男「もう、許してくれ…」(72)
───
──
─
幼少期
男「お前等、早くしろよー」
女「アンタが早すぎるのよ!」
男娘「ご、ごめんね…女ちゃん」
女「男娘は謝らなくていーの」
男「おせーぞ!」
女「うるさいわね、ちょっと待ってなさいよ!」
男「カブトムシ発見!」バッ
男娘「わっ、大きいねー」
女「ほんと、男の子ってカブトムシ好きよね」
男「カブトムシは男のロマンだからな!」
女「男娘もそうなの?」
男娘「…僕は、あんまり好きじゃないよ」アハハ
男「お前、ほんとに男か…?」
男娘「男だよ?!」
女「でも、女の子みたいで可愛いよ」
男娘「そ、そんなことないよ…//」カァァ
男娘「中学生ってどんな感じなんだろ」
男「今よりもっと遊んでるだろうな、俺!」
女「馬鹿ね、勉強と部活があるんだから遊んでる時間なんてないわよ」
男「それでも俺は遊ぶんだ!」フン
男娘「あはは、男君らしいね」ニコ
男「もちろん、お前等も一緒だからな!」ニッ
女「はぁ、ちょっとだけなら付き合ってあげるわよ」
男「何だよ、その言い方!」ムッ
女「何よ!」ムム
男娘「二人共、仲良いね」アハハ
数年後
パン パン
女「二人は何お願いしたの?」
男娘「僕は三人共、同じ高校に受かりますように、かな」ニコ
男「俺は、もっと遊べますように、だな!」
女「…アンタねぇ」
男娘「相変わらずだね、男君は」
男娘「女ちゃんは何をお願いしたの?」
女「私は、これからもずっと三人一緒にいられますように!」ニコ
男娘「女ちゃん…」ウル
女「ちょっ、何泣きそうになってるの?!」
男娘「だって、嬉しくて…」グスッ
女「あー、もう…よしよし」ナデナデ
男「はぁ、馬鹿だなー」
男「そんなもん、わざわざ願わなくてもずっと一緒だっつーの」プイ
女「…………」
男娘「…………」
女「ぷっ…ふふ…ふふふ」
男娘「…あはは」プルプル
男「なっ、何笑ってんだよ?!」
女「だ、だって…ねぇ…ぷふ」
男娘「いきなりそんなこと言わないでよ…」クスクス
男「っ~、うっせー馬鹿!//」
数ヶ月後
生徒1「男娘くんって凄いよねー」
生徒2「頭良いし優しいし、それに超可愛い!」キャー
生徒1「ほんと、女の子みたいだよね」ウンウン
生徒2「男娘くんが描いた絵、今度コンクールに出るんだよね」
生徒1「凄い才能だよね、羨ましい!」
生徒2「それに、女さんともラブラブだよね」
生徒1「才能ある同士、惹かれ会うのかねー」
生徒3「今日も女さん美しいなー」
生徒4「今度の陸上で選抜メンバーらしいな」
生徒3「一年で選ばれるなんて、マジスゲーよな」
生徒4「俺達には高嶺の花よ…」
生徒3「やっぱ女さんには男娘がお似合いなんだろうなー」
生徒4「いいなー、男娘」
男「………………」
帰り道
女「男娘の絵やっぱり選ばれたんだ、おめでとう!」ニコ
男娘「女ちゃんこそ選抜メンバー入りおめでとう」ニコ
女「私なんて大したことないよ」
女「男娘なら絶対に大賞取れる!」
男娘「そ、そうかな…?//」
女「うん!私が保証するよ」ナデナデ
男娘「ありがとう…//」
女「あー、もう可愛いなー!」ナデナデ
男娘「女ちゃんの方が可愛いよ!」ムッ
女「え、えぇ…?!」
男娘「男君もそう思うよね」
男「……あー、そうだな」
