Gackt「THE IDOL M@STER?」 (385)
Gackt「何それ」
YOU「簡単に言えばアイドル達の育成ゲームかな?
プレイヤーはプロデューサーになってアイドル達をトップアイドルに育てるんだよ」
Gackt「へぇー...面白いの?」
YOU「リズム感も鍛えられるし、IA大賞取った時の達成感は凄いよ」
Gackt「IA大賞?」
YOU「アイドルアカデミーってやつなんだ。アイドルの中のアイドルって賞だよ。
もし良かったらがっくんもやってみる?」
長年の付き合いのYOUが紹介してきたゲーム『アイドルマスター』。
僕は全く興味が湧かなかったが、せっかく親友が勧めてくれたんだ。やってみようかな?
Gackt「んー…YOUはどのキャラにしたの?」
YOU「俺?俺は美希かな」
Gackt「美希ってこの金髪のやつ?
へぇー能力はあるけど、テンション維持が難しい、か。」
YOU「がっくんはまだ初心者だし、メインヒロインの春香がいいんじゃない?」
春香。天海春香。一応このゲームのメインヒロインらしい。リボンが特徴のキャラだ。
確かに皆個性があるが、いかんせんこういったゲームをやってこなかった僕にはキャラクター決めすら難しかった。
Gackt「やっぱり気が向いたらにするよ。新しい歌も作らなきゃだし」
そして僕は自分の家へ帰り、いつものようにメールチェックをしていると、いきなりとてつもない睡魔が襲ってきた。
まあ、いつものことだしあんまり気にしなかったんだけど、あれがあんなことになるなんて...
...クン
..クトクン
??「Gacktくん?」
Gackt「はっ!?」
なんだかどこかで聴いたことのある誰かの声で目が覚めた。
辺りを見回すと、全く覚えのない景色。どこかのオフィスだろうか?
僕はソファに腰掛けて、眠っていたようだが。
Gackt「え?ここどこ?」
昨日は飲んだ記憶は無い。寝る時の記憶もはっきり残ってる。
ましてや、どこかの会社に寝泊まりなんて酔っててもしないだろうに。
??「どうしたのかね?寝ボケてるのかい?」
そう話しかけてきた初老の男性は、僕にお茶を出してきた。
Gackt「あの..なにがなにやら分からないんですけど」
まさか誘拐だなんてあるまいし、もしかして僕は夢遊病か何かなのだろうか?だとしたら怖いことこの上ない。
??「ハッハッハ!まぁ寝ボケは良しとして、Gacktくん!これから宜しく!私はこの765プロの社長、高木だよ!」
そういって握手を求めてきた高木という男。敵意はないようなので、応じることにした。
高木「い、い痛いよ!が、Gacktくん!?」
高木という男から話を聞くと、ここは765プロという所でアイドルの事務所らしい。
といってもまだ無名の事務所で、仕事はおろか、オーディションすら縁が無い。
大丈夫なのだろうか?
しかも僕にそこのプロデューサーをやれという。無茶苦茶だ。
Gackt「一回皆に連絡を取ろう...」
『着信履歴はありません』
『アドレス帳登録件数:0』
Gackt「」
参った。
僕は友達は少ないかもしれないが、0ということは無いだろう?
スタッフやメンバーのみんなはおろか、家族でさえ無かった。
Gackt「何が起きてるんだ...?」
ふと思い出した。
家に帰る前、YOUと遊んでた時だ。
YOU「アイドルマスターはね、765プロっていう、無名の事務所、アイドル達をトップアイドルに導くゲームなんだ!」
これって、そういうこと?
夢...なんだよな?
高木「Gacktくん!早速なんだが、これを持ってここに出掛けて欲しいんだ!」
彼が差し出したのは、ビデオカメラ。それもインタビューで使うようなやつ。
Gackt「え?プロデューサーじゃないの?」
高木「アイドル達皆に、いわゆるドッキリというものをし掛けたくてね。今日一日はカメラマンとして活動してもらうよ!」
春香「ふぅー。今週はテスト週間で学校半日だし、すぐに事務所に行けるね!
...そういえば、今日カメラマンの人が取材にくるみたいだけど、もうすぐかな?」
Gackt「君が春香ちゃん?」
春香「ふぇっ!?」
びっくりしたなぁ。何か凄いセクシーな声で話しかけられたと思ったら、その、す..凄いかっこいい人がいた!
春香「あ、あの貴方は?」
Gackt「君たち765プロのぷ..取材に来たカメラマンだよ。宜しくね」
春香「あ。...ハイッ!宜しくお願いします!
天海春香!16歳です!リボンがトレードマークで、後、あと、そのー...」
Gackt「大丈夫?質問に答えてもらえばいいからさ。あんま緊張しなくていいよ」
春香「は、はい!」
Gackt「2時間もかけて来てるんだ。頑張ってるんだね」
春香「はい。でも夢でしたから...アイドルになるの!」
この春香という子はとても素直で可愛らしい年相応の女の子だ。
だが、いまいちアピールポイントが少ないかな?
まあ、これがいわゆる「王道」というやつなんだろう。
ところ変わって事務所近くのコンビニに来た。
コンビニなんてほとんど行ったことなかったから、僕にとっては珍しい光景で仕方ない。
ましてや立ち読みなんて都市伝説かと思ってたんだけど。
その立ち読みをしている人の中に取材対象の子がいた。
余程集中しているのか、こんなでかいカメラにも気づいていないようだ。
とりあえずこの子に話しかけてみた。
「君が菊地 真ちゃんかな?」
いきなり話しかけられて驚いたのか
「わあっ!!」
こっちも驚くほどの動揺を見せた。
「どうしたの?」
その女の子は見られたくないものを見られた、という感じでこちらを覗く。
雑誌で顔を隠しながら俯き加減に自身の内情を語ってくれた。
「あ、あのボク…どう見えますか?」
「え?」
「お、男っぽく見えませんか?」
…ああ。そういうことか。彼女は確かにボーイッシュだ。
だが、男には到底見えない。
顔を赤くして雑誌で隠す仕草なんて、まるで思春期の女の子がやることじゃないか。
「僕の目には、可愛らしい女の子しか映ってないけどなあ」
「ええええ!?/////」
三浦あずさ。
765プロの社長曰く、彼女は方向音痴らしい。
今も事務所に来るはずが、遠く離れた隣町まで来ていた。
これは方向音痴とかそういうものではない気がするんだけど…。
「すいません。道案内までしていただいて」
彼女は申し訳なさそうに呟いた。
何だか随分大人びた印象を持っている。
21歳だったか。僕はどんなだったかな。もっと遊んでた気がする。
「でも、ここまで方向音痴じゃなかったなあ」
「面目ありません…」
高木社長の話によると、今外に出ているアイドル達は彼女達三人だけらしい。
というわけで、事務所まで戻ってきた。
だが何だろう、僕は質問する側なのに、今二人の女の子達に質問攻めにあっている。
「双海 真美!」
「双海 亜美!」
「「で~す!!」」
「それは知ってるよ」
僕はぶっちゃけ、女の子の扱いはそこまで上手くはない。
こういう子達と話すのは初めてだし、正直苦手だ。
「ねーねー!随分イケメンだけど、もしかしてアイドルなの~?」
「アイドルの出張番組だったりして~!」
「「んっふっふ~」」
ああ…男だったら、ほんとぶっ飛ばしてたかもしれない。
「ねーこのカメラ真美達にも触らせてよー」
「ねーねー」
ほんと、女の子は怖いなぁ。
「こら!!真美に亜美!!取材中の人にちょっかいを出さないの!!」
左奥から物凄い怒鳴り声が聞こえてきた。
振り向くと、デスクに座っていた眼鏡をかけた女の子だった。
「すいません。ウチの子達が…」
「いいよ。気にしてないから」
申し訳なさそうに何度も平謝りしてきた彼女、秋月 律子。
彼女にも焦点を当ててみる事にした。
良スレwwww
「じゃあまだ、仕事が無いんだ」
「はい…お恥ずかしい限りです…」
彼女はプロデューサーだという。
こんな若い子がどうして、という質問は野暮かと思い、言わない事にしといた。
「そうだ!あの…少し待っていてもらってもよろしいですか?」
律子はそう言いながら席を外し、給湯室へ入っていった。
お茶を出してくれるのかな?ありがたくもらっておこう。
そう思っていると、給湯室から出てきたのは律子だけではなく、まるで仔犬のように震え、怯えている様子の女の子。
お茶を乗せたお盆からカタカタという音が聴こえる。
何となく、この後の結末が予測できたので、身構えることにした。
「あ…あ、あのあのおおお茶をおお持ちいいたたしまししたたたた…」
「ほら雪歩!怯えてないで、シャキッとしなさい!」
律子は後ろで応援している。
こっちの身にもなってはくれないだろうか。
「…ありがとう。怯えなくていいから、ゆっくり置いてね」
「ははははいぃぃ…」
すでにお茶は1/3ほど零れていた。
ガクトもアイマスも好きな俺歓喜
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
律子は何度も頭を下げ、後ろでは真が雪歩、とやらをなだめていた。
僕はというと、シャツを変えるハメになっていた。
この事務所が売れない理由が何となくわかる気がする。
僕にあの子のプロデュースを依頼されたら、かなり渋ると思う。
すると、事務所のどこからか、褐色の肌をした女の子が泣きながら出てきた。
「おーい!ハム蔵!自分が悪かったから出てきてくれええ!!」
彼女は恐らく、我那覇 響という子だろう。
名簿に目を通した時、沖縄出身ということで何となく覚えていた。
ハム蔵とは何だろうか。ハムスターなのかな?
