希「皆が冷たい」 (92)

だんたんと暖かくなってきた


とある日の午後





退屈な古文の授業はウチの睡眠時間




ふぁ……



授業終了5分前に目が覚める



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わからなくて退屈って訳やなくて



どんなに居眠りしてても、テスト前に対策プリントたくさんくれるし


そのプリントをきちんとやってれば



テストで赤点ってことはまずなくてな





だから、ウチだけではなく何人かは授業中の話を全く聞いてない




くすくす、でもこれエリちに言うとすっごく怒るんよ

まぁ、言いたいことは分かるけど


やっぱり楽できる時は楽するにかぎるで






キーンコーンカーンコーン



とチャイムが鳴って退屈な授業が終わりを告げる

放課後になって



ん~………



背伸びをした後に、エリちに話しかける


希「エリち、エリち。今日も練習行くんやろ?一緒にいこうな?」



するとエリちはウチの顔も見ないで、えらく平坦な声で


絵里「ごめんなさい希、今日はいいわ」




そういうとエリちはウチを置いてさっさと教室を出て行ってん

あれ?


ウチ、エリち怒らしたんかな?





んー…………


心当たりは結構たくさんあるけど



まぁ、だいたいの事は次の日になったら忘れてるし



あんまり気にすることやないよ

さて、はやく部室に行こうかな






教室を出て部室に行ってる途中でな




家庭科室から出てくる凛ちゃんと花陽ちゃんを見つけてな




希「おろ?凛ちゃん、花陽ちゃん。どうしたん?」

花陽「ひゃあ!?の、希………ちゃん!?」


凛「ど、どうかしたにゃー……!?」



どうかしたんはそっちやん、そんなに焦って




んん?


