八幡「異性に抱きつかれると猫になる体質」 (633)

去年の11月くらいに、VIPで同じスレタイで立てたものの、未完だったSSです。
書き溜めてたとかはありませんが、最近俺ガイル原作を一気に最新の九巻まで読むことができたので、
がんばって書こうという気になりました。
更新は頻繁にできないかもしれませんが、がんばります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398283001

八幡(という厄介な体に生まれてきたが)

八幡(まあ、今までは特に困ることはなかった)

八幡(なぜなら俺はボッチ)

八幡(友達すらいないのに、女子とそういう関係になるわけもない)

八幡(そもそも抱きつくどころか、俺の周囲に近づいてすら来ないまである)

八幡(それでも昔はちょっとは期待して、この体質をどうしようなんて悩んだこともあったし)

八幡(この他人とは違い自分の体のせいで、自分にも物語の主人公のようなドラマがあるかもしれないなんて期待もした)

八幡(でも結局、俺にはそんなことは起こり得ない思い知っただけだった)

八幡(そう、俺には家の外で異性に抱きつかれることなど、ありえない)

八幡(そのはずだったのだが)

雪ノ下「……猫?」

猫八幡「……」

雪ノ下「ええと、到底納得できないことなのだけれど、客観的に状況を整理すると、あなたは……比企谷くんなのかしら」

猫八幡「そうだよ……悪いか」

八幡(そのありえないを起こした相手はこの雪ノ下雪乃)

八幡(もちろん、俺に甘酸っぱいイベントが起きることは……ないし、純然たる事故だが)

八幡(いや、ほんとない。なんか最近やたらと女子と触れあう機会があったけど、抱きつかれるのだけは注意してたし)

八幡(注意してた癖にこうなっていれば世話はないが、こけそうになった女の子をとっさに抱き止めてしまったのは、イケメンとして当然のことなので仕方ない。うん)

八幡(しかし、雪ノ下にバレたか……ここは部室だが、由比ヶ浜が遅れていていなかったのはせめてもの救いか)

八幡(さて、雪ノ下はどんな反応をするのか)

雪ノ下「……姿はとても愛らしいのに、その声と腐ったままの目で台無しね」

猫八幡「ほっとけ」

八幡(この突飛な状況で冷静に状況を判断し、なおかつ俺という存在を受け入れるとは、流石雪ノ下)

ああ、あと、設定的にはフルーツバスケットから
ちょっと摘まんだ感じです
フルーツバスケットのキャラはたぶん出ないです

猫八幡「つうか、そろそろ俺から目を背けたほうがいいぞ」

雪ノ下「どうしてかし――」

八幡「……」ボンッ

八幡「……そろそろ元に戻って、服が脱げてて全裸だからだ」

雪ノ下「」

八幡(今度は完全にフリーズした。まあ、雪ノ下は猫好きだし、人間が猫になるほうが精神的衝撃が小さかったのだろう)

八幡(アニメで夜一さんが猫からおっぱいぼいんのお姉ちゃんになったくらいの衝撃かな。なんであれ、猫の時の声おっさんだったんだろう)

八幡(まあ……単純に俺の裸を見たからだという意見もある)

 
 
 
 
雪ノ下「ああいうことは早く言っておいてほしかったわ……」


八幡「言う暇がなかったんだ」

雪ノ下「それにしても、あなたがそんなおかしな体質だったなんて知らなかった」

八幡「こんなびっくり体質、家族以外に言えるわけないだろ」

平塚先生は知ってるという設定のほうがいいだろうか

あと、前回では由比ヶ浜さんが猫に抵抗がなくなってたので、
そこは修正します
それと、由比ヶ浜さんも話に深く関わらせるか悩んでいます

先生は知らない&由比ヶ浜は猫に抵抗がある方が面白そう
家族以外の雪乃と八幡二人だけの秘密みたいな

八幡「だいたい、言っても信じてもらえるわけないしな」

雪ノ下「それもそうね」

八幡(と、雪ノ下は納得しているようだが、正直言って驚いている)

八幡(今や、家族、親族以外にこの秘密を知るものはいないが、この秘密を知られる経験は……ある)

八幡(その時俺を見たやつらは、こんなに冷静だったか……?)

雪ノ下「あの、比企谷君」

八幡「……なんだよ」

雪ノ下「まださっきのことが信じられないわ」

八幡(それはそうだろう。わかる)

雪ノ下「だから、もう一度見てみたいのだけれど」

八幡(は?)

八幡「……それはつまり……もう一度抱きつきたいって言ってるのと同義なわけだが」

八幡「しかも今度は事故じゃなくて故意に、ってことだぞ」

雪ノ下「……ダメかしら」

>>9
由比ヶ浜さんを話に深く関わらせる場合、
二人きりの秘密ではなくなる、というか
実は既に知っている状態になります、八幡の関知していないところで

八幡「有り体に言えばそうだな」

雪ノ下「なぜ?」

八幡(いや、そんな心底疑問そうな顔できょとんとされても……その仕草はかわいいけども)

八幡「お前、ここ部室だぞ。由比ヶ浜や、依頼人だっていつ来るかわからない」

八幡「この体質のことはできるだけ知られたくないんだ」

雪ノ下「そう……」

雪ノ下「じゃあ、後であなたの家にお邪魔してもいいかしら」

雪ノ下「そこならいくら変身しても大丈夫でしょう?」

八幡「何がじゃあなんだよ。そんなに俺を猫にしたいのか」

雪ノ下「あれが現実だったのか、もう一度確かめたいだけよ」

雪ノ下「決して猫のあなたが結構可愛らしかったとか、抱っこやなでなでしてみたいという理由ではないわ」

八幡「欲望駄々漏れしてるぞ……」

雪ノ下「比企谷くん、どうしてもダメかしら?」

八幡「ダメでしょ……もうこのことは忘れてくれよ」

八幡(忘れて、夢だと思ってくれたほうが、ほんとに助かるんだよ……お互いに)

八幡(だが、雪ノ下の猫好きは止まらなかった)

雪ノ下「じゃあそうね、取引にしましょうか」

八幡「取引?」

雪ノ下「あなたの体質のことは決して他言しない。そして今後、外で変身してもフォローするという条件で」

雪ノ下「猫になったあなたに、触れてみたいのだけど」

八幡「……俺脅されてね?」

雪ノ下「脅しだなんて、そんな物騒なものではないわ。あくまでも取引よ」

八幡(そんなこと言っても、俺に選択肢とか無さそうじゃん)

八幡(俺にはどうしようもなさそうだ……仕方ない)

八幡「……わかった。今日部活の後でいいか」

雪ノ下「そうね。とりあえず今日この後に」

八幡「とりあえずって、今日だけじゃないのかよ」

雪ノ下「取引の条件を継続したいのなら、今後も対価を支払ってちょうだい」

八幡「……やっぱり脅しだろ」

雪ノ下「取引よ」

八幡(面倒なことになったな……)

八雪……どうだろう。
猫が苦手だけどがんばる由比ヶ浜さんも
ちょっと書いてみたい気がするし。

◆◇◆◇◆

雪ノ下「……」チラッ

八幡「……」

八幡(さっきから時計見すぎです、雪ノ下さん)

八幡(今日このあと、気になることがあるってバレバレだぞ、それだと)

八幡(ぼっちはわざとでなければそういう態度はしない。相手に、予定を聞いてほしいのかな?という勘違いをさせるからだ)

八幡(めんどくさい用事を断りたい時には普通にするけど。というかそういう態度しかしないまである)

由比ヶ浜「ゆきのん、今日何かあるの?」

八幡(とか言ってる間にほらぁ)

雪ノ下「……どうしてかしら」

八幡(それはひょっとしてギャグで言っているのか)

由比ヶ浜「なんか時間気にしてるっぽいし、そわそわしてるなーって」

雪ノ下「……ちょっと用事があるのよ。どうしても外せない用事が」

八幡(こっちはいつでもキャンセルを受け入れるつもりだが)

由比ヶ浜「へー。よっぽど楽しみなんだね」

雪ノ下「その……知り合いに、猫を抱かせてもらえることになって」

八幡(抱っこする気まんまんだよ……こいつ、その猫の中身は俺だって忘れてんのかね)

由比ヶ浜「へー、そうなんだ」

由比ヶ浜「何度も触らせてもらったことあるの?」

雪ノ下「いえ、触ったことはないのだけれど……」チラッ

八幡(おい、こっち見んな)

雪ノ下「よく見かけるというか、見知った猫なのよ」

由比ヶ浜「へー。近くに住んでる人なの?」

八幡(つうか由比ヶ浜も、猫苦手だろお前。なに猫で話題広げてんだよ。抱きついたろか)

雪ノ下「そうね……」チラッ

八幡(だから今日の雪ノ下さん分かり安すぎぃ!)

雪ノ下「まあ、近いというほどではないのだけれど」

由比ヶ浜「……もしかして、その猫ってヒッキー」

八幡(ちょ、まっ)

由比ヶ浜「が飼ってる……?」

八幡(せぇぇぇぇふ!まあ、さすがに俺が猫に変身するなんて突飛な発想は、流石のガハマさんでもしないか)

由比ヶ浜「……」チラッ

八幡(……なんでそんな拗ねたような顔すんだよ)

八幡(まあ、仲間はずれにされたと感じればそうなるか。しかも相手は雪ノ下だし)

雪ノ下「いえ、比企谷くんが飼っている猫ではないわ」キッパリ

八幡(うん、嘘は言ってないな)

由比ヶ浜「そう、なんだ」

由比ヶ浜「……ねえ、その猫ってかわいいの?」

雪ノ下「そうね……一般的な基準だと、一概にかわいいと断ずることができない容姿ではあるのだけれど」

八幡(なら抱かせてやらんぞ)

雪ノ下「でも、猫であるというその一点だけで、それさえも愛らしく思えてしまう、そんな感じかしら」

八幡「……」

八幡(いや、落ち着け俺。これはつまり猫ならかわいいのにな。猫ならな、と言外に人間の俺を全否定してるだろ)

八幡(まあ、自分自身猫の姿のほうがそりゃ可愛さは上だろJKって理解してるし)

八幡(うん、八幡キニシナイ)

由比ヶ浜「そーなんだぁ」

由比ヶ浜「あはは、そこまで言われると、あたしもちょっとその猫ちゃん気になってきたかも」

八幡(いや、そっとしておいて下さい。割とマジで)

雪ノ下「……」ウンウン

八幡(お前も満足顔で頷いてないで話題反らせって)

由比ヶ浜「ゆきのん、後で写メ見してね」

雪ノ下「ええ、もちろんよ」

八幡(もちろんなのかよ……)

修正、ヒッキー喋らなさすぎだからさすがに


八幡(まあ、仲間はずれにされたと感じればそうなるか。しかも相手は雪ノ下だし)

八幡「いや、」

雪ノ下「いえ、比企谷くんが飼っている猫ではないわ」キッパリ

八幡(うん、嘘は言ってないな。にしてもきっぱりすぎだろ)

―――
――


由比ヶ浜「じゃねー!ゆきのん、猫の写メお願いね」

八幡「じゃ」

雪ノ下「ええ、もちろん。さようなら、由比ヶ浜さん」

八幡「……もちろんって勝手に決めないでほしいんだけど」

雪ノ下「猫の姿の写メくらいいいでしょう」

雪ノ下「それに、それを見たところで、あなたとその猫が同一人物だなんて、誰も思わないでしょうし」

八幡「そりゃそうだがな。まあ、好きにしろよ」

八幡「……」

八幡(写メか。気になったにしても、猫嫌いの由比ヶ浜が?)

スマホの電池切れそうだから、一旦中断

もいっかい修正
八幡(写メか。気になったにしても、猫が苦手な由比ヶ浜が?)

原作を読んだことによる、読み直して違和感を感じるところの修正と、
今後の展開を考えての修正をしていきます。
前スレ見返したら結構書いてたので、新規に行くまで
時間かかったらごめんなさいね。

◆◇◆◇◆

八幡「ただいま」

雪ノ下「お邪魔します」

小町「おかえりお兄ちゃん……って、え!雪乃さん?お兄ちゃん、ついに雪乃さんと!?」

八幡「何がついにだ。まあ、ついにか……猫のことが雪ノ下にバレたんだ」

小町「うわちゃー、やっちゃったね、お兄ちゃん」

八幡(うん、やっちゃったぜ。俺はトマトだ!)

八幡(なんて言いたくなるくらい軽いなー、こいつ)

八幡(結構問題だろ……)

小町「でも、いつかばれるんだろうなーって小町は思ってたけどね」

小町「お兄ちゃん結構抜けてるし」アハハ

八幡「笑い事じゃないだろ」

小町「でも、バレたからってなんでうちに?」チラッ

八幡「……」

八幡(そういうつもりじゃない、ただこいつがな)

八幡(と、兄妹で目だけで会話してみる。愛の為せる技である)

雪ノ下「それは、その」

八幡「……猫の俺を抱っこしたいんだと」

小町「へー!そうですかそうですか。お気持ちは小町もよーく、わかります」

八幡「分かっちゃうのかよ」

小町「もちろんだよお兄ちゃん!」

八幡(小町までもちろんって、俺の周りでいつのまにか常識の変更でもされたんだろうか)

八幡(常識って、多数が無意識で作り出すもんだからなー。ぼっちの俺はついていくのが大変)

八幡(まあ、普段から人間観察に余念がない俺は、その辺ぬかりはないけど)

小町「猫のお兄ちゃんって、目付きそのままでかわいくないんですけど……」

小町「そこがまたかわいいんですよね!猫的に!」

八幡「言ってることが矛盾してるんだけど」

雪ノ下「その通りなのよ小町さん」

八幡「え、なんでこいつら分かり合えてるの。怖い」

八幡(まあ、猫好きのそういう意見は分かるんだが、今話題にあがってる猫は俺だぜ?忘れてんの君たち)

小町「ああついに理解者が!小町は嬉しいです!」

小町「こんなお兄ちゃんで良かったら、好きなだけ愛でていってください!」

八幡「いや、一回抱っこしたら終わりだから」

八幡(大変!こいつらテンションおかしいよ!身の危険を感じます!)

雪ノ下「一回……?その程度であなたは私が満足できると思っているのかしら」

八幡「満足しろよ。お前ら、自分よりでかい生き物に動きを制限される怖さがわからんのか」

八幡(進撃の巨人とか見てみろ。よく分かるから。あれ、俺共感しまくりだから)

八幡(おかげで小町が猫食いに目覚めないかと戦々恐々の毎日です)

小町「もうお兄ちゃんはほんと理屈っぽいんだから。えい」ダキッ

八幡「あ」ボンッ

八幡「お前、そのとりあえず俺を猫にして場をしのぐのやめろ」

小町「うーん、やっぱり猫のお兄ちゃんはかわいい!ぎゅー!」

八幡「おい、離せ」

雪ノ下「……」ジー

八幡(超見てる。怖いよ?)

小町「あ、雪乃さんも抱っこします?」

雪ノ下「是非お願いするわ」

修正

八幡(おかげで小町が猫食いに目覚めないかと戦々恐々の毎日です。ギザカワユスとか言い出したら危険信号)

八幡「お前ら……ちょっとは当の俺の意見もだな」

八幡(俺の頭上で繰り広げられる、人身売買契約への抗議も込めて声をあげてみても、所詮は猫のざれ言)

八幡(無視されるだけだった)

雪ノ下「……かわいい」ギュッ

八幡「うぐ」

雪ノ下「なんてかわいいのかしら。これがあの比企谷くんだなんて、信じられない」スリスリ

八幡(……胸が当たってるんだが。ささやかだけども)

八幡(小町に抱っこされるのは慣れてるんだけど、考えてみれば、この年で同年代の異性に抱っこされるのは初めてか)

小町「雪乃さん、こっちでお茶でもいかがですか?」

小町「お兄ちゃんは抱っこしたままでいいですから」

八幡「いや、良くないが」

雪ノ下「そうね。お言葉に甘えるわ」

八幡「甘えんな。もっと自分に厳しくしろ。自他共に厳しいのがお前の美徳だろ」

雪ノ下「……比企谷くん。あなた、猫のときくらい、かわいらしく鳴けないのかしら。にゃーとか」

八幡(その時、俺に電流走るっ……!)

八幡「雪ノ下が、にゃー……?」

雪ノ下「わ、忘れなさい!今のは!」

八幡(なにこいつ、かわいい。これが猫の俺のことが関係なければだけどな!)

雪ノ下「……それで、どうなのかしら」

八幡「普通にしゃべれるのに、何が悲しくてにゃーにゃー言わなきゃいけないんだ」

八幡(あ、別にキャラ付けでにゃーにゃー言ってるキャラのことじゃないからね!)

八幡(男の俺がそういうことを言うのはあれだろってことだから。ん、土御門?知らんな。あ、名古屋の人のことでもないです)

雪ノ下「姿に見合った振る舞いをすべきだと言っているのだけれど。TPOというものがあるでしょう」

八幡(なんでこんなににゃー推ししてくんの?モンスターファームなの?結果なんて想像つくだろ!なに幻想見てんだよ!)

八幡(……いいぜ、ならその幻想をぶち殺す!)

八幡「……にゃー」

八幡(やった。やりとげたのだ。そして待つのは当然)

小町「……ないわー。お兄ちゃんが普通ににゃーって言ってるだけで、猫の鳴き声じゃないじゃん」

雪ノ下「ええ、私も背筋が凍ったわ」

八幡(この批判である。批判というか、もう全否定だし)

八幡「やらせといてなにその酷評。死にたくなってきた」

八幡(ほんと、誰か俺こそぶち殺して欲しい)

中断

変身してる間は猫八幡にするの忘れてた

雪ノ下「次はもっと演技力を磨いておいてね、比企谷くん」

猫八幡「またやらす気かよ……」

八幡(どんなに頑張っても俺じゃパーフェクトコミュニケーションなんて出ませんよ、プロデューサーさん)

小町「小町ももっとかわいいお兄ちゃんが見たいなー」

猫八幡「や、かわいい兄が見たいって、兄妹関係として間違ってるだろ」

八幡(戸塚が兄だった場合があれば別だが。むしろ俺が弟になりたい)

猫八幡「はあ。とりあえず雪ノ下、そろそろ一回離して欲しいんだが」

八幡「お前が抱っこしてると戻れない」

雪ノ下「……戻らなくてもいいのではないかしら?むしろ、一生その姿の方が、あなたは幸せな人生を送れると思うのだけれど」

小町「小町もそれは同意しちゃうなー」

八幡(なんたる言いぐさ。こいつら、俺に人権なんてないって言ってるも同然じゃん)

猫八幡「それでも、俺は人間の俺がいいんだ」

八幡(俺は、人間なんだから)

雪ノ下「とにかく、取引の条件として、猫になったあなたを好きに抱っこしていいと了承したのだから、いい加減観念したらどうなの」

猫八幡「ちょっと待て、好きにしていいとまでは言ってない」

雪ノ下「そうだったかしら?じゃあ条件に追加よ。いいわね」

猫八幡「今の俺には覆せないと思ってひでえことしやがる……」

雪ノ下「どうやら納得もしてもらえたみたいだし、少なくとも今日は私が帰るまでは、抱っこし続けるからそのつもりで」

八幡(この子俺ルールすぎだよ!助けて小町)チラッ

小町「はぁ、ついにお兄ちゃんにも春が来たんだね」

八幡(……俺に助けなんていない)

八幡(ふ、わかっていたさ。ぼっちだから)

「……にゃー」

小町「およ。カーくんどったの?」

八幡(助けきた!かまくらよ、俺は今日ほどお前がうちに来たことを喜んだ日はない!)

猫八幡「ほら、雪ノ下。本物が来たぞ。だっこもなでなでもあっちにしとけ」

雪ノ下「猫……猫が二匹……」

八幡(あかん……この人聞いてへん)

フルーツバスケット?

>>59
はい。ただ、十二支の方々はそのまま出すと収集つかなくなると思うので
俺ガイルメインに設定を変えてます。

猫八幡「雪ノ下。聞けよ、おい」

雪ノ下「聞いてるわ」

猫八幡「返事しろよ……なら、向こうにしとけって。パチもんより本物がいいに決まってんだろ」

八幡(でもポケモンのパチもんって言われるデジモンとか俺好きだけどな。もんもんデジモン育てるもんもん)

雪ノ下「いえ……確かにあの子も撫でてみたいけれど……」

雪ノ下「今離したら、あなた、今日はもう絶対に触らせてくれないでしょう?」

猫八幡「Exactly(そのとおりでございます)」

雪ノ下「絶対にあなたを離すわけにはいかなくなったわね」

猫八幡「はっ、いかんつい正直な俺部分が出てしまった」

小町「じゃあカーくんは小町とらぶらぶしようねー」ヒョイ

カマクラ「にゃー」

八幡(あー、俺も小町のほうがいいよー。らぶらぶちゅっちゅらららちゅっちゅしたいわー)

雪ノ下「ひ、比企谷くん……私たちも、その……する?」

八幡(なにこいつ、かわいい。おくさまは女子高生にするぞ、おい)

小町「おやおや。小町たちはお邪魔かなー?ねー、カーくん」

雪ノ下「あ、小町さん、違うのよ。するというのは、撫でることであって、いくらこんなにかわいい比企谷くんであっ、じゃなくて、猫でかわいい比企谷くんが、あの」

八幡(今日かわいすぎだろこいつ。なんでこんないっぱいいっぱいなの。僕元気だから?)

小町「愛されてる、かつてないくらい愛されてるよお兄ちゃん!」

八幡(猫の俺をだけどな)

猫八幡「もういいわ……好きなだけ撫でろよ」

雪ノ下「!」パァァァ

八幡(その笑顔は反則だわ……)

―――
――


猫八幡「……」ムスッ

雪ノ下「……」ナデナデ

小町「どうですか雪乃さん、お兄ちゃんの撫で心地は」

雪ノ下「そうね……まあ、良いと言っても構わないかしら」

八幡「さんざん撫でておいてその言いぐさか……」

そろそろ寝ます

……?


雪ノ下「むすっとしながらも、されるがままに撫でられているのは得点が高いわね」

猫八幡「や、自分の意思でされるがままになってんじゃないからな」

八幡(その辺履き違えんのやめろ。俺が猫扱いに喜ぶ変態になるから)

雪ノ下「普通の猫のように、撫ですぎることによってストレスを与えてしまう心配もないし」

猫八幡「今ストレスマッハだよ俺は」

八幡(ストレスが走る走る俺たちって大合唱してるっつーの)

雪ノ下「これならもう一度撫でてあげてもいいわね」

八幡(無視ですか。つうか相変わらず上から目線なやつだな)

八幡(まあ今は物理的に上から目線で見下ろされる姿だけど)

猫八幡「頼んでないし、別に撫でてもらわなくても俺はいいんだけどな」

雪ノ下「……このたまに耳に入ってくる比企谷君の音声だけはマイナスかしら」

猫八幡「ひでえ」

雪ノ下「だって、気分が削がれてしまうのだもの」

猫八幡「はいはい。黙ってればいいんだろ」

八幡(まあ、ずっと黙っていられるのは俺の百八の特技のひとつだからな)

八幡(むしろ人前であまりしゃべりたくないまである)

猫八幡「……」ムスッ

雪ノ下「……ふぅ」

八幡(あれ、もしかしてこの人漏らした?違う)

猫八幡「……どうした、震えてるけど」

雪ノ下「いえ、なんでもないのだけれど」

小町「雪乃さん、小町には分かりますよ……」

猫八幡「また分かるのかよ……お前らどんだけ通じあってんの」

小町「むすっとしながらも撫でられてるお兄ちゃんを見てるときゅんきゅんしますよね!!」

雪ノ下「そう、かもしれないわね」プルプル

猫八幡「俺には分からんわ……」

雪ノ下「そういえば小町さん、お願いがあるのだけれど」

八幡(お願いって、うちの妹はマイメロディ、通称マイメロじゃねえぞ。夢野家末妹とは声が似てるけど)

八幡(つうかそのお願いって十中八九俺のことだろ。やめて)

小町「なんですか?」

雪ノ下「私の携帯で写真を撮ってほしいのだけれど」

小町「わっかりましたー!ばちばちいきますね!あ、小町も自分のでとろー!」

八幡「安請け合いしすぎだろ。俺の肖像権とかどうなってんの」

雪ノ下「ペットの肖像権はもちろん飼い主に帰属するものでしょう。つまり小町さんが許可したのだから、問題ないわ」

八幡「いや、大問題だから」

八幡(妹のペットな兄ってどうなのよ。ペットな彼女よりも字面的に問題だろ)

八幡(まあ俺の溢れ出る被扶養者オーラは愛玩動物並みだから仕方ないかもしれんが)

小町「じゃ、いきますよー」

雪ノ下「ええ」

八幡(せめてもの抗議として、態度で不満を現そう)

猫八幡「……」ムスッ

小町「ああ、いいよお兄ちゃん!そのむすっとした表情すごくいい!」パシャッパシャッ

八幡(はい逆効果ー。予想通り!)

雪ノ下「……」スッ

猫八幡「うお、いきなり抱き上げるな、びっくりするだろ」

八幡(不意に視線移動すると、ついに俺も瞬間移動能力に目覚めたのかと勘違いするじゃん)

雪ノ下「どうかしら、小町さん」

小町「ああ、素晴らしいです雪乃さんその体勢!!」パシャッパシャッ

八幡(さっきからこいつら俺のことスルーしすぎ。まあ無視にはなれてるけど)

八幡(無視なら無視で、いないものとして扱ってくれんかなー。災いが起きないように)

雪ノ下「次は、こういうのとか」

猫八幡「高い、高いから」

八幡(八幡飛んじゃうぅぅぅぅ)

小町「それもいただきましたー!」パシャッパシャッ

八幡(……雪ノ下の髪、いい匂いするな)クンクン

雪ノ下「こういうのもどうかしら」

小町「うひょー!こりゃあ熱くなってきたぜ!」パシャッパシャッ

八幡(こいつらのテンション、ついていけねえ)

―――
――


猫八幡「……」グダー

小町「さ、さすがにやりすぎましたね」

雪ノ下「そのようね……」

八幡(や、お前ら。今さら反省しても遅いから。しまったと言ってからでは遅いって、グランセイザーも言ってただろ)

小町「でもおかげで小町の猫お兄ちゃんアルバムがまた厚くなりましたーご協力、感謝です」

雪ノ下「なにそれは……是非拝見したいのだけれど……!」

八幡(こいつら全然反省とかしてねえ)

小町「じゃあ、今持ってきますねー」

猫八幡「こんなにしておいても俺を離さないんだな、お前……」

雪ノ下「その言い方は聞きようによっては誤解を招くからやめてほしいのだけれど」

猫八幡「事実そのままだろうが……」

八幡(ほんと、そんなに俺のがいいのか?言葉では否定してても、体は素直だな!すいません、キモいですね)

雪ノ下「……ねえ比企谷くん」

ちょっと中断

猫八幡「なんだ……」

八幡(あ、これ絶対なんか無理難題ふっかけてくるパティーンだ)

雪ノ下「今度うちに泊まりにきてほしいのだけれど。もちろんずっと猫の姿で」

猫八幡「これが一晩って……胃に穴が開くわ」

八幡(それで胃潰瘍になったら労災おりませんかね。猫営業中のことなんですけど。え、降りないの?やっぱ働いたら負けだな)

雪ノ下「もちろん、今みたいなのはできるだけ慎むけれど」

猫八幡「できるだけかよ」

八幡(できるだけって、ほとんど出来なかった時の為の免罪符だよな。できるだけやったんですけどーって)

八幡(あと自分なりに努力しましたとかも。そんなこと言うと本郷三佐が怒って空がよみがえっちゃうぞ)

雪ノ下「まあ、とりあえず常時抱っこするのは仕方ないわよね。あなたが全裸の不審者に戻ってしまうもの」

猫八幡「その時点で御免被る」

八幡(デスマーチだからそれ)

雪ノ下「だって、いきなり全裸の男が女性の独り暮らしの部屋に現れたら、警察に通報しなければならないでしょう?市民の義務として」

猫八幡「絶対いかない」

八幡(絶対、絶対だぞ!あれ、今フラグ立った?)

雪ノ下「そう、仕方ないわね……」

八幡(そうそう。おとなしく諦め)

雪ノ下「今日このまま抱っこして連れていくしかないかしら」

猫八幡「おい」

八幡(おまわりさんこっちです!ここに略取誘拐を企ててるやつが!)

雪ノ下「あなたを抱っこしたままになるから、ご飯の準備とかしておきたかったのだけれど」

猫八幡「決定事項なのか?おい」

八幡(おまわりさん、早く来てくれー!)

小町「お待たせしましたー」

八幡(あれ、小町っておまわりさんだったの?婦警姿の小町か……ふぅ。いいんじゃないかな。お兄ちゃん的にポイント高いよ!)

雪ノ下「あ、小町さん、ちょうどいいわ。またお願いがあるのだけれど」

八幡(まただよほんと。こいつ、猫のこととなると欲望に再現がないな。このままだと猫科のグリードになっちまうぞ)

小町「なんですか?」

雪ノ下「比企谷君を、今日はこのまま連れて帰りたいのだけれど」

小町「え、うーん、そうですか……」

猫八幡「頼む、断ってくれ小町。お兄ちゃんの健康のために」

小町「じゃあ、ビデオ持ってきますから、様子を撮ってきてください」

猫八幡「ストレスで禿げるぞ俺……」

雪ノ下「それはいけないわね。ええと、獣医に連れていけばいいのかしら」

猫八幡「人間の病院に決まってるだろ」

八幡(烏丸獣医なら、ワイルドハーフ的なものとして俺も見てもらえるかもしれないけど)

雪ノ下「あと小町さん、相談なのだけれど」

小町「なんでしょうか」

雪ノ下「比企谷くんを抱っこしていなくてもしばらく戻さない方法ってあるのかしら」

猫八幡「さらっと恐ろしい相談してるんじゃない」

小町「ありますよ」

猫八幡「それだけは黙ってて欲しかった」

八幡(愛する妹に裏切られた!オンドゥルルラギッタンディスカー!)

雪ノ下「本当に?是非教えてほしいのだけれど」

小町「はい、じゃあ兄を一度離してください」

雪ノ下「ええ。あの、でもそれでは比企谷くんが」

小町「少し待ってくださいね」

猫八幡「くそ」

八幡(猫狂いが二体あらわれた!たたかう、どうぐ、にげる)

八幡(にげるを選択)

小町「あ、お兄ちゃん逃げそうなのでディフェンスを!」

雪ノ下「逃がさないわよ!」ササッ

猫八幡「ちっ」

八幡(く、抜けない!さすがディフェンスに定評がある雪ノ下。いや、初耳だけど)

雪ノ下「絶対に逃がさない」

猫八幡「目が怖い目が怖い」

八幡(ほんとマジで怖い。つうかこの人誰だよ。猫のこととはいえ必死すぎわろす。いや、笑えな――)

小町「今!」ダキッ

八幡「ぎゃ」

小町「はい、離してー」

八幡「……」ドッドッド

小町「と、このように、兄は小心者なので、今みたいに猫から戻りそうな時に突然抱き上げられると」

小町「それがトラウマになってしばらく戻れなくなるんです」

雪ノ下「なるほど」

八幡「ナチュラルに人にトラウマを作ろうとするんじゃな――」

小町「はい、今!」ダキッ

猫八幡「ぐえ」

小町「はい、下ろしてー」

小町「まあこれをあと三セットもやれば、一晩は余裕ですよ」

雪ノ下「なるほど」

八幡(こうして、今日もまた俺のトラウマが増える。トラウマイスターだったら俺最強じゃね)

―――
――


八幡(さあ!カメラが下からぐいっとパンして、猫の俺がどーん)

八幡(うわー、窓際で黄昏てる俺(猫)かわいいなあ。ふとなにかに気づいて空を見上げる様とか、演技力高すぎてハリウッドに出られるレベル)

雪ノ下「……」

八幡(……ちょっと雪ノ下さん、テレビに近づきすぎですよ、危ない。八幡ショックとかが起きるわけじゃないけど)

八幡(というかあれ、ポリゴンは電撃を受けただけなわけで、それでポリゴンショックとか言ってはぶられてアニメに出してもらえないとか、共感しすぎてやばいかわいそう)

小町「お待たせしました、お兄ちゃんのお泊まり準備できましたよ!」

雪ノ下「ありがとう、貸していただくわね」

小町「あと一応人間時の着替えです」

雪ノ下「必要になるかどうかはわからないけれど」

猫八幡「むしろ必要になってくれ」

小町「トイレは人間用のトイレに入れてあげれば、猫の姿でもできますし、流すのだけしてあげてください」

八幡(なるべく我慢しよう……)

小町「ご飯はネギとかは一応避けてください。あとは食べやすいように柔らかくすれば、人間のでも食べられるので」

八幡(さっきから人間用とか、人間のものとか言ってるけど、俺元から人間だからね?忘れられてる気がしてならないんだが)

小町「えーと、これくらいかな?」

小町「あ、お風呂は別に入れなくてもいいですよ。毛を乾かすのが大変ですし」

雪ノ下「そう」チラッ

猫八幡「……」

八幡(あ、これ入れたいって顔?俺を入れたいとか卑猥すぎる)

小町「じゃあ注意点はだいたいこんなものです」

小町「お兄ちゃんで楽しんできてください!」

雪ノ下「ええ。そうさせて頂くわ」

猫八幡「俺でかよ、おい」

八幡(あー早く帰りたい。ふえぇ、もうホームシックだよぉ)

中断

そういえば、前にこっちで誰かがこのスレタイで立てて
内容コピペしてたスレ(下記URL)で、
この続き書きたいって人がいましたか、
その後なんかあったんでしょうか?

八幡「異性に抱きつかれると猫になる体質」 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1383621395/)

◆◇◆◇◆

八幡(俺たちは今、雪ノ下の家に向かっている。のだが、)

猫八幡「……おい」

雪ノ下「なにかしら」

猫八幡「ずっと抱っこしてたらキャリーバックの意味ないだろ。ていうか、お前もう二時間くらい俺だっこし続けてるしもういいだろ、流石に」

八幡(つうか、もうしばらく戻れないんだから、いい加減離してくんない。ブランケット症候群なの?)

雪ノ下「必要な時には入れるわ。そうね、電車移動の時は仕方ないけれど」

猫八幡「たった今が必要な時だと思うが。俺に束の間の安息をもたらすという意味で」 

八幡(まあ、実際は雪ノ下に抱っこされてるのも、別に居心地が悪いってわけじゃないんだけどな)

八幡(すげえ気を使った持ち方してるし、むしろYAT安心猫旅行、っていかんいかん。それでも男として許しちゃいかんだろ、これは。俺の尊厳がかかった問題だ)

雪ノ下「私に抱っこされるよりも、そんな狭いところにいるほうが良いと言うのかしら」

猫八幡「や、狭いところって安心するんだぞ」

八幡(押し入れとかな。天井に星空とか描いておけばモアベター(誤用))

猫八幡「それに少なくとも、お前に抱っこされるほど体勢を制限されないしな」

雪ノ下「私はあなたがこのほうが安心するのではないかと思って、親切で抱っこしながら連れて行っているのだけれど」

八幡(ぎくっ。なにこいつ。今俺の心の中読んだの?もしかして超高校級のエスパー?)