「君は、我那覇 響ちゃん?」
「ん?自分を知ってるのか!?いやー有名になったなー!」
「違うわよ、この方は今日取材に来てくれたカメラマン!あんたのことも名簿に書かれてたから分かっただけよ」
律子がたしなめる。まあその通りだから訂正の必要は無いんだが。
「そ、そうなのかぁ」
喜怒哀楽が激しい子だというのは分かった。
その時事務所の扉が開いた。
入ってきたのは、ウサギのぬいぐるみを持った女の子だった。
一目見て何となくだが、お金持ちの子供、という印象だった。
「ちょっと律子!うるさいわよ!何の騒ぎなの…!?」
律子に何か言おうとした後、僕と目が合い、彼女はいきなりスカートの両端を摘まんで、お辞儀をしだした。
「どうもはじめまして。水瀬 伊織です」
もう遅い、というのはここにいる皆が思っただろう。
「今日は765プロの取材なんですね!私を撮りにきてくださったんですか!?」
伊織はこうすればウケが良いだろう、と思っているのかもしれないが、それはごく一部の人間だけだ。
僕はそういうのが嫌いだ。だからいつも全力でLIVEだってやってきたんだから。
「いつもの君でいてくれないかな。演技で会話されても嫌なんだ」
すると、彼女の頬がビクついた。
恐らくプライドを傷つけてしまったのだろう。
だが、それで良い。正直なほうが、全力で物事にぶつかることができる。
「君はどうしてアイドルに?」
「そ、そりゃあスカウトに決まってるじゃない。私をスカウトするなんてお目が高いわ!」
恐らく、これも演技だろう。
いや、コネで入ったのは知っている。
だが、今のはただの強がり。まるで自分に言い聞かせているようだった。
この子は、見た目通りの女の子ではない、というのはすぐに分かった。
「如月 千早です。アイドルには興味がありません」
「じゃあ、どうしてこの事務所に?」
「歌のお仕事が貰えると聞いたので…」
そう言った彼女は千早という女の子だ。
先程の伊織とは打って変わって、自分の見た目やいわれなど気にしないような感じだった。
ここまで言うなら相当歌に自信があるのだろう。
プロデュースの時には、詳しく見てみたいものだ。
僕はこの子に少し興味が湧いた。
「じゃあアイドルはあくまで通過点。ということでいいんだね?」
「そうですね。そうとっていただいて構いません」
この子は面白い。僕に対しても全く物怖じをしない。
恐らくそれ相応の実力はあると見た。
>>38
いいねぇ
千早さんのその感じはがっくんの琴線に触れそう
「あの、Gacktさん!今からCDの店頭販売に行きますので、一緒にきていただけませんか?」
音無 小鳥。ここの事務員をやっているらしい。
でも、彼女も十分可愛らしい。アイドルだと言われても疑問は無い程に。
勿体無い、と思うのは僕だけではない筈だ。
無名のアイドルの店頭販売。
よく考えたら、今の光景にも頷ける。
安そうな机に、二つのパイプ椅子。
CDのジャケットもかなり適当。
おまけに事務員まで駆り出されている。
「あはは…深刻な人手不足で…」
なるほど。これじゃあ律子も小鳥もアイドルなんてやってられなくなるだろうな。
それと同時に、これからの僕の労働を考えると、凄まじい光景が目に浮かぶ。
「結局、二、三枚しか売れませんでしたね…」
春香はため息混じりにつぶやいていた。
買っていってくれたのは、アイドルなんて言葉すら知らないようなおじいさんやおばあさん。
「若いのに頑張ってるねぇ…孫に聴かせてあげたいから、一枚おくれ」
何だか、隣でカメラマンをしている僕が一番恥ずかしかった。
けれど、誰だってはじめはこんな感じだ。
珍しい事ではない。
「そういえばGacktさん。貴音ちゃんには会いましたか?」
四条 貴音。
銀髪で、背も高く、スタイルも抜群という子らしい。
正直、僕が一番見てみたい女の子だ。
はずだった。
丁度春香と小鳥が店頭販売をやっていた本屋の近く。
ラーメン屋から彼女は出てきた。
多くの見物客を引き連れて。
「君は、貴音ちゃんかな?」
ゆったり、と振り向いた彼女は、確かに美しく、まるで人形のようだった。
けれど、頬についたナルトを見た瞬間に僕の中の四条 貴音は音を立てて崩れ去った。
むしろ好感度アップしそうだけどなw
「…失礼ですが、貴方は…?」
「貴音ちゃん。この人はね、今日765プロを取材しに来てくれた、Gacktさんよ!」
「なんとっ」
貴音は少々驚いた様子で僕を見た。
「誠に見苦しい所をお見せしました。申し訳ございません」
礼儀作法をよく知っているようで、深々と、ゆったり頭を下げた。
しかし、ラーメンを抜きにしても、この珍しい出で立ちは中々いない。
期待は大きかった。
事務所へ戻ると、ソファで寝ている金髪の女の子を発見した。
誰かはすぐに分かった。
だって僕の親友がプロデュースしている子なんだから。
「あふぅ…星井 美希。15歳なの。アイドルはテキトーにやれれば良いかなあって思ってzzz…」
「あーミキミキ!寝ちゃダメだってば!」
YOUには悪いけど、僕はこの子が一番苦手なタイプだ。
>>49
でしょうねwww
だが、このプロポーションは確かに優れたものだと思う。
いかんせん性格に難があるみたいだが。
こんなことならYOUから助言を聞いておくべきだった。
「…ウォッホン!!…えーみんな、今日集まってくれたのは、君達に伝えておくことがあるからだ!」
一同「?」
「実は、新しいプロデューサーがやってくることになったんだ!」
「そして、そのプロデューサーは
何を隠そう、今日君たちを取材してくれていた、Gackt君なんだ!!」
一同「ええええええええええ!!!!!?」
これはビビるわ
「えー…あの時は、少々驚きましたが、さあGacktさん?改めて新プロデューサーとしての抱負をどうぞ!」
夢であって欲しかった。
あれから、僕の財布に入っていた免許証に書いてあった住所に行くと、今までの家の1/10もない一軒家が建っていた。
ちなみに、金銭に関しては何も変わってはいなかったが。
唯一の救いは、風呂とトイレが別れていることくらいか。
がっくんがんばれ
だがこうなってしまってはもう、開き直るしかない。
全力で彼女達のプロデューサーを引き受けようじゃないか。
「…僕は、君達の、ほんの少し先をゆく先輩でしかない。
だけど、君達が全力でぶつかってきてくれるなら、僕も全力でぶつかっていく。
心と心の交流さ」
一同「…」
「どうせ狙うなら、一番だよね」
僕の声に、律子が苦笑いする。
「自信満々な割には、静かですねぇ…」
「…お前達に、一つだけ助言をするよ。
人生に迷ったときは、難しい方、困難な方を取れ。
これ、基本だ。その方が同じ時間を過ごしても得られる物が多いから。
だから、どうせやるなら、一番が良いよ」
「…!そうですね。参考になりました!さあ皆!!目指すはトップアイドルよ!!」
一同「おおー!!!」
もう負ける気がしない
第二話
765プロダクションのプロデューサーになり、二日目。
芸能界の基本は大体知っているので、そういった面で苦労することは無かった。
「律子。小鳥。ちょっといいかな」
「はい?何でしょうか」
二人が寄ってくる。
両手に花、というのがこの場合生かされる言葉なのかもしれないが、今の僕にはどうでも良かった。
「宣材写真なの?これ」
そこには猿の着ぐるみや変顔、無表情やぶりっ子まるだし、泣きじゃくる顔など、もう目も当てられないような感じだった。
「ああー…完全に忘れてました」
小鳥があちゃーとジェスチャーをする。
一体誰がこんなのを許可したというのか。
「社長ですよ」
ああ…彼なら許可するだろうな。
「…律子、宣材、撮り直ししようか」
「ええ…でも、今でも予算切り崩してるのに、宣材撮り直す余裕なんて…」
「なら、これテレビ局に持ってく?僕なら破り捨てるよ」
「妙にドスの効いた声で言わないでくださいよぅ…」
いけない。少々怖がらせてしまったみたいだ。
律子の眼鏡の向こう側の瞳がうるんでいた。
「と、いうわけで宣材写真を撮り直します」
皆、それぞれ違う反応だった。
面白いから良い。とか
あれじゃあ流石にね、とか
だが、とりあえず、僕の監修の下で写真を撮り直すことになった。
「ねーねーいおりーん。どお?あずさお姉ちゃんくらいあるっしょー?」
「ちょっと黙ってなさいよ!ええと、セクシーさと可愛らしさと…!」
「伊織ちゃーん…私もこれ着るの?」
「いいじゃんいいじゃん!何だかセクチーだよ~?」
正直961プロの方が合ってると思うの
>>61
それはありそう
「いいねぇほら、そこで笑って!」
「はいっ!」
真のスマイルに、女性カメラマンが気絶してしまった。
流石、菊地 真。持っている武器は活用すべきだと思う。
すると、後ろから雪歩の叫び声が聞こえた。
「!?」
後ろにいたのは、ちびっこ四人組。
だったもの。
口紅が耳までついて、胸にはタオルが詰め込まれて、衣装はビリビリに破られていた。
まるで妖怪人間だった。
「…もう、怒らないでよ。悪かったから」
別に怒ってはいない。少し本音を話しただけだ。
随分ダメージが大きかったようだ。
「で、背伸びした結果があれなんだ」
「じゃあ、他にどうしろっていうのよ…」
僕も今まで、写真をとられたことはいくらでもある。
その時、僕は何を気をつけていたか。
まずは体型。余分な肉があってはいけないと二週間の絶食だってした。
後は顔。常に余裕を持った表情で臨んだ。
でも、一番は。
「変に飾らないことかな」
これだと思う。
やよいに目を向ける。
「やよいはいつものカエルの財布でいいんだ。じゃないとやよいのイメージが崩れてしまう」
「うっうー!あれ、春香さんがくれたんですよ!」
そう、この屈託の無い笑顔でいいんだ。貧乏でも、辛くても気にしない底抜けの明るさがやよいにはあるのだから。
「真美も、亜美も、いつものやかましさでいいんだ」
「やかましさってなにさー!」
「亜美達そんなうるさくないぞー!」
そう。この元気いっぱいな子供らしさ。これが双海姉妹の長所なのだから。
やっぱ961っぽさ抜けないガクトさん
「ほら、皆ちゃんとできるじゃないか。伊織。お前はどうだ?」
「私の、イメージ…」
「僕はお前達とあまり交流は無い。でも、だからこそ、客観的な発言もできる」
僕が伊織に最初に抱いたイメージ。
それは、この子は本当は自信が無い、ということ。
わがままはそれを隠すための強がり。
強がりが出来るのは何故だろう。
僕には分からない。
「だから、お前の親友に聞けばどうかな?」
そう言って僕は、ウサギのぬいぐるみを本来の持ち主に渡した。
「シャルル…」
「シャルルっていうのか。だったらシャルルに力を貸してもらえばいい。そうする事で見えてくるものもあるさ」
「…うんっ!」
その笑顔は、とても優しい笑顔だった。
眠い寝る
>>66
イメージカラー黒だもんな
書き終わったら投下してくれ
おやすみ=
第三話
「お仕事ですか!?」
律子がまさか、という表情で立ち上がる。
そのまさかだ。ついに仕事をとってきた。
だが、その仕事といっても、仕事と呼べるかは彼女達次第だった。
キタ━(゚∀゚)━!
