千早「四条さんの機嫌が悪い」 (57)
千早「……ような、気がするわ」
雪歩「……え?」
伊織「……なに? 貴音の機嫌?」チラッ
貴音「このからくり人形は……蟹、ですか?」
亜美「ちがうよぉ、お姫ちん! カニじゃなくてクワガタっ!」
真美「右手のソードで、相手をからたけわりしちゃうのさ☆」
貴音「なんと! ……確かによく見ると、侍の魂を感じますね」
亜美「ね、かっこいいっしょ→」
真美「よーし、こんどはこのチームでピヨちゃんにりべんじ……!」
伊織「……いつも通りじゃない」
※『春香「千早ちゃんっ♪」 千早「なに? 春香」ブンブン』
というSSの続きになります。こっちも読んでもらえるとうれしいです。
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雪歩「何かあったの? ケンカしてる所を見たとか……」
千早「いえ、そうじゃないわ。何か見たというわけじゃないんだけど……なんだか四条さん、イライラしているように見えて」
伊織「んー……そうだったかしら?」
千早「最近、四条さんと一緒の仕事が多いの。それで、いつもではないんだけど……その……ものすごく……なんというか……」
雪歩「?」
千早「……こう……プレッシャーを、感じるの。四条さんの近くにいると」
伊織「……つまり、はっきりとはわからないけど、貴音が不機嫌な気がする。ってこと?」
千早「ええ……」
雪歩「そうなんだ……。朝、四条さんと挨拶した時は、特に気にならなかったなぁ」
伊織「気のせいじゃない? 貴音のことよ。大方、お腹が減ってたとか」
千早「そう……なのかしら……。まあ私も、なんとなく思っただけだから。何事もないのならそれでいいんだけれど」
伊織「まあ、しばらく様子を見てみましょう」
雪歩「そうだね。何か悩んでるなら、私たちで相談に乗ってあげよう?」
千早「ええ、そうね。ありがとう、水瀬さん。萩原さん」
ガチャ
真「雪歩ー! もうすぐ撮影の時間だってー!」
響「準備したほうがいいぞー?」
雪歩「あっ、真ちゃんに響ちゃん。もうそんな時間?」
千早「あら? 我那覇さんも、二人と一緒に撮影だったかしら?」
響「ううん、自分はちがうぞ。真と一緒に、雪歩を呼びに来ただけ」
伊織「なに? 暇なの?」
響「なっ!? ち、ちがうぞっ!! たまたま収録まで時間があるだけで―――!」
伊織「冗談よ、冗談。にひひっ♪」
響「もーっ!! 失礼だぞっ!!」
千早「水瀬さん……」
響「まったく……あれ? 貴音は来てないの? 今日の収録、貴音も別の現場であるはずなんだけど……」
雪歩「四条さん? 向こうにいるよ」
千早「亜美と真美と、ゲームしてるわ」
響「貴音が? なんだかめずらしい気がするな」
伊織「あの子の趣味嗜好は、未だによくわからないわね……」
真「うーん……確かに……」
真「……あっ! まずい。雪歩、そろそろ……」
雪歩「あっ、そうだね。行かないと……」
千早「……萩原さん。そのままだと……」
雪歩「う、うん。そうだね……」
雪歩「……ねえ美希ちゃん。そろそろ起きてー……」
千早「美希。萩原さん、仕事の時間だから」ユサユサ
伊織「さっさと起きなさいよっ」ユサユサ
美希「……ん……」
美希「……」ムクリ
雪歩「ごめんね、美希ちゃん。もう行かないと……ね?」
伊織「そんなに甘やかして……また、膝を枕にされちゃうわよ?」
雪歩「じ、時間があるときは平気だから……」
千早「ふふ。すっかり特等席になってしまったわね」
真「へー……。そんなに寝心地がいいなら、ボクもお願いしようかな」
雪歩「えぇっ!? ま、まま、真ちゃんっ―――!?」
真「あははっ! 冗談冗談! さあ、行こう雪歩?」
雪歩「じょ、冗談……? も、もう! 真ちゃんっ!」ガタッ
タッタッタッ……
千早「……大丈夫かしら? 遅れてしまうんじゃ……」
