真姫「だいすきな先輩」 (54)

・初投稿です

・設定はSIDとかアニメとかごっちゃになってるので、生暖かく見守っていただけると幸いです

・地の文は真姫ちゃん一人語り。SID風に捉えていただけると

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真姫「ちょっと海未、この歌詞……」

昼休み、海未から渡された一枚の歌詞カード。

真姫「これじゃまるで……。」

まるで……

海未「……ええ、いわば卒業ソングです。」

困ったような笑顔を浮かべて、言葉を引き継ぐ海未。

真姫「ま……まだ卒業式まで半年もあるじゃない!これからラブライブ本選だって……!」

きっとμ'sの誰もが目を向けたくなかった『卒業』という単語。

それを見つめるのが苦しくて、つい声を荒げてしまう。

海未「分かっています。けれど……大事な、大事な曲なんです。」

海未「秋の夜長はいけませんね。つい考えてしまうんです……色々なことを。」

真姫「……」

何かを堪えるような、そんな顔をしている海未を見ると何も言えなくなる。

海未「大事なことですから、じっくり時間をかけて作りたかったんです。この曲を……真姫と、みんなと一緒に。」

そう、園田海未って子はいつだってこう。

真面目で、努力家で・・・強い。

いつまで経っても弱いままの私なんかとは大違い。

真姫「……そうね、分かった。ちょっと時間もらうわ。」

海未「ええ、お願いしますね……真姫。あ、分かっているとは思いますが……。」

真姫「3年生にはナイショ、でしょ?分かってるわ。」

海未に渡された歌詞カードを改めて読んでいるとなんだか泣けてきちゃう。

すっごくいい詞なんだもの。

海未の気持ち……きっと、みんなが抱えている気持ち。全部伝わってくるみたい。

真姫「これ、放課後どんな顔して3年生に会えばいいのよ……。」

歌詞カードを見つめて机に突っ伏し、ひとりごちる。

あーあ、今日は部室行くのやめようかしら。

案の定、昼休み明けからの授業は全然手につかなくって。

あっという間に部活の時間。

真姫「ああもう……なんでよりによって……。」

スマホを見ながらボヤく。

今日は2年生組は生徒会の仕事。

凛と花陽も用事で来れないみたい。

真姫「海未……恨むわよ。」

こんな歌詞渡しといて自分はお休みって・・・もう!

八つ当たりって分かってるけど・・・けど!

