木場真奈美「レイニーブルー」 (45)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSになります。

以前書きました
ヘレン「私の世界。」
ヘレン「私の世界。」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398613235/)

と設定が同じ部分がございますので、よろしくお願い致します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398959338

午後 15:37 シンデレラガールズ事務所某支部


川島瑞樹『本日は大気が不安定なため、ところによりにわか雨が…あっ!ただいま降りだしました!』

瑞樹『関東地方で、まだ降っていない地域の方でも、今後、急な雨にご注意ください!』

瑞樹『…お洗濯物取り込まなくちゃ、以上、ミズキ☆ウェザーでした!スタジオお返ししまーす!』

局アナ『川島さん、ありがとうございました。明日の天気予報は安部菜々さんによる、ん?“ウサミン天気予報受信”…です。お楽しみに。』

局アナ『続きまして…』


P「川島さんはいつも元気だな…。しかし雨か…。」

P「こっちはまだ降ってない、が、心配だな…。」

ポツ  ポツ ポツ ポツポツ

ザー……

P「言わんこっちゃない…。」

P「お湯でも沸かしておくか…。」


午後 15:55 事務所キッチン

コポコポコポ   キュッ

P「さて、準備は整った、重症にならないうちに帰って来い…!」

カンカンカンカン

木村夏樹「っだぁー!降られたービショビショだぜ…。」

吉岡沙紀「まだ降らないと思って傘持ってかなかったからねー、思いっきり濡れたっすね…。」

P「おかえり、お前たち。散々だったなぁ。ほれ、タオルだ。」

沙紀「ありがとうございます、そっすね…。まさかこんな早く降るとは…。」

夏樹「ありがとよ、プロデューサーさん…。っくしゅん」

P「早くシャワー浴びてこい、茶を淹れて待ってる。」

夏樹&沙紀「はーい。」

P「さて、あと一人…。」


カンカンカンカン

木場真奈美「ただいま戻った。思いの外降られて…うぷっ」

P「おかえり、真奈美。さっさとシャワー浴びてこい。」

P「よく温まってこい、風邪をひかれても困る。」

真奈美「タオルを投げるとはご挨拶じゃないか。寒気がするほど重症ではないが、行ってくる。」

P「甘くみるなよ、前のようにはなるな…?」

真奈美「…。重々承知だよ、プロデューサー殿。」

P「わかっているならよろしい。」

P「あと、先に行ってる二人の分も着替えを出しといてくれ、あと洗濯機回しとけ。」

真奈美「私を顎で使うのか、P。」

P「上着ならともかくとして、下着類に関してはもしものためにストック持ち込ませているとはいえ、男の俺が触るわけにもいかないだろう。」

真奈美「ごもっともだな。まあ、使われてやるよ。」

P「あぁ、よろしく頼む。」



夏樹「前…ってなんだろ、プロデューサーさん、アタシたちと木場さんでなんか扱い違うよなぁ。」

沙紀「木場さんと、あとヘレンさんはPさんとは長いみたいで、そういうのもあるんすよ。」

夏樹「そういうもんかな。」

真奈美「ふたりとも、洗濯機にいれていいものと、いけないもので分けておいてくれ。」

真奈美「あとは私がやっておこう。」

夏樹「あっ、ハイ、わかりましたー。」

沙紀「アタシは全部洗っちゃっていいっすよ、入れときますね。」

真奈美「うむ、ありがとう。」



午後 16:20 事務所内

夏樹「ふぅーさっぱりしたな。」

沙紀「そうっすねー。」

夏樹「でも、事務所の貸出服が芋ジャージってのはちょっとねぇ…。」

沙紀「なんか、時代を感じるっすね…。」

P「帰りは送っていく、乾燥機の時間もあるから、芋ジャージで悪いが、ゆっくりしてろ。」

P「寒いようなら毛布も持ってきてあるから、包まってろ。そこに茶もある。」

P「安いものだが、ジンジャーティーだ温まると思う。」

沙紀「なんか準備いいっすね。」

P「そりゃあ、テレビで川島さんの天気予報番組を確認してたからな。」

P「同プロダクションのアイドルの仕事だ、チェックはぬかりない。」


