ピンポン!ショート (9)

チラ裏注意

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期待しちゃうかんね

 夏に入ろうという空気である。
 校舎の日なたはジリジリ熱くなりはじめ、生徒はダンゴムシのように影を歩くようになりはじめていた。
 そういう生徒たちをよそに、日なたで歩きながら飛び跳ねる男子生徒が一人いた。

「うっしー! 夏休みにはいったらばよ! 海いこうぜ! 海!」

「やだよ。熱いし。練習あるしさ」

 最初の男子生徒は星野 裕、通称ペコ。
 見るからに夏男といった様子を尻目に、校舎によってできた日陰を歩くのは月本 誠、通称スマイル。
 しかしこのメガネをかけた男子生徒はニコリともしていない。笑わないから、あだ名がスマイル。

「大体ペコはちょっと暑苦しいよ。それに計画性っていうか、練習あるでしょ。夏休みも」

「えーっ!? いいじゃんよぉいちんちくらいよぉー。いきてぇってばもんよーいちんちくらいよぉー」

「よくないよ。大体、そんなことしたらまた僕らを除く1年が先輩にしごかれるんだから。その後文句を言われるのは僕だって、ペコわかってるの? 
まぁ、大体ペコのせいだからボクがそこまで責任を問われるわけじゃないけどさ。でも、練習にはちゃんと来たほうがいいよ」

「ちぇー。まじっめだなぁスマイル。まじめなのはメガネだけにしとけってのよ」

「別に。だいたいふざけたメガネとかってないでしょ」

 一人はギャーギャー、ひとりはひっそりと校舎わきを歩いていたが、進む方向はともに体育館である。
 時間は放課後、運動部から文化部から、校舎は部員の男子女子で活気を増していた。
 彼らの所属する卓球部の活動がはじまるのも間もなくである。
 卓球といえど、体育会系のご他聞にもれず、1年が遅刻などもってのほかで、そのような1年が一人でも出れば連帯責任として上級生から容赦ないシゴキが入る。
 そういうわけで、遅刻常習犯だったペコは上級生からも、同級生からもそこそこ睨まれることになっていた。ちなみに、スマイルは一度も遅刻したことはない。

 コロコロコロ

 スマイルがペコをせかしながら体育館へと向かっていると、準備運動よろしく外庭を落ち着きなく走り回るペコの足元に何かが転がってきた。
 その物体にペコが気づいて頭を垂れた。

「うんにゃ?」

 ペコが認めたそれは、レモン大の黄色いボール。
 それを見たペコが顔を上げてスマイルを見ると、スマイルは右手を上げて鼻にのったメガネを持ち上げた。

「テニスボール。テニス部でしょ」

 スマイルがそういい終わる少し前に、ざわつく校舎周りのちょっと遠めから、こちらに大声が響いてきた。

「おおおおおい! それとってくれよーー!」

「うーん?」

 ペコがそちらに頭を振ると、100メートルちょっと位の場所から、右手にラケットを持った日に焼けた男子生徒がこちらに左手を振っているのが見える。

「ボールとってくれよーー!」

「キャー日村くーん!」

 そのテニス部男子の後ろから、さらに黄色い声援。
 ペコが右まゆを持ち上げてそちらをうかがうと、テニスコートの金網の外で、4人ほどで集まっている女子の一人が、その男子生徒にエールを送っているのだった。
 二日に一回は、テニス部のコートにはあの手の女子軍団がたむろしており、外周を走る卓球部のメンツにもあの声援は届いてくる。
 別にどこでも見られる光景ということではない、テニス部と、サッカー部だけである。あの手の部活は、この片瀬高校でもいわゆるモテ部の一角で、その部員の誰でもというわけでもないが、この二つの部活のレギュラーは基本的に彼女持ちなのである。

「へっ!」

 ペコは軽く渋面を作り、しかしそのテニスボールを右足でムギュっと踏みつけた。

「?」

 そのペコの反応に遠目に手を振っていた男子テニス部員が手をとめた。

「へへ、あらよーっと」

 ペコはそういいながら、右足でテニスボールを踏みつける右足に力を入れてバックスピンをかけるとテニスボールを右足の甲へとのっけ、さらに上に蹴り上げた。

 ポーンポーンポーン

 リズミカルに右足から跳ね上がったテニスボールがペコの右肩、おでこ、かかとへとリフティングされ、

「ほれーい!」

 とペコが滞空するテニスボールを強くけると、吹っ飛ばされたテニスボールが、寸分の違いもなくテニス部員の上げた左手に吸い込まれた。

「お、おお・・・」

 と、遠くで驚く男子生徒をよそに、ニンマリ笑ったペコが無表情のスマイルを向いて

「どーっよ。俺ったら球技全般いけちゃうんだよねー」

「うん。知ってる」


 いまいち反応の悪いスマイルにフンと鼻息で返事を返すと、ペコはさっきのテニスコートの女子たちに向かって叫んだ。

「なぁーあんたらさー! そんなクソ熱いところじゃなくてさー! 卓球部見学してもいいんぜー!? 体育館涼しいんぜー!?」

 ペコに叫ばれた女子たちは、しばし顔を見合わせると、クスクス笑って、その中の一人が

「卓球ってくらーい!」

 とペコとスマイルに叫び返して、女子たちでケラケラ笑いあっている。
 ペコは渋面を作ってスマイルに言った。

「おーおーご苦労なこった。あんなクソ熱いグラウンドでよーやるぜ。なぁスマイル?」

「別に。体育館だって、特に涼しいわけじゃないし」

 しゃべりながら二人はまた体育館へと向かった。

「だいたいなーにがテニス部だよ。かっこつけんなっつぅの。無知よりも偽者の知識を恐れよってなー。バカクセーんだよーい」

「それ、昨日の倫理の授業でしょ」

「あ、バレちった? どうどう? カッコいいじゃん? 今の俺カッコイイじゃん?」

「別に。さっきの言葉そのまま返すよ」

 二人が向かった体育館では、すでに上級生の大声が漏れ出していた。





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てす

期待

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