岡部「む?」
紅莉栖「え? あ、いやなんでもない」
岡部「それで俺に何の用だ? サイエンス誌にまで論文が載ったほぼ初対面の天才少女よ」
紅莉栖「……さっき貴方私に何か言いたそうにしていたでしょ? なんだったのかなって」
岡部「……何の事だ?」
紅莉栖「え? でもさっき……」
岡部「フゥーハハハ! さては貴様機関の人間だな?」
紅莉栖「は?」
岡部「俺だ、奴等はどうやら本気になったらしい」パカッ
紅莉栖「ちょっと、人と話してる最中にケータイ弄るな!」パッ
岡部「あ」
紅莉栖「あれ? これ、電源入っていない……?」
岡部「フゥーハハハ! ばれてしまってはしかたがない! それは俺以外の人間が触ると自動的に電源が落ちるよう改造されているのだ」
紅莉栖「そんなわけあるか。つまり独り言だったのね」
岡部「いいから返せ」
紅莉栖「はい」つケータイ
岡部「うむ」
パッ
紅莉栖「えっ?」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「今、触った瞬間にケータイに電源が入った?」
岡部「だからそうだと言っただろうが」
紅莉栖「!? え、うそ、……冗談じゃなくて?」
岡部「何を言っているのだおまえは」
紅莉栖「ちょっともう一回貸して!」バッ
岡部「お、おい!」
紅莉栖「電源が切れた……? 嘘」
岡部「人のケータイまでも容赦なく奪う、それが機関のやり方か! 返せ!」バッ
紅莉栖「あ、えっと、ごめんなさい。確かに非常識だったわ」
岡部「ふん、機関の人間にしては話がわかるではないか」
紅莉栖「はい? さっきも言ってたけど機関って?」
岡部「機関は機関だ。それ以上でも以下でもない」
紅莉栖「……少しは真面目な人かも、と思った私が馬鹿だった。ただの典型的な厨二病か」
岡部「何を言っているのだお前は」
紅莉栖「それはこっちの台詞!」
まゆり「オカリ~ン」
岡部「む、まゆりか。どうだった?」
まゆり「オカリンの言った通りだったよ~中鉢さんの発表内容はパクリなのです」
紅莉栖「えっ?」
岡部「やはりか。それとまゆり、そのオカリンと言うのは止めろ、俺は鳳凰院凶真だッ!」
まゆり「え~、かわいくないよお」
岡部「そんなもの、この俺は求めていない」
紅莉栖「ちょっと待って! 今中鉢って言った? それって今このラジ館で講演しているドクター中鉢?」
岡部「そうだ。ヤツの発表内容はジョン・タイターのパクリ以外の何者でもなかった。しかも未完成だ」
紅莉栖「人の物を盗んだっていうこと?」
岡部「いや、盗んだというよりは……というかお前、機関の人間でありながらそんなこともわかっていないのか?」
紅莉栖「厨二病はいいから!」
岡部「厨二病ではぬわぁい!」
紅莉栖「なんでもいいから教えて!」
岡部「……そうだな、ジョン・タイターを知っているか?」
紅莉栖「ええ、過去にタイムトラベルしてきたって自称してた……でもそんなの」
岡部「どう捕らえるのかのはお前の自由だ。中鉢の発表内容はほとんどがそのジョンタイターが語った物と同じだった」
紅莉栖「うそ……そんなの発表したって」
岡部「誰も見向きもしないだろうな。実際今日はマスコミも来ていない。タイムマシンなどという夢の機械の発表だというのにな」
紅莉栖「……」
岡部「……というのが表向きの見方だ」
紅莉栖「?」
紅莉栖「どういうこと? それ」
岡部「ぬわぁぜ会ったばかりのお前にそれを教えねばならないのだ?」
紅莉栖「そ、それは……」
岡部「……巻き込まれたくなければすぐにここから離れろ紅莉栖」