765プロ初めての仕事は、地方での営業。
物凄い田舎での、小さな小さなLIVE。
ここに来る前の僕だったら、何とか番組の一つや二つ出してあげられたかもしれないが、今の僕にはその地力すらない。
だから、これが精一杯。
彼女達はというと、初めての仕事というだけで、興奮していた。
だが、社用車に乗って、何時間もかけて下る山道に、次第に表情が曇っていった。
「あのー…プロデューサーさん?地方での営業とは聞いてましたけど…」
春香が不安気な顔で聞いてくる。
もしかしたら、とんでもない所に連れていかれるのか、はたまた売り飛ばされるのかなんて思っているのかな。あはは。
僕は意味深な笑みで黙秘を貫く事にした。
「話には聞いてたけど…」
「すごーい田舎だねー」
伊織や真美達が物珍しそうに見回す。
彼女達には全く縁が無い場所なのだろう。
自分の子供時代を思い出して、微笑ましく感じた。
出身は沖縄だっけガクトさん
「あー!756プロの皆さん方!今日はこんな田舎に来てくださって!ありがとうございます!」
代表だろうか。少々訛った言葉で話しかけてきた。
この田舎には施設というものが少ない。
だからあまり豪勢な設備や食事は無い。
それでも仕事は仕事。
一生懸命取り組まなければならない。
>>76
そだよ
案内されたのは、小学校の家庭科室みたいな場所。
聞いた所によると、僕らの人数が把握できていなかったらしい。
まあ、プロダクションの名前も覚えてないんだから、何となく予想はしてたけど。
「ったくなんで私達がこんなことをしなきゃいけないのよ…」
伊織がぼやきながら野菜を刻んでいく。
やよいはまるで孫でもあるかのように年配の方々に溶け込んでいた。
高校生組は、舞台を手伝っているらしい。
そして、一つ心配事があった。
「おーい!大変だ!萩原さんが倒れちまった!!」
屈強な男性スタッフが慌てて僕の所に飛び込んできた。
原因はすぐに分かった。
「じゃあ、雪歩はアイドルで男性恐怖症を治したいんだ?」
「はい。そうなんですけど…」
真と僕と、ベッドで寝込んでいる雪歩。
これで本当に治す気があるのだろうか。
「前にも言ったけど、可愛いだけじゃアイドルは勤まらない。雪歩がこのままでいるつもりなら、僕は辞める事を進めるよ」
真にそう告げる。
言い返そうとしているが、言葉が出ないのか唇を噛んで俯く。
厳しいようだけれど、それがプロの世界だから。仕方ない。
「けれど、雪歩に頑張る意思があるなら、僕は手伝うよ」
うんうん唸っている雪歩に、聞こえているかどうかは分からないが、そう呟いた。
「おにぎり美味しいの!」
美味しそうにおにぎりを頬張る美希。
今の年代の子にしては珍しい。
新しい発見だった。
「プロデューサーはお昼食べないね。お腹すかないの?」
「昼は食べないんだ。後炭水化物はとらないようにしてる」
おにぎりを差し出してくる美希を制止し、席を外す。
やっぱり僕はこの子が少し苦手だ。
でも美希には、いわゆるカリスマ性があることが分かった。
さっきまで寝ていたのに、舞台に立つや否や観客をドッと湧かせていた。
問題はモチベーションが続くかどうか。
そんなことを考えていると、後ろから春香と真が走ってきた。
>>83
米は喰わないんだったなw
「大変ですプロデューサー!雪歩が…!」
「また倒れたの?」
春香が首を横に振る。
だったらどうしたのかな。
「舞台に立たないって…」
ああ。そういう事か。
でもわがままを言うと
ミスった
わがままを言うような子じゃない
ってやっといて
とりあえず、真と春香だけ舞台に立たせて、僕は雪歩の所に向かった。
社用車の所で座り込んで泣いている雪歩が目に入る。
何て言葉を掛けようか、正直迷っていた。
「プロデューサー。私、アイドル辞めますぅ…」
雪歩が嗚咽混じりに呟いた。
「そっか。辞めるなら止めないよ」
雪歩がハッとして僕の方を振り向く。
やっぱり彼女も思春期の女の子、という事か。
引き止めてくれないのか、と考えているのは一目で分かった。
アイドルを辞めたいわけじゃない。
でも男性恐怖症は治らない。
だから、辞めるしかない。
でも辞めたくない。
そんな感じだろう。
だからこそ、僕は選択権を彼女に委ねる。
僕は成功への後押しはするが、失敗への一押しはしない。
引き止めることもしない。
雪歩はますます不安気な顔になる。
「男が怖くて仕方ないなら、この仕事は出来ないし、任せられない。これからもそうだし」
「そう…ですよね。私なんて…」
「最後に聞くけど、男性恐怖症を治す気は無い?」
「あります!!…だから私、アイドルに…」
「じゃあ今日、男がいる中でLIVEできる?」
「…」
「頑張るとか、そんなんじゃない。やるか、やらないかだよ。
皆苦手なものはある。けど、それを押しのけていくんだ。
でも雪歩は挑戦すらしてない。
自分はこんなもんだって決めつけてる」
「プロデューサー…」
「もし雪歩が一日でも妥協していいと思ってしまったら、
それは雪歩を見に来ている人に対して失礼だし、そういう姿を見せることで、雪歩自身を否定することになってしまう」
「…私、これからも迷惑ばかりかけます」
「知ってるよ」
「こんな私を、プロデュースしてくれますか?」
「だからここにいるんじゃないか」
「じゃあ…指切り、してください」
「…いいよ」
今北産業
765っぽくねえなやっぱwww
>>92
ガクトが
寝たら
765プロに居た
指切りが終わると、雪歩の目に光が戻った。そんな気がした。
ふと、スーツの内ポケットに何か異物を感じる。
「CD?」
僕の曲が書かれたCDが、内ポケットに入っていた。
これは一体どういう事だろうか。
…そういえば、音響あったなぁ。
たまには、こういうのもいいかな。
「雪歩、僕と一緒に舞台に上がろうか」
「え…?」
『どうすんの真!もう時間なくなっちゃったよ!』
『わかんないよ!プロデューサーに任せるしかないだろ!?』
「千早、このCDかけといて」
「え?は、はい」
雪歩を連れ戻しにいったプロデューサーさんが戻ってこないまま、LIVEは終わろうとしていた。
照明も消えていく。
プロデューサーさん。雪歩を辞めさせちゃうのかなぁ…
そんなことを思っていると、聴いたことがない曲が流れだす。
聴き覚えのある声で歌っている。
後ろから出てきたのは肩を組んだ雪歩とプロデューサーさんだった。
曲「君のためにできること」
「が、Gacktさん、なにやってるんですか…!?」
私、四条 貴音と申します。
今、私の隣で律子嬢が驚きの顔をしています。
そしてもう一人、私の隣にいる千早は、目を見開いてプロデューサーを見ています。
何という甘美な歌声でしょうか。
そう感じたのは私だけではないでしょう。
観客の皆さん方や他のアイドル達も、彼に釘付けとなっております。
しかし、焼きそばが美味しいですね。
しかし、あの雪歩が肩を組んでも気絶しないとは珍しいこともあるものです。
それどころか、笑顔でプロデューサーの近くにいらっしゃいます。
きっと、プロデューサーが魔法でもおかけになったのでしょう。
ふふ。真、面妖な方。
いえ、面白い殿方が、プロデューサーになったものですね。
千早の目がここまで輝いているのも、きっと彼の魔法なのでしょうね。
これからが楽しみです。
「いやー兄ちゃんすっごい歌上手いんだねー!!真美達興奮がとまんないよー!」
「そーそー!何かやってたの?」
「何もやってないよ」
この世界ではね。
「あんた達、ちょっと静かにしなさい。雪歩も美希も寝てるんだから」
「そうね、伊織の言う通りよ。二人とも。
…千早も少しは落ち着きなさい」
律子に制止されるほど千早は興奮していた。
本当に僕は、この世界じゃ一般人なんだな。
一からやり直すのか。あはは。
悪くないかな。
さっきのCD。
何か条件を満たせばまた新しいのが出てくるってことかな。
だったら、ちょっと面白い。
ゲームみたいじゃないか。
きっと、神様からの贈り物かもしれない。
これからが楽しみだ。
「!?ああー!Gacktさん!寝落ちしないで!!運転中でしょうが!!」
>>103
いいねえ
第四話
「打ち上げ旅行?」
社長の言葉に律子が疑問符を浮かべる。
ついこの間初仕事を終えた分でいきなり慰安旅行とはどういうことか、と。
相変わらず、この人の考えてる事はよく分からない。
「旅行は良いけどさ。予算はどうするの?」
この事務所の予算じゃよくて日帰りのホテルくらいだろう。
まさか一般人の民宿じゃあるまい。
「いやー面目ない。民宿をとっておいたから、そこで二泊三日の旅行だよ」
…そのまさかだったようだ。
「わー!凄い凄い!綺麗な海だねぇ千早ちゃん!」
「貴方アイドルでしょ?もう少し自覚を持たなきゃ」
そう。彼女らはアイドル。
知名度こそ無いが、それでもアイドルなのだ。
あまりこういうところには行かせるべきではないと思うのだが。
それでも彼女達が笑ってるなら、いいかな。
「ねーねー兄ちゃん!一緒に泳ごうよ!」
「ほらそんな服脱いでさ!ね!?」
双子が僕を連れて行こうとする。
でもあまり日には当たりたくないなぁ。
仕方ない。少しだけ、泳ごうかな。
「おおっ!凄まじい細マッチョ!」
「あ、あのー…プロデューサーさん。ちょっといいですか?」
「?…何?」
あずさが僕の方に向かってくる。
後ろには若い男が二人。
大学生だろうか。
ああ。そういうこと。
「あ、彼氏さんですか?ちょっと可愛いから、一緒に遊びたいんですよ!いいっすか!?」
威嚇するように僕に話しかけてくる。
僕も昔はこんな感じだったかな。
いや、もっとたちが悪かったっけ。あはは。
「すいません。プロデューサーさん。私が皆とはぐれなければ良かったのに…」
「いいよ。ああいう男はちょっと叱れば分かってくれるから」
「ちょっとじゃない気がしますが…」
確かにちょっとやりすぎたかな。
後ろで伸びてる二人を尻目に、また泳ぎにいくことにした。
>>110
がっくんは若い頃絶対ろくでもなかったねwww
露天風呂、というより、ただ外が見えるお風呂に浸かっている。
でもあの家の風呂よりは少しだけマシかな?
それに解放感もある。
美希が入ってこなければ、もう少し気分良く入れたかもしれないかな。
「プロデューサー。あんま驚かないね。見慣れてるの?」
「そうだね。美希もそのうち分かるようになるよ」
「んー美希はテキトーにやっていけばいいかなって思うな」
そのテキトーって言葉、僕は嫌いだ。
任された事を全力でこなす。
凄い良い事じゃないか。
この子はいずれつまずくだろうなと思いながら、耽ることにした。
「あ、あのーGacktさん!お酒を買ってまいりました!」
あのLIVEから千早は僕の事をプロデューサーでは無く、Gacktと呼ぶようになった。
どういう心境の変化かは分からないけど、突っ込むのも野暮だと思う。
それより未成年でもお酒が買えることに驚きだったが。
「ブランデーにウィスキー?Gacktさん。飲み過ぎはいけませんよ?」
まだ律子には分からないよ。
あずさと二人で飲み交わすことにした。
がっくんはこういうのだと自分の決めた女以外は手を出さなそう
「不思議ですね。プロデューサーはとてもカッコ良くて、何でも出来て…もっと大きなプロダクションに行ってもおかしくないのに」
僕自身、そんなつもりはないのだが、そうと言われればそうなんだろう。
「たまたま来たのがお前達の所だったんだ」
これは本音。
僕に選ぶ権利は無かったのだから。
でも、結果オーライと言われればそうかもしれない。
まだスタートしてすらいないんだ。
それってつまり、僕のオリジナルプロダクションみたいなものなんだから。
本当の意味で、僕の力が試される。
いいじゃないか。あはは。
「…笑った顔も、素敵ですね」
あずさはそう言うと、酎ハイの残りをチビチビ飲みだした。
まただ。
内ポケットに何か異物感。
何だろう。…いや、わかってる。
次は何の歌だろう。
懐かしいやつとかあるかな。
「CD?それ、何かの音楽ですか?」
「…うん。そうだよ」
これか。ちょっと懐かしいかな。
旅館に行ったらかけてもらおう。
曲 ありったけの愛で
「あらー…何だか自分のことみたいねぇ」
あずさは赤い頬をさすりながら聴いてくれている。
千早に至ってはメモに何かを書きなぐっているようだ。
皆この曲は知らないはずなのに、何時の間にか手拍子までやっている。
そう。お前達にはこれくらいのレベルになってもらわなくてはならない。
だから皆、頑張って。
「ねぇ。プロデューサーさん。誰を守ってくださるんです?」
「今は、お前達全員、かな?」
youtubeから音源貼ればいいかもね
>>120
http://www.youtube.com/watch?v=C8S-ckjKFhY&feature=youtube_gdata_player
http://www.youtube.com/watch?v=hohLjsnp0_8&feature=youtube_gdata_player
おお何か間違えた
第五話
「ええともやし一袋38円、ネギが一本86円…」
「あれ、なにやってんの?」
やよいの家が貧乏だという事は何となく分かっていたが、何故やよいが家計簿をつける必要があるのか。
「やよいはお父さんが仕事探し中だから、あの子がやらざるを得ないのよ」
伊織がハムスターを見る目でやよいを見つめている。
やよいの保護者とは、一度話し合わなくてはならないかもしれない。
「やよい。今晩は暇か?」
「う?今日は、そのー…」
何だか歯切れが悪い。
ふと家計簿のページを見ると、そこには一週間後までの晩御飯まで書かれていた。
つまり、今日、仕事が終わってからがやよいの本業なのだろう。
「タイムセール?」
「はい!お野菜が安く買えるんです!」
僕には全く分からなかったが、やよいにはわかるんだろう。
でも、こんな生活をしていると、やよいの将来の為にならない。
そう思った僕は、やよいの買い物に付き合う事にした。
「駄目ですよプロデューサー!そんな乱雑にポイポイいれちゃダメです!!」
?僕は普通に商品を入れてるつもりなんだが。
「1500円のお肉が10個も…それだけじゃなく、高い調味料やお野菜まで…こんなの買えませんよ!」
「大丈夫だよ。僕が出すから」
このくらいの出費なら安いものだ。
この子もたまには贅沢させてやらなければいけない。
「でもプロデューサーに悪いです…」
気にすることなんてない。
それに。
「こういう時は男が出すものだから」
「?」
こんな純粋な子に会ったのも久しぶりだから。
「着きましたー!」
やよいの家は、正直大きいとか、小さいとかじゃなく
それよりもオンボロだった。
地震が来たら真っ先に壊れるだろうな。なんて不謹慎かな。
「あら。随分遅かったじゃない」
「お腹すいたぞー!」
「響、伊織か。来てたんだったら連絡はいれてくれ」
「えへへ!サプライズってやつだぞ!」
「うわー、すっげー良い匂いするぞこの兄ちゃん!」
「こら長介!!失礼でしょ!!晩御飯もプロデューサーがだしてくれたんだから!!」
長介というんだ。
良かったね。お姉さんが止めてくれなかったら、鼻の傷が一つ増えたよ。
「すっげー!これ本当に食っていいの!?」
「わー初めて食べるよこんなの!」
訂正。この子達には勝てそうもない。
「じゃあ、やよいは一人で家事もこなしてるのか」
「はい!大変だけど、頑張ってます!」
「えらいな」ナデナデ
「えへへ…」
「ぐぬぬ…」
「伊織、箸が壊れるぞ…」
「…」
やよいの弟、長介の様子がおかしい。
さっきまで肉にしか目がいってなかったはずだが。
「長介。どうしたの?」
やよいの言葉も届いてないのか、ゆっくり食べ続けている。
「長介、返事は?」
…ああ。よく分かった。
「やよい。長介も考えることがあるんだ。それぐらいでいいだろう」
「んー…」
長介はきっと、恥ずかしいんだろう。
姉のお世話になり続けている自分が。
それを見られてしまったことが。
男なら何となく気持ちはわかる。
「でも、本当に助かりました!プロデューサーさん!ありがとうございます!」
「いいよ。たまには贅沢しなきゃ」
バンッ!