猫八幡「……そういうのを自分本意な親切の押し売りっていうんだ」

猫八幡「特にお前みたいのが小動物にすることのだいたいの行動がそうだ」

雪ノ下「有難いご教授痛み入るわね」

雪ノ下「……でも訂正させていただくのなら、あなたは本当の猫じゃないでしょう?本当にそう思っているかどうかなんて、本当の猫にしかわからないじゃない」

雪ノ下「それとも、あなたは本当の猫と意思疏通ができるのかしら」

八幡「ある程度はできないこともないな。細かい意思疏通ができるほど器用ではないが」

雪ノ下「そう。じゃあ、あの塀の上にいる猫を呼ぶくらいのことはできるのかしら?」

八幡「その程度か。ふ、まあ見てろ」ジッ

猫「……」ジー

八幡「……」ジー

猫「フシャー!」

八幡「と、このように俺は猫界でもぼっちだ」

雪ノ下「さっきの自信はなんだったのかしら」

猫八幡「少しなら意思疏通はできるんだよ。相手が応じてくれないだけで」

八幡(猫型ロボットの鈴が、実は猫呼びの鈴なのに壊れてるみたいなもんだな。壊れてるのは俺の場合、対外スキルだって?ほっとけ)

雪ノ下「それでは意味がないと思うのだけれど」

猫八幡「ところで、そろそろ人通りも増えてきたし、猫に話しかけるやばい女だと思われたくなかったら、俺をキャリーバックに入れたほうがいいぞ」

雪ノ下「ご心配どうも。でも、話しかけなければいいだけのことでしょう」

八幡(話しかけないんなら離せばいいだろ……)

八幡(そう思いながらも、結局そのまま、移動の大半を俺は雪ノ下の腕の中で過ごし)

八幡(気づけばうとうとと、頭は船を漕いでいた)

―――
――


猫八幡「……んん」

猫八幡「ここは」ムクッ

雪ノ下「あら、起きてしまったのね」

猫八幡「」ギョッ

八幡(え、なにこれ?朝ちゅん?なんで雪ノ下が隣で寝てんの?あ、でも俺猫じゃん。うん、それなら何もないな!)

八幡(……ないですよね?獣姦は流石にドン引きだよ?)

猫八幡「……近いんだが」

雪ノ下「私の願望のひとつに、猫と昼寝をするというものがあったのだけれど」

猫八幡「……メルヘンな夢持ってたんだな、お前」

雪ノ下「いいでしょう、別に!でも一応お礼は言っておくわ。あなたのおかげで叶ったわ。ありがとう」

猫八幡「どういたしまして」

八幡(でも言うだけじゃなく、態度で示してくれるともっとありがたいんだけど。俺を解放するとか)

八幡「……他になんかしてないだろうな」

八幡(これ聞くのちょっと怖い。想像を絶する辱しめとか受けてたらどうしよう)

八幡(責任取って婿に貰ってもらうべきか?や、それってこの地獄が永遠ってことじゃん!やっぱ結婚は墓場だぜ!)

雪ノ下「ええ、特には。写真と、小町さんに頼まれたビデオを回してたくらいかしら」

八幡「盗撮じゃん、それ」

雪ノ下「撮影の許可は小町さんから頂いているもの」

八幡(許可、許可ってお前許可もらったら人殺しでもなんでもするのかよ!やべ、雪ノ下に殺人許可書(マーダーライセンス)とか最悪の組み合わせだろ)

雪ノ下「それに、寝ているあなたはまるで、天使のようだったわ。写真を撮らないという選択肢を選べるはずがないほど……」

八幡(雪ノ下が乱心したぁ!こいつ、段々俺の前で猫好きであることを取り繕わなくなってきてるんだけど)

八幡(俺はもっと恥じらう雪ノ下のほうがかわいいと思うぜ。貧乳は貧乳であることを恥ずかしがることがかわいいみたいにな)

猫八幡「……お前、そのうちほんとに猫狂いみたいになりそうで怖いんだけど」

雪ノ下「でも、起きるとダメね。目付きと声で人間のあなたを連想してしまって」

猫八幡「俺の要素いらないってことだろ、それ……」

雪ノ下「どうせ猫になるのなら、頭の中まで猫にならないものかしら」

猫八幡「人格全否定か」

八幡(こいつの発想怖すぎる)

中断します

猫八幡「あのな、俺じゃない普通の猫だったら、こんな言うこと聞かないからな」

雪ノ下「それはもちろんわかっているのだけれど……」

雪ノ下「なら、もっとそのメリットを生かしてもらえないかしら」

猫八幡「例えば?」

雪ノ下「そうね」ムクッ

雪ノ下「私の膝の上に自分から飛び乗って、丸くなるとか」

猫八幡「なんで俺がそこまでサービスしなきゃならないんだ。メリットっつったけど、こっちこそメリットがねえだろ」

雪ノ下「メリット?私の膝の上でくつろぐということ自体があなたにとってはメリットでしょう?」

雪ノ下「この機会を逃したら、女子高生の膝の上でくつろぐことなんて、二度とできないわよ」

雪ノ下「しかもその膝を貸すのは私」

八幡(はい上から目線いただきましたー。いいねー、その目線ぐっと……来ねえよ。俺はお前のカメラマンじゃないんだけど)

猫八幡「この姿になれば、女子高生の膝に乗る機会なんて、いくらでもあるどな」ボソッ

雪ノ下「なに?比企谷くん、あなた、まさかその姿になれることをいいことに、何も知らない女性の膝を乗り回しているということかしら?」

八幡(ちょ、睨まないでください。怖いです。もう上から目線どころか殺人目線だぜそれ)

雪ノ下「しかもそれで私の膝の上は拒否?あなたのその体質を言いふらして、二度とそんなことをできなくする、という手も私にはあるということを忘れないで欲しいのだけれど」

八幡(もはや脅しであることを隠してないじゃん……取引とはいったいなんだったのか……)

八幡「すいません、調子に乗りました。乗ったことあるのは小町の膝の上くらいだって」

雪ノ下「本当に?」

八幡「俺がお前に嘘ついたことがあるかよ(嘘)」

雪ノ下「ダウト。でもそうよね。そもそもあなたに、女子高生の膝に乗せてもらう為に猫の演技で近づくなんて行動力、あるわけないもの」

八幡「ああ、それどころかこの姿で外出すること自体怖すぎるっつーの。すぐに戻って全裸で逮捕される未来しか見えねえ」

八幡(そんな可能性のある俺は外出しないほうがいいに決まってるよな。働くなんてもっての他だな)

雪ノ下「そうね。それならいいわ」

八幡「お、おう」

八幡(いいって……ダメだったらどうなってたんだろうか。処刑?)

これだけで申し訳ないが、明日朝早いので寝ます。

雪ノ下「それで、結局膝の上には乗ってもらえるのかしら」

八幡(あっ……(察し)どうあっても乗せる気だ、こいつ)

雪ノ下「さっきも言ったけれど、あなたが女子高生の膝の上に乗れるチャンスなんて、なかなかないでしょう?」

猫八幡「……後で文句言うなよ。これは、お前が乗れって言ったから乗るだけだからな」

雪ノ下「もちろん分かっているわ。だから早くして」

猫八幡「はいはい」

八幡(どんだけ待ちきれないんだこいつ……どうやら俺の魅力にメロメロなようだなふははは。猫のだけど)ノソノソ

猫八幡「これでいいのか」ムスッ

雪ノ下「ええ……ふふ、不機嫌そうなのに、私の膝の上から退こうとはしないその憮然とした態度がたまらないわ」

猫八幡「退いていいなら退くが」

雪ノ下「それはダメよ」ナデナデ

猫八幡「今日の夕方だけでお前、俺をどれだけ撫でたよ。飽きないの?」

雪ノ下「飽きることなんてありえないわ」ナデナデ

八幡(……なんか、また眠くなってきたな。体の下は暖かいし、撫でられるの気持ちいいし、いかん、寝落ちす――)ウトウト

雪ノ下「……そういえば、小町さんからあなたの手入れ道具一式を借りたのだし」

雪ノ下「ブラッシングをしてあげましょうか?」

雪ノ下「それとも、猫じゃらし等の玩具もあるのだけれど、遊ぶほうがいいかしら」

猫八幡「……お前、本物の猫を飼うことになったら、構いすぎるなよ」

猫八幡「猫はノイローゼになるぞ」

雪ノ下「そう、なのでしょうね……」

雪ノ下「でも、私にはあなたがいるもの」

猫八幡「……」

八幡(今の言葉だけを聞けば、世の男は誰もが羨む内容だろうが……)

八幡(体が猫である俺にとっては……)

猫八幡「俺ならストレスで早死にさせてもいいのかよ」

雪ノ下「失礼ね。私に可愛がられるのだから、あなたにとってはストレスどころか、むしろご褒美だと思うのだけれど」

猫八幡「俺は体は猫になっても、猫扱いを喜ぶ変態ではない」

八幡(いや、戸塚が相手なら俺がネコでも……はっ、いかんまた道を踏み外すところだった)

雪ノ下「そういうことにしておいてもいいけれど」ナデナデ

雪ノ下「結局こうしてされるがままになっていては、説得力を感じられないわね」クスッ

猫八幡「お前が脅すからだろ……」

雪ノ下「ところで、とりあえずブラッシングからでいいかしら」

猫八幡「流すなよ」

八幡(まあ、俺の意見なんて常に人に流されっぱなしだけど。運命に流されまくるラノベ主人公みたい)

八幡(でも一応注意だけはしておこう。努力ってそういうもんだって金貸し魔術士の姉も言ってたし)

猫八幡「あとブラッシングだけどな、強く引っ張るなよ。痛いから」

猫八幡「毛玉があっても無理に取るのもやめろ。ちゃんとすいて丹念にほどけよ」

雪ノ下「注文が多いわね」

八幡(料理店は経営してないが)

雪ノ下「ふふふ、でもそのほうが猫と話をしているという感じがするわね」

猫八幡「俺は根っからの猫じゃないけどな」

雪ノ下「気分が壊れるから、あまりそういうことは言わないで欲しいのだけれど」

八幡「お前って、猫のことにはほんとメルヘンだな」

雪ノ下「い、いいでしょう別に!」

雪ノ下「……そんなに、私には似合わないかしら」

猫八幡「別にそういうんじゃない。ただまあ、普段のイメージとは違うしな」

猫八幡「そしてそのイメージも、最初の時のだ。今はむしろいいと思うぜ、そんな雪ノ下も」

雪ノ下「……あなたこそ、イメージとは違うわ。そんな人を気遣うようなことを言うなんて」

猫八幡「や、むしろ俺は普段から気を使いまくりだから。いつもはこんなこと俺から言われたら、逆に嫌な気分になるだろうと思って言わないだけだからな」

八幡(そして言っても言わなくても「なにあいつ感じ悪い」となる。なにそれ無理ゲー?)

雪ノ下「……ならどうして、今は私を気遣うように言ったの?」

猫八幡「お前の機嫌を悪くして、これ以上猫の俺の扱いがひどくならないようにだ」

雪ノ下「はぁ……結局あなたは、そういう人よね」

猫八幡「ああ、これが俺だ。なに期待してんだ」

雪ノ下「べ、別にあなたに期待することなんてないわよ。これまでも、これからも、ね……たぶん」

八幡(ひどっ。なにその言いぐさ。どこの死の絶叫だよ。精神破壊で寝たきりになるぞ俺)

雪ノ下「まあいいわ。今はあなたのおかげで、それなりに楽しいと言える時間を過ごせているのだし」ブラシブラシ

八幡「それはなによりだ」

八幡(文句あんなら止めてもいいんだぞゴルァ!とは言えないか。こいつなりの照れ隠しだしな)

雪ノ下「あなたももっと、無邪気に楽しんで欲しいのだけれど。猫として」ブラシブラシ

猫八幡「それは嫌だ」

雪ノ下「なぜ」

猫八幡「面倒くさい。だいたい、俺はそんなことするタイプじゃないだろ」

雪ノ下「それはそうだけれど」スッ

雪ノ下「……」ブンブン

猫八幡「……」

雪ノ下「ちっちっち」ブンブン

猫八幡「わざわざ顔の前で玩具を振り回すな。邪魔」ペシッ

八幡(つうかこんなの、喧嘩売ってるようにしか思えん。雪ノ下なら喧嘩商売にしても食っていけそうだな)

雪ノ下「……」ブンブン

猫八幡「邪魔だってっの」ペシッ

雪ノ下「ふぅ……夢中で遊ぶのもいいけれど。気だるげに猫パンチをするのも、それはそれでかわいいものね」

雪ノ下「あとは今のを繰り返すうちに本気になるというパターンなら、完璧なのだけれど」チラッ

猫八幡「……」

雪ノ下「……」ブンブン

猫八幡「……」ペシッシャッ

雪ノ下「……」サササッ

猫八幡「……」ピョンッペシペシペシ

八幡(なにこの接待猫プレイ)

猫八幡「お前……こんな表面だけ猫のしぐさを取り繕った俺を見て楽しいか」

猫八幡「大事なのは中身じゃなかったのかよ」

雪ノ下「そうね……あなたにも心から楽しんでもらえるように、遊び方を改善しないといけないわね」

猫八幡「や、そうじゃなくて、見た目猫でも、中身俺と戯れて楽しいのかってことだよ」

雪ノ下「……」

雪ノ下「楽しくないことを、楽しいなんて私は言わないわ」

雪ノ下「それが、中身があなたの猫と戯れることでもね。それに……あ、いえ、なんでもないの」

猫八幡「……」

八幡(今、猫になってて良かったな。猫は顔色変わんないし)

中断

今のところゆきのんが猫八幡を床を歩かせて移動させないので
見るチャンスがないね

◆◇◆◇◆

雪ノ下「そろそろ夕御飯を作ろうと思うの」

猫八幡「おう」

雪ノ下「その間は、その辺で寛いでいてくれて構わないから」

猫八幡「わかった」トコトコトコ

八幡(やっと休憩か。疲れた)ゴシゴシ

八幡(飯の後はのんびりさせてくれると助かるんだが)コテン

八幡(秘技、猫のゲロ吐きでもすれば、放っておいてくれるだろうか。いや、さすがにそれは人として問題か。それにしても猫ってなんであんなにすぐゲロ吐くんだろ)グテー

雪ノ下「……」パシャパシャ

猫八幡「……飯の支度は?」

雪ノ下「ごめんなさい。だらけている姿があまりにも可愛らしかったものだから」

猫八幡「だらけてても可愛いと言われるとか、猫は得だよな」

八幡(というか、だらけてる人間の俺の姿を可愛いと言ってくれる女の子もいていいと思うんだが。どこかにいないかな、紹介してほしい)

雪ノ下「そうね。やっぱり、一生その姿でいたほうがいいのではないかしら、あなたは」

八幡(こいつ、隙さえあれば俺を猫にしようとするな。え、なに、そんなにツボなの猫の俺)

雪ノ下「そうなったら、私が愛玩動物として一生面倒見てあげてもいいけれど」

八幡(なんかもう冗談に聞こえなくなってきた。冗談にしてもぐいぐい来すぎだし、怖すぎる。ほんとにそのうち誘拐でもされんじゃないの)

猫八幡「……じゃあもう少し、飼い猫を無視して好きにさせる時間を作るということを意識してくれ」

猫八幡「ほんとストレスで禿げそうだ」

雪ノ下「……ごめんなさい」

八幡(∠( ゚д゚)/「え」)

雪ノ下「今日はつい、興奮してしまって……夕御飯ができるまで、少しでも休んでちょうだい」

猫八幡「お、おう」

八幡(急にしおらしくなられるのも違和感あるな)

八幡(なんにしても、のんびりできるのはいいことだ)ゴロン

八幡(しかし、のんびりすると言っても、猫のままでは、ほんとにのんのんびより以外しようがない。猫だけにマジにゃんぱすー)ゴロン

八幡(今特に見たいテレビ番組はないし)シッポパタパタ

八幡(この大きさ、この手ではゲームもできない)シッポパタパタ

八幡(結局寝るくらいしか選択肢がない)クアー

八幡(寝子とはよく言ったものだ)ゴロン

八幡(暇だなー。さすがに雪ノ下んちを物色するわけにもいかないしなー)ノビーン

雪ノ下「……ちょっと」

八幡「どうした」ムクッ

雪ノ下「せっかくあなたをゆっくりさせようと思った矢先に、そんな姿で私を誘惑するなんて、卑怯じゃないかしらっ?」

八幡「誘惑?してたか?完全に無意識だったわ」←少し首を傾げる

雪ノ下「ああもうだめっ!」

雪ノ下「なんてかわいいのかしら!」ギュ

八幡「ぐえ」

雪ノ下「本当に憎らしいくらいかわいい!たまらないわ!」スリスリ

雪ノ下「うちの子にしたい!ねえダメかしら比企谷君!?」スリスリ

八幡「とにかく離せ……くるしい」

雪ノ下「ご、ごめんなさい……」

雪ノ下「でも、あまりにも可愛かったんだもの……」

八幡(今のお前の方がかわいすぎだろ。言えるか恥ずかしい)

―――
――


猫八幡「で、どうしてこうなった」

雪ノ下「あなたを一人、別の部屋に置いておくと、気になってちらちら見てしまうんだもの」

猫八幡「だからって、おんぶはないだろ。赤ん坊か俺は」

八幡(俺は今、雪ノ下の背中で袋のようなものに入って背負われている。気分はマジで赤ちゃんである。バブー、ちゃーん)

八幡(まあでも、中身は俺なので赤ちゃん人間と言った方が正しいか。あどけなさの裏であばばほくそ笑むのさ)

雪ノ下「私にとっては似たようなものね。目が離せないという意味で」

猫八幡「この状態で料理って、毛が入りそうだが」

雪ノ下「じゃあ、なるべく毛が飛ばないようにおとなしくしていて欲しいのだけど」

猫八幡「はぁ」

八幡(まあどうせ、どこにいても寝るか考え事するくらいしかやることないし、いいか)

雪ノ下「……」トントントン

雪ノ下「……」チラッ

雪ノ下「……」グツグツ

雪ノ下「……」チラッ

雪ノ下「ふふっ」

猫八幡「なんだよ……」

八幡(顔見て笑うとかやめてくんない。鼻毛出てるかとか、すげえ気になっちゃうだろ)

八幡(……それに、そんな顔で笑いかけられて、好きになったらどうするんだよ)

雪ノ下「いえ、あなたの顔をこんなに近くで見ていたら、なんだか楽しくなってきただけよ」

八幡(ま、こいつがみたいのは猫の顔だからな……)

雪ノ下「♪~」

八幡(にしても、よほど機嫌がいいんだな。鼻唄まで歌って)

八幡(……この適度に揺れる暖かい背中。眠気を誘う……おまけに子守唄つきだ)

八幡(それに、いい匂いもするし……)

猫八幡「……」クークー

――


雪ノ下「あら」

雪ノ下「眠ってしまったようね」

雪ノ下「……」

雪ノ下(背中に、小さな肉球があたる感触……)

雪ノ下(それに、押し付けられた鼻先から、小さな寝息も当たって……)

雪ノ下(背中にいる小さな生き物への、愛しさがあふれてくる……)

雪ノ下(中身は比企谷くんだと分かっているのに……)

雪ノ下(もうダメね。完全に惚れてしまったわ、比企谷くん……猫のあなたに)

ところでこのくそたろう酉は実は借り物だったので
本来の酉に戻そうかなーって思う

―――
――


雪ノ下「比企谷くん、比企谷くん」ユサユサ

猫八幡「ん……?」

雪ノ下「夕御飯ができたのだけれど」

猫八幡「ああ、寝てたのか」クアー

猫八幡「んんー」ノビー

猫八幡「はっ」

八幡(またこんなことをやると、雪ノ下が暴走してかぁいいモードに……)チラッ

雪ノ下「……」ニコニコ

八幡(……あれ?)

雪ノ下「目は覚めたかしら。さ、ご飯にしましょう」ダキアゲ

八幡(なんか、さっきと雰囲気が違うような。や、べ、別にまた可愛さのあまりだっこしてくるのを期待してたわけじゃないんだからねっ!)

雪ノ下「はい、これが比企谷くんの分」

雪ノ下「鶏肉と野菜を入れたおかゆにしてみたのだけれど」

猫八幡「へえ、うまそうだな」

雪ノ下「ちゃんと熱くないように冷ましてあるわ。今のあなたは、本物の猫舌だもの」

猫八幡「お気遣いどうも」

八幡(猫のこととなるとこいつ優しすぎだろ。俺ほんとにここんちの子になろうかな)

八幡(あの猫可愛がりが収まればだが)

猫八幡「ガツガツ」

雪ノ下「どうかしら」

猫八幡「ああ、問題ない。うまい」

雪ノ下「そう、良かったわ。じゃあ、私もいただきます」

――


猫八幡「ごちそうさん」

雪ノ下「ごちそうさま」

雪ノ下「比企谷くん、ちょっとそのままでいてちょうだい」

猫八幡「なんで」

八幡(また写真か?それに猫まっしぐら!とかポップつけて雪ノ下がレシピ集出したときに宣伝につかったら印税すごい入るんじゃね。やだ、俺って商才まで溢れてる。生かす場で働く気はまるでないけど)

雪ノ下「口の周りがよごれているわ」

猫八幡「ああ、そういうことか」

八幡(今、口の回り、つうか全身毛むくじゃらだし、こんななりじゃ犬食い(猫食いだけど)するしかないし、どうしても汚れちゃうんだよな。まあ、普段は飯のときとかにわざわざ猫の姿じゃいないけど)

雪ノ下「……」ゴシゴシ

雪ノ下「これでいいわ」

猫八幡「悪いな、わざわざ」

雪ノ下「当然のことをしたまでよ」

八幡(当然ときましたか。大分俺の甘やかしかたを心得たようだな雪ノ下!いいぞぉ、その調子だぁ!何がいいんだよ。バカか俺)

雪ノ下「じゃあ、私は洗い物をするわ」

猫八幡「食べさせてもらったんだから、人間の姿なら俺も手伝うんだが」

雪ノ下「いいのよ、あなたは。ゆっくりしていてちょうだい」

猫八幡「わかった……またおんぶしないのか?」

雪ノ下「そうね。あなたがしたいというなら、するけれど」

八幡(なっ!べ、別にこれも期待してたわけじゃないんだからね!落ち着け俺!何回ツンデレる気だ!ツンデレは向こうの十八番のはずだろ)

猫八幡「じゃあいいわ」プイッ

雪ノ下「そう?残念ね」クスッ

八幡(……やっぱり、なんか雪ノ下が落ち着いたな)

八幡(もちろんその方がありがたいが……)

八幡(馴れたのか、猫の俺に)

八幡(……飽きたという可能性もあるか)

八幡(……それがどうしたって感じだろ。俺にとっては)

八幡(だいたい、見た目は猫でも、中身は俺なんだから、今までのスキンシップ過剰状態が変だったわけだ)

八幡(雪ノ下も落ち着いてようやくそのことにき――)

雪ノ下「……」スッ,ナデナデ

猫八幡「洗い物、終わったのか」

雪ノ下「ええ」ナデナデ

中断

八幡(終わったらまっすぐ俺のとこ来たの?何この子、忠犬?や、雪ノ下は猫派だけど)

猫八幡「……膝の上に乗せないのか?」

雪ノ下「あら、わざわざそんなことを言うなんて、私の膝の上が気に入ったのかしら」

猫八幡「別に」

八幡(と、エリカ様の真似ではぐらかしてみたが、実際なんで俺そんなことを……確かに寝心地は良かったけれど)

雪ノ下「あなたが乗りたいならいいわよ。どうぞ」ポンポン

猫八幡「……」

八幡(それは魅力的な誘いだった。優しく微笑む雪ノ下に、こんな風に誘われて、断れる男なんていやしない。そう自分に言い訳しれ、俺は)

猫八幡「じゃあ」ノソノソ

猫八幡「……」ゴロン

雪ノ下「……」ナデナデ

八幡(落ち着くな……)

八幡(癖になりそうだ……)

猫八幡「……」スー

―――
――


雪ノ下「あの、比企谷君」

猫八幡「は、寝てた」

八幡(やばい。雪ノ下の膝の上やばい。魔性だ。人が手を触れちゃいけないものだこれは)

雪ノ下「そう、寝ていたところ悪いのだけれど」

雪ノ下「私はそろそろお風呂に入るから、どいてちょうだい」

猫八幡「ああそう……」

八幡(その間に俺は本気寝でもさせてもらうか。なんか、俺までおかしくなってきた気がするし。寝て忘れよう)

雪ノ下「……あなたは入る?入るなら、洗ってあげるし、毛を乾かすのも構わないけれど」

猫八幡「え、いいわ。猫の時のシャワーって怖いし」

猫八幡「濡れると全身の毛が張り付くのも気持ち悪いんだよ」

雪ノ下「そう、なら――」

グラグラグラ

雪ノ下「え、地震……?」

猫八幡「結構大きいな」

八幡(まあでも、日本人なら慌てるほどじゃないな。むしろこの位の揺れなら、常駐してるSNSを覗きに行くまである。地震なんてどこの田舎だよ)

ゴロッ

雪ノ下「比企谷くん!あぶない!」

猫八幡「え」

八幡(やべ、アホなこと考えてたせいで避け――)

ゴトンッ

雪ノ下「比企谷くん!!」

猫八幡「……」

雪ノ下「比企谷君、比企谷君!しっかりして、目を開けて!」

雪ノ下「え、この赤いのって……血……?比企谷くん……!?お願い、目を……」

猫八幡「……あー、死ぬかと思った」ムクリ

八幡(マリアがどこに落ちたい?とか言うから焦ったぜ!や、今落ちてきたのマリアと横島じゃないし)

猫八幡「今のすげえ近くに落ちてきたし、この体じゃ、直撃してたらやばかっ」

雪ノ下「比企谷くん……!」ギュッ

猫八幡「ゆ、雪ノ下?」

雪ノ下「良かった……本当に良かったわ、無事で……」

猫八幡「お、おう」

八幡(ま、また胸が……やっぱりささやかだけど)

雪ノ下「でも、本当にあぶないところだったわ……それに、あんな真っ赤な血が」

猫八幡「血?や、俺別に怪我とかないみたいだけど」

雪ノ下「でも、確かに真っ赤な血が」

猫八幡「どれ……おぅ、俺の毛並みの一部が鮮やかな赤に」ベットリ

八幡(この毛についたもんは、真っ赤な血かい!?いつまーでも、いつまーでも追い続けるんだ!……あのOP熱くて好きだわ)

雪ノ下「どうやら落ちてきたものの中身のようね」

雪ノ下「それに、あなたを抱き締めたせいで、私の服も真っ赤だわ」ベットリ

猫八幡「……どうすんべ」

雪ノ下「服と違って、あなたはその毛を脱ぐというわけにはいかないのだし」

雪ノ下「お風呂に入らなければならなくなったようね」

猫八幡「えー……」

雪ノ下「文句を言っても、染料は落ちないでしょう。さ、行きましょ」ダッコ

猫八幡「まあ、仕方ないか。頼む、雪ノ下」

八幡(しかし、洗ってもらうにしても、せめて背面だけにしてもらわんとな)

八幡(腹の方まで洗われると、猫になってかわいらしくなったとはいえ、俺の大事なものが雪ノ下に……)

雪ノ下「あなたは先に中で待っていてちょうだい」ガラッ

雪ノ下「私もあなたを洗う準備をして入るから」

猫八幡「わかった」

八幡(それにしても猫の姿で風呂場は鬼門だ)

八幡(足元がつるつるしておぼつかないし、毛は湿気を吸って重くなる)

八幡(湯船は高いから落ちたら一発だろ)

八幡(そもそもこの姿で濡れるのが生理的に嫌だ)

八幡(ネットで見た濡れて毛がべっとりした猫と同じようになるんだからな)

八幡(まあお湯はった風呂に被せてある蓋の上で寝るのは気持ちいいんだけど――)

ガラッ

雪ノ下「お待たせしたわね、比企谷君」

猫八幡「……なんでタオル一枚なのん?」

もう眠いのでここで中断します

もうそろそろ前回までの投下分を加筆修正し終わりますかね

八幡(俺いつの間に七咲ルートに入ってたんだ?雪ノ下と七咲だとクールなとこくらいしか接点ないけど)

雪ノ下「私の服も早く洗わないと赤いのが落ちなくなりそうだったから脱いだのよ」

猫八幡「や、脱いだのよって……」

雪ノ下「それにあなたを洗うのなら、私も少なからず濡れるでしょうし」

猫八幡「そうだろうけども……」

八幡(じゃあいっそスク水になればいいんじゃね?七咲ルート的に考えて……ダメだ。あの子、クールなふりして実はタオルの下は裸で混浴する痴女だったわ。僕はそんな七咲が大好きです!)

雪ノ下「そもそも私はお風呂に入るつもりだったのだし、ちょうどいいわ」

猫八幡「そういうことを聞いたつもりじゃなかったんだが……」

雪ノ下「?」

八幡(なんのことかしら?って首傾げたけど、こいつマジか?マジで言ってんの?マージマジジーロゥ?)

猫八幡「あのな……お前はもしかしたら忘れているのかもしれないが……」

猫八幡「今は見た目が猫でも、俺男なんだけど……」

雪ノ下「……そんなこと、もちろん覚えているに決まってるでしょう」プイッ

八幡(その態度は絶対、猫好きに舵を取りすぎて忘れてたってパティーンだろ……)

八幡(でもこれで雪ノ下も……)

雪ノ下「まあいいわ。私は気にしないから、あなたも気にしなくていいわよ」

猫八幡「え」

雪ノ下「さ、全身洗ってあげる」

猫八幡「ちょっと待て、全身って。別に赤いのがついたところだけ、つうかその前にその格好」

雪ノ下「小町さんに一応猫用のシャンプーとリンスも借りてきて良かったわ」ヒョイ

猫八幡「おい、やめ、ちょ……まっ!話を――らめぇ!!」ゴシゴシゴシ

―――
――


猫八幡「なぜあんなところまでしっかり洗った……」

八幡(わたし……汚されちゃった……もうお婿にいけない!……マジでいけなかったらどうしよう)

雪ノ下「お腹の方に一番あの赤いのがついていたのだから、仕方ないでしょう」

雪ノ下「だいたい、今は猫の姿なのだから、気にしなくてもいいと思うのだけれど」

猫八幡「もっと気にしてくれ……頼むから」

八幡(何が猫のゴールデンボールもふもふかわいいだよ!勝手にネットにうpんなよ!どんな羞恥プレイだよ!)

雪ノ下「じゃああなたも洗い終わったし」

八幡(で、この後はドライヤー地獄か……)

雪ノ下「私も自分の体を洗わないと。タオルを取るわね」

猫八幡「は?」

八幡(あ、そうかこれ!見たらほんとにスク水着てたオチだな!うん!……ですよね?)

雪ノ下「……私の裸を見たいなら別に見ても構わないけれど、その場合は覚悟をしておくことね」

猫八幡「……覚悟って」

八幡(死ぬ覚悟か?裏カクゴは無理だぜ)

雪ノ下「見たら一生あなたを私の愛玩動物にしてあげる」ニッコリ

猫八幡「こわっ」

八幡(雪ノ下って、やっぱりそういう性癖の人だったんですね!失望しました、材木座の知り合いやめます!)

雪ノ下「さて……」ハラッ

猫八幡「おっと」プイッ

雪ノ下「……」ゴシゴシ

猫八幡「……」

八幡(今、あの雪ノ下が俺の後ろで、裸になって体を洗っているのか……)

八幡(正直に言おう。見ていいと言うなら速攻振り返るわ。なんならインベルみたいに脳内REC即作動するまである)

八幡(だが、どうなんだ……)

八幡(これ、雪ノ下はどういうつもりなんだ。考えろ八幡……これは罠ね)

八幡(見るのが正解なのか、見ないのが正解なのか……見て後悔するか、見ないで後悔するか)

八幡(だが……好奇心は猫を殺すということわざもある)

八幡(やめとこう。そうしよう。や、へたれたわけじゃないから!君子危うきに近寄らず!)

雪ノ下「終わったわ」

雪ノ下「……結局見なかったのね」

猫八幡「俺には覚悟とかないんで」

八幡(決して振り向かず、背中で語る俺かっけぇ。猫の背中でだけど)

雪ノ下「そう」ヒョイ

猫八幡「あ」

フニッ

猫八幡「……お前、タオルは」

雪ノ下「巻いてないけれど」

猫八幡「あたってんだけど」

八幡(あててんのよ?)

雪ノ下「毛の感触が素肌に当たると、なんだか気持ちいいわね」

猫八幡「お前な……」

八幡(痴女や!痴女がおる!雪ノ下も結局痴女やないかい!)

雪ノ下「なにかしら」

ガチャッ

猫八幡「さっきも言ったけどな、いくら俺が猫の姿だからって、無防備すぎだろ」

雪ノ下「そうかしら」←八幡置く

猫八幡「覚悟ってのもなんだよ。一生愛玩動物だと?中二漫画の台詞かよ」

雪ノ下「私は本気で言ったのだけれど」ゴソゴソ

猫八幡「本気のが怖いわ」

八幡(本気と書いてマジかよ。発言がセンセーションすぎなんだけど。マジラブセンセーションマジラブレボリューションマジだよ♪)

雪ノ下「ところで、前を見て欲しいのだけれど」

猫八幡「前?」チラッ

猫八幡「」

八幡(そこにいたのは、下着姿の雪ノ下雪乃だった。
 もちろん本人ではない。凍りついた俺の頭でも、そのくらいの判断は下せたようだ。これは鏡だと。
 鏡の中の雪ノ下は、恐ろしいほどに綺麗だった。もちろん、後ろを向けば、全く同じ光景を見れる。
 けれど、雪ノ下の下着姿という、非現実的で超然とした光景を、鏡がまるで空想の檻かのように閉じ込めたことで、誰にも触れられない宝石のように輝かせていた。
 そう、これは誰にも触れられてはいけないものだ。見るだけでもその者を凍らせる氷に女王の裸体に触れれば、火傷では済まないだろう……火傷。余りにも冷たいものに触れると、火傷のような傷を負ってしまうという。
 雪ノ下の裸体もまた、そういう類いのものなのだから、隠されていなければならない。それに宝物というものは、隠されているからこそ、その価値を――)

雪ノ下「見たわね。下着姿だけれど」

八幡(俺の意識はそこで現実に戻された。恐怖によってだ。恐怖によって、現実逃避の余り長文炸裂してしまったのと同じく……マジ怖いぃぃ、このあと俺どうなんの!?長文でも考えて思考の海を潜水しなきゃ震えが止まらねぇぇぇ)

猫八幡「……鏡の前に置くのは卑怯だろ。不可抗力……反則だ」

八幡(ふざけろ……!こんなの……やってられっか……!)