花陽ちゃん、背中に何か隠してるな

希「なんか隠してるなぁ。なんなん?」



ひょい、と覗き込もうとすると



花陽「だ、だめぇっ!?」




えらく嫌がられてん



なんかごっそり心をえぐられた気分

凛「かよちん行って」


凛ちゃんがそう急かすと




凛「凛は―――――」



ウチのシュシュをすっと素早く盗って、凛ちゃんと花陽ちゃんは別々の方向に逃げて行った





花陽「ご、ごめんなさ~い!」



これは花陽ちゃんを追いかけたいけど、追いかけたら確実に犯罪描写っぽくなるし、ここは……



希「おおーい!凛ちゃんまてー!」

凛ちゃんを追いかけたんやけど



すぐ見失って




気付いたら教室の机にウチのシュシュが置いてたんよ





追いかけっこなんやと思ったんやけど



どっちかっていうと、ウチに見られたくなかったっていうか



拒絶されてるっていうか




…………………きっと気のせいやんな

ちょっと遅れたけど、どうせ部室で会うやろうし



あとで、凛ちゃんをわしわしせんとな





にこ「ん~…………」



そんなこと考えてるときに、にこっちが体に似合わない大きな段ボール箱を運んでてな



前が見えにくいのかフラフラしてる



なんか危なげやなぁ



希「にこっち」

ウチが呼びかけると



にこ「げっ……、希!?」



なんかウチに見られたくなかったようやね





なにしてるん、って



これって去年の学園祭で使った恐竜の着ぐるみやん

去年の学園祭で使おうとしたお手製の着ぐるみなんやけど



予算の関係上、小さいのしか作れず


実質にこっち専用になってん




学園祭当日にお尻に大穴が空くってトラブルが発生してな



結局置物として活躍した恐竜の着ぐるみ




あの後、どっかにいって誰かが処分したんやと思ってたんやけど


にこっちが持ってたんやね

希「うわ~、懐かしいなぁ」


ウチがそう言って着ぐるみに触ろうかとしたらな



にこ「さっ、触らないで!」



突然にこっちが怒鳴るから思わずびっくりして



希「ご、ごめんな……」



謝ったんよ

にこ「………関わらないで」



そう言い放つと去ってな



なんか、今日は心えぐられるような出来事ばっかりやなぁ





ちょっと涙ぐむ

なんか部室に行く気がだんたんとなくなってな




中庭のベンチに座ってちょっと休憩





空を見上げてみる



午前中は晴れてたのに、今は曇り空



気分も落ち気味

なんかため息が出てな





「…………希?」



視線を声のした方に移すと、海未ちゃんがおってな



海未「どうしたのですか、泣きそうな顔してますよ?」




心配そうな顔して、こっちきてん


なんだかもう、泣いて海未ちゃんに甘えたくなったんやけど

希「ううん、なんでも……ないよ?」



声が震えてて、どう見てもなんでもなくはなくて



海未「なにが、なんでもない。ですか。そんな演技では穂乃果すら騙せませんよ」





海未ちゃんが隣に座ってな



海未「なにかあったんですよね?よろしければ教えてくれますか?」


って

俯いたまま今日会ったことを海未ちゃんに話してん




そしたらな、海未ちゃんが



海未「………別に普通の事じゃないですか」



ってな


まさかの一言で

きっと海未ちゃんの事やから


「まったく、にこたちは何考えているのでしょうか!」


って怒ってくれると思ってたから




余計にショックが大きくて

もう顔を上げることもできんで




海未ちゃんの顔見れんで



海未「それでは、私はこれから用事がありますので」


ベンチから立ち上がる海未ちゃん

去り際に



海未「絶対に部室に来てくださいね」


と、ポツリ聞こえた




意味がわからんよ




なんで、嫌われてるのに皆に会わないといかんのか



でも

もしかしたら穂乃果ちゃんやことりちゃんが



ウチの事助けてくれるかもしれん




そう考えると



希「やっぱ…………顔だけ出すかな……」



海未ちゃんが去ってから10分くらいした後に、ウチはベンチを立ちあがった

やっぱり




誰も、おらんか






部室にやってきたんやけど




誰もおらんでな



荷物もないし、誰も来ていないみたいやね

放課後になって


こんなに時間が経ってるんや




誰か一人ぐらい来てもおかしくないはずなのに





ウチ、やっぱり………



パイプ椅子に座り深くため息をつく

驚くほどの静寂




いつもなら穂乃果ちゃんや凛ちゃんが話題を出して騒いで



ことりちゃんや花陽ちゃん、にこっちが乗っかって



エリちや真姫ちゃんが巻き込まれて



海未ちゃんが怒って






そんなことがもうずっと昔みたいで



まるでウチだけ遠い未来にタイムスリップしたみたいで

今までカラフルで色鮮やかやった日々が



突然色あせてな





なんかもう楽しくないよ




明日は学校休もうかな

もともと



今までが異常やったんよ




引っ越した先では、嫌な顔をされる時もあった





本当、音ノ木坂に入ってよかったよ




2年も楽しい時期が続いたのはなかったし

μ's辞めよう




ウチよりもっとアイドルに似合う人がいるんやし




その方が、皆も喜ぶんやろ?



