メンヘラ男「死にたい」メンヘラ女「死のう?」(39)

メンヘラ男(以下麺男)「もう嫌だ、俺ばっかり最悪だ」

麺男「死にたい……消えたい……もう……嫌だ、うう……」

チキチキチキチキチキ スゥーッ

ポタ ポタ ポタ

麺男「綺麗だな……はは……血が、赤い。そうだ、写真撮ってあげよ」

麺女:とても綺麗ですね

麺男「……新しい人か。初絡みだな」

麺男:ほんと?

麺女:はい、ほんとですよ。傷も、血も、綺麗です

麺男:……ありがとう

麺男「……やっぱおかしいな。ここは喜ぶとこなのに、なんでなにも感じないんだろう。心が死んでるからかな……おかしいからかな……はは……」

スゥー ポタ ポタ

 翌日

麺男:疲れた。消えたい

麺女:私もです。早く消えたいですね

麺男「よく絡んでくれる人だな」

麺男:ですね。どうしたら消えれるんでしょう

麺女:死ぬことが近道なんじゃないですか?

麺男:そうですか……死にたいな

麺女:本当に?

麺男:はい。もう疲れました

麺女:あの、よかったらこれ
0☆0-4241-0666

麺男「電話番号?なんだこいつ、早すぎるだろ」

麺男「……」ピッピッピッピッピ プルルルルル プルルルルル

麺女『はい』

麺男「あ……の、麺男、です」

麺女『初めまして、麺女です。あの、敬語じゃなくていいですよ?』

麺男「あ、ありがとう。そっちも普通にしていいよ」

麺女『うん、ありがと』

麺男(なんか和む声だな)

麺男「あの、なんで電話?」

麺女『……本当に死にたいの?』

麺男「……うん、死にたい」

麺女『じゃあ、一緒に死のう?』

麺男「……なんで、俺? 知り合ったばっかなのに」

麺女『綺麗だったから』

麺男「……汚いよ」

麺女『私は麺男君の血、好きだよ』

麺男「あ、りがと……」

麺男「麺女はなんで死にたいの?」

麺女『……生きるの疲れちゃったから』

麺男「そっか……疲れるよね」

麺女『うん。でも、一人で死ぬ勇気なくって』

麺男「ははっ、なんか解る。怖いよね」

麺女『うん……だから、一緒に。駄目?』

麺男「………………どうやって死のうか」

麺女『う、うん!あのね』

麺男(……いいよな、もう終わらせて。疲れたもんな。生きたくないし。それに……こんな俺でも誰かの役に立って死ねるんだし)

麺男「睡眠薬とかは?」

麺女『成功率が低いかも……生き残ったら大変だし』

麺男「後遺症酷いんだっけ」

麺女『うん。二度とベッドから起き上がれなくなるかも』

麺男「延々と生かされるんだ。地獄だね」

麺女『だよね。やっぱり練炭が一番いいと思うよ』

麺男「練炭か……でもどこで?俺車ないし、持ってる?」

麺女『持ってない……家じゃ無理だし、いいところないかな』

麺男「……ホテル、とか」

麺女『あ、いいかも』

麺男「お風呂場とかでさ。換気扇も入口も塞いだら、なんとかならないかな」


麺女『うんうん、そうしようっ』

麺男「いつにしよう」

麺女『いつでもいいよ、早くがいいな』

麺男「じゃあ来週の日曜日、とか?」

麺女『うんっ』

麺男(……ほんとに来るのかな、麺女)

 日曜日
麺男「あ、もしもし。着いたよ」

麺女『私も着いてるよ。時計の下にいるよ』

麺男「えっと……あ、いた」プチッ
麺男「麺女……?俺、麺男」

麺女「うん、麺女です。こんにちわ」

麺男(ブスが来ると思ってたのに……結構かわいい)