雪ノ下「比企谷くん」

猫八幡「な、なんでせう?」ビクッ

雪ノ下「一生愛玩動物なんて、嘘に決まってるでしょう?」プッ

猫八幡「で、ですよねー!」

八幡(ふぅ、あぶね。もう腹出して服従のポーズするしかないかと思ってた)

雪ノ下「それとも……なりたかった?」ゴソゴソ

猫八幡「そ、そんなこと……ないです」

八幡(と、言いながらも敬語になる俺。根っからの従属根性が抜けない)

雪ノ下「そう……私はちょっと、期待したのだけれど」

猫八幡「……いい加減、からかわないでくれ……俺の小さな心臓がもたない」

雪ノ下「ごめんなさい。でも、そうしてもいいと思うくらい、あなたのことを気に入ってるのは本当よ?」

雪ノ下「もちろん、猫のあなたのことだけれど……」プイッ

猫八幡「……そんなん、分かってるっつーの」

八幡(分かってると言いながらも、気分はすっと冷めた。そう、こいつが求めているのは猫の俺なんだ。分かってる)

中断
パロネタって、もっと抑えたほうが読みやすいでしょうか

原作読んでみたら結構な量、パロネタがあったので
入れたほうがいいかな、と書き込んでいったら
自分でもあれ?って気がしだしたので不安になりました
まあ、スルーしてください

不用意な発言でしたね、変な空気にしてすいませんでした
パロネタは趣味に走りすぎないよう気を付けます

――


雪ノ下「服も着たのだし、あなたの毛を乾かしましょうか」

猫八幡「頼む」

雪ノ下「いくわよ」

猫八幡「……」ブォー

雪ノ下「……怒っているの?」

猫八幡「……怒ってない」ブォー

八幡(と言ったが、態度はそう見えなかっただろうと俺自身思った。でもほんとに俺は怒っていない)

雪ノ下「そう。もし怒っているのだとしたら、その姿ではむしろ、つんとした態度は可愛さが増してると忠告しようかと思ったのだけれど」

猫八幡「……」プイッ

雪ノ下「ほら、そんな態度のことよ」

猫八幡「ほっとけ」ブォー

八幡(俺がしていたのは。俺がしていたのは、自己嫌悪――自分への失望だ)

八幡(俺は雪ノ下に期待している。猫の俺を受け入れてくれたこいつなら、本当の俺を見ても……と)

八幡(でも、ダメだ。無理に決まってる。あれを受け入れてくれるやつなんて、いるはずがない)

八幡(拒絶されるだけならいい。俺自身が折り合いをつければいいことだ。でもきっと雪ノ下は、抱え込んで壊れてしまうだろう。また……)

八幡(そして、こいつの記憶を消すことになる。猫の俺の記憶も一緒に……)

八幡(だからダメだ。雪ノ下は純粋に猫の俺を好きになってくれた。それを踏みにじってはならない)

『……気持ち悪い』

猫八幡「……」

雪ノ下「じゃあ、私はさっきこぼれたものの後片付け等を済ませてくるから、あなたは先に寝ててもいいわよ。寝室はあっち」

猫八幡「……」ハッ

雪ノ下「……どうしたの?」

猫八幡「いや……お前のベッドで寝ろってのか?」

雪ノ下「そうだけれど、それがなにか」

猫八幡「……もういいわ。おやすみ」

八幡(今日は疲れた……)

八幡(とりあえず、明日までの辛抱だ)

八幡(今後も猫の俺を構いたそうではあるが……できるだけやりすごそう……)

八幡(お互いのために)

―――
――


猫八幡「……」クークー

ギシッ

雪ノ下「比企谷くん?……もう、本当に寝てしまったのね。相変わらず薄情なんだから」

雪ノ下「猫のあなたは、どんな夢を見ているのかしら」ナデナデ

猫八幡「ん……?」

雪ノ下「あ、ごめんなさい。起こしてしまったわね」

猫八幡「……ん」

雪ノ下「……こっちに来てもいいのだけれど、どう?」布団がばー

猫八幡「……」

猫八幡「……」トテトテトテ

雪ノ下「ふふ、寝ぼけてるのかしら?なんにせよ、素直で可愛らしい」

猫八幡「……」ゴロン

雪ノ下「おやすみなさい、比企谷君」ナデナデ

中断

フルバキャラは出さないと言ったな。
……あれは嘘だ。
辰の人と当主はたぶんそのうち出ると思う。
十二支はもともといなかったことにするから辰じゃなくなるけど。

◆◇◆◇◆

八幡「……朝か」

八幡(なんかやけに早起きしたな。なんか違和感があるというか、なんか素肌にちくちく当たる感じが――)

雪ノ下「……」スースー

八幡「雪ノ下……ああ、一緒に寝たんだった……あれ、なんか起き上がっただけで視線高い……」チラッ

八幡「……やべぇ」

八幡(っべーわ!マジべーやん!このままだと死ぬわ俺。アザゼルさんみたいにモザイクまみれにされちゃう)

八幡(と、とにかく、雪ノ下を起こさないようにベッドから出て、服を着なければ……)

八幡(朝起きたら裸の男が寝室にいたとか、こいつはなにをするかわからん)モソモソ

八幡「……」ソーット

ギシッ

八幡「」ビクッ

雪ノ下「……」スースー

八幡(ほっ……あれ、結構いけんじゃね?それにこいつ、イメージ的に寝起き悪そうだし。それに俺のスネークっぷりならこの程度のミッション楽勝楽――)

雪ノ下「おはよう、比企谷くん」

八幡「……おはようございます」

雪ノ下「元に戻ってしまったのね。猫のあなたの顔を見ながら、起きたかったのだけれど」

八幡「なんか……すいません」

八幡(生まれてきてすいません。だから通報だけは、通報だけは勘弁しちくり~)

雪ノ下「まあ、また猫にしてしまえばいいだけのことなのだけれど」ダキッ

猫八幡「……」ボンッ

雪ノ下「さ、朝御飯にしましょう」

猫八幡「順応早すぎだろこいつ……」

―――
――


雪ノ下「また元に戻ってしまったわね」

八幡「仕方ないだろ。変身時間は自分で操作できないし、まちまちだからな」←服は着た

雪ノ下「私も小町さんのように、比企谷くんに変身トラウマを与えるテクニックを覚えたほうが……」

雪ノ下「そのためには、通常の変身時間の把握を……いえ、まちまちと言っていたし、おそらく長年兄妹として過ごしてきたことによる勘のようなものが」ブツブツ

八幡「いいから早く飯にしようぜ」

八幡(だからお前のその明晰な頭脳を厄介なことに働かせまくらんでくれ。雪ノ下だと、マジでなんとかしそうで怖いんだよ)

雪ノ下「比企谷くん」

八幡「あ?」

雪ノ下「……」ギュッ

ボンッ

猫八幡「……せっかく服着たんだけど」

雪ノ下「どうせ用意した朝食は猫用だもの。そっちの姿のほうがいいわよ」

八幡(その後俺は、何度も何度も元に戻っては雪ノ下によって猫にされるを繰り返した)

八幡(端から見れば、裸の俺に対して何度も抱きついてくる雪ノ下という、すっぱ抜かれたらフライデー間違いなしの光景である)

八幡(しかしその結果)

雪ノ下「だいたいこつはつかめたわね」

猫八幡「こいつ、化け物か……小町でも習得に時間がかかったこれを、あっさりものにするとは」

八幡(やはり天才か……そして俺はその犠牲になったわけだ。犠牲の犠牲にな)

猫八幡「……おかげで俺は今日学校に遅刻しそうなんだが」

雪ノ下「学校までは私が連れていってあげるわ」

雪ノ下「始業までにあなたが戻れるかどうかは分からないけれど」

猫八幡「もっと後先考えてくれ」

八幡(ゲームに夢中になっちゃうと、お母さんに呼ばれても今いいとこだからーってやり続ける小学生かよ。うちは妹が呼びにくるのでゲームなんか放っていくぜ!)

雪ノ下「これからは気を付けるわ」

八幡「これからって……今後もやることはやるってことだろそれ……」

八幡(急募:金輪際雪ノ下に猫にされない方法)

また中断

◆◇◆◇◆

雪ノ下「そろそろ校門よ。改めて言うけれど、声や物音を絶対に立てないように」

猫八幡「もちろんだ。面倒事はごめんだからな」ヒソヒソ

八幡(現在登校中である。こそこそしているが、別に逃走中ではないので、ハンターに追われているわけではない)

八幡(ちなみに、キャリーバッグとかの俺の猫グッズは雪ノ下んちに置きっぱなしにしている)

八幡(学校に持っていけば絶対怪しまれるだろうし、ただでさえ雪ノ下は、二人分の鞄(俺の着替えとかも入ったやつ)を持ってるからな)

雪ノ下「校舎に入った後は、部室へ向かうから、そこで元に戻るまで――」

「おはよ、ゆきのん!」

雪ノ下「……」

猫八幡「……」

雪ノ下「おはよう、由比ヶ浜さん」ニコッ

八幡(なんて間の悪い奴……間の悪さがほんとに大事かタイミング。確かに由比ヶ浜は心を和ましてくれる奴だけど)

八幡(頼む誤魔化してくれ雪ノ下……まあアホのガハマさんなら雪ノ下にかかれば)

由比ヶ浜「うん!あの……ところでさ、さっきゆきのん、鞄に話しかけてなかった?」

八幡(誤魔化す以前の問題かよ……)

雪ノ下「ええと……その」チラッ

八幡(と、チャックの開いた鞄の中にいる俺を見る雪ノ下。その目が訴えていることを読み解くのは簡単だった)

八幡(誤魔化すよりも、言ってしまった方が早いということだろう。俺はさっと首を振った。知られたくない)

由比ヶ浜「あ!ご、ごめんね。なんか事情があるんだよね!ゆきのん、なんかなきゃそんなことしないもんね」

雪ノ下「……いえ」チラッ

八幡(雪ノ下は、一度目を反らしたものの、またすぐにこちらを見てきた。こちらを見るということは、やはりこの場を納めるのには、なんでもないだけは済まないと俺に言っているのだろう)

八幡(ただなんでもないと由比ヶ浜に言うだけならば、雪ノ下は俺をわざわざ見たりはしないはずだ)

八幡(そのまましばし見つめ合う。雪ノ下の目が訴えてきていること、そして思考の流れを予測する)

八幡(雪ノ下が考えているのは恐らく……どうするか)

由比ヶ浜「あ、そ、そういえばさ、なんで鞄二つ持ってるの!?誰の?」

八幡(疑問に次ぐ疑問。由比ヶ浜も悪い空気を流そうとしての発言だろうが……この流れはダメだな。どこかでストップさせなければ。仕方ない……俺は雪ノ下に頷いて見せた)

雪ノ下「……」コクッ

雪ノ下「実は……」ゴソッ

猫八幡「……」

由比ヶ浜「ふぇ、ね、猫?」

八幡(どもー、クロネコ八幡宅急便でーす。サインか印鑑おねしゃーす)

雪ノ下「この子は……その、昨日言っていた知り合いの猫なのだけれど、急遽一晩預かることになったの」

由比ヶ浜「え、でもこれから学校だよ?」

雪ノ下「ええ。でも、私の部屋は……日中置いておけなくて……それに、この子は大人しいから、こっそり部室で待たせても大丈夫だと……」

八幡(それは、雪ノ下にしてはなんとも歯切れの悪い返事だった。まさにしどろもどろ。苦しい言い訳だと言える。しかし)

由比ヶ浜「へー、大変だねー」

八幡(これで納得するとは、見つかったのが由比ヶ浜で助かった……ま、雪ノ下は猫のことになると抜けてるから、ってのもあるか)

由比ヶ浜「ふーん」ジー

八幡(え、なんすか。やっぱ怪しいですか。ですよねー)

由比ヶ浜「なんか、どっかで見たことある気が」ジー

八幡(うん、毎日見てるヒッキーですがなにか。まあ、いくら由比ヶ浜でもそれで目の前の猫が俺だなんて)

由比ヶ浜「ヒッキー……」

猫八幡「」ギクッ

由比ヶ浜「に目が、似てるね」

雪ノ下「え、ええ。いえ、そうかしら?そんなことを言ったらこの子に失礼よ。こんなにかわいいこの子と、可愛いげのかけらもない比企谷くんを一緒にするだなんて」

八幡(その俺を一晩可愛がったのはどこのどいつの下さんだよ……性的な意味じゃないけど)

由比ヶ浜「あはは、そうだね」

由比ヶ浜「えと、こんにちは」

猫八幡「……」プイッ

由比ヶ浜「あれれ、そっぽ向かれちゃった……」

猫八幡(お前に俺の目はもう見せん)

由比ヶ浜「やっぱり、猫が苦手な人って分かるのかな」

雪ノ下「そういうことではないと思うけれど……」

由比ヶ浜「それにしてもこの子目付き悪いねえ」

雪ノ下「そういうところもかわいいじゃない」

由比ヶ浜「そういうもんかな。猫はあたしはやっぱちょっとね……ゆきのん、この子の名前は?」

雪ノ下「名前……ええと……その」

雪ノ下「ひ、いえ、はち、じゃなくて……ま、マンジロウよ」

八幡(それいっそジョンで良かったんじゃね?)

由比ヶ浜「マンジロウちゃん……オス?」

雪ノ下「ええ」

由比ヶ浜「でも、ほんとにおとなしいね。鞄の中から全然出てこないし」

雪ノ下「内向的な子なの。内弁慶というか」

八幡(おい)

由比ヶ浜「今日ずっとこの子部室にいるの?」

雪ノ下「そう、なるかしら」

由比ヶ浜「じゃあまた後で会うね」

雪ノ下「あの、由比ヶ浜さん。私はこの子を部室に連れていかないといけないし、そろそろ時間が押しているのだけれど」

由比ヶ浜「あ、そだね。ごめんねゆきのん」

由比ヶ浜「じゃあね、マンジロウちゃん」ノシ

猫八幡「……」

雪ノ下「……」

猫八幡「……どうすんだよ。由比ヶ浜が部室に来たら、猫の俺がいなきゃならなくなったが」

雪ノ下「なんとかやり過ごしかないわね。放課後はあなたを返す約束があるからと、部を休みにするとして」

雪ノ下「お昼は同席してもらうわよ。今日も私たちは部室で食べるのだから」

八幡「面倒事が増えたな……」

雪ノ下「そうね。でも仕方がないわ。由比ヶ浜さんにも教えたくないのでしょう?」

猫八幡「……まあな」

雪ノ下「とにかく早く部室に行きましょう」

猫八幡「ああ」

中断

◆◇◆◇◆

八幡(その後、なんとか遅刻ぎりぎりで戻れたが……)

由比ヶ浜「ねえ、ヒッキーお昼部室に行かないの?」

八幡「行かない」

八幡(いや、ほんとは行くけど。それを由比ヶ浜に知られるわけにはいかない。なんとしてもな)

由比ヶ浜「えー。実は内緒なんだけどね、今部室に猫がいるんだよ」ヒソヒソ

八幡「へぇ」

八幡(知ってる。なんたってその猫俺だし)

由比ヶ浜「目付きがすっごい悪くて、でもおとなしくてね」

由比ヶ浜「あれ、ヒッキーそっくりだったかも」

八幡「ならさぞかし可愛い猫だったんだろうな。そいつコンテストにでも出せば、一番とか取れるんじゃね」

八幡(とか言って、すぐにしまったと思った。このことをこいつが雪ノ下に言ったら、小町と共謀してマジで出場されかねん。が)

由比ヶ浜「あはは、それはどうだろ。目が致命的に腐ってたし」

八幡「(;:.@益@)なんだと」

由比ヶ浜「ふぇ?」

八幡(て、いかんいかん。平常心だ。心を落ち着かせろ。クリアマインドだ。アクセルシンクロォォォ!)

由比ヶ浜「でさ、ヒッキーも見に行こうよ。そ、それでお昼も一緒に、なんて」

八幡「だから行かない」

フルバ?っての読んでない勢に補足説明ちょっと欲しいな

由比ヶ浜「むー。いいじゃん。どうせいつものとこで食べるだけで用事とかないでしょ!?」

八幡「用事ならあるっつーの。戸塚を見守るという大事な役目がな」

由比ヶ浜「別にヒッキーが見守っても意味ないでしょ……」

八幡「そんなことねえって。ない、はず……ない、かな」

八幡(そもそも俺の生きる意味ってなんだ……マックスコーヒーの売り上げに著しく協力してることか?なんだ、重要な意味があるじゃないか。マックスコーヒーの為に長生きしなきゃな)

由比ヶ浜「ね。だからいいじゃん。部室行こうよ」

八幡「とにかく行かねーから」

由比ヶ浜「はぁ、もういい。ヒッキーってばほんとけちだし」

八幡(この場合けちは全く関係なくね?)

由比ヶ浜「じゃね」

八幡「はいよ」

八幡「……さて、行ったな」

八幡(間に合え!)

>>208
草摩家というとても大きなおうちがあるのですが、
その家にはある秘密がありました
それは一族の中から、異性に抱きつかれたり体調が悪くなると、
十二支+猫の姿に変身してしまう十三人のもののけ憑きがいることです
十二支となぜ猫なのかというと、昔話の、猫だけは鼠に騙されて
神様の宴会に行けなかったという話から

―――
――


由比ヶ浜「やっはろー!ゆきのん、マンジロウ」

雪ノ下「こんにちは、由比ヶ浜さん」

猫八幡「……」

八幡(はぁはぁ、がんばった……俺超がんばった。はぁはぁ、ふひっとか言って走ったせいで、なんか周りの視線が痛かった気がするけど。俺負けないもん)

由比ヶ浜「あ、マンジロウ、ゆきのんの膝の上なんだ。ヒモもつけてないのに、ほんとに逃げないんだね」

雪ノ下「この子は私にべったりなの」

猫八幡「……」

八幡(なにそれ初耳なんですけど。え、むしろあなたが昨日から俺にべったりじゃないっすか?それともこれから人間に戻ってもべったりしていいんですかねぇ?ベトベターって感じで)

由比ヶ浜「へー。なついてるんだねー」

雪ノ下「そ、そうかしら。あ、そうだ、良かったら、由比ヶ浜さんも抱いてみる?」

八幡(いや俺が良くねえ。何考えてんだ雪ノ下)

由比ヶ浜「え、えっとそれは……あはは。ま、マンジロウちゃんも、なれてるゆきのんから離れたくないんじゃないかな?ね?」

猫八幡「……」プイッ

由比ヶ浜「うわ、そっぽ向かれたし」

雪ノ下「ごめんなさい、この子本当に愛想が悪いの」

由比ヶ浜「そだね……でも、猫ってそういうもんじゃないの?よく知らないけど」

雪ノ下「そうね。猫が愛想が悪いという話はよく聞くわね。でもそれはその子の性格にもよるの。猫でも愛想のいい子だっているし、愛想が悪くてもちゃんとこちらになついている子だっているわ」

由比ヶ浜「へー。そうなんだぁ。あたしは犬派だからなぁ」

雪ノ下「猫もいいと思うけれど」

由比ヶ浜「うーん……それにしてもほんとおとなしいね」

雪ノ下「それが取り柄なのよ。後はかわいいくらいしかないけれど」

八幡(それって、俺が猫じゃなくなったらそれこそ大人しいくらいしか取り柄ねーってことかい。まあその通りだ)

由比ヶ浜「でもほんと、こうして見てるだけなら、猫もかわいいんだよね……」

猫八幡「……」

雪ノ下「由比ヶ浜さん?」

由比ヶ浜「あ、ご、ごめ!ちょっとなんか思い出しちゃってた!」

雪ノ下「そう」

由比ヶ浜「ところでさ……やっぱりあたし、その子を見たことある気がするの」

猫八幡「」ビクッ

雪ノ下「ほ、本当に?」

由比ヶ浜「たぶん……ねえ、あたしのこと、ほんとに知らない?」

猫八幡「……」

由比ヶ浜「……」

由比ヶ浜「なんて、猫に言ってもしょうがないかー」

雪ノ下「……あの、由比ヶ浜さん、そろそろ、いいかしら」

由比ヶ浜「え?でもまだお昼休み時間あるよ?」

雪ノ下「その、この子が、知らない人があまり近くにいるとストレスを感じてしまうの。そのせいでこの子はご飯も食べられないし。申し訳ないのだけれど」

由比ヶ浜「あ、そうなんだ。ごめんね、それなのにこんなに」

雪ノ下「大丈夫よ。少しくらいなら、他人に慣らす訓練になるもの」

雪ノ下「あ、そうだ、由比ヶ浜さん。この子のことがあるから、放課後の部活は今日休みにしたいのだけれど」

由比ヶ浜「あ、うん、ヒッキーにも伝えとくね」

雪ノ下「いえ。別にそれはいいのだけれど」

由比ヶ浜「いいんだ!ヒッキー知らずに来ちゃうよ!?」

雪ノ下「どうせ開いてなかったら気にせずに帰るでしょう、彼は」

由比ヶ浜「そりゃそうだろけどさ」

八幡(全くその通りだが、せめて変更の業務連絡くらいはくれよ……もしほんとにずっと待ってたらどうすんだよ……)

由比ヶ浜「ま、いいや、ヒッキーには伝えとくし。じゃね、ゆきのん」

雪ノ下「ええ、さようなら」

猫八幡「……」

雪ノ下「……はぁ」

猫八幡「なんとか乗りきったな」

猫八幡「あとは、昼が終わる前に戻れるかどうかだ」

雪ノ下「……比企谷くん。やはり由比ヶ浜さんになら、その体質のことを話しても良かったのではないかしら」

雪ノ下「彼女は秘密を他言するようなことはしない。だから、そうすればこんな苦労も」

猫八幡「言っただろ。できるだけ他人にはばらしたくないんだよ」

猫八幡「こんな体を見て、お前みたいにすぐ順応できるやつばかりじゃない」

猫八幡「それに……」

雪ノ下「それに?」

猫八幡「なんでもない」

今日はここまで
十二支設定ありにしたら、何人かは奉仕部に遊びに来させるかもね

俺ガイルの誰かが実はそうでしたーとかでもいいかもね
イメージアニマルが丁度十二支の人も居るわけだし

―――
――


八幡(結局昼も、雪ノ下の猫まんま食うはめになっちまった……ま、とにかく後は午後の授業をやり過ごして帰るだけだ)

由比ヶ浜「ヒッキー」

八幡「おう、どうした」

由比ヶ浜「お昼食べてきたの?」

八幡「昼休みにほかになにしろってんだよ」

由比ヶ浜「や、友達と会うとか……あ、ごめん」

八幡「今の分かってて言っただろ……」

八幡「俺は飯食って時間潰してきただけだ」

由比ヶ浜「ふぅん、でも……いつものところにいかなかったんだね。さいちゃんも今日は来なかったって言ってたし」

八幡「……別にいいだろ。どこで食おうと」

由比ヶ浜「……そだね。じゃあ」

八幡「ああ」

八幡(怪しまれてるのか……?見に行ったのは偶然か?いや、最悪を考えて行動したほうがいい)

八幡(致命的なことにならないように)

出来れば俺ガイルの関係者のみで頑張って欲しいかなぁ。
フルバはアニメしか知らないので。

◆◇◆◇◆

八幡「ただいま」

雪ノ下「お邪魔します」

小町「お帰りお兄ちゃん!!」ダキッ

八幡「」ボンッ

小町「んー、一晩ぶりのこの毛ざわりー、すりすりすりすりー」

八幡(すりすりしすぎですり下ろし果汁ジュースにでもなる勢いで俺に抱きついてくる妹。これで俺が普通の人間だったら、周囲ドン引き兄妹待ったなしである)

猫八幡「おい、やめろ……」

小町「あれ?お兄ちゃんお風呂入ったの?シャンプーの匂いする」

八幡(目ざとい……いや、鼻敏いやつ……異性のお風呂の匂い指摘するとか、デリカシーがなってませんわよ小町さん!俺ならキモさのあまり相手の女子に泣かれるレベル)

雪ノ下「ちょっと毛が汚れることがあったから、お風呂に入れざるを得なかったの」

小町「あ、雪乃さんこんにちはー、兄が大変お世話になりました」

雪ノ下「いえ、こちらこそ。おかげでとても癒されたもの」

八幡(引き換えに俺が得たもの――多大なストレス……もう二度とお泊まりいかねえ。我が家サイコー)

小町「それで……例のブツは」

雪ノ下「どうぞ」

猫八幡「カメラほんとに撮ってたのかお前……」

雪ノ下「当然でしょう。私は約束は違えないわ。それで小町さん、私にも写して欲しいのだけれど」

小町「はい、もちろんOKですよ!」

八幡(明らかにそれが一番の目的じゃん……)

―――
――


小町「やぁん、お兄ちゃんかわいいぃ」

雪ノ下「気に入ってもらえたようで良かったわ」ナデナデ

猫八幡「俺の妹が猫好きすぎる……」

八幡(流石に俺のことを好きすぎるとは言わない。色々とふっ切れてしまいそうだから)

小町「いやあ、それにしても……」

小町「このビデオと写真からは、被写体への愛を感じますねー」

雪ノ下「そうかしら」

猫八幡「猫好きだからだろ……」

小町「それに二人とも、膝の上で撫でる撫でられるのが全くの自然!」

雪ノ下「これは、その」

猫八幡「昨日撫でられ続けたから癖でな」

小町「ふむふむ、雪乃さんのなでなでが癖になってしまったと」

八幡(その言い方……俺が快楽堕ちしたみたいで卑猥すぎる)

小町「二人とも、まるで本当の飼い主と飼い猫みたいですね!って、あれ」

小町「なにかが間違っている……」

猫八幡「はぁ……もう俺部屋行くわ。戻ったら着替えてくる」シュタッテテテ

雪ノ下「あ」

小町「逃げられちゃいましたね」

雪ノ下「今のはまるで、本物の猫のようだったわね」

小町「そうですねぇ」

小町「……お兄ちゃんの体質を知ったのが、雪乃さんで良かったです」

雪ノ下「そうかしら……彼は迷惑しているようだけれど……」

小町「いえいえ、あれは照れ隠しです」

小町「お兄ちゃん、楽しそうでしたよ。本当の自分を見せられて」

小町「お兄ちゃんが、友達作るのやめちゃったのも、自分の秘密を打ち明けられないからじゃないかなって、思うんです」

雪ノ下「そう」

小町「もちろん、体質のせいだけではないんですけどね。お兄ちゃん、他のトラウマもいっぱいあるから」

ここまでが前回まで書いた分ですね

>>221
そうすると、漏れなく八幡の親戚になるんですよねぇ
>>223
まあ話を動かす時に出すくらいで

雪ノ下「……その、彼のあの体質というのは、治せないものなのかしら……私は別に、あのままでもいいと思うし」

雪ノ下「異性に抱きつかれると猫になるというのは、オカルトすぎて、理解を越えているけれど」

小町「そうですね……少し説明したほうがいいかもです。雪乃さんには、お兄ちゃんのことをもっと知っておいて欲しいですし」

小町「兄のあれは、もちろんただの体質で片付くものではありません。非科学的すぎますもん」

小町「あれは……呪いです」

雪ノ下「呪い……?」

小町「うちの本家が、かなり由緒ある大きな家なんですけど。うちの一族には代々、もののけに憑かれた人が生まれるんです。お兄ちゃんみたいに」

雪ノ下「俄には信じられない話だわ……」

小町「はい、仕方ないですよ。でも、お兄ちゃんはそのせいで猫に変身する、それは事実です」

雪ノ下「そうみたいね」

小町「もののけ憑かれた人は、異性に抱きつかれたり、後は体調を崩したりすると、その憑いているもののけに変身してしまうんです。お兄ちゃんの場合は、それが猫のもののけで」

雪ノ下「……比企谷くんの場合は、ということは……もしかして、ほかにも?」

小町「はい。十二支って、分かりますよね。お兄ちゃんの猫以外にも、その十二のもののけに憑かれた人たちがいます」

小町「まあ、お兄ちゃんは本家でもぼっちだったので、その人たちあまり交遊はないんですけど(……それに、お兄ちゃんは猫だから)ボソッ」

雪ノ下「それはなんとも……信じがたいとしか言い様のない話ね……」

雪ノ下「でも、彼が猫に変身するのは覆すことのできない事実だし……小町さんがそんな嘘を言うわけないものね」

雪ノ下「じゃあ、その呪いというものを、解く方法はないのかしら」

小町「ない、と言われています。それに、本家の人たちには、呪いを解くつもりはないみたいですから」

雪ノ下「そう……」

小町「……雪乃さん。十三のもののけの中でも猫憑きは特殊なんです」

雪ノ下「確かに、他が十二支なのに、もう一人が猫というのは、おとぎ話のようで仲間はずれな感じがするわね」

小町「はい。お兄ちゃんは、その猫だから、見方もあまりいなくて……」

小町「だから、雪乃さんにお兄ちゃんを助けてあげて欲しいんです。お願いします!」

雪ノ下「……分かったわ。その依頼、受けましょう」

小町「雪乃さん……!」

 
 
 
八幡(……助ける、か。そんなこと、できるわけないけどな)

◆◇◆◇◆

雪ノ下「じゃあ、小町さん、比企谷さん。名残惜しいけれど」

猫八幡「お前が惜しんでんのは俺の毛触りだろ」

小町「なんなら今日も連れてっちゃいますか?むしろ今日だけと言わず、このままずっと」

猫八幡「おい、兄を売ろうとしてんじゃない」

小町「やだなあお兄ちゃん、人聞きが悪いよ!売るんじゃなくて、譲るだよ。お金貰わないもん」

猫八幡「どっちにしろ渡す気まんまんかよ」

雪ノ下「そうね。それはとても胸踊る提案だけれど」

雪ノ下「流石にこれ以上構いすぎたら、比企谷くんがはげてしまいそうだし、遠慮するわ」

猫八幡「禿げるってのはそのくらい疲れるって意味だからな。マジで禿げないから。俺の毛根の強さなめんなよ」

小町「あ、でもお兄ちゃん、ここに十円ハゲが」

猫八幡「なんだと。おい雪ノ下、この謝罪と賠償は高くつくぞ」

小町「嘘だってお兄ちゃん……いきなり謝罪と賠償とか、ドン引きだよ……」

猫八幡「結構マジで焦ったからそういう嘘やめろよ……」

比企谷さんになってた……くんで

雪ノ下「さて、じゃあそろそろ」

猫八幡「おう」

小町「お気をつけてー」

猫八幡「……」

小町「……良かったね、お兄ちゃん。これで」

猫八幡「これで、か。このこと、本家に……アキトに言わないつもりか」

小町「お兄ちゃんは、言ってほしいの?」

猫八幡「……すぐばれそうな気がするし、言っておいたほうがいいだろ」

小町「だいじょぶだよ。ばれたって、その時は小町が」

猫八幡「それだけはやめろ」

猫八幡「まあ、知ったのは雪ノ下一人だし、なんとかなるかもな」

小町「お兄ちゃん……もしかしてほんとに雪乃さんと」

猫八幡「もしかしてってなんだよ。ないない」

猫八幡(ま、卒業するまで、猫ごっこするのも、悪くないって思っただけだ)

中断
第一話完

雪ノ下「十二支のおとぎ話」

雪ノ下「神様に新年の挨拶に行った十二の獣」

雪ノ下「本当は猫も行くはずだったのに、鼠に嘘をつかれて、一日過ぎてしまった為に、十二支に入れなかった……と」

雪ノ下「確かに、この仲間はずれっぷりは比企谷くんらしいと言えばそうかもしれないわね」

雪ノ下「それにしてもこの鼠、猫を騙すなんてなんて卑怯なのかしら……」

雪ノ下「……ふぅ。これはあくまでもおとぎ話。十二支に選ばれた動物に意味はないし、その逸話も後世の創作。海外では猫が十二支になっている国もあるし」

雪ノ下「では、比企谷くんの家の呪いとは、いったい……」

雪ノ下「あと……猫だから、味方もいないというのは、どういう意味かしら」

◆◇◆◇◆

雪ノ下「比企谷くん」

八幡「なんだよ」

八幡(今、この奉仕部の部室にいるのは雪ノ下と俺だけだ。由比ヶ浜は遅れている。俺と雪ノ下はいつものように本を読んでいたところだった)

雪ノ下「今日も、あなたの家に伺っても大丈夫かしら」

八幡「お前、また来んのかよ……正直大丈夫じゃない。俺のストレス値が」

八幡(またずっと猫にされて延々だっことかされたら、ストレスで毛むしって毛玉吐くぞ)

雪ノ下「あら、聞き方が悪かったようね。あなたの家に伺いたいのだけれど、小町さんの予定は大丈夫かしら」

八幡「俺の予定を聞かないってことは、俺は同席しなくてもいいんだよな」

雪ノ下「あなたに予定なんてないでしょう。当然同席しなさい」

八幡(なんという理不尽。二択のはずの答えの一方を当然と言い切るとか、どこの斎王琢磨だよ)

八幡「わかった。百歩譲って同席はしよう。だが、猫の姿はな」

ガラッ

由比ヶ浜「やっはろー!」

雪ノ下「こんにちは由比ヶ浜さん」

八幡「おう」

由比ヶ浜「あ、ごめんね。なんか話してたのに、邪魔しちゃった?」

雪ノ下「そんなことないわ。この男と話すことなんて、全く価値のないことだもの」

八幡「こっちこそ、話すだけ時間が惜しいってもんだ」

八幡(タイムイズマネー。時は金なりってポケモンでも教えてくれたしな。でもそのポケモンが厳選とかで一番時間食ったりするんだけど)

由比ヶ浜「そう?猫がどうとか聞こえたような」チラッ

八幡「雪ノ下が猫の話に夢中になんのはよくあることだ。気にすんな」

雪ノ下「そ、そこまで言うほどではないでしょう」

八幡「本気で自覚ないとしたら相当だぞ」

由比ヶ浜「あはは、そうだねー」

八幡(由比ヶ浜は、猫のときに一瞬こちらの様子を伺うように見てきたが、その話はそのままうやむやになり)

八幡(部活の時間はすぐに過ぎ去っていった)

中断

◆◇◆◇◆

小町「和みますねぇ」

雪ノ下「そうね」ナデナデ

猫八幡「お前らのその平和が俺の犠牲の上に成り立っているということ、忘れんなよ」

小町「うんうん、忘れてないよ。だってそんなこと言いながら好きに撫でさせてくれるお兄ちゃんが大好きだもん!あ、今の小町的にポイント高い!」

雪ノ下「そうね。その上これからも犠牲になり続けてくれるんだもの、頭が上がらないわ」ナデナデ

猫八幡「どこの聖人だそれは。俺はそんなの背負うつもりはないぞ」

雪ノ下「それは取引を反故にするということかしら。ならペナルティがあるのだけれど」

猫八幡「どんなだよ」

八幡(もしかして雪ノ下って千年パズルの所有者なの?ゲームに負けて廃人とかペナルティ重すぎだろ)

雪ノ下「私が望んだらあなたは私の抱っこを拒絶してはいけない、なんてどうかしら」

猫八幡「結局同じじゃねえかそれ。そんなペナルティ誰が受けるかよ」

雪ノ下「そうしたら更にペナルティを課すことになるでしょうね。延々と」

八幡(なにそれ。ループって怖い。くそ、なんとしてもシュタインズ・ゲートに俺はたどり着いてみせる!)