紅莉栖「!? え、今名前で……どうして、あ、サイエンス……でも名前……? あれ?」
岡部「まゆり! 後は頼んだぞ!」ダダダ
まゆり「了解なのです!」
紅莉栖「ふぇっ!? あ、ちょっ」
まゆり「ん~? そこにいると危ないよ~?」
紅莉栖「?」
まゆり「」ゴゴゴゴゴゴ
紅莉栖「!?」
まちょり「」ムキッ
紅莉栖「」
まっちょしぃ「トゥットゥルー! まっちょしぃです★」ムキムキ
紅莉栖「」ポカーン
紅莉栖「な、な、な、な、なんぞこれえええええええええ!?」
まっちょしぃ「今からラジ館の一部を壊すのです」
紅莉栖「ちょ、おま、嘘……こんな、ありえな……」
_
σ λ
~~~"'"{ ̄` ̄ ̄`ヽ、.._
「ドゥッドゥルー!」 (・ω・ `)' ', 人 ゙ヽ、
ゝ`ニニ´,\ヽ. ノ´r‐''''ヽ、} ヽ
/', `ヽ_リ,__,,... ゝ- '´ ,ノヽ i }
. ./´'´ ̄7´ `/ / ,' } ,{
/ } 人 ! : ,∧ノ ゙i
{ _,ノ -‐‐-}-- 、 { , '"´、 ∨, }
/!,.ノ`ヽ. { ヽァ-、,/i ヽ∨!
. ./ , }\ ヽ i r'´ } ,.-‐'" ',.}'
,∠',{ リ, /`‐-イ `ー--i._,.ゝ- 、 /|
/ ∨ ,..-‐-、ノ ゙i‐‐-/´ ', / |
八 リ 〉 `ヽ`ー‐‐''''''''",,... -‐‐‐-.ノ / |
/,....-、.._ ヽ、 >/..__ `ー‐--.. -‐ ''"´,. .リ ,...ノヽ
(ー- '"y ノ \_>―--=、._ ,..-‐'"´ヽ. ',
( ニ二'ノ/ 〉ー---‐'" / ノ ', }
ヽ--'′ / 〉 、"´ /′/ ', }
紅莉栖「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ……」
紅莉栖「厨二病の変な男と可愛い女の子に会ったかと思ったら、女の子がムキムキマッチョになった」
紅莉栖「その女の子の豪腕によってコンクリートの壁が突き破られた」
紅莉栖「な、何を言ってるのかわからねーと思うが私にも何が起きたのかわからない」
紅莉栖「超能力とか手品とかそんなちゃちなものじゃないもっと恐ろしい物の片鱗を……って!」
紅莉栖「パパの講演は!?」
おさげの女「みなさん下がって下さいー! 講演は中止ですー!」
紅莉栖「そんな……」
紅莉栖「結局あれからパパとは会えず終い」
紅莉栖「電話しても無視されるし」グス
紅莉栖「はぁ、なんだったよ、もぅ」
紅莉栖「っと、切り替えなきゃ! 今日はupxで講演だし!」
紅莉栖「タイムマシン、か」
紅莉栖「なんでよりにもよって、って感じよね」
ドンッ
紅莉栖「っと、すいませ……」
岡部「む、失礼……あ」
紅莉栖「あ、あああああああっ! 貴方はラジ館の!!」
岡部「悪いが講義あるので失礼させていただく」サササッ
紅莉栖「あ、ちょっ……行っちゃった」
紅莉栖「後で捜して話を聞こう」
紅莉栖「まずは目の前の講義に集中しないと」
────
紅莉栖「えー、みなさん初めまして、牧瀬紅莉栖です。今回は私のような若輩者に講義をする機会を与えて頂きありがとうございます」
紅莉栖「今日はタイムマシンについて話して欲しい、と言われていますので専門分野ではありませんが頑張りたいと思います。どうぞよろしく」
紅莉栖「さて、まず始めに私が言っておきたいのはタイムマシンは夢物語だということです」
??「異議あり!」
??「ちょ、オカリン?」