麺男「高校生なんだっけ」

麺女「うん。麺男くんは大学生だったよね」

麺男「元、ね」

麺女「あ、ごめんなさい」

麺男「いいよ。えっと……御飯食べた?」

麺女「んーん」

麺男「じゃあちょっと食べてこっか」

麺女「うんっ」

ファーストフード店

麺女「……なんかおかしいね」クス

麺男「なにが?」

麺女「だって、これから私達死ぬのに、ハンバーガー食べてる」

麺男「ほんとだな」プッ

麺女「最後の晩餐がハンバーガーかー……私らしいかな」

麺男「……この後、なんだけどさ。死ぬ前によかったら付き合ってほしいんだけど」

麺女「ん?」

麺男「お金、結構持ってきたんだ。あっても死ぬなら意味ないかな、って。だからぱーっと使っちゃいたいんだよね」

麺女「うん、いいよ。最後に遊ぼうっ」

麺男「久々に来たな、水族館なんて」

麺女「私も。小学生以来かも」

麺男「泳いでるねぇ……」

麺女「うん」

麺男(泳いでないと餌も貰えないって、なんかな…)

麺女「あ、あっちの魚綺麗」

麺男「ほんとだ。毒々しくていいね」

麺女「こんなに綺麗だったら私も……」ボソッ

麺男「別に麺女、かわいいと思うけど」

麺女「ありえないよ」

麺男(そんなに酷くないのに)

麺男「次どこ行く?」

麺女「んー……んー……」

麺男「俺も思いつかないんだ。金はあるのに」

麺女「やっぱり疲れちゃってるのかな?」

麺男「あー、そうかも。もう行こっか」

麺女「うん。用意はしてきたよね?」

麺男「この鞄に入れてあるよ。ホテルはその辺でいいよね?」

麺女「うん、いいよ。行こっ」ニコッ

麺男(嬉しいんだな、死ねるの。そっか……もう死ぬのか……なにもない人生だったな……)

麺男「ここでいっか」

麺女「なんか恥ずかしいな……」

麺男「ラブホ初めて?」

麺女「うん……」

麺男「一番手軽だったからさ。嫌なら別に探してみるけど」

麺女「んーん、ここでいいよ」

麺男「よし。じゃあ無駄に豪華な部屋にしよう」

麺女「あははっ、ほんと無駄に、だね」

麺女「ラブホテルってこんな風なんだ……」

麺男「場所によるし部屋によるよ。ここは高めだから内装しっかりしてるけど」

麺女「なんかよく行ったことある口ぶりだ~」

麺男「たまに行ったぐらいだって」

麺女「ほんとかな~」ジトー

麺男「ははっ。死ぬ前にお風呂入って体綺麗にしておく?」

麺女「もちろんっ」

麺男「それじゃお先にどうぞ。俺はあとで入るよ」

麺女「……えっと」

麺男「ん?」

麺女「……いっしょに入ろ?」

麺男(……どういう意図だこれ)

麺男「それはちょっと恥ずかしいし、やめとこ」

麺女「でも、これから一緒に死ぬんだし……さ」

麺男(関係無いと思うんだけどな……)

麺男「それに。俺も男だから、麺女の裸見ちゃったりしたら、ほら、解るだろ?」

麺女「……別にいいよ?」

麺男「え」

麺女「これから一緒に死ぬ人だもん。それぐらい、いいよ?」

麺男(あ、もう駄目だ。期待しちゃった。体が勝手に反応してる)

麺男「わかった。一緒にお風呂はいろっか」

麺女「うん」

麺男「先入っとくね」

麺女「うん」
ガチャ バタン
麺男「死ぬ前のラッキー、なんかなぁ」
シャワーザババババババ オユドプン
麺男「ふう……高いだけあって風呂も広いや」

麺男「女の子とお風呂って初めてだな……なんか緊張する」

麺女「はいるよー」

麺男「どうぞー」
カチ
麺男(あ、電気消された)
カチャ
麺女「……こっち向いてる」

麺男「そりゃ向くよ」

麺男(ほの暗いけどぼんやりラインは見えるし)