私も休もうかなーって思うけど、すっかり馴染んだ部室への廊下。

自然と足が向いちゃってたの。

部室の中からは3年生の賑やかな声。

『に……にっこにっこにー♪』

『にこっち~……真面目にやらんと分かっとるやんなー?』

『ひいいい!ワシワシMAXはやめてえええええ!』

『まったく……相変わらずねえ』

いつものペース。いつもの3年生。

なのにチクッと胸が痛い。

ダメダメ、完璧で可愛い真姫ちゃんは女優にもなれなきゃ。

いつも通り、いつも通り……。

真姫「にこちゃん、またなんかやらかしたの?」

希「お、真姫ちゃん、お疲れさん。」ワシワシ

絵里「あら真姫、いらっしゃい。」

にこ「助けて真姫ちゃん!希が、希があああああ!」

真姫「いったい何したのよにこちゃん……。」

ふと、何の気なしに机の上を見ると大学の赤本。

きゅっと胸が締め付けられる。

希「聞いてや真姫ちゃーん。にこっちったらさっぱり真面目に勉強してくれないんよー。」

絵里「もう、あまり時間もないんだからちゃんとやらなきゃダメよ、にこ?」

にこ「だってぇー、にこはぁー、アイドルだからぁー」

希「にこっち~……?」

真姫「……」

時間が・・・ない。

いつも通りって思ってたのに……私は黙りこくってしまう。

絵里「真姫?」

真姫「!?な、何よエリー?」

絵里「どうかしたの?元気がないようだけれど……具合でも悪い?」

希「ふう……真姫ちゃん具合悪いん?」ツヤツヤ

にこ「あばばばば……」ピクピク

真姫「ナ、ナンデモナイノヨナンデモ」

絵里「ほんとかしら……?ちょっと失礼するわね。」

エリーの手が私のおでこに当てられる。

絵里「うーん、熱はないみたいね?」

真姫「そうよ、私はなんともないわ!」

精一杯強がって、話を逸らす。

真姫「そうそう、今日は凛と花陽は用事。2年生は生徒会の仕事で来れないそうよ。」

希「あ、そうなん?じゃあ今日はこの4人だけかー。」

にこ「ひいひい……じゃあ今日は4人で遊びに行くにこ!」

絵里「ダメよにこ、全然進んでないじゃない。」

にこ「だってぇー……」

希「そのくだりはもうええて。でもまあ、にこっちも煮詰まってるみたいやしええんちゃう?」

絵里「もう……真姫はどうする?」

真姫「わ、私は別にどっちでもいいわよ。今日は塾もないし……。」

って、平常心でいられないのになんでオッケーしてるの私!

でもでも、どうせ明日からも顔は合わせるんだし慣れないと……ね?

にこ「じゃあゲーセンでも行くにこ!」ガバッ

絵里「ゲーセン……ゲームセンター?……ハラショー!」

希「えりち、もしかして行ったことないん?」

絵里「生徒会長がゲームセンターなんてとんでもないって思ってた時期もあったのよ……。」

絵里「真姫も行ったことないわよね?ね?」

真姫「いや、私は凛たちと何度か……。」

にこ「もーそんなのいいから早く行くにこー!時間は待ってくれないのよ!」

希「勉強しなくてよくなった途端に張りきっとるなあ……。」

そんなこんなで秋葉原に繰り出してみんなでゲーセンに行くことに。

よく考えたら珍しい4人よね。

3年生が3人に1年生が1人。

普通ならちょっとかしこまっちゃうところだけど、そこはほら先輩禁止のμ'sだから。

人と接するのが苦手な私でもあっという間にいつものペース。

にこ「真姫ちゃん、このダンスゲームで勝負よ!勝ったほうが次のセンターなんだから!」

センターってそんな決め方しないでしょ。まったくにこちゃんは……。

真姫「なんで私がそんなこと……。」

にこ「あれー?真姫ちゃん逃げるのー?」

に、逃げる?この完璧で可愛い私が?

聞き捨てならないわ!

真姫「だ、誰が!望むところよ!」

にこ・絵里・希「(ちょろい)」

真姫「ほえ面かかせてやるわ!かかってきなさいにこちゃん!」

にこ「いやーん真姫ちゃんこわーい♪」

にこ「(ふふふ……やり込み方が違うのよ、このスーパーアイドルにこにーが負けるわけないわ)」

そして数分後……。

にこ「」

真姫「かしこいかわいいこのマッキーが負けるわけないのよ」フンス

絵里「ちょ、それ私の」

希「にこっち……憐れやなあ。」ワシワシ

にこ「バ、バカな……」ビクンビクン

それから、たくさんのゲームで目一杯遊んで気づいたら夕方になってた。

友達と遊ぶってこんなにも楽しい。

μ'sに入るまでこんなこと知らなかったから。

みんなと一緒だとこんなに時間が経つのが早いなんて知らなかったから。

真姫「(時間・・・か)」

絵里「あら、もうこんな時間なのね。」

希「ほんまやね、そろそろ帰らんと。」

にこ「あ、じゃあ最後にプリクラ撮るにこ!」

絵里「プリクラ・・・プリント倶楽部ね!ハラショーハラショー」

希「ええねー、真姫ちゃんもええやろ?……真姫ちゃん?」

真姫「え?ええ、もちろん!一番可愛く写ってやるわ!」

ちゃんと……ちゃんと笑えるかな?

『まずはみんな笑顔で!はい、チーズ!』

『次は変顔でー……はい、チーズ!』

『最後は抱き合ってー……』

だ、抱き合うって何よ!