紅莉栖「えっ? あ、あの人……!」
岡部「タイムマシンを作るのが不可能というのは早計だ!」
ダル「はぁ……」
紅莉栖「……ほぅ」
紅莉栖「いいでしょう、ディスカッション形式にして行きましょうか。その方が面白いかもかもしれませんし」
紅莉栖「タイムトラベルの理論事態はもうだいぶ昔から考えられています」
紅莉栖「えっと鳳凰院さん、でしたっけ? 何かご存知ですか?」
岡部「……現在公にされているのはおよそ11あるだろうな」
岡部「中性子星理論、ブラックホール理論、光速理論、タキオン理論、ワームホール理論、エキゾチック物質理論、
宇宙ひも理論、量子重力理論、セシウムレーザー光理論、素粒子リング・レーザー理論、ディラック反粒子理論、と言った所か」
紅莉栖「……そこまで理解されているならタイムトラベルが不可能だとわかりそうなものですけど」
岡部「第12番目の理論が発見されたとしたら?」
紅莉栖「13番目の理論に否定されるかもしれませんね」
岡部「……」
紅莉栖「むぅ、ずっとつっかかってきてたわねあの人」
紅莉栖「でも、なんていうか、スッキリしたかも」
紅莉栖「そうだ、あの人に話を聞きたいんだった」キョロキョロ
紅莉栖「もう帰っちゃったかな……あ」
ダル「……」
紅莉栖「確かあの人と一緒にいた人だ、少し話を聞いてみようかしら。すみません!」
ダル「?」
紅莉栖「昨日橋田さんからラボの場所とあいつの名前を教えてもらったわ。岡部倫太郎、ね。何が鳳凰院凶真だ。でもだからあの女の子もオカリンって呼んでたわけか」
紅莉栖「よし、行ってみよう!」
紅莉栖「ブラウン管工房……あった。ここの二階ね」
コンコン
紅莉栖「もしもーし」
ワーワーギャーギャー
紅莉栖「もしもーし?」
ワーワーギャーギャー
紅莉栖「何これイジメ? ジャパニーズ居留守?」
ガチャ
紅莉栖「あ、鍵掛かっていない。失礼しまーす」
岡部「進捗状況はどうか」
ダル「んー、もうちょいで全権把握だお」
岡部「流石だなスーパーハカー」
ダル「ハッカーだってば」
岡部「もう少しでlhcが使えるのか」
紅莉栖「えっ? lhc?」
岡部「!?」
ダル「!?」
岡部「貴様! いつ入ってきたクリスティ……牧瀬紅莉栖!」
紅莉栖「……? 何度もノックしても出てこないし、鍵掛かってなかったから」
岡部「ちぃ……!」
岡部「まさかお前、話を聞いていたのか」
紅莉栖「lhcが使えるとかなんとか」
岡部「そこだけか?」
紅莉栖「?」
岡部「メールの話を聞いたか?」
紅莉栖「メール?」
岡部「聞いてないのならいい」
ダル「過去にメールが送れるんだお」
岡部「ダル!?」
ダル「え? 言っちゃいけなかったん?」
岡部「当たり前だ! それはトォォォォップスィィィィィクレェェェェットだと言ったはずだッ!」
紅莉栖「過去にメール? そんなことできるわけ……」
岡部「なら話は終わりだ、出て行け」ビシッ
紅莉栖「む、なにもそこまで邪険にしなくたって」
岡部「不法侵入、土足、意図していないとはいえ研究内容の盗み聞き、十分すぎる理由だと思うが」
紅莉栖「え、あごめん。そういえば日本では靴は脱ぐのよね」ヌギヌギ
ダル「オホッ! スレンダー少女の絶 対 領 域 頂きました!」
紅莉栖「!?/// hentai!」
ダル「ついさっき前の自分に言ってやりたいお! なんでカメラを用意しなかったのかと! ハッ!? そうだこんな時こそ使うべきじゃね?」
ノ ス タ ル シ ゙ ア ト ゙ ラ イ ブ
ダル「時を越えた郷愁への旅路!」
紅莉栖「何よそれ、うっ?」ズキン