雪ノ下「……あなた、せっかく猫になれるのだから、少しはそれを満喫しようとか思わないのかしら」

猫八幡「お前がいなかったら満喫しまくってるよ」

八幡(それはもう、ホームの漫喫に行ったとき並みにくつろいでごろごろするわ)

雪ノ下「じゃあ、その体質が治そうと思ったことはないの?」

猫八幡「……」

猫八幡「治るもんなら、治ってほしいと思ってるけどな。お前に好き放題されてる今とかまさに」

猫八幡「でも、無理だろ。聞いたろ。これは呪いだって。ずっと昔から、続いてきた呪いだ」

猫八幡「一度もののけ憑きとして生まれたやつは、死ぬまでもののけ憑きのまま。呪いが解けた前例なんてない」

小町「諦めちゃダメだよ、お兄ちゃん……だってお兄ちゃん、このままじゃ」

猫八幡「関係ない。俺は別にそれでもいいって思ってるしな」

雪ノ下「このままじゃ、なに?小町さんは猫憑きのあなたは特殊だとも言っていたわ。それってどういうことなの」

猫八幡「これ以上知りたいなら、うちの当主にOK貰うことだ。一族の秘密ってやつで、勝手に教えていいもんじゃないんで」

猫八幡「だがそんなことになれば、お前は俺のことなんて忘れることになるだろうけど」

雪ノ下「忘れる?」

猫八幡「あとは小町に聞いてくれ。今日のサービスタイムは終わりだ」シュッ

雪ノ下「あ」

小町「お兄ちゃん……」

雪ノ下「……小町さん、さっきの彼が言っていた忘れるとは、どういう意味なのかしら」

小町「……うちの秘密を守るために、記憶を消す術があるんです。いんぺー術って言って。催眠術みたいなものらしいんですけど……」

雪ノ下「呪いの次は催眠術……つくづくオカルトね。それで、それは実際に効果があるものなの?」

小町「はい……あります。実際に見たこともあって……」

雪ノ下「そう」

雪ノ下「本当にすごいお家なのね。あなたたちの本家って。でも、比企谷なんて大きな家、聞いたことがないのだけれど」

小町「あ、本家っていっても、お父さんのほうの実家ではないんです。呪いがかかってるのは、お母さんのほうの実家で」

小町「草摩って、言います」

―――
――


雪ノ下(草摩……確かに聞いたことがあるわ。古く、大きな家だと。まさか、比企谷くんの実家だったとは知らなかったけれど)

雪ノ下(小町さんは、彼の呪いを解きたいようだった。どんな事情があるかは分からないけれど、猫憑きであることによって、彼に何か不利益があるのでしょうね)

雪ノ下(しかし、呪いとなると、どうしたらいいものかしら。彼が言うように、そんな昔から続いていて、誰も抜け出せないのだから、方法の手がかりもないということなのでしょうね)

雪ノ下(……正直に言えば、彼の猫姿が見れなくなるのは、とても残念だけれど、依頼を受けたのだし、なんとかしなくては)

雪ノ下(問題は、彼が呪いを解くことを完全に諦めている様子だということかしら。そして、その呪いにまつわる何かの理由で、人を遠ざけている)

 
 
小町『呪いとか、そんなのは気にしないで、お兄ちゃんと仲良くしてほしいんです』


小町『詳しく言えないですけど、お兄ちゃんには約束があって』

小町『お兄ちゃんが誰か。草摩と関係ない誰かと本物の絆を築くことができたら、お兄ちゃんの未来を変えられるかもしれないんです』

小町『だから……お願いします、雪乃さん』

 
 
雪ノ下(本物の、絆……)


雪ノ下(そんなもの……私に……)

中断
これからどういちゃいちゃさせたいとか合ったら
言ってくれると助かります
ネタ的に

フルバ原作は透の過去や価値観があってはじめて歯車が噛み合う構成なんだし、無理に絡めると破綻しそうだな

>>251
そこが悩みどころですね

八幡(なんとなく昨晩から前兆は感じていた)

八幡(しかしかといって、その時点で出来ることなんてできるだけ早く寝るくらいしか無く)

八幡(結果を変えるまでにはいかなかった。つまり)

小町「……お兄ちゃん、具合悪いの?」

八幡「別に悪かねえよ」

八幡(実際はダルかった。熱っぽい気もする。風邪一歩手前というところだろうか)

八幡(普段、ボッチゆえに誰の手助けも貰えない為、遅刻はしても早々休めない俺は、健康管理にはやたら気を使っている)

八幡(あとはまあ、俺が体調悪いと小町が心配しすぎて、自分まで体調悪くなる勢いで看病しようとするというのもある)

八幡(その俺がどうしてこんな状況になっているかというと、はっきり言えば、雪ノ下のせいと言えるだろう)

八幡(ここ数日の、小さな体にされいじくりまわされた疲れがきたんだと思われる)

八幡「ま、ちょっと最近色々あったから疲れてるだけだ。休むほどじゃない」

八幡(俺は風邪なんかで休めない。休めば、小町も休んで看病すると言い張るだろう)

八幡(もののけ憑きは、体調を崩すと変身してまうことがあるから。小町はそれが心配らしい)

八幡(小町は受験を控えてる。俺の看病に時間を使わせるわけにはいかない)

八幡(まあそれに、まだ体調悪いかな?って程度だしな)

小町「でも、今日はこの後雨降るらしいよ?」

八幡(マジかよ……天は我を見放したか。もともと俺なんて見てもいないようだが。むしろ目の敵にされているまである)

八幡(猫憑きだけの特徴に、雨が苦手というのがある。どうやら、憑いている猫のもののけが苦手だかららしい)

八幡(まったく、そんなもん押し付けないで欲しいわ。具合さえ悪くならなければ、インドアの俺は雨の日は好きになれそうだっていうのに。ただし出掛ける用事がある日は除く)

小町「やっぱり、休んだ方がいいよ。体調悪くて雨なんて、お兄ちゃんダメダメにしかならないじゃん」

八幡(雨の日ダメダメってどこの無能大佐ですか。あの指パッチン、昔練習しまくったなあ)

八幡「だいじょぶだって。俺は学校行くし、お前も休む必要ない」

小町「むむむ……でもさ――あっ」

八幡「あ?」

小町「そうだ!お兄ちゃん、学校行ってもいいよ!でも、小町がいいって言うまで行っちゃダメだからね!」

八幡「それお前がいいって言わなかったら休めってことじゃね」

小町「学校は行ってもいいって言ってるじゃん。どうせ、お兄ちゃん休んだらノート取ってくれる人いないっぽいし、休んじゃダメでしょ」

八幡「お、おう。そう言われるとむしろ急にすっげえ休みたくなってきたわ。つうか俺には戸塚という」

小町「少し静かにしてて。小町電話するから」

八幡「はい……」

八幡(電話?嫌な予感がする……おかげで体調の悪さが加速していく気がした)

―――
――


雪ノ下「おはようございます。お待たせしてごめんなさい」

小町「おはようございます!いえいえー。すいませんわざわざうちまで迎えに来ていただいて」

八幡「やっぱりかよ……おはよう」

雪ノ下「比企谷くん、どうしたの?今日は一段と目が腐っていて、今にも崩れ落ちそうだけれど」

八幡「お前の顔を見たせいだよ……」

八幡(はっきり言って、猫がばれてからの言動のせいで、ちょっと雪ノ下に苦手意識が出来てきている。や、もとから苦手意識はありまくりだっけども)

八幡(前は端から見ていたので、こいつの真剣すぎる猫好きもほほえましい程度に感じられていたが)

八幡(今や驚異である。胸囲はないけど)

雪ノ下「そういう言い方はないでしょう。私はあなたが大変だからと言われて、心配して来てあげたのだけれど」

八幡「そいつはどうもすいませんせねえ。ご足労感謝してますよ」

雪ノ下「まったく」

小町「あの、それで体調悪いお兄ちゃんのことを、今日一日雪乃さんにお願いしたいんですが」

雪ノ下「それは構わないけれど、休めばいいことではないのかしら」

小町「それがお兄ちゃん、どうしても学校行くって聞かなくて」

雪ノ下「へぇ、意外ね。むしろ理由がなくてもひきこもっているほうが好きなのかと思っていたけれど」

八幡「そりゃ好きだけどな。好きなことだけやってらんねえだろ」

雪ノ下「あなた、いつも好き放題してるでしょ」

八幡「だから」チラッ

八幡(と、さりげなく小町を見る。雪ノ下はそれだけで事情をなんとなく察したようだ。この間から、なんかこいつとアイコンタクトだけで会話できていて怖い。ナイスカップリングだったりするのか)

雪ノ下「分かったわ。彼の面倒は任せてちょうだい。それで、私を呼んだということは、何か注意することがあるということで間違いないかしら」

小町「あ、はい。この間も言いましたが、もののけ憑きは、体調が悪くなると変身してしまう恐れがあるんです」

雪ノ下「……」コク

小町「あと、これは猫憑きだけなんですが、雨の日は体調が悪くなるらしくて……」

雪ノ下「そうなの?」

八幡「……ああ」

小町「最悪、いきなり変身する可能性もあるので……もし大勢の前でそれを見られたりしたら、お兄ちゃん……」

 
 
『分かってるだろうけど、猫憑きのお前なんて、問題を起こしたら、即……』

 
 
八幡「……」


雪ノ下「小町さん、安心して。そんなことにはならないわ。私がついているもの」

小町「はい、お願いします……!」

中断

ただの体質で呪いとかじゃなかったら、
同じ体質だったーで済ませられるんですけどね
今から設定変更するとしたら、
実はるみるみが草摩の血筋だったとかにして
虎の子にしちゃうとか?

ちょうど虎の子と同じようにいじめられてて年も近いし

まあストーリーとして完結させたいのか
鼻血をボタボタ流しながら八幡を猫可愛がりするゆきのんを書きたいのか
やりたいことやればいいと思うよ

雪ノ下「さて。では比企谷くん」

八幡「おう、行く――」

ダキッ

八幡「は」

ボンッ

雪ノ下「さ、行きましょうか」ヒョイッ

猫八幡「……おい」

雪ノ下「なにかしら。あら、ありがとう小町さん。比企谷くんの荷物を拾わせてごめんなさい」

小町「いえいえ、お兄ちゃんのことをお願いするわけですし、妹なんですからこのくらい小町の仕事ですよー。あ、今の小町的にポイント高い!」

猫八幡「聞けよ」

雪ノ下「聞いているわ」

小町「ていうか、小町はもう行くよお兄ちゃん。じゃ、雪乃さんお願いしまーす」

猫八幡「え、おう、行ってこい」

雪ノ下「行ってらっしゃい小町さん」

猫八幡「で、俺は別に人間のまま登校しても問題ないんだけど」

雪ノ下「あなた、そんなことでよく今までその体質を隠し通せていたものね。それとも脳みそまで風邪にやられたのではないかしら」

猫八幡「やられてねえよ。怖いこと言うな。びびるだろ」

雪ノ下「そうね。ごめんなさい。あなたが迂闊なのは元々だったわ」

猫八幡「あっそう。でも別にわざわざ猫にならなくても」

雪ノ下「これから私たちは電車とバスを乗り継いで行くのよ。登校時は人も多いわ」

雪ノ下「あなた、そんな中で気分が好転するような人間だったかしら。人混みの嫌いな引きこもりのあなたが」

猫八幡「うっ」

雪ノ下「どうせあなたがそのうち猫になるのなら、先に猫になっておけば猫に変身する姿を見られることもないと言うことよ。分かったかしら」

猫八幡「そうだけど……つまりまたお前に抱っこされて行くってわけだろ……」

雪ノ下「……嫌なの?」

訂正
猫八幡「あっそ……もうそれでいいわ……でも別にわざわざ猫にならなくても」

猫八幡「嫌というかな」

八幡(秘技、答えづらい質問には質問で返す攻撃)

猫八幡「お前こそ気にならんのか。いくら猫になっていても、俺をそんなしょっちゅう抱っこして」

雪ノ下「私は別に、気にしないわ。あなたは今、猫なのだし……(それに、あなたなのだから)ボソッ」

猫八幡「ま、お前がいいなら俺も気にしないから……もういいからとにかく頼むわ」

八幡(噛み合わない会話への徒労感がよりいっそう体調の悪化を招く気がして、俺は問答を切り上げ、雪ノ下の腕の中で力を抜いて体を任せた)

雪ノ下「ええ。あなたは体調が悪いのなら寝ていてもいいわよ」

猫八幡「悪い」

八幡(そのまま出発し、俺はまたいつのまにか、雪ノ下の心地よい腕の中で安らかな眠りへと落ちていった。その一瞬前に)

雪ノ下「……好きでやっていることだから、気にしないで」

八幡(というような声が聞こえた気がしたが、夢への誘いを振りほどくことはできなかった)

―――
――

雪ノ下「比企谷くん、部室についたわよ」ユサユサ

猫八幡「ん……おう……」ムクリ

猫八幡「んー」クアー

猫八幡「もうついたのか」カオゴシゴシ

ギュッ

猫八幡「……いきなりなにすんだよ」

雪ノ下「いえ、ごめんなさい。つい」

猫八幡「早く人間に戻らなきゃならないんだから、抱っこはやめろよ」

雪ノ下「それは、分かっていたのだけれど……なんだか、由比ヶ浜さんの気持ちが分かった気がするわ」

猫八幡「そうかよ」

八幡(どうやら今の抱きつきは本当に無意識だったらしく、少し恥じらうように雪ノ下は朱の差した顔を俺から背けた)

八幡(やべ、ちょっとかわいい。いつもそんな感じならいいのになと思いました。やっぱ大事なのは恥じらいだよな。パンチラよりも見えそうで見えないだ)

雪ノ下「ああそうそう。その由比ヶ浜さんにはもう連絡したのだけれど、今日の放課後は部活を休みにしたわ」

猫八幡「そうか。悪い」

八幡(思えば、こいつは猫の俺が気に入っているからやってるのだろうが、かなり迷惑をかけている。素直に謝ってみた)

雪ノ下「なら、早く良くなることね」ニコッ

八幡(その笑顔は本当に優しげで、俺もなんだかどぎまぎしてしまった。うん、またも猫の時で良かった。毛のおかげで表情の違いが出ないし)

雪ノ下「あと、今日はお昼も私が用事があるということにして由比ヶ浜さんとのお昼は断ったから、昼休みはあなたが部室に来るように」

猫八幡「なんで」

八幡(それは純粋な疑問だったが)

雪ノ下「あなたが猫になることを気にせずにゆっくりできる場所なんて、この学校では私と二人きりのこの部室しかないでしょう?」

八幡(そうまで言われては、俺に断る余地など無かった)

中断

>>266
猫八幡を可愛がりつつ、八幡の心の傷を癒して傷なを深め
ストーリーはその合間に適当に進めていく
というちょっと欲張りな感じだが

◆◇◆◇◆

八幡(午前中の授業はほぼ寝て過ごした。というか死んでた。端から調べたら、ただのしかばねのようだと表示されたに違いない)

八幡(というか今も死んでいる。俺はもう死んでいる。ひでぶ)

八幡(起き上がる気になれない。机ちべたい。気持ちいい。熱は上がっているようだ。でもこのまま死んでるのも悪くなさそう。食欲は全くないし)

八幡(この俺がこんなに死にかけているのもすべては、今降り続けている雨のせいであろう)

八幡(雨は始業後少しして降り始め、今がまさに絶好調という具合で地面を叩き続けている。これで叩いているのが楽器ならば、観客は熱狂の最中に違いない)

八幡(しかし雨のすごいところは、ライブで楽器など叩かなくても人々の関心を集められるところだろう)

八幡(教室は雨のためにいつもの昼休みよりも生徒の数が多く、今だ弱まる気配のない雨の話題が彼ら彼女らの流行の最先端だ)

八幡(普段は降れば天気が悪いだの、洗濯物の敵などとネガキャンを受けているというのに、一度降り始めればこの調子)

八幡(いや、降らなくても雨の話題には事欠かない。雨がその姿を見せなければ水不足だなんだと囁かれて戦々恐々とし)

八幡(逆に降り続けてもテレビは雨のニュースで一色だ。テレビ東京を除いて)

八幡(終いには降り続ける雨として聖書にまで登場する始末。雨の人気っぷりには俺でも頭が下がる)

八幡(等と、具合が悪いというのに頭だけはぐるぐると益体もない思考を巡らせ、毒のバッドステータスのように俺の気分を悪くする)

八幡(はぁ、雨うぜえ。所詮俺のようなぼっちは雨のような人気者には勝てないのか。敗北者として俺にできることはなんだろう)

八幡(ふて寝だな。うん。このまま寝てしまおうか……と思う俺に第六感、セブンセンシズが危険を訴えてきた。六とか七とかどっちなんだよ)

八幡(このまま寝て、またぞろいつ気が抜けて変身するとも限らない。移動すべき、とのこと。正論だ。さすが俺の第八幡超直感。もはや意味がわからん)

八幡(部室、行くか……)ムクリ

八幡(変身もそうだが、行かないと雪ノ下がうるさそうだしな)

「あ……ごめん、あたしちょっと飲み物買ってくる!!」

八幡(ぺたしぺたし。足を動かすという作業さえひどく億劫だ。これなら腕で木々を伝ってたほうが楽じゃね?という気もする。わざわざ地べたを歩くとか、なぜそんな進化をしたご先祖様よ)

八幡(もしくは念動力でも武空術でもいいから空を飛ぶ方向に進化すべき。フリーザ様のあの椅子みたいのが今超欲しい)

「ヒッキー!」

八幡(無視。圧倒的無視。こういう体調の時に聞こえてくる声は百パー幻聴。幻聴と会話するとあの世に連れていかれるらしいので、信心深い俺は無視一択)

八幡(だいたい、体調悪くてこんだけ近寄るなオーラ出してて、しかもきっといつも以上に目が腐ってるであろう(見えないけど)俺に声をかけるやつなんて)

由比ヶ浜「ヒッキー!だいじょぶ!?死にそうだよ!?」

八幡(いたわ……)

八幡「あー……いや、なんでもない。ちょっと用があるんだ」

由比ヶ浜「その顔でなんでもないわけないじゃん!朝から調子悪そうだったけど……保健室行くの!?なら付き添うから!」

八幡「ほんとに大丈夫だ。俺は飯食いに行くだけだから」

由比ヶ浜「……外、雨なのに?」

八幡「あー、そうだな。でも、屋内でいい場所見つけたんだよ」

八幡「教室は今日は人多いしな。静かなところで食べたいんだ」

由比ヶ浜「でも……」

八幡「いいから。お前は今日、教室で食うんだろ。じゃあな」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

 
 
由比ヶ浜「……今日、部室行かないって、知ってた……?」

――


八幡「……」ガラッ

八幡(扉を開けるという行為にさえ、ひどく体力を消耗した気がする。もはや視界がぐにゃぐにゃと踊っていた)

雪ノ下「遅かったわね」

八幡(いつもの席に鎮座した、責めるように言ってくる雪ノ下を視認)

八幡(そこで……俺の意識は途絶えた)

ボンッ

―――
――


『大丈夫。私が、お母さんが守ってあげるから……』

『外に出てはダメ。かわいいあなたの姿を、お母さん、独り占めしたいの』

『また子供なんて……!もしまた……』

『良かった……無事に、普通に生まれてきてくれて……』

『やめて!小町に近づかないで!!』

『いや……どうして、こんな子が……』

『化け物……!』

『奥さんはもう限界でしょう。いっそ、記憶を』

『八幡……お母さんな……もう』

『すまない……本当に』

『おにいちゃん……いなくなっちゃうの?』

『いや!おにいちゃんも家族だもん!お兄ちゃんがいなくなるなんて……そんなの!』

『では、幼少期の彼との記憶だけを消すという方法も』

『ただ、そうなれば今後、彼は母親に抱きつかれることも、体調を崩して看病してもらうこともできないということになりますが』

『それで……いいよ。家族一緒に暮らせるなら、それで』

―――
――


八幡(暖かい……なんだ……これは。懐かしい……?)

八幡(ずっと、ずっと昔、こうして……)

八幡(ずっと……ずっと、これが……俺は……これが……欲しくて……)

八幡(欲しくて……)ボヤー

雪ノ下「……」ナデナデ

八幡(雪ノ下……)

八幡(膝の上、か。ずっと俺を撫でてくれてたのか……)

中断

八幡の母ちゃん、割り食ってすいません

訂正

『ただ、そうなれば今後、彼は母親に抱きしめてもらうことも、体調を崩して看病してもらうこともできないということになりますが』

う、もう一回訂正
『ただ、それでも今後彼は、母親に抱きしめてもらうことも、体調を崩して看病してもらうこともできません。一緒に暮らしてもむしろ、彼が辛く――』

ゆきのんとのただの猫いちゃを期待してた人はごめんなさい
鬱な感じも入っていくと思います

人の反応を気にして展開を変えると、その変えた展開が気に入らない奴が暴れだして荒れるってばっちゃが言ってた

好きなように書いて完結させてくれ

八幡「雪ノ下……」

雪ノ下「あら、ようやく起きたのね。ねぼすけ谷くん」

八幡「わり、ずっと俺のこと見ててくれたんだろ」

雪ノ下「私は別に……小町さんから頼まれたからよ」

八幡「分かってる。それでも、助かった」

雪ノ下「……あなたがそんな風に素直にしていると、このまま大雪にでもなりそうね」

八幡「俺は礼を言うこともできんのか……」

雪ノ下「ところで、そろそろ気がついて欲しいのだけれど」フイッ

八幡「は……?」

八幡「……げ」

八幡(雪ノ下に言われた意味が分からず、とりあえず辺りの様子を探ると、彼女の言っていることはすぐに理解した。というか、なぜすぐに気がつかなかった俺……)

八幡「なんで俺は裸で寝てんだ……」

八幡(正確には、裸の上に俺の脱げた制服が被せてあるだけである。そんな俺を、雪ノ下は膝枕していた)

八幡(もちろん体の下には何か引いてあるわけでもない。すーすーするわけだ。体温が移ったせいか、床はそんなに冷たく感じないけど)

雪ノ下「あなた、部室に来てすぐに変身して気を失ったのよ。最初は猫の姿だったから、膝の上に乗せていたのだけれど……」

八幡「そうか……」

八幡(そこまで体調が悪くなっていたとは。あのまま教室にいたら、まずいことになっていただろう。やばかった)

雪ノ下「まったく、妙なものを見せないで欲しいわね。裸のあなたの頭を放り出さなかった私の自制心に感謝して欲しいのだけれど」

八幡「てことは見たのか……」

雪ノ下「み、見ていないわ!すぐに視線を反らしたに決まっているでしょう!」

八幡(それなら良かった。猫のときだけならいざ知らず、人間の時のまで見られたとあっては、本気で婿入りするしかない。もしくは死の接吻の後、相手を殺す)

八幡「……ところで、今何時なんだ。昼は」

雪ノ下「お昼休みはもうすぐ終わりよ。早く着替えて食事したほうがいいと思うけれど」

八幡「食欲、ねえな。とりあえず着替えるわ。時間ないんなら、雪ノ下は教室に」

雪ノ下「病人のあなたを放っていけるわけがないでしょう。それに食欲がないというのはまずいわね」

雪ノ下「またいつ猫になってしまうかわからないし……そうね、早退しましょう」

八幡「そうだな……そのほうがいいかもしれん」

八幡(とはいったものの、もはや俺自身の頭はふらふらしすぎて考えるのが面倒になっていた。要は丸投げだ。雪ノ下がそう言うんなら正しいのだろう。今の俺の中ではな)

雪ノ下「では私はあなたが早退する事を平塚先生に伝えてくるから、ここで待っていて」

雪ノ下「荷物を取りに教室に行くのもダメよ。また猫に戻る姿を、見られたくないのならね」

八幡「わかった……」

―――
――


八幡(それからどのくらい経ったか。ぼーっとした俺の頭では、時間の感覚も曖昧になっていたが、数十分ほどで雪ノ下は戻ってきた)

八幡(しかもどうやら俺の教室にも寄って荷物を取ってきてくれたらしい。俺の鞄を持っている。だが、妙なことにその手には、鞄がもう一つあった)

雪ノ下「さ、行きましょうか」ダキッ

ボンッ

猫八幡「……お前、わざわざ送っていってくれんのか。早退してまで」

雪ノ下「当たり前でしょう。今のあなたを放っておけないもの」ヒョイッ

八幡(何を当然という風に雪ノ下が言い放つ。最早俺も、彼女に逆らう気は無くなっていた)

◆◇◆◇◆

由比ヶ浜(ヒッキー……まだ戻ってこないし)

由比ヶ浜(やっぱり、保健室に行ったのかな。調子、すごく悪そうだったし……)

由比ヶ浜(それなのにどうしてあたし、あのままヒッキーを行かせたんだろう……いい場所見つけたって言ってたけど、それってつまり……一人になれるとこってことだよね?)

由比ヶ浜(……もしかして、一人で倒れて、誰にも)ガタッ

三浦「あれ、結衣どうしたん。もう昼終わるよ?」

由比ヶ浜「あ、うん、ちょっと!」

由比ヶ浜(ぞっとして立ち上がったあたしは、返事もそこそこに教室から出ようとして)

「きゃ」

由比ヶ浜「わっ」

「ご、ごめんなさい」

由比ヶ浜「こっちこそごめん――って、ゆきのん!?」

由比ヶ浜(そう。あたしがぶつかりそうになった相手は、ゆきのんだった)

雪ノ下「由比ヶ浜さん。こんにちは」

由比ヶ浜「う、うん、やっはろー!じゃないや!そうだ、ゆきのん!ヒッキーのこと知らない!?ヒッキー、調子が」

雪ノ下「ちょうど良かったわ。その、比企谷くんのことなのだけれど」

由比ヶ浜「え……ヒッキー、なんかあったの?」

雪ノ下「ええ。体調が悪いみたいで、彼が早退することを平塚先生に今伝えてきたの」

由比ヶ浜「ええ!?やっぱり、調子悪かったんだ……」

雪ノ下「気づいていたのね」

由比ヶ浜「ヒッキー、朝からそんな感じだったんだ。あたし、気づいてたのに……」

雪ノ下「調子が悪いことは、誰よりも彼が気づいていたでしょう。それを言わなかった彼の落ち度よ」

由比ヶ浜「でも……!」

雪ノ下「それよりも由比ヶ浜さん。彼の荷物を持っていきたいのだけれど」

由比ヶ浜「あ、うん!こっち」

 
 
 
雪ノ下「これだけ、ね。じゃあ私は」


由比ヶ浜「ゆきのん!あたしも行く!」

雪ノ下「由比ヶ浜さん?」

由比ヶ浜「なんだったら、あたしも早退して」

由比ヶ浜(ヒッキー送っていく。そう、言うつもりだったのに)

雪ノ下「それには及ばないわ。彼なら大丈夫」

由比ヶ浜「……どう、して」

雪ノ下「私が彼を送っていくことになったの。もう、私が早退するということも言ってしまったし、由比ヶ浜さんまで来ることはないの」

由比ヶ浜「でも」

雪ノ下「由比ヶ浜さん。私はたまたま彼が具合が悪そうにしていたところに居合わせたから、そういう流れになってしまったのだけれど」

雪ノ下「彼自身は一人で行けると言い張っているし、彼は人に迷惑をかけるのを嫌がっているわ。だから、あなたまで来たら、彼が――」

由比ヶ浜(口では、あたしに分かりやすく説明してるようだったけど、そこからはっきりゆきのんの意思をあたしを感じた)

由比ヶ浜(拒絶。来てほしくない。ゆきのんはそう思ってる。どんな事情があるかまでは、分からなかったけど)

由比ヶ浜「そっか……うん、そだね。分かった。ヒッキーに、よろしく言っといて……ゆきのん」

雪ノ下「ええ」

由比ヶ浜(ゆきのんは、すぐに振り替えると、足早に去っていった。その向かう先が、なんとなく思い付いた。勘だけど)

由比ヶ浜(もしかして……部室?に行くの……?)

由比ヶ浜(具合が悪いなら、保健室に行くよね。それで早退するなら、そこで待ってるはずだし)

由比ヶ浜(保健室じゃないなら、具合が悪くなったところで待ってる、よね。それが、部室……?)

由比ヶ浜(分からないことだらけ。最近の二人の行動はなんかおかしい。その理由が、あたしには心当たりがあった)

中断
ガハマさんも関わっていくよ

>>291-292
私の場合、インスピレーションを得たいのと
話の流れがこれでいいのか?というのを他人に認められたい
承認欲求からどうでしょうと聞きすぎるところがありますね
気を付けます

それは俺も書いてて思ったんだけど
まあ思ってることは推理したわけじゃなくてほとんど勘なので
あと、心の中を書くと頭良さげに見える気がする

◆◇◆◇◆

八幡(ベッドの上で目が覚めた。辺りを見回して、そこがちゃんと自分の部屋だと知る。雪ノ下は俺を部屋まで送り届けてくれたようだ)

八幡(格好はやはりまた全裸だったが、仕方がないな。むしろ服を着ていたほうが問題だろ。だがその分というつもりなのか、俺の制服やら部屋にあったのであろうタオルやらが、布団の上にかけてあった)

八幡(雪ノ下なりの優しさかね)

八幡(しかしいくらなんでも全裸はまずいだろう。もそもそと起き出し、体を動かすのはかったるいが部屋着を着ることにした)

八幡(雪ノ下は、どうしただろうか。もう帰ったのかもしれんし、それでも別にいい。今日はかなり迷惑をかけた。後日なんかお詫びをすべきだろうな)

八幡(詫びとして体で払えとか言われたらどうしよう。や、猫の体でってことだが)

八幡(着替えを終えると、今度は喉が乾いてきた。疲れた体は水分となにより糖分を欲していた。よし!マックスコーヒーだ!)

八幡(廊下に出る。天気が悪い為か薄暗い。時間的にももう夕方のようだから、さらにだろう)

八幡(もしかしたら小町も帰ってきているのかもしれない――と思っていたら、案の定愛するばかわいい妹の声が聞こえてきた。妹バカの俺歓喜。ついでに雪ノ下のも聞こえる)

小町「今日はありがとうございました!おかげですごく助かりましたよぉ。絶対後でお詫びさせますから、お兄ちゃんに」

八幡(おいおい、確かに俺もそのつもりだったけど、その言い方なんかもやっとくんだけど)

雪ノ下「別にお詫びが欲しくてやったことではないのだし構わないわ。だいたい、彼のするお詫びなんてなんだかぞっとするし」

八幡(ぞっとするってなんだよ!これは詫びじゃあ!って言いながらダイナマイト腹にくくりつけて特攻したろか)

雪ノ下「それに、今日一日の報酬はさっき貰ったようなものだし」

小町「え!なになに、なんですか!?も、もしかして熱と看病で高まった二人の感情が新たなステージへ」

雪ノ下「ち、違う、そうではなくて!比企谷くんはずっと寝ていたし、そんなことは何も!」

八幡(つうか新たなステージとか、俺はカレイドスターか。雪ノ下と天使の技とか絶対に息合わなくて成功しない)

雪ノ下「ええと、この写真を」

小町「写真?ふおおおおおおおおお!!」

八幡「」ビクッ

八幡(え、なに?なんなの?妹がハードゲイになったの?)

小町「な、なんですかこれは!?小町にもぜひぜひ送ってください!!」

雪ノ下「ええ、もちろん」

小町「カー君もお兄ちゃんかぁいいよ!いいなぁ、小町も生で見たかったです!」

八幡「女の子が生とか言うんじゃありません……」

小町「あ、お兄ちゃん」

雪ノ下「……起きて大丈夫なの?」

八幡「おかげで大分良くなったわ。あんがと」

小町「んー、でもまだ寝てたほうがいいよ」

八幡「ああ、なんか飲んだらそうするわ。喉が乾いたんだよ」

八幡「で、写真ってなんだよ」

八幡(検察側、証拠品はちゃんと提出するように。ムジュンがあったら異議ありしてやるから)

小町「んー、それは」チラッ

雪ノ下「内緒よ」

八幡「は?会話の内容からして俺の写真だろ。俺には確認する権利と義務がある」

雪ノ下「あら、本当にあなたの写真だなんて確証がそもそもないでしょう?それを実証できなければ、あなたに私の携帯を強制捜査する権利なんて一切ないわ」

雪ノ下「よって、あなたの主張は一切拒否よ」

雪ノ下「さて、バカな話はこれまでにして、私はそろそろ帰ろうかしら」

八幡(く、なら必殺転び公妨したろか。俺の迫真の転がり演技に恐れおののかせるぞ)

小町「すいません、なんのお構いもできなくてー。本当ならお夕飯を一緒にとも思ったんですけど」

雪ノ下「私は事情は先程聞いて分かっているし、気にしないで小町さん」

八幡「ん?なんかあったのか?」

八幡(俺の知らないところで、また何か決まったらしい。まあそれはいいんだけど。内容さえ教えてくれれば)

小町「うん。はとりさんにお兄ちゃんを診てもらうから」

中断

◆◇◆◇◆

雪ノ下(草摩はとりという人物が何者なのか。簡単には小町さんから聞くことができた)

雪ノ下(草摩の本家の人間で、医者。開業医ではなく、専ら本家の人間――特に草摩の当主を診ているとのことだ)

雪ノ下(さらに、彼は十二支――もののけ憑きらしい。なんのもののけ憑きかまでは教えてもらえなかったけれど)

雪ノ下(そしてなにより、これが私が早々に帰らなければならなかった理由だが、彼こそが記憶の隠蔽術を使う)

雪ノ下(同じもののけ憑きだから、他のもののけ憑きの診察もできるし、医者という立場を利用すれば、もののけ憑きであることが発覚した際、目撃者の記憶の隠蔽もスムーズに行くのでしょうね)

雪ノ下(もし、私のことも発覚すれば……)

雪ノ下(心の芯がぐっと冷えるような気がした。その私の横を、さっと車が通っていった)

雪ノ下(その車に見覚えはなかった。でも、運転席の人物と、なぜか目が合ったような気がした。おぼろげながらも、目に残ったその影には、見覚えがあったような)

雪ノ下(でも結局、何も思い出すことはできなかった)

◆◇◆◇◆

はとり「ただ疲れがたまっていただけだろう。寝ればよくなる」

八幡「そうですか」

八幡(はとりの診察は、俺の思っていた通りのものだった。だからお兄ちゃん医者なんて必要ないって言ったのにもう!小町は心配性なんだから!)

小町「すいません、わざわざ来ていただいて」

はとり「これが俺の仕事だ。気にするな」

はとり「さて」

小町「もう帰っちゃうんですか?お夕飯用意しますよ」

はとり「いや、帰ったほうがいいだろう」

八幡(なによ!小町の手料理が食べられないって言うの!?そんなやつに小町の料理は食わせん!帰れ!どっちなんだよ)

八幡「食っていけばいいんじゃねえの。それとも、アキトになんか言われてるのか」

八幡(それは少し、意地の悪い言い方だったろう。別にもう、母ちゃんのことは気にしていないつもりなのに、たまにぽろっとそういう態度が出てしまう)

はとり「いや、あまり遅くまでいて、君たちの両親に俺が会うのは、気分が悪いだろう?」

八幡(こちらが嫌みを言ったはずが、かいしんのいちげきを逆に返されて、俺はその場でフリーズした)

八幡(そのうちにさっさとはとりは帰り支度を済ませていく)

はとり「そういえば、賭けの調子はどうだ」

八幡「……無理だな。だって俺だぞ。しかも猫憑きだ」

はとり「そうか」

小町「……」

はとり「じゃあ、ゆっくり休むように。明日明後日は休日だしちょうどいいだろう」

八幡「ああ。じゃあ」

八幡(ちょうどいいもなにも。俺の休日はいつも寝て曜日だ)

中断

『お兄ちゃんに抱きついてみれば、ほんとのことが分かりますよ』

 
 
由比ヶ浜「……よし!」


由比ヶ浜(覚悟を決めて、自分を奮い立たせて電話する。相手は小町ちゃんだけど、これから言う内容は、そのくらいの勇気が必要だから)

由比ヶ浜(小町ちゃんの携帯にかけると、聞いたことのある曲が流れてきたけど、緊張は解けなかった)

小町『はいはーいやっはろーです結衣さん』

由比ヶ浜「あ、や、やっはろー、小町ちゃん」

小町『どうしたんですか?』

由比ヶ浜(なんだろう。小町ちゃんの声、なんかわくわくしてるような……?)

