古澤頼子「のあの事件簿・サイゴの事件」 (135)

あらすじ

探偵高峯のあ、『怪盗』古澤頼子との対決に臨む。



前3話
高峯のあ「のあの事件簿・東郷邸の秘密」
高峯のあ「のあの事件簿・東郷邸の秘密」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396432268/)
佐久間まゆ「のあの事件簿・この町のテロリスト」
佐久間まゆ「のあの事件簿・この町のテロリスト」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397732897/)
木場真奈美「のあの事件簿・佐久間まゆの殺人」
木場真奈美「のあの事件簿・佐久間まゆの殺人」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399097311/)

上記の続きで、最終回です。
設定の引き継ぎとネタバレだらけなので先読み必須。

あくまでサスペンスドラマです、のあさんと頼子さんはとても頑張って演技しています。

グロ注意

前回までは一応オリジナルだけど、今回は元ネタあり。

オマケはNG集です。頼子さん多めにしておきました。

それでは投下していきます。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399974084

メインキャスト

探偵・高峯のあ
助手・木場真奈美

刑事一課柊班

警部・柊志乃
巡査部長・和久井留美
巡査・大和亜季

生活安全課少年班

巡査部長・相馬夏美
巡査・仙崎恵磨

科学捜査課・松山久美子
科学捜査課・一ノ瀬志希

交通課巡査部長・片桐早苗
交通課巡査・原田美世

警察署長・高橋礼子

佐久間まゆ

南条光

八神マキノ

松本紗里奈

天ケ瀬冬馬(特別出演)

大人気ねこちゃんアイドル・前川みく

古澤頼子

原作

シャーロック・ホームズシリーズ “最後の事件” 作 コナン・ドイル
SHRLOCK “The Reichenbach Fall” 製作 BBC



長い髪の先は天を向く。

艶やかな髪だけは、落下の運命から少しでも逃れようとして。

既に意識はない横顔は安穏なまま。

やがて。

固い地面に背中から落ち。

脊髄が折れ。

弾んだ拍子に後頭部が強く打ちつけられ、割れ。

ゆっくりと降りてきた長い髪が、彼女が作った血の池へと降り。

鮮やかな色彩のカーペットの上で。

天を見上げて、小さく微笑んだまま。

彼女は息絶えました。



市立美術館・1階メインホール

高峯のあ「時間が近づいてきたわ。来るわよ、古澤頼子が」

高峯のあ
高峯探偵事務所所長。頭脳明晰かつ容姿端麗。様々な理由から古澤頼子の拿捕を誓う。

木場真奈美「無駄に時間に正確だからな、あいつ」

木場真奈美
高峯のあの居候兼助手。海外生活で磨かれた多彩なスキル持ち。本職はスタジオボーカリストだが、アイドル事務所のPにデビューを持ちかけられた。

のあ「それにしても、こんな美術館を狙わなくても」

真奈美「ただ、お宝というものはあるからな」

のあ「そう、目標はメインホールの美術品ただ一つ」

真奈美「桃のティアラか」

市立美術館
箱に比べて、掲示品が数も質も貧弱と評判の美術館だったが、とある令嬢が「これでは建物がかわいそうですわ!お父様、いいものをお送りなさって!」とか言ったために、希少な中世ヨーロッパのティアラが飾られている。

のあ「ピンクダイヤだけでも相当な価値でしょうね」

真奈美「そうだな。これが理由で、娘のために購入したなんてウワサもあるくらいだからな」

のあ「馬鹿親ね」

真奈美「……この前さ、部屋を掃除してたらドレスを着たそれはそれは可愛い少女の写真が出てきてな」

のあ「なによ」

真奈美「いや、そのあとドレスそのものも出てきてな。かなり良いシルクだった」

のあ「だから?」

真奈美「睨むなよ。どこの親も同じだな、と思っただけさ」

のあ「……そうね。ところで、古澤頼子はどんな手段で来るかしら」

真奈美「正直予想がつかん。これまでの4回を考えてもそうだ」

のあ「本気なのかすら、判断できない。最初は、平然と窓から侵入して変装して近づいてきたように」

真奈美「この時はターゲットに近づく前にのあが気づいて、逃走」

のあ「2回目はシステムダウンさせて、防犯扉を逆に楯にして堂々と盗んで行った」

真奈美「3回目は美術品を模造品に変えたら、隠した本物が持ってかれた」

のあ「私にも秘密にしてるとか、酷い館長だったわ」

真奈美「4回目は壁のウラから」

のあ「あんなの音で気づくわよ。むしろ、あの美術館の隠し金庫を晒すのが目的だったんじゃないかしら」

真奈美「しかも、本人はきっちり逃走。所得隠しを暴いて、無駄に庶民の好感を買った」

のあ「何が目的なのかしら。正々堂々と単独犯宣言までしてるのも、不思議だわ」

真奈美「想像もつかん、つきたくもない」

のあ「そうね」

真奈美「さて、時間になるぞ」

のあ「準備はいい?」

大和亜季「警察はばっちりであります」

大和亜季
刑事一課柊班所属巡査。今回は刑事事件ではないが、署長命令で柊班は待機中。

和久井留美「高峯さん、あなたの予想は?」

和久井留美
刑事一課柊班所属巡査部長。最近はこれからのキャリアが悩みの種で、みくにゃんのライブ練習に気が乗らない。

のあ「さぁ。来てから考えるわ」

留美「お気楽ねぇ」

のあ「警備員2人、警察多数、さて、どうするのかしらね」

亜季「まもなく21時であります。5、4、3、2、1……」

バチン!

のあ「今度は停電。古典的ね」

留美「すぐに復旧するわ。ライトもあるし」

真奈美「ライトを!」

チャン!

のあ「……侵入経路、ホール入口。侵入方法、徒歩。現在、ライトアップ中」

古澤頼子「怪盗古澤頼子、参上」

古澤頼子
犯罪提供者。数々の犯罪の裏にいると言われている、探偵高峯のあの影。今は、派手な犯罪で世間に話題を振りまいている。

のあ「そんなの知ってるわよ」

頼子「それでは、予告通り、桃華のティアラを頂きます」

真奈美「アホか。この状況で、無理だろ」

頼子「そうですね。私もそう思います」

留美「……とらえなさい!」

頼子「あら、逃げなくてはいけません。それでは」タッ!

亜季「相変わらず逃げ足だけは速い!待つであります!」

のあ「追うわよ」

真奈美「わかってるさ」

留美「展示品を使って2階に登ったわ!指示!建物裏側に追い詰めなさい!」



市立美術館・2階展示通路

亜季「待つであります!」

頼子「あら、機敏な婦警さんだこと」

亜季「その言葉は死語でありますよ!」

頼子「あら、そうなんですか」

亜季「もう逃げ道はありません、展示用の通路なのでここで行き止まりです」

頼子「あとは窓だけ、ということかしら」

亜季「追い詰めたであります」

頼子「あら、追い詰められてなどおりません。それでは」タンッ!

亜季「ま、窓から!」

真奈美「大和巡査!古澤頼子は!?」

亜季「窓から跳び下りた……?高さがあるのに」ノゾキコミ

頼子「顔を出すと危険ですよ」ドン!

亜季「ぶへっ!」バタン

真奈美「巡査!古澤頼子は急上昇したように見えたが……」

亜季「くっ、食らったであります」

真奈美「無事か!?」

亜季「無事であります!それより、古澤頼子は!?」

真奈美「ゴムだかなんだかで、自身の体を打ち上げてウィングスーツで滑空中!裏庭まで行くつもりだぞ!」

亜季「裏庭、警戒であります!」



市立美術館・裏庭裏門前

のあ「抜けるには高さが足りなかったでしょうね。無駄に広い敷地で助かったわ」

留美「でも、連絡から時間がたつわ。どこに潜んでるのかしら」

のあ「隠れきれはしないでしょう。何らかのタイミングで動いてくる」

ブロロロン!

留美「そのようね。門側警戒待機!」

バヒューン!

のあ「蒼い巨大な改造二輪車、この前逃亡したものと一致」

留美「うそでしょう!パトカー踏み台にして塀を飛び越えたわ!」

片桐早苗『車両確認。オッケー、任せておいて!美世ちゃん、行くわよ!』

片桐早苗
交通課巡査部長。久々のサイレン爆走にワクワクすらしている。

原田美世
交通課巡査。早苗のバディ。普段はパトカーによる警邏担当だが、今日はバイク。

留美「二輪車は交通課にお任せね」

真奈美「のあ!」

のあ「お疲れ様。無事に逃げられたわ」

真奈美「無事にか」

のあ「そうね」

留美「その割には、美術館が騒がしいような……」

ビービービー!

のあ「警報」

真奈美「まさか」

留美「こちら、和久井、館内の様子を、何ですって、なにやってるのよ!」

のあ「行くわよ、なにかあったみたいだから」

真奈美「了解」



市立美術館・1階メインホール

真奈美「おい、大丈夫か!?」

のあ「警備員が一人倒れている。停電の隙をつき、大胆にケースを破壊。そして、ティアラを持ち去った」

真奈美「死んではいないみたいだな」

のあ「もう一人の警備員がいない。共犯とみて間違いないわ」

真奈美「共犯、今更になってか」

のあ「4回の前振りをして、その苦労に見合う価値があるものだったのかしら」

真奈美「わからん。消えた警備員の名前は?」

のあ「小室千奈美という女性警備員よ。何で逃げたのかしらね」

小室千奈美
市立美術館での警備経験も多い女性警備員。趣味はダーツ。

留美「やられたわ。単純に共犯者がいるとは」

のあ「まだ遠くへ行ってないはずよ」

留美「走り去る車両は見つけてる。黒色のミニバンよ。今、追わせてるわ」

真奈美「私達も追うか?」

のあ「どっちを?」

真奈美「古澤頼子はバイクだろう。追うならそっちじゃないか」

のあ「そう考えるのが普通よね」

真奈美「なにか、あるのか?」

のあ「いいえ、古澤頼子はそう素直な人間じゃないもの」

真奈美「なら、どうする?」

のあ「小室千奈美が乗ってると思われる車両を追うわ。少なくとも、ティアラはそっちでしょう」



路上

早苗「調子はどう?」

原田美世『きっちりと後ろにつけてます』

早苗「オーケイ。相手の様子は?」

美世『マシンのスペックを扱い切れてるようには思いません』

早苗「でしょうね。止められると思う?」

美世『もちろん』

早苗「いい返事ね、それでこそあたしの相棒よ」

美世『合流地点につきます。5、4、3』

早苗「2、1、ゼロ!」

キキー、ガシン!

美世「パトカー後部に接触して、該当車両転倒!被疑者投げ出されました!」

早苗「これまた行きよいよくぶつかったわね!大人しく倒れてなさい!」

美世「被疑者確保!」

早苗「ごめんね、ヘルメット外すよ……って、そんなぁ!」

美世「まさか」

早苗「あの大泥棒ではないようね、お嬢ちゃん?」

渋谷凛「お嬢ちゃんじゃないし。渋谷凛って名前があるから」

渋谷凛
古澤頼子の囮となった、15歳の少女。目立つピアスが特徴。

早苗「渋谷さん、お嬢さんじゃないなら、あなたのしたことはわかってるわね?」

凛「わかってる。だから、さっさと捕まえれば?」

早苗「最近の若い子はこんなんばっかりなの?そりゃ夏美ちゃんも苦労するわけだわ」

凛「……ふん」



車内

のあ「あれかしら」

真奈美「警察をまこうとしてるうちに、目の前に出て来たか。チャンスか?」

のあ「さぁ、どうかしらね。気づかれないように、静かに接近しなさい」

真奈美「了解、ん?」

のあ「助手席のドア、半開きなのかしら」

真奈美「いや、開いたぞ!人が落とされた!止まるぞ!」

のあ「警備員の制服よ。真奈美、確保を」

真奈美「車両は?」

のあ「近くの路地に入ったわ。私が追う」タッ!