夏樹「へぇー、うちの夏樹Pさんにも見習わせたいとこだね。割りと行き当たりばったりだぜ?あの人。」

P「他には他なりのやり方があるからとやかくは言わん。だが、今度のプロデューサーミーティングでは話しておこう。」

P「それに、今はハードメテオライツ担当として、他のプロデューサーからアイドルを任されている状態だ。もしものことがあったら夏樹Pに悪い。」

P「そういえば、夏樹、この前のミュージカルライブ、良かったぞ。」

P「舞台上で髪下ろすのははじめて何じゃないか?」

夏樹「ライブの時は気合入れる意味も込めて、セットしてるけどさ、」

夏樹「今回は舞台、派手にやらかすなら、演出に沿う道を選んだわけ。」

夏樹「まあ、ちょっと、夏樹Pさんに説得されたようなところもあったけどさ。」

夏樹「とにかく、成功して良かったよ。」

沙紀「夏樹の迫真の演技、思い出すっすねー。『こんなのは…アタシじゃねえ…』どうっすPさん、似てる?」

夏樹「な!褒めてないだろそれ!」

P「こら、沙紀、あんまり茶化すなよ。初めての試みながら、よくやりきった。同じ支部の仲間として鼻が高いよ。」

夏樹「アタシもそう思ってもらえて嬉しい…ありがとよ!」

P「ここからがまた楽しみだな。」

沙紀「そういえば、Pさん。初めてってことで、一つ気になることがあるんだけど、いいっすか?」

P「ん?なんだ?」

沙紀「木場さんと初めて会った時ってどんな感じだったんすか?」

P「何?」

夏樹「それ、アタシも気になるね。」

P「そんなこと聴いてどうするんだ。」

沙紀「ハードメテオライツの今後のためっす。隠し事はのちのち響いてくるんすよ?」

P「とってつけたような理由だな…。」

P「だが後々禍根を残すとメンバーに言われたなら仕方がない、聴きたいというなら教えてやろう。」

P「…四年前、シンデレラガールズプロダクションが本格的に始動する前の話だ…。」

本日ここまでになります。
勝手ながら、GWをかけてゆっくり書き上げていく予定なので
気長にお待ちください。

おまたせいたしました。
今回も少々短いですが、再開いたします。



4年前 アメリカ合衆国 某スタジオ前

P「はい、この辺りですね、はい、いえ、こちらこそ、どうもありがとうございます。」

P「情報提供感謝いたします、それでは失礼致します、ちひろさん。」ピッ

P「ふむ、よし、行くか。」


P「以前連絡しました、日本の芸能プロダクションの者です。」

P「本日は海外研修の一環で、レコーディング風景を見学に参りました。」

受付「はい、少々お待ちくださ…い…はい、CGプロダクションのP様ですね。ご案内いたします。」

P「ありがとうございます。」



受付「日本の方がわざわざ、それほど大きくもないこのスタジオまで見学とは、珍しいですね。なにか理由がおありで?」

P「ええ、実は私の所属するCGプロは正確にはまだ発足しておりません。」

P「これから旗揚げするに際して、超大手のスタジオ見学よりも、アメリカの音楽界を縁の下で支える、失礼ですが中小のスタジオを見学しております。」

受付「まあ、そうですか、ではこのようなところではありますが、一つでも多くのことを吸収して行かれることを願っております。」

受付「トイレは向かってあちら、コーヒーサーバーは好きにお使いください。では、失礼致します。」

P「はい、ありがとうございます。」

P「…。さて、と。」

P(さっきの受付さんには悪いが、スタジオの見学というのは表向きの理由、本当の目的はトレーナーのスカウト。)

P(社長の企画書通りだと、最終的に所属アイドルは何人を超えるかわからない。)

P(現在、青木姉妹にトレーナーを依頼している状態ではあるが、彼女たちでは絶対数が足りなくなるだろう。)

P(それ故のトレーナー発掘、必要とはいえ、アイドルのスカウトとは勝手が違うからな。心配だ。)

P(だが、海外のトレーナーを連れて行っても言葉の壁を考えなければ…。日本語に堪能な外国人か?)

P「一服しながら考えるか。コーヒーでも飲もう。」

スッ

?・P「あ…。」

P「すみません、先にどうぞ。」

?「そうですか、ありがとうございます。」

P(日本人…?)