エリちやにこっちとも




できるだけ接さずに、遠くにいよう

でも、最後に




机にうつ伏せになって、今までの事を思い出す







ほんと、ちょっとの間やったけど



すごく楽しかったなぁ

今日はここまで
残りは明日同じ時間ぐらいに投稿します。

5と6間違えんといてな

ガチャ




扉が開く音がして


「希」


そう聞こえたんは、エリちの声





顔をあげてエリちを見る



最後に会った時と同じ平坦な声で――――無表情で

絵里「来なさい」




冷たい




初めて出会った時よりよそよそしく



ほんと、ウチを一人の人間として扱っていないような





そんななにか――――

絵里「来なさいって言ってるでしょ」



エリちがそう言うと、ウチの腕を掴んで無理矢理引っ張ってな



希「い、いやっ……!」



ついエリちの手を振り払って拒否してしまって



だってエリちすっごく怖いんよ

絵里「いいから来なさい!!」


久しぶりに見た



エリちの感情





でもそれがこんなんなんて

涙が出てな



もう、何もかもが嫌になって



力入らんよ









エリちに再び腕を掴まれて




後は引っ張られてな

どれくらい歩いたかわからん





とにかく見えるのは





ぼやけたエリちの後ろ姿だけ

ブリーチかよ

気が付いたら



どこかの教室の前で立ち止まってな




エリちが振り向くと


絵里「入りなさい」



って


ウチは涙を拭いながら首を横に振ったんよ


でも、ちょっと気付いたんよ




今のエリちの「入りなさい」は




冷たくない、いつものエリちの



優しい声に聞こえてん

よく見ると



エリちの顔は無表情ではなく




どっちかっていうと小さな子供が何かを楽しみにしている


そんな、喜びを隠せてないっていうか


希「エリち………?」


ウチがエリちを呼ぶと



何か思い出したんか、さっきの冷たい表情に戻ってな

絵里「こほんっ………。ほら、さっさと入りなさい」



咳払いをしたあと、ウチの背中を押して




希「え、エリち……!?」


その教室に入れられてな




そこで見たのは――――――――――

穂乃果「希ちゃん!」



「誕生日おめでとー!!」




μ'sのみんなの満面の笑みと


パンッパンッ!



耳に響くクラッカーの音




は…………?

教室中が、綺麗に飾ってあってな




机が何個かくっつけて



そこにはお菓子やらジュースやらあって




部屋の隅には、さっきにこっちが持っていた着ぐるみがあってな

希「え………?どういう…こと、なん………?」



自分の置かれてる状況が把握できんでな






呆気にとられてん



すると後ろから、おどけた口調のエリちが



絵里「ほらほら、いつまでも目を丸くしてないで、もっと奥に入りなさいよ」


って、ウチの背中をぐいぐいおしてな

穂乃果「いやー、なに驚いてるの。今日は希ちゃんの誕生日じゃないの」


え?


誕生日?