由比ヶ浜(でも、その理由なんてあたしには分からないし、とりあえず話を進めることにした)

由比ヶ浜「あ、あの……えっと、ひ、ヒッキーさ」

小町『キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!』

由比ヶ浜「ふぇ!?な、何がきたの?」

小町『あ、いえいえー、なんでもありませんよー。続けてください!』

由比ヶ浜「あ、それで、ヒッキーさ、今日、早退したよね?」

小町『そうなんですよー。まったくお兄ちゃんは、体調悪いのに受験生の小町に気にさせないようにって学校行ったらしいんです』

小町『ほんと、困っちゃいますよね。そんなことされたら逆に看病したくなっちゃいますもん』

由比ヶ浜「あ、そうだったんだ」

由比ヶ浜(小町ちゃんの話を聞いて、心が少しほっこりして、そして同時にすごく痛くなった)

由比ヶ浜(また、ヒッキーは自分をそうやって犠牲にしてるんだ。もうしないって言ってたのに……)

由比ヶ浜(ずっとヒッキーはそうしてきたんだろうから、すぐに変えられないのも分かるけど……)

小町『それで、お兄ちゃんの様子ですか?今は元気になってますよ』

由比ヶ浜「あ、そうなんだ。よかったぁ」

由比ヶ浜「えっと、それでね……あ、明日なんだけど」

◆◇◆◇◆

「お兄ちゃん、いい加減起きたほうがいいよー」

八幡「……もう少し寝かせてくれよ、小町。まだ体がだるいんだよ」

八幡(だるくなくても休日は寝て過ごしてるけどな、俺。むしろ寝過ぎて体がだるいまである)

八幡(でも今日は実際体がだるいし、この大義名分を使わない手はない)

八幡(利用できるものはなんでも利用する男、比企谷八幡。やべ、ちょっとかっこいい)

小町「もう、仕方がないなあ。じゃあその顔で結衣さんに会うんだね」

八幡「おう、それでいい……」

八幡「……」

八幡「は、今なんと?」

小町「結衣さん。お見舞い、来るって」

八幡(なんだそれ。なんでカタコト風味なんだ妹よ。ミスターポポだったの?いや、問題はそこじゃない)

八幡「由比ヶ浜が見舞いに来るってどういうことだよ……いつ決まったんだ」

八幡(だから、俺が知らないところで予定組むのはいいけど、ちゃんと教えてって言ってるじゃん!対策立てらんないだろ!)

小町「昨日の夜だよ」

八幡「マジかよ……」

八幡(ま、まあいい。見舞いに来るだけだし。俺は病人なんだから終始ベッドの上にいてもいいだろう)

八幡(由比ヶ浜もまさかそんな俺を外に連れ出したり、何時間も居座ることもないだろうから、見舞い時間は小一時間というところだろう)

八幡(オーケー。俺の終日寝て過ごす計画に支障はない)

小町「隙を見て二人きりにしてあげるから、がんばってねお兄ちゃん!」

八幡(お前はいったいなんの期待をしているんだ)

中断
ゆいゆいのターン

怪しい進撃……?

◆◇◆◇◆

雪ノ下(呪い……呪術……そういったものを調べるために図書館まで来てみたけれど……ふぅ、ダメね。その手の本を調べてみても、この内容が現実とは到底思えない)

雪ノ下(だいたい、呪いによっても解き方は様々だと書いてあるのもあれば、心持ち一つ――自分が正しくあれば邪な呪いなどはね除けられるとも書いてあるのだもの)

雪ノ下(そもそも、彼の呪いはもののけに憑かれている為のものらしいけれど、だからってなんで異性に抱きつかれたらそのもののけに変身するのかしら)

雪ノ下(正直に言えば、話だけ聞かせれたら、何をバカなと一笑にふしていたでしょうね)

雪ノ下(……もののけに憑かれているのなら、要はそのもののけを祓えばいいのではないのかしら)

雪ノ下(でも、彼らは昨日今日憑かれたわけではなく、それこそ何代も続いてきたかのような口ぶりだった)

雪ノ下(ある程度の方法は、すでに試していると思ったほうが……)

雪ノ下(ダメね。呪いなんて言われても……私には非現実的すぎて、どう手を出したらいいのかわからない)

雪ノ下(当事者の彼はあの調子だし……)

雪ノ下(……その、草摩の本家の人間と接触をできれば)

雪ノ下(でも、彼が猫憑きであることを知っていることが知れたら、記憶を消される……と。彼や小町さんに仲介してもらうのはリスクが高すぎる)

雪ノ下(うちは草摩家とは、地域のイベント等で少なからず繋がりがあるはず……でもそうなると……)

雪ノ下(とりあえず、土地の名士の歴史でも調べてみましょう)

――


雪ノ下(これも成果はなし、ね。こうなると、いよいよ)

「あれー?雪乃ちゃんじゃん!」

雪ノ下「」ピシッ

「何を読んでるのかなぁ?」

雪ノ下「姉さん……」

雪ノ下(確かに、ちょうどこの人に聞くしかと考えてはいたけれど……この人は本当に変な意味がタイミングが……)

陽乃「へー、なにこれ。面白くなさそう。調べもの?」

雪ノ下(……いっそ全てを投げ出して無視して帰ろうかしら)

雪ノ下(すでに意気が挫けそうになる心を、私は昨日撮った写真を思い出して必死に奮い立たせた)

中断

◆◇◆◇◆

八幡(由比ヶ浜は午後に来るとのことだった)

八幡(そんなの関係ねえ!とばかりにベッドにかじりついて寝こける俺をよそに、小町は勝手に俺の部屋を片付け、)

八幡(それが終わると、他の部屋の掃除や、由比ヶ浜出迎えの準備にいったようだ。すげえな由比ヶ浜。まるでVIPのごとき歓待を受けるみたいだぞお前)

八幡(ちなみに両親は俺と同じでだらだらしてるらしい。小町は俺の見舞いに俺のクラスメイトが来ることは伝えたようだが、)

八幡(二人は勝手にしていいと言ったらしい。我が両親ながら、休日だからとだらけまくっている。ナマケモノだ)

八幡(しかし、その分平日はヤルキモノに進化して、家庭の為にケッキングにもならずに頑張ってくれているのだから文句のいいようもない)

八幡(まあ、小町がその見舞いが女子だと伝えなかったせいもあるだろうが。母ちゃんはともかく、それを知ったら親父はどうしたものか)

八幡(そんなこんなで、小町だけが慌ただしい比企谷家の休日に午前は過ぎ去り、昼過ぎ)

ぴんぽーん

小町「はいはーい!」

八幡(チャイムが鳴り、ばたばたと小町が階下へと降りていく足音がする。由比ヶ浜が来たらしい)

小町「お兄ちゃーん、お待ちかねの結衣さんが来たよー」ガチャッ

由比ヶ浜「ふぇ?ま、待ってたの!?」

八幡「待ってねえよ」

由比ヶ浜「そ、そっか」

小町「そこは待ちくたびれたよハニーって抱き締めるとこでしょー」

八幡「だからお前は俺を何キャラにしたいんだ……」

八幡(玄関から数十秒で俺の部屋まで由比ヶ浜が突破してきたということは、両親はねむり状態のまま、シャチクの笛を吹かれることもないので体力を回復しまくってるらしい。下手に起こすと寝ぼけて襲いかかってるので危険だ)

小町「じゃあ、結衣さん、むさ苦しいところですが、好きに寛ぎまくっちゃってください!小町はお茶の準備をば!」

由比ヶ浜「あ!そんな別に、いいのに……」

八幡(しかし小町はそんな由比ヶ浜の言葉も聞きもせず、さっさと行ってしまった。ぽつんと取り残され、少しの間扉のほうを見ていた由比ヶ浜だったが、おずおずとこちらの方を向いてきた)

八幡「その辺適当に座れよ」

由比ヶ浜「う、うん……えっと、元気?」

八幡「だいたいな。でもだるいから今日明日は寝て過ごすつもりだけどな」

由比ヶ浜「それ、いつものことじゃないの?前に休日はだらだらしてるって言ってたし」

八幡「ただだらだらしてるのと、調子が悪いからだらだらしてるのだと、気分が変わるだろ」

由比ヶ浜「ああ、そういうのあるかもね。なんか、ただだらだらしてると、他人の目が気になったりとか」

八幡「俺は気にしないぞ。だから他人の視線なんて気にせず堂々とだらだらしてる。そもそも俺のこと見てる他人がいないってのもあるけどな」

由比ヶ浜「それもどうだろ……それに、見てる人がいないわけじゃない、と思うけど……」

八幡(もじもじと言ってくる由比ヶ浜。まあ確かに、見ていてくれるから、お見舞いに来てくれるやつもこうしているわけだしな)

八幡「で、見舞いに来たからには見舞いの品とかあるんだろうな。病人には古来よりマッ缶とかくだものとか甘いものがいいとされてるぞ」

由比ヶ浜「あ、うん!えへへ、そう思ってクッキーを焼いて」

八幡「や、それは俺、今度こそ死ぬから」

由比ヶ浜「死なないよ!?」

小町「いちゃいちゃしてるところ失礼しまーす。お茶の準備できましたよー!さ、これ飲んで末永く居座っちゃってください!じゃ、小町はこれで」

八幡(さっと戻ってきた小町は、お茶を置くとこれまたさっさと出ていった。その小町の勢いにのまれ、由比ヶ浜が「あ」とか「うう」とか「えぇ」とかしか言えないうちにまた二人きりにされた)

由比ヶ浜「す、末永く……」

八幡「見舞いに来て貰ってあれだが。ぶぶ漬けいかがどすえ」

由比ヶ浜「ぶぶ漬け……?」

八幡「お茶漬けのことだよ……」

由比ヶ浜「へえそうなんだー。あ、べ、別にご飯までご馳走になるつもりは」

八幡「ああそう……」

八幡(さすがにーと言う由比ヶ浜を尻目に、俺ははぁと嘆息した。俺の終日寝てよう計画が脆くも崩れ去った瞬間であった)

――


八幡(てきとーに由比ヶ浜と雑談を交わし、そろそろ彼女がうちに来て小一時間になろうかというところだった)

八幡(話題にも一段落がついて、一瞬二人とも言葉が止まる。その瞬間、由比ヶ浜がちらっと俺の顔に向けた視線が、俺の視線と交差した。物語でも始めようと言うのだろうか)

八幡(由比ヶ浜はすぐに視線を顔ごと反らしたが、大きく深呼吸をするかのような動作の後に、今度は意を決した顔で向き直ってきた)

八幡(予感がした。由比ヶ浜は今日、この話をするために俺の見舞いに来たのだと)

中断

由比ヶ浜「ヒッキーさ、この間、猫の話をゆきのんとしてたよね」

八幡「そうだったか?」

八幡(俺は即答した。猫の話。確かにしていたし、由比ヶ浜をに少し聞かれたようだが、由比ヶ浜がそのカードをどんなつもりで切ってきたかわからないため、即座に否定する)

八幡(まだ怪しいと考えている段階なら、それを挫くように)

由比ヶ浜「……ゆきのんがこの間、部室に猫をつれてきた話、したよね。その子見た?」

八幡「見てない。部室行かなかったしなその日。どんな猫かも知らん」

八幡(今度もまた、猫関連の話題。そしてまたもその猫は俺。焦燥感が募るのが感じた。なぜだ?なぜその猫と俺を結びつける)

八幡(普通に考えて、俺とその猫に関係性を見いだせるわけがない。由比ヶ浜が少しアホの子故の一寸飛びの発想をしたって)

八幡(または持ち前の空気を読む能力で、何かを感じ取ったとしても、常識がそれを阻むはずだ。由比ヶ浜は、常識がないやつではない。むしろ誰よりも常識的だ)

八幡(人が猫になるなんて、そんなの、実際に見もしなければ)

八幡(はっと、する。思い出したのは、もうすぐ、二年近く前の事になる、事故の事)

 
 
『痛い。痛い。痛い。でも、こんなことで。今、このままだと。ここで問題を起こしたら、俺は』

 
 
八幡(俺が、記憶の波に飲まれ、忘我の淵に立たされた時を見計らったかのように、由比ヶ浜は立ち上がった)


由比ヶ浜「……結局、こうするしかないんだ」

八幡(俺が、そのまま近づいてくる由比ヶ浜の気配に気づき、行動をする間も与えずに――由比ヶ浜は俺に抱きついた)

◆◇◆◇◆

『お兄ちゃんに抱きついてみれば、ほんとのことが分かりますよ』

 
 
由比ヶ浜(その事故の瞬間、思わず目を瞑ってしまったあたしには、彼がどういう風な目にあったのかははっきりとは分からない)


由比ヶ浜(目を開けると、轢かれたかと思ったサブレは、立って地面に顔を寄せている。そこには、あたしがその日から通う学校の制服を来た男子は倒れていた)

由比ヶ浜(すぐそばには黒い大きな車が止まっていた。そこからその運転手と思われる人が出てくると、男の子に駆け寄った。呼び掛けている)

由比ヶ浜(あたしは全く動けずに、立ち尽くしている。運転手が顔を上げた。そして辺りを見渡して、目に留まったらしいあたしを見据えてこう言った)

由比ヶ浜(彼を見ているように。自分は、救急車を呼んで来るからと)

由比ヶ浜(そこでようやく、あたしは動けるようになった。時間が動き出すと、今度は猛烈な勢いで色々な情報があたしの中に入ってきた)

由比ヶ浜(車道で止まった車。サブレは飛び出した。轢かれそうになったのに、そのサブレは無事。代わりに轢かれた男の子。あたしが目を瞑る前に、猛烈な勢いで風のごとく通りすぎていったのは、彼だったような)

由比ヶ浜(彼は、あたしのせいで)

由比ヶ浜(慌てて駆け寄って、彼の顔を覗き込む。息をしてる。生きてる。少しほっとした。でも、それでどうしたらいいの?)

由比ヶ浜(見てるのは、見てるだけでいいの?自分にできることはないの?何もわからない……あたし、何もできない……)

由比ヶ浜(涙出てきた。わけわかんなくて、どうしようもなくて、その男の子を見てることしかできなくて……)

由比ヶ浜(そんなあたしの視界に、サブレが入ってきた。男の子の顔を必死で舐めている)

由比ヶ浜(そうだ、とにかくサブレを捕まえておこう。そう思って、膝立ちのまま手を伸ばそうとして……こけた)

由比ヶ浜(男の子の胸の上に、倒れ込む。事故にあった人に、あたしなんてことを。にしても、今変な音が?いや、それよりも今は!慌てて起き上がったあたしが見たのは――横たわった猫だった)

―――
――


由比ヶ浜(それが決定打となって、あたしは再び固まった。その間に、「こんなことで」とか「ここで問題を」とかその猫が呟いて、猫はその後男の子に戻った。後は、近づいてくる救急車の音とかは印象にあるけど、記憶は曖昧で)

由比ヶ浜(何も言えないでいるあたしを気遣った婦警さんに、パパとママが迎えに来てもらうまで一緒にいて貰ったのは覚えてるけど、気づいたら家のベッドで寝てた)

由比ヶ浜(猫のことは、やっぱり夢だったのかもしれないと思ったけど、あれは夢じゃなかったと叫ぶあたしがいた)

由比ヶ浜(それを確かめたくて、あたしは彼の家にお詫びとして会いにいった。結局会えなかったけど、彼の妹さんが――つまり小町ちゃんが)

由比ヶ浜(帰ろうとするあたしに、こう言った)

『お兄ちゃんに抱きついてみれば、ほんとのことが分かりますよ』

由比ヶ浜(結局、その機会もないまま、あたしは彼と――ヒッキーと再会した……そして今日)

 
 
 
猫八幡「」


由比ヶ浜「やっぱりあれ……夢じゃ……なかったんだ……ヒッキー!」

猫八幡「……」

由比ヶ浜「あれ!?ヒッキー!?ヒッキー!?も、もしかして、あたしが押し潰したから……」

小町「まあそうなんですけど、衝撃を受けたのは由比ヶ浜さんの大きなそれをもろに受けたせいじゃないかと」

由比ヶ浜「へ?」

猫八幡「………俺の寝て曜日が」

◆◇◆◇◆

陽乃「草摩さん?」

雪ノ下「ええ、もし姉さんが知っていることがあったら教えてほしいのだけれど」

陽乃「ふーん、草摩さんねー」

陽乃「別にそこまで付き合いがあるわけじゃないからねー。顔見知りってくらいだけど」

陽乃「私としては、なーんで雪乃ちゃんが草摩さんのことを知りたいのかが気になるかなあ」

雪ノ下「……別に知らないのならいいわ。それじゃあ」

雪ノ下(完全にあてが外れてしまった。次はどうすればいいのか。姉さんを取り残して自問する。そんな私を、姉さんが呼び止める)

陽乃「もしかして、比企谷くんのこと、かな?」

雪ノ下(足が止まる。動揺を隠すことはできなかった。姉といると、全てを見通されてるような感覚を度々受けることはあるが、いくらなんでも、これは)

陽乃「驚いた?あ、でも別に、大したことじゃないよ。ほら、雪乃ちゃんが乗ってた車と、彼が事故ったことがあったじゃない?」

陽乃「比企谷くん、草摩さんの親戚なんだったってね。名字違うけど。それで向こうからこっちにお詫びがあったってわけ」

雪ノ下(手品の種を明かすように、姉は笑いながら分けを言う。この人は、本当に心臓に悪い。でも、それでか)

雪ノ下(……いや、それなのになぜ、私はそのことを知らなかったのか)

陽乃「そういえば、雪乃ちゃん、草摩さんのこと聞きたかったから、あの人に聞いてみれば?」

雪ノ下「あの人……?」

雪ノ下(またどこか、癖のある笑みを浮かべて言う姉。その姉の様子に、長年培ってきたものが警鐘を鳴らしてくる)

陽乃「事故のあと、草摩の本家の人で医者だって人が、会いに来てくれたじゃない?」

雪ノ下(こういう時に姉が言うことは、ろくでもないと)

陽乃「たしか、草摩はとりさん……だっけ?」

中断

まだ>>25みたいな感じなのですが

◆◇◆◇◆

由比ヶ浜「……つまり、ヒッキーは猫のおばけのせいで女の子に抱きつかれると猫になっちゃうの?」

八幡「まあ、そういうことだ……」

八幡(あの後仕方なく――というか、最早言い訳のしようもないので、一通りのことを説明した)

八幡(ついでに、由比ヶ浜がどうして俺が猫になるのかを知っていたかも聞いた。高校でへまをしたのは先日の雪ノ下のことだけだったはずなので疑問だったからだ)

八幡(それによると、俺が事故にあった直後、少し気を失った間とのことだった)

八幡(俺も薄々そうではないかと思っていたので、腑には落ちたのだが、同時にがっくりと来た。やはり俺の高校生活に狂いをもたらすのはあの事故か)

八幡(が、俺はさらに衝撃を受ける事実を、由比ヶ浜から聞くことになる。では、再現VTRをどうぞ)

由比ヶ浜「で、ヒッキーのおうちに行った帰りに、小町ちゃんがヒッキーに抱きつけばほんとのことがわかるって言うから」

八幡「なんだと」チラッ

小町「♪~」

八幡(俺がとがめる視線を向けることを、端から予想していたのか、小町はそっぽを向いて、分かりやすくごまかすように鼻唄なんぞを吹いていた。このアマ、終いには黒魔術士の凶悪尖り目で殺人目線射抜き殺すぞ)

由比ヶ浜「それでね、抱きつくチャンスをうかがってはいたんだけど……あ、違うし!抱きつこうと思ったのはほんとに知りたかっただけで!」

由比ヶ浜「でも、結局できなくて、ヒッキーも猫のことなんて全然そんな素振り見せなかったから、あれは夢だったのかなって最近は思ってたんだけど……」

由比ヶ浜「こないだ、ゆきのんが絶対あの時のヒッキーだって猫連れてたから……」

八幡(それで今日はっきりさせにきたのか……つまり雪ノ下にばれてなければまだしらばっくれられたわけだな……)

小町「ま、こうなったら仕方ないよね?由比ヶ浜さんにもお兄ちゃんのサポートを協力してもらおうよ!」

八幡「お前……それが目的か……」

由比ヶ浜「ヒッキー!サポートってなにしたらいいかわからないけど、あたし、いくらでも協力するよ!?」

八幡(二人が言ったことを天秤にかける。そのメリット。そしてデメリット、リスクを正当に判断にして……俺は告げた)

八幡「いややっぱりだめだ。由比ヶ浜は知らんぷりしろ」

由比ヶ浜「なんで!?」

小町「お兄ちゃん!」

八幡「……うちの医者で、記憶の隠蔽……つまり、記憶を消したりできるやつがいるんだ」

八幡「もしバレたら、お前はそいつに記憶を消される」

由比ヶ浜「じゃあなんであたしだけ!?さっきの言い方!ゆきのんはいいってことでしょ!?なんで」

八幡「お前は、俺の正体を知ってからの期間が長すぎる」

八幡「雪ノ下は、最悪数日前からの、猫の俺との記憶を消せば済む。でもお前は、違う」

八幡「下手をすると、お前の……お前の大切な記憶まで……」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

小町「……お兄ちゃん、それじゃ、今まで一緒だよ?」

八幡「……」

小町「せっかく、受け入れてくれるかもしれない人たちと出会えたのに!」

小町「そうやって逃げてばっかりじゃ、結局同じだよ!そしたら、このままじゃお兄ちゃん、ほんとに、ゆ――」

八幡「やめろ」

八幡(ダルいはずの体は、咄嗟に最適の動きをした。つまり、小町の口を手で塞いだ。これ以上のこと、由比ヶ浜に聞かせるわけにはいかない)

八幡(聞けばきっとこいつは……そんな同情はいらない)

小町「――!お兄ちゃんのバカぁ!」ギュッ

八幡「げっ」

ボンッ

小町「一生そのまま猫としてかわいくぬくぬくしてればいいよ!」

猫八幡「なんだそれ……」

八幡(どたどたと切れた妹が去っていく。その様子は小町怪獣だもん!としか言いようがなかった)

由比ヶ浜「ヒッキー……」

猫八幡「ま、そういうわけだ。お前はこの姿の俺を見ても気にすんな」

由比ヶ浜「でも……」

猫八幡「ちょうどいいだろ。お前、猫苦手なんだから」

由比ヶ浜「……今日は、もう帰るけど。あたしもヒッキーを助けたいって気持ちはゆきのんや小町ちゃんと一緒だから」

由比ヶ浜「ヒッキーが何を悩んでるのか全然わからないし、何を助ければいいのかもわかんないけど、全部教えてほしいって思うもん」

由比ヶ浜「だってあたし……あたしは……」

猫八幡「……」

八幡(俺はさっと顔を背けた。拒絶の意味で。ともすれば、その先の言葉は、俺が一番欲しかったものかもしれない)

八幡(でも今は、受け入れることなどできない。俺は由比ヶ浜に、そして雪ノ下にも、すべてを教えていない)

八幡(見せるべきものを見せていない。でも、それを見せたら……きっと……)

ボンッ

由比ヶ浜「ひゃっ!」

八幡「ちょ、出てけ」

由比ヶ浜「う、うん!」

八幡(またいつものごとく、決まった時間もなく元に戻ったが、ちょうどいいタイミングだったかもしれない。これ以上、話をするのは苦痛になっていそうだったから)

八幡(それは由比ヶ浜も同じだったようだ)

由比ヶ浜「ヒッキー、あたし、このまま帰るね」

八幡「……ああ、じゃあな」

由比ヶ浜「うん」

八幡(扉越しに別れの挨拶を交わす。俺はそのまま服を着直したが、見送るつもりはなかった。由比ヶ浜も、気にせずに去っていったようだ)

八幡(着替えを終え、一人になった部屋で、俺は腕につけている数珠に触れた)

◆◇◆◇◆

小町「というわけなんです!ほんとお兄ちゃんはごみいちゃんで、あれじゃいつまで経っても!」

「あはは、相変わらずだね、彼も。ま、仕方のないところもあると思うけど」

「ハチくんは猫憑きなんだから」

小町「でも、このままじゃ全然……もう時間ないのに」

「そうだねぇ。あと一年ちょっとだし。じゃあ、少し進めてみようか」

小町「?」

「明日、その二人を家に呼んでおいてよ」

小町「それはだいじょぶですけど……変なこと企んでませんか?」

小町「紫呉さん」

紫呉「いやいや、本当に僕は彼のために動こうと思ってるんだよ?」

小町「嘘臭いですねぇ、紫呉さんが言うと」

紫呉「あらら。厳しいなあ、小町ちゃんは」

中断
十二支出すとめんどくさいから止めようとはなんだったのか

あ、紫呉との会話は電話です

◆◇◆◇◆

紫呉「や」

はとり「……」

「……」

紫呉「はーさん久しぶりー。元気?ちゃんとカルシウム取ってる?」

はとり「……」スッ

ピシャッ

紫呉「ごめん、ちょっと聞きたいことがあって寄ったんだけど」

はとり「なんだ……」

紫呉「いやあ、ちょっと小耳に挟んだんだけどさ。ハチくん、倒れたって本当?」

「え!それ本当なの!?」

はとり「……」非難の目

紫呉「……」明後日の方向への視線

「しーちゃんの言ってること、本当なの!?」

はとり「……本当だが、大したことはない。疲れがたまっていたところに、雨が降っただけだ」

紫呉「へー」

「うそ……倒れたって……私!お見舞い行く!絶対行くんだから!」

紫呉「これこれ。それなら僕も行くから、君はちょっと待ってんさい。あと大丈夫だって言ってたの聞こえた?」

「待てないよしーちゃん!ハチくん、きっとうなされながら私のことを……」

紫呉、はとり「それはない」

「じゃあとにかく、私着替えてくる!しーちゃん、先いっちゃダメだからね!」

はとり「……どこで小耳に挟んだのかは知らないが、彼女をけしかけるためにわざわざ俺のところに寄ったのか」頭痛い

紫呉「いやいや、彼女がいたのは偶然ですよ。ていうかなんでいるの」

はとり「いつものように暴走して、電柱を殴ったら拳を怪我したそうだ……」

紫呉「そりゃまた」

紫呉「僕としては、ハチくんに変わった様子でもないかとはーさん聞くついでに、アキトさんのところに寄ってきた次第で」

はとり「……アキトのほうがついでか」

紫呉「まあね」

はとり「……お前、またそうやって引っ掻き回して――」

「しーちゃん、準備できたよ!!早く行こ!?」

紫呉「はいはい。それにしても、向こうについたらおとなしくするんだよ」

紫呉「あそこは一応、草摩じゃなくて比企谷さんちだからね」

紫呉「楽羅」

楽羅「わかってるもん!だから早く!」

紫呉(分かってないだろうなぁ)

紫呉「じゃ、行ってくるよはーさん」

はとり「もう好きにしろ……」

紫呉(言われなくてもするさ、いつだってね)

中断
出そうか迷った楽羅ですが、猫憑き攻略には必要だろうと
出すことにしました

ちなみに
フルバ勢の名前は
紫呉(しぐれ)
楽羅(かぐら)
です

◆◇◆◇◆

八幡(その日、午前中も早々に両親二人が出掛けた時点で、俺は早々に気づくべきだった)

八幡(せっかくの休日に、俺の両親ともあろう人達が、家でだらだらもしないで出掛けたという事実を、もっと重く考えるべきだったのだ)

八幡(しかし俺は、まあそんなこともあるかと、昨日のガハマさん襲来からガハマさん猫バレへの一連の出来事による精神的疲労を癒すことしか頭になかった)

八幡(明日になれば、否が応にも登校し、放課後には気まずい展開が待っていることは想像に難くなかったので)

八幡(現実逃避の上今日こそ寝て過ごすつもりだったわけだ。というかもうこの町から逃避したい。女子の体操服盗んで惡の花が咲いたわけではないけど)

八幡(一方小町もどこかへ出掛けるつもりはないようだが、昨日の一件のことを怒っているらしく、一切会話がない)

八幡(またしばらく冷戦が続くようだったので、これまた俺が現実逃避をしたい原因だった)

八幡(しかしまさかこんな短いスパンでまた小町を怒らせることになろうとはな……)

八幡(はぁ……と、結局寝れもせず、俺が何度目かのため息を吐いた時のことだった。部屋の扉が開いた)

八幡(今うちには俺と小町しかいない。つまり俺の部屋の扉を開けうるのは小町しかいない。いや、ごめんカマクラもいたわ。忘れてたわけじゃないぞ)

八幡(しかし俺が顔を上げるとそこにいたのは小町だった。しかもにこやかな笑顔を浮かべている)

小町「お兄ちゃん♪」

八幡(兄の本能として妹の笑顔には絶対の安らぎを覚える俺は、思わず顔が綻ぶのを感じた。おぅ、ジュテームとか言い出しそうになる始末)

八幡「小町!」

小町「お客さんだよ♪」

八幡「え」

由比ヶ浜「や、やっはろー」

雪ノ下「どうも」

八幡(ええええええ!?そりゃないぜこまっちゃぁ~ん!)

八幡(どうやら俺の寝てよう計画は二日目も成立しないようである)

―――
――


雪ノ下「なるほど、由比ヶ浜さんはあの事故の時に彼の変身体質を知ったのね」

由比ヶ浜「うん。あれ、でもゆきのんは?その、あの時……」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「あ、ご、ごめんね!思い出したくないことだったよね!?」

雪ノ下「いえ。思い出そうとしてみたのだけれど、彼が猫に変身したなんて記憶は、やはりないわね」

雪ノ下「あの時私は、車の中で待っているように言われて……それで……」

雪ノ下「でも、あのとき私も、外に行くべきだった……それなのに私は、言うことを聞くだけで……何もできなかった」

八幡(雪ノ下は、彼女こそ熱にうかされるように、空中に視線をさ迷わせた。なにか、答えでも見つけたいかのように)

由比ヶ浜「仕方ないよ!あたしもあの時はテンパっちゃって……何もできなくて……結局、パパとママに迎えに来て貰って……」ズーン

八幡(一方由比ヶ浜は、一言語るごとに子泣き爺におぶされたかの如く、気分が沈んでいくのを体で表現していた。一瞬上半身のおもちが重いのかと思ったのは黙っておこう)

由比ヶ浜「と、とにかく、あの時は何もできなかったけど!これからはヒッキーのサポートがんばるし!」

雪ノ下「ええ、私もあなたの――いえ、猫のあなたのためなら最善を尽くすわ」キリッ

八幡「いや、だからそういうのいいから……」

八幡「これまでだって、別にサポートされなくてもバレなかったんだ。お前らの手助けなんていらんいらん」

八幡(相変わらず物欲ないねー望ちゃんとでも言われそうな勢いで断る。聞忠を倒すには仕方ないのだ)

由比ヶ浜「高校入学初日でバレた癖に……」

八幡「あ、あれはイレギュラーだ。あんなことまた早々起きてたまるか」

雪ノ下「それを抜かすにしても、あなたついこの間私にバレたばかりでしょうに」

八幡「今度からはこけそうな女子がいても無視することにする。よし、解決だな」

八幡(さわやかな笑顔(俺判断)を浮かべながらド腐れなことを言ってみるテスト。いっそこれでドン引きして離れてくんないかなー)

雪ノ下「しかもそのすぐ後に体調を崩して、猫に変身してたでしょう」

八幡「その体調を崩した原因は、お前にいじくり回された疲れによるものだと医者から直々にご判断頂けたんですがねぇ」

雪ノ下「そ、それは……」

由比ヶ浜「え!なにそれ!?」

小町「お兄ちゃん、雪ノ下さんちにお泊まりしたんですよ。猫の姿で」

由比ヶ浜「あたしには、知らんぷりしろって言ったくせに……?」

八幡「違う、無理矢理だったんだ。誘拐されたんだ俺はこいつに」

由比ヶ浜「ゆきのん、ほんとに?」

雪ノ下「ゆ、誘拐というのは人聞きが悪いでしょ。私は協力する上で不可欠な彼の生態への知識を詳しく調べるために、仕方なく一時的に保護をしただけで」

由比ヶ浜「……じゃあヒッキー、今日はうちに泊まって」

八幡「ふぇ?」

由比ヶ浜「あ、も、もちろん!人間の姿じゃないから!?ね、猫の……姿で……」

八幡「お前猫苦手じゃん。無理すんなよ」

由比ヶ浜「だって、あたしだって!」

八幡「つうか、お前んちサブレいるだろ……いつかのカマクラのようになるのは御免だ」

由比ヶ浜「ううん、それは……」

小町「なら結衣さんとお兄ちゃん一緒に雪乃さんのおうちにお泊まりすればいいんじゃないですか?」

由比ヶ浜「それだぁ!」

雪ノ下「その手が」

八幡「ねえよ。全然ねえよ」

八幡(なにこいつら納得しちゃってんの。あれ、もしかしてこれ俺誘拐への作戦会議じゃね?対象目の前だぞおい)

八幡(つうか小町お前余計なことを、と睨むように小町に視線を向ける。すると)

小町「ベー」

八幡(おぅ、まだ怒ってるよ……)

ピンポーン

小町「あ、出てくるね」

八幡(Amazonさんかしらん)

由比ヶ浜「どうする?今日行っちゃう?」

雪ノ下「そうね。ちょうど今日は休日なのだし、このまま彼を連れて買い物をしてから」

八幡(やっべ、ちょっと会話から外れた間に決定事項にされてる!や、俺にはいつものことだけど)

八幡(どうにか泊まりだけは回避しなくては。このままズルズルと流されるのだけはまずい。と、俺が口を開いた時だった)

八幡「待てお前ら――」

「ハチくん!」

八幡(今や聞いただけで俺に全身の脂汗と、トラウマによる全身硬直をもたらす声が俺の部屋に響いた)

八幡「楽羅……?」

楽羅「ハチくぅーん!」タッタッタ

楽羅「会いたかったぞおらああああああああああ」ドゴォ

八幡「ぐふ」

由比ヶ浜「ヒッキー!?」

雪ノ下「」

楽羅「心配したんだからあああああははははははは」

八幡(平穏な寝て曜日のはずが……俺の休日、間違いすぎぃ
!)