?「同じものでしたよね、どうぞ。」

P「あ、ありがとうございます。」

?「見たところ、日本の方ようですね。」

真奈美「私は木場真奈美といいます。ボイストレーナーでここをよく利用しています。」

P「私は、日本のシンデレラガールズプロダクションでプロデューサーをしております、Pと申します。」

P「見学生のようなものですし、日本のよしみもありますので、あまりかしこまらなくて結構ですよ。」

真奈美「そうかい?じゃあ、キミもそうかしこまらなくてもいいよ。」

真奈美「私もむずがゆいからね。」

P「了解した。しばらくここに顔を出させてもらうことになる、またあったときはよろしく。」

真奈美「こちらこそ。見学中何かあったらいってくれ。力になろう。」

真奈美「そろそろ休憩が終わるから、私はこれで行くよ。いずれまた。」

カツカツカツカツ

P(木場真奈美、か。日本人で、且つこっちで活躍できるほどの実力なら、言葉の壁を超える必要はないか。)

P「憶えておこう。」

P「ぼちぼち動くか。」



P「今日はそろそろ帰るか。他のところも回って見たが、めぼしい成果はなかったな…。ん…?」

真奈美『―――!!――――!』

P「まだやってたのか、時間は…そろそろ終わりみたいだな。」

P「なんかちょっと揉めているような…。お、でてきた。」

真奈美「はぁ…。」

P「お疲れ様。」

真奈美「? …ああ、キミか。どうだい、勉強にはなってるか?」

P「まぁ、それなりに。今日はそろそろ帰ろうと思っていたところだ。そちらも今日はあがりだろう?」

真奈美「私はこの後、もう一つ仕事があるんだ。」

P「? タイムテーブルでは今日はあがりのようだったが、違うのか?」

真奈美「ボイストレーナーのほうはな。だが、もう一つある。」

真奈美「見ていくかい?」

P「是非。」

真奈美「よし、ついてくるといい。」

収録スタジオ

真奈美「今日もよろしくお願いします。」

クライアント「ああ、こちらこそ。」

真奈美「今日は一名、見学者がいるのですが、同席させていただいてもよろしいですか?」

クラ「構わないよ。」

P「よろしくおねがいします。」

クラ「曲調、歌詞は前回送ったとおり、注文も一応メールにつけておいた程度でよろしく。」

真奈美「では、早速収録を始めましょうか。」

P(クライアントがレーベル、歌手の事務所などに売り込む曲、)

P(これから他の歌手が歌うための前撮り、数は少ないが、「教える」「鍛える」以外の彼女の仕事か…。)

真奈美『―――♪―――――♪』

P(流石うまいな…。)