──────dメール──────
紅莉栖「何、今の……何か、頭に……d、メール……?」
岡部「!?」
ダル「んあ? まゆ氏の知り合いだったの牧瀬氏?」
紅莉栖「えっ?」
ダル「その名前は確かまゆ氏発案の略称だお」
ダル「結局今回はオカリンが押し切っちゃったわけだが」
紅莉栖「dメール……私、この言葉を知ってる、きがする……」
岡部「……」
バン
まゆり「トゥットゥルー! ただいま~」
まゆり「あれ? 女の子? ってあの時ラジ館にいた人だあ~」
紅莉栖「え? あ、あの時の……!」
まゆり「えへへ~、おどろかせてごめんねえ、大丈夫だったあ?」
紅莉栖「え、ええ」
まゆり「そっかそっかあ、良かったあ~」
岡部「それで? お前はいつまで我がラボにいるつもりだ? そもそもどうやってここを知った?」
ダル「僕が教えましたが何か?」
岡部「ダァァァァルッ! あれほど不用意な真似は避けろと!」
ダル「でも牧瀬氏は戦力になりそうじゃね?」
紅莉栖「戦力? なんのこと?」
岡部「知る必要はない」キリッ
ダル「タイムマシンについてだお」
岡部「おい」
ダル「オカリン、なんでかわからんけど牧瀬氏を一目見た時からこう、ビビッときたんだお」
紅莉栖「ふぇ!?」
岡部「ダル、お前の女の趣味は聞いてない」
ダル「違うお! 僕の趣味はロリ顔で巨乳! 牧瀬氏のちっぱいはお呼びじゃないお! 失礼しちゃうのだぜ」
紅莉栖「おい」
紅莉栖「失礼しちゃってるのはどっちだこのセクハラ野郎」
まゆり「今のはダル君がいけないと思います」
まゆり「というわけで」
まゆり「」ゴゴゴゴゴゴ
ダル「!?」
まちょり「」ムキッ
まっちょしぃ「ドゥッドゥルー! まっちょしぃです★ 」ムキムキ
_
σ λ
~~~~
/ ´・ω・) oshiokiだよ★
_, ‐'´ \ / `ー、_
/ ' ̄`y´ ̄`y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、 ノ、 | _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー~'´ ̄__っ八 ノ
\ヽ、 ー / ー 〉
\`ヽ-‐'´ ̄`冖ー-/
ダル「」チーン
まゆり「ふぅ、スッキリ☆」
岡部「まゆりよ、ほどほどにな」
まゆり「わかっているのです。それよりオカリン」
岡部「なんだ」
まゆり「この人もラボメンに迎え入れちゃだめかなあ?」
紅莉栖「わたし!?」
岡部「……何故だ?」
まゆり「ダル君も言ってたけど、どうしても他人な気がしないのです」
紅莉栖「……」
岡部「……しかし」
紅莉栖「お気遣いありがとう。でもこの人が嫌がってるし」
岡部「……」
まゆり「オカリン?」
岡部「……クリスティーナの言うとおりだ。俺はこいつを」
紅莉栖「助手でもクリスティーナでもないといっとろう……あれ?」
岡部「ッッッッッッッッッ!」
紅莉栖「今、私……なんで」
岡部「……“牧瀬研究員”、お引き取りを」
紅莉栖「ッ! 貴方、何か知ってるんでしょう!?」
岡部「……」
紅莉栖「何を知ってるの? 時々、私の中に私のものだけどそうじゃない……デジャヴのようなものがある!」
紅莉栖「その中心にいるのはいつもあなただ! 何なのこれは!?」
岡部「……お引き取り願おう」
紅莉栖「答えて!」
岡部「……」
紅莉栖「答えるまで私は出て行かない!」
テクテクテク ボスン
紅莉栖「このソファも、何故だか座ったことがある気がする……」
岡部「……」