中断

八幡(前回までのヒキライフ!前回は――ってダメ。今すごい頭がシェイクされてて脳みそフレーバー状態でなにも考えられない)ガクガクガクガク

楽羅「もう!ハチくんたら寝込んでるならどうして私を呼んでくれなかったの!?絶対看病しにきたのにぃぃぃぃぃ!!」ブンブンブンブン

八幡(簡単に言えば、武・神・降・臨☆って感じだ。楽羅キテ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!欲しくなかった。ていうかやばい、そろそろ吐きそう。おえっぷ)

八幡(無駄とは思いつつも、俺はこの暴走機関車特急――楽羅を制止する声をあげてみた)

八幡「や、やめ……死……」ガクガクガクガク

楽羅「それでそれでね、ハチくんはずっと寝込んでるんだけど、ふと気がつくと私がベッドの横で寝ちゃってるの!それでハチくんはきゃああああいやあああん、ハチくんのエッチ!!」ブンブンブンブン

八幡(あ、これ死んだわ。リバースカードオープn)

由比ヶ浜「ちょ、ちょっと!や、やめてください!ヒッキーが死んじゃう!」

楽羅「え」

八幡「」

八幡(た、助かった……今回ばかりは感謝するぜ。サンキューガハマさん)

楽羅「ハチくん!?誰がこんなことを!」

由比ヶ浜、雪ノ下『』

紫呉「君だよ」

小町「相変わらずですねー、楽羅さんは。流石にちょっとお兄ちゃんかわいそうかも」

八幡(全力でかわいそうだろ!これ!つうか)

八幡「お前の差し金か……紫呉……」

紫呉「いや、楽羅はたまたまついてきただけ。ほんとは僕だけお見舞いの予定だったんだけどね。まあ、いいでしょ、彼女も大分君のことが心配だったみたいだし」

楽羅「そうだよハチくん!ハチくんがこの家には遊びに来ちゃダメっていうから私……私……」

八幡「……それはお前が」

楽羅「寂しかったんだからあああああああ」ガスガスガスガス

八幡(こういうことするからだろ)

雪ノ下「あの、話についていけてないのですが……お二人は」

由比ヶ浜「……」ウンウンウンウン

由比ヶ浜「てゆーか、ヒッキーかわいそうだし、その、そういうことは……」

楽羅「ああん?」

由比ヶ浜「ひっ」

楽羅「あなたたちって……ハチくんの何?」

由比ヶ浜「え!?えっと何っていうか……え、く、クラスメイト?」

八幡(なんでそこで疑問系だよ……)

雪ノ下「私は彼とたまたま同じ部活に所属しているというだけです。誠に遺憾なことですが」

楽羅「ふぅーん」

紫呉「へー、そうなんだ。ハチくんの同級生かー。つまり女子高生。いいよねー。触れ合いたいねー」

由比ヶ浜、雪ノ下『何この人……』

小町「結衣さん!雪乃さん!えっと、この人は草摩紫呉さん!簡単に言うと、うちの親戚です!」

小町「それであっちは草摩楽羅さん!同じく親戚で」

楽羅「ハチくんの婚約者です」ダキッ

由比ヶ浜、雪ノ下『え』

八幡「……や、違うから。つうか離れろ」グイッ

由比ヶ浜「ひ、ひひひ、ヒッキー婚約者なんいたのぉ!?うそ、聞いてない!」

八幡「だから違うし。いてもお前に言うことじゃないし」

雪ノ下「それより……今」

小町「でー、こちらは結衣さんと雪乃さん。お兄ちゃんの同級生なんですけど、実はちょっと小町的に怪しいかなあなんて」

紫呉「へー、やるじゃないハチくんも」

由比ヶ浜「べ、別にそんなんじゃ……まだ」モジモジ

雪ノ下「小町さん……その紹介は甚だ勘違いをもたらす恐れがあるからやめて欲しいのだけれど」

楽羅「怪しい……?」

楽羅「どういうことよハチくん!浮気!?浮気したの!?浮気したんだなごるぁぁぁぁぁ」ギリギリギリギリ

八幡「」ペシペシペシペシ

八幡(タップタップタップ!レフェリー!この人止めて!死んじゃう!)

小町「まあ、こんな感じで楽羅さんは少々気性が激しい人なんですけど」

由比ヶ浜、雪ノ下『……少々?』

小町「ほっとけばそのうちおとなしくなります。なので、後は若い二人に任せてちょっと席をはずしましょー」

八幡(まってええええ、置いてかないでええええ)

由比ヶ浜「え、でも……」チラッ

雪ノ下「あれは……」チラッ

小町「大丈夫です!あれがあの二人なりのコミュニケーションですから!それにお兄ちゃん頑丈ですもん」

八幡(適当こいてんじゃねえ!頑丈とかそういう問題じゃねえから!)

紫呉「さ、じゃあ二人は向こうで僕と語らおっかー」

由比ヶ浜「え、え」

雪ノ下「ええと……」

八幡(戸惑いながらも、つれていかれる二人。流されんなよ!もっと力一杯オール漕げよ!本気になれよ!)

小町「じゃあねー、お兄ちゃん!また後でね☆」

中断

紫呉の小町ちゃん呼びを小町君呼びに脳内変換してください
今後はそう表記します

◆◇◆◇◆

雪ノ下(文字通り嵐のようだったもう一人の来訪者と彼の邂逅を尻目に、私と由比ヶ浜さん、小町さんを引き連れ、家主のような堂々とした態度で草摩紫呉なる人物は、比企谷家のリビングまで移動した)

雪ノ下(そのまま小町さんを除き、勧められるままに席につく。私の隣の由比ヶ浜さんの様子を伺うと、どうやら比企谷くんのことが気になっているようで、ちらちらと今通ってきてばかりの廊下の方を見ていた)

雪ノ下(草摩紫呉は草摩紫呉で、特に気負った様子もなくのほほんとした感じで座っていた。草摩の人間ということで、少々気を張っていたのだが、拍子抜けをした)

雪ノ下(私たちが彼の秘密を知っていることについて、気づいた様子はない)

紫呉「改めて自己紹介をするとだね、僕は草摩紫呉。職業は……ここ問題です」

雪ノ下「は?」

紫呉「僕の職業はなんでしょうか。ヒントは、僕のこの格好、かな」

由比ヶ浜「格好……着物……」

雪ノ下(むむむと唸るような声をあげながら、思案をする由比ヶ浜さん。この子は本当に素直というか……一応私も考えてみる。着物がヒント……)

由比ヶ浜「あ!はい!おすもうさん!」

紫呉「あはははははは」

雪ノ下「……」頭が痛いのポーズ

紫呉「いやあ、確かにおすもうさんも着物だけどね。僕がおすもうさんはないでしょ」

雪ノ下(彼は長身ではあるが、その体格は相撲取りとはほど遠い。それに、軽薄な雰囲気で、彼が真面目な職業についてるとは到底思えなかった)

紫呉「君はどう思う?」

雪ノ下(私のことだろう。思ったまま口にする)

雪ノ下「無職の遊び人、ですか?」

由比ヶ浜「ゆきのん初対面でそれはひどいよ!?」

紫呉「あはははははひーひひひひ」

雪ノ下(由比ヶ浜さんの意見はもっともなものだったが、この人物には、そのくらいで十分な気がした。実際、彼は私の無礼を気にしなかったようだ)

紫呉「まあ確かに、案外的を射ている意見かもね」

由比ヶ浜「え、当たってるんですか!?」

紫呉「いや」

小町「紫呉さんは小説家さんですよ」

雪ノ下(信じがたい事実を告げてきたのは、お茶の準備をしてきた小町さんだった。自分の体が固まるのが分かる)

由比ヶ浜「小説家さんかー、あ、だから着物!」

紫呉「そうなんですよ。っぽいでしょ」

雪ノ下(この人たちは……何を言っているの……?目の前のやりとりが信じられず、ぞっとさえする)

小町「ちなみに、これ紫呉さんが書いたそうです」

雪ノ下(比企谷家のたくさんある蔵書の中から、小町さんが取り出した本の表紙を見て、私はまた固まった)

雪ノ下(読んだことがあるものだった。しかも、少し、ほんの少しだけど、いいと思った本だ。それ、目の前のこの人物が……?)

由比ヶ浜「すごーい!難しそう!」

紫呉「あ、趣味でこういうのも書いててね」

雪ノ下(私の石化はもう解けないとさえ感じた。そこにあったのは、少女向けと思われる、ライト層の文庫本だった)

由比ヶ浜「へー」

小町「紫呉さんは生き方全部が趣味みたいですけどね」

紫呉「それを言われると、どうしようもないんだけどね。ま、そんな感じで適当に本を書いて暮らしてるわけだけど」

紫呉「一応僕も、そして楽羅も、草摩本家の人間だ。そして、十二支でもある」

雪ノ下「」

由比ヶ浜「へー、十二支……って、え!?」

紫呉「……」

雪ノ下(薄笑いを浮かべて、こちらを試すような、面白がるような視線で覗き込んでくる草摩紫呉。知っていて言ってきたのか、それともかまをかけられているのか。判断がつかない)

雪ノ下(まるで身内のあの人間と話をしているような錯覚に捕らわれそうになるのを、必死で振り払うように私は言った)

雪ノ下「本家の方だったのですね。こちらも改めて言いますと、私は雪ノ下雪乃です。家のものが何度かお世話になっているそうで」

紫呉「へー、雪ノ下さんところの」

由比ヶ浜「ゆきのん、ゆきのん、十二支って」

雪ノ下(しかし由比ヶ浜さんは動揺を隠しきれないようだ。小声でこっそりと、というつもりなのか、こちらに耳打ちしてくる)

雪ノ下(これでは態度でバレバレね……私はため息を吐いた)

中断

雪ノ下(誤魔化すのは無理……いえ、そもそも誤魔化す必要はあるのかしら?)

雪ノ下(この草摩紫呉という男が、なぜいきなり十二支のことを話題に出したのか)

雪ノ下(十二支のもののけ憑きについて、小町さんたちの話からすると、草摩の人間は記憶を消してでも隠しておきたいはず)

雪ノ下(それをわざわざ草摩の外の人間に言うのは、相手が十二支のことを知っているのかという確認作業)

雪ノ下(そう、試すのではなく、確認のはず。知られたら記憶を消さなければならないほどの重要事について、かまをかけるのはリスクが高い)

雪ノ下(……十二支という単語を聞かれた時に、記憶を消すほどではない外部の人間に説明する為のもっともらしい定型文があるのかもしれないけれど、その可能性を一先ず置いておく)

雪ノ下(さて、確認をするということは、私たちが十二支という単語を、ひいては呪いについてまでの知識を持っているという確信があるということ)

雪ノ下(ではなぜその確信がこの男にあるのか。私たちが初対面なのは間違いない。記憶を消されているのでも無ければ)

雪ノ下(そして、記憶まで消した相手を、再び十二支の知識を得られる環境に置いておくとは思えない)

雪ノ下(つまりこの人に――私たちが十二支の知識を持っていると、教えた者がいる)

雪ノ下(それは私たちが接触したことのある草摩に縁あるもの。はとりという人間に私は会ったことがあるようだけれど、それは二年近くも前の話だし除外する)

雪ノ下(そして、この男にそれを教えることに、なんらかの意味がある人物。それは……)

雪ノ下(……もちろん、この男がとても直感の鋭い人で、初対面の私たちからなんらかの雰囲気を感じとり、かまをかけてきたという可能性をどうしても捨てきれないけれど)

雪ノ下(でも、そもそも私たちがここに来たのは――)

雪ノ下「小町さん、これはどういうことかしら」

小町「え、えーっと」

雪ノ下(今日、私たちは二人とも小町さんに呼ばれた)

雪ノ下(私たちのことが草摩の本家の人間に知られたらまずいと言っていたのに、この草摩の二人が家に訪れた時、比企谷くんになんの警告もなく小町さんは私たちがいる部屋まで二人を通した)

雪ノ下(そして、比企谷くんを部屋に残して、私たちをわざわざ連れ出して、この男と話す機会を作ったのも小町さん)

雪ノ下(ここまで重なれば、この可能性が一番高い)

雪ノ下「もちろん、あなたが私たちを陥れるつもりでこんなことをしたのではないと分かっている」

雪ノ下(自分の推論が正しいと信じて。いえ、確信して、それを相手に認めさせるために、はっきりと断ずる。逃げ場は与えない)

雪ノ下「それは彼の、比企谷くんをも危険にさらすことだもの」

雪ノ下(……それを親しい彼女にするのは、少し心苦しいけれど)

小町「……いや、流石ですね、雪乃さん。便りになりすぎちゃって怖いくらいです」

雪ノ下「……簡単な推論よ。まずは聞かされてもらおうかしら、その意図を」

由比ヶ浜「えっと……どゆこと?」

――


由比ヶ浜「えーっと、つまり……小町ちゃんは今日この紫呉さんに私たちを会わせるために呼んだってこと?」

小町「はい。そしてできれば、それをお兄ちゃんに聞かれないように」

雪ノ下(あの彼女を呼んだのはその為ということ)

紫呉「いや、楽羅がついてきたのはほんとにたまたまなんだけどねっ!」

雪ノ下(サムズアップというサインをしながた力説する男。これも嘘なのか。本当なのか。存在が軽薄すぎて、すべてが嘘臭い)

雪ノ下(この男は信用してはいけないわね)

由比ヶ浜「あの、じゃあ話ってなんなんですか……?」

紫呉「うん、まあ、君たちの立ち位置をはっきりさせたほうがやり易いでしょって話なんだけど」

雪ノ下「立ち位置……?」

紫呉「聞いたと思うけど、十二支のことは外の人間にはタブー。知った人間の記憶は消される」

由比ヶ浜「……」ギュッ

雪ノ下(その話題は、彼女には俄に恐ろしいものだったようで、隣に座っている私に身を寄せて、服の裾を握るのを感じた)

紫呉「それを理由に、君は彼に協力を断られたそうだね」

由比ヶ浜「……はい」

雪ノ下(その話は、一応昨夜由比ヶ浜さんと電話をした時に聞いていた。私も彼の主張には同意できる部分があったので、全面的に彼女の味方にはなれなかった部分でもあった)

紫呉「そして恐らく君も、このまま行けば彼は、協力は受けてもそのうち離れていくつもりだろう」

雪ノ下「……離れて」

紫呉「そこでだ。ならいっそ、君たちの存在を認めさせてしまえばどうだろう」

由比ヶ浜「え」

雪ノ下「……そんなことが?」

紫呉「僕は十二支だし、当主のアキトさんには顔がきく」

紫呉「僕の方から言えば、君たちが十二支のことを知っていることの許しをもらい、なおかつ今後彼のサポートをする大義名分がもらえるかもしれない」

由比ヶ浜「ほんとですか!?」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「ゆきのん!どう!?」

雪ノ下(強い意思を込めた目線を由比ヶ浜さんは私に向けてきた。この提案を信じたいという意味だろう)

雪ノ下「……しかしそれは、絶対ではないというという口ぶりだと感じました。つまり、最悪の結果は、私たちの記憶が消されるだけの場合もあるのですよね?」

紫呉「もちろんそれは避けられない。ただ、このまま草摩本家にも近寄れないままでいては君たちは彼を救えない」

雪ノ下「彼を、救う……?」

由比ヶ浜「ヒッキーをってことだよね?」

雪ノ下(変な口ぶりだった。確かに彼の呪いは、他の人に知られてはいけないとはいうものの、だからといってそれでまるで絶望にでも落とされるような類いとは思えない)

紫呉「猫憑きだけの彼に、課せられた運命があるんだ」

紫呉「彼がアキトさんと交わしたある約束を果たすことができなければ、彼は一生、草摩の本家の、猫憑きのための離れに」

紫呉「幽閉され、その後出ることはできない」

雪ノ下(彼の言っていることを飲み込んで、そして本当なのかと、私は小町さんに視線を向けた)

雪ノ下(いつも純粋でまっすぐな視線を向けてくる彼女が、さっと視線を逸らす様を見て、私はそれが事実なのだと理解した)

中断
ゆきのんの思考の流れがおかしかったり矛盾があっても
それは作者の頭脳の限界なので許してちょ

読み返すと結構誤字脱字が目立ちますね……
文章的に変なところも、脳内補完していただけると助かります

◆◇◆◇◆

由比ヶ浜(その人の言ってることが、わからなかった)

由比ヶ浜「幽閉……ってなに……」

由比ヶ浜(言ってる意味がわかんなかったわけじゃない。むしろ、一番大切なことは分かった。分かりたくなかったことなのに。この人が言ってることは、嘘じゃないって)

由比ヶ浜(聞きたかった答えは、そんなことありえないってことなのに。小町ちゃんも、ゆきのんも、あたしに応えてくれない。視線を合わそうともしない。応えてくれたのは、わからないことを言った本人だった)

紫呉「一生そこから出られないし、一生人と会うこともできなくなるってことさ」

紫呉「けど死ぬことだけはない。草摩本家が一生養ってくれるからね」

由比ヶ浜(一生養って……?)

由比ヶ浜(ヒッキーは、専業主夫になりたいって……一生、養ってもらってって……ヒッキーは、それを、どんな気持ちで……?)

由比ヶ浜「なんで……そうなるんですか?ヒッキーが猫だからって、意味わかんないし……」

紫呉「猫憑きはそういう運命なんだ。昔からね。人からも、十二支(ぼくら)からも、仲間はずれにされる。誰も仲間はいない。常にひとりぼっち。そういう役目なんだ」

由比ヶ浜(かっと、頭が熱くなった。仲間はいない?ひとりぼっち?それが役目!?意味わかんないし、ヒッキーはヒッキーで、そんなんじゃない!)

由比ヶ浜「そんなの、関係ない!ヒッキーにも仲間くらい……!みんな、みんないるのに!」

由比ヶ浜「そんな運命なんて、おかしい!」

由比ヶ浜(立ち上がらんばかりの勢いで、あたしはその人を見返した。その人にただ分かって欲しくて。でも)

紫呉「そうか、ハチくんにも、友達が、仲間ができたんだね。でも、その人たちは」

由比ヶ浜(そう言いながら、あたしを見るその人の目は、顔は笑っているのに、すごく冷たくて――すごく怖かった。思わず、後ずさってしまうほどに)

紫呉「彼の本当の姿を知らないんじゃないの?」

由比ヶ浜「それは……知らない……ですけど、例え知っても……!」

紫呉「変わらない?本当にそうだろうか。君たちだって、彼の本来の姿を――」

訂正
由比ヶ浜「そんなの、関係ない!ヒッキーにも仲間はいるし……!みんな、みんないるのに!」

小町「紫呉さん!!」

由比ヶ浜(何かを言いかけたその人を、小町ちゃんが止めた。吐き出したような小町ちゃんのそんな苦しそう声は聞いたことなかったし、耐えるような悲痛な顔は見たこともないものだった)

紫呉「おっと、これは僕から言うことじゃないな、確かに」

由比ヶ浜(本来の?本来のってなに?猫になること以外にも、何か……?)

雪ノ下「ひとつお聞きしたいことがあるのですが……その、先程言っていた約束というのは、どういう?」

由比ヶ浜(ゆきのんが言ったことで、あたしも思い出した。約束……そうだ、この人はたしか、ヒッキーが当主の人との約束がって)

由比ヶ浜「その約束って……どうしたらいいんですか……?その約束を守ったら……ヒッキー、閉じ込められたりしないってことで……いいんですよね?」

紫呉「そうだね」

由比ヶ浜(そう言いながらも、視線逸らして笑うその人に、あたしはなんだか悪寒を感じた。嘘なのかもしれない。全部嘘なのか、何が嘘なのかもわからないけれど)

紫呉「でも、約束に関しても、僕の口からちょっと言えないな。というか」

紫呉「そんなことも君たちに言えないようでは、彼は約束を果たせない」

由比ヶ浜(聞きたいことはたくさんあるのに、何を聞いても無駄なんだって、その時感じた。この人は、これ以上ほんとのことを言うつもりはないんだって)

紫呉「それで、どうするのかな?一歩前に進むか。それとも、別の道を探して、そこに留まるか」

由比ヶ浜(あたしは……)

由比ヶ浜(思わず、隣を見る。そこには、ゆきのんがいた。ゆきのんも、今度はあたしを見てる。うなずいてくれる)

由比ヶ浜(あたしたちは……あたしたちの答えは)

由比ヶ浜(ヒッキーを助けたい。それだけだった)

中断
シリアスばっかりで疲れてきたような
とっとと一段落つけて軽い話を書きたい

◆◇◆◇◆

楽羅「ねえ、ハチくん」

八幡(ようやく落ち着いたらしい楽羅は、俺のベッドの足元に座っている。俺は寝てる。話したくないという意思表示なのだが、楽羅は完全無視で涙ちょちょ切れる)

楽羅「あの二人は……知ってるの?」

八幡「知るわけないだろ」

八幡(何を、とは楽羅は言わなかったが、俺らの間で知ってるかと言ったら、当然あのことなので即答する。やだ、それってなんかツーカー夫婦みたい……マジで嫌だ)

楽羅「そうなんだ……これから教えるの?」

八幡「や、教えないって。あいつらはただ同じ部活ってだけだって言ったろ」

楽羅「それ。ハチくん、部活入ったんだよね。良かった、ちょっと前は、そういうのって言ってたし……良い方に変わったみたいで」

八幡「変わってねえよ。俺は変わってない」

八幡(実際は、ちょっとは変わってきたのではないかと、自分自身思うことはある)

八幡(でも、変わらない、変われない部分もあるのだ。そんな簡単に、変わったなんて言うんじゃねえよ)

楽羅「うん、そうだね。そういうところ、変わってない」

楽羅「私のこと、気に入らないとこも、変わってないんでしょ?」

八幡「……」

八幡(何も言い返せなかった。でも違う。本当に、本当に気に入らないのは……)

訂正

八幡「変わってねえよ。部活も強制的に入れられただけだし、俺は変わってない」

八幡(子供の頃のたった一回の出来事を許すことができない自分)

八幡(それだけで、彼女の裏ばかりを読もうとしてしまう自分)

八幡(俺を理解したようなことを言うなと思ってしまう自分……)

八幡「……」

楽羅「ハチくん……大丈夫……大丈夫だよ……どんな風にハチくんに思われたって、私が……私がハチくんを好きだから……」ギュッ

八幡(寝ている俺の首に抱きつくように、楽羅は腕を回してきた。それを振り払うことができない)

八幡「……」

ガチャッ

八幡「」ビクッ

紫呉「おやぁ。なんだ、いちゃいちゃしてるところだったのか。ごめんごめん」

由比ヶ浜「……」

雪ノ下「……」

八幡(あははと笑いながら言ってくるいつも通り軽薄な面した紫呉の後ろに、鬼がおる。赤鬼と白鬼、なんかめでたい感じだけど、悪鬼羅刹の如き面をした鬼がおる)

八幡「待て、違う。これは違う」

八幡(なぜ俺が言い訳をしなければならないのか、それはこれから先、決して解けない永遠の謎だろう。しかし俺はとにかく言い訳をした。マジ勘違いなんですって。ちょー怖いよ君ら)

楽羅「見られちゃった」イヤン

由比ヶ浜「別に……ヒッキーが誰といちゃいちゃしても気にしないし」

雪ノ下「そうね。ただ、できれば決して誰の目の届かないところですることをおすすめするわ。深い海溝の底とか」

八幡(なにこいつら。俺の周りって勝手な女が多すぎる)

―――
――


紫呉「じゃ、僕ら帰るけど。しっかりやりなさいよ、若人よ」

八幡「とっとと帰れ」シッシ

楽羅「ハチくぅーん!」ダキッ

八幡「うお」

楽羅「また来るからね。絶対絶対また来るから」スリスリスリスリ

八幡「お前はとっとと離れろ」

由比ヶ浜、雪ノ下「……」シラー

八幡(やめて!そんな目で見ないで!いや!俺の硬派でロックで女なんていらねーんだよってイメージが!崩れちゃうぅぅぅ)

八幡(もっとも元からそんなイメージがないという意見もあるが)

紫呉「はいはい、帰るよ」グイグイ

楽羅「あ、ハチくぅーん!また会おうねー!今度はデートしようねー!」ズルズルズルズル

八幡「はぁ……やっと帰ったか」

八幡(今回は比較的損害が少なくて良かった。肉体的にも精神的にもダメージは負ったが、建物的にはノーダメージだったのは僥倖だ)

八幡(なんたって破壊臣の異名を持ってもおかしくないくらい、来ると何かしら壊してくからな。扉とか、壁とか。ちーちゃん無事で俺歓喜)

雪ノ下「で、色々と聞きたいことがあるのだけれど……」

由比ヶ浜「うん、色々ね……」

八幡(だが、危機は去っていなかった……)

――


雪ノ下「まず聞きたいのだけれど。どうしてあなたはさっきの彼女に抱きつかれても変身しなかったのかしら」

由比ヶ浜「あ、うんうん!それ気になる!なんで!?」

八幡「あー、それな」

八幡「もののけ憑き同士は抱き合っても変身しないんだよ。言ってなかったけど、あいつら二人とも十二支な」

雪ノ下「へぇ」

由比ヶ浜「ふぅん」

八幡(あれ、反応が薄いザンス。しぇー?)

由比ヶ浜「でも……なんかずるい。同じなら抱き合っても変身しないなんて」

八幡「や、ずるいってお前……」

小町「まあ、だから十二支同士で結婚することも多いみたいですよ。もののけ憑き同士の辛さも分け合えますしね」

由比ヶ浜「え!じゃ、じゃあヒッキー、やっぱり将来はあの人と……」

八幡「や、それはありえないから」

八幡(ほんとぶっちゃけねえよ。つうかずっと楽羅と一緒とか体がもたねえ。前が見えねえ状態のしんちゃんみたいにはなりたくないし)

小町「まあ、今の十二支は皆さん独身ですけど……」

八幡「……」

由比ヶ浜「そうなんだ……。あれ、あの二人も変身するんだよね?何に?」

八幡「だからそういうの知りたがるのやめとけって。足突っ込むなっつうの」

由比ヶ浜「ぶー」

雪ノ下「……彼女、意味はわからないけれどあれだけあなたに執着しているし、そのうちうちの学校に転校とかしてこないでしょうね」

八幡(イミワカンナイ!とはなんだ。お前スクールアイドルかよ)

雪ノ下「さっきみたいな光景を毎日見せられるなんて刑務作業のようなこと、ごめんだわ」

八幡「それこそありえないから安心しろ」

由比ヶ浜「どうして?」

八幡「俺らより二学年上だから、楽羅は」

雪ノ下「年上……?」

由比ヶ浜「うそぉ」

小町「見えないですよね、楽羅さん。あんなにかわいいですし」

由比ヶ浜「あ、そだねー。てゆーか、紫呉さんも見た目はかっこよかったし」

八幡(見た目はね)

由比ヶ浜「もしかして草摩さんって美人ばっかりなの?」

八幡「まあな。俺や小町も含めて」

雪ノ下「比企谷くん、メンデルの法則って知っているかしら。劣等遺伝子でも、無くなるわけではないのよ」

八幡「誰が劣等だよ」

八幡(俺は魔法科高生だったのかよ。俺つえーしちゃうぞ)

由比ヶ浜「……ねえ、ヒッキー。その十二支の人たちに女の子って、まだいるの?」

八幡「それがなんだよ。別にお前関係ないだろ」

由比ヶ浜「いいから答えて!」

小町「いますよ。あと二人います」

由比ヶ浜「ふ、二人……もしかしてヒッキー、その二人も……」

八幡「ああいうのは楽羅だけだ」

雪ノ下「へぇ、そうなの」

八幡「ま、どっちにしろお前らが会う機会なんてないだろうけどな」

雪ノ下「そうね……」

由比ヶ浜「……」

八幡「……やっぱり、お前ら紫呉となんかあったのか?あいつはあんまり信用――」

由比ヶ浜「それよりもお泊まり会どうしよっか!」

雪ノ下「そうね……やはり、さっき言ったように今日これから」

八幡(げぇ!すっかり水に流れたかと思ったら覚えてやがった!)

小町「あ!すでにお兄ちゃんのお泊まりグッズは用意してありますよ!」

雪ノ下「それはグッジョブよ、小町さん」

由比ヶ浜「小町ちゃんいえーい」

八幡(ぱちーん!じゃねえ!こんな時までできる妹っぷりを発揮しないで欲しいわ)

◆◇◆◇◆

紫呉「というわけなんですが」

慊人「へぇ。あの化け物、女を囲ってるんだ……しかも二人も。汚らわしい。やっぱり、猫はダメだね」

紫呉「それは、あなたとの約束の為でしょう。彼も頑張っているみたいですよ」

慊人「ああ、あの約束、まだ覚えてたんだ。くすくす、どうせ、叶いっこないのにさ。やっぱり、化け物にはそんなこともわからないのかな」

紫呉「……そうですね」

慊人「いいよ、その二人のこと。特別に許してあげる。僕は寛大だからね」

紫呉「さすが。それでこそ当主としての雅量です」

紫呉(そうやって、尊大にして。足元掬われるまで気づかなきゃいいさ)

中断
というかやっとシリアス面は一旦終わり
次は猫八幡と行く奉仕部お泊まり会かな?
シリアスをとっとと消化したい一心の投下スピードだったので
次は遅くなるかも

八幡「絶対にいかない」

八幡(絶対にだ!そのためならこの場で駄々っ子のように転げ回ることもやむなし!や、しないけど)

八幡(時はそろそろおやつの時間を回ろうかという頃だが、俺たちは今昼御飯を食べていた)

八幡(ついちょっと前に厄介な客二人が帰ったところで、その客が来ていたため、お昼を食べ損なっていたのだ)

八幡(この比企谷家で俺たちと言ったら当然、俺と小町の兄妹のことのはずだが、なぜか今は余計なの二人も食卓を共にしていた。お前らも客だろ……そろそろ帰れよ)

雪ノ下「あなたが何を言おうとも、これは決定したことよ。諦めなさい――とは言わないわ。ただ、抵抗をしても無駄と知りなさい」

由比ヶ浜「楽しみだねー。みんなでお泊まり会とか。ゆきのんとはよくしてるけど」

八幡「ならお前らだけでしろよ。つうか、男一人と女二人でお泊まりとか、端から見たら屑だろ」

八幡(この二人相手なら、そんな屑に俺はなりたい!という奴も世の中にはいるだろうが、生憎俺はなりたくない)

八幡(しかも屑になるならなるで、ヤることヤれなきゃ意味ないだろ。別に今のはこの二人とヤりたいという意味ではない。男の一般論を言ったまでだ)

八幡(そう言うと、なんでヤれないって決めつけんだよ。お泊まりできるならワンチャンあんだろワンチャン!という意見もあろう。しかし俺にはワンチャンはない)

雪ノ下「安心しなさい。あなたは元々屑よ」

八幡「安心できる要素ねえよ……」

由比ヶ浜「そ、それに男子一人、女子二人には見えないんじゃないかなぁ。だってさ」

雪ノ下「そうね。端から見たら女子二人と猫一匹だもの」

八幡(そう、俺がこの二人とおとまりする場合、ワンチャンではなくネコちゃんにされるのだ)

八幡「それが嫌な理由の筆頭だろ……」

八幡(筆頭すぎて馬イクに跨がって戦国時代をれっつぱーりーするレベル)

八幡「また一晩中猫になんてされて堪るかよ。知ってっか?俺が熱出したのって絶対お前がいじくり回したせいだからな」

八幡(知ってるぅ?それとも知らないのかなあ?えー、ほんとに知らないのお?遅れてるー。この言い回しにどんだけ泣かされたことか……(泣))

雪ノ下「も、もちろん、それは把握しているわ。あの時は、その、初めてだったから勝手が分からなかっただけよ」

雪ノ下「一回経験したのだし、今度は上手くできる自信があるわ。あなたに負担がかからないよいに」

八幡「おい待て」

八幡(うぇい!うぇいと!その言い方、なんか卑猥)

由比ヶ浜「二人とも……なにしたの……?」

八幡(してないですよー。ナニなんて、いや、何もしてないでーす)

八幡(いかん、雪ノ下のはっきりした単語を使わないせいでなんか卑猥シチュエーションのせいで、こっちまで頭に下ネタの花が咲いてやがる)

雪ノ下「何って……その、普通に彼を泊めただけよ?あ、もちろん彼はずっと猫の姿だったわ」

雪ノ下「それで、猫の時の姿が愛らしかったから、ちょっと撫でたりはしたけれど、あとは普通にご飯を食べて、お風呂に入って、就寝して」

由比ヶ浜「……お風呂って、ヒッキーも入ったの……?ずっと猫の姿だったのに?」

雪ノ下「え、ええ……いえ、違うのよ、由比ヶ浜さん。その夜ちょうど地震があって、その揺れで落ちてきた染料が彼の毛を汚すアクシデントがあって」

雪ノ下「それで私が仕方なく洗ってあげただけなの」

八幡(いや、痴女ってたじゃんお前。裸で風呂入ってきたし。言わんけど)

由比ヶ浜「ふぅーん。じゃあさ……寝たのって、どこで?」

由比ヶ浜「ヒッキー、どこで寝たの?」

八幡(かな?かな?とか言い出しそうな雰囲気の由比ヶ浜。いつの間にL5発症したんだよ……)

雪ノ下「それは……私のベッドだったけれど……比企谷くんは猫の姿だったのだし……」

八幡(いったいなんなんだ!?今日のガハマさんは強いぞ!あの雪ノ下が小さく見える!そこ、元々一部は由比ヶ浜のが大きくて、雪ノ下は小さいとか言わない!そこって俺のことな)

由比ヶ浜「へぇー、そうなんだ。一緒に寝たんだ。猫の姿でだけど」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「ヒッキー」

八幡「ひゃ、ひゃい?」

八幡(くっ、なんだこの威圧感(プレッシャー)は!?これが本当に由比ヶ浜の戦闘力だというのか!?バカな、地球のビッチがこれほどの)

由比ヶ浜「泊まり……行くよね?」

八幡「いや……」

由比ヶ浜「いや?」

八幡「……行き……ます」

八幡(ふえーん、いつものガハマさんじゃなーい)

中断

中断

すいません、ミスった

―――
――


八幡「じゃ、行ってくるわ……」

小町「はいはーい!いってらっしゃーい!」

由比ヶ浜「じゃねー、小町ちゃん」

雪ノ下「それじゃあ」

小町「はい、二人ともふつつかな兄ですが、よろしくお願いします!」

八幡「婿入りかよ……」

由比ヶ浜「な、なんか照れちゃうね」

雪ノ下「照れるというより、その単語はおぞましいかしら」

八幡「そんなに言うなら行かんぞ」

雪ノ下「さ、とっとと行きましょう」

八幡「はいはい」

八幡(八幡いっきまーす!)