女「…………」
男娘「…………」
女「どうしたのよ、男」
男「何が?」
男娘「なんか元気ないよ?」
男「いつも通りだろ」
女「…何か悩み事?」
男「んなもんねぇよ」
男「わりぃ、用事あるから先帰るわ」スタスタ
女「あっ、男…!」
男娘「…どうしたんだろう、男君」
ゲーセン
男「…………」カチャカチャ
男「あんまり面白くねーな」カチャカチャ
男「…………」
男「…何やってんだ、俺」
更に数ヶ月後
先生「おい、男!また遅刻か!」
男「………」ガタ
先生「何か言うことがあるんじゃないのか?」
男「…うっせーな」
先生「………なに?」
男「…すいませんでしたー」
先生「…………」
生徒1「男君って怖いよねー」
生徒2「うんうん、目合わせられないよ」
生徒3「関わらない方が身のためだな」
生徒4「それが一番だろうな」
男「…………」
男「…………ちっ」
帰り道
女「男、待って!」
男「………なんだよ?」
女「最近、どうしたのよ?」
男「どうもしねぇよ」
男娘「でも…その…最近あんまり学校にも来てないみたいだし」
男「…………」
女「学校中、男の悪い噂ばっかりよ」
男娘「それで僕達、男君が心配で…」
男「…………心配?」
男「お前等が何で俺何かの心配すんだよ…?」
男娘「何でって…」チラ
女「私達が友達だからに決まってるじゃない」
男「……俺は、お前達と違って何の才能もないんだよ」
女「何言ってんのよ…?」
男「落ちこぼれの俺が、お前等の友達でいられるわけねぇだろ」
男娘「そ、そんなことないよ」
女「友達に才能なんて関係ないでしょ!」
男「お前等に無くても俺にはあるんだよ!」
男「自分が無能だって突きつけられて…どうしようもなく腹が立つんだよ!」
男娘「男君は無能なんかじゃないよ」アセアセ
女「そうよ…なんでそんな風に考えちゃうのよ」スッ
男「…っ…うっせーな!!」バシッ
女「きゃっ?!」ドサ
男娘「女ちゃん、大丈夫?!」
男「お前等と一緒にいると苛つくんだよ!」
男「どうせお前等付き合ってんだろ?」
男「なら、俺なんか邪魔なだけだろうが!」
女「ち、違っ…!」
男「お前等なんか消えちまえよ!」
男「二度と顔も見たくねぇ」
女「…っぅ…?!」バッ
男娘「あっ、女ちゃん!」
男「ちっ…」スタスタ
女「ひっく…ぐす…」タッタッ
女「男の馬鹿…!」タッタッ
女「…どうすれば良かったの?」タッタッ
女「もうわかんないよ…!」タッタッ
ブゥゥゥゥゥン プップー
女「…っ…?!」
キキィー ドン グシャ
葬式
親戚1「トラックに轢かれて即死だったらしいわね」ヒソヒソ
親戚2「居眠り運転らしいわよ、怖いわよねー」ヒソヒソ
親戚1「友達と喧嘩した帰り道に轢かれちゃうなんて…」ヒソヒソ
親戚2「可哀想よね…」ヒソヒソ
男「…………」
女母「ねぇ、男君」
男「?!」ビク
女母「娘が事故にあう前に娘と喧嘩したそうだけど…」
女母「どうして喧嘩したの?」
男「そ、それは…その…」チラ
男娘「…………」ジッ
男「…っ…」
女母「娘に…男君は何て言ったの?」ガシッ
男「あっ…あ…?!」ガタガタ
女母「男君と喧嘩さえしなければ娘は死ななかった…そうよね?」ググッ
男「あ、あの…っ………!」ガタガタ
女母「私の娘は事故なんかじゃない…」