真奈美「了解だ。大丈夫か!」

のあ「すぐに車は捨てたのね。人影はなし、どこかの建物に逃げ込んだのか、はては……、もしもし、留美?こっちに来てちょうだい。逃げられたわ」

真奈美「のあ!」

のあ「なによ、びっくりすることでもあった?」

真奈美「小室千奈美だった」

のあ「そう。運転手が古澤頼子だったのかしらね」

真奈美「あと、それとだな……、見ればわかるか。こっちに来い」

のあ「なにかしらね」

真奈美「これなんだが」

のあ「……似合ってるわよ、ティアラ」

小室千奈美「……酷い気分よ」

高峯探偵事務所

高峯探偵事務所
高峯のあが設立した探偵事務所。高峯ビルの3階。ここ最近はメディアに露出したせいか、お客さんが増えた。

のあ「先の事件の振り返りをしましょう。真奈美、文字に起こしてちょうだい」

真奈美「了解」

のあ「過去の4回と同様に、古澤頼子から犯行予告が届いた。ターゲットは市立美術館の目玉展示品、桃のティアラ」

真奈美「犯行時刻は21時。時刻通りに古澤頼子が登場」カタカタカタ

のあ「停電と同時に正面入り口から侵入。ターゲットの目の前まで来たところで、ライトに捕獲される」

真奈美「その後、逃走。裏庭に隠れると、まずは蒼い改造二輪が登場した」カタカタ

のあ「警察車両を突破し、逃走。しかしながら、片桐巡査部長と原田巡査によってこの車両と運転手は逮捕された。名前は……」

真奈美「名前はっと、未成年だったな」

のあ「名前は文書にはいれないで。渋谷凛、15歳。典型的な家出少女のようだけれど」

真奈美「今回の無免許運転含めて前科数犯で留置所へ送り届けられた」

のあ「家庭裁判所行きでしょうね。しばらくは自由になれない。しかし、彼女は今回の事件では役割は果たした」

真奈美「囮。古澤頼子は別の場所にいた。表に回ってきてたんだ」

のあ「これまで通りの単独犯と見せかけて、警備員小室千奈美という共犯者がいた。実際、実行犯は小室千奈美だった。停電及びターゲットを持ち去るまでは一人だった」

真奈美「単純に、古澤頼子は注目されるためだけに出て来たんだな」

のあ「その通り。小室千奈美は無事に警戒の浅い正面から出て行き、古澤頼子が運転していたと思われる自動車で逃走した」

真奈美「だが、これからが腑に落ちない部分だな」

のあ「ええ。古澤頼子は、私達に気づいた可能性がある。そこで、小室千奈美を車内から突き落した。それならいい、なぜ、小室千奈美にティアラを付けて落とした?」

真奈美「幸いかどうかはしらんが、小室千奈美にもティアラにも大した傷はなかった」

のあ「なぜ、ターゲットを捨てたのか。その意味はわからない」

真奈美「ティアラは無事に市立美術館に戻った。古澤頼子の定義したルールによると、お前の勝ちだな、のあ」

のあ「勝ちを譲られた理由はわからない。これで、3勝2敗。しかし、私の目標は古澤頼子を捕らえることであり、勝ち越すことではない。以上」

真奈美「以上、っと」

のあ「こんなもんで満足するかしらね」

真奈美「不用意な来客は減るだろ。それでだが、実際のところどう思う?」

のあ「秘密事項よ。まずは渋谷凛から。夏美によると、古澤頼子と直接会ったことすらなくて、仲介人から現金とバイクが支給されて、指示通りに動いただけのようね」

真奈美「裏はないのか?」

のあ「今のところ、そのような形跡はない。仲介人も電話でのやり取りのみだったようだし」

真奈美「ふむ、古澤頼子はビジネスライクというか本当に契約でしか動かない感じはあるな」

のあ「ええ。関わったけれど、命までは奪われなくて良かった」

真奈美「……そうだな。小室千奈美の方の供述はどうだ?」

のあ「こっちは、怪盗を演じている古澤頼子に直接依頼されて、今回の犯行を行ったことを自白したわ。しかし、思った以上に彼女につながる情報が得られない」

真奈美「……もし、そうなら」

のあ「ええ。鷺沢文香の二の舞になっていたでしょうね」

鷺沢文香
書店Heronの店主。古澤頼子と同居していたがゆえに、口封じのため射殺された。

真奈美「しかし、わからないな」

のあ「なにが?」

真奈美「目的が、だよ」

のあ「それは私も思っているわ」

真奈美「目的は、金か?」

のあ「古澤頼子は金に関しては困ってはいないわよ。むしろ、犯罪のために彼女は投資する側じゃない」

真奈美「なら、美術品収集が趣味か?」

のあ「その可能性はある。けれど、お金で解決できる問題よね」

真奈美「じゃあ、なんだ?」

のあ「他に考えれれることは、私との対決を華々しくやるため。つまり、単なる遊び」

真奈美「……はた迷惑な遊びだな」

のあ「単なる自己顕示な可能性もあるわ。いずれにしろ、明確な理由はこれと言って浮かんでこない」

真奈美「簡単な解決法があるさ。捕まえて、聞けばいい」

のあ「それもそうね。真奈美、さっきの文書、印刷して下の掲示板にでも貼っておいて」

真奈美「了解だ」

のあ「人避けになればいいけど。おいで、アッキー、あなたもご飯にしましょう」

アッキー「わん!」

アッキー
太田優の飼い犬。太田優が藤原肇に殺害されため、まゆに引き取られたが、まゆもいなくなってしまっため、のあが面倒を見るようになった。



幕間

留置所

2人部屋だ、仲良くしろよ。

ガチャン

凛「まぁ、屋根がある分悪くないんじゃないかな。同じ部屋のやつが暗いのが気になるけど」

凛「あんた、なにやって入ったの?人殺しか、へぇ、大人しそうに見えてやるじゃん」

凛「そんな目で見ないでさ、同室なんだから仲良くしようよ。私は渋谷凛、あんたの名前は?」

佐久間まゆ「……佐久間まゆです」

佐久間まゆ
のあの元同居人。山荘でクラスメイト二人を殺害した罪状により、現在裁判中。

凛「そう。これからよろしくね、まゆ」

幕間 了



高峯探偵事務所

柊志乃「こんにちは」

柊志乃
刑事一課柊班班長。警部補。次の公示で警部昇格かつ刑事一課長就任予定。それまでは勅命の任務に従事。

真奈美「柊警部補、お疲れ様です。何かご用ですか?」

志乃「高峯さんはいらっしゃるかしら?」

真奈美「いますよ。のあ!資料整理もいいけど、こっちに来い」

のあ「なにかしら」

真奈美「柊警部補が来てるぞ」

志乃「お久しぶり、高峯さん」

のあ「お久しぶり、志乃。警部に昇進するそうね、おめでとう」

志乃「まだ、祝ってもらえる状況じゃないわ。その、壁一面に貼り付けてあるのは何かしら?」

のあ「少し気になることがあるのよ。個々は別事件のように見えるけれど、そこにはラインがある」

志乃「その様子なら大丈夫そうね」

のあ「なにが?」

志乃「礼子、入ってきて良いわよ」

高橋礼子「お邪魔するわ」

高橋礼子
警察署長。古澤頼子とそのグループ検挙に向けて、準備を行ってきた。

のあ「あら、礼子。なにか用かしら」

真奈美「……お疲れ様です、高橋署長」

礼子「大した用じゃないわ。少しだけ意見が聞きたいだけ」

のあ「そう。それで、何が聞きたいのかしら」

礼子「その前にこちらから質問を。その図の左上は、なにかしら」

のあ「爆弾製作を秘密裏に行っていた町工場。一斉検挙は先週。6人が関与」

礼子「右下は」

のあ「違法コピー工場。雑居ビルの4階。2人が逮捕。海賊品の販売で儲けていた」

礼子「その上」

のあ「バイクショップ。少なくとも2台の改造車の製造を行った」

礼子「左下」

のあ「輸入工芸品店。地下で違法拳銃の販売を行っていた。店主が逮捕。お客とバイヤーを指名手配中」

礼子「中央上」

のあ「指定暴力団。麻薬取締法違反の現行犯で多数の逮捕者。資金は持ち逃げされ、ほぼ壊滅状態に陥った」

礼子「右上は違うわね」

のあ「それはそうでしょう。これから行くところなんでしょう?」

礼子「誰かから聞いたのかしら」

のあ「違うわ。こっちの独自調査よ。おそらく、ハッカーもしくは詐欺グループ」

礼子「情報源は」

のあ「ウワサ。そのビルには会社を装って法人格まで取得しているが、内情は犯罪グループというウワサがこの近辺で流れている」

礼子「正解。あと2時間後にはガサ入れに行くわ」

のあ「署長直々とは大した犯罪グループね」

礼子「個々のグループは大したことがないわ。だが、その裏が気になるのよ」

のあ「捕まえる分にはいいじゃない、志乃の昇格にも一役かったんだから」

礼子「……つかまり過ぎて気味が悪いわ。なぜだかわかるかしら」

のあ「古澤頼子が意図的に潰している」

真奈美「……ほう」

礼子「前段階すべて飛ばして結論に行ったわね。その結論に至る過程は?」

のあ「まずは爆弾、これは安部菜々が佐藤心を殺害したものと同様のものだと推測される」

礼子「警察の見解ではその通りよ」

のあ「バイクは言わずもがな、古澤頼子が実際に使用したもの。銃器は古澤頼子の部下にも回っているでしょうね」

礼子「ええ」

のあ「指定暴力団の麻薬取引には仲介人がいた。仲介人が殺害され、取引だけが世間の明るみに出た。仲介人の上は見えてこない」

礼子「何故、彼女は暴力団に不利益を加えたか、意見は」