クラ「君は…。」

P「申し遅れました、日本のプロダクションでプロデューサーをしているPと申します。」

クラ「そうか、なんとなくそんな気がしていたよ。」

クラ「彼女を見る目がそんな目だった。」

P「わかるものですかね?」

クラ「私もそれなりに長く音楽業界に居続けているから、なんとなく、なんとなくだよ。」

クラ「確かに、君を外で見かけた時は、映画さながら、マフィアのボディーガードって体格だけどね。」

P「はは…。」

クラ「…彼女、いい歌を歌うだろう?」

P「あぁ、はい。私も今日知り合ったので、彼女の背景までは知りませんが、良い歌声ですね。」

クラ「日本人で本式の歌手でもないのに、あそこまで歌えるのはなかなかそういない。」

クラ「私の会社じゃ、彼女を雇って上げることはできないが、こうやって、少しだけでもお願いしてるんだよ。」

P「そうなんですか…。」

クラ「彼女は自分を試したくて、こっちに来ているみたいだね。それも歌手そのものではなく、指導者として。」

クラ「…スカウトするなら早くしなよ?ああいう人材はなかなかいないよ。」

P「いや、そんなつもりは…。」

クラ「言っただろう?そういう目だった、って。」

クラ「たぶん、このスタジオに見学に来たのだって、スカウトが目的じゃないのかい?」

P「…。」

クラ「何、誰にも言わないよ。もし、そういうことがあったらって話さ。」

P「ありがとう、ございます。」

クラ「あらら、正解か。」

クラ「彼女は頑なだよ、一人でなんでもしようとしてしまう。」

クラ「いろんなものを見せてあげたいものだねぇ、Pくん。」

P「は、はあ。少し考えてみますよ。」

クラ「さて、曲も終わるみたいだ。概ねいいかな。」

真奈美「お疲れ様です。どうでしたか?」

クラ「うん、いつも通りいいねえ。また、頼もうと思うよ。」

真奈美「ありがとうございます。」

クラ「では、遅い時間までありがとう。」

真奈美「こちらこそ、またよろしくお願いします。」



P「今のクライアントさんとは長いのか?」

真奈美「こっちに来たばかりの頃、お世話になってね。」

真奈美「今でこそボイストレーナーをして生計を立ててはいるが、あの人が仕事をくれなかったら、逃げ帰っていたかもしれない。」

P「へぇ…。」

P(初代プロデューサーといったところか…。)

P「さて、今日は色々とありがとう。そろそろ宿所に帰らせてもらうよ。」

真奈美「P、キミはまだ夕食をたべていないだろう?」

P「? 確かにそうだが、帰りがけに何か食べていくさ。」

真奈美「この辺りはあまりうまいレストランがない、どうだい、うちにくるかい?」

P「そんな、知り合って一日目の人間がいきなりおじゃまするわけにもいくまい、今日は遠慮しておくよ。」

真奈美「そうかい…。長々一人での生活で、料理の腕も落ちているかもしれないと思ってね。」

真奈美「久しぶりにちゃんと作ってみるにもいい機会じゃないかと踏んでいたんだが、仕方ない。」

P「…。」

P「そういうことなら行こう。料理は俺も趣味でやっている。それなりに舌は超えていると思うぞ。」

真奈美「そうか!じゃあ、車をまわしてくるから、待っててくれ。」

P(ずっと一人で寂しかったのか?)

P(スカウトの足がかりを作るには、いい機会か。)

P(いささか時期尚早なのがリスキーに感じるが…。)

真奈美「P!乗ってくれ。」

P「ああ。」

P(今はとりあえず話を聞きに行こう。)

本日ここまでになります。
次の次の更新くらいで終わらせる予定でいます。
よろしくお願いします。

おまたせいたしました。
更新再開します。

真奈美「しかし、よく乗れたな、あの車に。」

P「傾向と対策だ。伊達にこの体で生きてきてはいないよ。」

真奈美「そういうものかね…。」

P「どこに行くんだ?」

真奈美「この辺り、飲食店は少ないが、それなりに野菜や魚介が揃っている商店があってね、そこに寄っていくよ。」

P「ほう、楽しみだ。」

P「…こっちに来てどれくらいになるんだ?」

真奈美「三年くらいになるかな。歌の仕事も私一人生活するなら十分なくらいさ。」

P「それなりにうまく行ってるみたいだな。」

真奈美「そうでもないさ、言葉の壁、人種の壁、ないようである。」

真奈美「そういったモノをはねのけるため、日々鍛錬なことは昔から変わっていないよ。」

P「日本に戻りたいとか思ったことはあるのか?」

真奈美「ないわけじゃないさ。最近でも思うことがある、前ほどの頻度ではないがね。」

P「驚いた。イメージとしては、失礼だが、鉄の女とかそういった感じだったが。」

真奈美「ひどい言い草だな。私だって人間だぞ?不安に感じることぐらいあるさ。」

真奈美「さ、着いたぞ。」

P「おう。」

(商店内)

P「…確かに、普通より揃っているように見える。アメリカにこんなところがあったとはな。」

真奈美「アメリカの商店の全部が全部ウォルマートのようなものではないさ。」

真奈美「小さくてもこだわりをもってるところはままある。」

店主「あら、マナミちゃん!お買い物?」

真奈美「どうも、こんにちは。」

店主「そっちは…ボーイフレンドかしら?」

真奈美「そういうものではないです、日本人の友人ですよ。」

店主「あら、それは残念ね。」

P「Pと申します。」

店主「ご丁寧にどうもね。私はここの店主です。マナミちゃんにはご贔屓にしてもらってるわ。」

真奈美「今日はこれだけ、いただいていきます。」

店主「はい、ではこれだけになります。」

真奈美「どうぞ、いつもありがとうございます。」

店主「毎度ありねー」

P「失礼します。」


真奈美「さて、帰ろうか。」

P「ああ。」

(真奈美宅)