ザババババァ...
麺女「じゃ、入る、ね」

麺男「あれ?誘ったのそっちなのに緊張してる?」

麺女「そりゃするよぉ……恥ずかしいことに違いはないし……」

麺男「別によかったのに、別でも」

麺女「私が……してほしいこと、あったから」チャプ
麺女「あったかい……広いね」

麺男「二人でも余裕あるな。で、死ぬ前にしてほしいことって?」

麺女「えっと……笑わないでよ?」

麺男「どうぞ」

麺女「お風呂で、後ろからぎゅってされたい……かな」

麺男(……それは俺の理性が保つかな)

麺男「……よし、来い」

麺女「男らしい?ふふっ……おじゃまします」チャプ

麺男(勃つの早いわ)

麺女「あっ」

麺男「……ごめん。やっぱ反応しちゃった」

麺女「……いいよ、私で欲情してくれるんだね。嬉しい」

麺男「しない奴いないと思うけど」

麺女「……かもしれないけど。私は汚いから。ね、ぎゅってして?」

麺男「ん」ギュ...

麺女「はぁ……おちつく……」

麺男「うん」

麺男(なんか、以外と……邪念がどっか行く……)

麺男「なんでそんなに自分を汚く思うの?」

麺女「……私、お母さんに、ずっとウリやらされてたんだ」

麺男「っ……そっか」

麺女「小六の時に知らないおじさん連れてきて。それが初めてだった。それからもずっと、今でも続いてるから……」

麺男(……俺なんかとは全然違うんだな。なにもなく落ちぶれた俺なんかとは)

麺女「だから……汚いよ」

麺男「……どうすれば綺麗になれるかな」

麺女「……わかんない」

麺男「俺は麺女のこと綺麗だって思うよ。でも、麺女は信じられないんでしょ?」

麺女「……うん、ごめんね」

麺男「いいよ、気持ちは解るから。でも、麺女が自分のことどう思っても、俺は綺麗だって思ってるから」

麺女「……」グスッ

麺女「ありがと」ボソッ

麺男(なんで俺は落ちぶれたんだっけ……)

麺女「麺男は……なんで死にたいの?」

麺男「……俺はさ、麺女みたいに辛い過去なんてないんだ。大学で人間関係失敗して、留年して、辞めて……ほんとになにもなかった。親も普通だしね。だけど……もう生きることに疲れたんだ。情けないよな」

麺女「そんなことないよ。麺男はいっぱい頑張ったんだよ。だから、疲れちゃったんだよ」

麺男「頑張って……ないよ」

麺女「生きることに向いてない人っていると思う。だから麺男は、生きてるだけで頑張ってるんだよ」

麺男「……そうかな」

麺女「うん。だから、もう頑張らなくていいんだよ」

麺男「そっか……ありがと」ギュゥ

麺女「……麺男」チャプ クルッ

麺男「な、に?」ドキドキ

麺女「……ごめんね」

麺男「え?」

麺女「ん」ギュッ チュゥ..............

チュ....レロ...ペロ.....クチャ....チュ....