のあ「犯罪を提供してるのに、古澤頼子は犯罪者が嫌いよ。特に、自分の関与してない犯罪者は。事のついでに、潰したというのが私の予想」

真奈美「……ついでに、暴力団壊滅させるのか」

のあ「違法コピー設備費の資金源が怪しい」

礼子「それは調査中よ。スイスの銀行らしいけれど」

のあ「これからあなた達がいくグループは、電子機器の作成、要するに盗聴器やその類の製造をしている」

礼子「よく調べてるわね」

のあ「これはただの推測。その様子だとあたりのようね。真奈美、これらの共通点とされるものは?」

真奈美「古澤頼子か」

礼子「その通り。ここ最近まで尻尾の影すらつかませなかった理由もわかったわよ」

のあ「なにかしら」

礼子「高峯さんの言う通り、これらは個々の事件に過ぎない」

のあ「古澤頼子は関与してない、と?」

礼子「違うわ。それはあなたがよくわかってるでしょう」

のあ「ええ。タイミング的にも関与がないとは思えない」

礼子「これまでに逮捕した人々は古澤頼子という人物すら知らなかった」

のあ「古澤頼子には手先となる人物がいる。どうやら、優秀なようね」

礼子「違うわ」

のあ「違う?」

礼子「古澤頼子に命令や指示を受けた、直接的に関係ある人間はもういないのよ」

真奈美「……どういうことだ」

志乃「バイク屋を除けば、全て代表者が代替わりしていたのよ」

のあ「それが意味するところは、資金、設備、技術だけを残し、自らの足跡を消した、ということで間違いないのね」

礼子「そうよ。それらが誰から与えられたかも知らないまま、犯罪を続けていたグループがほとんどよ」

のあ「上の存在すら知らない、か」

礼子「古澤頼子は犯罪組織のトップとして君臨する気はさらさらなかったようね。だから、個々を独立させた。自分の存在を消し去りながら」

志乃「自分が利用するために、ね」

真奈美「その組織の代表者は、どうなったんだ?」

のあ「聞くまでもないでしょう」

礼子「死亡と行方不明のどちらかよ」

志乃「ついでに言うけど、バイク屋は火事で全焼したわ。店主夫婦と息子が死体で発見」

のあ「古澤頼子の関与を立証できる?」

礼子「手は尽くすわ」

のあ「まだ出来ないという回答でいいのね、それは」

礼子「……そうよ」

のあ「わかったわ。聞いていいかしら、安部菜々の犯行をおさめた映像は公開した?」

礼子「してないわ。見せたところで、うるさい野次馬が増えるだけでしょう」

のあ「賢明だわ。古澤頼子と犯罪グループの関与に言及したことは?」

礼子「ないわ。そもそも、私と志乃含めて一部しか可能性すら知らないでしょうね」

のあ「ふむ」

礼子「その様子なら答えられそうね、期待を込めて聞くわ、探偵高峯のあ」

のあ「なにでしょう」

礼子「古澤頼子が関与していると思われる事項はあるでしょう。言ってみなさい」

のあ「ええ。大なり小なりの犯罪グループが、意図的な情報漏洩で警察に影を掴まれた」

礼子「古澤頼子がやっていると考えてもあながち的外れではないでしょう」

のあ「一か所ならともかく全てに関与しているとしたら、古澤頼子しかいない。では、何故潰すのか」

礼子「要済みになった以外の理由があるとしたら、それは何かしらね」

のあ「犯罪者を減らし、身の危険を減らすこと」

真奈美「それじゃ警察じゃないか」

のあ「違うわ。さらに警察が警備を強化している。県外から応援も来てるのでしょう?」

礼子「そうよ。人手は古澤頼子の怪盗ごっこの件も含めていくらでも欲しいくらいだから」

のあ「この図を見てちょうだい。これはなにかわかるかしら」

真奈美「落書きだな。アーティスティックな落書きグループがいるらしい」

礼子「……志乃、これの担当は」

志乃「相馬夏美巡査部長」

礼子「そういうことね」

真奈美「どういうことだ、のあ?」

のあ「古澤頼子が使っているグループは、未成年よ。家出少年や少女とか、不良グループといったね。未成年が学生時代なら許される軽犯罪をしやすい状況を作り出してる」

真奈美「そりゃまた難儀だな……。だが、目的はなんだ、なにをやろうとしてる?」

のあ「それはわからない」

礼子「来て良かったわ。少年犯罪に関して警戒を強めるわ。志乃、行きましょう」

志乃「ええ。お邪魔したわね、高峯さん、木場さん」

のあ「構わないわ。いつでも来なさい」

礼子「最後に一つだけ聞くわ。その大きく丸が書かれたカレンダーの日付に意味はあるの?」

のあ「これは、みくにゃんのライブの日よ。ここまでには何とかしたい、いや、するわ」

前川みく
のあが愛するねこちゃんアイドル。人気急上昇中。そんなみくにゃんのライブが行われるとあって、街には前川みくブームが到来している。

礼子「……」

真奈美「……そんな理由だったのか」

のあ「野外特設ライブステージ、絶対に気持ち良く迎えてやるわ。首を洗って待ってなさい、古澤頼子」

志乃「私の部下といい、熱心なファンが多いね……」

10

高峯探偵事務所

のあ「誰か来るわ」

真奈美「騒がしいな、誰だ?」

バターン

相馬夏美「お邪魔するわ」

相馬夏美
生活安全課少年班所属巡査部長。所轄内ではホープとの呼び声高い。少年犯罪撲滅に対して並々ならぬ熱意を注いでいる。

のあ「あら、夏美。そんなにかりかりして、シワが増えるわよ」

夏美「余計なお世話よ。なんか掲示物剥がして持っていこうとしたから、連れて来たわ」

のあ「その子を?」

南条光「その子じゃない!アタシには南条光って名前があるんだ!」

南条光
ヒーローに憧れる女の子。まだまだ少年らしさが残る年齢。

のあ「そう。その南条さんが何のようかしら?」

光「いや、その、えっと……」

夏美「とりあえず謝りなさい。掲示物を持って行くのは犯罪よ」

光「……」

夏美「ほら」

光「アタシ、お姉さんのファンなんだ!サインください!」

夏美「あのねぇ!」

のあ「そんなに怒らなくていいわよ、夏美」

夏美「でも、こういうことはきっちり……」

のあ「その紙は持って行っていいわよ、南条さん」

光「やった!事件記録とかレアものなんだ」

のあ「夏美、要は犯罪をなくせばいいんでしょう」

夏美「まぁ、そうだけど」

のあ「真奈美、これまでの文書ネットにあげといて」

真奈美「あの超簡素な高峯探偵事務所のホームページにか?」

のあ「そうよ。別にいいでしょう」

真奈美「わかった」

のあ「そういうことだから。今度はホームページでも見て、南条さん」

光「あ、ありがとう!」

のあ「これでいいわね、夏美」

夏美「……いいわ」

光「ねぇねぇ、サインを!」

のあ「いいわよ」サラサラサラ

光「やった!」

夏美「この人のどこがいいのかしらね」

真奈美「まったくだ」

のあ「なによ」

光「お姉さんはカッコイイんだ、泥棒と戦ってるんだろ?」

のあ「……そうよ」

光「お姉さんは本当にヒーローみたいなんだ!空想とかドラマじゃない、本物なんだ。だから、アタシ憧れてて……」

のあ「……」

真奈美「なんか言ったらどうだ、のあ」

のあ「ありがとう。あなたのヒーローでいられるように、頑張るわ」

光「うん!」

のあ「夏美、連れて行ってあげて」

夏美「ええ。ほら、忙しいんだから行くわよ」

光「ええ~」

夏美「私からは色々と言いたいことがあるのよ。いいわね?返事は?」

光「……はい」

夏美「よろしい。それじゃ、お邪魔したわね」

のあ「夏美、あとで連絡をちょうだい」

夏美「わかった」

のあ「落ち着いたらまた来なさい、南条さん。今度はゆっくりお話しできると思うわ」

光「モチロン!またね!」

夏美「不問にしてくれたんだから、もう少し感謝しなさいよ」

バタン

真奈美「とりあえず、ホームページにあげておいたぞ」

のあ「ありがとう」

真奈美「……嘘をつくのは辛いな」

のあ「嘘はついていないわ。泥棒と戦ってるのは、本当」

真奈美「でも、相手はただの泥棒じゃない」

のあ「そうなら良かったのに。それで、真奈美、ひとつ気になったのだけれど」

真奈美「なんだ?」

のあ「私はヒーローじゃなくてヒロインじゃないのかしら?」

真奈美「日本語で『ヒーロー』は特殊な意味を持つ言葉だ。女性形でヒロインにしていいものじゃないんだよ」

のあ「ふうん、そういうものなのね」

真奈美「ヒーローになるか、のあ」

のあ「ええ、必ず。小さなファンの期待ぐらいには応えないと」

11

高峯ビル前路上

仙崎恵磨「お疲れ様です!」

仙崎恵磨
生活安全課少年班所属巡査。夏美のバディ。小柄だからといって侮ると痛い目にあう女性警察官。

夏美「無事に終了。次の所に行きましょう」

恵磨「あの子はいいんですか?」

夏美「十分に叱っておいたわ。根は素直みたいだし、反省してくれるでしょ」

恵磨「ハハ。夏美さん、怒ると怖いから、怯えてたりして」

夏美「そんなに怖いかしら」

恵磨「大丈夫ですよー。次は落書きが増えたっていう通報でしたっけ?」

夏美「そうよ」

恵磨「了解です。車を出しま……」

ドン!