…机を叩いたのは、長介だった。
「こら!長介!何やってるの!?プロデューサーに謝りなさい!」
「うるさい!プロデューサープロデューサーって、そいつが好きなら、そいつの子供になれよ!」
「長介!」
「…~!!」ダッ
ほんと、子供って難しい。
「響!、見つかった!?」
「んーまだだぞ。伊織の方は?」
「それが、どこにも居ないのよ。やよいもこんな感じで…」
「うう…長介ぇ…」
子供じみた嫉妬。
子供だから仕方ないか。
でも、お姉さんに言っていい言葉ではない。
それは言っておかなければならない。
「あんたも少しは探しなさいよ!!!」
「このまま長介がいなくなったら、私、私…」
「あーもうやよい、泣かないの!ほら鼻水拭いて」
「あぅ」
「別に探さなくてもいいんじゃないかな」
「え?」
「あんた!何言ってんのよ!!やよいの家族なのよ!」
「そうだぞプロデューサー!自分だってハム蔵がいなくなったら探すんだぞ!」
「いいんだ。探さなくて」
僕には分かる。
長介は探してもらいたいだけだ。
この家を出ていく気なんて無い。
だったらいるところなんてすぐに分かる。
だけど、僕からは救いの手は差し伸べない。
だってこれは、長介の為だから。
「でも、朝になっても戻ってこなかったら…」
「いいよ。僕が何とかするから」
伊織が何かを言いかけたが、僕の言わんとした事を察してくれたようだ。
静かにやよいを家にいれた。
響を無理やり連れて。
「…で、お前はどうするんだ。長介」
家の庭にある物置。
そこに彼はいた。
体育座りで、バツが悪そうな顔をして。
「お前のお姉さんは、お前の為に走り回って、顔中鼻水塗れだ。
そんな姿を見ても、お前は我儘を言い続けるのか」
「…」
「僕が憎たらしいかもしれない。
でも僕は今の生活のために死ぬほど努力をした。
でもお前は遊び呆けてお姉さんに迷惑をかけてるだけだ。
それで自分に我儘をいう資格があると思っているのか?
権利を出張するなら、少しは義務を果たせ。
少しは男らしくしろ」
「…!」
やよい編読んで一番がっくんで良かったって思ったかもw
「長介ぇ…」
「なあ伊織、プロデューサーに任せて大丈夫か?」
「あんたは黙ってなさい。あいつは出来もしないことを言うような奴じゃないわよ」
ガラガラ…
「…」
「…!?長介!!」
「姉ちゃん。ごめん。俺これからは姉ちゃんの役にたつ男になるから!だから、ごめんなさい!」
「いいの。長介が無事なだけで…」
何だか、はじめてのおつかいを見ている気分だった。
けれど、この姉弟の絆はより深まったと思う。
「あれ?何時の間にギターなんて持ってきたんだ?プロデューサー?」
…そう来たか。
コンポが無いんだな、この家。
「おーい!みんな!プロデューサーが歌を聴かせてくれるぞ!」
「「わーい!」」
子供達は本当に純粋だ。
でもいつしかバラバラになる。
その時の為に、長介は男にならなくてはならない。
曲 missng
http://www.youtube.com/watch?v=9mgT8cDDq0o
「今日はお世話になりました!ありがとうございました!プロデューサー」ガルーン
いいんだ。それに、長介と約束をしたのだから。
「兄ちゃん!俺約束するよ!姉ちゃんの代わりに、俺が皆のお世話する!姉ちゃんがみんなに自慢できるような男になる!」
彼はもう、大丈夫だろう。
これからはお前が支えてやるんだ。
そして、将来自慢してやれ。あのテレビに映るトップアイドルは
俺の姉ちゃんだって、な。
ガクトの曲ってやっぱカッコイイよな
第六話
「律子さんの竜宮小町、破竹の勢いですね!」
律子が提案したユニット、竜宮小町。
伊織、亜美、あずさの三人で形成されている。
まだまだトップとは言えないが、それでも事務所の売り上げには繋がっているだろう。
僕も、そろそろ動くとしようかな。
美希編かな?
「え?曲を提供したい?」
「うん。作詞作曲僕。歌うのは、…まだ決めてないや」
「でも、振り付けとかあると思うんだがね。…いや君のいう事だ。何とかしよう!」
「…それほんとなの!?」
扉から出てきたのは、美希だった。
最近やけに仕事熱心だと思ったら。
「テキトーはどうしたんだ。僕は全力で臨む奴にしか提供はしないぞ」
うぐっと美希は言葉につまる。
「で、でもこれからは改心しますなの!一生懸命やります!なの!」
ビシッと敬礼する美希。だけど、僕はもう大方の目星はつけていた。
「で、Gacktくん。曲はいつくらいに出来るのかね?」
「もう出来てるんだ。明日にでも書き起こすよ」
だって、今までの歌を書くだけなんだから。
僕の歌を彼女らが歌ったらどうなるのか。
見てみたくなったんだ。
ほほーう
「この歌は、…やっぱり、彼女が良いかな。
あの子のイメージにもあってる。
…まあ、バンド時代だけどね」
「これは、あの子かな…歌のレベルもあるし、丁度良いだろう」
「最後は…あの子かな」
「はて、私に歌の仕事ですか?」
「うん。貴音のイメージかな、て思って、作ってみたんだ」
「なんと!?貴方様の書かれた歌を歌わせていただけるのですか!」
貴音が僕の前で初めて笑顔になったなぁ。
この子、18歳なんだっけ?
笑顔、年相応じゃないか。
曲 月下の夜想曲
http://www.youtube.com/watch?v=e2dJowNtsps
「ふむ…何かみすてりあすで、ほらーな感じですね…」
そういえばこの子はお化けが苦手なんだっけ。
可愛いじゃないか。あはは。
「どう歌うかはお前次第だ。
振り付けは任せるよ」
「………嘘つき」
マリスミゼルキタ━(゚∀゚)━!
「歌のお仕事ですか!?」
千早は待っていましたと言わんばかりに、瞳を輝かせた。
僕の作った歌を歌う、という旨を伝えると、今にも飛び跳ねそうな感じ喜んでいた。
曲 BIRDCAGE
http://www.youtube.com/watch?v=T9BQn66LLS8
「なんだか親近感を覚える歌ですね…」
当然だ。
お前に合わせて選んだんだから。
それに、この子はロックという柄では無い。
何にせよ、これからの彼女次第、というところか。
「さて、後は…」
「プロデューサーさん!美希を見ませんでしたか!?」
春香が飛び込んでくる。
どうしたというのだろう。
「レッスン場に来なくて…連絡しても繋がらないんです!」
どうしたというのだろう。
風邪なら連絡してもらわなければ困る。
とりあえず、美希に電話する事にした。
『…もしもし。プロデューサー?』
「どうした。今日はレッスンだろ?サボりか?」
『…美希ね、もうアイドル辞めるの』
「…そっか。分かったよ」
『…じゃね』
「プロデューサーさん。美希は何て?」
「…星井、アイドル辞めるってよ」
「ええええええええええええ!!!!?」
やっぱり僕は彼女が苦手だ。
器用で、実力もある。
努力だってする。
だけど、年相応のわがままだってある。
正直、扱いづらい。
…でも。
「これ、無駄になるのかなぁ」カサ…
『U+K 星井 美希』
「美希ちゃん。アイドルやめてしまうんですか?」
あれから数日、美希は765プロに来ていない。
だが、辞めるにしても退職する為の書類を書いてもらわなければならない。
それをしない、ということはそういう事なのだろう。
「辞めるのなら止めないよ。それにアイドルの事務所ならここだけじゃない、いくらでもある」
「そんな!冷たすぎるじゃないですか!…美希ちゃんだって、本当は…」
分かっている。
けれど、彼女もプロなんだから。
それなりのケジメは必要だ。
やっぱり続けますだけじゃ通らない。
「美希次第だよ。またふざけた態度で僕のとこに来るなら、今度は僕の方からやめてもらうように言う」
「…」
小鳥だって分かっている筈だ。
この世界はそんな甘いものじゃない。
僕は雪歩の時のように、彼女に選択肢を委ねることにした。
今思ったんだけど、U+Kってお姫ちんでも良かったかな
ID変わっちまったけど続けます
「ねぇ…カモ先生。美希って、わがままなのかな?」
「美希、ただアイドルになってキラキラしたかっただけなのに…」
「でもプロデューサーも酷いんだよ?美希だってプロデューサーの歌好きだったの。
だから、美希もプロデューサーの歌、歌いたかったの」
「プロデューサーはきっと美希の事が嫌いなの。だから美希に仕事を持ってこないの」
「嫌ってるわけじゃないよ。
ただ、お前のヤル気を疑ってるだけだ」
「プロデューサー!?」
美希はここの公園にいるカモが好きらしい。
春香がそう言っていた。
恐らくここに行けば会える、と言うので、行ってみたらビンゴだった。
しかし、好き放題言ってくれるなあ
「…美希の事、クビにするの?」
「それはお前次第だよ。
お前がヤル気を出して臨む姿勢を見せてくれれば、今すぐこれをお前に任す」
「それ…美希の、歌なの?」
「そうだよ。でも、お前がまたこの間みたいなふざけた態度をするなら、今すぐこっちを叩きつける」
今、僕の左手には美希への歌。
右手には退職勧告の書類。
そういえば、神の左手 悪魔の右手なんて漫画があったなぁ。
美希からしたら今、まさに僕はそんな感じに見えてるんだろうな。
「美希の、態度次第…?」
美希が不安気な顔を覗かせる。
初めてなんだろうな、こうしてプレッシャーをかけられるのは。
「美希、どうしたらいいの?」
「自分で考えるんだ。それに僕は正直どっちでも良い。
それに765プロ以外にも、プロダクションは沢山ある。
そこに行って、やりたいようにやればいい。
成功するか、失敗するかなんて、僕には分からないから。
別に、765プロを辞めたからってアイドルとしての可能性が無くなるわけじゃない。
だから、どっちでもいい」
「…プロデューサーって、冷たいんだね」
「冷たいってのは、まだお前が自分の都合の良いように捉えてるだけだよ」
「……いよ」
「?」
「辞めたく…ないよ…!」
「何で泣くの?」
「だって……わかんない。悔しいのか、悲しいのか、辛いのか、全然わかんない!」
今、この子の本当の性格が分かった気がする。
ただ、楽しい事が好きなんだ。
…何だ、普通の子だったんだな。
少し、安心した。
「美希、ただ、キラキラして、幸せになりたかっただけなの!」
「ならさ、テキトーだなんて言葉、使わないでくれないかな?」
「?」
「自分が幸せになりたいなら、幸せになることをしようよ。
汗かいて、努力して、楽しい事を本気でやろうよ」
「プロデューサー…」
「お前の気持ちは分かったよ。もう泣かないでいい。
…女の本当の武器は、涙じゃない。心からの笑顔だから」
「…~!!…分かったの!プロデューサー!