八幡(決まってしまったことをいつまでも、ぐだぐだフェアリーズしても仕方がないとテンションをあげぽよしても、足は思うほど軽くはならなかった。むしろぐだぽよしてる)

八幡(前回の雪ノ下による拉致よりも好転したと言えるのは、今回は猫の姿にされて連れ去れるのではなく、自分の足で監禁場所へと向かっていることだろうか)

八幡(それも果たして好転したと言えるかは疑問だが。死刑執行へと向かう死刑囚の気持ちになってるかもしんない)

八幡(お泊まり会に加わった由比ヶ浜にしてもそうだ。由比ヶ浜が雪ノ下の過度の猫好きへのストッパーになるのを期待する反面、俺の秘密を知るものが増えたことへの焦燥感も強い)

八幡(バレるとやばい。俺の猫化で二人の記憶がやばい、というだけはなく、こうしていることも、これまでのことも、すべて慊人にはお見通しなのではないかという恐怖にも似た感情と、あとは少しの罪悪感がわいてくるのだ)

八幡(今まで、慊人にばれるようなへまはしていない。紫呉は怪しいが)

八幡(しかし、俺が感じている恐怖は、誰かが密告しただとか、監視されているかもしれないだとか、そんなちゃちなものでは断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗だ)

八幡(もののけ憑きの運命からは決して逃れない。何をしようとも、何をされようとも慊人から離れることはできない。呪いとも呼ばれる絆。それが俺を縛り、そんな感情を喚起させている)

雪ノ下「じゃあ、私と比企谷くんで食材などを買っていくから、由比ヶ浜さんは一度お家に戻ってから、改めて私の部屋へ来るということで」

由比ヶ浜「うん!あ、お菓子はそんときあたしが買ってくね!」

八幡(きゃいきゃいと話ながら歩く二人の後ろをついて行きながら)

八幡(同じ道を歩いているというのに、俺は二人との間に、越えられ得ぬ断絶を感じて、底冷えする想いを抱えていた)

◆◇◆◇◆

由比ヶ浜(二人と別れてから、あたしはそっとため息を吐いた)

由比ヶ浜(吐いてつい、きょろきょろと辺りを見渡してしまう。二人の後ろ姿はもう見えないし、誰かが見てるなんてないとはわかってるけど)

由比ヶ浜(家に向かいながら考える。今日のこと、ヒッキーのこと、これからのことを)

由比ヶ浜(いきなり言われた幽閉なんて言葉は、現実感が無さすぎてよくわからない。ヒッキーだって、今まで全然そんな素振りもなかったし)

由比ヶ浜(それを言えば、猫に変身することもそうだと言える。一度変身するところを見たあたしが、夢じゃないかと思うほど、ヒッキーは隠してきたんだから)

由比ヶ浜(でも、猫のことを知ったあたしたちに、ヒッキーが自分でその先のことを話さないことに、嫌な気分がした)

由比ヶ浜(閉じ込められるなんて、ヒッキーだって嫌に決まってるのに。あたしたち助けを求めてくれたっていいのに)

由比ヶ浜(ヒッキーを救いたいって気持ちはあるけど、それで何をどうするればいいかが分からない)

由比ヶ浜(呪いだとか約束だとか言っても、結局それでどうしたらいいのかは誰も教えてくれなかったし)

由比ヶ浜(そもそも、あたしでは何も役に立たないのかもしれない)

由比ヶ浜(それでちょっと思い出すのは、あの事故のこと。わけもわからずに立ち尽くした、あのこと)

由比ヶ浜(今度はヒッキーの力になりたい。そのためには、自分から動かなきゃダメだ)

由比ヶ浜(少し前にも決意したことを、あたしは再確認した)

中断
戸塚誕生日だったんですか
そういえばまだ戸塚出してないな

ちょっと最近みんな考えてることが多すぎるかな

◆◇◆◇◆

雪ノ下(彼と二人きりで、これだけ町中を歩いたのは、これが初めてのことではないかしら)

雪ノ下(もちろん、私たちの間に会話と呼べる会話はなく、ただ目的地が一緒だからという程度の距離感だとしても)

雪ノ下(由比ヶ浜さんへの誕生日プレゼントを買いに行った時や、ついこの間だって、猫の彼を連れて登下校をしたけれど、人間の彼とこうして連れだって限定的ではない空間を歩くというのは、無かったと思う)

雪ノ下(それが何だというわけではない。感動や、心動く何かがあるわけでは決してない。彼は今、猫ではないのだから)

雪ノ下(けれど感慨はあった。ただ歩くだけではない。こんなに彼のことを想って二人で歩くことがあるとは、以前の私は予想もしなかった)

雪ノ下(それが、彼の運命とやらを聞いたが故の同情では決してない、とまでは言えないけれど)

雪ノ下(そうした同情を、彼が何よりも嫌うだろうと、予想はできるけれど)

雪ノ下(それでも、彼を救いたい……)

雪ノ下(それを、自分一人のことでさえ、まだ満足に何もできないのに?と囁く私がいても)

雪ノ下(それでも。それでも彼のために動きたいと思う。もちろん、彼を救うと言っても、彼自身が自ら救われたいと手を伸ばしてくれなければ意味がない)

雪ノ下(それはどうすればいいのだろう)

雪ノ下(まず彼の状況を改善するためには、呪いを解くか、さもなければ、猫憑きを幽閉するという草摩しきたりを無くさなければならない)

雪ノ下(その為には、草摩の本家の人間――特に十二支や当主と関わる必要がある)

雪ノ下(今後、あの紫呉という男の思惑通り、私たちに比企谷くんをサポートするという名目ができても、彼らと会うことができるかさえも怪しい)

雪ノ下(そうなれば、うちの力を借りなければならないかもしれない)

雪ノ下「……」

雪ノ下(また、彼らと接触できても、こちらの意図通りにできるとは限らない)

雪ノ下(既に彼が諦めてしまっているのは、それをしようとして、無理だから諦めてしまったのだろうから)

雪ノ下(その彼を再び立ち上がらせ、前を向かせ、一緒に歩いていかなければならない)

雪ノ下(私たちでそれをしなければならない)

比企谷「……」

雪ノ下(盗み見た彼の目は、いつも通り腐っていて、果たして今どこを見ているのかは、判断がつかなかった)

訂正

雪ノ下(また、彼らと接触できても、こちらの意図通りにできるとは限らない)

雪ノ下(既に彼が諦めてしまっているのは、それをしようとして、無理だから諦めてしまったのだろうから)

雪ノ下(その彼を再び立ち上がらせ、前を向かせ、一緒に歩いていかなければならない)

雪ノ下(私たちでそれをしなければならない)

八幡「……」

雪ノ下(盗み見た彼の目は、いつも通り腐っていて、果たして今どこを見ているのかは、判断がつかなかった)

中断

現在の三人の思惑終わり
次からお泊まり

八幡に対してゆきのんは、

1、猫にするのにはこれまで通りがんがん抱きついていくスタンス

2、色々話を聞いて、猫八幡のことを真剣に考えたらちょっと抱きつくのは恥ずかしくなってきた

どっちがいいか↓
※別に多数決とか安価いくつ取るとかではありません

◆◇◆◇◆

雪ノ下「今のまま、一歩でも玄関から上がったら、通報するわよ」

八幡(入って1秒、雪ノ下が真剣な目をしながらそう言うので、そこから何もできない。俺はいつでもロンリネス)

1なら

八幡(もうほんと帰ろうかな……わりとガチでそう思った俺に、雪ノ下がまた指図をする)

雪ノ下「……後ろを向いて」

八幡「お前、この間はばんばん抱きついてきてなかったか……」

八幡(今のまま上がるなというのはつまり、猫にするぞ、ということなのを容易く看破する俺。あれれーとばかりに言ってやる。猫関連ならもう恥じらいとかないのかと思ってたわ)

雪ノ下「いくらあなたが猫になるといっても、一瞬は抱きつくときの感触があることに気づいたの」

雪ノ下「それに、あの時の私はどうしていたわ……由比ヶ浜さんに言われて、自分があの時異常だったと思い知らされたわ」

雪ノ下「浮かれすぎていただけ……(あなたに抱きつくことへの正当性を得たことを……)ボソッ」

八幡(こいつ、猫好きで身を滅ぼすんじゃなかろうか)

2なら

八幡(そして愛する人(戸塚)を大切にするためなら臆病になってもいい!と思いを馳せていた俺に、雪ノ下はまた抱きついてきた)

ボンッ

雪ノ下「もう上がってもいいわ。というか、私がだっこしていったほうが早いわね」ヒョイッ

猫八幡「ああそう……」

八幡(もはや何も言うまい……最近、俺が文句を言う時、それをちょっと嬉しそうにしている感情が雪ノ下の目の奥に見えたので)

八幡(雪ノ下のSっ気をできるだけ成長させないためにも、俺はされるがままにすることにした)

こんな感じで変化します

あ、すいません、上は1と2逆でした

アンケはいらんな
好きにしてくれたほうが楽しめるしいちいちきかれても萎える

>>466
すいません、どっちのスタンスも魅力を感じて
悩んだ結果筆が止まったのでちょっと聞いてみました
多数決や安価ではないと言ったのは、
結局は私が「あ、こっち」のが萌えそうという方向に進めるつもりだからです

答えていただきありがとうございました
↓のような感じで行こうと思います


◆◇◆◇◆

雪ノ下「今のまま、一歩でも玄関から上がったら、通報するわよ」

八幡「招いておいてそれって酷くね」

八幡(入って1秒、雪ノ下が真剣な目をしながらそう言うので、そこから何もできない。俺はいつでもロンリネス)

八幡(そして愛する人(戸塚)を大切にするためなら臆病になってもいい!と思いを馳せていると、雪ノ下はさらにこう宣った)

雪ノ下「後ろを向いて」

八幡「はいはい、どうぞ」

八幡(どうぞどうぞ、やー。今のまま上がるなというのはつまり、猫にするぞ、ということなのを容易く看破した俺は、素直に後ろを向いた)

八幡(最近、猫の俺が文句を言うと、それをちょっと嬉しそうにしているような色が、雪ノ下の目の奥に見え隠れするので、)

八幡(雪ノ下のSっ気をできるだけ成長させないためにも、俺はされるがままにすることにしたのだ)

雪ノ下「……」ジッ

八幡「どうした。やるなら早くしろよ」

八幡(最早介錯を頼む武士のごとき潔さっぷり。くぅー惚れるねえ。惚れろよ……)

雪ノ下「いえ、なんでもないの……じゃあ、失礼するわ」

ギュッ

ボンッ

八幡(ほどなく猫になった俺を持ち上げる雪ノ下)

猫八幡「……つうか、なんで後ろ向かされたんだ?前から抱きついても同じだろ」

雪ノ下「あなたの顔が急接近する映像なんて見せられたら、悪夢に出るでしょう?」

猫八幡「ああそう……」

雪ノ下「それに、改めて冷静な頭で思い返すと、抱きつく時の自分の顔が、あなたの目に写って見えるのだもの……」

猫八幡「おお、やっと猫に狂ってる時の自分の姿を客観視できたのか」

雪ノ下「そういうことではないのだけれど……」

雪ノ下「……あなたも、猫にされることばかりをいやがっているけれど……」

雪ノ下「……いえ、なんでもないわ。部屋の中にいきましょう」

八幡(雪ノ下が飲み込んだ質問がなにか。俺には予想通りのものかもしれないし、違うかもしれない)

八幡(ただ、聞くと恥ずかしそうな気がするし、聞かれたことに答えること自体も恥ずかしそう)

八幡(さらにこの質問を解き明かしてしまったら、今この状態すら恥ずかしくなりそうなので、俺も黙殺した)

八幡(だいたい、雪ノ下が聞くことをやめた質問を、俺の方からほじくりかえしても仕方がない。やぶ蛇はつつかないが俺の主義だ)

八幡(代わりに俺は、不平を漏らした)

猫八幡「これからまた猫地獄か……」

雪ノ下「猫地獄……あ、いえ、仕方ないでしょう。この部屋には今、私たちしかいないのよ。男女が二人きりで密室にいるなんて、相手に好意を持っていなければ、あってはならないことよ」

八幡(猫地獄という単語に、ちょっと言ってみたそうな雪ノ下を華麗にスルー)

八幡(つうか、じゃあ男二人ならいいんか。マワしたろかこのアマ、とかまた下ネタが顔を出しそうになる俺)

八幡(やめろ俺!下ネタなんてネットの匿名掲示板だからげらげら笑って済ませられるんだ!現実で俺が言ったらドン引きで社会的抹殺間違いなし!葉山レベルなら笑って済まされるんだろうがな、くそ)

八幡(オナ禁・誓いウォーカーが、フォースの暗黒面へと誘おうとするのを必死で振り切れフリクリフリクラとか必死になったり)

八幡(あれ、さっきのマワしたろかって幽白で幽助が言ってた台詞で合ってたよな?とか考えていると、雪ノ下がぽつりと呟いた)

雪ノ下「……由比ヶ浜さんが来るまでは我慢して。彼女が来たら、一度戻ってもらうけれど」

猫八幡「ああ、そうな」

八幡(猫が苦手の由比ヶ浜。猫を見ると悲しい気持ちになると言っていた彼女の目には、今の俺はどう写っているのだろうか)

中断
猫には食いつきつつも、少々の恥じらいを隠してるくらいの描写は必要
という結論に至りました。
お騒がせしました。

――


八幡(由比ヶ浜はまだ来ないので、未だ雪ノ下と二人きり。部室なら、お互いただ本でも読んでいれば過ぎ去ってくれる時間だが)

八幡(生憎と猫になってる俺は本を読めないし、本の虫のはずの雪ノ下は、本よりも猫の俺に夢中だ)

八幡(今は色々なポーズで尻尾をぱたぱたすることを強要されている。言いなりを決め込んだ俺は、言われるがままにポーズを取って、尻尾をぱたぱた中だ)

八幡(こんだけぱたぱたしていると、そのうちエンジェモンにでも進化してしまうかもしれない。や、猫だからエンジェウーモンか。だが残念ながら俺は男だ)

八幡(雪ノ下は俺がぱたぱたしている尻尾をひたすらじーっと見て――表面上は無表情を装っていても――、どうやら悦に入っているらしい。時々ふふっひって感じの笑みが漏れそうになっている)

八幡(こいつ、幸せすぎるとこうなるのか。やばい、猫になってから雪ノ下のイメージががらがら崩れ去っている。めたくそ塵まで崩壊したイメージは、変態なんじゃこいつという感じで再構成されつつある)

八幡(また、ただ見ているだけなく、時々手を尻尾の着地点に置いてくる。感触が気持ちいいらしく、たまに目を細めて鼻息が荒くなっているように見える)

雪ノ下「あの……」

猫八幡「はいはい、次はどんなポーズすりゃいいんだ?」

八幡(光魔法かっこいいポーズでもしてやろうか。上手くいけばこの猫狂いモンスターと化した雪ノ下が、光の中へと消えてくれるかもしれない)

雪ノ下「いえ、そうではなくて……えっと……私も、寝転がりたいのだけど」

猫八幡「寝転がる?猫の俺と一緒に?だじゃれか」

八幡(ははっ、ワロス)

雪ノ下「ち、違うわ!そんな意図は決してないわよ!私がだじゃれなんて……!」

猫八幡「あー、わかったわかった。寝たいなら好きにしろよ」

八幡(いい加減飽きたのかな。ショボーン。え、なにこれ、ひょっとして……俺、寂しい……?そんなバカな)

雪ノ下「ええ、じゃあ……」

八幡(いそいそと寝転がる雪ノ下。猫の俺の隣に(だじゃれではないらしい)。いや、ちょっと待て、これって隣というか……)

雪ノ下「……どうして尻尾を真下に下ろさないのかしら?」

猫八幡「……顔に当たんだろ……お前の顔に」

雪ノ下「……そうね。私としたことが、うっかりしていたわ」

八幡(そうそう、うっかりうっかり。もう、雪乃ちゃんはドジっ子ね☆)

八幡(じゃねえええええええええ)

八幡(こいつ、顔で尻尾を感じる気だよ!手だけでは飽きたらず、顔に受けようとしてやがるよ!驚きのあまり銀魂ツッコミしちゃうわ!)

八幡(え、そんなんやりたいの?猫の横で寝ちゃったら、やだ、なんか顔がむずむずするーと思ったら、猫の尻尾が顔に当たっちゃってた、かわいいっ☆みたいな?)

八幡(いやあ、メルヘンだな。思わず四連続ジャンプで私のメルヘンティーパーティーとか飛んじゃいそうなくらい)

八幡(つうか、猫絡むとほんと幼くなるな、この子。ちらっと見ると、雪ノ下はまだ俺の尻尾を見てる。これはしゃーなしだな……)

八幡(ほれ、尻尾ぱたぱたー)

雪ノ下「!」

八幡(うわっ、超嬉しそう。ほれほれ、ここけ?ここがいいのんけ?ぱたぱた)

雪ノ下「やだ、もう」クスクス

八幡(首筋とかどうだ。耳とかも。ぱたぱた)

雪ノ下「ひ、比企谷くんっ、く、くすぐったい、くすっぐたいから、もう」

八幡(無邪気な幼子のように笑う雪ノ下の新鮮さに、俺もつい、子供ように意地悪したくなり、もうしばらくその尻尾遊びは続いた)

中断

猫とのスキンシップネタ誰かください
自分、犬派で猫飼ったことないので……

ちょっとだけ

ぱたぱたへの道


猫八幡「さて、由比ヶ浜が来るまでどう時間潰すか」

雪ノ下「……」ジー

猫八幡「……なんだよ、じっと見て」

八幡(雪ノ下さまが俺をみてる……いや、正確には俺のケツの辺りを……はっ!ま、まさかやらないかってことか……?ノンケでもくっちまう気か!?)

雪ノ下「その……あなたのその尻尾って」

猫八幡「尻尾がどうした」フリフリ

雪ノ下「自由に動かせるのね……」

猫八幡「そりゃあな。俺の体の一部だし」

八幡(まあでも普通の人間なら不思議だろう。人間には尻尾はないし。サイヤ人でもなければその感覚は分かるまい)

雪ノ下「じゃあ、その尻尾を……こう、上下左右に動かすというか……」

猫八幡「振ればいいのか?」フリフリ

雪ノ下「いえ、それもいいのだけれど……こう、ぱたぱた……?とできないかしら?」

猫八幡「あー、ぱたぱたね、ぱたぱた」

八幡(マリオの敵キャラのことだな?違う)

猫八幡「よし、ぱたぱたすればいいんだな。ぱたぱたしてやろう」

雪ノ下「ちょっと、連呼しないで……!」

猫八幡「いくぞほら、ぱたぱたぱたぱた」パタパタ

八幡(最初はぶつくさ言っていた雪ノ下だったが、開始十秒でぱたぱたに陥落しました)

雪ノ下「由比ヶ浜さん、もうそろそろつくそうよ」

猫八幡「そうか」

八幡(携帯のメールチェックを終えた雪ノ下がそう言う。少し残念そうに見えたのは、まだぱたぱたしたかったということだろうか)

猫八幡「じゃあしばらく俺は放っておいてくれ。戻らにゃならんだろ」

雪ノ下「そうね」

猫八幡「いっそ俺はトイレにでも籠ろうか」

八幡(別に俺は海王の主将だったり、ズッコケ三人組のハカセでもないが、戻った時のことを考えてそうする方がいいだろう)

猫八幡「いきなりお前の目の前で戻ったら、通報されんだろ?」

雪ノ下「しないわよ」

猫八幡「そうだとしても、俺はお前の目の前で戻りたくないし」

八幡(まさか雪ノ下が、積極的に俺の無防備な裸を覗き見るなんてことはしないだろうが、もしちらっとでも雪ノ下に見られたら八幡恥ずかしいし)

雪ノ下「……わかったわ。扉を開けるから、中で待っていて。着替えも持ってこないといけないわね」

猫八幡「ちゃんと一式用意してくれよ」

雪ノ下「ええ、もちろん。すぐに着替えてもらわないと、私が今後そのトイレを使う気になれないもの」

八幡(ですよねー。そんなこと言うと思った)

――


雪ノ下「比企谷くん」

猫八幡「お、持ってきたか。まだ戻ってないから開けて大丈夫だぞ」

雪ノ下「そう」

八幡(しかしトイレの扉は開く気配がない。ま、まさかこれは、着替えを隠して由比ヶ浜が来たところでトイレを開けて全裸ばーん!というイジメか!?と経験則から判断しそうになる俺)

八幡(それとももしかして、中から間違って鍵でもかかってしまったのだろうか。開けゴマって言ったら開かないかな)

八幡(開いたとしても、ハズレ大魔王が「ふははは、愚かな人間め、扉と見ると同じことばかり唱えおって」と待ち構えている可能性もあるが、落ち着いて扉を閉めればOKだ)

雪ノ下「……比企谷くん、あなたは、本当に呪いを解きたいとは思わないの?」

八幡(正解の扉を開けるにはオオカミの影絵をやらなきゃいけないんだよなーとか考えていると、雪ノ下が藪からスティックに聞いてきた)

猫八幡「……正直どっちでもいいんじゃねえの。ただ、解く方法なんてないみたいだけどな」

雪ノ下「本当に、そうなのかしら」

猫八幡「ずーっと昔から呪われ続けてるんだぞ。思い付く解く方法なんて、だいたい試しただろうさ。それでも解けてないのが答えだろ」

猫八幡「それにお前、俺が猫になれなくなってもいいんだな」

雪ノ下「それはちょっと残念ね」

八幡(くすっと笑ったように、雪ノ下が言う)

雪ノ下「でも……そうしたら」

猫八幡「俺が猫になれなくなったら?」

雪ノ下「ええ。そうしたら……そうね。その後はあなたの家の猫でもお借りしようかしら」

猫八幡「それはやめてやってくれ。こんな扱い受けさせたくない」

八幡(こんなことは俺だけで十分だ!俺に構わず先に行け!行けって言わなくてもどっか行きそうだな、あいつ)

雪ノ下「あなただからこの対応なのよ。猫が変われば、対応も変えるに決まっているでしょう」

雪ノ下「それとも、猫にならなくなっても、あなたが同じ扱いを受ける?」

猫八幡「それも御免被る。俺はノーマルなんだ」

八幡(にゃんにゃんプレイで男がにゃんにゃんのほうとか、絵面が嫌だろ)

雪ノ下「そう、残念……でもないけれど」

八幡(ないのかよ)

雪ノ下「どっちにしろ、あなたにお願いすることになるわね。学校を卒業した後も、あなたとの繋がりが切れなければ」

猫八幡「……無理だろ。お前も俺も、そういうのに向いてない」

雪ノ下「そうかしら」

猫八幡「ああ。少なくとも俺は無理だ。小中の知り合いは壊滅だしな」

猫八幡「まあ、かまくらのことなら、小町に言えよ。あと、俺との繋がりが無くなっても、小町とは気が向いたら付き合ってやってくれ」

猫八幡「お前らのこと、気に入ってるみたいだし」

雪ノ下「……ええ、約束するわ」

雪ノ下「服は扉の前に置いておくから、戻ったら自分で取るようにして」

八幡(彼女の最後の方の言葉は、少し鼻声のようになっていた気がした。服を中に入れてくれなかった理由がそれだろうか)

中断

次回やっはろー

最後差し替え

八幡(彼女の最後の方の言葉は、少し鼻声のようになっていた気がした。だが、見えないものを決めつけることなんて俺にはできないし)

八幡(もし仮にそうだったとしても、俺にどうこうできる類いのものではない。彼女が開けなかった扉を、俺が開けることはできない)

―――
――


由比ヶ浜「あれ、人間のままだし」

八幡(雪ノ下の部屋にやってきて、俺を見るなり由比ヶ浜はこう言い放った)

八幡「や、俺は元から人間だから」

八幡(石仮面を被って人間をやめる宣言も、死んだ後に魔族大隔世をした覚えもない)

八幡「それとも人間失格だってことか。へこむわ」

八幡(まあ今まで人間外のような扱いは度々受けてきたので耐性はある)

由比ヶ浜「そういう意味じゃないでしょ……なんで猫の姿じゃないの?」

八幡「まるで俺が人間時よりも猫でいるほうが多いみたいな、誤解を与える言い方はやめろ」

雪ノ下「私はもういっそ猫として生きるべきだとも思うのだけれど」

八幡(そして飼い主は自分、と言外に雪ノ下が主張するのを華麗にスルー。雪ノ下家のペットな八幡になる気はない。まだ)

由比ヶ浜「ううん、てゆうか……ヒッキーとゆきのん二人きりだったんだ。猫じゃなくて」

八幡「ついさっきまでは猫だったんだよ。一回戻った」

由比ヶ浜「あ、そうなんだ。ごめんね」

八幡(ごぬんね。どうやら、俺が猫から戻った理由をなんとなく察したらしい)

八幡「謝ることないだろ。むしろ俺は人間に戻れてありがたいし。助かったわ。」

由比ヶ浜「そっか……」

雪ノ下「ではやはり、そろそろ通報するべきかしら」

八幡(えへってかわいくはにかむ由比ヶ浜と対照的に、不穏なことを言い出す雪ノ下。相変わらず人間の俺への当たりは強い)

八幡「通報通報ってお前な」

雪ノ下「あなた以外は女性二人しかいない部屋で、人間に戻れてありがたいというのは、犯行声明だと受け取ったのだけれど」

八幡「いいぜ、じゃあもう呼べよ。それならこっちはお前の拉致監禁を主張する」

雪ノ下「そんな戯言、信じてくれる人間なんていないわよ。私が勝つわ」フッ

八幡(うん、だろうな。俺もそう思う。日本の司法は女に甘すぎると思います!)

雪ノ下「由比ヶ浜さん、もし彼に猫になってほしいというのなら、そうさせるけれど」

八幡(こいつ、さりげなく由比ヶ浜のせいにして自分の願望を叶えようとしてやがる!とんだくわせもんやでこのアマ!)

由比ヶ浜「あ、別にいいから!そ、それにさ、ヒッキーを猫にするってことは」

由比ヶ浜「あたしかゆきのんのどっちかがヒッキーに抱きつかなきゃいけないってことでしょ……?」

由比ヶ浜「そういうのなんか、はずいし……」

八幡(ちょ、聞きましたか雪ノ下さん。これこそ恥じらい、日本の文化です)

雪ノ下「……そうね。緊急事態でもなければ、彼に抱きつくなんて私も嫌だもの」

八幡(お前の緊急事態どんだけ日常的なんだよ。一生に一度のお願いを毎回親に言う子供か)

――


八幡(その後はとりあえず、夕飯の準備をすることになった。と言っても、雪ノ下は由比ヶ浜に)

八幡(絶対に自分の言うことを聞くことと、食材に触れる時は雪ノ下の監視のもとでなければならないという、子供が花火をするときに大人から受ける注意のような指示を受けることを条件に台所に入れてもらい)

八幡(俺に至っては俺が料理に関わるのは食品偽装並に信用できないから来るなと言われた)

八幡(さらに人間の俺が雪ノ下の部屋のものを触れるのもNGということなので、今俺は携帯をいじるくらいしかやることがなくなっていた)

八幡(てきとーに遊んでいると、メールが届いているのに気づいて開く。小町からのようだ。まあ、俺の携帯に届くメールなんて業者か小町が大半なんだが。ええと、で内容は)

八幡(OKだって!やったね!がんばれお兄ちゃん!何がだよ……)

八幡(主語が抜けてんだろ。何がOKでやったから俺にがんばれなんだよ。お前が国語力がんばれ。受験生だろ)

八幡(と、小町に返していると、由比ヶ浜が戻ってきた)

由比ヶ浜「……」

八幡(戦力外通告されたか……何も言わなくても雰囲気が語っていた)

由比ヶ浜「ん、メール?」

八幡「ああ」

由比ヶ浜「あ、あたしのも来てるっぽい」

八幡(ぽいってなんだよ。超感覚的なものがメールが来てるよってお前に囁いたの?)

由比ヶ浜「……」

八幡(ぽちぽち携帯をいじる由比ヶ浜。俺もまた携帯いじりにせいを出すことにした。いじってせいを出すとか卑猥)

八幡(その由比ヶ浜が、ちらっと俺を見るのを感じた。すぐにその視線は携帯に戻され、少し沈黙が続いたが、由比ヶ浜がぽつりと呟いた)

由比ヶ浜「……友達の猫がさ、今度、遠くの人に貰われてっちゃうかもしれないんだって」

八幡「へぇ」

八幡(このタイミングで言うということは、メールの内容がそれに関係があるものだったのだろう)

由比ヶ浜「その子はそのこと嫌がってたんだけど、なんか事情があるみたいだし」

八幡「そりゃ事情なんて誰にでもあるだろ」

八幡(当たり前のことだ。端から見れば馬鹿馬鹿しいことや、苦労なんて知らなそうなやつにでも事情はある)

由比ヶ浜「うん。でも、貰われていったらその猫と一生会えないかもしんないんだって」

八幡「……それは依頼か?」

由比ヶ浜「え、ううん、別に、そんなんじゃなくて、ただ相談?っていうか、話聞かされただけだけど」

八幡「……なら結局、そいつがどうかするしかないだろ」

由比ヶ浜「そうだよね……あたしもその猫結構よく見かけるんだけど」

由比ヶ浜「いなくなったら、寂しいなって。あたしは猫苦手だけど……そこにいるのが当たり前?みたいに思ってたし」

由比ヶ浜「その子がもう二度と見られなくなるのは、寂しい……」

八幡「……そうだな」

由比ヶ浜「ヒッキーも、飼ってるかまくら?がいなくなったら、寂しいでしょ」

八幡「そりゃあな。それに、小町が可愛がってるからな」

由比ヶ浜「だよね。ヒッキーは、小町ちゃんが寂しく思うようなことしちゃ……ダメだよ?」

八幡「しねえよ。むしろ俺が置いてかれて寂しい思いをしそうだろ」

由比ヶ浜「あはは……小町ちゃんはそんなことしないよ」

由比ヶ浜「……あたしが寂しいって思うことも、ヒッキーにはしないで欲しいな……そういうのもうやだって言ったし、やらないって言ったよね?」

八幡「……」

八幡(言った。言ったけれど。俺がしたくなくても、俺だって嫌なことでも、どうしようもなく変えられないということが、この世にはある)

中断

八幡(今の由比ヶ浜の話から察すると、猫憑きの運命を由比ヶ浜、そして雪ノ下も知ったようだ)

八幡(どのくらいまでのことを知ったのかはわからないが、少なくとも幽閉というのは聞いたのだろう。友達の話とか言ってたけど、逆にばればれだし)

八幡(雪ノ下がトイレの前で言っていたことも、幽閉のことを聞いたと考えれば合点がいく)

八幡(言ったのは小町か。由比ヶ浜が小町のこと言ってたし。あと、もしくは紫呉。今日いきなり見舞いに来たのが不自然すぎる。で、下手すると小町もあいつがたぶらかした可能性大)

八幡(あの犬、人の妹を利用してなにを企んでるんだ。小町には奴に近づかんように言っておかなきゃな)

八幡(それにしても、面倒なことになった。幽閉のこととかは隠し通して、卒業後は音信不通ってことにするつもりだったんだが……)

八幡(なんにしても、あの二人を草摩の本家に近づかせないようにする、それだけだな)

八幡(その後由比ヶ浜とあまり会話も弾まないまま、夕飯となった。雪ノ下の料理は相変わらずうんまいな。今回は飯時に猫じゃなくて良かった)

八幡(飯が終わって、片付けも済むと、三人とも思い思いに食休みを過ごす。由比ヶ浜が菓子買うついでに借りてきたという映画のビデオを、横目で見てぼーっとしていると、時たま雪ノ下がこちらを見ているのに気づいた)

八幡(また猫にして俺を可愛がりたいのだろうか。由比ヶ浜がいる手前、俺にそういったアプローチを取れないから、フラストレーションが溜まっているのかもしれない)

八幡(夜中いきなり襲われて猫にされたらどうしよう。ていうか今日は寝るとこどうすんだろう……とか考えていると)

雪ノ下「由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「……うん」

八幡(雪ノ下が何事かと由比ヶ浜に呼び掛け、由比ヶ浜はその意味が分かったようで、映画を止めた)

八幡(一応見ていたのだが、そんなに気合い入れて鑑賞しよう!という気分でもなかったし、話にも入っていけてなかったので映画には未練はない)

八幡(それよりも、雪ノ下と由比ヶ浜が揃って俺へと向き直り、居住まいを正したほうのが気になった)

八幡(さっきの口ぶりから言って、どこかでこうするつもりだったのだろう。二人は。俺には青天の霹靂と言っていいが。果たして二人は俺に何を落とすつもりなのか)

雪ノ下「単刀直入に言うけれど、私たちはあなたのことを聞いたわ。気づいていたと思うけれど」

八幡(ああ、なるほどね。わざと知ってますよってアピってこっちがボロ出して聞いた以上の情報を漏らすことを狙ってたと……そうじゃないだろ。こいつらは、そうじゃないって、知ってるだろ)

八幡「……知ったのは、幽閉のことか?言ったのは、紫呉か」

八幡(俺の問いかけに、雪ノ下が頷いて答える。由比ヶ浜の方は身じろぎもせずに、俺を視線で貫いていた。見ようによっては怒っているようにも見える)

八幡(むしろガチで怒ってるんじゃないのこれ。激おこプンプン丸くらい行ってるんじゃね。怖い)

雪ノ下「私たちは、あなたを助けたいと思っている」

八幡「俺は助けて欲しいとは思ってない」

八幡(すげなくそう言う俺に、由比ヶ浜の目がさらにつり上がる。今はむか着火ファイヤーかな?雪ノ下は呆れるように嘆息した)

雪ノ下「閉じ込められて、誰にも会えない末路なんてものを、あなたは望んでいるの?」

八幡「望んだわけじゃないが、受け入れた。一生養ってもらえるわけだし、それでもいいってな。それにどうせ俺はぼっちだし、外にいようと心情的には変わらないかもしれん」

由比ヶ浜「……小町ちゃんにも、会えないんでしょ?」

八幡「……」

八幡(痛いところを突かれ、言い返せない。いつもこいつは、確信に真っ直ぐ触れてきて困る)

由比ヶ浜「あたしたちにだって会えないんだよ!あたしたちも、彩ちゃんや中二や先生もだよ!?ほんとにそれでいいの!? 」

八幡(コンボが繋がって、俺袋叩き状態。ハメ技から抜け出せない。そしてトドメだ)

由比ヶ浜「あたしはそんなのやだよ……」

八幡「……確かに、小町や戸塚に会えないのは俺も嫌だが」

由比ヶ浜「……あたしは?」

八幡「嫌だが。だからって。どうにかなることじゃない。俺が嫌だって主張したくらいで、変えられることじゃないんだ」

由比ヶ浜「……」

八幡(由比ヶ浜が沈黙すると、今度は雪ノ下が口を開いた。流れるような波状攻撃。なかなかのコンビネーションである)

雪ノ下「方法がないことではないでしょう」

雪ノ下「例えば……あなたのご両親もこのことは知っているのでしょう?親御さんはあなたの幽閉のことをなんて言っているの」

八幡「親父は知っているが、特になにも。放任主義なんで」

雪ノ下「放任主義だからって、子供が幽閉されるのを親が黙認するの……?」

八幡(……どうやら、あの話は知らないらしい。言っておくほうがいいか。この勢いでうちの親に凸られても困るし)

八幡「……親父は知ってるが、母ちゃんは知らない。母ちゃんは、俺が猫憑きだってことも知らない」

由比ヶ浜「え」

雪ノ下「……?」

八幡「うちは、俺が小学校の頃は、本家で暮らしてた。俺が猫憑きだったのもあったしな」

八幡「その頃は、俺も名字は草摩だった。草摩八幡。なんかありがたそうだろ」

八幡(重い話の最中にウェットなジョークを挟んでみるが、誰も笑わない。笑えよベジータ……)

八幡「母ちゃんは、本家に居る頃は外で働いてなかった。ずっと本家にいたんだ」

八幡「本家の中の猫憑きの扱いって最悪でさ。いつもみんな、俺を見てひそひそ言ってたよ。俺を産んだ母ちゃんもそうだっただろうな」

八幡「で、子供は猫憑きだ。俺は男だから、母親の母ちゃんでも、抱っこすれば猫になる。猫憑きだって、常に思い知らされるんだ」

八幡(しかも、猫憑きには、本来の……)

八幡「そんな環境で、まともな人間の心が、耐えられるか?」

雪ノ下「記憶の、隠蔽……」

由比ヶ浜「それって」

八幡「そうだ。母ちゃんは、俺との小学校以前の記憶がない」

八幡「母ちゃんたちは外でずっと暮らしていて、俺は本家に預けられていたことになってる」

八幡「俺が拒否したら、母ちゃんの記憶はどうなるんだろうな。普通、記憶消した相手とは、距離をおかなきゃいけないんだそうだ。フラッシュバックとかあるからってな」

八幡「俺が母ちゃんと一緒に暮らしていけるのは、今でもはとりところに母ちゃんが通っているからだ」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「……」

八幡(二人は黙ってしまった。やべ、言い過ぎた。こういう風に言い過ぎた結果何度はぶにされたことか)

八幡(でも、止められない。止まらない。八つ当たりだとは分かっている。でも、俺もなんとか諦めたことを。一度蓋した臭いものを。もう一度こじ開けた自分たちを後悔してくれ)

八幡「親が協力的なら、夜逃げでもなんでもしたらどうかって言いたかったんだろ。無理だろ。夜逃げの理由はどうする?俺のことを説明するか」

八幡「理由をでっちあげても、俺は俺だけで逃げるしかないな。で、母ちゃんとは会えなくなるだろ。逃げたら本家の助けは期待できない。はとりもだ」

八幡「そんな状況で、俺は親父や小町とだけ会って、お前らとも会えって?」

八幡「子供と中学まで引き離されてたことにされて、帰ってきた子供は、愛想が悪くて抱きつくのもさせてくれない」

八幡「昔は体調を崩したら本家に出戻り。そんな子供でも、今の母ちゃんはちゃんと愛してくれてる。本当のことを知らなくたってな」

八幡「……幽閉なら、慊人だって、たまには家族とくらい会わしてくれるかもしれない」

八幡(俺が、自殺したりしないように)