恵磨「バックミラーで黒い物体が通過を確認しました!」

夏美「ちょっと出てくるわ」

恵磨「アタシも行きます!」

夏美「……なにこれ」

恵磨「矢文、とかいうものだと思うのですが」

夏美「こんなハイテクな矢に文をつけるのね」

恵磨「これ、高峯ビルの掲示板ですよね」

夏美「おそらく、今話題の犯行予告でしょうね」

恵磨「呼んで来ます!」

夏美「よろしく」

12

高峯探偵事務所

のあ「矢について何かわかった?」

真奈美「アーチェリーとは違うようだな。なんていうか、これは……」

のあ「これは?」

真奈美「武器だ。薄い金属装甲なら突き破れるぞ。実際先端はコンクリートに刺さってた」

恵磨「弓手の位置ぐらいなら、特定できるんじゃないでしょうか?」

夏美「出来るでしょうね。応援を呼びましょう」

恵磨「了解です。先に車に戻ります」

夏美「お願い」

のあ「しかし、矢文とはね」

真奈美「差出人は古澤頼子か?」

のあ「そうよ。6回目の犯行予告」

夏美「あの怪盗ね。次の目標は?」

のあ「絵画。オランダの画家のものだったかしら」

夏美「そう。矢の件もあるから、お気をつけて。さっきみたいな野次馬も多くなるから、そこは注意してよ」

のあ「わかってる。夏美、お願いがあるのだけれど」

夏美「何かしら?」

のあ「ここ最近の少年グループの犯罪で目立つものはある?たとえば、組織的な犯罪とか」

夏美「落書きくらいかしら。ただ、それ含めて軽犯罪とはいえ、数は増加傾向よ。忙しいんだから。だって、今からも検分なのよ」

のあ「ありがとう。そっちに人を割いてくれるといいわね」

夏美「ええ、たびたびお邪魔したわね」

のあ「ご健闘を」

13

車内

真奈美「落書きはどうだって?」

のあ「構図に相関は見られないらしいわ。作者は同じのようね。ただ、次の犯行場所がなんとなくわかったわ」

真奈美「本当か?」

のあ「ええ。理由はこれからつめるけれど」

真奈美「そうか。犯行予告の詳細は?」

のあ「場所は涼宮邸。狙いは所蔵してる絵画のうちの一つ。時刻は20時。今回は単独犯だということを明記してたわ。信頼できるかというと微妙だけれど」

真奈美「ふむ。それで、今回は勝算があるのか?」

のあ「現地で考えるわ。真奈美、バックミラー確認」

真奈美「おっと、つけられてたか」

のあ「恐らく記者だから無視していいわ。どうせ、いつかは誰かが公表するんだから」

真奈美「了解」

のあ「私よりも、古澤頼子の正体でもつかめばいいのに」

真奈美「確かにな。ただ、簡単には姿を現さないからのあを追ってるんだろう」

のあ「迷惑な話ね。捕まえて与えてしまえばいいのかしら」

真奈美「そうだな」

のあ「さて、次はどうくるのかしら、古澤頼子」

14

幕間

青い衣装に袖を通すと気持ちが変わっていくのを感じる。

メイクをして、深い赤のルージュを塗る。

涙ボクロを描いて、モノクルをつけ、大きなハットをかぶる。

小さく呟く、「変身」。

さて、行きましょうか。

15

鳴り響く警報と警官の声。

失敗しました。絵画の目の前にすらたどり着けなかった。

大丈夫、それは失敗してもいいから。

今はただ、ここから逃げることだけを考える。

十重二十重に練られた逃走ルートが潰されていた。

でも、走るスピードは落とさない。落としちゃいけない。

たった一つの光明を見つけて、そのわずかな光にすがりつく。

この道さえ抜ければ、私の勝ち。

だけれど、その人はそこに立っていた。

のあ「稚拙ね、古澤頼子」

探偵高峯のあ……

のあ「この道さえ抜ければ雑木林だものね。もっともセーフティなルートを第一に選ばないのがあなたらしいわ。だけれど、こうしてこの道もつぶれた」

後退は出来ない。警察官が来ている。

のあ「私の勝ちよ」

こんな所では負けたくない。じっと観察する。まばたきと呼吸、その狭間を。

のあ「こないなら、こちらから行くわ」

ここだ。動きはじめの一瞬を狙う。

しかし、彼女は上手だった。

襟が掴まれて、足が払われた。容赦すら感じられなく床へと叩きつけられる。切れ味鋭いカミソリが如き払い腰。

のあ「捕らえた」

背中を打ちつけられて、うまく呼吸が出来ない。後ろから近づく足音まで大きくなっていた。

負けた、負けてしまった。

のあ「いや、まさか……古澤頼子じゃない、なんて」

こんなところで、こんなことも出来ないなんて。私はただ誰よりも綺麗に、映りたかっただけなのに。

のあ「名前を名乗りなさい、怪盗」

井村雪菜の舞台はこれで終わってしまいました。

井村雪菜
変身願望の強い女子高生。メイクや衣装についてのこだわり強い。古澤頼子に変身し、今回の犯行に臨み失敗した。

幕間 了

>>41
×こだわり強い
○こだわりが強い

16

高峯探偵事務所

のあ「……何故」

真奈美「考えることが多いのはわかる。だがな、ご飯くらい食べろ」

のあ「食べてるわ」

真奈美「バランスよくしっかり食べろって言ってるんだ」

のあ「うるさいわね、真奈美」

真奈美「あのな、私はお前のことを心配して言ってるんだぞ」

のあ「それなら聞くけれど、ここまでの事態に納得は出来る?」

真奈美「出来ないさ」

のあ「でしょう。明らかにおかしいわ」

光「こんにちは!」

のあ「あら、こんにちは。今日は何か用かしら?」

光「お姉さん、やったな!」

のあ「なにのことかしら」

光「だって、泥棒捕まえたんだろ?凄いじゃないか!みんなこの話題で持ちきりなんだ!」

のあ「……そうね。どういう感じの話になってるの?」

光「怪盗古澤頼子を名乗っていた女子高生を捕まえたんだ。その知力を生かして、一本道に追い詰め、最後は柔道の技で捕らえた。凄いよ!」

のあ「やはり、そういう話になるのね」

光「あと、それと、次の落書きの場所も当てたんだよな!リーダー格が逮捕されたって、ニュースで見たぞ!」

のあ「……」

光「どうしたの、お姉さん?」

のあ「ありがとう。真奈美、この前の文書印刷して南条さんにあげて」

真奈美「了解」

のあ「ごめんなさいね、南条さん、これからお仕事があるのよ。また、来てちょうだい」

光「うん!」

真奈美「はい、これを。ホームページでも見れるぞ」

光「ありがとう!またな、お姉さんたち!」バタン

のあ「……この事態も古澤頼子の想定内なのかしら」

真奈美「わからない」

のあ「井村雪菜のところに行きましょう。車を回してきて、真奈美」

真奈美「わかった」

17

高峯探偵事務所前

八神マキノ「高峯のあさん、ですね?」

八神マキノ
某雑誌記者。上昇志向が強く、日夜スクープを追い求めている。

のあ「……知ってるでしょう」

マキノ「ええ。有名人ですものね。私はこういうものです」

のあ「ご丁寧に名刺をどうも。八神マキノさんね」

マキノ「はい。とある雑誌で記者をやってるわ。小さな雑誌だけど。お話をお聞きしても?」

のあ「真奈美が来るまでよ。事件についてはネット以上のことは何もないわ」

マキノ「大丈夫です、聞きたいのはあなたのことなので」

のあ「手短にお願い」

マキノ「高校を中退してる理由を知りたいわ。あなたほどの頭脳を持つ人が」

のあ「……なるほど。ゴシップ誌の記者なのね」

マキノ「雑誌自体はね。所属は関係ないわ、私には記者としての矜持があるの。今は、より深い真実を知りたいだけ」

のあ「言葉の裏に、自己顕示欲が透けて見えるわよ。車が来たわ、これで終わりよ。あと、日頃からつけるのはやめなさい」

マキノ「あら。気づいていたの。さすが探偵さん。これから警察に行くんですか?」

のあ「そうよ」

マキノ「記者がつめてますから、気をつけることね。私みたいな良心的な人達とは限らないわよ」

のあ「ご忠告ありがとう。お礼にあなたの質問に答えてあげる、興味がなかったからよ。そして、今の私にそれが何も影響してない」

マキノ「単純な回答ね」

のあ「真奈美、出して」ブロロロ……

真奈美「誰だったんだ?」

のあ「記者よ。八神マキノ、っと。記事署名型のライターなのね、過去の記事が多く辿れるわ」

真奈美「どんな感じの記者なんだ?」

のあ「ふむ。本人の言う通り、デタラメなゴシップを書いて金銭を得てるわけではないようね。私のことも既に書いているわね」

真奈美「どんな感じだ?」

のあ「事実はよくまとまってるわ。ただ、考察や私本人についてはちょっと筆まかせすぎるわね。良いものを書きたい、そういう意思は感じる」

真奈美「そうか。ところで、のあ、取材依頼が増えてるが、どうするつもりだ?とりあえず返答待ちにしているが」

のあ「出る意味はないわ。すべて断ってちょうだい。警察の発表が全て、そう伝えて」

真奈美「了解だ」

のあ「しかし、井村雪菜の逮捕に浮かれ過ぎてるわ。これまでの古澤頼子と別人であることも公表してるのに、妙に反応が鈍い」

真奈美「私たちから見てもおかしい事態なんだ。一般人がわかりやすい方へと流れるのは仕方がないさ」

のあ「そうね。この事態とその意味は、井村雪菜に問いただすしかないわね」

18

警察署内

真奈美「慌ただしいな」

のあ「井村雪菜の件だけじゃないもの。犯罪グループも大量に捕まってる」

夏美「のあさん!」

のあ「お疲れ様、首尾は?」

夏美「あまり良くないわ。ほとんど供述しようとしないし」

のあ「会える?」

夏美「本当はいけないんだけど、今回は仕方がないわ」

のあ「落書き犯の方は?」

夏美「今、恵磨ちゃんが聴取してるわ。誰かの指示で動いていたのは間違いなさそうよ」

のあ「古澤頼子?」

夏美「名前は知らないらしいわ。会ったことはないみたいね」

のあ「それは後にしましょう。ますは、井村雪菜の所に案内してちょうだい」

夏美「了解」

のあ「真奈美は犯罪グループの件の進展具合を聞いて来て」

真奈美「わかった」

19

警察署内・取り調べ室

のあ「名前をお聞きしていいかしら」

雪菜「……井村雪菜」

のあ「高校生なのね」

雪菜「……はい」

のあ「化粧はさせてもらっているのね。まるで、別人ね」

雪菜「……そうですか?ありがとうございます」ペコリ

のあ「……古澤頼子という名前は知ってる?」

雪菜「……はい」

のあ「その意味は?」

雪菜「怪盗の名前、私が変身する人間の一つ」

のあ「そうね。あなたにとってはそうでしょう。でも、違う。あなたが古澤頼子になったのはあの夜だけよ。そうね?」

雪菜「……違います」

のあ「嘘よ。それなら衣装はウィングスーツでもいいはずよ」

雪菜「……」

のあ「あなたに依頼した人間はいるのかしら、たとえば5回目までの古澤頼子」

雪菜「……」

のあ「……」

雪菜「……」

のあ「そう、答える気はないのね。質問を変えましょう。何が、あなたを今回の行動に駆り立てたの?」

雪菜「……変身、そして輝く舞台に立ちたかった」

のあ「それなら役者でもなんでもいいはずでしょう。古澤頼子になるメリットは何?」

雪菜「……」

のあ「……」

雪菜「……」

のあ「今日は終わりにしましょう。また来るわ」

雪菜「……その時は、ちゃんと答えます。今は、落ち着かせてください」

のあ「わかったわ」

20

警察署内

夏美「捕まってからずっとあんな調子よ」

のあ「そのようね。肝心なところで口をつむぐ、かつこれまでの犯行をすべて自分のものにしようとしてるわね」

夏美「ええ。気になったのはその二つよ。結局住居侵入くらいしか罪状がないから、罰金で釈放になりそうなのに、それを拒んでいる様子すらあるの」

真奈美「誰からの支持か?」

のあ「その可能性はあるでしょうね。次は話すと言っていたのも、特定期日までは黙秘するのを指示されている可能性もある」

夏美「こっちはこんな感じよ。貴重な証言をメディアが垂れ流すおかげで、解決ムードだけど、内情は違うわ」

のあ「わかってる。忙しいのにごめんなさいね、夏美」

夏美「いいえ。これから、恵磨ちゃんのところに行くけど、ついて来る?」

のあ「ええ。ヒントになるかもしれないわ」

夏美「こっちよ」

21

警察署内・少年班デスク

夏美「あの子が、落書きの主犯格よ。のあさんの予想通りの場所で、落書きをしてるのを発見して、現行犯逮捕したわ」

のあ「そう」

恵磨「本当に、誰から命令されたのか知らないの?」

吉岡沙紀「本当に知らないっすよ。顔はわかるけど」

吉岡沙紀
街中に急に増えた落書きの主犯格。ボーイッシュでアーティスティック。

恵磨「顔はわかるのに、誰かわからないのはおかしいと思うんだけど」

夏美「こっちもこんな調子よ」

のあ「彼女の名前は?」

夏美「吉岡沙紀。しばらく家に帰ってなくて、そもそも補導対象だったから知ってるわ」

のあ「ふむ」

沙紀「だから、さっき言った通りっすよ。寝床とか友達の家とか行くと、タブレットとかケータイが置いてあって、中に画像データと指示の動画ファイルが入ってるだけ」

恵磨「その動画ファイルに顔が?」

沙紀「そう」

恵磨「どんな感じの人?」

沙紀「いつも同じ、キレイな女の人っしたね」

恵磨「タブレットとケータイは?」

沙紀「常に捨てろって言われるんで、終わったら捨てるんすよ。捨てると人づてに郵便物がまわってきて、報酬が支払われるって形式っす」

恵磨「報酬は現金?」

沙紀「その時によってマチマチっす。金券とかね」

恵磨「なんで、こんなことを?」

沙紀「お金が必要だからっすよ。ついでにアートも出来る、いい仕事」

恵磨「犯罪なんだぞ。わかってる?」

沙紀「はいはい、わかってるっす」

恵磨「反省するんだよ。夕方にはご両親も来るんだから」

沙紀「えー、ウチに帰らされるんすか、嫌っすねー」

恵磨「これを機に仲直りしたら?」

沙紀「だって、アートのアの字も認めない連中っすよ。無理っす」

恵磨「わかった。アタシから話してみるよ、それからは自分でがんばる、いいよね?」

沙紀「……了解っす」

夏美「恵磨ちゃん、お疲れ様」

恵磨「お疲れ様です。調書はまとめておきます」

夏美「ありがとう。私からも話を聞いていい?」

沙紀「いいっすよ。でも、大半はこのお巡りさんに話したっすよ?」

夏美「いいわ。高峯さん、こっちへ」

のあ「こんにちは。吉岡沙紀さんね?」

沙紀「へ?うそっすよね?」

夏美「どうしたの?」

沙紀「いやいや、だって、アタシに指示してたの、この人っすよ?」

恵磨「……え?この人、探偵だよ?」

沙紀「この人の顔を覚えたら間違えないっす。あの美人は間違いなく、この人」

夏美「そうなの?」

のあ「まったく心あたりがない。こっちから質問をさせて、吉岡さん」

沙紀「なんすか?」

のあ「動画ファイルの顔と声は私のものだったのね?」

沙紀「なに言ってんすか。その通り」

のあ「でも、電話やメールではないのでしょう?」

沙紀「そうっす」

のあ「なら、どうとでも用意できるわ。どんな動画ファイルか知らないけれど、それは私の指示じゃないわ」

沙紀「わけわからない。何でそんなことする必要があるんすか?」

のあ「私もわからないわ。あなたは支持者の意図や、指示された落書きの意味はわからないのね?」

沙紀「ええ。場所を提供してくれるから、自分の描きたいものと指示されたものを書くだけ、それしかしてないっすよ」

のあ「なるほど。わかったわ。私はこれで」

夏美「恵磨ちゃん、吉岡さんはよろしく」

恵磨「了解です」

夏美「どう思う?」

のあ「とりあえず、指示された絵がどれか聞きだしておいて」

夏美「わかったわ」

のあ「私も調査を続けるわ。古澤頼子の真意に迫らないと」

夏美「ええ」

のあ「明日、また来るわ。井村雪菜が口を開きそうだったら、教えてちょうだい」

夏美「了解。ご健闘を」

22

警察署前

真奈美「進展はあったか?」

のあ「私が落書きの指示役にされてたわ。誰が指示したかはわからない」

真奈美「そりゃ変な話だが、のあを使う以上は……」

のあ「古澤頼子でしょうね」

真奈美「井村雪菜の方はどうだった?」

のあ「話そうとしないわ。出直しね。そっちは?」

真奈美「この前言っていた件は、のあの言った通りのグループだったみたいだな。電子機器と情報機器、もちろん犯罪につながる物の製造販売。あとは、窃盗団とその足役がいるグループが検挙されたらしいぞ」