希「ほらほら真姫ちゃん、みんなで抱き合うんよ?」

絵里「早くなさい真姫!指示通りにやらなきゃ!」

エ、エリーはなんでそんなにノリノリなのよ……。

にこ「恥ずかしがることないにこー、ほらほらー!」

真姫「うう……」

『はい、チーズ!』

『落書きコーナーに移動してね☆』

絵里「落書き?何書けばいいのかしら?」

希「なんでもええんよー、文字通りの落書きやからね。」

にこ「えーい真姫ちゃんの顔ピエロにしちゃえー♪」

真姫「ちょ!やめなさいよ!」

やっぱり気づけばみんなでワイワイ騒いでた。

写真の中の私も心から楽しそうに笑ってて。

良かった。私、ちゃんと笑えてる。

だったのに。

絵里「うーん、何書こうかしら……」

エリーが、最後に撮ったみんなで抱き合った写真に落書きした言葉が。

『親愛なる同級生、そして可愛い後輩。』

『私の大切な仲間達!』

『きっとずっと一緒よ♪』

真姫「……!」

エリーは何の気なしに書いたはず。

分かってる、分かってるの……。

でも、あまりにもタイミングが悪くて……。

絵里「ま、真姫?どうして泣いてるの!?」

希「真姫ちゃん……?」

にこ「え、ちょ、ご、ごめんね?落書きそんなに嫌だった?すぐ消すから!」

ポロポロと落ちる涙が止まらない。

楽しいのに。こんなに楽しいのに。

真姫「ち、ちが……違うの……」

絵里「……とりあえず場所変えましょうか?目立っちゃうわね」

希「せやね、近くの公園行こうか。にこっち、エスコートしてあげて?」

にこ「真姫ちゃん、歩ける……?」

みんなに心配させちゃってる。

こんなつもりじゃなかったのに。いつもの私でいられると思ったのに。

こんなんじゃ、にこちゃん達が安心して卒業できないよ。

私のバカ。バカ……。

気づいたら公園のベンチに私は座ってて。

みんな心配そうに私を見てる。

絵里「落ち着いたかしら……?」

エリーは目線を合わせて私に語りかけてくれる。

希「どうしたん?なんか辛いことでもあったん?」

希はお母さんみたいな暖かさで。

にこ「真姫ちゃんに泣き顔は似合わないよー?にっこにっこ……」

にこちゃんは一生懸命元気に振舞ってくれる。

そんな優しさがとってもとっても嬉しくて。

なのに涙は止まらない。

希「なんでもええから話してみ?うちら友達やん?」

絵里「そうよ、これでも多少は頼りになるつもりだわ。」

にこ「真姫ちゃーん……」

そんな優しい言葉が、私の心の堤防を決壊させてしまった。

真姫「……なの……」

希「え?」


真姫「イヤなの……みんなが卒業するなんてイヤ!」


言っちゃった。

こんなこと言ってもどうしようもないのに。困らせるだけなのに。

みんながハッと息を呑んだのが分かる。

絵里「卒業って……まだ半年もあるのよ?」

真姫「半年しかないの……やっと、やっと見つけた大切な仲間……友達なのに……」

一度溢れた言葉は止まってくれない。

真姫「全然素直になれなくて、こんなひねくれた私に優しくしてくれて」

真姫「こんなの初めてだったの……こんなに素敵な友達、私にはもったいないくらい」

真姫「ずっとずっと一緒にいたいって思った」

真姫「だけど今日受験勉強してるの見たり、いろいろあってみんなが卒業しちゃうって」

真姫「そんな風に思ったら寂しくて……!辛くて……!」

真姫「ごめんね、こんなこと言っても困らせるだけなのは知ってるの……ごめんね……」

こんなにもスラスラと言葉が出てくるのは初めてで。

こんなときでもなきゃ素直になれない自分にちょっと自己嫌悪。

目の前の3人だってきっと困ってる。

希「もうええんよ、大丈夫……大丈夫やから……」

絵里「真姫……ありがとうね……」

けど、気づいたらみんな私のこと抱きしめてくれてた。

さっきのプリクラみたいに。優しくて、あったかくて。

にこ「もう、真姫ちゃんはバカね……」

言葉とは裏腹ににこちゃんは私の頭を優しく撫でてくれる。

抱きしめられてて顔は見えないけれど、みんな涙声。

にこ「別に卒業したってにこ達が消えてなくなるわけじゃないの」

にこ「確かにちょっと距離は離れるかもしれない」

にこ「でもね、その程度でμ'sはバラバラになったりしないわ。」

にこちゃんの力強い言葉。

絵里「それぞれの道を歩んでいくかもしれないけれど、みんなとはずっと……ずっと友達よ」

優しく語りかけてくれるエリー。

希「どこに行ってもμ'sは大丈夫。カードがうちにそう告げるんよ。ふふっ」