…ねぇ。その歌、どんな感じなの?聴かせて?」
「…いいよ」
右手の紙は、カモ先生にあげるとしよう。
http://www.youtube.com/watch?v=tXQukBRbhac
「…じゃあ。この三人でユニットを組ませるつもりだったんですね。それならそうと、初めから言ってくれれば良かったのに…」
小鳥が安堵の溜息をつく。
だけど、いずれ美希にはああいうことをするつもりだった。
それが少し、早まっただけのこと。
いずれにせよ、僕の作ったユニットが誕生した。
名前はどうしようかな?
「ねえハニー?三人で歌うやつもあるの?」
「それはいずれ考えるよ」
「美希ちゃんのハニーってのには突っ込まないんですね…」
それも野暮、というやつだと思うから。
そうだなぁ…名前は、そうだ。
「Dears」にしよう。あはは。
第七話
『新ユニット、Dears!まさかのCD売り上げランキングベスト1、2、3位総取り!?』
「…まさか、765プロが…!忌々しい、高木の奴め!!!」
「どんな手を尽くしても、奴らを叩き落としてやる!どんな事をしても!!」
「しかし、Gacktさんには驚きました。
曲調は全くアイドルっぽくない上、ダンスは殆ど無し。
歌唱力のみで勝負するとは…」
「僕はLIVEバトルってのはよく分からないから。
それに、音楽は基本、聴かせるものだからね。
それに、あの三人は飛び抜けて歌唱力が良い」
律子とそんな会話をしていると、事務所の扉が開き、伊織が飛び出してきた。
「ちょっと、どういうことよこれ!?」
差し出してきたのは雑誌の表紙。
そこにあるのは、本来765プロが映る筈だったもの。
そこには、961プロのユニットが映っていた。
「こんなのひどいですー!みんな一生懸命頑張ったのに!」
やよいが舌足らずな声で起こっている
間違えたわ
怒っているにしといて
皆、やはり相当怒るものがあるのだろう。
だけど、僕のいたところではこんなこと、日常茶飯事だった。
だけどこれはチャンスでもある。
なんたって大きいプロダクションが圧力をかけてきたということは、向こうもかなりのプレッシャーを感じている、ということだから。
「大丈夫だよ。気にしなくて良い。こんなのはいずれ向こうに返っていくんだから」
「でも、出る杭は打たれるということでしょう?不安ですよ…」
「出る杭は打たれるよ。でも、出すぎた杭は打たれないから。
こいつらより売れればいいだけの話だよ」
「相変わらず凄い自信ですね…」
それより、今回はちょっと大きなイベントを作ることにした。
「竜宮小町、Dears、765の合同ライブを企画したんだ。
皆、見てくれる?」
さっきまでの不穏な空気が嘘だったかのように消え去り、皆一同、企画書に目を通しだした。
そうそう。つまらない妨害なんてほっとけばいい。
こういうのはいずれ向こうが困るハメになるんだから。
「随分大きな会場ですね。お客さんは取れるんですか?」
「取れるんじゃない、取るんだよ。だから、これから音楽番組でプッシュしていく」
「でも、また変な圧力がかかるかも…」
「それでも、来る人は来るさ。向こう側だってそこまで大仰にやれば流石に一般人にバレる可能性があるからね。
LIVEをやるって一言言ってしまえば、こっちのもんだよ」
この目論見は、どうやら的中したようだった。
チケットはなんと、売り切れ。
僕も自分の事のように喜ぶことが出来た。
「さあ!明日は本番よ!765プロ初めてのLIVEなんだから、皆気を引き締めていくわよ!!」
律子が拳を握り締めて言う。
そうだね。彼女の言う通りだ。
LIVEで失敗は許されない。
それは最早、歌手にとっての死を意味する。
だから皆、頑張って行こう。
「いやあ…君が来てからというものの、本当にこの事務所は素晴らしい飛躍を遂げたよ。ありがとうGackt君!」
社長とのサシの飲み会。
近所にあるバーで、飲み明かしていた。
僕も、この人の下で働くのも悪くないかな、と感じていた。
正直、事務所を大きくしてほしいという願望はあるが。
いろんな事を話していると、僕の横に座った紫色のスーツの男が話しかけてきた。
「やあ。これはこれは貧弱で脆弱な765プロではないか!金も無いのにこんなとこで飲んでていいのか?」
殴り飛ばそうかと思ったが、社長に止められた。
彼は黒井という男らしい。
961プロダクションの社長。
彼が圧力をかけてきた本人。
どうやらこの二人には何か因縁があるらしい。
面倒なので無視していたが、黒井が僕に話しかけてきた。
「あのシングル三枚を作ったのは君だと言っていたな。
確かに素晴らしい歌だったよ。
…これは正直な感想だ。
だがどうだね。高木の元では十分な給料も貰えまい。
そこで、だ。私の下で働く気は無いかね?」
「!?黒井、お前という奴は…!」
珍しく社長が声を荒げる。
「…確かに良い話だな。で、お前のとこにはどんな奴がいるんだ?」
「…!?Gackt君…」
「!…ふふ。そうだな、今の君の事務所より遥かに上の実力のある者達がいるぞ!どうだね、給料も好きな分だけ支払おう。破格の条件だと思わんかね?」
…美味しい話だ。
悪くはない。
正直、765に来た当初だったら考えたかもしれない。
でも、僕は。
「約束しちゃったからね。彼女達をトップにするって。
765をトップにしてから、また話を聞かせてくれるかな」
「!…それは、断る、という事でいいのかな?」
「ああ」
「Gackt君…」
社長がホッと胸を撫で下ろしている。
「…高木よ、これは忠告だ。この男は、お前の所に置くべきではない。今のうちに言っておく」
「大丈夫さ。私が見込んだんだから」
「…ふん」
…僕は正直、どっちかといえば、黒井の方が芸能界に向いていると思っている。
所詮テレビや雑誌という媒体からしか皆芸能人の事を把握できないのだから。
そして、また黒井も僕の事を何となく分かっているようだった。
「…あの男。面白い奴だ」
「黒井社長。どうしますかい?何だったら記事を捏造したって…」
「その必要は無い。いずれ大きな事件があるだろう。
…その時、高木はどうするか、だな」
「へ…?妨害はどうするんで?」
「口を慎め馬鹿者。…気が変わった。暫らくは自由にさせるさ」
「(あの男の目は、高木というより、私の目に近かった。
実力だけの世界で生き抜いてきた、あの目。
…恐らく、近いうちに765プロは崩壊するだろう)」
翌日
「しっかし、凄い雨ねぇ…間に合うかしら、これ…」
「!?もしかしたら、間に合わないかもしれないってこと!?」
「…あり得るわね。最悪」
「竜宮小町間に合わないかもしれないって…」
春香が顔を青くしながら僕に呟いてきた。
当日雨が降る事は分かっていたし、今日は竜宮小町の仕事がある事も分かっていた。
つまり、こちらの調整ミス。
ここに来て、僕は最大の失敗を犯してしまった。
観客が会場入りしてもうすぐLIVEが始まる。
初めは春香や雪歩達の歌。
その後、竜宮小町。
そして、Dears。
つまり、どれだけ多く見積もっても20分後には竜宮小町はスタンバイしなければならない。
だが、到底20分じゃあ間に合わないだろう。
こうなったら、Dearsを二番手に持っていこうかとも考えた。
だが、よく考えたら。
まだあるじゃないか。
最大の手が。
ここに。
「美希。真。響。貴音。お前達に頼みがあるんだ。聞いてくれるかな?」
「ハニーの頼み事?何でも言って?」
「あなた様の頼み事とあれば…」
「自分か?何でも任せて!」
「はい!何でも言ってください!」
「これから僕は無茶な要求をする。
だけど、出来なかったらアウトだ。
…それでも、聞くか?」
「「はい!」」
「…じゃあ。今すぐに着替えて。
春香達で後10分ほど抑えてもらうから」
「み、皆さーん!どうでしたかー!?」
「わ、私達も頑張りますから、もうちょっとだけお付き合いくださいね!」
「うっうー!ちゃんと竜宮小町の皆も来ますからねー!」
うう…正直もう限界です。
プロデューサーさん、まだですか?
そろそろ嫌な汗をかきはじめましたよ…
グイイイイイン…
「!?」
「え!?プロデューサー!?」
「兄ちゃんどうしちゃったの!?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「(響も真も貴音さんも美希も何で喋らないのー!?)」
観客「わああああああ!!…あ?あれ?」
ビシッ…ビシィッ…
グオオオオオン
観客「!?」
http://www.youtube.com/watch?v=Ef6wCuX__AE
「す、凄いですぅ…」
「み、皆さん何時の間にこんなダンス覚えてたんでしょうか…」
「それより、プロデューサーさんが、あんなLIVE慣れしてるなんて…」
「兄ちゃん、本当に凄い人なのかなぁ…」
「!?…はい。はい。わ、分かりました。もうすぐ着きますから、待っていてください!」
「どうしたのよ、律子」
「Gacktさんが…LIVEやってるって…」
「「!!!!?」」
「ちょっと、電話かして!…小鳥、どういうことよ!聞いてないわよ!?」
「私、千早よ」
「何代わってんのよ!どういうことか説明しなさい!」
「あなた達の時間稼ぎってことで、今、LIVEをしてるわ」
「~!!今すぐに行くから!もう少し持ちこたえてなさい!」
「…いえ、まだ良いと思うわ」
「はぁ!?どういう意味よ!?」
「お客さん、全員立ち上がってウェーブ起こしてるわ」
「…嘘でしょお?」
「あんな激しい踊りの歌の後でこんな激しい歌なんて…プロデューサー、凄いスタミナですぅ…」
「自分達、もう…ヘトヘトだぞ…」
「真、面妖な…」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ休むの…」
「ロボットダンスなんて、経験無いよぉ…」
LIVEから数日後
「申し訳ありません。その日はどうしてもアイドルの皆も出払ってしまってて…」
「あ、あの申し訳ありません。Gacktは765プロダクションのプロデューサーですので…」
「ああー!忙しいいいい!!」
「これじゃ休む暇なんてないですよおおおおお!!」
律子と小鳥が悲鳴をあげる。
まあ、嬉しい悲鳴というやつだ。
あれから765プロはかなり有名な事務所になった。
けれど、僕に対してのメディアの反応も珍しくはない。
まあ、ある程度なら許してあげようかな。あはは。
眠い寝る
また明日書きます
「あなた様、流石にそれはやり過ぎかと…」
貴音が少し眉を垂らして言う。
反射的にやっちゃったんだ。
仕方ないだろう。
まあ、カメラは取り上げられたから良しとしようじゃないか。あはは。
「ですが、助かりました。私だけでは逃げられてしまったかもしれません」
「いいんだ。お前達を守るのも、僕の仕事だから」
しかし、この程度で済んで良かったと思う。
貴音の一言がなければ、骨の二、三本は折ってたかもしれない。
また、内ポケットに異物感があった。
「…それは、私へのプレゼントですか?」
「そうだな。それと、僕へのプレゼントでもある」
そう。まるで今の僕へのメッセージみたいだ。
って何だか、僕が主人公みたいだな。
いや、僕でいいのかな。
僕の、物語は、僕が主人公なんだ。
http://www.youtube.com/watch?v=xkFC5FG6Xj0
「ふふ。あなた様。この歌、是非とも皆へも聴かせてあげてくださいな」
ああ。そうするよ。
でも、その前に。
「今日は、晩御飯を食べにいこうか」
お前と、一緒に。
…そうだなぁ…たまには、破ってもいいかな。
「ラーメンでも、食べに行こうか」
「…はい。あなた様」
第九話
『真の歯もスッキリ!ホワイトクリーン!!』
「はぁ…」
小さいテーブルにソファが2つ。
僕と向かい合わせに座る真が不意に溜息をついた。
「どうしたんだ。自分のCMを見て溜息をつくなんて」
僕だったら、ちょっと嬉しかったりもするのだが。
彼女はどうも違うようだ。
「んー…前から言ってるんですけど、ボク、もっと可愛らしい役がやりたいんですよー!