のあ「他のグループの情報は?」

真奈美「とりあえずこれで打ち止めみたいだな」

のあ「記者が近付いてくるわ。群がる前に、事務所に帰るわよ」

真奈美「了解だ」

23

八神マキノの自宅

マキノ「高峯のあ。中学生の時に両親と死別。親の遺産で十分な資産があるようね。清廉潔白で冷静沈着だが、感情が高ぶると声を荒げる面もある。もっと、彼女の秘密につながりそうなことはないかしら……」

ピンポーン

マキノ「どなたかしら」ガチャ

頼子「……」

マキノ「あなたは……」

頼子「鷺沢文香、と申します」

マキノ「私には、別人に見えるわ。古澤頼子に見えるのだけれど」

頼子「それは違うんです!お願いがあります。私を、取り戻してください……高峯のあから」

マキノ「取り戻すって、どういうことかしら。それに、高峯のあって……」

頼子「私は、あの人に作られたんです。あの人が光として輝くために」

マキノ「……なるほど。探偵高峯のあの光と影。これはスクープだわ」ボソッ

頼子「私は、本当の私でいたいだけなのに……」

マキノ「思いつめた顔をしてるわね。入って、詳しい話を聞くわ」

頼子「……フォール」ボソッ

24

幕間

水野翠「月が綺麗ですね……」

水野翠
射手。放課後に、的以外の物を打ち抜く仕事をするようになった。

翠「高峯のあに動きはありません」

翠「そうですか。明日には……かしこまりました」

翠「吉報をお待ちしております」

翠「それではごきげんよう、古澤頼子様」

幕間 了

25

高峯探偵事務所

真奈美「のあ!」

のあ「なによ、朝っぱらからうるさいじゃない」

真奈美「とりあえず、これを見てくれ」

のあ「なにごとなの?」

真奈美「いいから、早く!」

のあ「わかったわよ。地元紙じゃない、号外なんて珍し、い……」

真奈美「読んだか、お前の記事だ」

のあ「今、読んでるわ。何よ、これ」

真奈美「電話も鳴りっぱなしだ、さっき電話線を引き抜いた」

のあ「ありがとう。それでいいわ」

真奈美「それで、真偽のほどは?」

のあ「嘘に決まってるでしょう。ずっと見てきたじゃない」

真奈美「当り前だ。事実無根に決まってる。だが、やられたぞ」

のあ「これが目的だったのね、古澤頼子……!」

『事件は全て彼女の作り物だった!探偵高峯のあ、その光と影』記者 八神マキノ

26

高峯探偵事務所

真奈美「……記者が多いな」

のあ「じっと隠れていましょう。警察が来るまでは。志乃達が来てくれるはずよ」

真奈美「テレビでもつけるか?」

のあ「お願い」

真奈美「これは私も仕事に出れそうにないな」ポチッ

のあ「それがいいと思うわ。……八神マキノが出てるわね」

マキノ『勇気を持って告白してくれた鷺沢文香氏に感謝です』

のあ「まず、その名前を調べようとはしなかったのかしら」

真奈美「違うんだ、のあ。私達が知ってる鷺沢文香とは別人に当たってしまうんだ」

マキノ『鷺沢文香氏は劇団員です。しかし、それが原因で高峯のあに目をつけられた』

のあ「捏造された鷺沢文香という人物がこの街に引っ越して来てるのね。ご丁寧に両親のインタビューまで……」

真奈美「この鷺沢文香の両親の方が劇団員だと思うんだがな」

マキノ『高峯のあは細々と探偵活動をしていたが、彼女の演技とその才を見て、自分の中の自己顕示欲を抑えきれなくなった』

のあ「私はあなたに忠告したでしょうに。それにどっぷり漬かってるわ、だから見失う」

マキノ『怪盗、古澤頼子という存在を作り出すことで、自らの名を世に知らしめた。昨日までの彼女は本当にヒーローだったでしょう?』

真奈美「くそっ。勝手に決め付けて、勝手に失望してるだけじゃないか」

マキノ『結論はこうです。より光るために影を作った。天才探偵は、天才犯罪者でもあったのよ』

のあ「……引きずりだされたわ。自分が表に出るのも本当じゃない、怪盗も本意じゃない、高価な美術品もいらない、私を表舞台に出すことが目的だったのね」

真奈美「今となってはそうみたいだな。大々的に怪盗じゃない古澤頼子がテレビに映る日が来るとは思わなかった」

マキノ『警察は完全にこれを否定しています。探偵高峯のあは古澤頼子を追っていると。だけれど、それならば何故この映像を秘匿していたのでしょうか。警察関係者もこれは手に入れているはずなのです』

真奈美「こ、これ、安部菜々の事件で古澤頼子が残していった映像じゃないか!」

のあ「あっちから出してくるとはね。愉快犯の凶行にしか見えないはずなのに、前提が違うとこうも違うとは」

真奈美「劇団員に撮影させた、それが一番納得しやすいな」

のあ「わざわざ自分の犯行を晒すなんて、考えもしない。やるわね」

マキノ『鷺沢文香さんの居場所ですか?それは秘密です。危険が及ぶ可能性がありますから』

のあ「隠れるくらい古澤頼子なら簡単でしょう。聞きたいわ、あなたは今現在古澤頼子の居場所を知ってるのか、と」

マキノ『警察は古澤頼子が多種の犯罪に関わってるとウワサしているようですが、それは違います。彼女はあくまで、古澤頼子という作られた存在なのです』

のあ「これで、ただの怪盗じゃなくなったわ」

マキノ『全ては高峯のあが張った網の上なのです。彼女は、犯罪を教唆し、物資を与え、自ら解決している。相手にも気づかれないまま』

真奈美「古澤頼子の存在が消えるのか……」

のあ「犯罪グループなんてこうなったら不要。邪魔だから、消した、それだけ」

マキノ『警察との関係も深いですから、いくらでも証拠を操作できます』

のあ「探偵をなんだと思ってるのかしら」

マキノ『鷺沢文香氏からの取材を私は続けますので、私はここで失礼します』

真奈美「良く出来たストーリーだな」

のあ「自分で書いてるつもりでしょうけど、古澤頼子に書かされてるわ」

ドンドン!

真奈美「登って来た人がいるのか?」

のあ「見てきなさい」

真奈美「……南条君だ。入れるか?」

のあ「……入れて。世間の反応がどうなってるか、知りたい」

真奈美「入っていいぞ」

光「……」

のあ「おはよう。何かご用かしら」

光「全部ウソだったのか?」

のあ「……」

光「本当にヒーローだと思ってたのに、全部ウソなのか!」

真奈美「……のあ」

光「全部作り物だったのか、それじゃテレビ番組と変わらないじゃないか!」

のあ「……」

光「何か言ってよ、どっちなんだよ!」

のあ「……どっちでもいいわ」

光「ウソツキ!お姉さんなんかヒーローじゃない!」ダッ!