いつもみたいに飄々としていて、だけど優しい希。

希「なんか様子おかしいと思ってたんよ、たまにぼーっとしてるし。」

絵里「たまには目一杯甘えなさい。溜め込んだっていいことないわよ。」

にこ「そうそう、素直になってこのにこにーの胸に飛び込んできなさい!」

希「えりちとにこっちがそれ言うん?」

絵里・にこ「うるさいわね!」

こんなワガママ言ってる私を見てもみんなは何も変わらない。

それが嬉しくてたまらない。

やっぱりここが私の居場所なんだって。ここにいていいんだって。

そう思ったら少し、ほんの少しだけ気持ちが軽くなった。

涙を拭いて私は立ち上がる。

真姫「ごめんね、もう大丈夫……ありがとう」

たまには素直にお礼を言ってみる。

にこ「真姫ちゃんから素直にお礼されるなんて気持ちわるーい♪」

真姫「ちょ、なんでよ!イミワカンナイ!」

絵里「ふふ、それにしても真姫が私達のことこんなに想ってくれてるなんてね・・・ふふふ」

希「真姫ちゃーん、うちも大好きやでー」

いつもみたいにおちょくられて。

いつもの素直じゃない私なら『べ、別に』とか言っちゃうところだけれど。

真姫「う……ぐ……わ、私も……き……よ……」

にこ「聞こえなーい?なーにー?」

真姫「わ、私も!」



真姫「みんなのこと、だいすきだって言ってるの!」




素直に叫んだ言葉は夕暮れの空に溶けて。

嬉しそうな3年生の顔。

恥ずかしいけど、これでいいかなって思う。

そうだ、曲を書こう。

今日のこの気持ちが色あせないうちに。

海未の、みんなの気持ちが乗った歌詞を乗せて。

大好きなこの人達の旅立ちの日に、笑って門出を迎えられるように。

―エピローグ―


それから半年の時が経ち、桜の舞う季節になった。

ラブライブの結果は……もうみんな知ってるだろうから割愛するわ。

そして卒業式のステージにはμ'sの9人が並んでいる。

穂乃果「3年生の皆さん、卒業おめでとうございます!」

穂乃果「今日、この門出の日。私達からのささやかな贈り物です。」

穂乃果「μ'sとして9人で歌う最後の曲で…す。」

穂乃果ったら涙こらえてるわね。

声、震えてる。人のこと言えないけど。

きっとみんなそうよね。

穂乃果「聞いて……くださいっ!」


『SENTIMENTAL StepS』


私はピアノの伴奏を始める。

想いを込めて。

この瞬間を忘れないように。

どんな顔してるかな?後ろで弾いてる私にはみんなの横顔しか見えないけれど。

声は震えてる。音程もガタガタね。

私の指も震えちゃうけど、ね。

エリー、希、にこちゃん。これが私達の精一杯。

たくさんのありがとうと、これからどこに行っても頑張ってって気持ちを込めて。

どうかな?ちゃんと伝わってるかな?

そんなことを考えながら最後の音を私の指が紡ぐ。

大きな拍手が聞こえる。

そして、目に映るのはμ'sの8人の泣き笑いみたいな、へんなかお。

だけど最高の顔。大好きなみんな。

ありがとう。こんな私だけど、これからもよろしくね。

以上です。

SENTIMENTAL StepSの視聴動画見てたらどうしても書きたくなって一気に書いてしまいました。

アニメの方はどうやって締めるのか怖いやら楽しみやら・・・ではでは、拙文失礼致しました。

おお、見てくださっている方が・・・ありがとうございます!

せっかく書き上げたのでhtml化依頼出してきますー

こんなに感想いただけて感無量でございます

SENTIMENTAL StepSはもう出だし聞いただけでウルッと来ましたねえ。

今日明日あたりこのお話のエリチカサイドでも書こうかと思いますのでよろしかったらまたお願い致します

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月03日 (火) 02:45:33   ID: rGH_I-44

ええやん!!

2 :  SS好きの774さん   2014年08月28日 (木) 02:51:55   ID: f28zvSIp

がち泣きしました!最高です!

3 :  SS好きの774さん   2014年08月31日 (日) 19:02:44   ID: 1GPxx85x

これは泣いた

4 :  SS好きの774さん   2015年12月26日 (土) 15:57:55   ID: 3hkTScWZ

これはいい

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