
円環さやか「あー、多分はじまったんだわ。『あたしら』の方のまどかの願いが、この時間軸に」
まどか「『円環の理』って言う概念が生まれて……魔女が無くなるんだっけ」
円環さやか「そうだよ。多分、ここがほかの時間軸と勝手が違ったから、こっちの時間軸へ本格的に影響するのにラグが出たんだと思う」
まどか「わたしの呪いの所為、かな?」
円環さやか「うん、あんたの『願い』の影響」
まどか「これから、この世界はどうなるのかな?」
円環さやか「こればっかりは何とも、ね。ただ、この時間軸にも円環の理が生まれる以上、魔法少女は魔女になって、呪いを振り撒かずにすむってのは確かだね」
まどか「そっか……良かった。みんな、誰かを祟ったり、傷つけたりしなくて良くなるんだね……(ポロポロ…)」
円環さやか(まどか、あんたって子はホント……)
円環さやか「(スゥ…)あたしも、そろそろ帰らなきゃいけないみたい」
まどか「そっか……。そっちも色々大変だろうけど、頑張ってね」
円環さやか「そっちこそがんば……ううん、違うや」
まどか「?」
円環さやか「いつか、あんたが心から笑える日が来ると良いね」
まどか「ありがとう、さやかちゃん……」
円環さやか(そして、あたしはこの時間軸から姿を消し、円環の理の一部へと戻る)
円環さやか(それでも忘れない。この時間軸で経験したこと、そしてあたしの想い、願い)
円環さやか(この時間軸のまどかに幸せが、いつの日か訪れますようにと)
円環さやか(いつかあり得るかもしれないミライで)
IF STORY
~「いつかあり得るかもしれないミライで」~
YROTS FI-N
このSSまとめへのコメント
まどっちはキレたらやるわな、じゅうぶんあり得る時間軸
そしてキレかたがキレキレでした、1乙