伊織「最悪、雪歩を抱えて走ってけば間に合うでしょ。真なら」
千早「……なるほど」
響「……なんか、納得できるぞ」
伊織「ほら! アンタも寝ぼけてないで起きなさい!」
美希「……ん~……でこちゃんうるさいの……」
響「美希ー。いい加減に起きたらー?」
美希「……む~……まだ寝たりないの……あふぅ。向こうで寝てくるねー……」
フラフラ……
伊織「……仮眠室に行ったわ。ほんとに寝てばっかりね」
千早「そうね……。でも仕事の時間にはしっかり起きてくるから、寝かせてあげましょう」
千早「……あ。ところで我那覇さん」
響「ん? なに? 千早」
千早「最近、四条さんの様子はどう? 何か気にならない?」
響「……へ? 貴音? 何かって……どういうこと?」
響「……ふーん。貴音の機嫌が悪い……」
伊織「私は、千早の気のせいじゃないかと思うんだけど」
千早「どうかしら? 我那覇さん」
響「うーん……」チラッ
貴音「なるほど。あぁむ族、むぅぶ族、ぶぅど族の三種類ですね。しっかりと記憶いたしました」
亜美「いや、それ違うからお姫ちんっ!! っていうか、三種類ってなに!? 男型と女型じゃなくて!?」
真美「あれ~? おかしいな……あっ!? お姫ちんのだけ、ソフトが違うよ亜美!! いつの間に!?」
響「……自分にも、いつも通りにみえるぞ」
千早「そう……」
伊織「ほらね?」
響「でも自分、最近は貴音とお仕事してないし、事務所でもあんまり会わなくて……。千早は最近、いつも一緒だったんだよね?」
千早「ええ」
響「なら、一番見てるのは千早なんだし、千早の言うことがあってるんじゃないか? ……他に一緒だった人はいないの?」
千早「私だけよ。……あ。でも、事務所に戻ってからは音無さんもいたわね」
伊織「小鳥もいたの? じゃあ、小鳥にも聞いてみましょうよ。そうすればはっきりするんじゃない?」
響「そうだな。事務所にいることが多いから、最近の様子も知ってるだろうし! 今、どこにいるの?」
千早「あずささんとプロデューサーと、会議室に行ってるけど……まだ打ち合わせ中じゃないかしら?」
伊織「とりあえず行ってみましょう。邪魔なら退散すればいいわ」
千早「……それもそうね」
ガチャ
ガチャ
「「「失礼します」」」
あずさ「あら?」
P「ん? ……どうした? 三人そろって」
小鳥「何かあったの?」
千早「お邪魔してすみません。まだ打ち合わせ中でしたか?」
P「いや、大丈夫だ。さっき終わったところだよ。何か相談か?」
千早「相談というか……音無さんに聞きたいことがあって」
小鳥「―――え!? わ、私? な、な、何かしら……」
伊織「……なんで慌ててるの? まあいいわ。聞きたいのは貴音のことよ」
小鳥「……貴音ちゃん?」
P「貴音がどうかしたのか?」
千早「実は……」
P「そうだったのか……」
響「ぴよ子、何かしらないか?」
小鳥「うーん……そう言われても……。あ、でも千早ちゃんの言ってること、私もわかるわ。なんだか貴音ちゃん、イライラしてるように見えたの」
伊織「え、ほんとに?」
小鳥「ええ。でも、やっぱり私もなんとなく、ってだけなのよね」
あずさ「貴音ちゃんがイライラ……なんだか心配ね」
響「やっぱり気のせいじゃないんだ……」
伊織「それで、どうするの? 様子を見ようと思ったけど、千早も小鳥も、貴音が不機嫌だったって言うなら話は別よ」
千早「直接、本人に聞いていいものなのでしょうか?」
あずさ「そうねぇ……やっぱり改まって聞くより、それとなく聞いてみたほうがいいと思うわ」
響「じゃあ、自分が聞いてみるよ! 今日の撮影の話もしたかったし!」
P「そうだな。俺が聞くより、響のほうが話しやすいかもしれない。お願いするよ、響」
響「任せといて! 貴音がずっと怒ったままなんて、自分も嫌だからな!」
小鳥「とりあえず、戻りましょうか? 今日の様子も見ておきたいし。貴音ちゃんも、まだ向こうにいるのよね?」