男「………え」
女母「貴方に殺されたのよ!」バシ
男「…っ?!ち、ちがっ……」
男娘「男君が殺したんだ」
親戚1「そうよ、この子が殺したんだわ」
親戚2「恐ろしい子…」
男「お、俺じゃない!俺は…俺は…!」
女『私は、男に殺されたんだよ?』
───
──
─
男「っ…違う!!」バッ
男「はぁはぁ……」
男「夢、か…」
男「…何回、同じ夢見せんだよ」
ピンポーン
男「…………」
ガチャ
男「…………」
女『おはよ、男!』
男「っ?!」
男娘「…どうしたの、そんなに驚いて?」
男「お、男娘か……」
男娘「もしかして…」
男娘「女ちゃんだと思ったの?」ニコ
男「…………」
男娘「とりあえず上がっていいかな?」
男「………あぁ」スッ
男部屋
男「お前…その服…」
男娘「あぁ、この服はね女ちゃんのお母さんに貰ったんだー」ニコ
男「何で、お前が着てんだよ」
男娘「何でって……」
男娘「こうしていれば女ちゃんとずっと一緒だからだよ」ニコ
男「………!」ゾワ
男娘「男君はだって女ちゃんとずっと一緒にいたいでしょ?」
男「お前、何言って……」
女『私とは一緒にいたくないの?』
男「アイツの真似は止めろ!」
男娘「あはは、ごめんね」ニコ
男「…それで、何の用だ」
男娘「せっかくの夏休みだし、一緒に出掛けようよ」
男「どこにだよ…?」
男娘「それはついてくれば分かるよ」ニコ
男「…………」
男娘「…………」トコトコ
男「…………」トコトコ
男(くそ、男娘はアイツじゃないのに…)
男(さっきから女にしか見えない)
男(気が狂いそうだ…)
男娘「着いたよ」ピタ
男「ここは…」
男娘「うん、女ちゃんが死んじゃったところだよ」
男「………どういうつもりだ」
男娘「僕ね、ずっと女ちゃんのことが好きだった」
男「…………」
男娘「でもね、女ちゃんは男君のことが好きだったんだよ?」
男「…………は?」
男「そんなわけねぇだろ!」
男娘「僕からすると凄く残念だけど本当だよ…」アハハ
男娘「いつも楽しそうに僕に話してくるんだよ」
男娘「男君の話をさ」ニコ
男「そん…な…」
男娘「気づいてなかったんだね」
男「…………」
男娘「今日は、もう1つ行きたいところがあるんだー」
男「どこだ…?」
男娘「女ちゃんの家だよ」
男「?!」ゾワ
男「…行けるわけ…ないだろ!」ガタガタ
男娘「あはは、大丈夫だよ」
男娘「僕もいるし、お線香をあげに行くだけだからさ」ニコ
男「俺があの家に入っていいわけない!」
男娘「…………」
男「…俺は、もう帰る」スッ
女『逃げるの?』
男「?!」バッ
女『男、私が死んでから一度も会いに来てくれないよね?』
男「や、やめろ…男娘…!」
女『ふふ、何を言ってるの』
女『私は男娘じゃない…女だよ?』スッ
男「っ?!」ビク
女『さぁ、行こ?』ニコ
女の家
男(狂ってる…何もかも)
男(どうして俺は、ここにいるんだろう…)
女母「あらあら、いらっしゃい男娘ちゃん」ニコ
男娘「お邪魔します」
女母「ふふ、やっぱりその服似合っているわ」
男娘「ありがとうございます」ニコ
女母「…………」ジッ
男「…………」
男娘「今日は二人で女ちゃんにお線香をあげに来たんです」
女母「………そう、あがって」ニコ
矛盾してました、すみません!