まゆり「オカリン、ねえ、良いんじゃないかな? ラボメン」
岡部「……少し、出かける」ガチャ
紅莉栖「……」
まゆり「オカリン……」
紅莉栖「……あの」
まゆり「?」
紅莉栖「えっと、まゆり、さん、でいいのかしら?」
まゆり「私はまゆりでいいよ~、本名は」
紅莉栖「っ」ズキッ
──────椎名まゆり──────
紅莉栖「しいな、まゆり……」
まゆり「あれれ? 知ってた?」
紅莉栖「……今、頭の中にフッと浮かんだの」
まゆり「ええ~? 凄い凄い、超能力者~? えっと」
紅莉栖「私は牧瀬紅莉栖」
まゆり「じゃあ紅莉栖ちゃんって呼んでいい?」
紅莉栖「ええ。それまゆり」
まゆり「なぁに?」
紅莉栖「あの、岡部って人のことを教えて」
まゆり「オカリン? えっとねえ」
────────────────
岡部「……ただいま」
紅莉栖「はろー」
岡部「まだいたのか」
紅莉栖「言ったでしょ? 話を聞くまで帰らないって」
岡部「ダルとまゆりは?」
紅莉栖「帰ったわ」
岡部「まったく、部外者だけをラボに残していくなど何を考えてるんだ」
紅莉栖「ラボメン№004」
岡部「!?」
紅莉栖「として二人はほぼ認めてくれたわよ」
岡部「……」
紅莉栖「あとはあなただけ」
岡部「何故そんなにラボメンになりたい?」
紅莉栖「別にどうしてもなりたいわけじゃない」
岡部「ならいいではないか」
紅莉栖「でも、私はここを知っている気がする。だからここに来る口実が欲しい」
岡部「そんな理由が認められるとでも?」
紅莉栖「確かに普通なら認められない。自分が言ってることも相当おかしいって自覚はある。でも」
紅莉栖「この白衣、私のよね?」
岡部「!? 何故……」
紅莉栖「やっぱりそうか。私、ここにいたんだ」
サイズハング
岡部「カマかけ、だと? 小癪な」
紅莉栖「話したくないなら無理に話せとは言わない。でも、せめてここに来る許可を頂戴」
紅莉栖「ラボメンにしなくてもいいから。それほどラボメンになること自体に興味があるわけじゃないし」
岡部「……もの凄く失礼な言いぐさだと思わないか? いくらお前から見たら小さいとはいえ、ここは一つの研究所のようなものだ」
岡部「そこのトップに対しお前達の仲間になりたいとは思わないけど研究所には自由に入らせろとお前は言っているのだ」
紅莉栖「……確かに配慮の無い言い方だった。謝る」
紅莉栖「でも、どうしてもこの胸のモヤモヤを取りたい。手伝えというのなら私の知識も貸す。だから」
岡部「ここで研究しているのはお前の嫌いなトンデモ科学、それもタイムマシンだ」
紅莉栖「!」
岡部「わかったらここには近寄るな、それがお互いの為なんだ」
紅莉栖「……今日の所は帰る」
岡部「今日の所は、か」
紅莉栖「……」ジッ
岡部「なんだ?」
紅莉栖「……ここで紳士なら夜道は付いてきてくれるものじゃない?」
岡部「俺はお前もボディーガードではない」
紅莉栖「……そもそもそこまでの仲じゃない、と言いたいのね」
岡部「……わかってるなら聞くな」
紅莉栖「わかった、なら言い直す。見て欲しいものがあるから私の部屋まで来て欲しい」
岡部「……」
紅莉栖「沈黙は肯定と捉えるわよ」
岡部「見て欲しい物とはなんだ?」
紅莉栖「ここでは言えない」
岡部「ここに盗聴器の類は無い」
紅莉栖「貴方が言ったように私もまだ貴方の言うことを信じ切れない」
岡部「それなら前提が既におかしい。信じていない相手を自室にまで連れ込んでお前は何を見せる気だ?」
紅莉栖「これからお互いに信頼を築けるようになるかもしれないもの、とだけ言っておく」