千早「はい。そのはずです」
伊織「じゃあ、行きましょう。……心配だからって、あんまりジロジロ見るんじゃないわよ?」
P「わかってるよ……」
ガチャ
千早「四条さんならあっちに……あら?」
貴音「いけません律子嬢。それはどらごんがんではなく、ほむらがん。とても禍々しく、危険な武器なのです。違法ですよ」
律子「いや……違法ですよ、と言われても……なんなの? これ……」
亜美「真美ー……お姫ちん、別のゲームばっかりやってるよ……」
真美「ぐぬぬ……打倒ピヨちゃんのための、ひみつへーきになってもらうという、われわれの作戦が……!」
伊織「律子もいるわね。いつの間に?」
P「ああ、今日は竜宮小町で仕事だったな。亜美と真美につかまってしまったか」
響「貴音につかまってるようにも見えるけど……まあいいや」タッタッタッ……
響「みんな、はいさーいっ!」
亜美「ん? あっ、ひびきん! はいさーい!」
真美「はいさい、ひびきんっ!」
律子「おはよう、響」
貴音「おはようございます、響」
律子「あら、響だけ? 他には誰もいない?」
響「ううん。さっきまで、他のみんなと会議室にいて……ほら、向こうに」
貴音「皆? ……」チラッ
貴音「……―――っ!!」
律子「向こう……ああ。よかった。みんな遅刻してるのかと思っちゃったわ」
スタスタ
P「おいおい……全員で遅刻なんて、そんな馬鹿なことないだろ」
小鳥「ふふ。だとしたら、大騒動になっちゃいますからね♪」
亜美「いやいやー……みんな、げんいんふめーのウィルスにたおれてしまった……! なんてことも……」
あずさ「あらあら……そんなことになったらどうしましょう~……」
千早「そうですね……とにかく、ここにいない人たちは事務所に近づけないで、今以上の感染を防がないと……」
伊織「……真面目よね。あなたたち」
真美「んっふっふー……今まさにウィルスの魔の手がそこに……」
真美「……って、あれ? お姫ちん? どうかした?」
律子「貴音? 貴音が何か―――ヒッ!?」ビクッ!
亜美「ひぃっ!?」ビクッ!
真美「な……なに!?」
貴音「――――――」ゴゴゴゴゴゴ……
千早「……し……四条……さん……?」
伊織「ちょ、ちょっとっ! 不機嫌ってああいうことなの!? 機嫌悪いってレベルじゃないわよ!? なんなのあの顔!? 真顔のはずなのに、怖すぎるから!!」
千早「い……いえ……私が見たときはここまでは……」
響「おっ、怒ってる!! めちゃくちゃ怒ってるっ!! なんか、怒りでオーラみたいなのも見える気がするぞっ!?」
あずさ「な、なんでかしら……なんだか体が重たいような~」
亜美「そ……それに……寒くなってきたような……!」
小鳥「こ、この六倍近い重力負荷は……『血の姉妹(プルート・ディ・シェヴェスタァ)』!? いえっ、ここは地球。テラフォーミングなんてする必要は……ならまさか、怒りや憎しみによるハイパー化っ!? それにこのブリザードは、オーバースキルによるもの! まずい、まずいわ……」ブツブツ……
真美「ぴ、ピヨちゃんがこわれたーーーっ!!」
P「小鳥さん落ち着いてください! ここは月でも異世界でもシベリアでもありません!」
千早「なんてこと……大変なことに……ん?」
貴音「――――――」ゴゴゴゴゴゴ……
千早(プロデューサーを、見てる?)
貴音「――――――あなた様」ゴゴゴゴゴゴ……
P「うおっ!?」ビクッ!
P「おっ……おうっ!! な、なななんだっ、たきゃね!!」
千早「プロデューサーも落ち着いてください! 呂律が回ってないですよ!」
貴音「―――おはようございます。今日はよく晴れましたね……?」ゴゴゴゴゴゴ……
P「あっ、ああ!! そうだなっ!! いい天気だなっ!! はははっ!!」
貴音「――――――」ジー……
P「……」ガタガタ
貴音「――――――なにか」
P「えっ!?」ビクッ!