女母「何か飲み物を用意するわね」スッ
男娘「ありがとうございます」
男「…………」
男(久しぶりに来たな…)
男娘「さぁ、お線香あげようか?」スッ
男「あぁ」スッ
男娘「…………」
男「…………」
シーン
男娘「女ちゃんと何を話したの?」
男「…いろいろだよ」
男娘「そっか、いろいろか…」
男「…………」
男娘「ちゃんと、謝った?」ニコ
男「っ?!」バッ
男娘「どうしたの?」ニコ
男「あ、あぁ…謝ったよ」
男娘「ふーん、本当に?」ズィ
男「謝ったって言ってんだろ!」
女『嘘つき』ニコ
男「………!」ビクッ
男娘「あはは、本当は謝ってないでしょ?」
男「お、俺はちゃんと……」ガタガタ
女母「謝っても娘は返らないわ」
男「?!」バッ
女母「…お茶、持ってきたわ」ニコ
男娘「ありがとうございます」
男「あ、ありがとうございます…」
女母「今日は、ゆっくりお話しましょう」
女母「娘のことについて……」ニコ
男「…………」ガタガタ
帰り道
男「…………」トコトコ
男娘「…………」トコトコ
男(最悪な気分だ……)
男(気持ち悪い…目眩がする…)
男(…………)チラ
男娘「…………」トコトコ
男(コイツは俺をどうしたいんだ…?)
男娘「具合悪そうな顔してるけど、大丈夫?」
男「お前は………」
男娘「?」
男「俺をどうしたいんだ?」
男娘「僕は女ちゃんの事を忘れないでほしいだけだよ」
男「忘れるわけないだろ…」
男娘「あはは、そうだね」
男娘「でも、女ちゃんに対する謝罪の心は忘れちゃうかもしれないでしょ?」
男「俺はいつまで謝ればいいんだよ?」
男娘「もちろん」
男娘「女ちゃんが許してくれるまでだよ!」ニコ
男「……………」
男娘「じゃあ僕はこっちだから、またね!」トコトコ
男「結局、許されないんだな…」
男「全部、俺が悪いのか?」
男「女が事故にあったのは俺のせいなのか?」
男「あの時、あんな別れ方さえしなければ女は死ななかったのか?」
男「…………」
?「あらら、酷い顔だねー」クス
男「……誰だ?」
?「ただの通行人さ」
?「おっと、それ以上近づかないでね」
?「僕は人に姿を見られるのが嫌いなのさ」
?「だから、こうして街灯のないとこに立っているんだから」
男「…俺に何か用なのか?」
?「僕はね、困ってる人を見捨てられない性格なのさ」
?「ズバリ、君は今困ってるね」
男「……別に」
?「許されたいって思ってるんじゃない?」
男「?!」ピク
?「そんな君に優しい僕が何でも一つ願いを叶えてあげよう」
男「…………は?」
男「ふざけてんのか?」
?「いやいや、超真面目だよ?」
?「まぁ、嘘だと思うなら試しに言ってみなよ」
?「君の願いをさ」
男「……俺の願い」
1 事故の前に戻る
2 女を生き返らせる
3 女の存在をなかったことにする
男「事故が起こる前に戻りたい」
?「なるほどなるほど」
男「まぁ、無理だろうけどな」
?「いえいえ、出来ますよ」
男「…………」
?「そんな胡散臭そうな目で見ないで下さいよー」
?「さてと、願いを叶える前に一つ重要なお話があります!」
男「何だよ?」
?「願いを叶えるにはめちゃくちゃエネルギー使うんですよね」
?「ぶっちゃけしんどいんです」
男「何だそれ…」
?「ま、簡単に言うと願いを叶える代わりにその願いに見あった物を貴方から頂きます!」
男「…………?」
?「……まぁ、聞くよりも実感して頂いた方が早いですね」
?「じゃあ、目を閉じて頂けますか?」
男「はぁ?」
?「いいから早く閉じて下さい!」
男「お、おう……」スッ
男(あれ…今懐かしい感じが…)
?「ではでは、過去へ行ってらっしゃいませー」
男(……………)
男(…声が聞こえる)
?「─────」
男(この声は……)
?「─────」
男「…………女」
女「何よ?」
男「…………」
男娘「男君、大丈夫?何だかボーっとしてるけど…」
女「体調でも悪いの?」
男「…………」
男(本当に戻ってきたのか…?)
男「なぁ、今日って何月何日だ?」
女「はぁ?今日は───」
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