真奈美「おい、南条君……行ってしまったか」

のあ「ヒーローではいられなかったわね」

真奈美「なんで、否定してあげなかったんだ」

のあ「そもそもヒーローじゃないもの。すべて古澤頼子が作った幻想よ」

真奈美「……辛くないか」

のあ「別になんとも。こんなことでは負けないわ」

真奈美「そうだな」

のあ「それにね、真奈美」

真奈美「なんだ?」

のあ「本当のヒーローはもっと地味な存在よ。それに気づいてくれるといいけれど」

27

警察署内

夏美「のあさん!」

のあ「夏美、何かあった?」

夏美「井村雪菜が急に話し始めて、今聴取が終わったところよ。それより、今朝のニュースはすべて嘘なんでしょう!?」

のあ「ええ。警察内ではそういうことになってる?」

夏美「署長が断言したからね。でも、疑ってる人もいるかも」

真奈美「困ったな……」

のあ「それで、井村雪菜は何と?」

夏美「私は手柄にされたんだ、と」

のあ「手柄?」

夏美「のあさんの評価のためには実際に逮捕される役割が必要だったから、未成年の私にやらせたんじゃないか、って」

のあ「そういうことになってるのね。私が指示したことになってるの?」

夏美「いいえ。井村雪菜が言うには鷺沢文香、つまり古澤頼子からの直接指導と指示をされたと供述してるわ」

のあ「自分の存在をニセモノにするとか、信じられない感性ね」

夏美「ええ」

のあ「まずは古澤頼子の言い分がそのまま通る八神マキノとメディアを利用して、少年犯だからといって警察の速度が鈍るのを利用してるわね。このままだと後手後手よ」

夏美「わかってる」

真奈美「このままだと追い詰められるぞ、どうする?」

のあ「古澤頼子を捕らえるしかないでしょうけど、厳しいのかしら」

夏美「詳しくはわからないわ。柊さんあたりに聞いてみないと」

のあ「わかったわ」

夏美「私は街に出るわ。古澤頼子のパターンからして、少年グループにも被害が出る可能性がある」

のあ「可能性としてはありうるわ。お願いね」

夏美「もちろんよ。行ってくる」

のあ「志乃に会いましょう。行くわよ、真奈美」

28

警察署内・署長室

礼子「住居侵入でもなんでも、身柄を拘束した方がいいはずよ」

志乃「いや、辞めるべきだわ。今の状況で捕まえても、望まない方向へ世論が走るだけよ」

礼子「なら、なにか考えでもあるのかしら」

志乃「最適なんてこの状況じゃ無理よ」

のあ「……お邪魔だったかしら」

志乃「良い所に来たわね」

礼子「報道は見てるわね?」

のあ「ええ」

礼子「事実無根だと私が断定する。しかし、古澤頼子という存在にはつながらない」

のあ「鷺沢文香としての証拠はあるのですか?」

志乃「住民票もあるわ。劇団にも2年以上前から所属してる」

のあ「元から偽装の身分として準備していたのね」

志乃「その可能性が高いわ。今の段階だと、古澤頼子が鷺沢文香ではないという証明をするのは難しいわ」

礼子「このままだと何をされるかわからない。身柄を捕らえたほうがいいと思うのだけれど」

志乃「さっきも言ったでしょう、軽犯罪で捕らえてもすぐに保釈金と保護者が手配されるだけよ」

のあ「警察が不当に捕まえたという悪評も書かれかねない」

礼子「なら、どうすればいいのよ!」

留美「失礼します!柊警部!」

志乃「和久井さん、何か」

留美「のあもいるのね、報告があります。ここ最近、犯罪グループが使っていた資金口座がわかりました」

礼子「教えてちょうだい」

留美「のあ、これを見て。名前、知ってるわね?」

のあ「…父の名前よ」

留美「スイスの銀行口座です。遺産はすべて娘に移っているので名実ともに、のあの所有物と考えるのが普通でしょうね。でも、知ってる?」

のあ「その存在は知らないわ。父の隠し資産ってこと?」

留美「いいえ。長らく預金額は0でした。おそらく、作ったことすら忘れられた20年以上前の口座です」

のあ「それで?」

留美「最近まで利用されないで、ここ最近から利用された形跡があります。大量の資金が入り、古澤頼子が持っている鷺沢文香名義の口座などに資金が移動されています」

のあ「……つまり」

留美「あなたが関与してると言われても仕方がないわ」

礼子「この情報の公表は?」

留美「相手側にされました。八神マキノという記者がその口座から送金があったという、書類上の事実を公表しました」

礼子「ちっ!」

志乃「違法コピー工場が使っていた口座もそれなのね」

留美「はい」

真奈美「それじゃあ、のあが犯行に関わったと証明したのか……」

のあ「私の一切関係ない所でね。預金額0の外国銀行口座とか良く見つけるものだわ」

礼子「何か打つ手を……」

のあ「あるわ」

礼子「言ってごらんなさい」

のあ「私の信頼が墜落しようが何しようが、私は構わない」

真奈美「……強いな」

のあ「そんなことは古澤頼子も承知のはずよ。警察内に礼子がいることも」

礼子「つまり」

のあ「ここで終わるわけがないわ。絶対に私に向けたコンタクトがある。それを絶対に逃さない」

礼子「あなたを信頼していいのね」

のあ「もちろんよ」

礼子「警察で出来ることは?」

のあ「井村雪菜のような人物がまだいるはずよ。古澤頼子から指示を受け、動いている人間が。それを探し出して」

礼子「志乃、わかったわね?」

志乃「了解。高峯さん、何か心あたりは?」

のあ「おそらく未成年。でも、リーダー格とは限らない」

志乃「和久井さん、行くわよ」

留美「了解です、警部」

礼子「あなたは?」

のあ「動かないわ。古澤頼子が行動するのを待つ」

29

警察署内・科学捜査課

のあ「ここは落ち着いてるのね」

松山久美子「情報班は猛烈に忙しいけどね、私達はヒマ」

松山久美子
科学捜査課所属。常に白衣をまとった美人。某男性職員曰く、白衣に隠れた背中こそ美しい、らしい。

一ノ瀬志希「むふー、いいニオイ~。美味しい紅茶だなー」

一ノ瀬志希
科学課所属。久美子の後輩らしく白衣常時着用。海の向こうから帰ってきたプロファイラー。

のあ「相原さんから紹介してもらったのよ。それで真奈美が淹れるとこうなるわ」

真奈美「現地で飲むのが一番だろうけどな」

志希「ふーん、そうなんだー」

のあ「志希、聞いてもいいかしら」

志希「なぁーにー?」

のあ「古澤頼子はどんな人物だと思うかしら」

志希「……安部菜々が捕まった時にね、一人だけ態度がおかしかったな」

のあ「どんな感じ?」

志希「慌てるとかそう言う感じがほとんどしない。目線がほとんど動かなくて、この人、本当に生きてるのかと思っちゃった」

のあ「そう。その時はなんだと思った?」

志希「生まれつき慌てない人かなー、って。でも、それにしては異常だしー」

のあ「演技性の人格障害という可能性は?」

志希「あー、古澤頼子も鷺沢文香も所詮付け替え可能な人格ってこと?そうかもねー」

のあ「一連の騒動の動機は推し量れる?」

志希「うーん、なんだかよくわかんない。さっきのあちゃんも言ったけど、全部付け替え可能な人格だから、プロファイリングから掘り下げられなさそうなんだよねぇー」

のあ「それなら、動機はなんなのかしら」

志希「自分の考えた計画をこなしたいだけ、とか。完璧な行動と結果だけを求める、論理性の塊、それが古澤頼子かなぁ。話したことないから、妄想だけどー」

のあ「そう」

志希「その点で言えば、のあちゃんに似てるってのも間違いじゃないよね」

のあ「感じていたわ。目的地が違うだけの、光と影であることは」

久美子「古澤頼子がテレビに出てるわよ」

頼子『古澤頼子という存在は、探偵が光り輝くために作られた幻影です。その存在は、光に照らされて産まれた影にすぎないのです』

真奈美「……似たようなこと言ってるな」

頼子『私は、私でいたいだけなのに、それも許されない……』

志希「これは見抜くのは大変だなぁー。悲劇のヒロインにしか見えないね。解答にされた文学少女、って感じ」

のあ「志希、古澤頼子の目的はわかる?」

志希「計画の完遂。気を付けてね、のあちゃん」

30

幕間

光「……」コソコソ

夏美「どこに行くつもりかしら」

光「……!ビックリした」

夏美「質問に答えなさい。どこへ行くつもりなの?」

光「どこだっていいだろ」

夏美「人目のつかない路地裏に何のようがあるの?」

光「なんだっていいだろ、どいてくれよ」

夏美「少年、むしろ少女が中心の犯罪グループがあることは知ってるのね?」

光「……知らない」

夏美「のあさんが関わっている可能性があるのも、知ってるのね」

光「だって、信じられないよ。お姉さんが全部やった、なんて」

夏美「だから、入ろうとしたのね」

光「アタシなら入れる。こんなんで終わっていいはずがないよ!」

夏美「気持ちはわかるわ」

光「だから、行くんだ。アタシも悪は見逃せないんだ」

夏美「それでも、私は少年班の警察だから行かせられない」

光「うるさいよ、おばさん!」

夏美「おば……」

光「警察なんて信用してない、アタシは行くんだ」

夏美「行かせないわ。私の使命は、あなた達を犯罪から遠ざけること。だから、絶対に……」

光「どうした?」

夏美「危ない!」

光「えっ!」

翠「……」

夏美「誰よ、あなたは」

翠「人を見て危ないというなんて、警察の人はピリピリし過ぎですよ」

夏美「その道具は?」

翠「アーチェリーの弓と矢です。そこのビルで道具の整理をしてくれるんですよ」

夏美「そう。勘違いしてごめんなさい」

翠「いいえ。それでは失礼いたしますね」

夏美「ええ」

光「……」

夏美「これくらいで驚いているようじゃ、無理よ。帰りましょう」

光「……うん」

夏美「お願いがあるの」

光「なんだ?」

夏美「信頼して。私は、あなた達を守ってみせるから」

光「……」

夏美「なに?」

光「いや、カッコイイって思ってさ」

31

翠「嘘はついてませんよね。直す設備があるのですから」

翠「通信機の準備完了。聞こえるかしら、渋谷凛」

凛『……聞こえてる』

翠「計画通りに。わかったら、叩いて」

凛『……』ポン

翠「では、また期日に。私は準備をしてから帰ります」

凛『ご健闘を』ボソッ

翠「それではさようなら」

翠「勘の鋭い警官でしたね。さて、始めましょうか」

幕間 了

32

高峯探偵事務所

のあ「チケット、無駄になってしまいそうね」

真奈美「前川みくのライブか?行けばいいじゃないか」

のあ「あまり騒ぎにしたくはないの」

真奈美「ここに缶詰も気が滅入るだけだろ」

のあ「仕方がないわ」

真奈美「……大丈夫か、のあ」

のあ「気力は十分よ」

プルルル……

真奈美「はい、こちら高峯探偵事務所。記者会見?誰のだ?わかった。会場は?」

のあ「誰から?」

真奈美「のあ、八神マキノが古澤頼子を連れて記者会見をするらしい」

のあ「こっちにもメールが来たわ」

真奈美「誰から?」

のあ「鷺沢文香から。来てくださいね、とのことよ」

真奈美「動いてきたな」

のあ「留美はライブでしょうから、志乃あたりに連絡を。入りこませてもらいましょう」

真奈美「了解だ」

のあ「行くわよ。みくにゃんのライブを奪われた分まで覚悟しておきなさい、古澤頼子」

33

会見会場・市民広場

のあ「記者も多いけど、野次馬も多いわね」

真奈美「八神マキノが檀上に上がったぞ」

のあ「古澤頼子も脇に控えてるのが見えるわ」

真奈美「何が目的だ?」

のあ「さぁね」

マキノ「お集まりいただきありがとうございます」

真奈美「始まったな」

マキノ「ここでお伝えたいしたいことは、ひとつです。鷺沢文香氏の協力で、高峯のあの決定的な証拠をつかみました。それでは、鷺沢さん、そこで構いませんから、お話をお願いします」

頼子「……はい。その……」

真奈美「話始めないな」

のあ「……」

マキノ「どうしたの?」

頼子「翠」

マキノ「ミドリ?」

ドン!

マキノ「……ブハッ」ダラン

真奈美「矢だ!事務所に刺さってたのと同形状だ!」

志乃「胸を貫かれてる!はやく弓矢の人間の特定を!」

翠『お待ちなさい。特に警察関係者各位』

真奈美「マイクを通してる?近くにいるのか」

翠『今は私の監視下にあります。下手な行動をしたら、打ち抜きます』

真奈美「いるわけじゃない!レコーダーだ」

亜季「っく、どうしますか。警部」

志乃「現場組は待機。他の警察官に特定を急がせて」

亜季「了解であります……」

真奈美「おい、のあ!……のあ?」

志乃「……まさか」

真奈美「いない……」

志乃「会場からすぐさまいなくなった人が2人。古澤頼子と高峯のあ。緊急連絡、二人を追って!」

真奈美「くそっ!一人で行くなよ、のあ……!」

34

路地裏

頼子「矢にも死体にも気を取られず、私の動きを見つめているとはさすがですね」

のあ「褒められても仕方がない」

頼子「あなたなら、気が付いていますね。絵の意味です」

のあ「ええ」

頼子「私は左へ。あなたは右へ。最終目的地で待っていますよ」

のあ「真実を知られる覚悟は決めてるかしら」

頼子「そちらこそ。それではまた会いましょう」ダッ!

のあ「……」ダッ!

35

某ビル屋上

頼子「無事に辿り着きましたね。期待通りです、高峯のあ」

のあ「ヒントが多すぎた。その目的がわかればすぐにわかるわ、人を巻くためだけの秘密経路を示した地図だということは」

頼子「無事に仕事を完遂してくれた吉岡沙紀に感謝を」

のあ「全てはこの場所と時間を作るため」

頼子「ええ。この時間を待っていたのです。再び会えて、嬉しいですよ、高峯のあ」

のあ「私は嬉しくないわ」

頼子「でも、あなたにも必要な時間だったでしょう?それならば共犯ですよ」

のあ「……そうね、真奈美にもこうなることは知らせなかった」

頼子「それでこそ、高峯のあです。それでは、本題に入らせて頂きますね」

のあ「……聞くわ」

頼子「ここから落ちなさい」

のあ「なにを」

頼子「聞こえませんでしたか。私はあなたに死ねと申し上げました」

のあ「そう言われて死ぬ人間はいないわ」

頼子「そうでしょうね。では、お話いたしましょう。私、常々思っていたのです」

のあ「何をかしら」

頼子「創作中で、探偵は有利じゃありませんか?解答や犯罪者はその罪が暴かれたら負けですが、探偵の負けはないじゃないですか。罰を被るような負けが。それが気に入らなかったのです」

のあ「……」

頼子「だから、あなたには徹底的な敗北をしていただきたかった。全てを暴かれ、正義を失った探偵、気分はいかがですか?」

のあ「悪いわ」

頼子「お世辞でもそう言ってもらえると助かります。私も全てを失ったかいがあります」

のあ「詭弁ね。あなたは失ってなどいない」

頼子「あら、本当ですよ。ほとんどのものを失いました。そうじゃないと、記者さんにも信じてもらえないですから」

のあ「……そうかしら?」

頼子「なんですか?」

のあ「あなたの目的はそっちじゃないかしら」

頼子「面白いことを言いますね」

のあ「あなたはノーネームでも生きていけるほどに、暗い世界では自由に動けた。それにも関わらず、私の会ったあなたは名前と存在に括っていた」

頼子「そうかもしれませんね」

のあ「あなたは自らを清算し、古澤頼子へと戻りたがっていた。私に全てを押し付け、失うことがそもそもの目的よ」

頼子「ふふふ、面白い想像ですね」

のあ「では続けるわ。古澤頼子は本名ね?」

頼子「ええ」

のあ「でも調べても簡単には出てこなかった。何故か、死んでいたからよ」

頼子「へぇ。私に行き当たりましたか?」

のあ「星輪高校の設立者の家系だったのね。しかし、父の死を発端に騒動に巻き込まれたようね」

頼子「すべて私のものになりましたけどね。あなたと同様に」

のあ「そのようね。しかし、それからは違った。あなたは自暴自棄になったように資産を溶かし続け、やがて行方知れずになった」

頼子「懐かしい話ですね」

のあ「実際は資金を移動させただけ。あなたはそれから闇の世界の住人になった。その世界は、辛かったでしょうね」

頼子「何を勘違いしてるのですか、そんなわけはありません」

のあ「……なら、どうして戻りたがっているの、あなたは」

頼子「……ふふふ、面白いこというんですね、むふふふ」

のあ「何がおかしいの」

頼子「そうでしょうね、普通の持たざる人間ならそう思うでしょうね!あはは、そんな人間でしたらここまで生きていれません!」

のあ「……あなたは」

頼子「いいですか、名前、場所、戸籍や保険制度まで全ては弱き者の持ち物です。私にはそんなものはいりません」

のあ「異常者ね」

頼子「認めたくない人間はそう言うものです。いいですか、高峯のあ、私の目的はただ一つです」

のあ「なに」

頼子「さっきも言ったでしょう。ここからあなたが転落死すること、それだけです」

35

頼子「全ての悪事を暴かれた探偵は、ここから身を投げて自殺をする。それがあなたの物語です、高峯のあ」

のあ「……そんな結末は迎えない」

頼子「暴いた記者には復讐もしましたし、もう思い起こすことはないでしょう。どうです、落ちていただけませんか?」

のあ「ノーよ」

頼子「これからの人生は辛いですよ。それでも、ですか?」

のあ「ええ。私は、無実なら耐えられる」

頼子「それでは仕方がありませんね。私もカードを切ります。では、あちらの会場をご覧ください。ほら、そろそろ時間のようですね」

みく「みんなー!みくのライブに来てくれて、ありがとうだにゃー!」ニャー!