貴音「―――何か私に。言うことはありませんか?」
P「……え? 言うこと?」
響「ちょ、ちょっとプロデューサー! 貴音に何したんだっ!?」
P「そ、そう言われても……何のことだか―――」
貴音「つまり」
P「ひっ!?」
貴音「何も、思い当たることは、ない。……ということですね……?」ゴゴゴゴゴゴ……!
亜美「ううっ!? ま、またオーラが濃くなった気がするよーっ!? ちょっと兄ちゃん!!」
P「お、俺のせいか!?」
真美「このままじゃ、みんなお姫ちんのプレッシャーでやられちゃうって!!」
小鳥「……そうか……そういうことだったのね……」ブツブツ……
真美「えっ、ピヨちゃんなにかわかった……ああっ!! 違う!! ピヨちゃん、目がヤバい!! なんかぐるぐるしてる!! ど、どうしよう亜美!?」
亜美「……あ! あ、あ~! そ、そうだ~! 律っちゃん、竜宮はこのあとお仕事っしょ!? 早く行かなきゃ遅れちゃうYO☆」
真美「ちょ!? それは汚いよ! 亜美ずるいーっ!!」
伊織「あっ……そ、そうね! そうだったわね! みんなには申し訳ないんだけど、仕事じゃあしょうがないわよね!!」
千早「くっ……考えたわね……」
伊織「ほら、行きましょう律子!」ガシッ!
律子「え、ええっ!? いやっ、ちょ、ちょっと待って伊織! この場を放っておいたら、死人が出るわよ!?」
伊織「そのときは水瀬財閥がなんとかするわ!! 雪歩の父親たちにもお願いして、しっかり後始末してあげるから!!」
P「おいっ!! 死人が出る前提で話をするな!!」
伊織「ほら早く律子! 亜美、あずさを!!」ダッ!
亜美「う、うん! あずさお姉ちゃん、行こう!!」ガシッ!
あずさ「あっ、ちょっと亜美ちゃん! ……ご、ごめんなさい、えっと……がんばってくださいね? プロデューサーさ―――」
バタン!
P「謝らないでくださーいっ! あずささーんっ!!」
響「……ほんとに行っちゃったぞ……竜宮小町……」
真美「……あ……亜美のはくじょーものぉーーーっ!!!」
千早「……仕方ないわね。私たちだけでなんとかしないと……」
貴音「――――――」ゴゴゴゴゴゴ……
真美「兄ちゃんっ! 本当に兄ちゃんのせいじゃないの!?」
P「な、なんだ……いったい俺は何を……はっ!!」
響「おっ! 思い出したのか!?」
P「もしかして……だいぶ前だが、撮影が控えていたから、ラーメンを一杯だけにしたことを怒っているのか!?」
貴音「――――――」ゴゴゴゴゴゴ……
響「そうじゃないみたいだぞ! 他には!?」
P「ほ、他……じゃあ逆か!? 差し入れを持ってきたとき、亜美と真美にはケーキで、貴音にはラーメンを差し入れたことか!? 確かに女性扱いしてないみたいで、失礼だったかもしれない……すまなかった、貴音!!」
貴音「――――――」ゴゴゴゴゴゴ……
真美「それもちがうよ兄ちゃん! はやくしないとピヨちゃんが!!」
小鳥「……薄い本が、開いたり閉じたりしている……あはは、大きい……やおいかな? いや違う、違うな。やおいはもっと、アッーって動くもんな……」ブツブツ……
P「く……小鳥さん……。なんだ……ラーメンのことじゃなかったらなんだ……なにを……」
P「……あっ、そうだ!! ちょっと前に、貴音の胸を触ってしまったことか―――」
響「―――それどういうことだ?」ゴゴゴゴゴゴ……
千早「―――詳しくお願いします」ゴゴゴゴゴゴ……
真美「兄ちゃんのバカーーーっ!! 敵をふやしてどうすんのっ!!」
P「ま、待て落ち着け! ちょっと寝ぼけてしまっただけなんだ!! それに貴音だって許してくれたし―――」
貴音「本当に」
P「っ!?」
貴音「本当に……わからないのですね……」スゥ……
千早「あ……」
千早(四条さんが、落ち着いた? でも……)
P「た……貴音……」
貴音「いえ、いいのです。あなた様は悪くありません。これは私のわがままなのです……。皆を怖がらせてしまいましたね。申し訳ありませんでした……」スッ
響「た、貴音! どこ行くの!?」