麺女「……ごめん」

麺男「謝らなくてもいいよ」

麺女「謝るよ。だって、私、汚いのに……したくなったからって、キスしちゃった。ごめんなさい」

麺男「……そんな風に思わないで」チュッ

麺男「キスとか、俺も嬉しいし……」

麺女「ほん、と?」

麺男「うん。それに、麺女としたいって思うし」

麺女「そ、っか……」

麺男「これは聞き流してくれていいんだけど、俺、麺女のこと……多分、好きになりかけてるし」

麺女「……えへへ。嬉しい。私も、だから。ねえっ」

麺男「ん?」

麺女「しよっ」

麺男「……うん」

ナレーター:メンヘラという生き物は実に厄介である。己のために平気で嘘を吐き、構って欲しいがために手首を切る。この二人も例外ではない。

麺女「あっんぅっすきっ……すきっ」ギュゥ パンパンパンッ

ナレーター:暗い過去を持つ麺女は確かな精神病者であるが、しかし麺男と同様、己の心の穴を埋めるために依存する。

麺男「俺も……好き、だよ……っ」ギュゥ パンパンパンッ

ナレーター:好きだと連呼することで互いが互いを縛り合い、互いが互いに依存する。これぞメンヘラ恋愛術、共依存である。

麺女「もっと……激しっしてっ……んっ……すき……なのっ」ギュゥ ツメグサリ パンパンパン

ナレーター:相手に愛されるためにどんな姿へも成り代わり、相手に依存するために依存を求める。

麺男「ぐっ……ああっ!」パンパンパン ギュゥゥゥ セナカツメタラー ドクッ ドクンッ

麺女「んっふあぁっ!」ビクッ......ビクッ


麺男「……あの、さ」

麺女「……なーに?」

麺男「俺……麺女と……」

ナレーター:だからこそこれは、恋愛の物語ではない。
      メンヘラ同士の擬似恋愛が如何様な結末を迎えるか。



麺男「生きたい」

麺女「……うんっ」


ナレーター:極々在り来たりなメンヘラストーリーでしかない。

プロローグ兼序盤終わりです。
そして長引かせるつもりもないのでさっさと終盤に向けて中盤です。
読んでる人がいなければやめるレベルのやる気で頑張ります。

一日目

麺男「俺さ、麺女となら生きていけそうな気がするよ」

麺女「私も……大好きだよ、麺男」

麺男「そんでさ、よかったらうち来る?一応一人暮らしだし」

麺女「ほんと?いいの?」

麺男「うん。そんな酷い母親のとこに帰せないよ」

麺女「麺男……ありがとっ」ギュッ

麺男「構わないよ」ナデナデ

二日目

麺男「じゃあバイト行ってくるね。誰か来ても出なくていいから」

麺女「うん。行ってらっしゃい」チュッ

麺男「……なんか新婚みたいだ」ハハッ

麺女「えへへ」

~~~

麺男「ただいまー」

麺女「おかえり」

麺男「ご飯買いに行こっか」

麺女「うん。私頑張って作るね」

麺男「作れるの?」

麺女「……修行しないとダメかな」

麺男「まだ高校生だもんな」
麺男(それにそんな親じゃ教えてもらえないよな)

麺女「でも今はネットがあるし!頑張る」

麺男「ありがと、嬉しいよ」ナデナデ

麺女「えへへ……麺男に撫でられるの好き」ニヘラ

三日目

麺女「ぁんっんぅっ……ぁっ」パンパンパパン

麺男「……うっ」ドクドク ドクンッ

麺女「ふぁ……あ、ぬいちゃだめ」

麺男「ん?」

麺女「繋がってたいから、ぬいちゃだめ」

麺男「麺女はかわいいなぁ」

麺女「かわいくないよ」

麺男「俺の中では世界一かわいいよ」

麺女「……ほんと?」

麺男「ほんと」

麺女「えへへ」ギューッ

麺男「好きだよ」ナデナデ

四日目

麺男「あれ?その傷……」

麺女「あ、えと、これは、その……」

麺男「切ったの?」

麺女「……うん」

麺男「ごめん、俺なにかしちゃったかな」

麺女「違うよ!麺男のせいじゃないよ!いますっごい幸せだもん!」

麺男「じゃあ」

麺女「家でのこと思い出しちゃって……ごめんなさい」

麺男「そっか……謝らなくていいよ。すぐに忘れられないよね。仕方ないって」

麺女「ごめん」

麺男「いいってば。ゆっくり忘れてこ」ナデナデ

麺女「……うん」

麺男(……俺が傍にいても意味ないのかな)

五日目

麺女(麺男はいい人だな……優しいし、かっこいいし……えへへ)

麺女(麺男はいい人)

麺女(私のせいで……麺男まで汚くなっちゃう)

麺女(そんなの、嫌だよ……)

麺女(でも……麺男から離れたくない)

麺女(最低だ……私は最低だ……汚い……心まで汚い……)スゥー

麺女「あ……またやっちゃった……」タラー

麺女「麺男が心配かけちゃ駄目なのに……最低だ」ポタ ポタ

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