こんなんじゃ、ずっと真王子って言われ続けるじゃないですか!!」
良いじゃないか。生かせる武器は生かすべきだ。
しかし、本人は納得していないようだった。
「もっとフリフリの服きたり、魔法少女みたいな役をやったりしたいですよ!」
お前は、どっちかといえばライダーとか戦隊ものだろうな。
それに魔法少女になっても、物理攻撃しか思い浮かばない。
「もっと、キャピキャピした感じのCMだって…」
『真の歯もスッキリ!ホワイトクリーン!!』
『真の歯もスッキリ!ホワイトクリーン!!』
「ああもう!何で二回連続でやるんだよ!!」
「…世間のお前に対するイメージは、こうなんだよ。
それで今ブームになってるんだから、今そのイメージを壊すのは良くない」
「だったら、いつになったらやらせてくれるんですか…」
「まあ、アイドルを引退するくらいかな」
「けっこう年いってからのまっこまっこりーんはやばくないかなぁ…」
隣にいた春香が口を開く。
「春香まで!?うぅっ…春香にはわかんないよなぁ…僕だって、少しくらいなら真王子でも良いんだけど、そういった役しか来ないから、自分の中での葛藤が凄いんだよ…」
僕にもそういうことはあった。
真とは例が違うが。
音楽性の違い、どうでもいい喧嘩、いろんな事があった。
今真は、その局面にいるんだなぁ。
でも、どうすることも出来ないんだけどね。
翌日、音楽番組の収録があった。
そこには、あの961プロのアイドル達もいた。
彼らはジュピター、というらしい。
元の世界でいうと、ジャニーズみたいなものかな。
といっても、ここにはジャニーズ事務所は無いみたいだけど。
…改めて見ると、いや、あの格好のせいかもしれないけれど。
真、本当に男みたいだなあ。
「結局、今日も王子って呼ばれました…」
収録が終わり、真がボヤきだす。
まあ愚痴くらいならいくらでも聞いてあげるよ。
話を聞いていると、角を曲がった辺りで、あの三人組と出くわした。
「ん?お前ら、765プロの奴らか」
真ん中の男が話しかけてくる。
彼はどうやら礼儀というものを知らないらしい。
「あの、ボクは気にしてないですから、もうその辺でいいんじゃないでしょうか…」
「いででででで!!悪かった!悪かったから許してくださいいいいい!!!」
「ったく。驚いたぜ。しかし、765プロのプロデューサーは、作詞作曲までやってるらしいな」
まだ、彼はいじめられ足りないようだ。
「うぐっ…さ、作詞作曲まで出来るんですね…」
「そうだよ。でも、僕の歌は難しいから。普通のアイドルには歌わせない」
彼らが普通なのかどうかは知らないが。
「へぇ…じ、じゃあ、俺らにも提供はしてくれるんですか?」
そういえば、以前の黒井との会話を思い出した。
まあ、僕の目の前で自分達は普通のアイドルではない、と大見得を切るんだ。
実力はあるんだろう。
けれど。
「礼儀知らずには、提供したくはないなぁ」
「わ、悪かったよ!
…すいませんでした」
…冗談さ。
彼は少しいじりがいがありそうな奴だ。
そして、僕にも
途中でやっちまった
そして、僕にさりげなく提供を依頼してくるということは、彼らは歌詞、曲を聞いて良かったと思ったのだろう。
「お前達に、実力があるなら、提供してもいいよ」
「!?プロデューサー!?」
隣にいた真が信じられないといった表情で僕を見上げる。
でも、これは本音。
僕は、歌に関しては公正でいたいんだ。
何もかもを765に捧げるわけじゃない。
「そ、そうなんですか。じゃあ、俺達の実力、見てもらいますよ!」
ジュピターの三人組。
ちゃんと中身まで詰まっていればいいが。
「プロデューサー!どうしてあんな事を…!?」
そんな世界の終わりみたいな顔で見ないでくれ。
ゾクゾクするじゃないか。
…というのは置いといて。
「僕の歌を歌いたいというなら、歌わせてやりたいんだ。勿論、彼らに実力があればの話だけどね。
歌にだけは、妥協したくないし」
「…ボクには、提供してくれませんでしたね」
真の表情が曇っていく。
でもこればかりは譲れないんだ。
真に合わせた歌を作るのは簡単だ。
けれどそれは妥協したことになってしまう。
それは、僕の意に反する。
…まだ、真にはそこまでの実力は無い。
これは、かわいそうだが本音なんだ。
「僕は、アイドルの事はそこまで詳しくはない。
だから、歌一本で勝負することにしたんだ。
歌唱力だけでね」
「…プロデューサー。ボク、ボーカルレッスンもっと頑張ります!…だから、お願いできませんか!?」
「無理はダメだ。それに真にはダンスがある。
それは僕とは違うんだ。
………まあ、そうだな。
僕を納得させられれば、認めてあげるよ」
けれど、彼女は言って聞いてくれるような子ではない。
それに、彼女は挑戦する壁が大きければ大きいほど燃える子だ。
もしかしたら、という期待もあるんだ。
「はい!絶対納得させてみせますからね!じゃあ、明日から早速頑張ります!」
ほら。
この真っ直ぐさは、好きだ。
けれど、まるで少年漫画の主人公みたいだな、というのは言わないでおいた。
でも、あまり追い込みすぎるのもかわいそうだ。
そんな訳で、一つ提案をすることにした。
「真」
「はい?」
「僕にはお前のイメージを変えることは出来ない」
「…はい」
「けど、僕の中では、女の子だから」
「…はい!ありがとうございます!!」
今日は午後から暇だし、何処か連れていってあげる事にした。
「ほらほら見てくださいプロデューサー!プリクラですよ!」
「あはは。真はこういうのが好きなんだ」
「いえ、こういうの、やった事なくて…」
真がまず行ってみたい所、それはゲームセンターだった。
あはは。やっぱり子供だなあ。
聞けば、彼女は昔、父親から男の子扱いを受けていたという。
空手や、「ボク」も、その一環だったらしい。
ゲームセンターも、チャラいということで、やらせてもらえなかったそうだ。
何だ、僕とそう変わらないじゃないか。
「僕もね、10代の頃から親父から楽器を学ばされてね。
そのおかげで楽器は大体弾けるようになったんだけれど。
こういった所には全く縁が無かったよ」
「そうだったんですか…だから、いろんな事が出来るんですね!さっすがプロデューサー!」
この子はきっと、女の子扱いをされててもこうなっていたんじゃないかな、と思った。
なんて単純なんだろうって。
「へへーん!どうですかプロデューサー!似合ってます?」
スカートを履いた真は、確かに可愛かった。
けれど、女の子らしいかと言われれば、まだまだ抜けていなかった。
仕方ない。
ちょっとだけ、助けてあげるとしようかな。
「プロデューサー?どうしたんですか?…え?うわわっ!ちょっ…ちょっとぉぉぉぉぉぉ!!?/////」
「あ、あのこれはえっとぉ///
あ、ありがとうございます///////」
「ほら、ちゃんとポーズとって」
「えぇ?は、はいぃ…」
「じゃあ、それで行こうか。何処がいい?」
「え?じ、じゃあボク、遊園地がいいです!遊園地!」
この子は、ほんと、子供っぽい。
いや、まだまだ子供か。
けれど、悪くない。
若い時間は短いんだから、楽しめるだけ楽しまなきゃダメだよね。
絶叫系や、お化け屋敷。
女の子が選ぶものとは思えないけど、まあ突っ込んじゃいけなさそうだから辞めておこう。
ついでに、今彼女が飲んでるのはスポーツドリンクだった。
やっぱり、染み付いたものはそう簡単には抜けないんだろうなぁ。
僕自身そうだし。あはは。
何だか、向こうが騒がしいなぁ。
ふと目をやると、女子高生2人組がチンピラ達にちょっかいをかけられていた。
最近よくこういう場に会うなぁ。
やっぱり僕はそういう星の下で産まれたのかな。
「あいつら…ひどいです!ボク、行ってきます!」
「いいよ、行かなくて」
「でも!あの子達が!」
「僕が行くから」
「え?」
「「ありがとうございました!!」」
「いいよ。偶然通っただけだし、彼らも分かってくれたみたいだから」
「「本当にすいませんでした!」」ボロッ…
いやぁ。ストレス解消になったよ。ありがとう。
「プロデューサー、悪趣味ですよ…」
「でも、真が行かなくて良かったよ」
「え?」
「こんな小さな手が血塗れになったら、ダメなんだよ」
「プロデューサー…」
「女を守るのは、男の役目だから。
だから、真は行かなくていい。
だって、女の子なんだから」
真の顔が明るくなっていく。
そうそう、そうでなくっちゃ。
女の子らしさだって色々ある。
雪歩みたいな守りたくなるような可愛さや
響のような底抜けに明るい可愛さ
色々あるんだ。
だから、真は真の女の子らしさを出せばいいだけのこと。
真はまだそれに気づいてないみたいだけど。
なら、仕方ないか。
今日くらい、希望に合わせてあげよう。
「だから、これに着替えて」
「え?な、何ですか?ちょ…!!////」
「お姫様になっちゃいました…へへっ!」
「じゃあ、行こうか」
「あ、プロ…じゃなくて、王子様!」
「ん?」
「手、繋いでくださいよ」
「良いよ。でも、繋ぎ方は、こう」
「…へへっ♪」
僕のポケットから出てきたCDには、ああそうなるだろうな、って感じだったよ。
http://www.youtube.com/watch?v=CGn2RTqf12o
「たっだいまー!」
「あれ?真ちゃん、遅かったのねぇ…今日は午前で終わりじゃなかったの?」
「へへーん!小鳥には秘密だよっ!」
「怪しいの。ハニー!真クンとなにしてたの!?」
確かにもう夜遅い。
だが、良いリフレッシュにはなっただろう。
これからもまた苦労するだろうが、頑張ってくれ、真。
「お姫様とデートしてたんだ」
第十話
「最近は竜宮小町も売り上げを伸ばしてきてますね。いい傾向ですよ」
小鳥との昼の何気ない会話。
竜宮小町とは、律子がプロデュースする伊織、あずさ、亜美の三人によるユニット。
Dearsほどではないが、CDの売り上げや、番組への出演など、順調に功績を残している。
ちなみに、僕は昼は食べないので、小鳥はたるき亭の出前を頼んでいた。
嫌がらせだろうか。全く。
「ねーねー何の話?」
背後から真美が抱きついてくる。
この双子は、このままでいくつもりなのだろうか。
大人になってもこれだったら、承知しない。
まあ今は、大目に見ておくよ。
「竜宮小町の話?…そっかぁ」
珍しく尻窄みになる。
どうしたというのか。
頭の中で、色々考えを巡らしていると、そういえば765の看板はDearsと竜宮小町。
後はユニットは組まず、個々でやっている。
すると仕事にも差が出てくる。
しかし真美はそんなことを気にするような子ではない。
まだお金に対する執着なんかないだろうし、この子の年齢であってほしくはない。
だとすると、何だろう。
そういえば真美は最近やよいや響と絡むことが多い。
竜宮小町結成以前は亜美と常にワンセットだったが。
そうか。つまりは寂しいんだな。
でも、それは僕に言わないで、亜美に言ってはくれないか。
「そんなこと言えないもん…」
「それに家に帰れば一緒だろう?いいじゃないか、それで」
「この前なんか前乗りで二日間も帰ってこなかったんだよ!?お土産は嬉しかったけど」
前乗り?…ああ、そういえば大阪までロケだったんだっけ?
「仕方ないさ。仕事は仕事。プロなんだから、我慢するんだな」
「むー…分かってるけど、つまんないのー!」
あはは。これくらいの子のわがままはかわいいもんだなぁ。
チンコ「クラミジアになっちゃったよ」
マンコ「知ってるわ。私がうつしたから...」
「だったら、亜美に負けないくらい仕事をするんだな」
「じゃ、兄ちゃんも頑張らなきゃ、だね!」
そうだね。真美の言う通りだ。
この子達にはほんと、笑顔が似合うよ。
>>236
深夜のテンションか分かったよ氏ね
「真美ちゃん、ああは言ってましたけど、Gacktさんのこともよく言ってるんですよ?