岡部「……」
紅莉栖「わかった、そこまで信じてもらえないのならいい。今日は大人しく帰るわ」
岡部「……待て」
紅莉栖「!」
岡部「勘違いするなよ、別にお前の部屋にまではいかん」
紅莉栖「じゃあ……」
岡部「今日はもう遅い。ここまで時間を取らせた責は俺にもある。せめて夕飯くらい奢ってやろう」
紅莉栖「ふぅん、まぁいいけど」
岡部「美味いラーメン屋とキッチンジロー、どっちがいい?」
紅莉栖「ラーメン」
岡部「だろうな」
紅莉栖「……」
岡部「? 行くぞ」
紅莉栖「ええ」
「いらっしゃーい!」
岡部「俺は塩チャーシューメンで。お前は?」
紅莉栖「私は……この味噌とんこつラーメンを」
「塩チャーシュー一丁! 味噌とんこつ一丁!」
岡部「ああそれと、フォークを一つもらえないか」
「フォーク一丁!」
紅莉栖「……」
「おまちどおさま!」
岡部「来たか、さて」ズルズル
紅莉栖「……」
岡部「食べないのか? 伸びるぞ?」
紅莉栖「え、ええ」つ箸
紅莉栖「っ、のっ、くっ」
岡部「無理はするな、どうせ上手く扱えないのだ、フォークを使え」
紅莉栖「……そうするわ」つフォーク
紅莉栖「……美味しい」
岡部「それは良かった。髪が邪魔になるようならヘアゴムもあるが」
紅莉栖「……ありがとう」
岡部「……ふん」ズルズル
「ありあとっしたー」
岡部「さて」
紅莉栖「それじゃ」
岡部「ああ。ホテルまでは気を付けてな」
紅莉栖「……」
岡部「ではさらばだ」
クイッ
岡部「うおっ!? 何のつもりだ貴様!」
紅莉栖「いろいろと尻尾を出しておいて今更それはないわー」
岡部「は?」
紅莉栖「もう少しお話しましょうか」ニッコリ
岡部「!?」
──公園
紅莉栖「まず第一に、あなたは私がラーメン屋を選ぶってわかってたみたいだったわね」
岡部「い、いや、女ならキッチンジローよりは喜ぶと思っただけだ」
紅莉栖「第二に、私が何か言う前からフォークを用意してくれたわね」
岡部「あ、いや、それは……自分の為に用意していたのだ!」
紅莉栖「第三に、私は自室、とは言ったけどホテル、なんて一回も口にしてないのよ。私がホテル住まいだってなんで知ってたのかしら?」
岡部「そ、そのことなら……ま、まゆりに」
紅莉栖「橋田とまゆりにもまだこれは話してないんだけど?」
岡部「ぐぅぅっ!」
紅莉栖「ここから導き出される解答は貴方がよっぽどの度を超えた私のストーカーか、もともと私のことを知っていたか」
岡部「俺はストーカーではない!」
紅莉栖「じゃあやっぱり貴方は私を知っていたのね」
岡部「ぐっ」
紅莉栖「さて、これ以上聞くのは今日は勘弁してあげる」
岡部「今日は?」
紅莉栖「でもその代わり私をラボメンに入れてもらうわよ」
岡部「なぁっ!?」
紅莉栖「断るならアンタをストーカー容疑で警察に突き出す」
岡部「!?」
紅莉栖「状況証拠はそろい踏み」つボイスレコーダー
岡部「お、おのれぇぇ……謀ったなクリスティーナ!」
紅莉栖「だから私はクリスティーナじゃない!」
紅莉栖「で? 答えは?」
岡部「………………認められない」
紅莉栖「へぇ」
岡部「これはお前の為に言っている。俺に関わるな」
紅莉栖「また厨二病?」
岡部「俺は断じて厨二病ではない」
紅莉栖「いや厨二病でしょうが」
岡部「!」
岡部「紅莉栖、今すぐここを離れろ、“機関”だ」
紅莉栖「はいはいワロスワロス。ってかこっちは真面目に話しているのに」
岡部「馬鹿!」ガバッ
紅莉栖「えっ? ちょ、きゃあああっ!? 急になんぞ!?」バサッ
紅莉栖(岡部が負い被さってきた!?)