八幡「だから、俺は幽閉でいいんだよ。一生養ってもらえるって夢は叶うんだし」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「……」

八幡(重い沈黙は長いこと二人にのしかかった。のしかかりは確率によってはまひの状態異常も引き起こすから、そのせいもあるかもしれない)

八幡(まひなおしを使ったのか、特性にだっぴでもあったのか、雪ノ下がまた声を発した)

雪ノ下「では……約束は」

由比ヶ浜「そうだよ、約束って」

雪ノ下「約束を果たせば、あなたを幽閉しないと、草摩の当主が言っていたと聞いたわ」

八幡「ああ、そうだな」

八幡「俺があいつと交わした約束は」

中断

◆◇◆◇◆

慊人「聞いたよ。お前の母親。お前のことを全部忘れちゃったんだって?」

八幡「……」

慊人「落ち込んでるの?ねえ、もしかして、一人前に落ち込んでるの?」

八幡「……」

慊人「ふふふ、落ち込んでるんだ、化け物の癖に」

慊人「まあでも、これで良かったんじゃない。君の母親も。これで化け物と離れられるんだから」

八幡「……」ビクッ

慊人「だからお前は、これからはちゃんと身分を弁えて、あの離れで――」

八幡「……頼みが……ある……あります」

慊人「……へぇー。なに。言ってみろよ」

慊人「お前みたいなのの願いなんて、本当は僕が聞くことも許されないけど。母親に見捨てられた憐れなお前のために、聞くだけは聞いてやる」

八幡「みんなが外で暮らすのに、俺も、ついて……いきたい……です」

慊人「ふぅーん。へぇ、ついて行きたいんだ。でもお前の母親、お前のこと忘れてるんだろ?」

八幡「……」

慊人「自分を忘れた親と暮らすってどんななんだろうね。お前が猫憑きだってまた知ったら、今度こそ壊れて、死んじゃうじゃないの?」

八幡「……」ギュッ

慊人「しかも、猫憑きのお前が外で問題を起こしでもしたら、僕らにまで迷惑がかかったるってわかってる?」

八幡「絶対に、問題なんて、おかさないように……する……します。だから」

慊人「……」

八幡「お願いします」

慊人「……」ニヤッ

慊人「……いいよ。認めてあげる。しばらく外で暮らすといい。お前はどうせ、そのうち死ぬまで幽閉されるんだ」

慊人「最後の思い出作りくらい、させてやるよ」

八幡「幽閉……」

慊人「幽閉は嫌?」

八幡「……」

慊人「嫌だろ?ねえ、言えよ!嫌だって!嫌なんだろ!」

八幡「嫌だ……でも……」

慊人「ああ、でも、お前は猫憑きだもんな。それが運命なんだよ。一生閉じ込められて、ひとりぼっちの運命だ!」

八幡「……」

慊人「でも、安心しなよ。僕だけはお前に会いに行ってやるし、忘れたりなんかしない。僕らの間には、絆があるからね」

八幡「……」

慊人「それに、お前がいい子にしていたら、僕の気分によっては親くらいは会わせてやるかもね。あ、でも、お前の妹には会わせてやらない」

慊人「ごちゃごちゃごちゃごちゃと、あいつ目障りなんだよ。十二支(みんな)に呪いのこととか、お前の幽閉のこととか聞いて回ってさ。僕を悪者にしようとするんだから」

慊人「あいつがここからいなくなるなんて、清々する」

慊人「あれ。でももしかして、家族と一緒に暮らしたいっていうのは、あれのため?僕よりも、妹を優先するの?」

八幡「それは」

慊人「そうか、それは……思い知らせてやるべきだね」ボソッ

八幡「え……?」

慊人「ねえ、思い付いたんだけど、一つ約束をしてやろうか」

八幡「約束……?」

慊人「うん。お前がそれをできたら、お前を幽閉するのもやめてやるよ」

八幡「……!」

慊人「まあ、どうせ無理だと思うけど。でも、折角外で暮らすんだから、お前に現実を見せてやる」

慊人「約束はこうだ。もし、お前が、これから外で暮らして、誰か――草摩の人間ではない誰かと、本物の絆を築くことができたなら。僕たちの絆以上のものを結べたなら」

慊人「お前が、本当の自分を見せても、受け入れてくれるような人間ができたなら」

慊人「そして、僕もその絆を認めたなら。幽閉はやめてやるよ。外で好きに暮らせばいい。そいつとさ」

八幡「……それ、ほんとか」

慊人「僕は嘘なんて吐かないさ。約束は守るよ」

慊人「期限は、そうだね、お前が高校を卒業するまでだ」

慊人「本物の絆を築いたと思う相手ができたら、僕の前に連れて来なよ。確かめてあげるから」

慊人「約束だよ」

『そして、思い知れ』

『お前の居場所なんて、あの離れにしかないことを』

◆◇◆◇◆

八幡「俺が、草摩と無関係の人間と、本物の絆を結ぶこと。高校卒業までに。それができたら幽閉はやめる。それが慊人との約束だ」

雪ノ下「本物の絆……?」

由比ヶ浜「でも、そんなことなんだ」

八幡「……」

八幡(そんなこと――本物の絆というものを築くことが、いかに大変であるかを、知らない由比ヶ浜ではない)

八幡(それでも、それをそんなことと言ったのは、思っていたよりも試練の内容が軽いと感じたからだろう)

八幡(もっと無理難題を吹っ掛けられたのかと、勝手に想像していたようだ。そのせいで、由比ヶ浜にはこの約束の危険性が理解できなかったようだ)

八幡(容易く言ってくる)

由比ヶ浜「ヒッキー!あたしが行く!あたしがヒッキーと一緒に、その当主って人のところに行けば――」

八幡「ダメだ」

由比ヶ浜「……なんで?あたしじゃ、ダメ?」

八幡「……」

八幡(なんて言えばいいだろうか。すべてを言葉にしても、伝わらないこともある)

八幡(例えば、俺の慊人に対する恐怖を、この約束に潜む危険性を、どれだけこれまでの経験を交えて由比ヶ浜に語っても、伝わらないだろう)

八幡(それは呪いであり、俺たちの血の絆だ。部外者である由比ヶ浜には理解されるわけがない)

八幡(だから、例えばあのはとりのことを――)

 
 
『はとりの目、どうしたんだあれ』

『あれ……アキトが、やったの』

『慊人が……?』

『うん……ハリィ、好きな人ができたの。その人と結婚したいって。でも、それをアキトに言いに行ったら……』

 
 
八幡(あのことを言っても、由比ヶ浜が慊人を恐れるとは限らない。そんなことをするのが当主なのかと、逆に憤慨するかもしれない)


八幡(それでも一緒に行くと言うかもしれない。それで由比ヶ浜を連れて行ったとして。はとりと同じ状況になったとして)

八幡(はとりと同じようになるならまだいい。矛先が彼女に向かった時、俺は由比ヶ浜を守れるか?)

八幡(即答できない。由比ヶ浜と慊人を天秤にかけて――いや、由比ヶ浜ではなく他の誰だろうと。慊人と天秤にかけたとして、俺は慊人じゃないほうを選ぶと言い切れない。必ずそいつを選ぶと言える相手がいない)

八幡(そんなものは、本物の絆とは言えない。俺が言いたくない。だからダメなんだ。だが、それを実際に言葉として発するのは難しく、俺は濁すことしかできなかった)

なにアキトさんってツンデレなの

八幡「お前だからダメとか、そういうことじゃない」

八幡「だいたい、その約束な、俺が小学校卒業する頃に交わしたもんだし、今も有効かわからん。むしろ慊人は、約束を守るつもりなんてないと思うぞ」

由比ヶ浜「そんな……だって、約束したんでしょ!?」

八幡「慊人の気まぐれでな。そんなん信じられるかよ」

雪ノ下「でも、それくらいしか手がないのが現状なのでしょう?」

八幡「そうだけどな」

八幡「つうか、お前、俺と本物の絆とか、んな臭いもんが築けてると本気で思うのか」

由比ヶ浜「う……お、思うし!」

八幡「その間はなんだ。あと、抱きついたらお前の苦手な猫になる俺だけど」

由比ヶ浜「そんなの関係ないよ!」

八幡「……」

雪ノ下「なら、私はどうかしら」

八幡「お前が……?」

雪ノ下「あなたの助けに、力になりたいと言ったのは、偽りではなつもりよ」

八幡「……猫抜きにしてもか」

雪ノ下「それは……もちろんよ」

八幡「……」

八幡「……お前らのどっちがどっちでもダメだ。慊人には会わせない」

由比ヶ浜「どうして!」

雪ノ下「理由はなに」

八幡「確証のないものに、お前らを付き合わせることはできない。そして確証のないものだとしても、一緒に賭けてみたいと思えるほどの絆があるとも思えない」

八幡「呪いを解く方法は不明。草摩のしきたりを変えることも、草摩から俺が逃げ出すことも無理。頼みの綱の約束は、俺が信じられない」

八幡「八方塞がりだろ」

八幡「お前らも諦めろよ。当人が諦めてるんだから、もう蒸し返すな」

由比ヶ浜「信じてよ……あたしたちを信じて。あたしは!あたしがどうなったって、ヒッキーのためなら――」

八幡「そういう自分に酔ったような発言はやめろ。そんな勢いだけで行って、それに感化されるようなやつじゃないぞ慊人は」

雪ノ下「現状は八方塞がり……」

由比ヶ浜「ゆきのん!?」

八幡(興奮していたせいで、裏切り者でも見るかのような形相で、由比ヶ浜が雪ノ下へと感情の矛先を向けようとしたのを制し、雪ノ下は言葉を続けた)

雪ノ下「でも、これからのことはわからないでしょう」

八幡「や、これからだって」

雪ノ下「でも、これからよ。期限はあなたの高校卒業までなのでしょう。ならそれまでに、まずはあなたに信じてもらえればいいのね」

雪ノ下「あなたとの本物の絆を」

由比ヶ浜「……うん、あたしも、諦めないから」

八幡「……俺は変わらないぞ」

八幡(むしろ変われない。この一線だけは、変われる気がしない)

八幡(お互いが信頼し合い、一緒にいるためには傷つくこともいとわないなんて関係、俺にはおためごかしにしか思えない)

>>529
どちらかと言えばヤンデレですね
十二支の絆に深く執着しています

あ、中断です

由比ヶ浜「変わらなくてもいいよ。あたしが信じて欲しいのは、あたしの知ってるヒッキーだもん」

八幡(純粋な目で、真っ直ぐこちらを見据え、そんなことを言われたら俺の信念なんて、一堪りもない)

八幡(なんとか、これはあくまでも、俺を救いたいとかの使命感に因るものだと、自分を落ち着かせる。しかし)

雪ノ下「ねえ、比企谷くん。私、何度かあなたと過ごしてみて思ったの。あなたは猫だったけれど」

八幡「……何を」

雪ノ下「もっとあなたとこうしたい。あなたと一緒にいたい、と」

八幡「猫の俺だろ……それ」

雪ノ下「いいえ、あなたよ。猫だろうと、人間だろうと、あなたはあなたでしょう?」

八幡(それもまた、とても魅力的な申し出だったが)

八幡(やっぱりそれも、俺が猫に変身するからだとか、小町に頼まれ救いたいと言っていたからだと思ってしまう)

八幡(それを好意として素直に受けとることなんて、俺にはできそうもない)

八幡(黙ってしまった俺を、じっと見ていた二人だったが、俺がなんの返答もできる余裕がないことを、すぐに察したようだ)

雪ノ下「さて、方針は決まったのだし、話し合いはこれで終わりにしましょう」

由比ヶ浜「そだね。じゃあもう遅いし寝る準備しよっか」

雪ノ下「ではその前に、お風呂を済ませないと」

由比ヶ浜「お風呂かぁ……」チラッ

八幡(ん?未だへたれから立ち直れない俺に、なにやら視線を向けてくる由比ヶ浜。そんな目で見んなよ。俺はナチュラルボーンへたれなんだよ)

八幡(しかし由比ヶ浜は、別に俺を視線で蔑むつもりは無かったようだ。続けて言ってきたのは、もっと返答に困るものだった)

由比ヶ浜「ひ、ヒッキーって、この間ゆきのんにお風呂入れてもらったんだよね?」

八幡「……」

雪ノ下「……そんなこともあったかもしれないわね。事故のせいで」

八幡「ああ、あれは事故だった。まさかあの時地震が起きるとはな」

八幡(ていうか最近地震多くなーい?マジ関東大震災そろそろじゃないの、と話題を変えようとするが、由比ヶ浜はそれを許さなかった)

由比ヶ浜「……どうやってお風呂入れてもらったの?ヒッキー」

八幡「そりゃお前、普通だよ?まあ、猫からすぐにもどれない状況だったから、仕方なかったんだ」

八幡(ちかたないよね!ヒッキー猫だったんだもん!)

由比ヶ浜「ふーん……」

八幡(まだ不満げだったが、納得はしてくれたらしい。逆に由比ヶ浜自身が、ちょっと空気を悪くした今の話題を笑い飛ばそうとでもしたかったのか、冗談なんて言ってきた)

由比ヶ浜「でも、そのまま二人で一緒に入ったとかないもんね!ゆきのんは服着て」

雪ノ下「……」

八幡(あからさまに目線を背ける雪ノ下。嘘つかない、じゃなくて嘘つけないんだろ、お前)

由比ヶ浜「入ったの……?ゆきのん、裸で……?」

雪ノ下「いえ、ちゃんとタオルは巻いていたのよ、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「たまたまこの時期だから、水着や濡れてもいい丈の短い服も見当たらなかったし、私も彼をだっこしたことで多少染料がついて洗い流したかったから、その急いでいて」

由比ヶ浜「ふーん」

八幡(ガハマさん、目が梁山泊の達人みたいになってて怖いっすよ。闇やYOMIなんて一堪りもなさそう)

由比ヶ浜「ヒッキーは、なんか見たの?」

八幡「いや、全然」

八幡(ぱーどぅん?って感じの身ぶりまで交えて言ってやる。相手の目もしっかりと見据え、これで騙されないやつがいないわけがない)

由比ヶ浜「こういう時だけしっかり目合うとか、怪しいし……」

八幡(しまったぁー!逆効果だったぁー!あっちゃー!そりゃ普段目合わせないやつが合わせてきたら怪しいわな)

由比ヶ浜「……いいや、ヒッキー、今日は先にお風呂入ってきて」

八幡「え、俺から?」

由比ヶ浜「うん。いいでしょ、ゆきのん」

雪ノ下「ええ、構わないわ」

八幡「じゃあ、まあいいけど」

八幡(もしかして、この後キャットファイトとか繰り広げるられるんだろうかと、なぜかちょっとワクワクした俺)

―――
――


八幡(しかし、風呂から上がってみると、そこにはツマヌダ格闘街な光景は一切広がっていなかった)

八幡(二人とも雑談しながら待っていたようだ)

八幡「上がったぞ」

由比ヶ浜「あ、うん、じゃあ次あたし入るね」

雪ノ下「ええ」

八幡(とてとてと由比ヶ浜は、既に準備をしてあったらしいお風呂用具を手に、俺が出てきた扉へと向かっていった)

八幡(俺は俺で、とっととこのまま寝てしまいたいのだが、未だ寝る場所を言い渡されていないので、とりあえずリビングで手持ちぶさたに座ることしかできなかった)

雪ノ下「……」

八幡(雪ノ下は、何も言ってこない。涼しげな表情で、近くに置いてあった本を手に取り、読み進めている)

八幡(俺は気が気じゃないんだがな……さっきの発言、猫じゃなくても俺と一緒にいたいと言っていたシチュエーションは、まさに今じゃないのかと)

八幡(あんなこと言われた俺は今、ドキドキしていた。では、言った雪ノ下は?何も思っていないのか?)

八幡(やはりあの言葉には、そういった甘酸っぱさなど、何も含まれていなかったのか)

八幡(猫の俺と一緒にいたいというなら楽だった。俺はただ猫になって、あの膝の上でごろごろしていれば良かったのだ)

八幡(だが、彼女は俺を猫にせず、こうして近くに座ったまま。由比ヶ浜がいるから猫にしないというのもあるけれど)

八幡(しかし、二人きりで、雪ノ下の部屋で、俺は猫じゃない。改めて思えば、これは異常な状況だ。雪ノ下はその状況になれば、通報すると言っていたのに、今だ110番する様子もない)

八幡(くそ、あんなこと言うから意識しちゃうじゃないか。そして、妄想する。浮かれた俺が本来の姿を見せて、拒絶される光景を――)

雪ノ下「比企谷くん」

八幡「……ん」

八幡(いつのまにか、ひどく喉が乾いていた。風呂上がりだというのもあるだろうが)

雪ノ下「今日、あなたの寝るところだけれど」

八幡「あ、ああ。別に俺は、床でもソファでも」

雪ノ下「そうね。そうしてもらえるかしら。猫の姿にはなれないのだし」

八幡「ああ」

雪ノ下「……でももし、一緒に寝たいというのなら」

八幡(本から目線は反らさずに、雪ノ下が言う。しかし耳が真っ赤なことを、俺の腐ってる癖に浮かれた目が見逃さない。おい、やめろ、そういうの見ると受け入れたくなっちゃうだろ)

八幡「……いや、それは無理だろ。お前と由比ヶ浜、一緒に寝るんだろ」

雪ノ下「そうね」

八幡(雪ノ下が嘆息し、小さく肩を落とす気配を見せたのを、また俺の目は見逃さなかった)

――


雪ノ下「じゃあ、最後は私ね。由比ヶ浜さん、もう寝る準備をしていて構わないから」

由比ヶ浜「うん」

八幡(俺も準備するかね。雪ノ下に掛け布団を借りたのでそれをソファにセッティングする)

八幡(立派な寝床だ。ベランダで寝ろとか言われないだけマシ)

八幡(うんうん、と俺がその出来にうなずいていると、由比ヶ浜から後ろから声をかけられた)

由比ヶ浜「ヒッキー」

八幡「どうした」

由比ヶ浜「うん、あたしさ。ほら、猫を見るのって、まだ苦手なんだ」

八幡「おう」

八幡(改めて言われるまでもなく、覚えている。だから雪ノ下も、俺が猫にならないようにしてるんだから)

由比ヶ浜「でもさ。ヒッキーのことは……ヒッキーとは、もっと仲良くなりたい」

八幡(それにどう答えていいかわからず、俺が逡巡しているのを隙と取ったか。由比ヶ浜は音もなく歩み寄ってくると)

由比ヶ浜「だからっ」

ボンッ

由比ヶ浜「今日は一緒に寝よ。てゆうか寝るから」

由比ヶ浜「嫌って言わせないよ。ゆきのんとは一緒に寝たんだもんね?」

猫八幡「……聞いたのかよ」

猫八幡(また俺に選択肢はないのか……)

中断

――


雪ノ下「猫が苦手なのを克服したい、というのはいいことだと思うけれど」

由比ヶ浜「でしょ」

八幡(でしょでしょ。冒険か)

雪ノ下「それで比企谷くんと一緒に寝るというのは、どうかと思うわ」

八幡(うんうん。雪ノ下の言う通り。否定する俺と、頷く俺に、ぶーたれる由比ヶ浜)

由比ヶ浜「でも、二人はこの間一緒に寝たってゆきのん言ってたじゃん」

雪ノ下「……そうね。でもその経験からあえて言わせてもらうわ。やめたほうがいいわよ」

雪ノ下「今はその愛らしい姿でも、寝ている間に彼が元の姿に戻ってしまう確率のほうが断然高いのよ」

雪ノ下「私もこの部屋の主として、まだ学生の身分である男女が同衾して朝を迎えるのは、看過できないわ」

由比ヶ浜「どうきん?かんか?」

猫八幡「同じ布団に入ることと、それを許せないってことだよ」

由比ヶ浜「へー。あ、今のヒッキーって便利だね。授業の時とか膝の上に乗っててもらったら、突然先生に指されても大丈夫そう」

猫八幡「で、俺は授業休めと。同じクラスだろ、俺ら」

由比ヶ浜「あ、そっか」

訂正

八幡(うんうん。雪ノ下の言う通り。否定する雪ノ下と、頷く俺に、ぶーたれる由比ヶ浜)

八幡(こうしていると、由比ヶ浜が猫苦手なんて思えない)

八幡(俺を膝の上に乗せて、俺が用意したソファーベッドに腰掛け、普段と変わらぬように話しかけてくるから)

八幡(でも、あまり俺を見ようとしてないのはすぐの分かった。俺は上を向いて話をしているのだが、由比ヶ浜は下を向かない)

八幡(まあ、俺たちの視界の間には、大きな山脈が聳え立っているからだという意見もあるだろうが)

雪ノ下「由比ヶ浜さん、話を戻すけれど、やはりそんな公序良俗に反する行いは」

由比ヶ浜「でも、それ。二人は経験したんでしょ」

雪ノ下「……」

八幡(またも由比ヶ浜の言葉が、雪ノ下を一太刀の元に切り伏せる。まあ、こと猫の俺のことに関しては、雪ノ下ははめを外しまくっていたので)

八幡(こうなることも致し方ない。納得できないのは当の取り合いされている俺なのだが、こいつら俺の言うことは聞かねえ)

雪ノ下「でも、相手が経験したからと言って、自分もそうするというのは」

八幡(しかし古来から目には目を、とか、罪なきものだけが石を投げよ、とか、シンプルな論理というのは分かりやすく、そのために正論とされ、覆し難い)

八幡(雪ノ下の場合は、既に自分がしてしまったことだから尚更だ。結局)

由比ヶ浜「ゆきのん、お願い。今日だけだから……」

雪ノ下「……そうね」

八幡(雪ノ下は由比ヶ浜の泣き落としに陥落した)

中断

――


由比ヶ浜「こうしてる猫がヒッキーだなんて、なんか不思議だよねー」

猫八幡「そうだな」

八幡(それって不思議、ミステリー?俺の体質がな)

由比ヶ浜「寝にくくない?」

猫八幡「や、別に」

八幡(寝にくくはない。頭の後ろにでかくて柔らかいまくらがあるし。でもそのおかげで寝れそうもないが)

猫八幡「お前はどうなんだ。猫とこんなに密着して」

由比ヶ浜「どうだろ。ヒッキーだって思うようにしてるし」

猫八幡「俺と思ってこんなに密着してるのは、それはそれで問題だと思うが……」

八幡(やっぱビッチじゃんそれ)

由比ヶ浜「だ、だって、抱きついてないと、戻っちゃうんでしょ」

猫八幡「それはそうだが。ま、無理なら布団から出してくれ。それか雪ノ下のとこに」

由比ヶ浜「ヒッキー、ゆきのんと寝たいの……?」

猫八幡「違う、お前が雪ノ下と寝ろってことだろ」

由比ヶ浜「あ、そ、そっか……」

猫八幡「……」

由比ヶ浜「……」

八幡(沈黙。まあ、これから寝るわけだから、黙るのは仕方ない。さて、俺は朝まで生ち、じゃない生討論でもするか。脳内で)

八幡(議題は何にするか……女子って寝る時ブラつけない派がいるらしい、とか。待て、欲望に流され過ぎだ俺)

由比ヶ浜「……ヒッキーさ、今、何考えてるの」

猫八幡「」ビクッ

猫八幡「な、何も?や、マジで。寝そうになってたし」

八幡(やべえ。なに?やっぱ女には分かるもんなの。男がそういうこと考えてるって)

由比ヶ浜「……猫ってさ。何考えてるかとか、よくわかんないよね」

八幡(どうやら俺の邪なオーラを感じ取ったわけではないらしい。助かった。由比ヶ浜が能力者だったら死んでたわ)

猫八幡「そうか?結構分かりやすいと思うぞ。態度が露骨だしな」

八幡(うちのカマクラとか、俺と小町で対応全然違うしな)

由比ヶ浜「でもさ。急にくっついてきたり、離れたりすんじゃん。急にいなくなったりとか……」

由比ヶ浜「犬は、そういうのないし」

猫八幡「……」

由比ヶ浜「ヒッキーも。何考えてるのかわからない時あるよ」

猫八幡「……他人の考えてることが全部分かったらそれエスパーだろ。それに、分からないことがいいこともある」

八幡(他人が何をどう考えているのか。それを予想はできても、完全に理解することは難しい)

八幡(価値観や、育った環境の少しの差異だけでも、到底理解の及ばないものになる)

八幡(例え理解ができても、共感はできないことも多々あるし、結局は、他人が何を考えているかなんて、深く考えるだけ無駄だという境地に落ち着くものだ)

由比ヶ浜「うん、でも。あたしは知りたい。少しでも、分かり合いたい。ヒッキーのこと」

猫八幡「俺なんて、くだらないことばかり考えてるぞ」

八幡(ちっちっちっち、おーっぱーい、ぼいんぼいーん、のこととか)

由比ヶ浜「そうなんだ。でも、あたしはそれでも……ヒッキーのこと……」

八幡(二の句は継げられなかった。彼女にも葛藤があるのだろう。俺には分からなくとも)

八幡(代わりなのか、彼女は疑問を投げ掛けてきた)

由比ヶ浜「ヒッキーさ。まだ、あたしたちに隠してること、あるでしょ?」

八幡(答えることはできなかった。言わなければならないことだと。彼女たちの向けてくれている好意に報いるためには、それは必要なことだと。頭では分かっていても)

由比ヶ浜「いつかそれも、教えてほしいな……おやすみ」

猫八幡「ああ……おやすみ」

八幡(いつか。そんないつかが、いつか来るなんて。昔は想像もできなかった)

八幡(それがすぐ目の前に迫ってきて、今さら震えている俺は、なんて臆病なんだ)

中断

八幡は猫に好かれる体質なのか?

―――
――


八幡(ふかふかな夢を見た)

八幡(まるで雲の上にでも乗っているかのような。雲のマシンで今日も飛ぶのさーあーと、摩訶不思議大冒険に旅立つ夢を)

八幡(しかし、朝というものは必ず来るもので。居心地のいいぬくもりを持ったその弾力から顔をあげると、俺はまだ猫だった)

八幡(由比ヶ浜に抱きつかれたまま、一夜が明けたらしい。寝相がいいのか悪いのか、判断に困るなー)

八幡(というか由比ヶ浜が起きるまでこのままなのかなー。むふ。とか朝のまどろみを堪能していると、それは刺すように俺の体を貫いた!)

八幡(殺気!なにやつ!?と顔を上げると、氷の微笑を浮かべた奴がいた!そして俺は――死を決意した……)

雪ノ下「おはよう、比企谷くん」ニコッ

八幡(雪ノ下の顔は笑っている。しかし、俺を掴んだ死の恐怖は、決して離れようとしない。スケェェェェェェェイス!!)

猫八幡「お、おう。おはよう」

雪ノ下「あなたたち、ずーっとそうやって抱きつき合っていたのかしら。それとも、一度戻ったけれど、また抱きついたの?」

猫八幡「さ、さあ。寝てたし。わからん。たぶん、ずっと抱きつかれてたんだと思うが」

雪ノ下「そう……もし、一度戻って粗相をしてから戻ったなんて事実があったなら」

猫八幡「つ、通報ですか?」

雪ノ下「いえ、あなたを三味線にしていたわ」

八幡(やべえ。目がマジだよ。怖い)

雪ノ下「で、いつまでそこにいるの。そろそろ人間に戻らないと遅刻するわよ」グイッ

八幡(あ……ぬくい由比ヶ浜の腕の中から、ひんやりとした外気に晒され、俺の全身が総毛立つ。全身毛むくじゃらのため、まさに比喩でなく)

八幡(はぁ、もう少し寝てたかった。や、だらだらしたかっただけだから。別に由比ヶ浜の感触をもう少しなんてことは――)

八幡(不意に、また暖かい感触に包まれた。弾力においては、由比ヶ浜には及ばないものの、とてもいい匂いがする)

猫八幡「……お前、戻れって言っておきながらなに抱きついてんだよ」

雪ノ下「いえ……ちょっと」

八幡(俺を抱いたまま、雪ノ下が歩いていく。バスルームの脱衣場が行き先のようだ。そこで戻るまで待てと言うことか)

八幡(言われれば、自分の足でそこまで行ったんだけどな。でも、雪ノ下は俺を離す気はないようだ)

八幡(雪ノ下の言葉は、もう数十秒の間を置かれたままで、そのまま風に消えるように、また俺の耳に届かないものとなるのかと思ったが)

雪ノ下「あなたを……由比ヶ浜さんに取られた気がしたの。だから、つい」

八幡(驚いた。そんなことを言われるなんて、思ってもいなかった。でも、雪ノ下は、自嘲するような表情はしていたものの、はっきりと俺を見下ろして言った)

雪ノ下「今度はまた、私と一緒に」

八幡(脱衣場へとついた。そこにそっと下ろされる。朝の風呂場の寒さが、再び俺の体に染みる。ぶるっと俺は体を震わせた)

雪ノ下「あなたの着替えをとってくるわね」

八幡(雪ノ下は去っていった。先程の言葉への、否定も訂正もない。そして夢ではないことを、俺の身に降りかかる冷えた空気が教えていた)

中断
>>573
好かれるというか、なんか寄ってはくる
意思疏通も少しできる
でもかまくらのように舐められたような対応を受ける

――


由比ヶ浜「おはよ、ヒッキー」

八幡「ああ、おはよう」

八幡(これからお休みになられる方も、 そしてお目覚めの方もおはようございます。俺が元に戻ってリビングに戻ると、由比ヶ浜ももう起きてきていた)

八幡「……」

八幡(一緒に寝たせいか、いや間違いなくそれが理由だが、由比ヶ浜の顔が見れない。というか、正面から由比ヶ浜を視認したら)

八幡(まず間違いなく顔の下の胸に目が行くと思われるので、見ることができない)

由比ヶ浜「えへへ、なんかはずいね」

八幡(やべえ、気づかないうちに胸をちらちら見てたのか俺!?そんなのがバレたら、またきもいとか言われて)

由比ヶ浜「ヒッキーは、よく眠れた?」

八幡「ああ、まあ」

由比ヶ浜「そ、そっか」

八幡(恥ずかしいのか、いつもはあるお団子をくしくししようとしているが、今は寝起きのせいでそれがない。そのことに気づいたのか)

由比ヶ浜「はわ!て、てゆうかあたし寝起きだった!やば、ヒッキーこっち見ないで!」

八幡(顔を体ごと背け、俺に見られないようにしている。別に胸を隠そうとしているわけではないようだが、ちょっとエロいな……えふんえふん)

八幡「朝まで一緒に寝た相手に、今さらだろそれ……」

由比ヶ浜「う、そ、そういう言い方もやめて!余計恥ずかしくなるじゃん!」

八幡「あ、わり……」

由比ヶ浜「あ、あたし……支度してくるね」

八幡「ああ」

八幡(結局、由比ヶ浜の顔をまともに見れないまま、彼女は俺が出てきたバスルームへと、自分の荷物を手にとって向かおうとして)

八幡(その前にまっすぐ俺の方に向いてきた。俺は、横目で見ることしかできなかったが)

由比ヶ浜「……あたしも、よく眠れたよ。なんか、懐かしい夢とか見ちゃった」

八幡「懐かしい?」

由比ヶ浜「昔こっそり飼ってた猫と、一緒に寝てる夢。もう、寂しいとか、悲しいとかの記憶しか覚えてないって思ってたけど」

由比ヶ浜「違ったんだ。少しの間だけだったけど、一緒にいて、楽しいって思ったことも確かにあったんだって」

由比ヶ浜「それを思い出せた。ヒッキーのおかげだね。ありがとう」

由比ヶ浜「じゃあ」

八幡(何も言えないまま。由比ヶ浜が扉の向こうに消えて数十秒、俺はそのまま固まった)

八幡(猫体質のおかげでありがとうなんて言われるとは。そんなことがあるとは思っていなかった)

八幡(そんなことがあるなんて、思えなかった)

八幡(でも、あるのか。こんな俺でも)

八幡(外で生きれば、そんなことが、またあるのかもしれない……そう、また期待をしようとする自分を)

八幡(もう少しのあいだ、否定したくなかった。それは彼女のありがとうを、汚すようで)

中断

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月24日 (木) 23:09:30   ID: dFiC_Uz5

待ってた!
更新ガンバ

2 :  SS好きの774さん   2014年05月08日 (木) 11:01:39   ID: GRhHDs9-

期待 期待

3 :  SS好きの774さん   2014年05月24日 (土) 11:10:36   ID: 7Vf5gXyU

応援してます頑張ってください!

4 :  SS好きの774さん   2014年05月28日 (水) 17:12:41   ID: nMajyduF

更新頑張って下さい

5 :  SS好きの774さん   2014年07月09日 (水) 06:08:56   ID: 1x9QFNu6

面白い!

6 :  SS好きの774さん   2014年08月15日 (金) 01:22:43   ID: jEAUezRM

続きお願いします

7 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 20:12:34   ID: wyPccsaP

はやくはやくぅ〜
期待してるよぉ

8 :  SS好きの774さん   2014年08月25日 (月) 14:06:27   ID: wg4Fem-x

更新期待してます!

9 :  SS好きの774さん   2014年08月27日 (水) 16:18:18   ID: 9Mn_9CYY

更新ファイトッス

10 :  SS好きの774さん   2014年09月10日 (水) 16:39:36   ID: YaxObKtj

更新がんばって‼︎

11 :  SS好きの774さん   2014年09月11日 (木) 20:16:13   ID: wjNLPHkd

期待してるし
更新まってるよ

12 :  SS好きの774さん   2014年09月14日 (日) 13:45:01   ID: t9FU0RNF

期待

13 :  SS好きの774さん   2015年01月27日 (火) 02:43:02   ID: niWvYU3k

希望は終えた

14 :  SS好きの774さん   2015年02月18日 (水) 03:28:22   ID: qSamK1Aq

まだだ、言うだろ?
三年目からが一番美味いって。

15 :  SS好きの774さん   2015年02月27日 (金) 17:43:48   ID: DZwIRMGH

期待

16 :  SS好きの774さん   2015年03月24日 (火) 22:31:31   ID: EJE0E-5k

早く書いてくださいお願いしますm(_ _)m

17 :  SS好きの774さん   2015年05月23日 (土) 12:53:58   ID: GheNyPHG

おもしろい

18 :  SS好きの774さん   2015年06月13日 (土) 20:23:34   ID: 0lP43-OO

書いてるヤツのコメがいちいちウザい

19 :  SS好きの774さん   2015年11月16日 (月) 16:10:22   ID: TigLyT8j

まだだ…まだ諦めていないぞ…!!

20 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 22:03:45   ID: cP601Prp

前回未完で終わったssを書いてまた未完で終わるとかどうしようもない>>1だな
できないならシリアスにせんでいいだろうに

21 :  SS好きの774さん   2015年12月24日 (木) 08:17:34   ID: PKpRvsB8

風呂敷ブァッサーした後勢いで手から吹き飛んだみたいな感じだな

22 :  SS好きの774さん   2016年01月08日 (金) 01:45:47   ID: 6tBuNvHU

お前の人生と一緒で中途半端だな
産まれてきた事を親に土下座してこいよ

23 :  SS好きの774さん   2018年02月12日 (月) 22:02:30   ID: AebX95ST

簡単に言えば、読みが浅いからこういうことしか書けないのかな。
どの世界にもアンチという人々が居ますが、これをアンチとは自分は呼びません。
言うなれば、ただ斜め読みしただけでしょうと。
字面みて、読んだ気になって勝手に酷評してるだけでしょ、気に食わないから

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