頼子「このビルは会場が見える穴場なんですよ。会場に行けないあなたのために、ここを選んであげたのですよ」

のあ「……そう」

頼子「ライブが始まります。それでは、こちらのタブレットの映像を」

のあ「カメラの映像……?」

頼子「これはあちらの会場の映像です。ほら、みくにゃんも見えますよ」

のあ「映ってるのは、留美よ」

頼子「ええ。お友達もいるんですよね。この会場には爆弾が仕掛けてあります。会場ごと全壊させる程度のものです。次に行きましょう」

のあ「……爆弾」

頼子「あと15分もすれば自動的に爆発します。あなたが落ちれば別ですけれどね」

のあ「……」

頼子「次はここです。わかりますね?」

のあ「さっきの会場のようね」

頼子「今もまだ安全が確認出来てないようですね。釘づけにされています。ここにも爆弾を設置しておきました。私の優秀なアーチャーも配置済みです。いるのは誰かわかりますか?」

のあ「……わかるわ」

頼子「あなたの大切な助手、最近昇格した警察官の友人等ですね。では、次」

のあ「……え」

頼子「とある一室ですね。映ってる女の子は誰だか、わかりますか」

のあ「……まゆ」

頼子「指示を受けたものが同室しております。首を絞められる位置におりますよ」

のあ「あなたは……」

頼子「私から申し上げる選択は、二つです。一つは、これらのあなたの大切な全ての人を犠牲にして、人々の怨嗟と自らの後悔に溺れながら生き延びるか」

のあ「……」

頼子「もう一つは、ここから飛び降りて、あなたの物語を結ぶか。どちらを選びますか?」

のあ「……」

頼子「時間はありませんよ」

のあ「いや、諦めないわ。あなたの提案には穴がある」

頼子「へぇ、言ってみてください」

のあ「あなたが通信手段を持っている限り、計画を止めることは可能よ」

頼子「あら、諦めの悪い。こうでいいですか?」ポイッ

のあ「タブレットはいらなかったのね」

頼子「タブレットは投げ落としました。これで私が持っているものは全てなくなりました。さて、どうしますか」

のあ「もう一つの選択肢を」

頼子「なんです?」

のあ「私がこの場で死ぬなり意識を失うなりした場合、あなたの計画は破綻するわ。その時は、どうするのかしら?」

頼子「ふふ、うふふふ、あははは!」

のあ「どうなの、古澤頼子」

頼子「なんて、なんて諦めの悪い人!そうですか!わかりました!」

のあ「何を……?」

頼子「私は所詮影。あなたに照らされてようやく浮かぶ影。そんなものが、光を失って存在できるわけありません」

のあ「……どういう意味かしら」

頼子「すうー」

のあ「深呼吸をして、どうしたの?」

頼子「キャー!用済みだからって、捨てるんですか!」

のあ「自分の首に手をあてて、何を……」

頼子「私がいる限り飛び下りないのなら、することは簡単です。では、先に行っております」ゴキッ

のあ「……!古澤頼子!」

のあ「くっ……」

のあ「背中から落ちた……助からないでしょうね」

のあ「……私は記者と密告者を殺した。そんな物語になるのね」

のあ「……」

のあ「真奈美、まゆ、志乃、留美、それと……」

ワーワー、ミクニャーン!

のあ「……ごめんなさい」タンッ……

36

落下現場・近くのカフェ

ヒトガオチタゾー!

翠「高峯のあが落ちました。古澤頼子様を道連れにしたのは意外でしたけど」

翠「コード、フォール。ご苦労さま。時期に保釈金で釈放されるわ」

翠「身元引受人ですか?あなたの両親に決まっているでしょう。仲良くしなさい」

翠「私もこれで失職です。次のことを探さなければ」

翠「お別れです。さようなら」

翠「さて、帰るとしましょう」

ガシ

翠「つかむなんて、無礼ですよ。警察官さん?」

夏美「それが?」

翠「いつ気づいたんですか?」

夏美「ついさっきよ。先日弓を担いでいた人間が一方向だけ気にしてるなんて、何かあると思うでしょう。弓矢で人が殺されたばかりなのに」

翠「あの会場にいないことは、いつ気が付いたのですか」

夏美「自分が捕まることを恐れるなら、留まってるはずはない。あなたは捨てゴマではないのだから」

翠「お見事」

夏美「大人しくつかまりなさい」

翠「残念ですけれど、この状況なら逃げられますよ。荒事には得手があります」

夏美「逃げてみなさい。ぶち抜くわ」カチッ

翠「気性の荒い警察ですこと」

夏美「私も友人が落ちたところを見たわ。むしろ、平静としていられるのが奇跡的なのよ。その意味わかるわね、水野翠」

翠「……名前まで知ってるんですか、刑事さん」

夏美「私は刑事じゃないわ。少年犯担当のしがない警察官よ」

翠「私の話もここで終わりのようですね。負けました。降参です、警察官さん」

夏美「いいえ、負けよ。犠牲者は出て、友人は落ちた。あなたを犯罪者にしてしまった。私は負けたのよ、水野翠」

翠「なら、あなたは成功することはないのでは……」

夏美「そうよ。私は負け続ける。でも、勝ちも称賛もなくても、戦い続ける。なぜなら、私は警察官だからよ」

ピーポーピーポー……

37

幕間

凛「……フォール」

まゆ「……なにか言いましたか」

凛「なんでもないよ。あんたは守られた」

まゆ「……?」

凛「だけど、大切なものまで失った」

まゆ「何を言ってるんですか……?」

凛「時期にわかるよ。私達は大切なモノを失ったって」

まゆ「凛ちゃん……?」

凛「これから、妙に優しくなった家族が迎えにくるんだ」

まゆ「……?」

凛「私はここから出て何をすればいいのかな、古澤頼子……」ボソッ

幕間 了

38

後日

高峯探偵事務所

真奈美「遺影、ここでいいか」

真奈美「……なぁ、のあ。広いんだな、この家って。一人になって始めてわかったよ」

真奈美「こんな所にずっと暮らしてたら寂しいに決まってるよ、のあ」

真奈美「そう思うよな、アッキー」

アッキー「……くぅん」

真奈美「はじめて、お前の叔母さんに会ったよ。綺麗だったよ。お前が年をとったら、あんな感じに落ち着いて行くんだろうな、そう思ってしまったよ」

真奈美「……でも、そんな未来はもうないんだな」

真奈美「なんで、約束を破ったんだ、のあ。佐久間君を待ってるんじゃなかったのか」

真奈美「泣いてたぞ、本当に悲しんでくれた。そんな子をお前は置いて行ったんだぞ……」

真奈美「遺書なんか、いつ書いたんだよ。真実は全て私の信頼している人が解決してくれるなんて、私には荷が重すぎる……」

真奈美「事件を解決するのはお前の仕事だろ、のあ……」

真奈美「財産、全て私に残すとか、家事の料金にしては高すぎる」

真奈美「そんなの、いらないから、お前にここにいて欲しかったよ、のあ……」

真奈美「性格はよくわからんし、ただのみくにゃん狂いだし、生活能力はないし、コミュニケーションは苦手だし、そんな奴だったけどさ」

真奈美「正義感が強くて、本当は優しくて、寂しがり屋なお前が一人で先に行くなよ……」

真奈美「泣くなんて、私らしくないだろ、こんなこと、私にさせるなよ、のあぁ……」

真奈美「……」

プルルルル……

真奈美「……電話か」

真奈美「こちら……高峯探偵事務所」

真奈美「はい。ええ、わかりました。すぐに向かいます」

真奈美「仕事だよ、浮気調査だけどさ。お前と比べたら頼りないかもしれないけど、行ってくる」

真奈美「だから、ひょっこり帰って来てもいいんだぞ、のあ……」

真奈美「……」

真奈美「行ってきます」

バタン

エンディングテーマ

Final of storY

歌 古澤頼子・藤原肇・安部菜々・佐久間まゆ

エピローグ

数ヶ月後

某ホテル・プールサイド

真奈美「被害者の詳細は?」

久美子「被害者は、松本紗里奈、22歳。このプールはたびたび利用していたようね」

松本紗里奈
今回の事件の被害者。評判のセクシー美女で、来るたびに相手が変わっていたらしい。

真奈美「死体は水着姿でプールに浮かんでいた」

久美子「遺体は死亡後に浮かばせたと予想される」

真奈美「死因は?」

久美子「感電死でしょうね。犯行時刻は深夜から未明にかけて」

真奈美「詳細な時刻は特定できないのか?」

久美子「だってプールに浮かびっぱなしだったのよ。少なくとも昨晩の犯行だってことはわかるけど、それ以上は無理ね」

真奈美「ふむ」

久美子「目撃情報は?」

真奈美「和久井巡査部長達が聞き取りをしてるよ。今は、バーテンダーに聞き取り中だ」

久美子「うーん、感電の原因も見つからないし。どうしようかな」

カンカン

真奈美「むぅ……」

コツコツ

久美子「申し訳ありませんが、検分中ですので、立ち入りは……えっ!」

真奈美「どうした……、はぁ!?」

のあ「お久しぶり。お困りのようね」

真奈美「いやいや待て待て。たった今、悩みの種が一つ増えたんだが」

のあ「どうしたの、真奈美?ハトが豆鉄砲食ったような顔して。言ってみなさい」

真奈美「お前、誰だ?」

のあ「あら、私の顔を忘れたの。ひどい人ね、真奈美は。教えてあげる、高峯のあ、よ」

真奈美「お前の顔を忘れられる人間がこの世にいるか!死んだ、んじゃぁ……」

のあ「いつ死んだのよ、失礼ね」

久美子「お葬式に出たんだけど……」

のあ「何人か協力者がいれば葬式ぐらい開けるわ。葬儀会社の名前、覚えてる?」

真奈美「……方舟社、のあの会社だったのか」

のあ「違うわ。筆頭株主で命名権買っただけよ。それに、久美子は私の死体を見てないでしょう」

久美子「……そういえば遺体は見せてくれなかったわね。損傷がひどいとかで」

のあ「ニセモノなら見せたらあなた達なら気づくでしょう。そんなことより、久美子、被害者の死因は?」

久美子「はぁー、間違いなくのあさんだわ、この人。死因は感電死よ。プールの水がついてる状態だから、どんな原因も考えられる」

のあ「しかし、見たところ、感電の要因になりそうなものが見つからない」

久美子「そうよ」

のあ「真奈美、それから考えられることは?」

真奈美「犯人が持ち去った」

のあ「その通り。では、感電死を選択した理由は?」

久美子「うーん、傷をつけたくなかったとか」

のあ「その可能性があるわね。彼女は傷つけるには惜しいもの。そのことから、特定の美意識が感じられる」

真奈美「犯人の美意識?」

のあ「久美子、犯人は感電を防ぐ必要があるわよね?」

久美子「そうね。ゴム手袋と、靴も必要かしら」

のあ「美意識が高い犯人、しかし、今朝はそうもいかないようね。台にゴム手袋がかかってる。防水を度外視にした、きっちりとセットした髪型とスーツにも関わらず、なぜか靴だけゴム製」

真奈美「……と、いうことは」

のあ「そのバーテンダーが犯人よ」

天ケ瀬冬馬「ちぃ!」

天ケ瀬冬馬
ホテルのバーテンダー役。曲がりなりにも恋人役なのに、残念なことに松本紗里奈とのラブシーンはおろか、共演シーンすらない。

久美子「逃げたわ!大和巡査!」

亜季「ていやあぁぁぁ!」

冬馬「うぉ!」ドボーン!