真奈美「いらっしゃい。ちらかってはいないと思うが。」

P「なんというか、キッチン以外に生活感がないぞ。大丈夫か?」

真奈美「日中は仕事にでていて、寝に帰ってくるようなものなんだ、そうもなるだろう。」

真奈美「すぐ作るから、座って待っててくれ。」

P「おう。」

(数分後)

真奈美「できたぞ。有りもので悪いな。」

P「勝手に転がり込んでおいて文句はいえまい。」

真奈美「誘ったのは私なんだがな。」

真奈美「まあ、食べなよ。」

P「いただきます。…うまいな。」

真奈美「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ。」

真奈美「さて、プロデューサー殿、何をしにここまで来たんだい?」

P「ん?そっちが食事に誘ってきたんじゃないのか?」

真奈美「そうじゃない、スタジオを巡っている真の目的はなんなんだい?」

P(本日二回目…。)

P「…隠しても仕方ないか、端的にいうとトレーナーを探している。」

P「さらに加えると君は候補だ。」

真奈美「ほう…。正直なことはいいことだが…。私が候補か。」

P「実力のある人間をスカウトしようと思ったが、言葉の壁もある。」

P「こちらで活躍できていて、なおかつ日本人ともなればその問題は解決できる。」

P「もう少し実力を吟味してから提案しようかと思ったが、隠しておくのも気持ちが悪い。」

P「そっちがその気なら、全く問題はないんだがな。」

真奈美「そうか…。少し考えさせてほしい。」

P「こちらに対して色の良い答えでなくてもいいさ。そちらの決断を尊重しよう。」

P「ふむ、ごちそうになった。今日はありがとう。」

真奈美「ああ、…そうだな。そういえば数日後に、教え子たちのライブがある、見に来ないか?」

P「構わない、後学のために向かわせてもらおう。」

P「今日はありがとう、考えておいてくれ。」

真奈美「ああ…。」

(外)

P「ああ…。言ってしまったな。」

P「まあ、考えてくれてるとは言われたから、次のライブに行ってみようか。」


ライブ当日

真奈美「生憎の天気だが、よく来てくれた。見ていくといい。」

P「ああ、お言葉に甘えさせていただく。」

真奈美「小さな箱ではあるが、彼女たちにとっては貴重なライブだ。張り切っているよ。」

真奈美「さ、こっちだ。」

歌手『―――――♪―――――――♪』

P「なかなかいいな。」

真奈美「アイドルにスカウトしたくでもなったか?」

P「師事している人間がいいんだろう。」

真奈美「ふっ、あまり褒めてくれるな?」

真奈美「だが、私の教え子ながら見事だな…。いつもの練習よりうまいよ。」

P「…。」

P(この目…。この眼差し…。)

P「うむ…。」

真奈美「? どうした、P。」

P「いや、なんでもない。」

ライブ終了後 舞台裏

教え子「キバせんせー!どうでした?」

真奈美「いいライブだったよ、いつも以上の実力だったじゃないか。」

真奈美「輝いて見えたよ。これからも頑張れ…。」

教え子「ハイ!ありがとうございまーす!!」

P「いい子じゃないか。」

真奈美「夢を持っている子は輝いて見える。」

P「彼女は本気で歌手になるつもりか?」

真奈美「少なくとも今はね。」

真奈美「夢の先にある現実に打ちのめされないように、祈るばかりだよ。」

真奈美「…P、この前の話だが…。」

P「ああ、そのことだが、すまないが、一つ、訂正がある。」

真奈美「…。なんだ?」

P「木場真奈美さん、折り入って話があります。」

真奈美「急にかしこまって…。もったいぶらないでくれ。」

P「私のプロダクションでアイドルになってみませんか?」

真奈美「…。何?」

P「先ほど、ライブをみるあなたの表情は、舞台上の彼女たちのトレーナーの側面ともう一つ」

P「舞台上に憧れる目をしていた。」

真奈美「…。」

P「私はそれを叶えたい。だから…。」

真奈美「それはキミの勝手な妄想だよ、P。」

真奈美「私は今の生活に満足している。彼女たちの輝く姿を見て、喜んでいる人間の一人だ。」

P「ではなぜ、ボーカリストの仕事を続けている。」

真奈美「それは関係のない話だろう。実力があれば、そういった話だってくるはずだ。」

P「君は、まだ、誰かのために歌うことを捨てきれていない。」

P「誰かをその世界に押し上げてやることより、もっと、そう思っている。」

真奈美「勝手なことを…。」

P「最初はトレーナーにでもと思ったが、さっきの顔を見て考えなおした。」

P「夢を諦めてはいけない。俺がもう一度、輝きの向こう側へ連れて行ってやる。一緒に来い!」

真奈美「…。」

P「帰国の期限は三日後だ。良くても悪くても、返事をくれ。」

P「今日はありがとう、良いライブだった。彼女たちにもそう伝えてくれ。」

P「失礼する。」

会場 外

ザー………

P(唐突だったか…。)