パンッ!
パンッ!
パンッ!
紅莉栖「銃声!?」
岡部「ちぃっ! 俺の右手の封印を解かねばならないか!」
紅莉栖「こんな時まで厨二病は止めろ!」
岡部「お前こそ現実を見ろ紅莉栖!」ババッ
紅莉栖(岡部が銃を握った? 何処に持ってたの?)
岡部「good night」
バババババン!
紅莉栖「す、凄い早撃ち!? 仕留めたの!?」
岡部「逃げるぞ、紅莉栖!」パシッ
紅莉栖「ふぇ? ふぇえええええええええええっ!?」
紅莉栖「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」
岡部「追っては、ないようだな」
紅莉栖「ひぃ、ひぃ、ひぃぃぃぃ……」
岡部「大丈夫か」
紅莉栖「なんとか。ってかさっきのは何なのよ!?」
岡部「機関だ」
紅莉栖「こっちは真面目に話してる!」
岡部「俺も大真面目だが」
紅莉栖「この……!」
岡部「チッ、追っ手が来た! 逃げるぞ!」ガシッ
紅莉栖「きゃ……?」
岡部「くっ! あちこに追っ手が!」
紅莉栖「ま、待って岡部……! 私もう、走れな……っ!」
岡部「やむをえん!」ダキッ オヒメサマダッコ
紅莉栖「ふぇっ!?」
岡部「何処か隠れられる場所は……ラジ館! あそこなら!」ダダダ
紅莉栖「///」
岡部「安心しろ、お前は必ず護る」
紅莉栖「……?」
岡部「今度こそ、必ず……!」
紅莉栖「……」
──ラジ館
岡部「ふぅ、ここまでくれば大丈夫だろう」
紅莉栖「……」
岡部「大丈夫か?」
紅莉栖「え? あ、うん」
岡部「恐かったか? まあ無理もない」
紅莉栖「べ、べべべつに恐くなんか……私は銃の本場、アメリカにいたのよ?」
岡部「足が震えているぞ」
紅莉栖「うるさい! っていうか、あれ誰なの?」
岡部「機関の下っ端共だな。追跡がおざなりすぎる。偶然俺たちを見つけ舞い上がったのだろう。助かったとも言えるが」
紅莉栖「その設定、本気なの?」
岡部「残念ながら設定ではない」
紅莉栖「全く、アンタの話を何処まで信じていいのかわからない……」
紅莉栖(なのにほとんど信じちゃってる私がいる……)
紅莉栖「あ」
岡部「む?」
紅莉栖「肩のところ、破けてる! 銃弾が当たったんじゃ……!」
岡部「掠った程度だ。問題ない」
紅莉栖「問題あるでしょ! 見せて!」
岡部「必要ない」
紅莉栖「いいから! このっ!」
岡部「な、何をする!? 俺の魂の上着、、白衣を脱がせてどうする気だこの天才hentai処女!」
紅莉栖「だまれdt!」
紅莉栖「怪我は!? 本当にたいしたことないみたいね、良かった。もう心配させないでよ」
岡部「言ったはずだ。かすり傷だと」
紅莉栖「……そうだけど」
岡部「心配してくれたのか」
紅莉栖「し、心配なんか……」
岡部「ツンデレてないでいいから白衣を返せ」
紅莉栖「ツンデレ言うな! はぁ、お詫びに縫ってあげるわよ。丁度ソーイングセット持ってるし」
岡部「ッ!」
紅莉栖「?」
岡部「……なら、早くしてくれ」フゥ
紅莉栖「……はいはい」
紅莉栖「」チクチク
岡部「……なあ」
紅莉栖「なに?」
岡部「何故俺のラボに足を運んだ? お前には興味を引く物なんて何もなかったはずだ」
紅莉栖「それは……」
紅莉栖(言われてみれば、何でだろう……?)