貴音「屋上です。少し風にあたって、冷静になってきますので……」
バタン
千早「……四条さん」
響「……っ! じ、自分、追いかけてくる!!」ダッ
真美「……お姫ちん、大丈夫かな?」
千早「……とりあえず、我那覇さんに任せましょう……」
P「ああ、そうだな……」
小鳥「……でもプロデューサーさん。あれだけ怒るなんて、余程のことだと思います。本当に何かないんですか? 約束を忘れてるとか……」
真美「あ、ピヨちゃん! よかった、正気に戻ったんだね!」
小鳥「ええ、もう大丈夫よ。ごめんね。ちょっと無制限中立フィールドにダイブしてて。まったく、バーストリンカーはつらいわね」
真美「あっ、まだダメかもしれない」
小鳥「それで……どうなんですか? プロデューサーさん」
P「んー……約束か……。いや、約束というか、それ以前に……ああ、そうだ。この前の千早と春香と同じだよ」
千早「え? 私と春香ですか?」
P「ああ。約束どころか、最近は事務所でも現場でも、貴音とほとんど会ってないんだ。今日、久しぶりにあったらこれだからなぁ……。まったく見当がつかないんだ」
真美「そうだったの? 会ってないんじゃ、約束もケンカもできないもんね」
小鳥「そうよね……」
千早「……この前の私……」
千早(私も……春香としばらく会ってなくて……みんなに色々冷やかされたけど、そのおかげで、改めて春香が大切だと思えて……私は、春香に会いたくなって……会いたい……)
千早「……あっ! それです! それが原因ですよ!」
P「え?」
千早「四条さん、寂しかったんですよ」
P「……寂しい?」
千早「事務所でも現場でも、プロデューサーに会えなくて、それで機嫌が悪かったんだと思います」
P「んー……そうか? 貴音はしっかりしてるし、だから俺がいなくても仕事を任せられると……」
千早「だめですっ!」
P「おおうっ!?」
千早「もちろん、いつもは無理でしょうけど……忙しいのも、わかっているでしょうけど……やっぱり……それでも……」
P「……」
千早「……どうでしょうか、プロデューサー」
P「……。そう、なのかな。俺なんかがうるさく言うよりは、一人で自由にできた方が貴音のためかと思ってたが……これじゃあ逆効果だったな……」
千早「プロデューサー……」
小鳥「大丈夫ですよ。あえて会わなかったのは、貴音ちゃんを思ってのことだったんですから。きっと貴音ちゃんに伝わるはずです」
真美「今、ひびきんが説得中だしね!」
P「……」
P「……よし。謝ってくる。許してくれるかわからないけどな」
真美「おおっ! 覚悟をきめたね兄ちゃんっ!」
P「……でもこれで、もし違ってたらどうしよう。俺、ただの自意識過剰ってことに……」
千早「え? ……ふふ。大丈夫ですよ。安心してください」
P「……そ、そうか。まあ、そういうなら千早を信じるよ」
ガチャッ
P「貴音っ!!」
貴音「―――!!」
響「わっ!? ぷ、プロデューサーっ!?」
P「貴音……」
貴音「……なんでしょうか?」
P「……」
貴音「……」
響「……あ……えっと……」キョロキョロ
響「あー……その……じ、自分はお邪魔……かな? あはは……」
小鳥(響ちゃん、こっち!)コソコソ
響「! あ、じゃ、じゃあ自分は戻ってるね! ご、ごゆっくり~」タッタッタ……
P「……はは。気を遣わせてしまったか」
貴音「……」
響「あー……その……じ、自分はお邪魔……かな? あはは……」
小鳥(響ちゃん、こっち!)コソコソ
響「! あ、じゃ、じゃあ自分は戻ってるね! ご、ごゆっくり~」タッタッタ……
P「……はは。気を遣わせてしまったか」
貴音「……」
コソコソ
小鳥(大丈夫だった? 響ちゃん)
響(大丈夫じゃないぞ……貴音、自分が何を聞いても、なんでもないって……うう……自分、信用なかったのかな……)
千早(そんなことないわ。我那覇さんのせいじゃなくて、これはプロデューサーにしか解決できない問題みたいだから)
響(へ? もしかして、何かわかったのか!?)