P(だが、スカウトはこういうものだしな…。もし、連れて帰れなければ悔しいが…。)


会場 舞台裏

カツカツカツ

教え子「あ、キバせんせー。見て見て!ママとパパからね、お花貰ったの!」

バッ

教え子「え?いきなり何せんせー、恥ずかしいよ!」

真奈美「君の夢は、トップシンガーになることだったね。」

教え子「そうだよ!せんせーがいれば大丈夫だね!」

真奈美「そうか…。私にも、夢があってね、キミと同じものだったんだ。」

真奈美「私は夢半ばで諦めてしまってね、私は、そこを目指す子たちのためにトレーナーになった。」

教え子「…うん。」

真奈美「…今、私にもう一度、そのチャンスをくれるという人間が来ている。」

真奈美「もし、もしだ。勝手な話だが、私が自分の夢を優先してしまっても、キミは許してくれるか?」

教え子「…。」

教え子「…いいよ!せんせーは私に夢をみることを教えてくれたもの。せんせーもそれを追いかけて!」

教え子「次に会ったら、その時はライバルだね!」

真奈美「…ありがとう。」

真奈美「また、会おう。」ギュッ

教え子「…うん!」

バタン





P(雨だけあって、人通りは少ないな…。)

P(ホテルに戻ったら荷物をまとめて、明日は一応関係あったところにあいさつしておくか…。)



真奈美「P!」

P「ん?真奈美!どうした!ずぶ濡れじゃないか!!」

真奈美「夢を!」

P「?」

真奈美「もう一度!私に夢をみせてくれないか!」

P「…。」

P「ああ!必ず叶えてやる!ついてこい!!」

―――――
――――
―――

P「てな具合でな。」

P「関係各所に頭下げて回って、こっちに帰ってきたわけだ…。」

P「…。ふたりとも寝ているな。」

夏樹&沙紀「…。」スースー

真奈美「キミがコーヒーを飲んだ話をしているあたりからもう寝ていたぞ。」

P「これも特Aランクプロ所属プロデューサーの手並みの一つ、睡眠導入話術だ、憶えておけ。」

真奈美「プロデュースに何か関係があるのか、それは。」

真奈美「それに、誇張されているぞ、少しおしゃべりがすぎるんじゃないのか?」

P「あの後、ライブ前の緊張と雨の中全力疾走してきたせいで、思い切り風邪をひいたのは事実だろう。」

真奈美「あの子との話は完全にキミの妄想に過ぎないぞ、P。」

真奈美(あながち間違ってはいないが…。)

P「なんにせよ、体の冷えに弱いのは一番最初にわかったことだ。」

P「茶でも飲んであったまってろ。」

真奈美「ありがとう。」

P「もう少し経ったら送っていく。打合せでもしようと思ったが、この状態ではまた今度のほうが良さそうだ。」

真奈美「ああ。」

ザー………

P「雨…止まないな。」

真奈美「たまにはそういう日もあっていいんじゃないかな。キミも必要以上に心配してくれる。」

P「心配する方の身にもなってみろ。たまったもんじゃない。」

真奈美「フフ、すまないね、お詫びと言っては何だが、夕食をご馳走しよう。たまにはいいだろう?」

P「…。まあ、たまにはな。」

真奈美「よし、うまいものを作ってやろう。」

真奈美「これからもよろしく頼むよ、P。」

P「こちらこそ、シンデレラ。」


Fin

以上になります。

海外帰りのKさん、もとい木場さんですが、日本も久しぶり、と言っていましたので、
海外スカウト組なのではないでしょうか。

今回の学園アイプロでは家庭科教師という役柄のようで、そちらの方面での展開もまた楽しみですね。

少々長い期間になりましたが、読んでいただき、ありがとうございました。

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