兄ちゃん兄ちゃんって。
Gacktさん事務所にいるの夜遅くとか朝早くとかですものね」
仕方ないさ。そういう職業なんだから。
真美くらいの年代の子にはまだ分からないかもね。
「僕にはどうする事もできないよ。
さっきも言ったけど、仕事は仕事。
文句があるならやらなければいいだけのことなんだから」
「もう…またそんな意地悪なこと言うんですから」
「そんな甘いことじゃあ、ダメだよ」
「美希ちゃんの時もそうでしたが、彼女達はまだ子供で、女の子なんですから、そんな事を言われても分からないと思うんです」
「…そうかもしれないね。
けれど、誰かが厳しくしなきゃいけない。
最初に僕は言ったよ。
全力でぶつかっていくって。
それで憎まれるなら、それでもいいさ」
小鳥が悲しそうな顔で僕を見る。でも、これは本音だから、ごめんな。
「大丈夫さ。飴と鞭くらいは使い分けてる」
「そういうんじゃないですよぉ…」
真美と亜美が事務所で顔を合わせるのは週に一度か二度程度。
それも分刻み。
だから、あまり話もできないかもしれない。
だからだろうか。
今この双子は僕の目の前で言い合いをしていた。
「何さ!真美だってー!」
「何をー!?亜美だってー!」
これじゃあ、原因も分からない。
律子と目を合わせ、互いに肩をすくめた。
「ほらほらそこまでにしなさい。何があったの?」
「律っちゃん、真美ったら酷いんだよ!竜宮小町の番組、録画して見ようと思ったのに、消しちゃったんだよ!」
「だってもう見たかと思ったんだよ!そんなこと言ったら亜美だって真美のお菓子食べたじゃんか!」
「…」
律子が苦笑いして僕に目をやった。
「…JESUS」
僕にも、苦笑いしかできなかった。
「どっちもどっちじゃない。お互いに謝れば済む話でしょ?」
伊織が意見を言う。
ごもっとも、だと思う。
しかし、この双子には正論は通用しない。
それに、本当は2人とも、違う事でフラストレーションが溜まって、それが些細な事で爆発しただけだ。
きっと、この前の真美の話だろう。
それを言おうかとも思ったが、やめておいた。
この子達はまだ素直という言葉を知らない。
いや、精神的にという事だが。
寂しいから喧嘩したんだろ?なんて聞いてしまえば、きっと逆効果だろうし。
しばらくは、成り行きに任せようと思う。
「Gacktさん。良いんですか?あのままじゃ、仲直りできませんよ…」
小鳥が僕に呟く。
彼女は少々心配性な面があるのかもしれない。
大丈夫さ。この場合は。
「あの2人は、大丈夫だ」
確信を持って言える。
あの2人は、大丈夫。
あの双子の喧嘩から3日後。
伊織がプリンを買ってきた、と鼻息を荒くして言った。
何でも、並ばなければ食べられないほど美味しく、一つ500円という高価なプリンらしい。
「ゴージャスセレブプリン!これが楽しみだったのよ!!」
後ろの双子も、プリンと聞いただけで顔が明るくなる。
しかし、すぐに止まった。
伊織もだ。
何があったのか、と思い、彼女らの後ろから冷蔵庫の中を覗く。
「ゴージャスセレブプリンが・・・・無い・・・」
…ああ…JESUS…
「んっふっふ~?これは事件の香りですなぁ亜美隊員?」
「ですなぁ真美隊員?」
双子が悪い笑みを浮かべて顔を見合わせる。
さっきまでのぎこちなさは何処吹く風だった。
それから彼女らは事務所にいた人達一人一人に尋問をしていった。
その姿は実に楽しそうで、輝いていた。
やよいにはそのうち本物のウニを食べさせてあげなければならないかな。
「何だか、この前の喧嘩が嘘みたいですね」
律子が呟く。
「あの2人は、互いに無くてはならない存在なんだ。
だから、本当は一緒にいたいのさ。
だから、ただ、遊びたかっただけなのさ」
「…でしょうね。あの双子の絆は、切っても切れなさそうですから」
そう。あの双子はどれだけ離れていても、心と心がつながっている。
双子だから成せる技なのだ。
今回の曲はこれか。
何だかこれにも慣れてきたなぁ。
http://www.youtube.com/watch?v=U7Sj1LEtA7A
「何だか、Gacktさんって何でも分かっちゃうんですね。凄いです」
「プロデューサーだから。
…いや、彼女らが、いつも全力でぶつかってくれるからかな。
心の交流ができるんだよ。そういうもんだ」
そうさ。純粋に、一途に、ぶつかってきてくれるから、僕も気持ちよく返せるんだ。
そうそう、何でも分かるってのはあながち嘘じゃないかもしれない。
伊織がプリンを人数分買ってきて、冷蔵庫の中に保管したのは朝8時。
竜宮小町の仕事が終わり、帰ってきたのは昼過ぎ。
その時、事務所にいたのは小鳥、竜宮小町、僕。
僕と小鳥は仕事で忙しかったので、全く目に入らなかった。
だから、僕らではない。
もう、誰が犯人かなんて分かっただろう?あはは。
そういえばあずさ、ほっぺにカラメルついてるぞ。
眠い寝る
そういえば、雪歩のとこぐらいまででだけどまとめられててびっくりした。
ちょっと嬉しかった
第十一話
僕の出身は何処か?と言われれば、とりあえず沖縄といっておく。
沖縄といっても、七歳くらいまでだったし、何より僕は日に焼けるのが嫌で殆ど外にでなかったからな。
僕の出身を言い当てれる奴はそうそういないと思う。
でも、765に一人、話さなくても何処から来たのか分かるような子がいる。
褐色の肌。
多用するうちなーぐち。
我那覇 響だ。
とても明るく、素直で可愛らしい。
趣味は編み物と意外にもインドアだが、彼女にはもう一つ好きなものがある。
動物だ。
彼女は動物を会いしてやまない。
実際彼女の家には色んな動物がいる。
そのおかげで番組をもらう事ができたこともある。
しかし、沖縄県民が豚をペットにするというのはどうかと思う。
「うわー!プロデューサー!ブタ太は食べ物じゃないから、包丁しまってくれええええええ!!」
いや、ごめんよ。あはは。
「ひどいぞプロデューサー!自分、確かに豚肉好きだけど、ブタ太は特別な家族なんだからな!」
この子には人間の友達はいるのだろうか。
少し不安だったが、それは僕が踏み込んでいい領域ではない。
いや、響の家に来ているとなると中々の領域まで踏み込んでいるが。
番組の打ち合わせを家でやりたいと頼まれ、ついていくと、家に着いた途端、動物たちのご飯を作り出した。
ああ。そういうことね。
犬に、猫に、ウサギに亀、ワニに鳥。その他。
そして、鼠。
「ハムスターだぞ!」
「都会っ子のプロデューサーにはわかんないぞ。自分、昔から動物達とは遊んでるんだ」
そうか。それは良かったよ。
そういえばこの子は動物の言葉が分かるんだっけ?
「響、一つ質問があるんだけど」
「ん?何だ?」
先程から僕に覆いかぶさってくる犬が暑苦しいんだ。
一体なんだと言うのか。
「いぬ美か?プロデューサーがお気に入りみたいだぞ」
尻尾を振り回すいぬ美。
僕はもう少し小さい方が良い。
いぬ美を撫でながらそんなことを思った。
「ってかプロデューサー、香水キツすぎだぞ。いぬ美の鼻が壊れちゃうぞ」
「それはいぬ美に言ってくれないかな」
僕が響に感心したのは、この素直さ。
少々いらない事も言ってはくれるが、今の子には珍しいと思う。
そして、765の中では彼女が一番運動神経が良い。
いつだったか、アイドル運動会ではぶっちぎりだったっけ?
LIVEの時、あのダンスを即座に覚えてくれたのも響だったな。
バランスのとれたしなやかな筋肉。
将来はダンサーとしても輝けるかもしれない。
「…プロデューサー、どこ見てるんだ」
いけない。つい一部分に目がいってしまった。
打ち合わせた番組の内容は、朝のニュースの1コーナー。
一般のお宅にお邪魔して、ペットを紹介してもらうというもの。
ありきたりではあるが、響がやるとなると大分違ってくると思う。
そんな感じがする。
響自身も、嬉しそうだった。
良かったよ。気にいってくれて。あはは。
「さて次は新コーナー、『私の自慢のペット、紹介します』!!響さーん!」
「はいさーい!我那覇 響だぞ!今日は、初めてということで、都内を回ってみることにするぞ!」
実はこれ、台本なんだ。
行き当たりばったりではなく、番組への手紙やメールといった媒体でその日行く場所を決める。
それに、これは収録済みの映像。
今、僕は事務所のテレビを響と見ていた。
「あ!見て見てプロデューサー!この猫、すっごい可愛かったんだぞ!」
どうやら企画は大成功のようだ。
僕も満足だよ。
明日の収録も楽しんでくれるといいな。
そのはずだったのだが、今響は、会議室で僕と向かい合わせで座っている。
「どうして、あんな事をしちゃったんだ?」
響が突然、一般の人のペットのウサギを逃がしてしまったのだ。
ウサギは捕まらず、こちらで弁償することになった。
もちろん響が何の理由も無しにそんなことをするような子じゃないことは分かっている。
だから、理由が聞きたかった。
「黙っていたら、分からないなぁ」
それまで、口を閉ざしていた響が、ポツリポツリと話しだした。
「あの子、自分に助けてって言ってきたんだ。
虐められるって、怖いんだって。
ここから出たいって言ってきたんだ!」
そっか。そういうことか。
この子にしか分からない、動物の言葉。
虐待の傷は隠せても、心は隠せなかったみたいだ。
「そうか。
お前は人間としては正しい行いをしたと僕は思うよ」
「プロデューサー…」
「けれど、芸能人としては最悪の選択をしてしまったな」
「………」
そう。仕事先での不祥事。
それはアイドルには致命的なダメージになる。
たとえそれが正しい行いだったとしてもだ。
「結果的にお前は、一般人に迷惑をかけてしまったんだ。
そんな話で済むわけがない。
ましてや虐待するような奴だ。
何を言ってくるか分からない」
現に今、事務所へクレームの電話を何回もかけてきてる。
小鳥にはかわいそうだが。
響が涙をこらえているのはすぐに分かった。
けれど。
「この件に関しては、僕はお前の味方だ」
ハッとして僕を見つめる。
そう。いくら仕事が出来ても、譲れないものは誰にだってあるのさ。
僕もそうだったから。
響は、信念を持って仕事に臨んだ、それだけのことなんだ。
結果的には、残念と言わざるを得ないけど。
「僕だって、響の立場だったら同じことをしていたよ。
いや、もっと酷いことをしてたかな?」
「プロデューサー…」
こらえきれなくなったのか、大泣きして抱きついてくる。
この子は、本当に優しい子なんだ。
間違いないよ。
「プロデューサー、やっぱり香水キツすぎだぞ」
あはは。参ったなあ。
あれから結局、クレームの電話も止んだ。
僕がそのお宅にお邪魔すると、飼い主が震えだしたんだ。
僕は何もしてないのに。
まあ自分より弱い奴にしか手を出せない奴だ。
大方、気圧されたんだろう。
響のコーナーは、順調に続く事になった。
「プロデューサー、ありがと!嬉しかったぞ!!」
彼女は、笑ってる方がいい。
泣いてる顔も良かったが。
「…ねぇプロデューサー」
「?」
「……かなさんどー」
「あはは」
顔を真っ赤にして呟いた。
内ポケットから出てきたCD。
今回は二枚組か。豪華だな。
一枚は、僕の歌ではないようだが。
「響、一緒にうたってみようか」
「?」
たまには、故郷を思い出すのも悪くない。
http://www.youtube.com/watch?v=3xdWZCV1R_4
響の顔がどんどん赤くなっていく。
どうやら響でも察することができたようだ。
「僕ね、沖縄出身なんだよ」
「…う、うがー!!!!」
あはは。この子をいじるのはやめられないなぁ。
http://www.youtube.com/watch?v=C7o3blqyxvw
「今度また、手料理でも作ってくれ」
「…ずるいぞ、プロデューサー…」
どうかこのまま、育っていってほしいものだ。