千早(ええ。見ていればわかるわ)
真美(……てゆーか……なんとなくで、みんなといっしょに隠れちゃったけど……これってどうなの? こっそり見てるなんて、兄ちゃんたちに悪くない?)
小鳥(……)
千早(……)
響(……)
真美(……)
小鳥(……あっ! プロデューサーさんから切りだすみたいよっ)
響(貴音……大丈夫かな……)
千早(がんばってください、プロデューサー)
真美(……。大人って……)
P「貴音。すまなかった」
貴音「……何のことでしょうか」
P「……貴音のことを放っておいたことだ。俺はプロデューサーなのに……貴音に寂しい思いをさせてしまったみたいだな……」
貴音「……」
P「でも……まあ、これは言い訳になってしまうが……貴音の力だったら、俺がついていなくても、充分に輝けると思ったんだ。むしろ、俺がいると邪魔なんじゃないかって」
貴音「……」
P「……貴音に、甘えてたんだな……。もう一度言う。すまなかった。貴音」
貴音「……」
P「……」
貴音「……あなた様に信頼されるというのは、とても嬉しく思います」
P「……」
貴音「そして、その信頼に応えてみせるのも私の役目。あなた様が、一人でも輝いてみせろと言うのなら、それに全力を持って応えてみせましょう」
P「……ああ」
貴音「……ですが……それでも……信頼されているというのもわかっております……。しかしそれでも、あなた様の声が聞きたいと思うのは、いけないのでしょうか……」
P「……」
P「……さっきも言っただろ? すまなかったって」
貴音「……あなた様」
P「今日は久しぶりに一緒に仕事に行くんだ。そんなに俺の声が聞きたいって言うなら、好きなだけ聞かせてやる。貴音が勘弁してくれって言いたくなるほどな」
貴音「……まことですか?」
P「もちろん! ……ああ。それに仕事が終わったら、その後は何も無かったろ? 一緒に夕飯でもどうだ? ラーメンとか……あっ」
貴音「……」
P「……い、いや、ラーメンじゃないほうがいいよな。は、ははは。も、もっとこう、お洒落な感じの所とか……」
貴音「……ふふ。気にしていません。……ですが」
P「……?」
貴音「……今日は、供に食事に行くよりも……お願いがあります」
P「なんだ?」
貴音「お仕事が終わったら……またここで、一緒に夜空を眺めませんか? 今日ならば、きっと美しい月が見られると思うのです」
P「……月? はは。なるほど」
貴音「いかがでしょうか?」
P「いいぞ。今日は貴音と一緒にいるって決めたんだ。お月見でもなんでも、どこでもお供させてもらうよ。仕事場でも、屋上でも、月面でもな」
貴音「ふふ。それはいいですね。ありがとうございます……」
コソコソ
小鳥(……これは……仲直りというか……)
千早(……す、すごくいい雰囲気ですね……)
響(……おお……な、なんか……なんかすごいぞ……)ドキドキ
真美(うあうあ~……)ドキドキ
千早(で、でも音無さん、さすがにこれ以上は……)
小鳥(ん~……そうね。これ以上は野暮かもね)
響(えっ、もう行くのか!? も、もうちょっとだけ……)
小鳥(だめよ、響ちゃん)
真美(ずるいよ! ピヨちゃんが真っ先にのぞいてたくせに……)
小鳥(それはそれ。これはこれ。あとは二人にしてあげましょう?)