紅莉栖「パパのことを知ってるみたいだったから、かな」
岡部「ドクター中鉢、か」
紅莉栖「え」
岡部「む?」
紅莉栖「なんで、知ってるの……? パパがドクター中鉢だって」
岡部「ああぁぁぁぁぁぁぁ……」orz
岡部「俺は何をやってるんだ、くそっ! こんなミス、そうそう……」
紅莉栖「ねえ、やっぱりおかしい! あなた、何者なの? どうしてそんなに私のこと知ってるのよ?」
紅莉栖「それに、きっと他人にそんな話されたら私、怒り狂ってると思うのに、今はそこまで怒りが湧いてこない」
紅莉栖「貴方には何故かそんな気持ちにならない。私、貴方を知ってる気がするの……教えてよ」
岡部「……」
紅莉栖「お願いだから。胸がモヤモヤするの」
紅莉栖「何か、知ってるんでしょ?」
岡部「……」
岡部「……手が止まっている。修繕する気が無いのなら返してくれ」
紅莉栖「ッッ! そんなに言いたくないの!?」
岡部「……」
紅莉栖「それとも、“言えない”の?」
岡部「……」
紅莉栖「そっか、そうなんだ。言えないのか。ふぅん」
岡部「勝手な妄想は止めろ」
紅莉栖「厨二病のあんたには言われたくない」
岡部「俺は断じて厨二病ではない」
紅莉栖(それがおかしい)
紅莉栖(私の中ではこいつは厨二病だ。でも現状では本当にそうじゃないように見える)
紅莉栖(私の中にある何かがこいつを知ってると囁く。でもそれはこいつが厨二病であることが前提だ。何か勘違いしているのだろうか)
岡部「今日でわかっただろう。俺といるとお前は不幸になる」
紅莉栖「あ」
岡部「?」
紅莉栖「そうだ、アンタさっき自分で言ったんだ」
紅莉栖「今度こそ、必ず護るって」
紅莉栖「今度こそ、ってことは前にもあったってことだ」
紅莉栖「貴方は……一体……」
岡部「……はぁ、わかった。お前は相変わらず鋭い。流石は俺の見込んだ助手だ」
紅莉栖「助手じゃないから」
岡部「……」
紅莉栖「……」
岡部「大方は想像の通りだ、と言っておこう」
紅莉栖「というと?」
岡部「俺は確かに以前、こことは違う時間軸でお前と時を共にしたことがある」
紅莉栖「信じがたいけど、そうとしか言えないのよね。どうして、どうやってそんなことを?」
岡部「悪いがこれ以上は言えない。お前なら理解出来るはずだ」
紅莉栖「……そっか」
岡部「わかったなら俺にはもう関わるな、俺が言えない以上、それを聞き出そうとするとお前の存在は」
紅莉栖「邪魔、ってわけね」
岡部「あ、いやなにもそこまでは……ああ、そうだ、うん、邪魔だ」
紅莉栖「……あんた、そんなんでよく今ままでやってこれたわね」プッ
岡部「う、うるさい!」
紅莉栖「はい、出来たわよ。ちなみに」
岡部「暗いから糸の色は三種類からランダム、だろう?」
紅莉栖「前にもあったの?」
岡部「状況はやや違うがな。ちなみにその時の色はピンクだった」
紅莉栖「じゃ今度もピンクかもね」
岡部「……一応、感謝はしておく」
紅莉栖「ん」
岡部「だがそれとラボメンについては話は別だ」
紅莉栖「……でしょうね」
岡部「わかってくれるか」
紅莉栖「しょうがないじゃない……」
岡部「……だが」
紅莉栖「?」
岡部「ラボメン№004はその時が来るまで欠番なのだ。その時がくれば、お前はおのずと……」
紅莉栖「……そっか」
岡部「あ~なんだ。まあ、ラボの出入りくらいは許可してやろう」
岡部「……何かを話してやることは出来ないが」
紅莉栖「世間話は?」
岡部「まあ、それくらいなら」
紅莉栖「オーキードーキー。ってこれじゃ橋田か。あれ?」
紅莉栖「私はまだ橋田がこう言ってるのを聞いてない……ふむん」
岡部「……」
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