第十二話
「あー!肩が凝るなぁ…」
19歳とは思えない動作と言葉。
律子は毎日のように続く仕事に追われて、身体の節々に負担をかけているようだった。
「若いんだから、何とかなるよ」
「それ、何かじじ臭いですよ」
我ながらもそう思う。
そうか。僕ももうそんな年齢か。
しかし、年を取るのは悪い事ばかりではない。
僕は年をとっていくのが嬉しくてたまらないのだが、女の子には逆らしい。
やっぱり、女の子って分からないなあ。
「Gacktさん、疲れ知らずなんですか?あんまりそういう姿を見ませんが」
疲れてるよ。本音はね。
けど、そういう姿をオトコが見せるべきではない。
だから、笑って誤魔化すことにした。
竜宮小町もまた、765プロの看板だ。
だから、仕事は山のようにある。
そして、そのプロデューサーである律子にはその負担がかかるのだ。
でも仕方の無いことだ。
それに、忙しいって良いことじゃないか。
仕事が無くて、暇な方が辛いに決まってる。
まあ、こういうのは無い物ねだりなんだろうな、と自分に言い聞かせた。
「お前がハタチになったら、お酒でも飲みながら愚痴を聞いてあげるよ」
「そういえば、Gacktさんの飲むお酒って、ブランデーとかですよね。流石に付き合えませんよ…」
今の子達は、お酒に弱いのかな。
こんなに美味しくて、楽しい飲み物は無いと思うけれど。
「律子も大人になれば分かるよ」
僕からすれば、お前なんてまだまだ子供なんだから、という言葉はまたじじ臭いとか言われそうなので黙っておこう。
年をとるのは良いけど、じじ臭いのは嫌だから。
しかし、律子もまだまだ子供なんだなというのは、本当だ。
たまに調整ミスで、向こう側に迷惑をかけることがある。
忙しすぎて疲れてるから、仕方ないことなんだけどね。
そして、今回もまた、そのせいか仕事がかぶってしまっていた。
「もう、律子ったらちゃんとしてよ!これじゃてんやわんやじゃない!」
伊織が律子に食ってかかる。
かわいそうだから、助け舟を出すとしようかな。
「なら、僕の方から言っておくから。
代わりに春香とやよいを出すよ」
今の状態での律子ではさらに墓穴を掘るかもしれないから、僕が向こう側に行くことにした。
「ごめんなさい。プロデューサーにまでご迷惑を…」
あはは。大丈夫だよ。
それに、かぶってしまうくらい、竜宮小町が人気になったという何よりの証拠だし、そこまで上り詰めたのは何より、律子の手腕によるものなんだから。
しかし、伊織は納得がいってないようだった。
「何よ、そいつの方がよっぽど頼りになるじゃないの」
そいつじゃなくて、Gacktさん、だろ?全く。
しかし、曇った表情を見せた律子を見たらそんな言葉は出なくなっていた。
「………!!」
たまらず、事務所から逃げてしまった。
あーあ。泣ーかした。
「律っちゃんかわいそ~」
「二人していじるんじゃないわよ!まさかあそこまでショック受けるなんて思わないでしょ!?」
伊織は、もう少し言葉を選ばなきゃダメかもな。
まあ、実力なら僕のほうが上なんだけどね。
「律子の方は僕が何とかしておくよ。とりあえず、早退ってことにしてさ、お前達はテレビ局に向かって」
何とかしようにも、どうしようかなあ…
「うっ…ヒック…グスン」
何よ伊織ったら。あんなこと言わなくてもいいじゃない。
私だって分かってるわよ、まだ未熟者だって。
でも、流石に傷つくわよ…
ピンポーン
?
誰かしら。
私の家を知ってる人なんて、事務所の人くらいじゃないかしら。
『律子さん、いらっしゃいますか?』
…ああ、小鳥さんか。
小鳥さんなら、今の顔見せてもいいわよね。
「はい、なんでしょうか…グスっ」
「泣いてるのか、珍しいな」
「Gacktさん!?」
ドアの向こうにいたのは、小鳥さんとGacktさん。
Gacktさんめ、私のことよく分かってるみたいじゃない。
恨むわよ。
様子を見にきてくれたんでしょうけど、今一番顔を合わせづらい人だわ。
「まあ、こんなところで話もなんだから、上がるよ」
Gacktさん、あまり人の都合を考えない人なんですね…。
それに、その山のようなお酒は何なんですか。もう。
「…いおりったらぁ、もうひろいんれすよぉ…」
あはは。本当はダメなんだけどね。
律子の家だし、誰にも何か言われることはないだろう。
小鳥さえ黙っていてくれればいいんだから。
「ピヨっ!?」
初めは渋っていたものの、一缶ビールを空けたらこんな感じだ。
ほんとに弱いんだなあ。
まだ未成年だから、仕方ないか。
でもいいんだ。
嫌な事があれば、こうやって話せばいい。
僕はそう思う。
だって、僕にとっては。
「お前もアイドルの一員だからな、律子」
「ふえぇ…?」
明日また、リセットしてくればいい。
そうすれば、また元通りさ。
「うう…頭が痛いです…」
「でも一応、出勤してきたんだから立派だよ。
今日も頑張ろう」
「はぁい…」
青い顔で出勤してきた律子。
それもそうか。慣れないことされたんだから。
「…」
伊織が無言で律子に近づく。
僕に目をやる。
…分かったよ。僕はしばらく男のゴールデンタイムだ。
「律子、その、昨日は悪かったわ…ごめんなさい」
「伊織…いいのよ。私が悪かったわ。
だから、これでおあいこ」
「…そうね。分かったわ!なら今日もバシバシ行くわよ!!」
「うっ…あんま大きい声出さないで…頭に響く…うっ」
「律子?ちょ、ちょっとおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!?」
やっぱり、缶コーヒーはこれに限るなあ
http://blog-imgs-42.fc2.com/d/a/t/datsundream/wgt.jpg
律子。
お前と僕は仲間でもあり、ある意味ライバルでもある。
これからもせいぜい僕の姿を後ろから眺めてるといいよ。
いずれ、足元のつま先くらいには及ぶかもしれないからな。
でもその前に
掃除は頼んだぞ、伊織。
http://www.youtube.com/watch?v=lTEeqXxbgC4
「そういえば小鳥はどうしたのよ?」
「二日酔いでダウンだ」
「あのバカ…」
第十三話
「何とか二日酔いから立ち直りました」
「ダメだなあ…お酒に飲まれちゃだめだよ」
「Gacktさんが異常なんですよ…」
音無 小鳥。
765プロの美人事務員だ。
なぜ彼女に結婚相手が現れないのか不思議でならない。
それを聞こうとすると、皆に止められる。
どうやら聞かない方がいいみたいだ。
彼女にとってこの話題はNGワードなのだろう。
まあ、結婚したからって幸せになるかどうかは分からないけれど。
しかし、彼女もまた、この事務所にいなくてはならない存在だ。
もうしばらくは、考えにも浮かばないだろう。
「ちなみにですけど、Gacktさんは結婚はしてらっしゃるんですか?」
「一度だけしたよ。でももういいかな」
律子がふいに聞いてくる。
確かこの子とそう変わらないくらいにしたんだっけ?
あの頃の僕は、色々無茶をやったものだなぁ。
「ピヨ…良いですね、そんな余裕発言できて」
盗み聞きしてたようだ。
いや、このワードに関しては地獄耳になるのだろう。
「結婚して、幸せになる人もいれば、面倒だと思う人もいるんだ。
僕はどちらかといえば後者かな。
結局、自由が一番って結論に至ったんだ」
「違いますよぉ。結婚しようと思ってすぐに出来るのが羨ましいんです」
?僕は小鳥くらいの子がいたら、放っておかないけどな。
何があるというのか?
「私、男の人を相手にすると緊張しちゃって…全然ダメなんです」
ふーん。そうなんだ。
「処女なの?」
「ブー!!!!」
律子と小鳥がお茶を吹く。
そんなおかしいことを聞いたのかな?
「が、Gacktさん!?何を言ってるんですか!!!」
「そうですよ!女の子相手に!!」
反応からして、律子もまだ経験が無いようだ。勿体無い。
「私たちは仕事が恋人みたいなもんですから。今はまだいいんです!!」
そっか。まあ頑張れ。あはは。
「おや、三人ともどうしたのかな」
社長がふいに現れ、話しかけてくる。
「いや、この二人がな…」
「「わー!わー!」」
いやあ、この反応は面白い。
初々しいってのはいいね。
いじりがいがあるよ。
社長も大方のことは察したようで、苦笑いで誤魔化す。
「まあ、なんだ。良かったらGacktくん。今日はアイドルの皆を集めてパーティーを開きたいんだ。君もどうかな?」
パーティー?ああ、そうか。今までそんなもの開く余裕も無かったもんな。
たまにはいいだろう。
僕も行くことにした。
「パーティーなんて初めてだよー!」
「765プロも余裕が出来たってことよ。
社長が全部持ってくれるらしいから、ジャンジャン食べて飲んじゃいましょ」
「こら伊織、アイドルなんだから、節度を持った行動。それと食べ過ぎないように。特に、あずささんと貴音!」
「あ、あら~ばれちゃったみたい…」
「殺生な…」
貴音はまあ大丈夫だとしても、あずさはふつうの消化器官だからな。
食べすぎたらマズイ。
そういえば小鳥の姿を見ていない。
しばらくして、その疑問は解消された。
「あれ?小鳥さん!?」
春香の視線の先にいたのは、小鳥。
ドレスを身に纏い、いつものインカムではなく、黄色のカチューシャをつけていた。
綺麗だ。
そう思った。
やはり、彼女もまた、765プロのアイドルなのかもしれない。
とても、輝いていたのだから。
「彼女は昔、アイドルだったのさ」
隣に座った社長が口を開く。
でも、律子も知らないといっている。
売れなかったのかな?
「違うのさ。売れるはずだった。
しかし、辞めてしまったのさ。
私達のせいでね」
話を聞くと、彼女をプロデュースしたのは、彼、高木と黒井の二人だったそうだ。
しかし、方向性の違いから、彼らは仲違いを起こしてしまった。
責任を感じた小鳥は、アイドルを辞めて、裏方に回ったそうだ。
「勿論、彼女に何の責任も無い。ただ、私達の未熟さが招いた結果だよ。
…彼女は、それでも続けてはくれなかったがね」
…正直、僕の小鳥へのイメージは、結婚に焦ってる事務員でしかなかった。
そんなことがあったのか。
僕の目も、まだまだ未熟ということかな。
だって、こんなに輝いている小鳥をみていると、そう思うしかないじゃないか。
彼女が、美希や双子の時に僕に食ってかかったのは、彼女らの境遇をかつての自分に重ねていたからなのだろう。
…立派だな、なんて言葉では足りないな。
やはり、彼女は765プロになくてはならない存在だということを再確認した。
http://www.youtube.com/watch?v=eW2rl488OQ0
「ピヨちゃーん!かーわーいーいー!!」
「いいよいいよー!」
「ピヨ子ー!まだまだ通用するぞー!」
「響!こら!」
ブツン。
「あれ?停電かな?」
「真っ暗だよー」
「ほらほら貴音ー怖くないぞー」
「小鳥、僕も歌わせてもらうよ」
http://www.youtube.com/watch?v=QMhuzt_6WDc
「兄ちゃん…」
「プロデューサー。やっぱりかっこいいなぁ」
「「って、小鳥を食べようとするなああああああああ!!!」」
http://www.youtube.com/watch?v=cT-yzp0LFSo
「もう!一時はどうなる事かと思いましたよ!」
律子が鼻息を荒くしながらぼやく。
どうやら小鳥は気絶してしまったらしい。
初々しいってのはほんとみたいだな。
もう冬か。
確かに、人肌恋しい季節かもね。
じゃあ、小鳥を家まで届けたら、大人組であずさのところへでも行くとしようか。
>>298
いいねえもっと参考画像下さいいやよこせ
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