真美(うう~……)
千早(……ふふ。やっぱりなんとかなったみたいですね。お疲れ様です。プロデューサー)
真美「……いや~、とりあえずはイッケンラクチャク、って感じだね!」
響「そうだな。貴音の機嫌も良くなったし! ……うう。もうあんな貴音は勘弁だぞ……」
小鳥「……あんな貴音ちゃん……うっ、頭が……」
真美「!? ぴ、ピヨちゃんっ! 思い出さなくていいよ! ね!?」
千早「まあ、こんな大事になってしまったし、もう同じことはないと思いたいわね」
響「うんうん。プロデューサーにはしっかりフォローしてもらわないとな!」
小鳥「当たり前だけど、貴音ちゃんだって女の子なんですもの。今日のプロデューサーの名誉挽回に期待ね」
千早「ふふ。そうですね……」
小鳥「……あら、もうこんな時間。そういえば、美希ちゃんは? そろそろ仕事のはずだけど……」
響「あ~、美希のやつ、まだ仮眠室だな? 仕方ない、起こしてくるか~……」
真美「んっふっふ……どうやったら起きるかなぁ、ミキミキ」
千早「普通でいいわよ……」
ガチャ
響「おーい、美希~。そろそろ起きろ~。仕事だっ―――」ピタッ
真美「……? どったの? ひびきん。ドア開けたら、いきなり止まって……」チラッ
真美「……あっ!!」
千早「二人とも何を……っ!?」
小鳥「!! キタわねっ!!」ガタッ
美希「zzz……」
やよい「……あっ……。お、おはようございます~……」
真美「や……やよいっちが……ミキミキと抱き合って寝てる……」
小鳥「どういうこと!? ねえ、どういうことなの!?」ハアハア
やよい「え、えっと……ここのお掃除してたら、美希さんが来て……」
美希『やよい……イイ感じの抱き枕になりそうだね。それにやよいって、お姉ちゃんだし?』
やよい「……って……それで……」
真美「さ、さすがミキミキ……いろいろとぶっ飛んでるぜ……。でももうやめさせないと……」
千早「……高槻さんが抱き枕……いいかも……」
真美「え!? ち、千早お姉ちゃん!?」
響「なっ!? いいやっ、ダメだっ!! 自分がやよいを抱き枕にするぞっ! 第一、千早にはもう春香がいるだろ!? ずるいぞ!!」
千早「? 春香? 我那覇さん、なんで急に春香が……」
響「二人でベタベタしてるから」
千早「……っ!?/// は、は、春香は今、関係ないでしょうっ!!」
響「関係あるだろ! 自分知ってるぞ。最近いっつもイチャイチャして……」
千早「してないっ!! ///」
ギャーギャー!
やよい「ううー……二人ともケンカしないでください~……」
真美「ほっとこう、やよいっち。ピヨちゃんもなんか変だし……はやくミキミキ起こさないと―――」スッ
小鳥「いいわっ! やよいちゃんっ、もっと美希ちゃんにくっついて! もっと……ああ! そうね、真美ちゃんも一緒に! さあっ!!」●REC
真美「―――っ」ワナワナ
小鳥「すごいっ、すごいわっ!! やよみき? みきやよ? それにプラス真美ちゃんなんて……貴重っ! とんでもないお宝映像だわっ!! ……真美ちゃんっ、さあ早く!! 二人で美希ちゃんをサンドイッチよっ!! さあっ!!」ハアハア
真美「―――もーーーっ!!! だれかなんとかしてよーーーっ!!!」
美希「……うるさいの……」
―――貴音の機嫌は直ったが、屋上から戻ってきた貴音とプロデューサーは、大泣きする真美を泣き止ますのに、大変苦労したそうな。
そして、貴音とプロデューサー、美希とやよいたちに触発された千早は、自分の部屋で春香を抱き枕にしたそうな。
そのあと、滅茶苦茶イチャイチャしたそうな。
おわり
おしまいです。ゲームネタにレス、ありがとうございました。
前作は、オールキャラな「はるちは」のつもりで書いていたはずが、貴音だけ出し忘れるという、とんでもない大ボケをかましていました。
寂しい思いをさせてしまったので、このSSを貴音さんへのお詫びにしたいと思います。
貴音さん、仲間はずれにしてすみませんでした……
カンタロス
ロボまる
ピコ
が好き
>響「でも自分、最近は貴音とお仕事してないし、事務所でもあんまり会わなくて……。千早は最近、いつも一緒だったんだよね?」
貴音「ごーや娘などどうでもいいのです」
このSSまとめへのコメント
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