でも、ウチ………



希「もしかして…………勘違い…なん?」

真姫「本当大変だったんだから」


ことり「希ちゃん勘が鋭いから、サプライズバースディパーティーばれるんじゃないかって皆心配してたの」


海未「まったく、皆。必死に隠そうとして、態度冷たくし過ぎです!」


絵里「そうよ、希ったら勘違いしてたわよ」



穂乃果「むしろ、海未ちゃんと絵里ちゃんがトドメさしたような……」



部室の静寂さはなく



この教室はとても賑やかで




ウチの大好きな皆がおってな

希「じゃあ、みんなウチのこと嫌いになった訳や――――」



ここまで言って



絵里「私たちが希を嫌いになんてならないわよ」


エリちが言葉を被せるように応える


よかった



本当によかったよ

ポロポロ流れ出た涙は



暫く止まらんかったなぁ






少し落ち着いた後は、穂乃果ちゃんの乾杯の音頭で



ウチの誕生日会は始まったんよ

花陽「希ちゃん」



花陽ちゃんが、やってきてな




さっきは逃げてごめんなさいって


ええんよ、もう気にしてないし



んで、さっき隠してたのを見せてくれるって

机に置いてた箱を持ってきてな


箱を開けて中には



とっても美味しいそうなイチゴのロールケーキが入っててな



花陽「その、ね。希ちゃんが誕生日って聞いたから、ケーキ焼いたの」


凛「凜も手伝ったんだよ」


後ろから凛ちゃんの声

花陽「形も不恰好で、味もあんまり自信ないんだけど……」


希「どれどれ」


お行儀悪いけど、人差し指でクリームをすくい取ってぱくり



甘くて甘くて、どんなお店のケーキよりとっても美味しいくてな



つい笑みがこぼれてな



希「とっても美味しいよ」

もじもじと体をくねらせて照れる花陽ちゃん。とってもかわええよ


ありがとうな花陽ちゃん





凛「凜はね、ここのイチゴのせたの」


それと凛ちゃん

海未「それにしても、希がここまで騙されるなんて思いませんでした」


海未「希の事ですし、気付いてるのではないか。とは思ってましたが……」



希「んー?いや、これはさすがにウチでも無理やで」


希「だって、ウチの誕生日今日やないし。ちょうど一か月後なんやし」





ウチの一言で





教室内が凍り付いた

10秒ぐらい、誰一人動くこともせず




最初に動いたんは



凛「ど、どどどどどどういうことにゃー!?」


凛ちゃんで、エリちの肩を掴んでぶんぶんと揺さぶってな




遅れてエリちも


絵里「え、ええっ!?希の誕生日って5月9日でしょ!?去年もGW明けにお祝いしたじゃない!?」

そういやそんなことあったなぁ



でも


希「エリち。ウチ、去年も言ったよ?ウチの誕生日は6月9日やって」




ウチの言葉を聞くとエリちが



ふっ、って力なく崩れてな



凛ちゃんが慌てて抱きかかえるも



凛「絵里ちゃん気絶してるにゃー!?」

花陽「わ、私保健室の先生呼んでくるーっ!?」



そういって、一度扉に激突して保健室とは反対方向に走って行った花陽ちゃん




穂乃果「なんで誰も気づかなかったのー!?」


頭を抱えて絶叫する穂乃果ちゃん





ことり「こ、ことり知ってた。知ってたけど、絵里ちゃんが自信満々に5月9日って言うし」


ことり「誰も何も言わないから、「一か月早い」って所まで含めたサプライズなんだってばっかりに……」



泣き出すことりちゃん

真姫「ああ、もう…………」


静かにうなだれている真姫ちゃん




海未「ああ………その……。の、希。私はどうすれば……」


涙目でおろおろしてる海未ちゃん





こんなに人数いてるのに


皆違う動きしてん



もう、なんか可愛い

希「ええよ、ええよ。ひと月早いだけなんやし、皆ありがとうな」



ウチがフォローしてん




皆どっか抜けてるんやから


あ、抜けてるんはウチも一緒なんか



くすくす。あーやっぱりμ'sって面白いなぁ

本当にありがとうな



エリちに凛ちゃん


穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃん、真紀ちゃん



それとここに居らんけど、花陽ちゃん











あれ、なんか一人足りんような………




ああっ!?

希「そういや、にこっちはどこいったん?」



ウチがそう聞くと、凛ちゃんがな



凛「え?にこちゃんならそこに……」


って着ぐるみを指さしてん




もしかして、ずっと中に…………?


結構時間たってるけど、全然気づかんやったよ

凛ちゃんが、うなだれてる真姫ちゃん呼んでな



真姫ちゃんが着ぐるみを揺さぶるってん



真姫「ちょっと、にこちゃん。いつまで寝てるのよ?」




ゆさゆさ


中から反応なくてな



ぐらっ



着ぐるみが倒れてん

んで、倒れた拍子でビリッ!って大きな音とともに穴が空いてな




中から汗まみれのにこっちが見えてん



真姫ちゃんが覗き込むと



真姫「にこちゃん………って、大変!脱水症状を起こしてるわ!」



穂乃果「ええーっ!?」



これで、また大騒ぎ




本当になんなんやろうね

こうしてウチのサプライズバースディパーティーはうやむやに終わったんやけど




まったく、本当驚いたよ





それにしても、エリちがウチの誕生日全然覚えてくれんって


これはあとでお仕置きせんとな





くすくす。楽しみにしといてなエリち







おしまい

最後まで読んでいただきありがとうございました。
あえて1ヶ月早い投稿です。


>>41
間違えたのはエリチカです。私は悪くない。

>>50
ブリーチ読んだことないのでわかりません。

のんたんマッキーの名前間違えてるやん…

こういう路線は少し苦手かもしれないです。
次はスクフェスのフレからリクエストがありましたので、ことうみでいきます。

>>81
今見返しました。


>>65
>>72
の凛ちゃんと真姫ちゃんに名前の間違えがありました。
申し訳ありませんでした。

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