亜季「避けたのに、プールに落下するとはマヌケな!」

のあ「素晴らしい上段回し蹴りだったわ」

久美子「あらあら、バーテン台の下から切った電源ケーブル発見、と」

のあ「動機は、遊ばれてたのを本気にしたとか、痴情のもつれ、そのあたりでしょうね」

亜季「大人しくお縄になるであります!」

のあ「真奈美」

真奈美「なんだ?」

のあ「信じてくれたかしら、ここにいるのが高峯のあよ」

真奈美「……どうも、そうみたいだな」

のあ「まさか、気づいてないとは、私の変装も上達したわね」

真奈美「変装……え、まさかあの叔母は」

のあ「実際に、死んでないから来るわけないでしょう。せっかく、真奈美だけは安心させようと骨折の痛みに耐えてまで、準備したのに」

真奈美「……そうだったのか」

のあ「真奈美、法的にも私は死んでないし、財産も私のものよ。売ったりしてない?」

真奈美「あんな居なくなり方されて、売れるか!高峯探偵事務所も営業してるぞ!私の悩んで、悲しんだ時間を返せ!」

のあ「謝るわ。ごめんなさい、真奈美」

真奈美「まったく……、人騒がせな奴だ。だから、一つだけ、言わせてくれ」

のあ「なに?」

真奈美「帰ってきてくれて、嬉しいよ。おかえり、のあ……」

のあ「……ふふ。会わない間に泣き虫になったのね。ただいま、真奈美」

The End


製作 tv ○sahi

オマケ・NGシーン

シーン・1

>>12

落下?

亜季「追い詰めたであります」

頼子「あら、追い詰められてなんておりません。それでは」

亜季「ま、窓から!」

頼子「キャ!」

亜季「よ、頼子殿!まさか本当に落下……」

頼子「すみません、ちょっと踏み外しました」

亜季「ほっ。リテイクをするであります。さ、お手を」

頼子「ありがとうございます」

シーン・2

>>43

にゃん・にゃん・にゃんの力関係

真奈美「考えることが多いのはわかる。だがな、ご飯くらい食べろ」

のあ「食べてるわ」

真奈美「バランスよくしっかり食べろって言ってるんだ」

のあ「うるさいわね、みく」

真奈美「……」

のあ「な、なによ」

真奈美「もぉー、名前を間違えるなんて、のあちゃん、ひどいにゃ☆真奈美はプンプンだにゃあ☆」

のあ「ぶふっ!」ハハハハ

真奈美「よし!NG大賞の枠は貰ったぞ」

のあ「……油断したわ。あんな声が出てくるとは……」

真奈美「というか、普段から前川君に食事について言われてるのか?」

のあ「……」

真奈美「にゃん・にゃん・にゃんは最年長がこれで大丈夫なのか……?」

シーン・3

>>54

誰?

ピンポーン

マキノ「どなたかしら」ガチャ

頼子「……」

マキノ「あなたは……」

頼子「鷲沢文香と、申します」

マキノ「……ワシザワフミカ?」

頼子「あっ!ごめんなさい、もう一度お願いします」

マキノ「仲良しだと思っていたのに、わざとらしい間違え方。これは裏があるわね」

頼子「あ、ありませんから!」

マキノ「冗談よ」

シーン・4

>>70

なつひか

夏美「それでも、私は少年班の警察だから行かせられない」

光「うるさいよ、お母さん!」

夏美「お母さん……」

光「……そうだよ」

夏美「今、光ちゃん私のこと、初めてお母さんって呼んでくれたの……?」

光「お母さん!」タタッ!

夏美「光ちゃん!」ダキッ!

ハハハハ、カットカット!

光「ごめん!次はちゃんとやるから!」

夏美「ちょっとお母さんには早いかなぁ。たまに光ちゃんと似てるって言われるけどねー」

光「そうなのか!アタシも成長したら、夏美さんみたいなセクシーでカッコイイお姉さんになれるかな!」

夏美「嬉しいこと言ってくれるじゃない!スリスリ~」

光「わ、わ、次の撮影始まるから離して!」

シーン・5

みくにゃんのライブシーン撮影前

留美「違うわ、こうでしょう」

のあ「その通りね」

真奈美「なんの話をしてるんだ?」

留美「エキストラの動きが違う気がするのよ。みくにゃんのライブだったら、こうなるはずよ」

のあ「ええ」

真奈美「……役柄じゃなかったのか?」

留美「黙秘権を行使します」

のあ「同じく」

真奈美「……」

シーン・6

>>85

落下のあとで。

ボフッ!

カットカット!

のあ「ふう。マットがあるとはいえ落ちるのは怖いわ……」

真奈美「その割には勢い付けて飛び降りてた、ぞ!」ボフン!

のあ「……なにするのよ」

真奈美「じゃれあいにきた」

のあ「はぁ……?」

頼子「私も混ぜてくださーい♪えい!」ダイブ!

のあ「……頼子、あなたまで」

頼子「ふふふ、どうでしたか?」

のあ「いい演技だったわよ。お疲れ様」

頼子「ありがとうございます。立ちますか?」

のあ「……手をかして」

頼子「はい、わぁ!」ゴロリン

のあ「……油断大敵」

頼子「ふふ♪」

オマケ・死者の姿

太田優「うふふ♪やっと、アッキーと共演出来たよ☆」

真奈美「……この記者会見前の広場のシーンとんでもないよな」

のあ「……全員一瞬しか映らないけど、被害者勢ぞろいだものね」

オマケ・Pの視聴後

みくとP

みく「ちょっと、Pちゃん!」

みくP「おお、みく。なんだ、お腹でもすいたか?焼き肉でも食べに行こうか!美味しいハラミを出すお店が……」

みく「違うにゃ!ドラマのライブシーンだからってがんばったのに、ぜんぜーん映ってないにゃ!」

みくP「なんだ、そんなことか。そう言われても、元からその予定だぞ?」

みく「えっ!?あんなビルの上から見た画面を取るためだけに、エキストラ五千人も集めてライブしたのかにゃ?」

みくP「そうだ。そもそも関係者限定のプレミアライブで、むしろ撮影がついでだぞ?」

みく「それならそう言ってくれればいいにゃ!みくは出番が来るのを楽しみにしてたのに。アーニャんも出番があったのに、どうしてみくの出番はないにゃ!」

みくP「あ、そうなんだ」

みく「どーしてそんなにひとごとなんだにゃ!」

みくP「わかったわかった。次から考えるよ」

みく「しっかりしてよ、Pちゃん!」

頼子の盗みたいもの

頼子「どうでしたか?」

CoP「良かったよ。簡単な役ではなかったと思うけど、ありがとう」

頼子「いいえ。私も新しい自分が見れて、楽しかったです。怪盗服気に入りました」

CoP「そう。僕からもありがとう」

頼子「あの、聞きたいことがあるんです」

CoP「なにかな?」

頼子「この役の人は、本当に古澤頼子という名前がいらなかったのでしょうか?」

CoP「どうなんだろうね。謎の多いキャラクターだったから」

頼子「私は、この名前が必要です。この名前で、みんなに愛されて……そうですね、みんなの心を盗めるアイドルになりたいです」

CoP「そうだね。古澤頼子という名前が憧れの対象となるように、頑張っていこう」

頼子「はい。それで、その、私は本当に私のモノにしたいモノがあるんですよ」

CoP「それはなに?」

頼子「……手に入ったら教えてあげます、プロデューサーさん。これからも、よろしくお願いします」

CoP「はい。こちらこそ、よろしく」

頼子「……ふふ」

おしまい

各担当プロデューサー各位、毎度ごめんなさい。
冬馬Pはいろいろとごめんなさい。

最初から、SHEROCKをイメージして書いたのにどう見てもテレビ朝○のサスペンスドラマになったのは俺が日本人だったからなんだろうなぁ……
サスペンスドラマ系小ネタは盛り過ぎて詳細覚えてないので、各自見つけてください。

5月15日に間に合ってよかった。
元ネタもそろそろ新シーズンが日本語版放映開始です。

これにて最終回です。
嫁が出せないので、続きは書かないよ。むしろ、誰か書いてよ。

ちなみに、登場させたアイドルは4話あわせて64人。三分の一か……

以下、資料

資料

出演者リスト

2話以上

1・高峯のあ・探偵(1~4)

2・木場真奈美・助手兼居候(1~4)

3・佐久間まゆ・東郷邸の住人→居候(1、2、3、4)

4・柊志乃・刑事一課警部補(1~3)→警部(4)

5・和久井留美・刑事一課巡査部長(1~4)

6・大和亜季・刑事一課巡査(1、3、4)

7・松山久美子・科学捜査課(1~4)

8・一ノ瀬志希・科学捜査課(2、4)

9・相馬夏美・生活安全課少年班巡査部長(3、4)

10・仙崎恵磨・生活安全課少年班巡査(3、4)刑事一課巡査(2)

11・片桐早苗・交通課巡査(2、4)

12・原田美世・交通課巡査(2、4)

13・高橋礼子・署長(2、4)

14・藤原肇・東郷邸の住人(1、3)

15・前川みく・のあが愛するねこちゃんアイドル(1~4?)

16・古澤頼子・宿敵(2~4)

第1話・東郷邸の秘密

17・東郷あい・東郷家当主

18・赤西瑛梨華・東郷邸の住人

19・棟方愛海・東郷邸の住人

20・西川保奈美・東郷邸の住人(注・セリフなし)

21・成宮由愛・東郷邸の住人

22・アナスタシア・東郷邸の住人

23・及川雫・東郷邸の住人

24・財前時子・近所のOL

25・伊集院惠・交番勤務巡査

26・太田優・出入りの美容師。2話以降はアッキーが高峯家に。

第2話・この町のテロリスト

27・佐藤心・クリーニング店店主(注・セリフなし)

28・岸部彩華・チョコレートショップ店主

29・相原雪乃・喫茶店のマスター

30・安部菜々・喫茶店のウェイトレス

31・槙原志保・喫茶店のウェイトレス

32・並木芽衣子・帽子屋店主

33・浜川愛結奈・デザイナー

34・鷹富士茄子・神社の娘

35・鷺沢文香・書店店主

36・持田亜里沙・幼稚園教諭

37・兵藤レナ・バーのマスター

第3話・佐久間まゆの殺人

38・川島瑞樹・まゆの担任。家庭科及びマナー教師

39・相川千夏・まゆの副担任。英語教師

40・篠原礼・数学教師

41・服部瞳子・国語教師

42・沢田麻理菜・体育教師

43・柳清良・化学教師

44・クラリス・シスター

45・高森藍子・まゆの友人

46・浅野風香・まゆのクラスメイト

47・緒方智絵里・まゆのクラスメイト

48・工藤忍・まゆのクラスメイト

49・長富蓮実・まゆのクラスメイト

50・北条加蓮・まゆのクラスメイト

51・岡崎泰葉・まゆのクラスメイト

52・如月千早・まゆのクラスメイト

53・脇山珠美・まゆのクラスメイト

54・堀裕子・まゆのクラスメイト

55・今井加奈・まゆのクラスメイト

最終話・サイゴの事件

56・南条光・ファンの女の子

57・八神マキノ・雑誌記者

58・渋谷凛・バイクの操縦者

59・小室千奈美・警備員

60・井村雪菜・怪盗

61・吉岡沙紀・落書き犯

62・水野翠・射手

63・松本紗里奈・プールでの事件の被害者

64・天ケ瀬冬馬・バーテンダー

何かしらは書いてると思うので、見かけたらよろしくです。
たぶん、21歳組かな。
それでは。

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